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特表2022-518035失禁トレーニングのためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】失禁トレーニングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/37 20060101AFI20220304BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220304BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20220304BHJP
   A61M 25/04 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61F5/37 A
A61M25/10
A61M1/00
A61M25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542314
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020014820
(87)【国際公開番号】W WO2020154521
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】62/795,719
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148204
【氏名又は名称】ザ メディカル カレッジ オブ ウィスコンシン インク
【氏名又は名称原語表記】THE MEDICAL COLLEGE OF WISCONSIN, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】508230226
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】シェイカー レーザ
(72)【発明者】
【氏名】シェイカー アニサ
【テーマコード(参考)】
4C077
4C098
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA19
4C077AA30
4C077DD09
4C077DD26
4C077JJ13
4C098AA09
4C098CC31
4C098CE11
4C267AA08
4C267AA09
4C267AA10
4C267BB62
4C267CC24
4C267CC25
4C267CC26
(57)【要約】
失禁を軽減するための医療装置は、対象における筋肉組織によって囲まれた内部領域に配置されるよう寸法決めることができる。医療装置は、流体を収容する内部空間を有する第1のバルーンを含むことができる。第1の流体導管の近位端は第1のバルーンのアウトレットに結合できる。医療装置はまた、第1の流体導管の遠位端に結合する圧力検知装置を含むことができる。圧力検知装置は第2のバルーンを含むことができる。第2のバルーンもまた、第1のバルーンの内部空間と流体連通することができる。筋肉組織の収縮によって第1のバルーンを圧縮することができ、これにより第1のバルーンの内部空間内の流体の一部を動かすことができる。流体の一部は第2のバルーンに向かって移動して第2のバルーンの内部体積を増大させ、これにより筋肉組織の収縮力が示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における筋肉組織によって囲まれた内部領域に配置されるよう寸法決めされた、失禁を軽減するための医療装置であって、
第1の端部及び第2の端部を有する第1のバルーンと、
近位端及び遠位端を有する第1の流体導管と、
前記第1の流体導管の前記遠位端に結合する圧力検知装置と、を備え、
前記第1のバルーンは、流体を収容する内部空間を画定する内面と、外面と、を画定し、
前記第1のバルーンは、前記第1のバルーンの前記第1の端部に配置されるアウトレットを有し、
前記アウトレットは、前記第1のバルーンの前記内部空間と流体連通しており、
前記近位端は、前記第1のバルーンの前記アウトレットと結合しており、
前記流体導管は、前記第1のバルーンの前記アウトレット及び前記内部空間と流体連通しており、
前記圧力検知装置は第2のバルーンを含み、
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンの前記内部空間と流体連通しており、
前記筋肉組織の収縮によって前記第1のバルーンが圧縮されることによって、前記第1のバルーンの前記内部空間内の前記流体の一部が動かされ、
前記流体の一部が前記第2のバルーンに向かって移動して前記第2のバルーンの内部体積を増大させることで、前記筋肉組織の収縮力が示される、医療装置。
【請求項2】
前記内部領域は、括約筋横断領域を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記内部領域は、膣腔を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記第1のバルーンの前記内部空間と、前記流体を供給する流体源と、に流体連通し、流路を画定する第2の流体導管と、
前記流路内に位置付けられるバルブと、をさらに備え、
前記バルブは、前記流体源からの前記流体が前記第1のバルーンの前記内部空間に流入することを許可し、これにより前記第1のバルーンを膨張させるよう構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記バルブは、前記第1のバルーンの前記内部空間内の前記流体が前記第1のバルーンの前記内部空間から流出することを許可するよう構成されている、請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記バルブは、前記第1のバルーンの前記内部空間内の前記流体を大気中に放出するよう構成されている、請求項5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記第1のバルーンの前記内部空間内の前記流体は、最大流体量を規定する、請求項5に記載の医療装置。
【請求項8】
前記第1のバルーンの前記内部空間内の流体量は、前記最大流体量を超えることはできない、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記第1のバルーンの前記内部空間内の前記最大流体量により、第1の負荷圧力が規定される、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記第1の負荷圧力により、前記筋肉組織が圧縮される、請求項9に記載の医療装置。
【請求項11】
対象における筋肉組織によって囲まれた内部領域に配置されるよう寸法決めされた、失禁を軽減するための医療装置であって、
第1の端部及び第2の端部を有するとともに内部空間を画定する流体エンクロージャであって、インレットを有する流体エンクロージャと、
前記流体エンクロージャの前記インレットに結合し、流路を画定する第1の流体導管と、
前記流路内に位置付けられるバルブと、
前記流路と流体連通する流体源と、
前記流体エンクロージャの前記内部空間と流体連通する圧力センサと、
前記バルブ及び前記圧力センサと通信するコントローラと、を備え、
前記流体エンクロージャは、流体を吐き出す及び受け取ることが可能であり、
前記流路は、前記流体エンクロージャの前記内部空間と流体連通しており、
前記コントローラは、プログラムを実行して、
(i)前記バルブを開いて、前記流体源からの流体を前記流体エンクロージャの前記内部空間に流入させ、これにより前記流体エンクロージャを第1の負荷圧力になるまで膨張させ、
(ii)前記圧力センサが前記第1の負荷圧力を検知すると前記バルブを閉じて、これにより前記流体エンクロージャ内へのさらなる流体の流入を防止し、
(iii)前記圧力センサを用いて、前記流体エンクロージャが圧縮された時に第1の圧縮圧力を検知し、
(iv)前記バルブを開いて、前記流体源からの流体を前記流体エンクロージャの前記内部空間に流入させ、これにより前記流体エンクロージャを第2の負荷圧力になるまで膨張させ、
(v)前記圧力センサが前記第2の負荷圧力を検知すると前記バルブを閉じて、これにより前記流体エンクロージャ内へのさらなる流体の流入を防止し、
(vi)前記圧力センサを用いて、前記流体エンクロージャが圧縮された時に第2の圧縮圧力を検知するよう、構成され、
前記第2の負荷圧力は前記第1の負荷圧力よりも大きい、医療装置。
【請求項12】
失禁を軽減する方法であって、
(a)第1の流体エンクロージャを対象の内部領域内に配置する工程と、
ここで、
前記第1の流体エンクロージャは、第1の内部空間を画定する第1の内面を有し、
前記対象の前記内部領域は、筋肉組織を含み、
前記第1の流体エンクロージャは、前記筋肉組織の収縮力と反対の方向の第1の力をもたらすように寸法決めされており、
(b)前記筋肉組織を収縮させることにより、前記第1の流体エンクロージャを圧縮し、前記第1の流体エンクロージャ内の前記流体の一部を動かす工程と、
(c)前記筋肉組織が強くなり第1の筋力を有するよう、前記(b)の工程を複数回繰り返す工程と、を有する、方法。
【請求項13】
前記複数回が、10回から50回までである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数回は、それぞれ10回から50回までを1日2度である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(d)第2の流体エンクロージャを前記対象の前記内部領域内に配置する工程をさらに有し、
前記第2の流体エンクロージャは、第2の内部空間を画定する第2の内面を有し、
前記第2の流体エンクロージャは、前記筋肉組織の収縮力と反対の方向の第2の力をもたらすように寸法決めされている、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の力は、前記第1の力よりも大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(e)前記筋肉組織を収縮させることにより、前記第2の流体エンクロージャを圧縮し、前記第2の流体エンクロージャ内の前記流体の一部を動かす工程をさらに有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(f)前記筋肉組織が強くなり第2の筋力を有するよう、前記(e)の工程を多数回繰り返す工程をさらに有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の筋力は、前記第1の筋力よりも大きい、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多数回は、30回である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多数回は、それぞれ30回を1日2度である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の流体エンクロージャは第1の剛性を有し、前記第2の流体エンクロージャは第2の剛性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の剛性は、前記第1の剛性よりも大きい、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象の失禁を軽減するためのキットであって、
第1の端部及び第2の端部を有する第1のバルーンと、
第1の端部及び第2の端部を有する第2のバルーンと、
近位端及び遠位端を有する流体導管と、
前記流体導管の前記遠位端に結合されるよう構成された圧力検知装置と、を備え、
前記第1のバルーンは、流体を収容する第1の内部空間を画定する内面と、外面と、を画定し、
前記第1のバルーンは、前記第1のバルーンの前記第1の端部に配置されるアウトレットを有し、
