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特表2022-517867凝血促進性、免疫調節性、および組織再生性を有する抗菌組成物
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  • 特表-凝血促進性、免疫調節性、および組織再生性を有する抗菌組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】凝血促進性、免疫調節性、および組織再生性を有する抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/40 20060101AFI20220303BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 31/722 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A61K33/40
A61K31/045
A61K33/42
A61K31/722
A61K31/728
A61K38/39
A61K33/00
A61K31/197
A61P17/02
A61P7/04
A61K47/38
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P29/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543537
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020015265
(87)【国際公開番号】W WO2020159892
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/819,485
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/797,901
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521330448
【氏名又は名称】ハイプロテック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・オー・テニカン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC27
4C076EE32
4C076FF11
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4C084MA60
4C084MA63
4C084MA67
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA53
4C084ZA89
4C084ZA90
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA23
4C086EA25
4C086HA19
4C086HA22
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086ZA53
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206FA55
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA51
4C206MA75
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA86
4C206ZA53
4C206ZA89
4C206ZA90
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZB37
(57)【要約】
本開示は、創傷部位の微生物の増殖を抑制および治療するため、創傷部位の微生物感染(例えば、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫)を抑制および治療するため、過剰な局所性および固有の免疫応答を調節するため、創傷部位のバイオフィルムにおける微生物感染を抑制するため、創傷部位の初期微生物感染を下方制御するため、創傷部位の微生物バイオフィルムに関連する細胞溶解を防止するため、創傷部位、皮膚および粘膜の細菌毒素を不活性化するため、損傷した四肢の喪失を防止するため、敗血症性ショックを予防するため、創傷からの表面出血を減少させるため、組織再生を促進するため、ならびに創傷の治癒を促進するための、抗菌剤および凝血促進剤の新規組成物、ならびに該組成物を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、および
(d)キレート剤、を含む、抗菌剤と、
1つ以上の凝血促進剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の凝血促進剤がポリリン酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリリン酸塩が、約1%~約20%重量対重量(w/w)、または約5%~約15%w/w、または約10%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で前記組成物中に存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の凝血促進剤が、キトサン、ポリリン酸塩、コラーゲン、ヒアルロナン、高分子量ヒアルロン酸、カオリン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記キトサンが、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で前記組成物中に存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルコールが、エタノールを含み、約1%~約85%w/w、または約10%~約70%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記過酸化物または過酸化物発生剤が、過酸化水素(H)を含み、約0.05%~約20%w/w、約0.05%~約10%w/w、または約1.5%w/wのうちの少なくとも1つの濃度で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.4mg~約10mg/mL、約0.3mg~約25mg/mL、または約10mg/mLのうちの少なくとも1つの濃度で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記増粘剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が2つ以上の凝血促進剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記凝血促進剤がコラーゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記コラーゲンが、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で前記組成物中に存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗菌剤の1つ以上の成分と、前記凝血促進剤の1つ以上の成分とが共有結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記1つ以上の凝血促進剤がヒアルロナンまたはヒアルロン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ヒアルロナンまたはヒアルロン酸が、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で前記組成物中に存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記1つ以上の凝血促進剤がカオリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記カオリンが、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で前記組成物中に存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
創傷部位の微生物の増殖または感染を治療、抑制、または低減し、前記創傷部位の凝血活性を促進する方法であって、
前記創傷の部位を特定することと、
請求項1に記載の組成物を前記部位に適用することと、を含む方法。
【請求項20】
状態または疾患を治療、抑制、または軽減する方法であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、
(d)キレート剤、および
(e)1つ以上の凝血促進剤、を含む、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記状態または疾患が、細菌性状態もしくは疾患、真菌性状態もしくは疾患、ウイルス性状態もしくは疾患、寄生性状態もしくは疾患、生物学的毒素による疾患もしくは状態、炎症性状態もしくは疾患、免疫応答性状態もしくは疾患、または前癌性もしくは癌性状態のうちの少なくとも1つである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記状態または疾患が出血である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは移植、筋肉内注射もしくは移植、病変内注射、皮下注射もしくは移植、皮内注射、坐剤、タンポン、ペッサリー、腸内適用、または経鼻経路のうちの少なくとも1つによって投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、外陰癌部位、陰茎癌部位、肛門/直腸癌部位、熱傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、口腔部位、骨部位、軟骨部位、関節部位、肛門部位、膣部位、子宮頸部部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍性皮膚部位、にきび部位、光化性角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、または耳部位のうちの1つ以上を含む部位に適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記アルコールがエタノールを含み、
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記過酸化物または過酸化物発生剤が過酸化水素(H)を含み、
前記1つ以上の凝血促進剤がキトサンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記アルコールがエタノールを含み、
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記過酸化物または過酸化物発生剤が過酸化水素(H)を含み、
前記1つ以上の凝血促進剤がカオリンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記アルコールがエタノールを含み、
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記過酸化物または過酸化物発生剤が過酸化水素(H)を含み、
前記1つ以上の凝血促進剤がヒアルロナンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
組成物を製造する方法であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、
(d)キレート剤、および
(e)1つ以上の凝血促進剤、を含む組成物を組み合わせることと、
前記組成物を溶液に入れることと、を少なくとも含む、組成物を製造する方法。
【請求項29】
創傷被覆材であって、
繊維またはナノ粒子のうちの少なくとも1つの格子と、
前記格子に適用される組成物であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、
(d)キレート剤、および
