(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(54)【発明の名称】イオンの制御された注入のための基板およびイオンの制御された注入のための基板を作製する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/266 20060101AFI20220303BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01L21/265 M
H01L21/265 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562194
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 IB2020020004
(87)【国際公開番号】W WO2020144543
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】102019100312.1
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521299640
【氏名又は名称】パーカン ナノテク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】レンジロー,イヴォ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,シャン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】カープツォーフ,ディミトレ
(57)【要約】
【課題】最先端技術の前述の欠点を有さないイオンの制御された注入のための基板および方法を提供する。
【解決手段】バルク(20)内へのイオン(80)の制御された注入のための基板(10)および基板(10)を作製する方法が提供される。基板(10)は、結晶性の第1の材料(70)から構成されたバルク(20)を含む。バルク(20)は、注入領域(28)および表面(22)を含み、注入領域(28)は、バルク(20)内に、注入方向(82)に沿って、バルク(20)の表面(22)上の注入区域(24)の下の注入深さ(26)に位置付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク(20)内へのイオン(80)の制御された注入のための基板(10)であって、前記基板(10)が、結晶性の第1の材料(70)から構成された前記バルク(20)を備え、前記バルク(20)が、注入領域(28)および表面(22)を備え、前記注入領域(28)が、前記バルク(20)内で、注入方向(82)に沿って、前記バルク(20)の前記表面(22)上の注入区域(24)よりも下の注入深さ(26)に位置付けられており、
前記基板(10)が、前記注入区域(24)に位置付けられ、前記バルク(20)の前記表面(22)から離れる方向に前記注入方向(82)とは反対側に延びている、前記第1の材料(70)から構成されたピラー(30)をさらに備え、前記ピラー(30)が、第2の材料(72)から構成された緩衝層(50)によって前記注入方向(82)に対して垂直方向に包囲されており、前記緩衝層(50)が、前記バルク(20)の前記表面(22)および前記ピラーの側面(32)を覆っていることを特徴とする、基板(10)。
【請求項2】
前記ピラー(30)の照射面(36)が、前記緩衝層(50)によって覆われておらず、前記照射面(36)が、前記注入方向(82)に関して、前記バルク(20)とは反対側の前記ピラー(30)の端部(34)に位置付けられており、好ましくは、前記照射面(36)が、前記緩衝層(50)から離間配置されており、任意選択で、前記注入方向(82)に沿った前記ピラー(30)の高さ(40)が、前記注入方向(82)に沿って測定された前記緩衝層(50)の厚さ(52)と少なくとも同じサイズのものであることを特徴とする、請求項1に記載の基板(10)。
【請求項3】
前記バルク(20)の前記第1の材料(70)の結晶構造が、前記ピラー内に続いていることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板(10)。
【請求項4】
前記基板(10)が、複数の注入領域(28)に関して相応に配置された複数のピラー(30)、特に同一のピラー(30)を備え、好ましくは、前記複数のピラー(30)がアレイに配列されており、任意選択で、前記複数のピラー(30)の各ピラー(30)の高さ(40)が同じであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項5】
前記第1の材料(70)が、前記第2の材料(72)とは異なることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項6】
前記第1の材料(70)が、結晶性半導体、好ましくはシリコンまたはダイヤモンドライクカーボンであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項7】
前記第2の材料(72)が、非晶質材料、特に酸化物または窒化物、好ましくは前記第1の材料(70)の多結晶バージョンであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項8】
前記注入区域(24)が、1x1μm
2未満、特に100×100nm
2未満、好ましくは7x7nm