前記アウトレットは、前記第1のバルーンの前記第1の内部空間と流体連通しており、
前記第1のバルーンは、第1の負荷圧力を有し、
前記第2のバルーンは、流体を収容する第2の内部空間を画定する第2の内面と、第2の外面と、を画定し、
前記第2のバルーンは、前記第2のバルーンの前記第1の端部に配置される第2のアウトレットを有し、
前記第2のアウトレットは、前記第2のバルーンの前記第2の内部空間と流体連通しており、
前記第2のバルーンは、第2の負荷圧力を有し、
前記近位端は、前記流体導管が前記第1のバルーンの前記第1の内部空間と流体連通するよう、前記第1のアウトレットに取り外し可能に結合されるよう構成され、
前記近位端は、前記流体導管が前記第2のバルーンの前記第2の内部空間と流体連通するよう、前記第2のアウトレットに取り外し可能に結合されるよう構成されており、
前記第2の負荷圧力は、前記第1の負荷圧力よりも大きい、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年1月23日に出願された米国特許出願第62/795,719号の優先権を主張し、その全体が引用によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
該当せず。
【背景技術】
【0003】
便失禁は、排便を制御(又は抑制)する能力の低下によって定義される包括的な用語又は症状である。場合によっては制御の低下により便が個人の直腸から制御不能に漏れ出す可能性があり、それが重大な社会不安や生活の質の低下を引き起こす可能性がある。便失禁は特に高齢の人(高齢者)に多く見られる傾向があるが、患者は一般に医師に失禁症状を示さないため(症状に対する恥ずかしさなどによる)、この状態の治療は難しい場合がある。これに対応して、失禁の症状に関連するスティグマから医師は失禁の症状について直接尋ねることができないことがよくある。
【0004】
便失禁は、世界中の個人だけでなく米国内のかなりの割合の人々にも影響を及ぼしている。例えば、7200人に対する全国調査では、7人に1人が便失禁の病歴を報告し、3人に1人が前の週に便失禁を経験したと報告している。Stacy B. Menessらによる「便失禁の有病率とそれに関連する要因:人口ベースの調査の結果」(Gastroenterology、vol.154,第6号,1672-1681ページ,2018年5月)参照。便失禁の発生率もまた人口年齢が上がるにつれて増大する。例えば、便失禁の有病率が最も高いのは65歳以上の個人である。さらに、約70,000人を対象とした別の調査では、回答者の14.4%(10,033人)が便失禁の病歴を報告し、回答者の33.3%(約23,224人)は調査の前の週に少なくとも1回の便失禁エピソードを経験していた。さらに、便失禁を経験した個人の3分の1は、調査の1週間前に経験し、日常生活に支障をきたしたと述べている(同文献)。「加齢とそれに伴う下痢及び便秘は、便失禁の可能性の増大と関連していた」(同文献)。上記で説明したように、便失禁は一般的に個人の年齢とともに増大する。例えば、便失禁を経験したことがある確率は、18~24歳の人と比較して、25~45歳の人で29%、45~64歳の人で72%、65歳以上の人で118%増大した(同文献)。
【0005】
便失禁の現在の治療法は非常に限られている。外科的アプローチは存在するが、成功はしていない。したがって、便失禁を減らすための改善されたシステム及び方法を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、失禁を軽減するための医療装置を提供する。医療装置は、対象における筋肉組織によって囲まれた内部領域に配置されるよう寸法決めすることができる。医療装置は、第1の端部、第2の端部、内面及び外面を有する第1のバルーンを含むことができる。内面は、流体を収容する内部空間を画定することができる。第1のバルーンは、第1のバルーンの第1の端部に配置されるアウトレットを有することができ、アウトレットは第1のバルーンの内部空間と流体連通することができる。医療装置はまた、近位端及び遠位端を有する第1の流体導管を含むことができる。近位端は第1のバルーンのアウトレットと結合することができ、流体導管は第1のバルーンのアウトレット及び内部空間と流体連通することができる。医療装置はまた、第1の流体導管の遠位端に結合する圧力検知装置を含むことができる。圧力検知装置は第2のバルーンを含むことができる。第2のバルーンもまた、第1のバルーンの内部空間と流体連通することができる。筋肉組織の収縮によって第1のバルーンを圧縮することができ、これにより第1のバルーンの内部空間内の流体の一部を動かすことができる。流体の一部は第2のバルーンに向かって移動して第2のバルーンの内部体積を増大させ、これにより筋肉組織の収縮力が示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、内部領域は、括約筋横断領域(transsphincteric region)を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、内部領域は膣腔を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、医療装置は、第1のバルーンの内部空間と流体を供給する流体源とに流体連通する、流路を画定する第2の流体導管と、流路内に位置付けられるバルブと、をさらに備え、バルブは、流体源からの流体が第1のバルーンの内部空間内に流入することを許可し、これにより第1のバルーンを膨張させるよう構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、バルブは、第1のバルーンの内部空間内の流体を第1のバルーンの内部空間から流出させることを許可するよう構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、バルブは、第1のバルーンの内部空間内の流体を大気中に放出するよう構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のバルーンの内部空間内の流体により、最大流体量が規定される。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1のバルーンの内部空間内の流体量は、最大流体量を超えることはできない。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1のバルーンの内部空間内の最大流体量により、第1の負荷圧力が規定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の負荷圧力により筋肉組織が圧縮される。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態は、失禁を軽減するための医療装置を提供する。医療装置は、対象における筋肉組織によって囲まれた内部領域に配置されるよう寸法決めすることができる。医療装置は、第1の端部及び第2の端部を有するとともに内部空間を画定する流体エンクロージャを含むことができる。流体エンクロージャは流体を吐き出す及び受け取ることが可能であり、流体エンクロージャはインレットを有することができる。医療装置はまた、流体エンクロージャのインレットに結合する、流路を画定する第1の流体導管を含むことができる。流路は流体エンクロージャの内部空間と流体連通することができる。医療装置はまた、流路内に位置付けられるバルブを含むことができる。医療装置はまた、流路と流体連通する流体源を含むことができる。医療装置はまた、流体エンクロージャの内部空間と流体連通する圧力センサを含むことができる。医療装置はまた、バルブ及び圧力センサと電気通信するコントローラを含むことができ、コントローラは、コントローラ内に格納されたプログラムを実行して、バルブを開いて、流体源からの流体を流体エンクロージャの内部空間に流入させ、これにより流体エンクロージャを第1の負荷圧力になるまで膨張させ、圧力センサが第1の負荷圧力を検知するとバルブを閉じて、これにより流体エンクロージャ内へのさらなる流体の流入を防止し、流体エンクロージャが圧縮された時に第1の圧縮圧力を検知し、バルブを開いて、流体源からの流体を流体エンクロージャの内部空間に流入させ、これにより流体エンクロージャを第2の負荷圧力になるまで膨張させ、圧力センサが第2の負荷圧力を検知するとバルブを閉じて、これにより流体エンクロージャ内へのさらなる流体の流入を防止し、流体エンクロージャが圧縮された時に第2の圧縮圧力を検知するよう、構成されている。第2の負荷圧力は第1の負荷圧力よりも大きくすることができる。対象が特定の期間(例えば、2週間)にわたって特定のレジメン(例えば、第1のレジメン)を完了させた後、医療装置は、流体エンクロージャ内の流体の量又は圧力を増大させることができる。これにより、括約筋横断筋肉(transsphincteric muscles)への負荷圧力/力が増大し、そして、新たなレジメン(例えば、第2のレジメン)が完了すると、括約筋横断筋肉は、第1のレジメン後の括約筋横断筋肉と比較してさらに強くなる。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態は、失禁を軽減する方法を提供する。本方法は、第1の流体エンクロージャを対象の内部領域内に配置する工程を有することができ、ここで、第1の流体エンクロージャは第1の内部空間を画定する第1の内面を有し、対象の内部領域は筋肉組織を含み、第1の流体エンクロージャは筋肉組織の収縮力と反対の方向の第1の力をもたらすように寸法決めされている。本方法はまた、筋肉組織を収縮させることによって第1の流体エンクロージャを圧縮して、第1の流体エンクロージャ内の流体の一部を動かす工程を有することができる。本方法はまた、筋肉組織が強くなるよう、筋肉を収縮させることを複数回繰り返す工程を有することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記複数回は30回である。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記複数回は、それぞれ30回を1日2度である。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記方法は、第2の流体エンクロージャを対象の内部領域内に配置する工程をさらに有し、第2の流体エンクロージャは、第2の内部空間を画定する第2の内面を有し、第2の流体エンクロージャは、筋肉組織の収縮力と反対の方向の第2の力をもたらすように寸法決めされている。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2の力は第1の力よりも大きい。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記方法は、筋肉組織を収縮させることによって第2の流体エンクロージャを圧縮して、第2の流体エンクロージャ内の流体の一部を動かす工程をさらに有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記方法は、筋肉組織が強くなり第2の筋力を有するように、筋肉組織を収縮させることによって第2の流体エンクロージャを圧縮して第2の流体エンクロージャ内の流体の一部を動かす工程を、多数回繰り返す工程をさらに有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の筋力は第1の筋力よりも大きい。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記多数回は10回から50回までである。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記多数回は、それぞれ10回から50回までを1日2度である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の流体エンクロージャは第1の剛性を有し、第2の流体エンクロージャは第2の剛性を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の剛性は第1の剛性よりも大きい。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態は、対象の失禁を軽減するためのキットを提供する。キットは、第1の端部及び第2の端部を有する第1のバルーンを含み、第1のバルーンは流体を収容する第1の内部空間を画定する内面と外面とを画定し、第1のバルーンは第1のバルーンの第1の端部に配置されるアウトレットを有し、アウトレットは第1のバルーンの第1の内部空間と流体連通しており、第1のバルーンは第1の負荷圧力を有する。キットはさらに第1の端部及び第2の端部を有する第2のバルーンを含み、第2のバルーンは流体を収容する第2の内部空間を画定する第2の内面と第2の外面とを画定し、第2のバルーンは第2のバルーンの第1の端部に配置される第2のアウトレットを有し、第2のアウトレットは第2のバルーンの第2の内部空間と流体連通しており、第2のバルーンは第2の負荷圧力を有する。キットはさらに近位端及び遠位端を有する流体導管を含み、近位端は流体導管が第1のバルーンの第1の内部空間と流体連通するよう第1のアウトレットに取り外し可能に結合されるよう構成され、近位端は流体導管が第2のバルーンの第2の内部空間と流体連通するよう第2のアウトレットに取り外し可能に結合されるよう構成される。キットはさらに流体導管の遠位端に結合されるよう構成された圧力検知装置を含み、第2の負荷圧力は第1の負荷圧力よりも大きい。
