(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】予測モデルを決定するための方法、MKマーカのKアプレットの進展を予測するための方法および関連デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220304BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B10/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526444
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2018081267
(87)【国際公開番号】W WO2020098936
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521205917
【氏名又は名称】キナプス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロンゴ・ドス・サントス,クラリス
(72)【発明者】
【氏名】マルティーニ,ジャン-バティスト
(72)【発明者】
【氏名】トプラカルン,ユリエル
(72)【発明者】
【氏名】ベグレビル,ブリュノ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA01
4C096AB41
4C096AD14
4C096DC20
4C096DC24
(57)【要約】
本発明の一態様は、中枢神経系病理の予後を支援するために、マーカMnのNアプレットからマーカMkのKアプレットの値を予測するための予測モード(MP)を決定するための方法(100)に関するものであり、この方法は、複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMnの複数のNアプレットを得るために、時間T0においてマーカMnのNアプレットを取得するステップ(1E1)と;複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMkの複数のKアプレットを得るために、T0以上の時間T*においてマーカMkのKアプレットを取得するステップ(1E2)と;マーカMnの複数のNアプレットおよびマーカMkの複数のKアプレットから、時間Tにおいて取得されたマーカMnの任意のNアプレットを、ΔT=T*-T0での時間T+ΔTにおけるマーカMkのKアプレットと関連づけるための予測モデル(MP)を決定するステップ(1E3)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系の病理の予後を支援するために、マーカMnのNタプルからマーカMkのKタプルの値の予測モデル(MP)を決定するための方法(100)であって、
- 複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMnの複数のNタプルを得るために、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ(1E1)、
- 複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMkの複数のKタプルを得るために、T0以上の時間T
*においてマーカMkのKタプルを取得するステップ(1E2)、
- マーカMnの複数のNタプルおよびマーカMkの複数のKタプルから、時間Tにおいて取得されたマーカMnの任意のNタプルを、ΔT=T
*-T0での時間T+ΔTにおけるマーカMkのKタプルと関連づけることを可能にする予測モデル(MP)を決定するステップ(1E3)
を含むことを特徴とする、方法(100)。
【請求項2】
マーカMnのNタプルまたはマーカMkのKタプルのうちの少なくとも1つのマーカがイメージングマーカまたは生物学的マーカであることを特徴とする、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
マーカMnのNタプルのマーカのうちの少なくとも1つが、
- 海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚、および皮質-大脳溝の開口部から選択された被検者の脳の一部の体積測定を示すイメージングマーカであって、被検者の脳の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと、
- 白質病変の体積などの病変負荷を示すイメージングマーカであって、被検者の脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと、
- グルコース代謝を示すマーカ、アミロイド負荷を示すマーカ、ドーパミン作動系を示すマーカ、および脳酸素化のレベルを示すマーカから選択された、脳の機能的なイメージングマーカと
から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
マーカMnのNタプルのマーカのうちの少なくとも1つが、
- 被検者の認識マーカ、
- 被検者の運動マーカ、
- 被検者の気分マーカ、
- 被検者のデモグラフィックマーカ、
- 被検者の自律性のマーカ、
- 被検者の疾病における進行のステージに関するマーカ
から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
マーカMkのKタプルのマーカのうちの少なくとも1つが、
- 海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚、および皮質-大脳溝の開口部から選択された被検者の脳の一部の体積測定を示すイメージングマーカであって、被検者の脳の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと、
- 白質病変の体積などの病変負荷を示すイメージングマーカであって、被検者の脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと、
- グルコース代謝を示すマーカ、アミロイド負荷を示すマーカ、ドーパミン作動系を示すマーカ、および脳酸素化のレベルを示すマーカから選択された、脳の機能的なイメージングマーカと
から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
マーカMkのKタプルのマーカのうちの少なくとも1つが、
- 被検者の認識マーカ、
- 被検者の運動マーカ、
- 被検者の気分マーカ、
- 被検者の自律性のマーカ、
- 被検者の疾病における進行のステージのマーカ
から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
方法が、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ(1E1)の後、予測モデル(MP)を決定するステップ(1E3)の前に、マーカ異常値を補正するステップを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
方法が、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ(1E1)の後、予測モデル(MP)を決定するステップ(1E3)の前に、マーカMnの欠損値の代わりに所定値を追加するステップを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
方法が、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ(1E1)の後、予測モデル(MP)決定するステップ(1E3)の前に、イメージングマーカの品質を制御するステップを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
マーカMnの複数のNタプルを得るためにマーカMnのNタプルを取得するステップが、複数の時間T0について行われ、予測モデルを決定するステップが複数の時間T0のうちの各時間T0についてマーカMnのNタプルを考慮に入れることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
