(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20220304BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H02K1/14 A
H02K3/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541258
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020051188
(87)【国際公開番号】W WO2020148449
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】102019101270.8
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515056277
【氏名又は名称】ゲーカーエン シンター メタルズ エンジニアリング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,ホン ザン
(72)【発明者】
【氏名】ティラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,モーリス
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE03
5H601EE27
5H601EE35
5H601GA02
5H601GA12
5H601GB02
5H601GB12
5H601GB22
5H601GB33
5H603AA01
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB12
5H603BB19
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD14
(57)【要約】
回転軸(3)を有するロータ(2)と、上記ロータ(2)を取り囲み、上記回転軸(3)に平行な軸方向(5)に沿って延び、かつ反対の上記軸方向(5)を向く第一端面(6)及び第二端面(7)を有する環状のステータ(4)とを少なくとも備える電動モータ(1)であって、上記ステータ(4)が、上記ステータ(4)の上記端面(6、7)の間に延びる環状の周面(10)から内側の半径方向(11)に上記ロータ(2)に向かって延び、かつ上記回転軸(3)について相互に対向する正確に2つのステータ歯(8,9)と、上記周面(10)に沿って上記ステータ歯(8,9)の間に延びる第一ステータスロット(12)及び上記回転軸(3)について上記第一スロットに対向する第二ステータスロット(13)とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(3)を有するロータ(2)と、上記ロータ(2)を取り囲み、上記回転軸(3)に平行な軸方向(5)に沿って延び、かつ反対の軸方向(5)に向く第一端部側(6)及び第二端部側(7)をそれぞれ有する環状のステータ(4)とを少なくとも備える電動モータ(1)であって、
上記ステータ(4)が正確に2つのステータ歯(8,9)を有し、上記ステータ歯(8,9)は上記端部側(6、7)の間に延びる上記ステータ(4)の環状の周面(10)を起点として、半径方向(11)に沿って上記ロータ(2)に向かって内側に延び、かつ上記回転軸(3)について相互に対置され、
第一ステータスロット(12)及び上記回転軸(3)について対置される第二ステータスロット(13)が、上記周面(10)に沿って上記ステータ歯(8,9)の間に延び、
少なくとも1つの第一巻線(14)が上記第一ステータスロット(12)内に配置され、少なくとも1つの第二巻線(15)が上記第二ステータスロット(13)内に配置され、
各巻線(14,15)が、上記端部側(6,7)上を越え、かつ上記環状の周面(10)の周囲を上記半径方向(11)における外側及び内側に延びる電動モータ(1)。
【請求項2】
動作中にそれぞれの巻線(14、15)によって生成され得る磁束(30)が、上記ステータスロット(12、13)の領域において反対の周方向(27)に沿って上記周面(10)を通るように向けられ、上記ステータ歯(8,9)の領域において合流し、かつ上記半径方向(11)に沿って上記ステータ歯(8,9)及び上記ロータ(2)を横断して導かれ得るように、上記第一巻線(14)及び上記第二巻線(15)が相互に関連して相互に電気的に接続されて配置される請求項1に記載のモータ(1)。
【請求項3】
上記少なくとも1つの第一巻線(14)及び上記少なくとも1つの第二巻線(15)が、相互に並列に接続される請求項2に記載のモータ(1)。