【0030】
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を考慮することで本発明はよりよく理解され、上記以外の特徴、態様及び利点が明らかになるであろう。以下の詳細な説明は以下の図面を参照している。
【0031】
以下の図面の説明において、同様の参照番号は図面間で同様の要素を指すのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示の態様による括約筋横断システムの斜視図である。
図2図1の括約筋横断システムの別の斜視図であり、括約筋横断バルーンに第1のレベルの圧縮力がかけられている様子を示す。
図3図1の括約筋横断システムのさらに別の斜視図であり、括約筋横断バルーンに第2のレベルの圧縮力がかけられている様子を示す。
図4】別の括約筋横断システムの概略図である。
図5図4の括約筋横断システムの図である。
図6】括約筋横断システムの別の図である。
図7図6の括約筋横断システムの図であり、コンポーネントのグループが分離されている。
図8】別の括約筋横断システムの図である。
図9図8の括約筋横断システムの図であり、コンポーネントのグループが分離されている。
図10】括約筋横断システムの配置についての括約筋横断矢状面図である。
図11】括約筋横断システムの別の配置について括約筋横断矢状面図である。
図12図10の括約筋横断システムについての括約筋横断冠状断面図である。
図13】便失禁を軽減するためのプロセスのフローチャートである。
図14】異なる条件についてのmmHg-cmでの曲線下面積の棒グラフである。
図15】異なる条件についてのmmHg-cmでの曲線下面積の別の棒グラフであり、肛門管の吻側及び尾側の位置を具体的に比較している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の任意の実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下に記載される又は図示されるコンポーネントの詳細及び配置に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。また、本明細書において使用される表現及び用語は、説明を目的としたものであり、限定的であると見なされるべきではないことを理解されたい。さらに、本明細書における「右」、「左」、「前」、「後」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上部」、又は「下部(底)」の使用及びこれらの変形は、説明を目的としてものであり、限定的と見なされるべきではない。本明細書における「含む」、「備える」又は「有する」及びこれらの変形の使用は、その後に記載される事項及びその同等物、並びに追加の事項を包含することを意味する。特に明記又は限定されない限り、「取り付けられた」、「接続された」、「支持された」及び「結合された」という用語及びそれらの変形は広く使用され、直接及び間接的な取り付け、接続、支持及び結合を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0034】
また、本明細書において使用される表現及び用語は、説明を目的としたものであり、限定的であると見なされるべきではないことを理解されたい。さらに、本明細書における「右」、「左」、「前」、「後」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上部」、又は「下部(底)」の使用及びこれらの変形は、説明を目的としてものであり、限定的と見なされるべきではない。本明細書における「含む」、「備える」又は「有する」及びこれらの変形の使用は、その後に記載される事項及びその同等物、並びに追加の事項を包含することを意味する。特に明記又は限定されない限り、「取り付けられた」、「接続された」、「支持された」及び「結合された」という用語及びそれらの変形は広く使用され、直接及び間接的な取り付け、接続、支持及び結合を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されない。
【0035】
いくつかの実施形態では、方法のコンピュータによる実行を含む本開示の態様は、本明細書に記載される態様を実行するためのプロセッサデバイス、コンピュータ(例えば、メモリに動作可能に結合されたプロセッサデバイス)又は別の電子的に動作されるコントローラを制御するためのソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はこれらの任意の組み合わせを生成するための標準的なプログラミング又はエンジニアリング技術を使用して、システム、方法、装置、又は製造品として実装することができる。したがって、例えば、本発明の実施形態は、プロセッサデバイスがコンピュータ可読媒体からの命令を読み取ることに基づいて命令を実行できるように、非一時的なコンピュータ可読媒体において具体的に具現化される一組の命令として実装することができる。本発明のいくつかの実施形態は、以下の説明と一致して、自動化装置、さまざまなコンピュータハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどを含む専用又は汎用コンピュータなどの装置を含む(又は利用する)ことができる。
【0036】
本明細書において使用される「製造品」という用語は、任意のコンピュータ可読装置、キャリア(例えば、非一時的信号)又は媒体(例えば、非一時的媒体)からアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することを意図している。例えば、コンピュータ可読メディアには、磁気ストレージデバイス(例えば、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストリップなど)、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)など)、スマートカード及びフラッシュメモリデバイス(例えば、カード、スティックなど)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、搬送波を使用して、電子メールの送受信、又はインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークへのアクセスに使用されるようなコンピュータ可読電子データを伝送できることを理解されたい。当業者は、請求された主題の範囲又は精神から逸脱することなく、これらの構成に多くの変更を加えることができることを認識するであろう。
【0037】
本発明による方法の特定の動作又はその方法を実行するシステムの特定の動作は、図面概略的に示され得る又は本明細書のなかで説明する。別段の指定又は限定がない限り、図面における特定の空間的順序での特定の動作の表現は、必ずしもそれらの動作が特定の空間的順序に対応する特定の順序で実行される必要がない場合がある。同様に、図面において表現される又は本明細書に開示される特定の動作は、本発明の特定の実施形態での必要に応じて明示的に図示又は記載されるものとは異なる順序で実行することができる。さらに、いくつかの実施形態では、特定の動作は、専用の並列処理装置を含んで、あるいは大規模システムの一部として相互運用するように構成された別個のコンピューティングデバイスを含んで、並列で実行することができる。
【0038】
コンピュータ実装の文脈で本明細書において使用される場合、別段の指定又は限定のない限り、「コンポーネント」、「システム」、「モジュール」などの用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、又は実行中のソフトウェアを含むコンピュータ関連システムの一部又は全てを包含する。例えば、コンポーネントは、プロセッサデバイス、プロセッサデバイスによって実行される(又は実行可能な)プロセス、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、コンピュータプログラム又はコンピュータであり得るが、これらに限定されない。例として、コンピュータ上で実行されているアプリケーションとコンピュータの両方をコンポーネントとすることができる。1つ又は複数のコンポーネント(又はシステム、モジュールなど)は、実行プロセス又は実行スレッド内に存在するか、1つのコンピュータにローカライズされるか、2つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサデバイス間で分配されるか、あるいは別のコンポーネント(又はシステム、モジュールなど)に含まれる可能性がある。
【0039】
本明細書において使用される場合、「コントローラ」、「プロセッサ」及び「コンピュータ」という用語は、コンピュータプログラムを実行可能な任意の装置、又は記述された機能を実行するように構成された論理ゲートを含む任意の装置を含む。例えば、これは、プロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックコントローラなどを含み得る。別の例として、これらの用語は、1つ以上のプロセッサやメモリや1つ以上のプログラマブルハードウェア要素を含み得、例えばあらゆるタイプのプロセッサ、CPU、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ又はソフトウェア命令を実行可能なその他の装置などを含み得る。
【0040】
別段の指定又は限定がない限り、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B及びCのうちの1つ又は複数」などに類似する句は、A、又はB、又はC、又はA、B及び/若しくはCの任意の組み合わせを示すことを意味し、これには、A、B及び/又はCのうちの複数又は単一のインスタンスの組み合わせが含まれる。
【0041】
以下の議論は、当業者が本発明の実施形態を作り上げて使用することを可能にするために提示される。図示の実施形態に対するさまざまな変更を当業者はすぐに理解でき、本明細書の一般原理は、本発明の実施形態から逸脱することなく他の実施形態及び用途に適用することができる。したがって、本発明の実施形態は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。当業者は、本明細書に示される例が多くの有用な代替手段を有し、これらも本発明の実施形態の範囲内にあることを認識するであろう。
【0042】
