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  • 特表-体外血液治療のためのデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】体外血液治療のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
A61M1/16 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542393
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2020051762
(87)【国際公開番号】W WO2020152333
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019101774.2
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】スピッカーマン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー カーステン
(72)【発明者】
【氏名】コペルシュミット パスカル
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーホーファー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ガゲル アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーゼン ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】スミスロヴァ リュボーフ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077EE03
4C077JJ02
4C077JJ12
4C077JJ16
4C077JJ28
(57)【要約】
本発明は、透析器が配置された体外血液回路を含んでかつ透析物回路を含む体外血液治療のためのデバイスに関する。血液回路は、第1のチャンバに流体的に接続され、透析物回路は、透析器の第2のチャンバに流体的に接続される。2つのチャンバは、半透膜によって分離され、透析物ポンプが、透析液をポンピングするために透析物回路に設けられる。デバイスは、第1のフェーズでかつ第1のフェーズに続く第2のフェーズでデバイスを作動させるように設計された制御ユニットを有し、透析物ポンプは、第2のフェーズよりも第1のフェーズでより低い流量で作動され、及び/又は透析物ポンプは、第2のフェーズよりも第1のフェーズで少なくとも1つの成分に関してより高い濃度で透析液をポンピングする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析器が配置された体外血液回路を有し、透析物回路を有し、
前記血液回路が第1のチャンバと流体連通し、前記透析物回路が前記透析器の第2のチャンバと流体連通し、前記2つのチャンバが半透膜によって互いから分離され、透析液の搬送のための透析物ポンプが、前記透析物回路に存在する体外血液治療のための装置であって、
前記を、第1のフェーズおよび該第1のフェーズに続く第2のフェーズで作動させるように構成された制御ユニット、を有し、
前記透析物ポンプは、前記第2のフェーズよりも前記第1のフェーズでより低い流量で作動され、及び/又は
前記透析物ポンプは、少なくとも1つの成分に関して、前記第2のフェーズよりも高い濃度である透析液を前記第1のフェーズで搬送する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記流量及び/又は前記濃度が、前記第1のフェーズで及び/又は前記第2のフェーズで一定であるか又は変化し、前記変動が、好ましくは、直線的、指数関数的、又は段階的に起こるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記流量の及び/又は前記濃度の変動が前記第1のフェーズでのみ又は前記第1及び第2のフェーズの両方で起こるように設計されている、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記流量の変動及び/又は前記濃度の変動が前記第2のフェーズで起こらないように構成されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記第1のフェーズが15分から60分の時間スパンにわたって、好ましくは20分から40分の時間スパンにわたって、特に好ましくは30分の時間スパンにわたって延びるように構成されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、透析が行われずにむしろ血液濾過のみが行われる調整フェーズが前記第1のフェーズの前に行われるように構成されている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記第1のフェーズの持続時間が1又は2以上の治療パラメータ及び/又は患者パラメータに依存するように構成されている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記患者パラメータは、患者の体重及び/又は分布容積、及び/又は透析前尿素濃度のような血液中の物質濃度である、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記流量及び/又は前記濃度が前記治療中に決定されたクリアランスに又は該治療中に到達された透析投与量に依存して前記第2のフェーズで設定されるように設計されている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記第1のフェーズから前記第2のフェーズへの移行が前記濃度に関して及び/又は透析物