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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20220304BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20220304BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61K47/34
C08G63/08
A61K47/10
A61K47/59
A61K47/14
A61K47/20
A61K47/08
A61K47/22
A61K31/5415
A61K31/445
A61K31/18
A61K31/4985
A61K38/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021539653
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020050333
(87)【国際公開番号】W WO2020144239
(87)【国際公開日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】1900258.3
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513164473
【氏名又は名称】メドインセルル
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ロベルジュ
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ ロペス ノリエガ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン マニュエル クロ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエット セリンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ムリエル オスター
(72)【発明者】
【氏名】ファング リュー
(72)【発明者】
【氏名】シャルロッテ モリニエール
(72)【発明者】
【氏名】シルベスター グリゾット
(72)【発明者】
【氏名】ティジャサ ヴァーリニック
(72)【発明者】
【氏名】フェイフェイ ウン
(72)【発明者】
【氏名】エリース ゲガン
(72)【発明者】
【氏名】マリー‐エメレンティエンヌ キャグノン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
4J029
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB32
4C076EE23M
4C076EE24M
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA26
4C084DB11
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA12
4C084ZC03
4C086AA01
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4C086BC21
4C086BC87
4C086CB09
4C086GA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA12
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4C086ZA83
4C086ZC03
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA11
4C206JA13
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4C206MA86
4C206MA87
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4C206ZA42
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4C206ZA83
4C206ZC03
4J029AA02
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC03
4J029AC05
4J029AD10
4J029AE06
4J029AE18
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4J029EG09
4J029EH02
4J029EH03
4J029FC02
4J029FC04
4J029FC43
4J029HE01
4J029JE182
4J029KB16
4J029KB17
(57)【要約】
本発明は、ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、該多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶であり、少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む医薬組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、該多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶であり、少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む前記医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下、又は1 kDa以下、又は0.5 kDa以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐ポリエステルコポリマーを含む医薬組成物であって、該ポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下、又は1 kDa以下、又は0.5 kDa以下であり、少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む前記医薬組成物。
【請求項4】
前記多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記多分岐コポリマーは、15 mg/mL未満、任意で10 mg/mL未満、5 g/mL未満、2 mg/mL未満、又は1 mg/mL未満の水溶液中での溶解度を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記水溶解度は37℃で測定される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
インサイチュ型デポの形成に好適である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記多分岐コポリマーは、式A(B)n(式中、Aは中心コアを表し、Bはポリエステルアームを表し、nは少なくとも3の整数である)で表される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記nは少なくとも4、又は少なくとも6、又は少なくとも8、好ましくはnは4である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリオールから誘導可能な多分岐ポリエーテルである、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリオールは少なくとも3個の水酸基を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリオールは、少なくとも3個の水酸基、任意で3、4、5、6、又は8個の水酸基で置換されている炭化水素である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリオールは更に1以上のエーテル基を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、又はイノシトールである、請求項10~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記多分岐ポリエーテルの各枝は、ポリエステル又はそのモノマー若しくは前駆体と反応可能な末端反応性基を有する、請求項10~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記末端反応性基は水酸基である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記多分岐ポリエーテルは式1又は式2又は式3又は式4を有する、請求項10~16のいずれか1項に記載の組成物:
【化1】
(式中、mは2~150の整数であり、RはH若しくはアルキル又はPEGである)(式1)、
【化2】
(式中、mは2~150の整数であり、pは6である)(式2)、
【化3】
(式中、mは2~150の整数である)(式3)、
【化4】
(式中、mは2~150の整数である)(式4)。
【請求項18】
前記ポリエステルは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)又はそれらの混合物の群から選択された少なくとも1つのポリマー又はコポリマーであるか、又はそれから形成される、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリエステルはホモポリマーである、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリエステルは1種を超えるモノマーから由来する、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリエステルは1種を超えるモノマーから由来し、該ポリエステルはランダムコポリマー又はブロックコポリマーである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリエステルはPLAであるか、又はPLAを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記多分岐コポリマーは、請求項10~17のいずれか1項に特定された多分岐ポリエーテルをD,L-ラクチドと反応させて得ることができる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記多分岐コポリマーは、前記多分岐ポリエーテルによって開始されるD,L-ラクチドの開環重合によって得ることができる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記多分岐コポリマーは式5又は式6又は式7又は式8を有する、請求項24に記載の組成物:
【化5】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)(式5)、
【化6】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数であり、pは6である)(式6)、
【化7】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)(式7)、
【化8】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)(式8)。
【請求項26】
前記多分岐コポリマーは式5を有し、前記ポリエーテルコアの分子量は2 kDaであり、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2、3又は6である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
各アーム中のポリエステル繰り返し単位数は、それぞれ独立して4~200の範囲内である、請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリエーテルの分子量は、0.5 kDa~10 kDa、任意で1 kDa~10 kDa、好ましくは2 kDa~10 kDa、若しくは好ましくは0.5kDa~2kDa、又は最も好ましくは2 kDa~5 kDaの範囲内である、請求項1~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物中の前記多分岐コポリマーのエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は、1~10、好ましくは2~6である、請求項1~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
1以上の更なる、請求項1~29のいずれか1項に特定された生分解性多分岐コポリマーを含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
第一の、請求項1~29のいずれか1項に特定された生分解性多分岐コポリマー、及び第二の異なる、請求項1~29のいずれか1項に特定された生分解性多分岐コポリマーを含む、請求項30に記載の組成物であって、任意で該第一の生分解性多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在し、該第二の生分解性多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在する、前記組成物。
【請求項32】
前記第一及び第二の生分解性多分岐コポリマーのそれぞれは、式5の構造を有する、請求項31記載の組成物:
【化9】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である);
該第一の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2であり;
該第二の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である;又は
該第一の生分解性多分岐コポリマーは、5 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2であり;
該第二の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である。
【請求項33】
更に、下式を有する生分解性トリブロックコポリマーを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の組成物:
Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは1~3,000の範囲内の繰り返し単位数であり、wは3~300の範囲内の繰り返し単位数であり、v=x又はv≠xである)。
【請求項34】
前記ポリエチレングリコール鎖の質量は、180 Da~12 kDa、又は194 Da~12 kDa、又は200 Da~12 kDa、又は100 Da~4 kDa、好ましくは1 kDa~2 kDaの範囲内である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記トリブロックコポリマー中の前記エチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.5~22.3、任意で0.5~10、好ましくは0.5~3.5である、請求項33又は請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記トリブロックコポリマーは、質量1 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、4のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ前記多分岐コポリマーは式5の構造を有し:
【化10】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は3である;又は、
前記トリブロックコポリマーは、質量2 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、2のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ前記多分岐コポリマーは式5の構造を有し、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2である;又は、
