IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライフフロー エスピー.ゼット.オー.オー.の特許一覧

特表2022-517995冠動脈における血行動態パラメータの患者固有モデリング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】冠動脈における血行動態パラメータの患者固有モデリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20220304BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220304BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220304BHJP
   A61B 5/021 20060101ALI20220304BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220304BHJP
   G06T 17/20 20060101ALI20220304BHJP
   G06T 15/08 20110101ALI20220304BHJP
【FI】
A61B5/026 140
A61B6/03 360J
A61B6/03 360G
A61B6/03 375
A61B6/00 331E
A61B5/021
A61B5/00 G
G06T17/20
G06T15/08
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021540320
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2019050704
(87)【国際公開番号】W WO2020048642
(87)【国際公開日】2020-03-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521304508
【氏名又は名称】ライフフロー エスピー.ゼット.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コシオール,アンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミロタ,クリスピン
(72)【発明者】
【氏名】タルヌフスキー,ヴォイチェフ
【テーマコード(参考)】
4C017
4C093
4C117
5B080
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA11
4C017AA19
4C017AB04
4C017AC01
4C017AC15
4C017BC11
4C017BC21
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA26
4C093CA35
4C093DA02
4C093FD20
4C093FF16
4C093FF24
4C093FF42
4C117XB16
4C117XD23
4C117XD24
4C117XD25
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE16
4C117XE17
4C117XE44
4C117XE45
4C117XJ01
4C117XR07
4C117XR08
5B080AA13
5B080AA17
5B080BA00
5B080CA01
5B080FA00
5B080GA00
(57)【要約】
冠動脈における血行動態パラメータの患者固有モデリングのシステム、方法、及びコンピュータ可読媒体が開示される。方法例は、医療撮像データから導出される患者固有冠動脈解剖学的モデルと、連続記録された血圧波形から導出される患者固有境界条件とを使用して計算流体力学シミュレーションを実行して、患者の冠動脈における患者固有の血行動態パラメータを特定することを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者固有解剖学的構造データ及び患者固有生理学的データを受信することであって、前記解剖学的構造データは、患者の冠動脈についての構造情報を含み、前記患者固有生理学的データは、連続記録された血圧波形を含む、受信することと、
少なくとも部分的に前記解剖学的構造データに基づいて前記患者の冠動脈の少なくとも一部の解剖学的モデルを生成することと、
少なくとも部分的に前記連続記録された血圧波形に基づいて、前記解剖学的モデルにおける血流の計算流体力学(CFD)シミュレーションの境界条件を決定することと、
CFD及び前記境界条件を使用して前記解剖学的モデルにおいて血流をシミュレートすることと、
少なくとも部分的に前記シミュレーションに基づいて、前記患者の冠動脈に関連付けられた1つ又は複数の血行動態パラメータを特定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記解剖学的構造データは非侵襲的測定からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解剖学的構造データはコンピュータ断層撮影血管造影からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連続記録された血圧波形は非侵襲的測定からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記解剖学的モデルを生成することは、大動脈の分割を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記解剖学的モデルは、前記患者の冠動脈のみのモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記境界条件は、前記患者の冠動脈の流入境界条件と、前記患者の冠動脈の流出境界条件とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記境界条件を決定することは、
少なくとも部分的に血液循環系モデル及び前記連続記録された血圧波形に基づいて、血液体積流量データを特定することと、
少なくとも部分的に心腔圧容積モデル及び前記血液体積流量データに基づいて、心室圧データを特定することと、
少なくとも部分的に冠血流モデル、前記連続記録された血圧波形、及び前記心室圧データに基づいて、冠動脈流入データを特定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記境界条件を決定することは、
少なくとも部分的にアロメトリックスケール則及び前記冠動脈流入データに基づいて冠動脈流出データを特定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記血液循環系モデルは、以下:
【数1】
に示される(a)CR、(b)CRL、及び(c)RCRL集中定数機能ブロックから選択される少なくとも1つの集中定数機能ブロックを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記心腔圧容積モデルは時変弾性モデルである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記冠血流モデルは、以下:
【数2】
に示される(a)CRp、(b)CpR、(c)RCRp、(d)CpRp、及び(e)RCpRp集中定数機能ブロックから選択される少なくとも1つの集中定数機能ブロックを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記冠血流モデルは、以下:
【数3】
に示される複数の(e)RCpRp集中定数機能ブロックを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
入口における冠血流の状態は、少なくとも部分的に以下:
【数4】
に示される血液循環系と冠血流との結合集中定数ブロックモデルに基づいて特定される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
心臓壁不均一性の流量効果は、可変組織圧力係数を有する多層及びマルチコンパートメントモデルにより記述される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の血行動態パラメータは、アゴニズムの協同プリン作動性受容体-刺激モデルを用いて得られる心臓の変時性、変力性、又は変弛緩性に関連する1つ又は複数の血行動態パラメータを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記血流シミュレーションは、一過性ソルバ又は定常状態ソルバを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
血管の流れ及び圧力の降下特性は、定常状態手法により特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数の血行動態パラメータは、血圧、血流、血流量、壁剪断応力(WSS)、振動剪断指数(OSI)、相対滞留時間(RRT)、血流予備量比(FFR)、瞬間的無波比(iFR)、及び冠血流予備量比(CFR)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータを出力することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記出力することは、前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータを表示デバイスに送信することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記出力することは、前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータをリモートコンピュータに送信することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも部分的に前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータに基づいて患者固有治療計画を決定することを更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記患者固有治療計画は、前記患者へのステント配置に最適な患者固有の場所である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、心肺運動負荷試験の一環として使用される、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
心血管疾患は、米国における男女の死因の第一位であり、世界中の死因の少なくとも30%を占める。近年の医療の進歩は心疾患の診断及び治療に重要な改良を提供したが、早期罹患及び死亡の発生率はなお大きい。この1つの理由は、冠動脈の解剖学、生理学、及び血行動態を正確に特徴付ける患者固有パラメータの正確な推定を欠くことであり、これらは全て、心血管疾患の進行において重要な役割を果たす。
【0002】
医療造影ベースの技法(例えば、コンピュータ断層血管造影法)は通常、冠動脈における狭窄の深刻さを特徴付けるために臨床診療で使用される。しかしながら、そのような技法は、臨床意思決定には不適切であることが多い解剖学的評価しか提供しない。特に、冠動脈狭窄の深刻さの解剖学的評価は多くの場合、過大評価又は過小評価に繋がり、これらは両方とも望ましくない。狭窄の深刻さの過大評価は、不必要な介入及び続く再狭窄リスクに繋がる恐れがあり、一方、過小評価は無治療に繋がる可能性がある。正確な機能評価には、侵襲的に特定される圧及び/又は流れの測定が必要とされ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
冠動脈疾患の機能評価の幾つかの計算流体力学(CFD)に基づく技法が開発されている。しかしながら、それらは通常、冠動脈の簡易化された幾何形状に基づいており、一般境界条件が母集団全体データから導出される。これは、そのような技法を、冠動脈狭窄の場合での狭窄の深刻さの評価等の冠動脈疾患の包括的な患者固有評価に適さないものにする。
【0004】
図面の簡単な説明