上記で説明したように、便失禁を治療することを目的とした外科的アプローチは一般的に成功していない。さらに、他の従来のアプローチによりこの問題を解決する試みがなされたが、これらもほとんど成功していない。例えば、そのような従来のアプローチの1つはバイオフィードバックであるが、これは、患者がどの対象筋肉(肛門括約筋など)を屈曲させているかをよりよく理解するように患者を教育することを目的としている。場合によっては、バイオフィードバックアプローチは、電極を対象の筋肉の近くに配置し、患者が対象筋肉を屈曲させると、ディスプレイなどの視覚的表現によって対象筋肉の電気的発火(electrical firing)の視覚的画像が視覚的に提示される(例えば、筋電図と似ている)。これらのバイオフィードバックアプローチは有望に見えるが、少なくともバイオフィードバックは根本的な問題に対処していないことから成功はしておらず、肛門括約筋(例えば、外肛門括約筋又は場合によっては内肛門括約筋)の強さは改善していない(例えば、強度の増大、最大収縮強度、長期収縮状態、筋肉量など)。換言すれば、(便失禁を治療するための)バイオフィードバックアプローチは、括約筋に対する負荷を用いないという点で欠陥があり、したがって、失禁に関連する筋肉を強化する効果(もしあれば)は限定的であり予測不能である。さらに、バイオフィードバックアプローチは通常、診療所でのみ可能である(例えば、電極の設置、他の機器の必要性など)。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態は、便失禁を改善するために上記の従来のシステム及び他のシステムに対する改善を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、ターゲット筋肉を強化するために個人がターゲット筋肉(例えば、失禁に関連する筋肉)に継続的に過負荷(又は負荷)をかけることを可能にする装置が提供される。さらに、いくつかの実施形態では、収縮力、その大きさ及び現在のトレーニングとの関係についての個人へのフィードバックを可能にする装置を望むことができる。これらの望ましい機能はほとんど得ることができていない。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、括約筋横断筋肉に負荷をかけるように対象の括約筋横断領域に配置することができる小型の肛門バルーンを含む装置を提供する。個人は、括約筋横断筋肉のいずれかを収縮/圧縮し、これは尿の流れ(即ち、排尿)を止める筋肉の収縮に類似し得る。特定の長さ(例えば、12インチ)のチューブを括約筋横断バルーン及びさまざまなマーキング(しるし)が付いた膨張可能なバルーンに接続することができる。括約筋横断バルーンは、流体(例えば、空気)で満たされ、流体が逃げるのを防ぐために適切に密封される。その後、括約筋横断バルーンを肛門管に挿入することができる。続いて、個人は括約筋横断筋肉を収縮させることができ、これによって流体の一部を括約筋横断バルーンから膨張可能バルーンに動かすことができる。膨張可能バルーンの膨張によって、膨張可能バルーンのサイズが増大し、したがって膨張可能バルーン上のマーキング間の間隔が増大する。マーキング間の間隔の増大は、括約筋横断筋肉の収縮が起こったことを示すだけでなく、括約筋横断筋肉の収縮力を個人に対して示すこともできる。
【0044】
いくつかの実施形態では、括約筋横断筋肉に負荷をかけるために、括約筋横断バルーンを膣管(本明細書における「膣バルーン」)に配置することができる。したがって、括約筋横断バルーンに関する上記及び下記の説明は膣バルーンにも適用することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、この装置の全てのコンポーネントは、携帯可能かつ使い捨て可能であり得る。例えば、装置を対象の肛門に配置した後、装置を廃棄することができる。いくつかの実施形態では、システムは容易に携帯可能であることができる(例えば、バッグ、スーツケース、バックパックなどに入れることができる)。他の実施形態では、この装置の全てのコンポーネントは、複数回使用するために洗浄及び消毒することができる。例えば、装置を対象の肛門に配置した後、装置を洗浄、分離又はオートクレーブ滅菌して、システムから汚染物質や考えられる病原体を除去し装置を再利用できるようにすることができる。
【0046】
図1図3に示す非限定的な実施形態では、括約筋横断システム100は、括約筋横断バルーン102、結合部104、流体導管106、バルブ108及びマーキング114を有する膨張可能バルーン112を含む。括約筋横断バルーン102は、特定の圧力で流体を収容することができる変形可能な材料で形成することができる。例えば、括約筋横断バルーン102は弾性ポリマー材料(例えば、弾性材料、ポリマーなど)から形成することができる。いくつかの実施形態では、括約筋横断バルーン102は、特定の圧力にて又は特定の量の流体(例えば、空気)を収容した状態で剛性が大きい。例えば、括約筋横断バルーン102は特定の量の流体のみを保持することができ、このとき流体の収容によりバルーンの最大圧力が提供される。括約筋横断バルーン102は、括約筋横断バルーン102の構造内に一体的に形成された結合部104を含む。結合部104は、括約筋横断バルーン102によって収容される流体と流体連通するキャビティを提供する。括約筋横断バルーン102の構造が内面を画定し、この内面は流体と接触しており、結合部104のキャビティは括約筋横断バルーン102の内面と流体連通している。場合によっては、結合部104は括約筋横断バルーン102の外側部分の雄ねじに対応する雌ねじを有し、これにより結合部104が括約筋横断バルーン102にねじ込み式に係合するように構成されている。通常、結合部104の雌ねじ及び括約筋横断バルーン102の雄ねじによって流体の漏出が防止される。いくつかの実施形態では、結合部104は典型的に使用される他の固定構成(例えば、磁気結合部、接着剤、他の取り外し可能な結合用特徴部、ファスナーなど)であり得る。
【0047】
流体導管106は、括約筋横断バルーン102の結合部104に取り付けられる(又は結合される)。流体導管106の結合部104への取り付けによって、括約筋横断バルーン102の内部空間と流体導管106との間の流体連通が提供される。いくつかの実施形態では、結合部104と括約筋横断バルーン102との間の係合と同様に、流体導管106は、前述の固定構成(例えば、ねじ式係合、磁気結合部、接着剤、他の取り外し可能な結合用特徴部、ファスナーなど)を介して結合部104に結合することができる。
【0048】
流体導管106は、流体導管が結合部104及び括約筋横断バルーン102の周りに/それらに対して湾曲することができるように、任意の可撓性材料(例えば、ポリマー材料)から形成することができる。いくつかの実施形態では、流体導管106は、特定の内部寸法(例えば、特定の半径)。例えば、流体導管106は、特定の流体抵抗に対応する内半径を有することができ、ここで、内半径がより大きいことは流体抵抗がより小さいことに対応し、内半径がより小さいことは流体抵抗がより大きいことに対応する。他の実施形態では、複数の流体導管が存在してもよく、各流体導管は、特定の内半径を有し、上記のように結合部104に結合されるように構成される。これらの他の流体導管は、流体導管106に関して上述した通りに機能する。したがって、流体導管106に関する記載は他の流体導管にも適用される。場合によっては、これらの他の流体導管は、他の膨張可能バルーンと結合されてこれと流体連通するように構成することができる。
【0049】
バルブ108は3つのポートを含む。流体導管106における、結合部104に取り付けられた端部と反対側の端部は、バルブ108の第1のポートと流体連通するように配置される。バルブ108の第2のポートは、カプラー110及び膨張可能バルーンと流体連通するように配置され、膨張可能バルーン112は、バルブ108の第3のポートと流体連通するように配置される。膨張可能バルーン112は、膨張可能バルーン112の外面にマーキング114(又は他のしるし)を含む。マーキング114は、任意の形状、ラインセグメントなどを含むことができる。図1図3に示すように、マーキング114は、2つの平行な線、実線の円形マーキング及びリング状のマーキングを含む。バルブ108の各ポート(例えば、第1のポート、第2のポート又は第3のポート)は、バルブ108の調整可能なバルブ部材を介して、バルブ108の他のポートのいずれかと流体連通することができる。バルブ108のバルブ部材体を回転させることで、流体がバルブ108の任意の組み合わせのポート又は個々のポート(例えば、第1のポート、第2のポート又は第3のポート)を通って逃げるのを防ぐことができる。例えば、バルブ108のバルブ部材は、流体源からの流体がカプラー110を介してバルブ108の第2のポートに入り、バルブ108の第3のポートを通って膨張可能バルーン112に流れることを可能にするように配置することができる。いくつかの実施形態では、流体源は、各種ポンプ(例えば、電気空気ポンプ)、手動ポンプ(例えば、血圧モニターで使用されるようなバルブアクチュエータを備えたゴム球)などであってもよい。
【0050】
バルブ108のバルブ部材はまた、流体がバルブ108の第2のポートを通って(例えば、カプラー110を通って出て)逃げるのを防ぐように配置することができる。この構成では、2つのバルーン102、112の間が流体連通している。換言すると、流体が、バルブ108の第2のポートからカプラー110を通って大気中に逃げることが防止される。バルブ108は、三位置(又は三方向)バルブとして実装されることが示されているが、他の代替の実施形態では他のバルブ(例えば、括約筋横断システム100全体が使用後に廃棄される一方バルブや、流れの方向を許可又は防止するために必要な異なる閾値圧力を有する二方バルブ)を使用することができる。例えば、いくつかの代替構成では、流体源は、(流体源からの)流体を、バルブ108を通って流体導管106にそして括約筋横断バルーン102に流して、これにより括約筋横断バルーン102を膨張させることができる。場合によっては、(流体源からの)流体は、バルブ108の第3のポートを通って膨張可能バルーン112に流れることができ、これにより膨張可能バルーン112を膨張させることができる。場合によっては、流体源はユーザに不要な場合がある。例えば、括約筋横断バルーン102(及び膨張可能バルーン112)は、特定の空気圧で事前に満たされてもよい。いくつかの構成では、括約筋横断バルーン102及び膨張可能バルーン112がこれらの所望圧力になると、バルブ108のバルブ部材は、バルブ108の第1のポートと第3のポートの間の流体連通のみを可能にするように位置づけられ、これにより、流体がバルブ108の第2のポートを通り、カプラー110を通って、周囲環境に逃げることが防止される。
【0051】
図1を参照すると、括約筋横断システム100において、括約筋横断バルーン102が流体(例えば、空気)によって膨張されて完全に膨張した状態(及び対応する圧力)である様子が示されている。バルブ108のバルブ部材は、バルブ108の第1のポートと第3のポートの間の流体連通のみを許可するように位置づけられている(例えば、流体がカプラー110を介してバルブ108の第3のポートから大気中に流出するのを防止する)。図1に示すように、膨張可能バルーン112は完全に収縮した状態にある。
【0052】