前記トリブロックコポリマーは、質量2 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、2のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ前記多分岐コポリマーは式5の構造を有し、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である;そして、
任意で該多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在し、該トリブロックコポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在する、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
更に、下式を有する生分解性ジブロックコポリマーを含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の組成物:
Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止されたポリエチレングリコールであり、y及びzは繰り返し単位数であって、yは2~250の範囲内でありzは1~3,000の範囲内である)。
【請求項38】
前記末端封止されたポリエチレングリコール鎖の分子量は、100 Da~10 kDa、又は164 Da~2 kDa、好ましくは1 kDa~2 kDaの範囲内である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記ジブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.8~15、任意で1~10である、請求項37又は請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記トリブロック又はジブロックコポリマー中のポリエステルAは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)(PCLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、及びそれらの混合物の群から選択され、任意で前記末端封止されたポリエチレングリコールはメトキシポリエチレングリコールである、請求項33~39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
前記ポリエステルAはポリ乳酸である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
更に医薬として許容し得るビヒクルを含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の組成物であって、任意で該医薬として許容し得るビヒクルは有機溶媒であり、任意で該有機溶媒は生体適合性有機溶媒であり、任意で該ビヒクルの量は、全組成物の少なくとも25%、又は少なくとも35%(w/w%)である、前記組成物。
【請求項43】
前記医薬として許容し得るビヒクルは、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物の群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記医薬活性成分は疎水性である、請求項1~43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
前記医薬活性成分は、メロキシカム、ブピバカイン、タムスロシン、オクトレオチド、タダラフィル、エンパグリフオジン(empaglifozin)、テノホビル、リオチロニン、又はそれらの組み合わせである、請求項1~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記少なくとも1つの医薬活性成分は、全組成物の0.05 %~60%、任意で0.05%~40%、任意で0.05%~30%、任意で0.05%~10%、任意で0.05%~7%、任意で0.05%~2%(w/w%)の量で存在する、請求項1~45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物は注射可能な液体である、請求項1~46のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
前記多分岐コポリマーは、全組成物の2%~80%、任意で2%~70%、任意で2%~60%、任意で10%~60%、任意で10%~50%、任意で20%~40%、任意で20%~35%、任意で30%~50%(w/w%)の量で存在する、請求項1~47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物は表1又は表4中に特定された組成物である、請求項1~48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
前記少なくとも1つの医薬活性成分の放出が調節可能である、請求項1~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
医薬活性成分を、対象へ少なくとも1日間、任意で少なくとも3日間、任意で少なくとも7日間、任意で少なくとも30日間、任意で少なくとも90日間、任意で少なくとも1年間、送達するために好適な、請求項1~50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記医薬活性成分の放出動態を調節するための、請求項1~50のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項53】
請求項1~50のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法であって、請求項1~50のいずれか1項に特定された多分岐コポリマーを、医薬として許容し得るビヒクル中に溶解すること、そして次に医薬活性成分を該組成物へ添加することを含む、前記方法。
【請求項54】
請求項1~50のいずれか1項に特定された組成物を、水性媒体、水又は体液と接触させることにより、生体外で又はインサイチュで作製される生分解性デポ。
【請求項55】
請求項1~51のいずれか1項に記載の組成物を対象へ投与すること、及びインサイチュ型デポをインビボで形成させること、を含む医薬活性成分の制御された放出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、制御放出型の薬剤送達又は医薬組成物、特にインサイチュ型デポの作製に好適な医薬組成物に関する。具体的には、本発明は、ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、その多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶であり、少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
WO2012/090070Aは、溶媒交換型インサイチュ形成デポ(ISFD)技術を記載しており、その技術には生体適合性有機溶媒中に溶解した線状(m)PEG-ポリエステルの混合物が含まれる。注射時において、溶媒が拡散して水に不溶なポリマーが析出し、活性医薬成分(API)を閉じ込めることができるデポを形成する。この医薬物質は、このデポから長期間放出される。
【0003】
持続的放出のための改良された技術の提供に対する要求が、未だに存在する。分岐型PEG-ポリエステルブロックコポリマーの使用は、高粘度、高い注入操作性値、及び遅い分解速度等の欠点を抱えている、現在使用されている技術を改良する可能性のある方法として特定されている。
【0004】
星型PEG-ポリエステルコポリマーは、中心コアに結合された数本(3本以上)の直鎖から構成される分岐型構造である。星型コポリマーは、星型ホモポリマー又は星型コポリマーの2つのカテゴリに分類できる。星型ホモポリマーは、同一の化学組成及び類似の分子量を持つ放射状アームを含む対称構造から構成される。星型コポリマーは、類似の分子量を持つが、少なくとも2種の異なるモノマーからなる放射状アームを含む対称構造から構成される。
【0005】
星型(多アーム型又は多分岐型としても知られる)コポリマーは、Cameronらの文献、Chemical Society Reviews, 40, 1761, 2011、及びBurkeらの文献、Biomacromolecules, 18, 728, 2017)に記載されている。
【0006】
Hiemstraらの文献、Biomacromolecules, 7, 2790, 2006;Buwaldaらの文献、Biomacromolecules, 11, 224, 2010;Calucciらの文献、Langmuir, 26, 12890, 2010;Mayadunneらの米国特許出願公開US2016/0058698A1(2016)は、感熱ゲル化水性システムについて記載している。
【0007】
欧州特許EP1404294B1は、溶媒交換によるインサイチュ形成デポ(ISFD)を作製するための、分岐型(コ)ポリマーの使用を記載している。
【0008】
このように、より低い粘度、改良された注入操作性、改良された又は異なるAPIの放出特性を有する又はデポ分解動態を示す星型コポリマーをベースとする、新しい溶媒交換型ISFD製剤の提供への要求が存在する。
【発明の概要】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、該多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶であり、少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む医薬組成物を提供する。
【0010】
一般的に、ポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下、又は1 kDa以下、又は0.5 kDa以下である。
【0011】
本発明は又、ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐ポリエステルコポリマーを含む医薬組成物であって、そのポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下、又は1 kDa以下、又は0.5 kDa以下であり、少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む医薬組成物を提供する。
【0012】
前記組成物は、インサイチュ型デポの形成に好適である。
【0013】
驚くべきことに、多分岐型又は星型コポリマーをベースにした製剤は、線状コポリマー類似体だけを含む製剤よりも、より低い粘度及び改良された注入操作性を有する一方でそれと同時に、改良された又は異なる、活性成分放出プロファイルを提供することが見いだされた。更に、多分岐型又は星型ベースの製剤から得られたデポは、類似の線状コポリマーから形成されたものよりも早く分解する。
【0014】
一般的に、多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶である。
【0015】
好ましい実施態様では、多分岐コポリマーは、15 mg/mL未満、任意で10 mg/mL未満、5 mg/mL未満、2 mg/mL未満、又は1 mg/mL未満の水溶液中での溶解度を有する。一般的に、溶解度は37℃で測定される。
【0016】
一般的に、多分岐コポリマーは、式A(B)n(式中、Aは中心コアを表し、Bはポリエステルアームを表し、nは少なくとも3の整数である)で表される。本発明の実施態様では、nは少なくとも4、又は少なくとも6、又は少なくとも8である。nは、3、4、6又は8でもよい。好ましくはnは4である。
【0017】
一実施態様では、中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリオールから誘導可能な多分岐ポリエーテルである。一般的に、このポリオールは、少なくとも3個の水酸基を含む。ポリオールは、一般的に、少なくとも3個の水酸基、任意で3、4、5、6、又は8個の水酸基で機能化された炭化水素である。幾つかの実施態様では、ポリオールは更に1以上のエーテル基を含む。好ましくは、ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、又はイノシトールである。
【0018】
好ましい実施態様では、多分岐ポリエーテルは式1又は式2又は式3又は式4を有する:
【化1】
(式中、mは2~150の整数であり、RはH若しくはアルキル又はPEGである。好ましくはRはPEGである)(式1)、
【化2】
(式中、mは2~150の整数であり、pは6である)(式2)、
【化3】
(式中、mは2~150の整数である)(式3)、
【化4】
(式中、mは2~150の整数である)(式4)。
【0019】
一般的に、ポリエステルは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)又はそれらの混合物の群から選択された少なくとも1つのポリマー又はコポリマーであるか、又はそれから形成される。ポリエステルアームは、一般的に、ポリエステルの前駆体又はモノマーをポリエーテルコアと反応させて形成される。例えばPLAアームを形成する場合には、ポリエーテルをD,L-ラクチドと反応させる。
【0020】
好ましい実施態様では、多分岐ポリエーテルの各枝は、ポリエステル又はそのモノマー若しくは前駆体と反応可能な末端反応性基を有する。一般的に、末端反応性基は水酸基又はアミン基であるが、好ましくは水酸基である。
【0021】
一実施態様では、ポリエステルはホモポリマーである。
一実施態様では、ポリエステルは1種を超えるモノマーから由来する。ポリエステルが1種を超えるモノマーから由来する場合、そのポリエステルはランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。
【0022】
好ましい実施態様では、ポリエステルはPLAであるか、又はPLAを含む。
【0023】
好ましい実施態様では、多分岐コポリマーは、上記で特定された多分岐ポリエーテルをD,L-ラクチドと反応させて得ることができる。多分岐コポリマーは、多分岐ポリエーテルによって開始されるD,L-ラクチドの開環重合によって得ることもできるだろう。
【0024】
好ましい実施態様では、多分岐コポリマーは式5又は式6又は式7又は式8を有する:
【化5】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)(式5)、
【化6】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数であり、pは6である)(式6)、
【化7】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)(式7)、
【化8】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)(式8)。
【0025】
式5の前記多分岐コポリマーの好ましい実施態様では、ポリエーテルコア(即ち、式5の化合物からPLAアームを除いたもの)の分子量は2 kDaであり、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2、3又は6である。
【0026】
一実施態様では、各アーム中のエステル繰り返し単位数は、それぞれ独立して4~200の範囲内である。
【0027】
好ましい実施態様では、ポリエーテルの分子量は、0.5 kDa~10 kDa、任意で1 kDa~10 kDa、好ましくは2 kDa~10 kDa、最も好ましくは2 kDa~5 kDaの範囲内である。更なる実施態様では、ポリエステルの分子量は0.5kDa~2kDaの範囲内である。
【0028】
好ましい実施態様では、本組成物中の多分岐コポリマーの、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は、1~10、好ましくは2~6である。
【0029】
追加的な実施態様では、本発明の組成物は、1以上の更なる、上記で特定された生分解性多分岐コポリマーを含むこともある。2種以上の多分岐コポリマーを含む組成物を提供することは、医薬的活性剤の放出の更なる調節手段を提供することである。多分岐コポリマーの異なる組合せを提供することが可能であり、2種以上の多分岐コポリマーの相対的な量も変更可能である。これにより、医薬的活性剤の放出プロファイルを制御することができる。
