(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】高出力レーザダイオードパッケージ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20220307BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526705
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 US2018062889
(87)【国際公開番号】W WO2020101717
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518172129
【氏名又は名称】エヌライト, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NLIGHT, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マーティン ヘメンウェイ
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC01
5F173MD64
5F173MF28
5F173MF39
(57)【要約】
高出力レーザダイオードアセンブリは、レーザダイオードパッケージ内のより多くのエミッタを使用するか、より大きく、より広いレーザダイオードエミッタを使用して、高出力レーザ出力を生成する。各アセンブリ設計オプションは、強い負のレンズ表面屈折力を付与して入射ビームを外側に発散させる光入射面と、更に強い正のレンズ表面屈折力を付与して急速に発散するビームをコリメートする光出射面とを有するメニスカス遅軸コリメータレンズを含む。一例では、5mm焦点距離のメニスカスコリメータレンズは、標準的な12mm焦点距離のコリメータレンズと比較して、コリメータレンズからレーザダイオードへの物理的経路を7mm短縮することができる。別の例では、標準的な12mmコリメータのものと同じ後方焦点距離を有する15mm焦点距離のメニスカスコリメータレンズは、200μmから250μmへのチップオンサブマウント幅の増大を容易にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて平行に配置された別々のビーム軸に沿って伝搬する複数のレーザビームを放射するように構成された複数の広域レーザダイオードを含むレーザダイオードアセンブリにおいて、前記レーザダイオードの各々は、速軸方向において速い発散速度を示し、遅軸方向において遅い発散速度を示し、前記複数の放射レーザビームの各々は、速軸コリメーション光学系及び遅軸コリメーション光学系によって受光されてコリメートされて、対物レンズへの送達のためにそれぞれの光反射素子によって反射される複数のコリメートされたレーザビームのうちの1つを形成し、前記遅軸コリメーション光学系は、それぞれの光反射素子から公称距離に位置決めされ、公称焦点距離及び公称後方焦点距離を有し、前記対物レンズは、前記光反射素子によって反射された前記複数のレーザビームを光ファイバに向ける、レーザダイオードアセンブリであって、改良点は、
光軸に沿って分離され、前記遅軸コリメーション光学系として機能するメニスカス遅軸コリメータレンズを形成するように構成された第1及び第2の面を有する透過性光学基板であって、前記第1の面は、前記複数の放射レーザビームのうちの1つを受光するように位置決めされ、負のレンズ表面屈折力を付与して、受光された前記複数の放射レーザビームのうちの1つを外側に発散させる第1の曲率を有し、受光された前記複数の放射レーザビームのうちの1つは、前記遅い発散速度よりも速い速度で外側に発散して、急速に発散するビームを形成し、前記第2の面は、前記負のレンズ表面屈折力よりも強い正のレンズ表面屈折力を付与して、前記急速に発散するビームをコリメートする第2の曲率を有する透過性光学基板を含む、レーザダイオードアセンブリ。
【請求項2】
前記レーザダイオードアセンブリが、レーザダイオードパッケージにおいて公称体積を占有し、前記メニスカス遅軸コリメータレンズが、前記公称焦点距離よりも短いメニスカスレンズ焦点距離と、前記公称後方焦点距離よりも短いメニスカスレンズ後方焦点距離とを有し、それによって、前記遅軸コリメーション光学系を、それぞれの光反射素子から、前記公称距離よりも短い距離に位置決めすることができ、その結果、前記レーザダイオードアセンブリは、前記レーザダイオードパッケージにおいて、前記公称体積よりも小さい体積を占有する、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項3】
前記遅軸コリメーション光学系が、特徴的な遅軸残留発散を示し、前記複数の広域レーザダイオードが、前記メニスカス遅軸コリメータレンズへの入射のために前記レーザビームが伝搬する異なる経路長をもたらすパッケージ内に収容され、前記メニスカス遅軸コリメータレンズが、前記公称焦点距離よりも長いメニスカスレンズ焦点距離を有し、且つ、前記公称後方焦点距離と実質的に同じであるメニスカスレンズ後方焦点距離を有し、前記特徴的な遅軸残留発散よりも小さい遅軸残留発散と、その結果として、開口数の減少と輝度の増加とを提供する、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項4】