流量に関して連続的又は段階的に行われるように設計されている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御ユニットは、装置を血液透析機として又は血液透析濾過機として及び任意的に時に血液濾過機として作動させるように構成されている、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析器が配置された体外血液回路を有し且つ透析物回路を有する体外血液治療のための装置に関連し、血液回路は第1のチャンバと流体連通し、透析物回路は透析器の第2のチャンバと流体連通し、2つのチャンバは、半透膜によって互いから分離され、透析液の搬送のための透析物ポンプが透析物回路に存在する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、透析器の膜を通じて透析液の中に入り且つこの方式で患者の血液から除去される通常は尿に排泄される患者の血液からの物質の除去を行う。
【0003】
請求項1の序文の特徴を有する装置は、EP 0 942 759 B1から公知である。実際の透析効率(K/V)を治療中の患者にとって依然として許容可能な最大透析効率(K/V)maxの値に近づけ、すなわち、治療時間を可能な限り短く保つために可能な限り高い効率で正に最初から治療を行うという規定が、この文献から公知の装置に為される。治療は、処方された透析投与量(K t/V)に達した時に終了し、ここで、tは治療時間、Kはクリアランス、Vは患者の分布容積である。
【0004】
透析中に、血液から透析液の中へのカリウムイオン又は尿素のような電解質又は他の物質の移送に起因して合併症が起こる可能性があり、この合併症は、不均衡症候群としても公知の頭痛、嘔吐などのような病状をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 0 942 759 B1
【特許文献2】DE 10 2016 008 755 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような合併症の発生の可能性及び/又は合併症の重篤性が公知の機械に関して低減されるように冒頭に名前を挙げた種類の装置を更に発展させることが本発明の基本的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。
【0008】
装置が、第1のフェーズで及び第1のフェーズに続く第2のフェーズで装置を作動させるように構成された制御ユニットを有し、透析物ポンプが、第2のフェーズよりも第1のフェーズでより低い流量で作動され、及び/又は透析物ポンプが、第2のフェーズよりも少なくとも1つの成分に関してより高い濃度のものである透析液を第1のフェーズで搬送するという規定が相応に為される。
【0009】
第2のフェーズは、好ましくは第1のフェーズの直後である。しかし、第2のフェーズが第1のフェーズの終わりから時間内に離間して始まる場合も本発明によって網羅される。
【0010】
すなわち、治療の開始時の透析流量をその後の時点よりも低く選択すること又は治療のその後の時点よりも1又は2以上の物質に関してより高い濃度のものである透析液を治療の開始時に使用することが本発明の基本的な考えである。この物質又はこれらの物質は、好ましくは、ナトリウムイオンなどのような血液中にも存在する物質である。
【0011】
それは、通常は尿に排泄される血液からの物質の回収が治療の開始時に比較的ゆっくりと行われ、これが患者に対する治療の適合性を高め、かつ不均衡症候群の発生の可能性又は病状の重症度を大幅に低減するという両方の対策によって達成される。透析液の処方された流量又は濃度は、すなわち、最初から到達又は設定されず、むしろ治療のその後の時点、例えば、30分後にのみ到達又は設定される。
【0012】
相応により低い透析物流量が第1のフェーズで設定される場合に、血液から透析液の中への物質の相応により遅い拡散移送が起こる。同じことは、血液と透析液の間の濃度勾配が小さく、これが血液からの初期の同じく低い拡散速度をもたらすように、血液にも見出されてそこで激減されることになる成分の濃度が透析液内で初期に高く設定される時に相応に当て嵌まる。
【0013】
制御ユニットは、流量及び/又は濃度が第1のフェーズで及び/又は第2のフェーズで一定であるか又は変化し、その変動が好ましくは直線的、指数関数的、又は段階的に起こるように構成することができる。原則として、流量及び/又は濃度のあらゆる望ましいプロファイル描写が本発明によって網羅される。
【0014】
固定的に予め定められるか又は1又は2以上のパラメータに依存する透析液の少なくとも1つの物質の流量及び/又は濃度のプロファイル描写が第1のフェーズでのみ行われること、及び透析液の少なくとも1つの物質の流量及び/又は濃度の設定が、第1のフェーズとは異なる判断基準に従って、例えば、測定クリアランスのような測定値に依存して第2のフェーズで行われることが考えられる。
【0015】
制御ユニットは、透析液の流量及び/又は透析液内の問題の成分の濃度の変動が第1のフェーズでのみ、第2のフェーズでのみ、又は第1のフェーズ及び第2のフェーズの両方で起こるように設計することができる。透析機が、第1及び/又は第2のフェーズでの透析液に関して一定の流量及び/又は濃度で作動されることが考えられる。
【0016】
制御ユニットが、透析液の流量の変動及び/又は透析液の濃度の変動が第2のフェーズで起こらないように構成されることが考えられる。
【0017】
制御ユニットは、第1のフェーズが15分から60分の時間スパンにわたって、好ましくは20分から40分の時間スパンにわたって、特に好ましくは30分の時間スパンにわたって延びるように構成することができる。
【0018】
上述の値は、本質的に例であり、本発明を制限しない。
【0019】