2を覆っていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項9】
前記注入方向(82)に対して垂直な前記ピラー(30)の断面が、前記注入区域(24)よりも大きく、特に前記注入区域(24)の2倍の大きさ、好ましくは前記注入区域(24)の10倍の大きさであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項10】
前記ピラー(30)の軸(38)が、前記注入方向(82)に対して同一直線上にあるか、または少なくとも本質的に同一直線上にあることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項11】
前記注入方向(82)に沿った前記ピラー(30)の高さ(40)が、以下の項目:
-第1の材料(70)
-注入深さ(26)
-第2の材料(72)
-注入される前記イオン(80)の材料
-注入される前記イオン(80)の運動エネルギー
-注入される前記イオン(80)の電荷状態
-前記第1の材料(70)および/または前記第2の材料(72)に注入される前記イオン(80)の質量比、のうちの少なくとも1つに適合されるように選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項12】
少なくとも1つの電気接点(60)が、前記バルク(20)に接続されて、前記注入領域(28)内へのイオン(80)の注入を位置合わせすることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項13】
少なくとも1つのイオン(80)、好ましくは単一のイオン(80)が、前記注入方向(82)に沿って、前記ピラー(30)を通って前記注入領域(28)に注入されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項14】
前記ピラー(30)および/または前記緩衝層(50)が、前記バルク(20)の前記表面(22)から除去されることを特徴とする、請求項13に記載の基板(10)。
【請求項15】
バルク(20)内へのイオン(80)の制御された注入のための基板(10)、好ましくは請求項1~14のいずれか一項に記載の基板(10)を作製する方法であって、前記基板(10)が、結晶性の第1の材料(70)から構成された前記バルク(20)を備え、前記バルク(20)が、注入領域(28)および表面(22)を備え、前記注入領域(28)が、前記バルク(20)内で、注入方向(82)に沿って、前記バルク(20)の前記表面(22)上の注入区域(24)よりも下の注入深さ(26)に位置付けられており、
以下のステップ:
a)前記第1の材料(70)から構成された前記バルク(20)を提供することと、
b)ステップa)において提供された前記バルク(20)の前記表面(22)上の前記注入区域(24)に位置付けられ、前記バルク(20)の前記表面(22)から離れる方向に前記注入方向(82)とは反対側に延びる前記第1の材料(70)のピラー(30)を形成することと、
c)ステップb)において提供された前記ピラー(30)を、第2の材料(72)から構成された緩衝層(50)によって前記注入方向(82)に対して垂直方向に包囲することであって、前記緩衝層(50)が、前記バルク(20)の前記表面(22)および前記ピラーの前記側面(32)を本質的に覆っているように、包囲することと、を特徴とする、方法。
【請求項16】
ステップb)が、前記ピラーを形成するためのエッチングプロセスを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップc)の後、追加のステップd)が実行され、ステップd)が、少なくとも1つのイオン(80)を前記基板(10)内に、前記注入方向(82)に沿って前記ピラー(30)を通じて前記注入領域(28)内への注入を含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
ステップd)の後、追加のステップe)が実行され、ステップe)が、前記緩衝層(50)および前記ピラーを除去することを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップd)が、前記基板(10)を少なくとも77°K、好ましくは少なくとも4°Kの温度に冷却することを含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ステップd)が、イオン(80)、好ましくは単一のイオン(80)の前記注入領域(28)内への前記注入を位置合わせすることを含むことを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、バルク内へのイオンの制御された注入のための基板に関し、基板は、結晶性の第1の材料から構成されたバルクを備え、バルクは、注入領域および表面を備え、注入領域は、バルク内で、注入方向に沿って、バルクの表面上の注入区域よりも下の注入深さに位置付けられている。さらに、本発明は、バルク内へのイオンの制御された注入のための基板、好ましくは前述の基板を作製するための方法に関し、基板は、結晶性の第1の材料から構成されたバルクを備え、バルクは、注入領域および表面を備え、注入領域は、バルク内で、注入方向に沿って、バルクの表面上の注入区域よりも下の注入深さに位置付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
