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特表2022-518099電気車両および電気車両の充電連鎖の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】電気車両および電気車両の充電連鎖の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/12 20190101AFI20220307BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20220307BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220307BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220307BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220307BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220307BHJP
   B60L 53/65 20190101ALI20220307BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20220307BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20220307BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20220307BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220307BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B60L53/12
G08G1/123 A
G08G1/09 H
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L50/60
B60L53/65
B60L53/66
B60L58/12
H02J50/80
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/00 303C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526644
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2018081251
(87)【国際公開番号】W WO2020098935
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドネル チャーダシュ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
5H181
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD05
5H105AA20
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE12
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC26
5H125BC12
5H125BC21
5H125CC03
5H125EE27
5H125EE51
5H181AA20
5H181BB02
5H181BB04
5H181BB08
5H181BB12
5H181BB13
5H181FF13
5H181FF27
5H181MA50
5H181MB03
(57)【要約】
車両(1)は、車両(1)の前部および後部にワイヤレス電力伝送装置(7、8)を備える。このような車両(1)の充電連鎖が構築される。充電連鎖中の各車両(1)は、車両(1)が連鎖中の別の車両(1)のための電力のソースとなるソース、車両(1)が連鎖中の別車両(1)からの電力のシンクとなるシンクモード、および車両(1)が連鎖中の一台の車両(1)から電力を受けこの電力を連鎖中の別車両(1)に渡す媒介装置の少なくとも一つとして動作する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両に電力を提供して別の電気車両を充電可能とする電気車両の連鎖の形成方法であって、
前記連鎖用の連鎖データ構造を形成し、
車両から前記連鎖への加入リクエストを受け取り、
前記車両が前記連鎖に加入することを許可すべきであると決定し、前記車両の識別子が含まれるよう前記連鎖データ構造を更新し、
別車両から前記連鎖への加入リクエストを受け取り、
前記別車両が前記連鎖に加入することを許可すべきであると決定し、前記別車両の識別子が含まれるよう前記連鎖データ構造を更新し、
これにより、前記電気車両の連鎖が、前記車両と、前記別車両と、前記連鎖構造を形成した車両または前記連鎖に加入した別の車両である追加の別車両とを含む少なくとも三台の電気車両を含み、
前記連鎖中の各車両のモードを設定し、第1車両のモードは、前記第1車両が前記連鎖中の別の車両の電力のソースであるソースモードであり、第2車両のモードは、前記第2車両が前記第1車両からの電力のシンクであるシンクモードであり、第3車両のモードは、前記第3車両が前記第1車両から電力を受けこの電力を前記第2車両に渡す媒介モードであることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記連鎖データ構造は、前記連鎖の識別子を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記連鎖の識別子を用いて前記連鎖の存在を告知することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記連鎖に関するデータを車両が受信するよう無線送信して前記連鎖の存在を告知することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の方法において、前記連鎖への加入リクエストは