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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】仮想現実のための多要素認証
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/31 20130101AFI20220303BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20220303BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20220303BHJP
   G06F 3/04886 20220101ALI20220303BHJP
【FI】
G06F21/31
G06F3/01 510
G06F3/0481
G06F3/0488 160
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543368
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020015703
(87)【国際公開番号】W WO2020160165
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】16/265,521
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596102126
【氏名又は名称】ソニー ピクチャーズ エンターテインメント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】ディール エリック
(72)【発明者】
【氏名】バーバー スコット
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA11
5E555AA22
5E555AA63
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC16
5E555BE17
5E555CA42
5E555CA44
5E555CB21
5E555CB33
5E555CB65
5E555CB66
5E555CC03
5E555DA08
5E555DA09
5E555DC31
5E555FA00
(57)【要約】
複数の認証要素を使用して仮想現実(VR)システムのための認証を行うことが、VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字、文字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって仮想キーボードに入力された、複数の認証要素のうちの第1の要素のためのパスワードを収集するステップと、VRシステムの動きから、複数の認証要素のうちの第2の要素のための生体フィンガープリントを収集するステップとを含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の認証要素を使用して仮想現実(VR)システムのための認証を行う方法であって、
前記VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字、文字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって前記仮想キーボードに入力された、前記複数の認証要素のうちの第1の要素のためのパスワードを収集するステップと、
前記VRシステムの動きから、前記複数の認証要素のうちの第2の要素のための生体フィンガープリントを収集するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記VRシステムは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仮想キーボードを半球内の固定位置において前記半球上に表示するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想キーボードは、前記半球上の少なくとも10個のキーのランダムな表示として配置される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パスワードは、前記仮想キーボード上のボタンの方向を注視して前記ボタンを選択することによって入力される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記選択されたボタンは、所定の承認用頭部ジェスチャを行うことによって確認される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択されたボタンの選択は、所定の選択解除用頭部ジェスチャを行うことによって解除される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体フィンガープリントは、前記VRシステムの動きから、前記所定の承認用頭部ジェスチャ及び前記所定の選択解除用頭部ジェスチャに反映されたものとして収集される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生体フィンガープリントを収集するステップは、