詳細な説明は添付図面を参照して記載される。図面は、説明のみを目的として提供され、単に本開示の実施形態例を示すにすぎない。図面は、本開示の理解を促進するために提供され、本開示の幅、範囲、又は適用可能性を限定すると考えられるものではない。図面中、参照番号の左端の桁は、その参照番号が最初に出現した図面を識別し得る。同じ参照番号の使用は、同様であるが、必ずしも同じ又は同一であるわけではない構成要素を示す。しかしながら、同様の構成要素を識別するのに異なる参照番号が使用されることも同様にある。種々の実施形態は、図面に示される以外の要素又は構成要素を利用することができ、幾つかの要素及び/又は構成要素は種々の実施形態に存在しなくてもよい。構成要素又は要素の記述に単数形の用語を使用することは、状況に応じて、複数のそのような構成要素又は要素を包含し得、逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の1つ又は複数の実施形態例による冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の概略図である。
図2】本開示の1つ又は複数の実施形態例による冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の概略ブロック図である。
図3】患者の例示的な心電図記録である。
図4】患者の心拍周期の例示的なLomb-Scargleピリオドグラムである。
図5】冠循環境界条件の決定に使用される三成分モデルの概略図である。
図6】血液循環系(BCS)成分モデルでの使用に適した4つの異なるウインドケッセルモデル、特に2要素、3要素、4要素、及び5要素ウインドケッセルモデル(2WM、3WM、4WM、5WM)を示す。
図7】血液循環系(BCS)成分モデルで使用される幾つかの機能ブロック(a~c)及び機能ブロック(b)で構成される例示的なマルチブロック系(d)を示す。
図8】体循環要素及び肺循環要素を含む血液循環系(BCS)モデル並びにHPV成分への関連を示す。
図9】血液循環系(BCS)成分モデルでの使用に適した抵抗、慣性抵抗、及びキャパシタンス(RLC)パラメータを含む集中定数機能ブロックを示す。
図10】(a)心室圧容積ループ、(b)時間の関数としてプロットされる大動脈圧、及び(c)時間の関数としてプロットされる心室体積の概略図を示す。
図11】機能ブロック(a)及び心臓全体圧容積(HPV)成分モデル(b)を示す。
図12】5つの心拍周期中の再構築された患者固有の心室体積-圧力を示すグラフである。
図13】一般的な冠血流(CBF)モデル概念を示す。
図14】冠血流(CBF)成分モデルでの使用に適した6つの例示的なモデルを示す。
図15】マルチコンパートメント冠血流(CBF)モデルでの使用に適した5つの異なる機能ブロック(a)~(e)を示す。
図16】冠血流(CBF)成分モデルでの使用に適した機能ブロックの1組のパラメータを示す。
図17】冠血流(CBF)成分モデルでの使用に適した、記述パラメータを有する集中定数多層/マルチコンパートメントモデルを示す。
図18】血液循環系(BCS)(肺循環及び体循環)モデル成分、心臓圧容積(HPV)モデル成分、及び冠血流(CBF)モデル成分を含む冠循環境界条件の決定に使用される3成分モデルを詳細に示す。
図19】患者の血管の一部の一例の3Dメッシュである。
図20】冠循環流入及び流出境界条件の決定の概略を示す。
図21】本開示の1つ又は複数の実施形態例による、定常状態シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の概略ブロック図である。
図22】本開示の1つ又は複数の実施形態例による、定常状態シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の概略ブロック図である。
図23】本開示の1つ又は複数の実施形態例による、一過性シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の概略ブロック図である。
図24】本開示の1つ又は複数の実施形態例による、一過性シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の概略ブロック図である。
図25】三成分モデル変形を使用して得られた血流予備量比(FFR)結果をリアルタイム結果と比較する受信者動作特性(ROC)曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
この開示は、特に、ボリュメトリックイメージングデータ及び連続動脈圧データからの冠動脈血流の非侵襲的な患者固有モデリングのデバイス、システム、方法、コンピュータ可読媒体、技法、及び方法論に関する。患者の冠動脈のボリュメトリックデータは、コンピュータ断層血管造影(CTA)又は磁気共鳴血管造影(MRA)等の非侵襲的な医療撮像技法を使用して捕捉し得る。ボリュメトリックデータを使用して、計算流体力学(CFD)シミュレーションに適した患者の冠動脈の解剖学的モデルを作成し得る。連続動脈圧データは、非侵襲的な技法を使用して導出し得る。連続動脈圧データは、CFDシミュレーションの境界条件の決定に使用し得る。患者固有CFDシミュレーションは、冠動脈解剖学的モデルを使用して実行し得、流入及び流出境界条件は連続動脈圧データから決定される。冠動脈における患者固有の血行動態パラメータは、CFDシミュレーションから導出し得、患者の狭窄の機能評価等の心血管疾患の特徴付け/評価に使用し得る。
【0007】
CFDシミュレーションは、医療撮像データから導出される患者固有の冠動脈解剖学的モデル及び連続動脈圧データから導出される患者固有の境界条件を使用して実行されて、患者の冠動脈における患者固有の血行動態パラメータを特定し得る。実施形態では、CFDシミュレーションの冠動脈流入境界条件の決定に三成分モデルを使用し得る。三成分モデルは、体及び肺の血液循環を記述する血液循環系(BCS)成分、心室又は動脈の圧力と体積との間の関係を記述する心腔圧容積(HPV)成分、及び冠動脈枝血液循環を記述する冠血流(CBF)成分を含み得る。三成分モデルでは、患者の冠動脈の入口における体積流量波形を特定することができ得る。患者の冠動脈の入口における特定された体積流量波形は、CFDシミュレーションの冠動脈流出境界条件の決定に使用し得る。例えば、患者の冠動脈の入口における体積流量波形は、マレーの法則又は同様のアロメトリックスケール則を使用して患者の冠動脈の出口における体積流量波形を特定するのに使用し得る(Sherman T(1981) On connecting large vessels to small-the meaning of murray’s law. Journal of General Physiology, 78(4):431-453参照)。
【0008】
この開示による冠動脈血流の患者固有モデリングは、既存の方法よりも優れた利点を提供する技法を利用し得る。例えば、構築される患者固有の解剖学的モデルは患者の冠動脈のみをモデリングし得る。すなわち、構築される患者固有の解剖学的モデルは、例えば、患者の大動脈の再構築又は心腔体積の推定を含まない。これは、数値的複雑性及びシミュレーション時間を低減し得る。更に、境界条件は、非侵襲的に測定される連続動脈圧データから導出し得る。圧力データを使用して境界条件を導出することの利点には、境界条件の決定に通常使用される他のパラメータ(例えば、速度、質量流束)と比較して、圧力を測定することができる容易さ及び非侵襲的に心臓から離れた場所で測定される場合であっても過度のエラーにより損なわれない圧力測定のロバスト性がある。
【0009】
本開示全体を通して、冠動脈及び冠動脈血流のモデリングが参照される。状況により別段のことが明確に示される場合を除き、冠動脈が2本の主要冠動脈のみならず、そこに従属する動脈分岐及びそこに含まれる任意のプラークも含み得ることを理解されたい。
【0010】
図1及び図2は、本開示の1つ又は複数の実施形態例による、冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法100を示す。方法100はコンピュータ又はコンピュータシステム内で実行し得る。
【0011】
コンピュータは、プロセッサにより実行されると、冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする、本明細書に記載される任意の動作を実行し得る命令を記憶する1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み得る。コンピュータ又はコンピュータシステムは、デスクトップ若しくはポータブルコンピュータ、モバイルデバイス(例えばスマートフォン)、クラウドベースの計算システム、サーバー、又は任意の他のコンピュータを含み得る。コンピュータは、プロセッサ、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、周辺機器(例えば、入力デバイス、出力デバイス、記憶装置等)を接続するための入出力(I/O)アダプタ、キーボード、マウス、タッチスクリーン、及び/又は他のデバイス等の入力デバイスを接続するためのユーザインターフェースアダプタ、コンピュータをネットワークに接続するための通信アダプタ、及びコンピュータをディスプレイに接続するためのディスプレイアダプタを含み得る。ディスプレイは、任意の計算された血行動態パラメータをユーザに表示する(例えば、特定された血行動態パラメータが重ねられた患者の冠動脈の画像又は三次元モデルを表示する)のに使用し得る。
【0012】
ステップ102において、コンピュータシステムは、患者固有解剖学的構造データを受信し得る。コンピュータシステムは、通信ネットワークを経由して及び/又はコンピュータ可読記憶媒体から患者固有解剖学的構造データ(例えば、CTスキャナ又はX線デバイスにより取得された画像データ)を受信し得る。
【0013】
患者固有解剖学的構造データは、患者の循環系の2D又は3D画像(ボリューム)であり得る。画像は、患者の冠動脈の少なくとも一部又は全体を含み得る。画像は、患者の心臓、大動脈等の他の解剖学的構造を含んでもよく、又は含まなくてもよい。患者固有解剖学的構造データは、種々の非侵襲的医療撮像モダリティを使用して非侵襲的に取得し得る。例えば、データは、コンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)、磁気共鳴造影(MRI)、又は磁気共鳴血管造影(MRA)を使用して取得し得る。代替的には、患者固有解剖学的構造データは、回転血管造影、動的血管造影、又はデジタルサブトラクション血管造影等の種々の非侵襲的な造影法を使用して取得し得る。
【0014】
受信した患者固有解剖学的構造データは、ユーザにより及び/又はコンピュータシステムにより、更に使用される前に前処理し得る。前処理は、例えば、捕捉された画像データにおけるレジストレーションずれ、非一貫性、又はぼやけのチェック、捕捉された画像データに示されるステントのチェック、冠動脈の内腔の可視性を妨げる恐れがある他のアーチファクトのチェック、解剖学的構造(例えば、大動脈、主冠動脈、他の血管、及び患者の他の部位)間の十分なコントラストのチェックを含み得る。前処理中、ユーザ及び/又はコンピュータシステムは、データに伴う特定のエラー又は問題を修正することが可能であり得る。前処理は、受信した患者固有解剖学的構造データに対して画像処理技法を使用して、解剖学的モデルの生成への使用に向けてデータを準備する(例えば、セグメント化に向けてデータを準備する)ことを含むこともできる。画像処理は、例えば、画像における異なる解剖学的構造(例えば、心臓、大動脈、冠動脈、他の脈管、アテローム性プラーク等)間でのコントラストレベルの調整、解剖学的構造の平滑化(例えば、平滑化フィルタの適用)等を含み得る。
【0015】
ステップ104において、コンピュータシステムは患者固有生理学的データを受信し得る。コンピュータシステムは、通信ネットワークを経由して及び/又はコンピュータ可読記憶媒体から患者固有生理学的データを受信し得る。
【0016】
患者固有生理学的データは、連続動脈圧データ(例えば、連続記録血圧波形)を含み得る。連続動脈血圧は時変性であり、いかなる中断もなく(例えば連続して)リアルタイムで測定される。幾つかの実施形態では、連続記録血圧波形は、概ね1分の時間にわたり又は1分~2分の範囲内の時間にわたり取得し得るが、他の連続時間を使用してもよい。連続動脈圧データは、経皮的処置なしで(例えば非侵襲的に)取得し得る。例えば、データは、Nexfin(商標)モニタ、ClearSight(商標)モニタ、CNAP(商標)モニタ、Finapres(登録商標)NOVAモニタ若しくは後継システム(例えば、Finometer(登録商標)及びPortapres(登録商標)モニタ)、又は他の同様の非侵襲的連続動脈圧力測定デバイスを使用して取得し得る。代替的には、連続動脈圧データは、動脈カテーテル処置等の種々の侵襲的な方法を使用して取得し得る。連続動脈圧データはデータ処理(例えば信号処理)を経て、CFDシミュレーションの境界条件の決定及び/又はCFDを使用した解剖学的モデルにおける血流のシミュレートへの使用に向けてデータを準備し得る。例えば、連続動脈圧データから圧力信号を抽出し得る。