【0030】
一実施態様では、本組成物は、第一の、上記で特定された生分解性多分岐コポリマー、及び第二の異なる、上記で特定された生分解性多分岐コポリマーを含み、任意で第一の生分解性多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)(重量/重量%)、任意で18~20(w/w%)の量で存在し、第二の生分解性多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)、任意で18~20(w/w%)の量で存在する。
【0031】
一実施態様では、第一及び第二の生分解性多分岐コポリマーのそれぞれは、式5の構造を有し:
【化9】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である);
第一の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2であり;
第二の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である;又は
第一の生分解性多分岐コポリマーは、5 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2であり;
第二の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である。
【0032】
本発明の別の実施態様では、本組成物は更に、下式を有する生分解性トリブロックコポリマーを含む:
Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは1~3,000の範囲内の繰り返し単位数であり、wは3~300の範囲内の繰り返し単位数であり、v=x又はv≠xである)。
【0033】
多分岐コポリマーと線状トリブロックコポリマーとの組合せは、医薬活性成分の放出を調節するための更なる選択肢につながる。
【0034】
一般的に、トリブロックコポリマー中のポリエチレングリコール鎖の質量は、180 Da~12 kDa、又は194 Da~12 kDa、又は200 Da~12 kDa、又は100 Da~4 kDa、好ましくは1 kDa~2 kDaの範囲内である。
【0035】
一般的に、トリブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.5~22.3、任意で0.5~10、好ましくは0.5~3.5である。
【0036】
好ましい実施態様では、トリブロックコポリマーは、質量1 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、4のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ多分岐コポリマーは式5の構造を有し:
【化10】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は3である;又は、
トリブロックコポリマーは、質量2 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、2のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ多分岐コポリマーは式5の構造を有し、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2である;又は、
トリブロックコポリマーは、質量2 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、2のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ多分岐コポリマーは式5の構造を有し、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である;そして、
任意で多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)、任意で18~20(w/w%)の量で存在し、トリブロックコポリマーは全組成物の15~25(w/w%)、任意で18~20(w/w%)の量で存在する。
【0037】
更なる別の実施態様では、本組成物は更に、下式を有する生分解性ジブロックコポリマーを含む:
Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止されたポリエチレングリコールであり、y及びzは繰り返し単位数であって、yは2~250の範囲内でありzは1~3,000の範囲内である)。
【0038】
多分岐コポリマーと線状ジブロックコポリマーとの組合せは、医薬活性成分の放出を調節するための追加的な選択肢を提供する。
【0039】
一実施態様では、ジブロックコポリマーの末端封止されたポリエチレングリコール鎖の分子量は、100 Da~10 kDa、又は164 Da~2 kDa、好ましくは1 kDa~2 kDaの範囲内である。
【0040】
一実施態様では、ジブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.8~15、任意で1~10である。
【0041】
一般的に、トリブロック又はジブロックコポリマー中のポリエステルAは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)(PCLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、及びそれらの混合物の群から選択され、任意で末端封止されたポリエチレングリコールはメトキシポリエチレングリコールである。好ましくは、ポリエステルAはポリ乳酸である。
【0042】
本発明の実施態様では、本組成物は更に医薬として許容し得るビヒクルを含み、任意で医薬として許容し得るビヒクルは有機溶媒であり、任意で有機溶媒は生体適合性有機溶媒であり、任意でビヒクルの量は、全組成物の少なくとも25%、又は少なくとも35%(w/w%)である。好ましくは、医薬として許容し得るビヒクルは、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物の群から選択される。
【0043】
一実施態様では、医薬活性成分は疎水性である。このことは、医薬活性成分が正のlogP値又はlogD値を有すること、及び生理学的pH(pH 7.0~7.4)での水溶解度が1 mg/mL未満であることを意味する。
【0044】
好ましい実施態様では、医薬活性成分はメロキシカム、ブピバカイン、タムスロシン、オクトレオチド、タダラフィル、エンパグリフオジン(empaglifozin)、テノホビル、リオチロニン、又はそれらの組み合わせである。
【0045】
一実施態様では、少なくとも1つの医薬活性成分は、全組成物の0.05 %~60%(w/w%)、任意で0.05%~40%、任意で0.05%~30%、任意で0.05%~10%、任意で0.05%~7%、任意で0.05%~2%の量で存在する。
【0046】
好ましい実施態様では、本組成物は注射可能な液体である。
【0047】
一実施態様では、多分岐コポリマーは、全組成物の2%~80%、任意で2%~70%、任意で2%~60%、任意で10%~60%、任意で10%~50%、任意で20%~40%、任意で20%~35%、任意で30%~50%(w/w%)の量で存在する。
【0048】
一実施態様では、本組成物は表1又は表4中で特定される。
【0049】
一般的に、少なくとも1つの医薬活性成分の放出は、本組成物により調節可能である。
【0050】
一実施態様では、本組成物は、医薬活性成分を対象へ、少なくとも1日間、任意で少なくとも3日間、任意で少なくとも7日間、任意で少なくとも30日間、任意で少なくとも90日間、任意で少なくとも1年間、送達するために好適である。
【0051】
更なる態様では、本発明は少なくとも1つの活性成分の放出動態を調節するための上記で特定された医薬組成物の使用を提供する。
【0052】
追加的な態様では、本発明は、上記で特定された医薬組成物の製造方法であって、上記で特定された多分岐コポリマーを、医薬として許容し得る、溶媒等のビヒクル中に溶解することを含む方法を提供する。一実施態様では、その方法は更に、医薬活性成分をその組成物へ添加することを含む。
【0053】
更なる態様では、本発明は、上記で特定された組成物を、水性媒体、水又は体液と接触させることにより、生体外で又はインサイチュで作製される、生体吸収性デポを提供する。このデポは、PLA部分がインビボで分解し、PEGが体内で吸収されて排泄されるという意味で、生体吸収性である。
【0054】
最後の態様では、上記で特定された組成物を投与すること、及び溶媒交換インサイチュ型デポをインビボで形成させること、を含む医薬活性成分の制御された放出方法が提供される。
【0055】
(詳細な説明)
本明細書で使用される用語「生分解性」又は「生体吸収性」は、ブロックコポリマーがインビボで加水分解を受けて、それらの構成要素(m)PEG及び、ポリエステルブロック由来のオリゴマー若しくはモノマー又は繰り返し単位が形成されることを意味する。例えば、PLAは加水分解を受けて乳酸を形成する。加水分解プロセスの結果は、デポの漸進的な質量損失を導き、最終的にその消失に至る。
【0056】
用語「多分岐コポリマー」は、ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含むポリマーを意味する。ポリエステルアームは、「枝」、「アーム」又は「鎖」と称されることもある。用語「多分岐コポリマー」は、用語「星ポリマー」又は「星型ポリマー」又は「多アーム型コポリマー」と同意であり、これらの用語は、明細書全体を通して互換的に使用される。
【0057】
一般的に、ポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下、又は1 kDa以下、又は0.5 kDa以下である。好ましくは、ポリエーテルは、少なくとも0.2 kDa、又は少なくとも0.5 kDaの分子量を持つ。
【0058】
一般的に、多分岐コポリマーは、式A(B)n(式中、Aは中心コアを表し、Bはポリエステルアームを表し、nは少なくとも3の整数である)で表される。本発明の実施態様では、nは少なくとも4、又は少なくとも6、又は少なくとも8である。好ましくはnは4である。n=4である多分岐型PEG-PLAブロックコポリマーの構造例を下記に示す。
【化11】
文字m及びuは、各ブロックを構成するエチレンオキシド及び乳酸の繰り返し単位数に、それぞれ対応する。
【0059】
ポリオールは、複数の水酸基を含む有機化合物である。一般的に、ポリオールは少なくとも3個の水酸基を含む。一般的に、ポリオールは、少なくとも3個の水酸基、例えば、3、4、5、6、又は8個の水酸基で機能化された炭化水素である。ポリオールは又、1以上のエーテル基を含むこともできる。一般的に、ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、又はイノシトールである。
【0060】
ポリエーテルは、複数のエーテル基を含む有機化合物である。
【0061】
好ましい実施態様では、中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリオールから誘導可能な多分岐ポリエーテルである。例えば、多分岐ポリエーテルはエチレンオキシドとポリオールとの反応により形成してもよい。多分岐ポリエーテルは、星型PEGと称されることもある。エチレンオキシドはポリオールの水酸基と反応してPEGアームを形成する。例えば、ペンタエリスリトールは、エチレンオキシドと反応して、下記式1で示す4本若しくは3本アーム型、又は4分岐若しくは3分岐型ポリエーテルを形成するであろう;
【化12】
(式中、mは2~150の整数であり、RはH若しくはアルキル又はPEGである)(式1)。
【0062】
別の実施態様では、多分岐ポリエーテルは、下記式2に記載の8本アーム型又は8分岐型ポリエーテル(p=6)である;
【化13】
(式中、mは2~150の整数であり、pは6である)(式2)。
【0063】
別の実施態様では、多分岐ポリエーテルは、下記式3及び式4に記載の6本アーム型、又は6分岐型ポリエーテルである;
【化14】
(式中、mは2~150の整数である)(式3)、
【化15】
(式中、mは2~150の整数である)(式4)。
【0064】
一般的に、多分岐ポリエーテルの各枝は、末端に水酸基を有するが、ポリエステル又はそのモノマー若しくは前駆体と反応可能な、他の末端反応性基も同様に意図される。一般的に、ポリエステルは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)又はそれらの混合物の群から選択された少なくとも1つのポリマー又はコポリマーから形成される。一般的に、多分岐ポリエーテルの各枝の末端水酸基は、ポリエステルのモノマー又は前駆体と反応して、ポリエステルアームを形成する。例えば、D-L-ラクチドは、多分岐ポリエーテルと反応してPLAアームを形成することができる。
【0065】
一実施態様では、ポリエステルはホモポリマーである。
【0066】
一実施態様では、ポリエステルは1種を超えるモノマーから由来する。ポリエステルが1種を超えるモノマーから由来する場合、そのポリエステルはランダムコポリマー又はブロックコポリマーでもよい。
【0067】
好ましい実施態様では、ポリエステルはPLAであるか、又はPLAを含む。
【0068】
一実施態様では、各アーム内のエステル繰り返し単位数は、それぞれ独立して4~200の範囲内である。
【0069】
用語「デポ注射」は、通常は、「デポ」と呼ばれる固形塊等の局所的な塊の中の薬剤を配置する、皮下、皮内又は筋肉内での流動状医薬組成物の注射を意味する。本明細書で特定されるデポは、注射時にインサイチュで形成される。従って、この製剤は、溶液又は懸濁液として調製することができ、体内へ注射することができる。
【0070】
「インサイチュ型デポ」は、固体の、局所的な塊であり、対象へ組成物を注射した後の本医薬組成物の析出により形成される。医薬組成物は、水溶液中で実質的に不溶である多分岐コポリマーを含む。従って、医薬組成物が人体又は動物の身体の水性環境に接触すると、相転換が起こり、組成物は液体から固体に変化する、即ち、組成物の析出が起こり、「インサイチュ型デポ」の形成につながる。
【0071】
「インサイチュ型デポ」は、先行技術に記載されているヒドロゲル医薬製剤から明確に区別することができる。
【0072】
ヒドロゲルは、ポリエーテルコア及びPLA枝を含む星ポリマーから形成できる。ポリエーテルコア及びPLA枝を含む特定の星ポリマーは、水溶液中でミセルを形成することができる。疎水性PLAの外側ブロックは、隣接するミセルと連携して結合ミセル又は大型凝集体のネットワークを形成し、特定の温度及び濃度範囲内でゲルを生成する。ヒドロゲルは、大量の水を吸収可能な3次元ネットワークを有する。ヒドロゲルを構成するポリマーは水溶液に可溶である。対照的に、本発明で使用される多分岐ポリマーは、水溶液中で実質的に不溶である。本発明の医薬組成物は、水を含まないか、又は実質的に水を含まない。例えば、本発明の医薬組成物は、0.5% w/w未満の水しか含まない。
【0073】
一般的に、本多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶である。一般的に、このことは、本多分岐コポリマーは、水溶液中での溶解度が15 mg/mL未満、任意で10 mg/mL未満、5 mg/mL未満、2 mg/mL未満、任意で1 mg/mL未満であることを意味する。一般的に、溶解度は37℃で測定される。
【0074】
好ましい実施態様では、多分岐コポリマーの水中の溶解度は下記の通り決定された:
500 mgのコポリマーを空の20 mLバイアルに入れた。5 mLの超純水を添加し、バイアルを37℃で2時間連続してボルテックスにかけた。次に、バイアルを10分間3000 rpmで遠心分離にかけた。上清を既知の重量の別のバイアルへ移し、そのバイアルを-80℃で一晩置いてから凍結乾燥を24時間行った。可溶化されたコポリマー量を、空のバイアル重要及び凍結乾燥したバイアル重量の差として決定した。
【0075】
先行技術に記載された温度感受性ヒドロゲル又はサーモゲルは、一般的に特定の狭い温度範囲、例えば30~35℃の範囲で固体であり、この固体状態は可逆的である。対照的に、本発明で形成されるインサイチュ型デポは、かなり広い温度範囲、例えば20℃~37℃の間で注射された場合に固体である。
【0076】