図2は括約筋横断システム100の動作を示す。いくつかの実施形態では、括約筋横断バルーン102は圧縮され、これにより括約筋横断バルーン102内にそれまで含まれていた流体の一部が動かされる。動かされた流体は、流体導管106内を、バルブ108の第1のポートを通り、バルブ108の第3のポートを通って移動し、膨張可能バルーン112に入る(動かされた流体は、バルブ108のバルブ部材の配置により、バルブ108の第2のポートを通っては移動しない)。動かされた流体によって膨張可能バルーン112が拡張され、これによりマーキング114間の空間的関係が拡張される。膨張可能バルーン112の膨張は、括約筋横断バルーン102が圧縮されたことを示すだけでなく、括約筋横断バルーン102に加えられた圧縮力の大きさも示す。例えば、括約筋横断バルーン102に加えられる圧縮力は、膨張可能バルーン112内に移動してこれを拡張する動かされた流体に関連している。さらに、膨張可能バルーン112の膨張により、マーキング114間の空間的関係が増大し、これにより、バルーン102に加えられる圧縮力の大きさが示される。図1図3の比較は、膨張可能バルーン112の膨張の違いを示している。例えば、バルーン112の膨張、したがってマーキング114間の空間的関係は、図3において最大で、図2においてより小さく、図1において最小である。逆に、括約筋横断バルーン102は、図1において最大であり、図2においてより小さく、図3において最小である。いくつかの実施形態では、治療レジメン(例えば、エクササイズ)の完了後などに、バルブ108のバルブ部材の位置を調整して、括約筋横断システム100内にトラップされた流体を、カプラー110を介してバルブ108の第2のポートから大気中に流出させることで、バルーン102及び112のいずれか又は両方を収縮させることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、括約筋横断バルーン102と比較してより多い/より少ない量の流体を収容できるか、又はより大きい剛性/より小さい剛性の構造を提供できる他の括約筋横断バルーンも可能である。例えば、より多くの量の流体を収容できる、又はより大きい剛性の構造を含むことができる他の括約筋横断バルーンは、より大きな圧縮力にさらすことが可能である。別の例として、より少ない量の流体を収容するか、又はより小さい剛性の構造を含むことができる他の括約筋横断バルーンは、より小さい圧縮力にさらすことが可能である。これらの他の括約筋横断バルーンは括約筋横断バルーン102と置き換えることができ、したがって、括約筋横断バルーン102に関して記載した他の全てのコンポーネントは、これらの他の括約筋横断バルーンにも適用される。いくつかの特定の実施形態では、括約筋横断バルーン102の剛性は、治療の進み具合とともに変更(又は調整)することができる。例えば、場合によっては、治療の開始時に、括約筋横断バルーン102は第1の剛性を有する材料(例えば、ポリマー、プラスチックなどのような変形可能な材料)から形成され得る。括約筋横断筋肉が強くなったときなど、治療が進むにつれて、括約筋横断バルーン102の剛性を大きくすることができ、その結果、括約筋横断バルーン102は第1の剛性よりも大きい第2の剛性を有することとなる。剛性の調整は、より剛性の大きい材料(又は複数の材料)などの括約筋横断バルーン102の材料特性を変更することによって実現できる場合もあれば、形状を変更することによって実現できる場合もある(例えば、括約筋横断バルーン102の厚さ、形状など)。他の構成では、括約筋横断バルーン102は、例えば治療が進むとき(例えば、括約筋横断筋肉がより強くなったとき)に、(例えば、括約筋横断システム100内に収容される流体の量を増大させることによって)第1の圧力から第2の圧力に増大させることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、括約筋横断バルーン102の形状は、患者の解剖学的構造に一致するような輪郭を描くことができる。例えば、括約筋横断バルーン102の直径は、肛門管の筋緊張がより小さい個人に対応するために、サイズを大きくすることができる。他の構成では、括約筋横断バルーン102の形状は均一な直径を有する必要はなく、したがって、括約筋横断バルーン102のプロファイルは、対象の肛門管のプロファイルと一致することができる。この構成では、例えば、括約筋横断バルーン102のプロファイルは、肛門管に負荷をかけているときに対象の肛門管の輪郭に沿うようにすることができる(例えば、括約筋横断バルーン102は、対象の肛門管よりもわずかに大きくすることで、肛門管に負荷をかけることができる)。いくつかの実施形態では、括約筋横断バルーン102の目的は、括約筋横断バルーン102が肛門管に係合することを可能にすることである。したがって、括約筋横断バルーン102は、これを達成するために任意の形状をとることができる。
【0055】
図4は、コンピューティングデバイス250及びサーバ280と通信する括約筋横断システム200の別の実施形態の概略図を示す。括約筋横断システム200は、コントローラ202、ポンプ204、圧力センサ206、電源208、バルブ210、括約筋横断バルーン212、メモリ214、(複数の)通信システム216及び(複数の)入力218を含む。括約筋横断システム200内の全てのコンポーネントは互いに適切に通じている。例えば、括約筋横断バルーン212は、バルブ210、圧力センサ206及びポンプ204と流体連通している。別の例として、コントローラ202、圧力センサ206、電源208、バルブ210、メモリ214、通信システム216及び入力218は、全て通じている(例えば、無線、有線などで電気通信している)。いくつかの実施形態では、入力218は、温度センサ、湿度センサなどの他のセンサであり得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、コントローラ202は、コントローラ202と通信しているコンポーネントから信号を受信し、当該コンポーネントを制御することができる任意の適切なハードウェア又はソフトウェアを含む。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラ202は、例えば(例えばメモリ214に保存されてメモリ214から検索される)プログラムから実行することができる以下に記載のプロセス(又は他の機能)を実装できる。コントローラ202は、例えば以下に記載のプロセスを含むプログラムを実行可能な中央処理装置(「CPU」)やグラフィックス処理装置(「GPU」)などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組み合わせであり得る。
【0057】
ポンプ204は、通常使用されるさまざまな形態を具現化することができる。例えば、いくつかの構成では、ポンプ204は、コントローラ202と通信し、電源208によって電力が供給される電子ポンプとして実装することができる。例えば、コントローラ202は、電子ポンプによって提供される流体(例えば、空気)を用いて、電子ポンプに括約筋横断バルーン212を膨張させるよう構成することができる。他の構成では、ポンプ204は、手動ポンプ(例えば、血圧計などで使用されるようなバルブアクチュエータを備えたゴム球)などの手動ポンプとして実装することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、圧力センサ206は、圧力変換器、圧電センサ、ロードセルなどのような、圧力(又は力)を検知することができる任意の適切な装置であり得る。以下でより詳細に記載するように、圧力センサ206は、括約筋横断バルーン212の内部体積と流体連通(及び圧力連通)するように構成される。このようにして、圧力センサ206は、以下に記載するプロセスで使用されるような、括約筋横断バルーン212の圧力の決定をすることができる。
【0059】
バルブ210は機械的に調整可能なバルブ(例えば、バルブ108)として実装することができ、あるいは他の構成では、バルブ210は電気的に調整可能なバルブ(例えば、ソレノイドバルブ、空気圧バルブなど)として実装することができる。バルブ210は、ポンプ204と括約筋横断バルーン212の内部体積との間にまたがる流路に沿って配置することができ、これにより、ポンプ204と括約筋横断バルーン212の内部体積との間の流体連通を許可又は防止する。
【0060】
例えば、いくつかの構成では、コントローラ202は、バルブ210に、ポンプ204と括約筋横断バルーン212の内部体積との間の流体連通を許可させることができる。そして、コントローラ202は、ポンプ204に、(圧力センサ206によって検知される)圧力が閾値に達するか又はそれを超えるまで、括約筋横断バルーン212の内部体積に流体を流させることができる。よって、コントローラ202は、バルブ210に、ポンプ204と括約筋横断バルーン212の内部体積との間の流体連通を防止させることができる。いくつかの構成では、バルブ210は、以下に記載するように、一方バルブや二方バルブなどの通常使用される他のバルブとして実装することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、電源208はさまざまな形態を具現化することができる。例えば、いくつかの構成では、電源208は、電気化学的電源(例えば、電池、特にリチウムイオン電池)として実装することができ、他の実施形態では、電源208は、コンセントやユニバーサルシリアルバス(「USB」)ポートなどに接続するプラグのような有線電源であり得る。いくつかの実施形態では、電源208は、電圧源又は電流源とすることができ、括約筋横断システム200内の装置に電力を十分供給することができる。
【0062】
括約筋横断バルーン212は、前述の括約筋横断バルーン102と同様のものであってもよい。したがって、括約筋横断バルーン102に関する記載は括約筋横断バルーン212にも適用される。括約筋横断バルーン212は変形可能な材料(さまざまな剛性を有する)から形成することができ、さまざまな圧力に対応するさまざまな量の流体を収容することができる。いくつかの実施形態では、括約筋横断システム200内のコンポーネント(例えば、コントローラ202、圧力センサ206、電源208など)は、括約筋横断バルーン212の内部体積内に取り付けることができ、例えばバルーンの内面上に取り付けることができる。他の構成では、括約筋横断システム200内のいくつかのコンポーネントは、以下に記載するように括約筋横断バルーン212の外部のハウジング内に収容することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、メモリ214は、例えば、ディスプレイ254(例えば、括約筋横断システム200と通信して、圧力センサ206からの圧力値を検知する)を用いてコンテンツを提示するためにコントローラ202(例えば、制御装置)によって使用可能な命令や値などを格納するのに使用することができる任意の適切なストレージデバイスを含むことができる。メモリ214は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ214は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、1つ以上の光ドライブなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、メモリ214は、コントローラ202(又はコンピューティングデバイス250)の動作を制御するためのコンピュータプログラムがエンコードされてもよい。そのような実施形態では、コントローラ202は、コンピュータプログラムの少なくとも一部を実行して、コンテンツ(例えば、ユーザインターフェース、画像、グラフィックス、テーブル、レポートなど)を提示し、括約筋横断システム200内のコンポーネント(例えば、圧力センサ206など)から情報を受信し、そして、タスクを完了させて(例えば、バルブ210などを作動させて)コンピューティングデバイス250及びサーバ280に情報を送信するように括約筋横断システム200内のコンポーネントを制御する又は動作させることができる。
【0064】
通信システム216は、任意の適切な通信ネットワークを介して他のシステムと通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム216は、1つ以上のトランシーバ、1つ以上の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム216は、同軸接続、光ファイバ接続、イーサネット接続、USB接続、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。いくつかの実施形態では、通信システム216は、コンピューティングデバイス250が括約筋横断システム200と(例えば、直接的に又はサーバ280を介するなどして間接的に)通信することを可能にする。