、前記連鎖の識別子を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法において、前記連鎖への加入リクエストは、前記車両がソース、シンク、または媒介装置となることを希望するか否かの表示を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法において、前記車両が電力のソースとなることを希望するが、蓄えられた電力が不十分である場合に、前記車両からの前記連鎖への加入リクエストを拒否することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法において、前記車両が電力のシンクになることを希望するが、前記連鎖に電力のソースが不十分である場合に、前記車両からの前記連鎖への加入リクエストを拒否することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法において、前記充電連鎖中の各車両に充電連鎖マップを送信して、前記充電連鎖中の車両の順番および前記充電連鎖中の車両間の電力伝送方向を示すことを特徴とする方法。
【請求項10】
電気車両であって、
充電式バッテリーと、
前記車両が前記車両の前方にある外部のワイヤレス電力伝送装置に電力を渡し、または外部のワイヤレス電力伝送装置から電力を受け取ることができるような前記車両の前部にある第1ワイヤレス電力伝送装置と、
前記車両が前記車両の後方にある外部のワイヤレス電力伝送装置に電力を渡し、または外部のワイヤレス電力伝送装置から電力を受け取ることができるような前記車両の後部にある第2ワイヤレス電力伝送装置と、
前記第1ワイヤレス電力伝送装置と前記第2ワイヤレス電力伝送装置とを選択的に接続するよう動作可能な電気系統とを備え、
これにより、前記第1および第2ワイヤレス電力伝送装置の一方によって受け取られた外部のワイヤレス電力伝送装置からの電力を前記第1および第2ワイヤレス電力伝送装置の他方または前記充電式バッテリーに選択的に渡すことが可能であることを特徴とする電気車両。
【請求項11】
請求項10に記載の電気車両において、
他の電気車両によって受信されるよう無線信号を送信し、他の電気車両によって送信された無線信号を受信する無線送受信機を備え、
前記車両は、前記無線送受信機に、
前記電気車両が電気車両の連鎖に加入するリクエストを送信すること、および
別の電気車両からの電気車両の連鎖への加入リクエストを受信することの少なくとも一方を選択的に行わせるよう構成されることを特徴とする電気車両。
【請求項12】
請求項11に記載の電気車両において、前記車両は、前記車両のモードを選択的に設定するよう構成され、前記モードは、
前記車両が前記連鎖中の別の車両のための電力のソースとなるソースモードと、
前記車両が前記連鎖中の別の車両から受けた前記車両バッテリーの充電用の電力のシンクとなるシンクモードと、
前記車両が前記連鎖中の別の車両から電力を受け、前記電力を前記連鎖中のさらに別の車両に渡す媒介モードから選択されることを特徴とする電気車両。
【請求項13】
請求項12に記載の電気車両において、前記車両は、前記電気車両が電気車両の連鎖に加入するリクエストを送信するよう構成され、前記リクエストは、前記車両がソース、シンク、または媒介装置になることを希望するか否かの表示を含むことを特徴とする電気車両。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の電気車両において、前記車両は前記車両の連鎖の連鎖データ構造を生成し、前記車両の連鎖を管理するよう構成されることを特徴とする電気車両。
【請求項15】
請求項14に記載の電気車両において、前記車両は、前記連鎖の識別子を他の車両によって受信されるよう無線送信することによって前記連鎖の存在を告知するよう構成されることを特徴とする電気車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、電気車両の連鎖(chain)を形成して、ある電気車両に別の電気車両への電力供給を可能とする方法、および電気車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータのみを駆動のために用いる純粋電気車両、および駆動のために内燃機関と電気モータの双方を備えるハイブリッド車両などの電気車両は、一般に電気モータ用の電荷を蓄える一つ以上の充電式バッテリーを備える。このバッテリーの容量は、しばしば制限要素となる。具体的に、車両の航続距離、すなわち、再充電前に進むことのできる距離がしばしば制限されることから、バッテリーは頻繁に充電する必要がある。固定充電ステーションが、車両の所有者の土地または仕事場、および場合によって(特に市街地において)公共区域で利用可能かもしれない。しかし、農村地域や長距離にわたる高速道路区間など、固定充電ステーションが容易に利用できない場所も多い。いずれにしても、ユーザが固定充電ステーションを用いて車両のバッテリーを再充電することは常に便宜ではないかもしれず、または可能でないかもしれない。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示される第1の側面によれば、電気車両に電力を提供して別の電気車両を充電可能とする電気車両の連鎖の形成方法であって、
前記連鎖用の連鎖データ構造を形成し、
車両から前記連鎖への加入リクエストを受け取り、
前記車両が前記連鎖に加入することを許可すべきであると決定し、前記車両の識別子が含まれるよう前記連鎖データ構造を更新し、
別車両から前記連鎖への加入リクエストを受け取り、
前記別車両が前記連鎖に加入することを許可すべきであると決定し、前記別車両の識別子が含まれるよう前記連鎖データ構造を更新し、
これにより、前記電気車両の連鎖が、前記車両と、前記別車両と、前記連鎖構造を形成した車両または前記連鎖に加入した別の車両である追加の別車両とを含む少なくとも三台の電気車両を含み、
前記連鎖中の各車両のモードを設定し、第1車両のモードは、前記第1車両が前記連鎖中の別の車両の電力のソースであるソースモードであり、第2車両のモードは、前記第2車両が前記第1車両からの電力のシンクであるシンクモードであり、第3車両のモードは、前記第3車両が前記第1車両から電力を受けこの電力を前記第2車両に渡す媒介モードである方法が提供される。