【請求項4】
上記少なくとも1つの第一巻線(14)及び上記少なくとも1つの第二巻線(15)が、相互に直列に接続される請求項2に記載のモータ(1)。
【請求項5】
複数の巻線(14,15)が各ステータスロット(12、13)内に配置され、
1つのステータスロット(12、13)の少なくとも上記巻線(14,15)が相互に並列又は直列に接続される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項6】
少なくとも1つのステータ歯(8、9)が、上記環状の周面(10)を起点として、半径方向(11)に沿って上記ロータ(2)に向かって内側に上記ステータ歯(8、9)の内周面(20)まで延び、かつ周方向(27)に対するテーパ部(34)をこの延び幅(33)に沿って有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項7】
上記ロータ(2)の外周面(19)と上記ステータ歯(8、9)の内周面(20)との間の最短距離(18)が、5ミリメートルから20ミリメートルの間である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項8】
上記ステータ歯(8、9)の少なくとも1つが、上記軸方向(5)に沿って上記少なくとも1つの端部側(6,7)を越えて延び、かつ突出部(40)を形成する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項9】
上記ロータ(2)が、上記軸方向(5)に沿って上記ロータ(2)と上記ステータ(4)との間に形成される中間スペース(24)を通って、流体(23)を移送するための構造(22)を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモータ(1)。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のモータ(1)と、少なくとも1つの電圧源(26)とを少なくとも備え、上記第一巻線(14)及び上記第二巻線(15)が、電流(16)がそれらを反対方向に流れ得るように、相互に関連して配置され、かつ接続される装置(25)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、1つのステータ及び1つのロータを備える電動モータに関する。特に、上記電動モータはラジアルフラックスモータ(radial flux motor(RFM))である。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第2072824号明細書は、ガス状又は液体状の媒体を移送するための電動モータを開示している。ステータは、ステータスロットの間に配置された少なくとも2つのステータ歯を有する。コイルはステータスロット内に配置されている。ステータスロットは、少なくとも部分的に、媒体の流通開口としても寄与する。
【0003】
上記ステータスロットを通って媒体を誘導するときに、多数の開口及び不均一な表面が理由でこの媒体の渦が発生し得る。対応策として、モータの空気間隙を大きく設計し、この空気間隙を流通開口としてのみ使用することが可能である。この場合、追加の成形が、表面の均一性の保持に有用となり得る。
【0004】
しかしながら、大きな空気間隙を有する電気機械は、大きな漂遊磁束が発生する問題に直面する。既知のラジアルフラックスモータでは、上記漂遊磁束を低減する目的で、複雑で分散した巻線が配される。この方法は、特に搭載スペースの小さい機械ではコストが大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、先行技術に関して概説された問題を少なくとも軽減し又はさらには解決することにある。特に、コンパクトな構成で可能な限り大きい中間スペース、すなわち特に媒体が流れ得る可能な限り大きい断面も有する電動モータを具体化することを、先ず意図している。同時に、可能な限り効率的に、モータの電気的作動を確実にすることを意図している。特に、漂遊磁束が低く維持され、可能な限り単純な巻線が実現される。
【0006】