イオンの注入は、例えば半導体をドープするための既知の手順である。特に、単一のイオンの注入は、シリコンでの大規模量子処理のための単一のドナーの量子ビットを作成する主な候補のうちの1つである。残念ながら、結晶性および非晶質媒体における粒子の3D伝搬の統計的性質に起因して、静止している粒子の最終的な位置は横方向によく変位する可能性がある。したがって、注入されたイオン、特に注入された単一のイオンの正確な衝突位置決めを達成することは困難であり、したがって、そのような単一のイオン注入の正味の効果を減少させる。さらによく知られているように、結晶性材料は開いたチャネルおよび平面を呈し、それに沿って、粒子、特に注入されたイオンは、チャネルの方位に応じて横方向だけでなく深さまでさらに伝搬することができる。
【0003】
上記を考慮して、本発明の目的は、最先端技術の前述の欠点を有さないイオンの制御された注入のための基板および方法を提供することである。特に本発明の目的は、バルク内へのイオンの制御された注入のための基板および方法を提供することであり、これにより、簡単で、費用効果が高く、特に再現可能な方法で、バルク内の注入されたイオンの正確な局在化が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、特許請求の範囲によって満たされる。特に、この目的は、請求項1によるバルク内へのイオンの制御された注入のための基板、および請求項15によるバルク内へのイオンの制御された注入のための基板を作製するための方法によって満たされる。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を説明している。本発明の第1の態様による基板に関して説明された詳細および利点はまた、技術的意味がある場合、本発明の第2の態様による方法に言及され、逆もまた同様である。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、目的は、バルク内へのイオンの制御された注入のための基板によって満たされ、基板が、結晶性の第1の材料から構成されたバルクを備え、バルクが、注入領域および表面を備え、注入領域が、バルク内で、注入方向に沿って、バルクの表面上の注入区域よりも下の注入深さに位置付けられている。本発明による基板は、基板が、注入区域に位置付けられ、バルクの表面から離れる方向に注入方向とは反対側に延びている、第1の材料から構成されたピラーをさらに備え、ピラーが、第2の材料から構成された緩衝層によって注入方向に対して垂直方向に包囲されており、緩衝層が、バルクの表面およびピラーの側面を覆っていることを特徴とする。
【0006】
本発明による基板は、主要素として、結晶性の第1の材料から構成されるバルクを含む。このバルク内に、注入領域が画定され、その後の注入手順では、注入領域の上にイオンが注入されることになる。注入されるイオンの注入方向に関して、注入区域は、バルクの表面上に画定される。言い換えれば、注入手順中に、イオンは、バルクの表面の注入区域を通ってバルクに入り、バルクの結晶性の第1の材料を通って伝搬し、すべてがうまくいけば注入領域内で静止するようになる。
【0007】
注入領域内へのイオンの上記の注入を確実にするために、本発明による基板は、特別な特徴部を備える。第1に、基板は、バルクに加えてピラーをさらに備え、ピラーも第1の材料から構成されている。このピラーは、バルクの表面に位置付けられ、注入区域に位置付けられ、バルクの表面から離れる方向に注入方向とは反対側に延びている。ピラーに加えて、緩衝層もバルクの表面に含まれ、バルクの表面およびピラーの側面を本質的に覆っている。言い換えれば、ピラーは、注入方向に対して垂直な緩衝層によって包囲され、好ましくは、緩衝層は、ピラーの側面に直接接触している。好ましくは、緩衝層は、例えば電気接点、支持構造、および同様の物品のように、ピラーおよび追加の要素を含まないバルクの表面全体を覆っている。
【0008】
ピラーが注入方向に沿って延びているので、注入領域に注入されるイオンは、バルクの表面にある注入区域に到達するために、注入方向に沿ってピラー全体を伝搬しなければならず、さらに、バルクに入り、注入領域内の意図された静止位置に伝搬しなければならない。ピラーは第1の結晶性材料も含むので、ピラーは自動的にバルクの結晶構造と同様の結晶構造を含む。これは、そのような結晶性材料が開いたチャネルおよび平面を含み、それに沿って、粒子、特にイオンは、チャネル方位に依存して横方向だけでなく深さ方向にもさらに伝搬することを意味する。本質的に、これらのイオンのほとんど、好ましくは注入方向に沿ってピラー全体を通って伝搬するすべてのイオンは、そのような結晶チャネルおよび/または結晶平面に沿った十分にチャネリングされたイオンである。ピラーおよびバルクは同じ結晶性の第1の材料から構成されているので、この結晶チャネルおよび/または平面もまた、ピラーとバルクとの両方にそれぞれ同じように存在することができる。したがって、ピラー内のこれらのチャネリングされたイオンは、注入方向に沿って結晶チャネルおよび/または平面内でチャネリングされた、チャネリングイオンとしてもバルク内でそれらの伝搬を続けることができる。ピラーおよびバルクの材料を通過すると、イオンは運動エネルギーを失い、伝搬の後期段階で、すなわち、それらの運動エネルギーのほとんどを失ったときに、イオンは、それぞれのチャネルおよび/または平面を離れ、チャネルおよび/または平面の近くで完全に阻止されることになる。したがって、バルク内の注入領域内へのイオンの注入にピラーを使用することにより、高い横方向の位置精度を達成することができる。注入深さは、注入されるイオンの相応に適合された運動エネルギーによって制御することができる。したがって、バルク内の指定された注入領域内へのイオンの制御された注入を達成することができる。