【0004】
これにより、多数の車両を、実質的に車両の連鎖としてのバッテリー充電スキームに参加させることが可能となる。車両は、例えば静止していても、あるいはともに移動中であってもよい。車両は必要な場合、別の車両から電力を受け取ることができる。車両は、例えば蓄えられた余剰電力がある場合に、別の車両に電力を与えることができる。連鎖中の一台以上の車両に媒介モードを用いることで、一方の車両から別の車両に、これらが車両の列中などで互いに近接していない場合でも、電力を伝送可能となる。媒介モードで動作する車両は、実質的に充電車両と被充電車両との間の伝送ブリッジとして動作する。
【0005】
連鎖の連鎖データ構造は、車両によって生成されてよい。一つの例では、この車両は事実上連鎖の管理者となってもよい。あるいは、連鎖の生成および/または管理は、連鎖中の車両全体にわたって分散されてもよく、または車両と通信している何らかのリモートの集中管理型装置またはコンピュータによって行われてもよい。
【0006】
一つの例において、前記連鎖データ構造は、前記連鎖の識別子を含む。
【0007】
一つの例において、この方法は、前記連鎖の識別子を用いて前記連鎖の存在を告知することを含む。
【0008】
一つの例において、この方法は、前記連鎖に関するデータを車両が受信するよう無線送信して前記連鎖の存在を告知することを含む。
【0009】
例えば、連鎖の存在は、一台の車両によって、連鎖の識別子を他の車両によって受信されるように無線でブロードキャストまたはマルチキャストすることによって告知されてもよく、または連鎖の識別子を他の車両によって受信されるように無線でブロードキャストまたはマルチキャストする何らかのリモートの集中管理型装置またはコンピュータによって告知されてもよい。連鎖の識別子を受信した時点で、他の車両は連鎖に加入することを申し込んでよい。
【0010】
一つの例において、前記連鎖への加入リクエストは、前記連鎖の識別子を含む。
【0011】
一つの例において、前記連鎖への加入リクエストは、前記車両がソース、シンク、または媒介装置となることを希望するか否かの表示を含む。
【0012】
一つの例において、この方法は、前記車両が電力のソースとなることを希望するが、蓄えられた電力が不十分である場合に、車両からの前記連鎖への加入リクエストを拒否することを含む。
【0013】
一つの例において、この方法は、前記車両が電力のシンクになることを希望するが、前記連鎖に電力のソースが不十分である場合に、前記車両からの前記連鎖への加入リクエストを拒否する工程を備える。
【0014】
一つの例において、この方法は、前記充電連鎖中の各車両に充電連鎖マップを送信して、前記充電連鎖中の車両の順番および前記充電連鎖中の車両間の電力伝送方向を示すことを含む。
【0015】
本明細書に開示される第2の側面によれば、電気車両であって、
充電式バッテリーと、
前記車両が前記車両の前方にある外部のワイヤレス電力伝送装置に電力を渡し、または外部のワイヤレス電力伝送装置から電力を受け取ることができるような前記車両の前部にある第1ワイヤレス電力伝送装置と、
前記車両が前記車両の後方にある外部のワイヤレス電力伝送装置に電力を渡し、または外部のワイヤレス電力伝送装置から電力を受け取ることができるような前記車両の後部にある第2ワイヤレス電力伝送装置と、
前記第1ワイヤレス電力伝送装置と前記第2ワイヤレス電力伝送装置とを選択的に接続するよう動作可能な電気系統とを備え、
これにより、前記第1および第2ワイヤレス電力伝送装置の一方によって受け取られた外部のワイヤレス電力伝送装置からの電力を前記第1および第2ワイヤレス電力伝送装置の他方または前記充電式バッテリーに選択的に渡すことが可能である電気車両が提供される。
【0016】
これにより、車両が別の電気車両に電力を伝送し、別の電気車両から電力を受けることが可能となる。この車両は、電力が充電式バッテリーまたは、例えば車両上のソーラーパネルなどの他のソースから提供される別の電気車両の電力のソース、充電式バッテリーを充電するのに用いられる別の電気車両からの電力のシンク、または車両が電力を一台の車両から受けて別の車両に伝送する媒介装置として選択的に動作可能である。
【0017】
一つの例において、電気車両は、
他の電気車両によって受信されるよう無線信号を送信し、他の電気車両によって送信された無線信号を受信する無線送受信機を備え、
前記車両は、前記無線送受信機に、
前記電気車両が電気車両の連鎖に加入するリクエストを送信すること、および
別の電気車両からの電気車両の連鎖への加入リクエストを受信することの少なくとも一方を選択的に行わせるよう構成される。
【0018】
一つの例において、前記電気車両は、前記車両のモードを選択的に設定するよう構成され、前記モードは、
前記車両が前記連鎖中の別の車両のための電力のソースとなるソースモードと、
前記車両が前記連鎖中の別の車両から受けた前記車両バッテリーの充電用の電力のシンクとなるシンクモードと、
前記車両が前記連鎖中の別の車両から電力を受け、前記電力を前記連鎖中のさらに別の車両に渡す媒介モードから選択される。
【0019】
一つの例において、前記電気車両は、前記電気車両が電気車両の連鎖に加入するリクエストを送信するよう構成され、前記リクエストは、前記車両がソース、シンク、または媒介装置になることを希望するか否かの表示を含む。
【0020】
一つの例において、前記電気車両は前記車両の連鎖の連鎖データ構造を生成し、前記車両の連鎖を管理するよう構成される。
【0021】
管理者として、車両は、例えば他の車両の連鎖への加入を認めるか否かを決定してもよい。
【0022】
一つの例において、前記電気車両は、前記連鎖の識別子を他の車両によって受信されるよう無線送信することによって前記連鎖の存在を告知するよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本願開示の理解を促進し、実施形態がどのように実施されるかを示すため、例示的に添付図面が参照される。
【0024】
図1】本願開示の一側面にかかる電気車両の例を概略的に示す図である。