請求項1の特徴に係る電動モータは、これらの目的を達成するために提示される。従属項は有利な展開に関するものである。請求項で個々に列記された特徴は、技術的に実現可能ないかなる様式でも相互に組み合わせることができ、明細書での記載事項及び図面からの詳細によって補完され得、これらに本発明のさらなる変更実施形態が示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転軸を有するロータと、上記ロータを取り囲む環状のステータとを少なくとも備える電動モータを提示する。上記ステータは、上記回転軸に平行な軸方向に沿って延び、反対の軸方向に向く第一端部側及び第二端部側(つまり、第一軸方向に向く第一端部側及び第二軸方向に向く第二端部側)をそれぞれ有する。上記ステータは正確に又は2つのステータ歯のみを有し、上記ステータ歯は、上記端部側の間に延びる上記ステータの環状の周面を起点として、半径方向に沿って上記ロータに向かって内側に延び、かつ上記回転軸について相互に対置される(つまり、周方向において180の角度を介する相互の関係で相対位置)。第一ステータスロット及び上記回転軸について対置される第二ステータスロットが、上記周面に沿って上記ステータ歯の間に延びる。少なくとも1つの第一巻線(又は複数の第一巻線)が上記第一ステータスロット内に配置され、少なくとも1つの第二巻線(又は複数の第二巻線)が上記第二ステータスロット内に配置され、各巻線が、上記端部側上を越え、かつ上記環状の周面の周囲を上記半径方向における外側及び内側に延びる。
【0008】
特に、少なくとも1つの第一巻線が第一ステータスロット内にのみ配置され、かつ少なくとも1つの第二巻線が第二ステータスロット内にのみ配置される。
【0009】
当該電動モータの上記ステータは、特に、例えば「軟磁性複合材」(Soft Magnetic Composite(SMC))として知られる軟磁性材料、又は電気板とSMCとの組み合わせ等を有する。ここで、SMC材料は焼結されない。その代わりに、温度は融点よりも低く制御されるが、上記コアがその形状を永久に保つために十分な温度とする。
【0010】
上記ステータは、実質的に環状の本体(以下、周面とも呼ぶ)を有しており、この本体を起点として、2つのステータ歯は上記半径方向に内側に延びる。
【0011】
上記ロータは、1つ又は複数の永久磁石及び/又は軟磁性要素を有し得る。永久磁石は、好ましくは、永久励起同期モータ又はBDLCと略記されるブラシレスDCモータ(brushless DC motor)を形成するために使用され得る。一方で、例えば、リラクタンスモータを当該電動モータとして製造するために軟磁性要素が使用され得る。
【0012】
特にSMCを使用するステータの設計や、さらなる詳細同様に、ロータに関しても、例えば国際公開第2016/066714号において参照され得る。このため、その文献で与えられる説明は、上記ステータを理解し記載するためにも使用され得る。
【0013】
当該電動モータは、特に、(定格出力で)20,000ワット未満、好ましくは1000ワット未満、特に好ましくは100ワット未満の消費電力(つまり最大駆動力)を有する。
【0014】
特に、ここでは、上記巻線が上記ステータ歯の周りではなく、上記環状の周面又は環状の本体の周りに延びることを提示する。特に、上記巻線は上記周方向に沿って相互に隣接して配置され、上記巻方向が実質的に上記軸方向及び上記半径方向に沿って通る。少なくとも上記巻線が直列に接続されると、上記巻線もまた上記周方向において形状要素(profile component)を有する。
【0015】
特に、上記第一巻線及び上記第二巻線は、電流がそれらを反対方向に流れ得るように相互に関連して(又は相互に接続して)配置されている。
【0016】
この好ましい上記巻線の配置によって、上記環状の周面に沿って、すなわち上記周方向に沿って、かつ上記半径方向に沿って、磁束が上記ステータ歯を通過するように導かれる。
【0017】
特に、(当該電動モータの)動作中にそれぞれの巻線によって生成され得る磁束が、上記ステータスロットの領域において反対の周方向に沿って上記周面を通るように向けられ、上記ステータ歯の領域において合流し、かつ上記半径方向に沿って上記ステータ歯及び上記ロータを横断して導かれ得るように、第一巻線及び第二巻線が相互に関連して相互に電気的に接続されて配置される。
【0018】
特に、当該電動モータは単相交流で作動する。
【0019】
第1実施形態では、上記少なくとも1つの第一巻線及び上記少なくとも1つの第二巻線が、相互に(電気的に)並列に接続される。
【0020】
特に、上記第一巻線及び上記第二巻線は、相互に独立した巻線である。
【0021】
第2実施形態では、上記少なくとも1つの第1巻線及び上記少なくとも1つの第二巻線は、相互に(電気的に)直列に接続される。上記第1巻線及び上記第二巻線は、好ましくは連続した巻線によって形成される(つまり、相互に1つの部品に設計される)。
【0022】
特に、複数の巻線が各ステータスロット内に配置され、1つのステータスロットの少なくとも上記巻線(つまり、第1ステータスロット内の第1巻線又は第二ステータスロット内の第二巻線)が相互に並列又は直列に接続される。
【0023】