前記所定の承認用頭部ジェスチャ及び前記所定の選択解除用頭部ジェスチャの加速度を測定するステップと、
前記加速度を正規化するステップと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記収集された生体フィンガープリントをフィンガープリントデータベース内のフィンガープリントと比較するステップと、
フィンガープリントの一致が生じた時に前記ユーザを識別するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィンガープリントの一致は、前記収集された生体フィンガープリントと基準フィンガープリントとの前記フィンガープリントの一致の類似度が規定限度内にあることを意味する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数の認証要素を使用して仮想現実(VR)システムのための認証を行うシステムであって、
前記VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって前記仮想キーボードに入力されたパスワードを収集するように構成された第1の認証収集器要素と、
前記VRシステムの動きから生体フィンガープリントを収集するように構成された第2の認証収集器要素と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記VRシステムは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)である、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記仮想キーボードを半球内の固定位置において前記半球上に表示するように構成されたプロジェクタをさらに備える、
請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記仮想キーボードは、前記半球上の少なくとも10個のキーのランダムな表示として配置される、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2の認証収集器要素は、前記VRシステムの動きから、所定の頭部ジェスチャに反映されたものとして前記生体フィンガープリントを収集するように構成される、
請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2の認証収集器要素は、前記所定の頭部ジェスチャの加速度を測定することによって前記生体フィンガープリントを収集する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記収集された生体フィンガープリントをフィンガープリントデータベース内のフィンガープリントと比較するように構成された比較器と、
フィンガープリントの一致が生じた時に前記ユーザを識別するように構成された識別器と、
をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
複数の認証要素を使用して仮想現実(VR)システムのための認証を行う装置であって、
前記VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって前記仮想キーボードに入力された、前記複数の認証要素のうちの第1の要素のためのパスワードを収集する第1の収集手段と、
前記VRシステムの動きから、前記複数の認証要素のうちの第2の要素のための生体フィンガープリントを収集する第2の収集手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
前記第2の収集手段は、前記VRシステムの動きから、所定の頭部ジェスチャに反映されたものとして前記生体フィンガープリントを収集する、
請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第2の収集手段は、前記所定の頭部ジェスチャの加速度を測定することによって前記生体フィンガープリントを収集する、
