(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/10 20060101AFI20220304BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20220304BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20220304BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220304BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220304BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220304BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B01J23/10 A ZAB
B01J37/03 B
B01J37/10
B01J37/08
B01J35/04 301E
B01D39/20 D
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D39/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540262
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2019067315
(87)【国際公開番号】W WO2020159641
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユンクイ
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】バートン,ミラ
【テーマコード(参考)】
4D019
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FC04
4G169FC07
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4G169FC09
(57)【要約】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、少なくとも20質量%の酸化ジルコニウムと、5~55質量%の酸化セリウムと、5~60質量%の酸化アルミニウムと、合計25質量%以下の、ランタン、ネオジム、プラセオジムおよびイットリウムからなる群から選択される希土類金属の少なくとも1種の酸化物と、を含む。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、d50粒度が1.5μm未満の階層的秩序構造の強凝集体であり、1000℃よりも高い温度で少なくとも6時間の時効後に、表面積および細孔容積の少なくとも80%を維持している。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、共沈法を用いることに続いて、乾燥させて焼成した酸化物材料を粉砕することによって調製される。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンから生じる排気システムで使用できる微粒子フィルターをなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料であって、
少なくとも20質量%の酸化ジルコニウムと、
5~55質量%の酸化セリウムと、
5~60質量%の酸化アルミニウムと、
合計25質量%以下の、ランタン、ネオジム、プラセオジムおよびイットリウムからなる群から選択される希土類金属の少なくとも1種の酸化物と、を含み、
前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、粉砕後にd
50粒度が1.5μm未満の階層的秩序構造の強凝集体であって、
前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、1,000℃で6時間の時効後、比表面積(SSA)が少なくとも40m
2/gとなり、
前記SSAおよび細孔容積(PV)が、粉砕工程前の前記材料の前記SSAおよびPVの75%以上である、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料。
【請求項2】
前記階層的秩序構造の強凝集体は、粒度が750nm未満である、請求項1に記載の混合酸化物材料。
【請求項3】
前記階層的秩序構造の強凝集体は、大きさが5nm~30nmの範囲の酸化物微結晶からなる、請求項1または2に記載の混合酸化物材料。
【請求項4】
時効後の前記混合酸化物材料の前記SSAおよびPVは、粉砕前の前記混合酸化物材料の前記SSAおよびPVの少なくとも80%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項5】
時効後の前記混合酸化物材料の前記SSAおよびPVは、粉砕前の前記混合酸化物材料の前記SSAおよびPVの少なくとも85%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項6】
前記混合酸化物は、酸素の貯蔵が容易で酸素易動性がある、請求項1~5のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項7】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を形成する方法であって、
(a)重合したジルコニウムオリゴマーを含有する酸性溶液を調製する工程と、
(b)セリウム塩と希土類塩の酸性溶液を、前記ジルコニウムオリゴマー含有溶液と混合して多価金属含有混合物を作る工程と、
(c)前記酸性の多価金属含有混合物を錯化試薬の溶液と混合する工程と、
(d)工程(c)で得られた前記混合物に、構成金属水酸化物を含有するジルコニウムベースの前駆体スラリーを形成させる工程と、
(e)前記ジルコニウム含有前駆体スラリーを塩基で中和して前記構成金属水酸化物の共沈と、沈殿した材料の形成とを達成する工程と、
(f)前記沈殿した材料を水で洗浄し、未反応のカチオン性混和物およびアニオン性混和物を除去する工程と、
(g)前記洗浄した沈殿した材料を水と混合して再スラリーを作り、任意に、前記再スラリーをオートクレーブ内で100℃より高い温度で、2~12の範囲のpHで時効させる工程と、
(h)前記再スラリーにアルミニウム試薬を加え、セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を形成する工程と、
(i)前記セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を回収する工程と、
(i)前記セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を周囲温度または高めた温度で所定の時間、時効させるおよび/または乾燥させる工程と、
(k)前記時効させた乾燥セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を焼成し、前記セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を形成する工程と、