特に、1つのステータスロットの上記第1又は上記第二巻線の一部のみが、相互に並列に又は直列に接続され、一方、上記ステータスロットの他の第1又は上記第二巻線は異なる様式で接続されることも可能である。上記第1ステータスロット内及び上記第二ステータスロット内で、相互に異なる巻線を接続することも可能である。
【0024】
特に、上記2つのステータスロット内において同数の巻線が配置される。
【0025】
1つの巻線は、特に、少なくとも上記軸方向に沿って上記周面に沿って、さらに上記半径方向に沿って上記環状のステータの上記端部側を越えて延び、それにより上記端部側を越えて上記半径方向に上記周面の周囲を外側と内側とで延びる。個々の巻線は、上記周方向に沿って相互に隣接して配置される。
【0026】
上記2つのステータ歯によって相互に分離されたステータスロットにおいて電流が反対方向に流れる上記巻線の配置によって、磁束は上記周方向に沿って上記本体を通ってかつ上記巻線を通って上記ステータ歯に向けて導かれる。上記ステータ歯では、上記磁束(又は力線)が反対側のステータスロットの巻線から出て、上記半径方向に沿って上記ステータ歯を通って上記ロータに向かって、さらに上記ロータを横断して他のステータ歯に向けて導かれる。当該他のステータ歯では、磁束は上記本体に導かれ、そこで上記巻線を通ってさらに上記周方向で上記本体を通って受け渡される。このため、各巻線の、又はそれぞれのステータスロット内で少なくとも1つの巻線を形成する電気電導体の、異なる分極した端部は、相互に最大に離間し、これにより、漂遊領域は可能な限り小さい。ステータスロットの上記電気電導体の一方の端部は、特に1つのステータ歯の直近に配置され、上記電気電導体の他方の端部は他のステータ歯の直近に配置される。
【0027】
特に、電動モータのこの実施形態では、漂遊領域を小さく保持することができ、上記ステータ歯と上記ロータとの間の空気間隙を特に大きく設計することができる。したがって、上記ロータの直径を小さく設計することができ、これにより当該電動モータ内で大きな流通断面を実現することができる。
【0028】
特に、上記ロータは(上記周方向において)少なくとも1つの(永久)磁石、又は(1つの永久磁石上で形成される)上記半径方向に磁化された少なくとも2つの磁極を有する。上記ロータは、特に2つの極、すなわちN極及びS極を有する。上記極は、特に上記周方向に沿って180度の角度を介する相互の関係において相対位置で配置され、反対の半径方向に向く。
【0029】
特に、上記ロータは2つの極を有し、半径方向に磁化される。特に、磁力線が各極の領域において上記半径方向に沿って走る。すなわち、特に、1つの極の(すべての)磁力線が、各場合で上記ロータの外周面に対して垂直に(又は実質的に垂直に)走る。
【0030】
特に、上記ロータは環状の形状であり、このため上記ロータを通って上記軸方向に沿って延びるシャフトに配置され得る。上記極は、特にリング部分を構成する。
【0031】
特に、上記ロータは上記極間に境界を有する。この境界は、上記軸方向に沿ってかつ上記半径方向に沿って延び、これにより上記ロータを特に半分に分割する平面を走る。
【0032】
このことは、上記ロータの極の磁力線が上記ステータ歯によって短絡されるように、上記ロータが当該電動モータの非作動状態(つまり、巻線が通電されない状態)において上記2つのステータ歯に対して方向づけされるという効果を有し得る。この場合、特に、上記ロータの境界が上記半径方向における上記2つのステータ歯の範囲と整列して配置されるように、上記ロータは方向づけされる。
【0033】
しかしながら、この方向づけにおいて、上記ステータの通電状態、つまり当該電動モータの作動中にトルクの最大値が現れる。この結果、単相交流での作動であっても、当該電動モータの非常に良好な開始時の挙動が実現できる。
【0034】
特に、上記ロータの外周面と上記ステータ歯の内周面との間の最小距離は、少なくとも5ミリメートル、特に少なくとも10ミリメートル、好ましくは5ミリメートルから20ミリメートル、特に好ましくは10から15ミリメートルである。
【0035】
特に、少なくとも1つの上記ステータ歯は、好ましくは両方が、特に好ましくは両方が同様に、上記端部側の間に延びる上記ステータの環状の周面を起点として、半径方向に沿って上記ロータに向かって内側に上記ステータ歯の内周面まで延びる。この延び幅に沿って、上記ステータ歯は、周方向に対するテーパ部を特に有する。すなわち、上記周方向に延びる上記ステータ歯の幅は、上記ステータの周面の又は上記本体の周面と、上記ステータ歯の内周面との間で最小となり、この本体の周面は半径方向において内側に向く。
【0036】