中枢神経系の病理の予後を支援するために、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(100)を使用して得られたマーカMkのKタプルの予測モデル(MP)を使用して被検者のマーカMkのKタプルの経過を予測するための方法(200)であって、
- 時間TにおいてマーカMnのNタプルを取得するステップ(2E1)、
- 予測モデルおよび被検者に関するマーカMnのNタプルから、時間T+ΔTにおける被検者に関するマーカMkのKタプルの予測値を決定するステップ(2E2)
を含むことを特徴とする、方法(200)。
【請求項12】
時間T+ΔTにおいてマーカMkのKタプルの予測値を決定するステップ(2E2)の後に、
- 時点T+ΔTにおいてマーカMkのKタプルを取得するステップ、
- 予測モデルを修正するステップ
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法(100、200)を実施するための手段を備える、デバイス(Dl)。
【請求項14】
請求項13に記載のデバイス(Dl)に、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法(100、200)のステップを行わせる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムが記録されている、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、中枢神経系の疾患および人の被検者におけるこれらの疾患の経過予測の支援の分野に関するものである。本発明は、詳細には、中枢神経系の病理の予後を支援するための少なくとも1つのマーカの予測モデルを決定するための方法、中枢神経系の病理の予後を支援するために被検者におけるマーカの経過を予測するための方法、および前記方法と関連づけられるデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系疾病は、世界中で20億人以上の人々を襲っている。神経学的疾患の中で、神経変性病(たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病)は、人々の加齢に関連した深刻度および増加する頻度のために主たる位置を占める。世界中で、5000万人がパーキンソン病を患い、1000万人がアルツハイマー病を患っている。次いで、多発性硬化症などの炎症性の疾病が約230万人を襲っている。先進国における人々の加齢には記憶障害および関連疾患の増加が伴う。疫学的研究は、この分野および対応する症状において存在する多岐にわたる機能不全を強調した。
【0003】
第1の課題は鑑別診断のそれである。神経変性病の中で、アルツハイマー病は多くの研究の対象であった。しかしながら、記憶障害、空間および時間における自身の方向づけの困難、または行動障害などの考えられる症状は、アルツハイマー病に固有のものではない。長い間、アルツハイマー病の診断は、死後にアミロイド斑および脳内の変性ニューロンのもつれといった証拠によって、または疾病が進行した臨床病期において、ようやく確認されると考えられていた。パーキンソン病において、本態性振戦と退行性パーキンソン症候群の間の鑑別診断を確立するために今日使用されている画像検査のうちの1つ(SPECT DaTscan)は、そのままでは、特発性パーキンソン病と他の症候群(進行性の核上性麻痺および多全身性萎縮)を区別することも、パーキンソン認知症とレビー小体認知症を区別することも可能としない。
【0004】
別の主要な問題は予後である。たとえば、多発性硬化症については、今日行われているような脳および脊髄の病変の人手による読み取りは、あまり正確でなく、面倒であり、そのままで十分な予後のマーカを構成するわけではない。しかしながら、この疾病に対する他のことについては、患者を組み入れたときの正確な予後を有することが、治験のために、より小さい集団に対するより短い研究を実行することを可能にするはずで、時間の節約を生み、製薬研究室およびバイオ企業にとって大きな節約となる。
【0005】
他方では、日常の臨床診療については、治療方針と患者の管理を調整することが予後の仕事となる。詳細には、短期間(2年)で疾病が進行しそうな患者と中期(5年)で疾病が進行しそうな患者では、適合された管理が必要となる。その上、認知力低下および自律性喪失の予後は、個人に合わせた患者介護のための主要な問題であり、資源を計画するためのおよび介護者を編成するための主要な問題でもある。
【0006】
したがって、患者を管理し、症状の進行を遅らせる治療のより優れた効果を望むために、特に初期段階においてこれらの疾病の経過を予測するのを助けることが重要であり;そのような予後は、疫学的研究を実行してこれらの疾患の知見を改善するためにも有用である。
【0007】
そのような予後を実行するために、特許EP 1 491 889 A2は、患者の脳脊髄液(すなわちCSF)の中のA3ペプチド(x-41)のレベルの経過が測定される、アルツハイマー病の診断を支援するための方法を提案している。しかしながら、そのような方法はこの液のサンプルを必要とし、したがって侵襲性である。その上、そのような方法は、2回の測定の間の比較的長い時間の後に患者の状態のインディケーションを与えるのみであり、したがって初期管理を可能にしない。
【0008】
侵襲的検査の使用を回避するために、磁気共鳴画像法(すなわちMRI)を使用して疾病を識別し、その経過を予測することが提案されている。たとえば、特許出願CA 2 565 646は、医用画像データを使用して臨床状態を予測するためのシステムを提案している。より詳細には、この著者らは、MRI、X線イメージング、シンチグラフィー、コンピュータ断層撮影(CT)、マイクロ波、赤外線、ポータルイメージングまたは光学イメージング、蛍光透視法または陽電子放出断層撮影法(PET)を含む方法によって得られた脳体積データの収集に基づく、患者の臨床状態の経過の予測モデルを提案している。しかしながら、上記の方法の結果として提供されるスコアは総合的なスコアであり、関係のある患者情報に対する独立したアクセスを可能にしない。その上、この臨床状態予測システムは静的モデルであり、このモデルの経時変化は予見されない。その上、The Lancet(2014年、614-629頁、Duboisら)に公開された研究は、もっぱら脳イメージングに基づく基準の適用が、アルツハイマー病の患者の中に、アルツハイマー病において観測され得る兆候を示したもののアルツハイマー病ではない多くの事例を含むことを引き起こすことを示した。これらの偽陽性は、療法試験(treatment trial)において記録された低い効能比を特に説明し得るはずである。
【0009】
偽陽性を低減するかさらには解消するために、Duboisらはアルツハイマー病の推定されたステージに応じて適合される新規のマーカの使用を提案している。これらのマーカは、アルツハイマー病の存在を確認するために、PET走査と、脳脊髄液の中のタウ蛋白およびアミロイド蛋白のアッセイとを組み合わせるものである。しかしながら、著者らは、これらの基準が、割高および/または実施するのが困難な検査を必要とし、したがって恐らくレフェラルセンタに確保されるべきであることを指摘している。その上、これらの基準は、そのままでは他の神経変性病の存在を除外するのに十分なものではない。
【0010】
同様に、Jussi Mattilaらによる研究(J Alzheimer’s Dis. 2011;27(1):163-76)は、特にアルツハイマー病に関して、様々なマーカの寄与をそれらの関連性によって重み付けすることの利益を強調している。したがって、被検者の状態を表すように、これらのマーカから加重インデックスが構築され得る。提案された方法は、以前に診断された被検者を含む基準ベースと比較することにより、臨床医を、彼または彼女の診断決定においてガイドし得る。しかしながら、これも、臨床医が詳細情報へアクセスすることを可能にしない総合的なインデックスからの予測である。
【0011】
したがって、中枢神経系の障害に関連した疾患があり得る被検者において、これらの病理の異なるマーカ特性の経過を予測するのを助けるために、簡単で再現可能なやり方で実施されることができる方法に対する必要性がある。アルツハイマー病または関連疾病などの疾病の診断は多くの専門分野にわたり、常に完全な臨床試験を必要とするものであるが、マーカの経過予測に基づき、方向づけおよび予後に役立つツールを有し、かくして、被検者を分類して、完全な臨床の症候群が発現するリスクがあると推断することを可能にする他の調査を追求するのが望ましい。