(l)前記焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を、d
50粒度が1.5μm未満になるまで粉砕する工程と、を含む、方法。
【請求項8】
前記焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料の粉砕により、d
50粒度が750nm未満になる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合したジルコニウムオリゴマーは、約30~100%の範囲の量のジルコニウムオクタマーを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記重合したジルコニウムオリゴマーは、ジルコニアゾル粒子を含有しない、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記錯化試薬は、ジルコニウムに親和性のあるアニオンを含み、前記錯化剤が、硫酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成する前記酸性の多価金属含有混合物中の錯化試薬の量およびジルコニウムの量は、ジルコニウムに対する錯化剤のモル比が約0.35~約1.05の範囲になるように存在する、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記多価金属含有混合物が、水溶性の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩またはそれらの組み合わせを含む、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水および水酸化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルミニウム試薬が、分散性水酸化アルミニウム、分散性ベーマイト、酸化アルミニウムならびに、希土類元素、アルカリ土類元素、ジルコニウム(Zr)またはアルミナの耐熱性を改善するのに有益であると考えられる他の元素でドープした酸化アルミニウムからなる群から選択される1種以上である、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか1項に記載の前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を含む、微粒子フィルター。
【請求項17】
請求項7~15のいずれか1項に記載の方法に従って形成された前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を含む、微粒子フィルター。
【請求項18】
1,000℃で5時間の時効後に、前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料のD
50粒度が1.5μm未満、比表面積が少なくとも40m
2/gである、請求項16または17に記載の微粒子フィルター。
【請求項19】
1,000℃で5時間の時効前後で、前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料が特定の比表面積(SSA)を有し、時効後のSSAは、粉砕前の前記混合酸化物材料の前記SSAの85%より大きく維持される、請求項18に記載の微粒子フィルター。
【請求項20】
前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料が、前記微粒子フィルターを作製するために、ウォッシュコートとしてウォールフロー型の基材に塗布されている、請求項16または17に記載の微粒子フィルター。
【請求項21】
フロースルー型三元触媒コンバータ(TWC)での用途、ガソリン微粒子フィルター(GPF)での用途またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)での用途での、請求項16~20のいずれか1項に記載の微粒子フィルターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には無機複合体、特に、酸素貯蔵能を有し、かつ熱安定性が高い触媒担体材料、その製造方法およびその用途に関する。本開示の材料は、フロースルー型の三元触媒(TWC)で使用される微粒子フィルターや、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのウォールスルー型の排気触媒コンバータで使用される微粒子フィルターに組み込むことが可能なものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術の記載内容は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものにすぎず、先行技術を構成しない場合もある。典型的なウォッシュコートには、γ-、δ-およびθ-アルミナまたはランタン(La)安定化アルミナの触媒担体、酸素貯蔵能を有するセリアジルコニア、硝酸塩溶液によって導入されるPt、PdおよびRhなどの白金族金属(PGM)が含まれる。このPGMを、コージェライトハニカム基材にコーティングする、触媒担体材料と酸素貯蔵材料とを含むスラリー混合物に配合する、あるいはウォッシュコートスラリー(触媒担体材料と酸素貯蔵材料)塗布後の別工程としてコーティングして、触媒を製造することができる。触媒の機能としては、モバイルエンジンの排気の組成を、一酸化炭素(CO)、あらゆる種類の水素炭素化合物(HC)、窒素酸素化合物(NOx)から、無害な二酸化炭素(CO2)、水(H2O)および窒素(N2)に変えることがあげられる。
【0003】
三元触媒(TWC)の重要な構成要素のひとつであるジルコニア安定化セリアおよびその他のセリア系酸化物は、燃料のリーン条件下およびリッチ条件下での酸素の貯蔵と放出に重要な役割を果たし、それによってCOや揮発性有機物の酸化とNOxの還元が可能になる。また、触媒性能の効率のよさは、比表面積が大きく、熱的安定性が高く、酸素貯蔵能が高いことにも関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
純セリアは最も良い酸素貯蔵材料であるが、熱安定性が低いため、高温での用途が限られる。CeO2よりもジルコニア安定化セリアCeO2-ZrO2のほうが、材料の熱安定性と酸素貯蔵能が改善されている。CeとZrとのモル比が1:1の複合酸化物であれば、立方相の固溶体であるCe0.5Zr0.5O2を生成可能であり、これによってOSC性能が改善される。それにもかかわらず、この種の材料は高温時効後の熱安定性に乏しく、例えば1000℃で数時間の時効後、材料の比表面積が一般に30m2/g未満になる。
【0005】
アルミナは、CeO2-ZrO2と併用される熱安定剤添加物の一例である。他の添加剤としては、アルカリ土類、希土類、ケイ素元素またはそれらの混合物があげられる。このような安定剤の合計添加量は通常、存在する酸化物の総量に対して10wt%未満に制御される。しかしながら、最近になって、熱安定性やOSCを改善するために、最大90wt%のアルミナがCeO2-ZrO2に添加されるようになった。アルミナをCe-Zr酸化物に導入することで、熱安定性とOSCが効率的に改善される。このため、触媒コンバータで用いられる、熱安定性とOSCの高い新たなタイプの触媒担体の提供が望まれている。
【0006】