制御ユニットは、透析が行われないが血液濾過のみが行われる調整フェーズが例えば5分から10分の持続時間にわたって第1のフェーズの前に行われるように構成することができる。治療の開始を表すことができるこのフェーズでは、すなわち、膜にわたる圧力低下に起因して対流クリアランスのみがあるが、拡散クリアランスはない。
【0020】
治療の第1のフェーズは、次に、この調整フェーズから時間的に直接に又は離間して続く。そのような調整フェーズは、例えば、DE 10 2016 008 755 A1から公知であり、その開示内容は、これにより本発明の主題にされる。
【0021】
第1のフェーズの持続時間は、全ての患者に対して一定とすることができ、又は患者の体重及び/又は分布容積、及び/又は透析前尿素濃度のような血液中の物質濃度のような1又は2以上の治療パラメータ及び/又は患者パラメータに依存する可能性がある。第2のフェーズの持続時間は、好ましくは、処方された透析投与量にいつ達するかに依存する。
【0022】
制御ユニットは、流量及び/又は濃度が治療中に決定されたクリアランスに又は治療中に到達した透析投与量に依存して第2のフェーズで設定されるように設計することができる。すなわち、オンラインクリアランスモニタが考えられ、すなわち、クリアランス測定が実時間で行われ、それに依存して透析液の流量及び/又は濃度の設定が行われる。
【0023】
治療の開始前又は開始時に第1及び/又は第2のフェーズに対する透析液の流量及び/又は濃度の設定のための特定のプロファイルを設定することも考えられ、このプロファイルは、次に、制御ユニットによって及びいずれの測定値とも独立に全体を通して実行される。
【0024】
第1のフェーズから第2のフェーズへの移行は、濃度に関して及び/又は透析物流量に関して連続的又は段階的に行うことができる。例えば、第1のフェーズで透析液の特定の第1の流量及び/又は濃度を設定し、かつ第2のフェーズで又は階段状移送をもたらすように少なくともその開始時に又は恒久的に透析液の第2の流量及び/又は濃度を設定することが考えられる。
【0025】
しかし、透析液の流量及び/又は濃度に関して第1のフェーズから第2のフェーズへの連続移行も本発明によって網羅される。
【0026】
制御ユニットは、装置を血液透析機として又は血液透析濾過機として作動させるように構成することができる。換言すると、機械は、血液透析機又は血液透析濾過機とすることができる。機械が時に簡単な血液濾過機として、すなわち、透析液が透析器に存在せずに作動される場合も考えられ、かつ本発明によって網羅される。
【0027】
機械が、透析器の上流のみ、下流のみ、又は上流と下流の両方で血液に追加される置換流体のための1又は2以上のラインを有することも同様に考えられる。制御ユニットは、第2のフェーズよりも第1のフェーズでより低い置換溶液の流量を設定するようにここでは構成することができる。例えば、置換溶液の流量を治療の開始時のゼロの値から処方値まで増加させること、及び/又は置換速度を透析液の流量に応じて設計することが考えられる。
【0028】
複数形ではなく記載された名詞は、これがたとえ可能な実施形態を表すとしても必ずしも要素が1つだけの場合のみを示すとは限らず、複数の要素を示すこともあることをここで指摘しておく。複数形の使用も単数形での問題の要素の存在を等しく含み、逆に単数形も問題の要素の複数を含む。
【0029】
本発明の更に別の詳細及び利点は、図面に示す実施形態からもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による装置での経時的な透析液の流量の経過を示す唯一の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
透析器を通って流れる透析液の流量を縦座標に、時間を横座標に示している。
【0032】
図示のように、透析器を通る透析液の流量の増加は、拡散質量移送ではなくてむしろ透析液の中への膜を通じた血液の対流質量移送のみが起こる調整フェーズ(ポイントA)の後に第1のフェーズP1で起こり、増加は、時間が経過すると第1のフェーズでより小さくなる。
【0033】
図の垂直線は、第1及び第2のフェーズ間の境界を示している。第2のフェーズP2では、透析液の流量は、第1のフェーズよりも高く、かつ殆ど一定である。
【0034】
第1のフェーズから第2のフェーズへの流量の経過の移行は、図から見ることができるように定常的にかつ段差なく行われる。
【0035】
第1のフェーズP1では、流量の経過がプロファイル描写され、プロファイルは、固定的に予め定めることができ、又は患者の病状、患者の体重、彼の分布容積などのような1又は2以上のパラメータに依存することができる。
【0036】
第2のフェーズP2では、透析液の流量の設定は、第2のフェーズで測定されたクリアランスK(OCM制御式クリアランスモデリング)に依存して、及び/又は特定の透析投与量が到達されなければならない処方された治療時間に依存して又は定処方された望ましい値又は望ましい値プロファイルに従って行われる。
【0037】
図から見ることができるように、塩、尿素などの高速除去は、比較的低い透析流量が設定されるという点で不均衡の発生とそれに関連付けられたその結果に起因して治療の開始時に直接防止される。透析液の実際の処方された流量は、従って、可能な限り速い透析物ポンプの上昇よって到達されるのではなく、むしろ流量の遅い増加による意図的時間遅延を用いて到達される。
【0038】
第2のフェーズでの流量の到達は、図から認められるように、段階的に又は連続的に行うことができる。
【0039】
通常は尿に排泄される物質のその後の治療に対して治療の開始時でのより遅い回収は、治療のその後の時点よりも治療の開始時に異なる透析液が使用されるという点でも達成することができる。血液中の問題の物質の濃度の初期に低くて次により高い低減も、この方式で達成することができる。異なるバッグなどに格納された異なる透析液が使用されること、又は1又は2以上の成分の濃度が透析液の1つのかつ同じリザーバ内で直線的又は段階的に変更されることがこの手順を用いて考えられる。
図1
【国際調査報告】