【0009】
上記の段落では、イオンのみが説明されており、イオンは、注入方向に沿ってピラーおよびバルクを通ってチャネリングされた方法で進む。それにもかかわらず、ピラーに入るときに注入方向とは異なるイオンの伝搬方向も可能である。例えば、イオンは、ピラーの第1の材料の原子上でランダムな方向に散乱するだけでもよい。追加的に、イオンは、注入方向に対して整列されていない結晶チャネルおよび/または平面に入る可能性もある。これらすべての場合において、イオンは注入方向から離れる方向に散乱し、遅かれ早かれその側面を通ってピラーを離れることになる。言い換えると、これらのイオンは、第2の材料から構成された緩衝層に入る。好ましくは、これらのイオンは、その後、バルクに到達する前に、緩衝層内で阻止される。
【0010】
要約すると、本発明による基板を使用して、バルクの上にピラー構造を備え、ピラーをバルクと同じ結晶性の第1の材料から構成され、第2の材料から構成された緩衝層によって包囲することによって、バルクへ内へのイオンの注入を改善することができる。ピラーは、所望の注入方向に沿って延び、好ましくは、ピラー全体を通ってチャネリングされたイオンのみがバルクに入り、さらに注入領域内に伝搬することになる。注入方向から離れる方向に散乱した他のすべてのイオンは、ピラーの側面を通って緩衝層に入り、緩衝層内で阻止される。言い換えると、これらの散乱イオンはバルクに到達しないため、バルク内に注入されない。したがって、バルク内の注入領域へのイオンの制御された注入は、高い横方向の位置精度で提供することができる。
【0011】
さらに、本発明による基板は、ピラーの照射面が、緩衝層によって覆われておらず、照射面が、注入領域に関して、バルクとは反対側のピラーの端部に位置付けられており、好ましくは、照射面が、緩衝層から離間配置されており、任意選択で、注入方向に沿ったピラーの高さが、注入方向に沿って測定された緩衝層の厚さと少なくとも同じサイズのものであることを特徴とし得る。このようにして、第1の材料のみが注入方向に沿った所望の注入経路に提供されることを確実にすることができる。注入されるイオンが、結晶性の第1の材料以外の材料、特に第2の材料と相互作用することを避けることができる。緩衝層から照射面を離間配置することによって、緩衝層の第2の材料が照射面に到達しないことを確実にすることができる。注入方向に沿ったピラーの高さが、注入方向に沿った緩衝層の厚さと少なくとも同じサイズのものである実施形態では、緩衝層によって覆われていない自由な照射面を特に容易に提供することができる。
【0012】
好ましくは、本発明による基板は、バルク中の第1の材料の結晶構造がピラー内に続くことを特徴とすることができる。言い換えれば、ピラーの結晶構造と、バルクの表面上の注入区域に位置付けられているピラーの基部にあるバルクの結晶構造との間の結晶構造のジャンプはない。特に、ピラーに、好ましくは注入方向に沿って存在する結晶チャネルおよび/または平面は、バルクのジャンプおよび/または中断を伴わずに続いている。したがって、ピラー内のそのような結晶チャネルおよび/または平面に沿ってチャネリングされた注入イオンは、バルクにスムーズに入り、注入領域内に十分にチャネリングされたバルクを通ってそれらの伝搬を続けることができる。
【0013】
さらに、本発明による基板は、基板が、複数の注入領域に関して相応に配置された複数のピラー、特に同一のピラーを備え、好ましくは、複数のピラーがアレイに配列されており、任意選択で、複数のピラーの各ピラーの高さが同じであることを特徴とされ得る。複数のピラーを使用して、いくつかの場所における、特にいくつかの注入領域へのイオンの注入を提供することができ、それらの各1つが高い横方向の位置精度を有する。上記のすべての利点は、複数のピラーのこれらのピラーのうちの1つを通じて、各単一の注入イベントに対して提供することができる。ピラーのアレイは、好ましくは、ラインおよび/または列に繰り返し配列されたピラーおよび/または注入領域を備えることができる。そのようなピラーのアレイおよび注入領域は、後で分離することができる。すべてのピラーが同じ高さのものである場合、本発明による基板の製造を簡略化することができる。
【0014】
追加的に、本発明による基板は、第1の材料が第2の材料とは異なることを特徴とすることができる。これにより、特に2つの材料を所望の注入反応により良好に適合させることができる。第1の材料は、イオンがその後に注入される材料、例えば、結晶性半導体である。第2の材料は、使用されるイオンに対する阻止能に応じて選択することができ、ピラーから散乱したすべてのイオンを緩衝層内で確実に阻止することができる。
【0015】
特に、本発明による基板は、第1の材料が結晶性半導体、好ましくはシリコンまたはダイヤモンドライクカーボンであることを特徴とすることができる。上記の本発明による基板を使用すると、特に注入された単一のイオンの高い横方向の位置精度で、単一のイオンの注入も達成することができる。したがって、量子ビットの製造を提供するか、または少なくとも大幅に改善することができる。
【0016】