【0012】
また、これらのマーカの経過を予測するための方法の実施ができるように、複数の被検者の神経学的状態と関連づけられ、マーカ値を含むデータセットならびにそれらの経時変動を有するのが望ましい。必要に応じて、経過予測モデルの実施中に記録されたパラメータの修正を考慮に入れる経過予測モデルを開発し得ることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1491889明細書
【特許文献2】カナダ国特許出願公開第2565646明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】The Lancet(2014年、614-629頁、Duboisら)
【非特許文献2】Jussi Mattilaら、J Alzheimer’s Dis. 2011;27(1):163-76
【非特許文献3】Leys, C.、Ley, C.、Klein, O.、Bernard, P.、およびLicata, L、(2013年)、「Detecting outliers: Do not use standard deviation around the mean, use absolute deviation around the median」、Journal of Experimental Social Psychology、49(4)、764-766頁
【非特許文献4】Pizarro, R. A.、Cheng, X.、Barnett, A.、Lemaitre, H.、Verchinski, B. A.、Goldman, A. L.、...およびWeinberger, D. R.、(2016年)、「Automated quality assessment of structural magnetic resonance brain images based on a supervised machine learning algorithm.」、Frontiers in neuroinformatics, 10, 52
【非特許文献5】Esteban, O.、Birman, D.、Schaer, M.、Koyejo, O. O.、Poldrack, R. A.、およびGorgolewski, K. J.、(2017年)、「MRIQC: Advancing the automatic prediction of image quality in MRI from unseen sites.」、PloS one、12(9)、e0184661
【非特許文献6】SPM(www.fil.ion.ucl.ac.uk/spm)
【非特許文献7】FSL(http://fsl.fmrib.ox.ac.uk/fsl/fslwiki/)
【非特許文献8】Freesurfer(http://freesurfer.net)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、第1の複数のマーカから第2の複数のマーカの値を予測することを可能にすることにより、上記で論じられた問題の解決策を提供するものである。このために、本発明は、予測モデルを得るための方法と、前記モデルを使用する方法とを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、中枢神経系の病理の予後を支援するために、マーカMnのNタプルからマーカMkのKタプルの値の予測モデルを決定するための方法に関し、前記方法は:
- 複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMnの複数のNタプルを得るために、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ;
- 複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMkの複数のKタプルを得るために、T0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップ;
- マーカMnの複数のNタプルおよびマーカMkの複数のKタプルから、時間Tにおいて取得されたマーカMnの任意のNタプルを、ΔT=T*-T0での時間T+ΔTにおけるマーカMkのKタプルと関連づけることを可能にする予測モデルを決定するステップ
を含む。
【0017】
本発明によって、被検者における参照マーカの値に応じて同じ被検者における1つ以上のマーカの値を予測するために、後に使用され得る予測モデルが利用可能である。
【0018】
本発明の第1の態様による方法は、前段においてまさに論じられた特徴に加えて、個々に、または任意の技術的に可能な組合せにおいて、考えられる以下の追加の特徴のうちの1つ以上を有し得る。
【0019】
一実施形態では、マーカMnのNタプルまたはマーカMkのKタプルのうちの少なくとも1つのマーカは、イメージングマーカまたは生物学的マーカである。
【0020】
一実施形態では、マーカMnのNタプルのマーカのうちの少なくとも1つは:
- 海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚、および皮質-大脳溝の開口部(opening of cortical-cerebral sulci)から選択された被検者の脳の一部の体積測定を示すイメージングマーカであって、被検者の脳の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと;
- 白質病変の体積などの病変負荷を示すイメージングマーカであって、被検者の脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと;
- グルコース代謝を示すマーカ、アミロイド負荷を示すマーカ、ドーパミン作動系を示すマーカ、および脳酸素化(brain oxygenation)のレベルを示すマーカから選択された、脳の機能的なイメージングマーカと
から選択される。
【0021】
一実施形態では、マーカMnのNタプルのマーカのうちの少なくとも1つは:
- 被検者の認識マーカ;または
- 被検者の運動(motor)マーカ;および
- 被検者の気分マーカ;
- 被検者のデモグラフィックマーカ;
- 被検者の自律性のマーカ;
- 被検者の疾病における進行のステージに関するマーカ
から選択される。
【0022】
一実施形態では、マーカMnのNタプルのうちの少なくとも1つのマーカは、タウタンパク質、Pタウタンパク質およびAbeta42タンパク質から選択された少なくとも1つのタンパク質の脳脊髄液中の濃度を示すマーカであり、前記濃度の測定はインビトロで行われる。
【0023】
一実施形態では、マーカMkのKタプルのマーカのうちの少なくとも1つは:
- 海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚、および皮質-大脳溝の開口部から選択された被検者の脳の一部の体積測定を示すイメージングマーカであって、被検者の脳の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと;
- 白質病変の体積などの病変負荷を示すイメージングマーカであって、被検者の脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出されたものである、イメージングマーカと;
- グルコース代謝を示すマーカ、アミロイド負荷を示すマーカ、ドーパミン作動系を示すマーカ、および脳酸素化のレベルを示すマーカから選択された、脳の機能的なイメージングマーカと
から選択される。
【0024】
一実施形態では、マーカMkのKタプルのマーカのうちの少なくとも1つは:
- 被検者の認識マーカ;または
- 被検者の運動マーカ;および
- 被検者の気分マーカ;および
- 被検者の自律性のマーカ;
- 被検者の疾病における進行のステージのマーカ
から選択される。
【0025】
一実施形態では、この方法は、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップの後に、好ましくはT0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップの後、予測モデルを決定するステップの前に、マーカ異常値を補正するステップを含む。