(e)1つ以上の凝血促進剤、を含む、組成物と、を含む、創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌剤および凝血促進剤の新規混合物と、創傷を治療して治癒および組織再生を促進し、感染、毒素、疾患、ならびに/または血液および血漿の喪失を予防または低減するために混合物を使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自然災害または戦闘で発生するような大量の死傷者の治療は、損傷の潜在的な重症度と犠牲者の数の両方のために従来困難であった。資源の少ない環境で死傷者が発生した場合、医療施設までの距離および輸送の困難さによって課題が悪化する。患者がタイムリーかつ適切なケアを受けることができないことの結果として、創傷が感染するという相当なリスクが存在する。損傷の重症度に応じて、死亡は、失血、微生物毒素の吸収、侵襲性感染症、敗血症、溶血性尿毒症症候群、または敗血症/毒素性ショックおよび呼吸不全に起因し得る。
【0003】
例えば、2018年の調査により、イラクおよびアフガニスタンの紛争では過去の紛争よりも戦場での死亡者数は少なかったが、これらの紛争における戦闘死傷者の3分の1は、最初の入院中に皮膚、軟部組織、または骨の感染症を発症することが分かった。Weintrob,A,et al.Early Infections Complicating the Care of Combat Casualties from Iraq and Afghanistan.Surgical Infections.2018.doi:10.1089/274.2017.240.進歩的な手術器具、止血帯、迅速な避難、および改善されたボディアーマーの使用により、過去の紛争と比較して、最初の損傷を生き延びる戦闘死傷者の割合が高くなったが、この死亡率の低下は、大量失血、軟部組織および骨の損傷、ならびに頻繁な手術を必要とする広範な創傷汚染のために、その後のケアにおける大きな課題を伴う。Weintrob.
【0004】
即席爆発装置(IED)のために、戦闘中に発生する創傷の頻度および重症度が増加している。追加的に、戦争中の民間人の死傷者も広範囲に及ぶ場合があり、資源が限られた環境で発生する場合がある。
【0005】
従来、止血帯の適用による圧力または創傷部位での圧迫等の止血の方法は、ある程度およびある時間、出血を減少させることができる。しかしながら、これらの技術には抗菌作用がないため、出血は抑制できるかもしれないが、感染は抑制されない。追加的に、止血帯は定期的な解放および交換を必要とするため、患者を監視する医療専門家が不足している場合は実用的ではない場合がある。
【0006】
出血を止めようとする課題に加えて、創傷感染は、皮膚の不十分な消毒、または他の患者の体液もしくは介護者の汚染された手による交差感染から生じる可能性がある。微生物感染の間に、様々な細胞ストレス応答、例えばサイトカインも誘発され、組織の炎症および免疫細胞の活性化につながる。感染による慢性炎症は、癌等の下流の障害の根底にある経路の発達を促進する可能性があり、かつ/または該経路を維持する可能性がある。
【0007】
初期段階の創傷における出血と感染の両方を迅速、安価、効果的、かつ安全に軽減することができると、失われる命が少なくなり、重度の恒久的な損傷が低減し、多剤耐性感染症が低減し、治療、入院、およびリハビリテーションの長さが短縮されることからコスト削減につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この概要は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに説明される選定した概念を簡略化した形で紹介するために提供されるものである。この概要は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図するものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、抗菌性および止血性の両方の特性を有し、宿主の免疫応答を促進または緩和し、組織の再生およびリモデリングを促進する、創傷および表面に適用するための組成物を記載する。この組成物は、創傷に適用されると、感染を予防または治療し、血液および血漿の喪失を阻止することができる。
【0010】
本開示は、抗菌剤および凝血促進(血液凝固)剤の両方として集合的に有効である成分の新規組み合わせの発見に関する。したがって、本開示は、例えば、(1)微生物増殖、微生物感染、および微生物感染によって調節され得るかまたは微生物感染に関連し得る状態を抑制および治療するために、(2)失血を停止または低減するために、ならびに(3)抗菌剤単独と比較してより迅速な創傷治癒のために、組成物および組成物を使用する方法を記載する。一実施形態において、組成物は、バイオフィルムへの浸透および広域スペクトル、迅速な微生物殺傷のための小分子、ならびに迅速な止血および感染予防のための大分子を組み込むことができる。
【0011】
一実施形態において、組成物は、凝血促進剤に加えて抗菌剤を含む。本明細書に記載の抗菌剤は、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成発生剤、および(d)キレート剤を含み得る。
【0012】
本明細書で使用される場合、「凝血促進剤」は、1つ以上の凝血促進化合物(例えば、キトサン、ポリリン酸塩(「ポリP」)、コラーゲン、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、セルロース、またはカオリン)を含み得る。本明細書で使用される場合、「抗菌剤」は、1つ以上の抗菌化合物を含み得る。追加的に、たとえ凝血促進剤および抗菌剤が本開示の一部において別個の薬剤として記載されている場合であっても、凝血促進剤は抗菌性を有し得る。
【0013】
一実施形態において、本開示の組成物は、同じ混合物中で凝血誘発剤と抗菌剤とを組み合わせる。伝統的に、本明細書に記載の特定の凝血誘発化合物は、凝血促進剤が抗菌剤とは異なる目的を果たし、一部の抗菌剤の成分である過酸化水素が凝血促進剤の凝血促進性を低下させる可能性があるため、抗菌剤に組み込まれていなかった。例において、分解は抗凝血物質を生成し得る。しかしながら、本明細書に記載の組成物に含まれるEDTAは、過酸化水素のヒドロキシルラジカルへの変換を予想外に遅らせ、それによって凝固化合物がかなりの凝血促進性を保持することが可能となり、それによって抗菌成分と凝血促進剤の組み合わせが可能になる。
【0014】
実施形態において、本開示に記載される凝血促進剤(例えば、キトサン、ポリリン酸塩、コラーゲン、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、および/またはカオリン)は、凝血促進剤および抗菌剤の両方として作用することができる。実施形態において、過酸化水素による凝血促進剤の酸化は、凝血促進性およびそれらの抗菌性の両方の喪失を引き起こし得るため、EDTAは、両方の特性の分解を遅らせる。一実施形態において、本明細書に記載の凝血促進剤は、本明細書に記載の分子サイズおよびコンフォメーション(例えば、キトサンのアセチル化パーセント)の場合、凝血促進剤および抗菌剤の両方として作用することができる。
【0015】
抗菌剤への凝血促進剤(例えば、キトサン、ポリリン酸塩(「ポリP」)、コラーゲン、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、および/またはカオリン)の添加は、細菌、真菌、胞子、およびウイルスを殺傷する異なる機構を提示する。
【0016】
実施形態において、組成物は、微生物増殖、微生物感染(例えば、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫)、微生物バイオフィルム、炎症性疾患、ウイルス性疾患、心血管疾患、糖尿病、または微生物の増殖もしくは感染に起因するもしくは関連する状態を軽減または抑制するのに有用である。実施形態において、組成物は、微生物増殖、微生物感染(例えば、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫)、微生物バイオフィルム、炎症性疾患、ウイルス性疾患、心血管疾患、糖尿病、または微生物の増殖もしくは感染に起因するもしくは関連する状態を治療するのに有用である。
【0017】
別の実施形態において、本開示は、上記のような治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、微生物の増殖を抑制または低減し、失血を低減する方法を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本開示は、上記のような治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、微生物の増殖を治療し、失血を低減する方法に関する。
【0019】
別の実施形態において、本開示は、上記のような治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、微生物感染を抑制または低減し、失血を低減する方法に関する。
【0020】
別の実施形態において、本開示は、上記のような治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、微生物感染を治療し、失血を低減する方法に関する。
【0021】
実施形態において、微生物増殖または微生物感染は、細菌、真菌、原生動物、またはウイルスのうちの1つ以上を含む微生物によるものである。
【0022】
別の実施形態において、本開示は、上記のような治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、バイオフィルム形成を抑制または低減し、失血を低減する方法に関する。実施形態において、バイオフィルム形成は、微生物増殖、微生物感染、または宿主タンパク質、多糖類、脂質、および核酸の寄与の結果である。宿主タンパク質、ポリリン酸塩、脂質、および/または核酸は、バイオフィルムに組み込まれる宿主因子であり得る。実施形態において、微生物増殖または微生物感染は、細菌、真菌、原生動物、またはウイルスのうちの1つ以上を含む微生物によるものである。実施形態において、組成物は、複数の抗菌成分を含み、単一の抗菌剤よりも良好なバイオフィルムの抑制/低減を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本開示は、創傷の治癒を促進する方法を提供する。
【0024】
別の実施形態において、本開示は、組織再生を促進する方法を提供する。
【0025】
別の実施形態において、本開示は、組成物を製造する方法を記載する。
【0026】
実施形態において、組成物は、局所適用のために、滅菌包装された創傷被覆材および/またはヒドロゲルに組み込まれ得る。実施形態において、組成物は液体形態であり得、滅菌IV型ポリマーバッグまたは滅菌注射器に包装することができ、洗浄剤として創傷に直接分注される。
【0027】
別の実施形態において、本開示は、組成物を含む創傷被覆材、および創傷被覆材を製造する方法を記載する。
【0028】
実施形態において、滅菌抗菌剤、凝血促進剤組成物、洗浄剤、および/または創傷被覆材は、動脈または静脈の出血を制御するためのキット内に止血帯または圧縮デバイスを含むことができる。
【0029】
以下の詳細な説明は、添付の図に示される非限定的かつ非包括的な実施形態を参照して記載される。図では、参照番号の左端の桁は、参照番号が最初に現れる図を指す。異なる図における同じ参照番号は、類似または同一の項目を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本明細書に記載の組成物を使用する例示的な方法の流れ図である。
図2】本明細書に記載の組成物を作製する例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
概要
以下の説明は、添付の特許請求の範囲に列挙された要素を組み込むためのシステムの特定の実施形態、およびシステムの使用方法を記述する。実施形態は、法定要件を満たすために具体的に説明されている。しかしながら、説明自体は、この特許開示の範囲を限定することを意図するものではない。むしろ、本発明者らは、他の現在または将来の技術と併せて、異なる要素または本文書に記載されるものと同様の要素の組み合わせを含むように、特許請求される開示が他の方法でも具体化され得ることを企図した。
【0032】
同じ被覆材において抗菌性に加えて凝血促進性を提供するために、代替の創傷被覆材を開発することが望ましいであろう。
【0033】
創傷被覆材は、長い貯蔵寿命を有することが望ましいであろう。
【0034】
創傷被覆材は、危機(例えば、戦闘、テロ攻撃、自然災害)の際に、大量にまたは個々に容易に運べることが望ましいであろう。
【0035】
必要な場合、患者が病院または医療施設に移動するのに十分な時間を提供するために、創傷被覆材の抗菌作用が数日以上有効であることが望ましいであろう。
【0036】
改善された活性により(かつ毒性なしにまたは低減された毒性を伴って)開放創を治療するため、最適な治療用途のため、およびこれらの組成物の治療上有効な臨床レジメンを開発するために、組成物中の1つ以上の凝血促進剤を1つ以上の抗菌剤と組み合わせることが望ましいであろう。さらに、関連する様々な臨床適応症に有用な製剤が必要である。凝血促進性の被覆材は、大血管の出血を制御するための止血帯または他の圧迫性被覆材の治療効果を補完することができる。