【0017】
患者固有生理学的データは、患者の心電活動、ベースライン心拍数、身長、体重、ヘマトクリット、心拍出量等の連続動脈圧データ以外の生理学的データを含み得る。一般に、いかなる生理学的データもデータ処理(例えば、信号処理)を経て、CFDシミュレーションの境界条件の決定及び/又はCFDを使用した解剖学的モデルにおける血液流量(blood flood)のシミュレートへの使用に向けてデータを準備し得る。
【0018】
生理学的データは、例えば、患者からの心電図(ECG)信号の連続記録を含み得、その一例を図3に示す。ECG信号は、心拍変動(例えばRR間隔)等の時間的心拍周期パラメータの直接再構築に使用し得る。図3の例では、患者の記録について計算された平均RR間隔は0.897秒である。RR間隔は、例えば、CFDシミュレーションの境界条件の決定に使用し得る。
【0019】
生理学的データは、例えば、大動脈圧力推移を含み得る。大動脈圧力推移は、患者のECG信号が利用できないとき、時間的心拍パラメータを間接的に特定するのに使用し得るが、これはECGと比較した場合、精度がわずかに低い。Lomb-Scargleアルゴリズムは、大動脈圧力推移から患者の心拍のLomb-Scargleペリオドグラムを構築するのに使用し得、その一例を図4に示す。Lomb-Scargleアルゴリズムは、不均一な時間のサンプリングを用いて弱い周期信号を見つけ、その有意性をテストするのに使用し得る(Townsend RHD (2010) Fast calculation of the Lomb-Scargle periodogram using graphics processing units. The Astrophysical Journal, Supplement Series, Vol.191, 247-253参照)。図4の例では、Lomb-Scargleアルゴリズムを使用して、患者の圧力記録について計算されたRR間隔は0.901秒である。Lomb-Scargleアルゴリズムを使用して計算されたRR間隔は、ECGデータから特定されるRR間隔とわずかに異なるが、相違は0.5%未満である。
【0020】
ステップ106において、コンピュータシステムは、受信した患者固有解剖学的構造データから患者の冠動脈の患者固有解剖学的モデルを生成し得る。患者固有解剖学的モデルは、患者の冠動脈の3D幾何モデルであり得る。構築される患者固有解剖学的モデルは、患者の冠動脈のみをモデリングし得る。すなわち、再構築される患者固有解剖学的モデルは、例えば、患者の心臓、同動脈、冠動脈非関連脈管、又は他の組織の再構築を含まなくてよい。
【0021】
受信される患者固有解剖学的構造データ(例えば解剖学的画像)は、大動脈、主冠動脈、冠動脈分岐、心筋等の異なる解剖学的構造に対応する様々な光学密度の領域を含み得る。解剖学的構造表面の場所は、異なる解剖学的構造間のコントラスト(例えば、相対的な暗さ及び明るさ)に基づいて特定し得る。解剖学的構造間のコントラストは、生成されたモデルから他の解剖学的特徴(例えば心臓)を除外しながら、特定の解剖学的特徴(例えば冠動脈)の選択的モデリングを可能にすることもできる。
【0022】
患者固有解剖学的モデルを形成するプロセスは一般に、セグメント化と呼ばれる。セグメント化は、ユーザ入力あり又はなしでコンピュータシステムにより自動的に実行し得る。患者固有解剖学的モデルを生成するために、冠動脈は、任意の適した冠動脈セグメント化法を使用して患者固有解剖学的構造データにおいてセグメント化され得る。患者の冠動脈の解剖学的モデルを生成する方法(例えば、冠動脈セグメント化法)は、例えば、米国特許出願第2010/006776号及び同第2012/0072190号並びに米国特許第7,860,290号、同第7,953,266号、及び同第8,315,812号に記載されており、それらの各々は全体的に、本明細書に参照により援用される。セグメント化された冠動脈は、必要な場合、コンピュータシステム及び/又はユーザによりレビュー及び/又は修正され得る(例えば、冠動脈又はそこから延びる分岐の欠損又は不正確性等の任意のエラーがある場合、セグメント化を修正するために)。
【0023】
患者固有解剖学的モデル(例えば、3D幾何モデル)は、サーフェスメッシュとして表現し得る。サーフェスメッシュは、形状が1組の結ばれた頂点(例えばメッシュ)として表現されるようにセグメント化された構造の外部境界を表し得る。そのような表現を使用することにより、メッシュベースの形状メトリック又は統計を使用して形状制約を課し得る。アクティブメッシュモデル(AMM)等の変形可能なモデル(Dufour, A. et al., Segmenting and tracking fluorescent cells in dynamic 3-D microscopy with coupled active surfaces. IEEE Transactions on Image Processing, 14(9), 1396-1410, 2005; Dufour, A. et al., J.-C. 3-D active meshes: fast discrete deformable models for cell tracking in 3-D time-lapse microscopy. IEEE Transactions on Image Processing, 20(7), 1925-1937, 2011参照)は、患者固有解剖学的モデルを作成する開始点であり得る。AMMは、画像分析技法で使用されるアクティブコンターモデル(ACM)(Kass, M. et al., Active contour models. Int. J. of Computer Vision 1(4), 321-331, 1988参照)の3D拡張である。AMMベースの方法では、セグメント化された構造は、画像依存データ及び画像独立幾何特性の両方から算出される速度で進化する閉表面(フロント、メッシュ)として表現し得る。
【0024】
実施形態では、患者固有解剖学的モデルを形成するプロセスは、例えば、AMMベースの方法を使用して冠動脈中の可視のプラークをセグメント化すること、左右冠動脈のルートポイント(例えば開始点)をコンピュータ及び/又はユーザにより選択すること、AMMベースの方法及び選択されたルートポイントを使用して冠動脈をセグメント化すること、及びセグメント化されたプラーク及び動脈の幾何形状を検証及び/又は修正することを含み得る。
【0025】
セグメント化後、ユーザ及び/又はコンピュータシステムは、患者固有解剖学的モデルを後処理して、CFDシミュレーショに向けてモデルを準備し得る。これは、例えば、冠動脈及びその分岐の中心線の特定、冠動脈及びその分岐の断面積の特定、流入境界及び流出境界が、特定された中心線に垂直であり、それにより、境界条件の適用を可能にし、モデルを平滑化する(例えば、任意のリッジ、ポイント等を平滑化する)ような流入境界(例えば、流れが冠動脈内に向けられる境界)及び流出境界(例えば、流れが冠動脈及び/又は冠動脈分岐から出るように向けられる境界)のモデルの作成を含み得る。患者固有解剖学的モデルの後処理は、必要であれば、コンピュータシステム及び/又はユーザによりレビュー及び/又は修正し得る。
【0026】
ステップ108において、コンピュータシステムは、解剖学的モデルにおける血流の計算流体力学(CFD)シミュレーションの境界条件を決定し得る。境界条件の少なくとも幾つかは、受信した連続動脈圧データ等の受信した患者固有生理学的データを使用して決定し得る。境界条件は、冠循環流入及び流出境界条件を含み得る。
【0027】
図5に示される三成分モデルは、冠循環境界条件の決定に使用し得る。三成分モデルは、体及び肺の血液循環を記述する血液循環系(BCS)成分、心臓圧容積ループを記述する心臓圧容積(HPV)成分、及び冠動脈血液循環を記述する冠血流(CBF)成分を含み得る(図5参照)。BCS、HPV、及びCBF成分の各々は、より詳細に以下で考察する各成分の種々のモデルから選択し得る。三成分モデルは、入力として圧力波形psa(t)をとり得、これは、動脈圧力の患者固有連続記録(例えば、患者固有連続動脈圧データ)から導出し得る。三成分モデルの例示的な実施形態を図18に示す。
【0028】
三成分モデルは、患者の冠動脈の入口における体積流量波形等の流入境界条件を直接決定するのに使用し得る(図20参照)。三成分モデルは、患者の冠動脈の出口における体積流量波形等の流出境界条件を間接的に決定するのに使用し得る(図20参照)。例えば、患者の冠動脈の入口における体積流量波形は、血流と血管半径との関係を記述するマレーの法則等のアロメトリックスケール則(ALS)を使用して、患者の冠動脈の出口における体積流量波形を特定するのに使用し得る(図20参照)(Freund J et al., (2012) Fluid flows and forces in development: functions, features and biophysical principles. Development, 139(7):1229-1245; Newberry M et al., VM (2015) Testing foundations of biological scaling theory using automated measurements of vascular networks. Public Library of Science Computational Biology, 11(8):e1004455; Sherman T (1981) On connecting large vessels to small - the meaning of murray’s law. Journal of General Physiology, 78(4):431-453; Algranati D et al. (2010) Mechanisms of myocardium-coronary vessel interaction. American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology, Vol.298, No.3,H861-H873参照)。マレーの法則によれば、血流は、マレー系(Murray system)のあらゆる血管のrに比例する。
【0029】
血液循環系(BCS)成分は、体及び肺の血液循環を記述する。血液循環は、例えば、2要素、3要素、4要素、又は5要素ウインドケッセル(2WM、3WM、4WM、5WM)集中定数機能ブロックを使用してモデリングし得、これらは図6に示されている(Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Ostadfar A (2016) Biofluid mechanics. Principles and applications. Elsevier; Pappano A et al. (2013) Cardiovascular physiology. Elsevier; Stergiopulos N et al. (1996) Determinants of stroke volume and systolic and diastolic aortic pressure. American Journal of Physiology, Vol.270, No.6, Pt.2, H2050-H2059; Westerhof N et al. (2009) The arterial windkessel. Medical & Biological Engineering & Computing, Vol.47, No.2, 131-141; Zamir M (2005) The physics of coronary blood flow. Springer-Verlag参照)。肺循環及び体循環は、好ましい実施形態では、図7に示される集中定数パラメータモデルの1つを使用してモデリングし得、一方、全体の血液循環は図8に示されるマルチコンパートメントモデル(multi-compartment model)を使用してモデリングし得る。
【0030】
実施形態では、血液循環系モデル成分(例えば、体及び肺循環モデル)は、図9に示される抵抗(R)-慣性抵抗(L)-キャパシタンス(C)集中定数パラメータ機能ブロックRLCを基礎とする。図9の集中定数パラメータ機能ブロックでは、ブロックの入力(in)及び出力(out)は時間(t)において関連し:
【数1】