さらに、本発明による基板は、第2の材料が非晶質材料、特に酸化物または窒化物、好ましくは第1の材料の多結晶バージョンであることを特徴とすることができる。このような非晶質材料は、緩衝層内に散乱したイオンに対して特に高い阻止能を有する。特に、非晶質材料は、遠くまで到達する結晶チャネルおよび/または平面を含まず、したがって、注入方向とは異なる方向を有するピラー内のそのような結晶チャネルおよび/または平面に沿って進むイオンは、非晶質材料から緩衝層に入り、容易かつ効果的に阻止される。酸化物または窒化物、好ましくは第1の材料の多結晶バージョンは、特に容易に取り扱うことができ、バルクの表面の上で成長させることができる。
【0017】
さらに、本発明による基板は、注入区域が1×1μm2未満、特に100×100nm2未満、好ましくは7×7nm2を覆うことを特徴とすることができる。小さな注入区域は、比較的小さな区域に複数の注入領域を配置することを可能にし、注入区域が小さいほど、単位面積あたりにより多くの注入領域が可能になる。したがって、注入されたイオンで製造された構造の小型化を改善することができる。
【0018】
追加的に、本発明による基板は、注入方向に対して垂直なピラーの断面が注入区域よりも大きく、特に注入領域の2倍の大きさ、好ましくは注入区域の10倍の大きさであることを特徴とすることができる。注入区域よりも大きい注入方向に対して垂直なピラーの断面により、ピラーによる注入区域の完全な被覆を容易に提供することができる。注入プロセス中にピラーを見逃し、したがって上記のすべての利点を失う可能性を最小化することができる。
【0019】
好ましくは、本発明による基板は、ピラーの軸が注入方向に対して同一直線上にあるか、または少なくとも本質的に同一直線上にあることを特徴とすることができる。言い換えれば、ピラーは注入方向の中心にある。このようにして、イオンがピラー全体を通って進んで、バルクの表面上の注入区域とそれに続くバルク内の注入領域に到達しなければいけないことを保証することができる。
【0020】
さらに、本発明による基板は、注入方向に沿ったピラーの高さが、以下の項目:
-第1の材料
-注入深さ
-第2の材料
-注入されるイオンの材料
-注入されるイオンの運動エネルギー
-注入されるイオンの電荷状態
-第1および/または第2の材料に注入されるイオンの質量比、のうちの少なくとも1つに適合されるように選択されることを特徴とすることができる。
【0021】
要約すると、注入方向に沿ったピラーの高さは、好ましくは、注入方向に沿ったピラー全体を通る伝搬が、ピラー内のそれぞれの結晶チャネルおよび/または平面が、伝搬したイオンによって使用される確率が高く、注入方向から離れる方向に散乱した他のすべてのイオンが、ピラーを、その側面を通って第2の材料から作られた緩衝層内に出て、緩衝層内で阻止されるように選択される。
【0022】
第1の材料が、注入されるイオンに対して高い阻止能を有する場合、第1の材料の阻止能がより低い場合のように、より低いピラーの高さが選択される。代替的に、注入されるイオンのエネルギーは、ピラーまたは注入されるイオンの高さ、または基板の特徴に応じて増加または低減させることができる。
【0023】
同じことが、注入されるそれぞれのイオンにおける第2の材料の阻止能にも当てはまり、第2の材料の阻止能が高ければ、ピラーの高さをより小さくすることができ、阻止能が低ければ、ピラーのより高い高さおよび緩衝層のそれぞれのより大きい厚さを要求される。
【0024】
注入されるイオンの質量および運動エネルギーに関しては、大きい質量および高い運動エネルギーにより、注入されるイオンが第1の材料内でさらに伝搬することができ、したがって、ピラーの高さをより大きくすることができ、質量が小さく、および/または運動エネルギーが低いイオンは、ピラーの高さをより短くすることが要求される。
【0025】
注入されるイオンの電荷状態は阻止能に直接影響するため、注入されるイオンの高電荷状態はピラーの高さをより低くすることで適合することができ、電荷状態がより低いとピラーの高さをより高くすることができる。第1および/または第2の材料に注入されるイオンの質量比に関して、この質量比がより大きければ、ピラーの高さをより大きくし、より小さければ、使用され得るピラーの高さをより短くすることができる。
【0026】
さらに、本発明による基板は、少なくとも1つの電気接点がバルクに接続されて、注入領域内へのイオンの注入を位置合わせすることを特徴とすることができる。イオンの注入のそのような位置合わせは、本質的に、バルクの注入領域内への単一のイオンの注入を可能にすることができる。そのような単一のイオンは、本発明による基板内のどこでも阻止することができ、少なくとも1つの電気接点を提供することにより、注入領域内の正しい注入の位置合わせが可能になる。好ましくは、3つの電気接点を使用して、監視された注入領域へのイオンの注入を位置合わせする。正しい注入のそのような位置合わせの後、特に確率論的アプローチに依存する必要を伴わず、注入手順を阻止することができる。
【0027】
本発明による基板の好ましい実施形態によれば、基板は、少なくとも1つのイオン、好ましくは単一のイオンが、注入方向に沿ってピラーを通って注入領域内に注入されることを特徴とすることができる。言い換えれば、これはイオンの注入領域内への制御された注入である。特に、注入領域内への単一のイオンの注入を提供することができる。
【0028】
さらに、本発明による基板は、ピラーおよび/または緩衝層がバルクの表面から除去されるという点で改善することができる。言い換えれば、正確に画定された注入領域に制御された注入イオンを有するバルクのみが、本発明による基板のこの実施形態に存在する。特に、横方向の位置精度が高い単一のイオンが注入されたバルクを提供することができる。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、目的は、バルクへのイオンの制御された注入のための基板、好ましくは本発明の第1の態様による基板を作製する方法によって解決され、基板は、結晶性の第1の材料から構成されたバルクを含み、バルクは、注入領域および表面を含み、注入領域は、バルク内で、注入方向に沿って、バルクの表面上の注入区域よりも下の注入深さに位置付けられている。本発明の第2の態様による方法は、以下のステップ:
a)第1の材料から構成されたバルクを提供することと、
b)ステップa)において提供されたバルクの表面上の注入区域に位置付けられ、バルクの表面から離れる方向に注入方向とは反対側に延びる第1の材料のピラーを形成することと、
c)ステップb)において提供されたピラーを、第2の材料から構成された緩衝層によって注入方向に対して垂直方向に包囲することであって、緩衝層が、バルクの表面およびピラーの側面を本質的に覆っているように、包囲することと、を特徴とする。
【0030】
本発明の第2の態様による基板を作製するための方法は、好ましくは、本発明の第1の態様による基板を作製および提供するために使用することができる。したがって、本発明の第1の態様による基板に関して説明されたすべての利点は、本発明の第2の態様によるバルク内へのイオンの制御された注入のための基板を作製するための方法によっても提供することができる。
【0031】
本発明による方法の第1のステップa)において、第1の材料から構成されるバルクが提供される。バルクは、特に、本発明による方法によって作製された基板の一部であり、この方法では、その後、イオンが注入される。したがって、バルク内に少なくとも1つの注入領域が画定され、バルクの表面上に、注入領域の上の注入方向に関して、注入区域が位置付けられる。
【0032】
本発明による方法の第2のステップb)において、ピラーは、この注入区域上に形成される。このピラーは、バルクと同一の第1の材料から構成されており、好ましくは、バルクの結晶構造がピラー内に続いている。バルクは、バルクの表面上の注入区域に位置付けられ、バルクの表面から離れる方向に所望の注入方向とは反対側に延びている。
【0033】
本発明による方法の最後のステップc)において、ステップb)において形成されたピラーは、緩衝層によって注入方向に対して垂直方向に包囲されている。この緩衝層は、本質的にバルクの表面およびピラーの側面を覆っている。緩衝層は、第2の材料、好ましくは第1の材料とは異なる第2の材料から構成されている。
【0034】
要約すると、バルクへのイオンの制御された注入のための基板を作製するための方法は、高い横方向の位置精度で注入領域内へのイオンの注入を可能にする基板を提供することができる。本質的に、イオンはピラーを通じてバルクに注入され、最終的に注入領域内に注入され得、ピラーの注入方向から離れる方向に散乱したイオンは、ピラーの側面を通ってピラーから出て緩衝層内に入り、その後緩衝層内で阻止される。好ましくは、十分にチャネリングされたイオン、特に結晶チャネルおよび/または平面によって誘導されるイオンのみが、注入方向に沿ってピラーを通って伝搬し、注入区域においてバルクに入り、注入領域に到達するまでさらに進む。注入されるイオンの運動エネルギーは、注入深さ、つまり表面と注入領域との間の距離が順守できるように選択することができる。
【0035】
追加的に、上記のすべてのステップおよび利点は、バルク内の複数の注入領域についても達成することができ、本発明による方法のステップb)において、これらの注入領域の各々について、それぞれのピラーがバルクの表面上のそれぞれの注入区域に形成される。
【0036】
さらに、本発明による方法は、ステップb)がピラーを形成するためのエッチングプロセスを含むことによって改善することができる。エッチングプロセスは、バルク、特に結晶性半導体で作られたバルクの表面に構造を形成するための特に簡単な方法である。さらに、バルク材料からピラーをエッチングすることにより、バルクの結晶構造がピラー内で継続することを容易に保証することができる。
【0037】
好ましくは、本発明による方法は、ステップc)の後、追加のステップd)が実行され、ステップd)が、少なくとも1つのイオンを、基板内に注入方向に沿ってピラーを通じて注入領域内への注入を含むことを特徴とすることができる。上記の利点、特に本発明の第1の態様による基板の利点を参照すると、注入方向に沿ったピラーを通じたそのような注入は、バルクへのイオンの特に制御された注入を可能にする。特に結晶チャネルおよび/または平面に沿って誘導される、完全なピラーを通って伝搬するイオンのみが、バルクに到達し、続いてバルク内の注入領域に到達することができる。また、単一のイオンの注入を提供することもできる。注入方向から離れる方向にピラー内に散乱された他のすべてのイオンは、ピラーの側面を通って緩衝層に入り、緩衝層内で阻止される。
【0038】
本発明による方法は、ステップd)の後に追加のステップe)が実行され、ステップe)が緩衝層およびピラーを除去することを含むことによってさらに改善することができる。結果として、制御された注入イオン、特に単一のイオンを有するバルクを提供することができる。注入方向から離れる方向に散乱し、緩衝層内で阻止されたすべてのイオンが除去される。好ましくは、本発明による方法のステップe)を実行した後、注入領域内の注入されたイオン、特に単一のイオンのみがバルク内に残る。
【0039】