図2】本願開示の一側面にかかる充電連鎖に配置された複数の車両の例を概略的に示す図である。
図3】本願開示の一側面にかかる方法の例のフローチャートである。
図4】充電連鎖中の複数の車両の充電方向の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
文脈上、他の意味に解釈される場合を除き、本明細書中、「電気車両」との用語は、部分的または専ら電力を用いて駆動する車両を説明するのに用いられる。これは、電気モータのみを用いて駆動する純粋な電気車両と、駆動するために内燃機関と電気モータとの双方を備えるハイブリッド車両とを含む。電気車両は、例えば自動車、四輪車(car)、バスまたは長距離バス(coach)、トラック、自動二輪車などであってよい。
【0026】
さらに、表現を簡潔にするため、何かをしている、何らかの動作をしている、またはある決定をしている等の電気車両について記述する。これは、当該電気車両の何らかのプロセッサが、通常はソフトウェア制御により、車両または車両の一部によって行われるべき動作を起こさせる、または決定を行うこと等を多くの場合意味することを理解されたい。
【0027】
一般に、電気車両は、電気モータへの電荷を蓄える一つ以上の充電式バッテリーを備える。車両の航続距離、すなわち、再充電前に進むことのできる距離が、バッテリーの蓄電容量が限られるためにしばしば制限されることから、バッテリーは頻繁に充電する必要がある。一般にケーブルを使って充電式バッテリーを接続する固定充電ステーションが、車両の所有者の土地または仕事場、および場合によって(特に市街地において)公共区域で利用可能かもしれない。しかし、農村地域や長距離にわたる高速道路区間、車両が市街地で渋滞に巻き込まれたときなど、固定充電ステーションが容易に利用できない場所や状況も多い。いずれにしても、ユーザが固定充電ステーションを用いて車両のバッテリーを再充電することは常に便宜ではないかもしれず、または可能でないかもしれない。
【0028】
本明細書に記載される例では、電気車両が互いに電力を受け渡してバッテリーを再充電できる電気車両の連鎖を形成可能となる。各電気車両は、連鎖に沿って伝えられ当該連鎖中の一台以上の他の電気車両を充電する電力のソース(source)、連鎖中の一台以上の他の電気車両から電力を受け取る電力のシンク(sink)、または連鎖中の一台の電気車両から受けた電力を当該電力を使って自身のバッテリーを充電することなく連鎖中の別の車両に渡す媒介装置(intermediary)として動作してもよい。これにより、固定充電ステーションにアクセスする必要なしに、電気車両を互いに充電可能となる。例えば、媒介電気車両が一つの電気車両から受けた電力を充電連鎖中の別の車両に伝える充電連鎖構造を用いることで、電気車両の充電に対して柔軟な手法を提供することができる。
【0029】
図面を参照すると、図1は、本願開示の一側面にかかる電気車両1の例を概略的に示す。上述のように、電気車両1は、専らまたは部分的に電力を用いて駆動する、例えば純粋な電気車両またはハイブリッド車両を広く含む任意の車両であってよい。
【0030】
車両1は、車両1の一つ以上のホイール3を駆動する電気モータ2を備える。車両1は、少なくとも電気モータ2に供給する電力を蓄える少なくとも一つの充電式バッテリー4を備える。車両1は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサ5、コンピュータプログラムとデータとを記憶しプロセッサ5の作業メモリを提供するデータ記憶装置およびメモリ6、などを備える。
【0031】
車両1は、車両1の前部の第1ワイヤレス電力伝送装置7と、車両1の後部の第2ワイヤレス電力伝送装置8とを備える。第1ワイヤレス電力伝送装置7は、例えば車両1のフロントバンパーの中、またはその真後ろに配置されてよい。第2ワイヤレス電力伝送装置8は、例えば車両1のリアバンパーの中、またはその真後ろに配置されてよい。
【0032】
ワイヤレス電力伝送装置7、8は、広く任意の種類のワイヤレス電力伝送装置であってよい。この点、ワイヤレス電力技術は、一般に近距離または遠距離に分類可能である。近距離または非放射型技術では、電力はワイヤのコイル間の誘導結合による磁界、または金属電極間の静電結合による電界によって短い距離を通って伝送される。パワービーミング(power beaming)とも呼ばれる遠距離または放射型技術では、電力は電磁波放射のビームによって伝送される。ワイヤレス電力伝送装置7、8がコイルを備える誘導結合は、最も広く用いられるワイヤレス技術であり、本例においては最も実用的である可能性が高い。共振誘導結合を用いて、相互作用するコイルの間で許容される、または実現可能な有効距離を増大させてもよい。インバータを設けて、車両のバッテリーからの直流(DC)を、コイルに給電して電力を別のコイルに伝送するのに用いられる交流(AC)に変換してもよい。同様に、整流器を設けて、コイルを介して受けたACを車両のバッテリーを充電するのに用いられるDCに変換してもよい。
【0033】
電気系統9が第1ワイヤレス電力伝送装置7と第2ワイヤレス電力伝送装置8との間に配置される。後述するように、電気系統9は、第1ワイヤレス電力伝送装置7と第2ワイヤレス電力伝送装置8とを選択的に接続して、電力伝送装置7、8の間で所望の時点、または指令されたときに電力を伝送するように動作可能である。電力を電力伝送装置7、8の間で伝送しない場合、電気系統9と電力伝送装置7、8の一方または双方との接続は実質的に切断される。
【0034】
車両1の前部の第1ワイヤレス電力伝送装置7は、車両1の前部に面した場所に位置する別のワイヤレス電力伝送装置に電力を伝送し、かつ別のワイヤレス電力伝送装置から電力を受けることができる。例えば、この別のワイヤレス電力伝送装置は、文字通り車両1の前方に位置してもよく、あるいは少なくとも車両1の前部の近傍(例えば左または右)にあってもよい。同様に、車両1の後部の第2ワイヤレス電力伝送装置8は、車両1の後部に面した場所に位置する別のワイヤレス電力伝送装置に電力を伝送し、かつ別のワイヤレス電力伝送装置から電力を受けることができる。例えば、この別のワイヤレス電力伝送装置は、文字通り車両1の後方に位置してもよく、あるいは少なくとも車両1の後部の近傍(例えば左または右)にあってもよい。以下明らかになるように、これは、例えば車両1が一列、前後、または左右に配置される場合にも電力を他の車両1に伝送し、または電力を他の車両1から受けることができることを意味する。これは、本願の充電構成が、例えば車両1が一列または並列に移動している場合、または例えば、駐車場に駐車しているなど車両が静止している場合(少なくともいくつかの車両が並列に駐車している場合)、道路に駐車している場合(少なくともいくつかの車両が前後に駐車している場合)、または交差点において赤信号で停止している場合などにも利用可能であることを意味する。