【0037】
一般的な態様では、本開示は、1つ以上の抗菌剤および1つ以上の凝血促進剤の安定な混合物を含む創傷を治療するための組成物によって上記の目的を達成することに関する。組成物、製造の方法、治療および/または投与の方法、ならびに組成物を組み込んだ創傷被覆材が、本開示に包含され、本明細書に描写および記載される。本開示の実施形態は、資源が限られた環境における創傷に対して、単純、安全、かつ効果的な医学的処置を提供する。本開示はまた、他の関連する利点も提供する。
【0038】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「創傷」という用語は、皮膚が引き裂かれる、切断される、もしくは穿刺される損傷の種類、および/または皮膚を貫通することなく、圧縮損傷もしくはねじれ損傷によって引き起こされる損傷の種類を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、例示的な組成物を説明する文脈で使用される「約」または「およそ」という用語は、当該技術分野で許容されるおよび/または既知である妥当な許容誤差を含むと解釈されるべきである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「対象」、「患者」および「個人」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、治療される哺乳動物(例えば、ヒト)対象を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「安全かつ有効な量」という用語は、本明細書に記載されるように使用された場合に、妥当なリスクベネフィット比に見合った、過度の有害な副作用(毒性、刺激、またはアレルギー反応等)なしに所望の治療反応をもたらすのに十分な成分の量を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療応答をもたらすのに有効な、本明細書に記載の組成物の量を意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「EDTA」という用語は、特定の形態のEDTAが明示的に記載されていない場合、エチレンジアミン四酢酸および/またはEDTAの塩(例えば、EDTA二ナトリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム)を指す。
【0045】
特定の安全かつ有効な量または治療有効量は、治療される特定の状態、患者の健康状態、治療される哺乳動物の種類、治療の期間、併用療法の性質(もしあれば)、ならびに使用される特定の製剤および化合物またはその誘導体の構造等の要因によって異なる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、創傷を治癒する、治す、緩和する、軽減する、改変する、治療する、寛解させる、改善する、または影響を与える目的で、活発に出血しているまたはしていない可能性のある創傷を有する患者に対する治療薬の適用または投与として定義される。
【0047】
本明細書に記載されているものと類似または同等の組成物および方法が、本開示の実施または試験に使用されてもよい。好適な組成物および方法を以下に記載する。
【0048】
本開示は、医療用途において抗菌剤および凝血促進剤として作用することを意図した成分の組み合わせを表す組成物に基づく。本開示の組成物は、様々な成分の安定な溶液を含み、長期的な望ましくない影響なしに、組成物中の全ての成分がヒトまたは動物の体に配置された場合に適合するように設計される。本開示の組成物中の個々の成分は、少なくとも低レベルでヒトまたは動物の体に適用するのに安全であることが知られている。
【0049】
本開示は、凝血および止血;抗菌、抗細菌、抗真菌、抗炎症もしくは抗ウイルス作用;抗バイオフィルムもしくは免疫調節作用;またはこれらの特性の組み合わせを提供する個々の成分の組み合わせを表す組成物に関する。
【0050】
本開示の組成物は、抗菌剤(アルコール、過酸化物または過酸化物発生剤、およびキレート剤を含む)および凝血促進剤(実施形態において、キトサン、ポリP、コラーゲン、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、および/またはカオリン)を含み、残りは水で構成されている。本開示の組成物の独特の設計特徴および個々の成分の組み合わせから得られる相乗効果は、単一成分による治療の落とし穴を回避する一連の効果を提供する。例えば、本明細書に記載の分子サイズおよびコンフォメーション(すなわち、キトサンのアセチル化パーセント)のキトサンおよびポリリン酸塩は、凝血促進剤および抗菌剤の両方として作用することができる。
【0051】
実施形態において、組成物自体に含まれる凝血促進剤が抗菌性を有し、それにより、組成物は、凝血促進剤を含まない、アルコール、過酸化物または過酸化物発生剤、およびキレート剤を含む抗菌剤とは異なる抗菌作用を有する。
【0052】
抗菌剤は、水(HO)、非毒性キレート剤、例えば、EDTA、EDTA二ナトリウム、EDTAカルシウム二ナトリウム、EDTAマグネシウム、EDTAカリウム、EDTAガリウム等、またはクエン酸ナトリウム;EDTAの酸、塩、誘導体、もしくは他の形態またはクエン酸ナトリウム;短鎖一価アルコール(例えば、COHの分子式およびCOの実験式を有するエタノール)、および過酸化水素(H)等の小分子酸化剤を含み得る。一例において、抗菌剤は、水、EDTA、エタノール、および過酸化水素を含み得る。
【0053】
本開示の抗菌剤は、低分子量アルコール等のアルコールを含む。アルコールは、約1%~約95%重量対重量(「w/w」)、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wの、毒性のないまたは毒性の低い治療濃度で組成物中に存在し得る。実施形態において、アルコールは、95%、90%、85%、80%、70%、60%、または50%w/w未満の濃度で、かつ1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、または30%w/wを超える濃度で組成物中に存在し得る。本開示内で企図されるアルコールの例として、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、フェノールおよびフェノール誘導体、フラノールおよびフラノール誘導体、ジオール、トリオール、ポリオール(鎖、環および芳香族を含む)等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、抗菌剤は、組成物の約50%重量対重量でエタノールを含む。
【0054】
本開示の抗菌剤はまた、過酸化物または過酸化物発生剤も含む。実施形態において、それは約0.025%~約20%w/w、約0.05%~約10%w/w、または約1.5%w/wの、毒性のないまたは毒性の低い治療濃度で組成物中に存在し得る。実施形態において、過酸化物または過酸化物発生剤は、20%、15%、10%、5%、2%、または1%w/w未満の濃度で、かつ0.025%、0.05%、0.10%、または0.20%w/wを超える濃度で組成物中に存在し得る。本開示内で企図される過酸化物または過酸化物発生剤の例として、過酸化水素(H)、過酸化カルバミド(すなわち、過酸化尿素)、ペルオキシ酢酸等のペルオキシ酸、ペルオキシ安息香酸、酢酸無水物等が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、遊離ヒドロキシルまたはフリーラジカル発生物質が存在してもよいか、または過酸化水素の代わりになることができる。本開示の範囲内で企図されるフリーラジカル発生物質の例として、過酸化アセトン、過酸化t-ブチル、ジ-t-ブチルジアジン((t-Bu))等が挙げられるが、これらに限定されない。他のフリーラジカル発生材料は、例えば、UV光への曝露時にフリーラジカルを発生するものを含む。一実施形態において、抗菌剤は、組成物の約1.5%w/wのHを含む。組成物が適用されるときの過酸化物発生剤からの酸素の緩徐な放出は、組織の酸素化、上皮化、血行再建を潜在的に増加させ、嫌気性細菌によるコロニー形成または感染を潜在的に防止する。
【0055】
実施形態において、組成物中の過酸化物または過酸化物発生剤は、過酸化水素(H)を含む。実施形態において、Hは、約0.05%~約40%w/wの、毒性のないまたは毒性の低い治療濃度で存在し得る。他の実施形態において、Hは、約0.05%~約10%w/wの濃度で存在する。代替の実施形態において、Hは、約0.25%w/wの濃度で存在する。実施形態において、Hは、10%、9%、8%、6%、4%、3%、2%、1%、0.50%、0.25%、または0.20%w/w未満の濃度で、および0.025%、0.05%、0.10%、0.20%、または0.25%w/wを超える濃度で組成物中に存在し得る。
【0056】
本開示の抗菌剤は、キレート剤(キレーター)である1つ以上の化合物をさらに含む。それらは、溶液のpHが特定の用途のための所望のレベルに調整されたときに生じる形態で、本開示の組成物中に存在する。本開示内で企図されるキレート剤の例として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸塩、およびそれらの塩、サリチル酸またはサリチル酸エステル等の他の置換化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、抗菌剤は、約5mg/mL~約50mg/mL、または約10mg/mLの、毒性のないまたは毒性の低い治療濃度でEDTAを含む。
【0057】
いずれか特定の理論によって制限されることを望まないが、キレーターは、主として、多種多様な無機または有機イオンに対して強い結合を形成するように作用し、それによってイオンを様々な種類の代謝プロセスでの使用には比較的利用できないようにすることが知られている。具体的には、それによって、イオンは、代謝作用の特定のプロセスを支持するまたは引き起こすように特定のタンパク質および/または酵素システムによって結合または使用されなくなる。様々なイオンに結合することが知られている例示的なタンパク質は、亜鉛(Zn+2)等の二価カチオンに結合する金属メタロプロテイナーゼ(MMP)である。EDTA等の薬剤のキレート効果は、MMPからZn+2イオン(その機能に必要である)を奪うことによってMMPの活性を抑制し得る。したがって、本開示の組成物中のキレート剤(EDTA等)は、MMPによって引き起こされる組織破壊を制御、抑制、または回避する際に助けとなり得る。メタロカルバマーゼ(Metallocarbamase)も、亜鉛等の二価のカチオンを必要とし、EDTAまたは同様のキレーターの別の標的となり得る。他のプロテアーゼもまた企図される。EDTAは、特に急性期の外傷性または熱傷性の損傷において、反応性にわたってサイトカインおよびマトリックスメタロプロテイナーゼを調節する。
【0058】
ジンクフィンガータンパク質は、一般に、DNAに結合する保護タンパク質として見出される。それらは、一般に、ループごとに1つの亜鉛イオンに結合する保存されたHis-Cysモチーフを有する1つ以上の短いループを含む。それらは、DNAヘリックスに沿って間隔を開けて挿入された1つ以上のジンクフィンガーによって所定の位置に保持されるタンパク質「グローブ」でDNA分子を包み込むことによりDNA保護機能を提供する。一般に、ジンクフィンガーの形成および安定性は、遊離Zn+2に結合してその量を制御することによりEDTA等のキレーターによって崩壊され得、したがって、組成物が、他の薬剤からのDNA保護の程度または他の薬剤への曝露の程度を変更する可能性を有する手段を提供する。
【0059】
さらに、バイオフィルムの大部分を形成する菌体外多糖マトリックスの形成および/または維持のために、二価イオン、特にMg+2およびCa+2イオンが存在しなければならないことが分かっている。さらに、EDTAは、既存のバイオフィルムを崩壊させるかまたは完全に分解し、少なくともいくつかの医学的に重要なバイオフィルム形成生物の場合にそれらの形成を遅延または防止する力を溶液に持たせることが知られている。したがって、本開示の組成物に、特に他の有効成分とともに、EDTAまたは他のキレーターを含めることは、バイオフィルムの予防および根絶において相乗的に有用であることを示すのは妥当である。
【0060】
一実施形態において、カルシウムが、電荷制御によってキトサンの製剤またはキトサンの表面に組み込まれることが企図される。一例において、Ca-EDTA複合体をキトサンまたは修飾キトサンに結合させて、カルシウムまたはより強い凝固反応が必要な領域にキレート剤を送達することができる。