請求項20に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮想現実(VR)システムに関し、具体的には、VRシステムのための多要素認証に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実(VR)が普及しているため、将来的にはいくつかのVRアプリケーションが機密又は秘密情報にアクセスできる可能性がある。従って、将来的には、さらにロバストな認証が必要になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在では、ほとんどのVRシステムが、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)内に表示される仮想キーボードを使用してデジタル情報を入力する。これらのシステムでは、ユーザが、データグローブを用いたハンドジェスチャ認識、又は表示キーを示すワンドのいずれかを使用してキーボードを作動させる。しかしながら、これらのタイプのユーザインターフェイスは複雑で扱いにくい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使用するVRシステムに適した多要素認証を提供する。
【0005】
1つの実装では、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行う方法を開示する。この方法は、VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字、文字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって仮想キーボードに入力された、複数の認証要素のうちの第1の要素のためのパスワードを収集するステップと、VRシステムの動きから、複数の認証要素のうちの第2の要素のための生体フィンガープリントを収集するステップとを含む。
【0006】
1つの実装では、VRシステムがヘッドマウントディスプレイ(HMD)である。1つの実装では、方法が、仮想キーボードを半球内の固定位置において半球上に表示するステップをさらに含む。1つの実装では、仮想キーボードが、半球上の少なくとも10個のキーのランダムな表示として配置される。1つの実装では、パスワードが、仮想キーボード上のボタンの方向を注視してボタンを選択することによって入力される。1つの実装では、選択されたボタンが、所定の承認用頭部ジェスチャを行うことによって確認される。1つの実装では、選択されたボタンの選択が、所定の選択解除用頭部ジェスチャを行うことによって解除される。1つの実装では、生体フィンガープリントが、VRシステムの動きから、所定の承認用頭部ジェスチャ及び所定の選択解除用頭部ジェスチャに反映されたものとして収集される。1つの実装では、生体フィンガープリントを収集するステップが、所定の承認用頭部ジェスチャ及び所定の選択解除用頭部ジェスチャの加速度を測定するステップと、加速度を正規化するステップとを含む。1つの実装では、方法が、収集された生体フィンガープリントをフィンガープリントデータベース内のフィンガープリントと比較するステップと、フィンガープリントの一致が生じた時にユーザを識別するステップとをさらに含む。1つの実装では、フィンガープリントの一致が、収集された生体フィンガープリントと基準フィンガープリントとのフィンガープリントの一致の類似度が規定限度内にあることを意味する。
【0007】
別の実装では、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行うシステムを開示する。このシステムは、VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって仮想キーボードに入力されたパスワードを収集するように構成された第1の認証収集器要素と、VRシステムの動きから生体フィンガープリントを収集するように構成された第2の認証収集器要素とを含む。
【0008】
1つの実装では、VRシステムがヘッドマウントディスプレイ(HMD)である。1つの実装では、システムが、仮想キーボードを半球内の固定位置において半球上に表示するように構成されたプロジェクタをさらに含む。1つの実装では、仮想キーボードが、半球上の少なくとも10個のキーのランダムな表示として配置される。1つの実装では、第2の認証収集器要素が、VRシステムの動きから、所定の頭部ジェスチャに反映されたものとして生体フィンガープリントを収集するように構成される。1つの実装では、第2の認証収集器要素が、所定の頭部ジェスチャの加速度を測定することによって生体フィンガープリントを収集する。1つの実装では、システムが、収集された生体フィンガープリントをフィンガープリントデータベース内のフィンガープリントと比較するように構成された比較器と、フィンガープリントの一致が生じた時にユーザを識別するように構成された識別器とをさらに含む。
【0009】
さらに別の実装では、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行う装置を開示する。この装置は、VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって仮想キーボードに入力された、複数の認証要素のうちの第1の要素のためのパスワードを収集する第1の収集手段と、VRシステムの動きから、複数の認証要素のうちの第2の要素のための生体フィンガープリントを収集する第2の収集手段とを含む。
【0010】