【0026】
一実施形態では、異常値を補正するステップは:
- マーカMnのNタプルの各マーカMnについて、前記マーカMnの値が異常値であると判断される被検者の数を決定するサブステップ;
- 各マーカMnについて、問題のマーカMnの値が異常値であると判断される被検者の数が被検者の閾値数よりも多い場合には、問題のマーカMnが削除され、前記マーカは、予測モデルを決定するステップ中は考慮に入れられないサブステップ;
- 各マーカMnについて、問題のマーカMnの値が異常値であると判断される被検者の数が被検者の閾値数以下の場合には、該当する被検者について、問題のマーカMnの値を、前記マーカMnに最も近い四分位数の値で置換するサブステップ;
を含み、
マーカMnの値Xiは、次の関係:
Med-3σb≦Xi≦Med+3σb
を満たさなければ被検者に関する異常値であると判断され、ここで、Medは複数の被検者のマーカMnの値Xiの中央値であり、σbはσb=b×DMedとなるような偏差の値であり、bは事前定義された係数であって、DMed=median(│X1-Med│,...,│Xn-Med│)である。
【0027】
一実施形態では、この方法は、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップの後、予測モデルを決定するステップの前に、マーカMnの欠損値の所定値を追加するステップを含む。
【0028】
一実施形態では、マーカMnの欠損値の所定値を追加するステップは:
- マーカMnの欠損値と関連づけられる被検者に最も近い3人の被検者を決定するサブステップ;
- 最も近い3人の被検者に対する欠損マーカMnの平均値を計算するサブステップ;
- マーカMnの欠損値を追加するサブステップであって、前記値は欠損マーカMnの平均値を計算するサブステップにおいて計算された平均値と等しいものであるサブステップ
を含む。
【0029】
一実施形態では、この方法は、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップの後、予測モデルを決定するステップの前に、イメージングマーカの品質を制御するステップを含む。
【0030】
一実施形態では、イメージングマーカの品質を制御するステップは、各イメージングマーカについて:
- マーカの値の決定を可能にした取得手順の順守をチェックするサブステップであって、手順を順守しない画像と関連づけられるイメージングマーカは欠損と見なされるサブステップ;
- 手順を順守して画像が得られているとき、各画像について複数の記述子を得るために、マーカの値を決定することを可能にした画像の品質をチェックするサブステップ;
を含み、
イメージングマーカの品質を制御するステップは、それぞれの複数の記述子について:
- 分類器を使用して複数の記述子の品質をチェックするサブステップであって;
- 複数の記述子の品質が所定の閾値を上回るとき、イメージングマーカが保持され;
- 複数の記述子の品質が所定の閾値を下回るとき、イメージングマーカが欠損と見なされるサブステップ
を含む。
【0031】
一実施形態では、マーカMnの複数のNタプルを得るためにマーカMnのNタプルを取得するステップは、複数の時間T0について行われ、予測モデルを決定するステップは、複数の時間T0のうちの各時間T0について、マーカMnのNタプルを考慮に入れる。
【0032】
本発明の第2の態様は、中枢神経系の病理の予後を支援するために、前出の請求項のいずれか一項に記載の方法を使用して得られたマーカMkのKタプルの予測モデルを使用して被検者のマーカMkのKタプルの経過を予測するための方法であって:
- 時間TにおいてマーカMnのNタプルを取得するステップ;
- 予測モデルおよび被検者に関するマーカMnのNタプルから、時間T+ΔTにおける被検者に関するマーカMkのKタプルの予測値を決定するステップ
を含むことを特徴とする方法に関するものである。
【0033】
一実施形態では、本発明の第2の態様による方法は、時間T+ΔTにおいてマーカMkのKタプルの予測値を決定するステップの後に:
- 時間T+ΔTにおいてマーカMkのKタプルを取得するステップ;
- 予測モデルを修正するステップ
を含む。
【0034】
一実施形態では、期間ΔTは6か月以上である。
【0035】
一実施形態では、期間ΔTは60か月以下である。
【0036】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様または第2の態様による方法を実施するための手段を備えるデバイスに関するものである。
【0037】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様によるデバイスに、本発明の第1または第2の態様による方法のステップを行わせる命令を含むコンピュータプログラムに関するものである。
【0038】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様によるコンピュータプログラムが記録されているコンピュータ可読媒体に関するものである。
【0039】
本発明およびその各種用途は、以下の説明を読み取り、添付の図を調べれば一層よく理解されよう。
【0040】
図は、指示するために記載され、決して本発明に対する制限目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1の態様による方法の流れ図である。
【
図3】本発明の第2の態様による方法の流れ図である。
【
図4】本発明の第3の態様によるデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
別段の定めがない限り、異なる図に出現する同一の要素は一意の参照を有する。
【0043】
可能性のあるマーカ
マーカは、脳イメージングマーカ(特に解剖学的イメージングマーカまたは機能的イメージングマーカ)、被検者の認識スコア、被検者の運動スコア、被検者の自律性スコアおよび被検者の気分スコアから選択されてよい。
【0044】
脳イメージングマーカは、脳または脊髄の少なくとも1つの部位の核磁気共鳴(MRI)画像から導出され得る、脳または脊髄の少なくとも1つの部位の体積測定を示すイメージングマーカ(解剖学的イメージングマーカに対応する)を含み得る。これらのマーカは、海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚および/または皮質-大脳溝の開口部から選択された被検者の脳の一部の体積測定に特に関連し得る。脳イメージングマーカは、白質病変の体積などの病変負荷に関するマーカも含み得る。
【0045】
脳イメージングマーカは機能的イメージングマーカを含み得る。機能的イメージングパラメータは、陽電子放出断層撮影法(PET)または単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって決定される。SPECTは、放射性生成物を投入することによる代謝または分子活性の測定ができ、したがって、使用されるトレーサに依存して、ある特定の生物学的プロセスを明らかにする。したがって、機能的イメージングマーカはグルコース代謝に関するマーカ、アミロイド負荷に関するマーカおよび/またはドーパミン作動系に関するマーカを含み得る。たとえば、グルコース代謝(脳の異なるゾーンにおいて血糖値を測定することによって評価される)は18F-FDG PETによって、アミロイド負荷(アミロイド斑のレベルに対応する)はアミロイドPETによって決定され得、または、ドーパミン作動系(線条体におけるドーパミンのレベルおよびドーパミン輸送系の全体的な状態に対応する)は、123I-FP-CIT SPECT(DaTscan)によって決定され得る。機能的イメージングマーカは、血液酸素レベル依存(BOLD)信号の測定のためのマーカを含み得る。これは、ヘモグロビンによって搬送される酸素の量の変動の測定であり;この変化は脳の神経細胞の活動に関連し、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)技術を用いて測定される。
【0046】