【0061】
一実施形態において、キトサンのカチオン性は、ステロイド成分と相互作用して、腸領域における発芽の程度に影響を与えることが企図される。
【0062】
実施形態において、EDTAは、キレート剤、またはEDTAの塩(例えば、二ナトリウム塩、カルシウム二ナトリウム塩、二カリウム塩、四ナトリウム塩)として使用することができる。これら全ての場合および他の場合において、pHが調整されると、EDTAが緩衝液として作用し、本開示の組成物中のEDTAの実際のイオン組成が調整される。さらに、EDTAは、他の既知の場合のように、過酸化物を二価触媒分解から保護することによって、本開示の組成物において保護機能を提供する。
【0063】
EDTAは、例えば、エタノール、過酸化物、または過酸化水素(H)等の過酸化物発生剤の溶液中では比較的低い溶解度を有するが、強力な共溶媒として作用する。一例において、50%w/wエタノール以上の溶液で、生理学的pHに近いがHを欠く場合、EDTA二ナトリウムの溶解度は10mg/mL未満に制限される。別の例では、Hが存在する場合、1~2%の低レベルでも、10mg/mLのEDTA二ナトリウムと少なくとも50~60%w/wのエタノールの安定な溶液が容易に調製され、0°Cの低い温度で安定である(すなわち、沈殿または他の変化が見られない)。さらに、50%w/wエタノールの溶液でも、6%Hの存在下でEDTA二ナトリウムは、27°Cと0°Cの両方で40mg/mLの高濃度で溶解性を維持した。溶液中の水の総量を一定に保持した場合にこの効果が起こるという事実からも明らかであるように、この予想外の効果は、Hとともに導入された追加の水の存在に起因するものではない。
【0064】
したがって、本開示の組成物における個々の成分の独自の組み合わせは、比較的低濃度のエタノール、低濃度のEDTA、および他の手段では利用できない過酸化水素レベルを提供する。本発明の組成物は予想外の安定性を有するが、抗菌剤として機能的に強力であり、多目的であり得る。安定性の研究では、比較的低いエタノール濃度および低いEDTA濃度を有する4% H溶液が、過酸化物およびアルコールの有効性を本質的に全て保持しながら、14ヶ月を超える貯蔵寿命(室温)を示している。過酸化水素溶液は、数ヶ月または数年の有効寿命を有し得る。Hによって提供される沈殿に対するEDTAの予期しない安定性、およびEDTAによって提供される分解に対する過酸化水素の安定性は、無生物システムでは通常見られない相乗効果の例であり、共生関係に似ている。追加のキレーターを使用して、本開示の組成を特定の用途に適合させることができる。これらの例は、クエン酸塩、ピリジン誘導体、様々なジアミンまたは置換ジアミン等を含み得るが、これらに限定されない。
【0065】
安定性に加えて、本開示の組成物中の比較的低濃度のアルコール(エタノール等)は、過酸化物または過酸化物発生剤(H等)とキレート剤(EDTA等)の組み合わせによって付与される固有の特性のために、本質的に純粋なその殺傷力を送達することができる。これらの濃度は治療効果があり、毒性が低いかまったくなく、血流へのアルコール吸収を減少させ、開放創を傷つけることを回避する。例えば、バイオフィルムの外側(遠位)表面近くの過酸化物反応剤、例えば、細菌カタラーゼまたはスーパーオキシドジスムターゼの存在のために、Hによるバイオフィルムへの浸透が低下する可能性があることを示唆するいくつかの証拠が存在する。しかしながら、キレート剤(EDTA等)によるペルオキシダーゼの不活性化により、Hはバイオフィルムに深く浸透し、微生物を根絶することができる。本開示の組成物中のエタノールの存在は、バイオフィルム中の脂質、リポ多糖、およびタンパク質のバリアを崩壊させることによって、Hの浸透を増加させるのに役立ち得る。いくつかの医学的状態、例えばCandida albicanにおいて、エタノールの存在は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)酵素の存在および作用によってバイオフィルムの厚さを大幅に減少させることができる。さらに、エタノールは酵素とその補因子であるNADHの両方と比べて高濃度で存在する。特にアルコールデヒドロゲナーゼにおける機構的ステップの1つが遊離Zn+2イオンを利用するため、エタノールの消費は厳しく制限される。したがって、組成物の複合作用において、EDTAが亜鉛を結合させると同時にADHの限られたNADH補因子でバイオフィルム構造自体を攻撃し、総エタノールのごく一部のみが消費され、残りの大部分は急速にバイオフィルムに浸透するように作用してその殺傷力を送達する。さらに低濃度のエタノールは、殺菌活性、殺ウイルス活性、および殺真菌活性に加えて、脂質およびタンパク質の創傷破片を通過することを可能にする。
【0066】
上記の抗菌剤に加えて、組成物は凝血促進剤を含む。
【0067】
凝血促進剤は、局所止血剤の一種である。凝血促進剤は、凝固カスケードを活性化することによって、または出血している創傷に高濃度の凝血促進因子を送達することによって機能する。一例において、適用される場合、本明細書に記載の凝血促進剤は、血管止血を促進する。
【0068】
一例において、凝血促進剤は、治療レベルのキトサンを含む。特定の分子量(後述)では、キトサンは凝血促進性を有し、外傷性または術後の出血を防ぐために創傷被覆材における血液凝固剤として使用されてきた。キトサンは、キチンの部分的な脱アセチル化に由来する天然のポリカチオン性線状多糖類であり、2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-デオキシ-2-[(メトキシカルボニル)アミノ]-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1->4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノースで化学的に構成される。キトサンは、主として、正に帯電したキトサンが負に帯電した赤血球および血小板を引き付け、止血時間に加えて血餅形成を短縮するため、血液凝固をもたらす。キトサンのカチオン性は、正に帯電したアミノ基によって誘導される。これらの基は、フィブリノーゲンの吸着、血小板の活性化、凝固因子の放出を誘発し、次いで外因性凝固経路を誘発する。
【0069】
本明細書に記載の組成物の成分である過酸化水素は、高分子キトサン(一般に水溶性ではない)を、非凝血特性または抗凝血特性を有するより低分子量のキトサン(一般に高水溶性)に酸化する。過酸化水素がキトサンをオリゴ糖に分解すると、キトサンの凝血促進活性が低下し得る。したがって、キトサンは、凝血促進性であるために抗菌剤に含まれることが望ましいが、過酸化水素の存在下でヘパリンに似た抗凝血剤に酸化されるため、以前にはキトサンは含まれていなかった。
【0070】
この問題は、組成物中のEDTAの存在によって改善されると考えられる。EDTAは、過酸化水素のヒドロキシルラジカルへの変換を遅らせることにより、キトサンの酸化を中和する。実施形態において、ヒドロキシルラジカルは、キトサンを抗凝血剤に酸化し得る。EDTAは、過酸化水素からヒドロキシルラジカルへの変換を軽減し、これにより、キトサンがキトオリゴ糖に変換される可能性がある。
【0071】
本明細書に記載の組成物は、新しい創傷における出血を止め、広範囲の抗菌剤耐性(AMR)病原体を予防または根絶することができる。
【0072】
キトサンは、その凝血促進性に加えて、細菌、真菌、および一部のウイルスを抑制または殺傷する。戦場用のキトサンガーゼ被覆材は、この目的のために米軍によって使用されている。キトサンは、創傷に対するその組織治癒効果でも知られている。組成物にキトサンを含めることは、上皮細胞による創傷閉鎖を促進するための亜急性/中期および慢性/治癒段階で役立つ。
【0073】
実施形態において、キトサンはまた、キトサンと反応する他の試薬の添加の有無にかかわらず、組成物において他の機能を有する。追加の企図される機能および/または活性は、胆汁酸の存在下での細菌胞子反応、骨組織足場および骨治癒(例えば、ポリビニルアルコールとの組み合わせ)、創傷感染後の慢性骨髄炎の治療、ならびに癌および糖尿病性潰瘍の局所治療を含むが、これらに限定されない。
【0074】
キトサンは、エビおよび他の甲殻類のキチン殻をアルカリ性物質で処理することによって作製することができる。しかしながら、他の方法(合成等)によって他の供給源から作製されたキトサンを使用することもできる。キトサンの分子サイズは様々であり得る。実施形態において、キトサンの分子サイズは、それが由来するキチンの供給源(例えば、カニの殻、エビ、真菌等)に依存し得る。平均して、商業的に生産されるキトサンの分子量は、3,800~20,000ダルトン(Da)であり得る。実施形態において、本明細書において凝血促進剤として使用されると記載されるキトサンの分子量は、約310キロダルトン(kDa)~375kDa、または約700kDa~約1000kDa、または約50kDa~約500kDaであり得る。実施形態において、本明細書において凝血促進剤として使用されると記載されるキトサンの分子量は、1000kDa、750kDa、または500kDa未満であり、かつ50kDa、310kDa、400kDa、または500kDaを超える。水溶液中のキトサンの物理的特性は、脱アセチル化の程度およびポリマー鎖におけるアセチル基の分布に依存する。
【0075】
組成物は、従来の抗菌剤に取って代わることができると考えられ、例えば、一部の病院環境において、術前部位の日常的な洗浄および拭き取りのためのグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の広範な使用が、メチシリン(MRSA)およびCHGの両方に対する耐性黄色ブドウ球菌の発生率の増加をもたらしたため、このことは有利である。
【0076】
例において、少なくとも(1)凝血促進剤(例えば、キトサン)がグラム陽性菌に対して有効であり得るため、および/または(2)組成物が抗菌作用の4つの異なる化学的機序を有する少なくとも4つの抗菌剤(例えば、過酸化水素、エタノール、凝血促進剤(例えば、キトサン)、EDTA)を有するため、組成物は、極度の薬剤耐性(XDR)病原体および/または多剤耐性(MDR)病原体に対する抗菌剤として使用され得る。一例において、組成物は、慢性骨髄炎を治療するために使用され得る。MDR細菌性または真菌性病原体を伴う慢性骨髄炎は、戦闘、紛争、災害、および外傷の犠牲者の四肢切断につながる可能性がある。感染した骨への組成物の局所または注射は、感染を停止し、治癒を促進し得る。
【0077】
実施形態において、キトサンは、化学的に修飾され得るか、または複合体もしくは形態(ヒドロゲル、繊維、ゲル、液体、またはナノ粒子を含むがこれらに限定されない)に組み込まれ得、異なる用途のための追加の機能特性をもたらす。キトサンは、創傷治療用の被覆材の材料としての機能を強化するために、他の高分子ポリマー、または酢酸セルロース、リゾチーム、ベントナイト、およびシルクフィブロイン等の生体材料とブレンドされてきた。キトサンのヒドロキシル基およびアミン基は、穏やかな反応条件下で官能化されて、変更された、望ましい特性を有する修飾キトサン誘導体を調製することができる。
【0078】
一例において、ポリビニルアルコールおよびキトサンがヒドロゲルを形成し得る。例において、ポリビニルアルコール(またはポリビニルアルコールの塩)およびポリ乳酸は、両方ともキトサンに結合し得る。別の例では、ガンマ線を使用して調製された第四級アンモニウムキトサン/ポリビニルアルコール/ポリエチレンオキシドヒドロゲルが、望ましい膨潤能力、水分蒸発速度、ならびに機械的特性、およびE.coliおよびS.aureusに対する高い抗菌力を示し、したがって、そのようなヒドロゲルは、創傷被覆材における治癒を促進することができると考えられる。
【0079】
一例において、キトサン繊維は、抗菌性および凝血促進性を備えたガーゼ被覆材に組み込むことができる。
【0080】
実施形態において、キトサンは、(1)天然ポリマー(例えば、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸塩、絹フィブロイン)、および/または(2)合成ポリマー(例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA))、および/または(3)バイオセラミック(例えば、リン酸カルシウム(CPC)、ポリリン酸カルシウム(CPP)、ヒドロキシアパタイト(HA)と複合体を形成することができる。Li.これらの複合体は、組織再生および/または関節軟骨欠損修復に使用することができる。Li.一例において、キトサンとポリリン酸カルシウムの複合体が、本明細書に記載の複合体に使用される。CPPは生分解性であり、最終的には修復された組織が置き代わることができる。Id.CPPはカルシウムとリン酸塩に分解するが、これらは生物にとって不可欠であり、炎症を引き起こさない。Id.キトサン/CPP足場は隣接する組織と統合すると考えられる。Id.