1つの実装では、第2の収集手段が、VRシステムの動きから、所定の頭部ジェスチャに反映されたものとして生体フィンガープリントを収集する。1つの実装では、第2の収集手段が、所定の頭部ジェスチャの加速度を測定することによって生体フィンガープリントを収集する。
【0011】
本開示の態様を一例として示す本明細書からは、他の特徴及び利点も明らかになるはずである。
【0012】
同じ部分を同じ参照数字によって示す添付図面を検討することにより、本開示の詳細をその構造及び動作の両方に関して部分的に収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の1つの実装による、球上に表示された仮想キーパッドのレイアウトである。
図2】本開示の1つの実装による、球上に表示されているが極座標の形で投影された仮想キーパッドのレイアウトである。
図3】本開示の1つの実装による、フェーズを検出するプロセスを示すフロー図である。
図4】本開示の1つの実装による、承認用頭部ジェスチャを検出するプロセスを示すフロー図である。
図5】本開示の1つの実装による、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行うプロセスを示すフロー図である。
図6】本開示の1つの実装による、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行うためのシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述したように、現在の仮想現実(VR)システムは、複雑で扱いにくいユーザインターフェイスを使用していることがある。
【0015】
本開示のいくつかの実装は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使用するVRシステムに適した多要素認証を提供する。例えば、この多要素認証は、(1)例えばパスワードなどのユーザが知っている何か、(2)例えば携帯電話機又は物理的トークンなどのユーザが所有している何か、及び(3)例えばユーザの指紋、声、特徴的な動きなどのユーザである何か、のうち少なくとも2つを使用する。1つの実装では、指紋がバイオメトリック署名を含むことができる。これらの説明を読んだ後には、様々な実装及び応用における本開示の実施方法が明らかになるであろう。本明細書では本開示の様々な実装について説明するが、これらの実装は一例として示すものにすぎず、限定ではないと理解されたい。従って、この様々な実装の詳細な説明は、本開示の範囲又は外延を限定するものとして解釈すべきではない。
【0016】
1つの実装では、多要素認証が、HMDを装着している間にパスワードを入力して生体フィンガープリントを収集することを含む。例えば、ユーザは、キーの配列を注視し、HMD内に表示された仮想キーボード上の数字、文字、記号及び/又は画像などの一連のデータを選択することによってパスワードを入力する。生体フィンガープリントは、(ユーザの頭部の動きを表す)HMDの動きなどのシステムの動き、或いは(カメラによって取り込まれる)手又は体の動きなどのユーザの動きをモニタすることによって収集することができる。
【0017】
第1の要素認証(すなわち、パスワードの入力)の特定の実装では、ユーザがHMDを装着した後に以下のステップを行うことができる。最初に、VRシステムのアプリケーションが、HMD内に仮想キーボードを表示する。例えば、HMD内に、個人識別番号(PIN)を入力するための数字キーパッドを表示することができる。
【0018】
図1は、本開示の1つの実装による、球上に表示された仮想キーボード又はキーパッドのレイアウト100である。この実装では、球内の固定位置に(規則正しく並んだキーボード又は数字のランダム表示として構成できる)仮想キーパッドが存在し、その上にHMDがキーパッドを表示してこれをユーザが見る。1つの実装では、6桁のPINをパスワードとして使用することができる。従って、アプリケーションは、ユーザの正面の半球内に10個のボタンのキーパッドを表示する。10個のボタンの順序はランダム化される。
【0019】
1つの実装では、ユーザが、キーパッド上のキーを選択してパスワードを入力するために、頭部をボタン(或いはキー又はその他の表示された仮想アイテム)の方向に動かす。この結果、ユーザによって注視されたボタンが選択ボタンとして強調表示される。ユーザは、首を縦に振ることなどの所定の承認用頭部ジェスチャを行うことによって選択ボタンを確認する。選択ボタンの強調表示は、首を横に振ることなどの所定の選択解除用頭部ジェスチャによって解除することができる。従って、ユーザは、選択すべきキーの注視と、頭部ジェスチャを使用した確認/選択解除とを連続して行うことによってパスワードを入力する。
【0020】
1つの実装では、セキュリティ上の理由で、仮想キーパッドのレイアウトが少なくとも新規パスワード入力毎にランダム化される。従って、このレイアウトのランダム化は、(頭部の動きを注視することによって)無許可の人物にパスワードが洩れるのを防ぐ。いくつかの実装では、情報(すなわち、パスワード)の漏洩を防ぐために、各キー選択後にもレイアウトをランダム化することができる。別の実装では、パスワードが英数字ではなく、横長に配置すべき一連のピクトグラムである。