マーカは、梗塞したゾーンの体積など、脳卒中(stroke)の深刻度および/または起こり得るその後遺症に関連し得る。これらのマーカは、脳の少なくとも1つの部位のMRIから導出される。マーカは、たとえば拡散強調イメージング(diffusion-weighted imaging)(DWI)技術を用いて測定された、所与の脳領域における平均水拡散率の測定値など、白質の完全性を示すマーカを含み得る。
【0047】
マーカは、たとえば血液検査または唾液検査から被検者のDNAの研究によって測定された、APOE遺伝子などのいくつかの遺伝子の存在に関連したものであり得る。
【0048】
マーカは、被検者のデモグラフィックデータに関することもある。デモグラフィックデータは、詳細には、被検者の社会文化的なレベル、性別および/または年齢から選択されたデータを意味する。マーカは、社会経済的地位の尺度(SESS)におけるスコアから成ることもある。
【0049】
マーカは、認識スコアに関連することもある。認識スコアは、視覚的なものであろうと言葉によるものであろうと、情報を思い出したり処理したりする被検者の能力を定義するパラメータと理解され、注意、計画および言語使用を測定する、特に実行上の手段的(executive and instrumental)機能である。認識スコアは、当業者に知られている様々な方法によって測定され得る。それは、たとえば、MMSE(ミニメンタルステート検査、またはフォルスタイン検査)、ADAS-Cog(アルツハイマー病評価尺度-認識)、6-CIT(6項目の認識機能障害検査)またはGPCOG(認識の一般開業医評価)検査の中から選ばれる認識力検査であり得る。使用され得る他の検査には、たとえばMOCA(モントリオール認知度評価)、BEC 96(Cognitive Assessment Battery)(認識評価バッテリ)またはマティス尺度(Mattis scale)がある。たとえば、MMSE検査は、人の認識状態の総合的な評価を提供する。MMSE検査は、方向づけ、学習、注意、計算および言語スキルを評価するものである。この検査によって得られたスコアは本発明の範囲内で使用され得る。
【0050】
マーカは運動スコアに関連し得る。運動スコアは、歩行、バランス、筋肉が抵抗に対して力をかける能力などの運動機能の試験を表すスコアである。運動スコアは異なる方法によって測定され得、たとえば、統合パーキンソン病評定尺度(Unified Parkinson Disease Rating Scale)の運動障害疾患協会(Movement Disorder Society)の改訂版(MDS-UPDRS)、総合障害度尺度(EDSS)またはバーグバランス尺度(BBS)から選択された検査でよい。
【0051】
マーカは自律性スコアに関連し得る。自律性スコアは、個人の衛生状態、歩行運動または個人資産管理の自律性のレベルなど、被検者の依存および自律性の喪失のレベルであると理解される。自律性スコアは、たとえばIADL(手段的日常生活動作)またはFAQ(Functional Activities Questionnaire)(機能的活動質問表)から選ばれた検査といった様々な方法によって測定され得る。
【0052】
マーカは気分スコアに関連し得る。気分スコアは、患者の抑うつまたは不安状態の深刻度のレベルなど、患者の気分の変動を表すスコアであると理解される。気分スコアは異なる方法によって測定され得、たとえば、憂うつ気分尺度(Depressive Mood Scale)(DHS)、抑うつ不安ストレス尺度(Depression Anxiety Stress Scale)(DASS)またはベックうつ病調査票(Beck Depression Inventory)(BDI)から選択された検査でよい。
【0053】
そのようなマーカは、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭部の大葉変性(lobar degeneration)、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、癲癇、双極性障害、統合失調症、自閉症、抑うつ症、外傷後の障害または頭部の外傷に先立つ状態を表し得る。
【0054】
予測モデルを決定するための方法
図1および
図2に示された本発明の第1の態様は、中枢神経系の病理の予後を支援するために、マーカMnのNタプルからのマーカMkのKタプルの値の予測モデルMPを決定するための方法100に関するものである。一実施形態では、Kは1(含む)と20(含む)の間にあり、すなわちマーカMkのKタプルは、1(含む)と20(含む)の間の複数のマーカを含む。一実施形態ではK=1である(すなわち、KタプルはマーカMkを1つだけ含む)。
【0055】
本発明の第1の態様による方法100は、複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMnの複数のNタプルを得るために、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ1E1を含む。この取得ステップは、1つ以上の画像を使用することにより、作業者がマーカを入力することにより、および/またはデータベースから前記マーカを取り出すことにより実行され得る。一実施形態では、被検者数は100(百)人以上である。ここで、マーカMnは被検者毎に同一であり、被検者毎に異なり得るのは前記マーカの値のみであることが理解されよう。したがって、各被検者は、N個のマーカMnから成るNタプルによって特徴づけられ得る。たとえば、Nタプルは、被検者の機能的イメージングマーカ、被検者の認識マーカ、被検者の自律性マーカ、被検者の運動スコアマーカ(すなわち運動マーカ)および/または被検者の気分スコアマーカ(すなわち気分マーカ)を含み得、これらの異なるマーカの値は一般的には被検者毎に異なるものである。
【0056】
方法100は、次いで、複数の被検者のうちの各被検者について、マーカMkの複数のKタプルを得るために、T0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップ1E2を含む。この取得ステップは、1つ以上の画像を使用することにより、作業者がマーカを入力することにより、および/またはデータベースから前記マーカを取り出すことにより実行され得る。上記と同じように、マーカMkは被検者毎に同一であり、被検者毎に異なり得るのは前記マーカの値のみであることが理解されよう。たとえば、Kタプルは、被検者の機能的イメージングマーカ、被検者の認識マーカ、被検者の自律性マーカ、被検者の運動マーカおよび/または被検者の気分マーカを含み得、これらの異なるマーカの値は一般的には被検者毎に異なるものである。
【0057】
方法100は、最後に、マーカMnの複数のNタプルおよびマーカMkの複数のKタプルから、時間Tにおいて取得されたマーカMnの任意のNタプルを、ΔT=T*-T0での時間T+ΔTにおけるマーカMkのKタプルと関連づけることを可能にする予測モデルMPを決定するステップ1E3を含む。
【0058】
したがって、マーカMnのNタプルからマーカMkのKタプルの値を予測するためのモデルは、時間Tにおいて測定されたマーカMnのNタプルを被検者に対応する入力として採用し、ΔT=T*-T0での時間T+ΔTにおける問題の被検者のマーカMkのKタプルの値を確立することを可能にするモデルであると理解される。この予測は、中枢神経系の障害に関連する可能性がある疾患に関する対診に続く試験中に日常的に決定される限られた数の関係のあるパラメータ(ここではマーカMnのNタプル)を考慮に入れることにより、可変性のパラメータの経過、詳細には被検者のイメージングフェノタイプ(ここではマーカMkのKタプル)を確実に予測し得ることを本発明者が発見したという事実によって可能になる。言い換えれば、これらのパラメータは、被検者およびダメージのタイプに依存して異なる様式で経時変化するが、マーカ(ここではマーカMkのKタプル)の経過の速度およびタイプは、可変性の関係のあるマーカ(ここではマーカMnのNタプル)のセットの値を考慮に入れることによって予測され得る。所与の時間帯の最後においてマーカMkのKタプルの値を予測することが、患者の管理を支援するツールを構成し;臨床観察と関連づけられたこれらのマーカMkの値は、臨床医が、症状の経過を予測すること、より一般的には患者が有する病理のタイプをより良く定義することを可能にするステップのうちの1つである。
【0059】
