IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェデラル−モーグル パワートレイン インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-518057熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法
<>
  • 特表-熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法 図1
  • 特表-熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法 図1A
  • 特表-熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法 図2
  • 特表-熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法 図2A
  • 特表-熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法 図3
  • 特表-熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法 図3A
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(54)【発明の名称】熱収縮性糸を有する編まれた保護スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   D04C 1/02 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
D04C1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542533
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 US2020014708
(87)【国際公開番号】W WO2020154458
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】16/749,725
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/795,999
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 省三
【テーマコード(参考)】
4L046
【Fターム(参考)】
4L046AA01
4L046AA05
4L046AA24
4L046AD01
4L046BA01
4L046BA02
4L046BB00
(57)【要約】
保護テキスタイルスリーブ(10)およびその構築方法が提供される。スリーブ(10)は、互いに編まれた複数の糸(20,22)を有する、縫い目のない管状の編まれた壁(12)を含む。糸(20,22)のうちの複数は、高温・非熱収縮性糸(20)であり、糸(20,22)のうちの複数は、熱収縮性糸(22)である。熱収縮性糸(22)は、高温・非熱収縮性糸(20)を収縮させない温度で収縮可能である。スリーブ(10)は、編まれる際における第1の長さ(L1)および第1の厚さ(t1)、ならびに単一の熱処理プロセスに曝される際における、第1の長さ(L1)よりも短い第2の長さ(L2)および第1の厚さ(t1)よりも大きい第2の厚さ(t2)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部間で中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する、縫い目のない周方向に連続的な可撓性のある管状の壁を備え、前記壁は、第1の非熱処理状態において互いに編まれた複数の糸を含み、第1の複数の前記複数の糸は実質的に非熱収縮性の糸であり、第2の複数の前記複数の糸は熱収縮性糸であり、前記熱収縮性糸は、第2の熱処理状態において、前記非熱収縮性の糸を実質的に収縮させない温度で長さ方向に収縮され、前記実質的に非熱収縮性の糸を軸方向にまとめさせる、保護的な編まれたスリーブ。
【請求項2】
前記壁は、前記壁が前記第1の非熱処理状態にある間における第1の厚さおよび前記第2の熱処理状態にある間における第2の厚さを有し、前記第2の厚さは、前記第1の厚さよりも約25~90パーセント大きい、請求項1に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項3】
前記第2の厚さは、前記第1の厚さよりも約50~90パーセント大きい、請求項2に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項4】
前記第2の厚さは、前記第1の厚さよりも約70~90パーセント大きい、請求項2に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項5】