燃料直噴エンジン(例えば、ガソリン燃料とディーゼル燃料のどちらでも)を搭載した自動車から排出される排気中の粒子状物質は人体に悪影響を及ぼすため、その排出を規制する必要がある。解決策として考えられているのが、ガソリン微粒子フィルター(GPF)とディーゼル微粒子フィルター(DPF)である。GPFとDPFはいずれも、ウォールフロー型の基材と、その基材に塗布された触媒ウォッシュコートとで構成されている。GPFおよび/またはDPGを効果的に機能させるためには、基材のガス流路を遮断しないように、使用するウォッシュコートに含まれる粒子を非常に小さなものにする必要がある。通常、ウォッシュコートの粒子はD50粒度が1.5μm未満でなければならないと考えられている。しかしながら、ウォッシュコートの重要な構成要素の1つであるCeO2-ZrO2材料をD50が1.5μm未満になるまで粉砕すると、材料の耐熱性が著しく低下するというのが一般的な理解である。例えば、未粉砕の材料と粉砕した材料の高温時効後の比表面積(SSA)を比較すると、D50が1.5μm未満まで粉砕した材料は、未粉砕の同じ材料に比べてSSAが30%小さくなりうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、広義には、酸素貯蔵能を有し、かつ熱安定性が高い触媒担体材料のための組成物、その製造方法および用途を提供するものである。本開示の材料は、フロースルー型の三元触媒(TWC)で使用される微粒子フィルターや、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのウォールスルー型の排気触媒コンバータで使用される微粒子フィルターに組み込むことが可能なものである。
【0008】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、少なくとも20質量%の酸化ジルコニウムと、5~55質量%の酸化セリウムと、5~60質量%の酸化アルミニウムと、合計25質量%以下の、ランタン、ネオジム、プラセオジムおよびイットリウムからなる群から選択される希土類金属の少なくとも1種の酸化物と、を含む。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、d50粒度が1.5μm未満、あるいは500ナノメートル未満の階層的秩序構造の強凝集体である。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、1000℃以上の温度で少なくとも6時間の曝露または時効後に、その比表面積(SSA)および細孔容積(PV)の少なくとも75%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも85%を保つことができる。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物中の階層的秩序構造の強凝集体は、大きさが5nm~30nmの範囲の酸化物微結晶からなる。
【0009】
本開示の別の態様によれば、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を形成する方法が提供される。この方法は、
(a)重合したジルコニウムオリゴマーを含有する酸性溶液を調製する工程と、
(b)セリウム塩と希土類塩の酸性溶液を、ジルコニウムオリゴマー含有溶液と混合し、多価金属含有混合物を作る工程と、
(c)酸性の多価金属含有混合物を錯化試薬の溶液と混合する工程と、
(d)工程(c)で得られた混合物に、構成金属水酸化物を含有するジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成させる工程と、
(e)ジルコニウム含有前駆体スラリーを塩基で中和し、構成金属水酸化物の共沈と、沈殿させる材料の生成とを達成する工程と、
(f)沈殿物を水で洗浄し、未反応のカチオン性混和物およびアニオン性混和物を除去する工程と、
(g)沈殿させた材料を洗浄したものを水と混合し、再スラリーを作る工程と、
(h)再スラリーにアルミニウム試薬を加え、セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を形成する工程と、
(i)セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を回収する工程と、
(i)セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を周囲温度または高めた温度で所定の時間、時効させ、および/または乾燥させる工程と、
(k)乾燥した時効済のセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を焼成し、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を形成する工程と、
(l)焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を、d50粒度が1.5μm未満になるまで粉砕する工程と、を含む。
【0010】
この方法では、焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料の粉砕により、d50粒度が1.5マイクロメートル未満、あるいは750ナノメートル(nm)未満、あるいは500nm未満になる。錯化試薬は、ジルコニウムに親和性を有し、硫酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む。ジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成する酸性の多価金属含有混合物中の錯化試薬の量とジルコニウムの量は、ジルコニウムに対する錯化剤のモル比が約0.35~約1.05の範囲になるように存在する。塩基は、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水および水酸化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択され、アルミニウム試薬は、分散性水酸化アルミニウム、分散性ベーマイト、酸化アルミニウムならびに、La、Ba、Ceおよび/またはZrをドープした酸化アルミニウムからなる群から選択される。
【0011】
本開示のさらに別の態様によれば、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物を使用して、微粒子フィルターを作製することができる。微粒子フィルターを作製するために、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物をウォッシュコートとしてウォールフロー型の基材に塗布してもよい。この微粒子フィルターは、三元触媒コンバータ(TWC)での用途、ガソリン微粒子フィルター(GPF)での用途またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)での用途に使用できるものである。
【0012】
本明細書の説明から、応用可能なさらに別の領域が明らかになるだろう。この説明と具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していない旨を理解されたい。
【0013】