更に、PEG及びPLAをベースにするヒドロゲルは、最大でも約6か月の間は、持続的放出型製剤として機能することが示されている。対照的に、本発明の組成物によって形成されたデポは、より長期間にわたるAPIの放出を可能にする。
【0077】
追加的な実施態様では、本発明の組成物は、1種以上の更なる、上記で特定された生分解性多分岐コポリマーを含むこともある。2種以上の多分岐コポリマーを含む組成物を提供することは、医薬的活性剤の放出の更なる調節手段を提供する。多分岐コポリマーの異なる組合せを提供することが可能であり、2種以上の多分岐コポリマーの相対量も変更可能である。
【0078】
一実施態様では、本組成物は、第一の、上記で特定された生分解性多分岐コポリマー、及び第二の異なる、上記で特定された生分解性多分岐コポリマーを含む。第一の生分解性多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在し、第二の生分解性多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在してもよい。
【0079】
一実施態様では、第一及び第二の生分解性多分岐コポリマーのそれぞれは、式5の構造を有し:
【化16】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である);
第一の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2であり;
第二の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である;又は
第一の生分解性多分岐コポリマーは、5 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2であり;
第二の生分解性多分岐コポリマーは、2 kDaの分子量を持つポリエーテルコアを有し、かつエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である。
【0080】
本発明の別の実施態様では、本組成物は更に、下式を有する生分解性トリブロックコポリマーを含む:
Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは1~3,000の範囲内の繰り返し単位数であり、wは3~300の範囲内の繰り返し単位数であり、v=x又はv≠xである)。
【0081】
多分岐コポリマーと線状トリブロックコポリマーとの組合せは、医薬活性成分の放出を調節するための更なる選択肢につながる。
【0082】
一般的に、トリブロックコポリマー中のポリエチレングリコール鎖の質量は、180 Da~12 kDa、又は194 Da~12 kDa、又は200 Da~12 kDa、又は100 Da~4 kDa、好ましくは1 kDa~2 kDaの範囲内である。
【0083】
一般的に、トリブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.5~22.3、任意で0.5~10、好ましくは0.5~3.5である。
【0084】
好ましい実施態様では、トリブロックコポリマーは、質量1 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、4のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ多分岐コポリマーは式5の構造を有し:
【化17】
(式中、uは4~200の整数であり、mは2~150の整数である)、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は3である;又は、
トリブロックコポリマーは、質量2 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、2のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ多分岐コポリマーは式5の構造を有し、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は2である;又は、
トリブロックコポリマーは、質量2 kDaのポリエチレングリコール鎖を有し、2のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有し、かつ多分岐コポリマーは式5の構造を有し、分子量2 kDaのポリエーテルコアを有し、エチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は6である;そして、
任意で多分岐コポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在し、トリブロックコポリマーは全組成物の15~25(w/w%)の量で存在する。
【0085】
更なる別の実施態様では、本組成物は更に、下式を有する生分解性ジブロックコポリマーを含む:
Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止されたポリエチレングリコールであり、y及びzは繰り返し単位数であって、yは2~250の範囲内でありzは1~3,000の範囲内である)。
【0086】
「末端封止されたポリエチレングリコール」(cPEG)とは、1つの末端水酸基が反応したPEGを指し、アルコキシ封止されたPEG、ウレタン封止されたPEG、エステル封止されたPEG、及び同様の化合物を含む。封止基は、ラクチド、グリコラクチド、カプロラクトン等の環状エステル又は他のエステル、及びそれらの混合物と反応しやすい化学的機能を含まない化学基である。末端封止されたPEGポリマーとラクチドとの反応により、ジブロックcPEG-PLAコポリマーが生成する。
【0087】
多分岐コポリマーと線状ジブロックコポリマーとの組合せは、医薬活性成分の放出を調節するための追加的な選択肢を提供する。
【0088】
一実施態様では、ジブロックコポリマーの末端封止されたポリエチレングリコール鎖の分子量は、100 Da~10 kDa、又は164 Da~2 kDa、好ましくは1 kDa~2 kDaの範囲内である。
【0089】
一実施態様では、ジブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.8~15、任意で1~10である。
【0090】
一般的に、トリブロック又はジブロックコポリマー中のポリエステルAは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)(PCLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、及びそれらの混合物の群から選択され、任意で末端封止されたポリエチレングリコールはメトキシポリエチレングリコールである。好ましくは、ポリエステルAはポリ乳酸である。
【0091】
本発明の組成物中の使用に好適なトリブロック及びジブロック線状コポリマーは、国際公開WO2012/090070 A1、WO2019016233 A1、WO2019016234 A1、及びWO2019016236 A1中に記載され、これらは引用により本明細書へ組み込まれている。
【0092】
本発明の実施態様では、組成物は更に医薬として許容し得るビヒクルを含み、任意で医薬として許容し得るビヒクルは有機溶媒である。溶媒は一般的に、生体適合性溶媒である。好ましくは、医薬として許容し得るビヒクルは、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物の群から選択される。上記ビヒクルの量は、一般的に、全組成物の少なくとも25%、又は少なくとも35%(w/w%)である。
【0093】
本組成物は、少なくとも1つの医薬活性成分を含む。
一実施態様では、医薬活性成分は疎水性である。
【0094】
好ましい実施態様では、医薬活性成分はメロキシカム、ブピバカイン、タムスロシン、オクトレオチド、タダラフィル、エンパグリフオジン、テノホビル、リオチロニン、又はそれらの組み合わせである。
【0095】
一実施態様では、少なくとも1つの医薬活性成分は、全組成物の0.05 %~60%(w/w%)、任意で0.05%~40%、任意で0.05%~30%、任意で0.05%~10%、任意で0.05%~7%、任意で0.05%~2%の量で存在する。
【0096】
好ましい実施態様では、組成物は注射可能な液体である。
【0097】
一実施態様では、多分岐コポリマーは、全組成物の2%~80%、任意で2%~70%、任意で2%~60%、任意で10%~60%、任意で10%~50%、任意で20%~40%、任意で20%~35%、任意で30%~50%(w/w%)の量で存在する。これは、たった1種の多分岐コポリマーが存在する場合は単独の多分岐コポリマーの量であってもよく、2種以上の多分岐コポリマーが存在する場合は多分岐コポリマーの全量であってもよい。ジブロック又はトリブロックコポリマーが存在する場合は、多分岐コポリマーの量は、好ましくは、コポリマーの全量が実質的に一定を維持するように変更される。
【0098】
一般的に、本組成物中のエチレンオキシドに対するエステル繰り返し単位のモル比は、1~10、好ましくは2~6である。
【0099】
一般的に、少なくとも1つの医薬活性成分の放出は、本組成物により調節可能である。
一実施態様では、組成物は医薬活性成分を、対象へ少なくとも1日間、任意で少なくとも3日間、任意で少なくとも7日間、任意で少なくとも30日間、任意で少なくとも90日間、任意で少なくとも1年間、送達するために好適である。
【0100】
更なる態様では、本発明は少なくとも1つの医薬活性成分の放出動態を調節するための、上記で特定された医薬組成物の使用を提供する。
【0101】
追加的な態様では、本発明は、上記で特定された医薬組成物の製造方法であって、上記で特定された多分岐コポリマーを、医薬として許容し得るビヒクル中に溶解すること、次に医薬活性成分をその組成物へ添加することを含む方法を提供する。
【0102】
更なる態様では、本発明は、上記で特定された組成物を、水性媒体、水又は体液と接触させることにより、生体外で又はインサイチュで作製される、生体吸収性デポを提供する。
【0103】
最終態様では、上記で特定された組成物を対象へ投与すること、及びインサイチュ型デポをインビボで形成させること、を含む医薬活性成分の制御された放出方法を提供する。
【0104】
本医薬組成物は、好ましくは非経口投与のために適している。用語「非経口投与」は、筋肉内、腹膜腔内、腹腔内、皮下、静脈内、及び動脈内を経由する投与を包含する。これは又、皮内、陰茎海綿体内、硝子体内、脳内、髄腔内、硬膜外、関節内、及び骨内投与も包含する。
【0105】
対象は動物又は植物であり得る。用語「動物」は、動物界の全てのメンバーを包含する。動物は、ヒト又は非ヒト動物であり得る。
本明細書で使用される用語「植物」は、植物界の全てのメンバーを包含する。
【0106】
「医薬活性成分」は、様々な医学的病気を治療又は予防するための薬剤又は医薬を意味する。本出願の目的のための、用語「有効成分」は、「活性成分」と同意である。従って、用語「活性成分」、「有効成分」、「薬剤」又は「医薬」は、互換的に使用される。用語「活性医薬成分」又は「API」も又使用される。本明細書で使用される用語「薬剤」又は「活性成分」は、限定されるものではないが、動物又は植物の体に局所的又は全身的に作用する生理活性物質又は薬理活性物質を含む。
【0107】
本明細書で使用される「疾患」は、感染、食事によるか、又はプロセスの機能不全によって引き起こされる、ヒト、動物、又は植物におけるいずれかの障害を意味する。
【0108】
「空間的製剤」という用語は、動物又は植物の体の表面又は内部に適用することができ、必ずしもシリンジを経由して投与する必要のない任意の製剤を包含する。
【0109】
本明細書で使用される「繰り返し単位」は、ポリマーの基本的な繰り返し単位である。
【0110】
本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」は、本出願の全体を通してPEGと略記され、時にはポリ(エチレンオキシド)又はポリ(オキシエチレン)とも称され、これらの用語は、本発明において互換的に使用される。
【0111】
略語「PLA」は、ポリ(乳酸)を指す。
略語「PLGA」は、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)を指す。
略語「PCLA」は、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)を指す。
略語「PE」は、ポリエステルを指す。
【0112】
本コポリマーを下記に従い命名した。
本明細書に記載の線状トリブロックポリマーは、PxRyと呼ぶ(式中、xは、PEG鎖の分子量をkDaで表したものであり、yはエステル繰り返し単位/エチレンオキシドモル比、例えば乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比であり、コポリマー内のPLA鎖長の計算を可能にする)。
本明細書に記載の線状ジブロックポリマーは、dPxRyと呼ぶ(式中、xは、PEG鎖の分子量をkDaで表したものであり、yはエステルモノマー/エチレンオキシドモル比、例えば乳酸/エチレンオキシド(LA/EO)モル比である)。
【0113】
sz-PxRyは、zアームを有する星型PEG-PLAコポリマーを表す。x及びyは、線状コポリマーと同じ情報を提供し、即ち、xは、ポリオール及びPEGとの反応から形成されるポリエーテルコア(しばしば「星型PEG」と称される)の分子量を表し、yは、エステルモノマー/エチレンオキシドモル比である。
例として、s4-P2R6は、2 kDaの星型PEGブロックを有し、全体のLA/EOモル比が6の、4本アーム型星型コポリマーである。
【0114】
製剤の「注入操作性」は、本明細書で使用される場合、所定のパラメータを使用して製剤を注入するために必要な力(ニュートン(N))として定義される。これらのパラメータには、注入速度、注入体積、注入時間、シリンジ種類又は針の種類等が含まれる。これらのパラメータは、使用される少なくとも1つの医薬活性成分、又は皮下、眼内、関節内等の所望の投与方法に基づいて変化し得る。それらは、製剤間の違い及び変動を観察可能とするための、製剤内に存在する少なくとも1つの医薬活性成分に基づいて調整され得る。資格のある医療専門家によって許容可能な時間枠内に、製剤を容易に投与できるように、注入操作性は低く保たれなければならない。許容し得る注入操作性値は、下記に記載する測定方法で0.1N~20Nでもよく、0.1N~10Nの注入操作性が最も好ましい。最適でない注入操作性は、20 N~30 Nを超えるかもしれない。製剤は30~40 Nでほとんど注射できず、40 Nを超えると注射不能である。注入操作性は、テクスチュロメーター、好ましくはLloyd Instruments FT及びテクスチュロメーターを使用して、次の分析条件で測定できる:500μLの製剤を、1 mLシリンジ、23G 1インチのテルモ社針を通して1mL /分の流速で、実施例6に記載のとおり注入する。
【0115】
本明細書で定義され、使用される「粘度」は、剪断応力又は引張強度による流動及び漸進的な変形に対する流体の抵抗の尺度である。それは、流動している流体の内部摩擦を表す。液体の場合、それは非公式には「厚さ」の概念に相当する。「動粘度」は、加力の下での流体の流動に対する抵抗の尺度を意味する。動速度は、1 mPa.s~3000 mPa.s、又は5 mPa.s~2500 mPa.s、又は10 mPa.s~2000 mPa.s、又は20 mPa.s~1000 mPa.sの範囲内でもよい。動粘度は、コーンプレート測定システムを備えたAnton Paarレオメータを使用して決定する。一般的に、250μLの研究対象製剤を測定プレート上に配置する。温度は+25℃に制御する。使用した測定システムは、直径25 mm、円錐角1度のコーンプレート(CP25-1)である。測定範囲は10~1000s-1である。10秒間ボルテックスにかけた後、製剤を、温度調節した測定プレートの中央にスパチュラを使用して配置する。測定システムを下に下げて、測定システムと測定プレートとの間に0.051mmのギャップを確保する。10~1000 s-1の剪断速度範囲全体で、21の粘度測定ポイントを決定する。所与の値は、100 s-1で得られた値である。
【0116】