本発明による方法の別の改善では、この方法は、ステップd)が少なくとも77°K、好ましくは少なくとも4°Kの温度への基板の冷却を含むことを特徴とすることができる。イオンの注入中に基板の温度を下げることによって、バルクの第1の材料の原子の内部運動が低減される。このようにして、注入領域に到達するイオンの数を増加させることができる。言い換えれば、注入領域への単一のイオンの注入が成功する確率を改善させることができる。
【0040】
さらに、本発明による方法は、ステップd)によって、イオンの、好ましくは単一のイオンの、注入領域への注入を位置合わせすることを含むことによって改善することができる。注入領域内へのイオンの正常な注入のそのような位置合わせにより、注入領域内へのイオンの正常な注入の後、注入手順を阻止することができる。特に、注入領域内への単一のイオンの注入も位置合わせすることができる。したがって、量子ビットの生成を改善することができる。
【0041】
本発明は、添付の図面に示される例示された実施形態を参照して、以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【発明を実施するための形態】
【0043】
同じ機能の要素は、同じ参照記号で図全体に指定されている。以下では、構成要素の方向を考慮して行われる任意の記述は、図面に示された位置を基準にして行われており、実際の位置では当然異なる可能性がある。添付の図面の説明は、詳細の説明のみを目的としている。本発明の各態様および図の特定の特徴は、技術的な意味がある場合、互いに組み合わせることができる。
【0044】
図1は、イオン80のバルク20への直接の注入反応を示している。イオン80は、注入方向82に沿って、バルク22の表面22の注入区域24に直接衝突する。バルク20に入った直後、特に衝突領域84において、イオン80は、バルク20の材料と相互作用し、異なる伝搬方向86に散乱され得る。イオン80のごく一部のみが、バルク20内で、注入領域28に向かう所望の注入方向82に沿って伝搬することがはっきりと分かる。特に、バルク20が結晶性材料から作られている場合、イオン80は、結晶チャネルおよび/または平面に入り、バルク20内で、特に横方向にも遠くまで進むことができる。したがって、注入されたイオン80の横方向の広がりは、
図1に示されるような大きさになり得る。
【0045】
図2には、本発明による基板10、特に本発明による方法によって作製された基板10が示されている。基板10の底部にも、第1の材料70から構成されるバルク20が位置付けられている。バルク20の表面22の上部に、本発明による基板10の2つの追加の要素が提供される。好ましくは、注入されるイオン80の注入方向82と同一直線上に、ピラー30は、注入区域24の上部に配置され、バルク20の表面22から離れる方向に注入方向82とは反対側に延びる。ピラー30は、第1の材料70から構成され、好ましくは、エッチングプロセスを使用してバルク20の材料から形成することができる。ピラー30の側面32を包囲し、バルク20の表面22を本質的に覆うことにより、第2の材料72から構成される緩衝層50が提供される。
【0046】
好ましくは、第1の材料70および第2の材料72は異なる。例えば、結晶シリコンまたはダイヤモンドライクカーボンを第1の材料70として使用することができ、酸化物または窒化物のような非晶質材料を第2の材料72として使用することができる。
【0047】
この実施形態では、ピラー30の高さ40が緩衝層50の厚さ52と等しく、注入方向82に関してバルク20の表面22とは反対側のピラー30の端部34にある照射面36が緩衝層50に覆われずに留まっている。これにより、イオン80は、注入方向82に沿って照射面36を介してピラー30に入り、ピラー30の軸38に沿って最初の衝突領域84を通って進み、最終的にバルク20、およびバルク20の表面22よりも下の注入深さ26に位置付けられている注入領域28に到達する。注入区域24の可能なサイズは、7×7nm2の小ささにすることができる。さらに、本発明による基板10はまた、複数の注入領域28および複数のそれぞれ配列されたピラー30も備えることができる。追加的に、ピラー30は、それぞれの注入区域24よりも大きい注入方向82に対して垂直な断面を含むことができる。
【0048】
図3は、本質的に、本発明による基板10の利点を示している。
図3では、
図1に既に示されているイオン80の衝突が、本発明による基板10の概略図に重ね合わされている。基板10の基本要素、すなわち第1の材料70から構成されるバルク20、第2の材料72から構成される緩衝層50、また第1の材料70から構成されるピラー30、およびバルク20内の注入領域28のみが示されている。衝突領域84が、ピラー30の先頭に位置決めされており、ピラー30が緩衝層50の第2の材料72によって包囲されていることがはっきりと分かる。
【0049】
したがって、注入方向82から離れる方向へのイオン80の散乱は、バルク20の表面22のかなり上に位置付けられている。散乱イオン80は、緩衝層50に入り、本質的に緩衝層50内で阻止され、この2つの図の単純な重ね合わせには示されていない。それにもかかわらず、少なくとも本質的に注入方向82と整列している結晶チャネルおよび/または平面に沿ってチャネリングされたイオン80のみが、バルク20に入り、その後、注入領域28に到達することができる。したがって、注入領域28へのイオン80の注入は、高い横方向の位置精度で提供され得る。
【0050】
この効果は