本開示が十分に理解されるように、以下、例として与えられる本開示の様々な形態について、添付の図面を参照しながら説明する。各図面の構成要素は必ずしも縮尺通りに描かれているものではなく、本発明の原理を説明することに重点がおかれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、粉砕後のセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料で測定した粒度分布を示すグラフ表示である。
【
図2】
図2は、本開示の教示内容に従って調製した未粉砕のセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料で測定した細孔径分布のグラフ表示である。
【
図3】
図3は、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を製造するための方法のフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、本開示の教示内容に従って作製した微粒子フィルターを有する車両の排気系の斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の教示内容に従って作製した微粒子フィルターを有する車両の排気系の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で説明する図面は、例示のためだけのものであり、どのような形であっても本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0016】
以下の説明は、本質的には単なる例にすぎず、決して本開示またはその用途もしくは使用法を限定することを意図したものではない。例えば、本明細書に含まれる教示内容に従って製造および使用されるナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料については、本開示全体を通して、その構造的な要素および使用法を一層完全に例示するために、自動車の排気触媒コンバータで用いられる微粒子フィルターとの関連で説明する。このような混合酸化物材料を、様々な工業プロセスで触媒単体として使用することを含むがこれに限定されるものではない他の用途に取り入れて使用することは、本開示の範囲内であると考えられる。明細書と図面の全体を通して、対応する参照数字は、同様のまたは対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0017】
本開示の目的で、本明細書では、「約」および「実質的に」という語は、当業者に知られた予想されるばらつき(例えば、測定における限界および変動)による測定可能な値および範囲に関して使用される。
【0018】
本開示の目的で、「少なくとも1つの」および「1つ以上の」要素という表現を同義に用いられ、同じ意味を持つことがある。単一の要素または複数の要素を含むことを示すこれらの表現については、要素の最後に「(s)」という接尾辞を付けて表すこともできる。例えば、「少なくとも1種の金属」、「1種類以上の金属」および「金属(s)」を同義に用いることができ、同じ意味を持つことを意図している。
【0019】
本開示は、広義には、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を提供する。これは、フロースルー型の三元触媒(TWC)コンバータやウォールスルー型のガソリン微粒子フィルター(GPF)またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)の用途での使用に適している。このセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、酸素の貯蔵が容易で酸素易動性(facile oxygen storage mobility)がある。GPFおよび/またはDPFでは、ウォールフロー基材にコーティングしたときに背圧の上昇を避けるために、材料の粒子径を極めて小さくする必要がある。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料の具体的な特徴のひとつに、1,000℃で6時間の時効後に比表面積(SSA)と細孔容積(PV)が極めて大きいことがあり、時効後のSSAおよびPVが、粉砕前に測定した材料のSSAおよびPVの75%より大きく維持される。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料のSSAは、1000℃で6時間の時効後に40m2/gより大きくなりうる。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、D50粒度が1.5μm未満、あるいは750nm未満、あるいは500nm未満、あるいは約200nm未満の階層的秩序構造の強凝集体になる、大きさが5nm~30nmの範囲の酸化物微結晶を含むか、これらの微結晶からなるか、本質的にこれらの微結晶からなる。
【0020】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、酸化ジルコニウムと、酸化セリウムと、酸化アルミニウムと、希土類金属の少なくとも1種の酸化物との混合物を含むか、当該混合物からなるか、本質的に当該混合物からなる。希土類金属は、ランタン、ネオジム、プラセオジムまたはイットリウムであってもよいが、これらに限定されるものではない。あるいは、希土類金属は、ランタン、ネオジム、プラセオジムまたはイットリウムのいずれかになるように選択される。
【0021】
本開示の一態様によれば、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料の組成は一般に、少なくとも20質量%の酸化ジルコニウムと、5~55質量%の酸化セリウムと、5~60質量%の酸化アルミニウムと、合計25質量%以下の、希土類金属の少なくとも1種の酸化物とを含む。あるいは、混合酸化物材料中に存在する酸化ジルコニウムの量は、20~60質量%であり、あるいは約25~55質量%である。混合酸化物材料中に存在する酸化セリウムの量は、あるいは10~45質量%であってもよく、あるいは約15~40質量%であってもよい。混合酸化物材料中に存在する酸化アルミニウムの量は、あるいは10~45質量%であってもよく、あるいは約40質量%未満であってもよい。あるいは、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料中の希土類金属酸化物の量は、約1~15質量%、あるいは3~10質量%の範囲である。
【0022】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、大きさが5nm~30nmの範囲の酸化物微結晶からなる、D
50粒度が1.5μm未満の階層的秩序構造の強凝集体である。あるいは、階層的秩序構造の強凝集体のD
50粒度は、1マイクロメートル(μm)未満であり、あるいは約750ナノメートル(nm)未満、あるいは約500ナノメートル(nm)未満、あるいは約300nm未満、あるいは200nm以下である。
図1を参照すると、本開示の教示内容に従って形成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料の粒度を1つのバッチで測定したところ、500nm未満であり、最も多いのが約200nm未満であることがわかる。粒度分布の測定は、レーザー粒度分析器を使用することを含むがこれに限定されるものではない、従来の既知のどのような技術を用いて行っても構わない。