前記壁は、前記第1の非熱処理状態の間における第1の摩耗に対する耐性および前記第2の熱処理状態の間における第2の摩耗に対する耐性を有し、前記第2の摩耗に対する耐性は、前記第1の摩耗に対する耐性よりも大きい、請求項2に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項6】
前記壁は、前記第1の非熱処理状態の間における第1の端部ほつれに対する耐性および前記第2の熱処理状態の間における第2の端部ほつれに対する耐性を有し、前記第2の端部ほつれに対する耐性は、前記第1の端部ほつれに対する耐性よりも大きい、請求項2に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項7】
前記壁は、前記第1の非熱処理状態の間における第1の耐熱性および前記第2の熱処理状態の間における第2の耐熱性を有し、前記第2の耐熱性は、前記第1の耐熱性よりも大きい、請求項2に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項8】
前記壁は、前記第1の非熱処理状態の間における第1の密度および前記第2の熱処理状態の間における第2の密度を有し、前記第2の密度は、前記第1の密度よりも大きい、請求項2に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項9】
前記非熱収縮性の糸および前記熱収縮性糸は、等しい端部の数で互いに編まれ、前記非熱収縮性の糸および前記熱収縮性糸は、1:1の編みパターンで互いに編まれ、前記非熱収縮性の糸および前記熱収縮性糸は、反対のSおよびZらせん方向に互いに交互になる、請求項1に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項10】
前記非熱収縮性の糸はマルチフィラメントであり、前記熱収縮性糸はモノフィラメントである、請求項1に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項11】
両端部間で中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する、縫い目のない周方向に連続的な可撓性の管状の壁を備え、前記壁は、第2の複数の糸と編まれた第1の複数の糸を含み、前記第1の複数の糸および前記第2の複数の糸は、互いに異なる熱収縮率を有し、前記壁は、前記壁を所定の温度に曝す前における第1の厚さおよび前記壁を前記所定の温度に曝した後における第2の厚さを有し、前記第2の厚さは、前記第1の厚さよりも約25~90パーセント大きい、保護的な編まれたスリーブ。
【請求項12】
前記壁は、前記壁を前記所定の温度に曝す前における第1の長さおよび前記壁を前記所定の温度を曝した後における第2の長さを有し、前記第2の長さは、前記第1の長さよりも短い、請求項11に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項13】
前記第2の長さは、前記第1の長さよりも少なくとも10パーセント短い、請求項12に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項14】
前記第1の複数の糸は、前記壁を前記所定の温度に曝す際、編まれたままの長さの少なくとも10パーセント長さ方向に収縮し、前記第2の複数の糸は、前記壁を前記所定の温度に曝す際、編まれたままの長さの2パーセント未満で長さ方向に収縮する、請求項13に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項15】
前記第1の複数の糸はモノフィラメントであり、前記第2の複数の糸はマルチフィラメントである、請求項14に記載の保護的な編まれたスリーブ。
【請求項16】
保護テキスタイルスリーブを構築する方法であって、
複数の第1の糸を複数の第2の糸と編んで、中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する縫い目のない管状の壁を形成することを含み、結果として生じる前記縫い目のない管状の壁は、第1の厚さを有し、前記方法はさらに、
編まれた前記壁を所定の温度に曝し、前記第1の糸を長さ方向に収縮させ、前記第1の糸によってもたらされる力の下、前記第2の糸を軸方向にまとめて、前記縫い目のない管状の壁を前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さに広げることを含む、方法。
【請求項17】
前記第1の厚さを前記第2の厚さまで約25~90パーセント増大させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の厚さを前記第2の厚さまで約50~90パーセント増大させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の厚さを前記第2の厚さまで約70~90パーセント増大させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