【0065】
サーバ280はまた、当技術分野で一般的に使用されるように、さまざまな形態を具現化することができる。例えば、サーバ280は、プロセッサ(例えば、中央処理装置、グラフィックス処理装置など)、通信システム(例えば、他のコンポーネントとの通信用のもの、及びインターネットなどのシステム)などを含むことができる。図4において、サーバ280は、コンピューティングデバイス250及び括約筋横断システム200と(例えば、通信システム216を介して)通信するものとして示されている。いくつかの実施形態では、サーバ280は、通信中のコンポーネント間でデータを送受信することができ、したがって、コンピューティングデバイス250及び括約筋横断システム200に対して特定の機能(例えば、センサのデータの受信、センサのデータの格納、センサのデータの送信、バルブを開く動作など)を実行するように指示する(又はそのような実行をさせる)ことができる。
【0066】
図4に示すように、コンピューティングデバイス250は、プロセッサ252、ディスプレイ254、(複数の)入力256、メモリ258及び通信システム260を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ252は、例えば、(例えば、メモリ258に保存されこのなかから検索される)プログラムから実行することができる以下に記載のプロセスなどの機能の少なくとも一部を実行することができる。プロセッサ252は、後述するプロセスを含むことができるプログラムを実行することができる中央処理装置(「CPU」)やグラフィックス処理装置(「GPU」)などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組み合わせとすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ディスプレイ254はグラフィカルユーザインターフェースを提示することができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ254は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切なディスプレイデバイスを含むことができる。いくつかの実施形態では、入力256は、インジケータ、センサ、起動可能ボタン、キーボード、マウス、グラフィカルユーザインターフェース、タッチスクリーンディスプレイなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、入力256は、ユーザ(例えば、患者又は医師などの他の施術者)が括約筋横断システム200と(例えば、通信ネットワークを介して)相互にコミュニケーションすることを可能にする。
【0068】
通信システム260は、任意の適切な通信ネットワークを介して他のシステムと通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム260は、1つ以上のトランシーバ、1つ以上の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム260は、同軸接続、光ファイバ接続、イーサネット接続、USB接続、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続などを確立するのに使用できるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。いくつかの実施形態では、通信システム260は、コンピューティングデバイス250が括約筋横断システム200と(例えば、直接的に又は通信システムを介するなどして間接的に)通信することを可能にする。
【0069】
いくつかの実施形態では、メモリ258は、例えば、ディスプレイ254を用いてコンテンツを提示して(複数の)通信システム260などを介して括約筋横断システム200と通信するためにプロセッサ252が使用することができる命令や値などを格納するのに使用することができる任意の適切なストレージデバイスを含むことができる。メモリ258は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ258は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、1つ以上の光学ドライブなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、メモリ258は、括約筋横断システム200の動作を制御するためのコンピュータプログラムがエンコードされてもよい。そのような実施形態では、プロセッサ252は、コンピュータプログラムの少なくとも一部を実行して、コンテンツ(例えば、ユーザインターフェース、グラフィックス、テーブル、レポートなど)を括約筋横断システム200から受信すること、情報を括約筋横断システム200に送信することなどができる。
【0070】
図4に示すように、コンピューティングデバイス250は(例えば、通信システム216を介して)括約筋横断システム200と通信しており、コンピューティングデバイスは、サーバ280と通信しており、サーバ280は括約筋横断システム200と通信しており、これにより、情報(又は他のデータ)をこれらのコンポーネント間で伝達することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、患者が括約筋横断バルーン212を肛門管に挿入した後などに、コントローラ202がバルブ210を作動させて、流体がポンプ204から括約筋横断バルーン212に流れることを許可するよう構成される。コントローラ202は、圧力センサ206を介して括約筋横断バルーン212の内部領域内の圧力を検知することができる。括約筋横断バルーン212の内部領域が特定の負荷圧力に達すると、コントローラ202はバルブ210を作動させて、トラッピングし、括約筋横断バルーン212内(又はその外)に流体がさらに流入する(あるいは流出する)ことを防止する。特定の負荷圧力に達すると、括約筋横断バルーン212は圧縮され、括約筋横断バルーン212の内部領域内の圧力の増大が圧力センサ206を介してコントローラ202によって検知される。いくつかの実施形態では、他の負荷圧力を設定することができる。例えば、括約筋横断バルーン212の内部領域内のより多くの量の流体はより大きい負荷圧力に対応し、一方で、括約筋横断バルーン212の内部領域内のより少ない量の流体はより小さい負荷圧力に対応する。いくつかの構成では、治療レジメンが完了した後(例えば、その日について完了した後)などに、括約筋横断バルーン212の内部領域内にトラップされた流体(例えば、空気)が、流体がバルブ210又はポンプ204を介して周囲環境(例えば、大気)に逃げることができる場所に放出されてもよい。
【0072】
図5は、括約筋横断システム200の特定の実装である括約筋横断システム300の例を示す。したがって、括約筋横断システム200に関するこれまでの記載は、括約筋横断システム300の説明にも関係する。図示するように、括約筋横断システム300もまた、コントローラ302、ポンプ304、圧力センサ306、電源308、バルブ310、括約筋横断バルーン312、メモリ314、(複数の)通信システム316及び(複数の)入力318を含む。括約筋横断システム300はハウジング320も含み、ハウジング320は、コントローラ302、圧力センサ306、電源308、メモリ314、(複数の)通信システム316及び(複数の)入力318を括約筋横断バルーン312の内部体積内に保持及び固定するように構成されている。
【0073】
場合によっては、ハウジング320はボックス、フレームなどを含むことができ、これにより、コントローラ302、圧力センサ306、電源308、メモリ314、(複数の)通信システム316及び(複数の)入力318をハウジング320に結合(又は取り付け)してこれらのコンポーネントをハウジング320に固定することができ、よって、ハウジング320が括約筋横断バルーン312の内面に結合(又は接続)されたときなどに括約筋横断バルーン312に対して固定することができる。いくつかの構成では、ハウジング320は、括約筋横断バルーン312の内面に結合(又は取り付け)することができる。この構成では、括約筋横断システム300が使用された後、バルブ310を除く括約筋横断システム300全体とポンプ304とを適切に廃棄することができる。このことは、場合によっては、コントローラ302、圧力センサ306、電源308、メモリ314、(複数の)通信システム316及び(複数の)入力318が比較的安価な場合に有利であり、消費者(例えば、患者や、看護師、技術者、医師などの施術者)はコンポーネントを容易に廃棄することができる。いくつかの実施形態では、ハウジング320は、括約筋横断バルーン312の内部に(例えば、面ファスナーを用いて、あるいは磁気結合を用いて)取り外し可能に結合することができる。この構成では、例えば、ハウジング320により収容されるコンポーネントが比較的高価である場合には、患者がレジメン(例えば、その日についてのエクササイズ)を完了した後に、ハウジング320を(例えば、括約筋横断バルーン312を引き裂くことによって)回収することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、括約筋横断システム300はまた、いくつかのコンポーネントを互いに取り外し可能に結合することを可能にする結合部322を含む。例えば、バルブ310及び括約筋横断バルーン312は、例えば廃棄されるために、ポンプ304から取り外し可能に結合され得る。加えて又は代替的に、括約筋横断バルーン312はバルブ310に取り外し可能に結合することができ、これにより、バルブ310及びポンプ304を比較的無菌状態にしたまま(例えば、括約筋横断バルーン312の外側に接触する可能性のある便による汚染を防止するため)、括約筋横断バルーン312(及び対応する他のコンポーネント)を廃棄することができる。結合部322は、コンポーネントが結合されるとコンポーネント間の流体連通が維持されるようコンポーネントを取り外し可能に結合するために、さまざまな形態を具現化することができる。例えば、結合部322は、ねじ付き係合部、磁気コンポーネント、面ファスナーなどとすることができる。
【0075】
図6は、括約筋横断システム200の特定の実装である括約筋横断システム400の例を示す。したがって、括約筋横断システム200に関するこれまでの記載は、括約筋横断システム400の説明にも関係する。図示のように、括約筋横断システム400もまた、コントローラ402、ポンプ404、圧力センサ406、電源408、バルブ410,411、括約筋横断バルーン412、メモリ414、(複数の)通信システム416、(複数の)入力418、ハウジング420、結合部422及び導管424,426,428を含む。図示のように、導管424は(結合部を介して)ポンプ404と(結合部422を介して)バルブ410の端部との間の流体連通を提供し、導管426はバルブ410の他方の端部と(結合部422を介して)バルブ411の端部との間の流体連通を提供し、導管428は(結合部422を介して)バルブ411の他方の端部と括約筋横断バルーン412の内部体積との間の流体連通を提供する。導管426はハウジング420のボアを貫通することができる。場合によっては、ハウジングを貫通するボアは両端に結合部422を有することができ、各導管をボアの対向端部に取り外し可能に結合することができる。場合によっては、圧力センサ406をハウジング420内のコンポーネントに接続するために、リード(又は他のインターフェース導電体)によってコントローラ402と圧力センサ406との間の電気通信を提供することができる。上記のとおり、結合部422は、特定の結合部422とインターフェースするコンポーネントに取り外し可能に結合するため及びこれに対応して当該コンポーネントに流体連通を提供するためのさまざまな形態を(例えば、ねじ式係合、磁気コンポーネント、面ファスナーなどによって)具現化することができる。例えば、導管428はバルブ411から取り外し可能に結合することができ、これにより括約筋横断バルーン412とバルブ411との間の結合部422を介する流体連通を提供する(又は除去する)ことができる。