【0021】
第2の要素認証(すなわち、生体認証)の特定の実装では、VRシステムのアプリケーションが、生体認証情報を測定して生体フィンガープリントを生成する。歩行又は手書き署名に関して言えば、既知のジェスチャのためのユーザの頭部の動きはそのユーザに特有のものである。例えば、承認用頭部ジェスチャ及び選択解除用頭部ジェスチャは、この目的にかなうことができる。1つの実装では、承認用ジェスチャ及び選択解除用ジェスチャの両方について、生体認証情報が、頭部の2軸上に投影される加速度として測定される。これらのジェスチャのパラメータ(例えば、加速度)は、正規化されると一意の生体フィンガープリントを形成する。
【0022】
生体認証システムでは、初期登録フェーズがジェスチャ又は動きの複数の事例を記録する。初期登録フェーズでは、ユーザが承認用頭部ジェスチャ及び選択解除用頭部ジェスチャを繰り返し実行する。従って、登録フェーズはこれらの入力を正規化し、これを平均化して基準フィンガープリントを生成する。アプリケーションは、キーの選択中に連続して取り込まれた生体フィンガープリントを記録する。
【0023】
1つの実装では、VRシステムのアプリケーションが、フィンガープリントデータベースにアクセスすることができる。フィンガープリントデータベースは、(ユーザを一義的に識別する)ユーザIDとユーザの基準フィンガープリントとを含むレコードを登録ユーザ毎に保持する。1つの実装では、基準フィンガープリントが一連のデータARj={δxj、δyj}であり、ここでのδxは方位角加速度を表し、δyは仰角加速度を表す。この一連のデータは、ユーザが複数の承認用頭部ジェスチャを実行し、登録が正規化及び統計計算を実行してそのユーザの「平均」フィンガープリントを抽出するという典型的な生体認証登録フェーズの後に定められる。
【0024】
アプリケーションは、ユーザを認証するために、(1)仮想キーパッドを介して入力されたパスワードがユーザのパスワードと一致すること、及び(2)測定された生体フィンガープリントのうちの少なくとも1つがユーザの基準フィンガープリントと一致する(すなわち、ユーザが確認される)こと、という2つの条件を検証することができる。1つの実装では、フィンガープリントの一致が、測定された生体フィンガープリントと基準フィンガープリントとの類似度が規定限度内にあることを意味する。
【0025】
図2は、本開示の1つの実装による、球上に表示されているが極座標の形で投影された仮想キーパッドのレイアウト200である。横軸(すなわち、x軸)は方位角を表し、縦軸(すなわち、y軸)は仰角を表す。原点は、認証プロセス開始時のHMDの方向である。
【0026】
1つの実装では、表示される各ボタン又はキー(すなわち、Ki)がKi={xi、yi、Vi}というトリプレットで表され、ここでのxiは、表示されるキーの中心の方位角を度で表し、xi∈]-90,90[であり、yiは、表示されるキーの中心の仰角を度で表し、yi∈]-90,90[であり、Viはキーの値を表し、Vi∈{0..9}である。従って、図2に示す実装では、K1={0,30,0}であり、K4={-60,0,6}である。
【0027】
1つの実装では、HMDが、ユーザの頭部の方向(すなわち、注視)を極座標{xuser、yuser}の形態で定期的にアプリケーションに報告する。従って、最初に、アプリケーションは、以下の方程式[1]における両条件が真である場合にユーザがKiを見ていると判定し、
[1]
ここでのRは固定値を表す。1つの実装では、値Rが、キーを取り囲む円の半径である。
【0028】
1つの実装では、キーを選択するプロセスが以下のように説明される。
【0029】
最初に、アプリケーションは、ユーザがキーを注視又は凝視している(すなわち、数式[1]が1つのiの値について満たされている)と判定すると、注視されているキーを図形的に強調表示する。ユーザがキーから目を離す(すなわち、数式[1]が対応するiの値についてもはや満たされなくなる)と、アプリケーションは強調表示を解除する。
【0030】
次に、所与の期間(例えば、100mS)にわたってキーが強調表示された場合、アプリケーションは、3つのサブモードを有する頭部ジェスチャ検出モードに入る。第1のサブモードでは、承認用頭部ジェスチャが検出された場合、アプリケーションが値Viを使用してキー選択を記録する。ユーザには、可視情報及び可聴信号によってキー選択を知らせることができる。アプリケーションは、測定された生体フィンガープリントも記録する。第2のサブモードでは、選択解除用頭部ジェスチャが検出された場合、アプリケーションが選択キーの強調表示を解除する。第3のサブモードでは、既知のジェスチャが検出されない場合、アプリケーションが現在の強調表示を解除する。
【0031】
1つの実装では、パスワード取得プロセスが、ユーザが所定数のキーを選択するのを(例えば、6つのキーが選択されるまで)待つ。所定数のキーが選択されると、アプリケーションは認証検証フェーズに入る。