【0081】
一実施形態において、キトサンをリン酸基とブレンドして、凝血促進剤として作用し得るリン酸化キトサンコンジュゲートを形成することができる。Wangに記載されているように、キトサンは、ポリPを模倣するようにリン酸基に繋ぐことができる。Wang,Y.,et al.Hemostatic Ability of Chitosan-Phosphate Inspired by Coagulation Mechanisms of Platelet Polyphosphates.Macromolecular Bioscience.2018.doi:10.1002/mabi.201700378。
【0082】
実施形態において、組成物は、低分子量水溶性キトサンの形態のキトサン、またはキトサン結合ポリ乳酸を含む。ポリPの構造は、高エネルギーのリン酸無水物結合によって結合されたオルトリン酸塩の線状ポリマーからなる。一般に、ポリPのポリマー長は、数個のリン酸塩から数千個のリン酸塩単位(約3個のポリリン酸塩単位の長さ~約6000個のリン酸塩単位の長さ、または約5個のポリリン酸塩単位の長さ~約4000個のリン酸塩単位の長さ、または約20個のポリリン酸塩単位の長さ~約3,000リン酸塩単位の長さ)であり得る。
【0083】
一実施形態において、本開示の組成物に使用される凝血促進剤は、治療レベルの微生物の長鎖ポリリン酸塩(「長鎖ポリP」)を含み得る。
【0084】
ポリpの分子量は、概して、長さが長くなるにつれて増加する。血液凝固におけるポリPの役割は、ポリマーの長さによって異なる。
【0085】
長鎖ポリPは、100未満のリン酸塩から数千のリン酸塩単位長さの範囲である。微生物の長鎖ポリP(100未満のリン酸塩から数千のリン酸塩単位の長さ)は、凝固カスケードの4つのポイントで作用する(血液凝固の接触経路を開始する;第V因子活性化を加速し、TFPI機能を無効にする;フィブリン重合を強化する;トロンビンによる第XI因子の逆活性化を加速する)。
【0086】
別の実施形態において、血小板サイズのポリP(約60~100リン酸塩単位の長さ)を凝血促進剤として使用することができる。血小板由来のポリP(および同じサイズ、すなわち60~100マー(mer)の合成ポリP)は、接触経路を介して凝固を引き起こし得るが、長鎖ポリPほど強力ではない。血小板サイズのポリPは、凝固カスケードの3つのポイントで最も強力に作用する:TFPI機能を無効にする(かつ、第V因子の活性化を加速するために必要な最小サイズと重複する);フィブリン重合を強化するために必要な最小サイズと重複する;トロンビンによる第XI因子の逆活性化を加速する。
【0087】
ポリPは、オルトリン酸ナトリウムを摂氏数百度に加熱してから急速に冷却することによって大量に化学合成することができる。水溶性の高分子量ポリPは、LiCl溶液を使用した示差的可溶化により、非常に高分子量の「不溶性」ポリPから単離することができる。他のサイズ範囲のポリPは、長鎖ポリPの部分的なアルカリまたは酸加水分解、エンドポリホスファターゼによる酵素分解、または様々な塩条件下での示差的アセトン沈殿によって調製することができる。
【0088】
一実施形態において、本開示に記載の組成物に使用されるポリPは、血液凝固の接触経路の天然の病態生理学的活性化因子である長鎖ポリリン酸塩(「長鎖ポリP」)である。
【0089】
キトサンについて上で説明したのと同様のプロセスで、長鎖ポリPは、その凝固特性を不活性化し得る過酸化水素によって酸化され得る。本明細書に記載の組成物中のEDTAは、ヒドロキシルラジカルの生成を防ぎ、長鎖ポリPの凝固性を維持し、抗菌剤を含む本明細書に記載の組成物において効果的な凝血促進剤であることを可能にし得る。ポリP自体も抗菌性を有し得る。
【0090】
一実施形態において、凝血促進剤はカオリンを含む。カオリンは、血小板の表面活性化およびポリPの放出によって凝血促進剤として作用する。カオリンは、スポンジ、ゲル、および/または布タイプの創傷被覆材に組み込むことができる。
【0091】
一実施形態において、凝血促進剤は、治療レベルのコラーゲンを含む。コラーゲンは、スポンジ、ゲル、および/または布タイプの創傷被覆材に組み込むことができる。追加的または代替的に、コラーゲン-ポリリン酸カルシウムは、創傷の治癒の助けとなり得る。一実施形態において、EDTA二ナトリウムではなくカルシウムEDTAが、コラーゲンを含む組成物に使用される。一実施形態において、ホスト-ゲスト複合粒子は、創傷治癒率を高めることができるアモルファスコラーゲン(ホスト)およびポリリン酸塩(ゲスト)から調製することができる。
【0092】
一実施形態において、凝血促進剤は、ヒアルロナンまたはヒアルロン酸を含む。ヒアルロナンおよびヒアルロン酸の凝血促進性は、ヒアルロン酸の分子量によって異なり得る。実施形態において、高分子量ヒアルロン酸またはヒアルロナンは、組成物の成分であり得る。高分子量のヒアルロン酸またはヒアルロナンは、500kDaを超えるまたは800kDaを超える分子量を有し得る。ヒアルロナンおよびヒアルロン酸は創傷治癒を促進する。ヒアルロン酸は、多血小板血漿(PRP)によって放出される特定の成長因子(TGF-β1、PDGF等)のレベルを上昇させ、特定の組織の治癒効果を高めることができる。Iio,K.,et al.Hyaluronic Acid Induces the Release of Growth Factors from Platelet-Rich Plasma. Asia-Pacific Journal of Sports Medicine,Arthroscopy,Rehabilitation and Technology.2016.doi:10.1016/j.asmart.2016.01.001.
【0093】
実施形態において、単一の凝血促進剤を組成物に使用することができる。他の実施形態において、本明細書に記載の凝血促進剤の2つ以上の組み合わせを組成物に使用してもよい。機構が適合性または相乗的のいずれかである場合、2つ以上の凝血促進剤の組み合わせを使用できると考えられる。2つ以上の凝血促進剤は、組成物の個々の成分であり得るか、または組成物に加えられる前または後に複合体を形成することができる。
【0094】
一例において、キトサンとポリPの両方が組成物に使用され得る。一例において、可溶性および不溶性の両方のキトサン-ポリPが凝血促進性を有する。一実施形態において、キトサンおよびポリPは、凝血促進剤の1つをゲルビーズまたはリポソーム粒子中に封入することによって組成物に使用することができると考えられる。
【0095】
実施形態において、キトサン、コラーゲン、およびヒアルロン酸は、リン酸カルシウムのインサイチュ沈殿のためのマトリックスとして使用することができる生体適合性の多孔質構造を形成することができる。ジアルデヒドデンプンによって架橋されたキトサン/コラーゲン/ヒアルロン酸スポンジにおいてリン酸カルシウム沈殿によって調製された複合材料は、組織工学および再生に使用することができる。Id.例えば、骨および軟骨の充填剤としての使用、関節または皮膚の再生、敗血症性関節炎および骨髄炎の治療、ならびに例えば骨髄炎の歯骨再建のための、被覆材、ゲル、洗浄剤、足場として、これらの複合材料が本明細書に記載の組成物に使用され得ることが企図される。
【0096】
実施形態において、特定のRNAホモポリマー(例えば、ポリGおよびポリI)も、約10~約20ug/mL、約8~約12ug/mL、または約5~約15ug/mLの範囲の濃度で凝血促進剤として使用され得る。
【0097】
追加的に、実施形態において、本明細書に記載の凝血促進剤の他の組み合わせが、適合または相乗効果を有する組成物に使用され得る。Smith,S.,et al.Ability of Polyphosphate and Nucleic Acids to Trigger Blood Clotting:Some Observations and Caveats.Frontiers in Medicine.2018.doi:10.3389/fmed.2018.00107.
【0098】
実施形態において、凝血促進剤は、約1%~約95%w/w、約20%~約60%w/w、または約50%w/wの非毒性濃度で組成物中に存在し得る。実施形態において、アルコールは、95%、90%、85%、80%、70%、60%、または50%w/w未満の濃度で、かつ1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、または30%w/wを超える濃度で組成物中に存在し得る。凝血促進剤の濃度は、組成物が使用されている特定の用途に応じて変動し得る。
【0099】
抗菌剤および凝血促進剤以外の追加の成分が、本開示の組成物に含まれてもよい。
【0100】
特定の用途のために組成物のpHを調整する必要があるかもしれない。例えば、組成物が製造時に酸性であり得る用途では、塩基、排他的にではないが典型的には、水酸化ナトリウム溶液を加えて、pHを所望のpHまたは生理学的pHに調整することができる。代替的に、組成物が製造時に塩基性である場合、酸性剤、排他的にではないが典型的には、塩酸、次亜塩素酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、または酢酸のいずれかを加えて、pHを所望のpHまたは生理的pHに戻すことができる。実施形態において、組成物がいくつかの非中性または非生理学的pHにあることが望ましい場合があり、その場合、追加の調整が行われるであろう。酢酸、酢酸塩、クエン酸、クエン酸塩、およびリン酸は、それ自体が抗菌活性を有し、したがって、組成物の実施形態において、pH調整および抗菌活性の両方の機能を果たす。また、クエン酸塩は抗菌活性を有する。実施形態において、本明細書に記載の組成物中の酸性剤(例えば、次亜塩素酸)は、過酸化水素をより活性に保つことができると考えられる。
【0101】
したがって、実施形態において、本明細書に記載の組成物は、4つの抗菌成分(すなわち、EDTA、低分子量アルコール、過酸化物または過酸化物発生剤、ならびに酢酸、酢酸塩、クエン酸、クエン酸塩、またはリン酸のうちの少なくとも1つ)を含み得る。実施形態において、凝血促進剤は、組成物の第5の抗菌成分である。本明細書に記載の2つ以上の凝血促進剤が組成物に使用される実施形態において、追加の凝血促進剤は抗菌性を有することができる。
【0102】
増粘剤(増粘剤またはゲル化剤等)もまた、組成物に含めることが望ましい場合がある。増粘剤の例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムヒドロキシアルキルセルロース、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の増粘剤が企図されており、それらの中には、ジメチコンおよびシリコーンゲル等のシリコーンベースの製品が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、約0.25%~約2%w/wの濃度のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。
【0103】
組成物はまた、戦闘創傷、外傷、熱傷または他の治癒領域における他の潜在的に有害な成分が不活性化され、組織損傷および全身毒性が軽減される手段を提供し得る。これらの成分は、宿主MMP、TNF-α、細菌性β-ラクタマーゼ(多耐性拡張スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)を含む)、カルバペネマーゼ、またはメタロカルバマーゼのうちの1つ以上を含む。成分は、一般に、比較的複雑なタンパク質ベースの化合物である。しかしながら、本開示の組成物は、一連の生化学反応を提供し、そのうちの少なくとも1つ以上は、有害なプロセスを中断するおよび/または弱めるのに効果的である。サイトカイン、ケモカイン、および他の炎症性分子の宿主の過剰発現から見られる有害作用の減少によって、治癒率および/または対象の全般的な幸福が改善されるであろう。微生物の酵素的不活性化を防ぎ、細菌および真菌の毒素を低下させることにより、全身性抗菌剤の治療活性を維持することも、宿主の生存を増強するであろう。
【0104】
組成物の残りは水で構成される。
【0105】
実施形態において、抗菌剤の成分のうちの1つ以上および凝血促進剤の成分のうちの1つ以上は、一緒に共有結合し得るか、または互いに分離し得る。一例において、キトサン、コラーゲンおよびヒアルロン酸が共有結合し得る。