前記複数の広域レーザダイオードの各々が、レーザダイオードパッケージのサブマウントに取り付けられ、その幅を画定し、前記遅軸コリメーション光学系が、特徴的な遅軸残留発散を示し、前記メニスカス遅軸コリメータレンズが、前記公称焦点距離よりも長いメニスカスレンズ焦点距離を有し、且つ、前記公称後方焦点距離と実質的に同じであるメニスカスレンズ後方焦点距離を有し、残留発散の低減と、その結果として、前記公称焦点距離に対して前記サブマウントの幅を増加させることのない、前記レーザダイオードパッケージからのレーザ放射の輝度の増加とを提供する、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項5】
前記メニスカス遅軸コリメータレンズが、一体光学系である、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の曲率が、非球面プロファイルを有し、前記第2の曲率が、非球面プロファイルを有する、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の曲率及び前記第2の曲率は、それぞれ、第1の曲率半径及び第2の曲率半径と関連付けられ、前記第2の曲率半径は、前記第1の曲率半径よりも長い、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項8】
受光された前記複数の放射レーザビームのうちの1つが、レーザビーム波長及び出力を有し、前記透過性光学基板が、前記ビーム波長及び出力と動作的に適合するタイプのガラスであり、前記コリメートされた急速に発散するビームの残留発散を最小にする値の中心ガラス厚を有する、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【請求項9】
前記複数の広域レーザダイオードが、低減モード(REM)ダイオードを含む、請求項1に記載のレーザダイオードアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2018年11月15日に出願された米国特許出願第16/192,696号の優先権の利益を主張するものである。
【著作権表示】
【0002】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる資料を含む。著作権の所有者は、米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されている特許文書又は特許開示の任意の者による複製に対して異議を持たないが、それ以外の全ての著作権に係る一切の権利を留保する。37CFR§1.71(d)
【技術分野】
【0003】
本開示は、複数のレーザダイオードを含むパッケージ化された高出力レーザダイオードアセンブリに関するものであり、各レーザダイオードには、遅軸コリメータ内にメニスカスレンズが形成され、全体的な物理的フットプリントの低減又はレーザ出力輝度の向上を示すモジュールパッケージに含まれるように構成されたレーザダイオードアセンブリから高出力を生成する。
【背景】
【0004】
マルチモードレーザダイオードは、広域レーザ(BAL)としても知られている。広域レーザダイオードは、放射領域がブロードストライプの形で強く非対称な形状を有する端面放射型レーザダイオードである。最新技術の高出力レーザダイオードパッケージは、速軸コリメータ及び遅軸コリメータを使用して広域レーザをコリメートする。これらのレーザダイオードパッケージは、0.15mm~5mm程度の焦点距離を有する速軸コリメータレンズを使用し、例えば0.32mmの焦点距離などの、より短い速軸コリメータレンズ焦点距離を有する高性能パッケージを使用する。更に、ほとんどのレーザダイオードパッケージは、5mmから15mmの間の焦点距離を有する平凸遅軸コリメータレンズを使用し、これはレーザダイオードの遅軸輝度によって決まる。エテンデュの保存は、コリメートビームの残留発散を駆動し、レーザダイオードパッケージの全体的なパッケージフットプリントを最小化することは、長年の目的である。
【0005】
一般的に、例えば95μmのエミッタから250μmのエミッタへと、広域レーザの幅が大きくなると、幅の広いエミッタの輝度が低下するため、光学系の非対称性が大きくなる。非対称性を最小化することは、遅軸コリメータの焦点距離を増加させることによって達成され得るが、そのようにすることは、レーザダイオードパッケージの全体的な物理的フットプリントに悪影響を及ぼす。しかしながら、現在の傾向は、レーザダイオードパッケージのサイズ/体積/質量を減少させることであり、それを増加させることではない。簡単な例としては、現在利用可能なパッケージにおける遅軸焦点距離が、約70mmの利用可能なパッケージ全体の幅のうちの約20mm(すなわち、約28%)を占めるものが挙げられる。遅軸コリメータの焦点距離、したがってその後方焦点距離を低減する方法を案出することは、パッケージフットプリント/体積/質量の低減をもたらすであろう。