【0035】
車両1は、近くの車両1の存在を検出し、近くの車両1までの距離を測定する近接センサ10を備えてもよい。例えば車両1の前部および後部に、または前部および後部に面して複数の近接センサ10があってもよい。近接センサ10の測定値を、例えば車両1のプロセッサ5によって用いて、別の車両1が、それぞれの車両1のワイヤレス電力伝送装置7、8により車両1間で電力を伝送可能なほど物理的に近接しているか否かを検出してもよい。車両1が近接車両1から遠すぎる位置に移動中、または移動済みであり、有効な電力伝送を行えない場合、移動車両1のプロセッサ5は、音声および/または映像警報を発して、車両1の運転者に警告してもよい。この近接センサ10は、例えば超音波または電磁センサ等であってもよい。
【0036】
加えて、車両1は、無線信号を送信して他の電気車両1によって受信され、かつ他の電気車両1によって送信された無線信号を受信する無線送受信機11を備える。この無線送受信機11は、例えば別の車両とのローカル無線接続を、Bluetooth、Wi-Fi、赤外線、およびZigBeeなどのローカル無線通信技術の少なくとも一つを介して構築する。
【0037】
図2は、本願開示の一側面にかかる充電連鎖に配置された複数の車両1の例を概略的に示す。この車両1は、広く移動中または静止中でもよく、経時的に移動状態から静止状態に変化してもよい。
【0038】
車両1の(論理)充電連鎖の構築および動作方法の例を以下に述べる。一般に、これには4つの主要部分がある
【0039】
1. 充電連鎖構築
2. 車両間通信
3. 電力送信制御
4. 支払
【0040】
これらの各工程の例を以下に述べる。
【0041】
「1. 充電連鎖構築」に関し、この充電連鎖では、一般に、充電連鎖を最初に構築するのに何らかの開始装置(initiator)を必要とする。これは、電気車両が例えば携帯電話などの無線ネットワークを介して通信可能な一つ以上のリモートサーバなどの何らかの集中管理型リソースであってよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、充電連鎖を構築するための開始装置は、「親電気車両」と呼ばれる電気車両1の一台であってよい。
【0042】
充電連鎖を構築する判断は、自動プロセスであってよい。例えば、特定の車両1が、特定の時間に自身のバッテリー4に多量の電力を保有していると判断し、その電力の一部を他の車両1に伝送してそのバッテリーを充電可能であると演算してもよい。別の例として、特定の車両1が、そのバッテリー4内の充電レベルが低く、これによりそのバッテリー4を再充電する必要があると判断してもよい。別の例として、特定の車両1が、一台の電気車両から受けた電力を別の車両に渡す媒介装置として動作可能であり、動作する用意があると判断してもよい。いずれの場合でも、電気車両1は、電気車両1の充電連鎖を構築することを決定してもよい。これを自動的に行うことの代わりに、またはこれに加えて、これは例えば充電連鎖を構築すると決定した車両1の運転者または他のユーザによって手動で行われてもよい。
【0043】
車両1がそのバッテリー4内に多量の電力を保有しており、その一部を別の車両1に伝送可能か否か、または、そのバッテリー4を再充電するのに別の車両1からの電力を必要とするかは、例えばバッテリー4内の充電レベルの閾値に基づいてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、これは例えば、運転者の通常の運転習慣(運転者が通行する通常の経路、運転者の運転パターンなど)、家までの距離、または仕事場またはショッピングセンターまでの距離などに基づく、よりインテリジェントな決定でもよい。
【0044】
構築された充電連鎖に加入する任意の電気車両1を「子電気車両」と呼んでもよい。
【0045】
この例における、充電連鎖を形成した親電気車両と充電連鎖に加わった子電気車両との間の分類に加え、連鎖中の各車両1は、充電連鎖中でのその役割を示すまたは定義する「モード」を有する。本例では、3つのモードがある。
【0046】
1. ソース電気車両。これは、充電連鎖に加わって電力を伝送して他の車両を充電可能な電気車両である。簡単に言うと、ソース電気車両は、基本的にそのバッテリーパワーを連鎖中の他の車両と共有する。
【0047】
2. シンク電気車両。これは、充電連鎖中のソース電気車両から受けた電力により充電される必要のある電気車両である。シンク電気車両は電力を受けて自身のバッテリーを充電する。
【0048】
3. 媒介電気車両。これは、連鎖中の一台の電気車両から受けた電力を連鎖中の別の電気車両に渡す、または伝送する電気車両である。媒介電気車両はソース電気車両とシンク電気車両との間で電力を伝送する伝送ブリッジまたはラインとして動作する。
【0049】
なお、連鎖中の特定の電気車両1のモードは、経時的に変化してもよい。また、任意の特定の電気車両は、同時に一つ以上のモードにしたがって動作してもよい。例えば、特定の電気車両1が別の車両の電力のソースまたは電力のシンクとして動作する一方、同時に一台の車両から受けた電力を別の車両に渡す媒介装置として動作してもよい。
【0050】
この充電連鎖は、電気車両の連鎖への加入を制御し、どの車両がソース、シンクまたは媒介装置などとして動作可能かを制御し、広く連鎖および連鎖中の車両の機能を管理する管理者機能を有する。この管理者機能は、一般に、例えば無線ネットワークを介して電気車両が通信可能な(かつ、いくつかの例では連鎖を構築した)一つ以上のリモートサーバによって実行されてよい。別の例では、管理者機能は、連鎖が電気車両によって構築された場合には、例えば親電気車両1などの連鎖中の車両1の特定の一台によって実行されてもよい。別の例として、管理者機能は、例えば必要に応じて車両が互いに通信した状態で車両にわたって実行される分散ロジックを用いて、連鎖中の複数の車両によって実行されてもよい。