【0076】
図7は、コンポーネントのグループが(例えば、コンポーネントの取り外し可能な結合により)互いに分離された括約筋横断システム400の例を示す。例えば、図7に示すように、ポンプ404、結合部422及び導管424は結合部422にてバルブ410から取り外されている。バルブ410,411と、ハウジング420(及び対応するコンポーネント)などのバルブ410,411間で定められるコンポーネントとが、バルブ410,411のそれぞれの端部の結合部422によって分離されている(例えば、他のコンポーネントと流体連通していない)。括約筋横断バルーン412、圧力センサ406、導管428が、バルブ411の結合部422によって分離されている。括約筋横断システム400の取り外し可能に結合される構成により、ユーザは括約筋横断システム400内のコンポーネントを容易に再利用することができる。例えば、場合によっては、括約筋横断バルーン412(及び圧力センサ406)は使用後に単純に廃棄することができるとともに、ハウジング420内のコンポーネントは再利用することができる。このようにして、便に接触するコンポーネント(例えば、括約筋横断バルーン412)を廃棄することができるとともに、対象の外部にある他の比較的清潔なコンポーネント(例えば、ハウジング420及び対応するコンポーネント)は、比較的清潔で無菌のままとすることができる。
【0077】
いくつかの構成では、バルブ410は一方バルブとすることができ、流体は、ポンプ404から導管424,426,428を通って括約筋横断バルーン412内に流れるのみであり、これによって括約筋横断バルーン412を膨張させることができる。バルブ411は、上記のようにコントローラ402によって制御可能な電気的に励起可能なバルブ(例えば、ソレノイドバルブ)とすることができる。いくつかの実施形態では、バルブ410は二方バルブ又は電気的に励起可能なバルブとすることができ、これにより、括約筋横断バルーン412内にトラップされた流体を周囲環境に排出して括約筋横断バルーン412を収縮させることができる。
【0078】
図8は、括約筋横断システム200の特定の実装である括約筋横断システム500の例を示す。したがって、括約筋横断システム200に関するこれまでの記載は、括約筋横断システム500の説明にも関係する。図示するように、括約筋横断システム500はまた、コントローラ502、ポンプ504、圧力センサ506、電源508、バルブ510、括約筋横断バルーン512、メモリ514、(複数の)通信システム516、(複数の)入力518、ハウジング520、結合部522及び導管524,526,528を含む。図示するように、導管524は(結合部を介して)ポンプ504と(結合部522を介して)バルブ510の端部との間の流体連通を提供し、導管526は、バルブ510の他方の端部とハウジング520を貫通するボア530との間の流体連通を提供し、導管528は(結合部522を介して)ハウジング520のボア530と(結合部522を介して)括約筋横断バルーン512の内部体積との間の流体連通を提供する。
【0079】
図9は、コンポーネントのグループが(例えば、コンポーネントの取り外し可能な結合により)互いに分離された括約筋横断システム500の例を示す。例えば、図9に示すように、ポンプ504、結合部522及び導管524は結合部522にてバルブ510から取り外されている。バルブ510、導管526及びハウジング520(及び対応するコンポーネント、例えばボア530内に結合された圧力センサ506など)が分離されている。括約筋横断バルーン512、圧力センサ506、導管528は、ハウジング520上の結合部522によって分離されている。括約筋横断システム500の取り外し可能に結合された構成により、ユーザが括約筋横断システム500内のコンポーネントを容易に再利用することが可能となる。例えば、場合によっては、括約筋横断バルーン512は使用後に単純に廃棄することができるが、圧力センサ506を含む全ての電気部品などのハウジング520内のコンポーネントは再利用することができる。このようにして、便に接触するコンポーネント(例えば、括約筋横断バルーン512)は、廃棄するか、又は括約筋横断バルーン512を消毒するために処理する(例えば、オートクレーブ処理する、消毒剤を使用する)ことができるとともに、対象の外部にある他の比較的清潔なコンポーネント(例えば、ハウジング520及び対応するコンポーネント、例えば電気コンポーネントなど)は、比較的清潔で無菌のままとすることができる。さらに、この構成は少なくとも、安価なバルーンを廃棄して交換できるという理由から、又は代わりに、括約筋横断バルーン512が(一部の構成では)電気コンポーネントを含まず、強い化学物質、過酷な温度又は過酷な圧力で洗浄しても括約筋横断システム500に有害な影響を与えないという理由から、有利な場合がある。いくつかの実施形態では、導管526を省略して、バルブ510がボア530と直接流体連通する(そして密閉を提供する)ようにすることができる。
【0080】
図10及び図11は、対象の括約筋横断矢状面図を示す。図10及び図11に示すように、対象は、膣602、子宮604、膀胱606、大腸608及び括約筋横断領域610を有する。いくつかの実施形態では、便失禁は、括約筋横断領域610内の弱い筋肉が原因で生じる。例えば、括約筋横断領域610内の随意筋は、大腸内に便を閉じ込めるのに必要な力を提供できない場合がある。したがって、便が対象の直腸から漏れ出し、このとき大抵の場合はそのことに対象が気付くことはない。
【0081】
図10及び図11に示すように、いくつかの実施形態では、括約筋横断システム600は対象の肛門の内側に配置することができる。括約筋横断システム600は前述の括約筋横断システムと同様のものとすることができる。したがって、括約筋横断システムに関するあらゆる記載は括約筋横断システム600にも適用される。括約筋横断システム600は膨張していない状態で対象の肛門に挿入することができる。その後、括約筋横断システム600は、特定の量の流体によって、又は所望の圧力まで、膨張させることができる。いくつかの実施形態では、括約筋横断システム600は膨張した状態で対象の肛門内に配置することができる。括約筋横断システム600は、膨張すると括約筋横断筋肉に対して(例えば、径方向の)力/圧力を加える。例えば、括約筋横断筋肉が収縮すると、肛門管もまた、対象の中心軸(medial axis)に向かって(例えば、径方向に)収縮する。したがって、括約筋横断システム600は、膨張すると、括約筋横断筋肉に負荷をかけ、肛門管を径方向に対象の外側領域に向かって広げる。いくつかの実施形態では、対象は括約筋横断筋肉を収縮させ、括約筋横断システムを圧縮して、括約筋横断システムによって加えられる抵抗又は負荷に打ち勝つ。括約筋横断システムによって加えられる抵抗又は負荷に打ち勝つことにより、括約筋横断筋肉が強くなり、したがって(例えば、括約筋横断筋肉が十分に強くなったときに)便失禁を防止することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、括約筋横断システムに対する括約筋横断筋肉収縮の数は、対象の括約筋横断筋肉の特性に基づき、予め定めされたレジメン(regiment)であり得る(例えば、収縮を30回繰り返すことを、1日2度行う)。いくつかの実施形態では、対象が特定のレジメン(例えば、第1のレジメン)を特定の期間(例えば、2週間)完了させた後、括約筋横断システム600は、(例えば、括約筋横断システム600内により多くの流体をいれるか、又は括約筋横断バルーンをより剛性の大きいバルーンと交換することによって)括約筋横断システム600内の流体の量又は圧力を増大させることができる。これにより、括約筋横断筋肉にかかる負荷圧力/負荷力が増大し、又は括約筋横断筋肉を収縮させるのに必要な力が同様に増大する。したがって、新しいレジメン(例えば、第2のレジメン)が完了すると、括約筋横断筋肉は、第1のレジメンの後の括約筋横断筋肉と比較してさらに強くなる。いくつかの実施形態では、括約筋横断システム600によってかけられる負荷圧力の漸進的な増大は、括約筋横断筋肉が(例えば、括約筋横断バルーン600を圧縮するために)接触するのにより大きな力を必要とすることから、括約筋横断筋肉の強度が対応して増大することを可能にする。いくつかの実施形態では、括約筋横断筋肉の強度が増大するにつれて、便失禁の強さ又は便失禁の発生数が減少する。いくつかの実施形態では、便失禁の事象がなくなると、予め定められたレジメンはもはや定められていない。
【0083】
上記で説明したように、流体導管106などの他の流体導管はそれぞれ、特定の流体抵抗を定める特定の内半径を有する。したがって、レジメンが進行するにつれて、対象は、結合された流体導管(例えば、流体導管106)を、より小さい内半径(又はより長い長さ)、したがってより大きい流体抵抗を有する別の流体導管と交換することができる。これにより、括約筋横断バルーンを圧縮するために必要な力が増大し、括約筋横断筋肉がより強くなる。逆に、流体導管(例えば、流体導管106)は、より大きい内半径(又はより短い長さ)を有する流体導管と交換することができ、その結果、括約筋横断バルーンを圧縮するのに必要な力が減少する。これらの追加の流体導管により、対象は、括約筋横断バルーンを交換せずとも括約筋横断筋肉の収縮力を調整することができる。
【0084】
図11は、括約筋横断システム600の別の配置を示しているが、括約筋横断システム600に関するこれまでの記載も適用される。例えば、括約筋横断システム600は、膣腔内に配置することができる。いくつかの実施形態では、括約筋横断システム600が膣管内で膨張すると、前述のように括約筋横断筋肉に負荷がかけられる。いくつかの実施形態では、括約筋横断筋肉に負荷をかけるために括約筋横断システム600を肛門にではなく膣管に配置することが好ましい場合がある(例えば、より快適であるなど)。
【0085】
図12は括約筋横断システム600の冠状面図を示す。いくつかの実施形態では、前述の括約筋横断筋肉は、図8により詳細に示されている。括約筋横断領域610は括約筋横断筋肉612を含む。括約筋横断筋肉612は、平滑筋614及び外肛門括約筋616を含む。前述のように、レジメンの間、外肛門括約筋616(及び場合によっては平滑筋616)の強さを増大させることができるため、便失禁を防止することができる。
【0086】
図13は、便失禁を改善するためのプロセス700のフローチャートの例を示す。プロセス700の少なくとも一部は、任意の適切なコンピューティングデバイス(例えば、前述のコントローラ)で実行することができる。プロセス700は、702において、所望の治療レジメンを決定することを含むことができ、これは、括約筋横断バルーンの形状やサイズなど、括約筋横断バルーンの剛性、括約筋横断バルーンの流圧(又は複数の圧力)、各繰り返しに必要な圧力変化、繰り返しの数、エクササイズのための1日当たりの繰り返しの数、1日当たりのエクササイズ数、次の医師(又は他の施術者)による確認までの時間などを決定することを含むことができる。プロセス700は、704において、所望の括約筋横断バルーン又は他のパラメータ(例えば、剛性、エクササイズの期間、エクササイズレジメンなど)を選択することを含むことができる。
【0087】
プロセス700は、706において、エクササイズレジメンを完了させることを含むことができ、これはエクササイズを完了させることを含むことができる。例えば、場合によっては、治療レジメンが定められると、ユーザは選択されたバルーン及び他のパラメータを受け取り、エクササイズを開始する。プロセス700は、706において、エクササイズレジメンを完了させることを含む。場合によっては、ユーザはエクササイズを開始する前に括約筋横断システムを組み立てることができるか、あるいは、括約筋横断システムはすでに膨張されて又は取り付けられていてもよい。エクササイズは、括約筋横断バルーンを対象の肛門腔に配置することから開始することができる。その後、括約筋横断バルーンは事前に指定された圧力まで膨張される(又は膨張されている構成の場合のように挿入される)。場合によっては、コントローラはバルブを作動させて流体の追加(例えば、空気が括約筋横断バルーンに入り圧力を上げる)を防ぐことができ、これを(例えば、圧力センサからの)圧力値が閾値を超えたとき又は満たしたときに行ってもよい。