特に、上記少なくとも1つのステータ歯の内周面は、上記ステータの周面と上記テーパ部との間の領域よりも、上記周方向に沿って幅広く設計される。
【0037】
上記ステータ歯は、上記半径方向に沿って、上記ステータの上記周面又は上記本体(又は突出部)を起点として、上記テーパ部に向かう第1部分にかけて、及び上記テーパ部を起点として、上記内周面に向かう第二部分にかけて延びる。
【0038】
特に、上記周方向に沿って延びる上記ステータ歯の最大幅は、上記第1部分の領域において上記テーパ部の幅よりも最大50%大きい。特に、上記最大幅は、上記テーパ部の幅の100%超150%以下、好ましくは120%以上150%以下である。特に、上記最大幅は、上記周面又は上記環状の本体と上記ステータ歯との間の移行部に配置される。
【0039】
特に、上記第二部分は第二角度範囲にわたって延びる。この第二角度範囲は、上記周方向において上記第一部分の最大の第一角度範囲を、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも100%、さらに少なくとも150%上回る。上記第一及び第二角度範囲は、各々、特に当該モータの回転軸を起点として決定される。
【0040】
特に、上記第一角度範囲は、多くとも40度の角度にわたって、好ましくは多くとも25度の角度にわたって延びる。
【0041】
特に、上記第二角度範囲は、少なくとも50度の角度にわたって、好ましくは少なくとも75度の角度にわたって、特に好ましくは少なくとも80度の角度にわたって延びる。
【0042】
特に、上記第二角度範囲は、多くとも120度の角度にわたって、好ましくは多くとも100度の角度にわたって延びる。
【0043】
上記第一部分はテーパ部まで、上記ステータの又は上記本体の周面を起点として、上記半径方向に沿って、特に上記少なくとも1つの巻線を越えて内側に延びる。
【0044】
上記第一部分は、特に、上記半径方向に沿って上記ステータ歯の上記延び幅の少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも75%を構成する。特に、上記第二部分は、上記延び幅の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%を構成する。
【0045】
特に、上記ロータの外周面と少なくとも1つのステータ歯の内周面との間の最小距離は、上記半径方向に沿って第一部分の延び幅の50%超、特に75%超、好ましくは80%超えである。特に、上記最小距離は、上記半径方向に沿って上記第一部分の延び幅の多くとも150%、好ましくは多くとも120%、特に好ましくは多くとも100%である。
【0046】
特に、上記ロータの外周面と少なくとも1つのステータ歯の内周面との間の最小距離は、上記半径方向に沿って上記ステータの(又は上記本体の)周面の最大外径の5%超、特に15%超、好ましくは20%超えである。
【0047】
特に、上記ロータの外周面と少なくとも1つのステータ歯の内周面との間の最小距離は、上記半径方向に沿って上記ステータの(又は上記本体の)周面の最大外径の30%未満、特に25%未満である。
【0048】
特に、上記ステータスロットの少なくとも1つは、好ましくは両方が、特に好ましくは両方が同様に、少なくとも120度の角度の、好ましくは少なくとも150度の角度の、かつ好ましくは180度の角度未満の上記周方向に沿って、第三角度範囲にわたって延びる。上記第三角度範囲は、特に当該モータの回転軸を起点として画定される。
【0049】
特に、上記ステータの周面の周囲に延び、かつ1つのステータスロットのみに配置される上記少なくとも1つの巻線は、この第三角度範囲の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも90%の割合にわたって延びる。
【0050】
特に、上記ステータ歯の少なくとも1つは、好ましくは両方が、特に好ましくは両方が同様に、上記軸方向に沿って上記少なくとも1つの端部側(好ましくは両方の端部側)を越えて延び、突出部を形成する。この突出部は、上記ステータの上記少なくとも1つの端部側、又は上記周面又は上記本体に対して、特に上記半径方向に沿って少なくとも1つのステータ歯の全延び幅にわたって延びる。このため、特に、一定の電流について、上記少なくとも1つのステータ歯の内周面の領域における磁束密度が減少し得、磁気抵抗が低減され得るように、上記少なくとも1つのステータ歯の上記ロータの反対側に位置される内周面は、サイズが増大し得る。
【0051】
この突起部は、特に上記ステータが積み重ねた金属板ではなくSMC材料から製造される場合に、簡易に実現することが可能である。
【0052】