【0051】
管理者機能は、電気車両が充電連鎖に加わることができるか、電気車両が電力のソースもしくはシンクまたは電力を一台の車両から別の車両に伝送する際の媒介装置となりうるか、などを決定するルールを適用してもよい。このようなルールおよびこのルールに用いられる任意の閾値は、例えば充電連鎖の動作中に、例えば充電連鎖に加入または充電連鎖を脱退した車両、または充電済みもしくは他の車両に伝送可能な余剰の電気を持たない車両などを考慮に入れて、経時的に変化あるいは調整されてもよい。
【0052】
図3を簡潔に参照する。これは、本願開示の一側面にかかる方法の例のフローチャートを示す。車両の充電連鎖の構築および動作中の様々なステージで行われうる動作および判断のいくつかの例を示すものとして図3を参照してもよい。図3に示されない他の動作および判断も行われてよい。図3の例では、一台の電気車両1(「親」電気車両1)が連鎖を構築して管理することを前提とする。
【0053】
親電気車両1または他の管理者機能によって適用されうるルールの例の一部として、連鎖に加わるための車両からのリクエストが承認または拒否されてもよい。
【0054】
例えば、電気車両でない車両など、不適切な車両からの連鎖への加入リクエストは拒否されてもよい。
【0055】
別の例として、シンク電気車両(すなわち充電を希望するまたは必要とする車両)からの連鎖への加入リクエストは、例えば連鎖中のシンク電気車両が既に多すぎる場合には拒否されてもよい。これは、連鎖中のシンク電気車両が多すぎるということは、シンク電気車両を十分または適切に充電するのに十分な電力が一台以上のソース電気車両にないということを意味することを認識したものである。これは、連鎖中のシンク電気車両の数の単純な合計、または連鎖中のソース電気車両に対する連鎖中のシンク電気車両の数の比率に基づいてよい。より洗練されたルールでは、当該または各ソース電気車両で利用可能な電力量と当該または各シンク電気車両で必要とされた、または要求された電力量とを考慮に入れてもよい。
【0056】
別の例として、ソース電気車両(すなわち、十分な電荷を保有し、他の電気車両に充電可能であると主張する車両)からの連鎖への加入リクエストは、例えば当該車両のバッテリー充電量のレベルが低すぎる場合には拒否されてもよい。
【0057】
親電気車両1または他の管理者機能によって適用されうるルールの別の例として、一台の車両から別の車両に伝送可能な電力の最大レベルと、車両が充電連鎖に加わらなくてはならない最小持続時間とを制御し、調整してもよい。
【0058】
車両1の(論理)充電連鎖の構築および動作方法の4つの主要部分に戻ると、上述の第2の項目「2. 車両間通信」は、車両1を互いに通信可能とし、例えば連鎖の存在を告知し、連鎖に加わるよう依頼し、(親電気車両などの)管理者機能から指令を受信する等に用いられる。
【0059】
この点に関し、車両間(V2V)通信用に数多くの提案がなされている。例えば、一つの提案は、いわゆる専用狭域通信(dedicated short-range communications: DSRC)V2Vである。これはWi-Fiの一種であり、IEEE 802.11p規格によって定義される。DSRC装置は、75MHzの帯域幅を有する5.9GHz帯で動作する。このスペクトルは、最大7つの10MHzチャンネルに分割される。この規格は52のサブキャリアのOFDM(直交周波数分割多重:orthogonal frequency-division multiplexing)を用いて3~27Mb/sのデータレートを実現している。範囲はおよそ300mである。
【0060】
本例においては、電気車両1間の全てのデータ通信は、V2V通信プロトコルによって動作し、またはV2V通信プロトコルが基礎となる、より高次のプロトコルスキームで行われる。このより高次のプロトコルは、テキストベースとされて、電気車両1間の有意なデータ交換を可能または容易としてもよい。
【0061】
親電気車両または連鎖を形成した何らかの集中管理型リソースなどの管理者機能は、連鎖のデータ構造を形成し記憶する。これは、まず少なくとも何らかの連鎖の識別子を含んでよい。続いて、電気車両が連鎖に加わり、連鎖を脱退するとき、データ構造が更新されて連鎖の現状メンバーの詳細、これらのメンバーがソース、シンクまたは媒介装置であるか、車両の充電式バッテリーの充電レベルなどを記録する。
【0062】
上記に従い、電気車両1間のメッセージは、一般に以下の構造を備える。
【0063】
【表1】
【0064】
連鎖IDは、車両の連鎖の識別子である。
【0065】
電気車両IDは、例えばメッセージの受信者によって取られる動作に応じて、メッセージを送信している車両またはメッセージの所望の受信者の識別子である。
【0066】
「動作」は行われる動作を特定する。動作のいくつかの例として、告知、加入、脱退、持続時間設定(ConfigureDuration)、最小割合設定(ConfigureMinPercentage)および最大電気車両数設定(ConfigureMaxEVCount)が挙げられる。ここで、「告知」は、メッセージが連鎖の存在を告知するときに用いられる。「加入」および「脱退」は、連鎖に加入または連鎖から脱退したい車両によって、または管理者機能によって用いられ、車両を連鎖に加入または連鎖から脱退可能とする。持続時間設定、最小割合設定および最大電気車両数設定はそれぞれ、車両が充電連鎖に加入しなくてはならない最小持続時間、ソースとなるための最低バッテリー充電レベル、および連鎖中に許容される電気車両の最大数を示す。
【0067】
「データ/モード」は、例えば、メッセージの受信者によって行われる動作に応じて、メッセージ用の何らかのデータ、メッセージを送信している車両のモード、またはメッセージの所望の受信者を特定する。例えば、シンクモードは0x01によって示され、ソースモードは0x02によって示され、媒介モードは0x03によって示されてよい。
【0068】