【0023】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、1,000℃で6時間の時効後、比表面積(SSA)が少なくとも40m2/gを示す。あるいは、1,000℃で6時間の時効後の比表面積(SSA)は少なくとも50m2/gであり、あるいは約55m2/g以上である。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、1,100℃で6時間時効後のSSAが少なくとも20m2/gを示す。あるいは、1,100℃で6時間時効後の比表面積(SSA)は少なくとも25m2/gであり、あるいは約30m2/g以上である。
【0024】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、900℃以上の温度で焼成した後の全細孔容積が少なくとも0.35cm3/gを示す。あるいは、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、1,000℃で焼成後の全細孔容積が少なくとも0.3cm3/gを示す。あるいは、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料は、1,000℃での焼成後の全細孔容積が少なくとも0.2cm3/gを示す。
【0025】
また、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物では、900℃~1,100℃の温度範囲で細孔径分布が変化せずに維持される。ここで
図2を参照すると、(a)900℃で6時間、(b)1,000℃で6時間、(c)1,100℃で6時間の時効後のセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物の細孔径分布が比較されている。(a)、(b)、(c)に示す細孔径分布は、基本的に変わっていない。あるいは、熱曝露レベルが増すにつれて、細孔径分布がわずかに大きな細孔にシフトする。
【0026】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料で時効前に測定した比表面積(SSA)および細孔容積(PV)は、1,000℃以上で少なくとも6時間の時効または焼成後に、粉砕前に測定した材料のSSAおよびPVの少なくとも75%の水準に保たれる。あるいは、SSAおよびPVは、粉砕前に測定した材料のSSAおよびPVの少なくとも80%、あるいは少なくとも85%の水準に保たれる。比表面積(SSA)と細孔容積(PV)については、従来のBET法を用いて測定することができる。
【0027】
セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、約2~3マイクロメートル(μm)から最大約10~15μmの範囲で大きさが変わり得る不規則な形状または準球状の弱凝集体を含むか、当該弱凝集体からなるか、本質的に当該弱凝集体からなる粉末材料である。この弱凝集体は、寸法が約50ナノメートル(nm)~約200ナノメートル(nm)の範囲のナノサイズの粒子で形成された複雑な微細構造を有することがある。セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、X線回折(XRD)および/または透過型電子顕微鏡(TEM)データで決定される微結晶の平均的な大きさが約5から最大約30nmの結晶性材料であるので、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、階層的秩序構造を含む。
【0028】
本開示の別の態様は、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を作る沈殿法を特徴とする。この方法は主に、ジルコニウムに親和性のある錯化試薬と相互作用してジルコニウムベースの前駆体を作ることができる、予備重合したジルコニウムオリゴマー、セリウム塩および希土類金属塩を含有する溶液を調製することを含む。この前駆体に存在するすべての構成金属水酸化物の共沈が、塩基性条件下で生じる。続いて、この沈殿物を水に入れて作ったスラリーに、アルミニウム試薬を加える。アルミニウム試薬は、ベーマイト、水酸化アルミニウムゾル、アルミナであるか、アルミナを、希土類元素、アルカリ土類元素、ジルコニウム(Zr)など、アルミナの耐熱性を改善するのに有益であると業界で一般に考えられている元素でドープしたものである。このセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料に粉砕処理をほどこすと、ナノ結晶サイズの材料が得られる。
【0029】
ここで
図3を参照して、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を調製する方法を詳細に説明する。この方法100は、
図3に記載され、本明細書でさらに定義される(a)~(l)の工程を含む。工程(a)は、重合したジルコニウムオリゴマーを含有する酸性溶液を調製(105)することを含む。次に、工程(b)では、セリウム塩と希土類塩の酸性溶液を、ジルコニウムオリゴマー含有溶液と混合(110)し、多価金属含有混合物を作る。工程(c)では、酸性の多価金属含有混合物を、錯化試薬の溶液と混合(115)する。次に、工程(c)で得られた混合物を工程(d)で反応させ、構成金属水酸化物を含有するジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成させる(120)。次に、ジルコニウム含有前駆体スラリーを、工程(e)において塩基で中和(125)し、構成金属水酸化物の共沈と、沈殿させる材料の生成とを達成する。工程(f)では、沈殿させた混合酸化物材料を水で洗浄(130)し、未反応のカチオン性混和物およびアニオン性混和物を除去する。この再スラリーに、工程(h)でアルミニウム試薬を加え(140)、混合水酸化物材料を形成する。工程i)で混合水酸化物材料を回収(145)した後、これを工程(j)で所定の時間、周囲温度または高めた温度で時効するか乾燥させる(150)。その後、時効した混合酸化物を工程(k)で焼成(155)し、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を形成する。最後に、焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を工程(l)で粉砕(160)し、粒度を小さくする。
【0030】
工程(a)では、重合したジルコニウムオリゴマーは、ジルコニウムオクタマーを含んでもよいが、これに限定されるものではない。これらのジルコニウムオクタマーは、ジルコニウムオリゴマーの約30~100質量%の範囲の量で存在してもよい。本開示の一態様によれば、重合したジルコニウムオリゴマーは、ジルコニアゾル粒子を含まない。
【0031】
工程(b)では、セリウム塩と希土類金属塩の酸性溶液を、アニオンが硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオンまたはそれらの組み合わせである、セリウムおよび希土類金属の1種類以上の水溶性塩を用いて作ることができる。
【0032】