この突起部は、上記軸方向に沿って、特に上記端部側の領域においていわゆる端部巻線を形成する上記巻線まで延びる。このため、当該電動モータの良好な特性を、例えば上記磁気抵抗に関して実現することができるが、当該電動モータの物理的な大きさは上記突起部によって増大しない。
【0053】
特に、上記ロータの軸受は、上記軸方向に沿って上記ステータの外側に配置される。特に、上記ロータは、上記ステータの範囲を越えて、つまり少なくとも端部側を越えて、上記軸方向に沿って延びる。特に、上記ロータは(少なくとも上記半径方向について、場合によっては追加で上記軸方向について)少なくとも1つの転がり軸受によって搭載される。上記ロータは、好ましくは上記ステータの両方の端部側に(半径方向について)搭載される。
【0054】
特に、上記ロータは、上記軸方向に沿って上記ロータと上記ステータとの間に形成される中間スペースを通って、流体を移送するための構造を有する。当該モータの作動中、上記構造は、特に上記軸方向に上記流体を移動させ、その結果、上記中間スペースを通過する流体フローが生成され得る。
【0055】
上記半径方向における上記中間スペースの外側又は上記ステータの外側にある一部の上記巻線の配置の結果、当該モータの又は上記中間スペースの通過流の断面が、可能な限り大きく構成され得る。また、上記通過流の断面は、2つのステータ歯のみを有する当該モータの設計によって最大化され得る。
【0056】
本発明はさらに、上述のモータと、少なくとも1つの電圧源とを少なくとも備える装置を提示する。上記少なくとも1つの上記第一巻線及び上記第二巻線は、電流がそれらを反対方向に流れ得るように、相互に関連して配置され、かつ(電気的に)相互に接続される。
【0057】
特に、当該電動モータの動作中にそれぞれの巻線によって生成され得る磁束が、上記ステータスロットの領域において反対の周方向に沿って上記周面を通るように向けられ、上記ステータ歯の領域において合流し、かつ上記半径方向に沿って上記ステータ歯及び上記ロータを横断して導かれ得るように、上記第一巻線及び上記第二巻線が相互に関連して相互に電気的に接続されて配置される。
【0058】
当該モータに関する記載は、特に同様に、上記装置に適用され、逆の場合も同様である。
【0059】
留意事項として、本明細書において使用される数値用語(「第一」、「第二」、「第三」等)は、主に(専ら)いくつかの類似する対象、寸法又は工程の間を区別するために機能すること、つまり特に、対象、寸法又は工程の従属関係及び/又は順序を不可避的に予め定義しないことが指摘される。従属関係及び/又は順序が必要な場合は、その旨が本明細書に明示的に記載されるか、又は具体的に記述された実施形態を検討することから当業者にとって自明となるように明らかとなる。
【0060】
本発明及び技術分野を、図面に基づいてより詳細に以下に記載する。本発明は開示された例示的な実施形態によって限定されることを意図していないことが指摘される。特に、明示的に示されない限り、図面で議論された重要事項の部分的な側面を抽出し、本明細書及び/又は図面からの知見並びに他の構成要素と組み合わせることも可能である。同一の対象を示すために、同一の参照符号が使用される。これにより、適宜、他の図面からの説明を補足的に考慮に入れることが可能となる。図面では、各場合で模式的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】電動モータを備える装置の部分断面斜視図を示す。
【
図2】回転軸に沿って
図1に係る装置の電動モータを示す。
【
図3】回転軸に沿って
図2に係る電動モータを磁束の進路とともに示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、電動モータ1を備える装置25の部分断面斜視図を示す。
図2は、回転軸3に沿って
図1に係る装置25の電動モータ1を示す。
図3は、回転軸3に沿って
図2に係る電動モータ1を磁束30の進路とともに示す。
図4は、
図2及び
図3に係る電動モータ1の斜視図を示す。
図1から4は以下の本文内で合わせて説明される。
【0063】
電動モータ1は、回転軸3を有するロータ2と、ロータ2を取り囲みロータ2と同軸状に配置される環状のステータ4とを備える。ステータ4は、回転軸3に平行な軸方向5に沿って延び、反対の軸方向5に向く第一端部側6及び第二端部側7をそれぞれ有する。ステータ4は正確に2つのステータ歯8、9を有し、これらのステータ歯8、9は、端部側5、6の間に延びるステータ4の環状の周面10を起点として、半径方向11に沿って内側にロータ2に向かって延び、回転軸3について相互に対置される(つまり、周方向27において180の角度を介する相互の関係で相対位置)。第一ステータスロット12及び回転軸3について対置される第二ステータスロット13は、周面10に沿って第一ステータ歯8と第二ステータ歯9との間に延びる。複数の第一巻線14は第一ステータスロット12内に配置され、複数の第二巻線15は第二ステータスロット13内に配置され、各巻線14が、端部側6、7上を越え、かつ環状の周面10の周囲を半径方向11における外側及び内側に延びる。