本発明で使用される代表的な薬剤及び生物学的活性剤には、限定されるものではないが、ペプチド薬、タンパク質薬、抗体、抗体断片、脱感作剤、抗原、ワクチン、ワクチン抗原、抗感染剤、抗うつ剤、興奮剤、あへん剤、抗精神病剤、非定型抗精神病剤、緑内障薬、抗不安薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、制吐剤(antimetics)、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗微生物剤、抗アレルギー剤、抗糖尿病剤、ステロイド系抗炎症剤、充血除去剤、縮瞳剤、抗コリン剤、交感神経模倣剤、鎮静剤、催眠剤、精神賦活剤、精神安定剤、ホルモン剤、アンドロゲン性ステロイド、エストロゲン、プロゲステロン剤、体液性薬剤(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛剤、コルチコステロイド、けいれん抑制剤、抗マラリア剤、抗ヒスタミン剤、心臓作用薬、非ステロイド系抗炎症剤、抗パーキンソン病薬、降圧薬、β-アドレナリン遮断薬、栄養剤、ゴナドトロフィン放出ホルモンアゴニスト、殺虫剤、駆虫剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0117】
医薬活性成分は、メロキシカム、ブピバカイン、タムスロシン、オクトレオチド、タダラフィル、エンパグリフオジン、テノホビル、リオチロニン、又はそれらの組み合わせでもよい。
【0118】
薬剤の組合せが、本発明の生分解性薬剤送達組成物内で使用できる。例えばエリテマトーデスの治療が必要な場合、本発明では非ステロイド系抗炎症剤及びコルチコステロイドを一緒に投与することができる。
動物用の、蠕虫処置用薬剤又はワクチン等の獣医学的医薬品も又、本発明の一部である。
【0119】
ポチウイルス科、ジェミニウイルス科、ブニヤウイルス科のトスポウイルス属、及びバナナ条斑ウイルス等のウイルスに対する植物用ウイルス薬も又、本発明に包含される。又、タバコモザイクウイルス、カブクリンクルウイルス、大麦黄萎ウイルス、輪紋スイカウイルス、及びキュウリモザイクウイルスに対する薬剤を、本発明の生分解性薬剤送達組成物中に使用することもできる。
【0120】
当業者にとって、水性環境で放出させることができる他の薬剤又は生体活性剤は、記載された送達系で利用することができる。又、様々な形態の薬剤又は生体活性剤も使用することができる。これらには、限定されるものではないが、例えば、非荷電性分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド等の形態が含まれ、これらは、動物若しくは植物内に注射された時、又は、動物若しくは植物の体の表面若しくは内部に適用することができる空間的製剤として使用された時又はロッドインプラントとして使用された時に、生物学的に活性化される。
【0121】
活性成分の医薬的有効量は、活性成分、動物又は植物の病状の程度、及び活性成分の送達に必要な時間に応じて変化し得る。溶液又は懸濁液がシリンジ針を通して注射するために許容し得る粘度を有している限り、かつ、対象とする動物又は植物がそれを過剰摂取することなく病状を効果的に治療可能である限り、ポリマー溶液に組み込まれる活性成分の量に臨界的上限はない。送達系に組み込まれる活性成分の下限は、その活性成分の活性及び治療に必要な時間の長さに依存する。
【0122】
本発明の生分解性薬剤送達組成物では、医薬的有効量を長期間にわたって徐々に放出することができる。この徐放は、継続的又は非継続的、線形又は非線形であってもよく、多分岐コポリマーの組成によって変化し得る。
【0123】
必要とされる治療の種類及び使用される生分解性薬剤送達組成物に応じて、活性成分を、1日~1年の間、又はそれより長い期間にわたって放出させることができる。一実施態様では、生分解性薬剤送達組成物は、活性成分を、少なくとも1日間、任意で少なくとも3日間、任意で少なくとも7日間送達することができる。別の実施態様では、生分解性薬剤送達組成物は、活性成分を、少なくとも30日間送達することができる。一実施態様では、生分解性薬剤送達組成物は、活性成分を、少なくとも90日間送達することができる。又別の実施態様では、生分解性薬剤送達組成物は、活性成分を、1年以上送達することができる。
【0124】
本生分解性薬剤送達組成物は、好ましくは室温で注射可能な液体であり、過度の力無しにシリンジを通して注射することができる。これらの生分解性薬剤送達組成物は又、インサイチュで形成され、生分解性であり、動物又は植物内へ注射された時に、固形デポになる。
【0125】
本組成物は更に、医薬として許容し得るキャリア、アジュバント、又はビヒクルを含むことができる。
アジュバントは、薬物を混合するときに同時に製剤化することができる。これに関して、使用可能なアジュバントは、ミョウバン、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、MPL(商標)、CpGモチーフ、改変毒素、サポニン、例えばサイトカイン等の内因性刺激アジュバント、フロイント完全及び不完全アジュバント、ISCOM型アジュバント、ムラミルペプチド等である。
【0126】
ビヒクルは、生分解性薬剤送達組成物中で必要な場合に、活性成分の送達を変化させ得る任意の希釈剤、追加の溶媒、充填剤、又は結合剤であることができる。その例には、少量のトリグリセリド、例えば、トリアセチン又はトリプロピオニンが含まれる。
【0127】
一実施態様では、組成物は有機溶媒を含むことができる。有機溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、2-ピロリドン、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びこれらの混合物の群から選択されてもよい。一実施態様では、DMSO、NMP、トリプロピオニン又はそれらの混合物が溶媒として使用できる。
【0128】
(略語リスト)
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0129】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R6トリブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F396(□)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(△)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤が、ほぼ同等の分子量及びほぼ同等の全コポリマー含有量を有する線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。実際、製剤F397は、製剤F396よりも遅い放出速度を示す。
【0130】
図2図2は、製剤F396及びF397の注入操作性値を示す。データは、コポリマーの同一の担持量及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤よりも低い注入操作性を有することを示す。従って、製剤F397の注入操作性値は、製剤F396のそれよりも低い。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0131】
図3図3は、製剤F396及びF397の粘度値を示す。データは、コポリマーの同一の担持量及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤よりも低い粘度を有することを示す。従って、製剤F397の粘度値は、製剤F396の粘度値よりも低い。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0132】
図4図4は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにdP2R6ジブロックコポリマー38.00%、及びDMSO 60.00%を含む製剤F511(○)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(△)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤が、ほぼ同等の分子量及び類似の全コポリマー含有量を有する線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。実際、製剤F397は、製剤F511よりも遅い放出速度を示す。
【0133】
図5図5は、製剤F397及び製剤F511の注入操作性値を示す。データは、コポリマーの類似する担持量及びほぼ同等の分子量の場合、両方の製剤は、ほぼ同等の注入操作性値を有することを示す。従って、類似する注入操作性の場合、星型コポリマーベースの製剤は、より遅い放出速度を示す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0134】
図6図6は、製剤F397及びF511の粘度値を示す。データは、コポリマーの類似する担持量及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤及び線状コポリマーベースの製剤の両方は、類似する粘度値を有することを示す。従って、類似する粘度値の場合、星型コポリマーベースの製剤は、より遅い放出速度を示す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0135】
図7図7は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにdP2R1.5ジブロックコポリマー61.00%、及びDMSO 37.00%を含む製剤F510
【化18】
並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(△)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。
データは、星型コポリマーベースの製剤が、ほぼ同等の枝あたりポリエステル鎖長を有する線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。実際、製剤F397は、製剤F510と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0136】
図8図8は、製剤F397及びF510の注入操作性値を示す。データは、類似の注入操作性及び類似の枝あたりポリエステル鎖長の場合、星型コポリマーベースの製剤は、より遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0137】
図9図9は、製剤F397及びF510の粘度値を示す。データは、類似の粘度及び類似の枝あたりポリエステル鎖長の場合、星型コポリマーベースの製剤はより遅い放出速度をもたらすことを示す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0138】
図10図10は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R3.5トリブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F391(○)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー47.00%、及びDMSO 51.00%を含む製剤F451(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。実際、製剤F451は、製剤F391と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0139】
図11図11は、製剤F391及びF451の注入操作性値を示す。データは、類似の注入操作性及び類似の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は、より遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0140】
図12図12は、F391,及びF451の粘度値を示す。データは、類似の粘度及び類似の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は線状コポリマーベースの製剤のそれよりも遅い放出速度を示すことを表す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0141】
図13図13は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出合計量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにdP2R3ジブロックコポリマー45.00%、及びDMSO 53.00%を含む製剤F449(○)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー47.00%、及びDMSO 51.00%を含む製剤F451(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。実際、製剤F451は、製剤F449と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0142】
図14図14は、製剤F449及びF451の注入操作性値を示す。データは、より低い注入操作性及び類似の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤のそれよりも遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0143】
図15図15は、製剤F449及びF451の粘度値を示す。データは、より低い粘度値及び類似の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は線状コポリマーベースの製剤のそれよりも遅い放出速度をもたらすことを表す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0144】
図16図16は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにdP2R0.8ジブロックコポリマー68.00%、及びDMSO 30.00%を含む製剤F509(○)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー47.00%、及びDMSO 51.00%を含む製剤F451(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。
【0145】
データは、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の枝あたりポリエステル鎖長を有する線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。実際、製剤F451は、F509と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0146】
図17図17は、製剤F451及びF509の注入操作性値を示す。データは、ほぼ同等の注入操作性値であって類似のアームあたりポリエステル鎖長の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0147】
図18図18は、製剤F451及びF509の粘度値を示す。データは、ほぼ同等の粘度及び類似のアームあたりポリエステル鎖長の場合、星型コポリマーベースの製剤は線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0148】
図19図19は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R2トリブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F388(○)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F389(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。
【0149】
結果は、星型コポリマーベースの製剤が、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。製剤F389は、製剤F388よりも遅い放出速度を示す。
【0150】
図20図20は、製剤F388及びF389の注入操作性値を示す。データは、同一のコポリマー含有量及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より低い注入操作性及びより遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0151】