このメッセージの基本構造により、例えば連鎖を構築した親電気車両1によって送信可能な充電連鎖の構築を告知するメッセージの第1の例は、以下のようになる。
【0069】
【表2】
【0070】
このメッセージは識別子0x0001の連鎖について、識別子0x00FFの電気車両がメッセージを送信している親車両であることを示す。親車両はまた、メッセージ最終部の0x01により示されるように、他の車両からの電力のシンクとなることを希望している。
【0071】
連鎖に加入することを希望している車両によって送信されるメッセージの例は以下の通りであってよい。
【0072】
【表3】
【0073】
このメッセージは識別子0x0001の連鎖について、識別子0x00AAの電気車両が連鎖に電力のソースとして加入を希望することを示す。
【0074】
車両が充電連鎖に加入しなければならない最小持続時間を変更するために親車両によって送信されるメッセージの例は、以下の通りであってよい。
【0075】
【表4】
【0076】
このメッセージは識別子0x0001の連鎖について、識別子0x00FFの親車両が、車両が充電連鎖に加入する最小持続時間を0x0Aに対応する値の時間に変更したことを示す。
【0077】
この例において、例えば上述の種類のメッセージを含む充電連鎖を設定するメッセージは、当該メッセージが充電連鎖を構築した親車両によって送信された場合に、かつこの場合のみ有効であると考えられてもよい。
【0078】
車両1の(論理)充電連鎖の構築および動作方法の4つの主要部分に戻ると、第3の項目「3. 電力送信制御」は、連鎖中の車両による電荷の送信および取得を制御するのに用いられる。
【0079】
例えば、上述のように、電気車両が別の電気車両から電荷を受けたいとき、当該電気車両は充電連鎖に加入し、自身をシンクとして設定する必要がある。電気車両が別の電気車両に電荷を伝送したいとき、当該電気車両は充電連鎖に加入し、自身をソースとして設定する必要がある。また電荷がソースまたはシンクとしてではなく媒介装置として充電連鎖に加入したいとき、当該電気車両は充電連鎖に加入し、充電連鎖中のソース電気車両から受けた電力を渡し、または伝送できるよう自身を媒介装置として設定する必要がある。
【0080】
上述のように、例において、電気車両1は、自身の第1(前部)ワイヤレス電力伝送装置7と第2(後部)ワイヤレス電力伝送装置8とを選択的に接続して、電力伝送装置7、8の間で所望の場合、または指令された場合に電力を伝送するように動作可能な電気系統9を備える。この場合、電気車両1は、ソース電気車両1によって提供された電力を自身で消費することなく、一台の電気車両1から電力を別の電気車両に伝送するようにのみ動作可能である。例えば別の充電式バッテリーまたは他の装置などの、電力を蓄積可能で車両の主バッテリー4とは独立の蓄電装置を、電気系統9に設けてもよい。これは、車両1が媒介装置として動作しており、一台の車両から電力を受けているが何らかの理由で当該時点において電荷を別の車両に渡すことができない場合、この媒介車両1は一時的に電荷を蓄積し、再び可能となったとき、この電荷を他の車両に渡すことができるように構成可能である。
【0081】
なお、第1(前部)ワイヤレス電力伝送装置7と第2(後部)ワイヤレス電力伝送装置8の双方を備える電気車両1については、電力伝送は、選択的に二方向(すなわち前方から後方、および後方から前方)のうちの一方に行われてよい。
【0082】
電力送信制御の一部として、各車両1は、例えば車両1のプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして、または独立して実装されうる電力伝送モジュールを備えてもよい。この電力伝送モジュールは車両1のワイヤレス電力伝送装置7、8の間の電荷取得を制御する。具体的に、一般に充電連鎖においては、連鎖中にいくつかのソースといくつかのシンクとがあってもよい。したがって、例えば、ソース電気車両1とシンク電気車両1とは、媒介電気車両1であってもよい。このような場合、この電力伝送モジュールは、特定の電気車両1によって使用または消費されて車両1のバッテリー4を充電する電力と、充電連鎖中の別の車両1によって用いられるために伝送され、または渡される電力との比率を調整してもよい。この比率は、充電連鎖の親電気車両1から送信される設定メッセージを介して規定されてもよく、または、所定の比率を用いてもよい。なお、充電連鎖が一つ以上の電力のシンクを含む場合、一般に、他の車両も電荷を必要とすることから、一台のシンク電気車両で受けられた電力を当該車両によって完全に使用することはできず、車両は媒介装置として電荷の一部を渡す、または伝送する必要がある。
【0083】
図2を再び参照すると、これは充電連鎖に配置された複数の車両1の例を概略的に示す。この例において、充電方向20(すなわち電力取得の方向)は前方(すなわち連鎖の後部の、または後部に面する車両1から連鎖の前部の、または前部に面する車両1に向けて)である。この充電方向を構成するため、充電連鎖マップが連鎖中の全ての電気車両1によって共有されてもよい。親電気車両1または他の管理者機能は、連鎖中の全ての他の車両1が受信するようこの充電連鎖マップを無線送信してもよい。充電連鎖中の各車両1は、充電連鎖マップ中の電気車両の順番にしたがってその充電方向(すなわち、前方から後方または後方から前方)を設定することになる。例示的な充電連鎖マップは、以下のようであってよい。
【0084】
【表5】
【0085】
これにより、各電気車両の充電方向が図4に示される例のようになる。
【0086】
加えて、充電連鎖マップを充電連鎖中の車両をグループに(論理的に)クラスター化して、車両との通信を容易にしてもよい。例えば、シンクとして動作する全ての車両の第1クラスターまたはグループと、ソースとして動作する全ての車両の第2クラスターまたはグループと、媒介装置として動作する全ての車両の第3クラスターまたはグループとがあってよい。これにより、親車両または他の管理者機能によって送信されたメッセージ等の通信を、対応するクラスターまたはグループをメッセージの宛先とすることで関連する車両に送信することができる。
【0087】