工程(c)では、錯化試薬は、ジルコニウムに親和性のあるアニオンを含んでいてもよい。錯化剤については、硫酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。工程(d)でジルコニウムベースの前駆体スラリーを作るのに用いる酸性の多価金属含有混合物中に存在する錯化試薬の量とジルコニウムの量は、ジルコニウムに対する錯化剤のモル比が0.30~1.05の範囲、あるいは約0.35~約0.85の範囲、あるいは約0.45~約0.75の範囲になるように存在する。
【0033】
工程(e)では、ジルコニウムベースの前駆体スラリーを中和するのに用いる塩基を、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水および水酸化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択することができる。あるいは、塩基は、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはそれらの混合物を含むものであってもよい。共沈の間、pHを、約6.0~約10.0の範囲、あるいは約6.0~約9.0の範囲になるように選択することができ、沈殿温度を、約40~90℃の範囲になるように選択することができる。
【0034】
界面活性剤を使用するかまたは使用せずに、沈殿物を濾過して洗浄する(工程f)。界面活性剤を用いる場合、当該界面活性剤としては、約1%~約30%、あるいは約6~約10%の範囲の用量または量の、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミン、ポリエチレングリコール-200(PEG-200)、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノールおよびメラミンのいずれか1つまたはその組み合わせがあげられる。
【0035】
沈殿物を水中で混合することによって、再スラリー化する(工程g)。任意に、この再スラリーを、2~12の範囲のpHで、オートクレーブ内で100℃より高い温度でさらに時効させてもよい。再スラリーにアルミニウム試薬を加え(工程h)、混合水酸化物材料を形成する。アルミニウム試薬は、分散性水酸化アルミニウム、分散性ベーマイト、酸化アルミニウムならびに、La、Ce、Ba、Sr、Mgおよび/またはZrをドープした酸化アルミニウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。Al2O3またはドープAl2O3を、D50が10μm未満、あるいは5μm未満、あるいは1.5μm未満の範囲まで粉砕してもよい。混合水酸化物材料を回収した(工程i)後、周囲温度または高めた温度で時効させるか乾燥させる(工程j)。この高めた温度は、周囲温度より高くてもよいし、あるいは30℃より高い、あるいは50℃より高い、あるいは100℃より高い、あるいは約200℃未満であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
乾燥させ、時効した混合酸化物材料を約500℃~約1100℃で約2~6時間焼成し(工程k)、粉末状のセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を形成する。あるいは、乾燥させ、時効した混合酸化物材料を、約900℃~約1100℃で約4~6時間焼成する。
【0037】
工程(k)では、焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を粉砕(155)し、粒度を小さくする。粉砕後、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料のD50粒度は1.5μm未満、あるいは1.0μm未満、あるいは約750ナノメートル(nm)未満、あるいは500nm未満、あるいは300nm未満、あるいは約200nm未満である。混合酸化物材料の粉砕は、ボールミル(乾式または湿式)、アトライターミル、ロールミル(単段または多段)、コロイドミル、インパクトミルまたはその組み合わせを使用すること含むが、これらに限定されるものではない、従来技術において知られている任意の方法で達成することができる。あるいは、セリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を、湿式ボールミルで処理する。
【0038】
本開示の別の態様によれば、上述した組成および特性を有するナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を、従来の三元触媒(TWC)に使用することができる。さらに有益なことに、このセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物は、微粒子フィルターのコーティングに使用される。あるいは、
図3の方法に従って調製したナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物材料を含むウォッシュコートを使用して、微粒子フィルターを作製する。この微粒子フィルターを、フロースルー型の三元触媒コンバータ(TWC)の用途、ガソリン微粒子フィルター(GPF)の用途またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)の用途で使用することができる。
【0039】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を使用して、自己支持型微粒子、モノリシック構造の形態で、あるいは微粒子フィルターを作製するために基材の表面に形成される1層以上のウォッシュコートとして、触媒組成物を調製してもよい。ここで
図4Aおよび
図4Bを参照すると、車両5のための排気システム1が示されている。この排気システムでは、排気ガス10が、車両のエンジン15からパイプまたはダクト20を通り、微粒子フィルター25を通る。この微粒子フィルター25は、
図4Aに示すように三元触媒(TWC)コンバータ30の一部として組み込まれてもよいし、これとインラインで配置されてもよい(
図4B)。
【0040】
触媒組成物は通常、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物を単独で含むか、1種類以上の白金族金属を取り込んで含む。ウォッシュコートは、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然由来の粘土、TiO2、ZrO2およびSnO2などのバインダー材料をさらに含むものであってもよい。
【0041】
基材またはモノリシック構造は、1本以上のガス流路が通った任意のセラミックまたは金属のハニカム構造を含んでもよい。モノリス基材のためのハニカム形状によって、全体の大きさと圧力降下が最も小さい、大きな触媒表面が提供される。触媒組成物は、通路を流れるガスが触媒組成物に接触するように、前記通路を規定する構造壁の一部に塗布されてもよい。流路は、台形、長方形、正方形、楕円形および円形を含むがこれらに限定されるものではない、所望の断面形状または大きさを有する薄肉の溝である。
【0042】
基材がウォールフロー型のフィルター基材すなわちガスが一方向にしか流れないように流路が交互に目封じされたものであってもよいことは、当業者であれば理解できよう。このようにウォールフロー型の基材を使用すると、流れるガスから、気体状の汚染物質のみならず粒子状物質も除去できる別の利点がある。ウォールフロー型のフィルター基材は、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素を含むがこれらに限定されるものではない、従来技術において一般に知られている材料で製造することができるものである。ウォールフロー型の基材に塗布される触媒組成物の量は、多孔度や壁厚などの基材の特性に依存する。