図21図21は、製剤F388及びF389の粘度値を示す。データは、同一のコポリマー含有量及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より低い粘度及びより遅い放出速度を示すことを表す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0152】
図22図22は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R3.5トリブロックコポリマー44.00%、及びNMP 54.00%を含む製剤F483(○);活性成分(API)2.00%とともにdP2R3ジブロックコポリマー47.00%、及びNMP 51.00%を含む製剤F484(□);並びに活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー51.00%、及びNMP 47.00%を含む製剤F489(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。実際、製剤F489は、F483及びF484と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0153】
図23図23は、製剤F483、F484及びF489の注入操作性値を示す。データは、同一の注入操作性及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0154】
図24図24は、F483、F484及びF489の粘度値を示す。データは、類似の粘度及びほぼ同等の分子量の場合、星型コポリマーベースの製剤は線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。表4に、粘度データの詳細を示す。
【0155】
図25図25は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R3.5トリブロックコポリマー22.00%、及びトリアセチン 76.00%を含む製剤F485(○);活性成分(API)2.00%とともにdP2R3ジブロックコポリマー24.00%、及びトリアセチン 74.00%を含む製剤F486(□);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー26.00%、及びトリアセチン 72.00%を含む製剤F488(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。製剤F488は、F485及びF486よりも遅い放出速度を示す。
【0156】
図26図26は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出合計量パーセンテージを示す。活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F389(◇);活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F405(△);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。
【0157】
データは、星型コポリマー内のPLA鎖長の増大が、同一のコポリマー含有量の製剤の放出動態の調節につながることを示す。製剤F397は、F405及びF389よりも遅い放出速度を示す。同様に、製剤F405は、F389より遅い放出速度を示す。
【0158】
図27図27は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F389(▽);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P5R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F402(△)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、LA/EO比が一定の場合の星型コポリマー内のPEG 鎖長の増大が、同一のコポリマー含有量の製剤の放出速度の増大につながることを示す。製剤F389は、F402と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0159】
図28図28は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す。活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F405(△);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー47.00%、及びDMSO 51.00%を含む製剤F451(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、星型コポリマー含有量の増大が、放出速度の減少につながることを示す。実際、製剤F451は、F405と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0160】
図29図29は、2つの異なる製剤からの長期にわたるブピバカインのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R6トリブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F413(○);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F414(△)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。実際、製剤F414は、製剤F413と比較して、より遅い放出速度を示す。
【0161】
図30図30は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカム、ブピバカイン及びタムスロシンのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:ブピバカイン 2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F414(△);メロキシカム 2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(○);並びに、タムスロシン 2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F460(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、本発明に記載された星型コポリマーベースの製剤を使用して、異なるAPIの長期間の持続的放出が達成可能であることを示す。
【0162】
図31図31は、F397からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出合計量パーセンテージを示すグラフである。製剤F397(○)は、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、少なくとも6ヶ月までの間、薬剤の持続的放出をもたらすことを表す。
【0163】
図32図32は、2つの異なる製剤からの長期にわたるタムスロシンのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API) 14.40%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 45.60%を含む製剤F463(△)、並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F460(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、2つの異なるAPIを担持しての持続的放出を可能とすることを示す。
【0164】
図33図33は、4つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムの一日あたりマイクログラムでの放出速度を示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R3.5トリブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F391(○);活性成分(API)2.00%とともにdP2R3ジブロックコポリマー45.00%、及びDMSO 53.00%を含む製剤F449(□);活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー47.00%、及びDMSO 51.00%を含む製剤F451(△);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度をもたらすことを表す。実際、製剤F451及びF397は、F391及びF449と比較して、より遅い放出速度を示す。 星型ベースの製剤F397は、最も遅い放出速度をもたらすことを示すことができる。
【0165】
図34図34は、図33に示された4つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムの、ナノグラム/ミリリットルで表される、全活性成分の血漿濃度を示すグラフである。インビボ放出試験を、実施例7の表5の設定1に従って実施した。 結果は、インビトロでの観察によると、星型コポリマーベースの製剤は、ほぼ同等の分子量を持つ線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度をインビボで示すことを表す。実際、製剤F451及びF397は、F391及びF449と比較して、より遅い放出速度を示す。 インビトロでの結果と同様に、星型ベースの製剤F397は、最も遅い放出速度をもたらすことが観察された。
【0166】
図35図35は、製剤F391、F449、F451及びF397の注入操作性値を示す。データは、類似の注入操作性(約20N)の場合、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤のそれと比較して、より遅い放出速度を示すことを表す。表3に、注入操作性データの詳細を示す。
【0167】
図36図36は、PEG-PLAコポリマー分解の尺度として、2つの異なる製剤からの長期にわたる乳酸のインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す。タムスロシン 2.00%とともにP2R2トリブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F496(○)、並びにタムスロシン 2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F497(□)。乳酸の定量は、実施例4に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、線状コポリマーベースの製剤F496は、所定の期間を超えて一定の乳酸放出をもたらすことを示す。F497星型コポリマーベースの製剤は、最初の50日間はF496よりも遅い乳酸の放出速度をもたらすが、その後、研究期間の終了まで放出が加速する。 従って驚くべきことに、星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマーベースの製剤と比較して、加速されたデポ分解をもたらす。
【0168】
図37図37は、2つの異なる製剤からの長期にわたる乳酸のインビトロでの累積放出合計量パーセンテージを示すグラフである:タムスロシン 2.00%とともにdP2R3ジブロックコポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F498(○)、並びにタムスロシン 2.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F499(□)。乳酸の定量は、実施例4に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、線状コポリマーベースの製剤F498は、最初の90日間は遅い、ほとんど一定での乳酸放出をもたらすが、その後、研究期間の終了まで放出は加速することを示す。星型コポリマーベースの製剤F499 は、最初の50日間は、F498よりも遅い乳酸放出をもたらすが、その後、研究期間の終了まで放出が加速する。従って、星型コポリマーベースの製剤のデポは、線状コポリマーベースの製剤からなるデポと比較して、加速されたデポ分解を受ける。
【0169】
図38図38は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F389
【化19】
活性成分(API)2.00%とともに、s4-P2R6星型コポリマー20.00%及びs4-P2R2星型コポリマー20.00%、及び、DMSO 58.00%を含む製剤F401(△);並びに、活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(◇)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。
結果は、製剤組成物中の2つの星型コポリマーの混合は、調節又は改善された放出プロファイルをもたらすことを示す。
【0170】
図39図39は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(○);活性成分(API)2.00%とともにs4-P5R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F402(▽);並びに、活性成分(API)2.00%とともに、s4-P2R6星型コポリマー20.00%及びs4-P5R2星型コポリマー20.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F404(□)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 結果は、製剤組成物中の2つの星型コポリマーの混合は、調節された放出プロファイルをもたらすことを示す。
【0171】
図40図40は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R2線状コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F388(◇);活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F389(○);並びに、活性成分(API)2.00%とともに、s4-P2R2星型コポリマー20.00%及びP2R2線状コポリマー20.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F390(□)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、製剤組成物中の線状コポリマー及び星型コポリマーの混合は、調節された放出プロファイルをもたらすことができることを示す。驚くべきことに、混合した星型コポリマー及び線状コポリマーベースの製剤は、星型コポリマー又は線状コポリマーベースの製剤と比較して、最適化された放出プロファイルをもたらす。
【0172】
図41図41は、3つの異なる製剤からの長期にわたるブピバカインのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R2線状コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F407(△);活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R2星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F408(▽);並びに、活性成分(API)2.00%とともに、s4-P2R2星型コポリマー20.00%及びP2R2線状コポリマー20.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F409
【化20】
。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。