式中、qは流量であり、pは、選択されたコンパートメントを流れている血液の圧力である。図8に示されるように、肺循環モデルは、動脈(C=Cpa,R=Rpa,L=Lpa)、肺リザーバ(C=0, R=Rpr,L=0)、及び静脈(C=Cpv,R=Rpv,L=0)の形態の3つのコンパートメントを含み、これらは6つの式(3×2=6)をもたらす。体循環モデルは5つのコンパートメント、すなわち、大動脈(C=Csa,R=Rsa,L=Lsa)、近位伝達動脈(C=Csp,R=Rsp,L=Lsp)、遠位筋性動脈(C=Csd,R=Rsd,L=0)、体リザーバ(systemic reservoir)(C=0,R=Rsr,L=0)、及び静脈(C=Csv,R=Rsv,L=0)を含み、これらは10の式(5×2=10)をもたらす。結果として生成される16の方程式の連立方程式は数値的に解くことができる。
【0031】
心室又は心房圧容積(HPV)成分は、心臓圧容積ループを記述する。心拍周期は、図10に示されるように、4つのフェーズからなる(Barrett KE et al. (2016) Ganong’s review of medical physiology, McGraw-Hill; Mohrman D et al. (2013) Cardiovascular physiology. McGraw-Hill, Lange, New York; Pappano A et al. (2013) Cardiovascular physiology. Elsevier参照)。例えば、時変弾性モデル(TVE)、時変伸展性(TVC)モデル、又は他のモデル等の多くの異なるモデルが、等容性収縮期及び拡張期に使用され得る(Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Lankhaar JW et al. (2009) Modeling the instantaneous pressure-volume relation of the left ventricle: a comparison of six models. Annals of biomedical engineering, Vol.37, No.9, 1710-1726; Stergiopulos N et al. (1996) Determinants of stroke volume and systolic and diastolic aortic pressure. American Journal of Physiology, Vol.270, No.6, Pt.2, H2050-H2059参照)。図11は、心腔圧容積(HPV)成分モデル(a)及び全体のマルチコンパートメント心腔圧容積(HPV)成分モデル(b)を構築する機能ブロックを示す。好ましい実施形態では、圧容積(HPV)成分は、伸展性の逆数としての可変弾性E(t)の概念に基づくモデルを使用し、これは、形態:
【数2】
で書くことができる。
【0032】
等容期中の心腔における圧力は、式:
p(t)=E(t)・(V(t)-V
により記述し得、式中、V(t)は心腔容積であり、Vは容積切片(volume intercept)である。
【0033】
弾性は、アーチボルトヒル関数
【数3】
の畳み込みに基づいて計算し得、これは、形態:
【数4】
で書くことができ、式中、
【数5】
であり、TはRR間隔による心拍周期持続時間であり、ECGにより特定してもよく、又は大動脈圧力推移から推定してもよい。時変弾性モデル経験パラメータの典型的な値は、以下の表に提供される(Stergiopulos N et al. (1996) Determinants of stroke volume and systolic and diastolic aortic pressure. American Journal of Physiology, Vol.270, No.6, Pt.2, H2050-H2059; Faragallah G et al. (2012) A new control system for left ventricular assist devices based on patient-specific physiological demand. Inverse Problems in Science and Engineering, Vol.20, No.5, 721-734参照)。
【0034】
【表1】
【0035】
時変弾性モデルは、心拍周期の等容期中のみ使用し得る。他の2つの心拍周期フェーズ(図10)では、血液量は部分的に心房中に蓄積され、一方、残りは流れ出る-経弁圧較差(transvalvular pressure gradient)が後に続く。したがって、動脈流量バランスは、
【数6】
として記述することができ、同様に、心室流量は、
【数7】
として記述することができる。同時に、経弁フローは、
【数8】
として記述することができ、式中、Hはヘヴィサイドの階段関数である。
【0036】
実施形態では、患者固有較正(PSC)手順をHPV及びBCSモデルの最適パラメータ推定に使用し得る。手順は、(i)患者の収縮期及び拡張期の圧力レベル、性別、年齢、及び心拍数(HR)からモデルパラメータの初期近似を特定すること(Barrett KE et al. (2016) Ganong’s review of medical physiology, McGraw-Hill; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Pappano A et al. (2013) Cardiovascular physiology. Elsevier; Zamir M (2005) The physics of coronary blood flow. Springer-Verlag; Maceira AM et al. (2006) Reference right ventricular systolic and diastolic function normalized to age, gender and body surface area from steady-state free precession cardiovascular magnetic resonance. European Heart Journal, Vol.27, Issue 23, Pages 2879-2888; Maceira AM et al. (2006) Normalized left ventricular systolic and diastolic function by steady state free precession cardiovascular magnetic resonance. Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance, Vol. 8, Issue 3, 417-426参照)と、(ii)喫煙習慣、運動習慣、及びドラッグの使用を含む追加情報に基づいて補正を行うこと(Tsanas A et al. (2009) The Windkessel model revisited: a qualitative analysis of the circulatory system. Medical Engineering & Physics, Vol.31, Issue 5, 581-588参照)と、(iii)モデル(HPV+BCS)を解くことと、(iv)そして計算された圧力及び患者の圧力瞬間記録にフィッティングすることによりパラメータを較正することとを含む。このようにして、時変弾性モデル(例えば、HPVモデルで適用される)を循環モデル(BCS)と併せて使用して、図12に示されるように、患者の記録された大動脈圧力(psa)を使用して左右の心房の瞬間容積(V)及び内部圧(pv)の推移を再構築し得る。
【0037】
冠血流(CBF)成分は、冠動脈血液循環を記述し、一般に図13に示される。CBF成分は、(i)冠動脈への流入を強いる主要因は、大動脈における瞬間圧力psa(t)であり、(ii)心筋-冠血管の相互作用は、psa(t)とは逆の圧力を生じさせて、流れを抑え、又は逆流させる効果を有し、及び(iii)動脈に蓄積された血液の慣性効果はごく僅かであることを含み得る生理学の発見から導き出された幾つかの結論から導出される(Epstein S et al. (2015) Reducing the number of parameters in 1D arterial blood flow modeling: less is more for patient-specific simulations. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.309, No.1, H222-H234; Kheyfets VO et al. (2016) A zero-dimensional model and protocol for simulating patient-specific pulmonary hemodynamics from limited clinical data. Journal of Biomechanical Engineering, Vol.138, Issue 12,1-8; Maruyama Y et al. (1994) Recent advances in coronary circulation. Springer-Verlag, Berlin and Heidelberg; Mohrman D et al. (2013) Cardiovascular physiology. McGraw-Hill, Lange, New York; Ostadfar A (2016) Biofluid mechanics. Principles and applications. Elsevier; Pappano A et al. (2013) Cardiovascular physiology. Elsevier; Zamir M (2005) The physics of coronary blood flow. Springer-Verlag; Algranati D et al. (2010) Mechanisms of myocardium-coronary vessel interaction. American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology, Vol.298, No.3,H861-H873; Mynard JP et al. (2014) Scalability and in vivo validation of a multiscale numerical model of the left coronary circulation. American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology, Vol.306, No.4, H517-H528; Westerhof N et al. (2006) Cross-talk between cardiac muscle and coronary vasculature. Physiological Reviews, Vol.86, No.4, 1263-1308参照)。
【0038】
上記に基づいて、図13に一般に示されるCBF成分は、冠動脈における流れのCFDシミュレーションの境界条件を決定するのに適する。CBF成分は、冠動脈入口における流れq(t)が、心臓の収縮及び主に心室圧によって決まる逆蓄積(reverse accumulation)により大動脈圧力psa(t)を強制的に抑えることから生じることを指定する。
【0039】
CBF成分は因果関係を記述し、圧力は独立変数として作用する。圧力は、CBF成分では独立変数として機能するため、CBF成分及び患者固有計算モデリングにおけるその使用は、境界条件を決定する他の技法よりも有利である。圧力を独立変数として使用することの幾つかの利点には、(i)圧力は、測定がはるかに難しい速度又は質量流束と比較した場合、測定が比較的容易であり、(ii)圧力測定値は、非侵襲的で心臓から離れた場所であっても、過度のエラーにより損なわれないことがある。
【0040】