【0106】
組成(成分の強度等)は、個人の特定のニーズに合わせて調整することができる。例えば、組成物は、損傷の性質、創傷の深さ、創傷の位置、損傷後の経過時間、重感染等の要因に依存し得る。
【0107】
本開示の組成物は、特定の用途において溶液形態であり得る。他の用途では、本開示の組成物は、ゲル、クリーム、軟膏、液滴、スプレー、スラリー等の他の形態であり得る。本開示の組成物は、特定の適用の手段またはいずれか特定の状態(液体、ゲル、スラリー等)に限定されない。例において、組成物は、創傷被覆材に含まれてもよいか、またはヒドロゲルもしくは液体の形態であってもよい。適用の手段および/または組成物の状態は、創傷のタイプ、創傷の位置、創傷の程度、および状況に依存し得る。一例において、柔軟なビニール袋に溶液中の組成物を充填して、超急性または急性の創傷を洗い流すことができる。望ましい場合(例えば、戦場からの避難、資源が限られた災害地域)、被覆材は長期間使用される。別のタイプの被覆材は、創傷クリニックまたは病院の急性または亜急性のケアに使用することができる。別のタイプの被覆材は、慢性/再生段階の創傷に使用することができる(例えば、外来診療所、慢性ケア施設、リハビリ施設、在宅ケアで処方するため)。創傷の状態または状況に応じて、被覆材は、不浸透性、蒸気および/もしくは液体に対して半透過性、または液体および/もしくは蒸気に対して透過性であり得る。一例において、患者が長距離輸送されている場合、水和した創傷環境を維持する被覆材を使用することができる。
【0108】
実施形態において、キトサンは、他の分子と結合してキトサンヒドロゲルを形成することができ、これを組成物に組み込んで、糖尿病性皮膚潰瘍感染症(すなわち脚の)を予防または治療することができる。微小血管疾患および末梢神経障害は、糖尿病性潰瘍で頻繁に見られる要素である。
【0109】
一例において、本開示の組成物は、医療用被覆材と併せて適用することができる。一例において、被覆材の材料は、必要に応じて医学的領域に組成物を放出する非毒性材料であり得る。適切な被覆材の材料は、損傷の性質および患者の全体的な状態に依存する。
【0110】
一実施形態において、組成物を創傷被覆材に適用することができ、次に被覆材を滅菌包装に入れることができる。結果として得られるパッケージは、民間人、軍隊、医療専門家等に配布され得る。
【0111】
一実施形態において、組成物を含むパッケージは、貼付されたバーコードを含み得る。バーコードは、パッケージの製造および内容に関するデータを表す場合がある。創傷被覆材の適用時に、バーコードは、スマートフォン、ハンドヘルドスキャナー等によってスキャンされ、バーコードに関連付けられた創傷被覆材の管理に関するデータを取り込むことができる。レポートは、収集されたデータから実行でき、バーコードに関連付けられて、組成物のバッチの追跡等、様々な目的で実行できる。
【0112】
本明細書の組成物を含む創傷被覆材の特定の濃度、成分、および送達方法は、創傷段階、感染の程度、血管のサイズ等に依存し得る。創傷は、(1)急性度(例えば、超急性(損傷直後)、急性、亜急性、治癒、および慢性)、(2)感染の程度/微生物負荷(感染/感染と推定される;中程度のバイオフィルムおよび微生物感染;少数の微生物コロニー形成等)、(3)治癒の可能性(きれいな損傷、術後、低い汚染リスク等)、(4)血管の種類、(5)喪失量、(6)曝露面積等の評価される創傷の特徴に応じて、異なる様式で分類され得る。一例において、本明細書に記載の組成物を含む被覆材は、包帯ラップまたは血圧カフタイプの圧迫とともに、超急性または急性の戦場での創傷に有効であり得ると考えられる。大血管の出血がある場合は、止血帯(例えば、無風、弾性、基本的なチューブ)、直接圧迫、および/または手術が最も適切である。
【0113】
一例において、創傷が小血管の出血ならびに環境粒子および微生物汚染を伴う戦闘の爆風による創傷である場合、抗凝血効果を回避するための低濃度範囲のEDTA、灌注の疼痛を軽減するための低濃度範囲のエタノール、および過度の吸収を回避するための低濃度範囲の過酸化水を含む組成物の滅菌溶液で創傷を灌注することができるが、それでもなお、血小板凝集および血液凝固による止血効果が追加される。
【0114】
最近の外科的デブリードメント(創傷清拭)を行わない限り、創傷治癒の後期は、通常、組成物の凝血促進活性を必要としないであろう。しかしながら、本明細書に記載の凝血促進剤の一方または両方は、有益な抗菌性または創傷治癒属性のために維持することができる。追加的に、本開示の組成物は、キトサン、コラーゲン、ポリリン酸塩、ヒアルロナンおよび/もしくはヒアルロン酸、ならびに/または間葉系幹細胞もしくは間質基質のような他のものを含む成分によって組織再生を促進することができる。組成物は、創傷治癒を促進する、および/または組織を保存することによって組織再生に寄与し得る。例えば、キトサンおよびコラーゲンポリマーの足場、ならびにリン酸カルシウムセラミックおよび他のバイオセラミックを使用して、組織の再生を支持することができる。Li.キトサンの生物活性は、キトサン足場が使用される場合(例えば、関節軟骨欠損修復のために)、炎症を軽減するのに役立つ。Id.キトサンはヒトの皮膚に対して生体適合性があると考えられる。Id.
【0115】
その抗菌性を超えて、組成物中の過酸化水素は止血剤として作用し、創傷の治癒を促進することができる。過酸化水素は、(1)損傷した組織を除去する創傷治癒の破壊プロセスと(2)新しい組織形成につながる創傷治癒の修復プロセスのバランスをとるのに役立ち得る。過酸化水素は、酸化ストレスを促進し、炎症を解消することができるため、双方向の調節因子になる。過酸化水素は、少なくとも内皮細胞の収縮性およびバリア機能を調節し、潜在的な細胞表面組織因子および血小板凝集を活性化し、血小板由来成長因子の活性化を刺激することによって、止血を促進することができる。過酸化水素の活性は、組成物中のEDTAがその二価カチオンをキレート化することによってカタラーゼの活性を低下させる可能性があるため、組成物中で延長され得る。実施形態において、組成物中の過酸化水素は、シグナル伝達剤として機能し、免疫調節効果を有する。
【0116】
本開示の組成物は、患者の全体的な状態および必要な医療処置に応じて、ある期間にわたって単一の治療として、または複数の治療として投与され得る。
【0117】
本開示の組成物は、局所適用を含むがこれに限定されない多くの手段によって投与することができる。
【0118】
本開示の組成物は、創傷部位(創傷領域の周囲の皮膚を含む)、手術部位、注射部位、熱傷部位、化学熱傷部位(例えば、ナイトロジェンマスタードから)、電気熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変(擦過傷)、口腔部位(白板症、インサイチュ癌腫、口腔癌腫、アフタ性潰瘍(すなわち、開放病変)、骨部位(骨骨髄炎を伴う、例えば、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter baumanniiによって引き起こされる)、肛門部位、膣部位、子宮頸部部位、外陰部部位、陰茎部位、潰瘍性皮膚部位(例えば、糖尿病性足潰瘍、褥瘡(「床痛」)部位)、にきび部位(例えば、顔面、体幹、その他)、光化性角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位(上部および下部)、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位を含むがこれらに限定されない多くの領域に投与することができ、カテーテルロックソリューションに含まれ得る。
【0119】
本開示の組成物は、微生物増殖を抑制もしくは低減し、微生物感染を抑制もしくは低減し、微生物バイオフィルムを抑制もしくは低減、および/または抑制もしくは低減するために提供され得る。微生物増殖、微生物感染、および微生物バイオフィルムは、細菌、真菌、原生動物、およびウイルスを含むがこれらに限定されない異なる微生物に起因し得る。
【0120】
本開示の組成物は、これらに限定されないが、創傷、熱傷、皮膚病変および小胞、口腔、子宮頸部、膣、外陰部、陰茎、肛門部位、食道部位等の部位に提供され得ることが企図される。
【0121】
組成物はまた、放射線療法で過剰発現されるサイトカインを調節するためにも提供され得る。
【0122】
組成物はまた、ウイルス性状態または疾患を治療するために提供され得る。癌の病因におけるウイルスの役割(およびウイルス感染)は、もう1つの重要な医学研究分野である。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、ヒトに感染する可能性のあるパピローマウイルスファミリーのウイルスのメンバーである。HPV感染症は、皮膚または粘膜の重層扁平上皮(子宮頸部、外陰部、膣、陰茎、肛門、および中咽頭等)で発生する。「高リスク」HPV型による持続感染は、前癌病変および浸潤癌に進行する可能性がある。ますます多くの研究が、HPV感染と特定の種類の癌(陰茎癌および肛門癌等)との関連を示している。さらなる研究により、広範囲のHPV型と皮膚の扁平上皮癌との関連性も示されている。本開示の組成物を使用する白板症状態(扁平上皮癌の一形態)の効果的な治療は、任意の考えられる根底にあるウイルス感染または活性に対するその効果によって一部媒介され得ることが企図される。効果はまた、任意の考えられる根底にある炎症活性によっても媒介され得る。
【0123】
本開示の構成は、単純ヘルペスの発生に起因する可能性が高い「口唇ヘルペス」の重症度を大幅に軽減し、その経過を短縮する手段をさらに提供し得る。したがって、本開示の組成物はまた、ウイルス性状態または疾患を抑制または低減するために提供され得る。
【0124】
本開示の組成物の別の企図される用途は、口内または上咽頭内の疼痛を伴う開放性の疼痛として現れ、粘膜の破壊を特徴とする口腔潰瘍の一種である口内炎(アフタ性潰瘍)の抑制および/または治療のためであり得る。かつてヘルペスウイルス感染症であると考えられていた口内炎の全クラスは、現在では様々な疾患プロセスの集合であると考えられており、それぞれが独自の方法で、主として免疫学的および虚血性機構を介して、粘膜の急速であるが自己制限的な破壊を引き起こす能力を有する。一部の個人では、潰瘍は抗原刺激、特に食品に対する二次的または過敏性反応であるが、他の個人では、それらは一次自己免疫性障害である。本開示の組成物は、口内炎(アフタ性潰瘍)の抑制および/または治療に有用であり得ると考えられる。この効果は、根底にあるウイルス感染もしくは活性または炎症活性の調節によって媒介され得る。
【0125】
本開示の組成物は、既存の治療法と組み合わせた補助療法として使用することができると考えられる。「補助的」という用語は、「組み合わせて」または「組み合わせ」と交換可能に使用され、2つ以上の治療または予防レジメンが同じ状態の治療または予防に影響を与える場合に使用される。
【0126】
本開示の組成物は、ヒトおよび動物患者の標的領域、特に創傷、熱傷、手術部位、およびカテーテル挿入部位の化学的環境を変化させて、そのような部位で多く見られる様々な物質の存在による細胞損傷および/または毒性を予防する手段を提供し得る。そのような物質は、濃度および他の要因に応じて、有益な効果と有害な効果のバランスが取れていることが多い。それらは通常、非常に低いレベルで、一般にマイクロモルまたはさらにはナノモルレベル(10-9)のレベルで、場合によってはピコモル(10-12)レベルで存在する。したがって、組成物中の成分の組み合わせが著しく高いレベル(すなわち、ミリモルまたはモル)で存在し、さらに完成に向けて、他では好ましくないように思われる反応を促進させる効果を有するため、この用途はそのようなレベルで一連の反応の可能性を提供する。
【0127】
一実施形態において、エタノールおよび過酸化水素は、本開示の組成物に含まれる場合、細菌内毒素(例えば、LPS)、外毒素、およびエンテロトキシンを不活性化することができる。一例において、凝血促進剤(例えば、キトサン、ポリP)は、いくつかのグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌に対して有効であり得る。細菌内毒素(例えば、LPS)、外毒素、エンテロトキシンの不活性化は、サイトカインカスケード、敗血症性ショック、多臓器不全等の予防において重要あり得る。