編まれた前記壁を前記所定の温度に曝す際、前記第1の糸を少なくとも10パーセント長さ方向に収縮させ、編まれた前記壁を前記所定の温度に曝す際、前記第2の糸を2パーセント未満で長さ方向に収縮させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年1月23日に提出された米国仮特許出願番号第62/795,999号および2020年1月22日に提出された米国特許出願第16/749,725号の利益を主張し、上記出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、テキスタイルスリーブに関し、より特定的には、編まれた(braided)テキスタイルスリーブおよびそれらの構築方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
固体ポリマー管類または金属管類などの耐熱性管状部材を有してそこに接続されるワイヤおよび温度感応性センサなどの温度感応性の細長い部材を保護することが知られている。既知の管類はそれらを通って延在するワイヤに高熱に対する保護を提供できるが、このような管類は一般に硬く可撓性に乏しいため、曲がりくねった経路に沿ってワイヤを経路決めする能力は制限される。編むことなどによって、より可撓性の高い管状部材を提供する試みがなされているが、このような編まれた管状部材、スリーブまたはシースとも呼ばれる、の耐熱性は、一般に、約華氏280度未満の温度に制限される。加えて、編まれたスリーブによって提供される摩耗に対する耐性は一般に低いため、スリーブは時間とともにすり減ることがあり、これによりその中のワイヤがダメージを受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、必要とされるのは、その中を通って延在する細長い部材に、華氏280度以上の温度などの高熱に対する保護を提供し、可撓性があり、耐摩耗性があり、ほつれに対する耐性がある、保護スリーブである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の1つの局面によれば、保護テキスタイルスリーブは、両端部間で中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する、縫い目のない周方向に連続的な管状の編まれた壁を含む。壁は、互いに編まれた複数の糸を含み、糸のうちの複数は高温・非熱収縮性糸であり、糸のうちの複数は熱収縮性糸である。熱収縮性糸は、高温・非熱収縮性糸を収縮させない、または少なくとも高温・非熱収縮性糸を実質的に収縮させない温度において収縮可能である。したがって、例示であって限定ではないが、熱収縮性糸は、それらの元の長さの10パーセントよりも大きく、たとえばそれらの元の長さの約10~90パーセント以上、長さ方向に収縮し得る一方、非熱収縮性糸は、スリーブが熱収縮・熱処理プロセスに曝されるとき、それらの元の長さの約2パーセント以下で収縮し得る。
【0006】
本発明の別の局面によれば、熱収縮性糸および非熱収縮性糸は、収縮される際、熱収縮性糸が非熱収縮性糸を軸方向に圧縮させる(集める、まとめる、ゆがめる)ように、互いに編まれ、スリーブの編まれた壁の厚さは、熱収縮性糸を熱収縮させる前における厚さに対して約25~90パーセント増加され、増加された壁厚さは、摩耗に対する増大した耐性、ほつれに対する増大した耐性、汚染の侵入に対する増大した耐性、増大した断熱性のレベル、および高温熱条件に対する増大した保護のレベルを提供する。
【0007】
本発明の別の局面によれば、熱収縮性糸を熱収縮させる際、非熱収縮性糸は、熱収縮糸の間で軸方向に圧縮されてまとめられ、これにより壁の密度を増大させ、同様に摩耗に対する耐性を増大させ、断熱性を増大させ、高温熱条件に対する保護のレベルを増大させ、汚染の侵入に対する耐性を増大させ、スリーブの壁をある長さに切断する際における糸のほつれおよび使用中のスリーブの端部のほつれに対する耐性を増大させる。
【0008】
本発明の別の局面によれば、非熱収縮性糸および熱収縮性糸は、互いに編まれた端部の数が等しくなるように提供され得る。これにより、均等な見た目およびスリーブの全体にわたる均等な保護のレベルを提供する。
【0009】
本発明の別の局面によれば、非熱収縮性糸および熱収縮性糸は、それぞれ1:1の編みパターンで編まれ得る。非熱収縮性糸および熱収縮性糸は、反対のSおよびZらせん方向に互いに交互になる。
【0010】
本発明の別の局面によれば、非熱収縮性糸は、所望のとおりに、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントとして提供されて、所望のタイプの耐摩耗性保護、被覆率および可撓性を有するスリーブを提供し得る。
【0011】
本発明の別の局面によれば、非熱収縮性糸は、アラミドマルチフィラメントとして提供され得る。これにより、たとえば華氏280度を超える高温に曝されたときに、劣化に対するスリーブの耐性を強化する。
【0012】
本発明の別の局面によれば、熱収縮性糸は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)モノフィラメントとして提供され得る。
【0013】