【0088】
括約筋横断バルーンが適切に配置されると、対象は自発的に肛門括約筋を収縮させる。場合によっては、患者は肛門括約筋を収縮させ、一定期間(例えば、1秒、2秒、3秒、4秒、又は疲労するまで)収縮を維持する(例えば、肛門括約筋を締め続ける)ことができる。場合によっては、(実施形態による)括約筋横断システムは、圧力データ(例えば、圧力センサからの圧力値、バルーンの圧力変化(例えば、収縮圧力)を送信し、そして、先のエクササイズなどの先の圧力データが取得されたときに、現在の圧力データを先のトライアルと比較して表示することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサによって検知された圧力は、肛門括約筋収縮が起こったことを認識するために、閾値を超える(例えば、閾値よりも大きくなる)必要がある。これ以外の場合では、患者は、ユーザ入力を介して、収縮が開始したことを選択(例えば、グラフィカルユーザインターフェースを操作)して、圧力値を検知するように(又は圧力センサからのデータ収集を開始するように)コントローラに指示することができる。場合によっては、患者は、ユーザ入力を介して括約筋横断バルーンの剛性を選択することもできる(これは括約筋横断バルーン自体に示されていてもよい)。このようにして、括約筋横断バルーンの剛性を閾値圧力の計算にキャリブレートする(あるいは別の方法で織り込む)ことができる。例えば、2つの括約筋横断バルーンの内圧が同じで、一方のバルーンの剛性が大きくなった場合、剛性が大きくなるにつれて負荷力(肛門括約筋を収縮又は締めるのに必要な力など)が大きくなるであろう。したがってこの場合、括約筋横断バルーン内の圧力の変化は剛性を完全に反映しているわけではない。したがって、剛性を反映する乗数(又は他のキャリブレーションパラメータ)を、括約筋横断バルーン内の圧力の変化まで増やして、対象の括約筋横断筋肉の強さの増大をより正確に反映することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、対象は、ユーザ入力を介して、エクササイズサイクルが完了したことを選択することができる。例えば、コントローラ(又は他の適切なコンピューティングデバイス)がユーザ入力を受信すると、バルブが作動して(又はバルブが電気バルブでない場合には人がバルブを作動させることができる)、括約筋横断バルーン内の流体を周囲環境に排出することができ、これにより括約筋横断バルーンが収縮する。いくつかの構成では、括約筋横断システム内のコンポーネントは、括約筋横断バルーンが十分に収縮した後に(又はいくつかの構成では収縮する前に)、取り外し可能に結合することができる。その後、一部のコンポーネントを廃棄し(例えば、括約筋横断バルーン)、全体的に洗浄し(例えば、括約筋横断バルーン)、別の用途に再利用する(例えば、ハウジング及び対応するコンポーネント)ことができる。
【0090】
プロセス700は、708において、患者がエクササイズレジメンを完了させたか否かを決定することができる。エクササイズレジメンは、施術者によって先に適切に定められるように、あらゆる日数(数日間)、週数(数週間)、月数(数か月間)、年数(数年間)、無期限など、にわたって継続することができる。場合によっては、患者がエクササイズレジメンを完了させていない場合、プロセス700は、エクササイズレジメンを再び完了させるために706に進むことができる。患者がエクササイズレジメンを完了させたならば、プロセス700は、患者がレジメンを調整する必要があるか否かを決定するために710に進むことができる。
【0091】
エクササイズが完了したならば、プロセス700はプロセス700の710に進むことができる。場合によっては、患者は、レジメンを調整する必要があるかどうかを決定するために、必要な施術者と会うことができる。レジメンを調整する必要がある場合には、プロセス700は、プロセス700の702に戻って、所望の治療レジメンを決定することができる。患者が1つのエクササイズレジメンを完了させた後、おそらくは、括約筋横断筋肉への負荷を増大させるために(例えば、括約筋横断バルーンの収縮からより大きな圧縮力が必要になるようにするために)括約筋横断バルーン内の圧力又は剛性が増大し、これによって括約筋横断筋肉の強さが時間の経過とともに増大する。
【0092】
あるいは、レジメンを変更する必要がない場合、プロセス700はプロセス700の714に進んで便失禁を改善することができる。場合によっては、括約筋横断筋肉は(強さが増大した後)十分な強さを有し、患者はもはやエクササイズレジメンを完了させる必要はない。あるいは、場合によっては、対象は現在のエクササイズレジメン(又は変更されたエクササイズレジメン、例えば、負荷や繰り返しの数などが減少したエクササイズレジメン)を継続することが要求されてもよく、したがって、プロセス700は、現在のレジメン(又は変更されたレジメン)を完了するため706に戻ることができる。
【0093】
<例>
以下の例は、本開示の態様をさらに説明するために提示されたものであり、本開示の範囲をいかようにも限定することを意味するものではない。
【0094】
抵抗性負荷に対する繰り返し収縮時の肛門管高圧ゾーンの幾何学的特性は、便失禁に関与する筋肉の疲労性を定めるのに役立つ。
【0095】
肛門管高圧ゾーン(「HPZ」)の形状は、便失禁に寄与するさまざまな筋肉の収縮機能を反映している。抵抗性負荷に対する収縮などのさまざまな収縮時の肛門管HPZの形状に関する情報は、便失禁を改善するための筋力トレーニングエクササイズの設計に役立つ可能性がある。目的:(1)休息時、単純収縮時及び抵抗性負荷に対する収縮時の肛門管HPZの形状を決定して比較すること。(2)HPZの吻側領域と尾側領域の間のさまざまな収縮モードの影響を特徴付けて比較すること。我々は10人の健康な未経産の女性対象(年齢21±3歳)について調査した。肛門管圧は、高解像度肛門直腸内圧測定法(HRAM、1cm間隔の周方向に配置されたセンサ)によって決定された。全ての対象は繰り返し収縮を行い(連続した3秒の収縮と3秒の休息を交互に40回行い)、これは肛門内の圧縮抵抗性負荷の有無にかかわらず行われた。負荷がある場合とない場合のシリーズの開始時と終了時の平均5回の締め付けを分析に使用した。我々は、これらの条件での締め付けについて曲線下面積(「AUC」(area under the curve))を決定した。重心(重心)は、前述の方法を使用して決定された。我々はまた、肛門管HPZの長さに基づいて、AUCの尾側半分と吻側半分を比較した。肛門管の圧力分布は、肛門管の空間的長さに沿った部位ごとの圧力によって幾何学的に定義された。AUCは全ての条件で非対称であり、全ての収縮中に大幅に増大したが、負荷に対する繰り返し収縮によって生じる疲労時に減少した。(図14参照、p<0.05)。AUCの尾側半分は吻側半分より概して大きかった。この差は、負荷がある場合とない場合の収縮時に、統計的有意に達した(図15参照、p=0.01)。尾側のAUCは、最後の5回の負荷に対する収縮時に大幅に減少したが、吻側のAUCではこの発見はなかった。AUCとして表示される肛門管HPZ形状は非対称であり、寄与している失禁筋の収縮性と肛門管の長さに沿ったそれらの解剖学的位置を表わす。外肛門括約筋要素及び恥骨直腸筋を含むさまざまな失禁筋は、負荷に対する繰り返し収縮によって証明されるように、異なる疲労を示し、総AUC及びその尾側半分は有意に減少するが、吻側半分は減少しない。この発見は、肛門管の尾側及び遠位領域での圧力の発生に関与する筋肉の特徴を反映している可能性があり、便失禁に関与するターゲット筋肉を改善するための適切なエクササイズレジメンの開発を導くことができる。
【0096】
図14は、異なる条件についての曲線下面積の棒グラフをmmHg-cmで示す。図14中の負荷のある疲労締め付けの上の*は、p値が0.05未満であることを示している。
【0097】
図15は、異なる条件についての曲線下面積の別の棒グラフをmmHg-cmで示しており、特に肛門管の吻側及び尾側の位置を比較している。図15は、負荷のない締め付けと負荷のある締め付けについて、p値が0.01であることを示している。
【0098】
外肛門括約筋筋力トレーニングエクササイズでは、新規の失禁筋抵抗エクササイズ装置(「cRED」)を使用し、その結果、便失禁を患う患者の肛門括約筋収縮性が改善された。
【0099】
骨盤底エクササイズは、便失禁(「FI」)を患う患者の筋緊張及び筋力を回復するために頻繁に使用されている。エクササイズ中の疲労の発生は、筋力トレーニングを成功させるための前提条件である。我々の研究室は近年、外肛門括約筋(「EAS」)収縮に対して所定の負荷をかける手作りの装置(失禁筋抵抗エクササイズ装置(「cRED」))を開発した。この装置を使用した上記の例では、健康な未経産女性のEAS収縮の繰り返し及び継続中に疲労が生じることが確認された。目的:cREDを使用する抵抗トレーニングによる、FIを患う患者の肛門括約筋圧プロファイル及び臨床結果への影響を評価すること。FIを患う7人の患者(6人の女性、72±8歳)が、4~6週間のエクササイズプロトコルに登録された。症状は、Vaizey失禁スコア及び便失禁患者の生活の質尺度(「FIQOL」)を用いて評価された。高解像度肛門直腸内圧測定(「HRAM」)を使用して、休息時の圧力、最大締め付け圧力、及び継続している締め付け中の5秒間と20秒間の積算締め付け収縮(「CI」)を評価した。患者は、cREDに対して、10回の繰り返し肛門括約筋締め付け及び30秒間継続締め付けを、3セット、1日2度行うように指示された。cREDは、直径2mmのチューブを介して外部コンプライアントバルーンに接続された、コンプライアント材料で作られた6×2.2cmの肛門内バルーンである。システムは、血圧計ゲージを使用して、さまざまな内圧まで空気で事前に満たすことができる。2つのバルーンは、膨張され、50mmHgの所定圧力が加えられ、密封された。続いて、コンプライアント肛門バルーンに加えられた外部締め付けによって、空気がコンプライアント外部バルーンに動かされ、その結果、この外部バルーンのサイズが大きくなり、締め付けが生じたことが示される。この空気の移動により、肛門バルーンの直径が減少し、肛門の収縮が起こり、同緊張収縮が起こる。全ての患者が、好ましくない事象の発生なく調査に耐えた。ベースライン時と調査終了時の測定パラメータの比較により、最大締め付け圧力と、5秒間及び20秒間の継続的締め付けのCIにおいて、大幅な改善が示された(それぞれ、表1のP=0.02、P=0.003、P=0.005)。
【0100】
【表1】
【0101】
休息時平均圧力には統計的に有意な変化はなかったが、7人中4人の対象において、休息時圧力が少なくとも10%改善した。Vaizeyスコアの改善は7人中4人の患者によって報告され、1人は変化を示さず、1人は悪化した。FIQOLは7人中4人において改善し、2人は変わらず、1人は悪化した。cREDを使用したEAS筋力トレーニングエクササイズは、FIを患う患者の肛門括約筋収縮性を改善する結果となった。この改善は、患者の57%における臨床的改善に関連している。さらなるランダム化比較調査によりこれらの発見を確認することができる。
【0102】
したがって、本発明は、失禁を軽減するための医療装置及び方法を提供する。
【0103】
本発明について、特定の実施形態を参照してかなり詳細に記載したが、当業者は、本発明が、限定ではなく例示の目的で提示された上記の実施形態以外によって実施され得ることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。
図1
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【国際調査報告】