【概要】
【0006】
開示された高出力レーザダイオードパッケージは、所与のパッケージ体積内でより多くのエミッタの使用を可能にする。更に、開示されたレーザダイオードパッケージは、より高出力のレーザ出力の生成において、より大きく、より広いレーザダイオードエミッタの使用を可能にする。これらのシステム設計オプションの各々は、レーザダイオードに面する光入射面がビームを外側に発散させる強い負のレンズ表面屈折力を有し、光出射面が急速に発散するビームをコリメートする更に強い正のレンズ表面屈折力を有する遅軸コリメータレンズ設計によって達成される。
【0007】
第1の例として、標準的な12mmの焦点距離の遅軸コリメータレンズと比較して、5mmの焦点距離の遅軸コリメータレンズを作成することにより、遅軸コリメータレンズの出射面からレーザダイオードの放射面までの物理的経路を7mm短縮することができ、それによってレーザダイオードパッケージのサイズを縮小することができる。
【0008】
第2の例として、15mm焦点距離の遅軸コリメータレンズを、ただし標準的な12mm焦点距離の遅軸コリメータレンズと同じ後方焦点距離で作成することは、アセンブリレベル開口数に悪影響を及ぼすことなく、又は15mm焦点距離の遅軸コリメータレンズによってもたらされる残留発散の減少のためにレーザダイオードパッケージのサイズを増大させることなく、チップオンサブマウント幅を200μmから250μmに増大させることを容易にする。
【0009】
更なる態様及び利点は、添付の図面を参照して進められる好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、従来の高出力レーザダイオードパッケージの光学部品レイアウトを示す。
図1B及び
図1Cは、
図1Aのレーザダイオードパッケージによって生成されたそれぞれの入力レーザビーム及び圧縮されたレーザビームのスタックを示す。
【
図2】
図2Aは、2つのビームスタックが偏波多重化を用いて形成され、ビーム圧縮器によって圧縮される高出力レーザダイオードアセンブリを示す。
図2B及び
図2Cは、それぞれ
図2Aの圧縮前及び圧縮後のビームスタックを示す。
図2Dは、
図2Aの2つのビームスタックの形成において使用されるレーザダイオードのセットのための代表的な階段状レーザダイオードマウントを示す。
【
図3】
図3A、
図3B、及び
図3Cは、本開示によるメニスカス遅軸コリメータレンズの使用によって達成されるレーザダイオードパッケージの全体的なフットプリントに対する有益な効果を連続的、段階的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、単一のチップオンサブマウント(COS)と光学的に関連付けられた単一の広域レーザダイオードと共にメニスカス遅軸コリメータレンズを使用することの有益な効果の説明を容易にする連続光線トレース図である。
【
図5】
図5は、代替的なメニスカス遅軸コリメータレンズが、標準平凸遅軸コリメータレンズの公称焦点距離を維持するが、後方焦点距離を短くする実装形態における光学部品の平面図レイアウトである。
【
図6】
図6は、代替的なメニスカス遅軸コリメータレンズが物理的な経路長を維持するが、標準平凸遅軸コリメータレンズの公称焦点距離よりも長い焦点距離を提供する実装形態における光学部品の平面図レイアウトである。
【詳細な説明】
【0011】
図1A、
図1B、及び
図1Cは、広域レーザによって放射される放射線をコリメートする速軸コリメーション光学系及び遅軸コリメーション光学系を使用する従来の高出力レーザダイオードパッケージの光学部品レイアウトと、それによって生成されたレーザビームのスタックとを示す。
【0012】
図1Aは、一例として、レーザダイオードパッケージハウジング12に含まれるパッケージ化されたレーザダイオードアセンブリ10を示す。レーザダイオードアセンブリ10は、速軸コリメーション光学系16及び遅軸コリメーション光学系18によってコリメートされるレーザビームを放射する3つの広域レーザダイオード14A、14B、及び14Cを含む。コリメートビームは、対物レンズ20に向けられ、対物レンズ20はそれらを光ファイバ22に送達する。
【0013】
ハウジング12は、説明の便宜上、一部を除いて示している。段差面30は、複数の段差面部分32A、32B、及び32Cを含み、これらに対して、1つ又は複数のレーザダイオード14A、14B、及び14Cがそれぞれ、典型的には単調に下降又は上昇する異なる高さに位置決めされるように確保される。典型的には、単一のレーザダイオードが各段上に取り付けられ、レーザダイオードは、レーザ放射線が実質的に平行な軸に沿って伝搬するように段に確保される。平行配置からのずれは、以下で説明するように、必要に応じて補償することができる。
【0014】