本発明の別の局面によれば、保護的な編まれたスリーブは、両端部間で中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する、縫い目のない周方向に連続的な可撓性のある管状の壁を含み、壁は、第2の複数の糸と編まれた第1の複数の糸を含み、第1の複数の糸および第2の複数の糸は、互いに異なる熱収縮率を有する。壁は、壁を所定の温度に曝す前における第1の厚さおよび壁を所定の温度に曝した後における第2の厚さを有し、第2の厚さは、第1の厚さよりも約25~90パーセント大きい。これにより、耐摩耗性を増大させ、汚染の侵入に対する耐性を増大させ、壁の耐熱性を増大させる。
【0014】
本発明の別の局面によれば、壁は、壁を所定の温度に曝す前における第1の長さおよび壁を所定の温度に曝した後における第2の長さを有し、第2の長さは、第1の長さよりも短い。これにより、増大した耐摩耗性、汚染の侵入に対する増大した耐性、および壁の増大した耐熱性に寄与する。
【0015】
本発明の別の局面によれば、第2の長さは、第1の長さよりも少なくとも10パーセント短い。
【0016】
本発明の別の局面によれば、第1の複数の糸は、壁を所定の温度に曝す際、編まれたままの長さの少なくとも10パーセント長さ方向に収縮し、第2の複数の糸は、壁を上記所定の温度に曝す際、編まれたままの長さの2パーセント未満で長さ方向に収縮する。これにより、壁を所定の温度に曝す際、増大した壁の厚さに寄与し、したがって耐摩耗性を増大させ、汚染の侵入に対する増大した耐性、および壁の増大した耐熱性に寄与する。
【0017】
本発明の別の局面によれば、第1の複数の糸は、モノフィラメントとして提供されてもよく、第2の複数の糸は、マルチフィラメントとして提供されてもよい。
【0018】
本発明の別の局面によれば、壁は、第1の複数の糸および第2の複数の糸のみを含んで編まれ得る。
【0019】
本発明の別の局面によれば、保護テキスタイルスリーブを構築する方法は、複数の非活性・非熱収縮性糸を複数の活性・熱収縮性糸と編んで、中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する縫い目のない管状の壁を形成することを含み、結果として生じる編まれた壁は、第1の非熱処理状態にある。さらに、編まれた壁を第2の熱処理状態に熱処理し、非活性・非熱収縮性糸を実質的に長さ方向に収縮させずに、活性・熱収縮性糸を活性化させ長さ方向に収縮させ、非活性・非熱収縮性糸をまとめて、収縮された糸の長さに沿ってくねくねした曲がりくねった形状にすることを含む。
【0020】
本発明の別の局面によれば、方法は、非熱収縮性糸と熱収縮性糸とを1:1の編みパターンで互いに交互になる関係で編んで、実質的にバランスのとれた含有量および非熱収縮性糸および熱収縮性糸の均等な分布を有するスリーブを提供することをさらに含み得る。
【0021】
本発明の別の局面によれば、方法は、編まれた壁の第1の厚さを、壁が第1の非熱処理状態にあるときから、壁が第2の熱処理状態にあるときにおける第2の厚さまで、たとえば第1の厚さの25パーセントよりも大きく、好ましくは50パーセントよりも大きく、より好ましくは75パーセントよりも大きくなるように増大させることをさらに含み得る。これにより、摩耗に対する壁の耐性を増大させ、壁の断熱性特性を増大させて、壁によって拘束される細長い部材に、汚染の侵入に対する、およびたとえば華氏280度以上の高温極度環境熱条件に対する強化された保護を提供する。
【0022】
本発明の別の局面によれば、方法は、編まれた壁の第1の密度を、壁が第1の非熱処理状態にあるときから、壁が第2の熱処理状態にあるときにおける第2の密度まで、第2の密度が第1の密度よりも著しく大きくなるように、たとえば第1の密度の25パーセントよりも大きく、好ましくは50パーセントよりも大きく、より好ましくは75パーセントよりも大きくなるように増大させることをさらに含み得る。これにより、摩耗に対する壁の耐性を著しく増大させ、壁の断熱性特性を増大させて、壁によって拘束される細長い部材に、高温極度環境熱条件に対する強化された保護を提供し、汚染の侵入に対する耐性を増大させ、さらには切断中および使用中におけるほつれに対する糸の耐性を増大させる。
【0023】
本発明の別の局面によれば、保護テキスタイルスリーブを構築する方法は、複数の第1の糸を複数の第2の糸と編んで、中央長手方向軸に沿って長さ方向に延在する縫い目のない管状の壁を形成することを含み得る。結果として生じる縫い目のない管状の壁は、第1の厚さを有する。さらに、編まれた壁を所定の温度に曝し、第1の糸を長さ方向に収縮させ、収縮した第1の糸によってもたらされる力の下、第2の糸を軸方向にまとめて、縫い目のない管状の壁を第1の厚さよりも大きい第2の厚さに広げる。
【0024】
本発明の別の局面によれば、方法は、編まれた壁を所定の温度に曝す際、第1の厚さを第2の厚さまで約25~90パーセント増大させることをさらに含み得る。
【0025】
本発明の別の局面によれば、方法は、編まれた壁を所定の温度に曝す際、第1の厚さを第2の厚さまで約50~90パーセント増大させることをさらに含み得る。
【0026】