車両1の(論理)充電連鎖の構築および動作方法の4つの主要部分に戻ると、第4の項目である上述の「4. 支払」は、電力のソースが電力提供に対して補償を受け、電力のシンクが受けた電力に対して支払を行い、媒介装置がソースからシンクに電力を渡すサービスを提供したことに対して補償を受けることを確保するものである。これについて、数多くのオプションが可能である。
【0088】
例えば、支払機構はトークンベースの機構であってよい。トークンの交換は、例えばDSRCを用いた車両間のV2V通信を介して行われてよい。ソースによって提供された、またはシンクによって受け取られるかもしくは消費された電力の値は、エネルギーの単位で測定されてよい。電力会社などで電力を測定するのに一般に用いられる単位はキロワット時(kWh)である。各キロワット時の価格は、設定されるかまたは予め定められ(かつ例えば現在のエネルギー価格にしたがって時々変動し)てよい。加えて、特定の車両がソースまたはシンクとして動作しておらず単に媒介装置として動作している場合には、媒介装置は、媒介装置として動作することに対して単位時間あたり(例えば一分あたり)一定の額の支払いを受けてもよい。これにより、ユーザに自身の電気車両1を充電連鎖に媒介装置として加入させるよう促し、これにより充電連鎖の範囲と対象とを拡大することになる。
【0089】
トークンベースのシステムにおける単純な説明的事例として、支払トークンは、充電連鎖中の車両間で以下のように受け渡されてよい。
【0090】
1kWhのソース -> +10トークン
1kWhのシンク -> -25トークン
1分の媒介装置-> +1トークン
急速充電用の二重電力(2×1kWh) -> 100トークン
【0091】
急速充電用の二重電力に関し、車両1は、「通常」の二倍の速度で電力が提供される急速充電をリクエストしてよい。これは、例えば、それぞれ通常の速度で電力を提供する二つのソース車両によって提供されてよい。受取側車両1は、このサービスに対して加算費用を支払う。
【0092】
本明細書に記載された例により、多数の車両が、実質的に車両の連鎖としてのバッテリー充電スキームに参加可能となる。車両の一部は他の車両を充電する電力のソースとして動作してよく、車両の一部は他の車両から受けた電力のシンクとして動作してよく、他の車両は一台の車両から別の車両に電力を渡す媒介装置として動作してよい。車両の一部は、例えばソースと媒介装置、またはシンクと媒介装置の混在した役割を有して動作してよい。車両は一般に、例えば何らかの駐車場または道路で全て静止していてよい。車両は全て移動中であってよい。現状の技術では、電力伝送は、静止している、または混雑の中を動いている場合など、ゆっくりと動いているのみの車両でより成功し効率的である可能性が高い。しかし、例えば近接センサおよびコンピュータ制御を用いて車両の速度を制御することで、高速移動時に、車両集団として車両を互いに効率的に「ロック」する多くの提案がある。車両が電気車両である場合、高速で移動しているときでも車両間で電力を伝送可能である。この点、電力を効率的に伝送するためには、ワイヤレス電力伝送装置7、8が互いに十分近接している必要があることが唯一の制限要素である。
【0093】
なお、本明細書中に記載されるプロセッサもしくは処理システムまたは回路は、実際には、単一のチップもしくは集積回路、または複数のチップもしくは集積回路によって設けられてもよく、チップセット、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)などとして設けられてもよい。チップまたは複数のチップは、一つ以上のデータプロセッサ、一つ以上のデジタル・シグナル・プロセッサ、ベースバンド回路および無線周波数回路のうちの少なくとも一つを実装するための回路(ならびに場合によりファームウェア)を備え、これらは実施形態にしたがって動作するよう構成可能である。この点、例示的実施形態は少なくとも部分的に(不揮発性)メモリに記憶されプロセッサによって実行可能なコンピュータソフトウェア、またはハードウェア、または有形的に記憶されたソフトウェアおよびハードウェア(ならびに場合により有形的に記憶されたファームウェア)の組み合わせによって実装されてもよい。
【0094】
本明細書には、データ記憶用のデータ記憶装置が参照される。これは、単一の装置または複数の装置によって設けられてよい。適切な装置としては、例えばハードディスクおよび(例えばソリッドステートドライブ(SSD)などの)不揮発性半導体メモリが挙げられる。
【0095】
図面を参照して本明細書に記載された実施形態の少なくともいくつかの側面は、処理システムまたはプロセッサで実行されるコンピュータプロセスを含むが、本発明は、本発明を実施可能なコンピュータプログラム、特にキャリア(carrier)上またはキャリア内のコンピュータプログラムにも及ぶ。このプログラムは、非一時的なソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形式等の中間ソースコードおよびオブジェクトコード、またはその他任意の本発明にしたがった処理の実施に使用するのに適切な非一時的な形式であってよい。キャリアは、プログラムを搬送可能な任意の実体または装置であってよい。例えば、キャリアは、ソリッドステートドライブ(SSD)などの半導体ベースのRAM、例えばCD-ROMまたは半導体ROMなどのROM、例えばフロッピーディスクまたはハードディスクなどの磁気記録媒体、光学メモリ装置一般などの記録媒体を含んでもよい。
【0096】
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明的事例として理解されるべきである。別の実施形態および事例も想定される。任意の一つの例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて用いてもよい。さらに、任意の一つの例または実施形態に関連して記載された任意の特徴は、任意の他の例もしくは実施形態の一つ以上の特徴と組み合わせて、または任意の他の例もしくは実施形態の任意の組み合わせで用いてもよい。さらに、本明細書に記載されない等価物または変形も、請求項に定義される本発明の範囲内で用いてもよい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】