レーザダイオード14A、14B、及び14Cの速軸は図の平面に垂直であり、遅軸は図の平面内にある。レーザダイオード14A、14B、及び14Cからの放射ビームは、速軸コリメーション光学系16及び遅軸コリメーション光学系18によって受光されてコリメートされ、コリメートビームを生成する。任意の体積ブラッググレーティング要素34を速軸コリメーション光学系16と遅軸コリメーション光学系18との間に位置決めして、レーザダイオード14A、14B、及び14Cの波長のロックを提供することができる。
【0015】
光反射素子又は反射鏡36は、コリメート後に互いにほぼ平行に伝搬するコリメートビームを受光する。
図1Aの例では、反射ビームがビーム圧縮器38に向けられるように、コリメートビームを直角に反射するように反射鏡36が位置決めされる。好ましいビーム圧縮器は、米国特許出願公開第2017/0235057号(本特許出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第15/435,117号の刊行物)に記載されている。各レーザダイオード14A、14B、14Cから放射されたビームの伝搬方向は、対応する反射器36の調整により調整可能である。ビーム圧縮器38において、反射ビームの速軸は、上下に積み重ねられ、レーザダイオード14A、14B、14Cにそれぞれ対応し、段差面部分32A、32B、32Cの高さに基づく分離を有する積み重ねられたビーム40A、40B、40C(
図1Bに示す)を形成する。反射鏡36及び遅軸コリメーション光学系18は、共通面42に簡便に確保することができる。
【0016】
各コリメートビームのための各反射鏡36の最上部は、反射ビームが下流の反射鏡36によってクリッピングされないような高さに設定される。例えば、
図1Aでは、図中の最下部のミラーが、対応する段差面部分32Aの最大段差高さに対応する最大高さを有する。積み重ねられたビーム40A、40B、40Cの隣接するビーム間の間隔は、ビーム圧縮器38によって調整され、圧縮されたビームは、対物レンズ20に向けられ、対物レンズ20は、圧縮されたビームを光ファイバ22に向ける。いくつかの例では、対物レンズ20は単一の平凸レンズであり、他の例では、球面及び非球面を含むより複雑な多要素レンズが使用される。
【0017】
図1B及び
図1Cに示すように、ビーム40A、40B、及び40Cの入力ビームスタックは、ビーム44A、44B、及び44Cの圧縮されたビームスタックとしてビーム圧縮器38から伝搬する。
図1Bと
図1Cとを比較すると、ビーム分離は、ビーム直径と共に、圧縮方向に圧縮されることが分かる。
【0018】
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dは、右手系xyz座標系52を参照して説明されるレーザダイオードアセンブリ50を示し、z軸は、
図2Aの平面から上方に延在する。レーザダイオードアセンブリ50は、レーザダイオードのセット54、56、58、及び60を含み、これらは、レーザビームのそれぞれのセットを反射器の対応するセット64、66、68、及び70、並びに速軸及び遅軸コリメータに放射するように配置される。例えば、セット54のレーザダイオードは、x軸方向に沿ってビームを放射し、次いで、y軸方向に沿って伝搬するように、セット64のそれぞれの反射器によって向け直される。各セットのレーザダイオードは、z軸に沿って互いに変位又はオフセットされ、関連付けられた反射器は、セットからのレーザビームが反射器によって遮断されないように位置決めされる。
図2Dに示すように、レーザダイオードのセット54は、適切なz軸オフセットを提供するために、段差マウント72に確保されている。レーザダイオードの残りのセットについても同様のマウントが設けられている。便宜上、各セットの最下部のレーザダイオードについて、ビーム伝搬軸74、76、78、及び80が示されている。各セットの残りのレーザダイオードについてのビーム伝搬軸は、互いに同様であるが、z軸に沿って変位されている。
【0019】
レーザダイオードのセット54からのレーザビームは、セット64の反射器によって半波リターダ82に向けられ、次いで、偏光ビームスプリッタ84において、セット66の反射器によって向け直されたレーザダイオードのセット56からのレーザビームと組み合わされ、その結果、垂直に積み重ねられたビームのセット86A(
図2Bに示す)がビーム圧縮器88に入射する。レーザダイオードのセット60からのレーザビームは、セット70の反射器によって半波リターダ92に向けられ、次いで、偏光ビームスプリッタ94において、セット68の反射器によって向け直されたレーザダイオードのセット58からのレーザビームと組み合わされ、その結果、垂直に積み重ねられたビーム86Bのセット(
図2Bに示す)がビーム圧縮器88に入射する。
【0020】
レーザダイオード54及び56並びにレーザダイオード56及び60に対して、それぞれ取付面100及び取付面102が設けられる。レーザダイオード58及び60からの圧縮されていないレーザビームは、プリズム104によってビーム圧縮器88に向けられる。対物レンズ106は、圧縮されたビームを光ファイバ110の入力面108に向ける。偏光ビームスプリッタ84及び94は、それぞれの光学アセンブリ112及び114に含むことができ、それらは、組み合わされたビームを向け直すプリズムを含むことができる。