【0128】
様々な種類の創傷感染症は、異なる細菌毒素によって促進される可能性がある。本開示の組成物によって不活性化される可能性のある創傷内の嫌気性細菌の例として、Clostridium tetani(破傷風)、Clostridium perfringens(ガス壊疽)、およびBacteroides fragilis(相乗的壊死性筋膜炎)等が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の組成物によって不活性化される可能性のある創傷内の好気性細菌の例として、グラム陽性菌、Staphylococcus aureus(TSST-1 Streptococcus hemolyticusからの毒性ショック症候群)、A群β溶血(上行性蜂巣炎)、リンパ管炎、Streptococcus faecium(バンコマイシン耐性蜂巣炎または膿瘍)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の組成物によって不活性化される可能性のある創傷内のグラム陰性菌の例として、限定されないが、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter baumanniiが挙げられ、これらは両方とも多剤耐性(MDR)病原体であり、蜂巣炎、膿瘍、敗血症、および敗血症性ショックを引き起こす可能性がある。一実施形態において、キトサン(カチオン性)は、グラム陰性菌に対する抗菌剤として使用することができる。
【0129】
本開示の組成物は、性感染症の蔓延を防止するのに役立ち得る殺精子剤および抗菌剤として有効であり得ることも企図される。HPV感染の予防は、ワクチンとともに、子宮頸癌、ならびに一部の外陰癌、陰茎癌、肛門/直腸癌、および口腔咽頭癌を著しく軽減し得る。本開示の組成物は、単独で、またはダイアフラム、スポンジ、男性用コンドーム、女性用コンドーム等のような1つ以上の避妊のバリア方法と組み合わせて投与することができる。組成物は、性感染症の伝播の予防に有効であり得ると考えられる。
【0130】
本開示の組成物は、洗浄剤/消毒剤として利用することができ、成体表面および非生体表面に使用することができる。本開示の組成物は、細菌および真菌生物によって形成されたバイオフィルムを崩壊し、バイオフィルムに埋め込まれた生物を、それらがバイオフィルム形成菌であるかどうか、または偶発的な封入、捕捉もしくは他の理由で存在するのかどうかにかかわらず、殺傷するか、または生育不能および/もしくは別様に非脅威的にする手段を提供する。本開示の組成物は、細菌および酵母の胞子が、胞子段階で完全に死滅するか、または発芽できないことによって、もしくは発芽後にそれらの潜在的な病原性が発現する前に迅速に死滅させることによって無効にする手段を提供し得る。本開示の組成物は、バイオフィルム形成微生物によって用いられるクオラムセンシング(QS)機構が中断される手段を提供し得る。これらの機構は生物ごとに異なり、グラム陽性生物はグラム陰性生物とは多少異なるQSシステムを用いるが、全ての場合において、QS機能を提供する分子または一連の分子が存在する。多くの場合、これらは、本開示の組成物との反応によって構造変化の影響を潜在的に受けやすいタンパク質分子である。加水分解、アルコール分解、エステル化、エステル交換、酸化、タンパク質変性、または遊離イオンおよび部分的に結合したカチオンの両方のキレート化等の反応が起こる可能性が高い。加水分解またはアルコール分解による破壊または崩壊の標的となる物質は、例えば、アシルホモセリンラクトン(AHL、グラム陽性バイオフィルム形成菌のQS分子)、およびグラム陽性菌の他のラクトンまたはエステル成分である。バイオフィルムはまた、キレーターによって崩壊されることが知られており、これは、バイオフィルムの形成に必要な二価、三価、または他のカチオンに対するキレーターの結合効果に起因すると考えられている。EDTAを含むがこれに限定されない1つ以上のキレーターを含めることにより、この機能が本開示の組成物に提供される。
【0131】
本開示の組成物は、細菌および真菌生物によって形成されたバイオフィルムを崩壊し、バイオフィルムに埋め込まれた生物を、それらがバイオフィルム形成菌であるかどうか、または偶発的な封入、捕捉もしくは他の理由で存在するのかどうかにかかわらず、殺傷するか、または生育不能および/もしくは別様に非脅威的にする手段を提供する。
【0132】
組成物が非生体表面に使用される実施形態において、適用時に消毒を提供することに加えて、組成物はまた、汚染に対する持続的な残留バリアを提供し得る。例えば、組成物の揮発性成分(例えば、水、アルコール、過酸化水素等)が蒸発した後でも、キレート剤および/または凝血促進剤は、抗菌性、抗真菌性または殺胞子性(例えば、胞子の発芽を防ぐ)、抗寄生虫性、殺精子性もしくは精子抑制性(例えば、精子の運動性を低下させる)および抗ウイルス性を提供するバリアとして、処理された表面(例えば、複数回使用バイアルまたはポートの洗浄/保護装置、聴診器、指、他の組織等)に残ることができる。例えば、細菌、胞子、寄生虫、真菌、およびウイルスの繁殖に必要な成分(例えば、鉄、マグネシウム、およびマンガン)の環境を奪うことにより、組成物の他の成分が蒸発した後でも、キレート剤は、汚染に対する持続的な防御を提供する。
【0133】
実施形態において、組成物は、手術用手袋および/または手術器具に適用することができる。手術部位感染症(および外科医、看護師等への感染)は、皮膚および手術器具の消毒法が不十分であることに起因し得る。手袋は穿刺される可能性があり、鋭いデブリードマンが用いられる場合、穿刺が発生する可能性がより高くなる。アルコールによる外科的な手指消毒は、乾燥した後、その抗菌効果を失う。
【0134】
実施形態において、組成物は、表面上の病原体または毒素を不活性化するために表面に適用され得る。例えば、組成物は、生物由来物質に曝露された生物表面(例えば、皮膚、粘膜等)および無生物表面(例えば、衣類、フェイスマスク、武器、器具、機器等)に適用され得る。
【0135】
実施形態において、組成物は、皮膚、粘膜、および/または衣類材料の曝露前処置として使用することができる。実施形態において、組成物は、生物兵器としての生物学的病原体または毒素(例えば、Bacillus anthracis胞子、Clostridium tetani胞子または毒素、Stapylococcus aureus毒素、エボラウイルス、呼吸器ウイルス等)に曝露された軍人および/または民間人を除染するために曝露後に使用することができる。無毒の洗浄剤、洗剤、スプレー、エアロゾル、スラリー、液体(例えば、浸漬による)等を使用して、組成物を表面に適用することができる。
【0136】
組成物は、大量の死傷者のために大量に調製することができ、実施形態において、組成物を事前に調製することができる。組成物中の水の一部または全部は、死傷者が発生した特定の場所等、現場で加えられてもよい。兵士または民間人が、ミサイル、爆風、熱傷または放射線熱傷による損傷を負った場合、組成物の免疫調節、止血、ならびに組織保護および再生効果が有益であろう。
【0137】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物を手術用手袋の内側に使用して、手袋の顕微鏡的穿刺の場合に追加の抗菌保護および凝血促進活性を提供することができると考えられる。一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、医療専門家が着用する手袋内で潤滑剤と組み合わされる。
【0138】
細菌、ウイルス、真菌等が洗浄後に手に残り、手袋に穿刺が存在するか、またはその手に着用された手袋に発生した場合、組成物の抗菌活性は、それが患者に広がる前に、外科医または看護師の手の上の細菌、ウイルス、真菌等を殺傷するであろう。
【0139】
同様に、細菌、ウイルス、真菌等が穿刺のある手袋の外側(例えば、患者の血液中)にあるが、手袋の内側が本明細書に記載の組成物でコーティングされている場合、医療専門家は、組成物の抗菌活性および凝血促進活性によって保護され得る。
【0140】
手術用手袋または手術器具に適用されるかどうかにかかわらず、組成物は、適用時に消毒を提供することに加えて、汚染に対する持続的なバリアを提供し得る。例えば、組成物の揮発性成分(例えば、水、アルコール、過酸化水素等)が蒸発した後でも、キレート剤および/または凝血促進剤は、抗菌性、抗真菌性または殺胞子性(例えば、胞子の発芽を防ぐ)、抗寄生虫性、殺精子性もしくは精子抑制性(例えば、精子の運動性を低下させる)および抗ウイルス性を提供するバリアとして、処理された表面(例えば、複数回使用バイアルまたはポートの洗浄/保護装置、聴診器、指、他の組織等)に残ることができる。本明細書に記載の組成物中のEDTAおよび凝血促進剤は、有効な残留抗菌剤を残す。組成物は、細菌、真菌、およびおそらくウイルスのコロニー形成を防ぐために、EDTA、キトサンおよび/またはポリリン酸塩を残す。例えば、細菌、胞子、寄生虫、真菌、およびウイルスの繁殖に必要な成分(例えば、鉄、マグネシウム、およびマンガン)の環境を奪うことにより、組成物の他の成分が蒸発した後でも、キレート剤は、汚染に対する持続的な防御を提供する。
【0141】
<例示的な使用方法>
図1は、上記の組成物の使用方法100の実施形態の流れ図である。具体的には、図1は、使用方法が、組成物をそれを必要とする対象に局所的に適用すること送達することを含む実施形態を示す。
【0142】
ステップ102で、本明細書に記載の少なくとも1つの抗菌剤および本明細書に記載の少なくとも1つの凝血促進剤を含む組成物が調製される。任意選択的な追加の成分も加えることができる。組成物は、溶液であってもよいか、またはゲル、クリーム、軟膏、液滴、スプレー、スラリー等の他の形態であってもよい。
【0143】
ステップ104で、治療を必要としている対象を特定することができる。例において、対象は開放創を有する可能性がある。
【0144】
ステップ106で、組成物が対象に投与される。実施形態において、組成物は、創傷に噴霧され得、創傷被覆材を介して創傷に適用され得、ヒドロゲルまたは液体等として適用され得る。
【0145】
<例示的な製造方法>
図2は、組成物の製造方法200の実施形態の流れ図である。
【0146】
上記のように、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つの抗菌剤および少なくとも1つの凝血促進剤を含み、任意選択的な追加の成分を含み得る。
【0147】
ステップ202で、抗菌製剤の成分が組み合わされる。上記のように、抗菌製剤は、少なくとも、これらに限定されないが、以下を含み得る。
・ 約1%~約85%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのアルコール、
・ 約0.05%~約20%w/w、約0.05%~約10%w/w、または約1.5%w/wの過酸化物または過酸化物発生剤、
・ 約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.4mg~約10mg/mL、約0.3mg~約15mg/mL、または約10mg/mLのEDTA、
・ 約1%~約95%の凝血促進剤、および
・ 残りの水。
【0148】
1つ以上の成分は、他の成分よりも遅く抗菌剤に加えられ得る。一例において、成分は、使用の直前に他の成分に追加され得る。組成物は、粉末、ゲル、乳濁液、または液体のうちの1つ以上として製造することができる。
【0149】
ステップ204で、上記のように、少なくとも1つの凝血促進剤が少なくとも1つの抗菌剤に加えられ得る。
【0150】
ステップ206で、任意選択的な追加の成分を追加することができる。任意選択的な追加の成分は、酸性剤、増粘剤、宿主MMP、TNF-α、細菌性β-ラクタマーゼ(多耐性拡張スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)を含む)、カルバペネマーゼ、およびメタロカルバマーゼ等を含むが、これらに限定されない。
【0151】
ステップ208で、組成物は、まだ所望の状態にない場合、所望の状態に変換され得る。例えば、液体の形態の組成物は、適用向けにそれを調製するためにゲルに変換され得る。
【0152】
<条項>
条項1.