一実施形態では、マーカMnのNタプルまたはマーカMkのKタプルのうちの少なくとも1つのマーカは、イメージングマーカまたは生物学的マーカである。また、例示の一実施形態では、この方法は、複数の被検者のうちの各被検者について、1つ以上のイメージング手順(たとえば脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像法)を行うステップを含む。この方法は、次いで、このように行われた各イメージング手順について、各被検者に関する少なくとも1つのマーカ(たとえば脳または脊髄の一部の体積測定を示すマーカ)を計算するステップを含む。好ましくは、マーカMnのNタプルまたはマーカMkのKタプルは、MRによって取得された画像から導出された少なくとも1つの解剖学的イメージングマーカを含む。
【0060】
一実施形態では、T*=T0すなわち時間T0における被検者のマーカNタプルMnの知見はマーカMkのKタプルの値を同時に予測することを可能にする。
【0061】
一実施形態では、マーカMnの複数のNタプルを得るためにマーカMnのNタプルを取得するステップは複数の時間Ti(iは自然数)について行われ、予測モデルを決定するステップは、複数の時間Tiのうちの各時間Tiについて、マーカMnのNタプルを考慮に入れる。実際、マーカは、線形的、対数的、または指数的に経時変化し得る。したがって、もたらされる予測モデルMPは、それぞれの経過プロファイルについて異なり得る。予測モデルMPの決定のために複数の時間Tiを使用することは、非自明な(たとえば非線形の)経過の場合に、より的確な予測モデルを得ることを可能にする。複数の時間Tiの場合には、時間Tiと時間Ti+1の間の時間はΔTiと記されることになる。その上に、ΔTの定義は維持され、すなわちΔT=T*-T0である(i=0については、T0はTiと等しい)。
【0062】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、少なくとも1つのマーカMnを含み、好ましくは少なくとも2つのマーカMnを含む。言い換えれば、Nは1以上、または2以上でさえある。しかしながら、1と50の間(すなわちNは1と50の間にある)、さらには2と10の間(すなわちNは2および10の間にある)の複数のマーカMnなど、より多数のマーカMnが企図され得る。
【0063】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚、および皮質-大脳溝の開口部から選択された被検者の脳の一部の体積測定を示す少なくとも1つのイメージングマーカを含み、前記マーカは、被検者の脳の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出される。
【0064】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、白質病変の体積などの病変負荷を示す少なくとも1つのイメージングマーカを含み、前記マーカは、被検者の脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出される。
【0065】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、グルコース代謝を示すマーカ、アミロイド負荷を示すマーカ、ドーパミン作動系を示すマーカ、および脳酸素化のレベルを示すマーカから選択された少なくとも1つの脳の機能的なイメージングマーカを含む。
【0066】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、被検者の認識マーカ;被検者の運動マーカ;被検者の気分マーカ;被検者のデモグラフィックマーカ;被検者の自律性のマーカ;および/または疾病における被検者の進行ステージに関するマーカから選択された少なくとも1つのマーカを含む。
【0067】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、タウタンパク質、Pタウタンパク質およびAbeta42タンパク質から選択された少なくとも1つのタンパク質の脳脊髄液中の濃度を示す少なくとも1つのマーカを含み、前記濃度の測定はインビトロで行われる。
【0068】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、被検者によってとられた医薬品分子のモード、すなわち被検者によってとられた薬物療法およびこの療法の投薬量に関する少なくとも1つのマーカを含む。
【0069】
一実施形態では、マーカMnのNタプルは、脳または脊髄における白質病変の場所および/または数に関する少なくとも1つのマーカを含む。
【0070】
一実施形態では、マーカMkのKタプルは、海馬体積、全脳体積、小脳体積、皮質下構造の体積、皮質厚、および皮質-大脳溝の開口部から選択された被検者の脳の一部の体積測定を示す少なくとも1つのイメージングマーカを含み、前記マーカは、被検者の脳の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出される。
【0071】
一実施形態では、マーカMkのKタプルは、白質病変の体積などの病変負荷を示す少なくとも1つのイメージングマーカを含み、前記マーカは、被検者の脳または脊髄の少なくとも1つの部位の磁気共鳴画像から導出される。
【0072】
一実施形態では、マーカMkのKタプルは、グルコース代謝を示すマーカ、アミロイド負荷を示すマーカ、ドーパミン作動系を示すマーカ、および脳酸素化のレベルを示すマーカから選択された、少なくとも1つの脳の機能的なイメージングマーカを含む。
【0073】
一実施形態では、マーカMkのKタプルは、被検者の少なくとも1つの認識マーカ;被検者の運動マーカ;被検者の気分マーカ;被検者の自律性マーカ;および/または疾病における被検者の進行に関するマーカを含む。
【0074】
異常値または欠損データの管理
時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップ中、またはT0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップ中に、取得エラーが、異常値または欠損マーカをもたらす異常値データを引き起こす可能性がある。
【0075】
そのようなデータ(またはマーカ)は劣化した予測モデルを引き起こし得る。したがって、そのようなデータ(またはマーカ)を識別して補正することが重要である。
【0076】
この目的のために、一実施形態では、この方法は、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップの後に、好ましくはT0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップの後、予測モデルを決定するステップの前に、マーカ異常値を補正するステップを含む。
【0077】
一実施形態では、マーカ異常値を補正するステップは、マーカMnのNタプルの各マーカMnについて、前記マーカMnの値が異常値であると判断される被検者の数を決定するサブステップを含む。このサブステップの最後には、Nタプルの各マーカMnについて、前記マーカの値が異常値であると考えられる被検者の数が利用可能である。
【0078】
マーカ異常値を補正するステップは、次いで、各マーカMnについて、問題のマーカMnの値が異常値であると考えられる被検者の数が被検者の閾値数よりも多ければ問題のマーカMnを削除するサブステップを含み、前記マーカは、予測モデルを決定するステップの間、考慮に入れられない。一実施形態では、被検者の閾値数は、複数の被検者の総数の5%と等しい。
【0079】
マーカ異常値を補正するステップは、次いで、各マーカMnについて、問題のマーカMnの値が異常値であると判断される被検者の数が被検者の閾値数以下であれば、該当する被検者について、問題のマーカMnの値を、前記マーカMnの最も近い四分位数の値で置換するサブステップを含む。
【0080】
マーカMnの値Xiは、次の関係:
Med-3σb≦Xi≦Med+3σb