データは、製剤組成物中の線状コポリマー及び星型コポリマーの混合は、調節された放出プロファイルをもたらす可能性のあることを示す。従って、驚くべきことに、混合した星型コポリマー及び線状コポリマーベースの製剤は、星型コポリマー又は線状コポリマーベースの製剤と比較して、最適化された放出プロファイルをもたらす。
【0173】
図42図42は、3つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにP2R2線状コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F388(◇);活性成分(API)2.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F397(○);並びに、活性成分(API)2.00%とともに、s4-P2R6星型コポリマー20.00%及びP2R2線状コポリマー20.00%、及びDMSO 58.00%を含む製剤F399(□)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、表1に示す。 データは、製剤組成物中の線状コポリマー及び星型コポリマーの混合は、調節された放出プロファイルをもたらすことができることを示す。
【0174】
図43図43は、3つの異なる製剤からの長期にわたるエンパグリフロジンのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API) 20.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー20.00%、及びDMSO 60.00%を含む製剤F135(△);活性成分(API) 20.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー20.00%、及びDMSO 60.00%を含む製剤F136(・);並びに、活性成分(API) 20.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー30.00%、及び50.00%のDMSOを含む製剤F137(▽)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定2に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 結果は、星型コポリマーベースの製剤が、長期にわたるエンパグリフロジンの持続的放出速度を示すことを表す。データは、R比の修正は、得られる放出プロファイルの調節を誘導することを示す。実際、製剤F136は、製剤F135よりも遅い放出速度を示す。データは、全コポリマー含有量の増加が放出プロファイルの調節をもたらすことを示す。F137は、製剤F136よりも遅い放出速度を示す。
【0175】
図44図44は、F47及びF48からの長期にわたるタダラフィルのインビトロでの累積放出合計量パーセンテージを示すグラフである。製剤F47(△)は、活性成分(API) 20.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー25.00%、及び55.00%のDMSOを含む。製剤F48(▽)は、活性成分(API) 20.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー25.00%、及び55.00%のDMSOを含む。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定3に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、星型コポリマーベースの製剤が、長期にわたるタダラフィルの持続的放出を可能とすることを表す。データは、R比の修正は、得られる放出プロファイルの調節を誘導することを示す。実際、製剤F47は、製剤F48よりも遅い放出速度を示す。
【0176】
図45図45は、F149からの長期にわたるストレプトアビジンのインビトロでの累積放出合計量パーセンテージを示すグラフである。製剤F149(△)は、活性成分(API) 1.50%とともにs4-P2R3星型コポリマー28.00%、及びトリプロピオニン70.50%を含む。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定4に従って実施した。特定のブロックコポリマー製剤を、下記表1に示す。 データは、星型コポリマーベースの製剤が、長期にわたるストレプトアビジンの持続的放出を可能とすることを表す。
【0177】
図46図46は、F48製剤における長期にわたるタダラフィルの、ナノグラム/ミリリットルで表される、全活性成分の血漿濃度を示すグラフである。F48(▽)は、活性成分(API) 20.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー25.00%、及び55.00%のDMSOを含む。インビボ放出試験を、実施例7の表5の設定2に従って実施した。 結果は、インビトロでの観察によると、この製剤は、インビボで長期にわたるタダラフィルの持続的放出を可能とすることを示す。
【0178】
図47図47は、製剤F2における長期にわたるメロキシカムの、ナノグラム/ミリリットルで表される、全活性成分の血漿濃度を示すグラフである。F2(○)は、活性成分(API)2.00%とともに、s4-P2R3星型コポリマー20.00%、P2R2トリブロックコポリマー20.00%、及びDMSO 58.00%を含む。インビボ放出試験を、実施例7の表5の設定1に従って実施した。 結果は、製剤F2中の星型コポリマー及び線状コポリマーの組合せは、インビボで長期にわたるメロキシカムの持続的放出プロファイルをもたらすことを示す。
【0179】
図48図48は、2つの異なる製剤からの長期にわたるテノホビルのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API) 19.00%とともにs4-P2R3星型コポリマー40.00%、及び41.00%のDMSOを含む製剤F19(△)、並びに活性成分(API) 19.00%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及び41.00%のDMSOを含む製剤F20(・)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定5に従って実施した。 結果は、星型コポリマーベースの製剤が、長期にわたるテノホビルの持続的放出を可能とすることを示す。データは、R比の修正は、得られる放出プロファイルの調節を誘導することを示す。実際、製剤F20は、製剤F19よりも遅い放出速度を示す。
【0180】
図49図49は、製剤F145における長期にわたるオクトレオチドの、ナノグラム/ミリリットルで表される、全活性成分の血漿濃度を示すグラフである。F145(○)は、活性成分(API) 0.70%とともに、s4-P2R3星型コポリマー28.00%、P1R4トリブロックコポリマー18.00%、及び53.30%のDMSOを含む。インビボ放出試験を、実施例7の表5の設定3に従って実施した。 結果は、製剤F145中の星型コポリマー及び線状コポリマーの組合せは、インビボで長期にわたるオクトレオチドの持続的放出プロファイルをもたらすことを示す。
【0181】
図50図50は、2つの異なる製剤からの長期にわたるテノホビルのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API) 0.10%とともにs4-P2R3星型コポリマー40.00%、及び59.90%のDMSOを含む製剤F29(▽)、並びに活性成分(API) 0.10%とともにs4-P2R6星型コポリマー40.00%、及び59.90%のDMSOを含む製剤F30(○)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定6に従って実施した。 結果は、星型コポリマーベースの製剤が、長期にわたるリオチロニンの持続的放出を可能とすることを示す。データは、R比の修正は、得られる放出プロファイルの調節を誘導することを示す。実際、製剤F29は、製剤F30よりも遅い放出速度を示す。
【0182】
図51図51は、2つの異なる製剤からの長期にわたるメロキシカムのインビトロでの累積放出量パーセンテージを示す:活性成分(API)2.00%とともにs3-P0.45R3星型コポリマー55.00%、及び43.00%のDMSOを含む製剤F521(▽)、並びに活性成分(API)2.00%とともにs3-P1R3星型コポリマー55.00%、及び43.00%のDMSOを含む製剤F522(□)。インビトロ放出試験を、実施例3の表2の設定1に従って実施した。 結果は、LA/EO比が一定の場合には星型コポリマー内のPEG 鎖長の増大が、同一のコポリマー含有量の製剤の調節された放出速度につながることを示す。実際、製剤F521は、製剤F522より遅い放出速度を示す。
【実施例
【0183】
(実施例)
(実施例1:材料)
(星型ブロックコポリマー)
下記に示すのは、本発明の医薬組成物で使用される多分岐型PEG-PLAを得るための一般的な反応スキームである。文字m及びuは、それぞれ各PEGブロック及びPLAブロック中の繰り返し単位数を示す。合成経路及び実験条件を考慮すると、多アーム型ポリマーは対称であり、各アームは同一の構造及び組成を示すと考えられる。下記スキーム1では、4本アーム型PEG誘導体が使用されているが、類似の反応スキームを、異なる数のPEGアームを有する多分岐型PEGで使用できることが理解されるであろう。
【化21】
スキーム1
【0184】
多分岐ブロックコポリマーは、多分岐型PEG又は星型PEGと称される多分岐ポリエーテルによって開始した、D,L-ラクチドの開環重合によって合成した(S.J. Buwaldaらの文献、「アミド結合対エステル結合の、8本アーム型PEG-PLA星ブロックコポリマーヒドロゲルの特性に及ぼす影響」 Biomacromolecules 11 (2010) 224-232)。星型PEGは、例えばcreative PEG works社から、例えばスキーム1に示される4本アーム型PEG-OHが市販されている。それとは別に、多分岐型PEGを、エチレンオキシドをポリオールと反応させて作製することもできる。
【0185】
次に、触媒を(例えば、モノマー/触媒が10000 mol/molであるように)、反応容器中の星型PEGへ80℃で添加して重合開始剤と共に攪拌し、その後好適な量のD,L-ラクチドを添加した(モノマー量は、目標としたR比に応じて決定した)。更に、系内から水を除去するために、数回の連続的な真空化及び窒素充填サイクルにより混合物を乾燥させた。次に反応混合物を加熱し、数時間維持して(モノマーが完全に変換するまで)反応させた。重合反応の終了時に、ポリマーを反応容器から取り出して放冷する。次にポリマーを更に精製して、未反応のモノマー、触媒及びオリゴマーを除去する。そのために、ポリマー混合物を好適な溶媒、即ちアセトンに溶解させ、一晩溶解させる。次にポリマー溶液を、ブロックコポリマーの不溶溶媒(即ち、エタノール)中に再沈させる。このステップを数回繰り返して、目的のポリマーだけを確実に回収する。採取したポリマーは、全ての溶媒がサンプルから抽出されるまで、真空下で放置乾燥させる。
【0186】
星型ブロックコポリマーを、合成及び精製後に分析及び特性評価し、得られたポリマーが目的の構造及び組成を有していたことを確認した。そのために、1H NMRをCDCl3中で測定し、GPC分析をクロロホルム溶媒で行った。
【0187】
1H NMRを、外部の会社がBrucker advance 300 MHz分光計により、その標準的手順に従って行った。全ての1H NMRスペクトログラムにおいて、ピークの積分及びそれらの分析にMestReNovaソフトウェアを使用した。化学シフトは、CDCl3の溶媒値δ=7.26ppmを基準にした。
【0188】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を、Malvernから入手したゲル浸透クロマトグラフィー三重検出器アレイ(GPC-TDA)装置で実施した。150~200 mgのポリマーを10mLのクロロホルム(HPLCグレード)に一晩溶解した後、分析用1.5mLバイアル内に入れてキャップの栓を閉めた。dn/dc値を各ポリマーごとに決定した後、100μLのポリマー溶液をGPC系中に3回に分けて注入した。次に、各レプリケートを個別に分析して積分した。上記のMn及び多分散指数(PDI)の値は、全ての注入試行に基づいて決定された平均値に相当する。
【0189】
(線状ブロックコポリマー)
星型ブロックコポリマーと比較して、線状トリブロックコポリマーは一般的に、下式を有する:
Av-Bw-Ax
(式中、Aはポリエステルであり、Bはポリエチレングリコールであり、v及びxは1~3,000の範囲内の繰り返し単位数であり、wは3~300の範囲内の繰り返し単位数であり、v=x又はv≠xである)。
【0190】
星型ブロックコポリマーと比較して、線状ジブロックコポリマーは一般的に、下式を有する:
Cy-Az
(式中、Aはポリエステルであり、Cは末端封止されたポリエチレングリコールであり、y及びzは繰り返し単位数であって、yは2~250の範囲内でありzは1~3,000の範囲内である)。
【0191】
一般的に、星型ブロックコポリマーと比較して、線状トリブロックコポリマーは、下式を有する:
LAv-EOw-LAx
(式中、v及びxは1~3,000の範囲内の繰り返し単位数であり、wは3~300の範囲内の繰り返し単位数であり、v=x又はv≠xである)。
【0192】
一般的に、星型ブロックコポリマーと比較して、線状ジブロックコポリマーは、下式を有する:
m(EO)y-LAz
(式中、y及びzは繰り返し単位数であって、yは2~250の範囲内でありzは1~3,000の範囲内である)。
【0193】
ブロックコポリマーを、引用により本明細書中に組み込まれている米国特許第6,350,812号に記載された方法に従い、わずかに改変して合成した。一般的に、必要量の(トリブロックコポリマー内の)PEG又は(ジブロックコポリマー内の)メトキシPEGを、反応装置容器内80℃で加熱し、真空下で30分間乾燥させた。(目的のLA/EOモル比に対応する量の)D,L-ラクチド及び(ラクチド量の1/1000の)触媒を添加した。水の存在による副反応を避けるため、反応混合物を、真空化/N2充填サイクルを、短いサイクルで2回行った。
次に反応物を、130℃で定常窒素流下で(0.2 bar)加熱した。反応が停止したら、ブロックコポリマーを反応容器から排出して放冷した。次に、得られたポリマーサンプルをアセトンに溶解させた後、大量の不溶性溶媒中で(貧溶媒/良溶媒比=6~10)再沈して、サンプル中に存在する未反応モノマー、触媒又はオリゴマーを除去した。この精製プロセスを2回繰り返した。次に、回収したポリマーを、全ての溶媒残渣を除去して目的としたポリマーだけを回収するために、真空下で放置乾燥した。
【0194】
得られた生成物を、その残存ラクチド含有量のため及びR比を決定するために、1H NMRで特性評価した。
1H NMR分光法を、Brucker advance 300 MHz分光計を使用して実施した。全ての1H NMRスペクトログラムにおいて、ピークの積分及びそれらの分析にMestReNovaソフトウェアを使用した。化学シフトは、CDCl3の溶媒値δ=7.26ppmを基準にした。
【0195】
R比はエチレンオキシド単位に対する乳酸単位の比(LA/EO)を表し、R比を決定するために、全てのピークを別々に積分した。シグナル強度(積分値)は、シグナルを構成する水素の数に正比例する。従って、R比(LA/EO比)を決定するために、積分値は均一であって同じ数の陽子を表示する必要がある(例えば、全てのシグナル値は1Hに関して決定される)。次に、PLAの特徴的ピーク及びPEGのそれを、LA/EO比を決定するために使用する。この方法は、ポリマーの末端基により得られたシグナルを無視できる1000 g/molを超えるPEG分子量の場合に有効である。
【0196】
(実施例2:星型コポリマーの、水可溶性画分の分析)
水溶解度試験を実施して、星型コポリマーの水溶性画分を決定した。
【0197】
水溶解度分析は次のステップから構成される:
空の20 mLバイアルを秤量した(1)。500 mgのコポリマーを秤量し、対応するバイアルへ投入した。5 mLの超純水を、各バイアルへ投入した。バイアルを、2時間、37℃でボルテックスにかけながら保温した。視覚観察を行い、写真を撮影した。次に、バイアル(1)を10分間、3000 rpmで遠心分離した。10 mLガラスバイアル(2)を秤量した。(1)の上清を(2)内に移し、それら質量を記録した。(1)内の濡れた状態のコポリマーを秤量した。(1)及び(2)を-80℃で一晩維持した。(1)及び(2)を凍結乾燥機内に22時間置いた。バイアル(1)及び(2)を秤量した。乾燥して残存乾燥コポリマーを秤量した後、水溶解度を決定した。溶解したコポリマー量を、空のバイアル重量及び凍結乾燥したものの重量の差として決定した。水溶解度分析は、1回の分析で行った。