図4に示され、図中、上の行では、バルク20に直接イオン80を注入する5つの注入反応が、第2の行では、本発明による基板10の一部としてのバルク20にイオン80を注入する5つの注入反応が示されている。第1の材料70から構成されたバルク20内に直接、注入方向82に沿ってイオン80を直接注入すると、第1の行に示すように、横方向のチャネルおよび/または平面に沿って離れる方向にイオン80が伝搬していくことができることがはっきりと分かる。第2の列では、イオンもまた、結晶パネルおよび/または平面に沿って注入方向82から離れる方向に伝搬し始めるが、すぐにそれらはピラー30を離れ、第2の材料72から構成される緩衝層50に入る。これらのイオン80はすべて、緩衝層50内で阻止され、したがって、バルク20に到達することができない。この阻止を確実にするために、ピラー30の高さ40を相応に選択することができる。バルク20に到達するイオン80は、主に結晶チャネルおよび/または平面に沿ってチャネリングされ、したがって、これらのイオン80の横方向の広がりは明らかに低減する。
【0051】
同じ効果が
図5に示されている。
図5のすべての部分図は、注入方向82に沿ってバルク20内に注入されたイオン80の終点の広がりの三次元シミュレーションを示している。第1の行の2つの部分図は、バルク20のみが実装されたシミュレーションに基づいており、第2の行の部分図は、本発明による基板10について計算されたものである。第1および第2の列の部分図は、それぞれ、注入方向82に沿って、および注入方向82に対して垂直な図を示している。すでにこの比較は、注入反応のために本発明による基板10を使用することによって、イオン80の横方向の広がりが著しく低減することを示している。これは特に、本発明による基板10において、緩衝層50がピラー30(図示せず)を包囲し、イオン80をその側面32(図示せず)を通してピラー30を離れるのを効果的に阻止するという事実による。
【0052】
追加的に、第2の列の右端の2つの部分図には、緩衝層50を除去した後のイオン80が、再び注入方向82に対して垂直方向に、およびそれに沿って示されている。両方の投影図において、本発明による基板10を使用することによって、注入方向82に対して垂直な横方向の広がりを最小化することができることがはっきりと分かる。したがって、注入領域28に到達するイオン80は、高い位置精度で提供することができる。
【0053】
図6は、結晶方位およびイオン80の数が異なる場合の、注入方向82に沿ったイオン80の注入反応の比較を示している。各結晶方位について、1、10、および100個のイオン80による注入反応がそれぞれ示されている。この場合も、第1の行は、イオン80のバルク20内への直接注入を示しており、第2の行は、バルク20、ピラー30、および緩衝層50を含む、本発明による基板10内へのイオン80の注入を示している。異なる結晶方位、例えば、左側の(100)シリコンおよび(110)右側のシリコンが、イオン80に対して異なる散乱パターンを示すことがはっきりと分かる。それにもかかわらず、本発明による基板10を使用することによって、緩衝層50内に散乱したイオン80は容易に阻止することができ、チャネリングされたイオン80のみがさらに所望の方向に進み、バルク20に入り、チャネリングされた状態で所望の注入区域28(図示せず)に到達することができる。
【0054】
図7は、本発明による基板10の好ましい実施形態を示しており、それらの両方は、注入領域28へのイオン80の注入反応の位置合わせのための3つの電気接点60を含む。この場合も、本発明による基板10は、バルク20、ピラー30、およびピラー30を包囲する緩衝層50を備える。左側では、バルク20は、n層12、p層14、およびi層16を含み、したがって、後でPINダイオードとして使用することができる。それぞれ、右側では、バルク20は、n層12およびp層14のみを含み、したがって、PNダイオードとして使用することができる。どちらの場合も、電気接点60は、バルク20の底部に設けられている。右側に示すPINダイオードの場合はn層12およびi層16に接触し、PNダイオードの場合はn層12およびp層14に接触するように、他の接点60が設けられている。どちらの場合も、注入方向82に沿ったイオン80の注入領域28への注入は、電気接点60によって位置合わせすることができる電気信号を作成する。したがって、特に単一のイオン80の注入イベントの位置合わせを提供することができる。
【0055】
図8には、異なる運動エネルギーを有するイオン80、すなわち、運動エネルギーが5keVのイオン80および運動エネルギーが10keVのイオン80について、注入反応中の温度の影響が示されている。グラフは、イオン80が阻止される深さを示している。それぞれ使用されるピラー30(図示せず)の高さ40も
図8に含まれており、注入自体は位置0μmで行われている。各運動エネルギーについて、2つの異なる温度、つまり300°Kの温度および4°Kの温度での注入反応が示されている。両方の運動エネルギーについて、バルク20内のイオン80の範囲(図示せず)が2つの異なる温度で類似しており、最大範囲でのより低い温度でのイオンの阻止が明らかに増強されることがはっきりと分かる。したがって、所望の注入深さ26におけるイオンの蓄積は、低温、特に4℃でイオン80を注入することによって増強することができる。
【符号の説明】
【0056】
参照リスト
10 基板
12 n層
14 p層
16 i層
20 バルク
22 表面
24 注入区域
26 注入深さ
28 注入領域
30 ピラー
32 側面
34 端部
36 照射面
38 軸
40 高さ
50 緩衝層
52 厚さ
60 電気接点
70 第1の材料
72 第2の材料
80 イオン
82 注入方向
84 衝突領域
86 伝搬方向
【国際調査報告】