を満たさなければ被検者に関する異常値であると判断され、ここで、Medは複数の被検者のマーカMnの値Xiの中央値であり、σbはσb=b×DMedとなるような偏差の値であり、bは事前定義された係数であって、DMed=median(│X1-Med│)である。ここで、関数median(x1,...,xn)は値x1、...、xnの中央値に相当することが理解されよう。ここで、中央値は、異常値の存在に対してよりロバストなので平均値よりも好ましい。一実施形態では、係数bの値は、問題のマーカの値を支配する分布のタイプに依存し得る。たとえば、マーカ値が正規分布に従う場合には、bの値はb=1.4826と選ばれ得る。同じ例において、値が正規分布に従わない場合には、bの値は、b=1/Q(0.75)と選ばれ得、Q(0.75)は、その分布の0.75分位点である。より詳細には、論文、Leys, C.、Ley, C.、Klein, O.、Bernard, P.、およびLicata, L、(2013年)、「Detecting outliers: Do not use standard deviation around the mean, use absolute deviation around the median」、Journal of Experimental Social Psychology、49(4)、764-766頁を参照することができる。
【0081】
同様に、何人かの被検者については、所与のマーカと値が関連づけられないことが起こり得る。この場合、この不在を補正する必要がある。
【0082】
この目的のために、一実施形態では、この方法は、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップの後に、好ましくはT0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップの後、予測モデルを決定するステップの前に、これらの欠損マーカの値を補正するステップを含む。
【0083】
所与の被検者の欠損マーカの数が多すぎると、予測モデルMPを決定するとき、この被検者を考慮に入れることが不利益になり得る。この態様を考慮に入れるために、一実施形態では、欠損マーカの値を補正するステップは、複数の被検者の各被検者について、前記被検者の欠損マーカMnの数がマーカの閾値数よりも多いときには、複数の被検者からこの被検者を除去するサブステップを含み、前記被検者は、予測モデルMPを決定するステップの間、考慮に入れられない。一実施形態では、マーカMnについて、マーカの閾値数は、マーカMnのNタプルにおけるマーカの数の5%(5パーセント)と等しい。
【0084】
一実施形態では、所与のマーカMnの追加される値は、最も近い3人の被検者の前記マーカの平均値と等しい。このために、マーカMnの欠損値の代わりに所定値を追加するステップは、欠損マーカMnの値と関連づけられる被検者に最も近い3人の被検者を決定するサブステップであって、この近いことの決定が、前記被検者の非欠損マーカMnの値に基づく、サブステップと;最も近い3人の被検者に対する欠損マーカの平均値を計算するサブステップと;欠損マーカの値を追加するステップであって、前記値は欠損マーカの平均値を計算するサブステップにおいて計算された平均値と等しいものである、サブステップとを含む。
【0085】
注釈として、マーカMkのKタプルのマーカMkに対する欠損データの補正は行われない。実際、被検者が予測モデルMPの決定において考慮に入れられるのは、その被検者と関連づけられるマーカMkのKタプルが欠損マーカMkを含まない場合のみである。
【0086】
その上に、マーカMnの複数のNタプルを得るためにマーカMnのNタプルを取得するステップが複数の時間Tiについて行われるとき、異常値または欠損マーカMnの補正は、時間Tiの各々について得られたマーカMnの複数のNタプルに対して行われる。
【0087】
イメージングデータの品質制御
マーカMnのNタプルまたはマーカMkのKタプルのマーカは、医用画像マーカを含み得る。したがって、前記画像の優れた品質を確認することが有利であり得る。
【0088】
このために、本発明による方法は、時間T0においてマーカMnのNタプルを取得するステップの後に、好ましくはT0以上の時間T*においてマーカMkのKタプルを取得するステップの後、予測モデルを決定するステップの前に、イメージングデータの品質を制御するステップを含む。好ましくは、この方法が異常値補正ステップを含んでいる場合には、この制御ステップはそのようなステップよりも前に実施される。
【0089】
詳細には、制御ステップは、取得手順の順守をチェックする第1のサブステップを含む。この検証は、後続の分析の適正動作を保証するために、取得パラメータの値を推奨値と比較することによって実行され得る。これらの取得パラメータ値は、たとえばDICOMファイルから得られる。推奨値は実験的に決定された値であり、取得のために使用された磁気共鳴画像法のタイプ、取得から抽出されたイメージングマーカおよびこれらのマーカを抽出するために使用された方法に依存するものである。たとえば、解剖学的イメージングマーカは、好ましくは3DT1タイプの取得のセグメント化によって抽出され、いくつかのパラメータの中でも特に、空間分解能は256×256×192mm3であり、ボクセルサイズは1×1×1mm3である。このサブステップの最後に、手順を順守しない取得と関連づけられるイメージングマーカは欠損していると見なされる。次いで、それらは、異常値または欠損データ管理のコンテキストにおいて上記で説明されたように処理され得る。
【0090】
制御ステップは、手順を順守して画像が得られているとき、マーカの値の決定を可能にした画像の品質、すなわち前記画像から確実な分析結果を得る可能性の有無を検証するためのステップも含む。これは、たとえば、画像の強度から導出される、「記述子」と呼ばれる測定値を計算するための自動ツールを使用して評価され得る。これらの測定値はこの分野では標準的であり、たとえば、これらはSNR(信号対雑音比)の測定値である。このサブステップの最後に、各画像が複数の記述子と関連づけられる。監視ステップは、次いで、たとえば複数の記述子の値を被検者の訓練ベースのそれらと比較するサポートベクタマシン(SVM)分類器といった分類器を使用して、それらそれぞれの複数の記述子の品質を評価するサブステップを含む。訓練ベースは、分類器の設計のために数百人の患者を用いてセットアップされる。イメージングデータの分析結果は各患者向けに利用可能である。加えて、訓練ベースにおける被検者の各々について、これらのデータの分析後に得られた異なる結果の信頼性は視覚的に評価される。この評価は「絶対的基準」を構成することになる。したがって、この分類器は、イメージングデータの分析結果の予期される信頼性を自動的に評価することを可能にする。たとえば、「分析結果は信頼できるであろう」という品質に対応する値の1つ以上の組合せ、「これらのデータにおいて分析アルゴリズムは全く正常に機能しないであろう」という品質に対応する1つ以上の他の組合せ、および「分析アルゴリズムは正常に機能するが結果は信頼できないであろう」という品質に対応する1つ以上のその他が関連づけられる。一般に、訓練ベースは少なくとも200人の被検者を使用して構築される。より詳細には、以下の論文が参照され得る:Pizarro, R. A.、Cheng, X.、Barnett, A.、Lemaitre, H.、Verchinski, B. A.、Goldman, A. L.、...およびWeinberger, D. R.、(2016年)、「Automated quality assessment of structural magnetic resonance brain images based on a supervised machine learning algorithm.」、Frontiers in neuroinformatics, 10, 52;ならびにEsteban, O.、Birman, D.、Schaer, M.、Koyejo, O. O.、Poldrack, R. A.、およびGorgolewski, K. J.、(2017年)、「MRIQC: Advancing the automatic prediction of image quality in MRI from unseen sites.」、PloS one、12(9)、e0184661。
【0091】
一般的には、分類器は実施する前に検査するのが好ましい。
【0092】
これは、分析結果の信頼性の視覚的評価がまた利用可能な、いわゆる検査ベース(通常は約100人の被検者から構成される)によって行われる。次いで、新規画像の品質レベルを決定するために、この有効化された分類器が使用される。
【0093】