【0032】
別の実装では、HMDが、HMDの位置でなくバイザー内の視線又は眼球運動の方向を登録する視線又は眼球運動追跡システムを含むように構成される。この実装では、座標{xuser、yuser}が、HMDの位置と視線方向との組み合わせである。従って、この実装は、頭部の動きを抑えた状態でのキー選択を可能にする。この実装は、比較的大型の(例えば、10個のキーを有する数字キーパッドよりも大型の)キーボードにとって特に有用となり得る。この実装では、測定された生体フィンガープリントを導出するためにHMDの加速度のみが使用される(すなわち、測定された生体フィンガープリントを導出するために眼球追跡情報は使用されない)。
【0033】
1つの実装では、頭部ジェスチャを検出する上で、ユーザの頭部が縦に振られることが承認用頭部ジェスチャとみなされ、横に振られることが選択解除用頭部ジェスチャとみなされる。
【0034】
1つの実装では、アプリケーションが、頭部ジェスチャを検出するために、頭部の加速度を所定の秒数中のnミリ秒毎に極座標系で記録する。従って、アプリケーションは一連のサンプルAj={δxj、δyj}を有し、ここでのδxjは、間隔jにおける方位角加速度を表し、δyjは、同じ間隔jにおける仰角加速度を表す。
【0035】
1つの実装では、承認用頭部ジェスチャ及び選択解除用頭部ジェスチャを検出するプロセスを4つのフェーズに分割することができる。例えば、フェーズ1は、HMDが「静止」した(知覚可能なほどユーザが動いていない)一時停止を表す。フェーズ2は、第1の方向(例えば、承認用頭部ジェスチャでは上又は下、及び選択解除用頭部ジェスチャでは右又は左)の動きを表す。フェーズ3は、第1の方向とは逆の第2の方向の動きを表す(すなわち、第1の方向が上である場合には下が第2の方向であり、第1の方向が右である場合には左が第2の方向であり、これらの逆もまた同様である)。フェーズ4は、HMDが「静止」した一時停止を表す。
【0036】
1つの実装では、上述したフェーズが、(以下に列挙する)パラメータセットによって特徴付けられる。
εstill=一時停止の加速度閾値。
εmove=首振りの加速度閾値。
Δstill=一時停止(すなわち、フェーズ1及び4)の最小継続時間。
このパラメータ(Δstill)の単位は、測定期間数である。従って、一時停止の実際の最小継続時間はΔstill×nミリ秒である。
Δmov1=第1の動き(すなわち、フェーズ2)の最小継続時間。
Δmov2=第2の動き(すなわち、フェーズ3)の最小継続時間。
Δmax=各フェーズの最大継続時間(すなわち、フェーズがΔmax×nミリ秒以内に完了しない場合、そのフェーズは失敗である)。
【0037】
サンプルAjは、静止、上、下、右、左又は不良、というカテゴリのうちの1つに属する。以下の方程式の組は、このカテゴリ化を定める。
[2]
【0038】
上述したようにパラメータが定められると、以下のプロセスによってフェーズの完了の成功又はフェーズの完了の失敗が定められる。
【0039】
図3は、本開示の1つの実装による、フェーズを検出するプロセス300を示すフロー図である。1つの実装では、プロセス300が、ブロック302において、予想されるカテゴリのΔmovの連続サンプルが存在するかどうかを検証する。フェーズ1及びフェーズ4では、カテゴリが静止であり、Δmov=Δstillである。フェーズ2では、承認用頭部ジェスチャについてはカテゴリが下であり、選択解除用頭部ジェスチャについては右であり、Δmov=Δmov1である。フェーズ3では、承認用頭部ジェスチャについてはカテゴリが上であり、選択解除用頭部ジェスチャについては左であり、Δmov=Δmov2である。十分な連続サンプルが存在しない場合、ブロック316において検出は失敗する。
【0040】
十分なサンプルが存在する場合、プロセスは、ブロック324においてサンプルが予想外のカテゴリを有するまで、或いはブロック330において分析済みサンプルの総数が閾値Δmaxに到達するまで待機する。第1の(すなわち、ユーザが上から下へなどの別の「動き」を開始する予想外のカテゴリが存在する)事例では、ブロック326において検出に成功する。第2の(すなわち、ユーザが長い一時停止のように長時間同じカテゴリに留まる)事例では、ブロック332において検出には成功するが長すぎる。
【0041】