組成物であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、および
(d)キレート剤、を含む、抗菌剤と、
1つ以上の凝血促進剤と、を含む、組成物。
【0153】
条項2:1つ以上の凝血促進剤がポリリン酸塩を含む、条項1の組成物。
【0154】
条項3:ポリリン酸塩が、約1%~約20%重量対重量(w/w)、または約5%~約15%w/w、または約10%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で組成物中に存在する、条項2の組成物。
【0155】
条項4:1つ以上の凝血促進剤が、キトサン、ポリリン酸塩、コラーゲン、ヒアルロナン、高分子量ヒアルロン酸、カオリン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、条項1~3のいずれかの組成物。
【0156】
条項5:キトサンが、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で組成物中に存在する、条項4の組成物。
【0157】
条項6:アルコールが、エタノールを含み、約1%~約85%w/w、または約10%~約70%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの組成物中に存在する、条項1~5のいずれかの組成物。
【0158】
条項7:過酸化物または過酸化物発生剤が、過酸化水素(H)を含み、約0.05%~約20%w/w、約0.05%~約10%w/w、または約1.5%w/wのうちの少なくとも1つの濃度で組成物中に存在する、条項1~6のいずれかの組成物。
【0159】
条項8:キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.4mg~約10mg/mL、約0.3mg~約25mg/mL、または約10mg/mLのうちの少なくとも1つの濃度で組成物中に存在する、条項1~7のいずれかの組成物。
【0160】
条項9:増粘剤をさらに含む、条項1~8のいずれかの組成物。
【0161】
条項10:増粘剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、条項1~9のいずれかの組成物。
【0162】
条項11:組成物が2つ以上の凝血促進剤を含む、条項1~10のいずれかの組成物。
【0163】
条項12:凝血促進剤がコラーゲンを含む、条項1~11のいずれかの組成物。
【0164】
条項13:コラーゲンが、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で組成物中に存在する、条項12の組成物。
【0165】
条項14:抗菌剤の1つ以上の成分と、凝血促進剤の1つ以上の成分とが共有結合している、条項1~13のいずれかの組成物。
【0166】
条項15.1つ以上の凝血促進剤がヒアルロナンまたはヒアルロン酸を含む、条項1~14のいずれかの組成物。
【0167】
条項16.ヒアルロナンまたはヒアルロン酸が、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で組成物中に存在する、条項15に記載の組成物。
【0168】
条項17.1つ以上の凝血促進剤がカオリンを含む、条項1~16のいずれかの組成物。
【0169】
条項18.カオリンが、約1%~約95%w/w、または約20%~約60%w/w、または約50%w/wのうちの少なくとも1つの非毒性濃度で組成物中に存在する、条項17に記載の組成物。
【0170】
条項19.創傷部位の微生物の増殖または感染を治療、抑制、または低減し、創傷部位の凝血活性を促進する方法であって、
創傷の部位を特定することと、
条項1の組成物を部位に適用することと、を含む、方法。
【0171】
条項20.状態または疾患を治療、抑制、または軽減する方法であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、
(d)キレート剤、および
(e)1つ以上の凝血促進剤、を含む、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【0172】
条項21.状態または疾患が、細菌性状態もしくは疾患、真菌性状態もしくは疾患、ウイルス性状態もしくは疾患、寄生性状態もしくは疾患、生物学的毒素による疾患もしくは状態、炎症性状態もしくは疾患、免疫応答性状態もしくは疾患、または前癌性もしくは癌性状態のうちの少なくとも1つである、条項20の方法。
【0173】
条項22.状態または疾患が出血である、条項20または21のいずれかの方法。
【0174】
条項23.組成物が、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは移植、筋肉内注射もしくは移植、病変内注射、皮下注射もしくは移植、皮内注射、坐剤、タンポン、ペッサリー、腸内適用、または経鼻経路のうちの少なくとも1つによって投与される、条項20~22のいずれかに記載の方法。
【0175】
条項24.組成物が、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、外陰癌部位、陰茎癌部位、肛門/直腸癌部位、熱傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、口腔部位、骨部位、軟骨部位、関節部位、肛門部位、膣部位、子宮頸部部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍性皮膚部位、にきび部位、光化性角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、または耳部位のうちの1つもしくは複数を含む部位に適用される、条項20~23のいずれかに記載の方法。
【0176】
条項25.
アルコールがエタノールを含み、
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
過酸化物または過酸化物発生剤が過酸化水素(H)を含み、
1つ以上の凝血促進剤がキトサンを含む、条項20~24のいずれかの方法。
【0177】
条項26.
アルコールがエタノールを含み、
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
過酸化物または過酸化物発生剤が過酸化水素(H)を含み、
1つ以上の凝血促進剤がカオリンを含む、条項20~24のいずれかの方法。
【0178】
条項27.
アルコールがエタノールを含み、
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの酸、EDTAの塩、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
過酸化物または過酸化物発生剤が過酸化水素(H)を含み、
1つ以上の凝血促進剤がヒアルロナンを含む、条項20~24のいずれかの方法。
【0179】
条項28.組成物を製造する方法であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、
(d)キレート剤、および
(e)1つ以上の凝血促進剤、を含む組成物を組み合わせることと、
組成物を溶液に入れることと、を少なくとも含む、組成物を製造する方法。
【0180】
条項29.創傷被覆材であって、
繊維またはナノ粒子のうちの少なくとも1つの格子と、
格子に適用される組成物であって、
(a)水、
(b)低分子量アルコール、
(c)過酸化物または過酸化物発生剤、
(d)キレート剤、および
(e)1つ以上の凝血促進剤、を含む、組成物と、を含む、創傷被覆材
【0181】
<結論>
主題について、構造的特徴および/または方法論的動作に特有の言語で説明したが、添付の特許請求の範囲に定義された主題は、必ずしも説明された特定の特徴または動作に限定されない。むしろ、特定の特徴および動作は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として開示されている。
【0182】
当業者は、上記の説明に対して事実上無制限の数の変形例が可能であり、実施例および添付の図は、1つ以上の実施形態または実施例を説明するためのものであるに過ぎないことを理解するであろう。
【0183】
当業者は、特許請求される主題から逸脱することなく、様々な他の修正がなされてもよく、均等物が代用され得ることを理解するであろう。追加的に、本明細書に記載の中心的な概念から逸脱することなく、特許請求される主題の教示に特定の状況を適合させるために多くの修正がなされてもよい。したがって、特許請求される主題は、開示される特定の実施形態に限定されるべきではなく、そのような特許請求される主題は、添付の特許請求の範囲の範囲内に属する全ての実施形態、およびその均等物も含み得ることが意図される。
【0184】
上記の詳細な説明では、特許請求される主題の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が述べられている。しかしながら、特許請求される主題は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが当業者によって理解されるであろう。他の例では、特許請求される主題を曖昧にしないように、当業者には既知であろう方法、装置、またはシステムは詳細に説明されていない。
【0185】
本開示全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、特定の実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、特許請求される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味し得る。したがって、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態において」または「実施形態」という句の出現は、必ずしも同じ実施形態または記載されるいずれか1つの特定の実施形態を指すことを意図するものではない。さらに、記載される特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において様々な様式で組み合わせることができることを理解されたい。当然、一般に、これらおよび他の問題は、使用法の特定の文脈によって異なり得る。したがって、これらの用語の記述または使用に関する特定の文脈は、その文脈に関して引き出される推論に関する有益な指針を提供し得る。
【0186】
とりわけ、「できる(can)」、「可能性がある(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」等の条件付き言語は、特に明記されていない限り、特定の例または実施形態が特定の特徴、要素、および/またはステップを含む一方で、他の例または実施形態はそれらを含まないことを提示する文脈内で理解される。したがって、そのような条件付き言語は、概して、特定の特徴、要素、および/もしくはステップが1つもしくは複数の例もしくは実施形態にいずれにしても必要であること、または1つもしくは複数の例もしくは実施形態が、特定の特徴、要素、および/もしくはステップがいずれか特定の例もしくは実施形態に含まれるかどうかを、ユーザ入力もしくはプロンプトを用いてもしくは用いずに決定するためのロジックを必然的に含むことを示唆することを意図するものではない。句「X、Y、またはZのうちの少なくとも1つ」等の接続的言語は、特に明記されていない限り、項目、用語等がX、Y、もしくはZのいずれか、またはそれらの組み合わせであり得ることを表すことを理解されたい。
図1
図2
【国際調査報告】