【0043】
本開示で提供される具体例は、本発明の様々な実施形態を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。以上、明確かつ簡潔な明細書を書くことができるような方法で実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく、これらの実施形態を様々に組み合わせたり、分離したりすることが意図され、また理解されるであろう。例えば、本明細書に記載したすべての好ましい特徴は、本明細書に記載した本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【実施例】
【0044】
実施例1-14%CeO2-48.8%ZrO2-30.2%Al2O3-3.6%La2O3-3.5%Pr6O11を含むセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物材料の調製
【0045】
127.3グラムのZrOCl2*8H2Oと、36.0グラムのCe(NO3)3*6H2Oと、27.4重量%の硝酸プラセオジム溶液13.0グラムと、26.85重量%の硝酸ランタン溶液8.6グラムを、1,200mLの脱イオン(DI)水と混合することによって、Zr、Ce、LaおよびPrの塩を含有する溶液を調製する。次に、この多価金属含有溶液に、10重量%のNaOH溶液138.7グラムを加え、溶液が透明になるまで混合する。次に、この多価金属混合物に、合計132グラムの20%(NH4)2SO4溶液を加え、ジルコニウムベースの前駆体スラリーを作る。最後に、20重量%のNaOH溶液を、反応混合物のpH値が13になるまでゆっくりと加える。生成した沈殿をブフナーフィルターで濾過し、脱イオン水で洗浄して過剰なカチオンおよび/またはアニオンを除去する。洗浄したセリア-ジルコニア混合水酸化物を脱イオン水で再スラリー化し、7%のスラリーを作る。この再スラリーに、合計38グラムの水分散性ベーマイトを混合下で加え、セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物を得る。このセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物をブフナーフィルターで回収し、電気オーブンに入れて130℃で約12時間乾燥させる。乾燥物を空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した試料をさらに1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効させる。
【0046】
700℃で焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物を、再び脱イオン水で再スラリー化し、20重量%のスラリーを作る。この再スラリーを、ジャーミルを用いて湿式ボールミル粉砕する。粉砕した材料のd
50粒度は270nm程度である(
図1参照)。粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物を電気オーブンに入れて110℃で約12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した粉砕混合酸化物をさらに1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効させる。700℃での焼成後と、1,000℃および1,100℃での時効後に、材料の細孔半径を測定する(
図2参照)。
【0047】
1,000℃および1,100℃での焼成後に測定した、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物材料と未粉砕のセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物材料の比表面積(SSA)および細孔容積(PV)を、表1にまとめておく。
【0048】
【0049】
実施例2-24.5%CeO2-38.2%ZrO2-30.2%Al2O3-3.5%La2O3-3.5%Pr6O11を含むセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物材料の調製
【0050】
99.7グラムのZrOCl2*8H2Oと、63.2グラムのCe(NO3)3*6H2Oと、27.4重量%の硝酸プラセオジム溶液13.0グラムと、26.85重量%の硝酸ランタン溶液8.6グラムを、1,200グラムの脱イオン(DI)水と混合することによって、Zr、Ce、LaおよびPrの塩を含有する溶液を調製する。次に、この多価金属含有溶液に、10重量%のNaOH溶液96グラムを加え、溶液が透明になるまで混合する。次に、重合したジルコニウムオリゴマーを含有する溶液に、20重量%のNa2SO4溶液合計100グラムを加えた後、20重量%のNaOH溶液を、反応混合物のpH値が13になるまでゆっくりと加える。生成した沈殿をブフナーフィルターで濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンおよび/またはナトリウムイオンを除去する。洗浄したセリア-ジルコニア混合水酸化物を脱イオン水で再スラリー化し、7重量%のスラリーを形成する。次に、合計38グラムの水分散性ベーマイトを混合下で加え、セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物を形成する。
【0051】
湿ったセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を電気オーブンに入れて130℃で12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した試料をさらに1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効させる。
【0052】
700℃で焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物を、再び脱イオン水で再スラリー化し、20重量%のスラリーを作る。この再スラリーを、ジャーミルを用いて湿式ボールミル粉砕し、d50粒度が250nm程度の材料を得る。次に、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料を電気オーブンに入れて110℃で約12時間乾燥させ、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した粉砕混合酸化物をさらに1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効させる。
【0053】
1,000℃および1,100℃での焼成後に測定した、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物材料と未粉砕のセリウム-ジルコニウム-アルミニウム混合酸化物の比表面積(SSA)および細孔容積(PV)を、表2にまとめておく。
【0054】
【0055】