特定の実装では、最初にブロック310において、カウンタ1及びカウンタ2がいずれも0に設定される。ブロック312においてサンプルが取得され、ブロック314において、サンプルが正しいカテゴリであるかどうかが判定される。サンプルが正しいカテゴリでない場合、ブロック316において検出は失敗する。一方で、サンプルが正しいカテゴリである場合、ブロック318においてカウンタ1及びカウンタ2がいずれも増加する。ブロック320において、カウンタ1がΔmov未満であるかどうかが判定される。カウンタ1がΔmov未満である場合、ブロック312においてさらなるサンプルが取得される。そうでなければ、ブロック322においてサンプルが取得され、ブロック324において、取得されたサンプルが予想外のカテゴリであるかどうか、又は分析されたサンプルの総数がΔmaxに到達したかどうかが判定される。ブロック324において、取得されたサンプルが予想外のカテゴリであると判定された場合、ブロック326において検出の成功が示される。一方で、ブロック324において、取得されたサンプルが正しいカテゴリであると判定された場合、ブロック328においてカウンタ2が増加する。次に、ブロック330において、分析されたサンプルの総数が閾値に到達した(すなわち、カウンタ2<Δmaxである)かどうかが判定される。サンプルの総数が閾値に到達した場合、ブロック332において、検出には成功したが長すぎることが示される。そうでなければ、ブロック322において別のサンプルが取得される。
【0042】
図4は、本開示の1つの実装による、承認用頭部ジェスチャを検出するプロセス400を示すフロー図である。プロセス400は、一連のフェーズ検出ステップを説明するものである。
【0043】
図4に示す実装では、プロセス400が、ブロック410において、動きの継続時間(Δmov)が一時停止の最小継続時間(Δstill)以上の長さのはずであると判定することによってフェーズ1を検出しようと試み、この場合、予想されるカテゴリは「静止」(フェーズ1)である。次に、ブロック412においてフェーズ1検出が実行される。ブロック420においてフェーズ検出に失敗した場合、ブロック422において、フェーズ検出の失敗、すなわちユーザの頭部が動いたことが示される。ブロック424において、フェーズ検出には成功したが一時停止の継続時間が長すぎたと判定された場合、ブロック424において正しいフェーズ1が決定されるまで、ブロック412において検出が継続する。
【0044】
図4に示す実装では、フェーズ1が検出されると、プロセス400は、ブロック430において、動きの継続時間(Δmov)が第1の動きの最小継続時間(Δmov1)以上の長さのはずであると判定することによってフェーズ2(すなわち、ユーザの頭部が下向きに動いたこと)を検出しようと試み、この場合、予想されるカテゴリは「下」(フェーズ2)である。次に、ブロック432においてフェーズ2検出が実行される。ブロック434においてフェーズ検出に失敗した場合、ブロック436において、検出全体の失敗が示されてキーが選択解除される。ブロック438において、フェーズ検出には成功したが第1の動きの継続時間(Δmov1)が長すぎたと判定された場合、ブロック456において検出全体の失敗が示されてキーの選択が解除される。
【0045】
図4に示す実装では、フェーズ2が検出されると、プロセス400は、ブロック440において、動きの継続時間(Δmov)が第2の動きの最小継続時間(Δmov2)以上の長さのはずであると判定することによってフェーズ3(すなわち、ユーザの頭部が上向きに動いたこと)を検出しようと試み、この場合、予想されるカテゴリは「上」(フェーズ3)である。次に、ブロック442においてフェーズ3検出が実行される。ブロック444において、フェーズ検出に失敗した場合、ブロック446において、検出全体の失敗が示されてキーが選択解除される。ブロック448において、フェーズ検出には成功したが第2の動きの継続時間(Δmov2)が長すぎたと判定された場合、ブロック456において検出全体の失敗が示されてキーの選択が解除される。
【0046】
図4に示す実装では、フェーズ3が検出されると、プロセス400は、ブロック450において、動きの継続時間(Δmov)が一時停止の最小継続時間(Δstill)以上の長さのはずであると判定することによってフェーズ4(すなわち、ユーザが静止した状態)を検出しようと試み、この場合、予想されるカテゴリは「静止」(フェーズ4)である。次に、ブロック452においてフェーズ4検出が実行される。ブロック454において、フェーズ検出に失敗した場合、ブロック456において、検出全体の失敗が示されてキーが選択解除される。ブロック454において、フェーズ検出がその長さにかかわらず成功したと判定された場合、ブロック458において検出全体の成功が示される。
【0047】
図4に示す実装は、選択解除用頭部ジェスチャを検出する第2のプロセスに拡張することができる。従って、第2のプロセスでは、フェーズ2及び3が、プロセス400の首を縦に振るためのパラメータの代わりに、首を横に振るためのパラメータを使用する。
【0048】
図4に示す実装の別の実装では、首を縦に振る方向が、フェーズ2では上であり、フェーズ3では逆(すなわち、下)であるように選択される。
【0049】
図5は、本開示の1つの実装による、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行うプロセス500を示すフロー図である。1つの実装では、プロセス500が、ブロック510において、VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字及び/又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって仮想キーボードに入力された、複数の認証要素のうちの第1の要素のためのパスワードを収集する。次に、ブロック520において、VRシステムの動きから、複数の認証要素のうちの第2の要素のための生体フィンガープリントが収集される。