イメージングデータは信頼できるとみなされたとき、自動的に脳構造をセグメント化して、(頭蓋内体積に対して正規化された)海馬体積などのマーカを抽出するために、当業者によって通常使用されるツールが使用される。そのようなツールの例には、SPM(www.fil.ion.ucl.ac.uk/spm)、FSL(http://fsl.fmrib.ox.ac.uk/fsl/fslwiki/)またはFreesurfer(http://freesurfer.net)のソフトウェアがある。
【0094】
最後に、画像セグメント化の品質をチェックするのが有用であり得る。このために、自動ツールを使用してセグメント化の品質が評価され、たとえばセグメント化マスクおよびそれらの近辺において強度を測定する。抽出された強度は、セグメント化の品質を評価するために、たとえばSVM分類器といった分類器に供給される。次いで、上記と同じやり方で検証が実行される。
【0095】
複数の記述子の品質が所定の閾値を上回るとき、イメージングマーカが保持される。しかしながら、複数の記述子の品質が所定の閾値を下回る場合、イメージングマーカは欠損と見なされる。このイメージングマーカは、次いで、異常値または欠損データの管理の範囲内で、上記で説明されたように処理され得る。
【0096】
マーカMkのKタプルの値を予測するための方法
本発明の第1の態様による方法100を使用して予測モデルMPが一旦確立されると、前記予測モデルMPを使用して、1つのマーカまたはいくつかのマーカの将来値を決定することができる。このために、
図3に示された本発明の第2の態様は、中枢神経系の病理の予後を支援するために、本発明の第1の態様による方法100を実施することによって得られた予測モデルMPを使用してマーカMkのKタプルの経過を予測するための方法200に関するものである。
【0097】
本発明の第2の態様による方法200は、時間Tにおいて被検者に関するマーカMnのNタプルを取得するステップ2E1を含む。この取得ステップは、1つ以上のイメージング手順を使用することにより、作業者がマーカを入力することにより、および/またはデータベースから前記マーカを取り出すことにより実行され得る。ここで、取得されたNタプルは、本発明の第1の態様による方法100を実施して予測モデルMPを決定することを可能にしたNタプルと同一のマーカMnを含むことが理解されよう。
【0098】
方法200は、予測モデルおよび被検者に関するマーカMnのNタプルから、時間T+ΔTにおける被検者に関するマーカMkのKタプルの予測値を決定するステップ2E2も含む。好ましくは、期間ΔTは6か月以上である。好ましくは、期間ΔTは60か月以下である。
【0099】
一実施形態では、本発明の第2の態様による方法は、時間T+ΔTにおいてマーカMkのKタプルの予測値を決定するステップ2E2の後に、時間T+ΔTにおいてマーカMkのKタプルを取得するステップと;予測モデルを修正するステップとを含む。この取得ステップは、1つ以上のイメージング手順を使用することにより、作業者がマーカを入力することにより、および/またはデータベースから前記マーカを取り出すことにより実行され得る。このようにして、プロセス200は、予測プロセスの通常のコンテキストでなされた新規の測定によって、予測モデルを連続的に改良し、および改善することを可能にする。言い換えれば、予測プロセス200の実施中に記録されたパラメータを考慮に入れるために、予測モデルMPを経時的に変化させることにより、予測プロセス200を経時的に変化させることができる。
【0100】
本発明の第2の態様による予測方法200は、認知障害を患っている被検者、または中枢神経系の障害に関連した運動不全を患っている被検者の神経学的状態のマーカMkの経過を予測するように特に適合されている。例示の一実施形態では、マーカMnのNタプルは、全脳体積のマーカ、大脳基底核体積のマーカ、およびEDSS法を使用して測定された運動マーカを含む。マーカのKタプルは、今度は、EDSS法によって測定されるような運動マーカを含む。
【0101】
本発明の第2の態様による予測方法200は、海馬体積のマーカの経過を予測するように特に適合されている。この例示的実施形態では、マーカMnのNタプルは、海馬体積のマーカ、全脳体積のマーカ、およびMMSEスコアを表すマーカを含む。加えて、マーカMkのKタプルは海馬体積のマーカを含む。
【0102】
本発明の第2の態様による予測方法200は、ΔT=24か月でのMMSEスコアを表すマーカの経過を予測するように特に適合されている。この例示的実施形態では、マーカMnのNタプルは、性、年齢に関連したマーカ、教育レベルのマーカ、MMSEスコアを表すマーカ、白質体積のマーカ、灰白質体積のマーカ、海馬体積のマーカおよび扁桃体体積のマーカを含む。加えて、マーカMkのKタプルはMMSEスコアを表すマーカを含む。そこで、使用される予測モデルは「リッジ」タイプのものである。
【0103】
本発明の第2の態様による予測方法200は、ΔT=0でのアミロイド負荷を表すマーカの経過を予測するように特に適合されている。この例示的実施形態では、マーカMnのNタプルは、性別、年齢、教育レベルのマーカ、遺伝状態(APOE4)を表すマーカ、MMSEスコアを表すマーカ、白質体積のマーカ、灰白質体積のマーカ、海馬体積のマーカおよび扁桃体体積のマーカを含む。加えて、マーカMkのKタプルはアミロイド負荷を表すマーカを含む。そこで、使用される予測モデルは「ロジスティク回帰」タイプのものである。
【0104】
同様に、本発明の第2の態様による予測方法200は、神経学的状態のマーカMkの経過を予測するように特に適合されている。このために、一実施形態では、Nタプルは、全脳体積のマーカ、海馬体積のマーカ、およびADAS法を使用して得られた認識のマーカを含む。加えて、マーカMkのKタプルは、PETイメージング技術によって得られたアミロイドマーカを含む。
【0105】
たとえば、多発性硬化症については、病変読取りは、単独では十分な予後のマーカではない。本発明による方法200は、たとえば身体障害のレベルを表すマーカ(たとえばEDSS)または認知機能の測定値を表すマーカ(たとえば90秒で数と記号を被検者に置き換えさせる検査である数字モダリティ検査SDMT)などの臨床データと組み合わされた総合的な萎縮、大脳基底核、小脳、脊髄の体積を表すマーカの自動測定を用いて、患者の療法の調節と調整された管理とを助けるものである。したがって、マーカMnのNタプルは、これらのマーカのうちのすべてまたはいくつかを含み得る。
【0106】
一実施形態では、予測モデルを決定するために使用されるマーカMnの複数のNタプルを得るためにマーカMnのNタプルを取得するステップが、複数の時間Tiについて行われるとき、本発明の第2の態様による方法の、取得するステップ2E1は、複数の時間Tjについて行われる。その上に、2つの連続した取得を分離するΔTj(Tj+1-Tjと等しい)で記される時間は、(以前に定義されたように)ΔTiと等しい。
【0107】
関連デバイス
図4に示された本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様または第2の態様による方法100、200を実施するための手段を備えるデバイスDlに関するものである。例示の一実施形態では、30デバイスは、コンピューティング手段MC(たとえばプロセッサ)と、前記コンピューティング手段MCと関連づけられるメモリMM(たとえばRAMメモリ)とを備える。メモリMMは、本発明の第1または第2の態様による、方法100、200を実施するために必要な命令ならびにデータを記憶するように構成されている。例示の一実施形態では、デバイスDlは、特に、1人以上の作業者が本発明の第1または第2の態様による方法100、200の実施のために必要なマーカのすべてまたは一部を入力することができるように、入力手段MSおよび表示手段MA(たとえばキーボード、スクリーン、タッチスクリーンなど)も備える。一実施形態では、デバイスDlは、本発明の第1または第2の態様による方法100、200の実施のために必要なマーカのすべてまたは一部を記憶しているサーバSRと交換することができるように、接続手段MR(たとえばネットワークカード)も備える。例示の一実施形態では、デバイスDlは、1つ以上のイメージング手順をトリガし、および/または本発明の第1または第2の態様による方法100、200の実施に必要なマーカの生成を可能にするデータのすべてまたは一部を取り出すために、1つ以上のイメージングデバイスAlと交換することができるように、接続手段MR(たとえばネットワークカード)も備える。
【国際調査報告】