本発明の別の局面によれば、方法は、編まれた壁を所定の温度に曝す際、第1の厚さを第2の厚さまで約70~90パーセント増大させることをさらに含み得る。
【0027】
本発明の別の局面によれば、方法は、編まれた壁を所定の温度に曝す際、第1の糸を少なくとも10パーセント長さ方向に収縮させ、編まれた壁を所定の温度に曝す際、第2の糸を2パーセント未満で長手方向に収縮させることを含み得る。これにより、第2の糸上に軸方向に向けられる力を第1の糸にもたらし、第2の糸がまとめられて編まれた壁の厚さを増大させる。
【0028】
図面の簡単な説明
本発明のこれらのおよび他の局面、特徴ならびに利点は、現在好ましい実施形態およびベストモードの以下の詳細な説明、添付の請求項ならびに添付の図面と関連して考慮されたとき、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】非活性で、はじめに編まれたままの、熱処理されていない第1の状態において示される本発明の一実施形態にしたがって構成された管状の編まれたスリーブの概略斜視図であって、保護対象となる細長い部材がそのキャビティ内に配置されている図である。
図1A図1に類似の図であって、管状の編まれたスリーブが、活性化され、熱処理された第2の状態において示される図である。
図2】非活性で、はじめに編まれたままの、熱処理されていない第1の状態において示される図1の管状の編まれたスリーブの壁の一部の拡大概略図である。
図2A】活性化され、熱処理された第2の状態において示される図1Aの管状の編まれたスリーブの壁の一部の拡大概略図である。
図3】管状の編まれたスリーブの壁に編まれた非熱収縮性・高温糸の側面図であって、非熱収縮性・高温糸が、管状の編まれたスリーブが熱処理プロセスを受ける前において示される図である。
図3A】管状の編まれたスリーブが熱処理プロセスを受けた後において示される、非熱収縮性・高温糸の図3に類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、図1図2Aは、本発明の1つの局面にしたがって構築された、以下スリーブ10とも呼ばれる、管状の編まれた保護テキスタイルスリーブを示す。単一の連続的な編みプロセスにおいて編まれるような、スリーブ10は、両端部16,18間で中央長手方向軸14に沿って長さ方向に延在する、キャビティ13とも呼ばれる通路を画定する、編まれた周方向に連続的な縫い目のない管状の壁12を有する。キャビティ13は、ワイヤハーネス、管、パイプなどの、保護対象となる細長い部材15を受容する。壁12は、互いに編まれた糸の複数の端部(当該技術において、モノフィラメントまたはマルチフィラメントにかかわらず、単一の糸フィラメントであると理解されるような、端部)を含んで編まれる。複数の糸は、非熱収縮性・高温糸20であり(図3および図3A;高温とは、材料特性または長さを変えることなく華氏280度を超える温度に耐えることができることを意味する)、複数の糸は、熱収縮性糸22である(架橋熱収縮性糸とは、糸22がそれらの元の活性化されていない長さの10%以上、最大90%収縮するように活性化されることができることを意味する;図1および図1A)。熱収縮性糸22は、高温糸20を収縮させない、または少なくとも高温糸を実質的に収縮させない熱処理プロセスにおける温度において収縮可能である。したがって、例示であって限定ではないが、スリーブ10が熱処理プロセスに曝されるとき、熱収縮性糸22は、それらの元の長さの10パーセントよりも大きく、たとえば約10~90パーセント長さ方向に(軸方向に)収縮し得る一方、非熱収縮性・高温糸20は、それらの元の長さの約2パーセント以下で収縮し得る。したがって、スリーブ10が熱処理される際、熱収縮性糸22は、約10~90パーセント長さ方向に収縮される一方、非熱収縮性・高温糸20は、実質的に収縮されない状態を維持する。このように、図3Aに示されるように、非熱収縮性・高温糸20は、軸方向に圧縮される(軸方向に集められる、軸方向にゆがめられるまたは軸方向にまとめられるとも呼ばれる)結果として、それらの長さに沿って曲がりくねったくねくねした構成を呈し、スリーブ10の編まれた壁12の有効厚さが、熱収縮性糸22を熱収縮する前における第1の厚さt1(図2;壁12の一部を示す、壁12の残りの見えない部分は示される部分と同様であると認識されたい)から、熱収縮性糸22を熱収縮した後における第2の厚さt2(図2A;壁12の一部を示す、壁12の残りの見えない部分は示される部分と同様であると認識されたい)まで、少なくとも25パーセント、より好ましくは約50~90パーセント増大され、壁12の密度が、熱収縮性糸22を熱収縮させる前における第1の密度d1(図2)から、熱収縮性糸22を熱収縮させた後における第2の密度d2(図2A)まで増大され、d2は、d1の25パーセントよりも大きい、好ましくは50パーセントよりも大きい、より好ましくはd1の75パーセントよりも大きい。増大された壁厚さt2および増大された密度d2は、摩耗に対する増大した耐性、増大した断熱性のレベル、高温熱条件に対する増大した熱保護、ならびにスリーブ壁12をある長さに切断する際における糸20,22のほつれおよび使用中におけるスリーブ10の端部16,18のほつれに対する増大した耐性を含む相乗効果を提供する(図2A)。