冠血流は、多くの異なる方法でモデリングし得(Beyar R et al. (1987) Time-dependent coronary blood flow distribution in left ventricular wall. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.252, No.2,Pt.2, H417-H433; Boileau E et al. (2015) One-Dimensional Modelling of the Coronary Circulation. Application to Noninvasive Quantification of Fractional Flow Reserve (FFR). Computational and Experimental Biomedical Sciences: Methods and Applications, Vol.21, 137-155; Bruinsma T et al. (1988) Model of the coronary circulation based on pressure dependence of coronary resistance and compliance. Basic Res Cardiol, 83:510-524; Burattini R et al. (1985) Identification of canine intramyocardial compliance on the basis of the waterfall model. Annals of Biomedical Engineering, Vol.13, No.5, 385-404; Chadwick RS et al. (1990) Phasic regional myocardial inflow and outflow: comparison of theory and experiments. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol. 258, No.6, H1687-H1698; Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Holenstein R et al. (1990) Parametric analysis of flow in the intramyocardial circulation. Annals of Biomedical Engineering, Vol.18, No.4, 347-365; Judd RM et al. (1991) Coronary input impedance is constant during systole and diastole. American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology, Vol.260, No.6, H1841-H1851; Kresh JY et al. (1990) Model-based analysis of transmural vessel impedance and myocardial circulation dynamics. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.258, No.1, H262-H276; Lee J et al. (1984) The role of vascular capacitance in the coronary arteries. Circ Res 55:751-762; Lee J et al. (2012) The multi-scale modelling of coronary blood flow. Annals of Biomedical Engineering, Vol.40, Issue 11, 2399-2413; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Mynard JP et al. (2014) Scalability and in vivo validation of a multiscale numerical model of the left coronary circulation. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.306, No.4, H517-H528; Marsden AL (2014) Thrombotic risk stratification using computational modeling in patients with coronary artery aneurysms following Kawasaki disease. Biomechanics and Modeling in Mechanobiology, Vol.13, No.6, 1261-1276; Spaan JAE et al. (1981) Diastolic-systolic coronary flow differences are caused by intramyocardial pump action in the anesthetized dog. Circ Res, Vol.49, Issue 3, 584-593参照、その幾つかの例を図14に示す。図14に示される冠血流モデルは、以下のようにまとめることができる:(i)全てのモデルは、通常は等しい大動脈圧力(psa)をとる1つのソース要素を有し(同文献参照)、(ii)ソースエネルギーは部分的に1つの(c,e,f)抵抗要素で消散し(Bruinsma T et al. (1988) Model of the coronary circulation based on pressure dependence of coronary resistance and compliance. Basic Res Cardiol, 83:510-524; Burattini R et al. (1985) Identification of canine intramyocardial compliance on the basis of the waterfall model. Annals of Biomedical Engineering, Vol.13, No.5, 385-404; Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Holenstein R et al. (1990) Parametric analysis of flow in the intramyocardial circulation. Annals of Biomedical Engineering, Vol.18, No.4, 347-365; Kresh JY et al. (1990) Model-based analysis of transmural vessel impedance and myocardial circulation dynamics. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.258, No.1, H262-H276; Lee J et al. (1984) The role of vascular capacitance in the coronary arteries. Circ Res 55:751-762; Lee J et al. (2012) The multi-scale modelling of coronary blood flow. Annals of Biomedical Engineering, Vol.40, Issue 11, 2399-2413; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Mohrman D et al. (2013) Cardiovascular physiology. McGraw-Hill, Lange, New York; Sengupta D et al.; Spaan JAE et al. (1981) Diastolic-systolic coronary flow differences are caused by intramyocardial pump action in the anesthetized dog. Circ Res, Vol.49, Issue 3, 584-593.), two (b) (see Chadwick RS et al. (1990) Phasic regional myocardial inflow and outflow: comparison of theory and experiments. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol. 258, No.6, H1687-H1698.), or zero (a,d) (see Beyar R et al. (1987) Time-dependent coronary blood flow distribution in left ventricular wall. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.252, No.2,Pt.2, H417-H433; Boileau E et al. (2015) One-Dimensional Modelling of the Coronary Circulation. Application to Noninvasive Quantification of Fractional Flow Reserve (FFR). Computational and Experimental Biomedical Sciences: Methods and Applications, Vol.21, 137-155; Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Judd RM et al. (1991) Coronary input impedance is constant during systole and diastole. American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology, Vol.260, No.6, H1841-H1851; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Mynard JP et al. (2014) Scalability and in vivo validation of a multiscale numerical model of the left coronary circulation. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.306, No.4, H517-H528参照)、(iii)流入フローは通常、1つの抵抗分岐と容量性分岐との間で分割され、少数のモデルは2つの容量要素を有し(b,f)(Burattini R et al. (1985) Identification of canine intramyocardial compliance on the basis of the waterfall model. Annals of Biomedical Engineering, Vol.13, No.5, 385-404; Chadwick RS et al. (1990) Phasic regional myocardial inflow and outflow: comparison of theory and experiments. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol. 258, No.6, H1687-H1698; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Marsden AL (2014) Thrombotic risk stratification using computational modeling in patients with coronary artery aneurysms following Kawasaki disease. Biomechanics and Modeling in Mechanobiology, Vol.13, No.6, 1261-1276; Sengupta D et al参照)、(iv)容量性分岐はそれ自体の抵抗要素(d)を含み得(Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Judd RM et al. (1991) Coronary input impedance is constant during systole and diastole. American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology, Vol.260, No.6, H1841-H1851; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York参照)、又は心室内圧(c,f)の関数としてソースを含み得る(Burattini R et al. (1985) Identification of canine intramyocardial compliance on the basis of the waterfall model. Annals of Biomedical Engineering, Vol.13, No.5, 385-404; Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Kresh JY et al. (1990) Model-based analysis of transmural vessel impedance and myocardial circulation dynamics. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.258, No.1, H262-H276; Lee J et al. (2012) The multi-scale modelling of coronary blood flow. Annals of Biomedical Engineering, Vol.40, Issue 11, 2399-2413; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Sengupta D et al.; Spaan JAE et al. (1981) Diastolic-systolic coronary flow differences are caused by intramyocardial pump action in the anesthetized dog. Circ Res, Vol.49, Issue 3, 584-593参照)が、両方は含まず、(v)抵抗分岐は通常、心室内圧に関連するそれ自体のソースを含む(a,b,c,d,e)(Beyar R et al. (1987) Time-dependent coronary blood flow distribution in left ventricular wall. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.252, No.2,Pt.2, H417-H433; Boileau E et al. (2015) One-Dimensional Modelling of the Coronary Circulation. Application to Noninvasive Quantification of Fractional Flow Reserve (FFR). Computational and Experimental Biomedical Sciences: Methods and Applications, Vol.21, 137-155; Bruinsma T et al. (1988) Model of the coronary circulation based on pressure dependence of coronary resistance and compliance. Basic Res Cardiol, 83:510-524; Chadwick RS et al. (1990) Phasic regional myocardial inflow and outflow: comparison of theory and experiments. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol. 258, No.6, H1687-H1698; Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Holenstein R et al. (1990) Parametric analysis of flow in the intramyocardial circulation. Annals of Biomedical Engineering, Vol.18, No.4, 347-365; Judd RM et al. (1991) Coronary input impedance is constant during systole and diastole. American Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology, Vol.260, No.6, H1841-H1851; Kresh JY et al. (1990) Model-based analysis of transmural vessel impedance and myocardial circulation dynamics. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.258, No.1, H262-H276; Lee J et al. (1984) The role of vascular capacitance in the coronary arteries. Circ Res 55:751-762; Lee J et al. (2012) The multi-scale modelling of coronary blood flow. Annals of Biomedical Engineering, Vol.40, Issue 11, 2399-2413; Li J K-J (2000) The Arterial Circulation. Physical Principles and Clinical Applications, Springer, New York; Mynard JP et al. (2014) Scalability and in vivo validation of a multiscale numerical model of the left coronary circulation. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol.306, No.4, H517-H528; Spaan JAE et al. (1981) Diastolic-systolic coronary flow differences are caused

by intramyocardial pump action in the anesthetized dog. Circ Res, Vol.49, Issue 3, 584-593参照)。一般に、これらは、図15に示される機能ブロックを基礎とするマルチコンパートメントモデルと見なすことができる。
【0041】
好ましい実施形態では、冠血流は、図16に示される集中定数機能ブロックを使用してモデリングされる。図16に示される冠血流モデルの使用では、以下の質量流束保存式:
【数9】
を解く必要があり得、式中、Hはヘヴィサイドの階段関数である。絞り圧力p及びpは、心筋-冠血管相互作用(MVI)を記述し、ここで、p=kC・(CEP+SIP)であり、p=k(CEP+SIPである[3,4,9,14,22,25,32]。受動的相互作用メカニズムの3つの主な仮説があり、血管外圧力記述は、(i)間質性空洞誘導型細胞外圧(interstitial, cavity-induced extracellular pressure)(CEP=μ.p)及び(ii)短縮誘導型細胞内圧(shortening-induced intracellular pressure)(SIP=μ.E)を含むことができる(Algranati D et al. (2010) Mechanisms of myocardium-coronary vessel interaction. American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology, Vol.298, No.3,H861-H873; Mynard JP et al. (2014) Scalability and in vivo validation of a multiscale numerical model of the left coronary circulation. American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology, Vol.306, No.4, H517-H528; Westerhof N et al. (2006) Cross-talk between cardiac muscle and coronary vasculature. Physiological Reviews, Vol.86, No.4, 1263-1308参照)。瞬間左心室(又は右心室のそれぞれの)圧p及び弾性Eは、HPV成分からとることができ、ゼロ流圧pzfは20mmHg以下であると仮定し得る。
【0042】
冠動脈は心臓壁に空間的に分布し、細胞外圧により非均一的に影響され、物理的又は薬理的応力条件-特に、アデノカード若しくはアデノスキャン等のアデノシン受容体(プリン作動性P1受容体)アゴニスト又はA2A受容体のより選択的なアゴニスト(レガデノソン、ビノデノソン)の投与による充血-により更に抑えられ得る。実施形態では、心臓壁不均質性の影響(応力の影響下で更に変わる)は、可変組織圧力係数を有する多層及びマルチコンパートメントモデルを利用することにより記述し得(Garcia D et al. (2009) Impairment of coronary flow reserve in aortic stenosis. Journal of Applied Physiology, Vol.106, No.1, 113-121; Holenstein R et al. (1990) Parametric analysis of flow in the intramyocardial circulation. Annals of Biomedical Enginfeering, Vol.18, No.4, 347-365; Westerhof N et al. (2006) Cross-talk between cardiac muscle and coronary vasculature. Physiological Reviews, Vol.86, No.4, 1263-1308参照)、その一例を図17に示す。図17によれば、
【数10】
であり、式中、心組織圧係数は、
【数11】
である。静止状態中、血管外圧は非線形的に心内膜から心外膜にk≒2.0以上の指数で下方に凹である。これとは対照的に、任意のアクティブ血管運動神経緊張(仮想最大冠拡大(hypothetical maximum coronary dilation))のカッサシオン時、線形関係をとることができる(k≒1.0)。
【0043】
アクティブ血管運動神経緊張をなくすことに関連する血管拡張効果は心組織及び心機能に限定されない。より一般的には、血管拡張は、心指向性形態(変時性、変力性、変弛緩性、及び多くの他の作用)の単なる1つである。更に、内因性及び/又は外因性メディエータは、血管抵抗を低減し得、冠血流並びに体及び肺の血流を増大させることができる。好ましい実施形態では、内因性又は外因性アゴニスト(A)を結合するプリン作用性受容体(R)の正味心屈動効果(E/Emax)は、協同動力関係によりモデリングし得、
【数12】
式中、占有受容体の濃度は、
【数13】
である。これらの方程式及びイントロダクショントランスデューサ比(introduction transducer ratio)τ=[R]/Kを結合して、明示的な関係
【数14】
アゴニズムの協同プリン作用性受容体-刺激モデル(親和性K及び有効性Kを使用する)を取得する。
【0044】
ステップ110において、コンピュータシステムは、CFD及び患者固有境界条件を使用して、患者固有解剖学的モデル(例えば冠動脈)における血流をシミュレートし得る。特に、CFDシミュレーションは、冠動脈の入口及び/又は出口における冠体積流量波形を使用し得、これは、少なくとも部分的に、CFDモデリングの境界条件として患者固有連続動脈圧データによって特定し得る。
【0045】