実施例3-30%CeO2-51.1%ZrO2-10.1%Al2O3-4.4%La2O3-4.4%Pr6O11を含むセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物材料の調製
【0056】
65.6グラムのZrOCl2*8H2Oと、38.0グラムのCe(NO3)3*6H2Oと、27.4重量%の硝酸プラセオジム溶液8.1グラムと、26.85重量%の硝酸ランタン溶液7.5グラムを、900グラムの脱イオン(DI)水と混合することによって、Zr、Ce、LaおよびPrの塩を含有する溶液を調製する。次に、この多価金属含有溶液に、10重量%のNaOH溶液63グラムを加え、溶液が透明になるまで混合する。次に、重合したジルコニウムオリゴマーを含有する溶液に、20重量%のNa2SO4溶液合計70グラムを加えた後、20重量%のNaOH溶液を、反応混合物のpH値が13になるまでゆっくりと加える。生成した沈殿をブフナーフィルターで濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンおよび/またはナトリウムイオンを除去する。沈殿物を脱イオン水で再スラリー化し、7重量%のスラリーを形成する。次に、合計13グラムの水分散性ベーマイトを混合下で加え、セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を形成する。
【0057】
湿ったセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を回収し、電気オーブンに入れて130℃で12時間乾燥させる。次に、乾燥した材料を空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した材料をさらに1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効させる。
【0058】
700℃で焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物を、再び脱イオン水で再スラリー化し、20重量%のスラリーを作る。このスラリーを、ジャーミルを用いて湿式ボールミル粉砕する。得られる粉末は、250nm程度の粒度d50を示す。次に、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物を電気オーブンに入れて110℃で約12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した粉砕混合酸化物をさらに1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効させる。
【0059】
1,000℃および1,100℃での焼成後に測定した、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物と未粉砕のセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物の比表面積(SSA)および細孔容積(PV)を、以下の表3にまとめておく。
【0060】
【0061】
実施例4-33%CeO2-24%ZrO2-40%Al2O3-1.5%La2O3-1.5%Y2O3からなるセリウム-ジルコニウム-アルミニウム酸化物材料の調製
【0062】
21.0重量%の硝酸ジルコニウム68.6グラムと、28.4重量%の硝酸セリウム69.8グラムと、19.3重量%の硝酸イットリウム溶液4.7グラムを、800グラムの脱イオン(DI)水と混合することによって、Zr、CeおよびYの塩を含有する溶液を調製する。次に、この多価金属含有溶液に、10重量%のNaOH溶液45グラムを加え、溶液が透明になるまで混合する。次に、重合したジルコニウムオリゴマーを含有する溶液に、20重量%のNa2SO4溶液合計41グラムを加えた後、20重量%のNaOH溶液を、反応混合物のpH値が13になるまでゆっくりと加える。生成した沈殿をブフナーフィルターで濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な硝酸イオン、硫酸イオンおよび/またはナトリウムイオンを除去する。次に、洗浄した沈殿を脱イオン水で再スラリー化し、7重量%のスラリーを形成する。次に、合計25グラムのランタン安定化アルミナ(4重量%La2O3)を混合下で加え、セリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物材料を形成する。
【0063】
湿ったセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合水酸化物を電気オーブンに入れて130℃で12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した試料をさらに900℃、1,000℃および1,100℃で2時間、追加で時効させる。
【0064】
700℃で焼成したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物材料を、脱イオン水で再スラリー化し、20重量%のスラリーを作る。この再スラリーを、ジャーミルを用いて湿式ボールミル粉砕する。得られる粉末は、350nm程度の粒度d50を示す。次に、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物を電気オーブンに入れて110℃で約12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した粉砕混合酸化物をさらに900℃、1,000℃および1,100℃で2時間、追加で時効させる。
【0065】
1,000℃および1,100℃での焼成後に測定した、粉砕したセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物材料と未粉砕のセリウム-ジルコニウム-アルミニウムベースの混合酸化物材料の比表面積(SSA)および細孔容積(PV)を、表4にまとめておく。
【0066】
【0067】
当業者であれば、本開示に照らして、本開示の意図または範囲から逸脱したりこれを越えたりすることなく、本明細書に開示した特定の実施形態に多くの変更を加えることが可能であり、それでもなお同様の結果または類似の結果を得ることができる旨を理解するであろう。また、当業者であれば、本明細書で報告した特性はいずれも、日常的に測定され、複数の異なる方法で得られる特性を表していることも、理解するであろう。本明細書で説明した方法は、そのような方法の1つを表しており、本開示の範囲を越えることなく、他の方法を用いることができる。
【0068】
本発明の様々な形態についての上述した説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。網羅的であることや、開示された厳密な形態に本発明を限定することは、意図されていない。上記の教示内容に照らして、多数の改変または変形を施すことが可能である。ここに示す形態は、本発明の原理およびその実用的な用途を最もよく示すことで、当業者が、考えられる特定の用途に適した様々な改変を施して様々な形態で本発明を利用できるようにするために選択され、説明されたものである。このようなすべての改変および変形は、特許請求の範囲が公正かつ適法に、公平に与えられる範囲に従って解釈されると、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内である。
【国際調査報告】