図1から
図3では、半径方向11に沿って端部側6、7に沿って延びる巻線14、15の各々の部分は切り取られ、図示されていない。完全な巻線14、15は
図4にのみ図示されている。
【0064】
巻線14、15はステータ歯8、9の周囲ではなく、環状の周面10のみの周囲に延びる。個々の巻線14、15は、周方向27に沿って相互に隣接して配置される。
【0065】
電動モータ1の動作中にそれぞれの巻線14、15によって生成され得る磁束30が、ステータスロット12、13の領域において反対の周方向27に沿って周面10(ステータ4の本体)を通るように向けられ、ステータ歯8、9の領域において合流し、かつ半径方向11に沿ってステータ歯8、9及びロータ2を横断して導かれ得るように、第一巻線14及び第二巻線14、15が相互に関連して相互に電気的に接続されて配置される。
【0066】
本明細書では、第一巻線14及び第二巻線15は相互に並列に接続される。第一巻線14及び第二巻線15は、相互に独立した巻線14、15である。
【0067】
複数の巻線14、15は、各ステータスロット12、13内に配置され、ステータスロット12、13の巻線14、15(つまり、第一ステータスロット12の第一巻線14又は第二ステータスロット13の第二巻線15)が相互に直列に接続される(
図1を参照)。このため、ここでは、第一巻線14は相互に直接に接続される。また、第二巻線15は相互に直接に接続される。第一巻線14及び第二巻線15は相互に並列に接続される。
【0068】
ここでは、同数の巻線14、15が2つのステータスロット12、13内に配置されている。
【0069】
1つの巻線14、15は、少なくとも軸方向5に沿って周面10に沿って(つまり、周面10の外側と内側に)、さらに半径方向11に沿って環状のステータ4の端部側6、7を越えて延び、それにより端部側6、7を越えて周面10の周囲を外側及び内側に半径方向11に延びる。
【0070】
2つのステータ歯8、9によって相互に分離されたステータスロット12、13において電流16が反対方向に流れる巻線14、15の配置によって、磁力線(又は磁束30)は周方向27に沿ってステータ4の本体を通ってかつ巻線14、15を通ってステータ歯8、9に向けて導かれる。第一ステータ歯8において、磁力線(磁束30)は対向するステータスロット12、13の巻線14、15から出て、半径方向11に沿って上ステータ歯8を通ってロータ2に向かって、さらにロータ2を横断して第二ステータ歯9に向けて導かれる。第二ステータ歯において、磁力線(磁束30)はステータ4の本体に向けて導かれ、そこで巻線14、15を通ってさらに周方向27においてステータ4の本体を通って受け渡される。各巻線14、15の、又はそれぞれのステータスロット12、13内で少なくとも1つの巻線14、15を形成する電気電導体の、異なる分極した端部は、相互に最大に離間し、これにより、漂遊領域は可能な限り小さい。ステータスロットの上記電気電導体の一方の端部は、特に1つのステータ歯8、9の直近に配置され、他方の端部は他のステータ歯9、8の直近に配置される(
図1を参照)。
【0071】
電動モータ1のこの実施形態において、漂遊領域を小さく保持でき、ステータ歯8、9とロータ2との間の空気間隙18を特に大きく設計できる。したがって、ロータ2の直径を小さく設計でき、これにより電動モータ1の中間スペース24を大きな通過流の断面とすることができる。
【0072】
ステータ歯8、9は、端部側6、7の間に延びるステータ4の環状の周面10を起点として、半径方向11に沿ってロータ2に向かって内側にステータ歯8、9の内周面20まで延びる。この延び幅33に沿って、ステータ歯8、9は、周方向27に対するテーパ部34を有する。すなわち、周方向27に延びるステータ歯8、9の幅は、半径方向11に沿って内側に向くステータ4の周面10とステータ歯8、9の内周面20との間で最小である。
【0073】
ステータ歯8、9の内周面20は、ステータ4の周面10とテーパ部34との間のステータ歯8、9の領域よりも、周方向27に沿って幅広く設計されている。
【0074】
ステータ歯8、9は、半径方向11に沿って、ステータ4の周面10を起点としてテーパ部34に向かう第一部分35にかけて、かつテーパ部34を起点として内周面20に向かう第二部分36にかけて延びる。