CFDシミュレーションの実行に先立ち、別個の流入及び流出境界モデルと一緒に患者固有解剖学的モデルの3Dメッシュを作成して、CFDシミュレーションを可能にし得る(例えば、数値シミュレーションの3D計算グリッドを作成する)。3Dメッシュは、患者固有解剖学的モデルの表面に沿って、患者固有解剖学的モデルの内部全体を通して複数のノード(例えば、メッシュポイント又はグリッドポイント)を含み得る(図19参照)。生成されたメッシュは、必要であれば、コンピュータシステム及び/又はユーザによりレビュー及び/又は修正し得る(例えば、メッシュ歪み、メッシュの不十分な空間分解能の補正等)。
【0046】
CFDシミュレーションでは、血液はニュートン流体又は非ニュートン流体としてモデリングし得、流れ場は、剛性壁仮定下で離散化質量運動量(ナビエ-ストークス)平衡方程式を数値的に解くことにより取得し得る。血流の三次元方程式を解く数値法は、有限差分、有限体積、スペクトル、格子ボルツマン、粒子ベース、レベルセット、アイソジオメトリック、有限要素法、又は他の計算流体力学(CFD)数値技法を含み得る。離散化ナビエ-ストークス方程式は、冠動脈内の血流の速度及び圧力を増分的に経時シミュレートするのに使用し得る。すなわち、CFDシミュレーションは、メッシュ化解剖学的モデルの各ノードにおける血流及び圧力を特定し得る。CFDシミュレーションの結果は、患者固有の解剖学的構造及び患者固有の境界条件に基づく患者の冠動脈における患者固有の血流及び圧力分布であり得る。
【0047】
ステップ112において、コンピュータシステムは、患者の冠動脈に関連付けられた1つ又は複数の血行動態パラメータを特定し得る。1つ又は複数の血行動態パラメータは、少なくとも部分的にCFDシミュレーション結果に基づいて特定し得る。血行動態パラメータの例は、血圧、血流量、壁剪断応力(WSS)、振動剪断指数(OSI)、相対滞留時間(RRT)、血流予備量比(FFR)、冠血流予備量比(CFR)、瞬間的無波比(iFR)等の冠動脈特性を含み得る。血行動態パラメータは、患者固有の解剖学的モデルにわたり補間されて、解剖学的モデルにわたる血行動態パラメータについての情報をユーザに提供し得る。
【0048】
ステップ114において、コンピュータシステムは、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータを出力し得る。コンピュータシステムは、例えば、1つ若しくは複数の血行動態パラメータ又は1つ若しくは複数の血行動態パラメータの視覚化(例えば、2D又は3D画像)を表示し得る。コンピュータシステムは、例えば、血行動態パラメータを三次元インタラクティブ視覚化として提示し得る。コンピュータシステムは、リモートコンピュータでの表示に向けて1つ又は複数の特定される血行動態パラメータをリモートコンピュータに送信し得る。
【0049】
ステップ116において、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、患者固有の治療計画を決定するのに使用され、及び/又は患者固有の治療計画の一環として使用される。実施形態では、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、心血管疾患での冠動脈血行再建処置を計画するのに使用される。例えば、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、患者の冠動脈における血流の血行動態状態を改善する、患者にステントを配置する最適な患者固有の場所を特定するのに使用し得、次に、ステントは特定された最適場所に位置決めされる。別の例として、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、代替の冠動脈バイパス処置と比較した場合、患者の冠動脈流によりよい血行動態状態を提供する、患者に最適な冠動脈バイパス処置を決定するのに使用し得、次に、医師は最適な冠動脈バイパス処置を患者に対して実行する。
【0050】
実施形態では、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、仮想心肺運動負荷試験のサポートで使用される。例えば、1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、血流予備量比(FFR)推定を含み得、これは、仮想心肺運動負荷試験状況中、血流予備量比及び/又は血中酸素飽和度の非侵襲的な推定を提供するのに使用することができる。
【0051】
上記実施形態は冠動脈を通る血流の一過性シミュレーションを参照して説明されたが、本開示は、冠動脈を通る血流の定常状態シミュレーションも包含することが理解される。
【0052】
冠動脈を通る血流は拍動性である。その圧力及び速度は、1回の心拍中に時間変動し、このプロセスは反復的である。そのような流れをシミュレートする最も簡単な方法は、一過性ソルバを使用することであるが、これは非常に時間が掛かり得る。定常状態(例えば静止)シミュレーションの使用は、解くまでの時間が比較的短いため、有利であり得るが、あらゆる非静止現象に対して適用可能ではない。
【0053】
静止シミュレーションを利用するために、冠動脈はパイプラインシステムとして扱うことができる。そのようなシステムでは、圧力降下Δpは流速vに依存する。一般的な流れの場合、圧力降下は速度の二次関数である(Δp=av+bv+c)。この方程式中の係数を特定するためには、3対の(v,Δp)値を見つける必要がある。これを行うために、3つの定常状態シミュレーションを種々の圧力及び速度(流量から計算される)値境界条件で実行することができ、それらの速度に関する圧力降下値を見つけることができる。それらのシミュレーションは独立しているため、並列に実行し得る。これにより、解くまでの時間を大幅に短縮することができる。例えば、計算に数十時間がかかる一過性シミュレーションの結果は、静止シミュレーションから1時間未満で取得し得る。慣性効果を考慮に入れるために、圧力降下についての追加の項が方程式に追加され(Bird RB et al. (1960) Transport Phenomena. John Wiley & Sons, New York; Young D et al. (1973) Flow characteristics in models of arterial stenoses. II. Unsteady flow, Journal of Biomechanics, Vol.6, No.5, 547-559; Young D et al. (1977) Hemodynamics of arterial stenoses at elevated flow rates. Circulation Research, Vol.41, No.1, 99-107参照):
【数15】
式中、a、b、c-静止シミュレーションに基づいて計算された係数、k=1.2-慣性係数、l-入口からの距離。
【0054】
図21図24は、定常状態シミュレーション又は一過性シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法の低詳細又は高詳細概略ブロック図を示す。図21図24に示されるように、定常状態シミュレーションに基づく方法と一過性シミュレーションに基づく方法との間には少数の違いがある。しかしながら、定常状態シミュレーションに基づく方法についての実施詳細の多くは、一過性シミュレーションに基づく方法に適用することができ、逆も同様である。
【0055】
図21及び図22を参照して、定常状態シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法200の低詳細又は高詳細概略ブロック図が示される。
【0056】
図21を特に参照すると、ステップ202において、患者固有解剖学的データが取得され、前処理される。ステップ204において、取得された解剖学的データに基づいて三次元モデルが作成される。ステップ206において、三次元モデルは数値分析に向けて準備される。ステップ208において、計算分析が三次元モデルを使用して実行される。ステップ210において、患者固有末梢動脈圧記録データが取得され、前処理される。ステップ212において、圧記録データに基づいて境界条件が作成される。ステップ214において、計算分析の結果及び境界条件が組み立てられて出力される。ステップ216において、結果に基づいて患者固有の治療計画が準備される。
【0057】
図22を参照すると、ステップ302において、取得された患者固有解剖学的データ(例えばCTデータ)がまずレビューされる。ステップ304において、取得された解剖学的データが画像処理を受ける。取得された解剖学的データからの三次元モデル作成の開始を記すステップ306において、プラークがセグメント化される。ステップ308において、冠動脈ルートポイントが選択される。ステップ310において、冠動脈がセグメント化される。ステップ312において、セグメント化の質がチェックされる。ステップ314において、動脈中心線が自動的に見つけられる。ステップ316において、流入及び流出境界モデルが作成される。ステップ318において、ソリッドモデルが出力され、平滑化される。ステップ320において、出力されたソリッドモデルが検証される。数値分析に向けてのソリッドモデルの準備の開始を記すステップ322において、モデルの最終メッシュが生成される。ステップ324において、メッシュが検証される。計算分析実行の開始を記すステップ326において、1組のCFDケースが数値分析に向けて準備される。ステップ328において、1組のCFDケースがフローシミュレーションにより解かれる。ステップ330において、シミュレーション結果が検証される。ステップ332において、取得された患者固有解剖学的データ(例えば、記録された圧データ)がまずレビューされる。記録された圧データに基づく境界条件の作成を開始するステップ334において、圧データが血液循環系モデルに入力される。ステップ336において、血液循環系モデルからの結果が心腔モデルに入力される。ステップ338において、心腔モデルからの結果が冠血流モデルに入力され、その出力が使用されて境界条件が決定される。ステップ340において、境界条件決定の結果が検証される。ステップ342において、境界条件決定及び計算流体力学分析の結果が組み立てられる。ステップ344において、組み立てられた結果が出力される。
【0058】
図23及び図24を参照して、一過性シミュレーションを使用して冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法400の低詳細又は高詳細概略ブロック図が示される。
【0059】
図23を特に参照すると、ステップ402において、患者固有解剖学的データが取得され、前処理される。ステップ404において、取得された解剖学的データに基づいて三次元モデルが作成される。ステップ406において、患者固有末梢動脈圧記録データが取得され、前処理される。ステップ408において、圧記録データに基づいて境界条件が作成される。ステップ410において、三次元モデルが数値分析に向けて準備される。ステップ412において、三次元モデル及び境界条件を使用して計算分析が実行される。ステップ414において、計算分析の結果が出力される。ステップ416において、結果に基づいて患者固有の治療計画が準備される。
【0060】
図24を参照すると、ステップ502において、取得された患者固有解剖学的データ(例えばCTデータ)がまずレビューされる。ステップ504において、取得された解剖学的データが画像処理を受ける。取得された解剖学的データからの三次元モデル作成の開始を記すステップ506において、プラークがセグメント化される。ステップ508において、冠動脈ルートポイントが選択される。ステップ510において、冠動脈がセグメント化される。ステップ512において、セグメント化の質がチェックされる。ステップ514において、動脈中心線が自動的に見つけられる。ステップ516において、流入及び流出境界モデルが作成される。ステップ518において、ソリッドモデルが出力され、平滑化される。ステップ520において、出力されたソリッドモデルが検証される。ステップ522において、取得された患者固有解剖学的データ(例えば、記録された圧データ)がまずレビューされる。記録された圧データに基づく境界条件の作成を開始するステップ524において、圧データが血液循環系モデルに入力される。ステップ526において、血液循環系モデルからの結果が心腔モデルに入力される。ステップ528において、心腔モデルからの結果が冠血流モデルに入力され、その出力が使用されて境界条件が決定される。ステップ530において、境界条件決定の結果が検証される。数値分析に向けてのソリッドモデルの準備の開始を記すステップ532において、モデルの最終メッシュが生成される。ステップ534において、メッシュが検証される。計算分析実行の開始を記すステップ536において、CFDケースが数値分析に向けて準備される。ステップ538において、CFDケースがフローシミュレーションにより解かれる。ステップ540において、シミュレーション結果が検証される。ステップ542において、結果が出力される。