結果は、s4-P2R2、s4-P2R6及びs4-P5R4それぞれについて、水溶解度値2.7 mg/mL、1.7 mg/mL及び1.7 mg/mLを示す。
【0198】
(実施例3:インビトロ放出試験)
(設定1の詳細な手順)
50 mgのメロキシカム含有製剤を三角フラスコ内の20 mlのバッファへ添加した。使用したバッファはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH 7.4であって、137 mMの塩化ナトリウム、2.7 mMの塩化カリウム、10mMのリン酸水素二ナトリウム、1.8mMの一リン酸カリウム及び0.1%アジ化ナトリウムである。注入時に、溶媒は製剤から拡散して残存するポリマーは水性環境内でインサイチュ型デポを形成する。
【0199】
栓をした三角フラスコを、37℃、180rpmの一定振盪(Unimax 1010装置、Heidolph社)下で維持した。所定の時間間隔で2 mLの媒体を採取し、UPLCで分析した。残りの媒体は廃棄し、20mLの新しいバッファを三角フラスコへ添加した。実験シンクの条件は、全研究期間中維持した。製剤から放出されたメロキシカム量は、メロキシカムの濃度が0~160μg/mlの範囲内である検量線から計算した。
ポリマー溶液中に組み込まれていたメロキシカムは、固化するときにポリマーマトリックス内に被包された。
【0200】
インビトロ放出(IVR)を、下記に詳細説明されている連続するステップに従い分析した。
(製剤の調製)
空の3mLガラスバイアルを風袋引きしてから、そのバイアル中に目的のコポリマー量を量り取った。このガラスバイアルを再度風袋引きした。パスツールピペットを使用して、正確なDMSO質量を添加した。次に、ビヒクル(コポリマー+溶媒)を、コポリマーが完全に溶解するまで、室温(RT)で6~7時間、ローラーミキサーにかけた。次に、ガラスバイアルを風袋引きし、目的のAPI量を量り取った。次に、製剤を室温で一晩、ローラーミキサーにかけた。
【0201】
(IVR開始)
50μLの製剤を、予めボルテックスにかけておいた対応するガラスバイアルから0.5 mLのCodanシリンジ内へ取り出した。このシリンジをクリーンにし、風袋引きし、製剤をシリンジから針なしで、予め20 mLの放出用バッファ(PBS 1X)を充填してある50mLガラスバイアル内へ直接注入した。析出及びデポ形成が生じたら、はさみを使用して、デポをシリンジから切り放した。シリンジを秤量し直して、正確なデポ質量を決定した。
全てのデポが形成された時点で、ガラスバイアルを37℃でスターラーにかけた。
【0202】
(API定量用の、IVRサンプリング及びIVRサンプルの調製)
所望の各時点で、分析用に充分な量のバッファを50 mLガラスバイアルから取り出し、その後全バッファを新たに交換した。各サンプルの1 mLを、0.2 μmの親水性フィルタでろ過して1 mLのHPLC用ガラスバイアルに入れた。放出されたバッファ中のAPI含有量を、UPLCを使用して決定した。
【0203】
幾つかのパラメータ、例えば、製剤の質量、バッファの種類又はバッファ体積は、研究対象のAPI、異なるバッファへの溶解度、並びにその目的用量及び放出期間に応じて適応され得る。異なるパラメータでの設定を下記表2に示す。
全ての研究対象製剤を、下記表1に示す。
【0204】
【表2】
【0205】
【表3】
【0206】
(実施例4:デポ分解性評価)
デポ分解性評価を、全てのサンプリング時点でIVR試験に使用したバッファ内の乳酸を定量化することによって実施した。媒体中の乳酸量は、PLA鎖の分解と関係する。
【0207】
最初に、サンプルを加水分解した。放出された媒体500μLを1.5mLエッペンドルフチューブに移した。250 μLのNaOH 5Mを加える。このエッペンドルフチューブを、40℃で1時間保持した。250μLのHCl 5Mを加えて、反応を停止させた。
【0208】
使用した材料は、Libios社(Pontcharra-sur-Turdine、フランス国)から市販されている「メガザイムL-乳酸キット(登録商標)」と呼ばれる市販キットであった。乳酸の定量化は、標準プロトコルを修正せずに使用して実行した。
【0209】
(実施例5:注入操作性)
この実験の目的は、星型コポリマーの使用が製剤の注入操作性へ及ぼす潜在的な影響を評価することであり、その注入操作性値を、類似の線状コポリマーを含む製剤のそれと比較することによって評価した。
【0210】
注入操作性分析を、テクスチュロメーターを備えたLloyd Instruments FTを使用して、下記記載の手順に従って実行した。
製剤(有機溶媒中に溶解させたコポリマー)を15秒間ボルテックスにかけた。500 μLの製剤を、針無し1 mL Codanシリンジを使用して取り出した。気泡を除去して、注入操作性測定中の障害を避けた。次に、23G 1インチのテルモ針をシリンジに取り付けて、ビヒクル又は製剤それぞれのためとした。シリンジをテクスチュロメーターに設置した。流量は1mL /分一定とした。速度は56.3 mm/分一定とした。製剤の注入は、一定の速度で開始した。注射装置(即ち、シリンジ+針)は、レプリケートごとに交換した。
【0211】
各レプリケートを注入するために必要な平均力(ニュートン(N))は、テクスチュロメーターソフトウェアを使用して計算した。上記設定を使用して、本発明者らは、手動で容易に注射できる製剤とするための最大値として20Nを特定した。
【0212】
【表4】
【0213】
(実施例6:動粘度分析)
動粘度分析を、コーンプレート測定システムを備えたAnton Paarレオメータを使用して、下記分析条件において実施した。
温度は25℃に調製。
ビヒクル量:0.25 mL。
測定システム:直径25 mm及び円錐角1度のコーンプレート(CP25-1)。
測定範囲:10~1000 mPa.s。
【0214】
製剤は、分析前に10秒間ボルテックスにかけた。250 μLの製剤を、温度調節した測定プレートの中央にスパチュラを使用して配置した。測定システムを下に下げ、測定システム及び測定プレートの間に0.051mmのギャップは確保した。21の粘度測定ポイントを、10~1000 s-1の剪断速度にわたって決定した(ディケードあたり10ポイント)。粘度データは、曲線平坦域の平均値である100 s-1剪断速度で計算したものに相当する。製剤動粘度の分析は、三連レプリケートで実施した。
【0215】
【表5】
【0216】
(実施例7:薬物動態研究)
(インビボでの設定1の詳細な手順)
幾つかのメロキシカム製剤を、体重が300~350gのオス成体ラットを使った薬物動態研究で試験した。3.6 mgのメロキシカムを含む医薬品を、1 mLのSoft Ject(登録商標)シリンジ及び23G(1インチ0.6×25 mm)のテルモ(登録商標)針を使用して、ラットの肩甲骨間領域に皮下投与した。注射した製剤の体積は、160μL一定とした。血液サンプルを、下記異なる時点でEDTAチューブに採取した:T(0.5時間)、T(1時間)、T(3時間)、T(8時間)、T(24時間)(1日)、T(48時間)(2日)、T(96時間)(4日)、T(168時間)(7日)、T(240時間)(10日)、T(336時間)(14日)。血液サンプルは遠心分離し、各時点からの血漿を回収した。血漿サンプルを、メロキシカム含有量を定量化するためにLC/MS/MSにより分析した。
【0217】
幾つかのパラメータ、例えば、製剤の質量、動物モデル又は針サイズは、研究対象のAPI、その目的とする医学用途、並びにその目的用量及び放出期間に応じて適応され得る。異なるパラメータでの設定を下記表5に示す。
【0218】
【表6】
【0219】
本発明の実施態様を、下記番号付き段落(段落)に関連して下記に記載する:
(1) ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐コポリマーを含む、インサイチュ型デポの作製に好適な医薬組成物であって、該多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶である、前記医薬組成物。
(2) 前記ポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下である、段落1に記載の組成物。
(3) ポリエーテルを含む中心コアに結合された少なくとも3本のポリエステルアームを含む生分解性多分岐ポリエステルコポリマーを含む、インサイチュ型デポの作製に好適な医薬組成物であって、該ポリエーテルの分子量は10 kDa以下、好ましくは5 kDa以下、4 kDa以下、3 kDa以下、又は2 kDa以下である、前記医薬組成物。
【0220】
(4) 前記多分岐コポリマーは水溶液中で実質的に不溶である、段落3に記載の組成物。
(5) 前記多分岐コポリマーは、15 mg/mL未満、任意で10 mg/mL未満、5 mg/mL未満、5 g/mL未満、2 mg/mL未満、又は1 mg/mL未満の水溶液中での溶解度を有する、段落1~4のいずれか1に記載の組成物。
(6) 前記溶解度は37℃で測定される、段落5に記載の組成物。
【0221】
(7) 前記多分岐コポリマーは、式A(B)n(式中、Aは中心コアを表し、Bはポリエステルアームを表し、nは少なくとも3の整数である)で表される、段落1~6のいずれか1に記載の組成物。
(8) 前記nは少なくとも4、又は少なくとも6、又は少なくとも8である、段落7に記載の組成物。
(9) 前記中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリオールから誘導可能な多分岐ポリエーテルである、段落1~8のいずれか1に記載の組成物。
【0222】
(10) 前記ポリオールは少なくとも3個の水酸基を含む、段落9に記載の組成物。
(11) 前記ポリオールは、少なくとも3個の水酸基、任意で3、4、5、6、又は8個の水酸基で置換された炭化水素である、段落10に記載の組成物。
(12) 前記ポリオールは更に1以上のエーテル基を含む、段落9~11のいずれか1に記載の組成物。
【0223】
(13) 前記ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、又はイノシトールである、段落9~12のいずれか1に記載の組成物。
(14) 前記多分岐ポリエーテルの各枝は、ポリエステル又はそのモノマー若しくは前駆体と反応可能な末端反応性基を有する、段落9~13のいずれか1に記載の組成物。
(15) 前記末端反応性基は水酸基である、段落14に記載の組成物。
【0224】
(16) 前記多分岐ポリエーテルは式1a又は式2aを有する、段落9~15のいずれか1項に記載の組成物:
【化22】
(式中、mは5~150の整数である)(式1a)、
【化23】
(式中、mは5~150の整数である)(式2a)。
【0225】
(17) 前記ポリエステルは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)及びポリ(ヒドロキシアルカン酸)又はそれらの混合物の群から選択された少なくとも1つのポリマー又はコポリマーであるか、又はそれから形成される、段落1~16のいずれか1に記載の組成物。
(18) 前記ポリエステルはホモポリマーである、段落1~17のいずれか1に記載の組成物。
(19) 前記ポリエステルは1種を超えるモノマーから由来する、段落1~17のいずれか1に記載の組成物。
【0226】
(20) 前記ポリエステルは1種を超えるモノマーから由来し、該ポリエステルはランダムコポリマー又はブロックコポリマーである、段落19に記載の組成物。
(21) 前記ポリエステルはPLAであるか、又はPLAを含む、段落1~20のいずれか1に記載の組成物。
(22) 前記多分岐コポリマーは、段落9~13のいずれか1に特定された多分岐ポリエーテルをD,L-ラクチドと反応させて得ることができる、段落21に記載の組成物。
(23) 前記多分岐コポリマーは、前記多分岐ポリエーテルによって開始されるD,L-ラクチドの開環重合によって得ることができる、段落22に記載の組成物。
【0227】
(24) 前記多分岐コポリマーは式5を有する、段落23に記載の組成物:
【化24】
(式中、nは10~200の整数であり、mは5~150の整数である)(式5)。
【0228】
(25) 各アーム中のポリエステル繰り返し単位数は、それぞれ独立して10~200の範囲内である、段落1~24のいずれか1に記載の組成物。
(26) 前記ポリエーテルの質量は、500 g/mol~40 kg/mol、任意で500 g/mol~20 kg/mol、任意で10kg/mol~40 kg/mol、好ましくは2kg/mol~10 kg/mlの範囲内である、段落1~25のいずれか1に記載の組成物。
(27) 更に医薬として許容し得るビヒクルを含む、段落1~26のいずれか1に記載の組成物であって、任意で該医薬として許容し得るビヒクルは有機溶媒である、前記組成物。
【0229】
(28) 前記医薬として許容し得るビヒクルは、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、及びそれらの混合物の群から選択される、段落27に記載の組成物。
(29) 少なくとも1つの医薬活性成分を更に含む、段落1~28のいずれか1に記載の組成物。
(30) 前記医薬活性成分は疎水性である、段落29に記載の組成物。
【0230】
(31) 前記医薬活性成分は、メロキシカム、ブピバカイン、タムスロシン、又はそれらの組み合わせである、段落29に記載の組成物。
(32) 前記少なくとも1つの医薬活性成分は、全組成物の0.05 %~60%、任意で0.05%~40%、任意で0.05%~30%、任意で0.05%~10%、任意で0.05%~7%、任意で0.05%~2%(w/w%)の量で存在する、段落29~31のいずれか1に記載の組成物。
(33) 前記組成物は注射可能な液体である、段落1~32のいずれか1に記載の組成物。
【0231】
(34) 前記多分岐コポリマーは、全組成物の2%~80%、任意で2%~70%、任意で2%~60%、任意で10%~60%、任意で10%~50%、任意で20%~40%、任意で20%~35%、任意で30%~50%(w/w%)の量で存在する、段落1~33のいずれか1に記載の組成物。
(35) 前記組成物中の前記エチレンオキシドに対するポリエステル繰り返し単位のモル比は1~10である、段落1~34のいずれか1に記載の組成物。
(36) 前記少なくとも1つの活性成分の放出が調節可能である、段落1~35のいずれか1に記載の組成物。
【0232】
(37) 医薬活性成分を、対象へ少なくとも1日間、任意で少なくとも3日間、任意で少なくとも7日間、任意で少なくとも30日間、任意で少なくとも90日間、任意で少なくとも1年間、送達するために好適な、段落1~36のいずれか1に記載の組成物。
(38) 少なくとも1つの活性成分の放出動態を調節するための、段落1~37のいずれか1に記載の医薬組成物の使用。
(39) 段落1~37のいずれか1に記載の医薬組成物の製造方法であって、段落1~35のいずれか1に特定された多分岐コポリマーを、医薬として許容し得るビヒクル中に溶解することを含む、前記方法。
【0233】
(40) 更に医薬活性成分を前記組成物へ添加することを含む、段落39に記載の方法。
(41) 段落1~37のいずれか1に特定された組成物を、水性媒体、水又は体液と接触させることにより、生体外で又はインサイチュで作製される、生分解性デポ。
(42) 段落1~37のいずれか1に記載の組成物を投与すること、及びインサイチュ型デポをインビボで形成させること、を含む医薬活性成分の制御された放出方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
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図26
図27
図28
図29
図30
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図33
図34
図35
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図38
図39
図40
図41
図42
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図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
【国際調査報告】