【0075】
第二部分36は、約90度の角度の第二角度範囲38にわたって周方向27に延びる。第二角度範囲38は、第一部分35の約30度の角度の最大の第一角度範囲37を約200%上回る。角度範囲37、38は、モータ1の回転軸3を起点として決定される。
【0076】
第一部分35は、テーパ部34まで、ステータ4の周面10を起点として、半径方向11に沿って巻線14、15を越えて内側に延びる。
【0077】
第一部分35は、半径方向11に沿ってステータ歯8、9の延び幅33の約75%を構成する。
【0078】
2つのステータスロット12、13は、各々、周方向27に沿って約150度の角度の第三角度範囲39にわたって延びる。
【0079】
ステータ4の周面10の周囲に延び、1つのステータスロット12、13のみに配置される少なくとも1つの巻線14、15は、この第三角度範囲39の約97%の割合にわたって延びる。
【0080】
ロータ2は(周方向27に沿って相互に隣接して)永久磁石の2つの極17を有する。2つの極17は、それぞれ半径方向11に磁化されている(
図2参照)。極17は、周方向27に沿って180度の角度を介する相互の関係において相対位置で配置され、反対の半径方向11を向く。極17は、ここでステータ歯8、9の延び幅33を横断して延びる境界によって相互に分離される(
図2の破線)。
【0081】
ロータ2の外周面19とステータ歯8、9の内周面20との間の最小距離18は、少なくとも5ミリメートルである。
【0082】
図1及び
図4に示す通り、ステータ歯8、9は、軸方向5に沿って2つの端部側6、7を越えて延び、それにより各端部側6、7に突出部40を形成する。この突出部40は、半径方向11に沿ってそれぞれのステータ歯8、9の全延び幅33にわたって延びる。このため、ロータ2に反対向きに位置されるそれぞれのステータ歯8、9の内周面20は、サイズが増大し得、その結果、与えられた電流のもとで、ステータ歯8、9の内周面20の領域における磁束密度が減少し得、磁気抵抗が低減され得る。
【0083】
ロータ2の軸受21は、軸方向5に沿ってステータ4の外側に配置される。(特に磁石の極17ではない)ロータ2は、ステータ4の範囲を越えて、つまり少なくとも端部側6、7、ここでは第一端部側6を越えて、軸方向5に沿って延びる。極17は、ステータ4の範囲を越えて延びる可能性もあり得、その結果トルクが増大し得る。
【0084】
ロータ2は、軸方向5に沿ってロータ2とステータ4との間に形成される中間スペース24を通って、流体23を移送するための構造22を有する。モータ1の作動中、構造23は、軸方向5に流体23を移動させ、その結果、中間スペース24を通過する流体フローが生成され得る。
【0085】
図1に示す装置25は、モータ1と、電圧源26とを備える。電圧源26は、特に正弦波電源(かつDC電源ではない)、スイッチ可能な電圧源又はエレクトロニクスシステムである。複数の第一巻線14及び複数の第二巻線15は、相互に関連して配置され、電流16がそれらを反対方向に流れ得るように、接続され、その結果、磁束30は、磁石の極17を起点として、半径方向11においてステータ歯8、9を横断し、ステータ4の周面10に向かい、周方向27に沿ってステータ4の周面10を通るように導かれる。
【0086】
図5はグラフを示す。電動モータ1の1分あたりの回転数での回転速度29が、水平軸にプロットされている。電動モータ1によって生成され得るトルク28は、垂直軸にニュートンメートルでプロットされている。第一プロファイル31は、他の構成による電動モータ1のトルク28を示す。第二プロファイル32は、ここで記載した電動モータ1の達成可能なトルク28を示し、この達成可能なトルクはほとんどすべての動作点でより高い値である。
【符号の説明】
【0087】
1 モータ
2 ロータ
3 回転軸
4 ステータ
5 軸方向
6 第一端部側
7 第二端部側
8 第一ステータ歯
9 第二ステータ歯
10 周面
11 半径方向
12 第一ステータスロット
13 第二ステータスロット
14 第一巻線
15 第二巻線
16 電流[アンペア]、つまり[A]
17 極
18 距離
19 外周面
20 内周面
21 軸受
22 構造
23 流体
24 中間スペース
25 装置
26 電圧源
27 周方向
28 トルク[ニュートンメートル]、つまり[Nm]
29 回転速度は[1分あたりの回転数]、つまり[rpm]
30 磁束[テスラ平方メートル]、つまり[T*m2]
31 第一プロファイル
32 第二プロファイル
33 延び幅
34 テーパ部
35 第一部分
36 第二部分
37 第一角度範囲
38 第二角度範囲
39 第三角度範囲
40 突出部
【国際調査報告】