【0061】
実施形態は構造特徴及び/又は方法論動作に固有の用語で説明されたが、本開示が必ずしも、特定の特徴又は動作に限定されるわけではないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴及び動作は、実施形態を実施する例示的な形態として開示されている。特に、「できる」、「できた」、「であろう」、又は「し得る」等の条件語は、特に別段のことが特記される場合を除き、又は使用される状況内で他の方法で理解される場合を除き、一般に、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むことができ、一方、他の実施形態が含まないことを伝達することを意図される。したがって、そのような条件語は一般に、特徴、要素、及び/又はステップが1つ若しくは複数の実施形態に必要であること又は1つ若しくは複数の実施形態が必ず、ユーザの入力若しくはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/又はステップが任意の特定の実施形態に含まれるか否か、若しくは任意の特定の実施形態で実行されるべきか否かを決める論理を含むことを黙示することを一般に意図しない。
【実施例
【0062】
実施例
実施例1
本開示の1つ又は複数の実施形態例による冠動脈における血行動態パラメータを患者固有モデリングする方法からの結果を実際の結果と比較した。特に、3つの病院における30人の患者から非侵襲的に収集されたFFRデータを、本開示の1つ又は複数の実施形態例を使用して数値的に計算されたFFR値と比較した。合計で35の狭窄についての統計結果を以下の表及び図25にまとめられる。
【0063】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図14(d)】
図14(e)】
図14(f)】
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】
図15(d)】
図15(e)】
図15(f)】
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2020-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者固有解剖学的構造データ(102、202、302、402、502)及び患者固有生理学的データ(104、210、322、406、522)を受信することであって、前記解剖学的構造データは、患者の冠動脈についての構造情報を含み、前記患者固有生理学的データは、連続記録された血圧波形を含む、受信することと、
少なくとも部分的に前記解剖学的構造データに基づいて前記患者の冠動脈の少なくとも一部の解剖学的モデルを生成すること(106、204、306、308、310、312、314、316、318、320、404、506、508、510、512、514、516、518、520)と、
少なくとも部分的に前記連続記録された血圧波形に基づいて、前記解剖学的モデルにおける血流の計算流体力学(CFD)シミュレーションの境界条件を決定すること(108、212、334、336、338、340、408、524、526、528、530)と、
CFD及び前記境界条件を使用して前記解剖学的モデルにおいて血流をシミュレートすること(110、208、214、326、328、330、342、412、536、538、540)と、
少なくとも部分的に前記シミュレーションに基づいて、前記患者の冠動脈に関連付けられた1つ又は複数の血行動態パラメータを特定すること(112、214、344、414、542)と、
を含む方法(100、200、400)であって、
前記連続記録された血圧波形は非侵襲的測定からのものであり、
前記境界条件を決定すること(108、212、334、336、338、340、408、524、526、528、530)は、
少なくとも部分的に血液循環系モデル及び前記連続記録された血圧波形に基づいて、体積血流量データを特定することと、
少なくとも部分的に心腔圧容積モデル及び前記体積血流量データに基づいて、心室圧データを特定することと、
少なくとも部分的に冠動脈血流モデル、前記連続記録された血圧波形、及び前記心室圧データに基づいて、冠動脈入口フローデータを特定することと、
少なくとも部分的にアロメトリックスケール則及び前記冠動脈入口フローデータに基づいて、冠動脈出口フローデータを特定することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記解剖学的構造データは非侵襲的測定からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解剖学的構造データはコンピュータ断層血管造影からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記解剖学的モデルを生成すること(106)は、大動脈のセグメント化を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記解剖学的モデルは、前記患者の冠動脈のみのモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記境界条件は、前記患者の冠動脈の流入境界条件及び前記患者の冠動脈の流出境界条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記血液循環系モデルは、以下:
【数1】
に示される(a)CR、(b)CRL、及び(c)RCRL集中定数機能ブロックから選択される少なくとも1つの集中定数機能ブロックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記心腔圧容積モデルは時変弾性モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記冠血流モデルは、以下:
【数2】
に示される(a)CRp、(b)CpR、(c)RCRp、(d)CpRp、及び(e)RCpRp集中定数機能ブロックから選択される少なくとも1つの集中定数機能ブロックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記冠血流モデルは、以下:
【数3】
に示される複数の(e)RCpRp集中定数機能ブロックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
入口における冠血流の状態は、少なくとも部分的に以下:
【数4】
に示される血液循環系と冠血流との結合集中定数ブロックモデルに基づいて特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
心臓壁不均一性の流量効果は、可変組織圧力係数を有する多層及びマルチコンパートメントモデルにより記述される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の血行動態パラメータは、アゴニズムの協同プリン作動性受容体-刺激モデルを用いて得られる心臓の変時性、変力性、又は変弛緩性に関連する1つ又は複数の血行動態パラメータを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血流シミュレーションは、一過性ソルバ又は定常状態ソルバを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
血管の流れ及び圧力の降下特性は、定常状態手法により特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数の血行動態パラメータは、血圧、血流、血流量、壁剪断応力(WSS)、振動剪断指数(OSI)、相対滞留時間(RRT)、血流予備量比(FFR)、瞬間的無波比(iFR)、及び冠血流予備量比(CFR)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータを出力することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記出力すること(214、344、414、542)は、前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータを表示デバイスに送信することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記出力すること(214、344、414、542)は、前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータをリモートコンピュータに送信することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも部分的に前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータに基づいて患者固有治療計画を決定すること(116、216、416)を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記患者固有治療計画は、前記患者へのステント配置に最適な患者固有の場所である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ又は複数の特定される血行動態パラメータは、心肺運動負荷試験の一環として使用される、請求項17に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
冠動脈疾患の機能評価の幾つかの計算流体力学(CFD)に基づく技法が開発されている。しかしながら、それらは通常、冠動脈の簡易化された幾何形状に基づいており、一般境界条件が母集団全体データから導出される。これは、そのような技法を、冠動脈狭窄の場合での狭窄の深刻さの評価等の冠動脈疾患の包括的な患者固有評価に適さないものにする。
そのような方法の例は、Chung JH, Lee KE, Nam CW, Doh JH, Kim HI, Kwon SS, Shim EB, Shin ES (2017) Diagnostic Performance of a Novel Method for Fractional Flow Reserve Computed from Noninvasive Computed Tomography Angiography (NOVEL-FLOW Study) The American Journal of Cardiology, 120(3):362-368において開示された。この研究は、計算方法の複雑性の低減を目的とし、結果を提供する平均時間を185分に短縮した。上記文献では、境界条件は、シミュレーション研究から取得された関数を収縮期血圧、拡張期血圧、及び心拍数等の実験データにフィッティングすることから導出された推定血圧波形を使用して計算された。文献は、収縮期血圧、拡張期血圧、及び心拍数のパラメータが非侵襲的に取得されるか否かを明確には開示していない。冠動脈の3Dモデルは、冠コンピュータ断層血管造影(CCTA)を介して非侵襲的に取得された。方法は、既知の方法と比較して良好な精度を提供する。CFD計算を実施する方法及び侵襲的研究の例は、Kousera CA, Nijjer S, Torii R, Petraco R, Sen S, Foin N, Hughes AD, Francis DP, Xu XY, Davies JE (2014) Patient-specific coronary stenoses can be modeled using a combination of OCT and flow velocities to accurately predict hyperemic pressure gradients IEEE Transactions on Bio-medical Engineering, 61(6):1902-1913において開示された。この研究は、光コヒーレントトモグラフィ(OCT)である高精度再構築法の結果を血管造影並びに患者固有の圧力及び速度波形と組み合わせた患者固有の数値研究を提供することを目的とした。血管造影、OCT、及び圧測定は、カテーテルを使用して行われ、したがって、侵襲的に行われた。この研究の著者は、侵襲的測定及び手動でのデータ操作の必要性、すなわち、上記方法は自動化されないことに起因するこの訃報の制限を認識した。しかしながら、この文献は、測定の非侵襲的方法の使用を示唆していない。取得されたシミュレーションは、実験データとの良好な相関を有した。
【国際調査報告】