【0031】
壁12の全体、または他の糸が含まれる場合には実質的に全体を形成する編まれた糸20,22は、所望の数の関連する端部(1つの端部は単一の糸として知られる)で提供され、1:1(図2および図2A)など、熱収縮性糸22に対する高温糸20の端部の任意の所望のそれぞれの比率で、反対のSおよびZらせん方向で(SおよびZ方向は図に示されており、本願の記載を見る際、テキスタイル技術における当業者によって理解され得るとおりである)、スリーブ10の外周の周りに互いに交互にされて、実質的に周方向にバランスのとれた糸20,22の含有量、ならびに外周の周りにおける、およびスリーブ10の長さに沿った均等な厚さおよび密度を有するスリーブ10を提供する。
【0032】
本開示の別の局面によれば、熱収縮性糸22は、任意の好適な熱収縮性モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントとして提供され得る。一例として、例示であって限定ではないが、1/4インチの直径のスリーブが製造され、例示であって限定ではないが、熱収縮性糸22は約0.26mmの直径および約華氏280度の熱処理温度で約15パーセントの熱収縮率を有するPEEKのモノフィラメントとして提供された。さらに、例示の実施形態においては、非熱収縮性糸20は、例示であって限定ではないが、約0.13mmの直径および約華氏280度の熱処理温度で約0.5パーセントの熱収縮率を有するアラミドのマルチフィラメントとして提供された。たとえば約華氏250~320度の間の温度、約0.5~3分間における例示の壁12の熱処理の際、例示であって限定ではないが、長さ収縮率は約19パーセントであり、熱処理される前におけるスリーブ10の長さL1(図1)が長さL2(図1A;L1×81%)にまで低減されるとともに、壁12の厚さt1(図2)がt2まで約80パーセント増加した(図2A;壁12が熱処理される前における図3、および壁12が熱処理された後における図3Aに示されるような、非熱収縮性糸20の軸方向のまとまりおよび曲がりくねりによって生じる)。結果として生じるスリーブ10は、汚染の侵入に対する増大した耐性、摩耗に対する増大した耐性および増大した熱特性を有して提供され、その中に収容される電気部材を、最大約華氏320度、最大約40時間の極度環境温度に対して耐久し保護することを可能にし、スリーブ10は高い可撓性および直径方向に膨張する特性を維持した。本願では、当業者によって理解されるように、任意の所望の直径のスリーブが好適にサイズ決めされた直径の非熱収縮性糸20および熱収縮性糸22ならびにそれらの端部の数を用いて製造され得る。
【0033】
本開示の別の局面によれば、編まれたテキスタイルスリーブ10を構築する方法が提供される。方法は、第1の非熱処理状態において、複数の糸20,22を互いに編んで、中央長手方向軸14に沿って長さ方向に延在する縫い目のない管状の壁12を形成することを含み、少なくともいくつかの糸は、非活性・非熱収縮性糸20として提供され、少なくともいくつかの糸は、活性・熱収縮性糸22として提供される。その後、第1の温度で編まれた壁を熱処理して、第1の温度で、非活性・非熱収縮性糸20を収縮または実質的に収縮させずに、活性・熱収縮性糸22を長さ方向に収縮させる。
【0034】
本開示の別の局面によれば、方法は、非熱収縮性糸20および熱収縮性糸22を1:1の編みパターンで互いに交互になる関係で編んで、非熱収縮性糸20および熱収縮性糸22の実質的にバランスのとれた含有量を有するスリーブ10を提供することをさらに含み得る。
【0035】
本開示の別の局面によれば、方法は、編まれた壁12を熱処理して、非熱収縮性糸20がそれらの元の編まれたままの長さの約98パーセント以内のままであるように、非熱収縮性糸20を熱収縮されていないまたは実質的に熱収縮されていない状態に維持しながら、熱収縮性糸22を約10~90パーセント長手方向に収縮させることをさらに含み得る。
【0036】
本開示の別の局面によれば、方法は、編まれた壁12の第1の厚さt1を、壁12が第1の非熱処理状態にあるときから、熱処理プロセスを完了する際における第2の厚さt2まで増大させることをさらに含み得る。第1の厚さt1は、概ね第2の厚さt2まで約25~90パーセント、好ましくは約50~90、より好ましくは70~90パーセント、一実施形態においては約80パーセント増大され、これにより壁12の耐摩耗性、密度、耐熱性および端部ほつれ耐性を増大させる。
【0037】
本発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。加えて、本発明の様々な局面にしたがって構築された編まれた管状の壁は、例示であって限定ではないが、保護部材または拘束部材のものを含む、多数の使用を呈することができることが認識されるべきである。したがって、本発明は、特定的に記載された以外の方法で実施され得るとともに、本発明の範囲は最終的に許可される請求項によって定義されることが理解されるべきである。
図1
図1A
図2
図2A
図3
図3A
【国際調査報告】