【0050】
図6は、本開示の1つの実装による、複数の認証要素を使用してVRシステムのための認証を行うためのシステム600を示すブロック図である。1つの実装では、システム600が、第1の認証収集器要素610及び第2の認証収集器要素620を含む。1つの実装では、認証収集器610の第1の要素が、VRシステムのディスプレイ上に表示された仮想キーボード上の数字及び/又は画像を含む一連のデータをユーザが選択することによって仮想キーボードに入力されたパスワードを収集するように構成される。1つの実装では、第2の認証収集器要素620が、VRシステムの動きから生体フィンガープリントを収集するように構成される。
【0051】
本明細書に開示した実装の説明は、本発明をあらゆる当業者が実施又は利用できるように行ったものである。当業者には、これらの実装の数多くの修正が容易に明らかになると思われ、また本明細書で定める原理は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく他の実装にも適用することができる。従って、本開示は、本明細書に示す実装に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示する原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲を許容すべきものである。
【0052】
本開示の様々な実装は、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はこれらの技術の組み合わせで実現される。いくつかの実装は、1又は2以上のコンピュータ装置によって実行される1又は2以上のコンピュータプログラムを含む。一般に、コンピュータ装置は、1又は2以上のプロセッサ、1又は2以上のデータストレージコンポーネント(例えば、揮発性又は不揮発性メモリモジュール、並びにハードディスクドライブ及びフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ及び磁気テープドライブなどの永続的光学及び磁気記憶装置)、1又は2以上の入力装置(例えば、ゲームコントローラ、マウス及びキーボード)、並びに1又は2以上の出力装置(例えば、ディスプレイ装置)を含む。
【0053】
コンピュータプログラムは、通常はコンピュータ可読記憶媒体に記憶されて実行時にメモリにコピーされる実行可能コードを含む。このコードは、少なくとも1つのプロセッサがメモリから所定の順序でプログラム命令を読み出すことによって実行される。プログラムコードを実行する場合、コンピュータは、入力装置及び/又は記憶装置からデータを受け取り、データに対して処理を実行し、結果として得られたデータを出力装置及び/又は記憶装置に提供する。
【0054】
当業者であれば、本明細書で説明した様々な例示的なモジュール及び方法ステップは、電子ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせとして実装することができると理解するであろう。このハードウェアとソフトウェアとの互換性を明確に説明するために、本明細書では様々な例示的なモジュール及び方法ステップを一般にこれらの機能の面で説明した。このような機能がハードウェアとして実装されるか、それともソフトウェアとして実装されるかは、システム全体に課せられる特定の用途及び設計制約に依存する。当業者であれば、説明した機能を特定の用途毎に様々な方法で実装することができるが、このような実装決定は、本発明の範囲からの逸脱を生じるものとして解釈すべきではない。また、モジュール又はステップ内の機能をグループ化しているのは、説明を容易にするためである。本開示から逸脱することなく、特定の機能を1つのモジュール又はステップから別のモジュール又はステップに移行させることもできる。
【0055】
本開示の特定の実装では、必ずしも上述した各実施例の全ての特徴が必要なわけではない。さらに、本明細書に示す説明及び図面は、本発明によって幅広く検討される主題を表すものであると理解されたい。さらに、本開示の範囲は、当業者に明らかになると考えられる他の実装を完全に含み、従って添付の特許請求の範囲以外のものによって限定されるものではないと理解されたい。
【符号の説明】
【0056】
300 プロセス
302 ブロック
310 カウンタ1=0に設定、カウンタ2=0に設定
312 サンプルを取得
314 正しいカテゴリ?
316 検出なし
318 カウンタ1及びカウンタ2を増加
320 カウンタ1<Δmov?
322 サンプルを取得
324 正しいカテゴリ?
326 検出OK
328 カウンタ2を増加
330 カウンタ2<Δmax?
332 検出OKで長い
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】