【0021】
図2Bは、ビーム圧縮器88に入射する積み重ねられたビーム86A及び86Bを示す。
図2Cは、ビーム圧縮器88から出る垂直に積み重ねられたビームのセット96A及び96Bを示し、ビーム間隔及び個々のビーム高さは、圧縮比M=H
2/H
1によって変更される。この例では、円筒形ビーム圧縮器がz方向に圧縮を適用するが、x方向には適用しない。他の方向の圧縮のために追加のビーム圧縮器を設けることができ、又は球面を使用するビーム圧縮器を使用することができる。
【0022】
図3A、
図3B、及び
図3C(まとめて
図3)は、メニスカス遅軸コリメータレンズを広域レーザダイオードと反射鏡との間に位置決めすることによって達成される、レーザダイオードパッケージの全体的なフットプリントに対する有益な効果を連続的、段階的に示す上面図である。
図3は、それぞれのレーザビーム215A、…、215Lが実質的に平行な軸に沿って伝搬するように、それぞれの段差面部分(図示せず)上に取り付けられた12個の実質的に同じである広域レーザダイオード214A、…、214Lのセットを示す。レーザビーム215A、…、215Lは、それぞれ、速軸コリメーション光学系216A、…、216L及び遅軸コリメーション光学系218AS、…、218LSによってコリメートされてから、反射鏡236A、…、236Lに入射する。12個のレーザダイオード214A、…、214Lは実質的に同じであるので、以下の説明はレーザダイオード214Aのみを対象とするが、レーザダイオード214B、…、214Lにも適用可能である。
【0023】
図3Aは、レーザダイオードアセンブリ250Sにおける公称体積を占有する従来のレーザダイオードパッケージ249Sを示す。レーザダイオード214Aから伝搬、発散するレーザビーム215Aは、12mmの公称後方焦点距離252Sを有する標準平凸遅軸コリメータレンズ218ASによってコリメートされる。公称後方焦点距離252Sは、速軸コリメーション光学系216Aによって占有される空間を含む。遅軸コリメータレンズ218AS、…、218LSは各々、同じ公称後方焦点距離252Sを有する。
【0024】
図3Bは、
図3Aに示すものとは異なる遅軸コリメーション光学系を用いて実装されるが、レーザダイオードアセンブリ250Iにおける公称体積を占有するレーザダイオードパッケージ249Iを示す。発散するレーザビーム215Aは、メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMによって受光されてコリメートされ、メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMは、第1の又は光入射面254Aと第2の又は光出射面256Aとを有する。光入射面254Aは、負のレンズ表面屈折力を付与して、レーザビーム215Aをレーザビーム215Aの比較的遅い初期発散速度よりも速い速度で外側に発散させ、それによって、急速に発散するレーザビーム215ADを形成する。光出射面256Aは、急速に発散するレーザビーム215ADに、負のレンズ表面屈折力よりも強い正の表面屈折力を付与して、急速に発散するレーザビーム215ADをコリメートし、それによって、コリメートされたレーザビーム215ACを形成する。メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMは、5mmの後方焦点距離252Mを有する。
図3Bは、メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMの配置が、コリメートされたレーザビーム215ACが光出射面256Aと反射鏡236Aとの間を伝搬するデッドスペース258Aを作成することを示す。
【0025】
図3Cは、レーザダイオードアセンブリ250Mにおいて、5mmの後方焦点距離252Mを有し、
図3Bのメニスカス遅軸コリメータレンズ218AMの光出射面256Aと反射鏡236Aとの間にデッドスペース258Aがないためよりコンパクトなレーザダイオードパッケージ249Mを示す。レーザダイオードパッケージの全体的なフットプリントの低減は7mmである。したがって、レーザダイオードパッケージ249Mによって占有される体積は、レーザダイオードパッケージ249Sによって占有される公称体積よりも小さい。
【0026】
図4は、単一のチップオンサブマウント(COS)と光学的に関連付けられた単一の広域レーザダイオード314と共にメニスカス遅軸コリメータレンズを位置決めすることの有益な効果の説明を容易にするために提示された連続光線トレース図である。この実施形態は、
図3Aの標準平凸遅軸コリメータレンズ218ASの公称後方焦点距離と同じ後方焦点距離を有する、より長い焦点距離の遅軸コリメータレンズを作成する。複数の広域ダイオードの各々が、レーザダイオードパッケージのサブマウントに取り付けられ、その幅を画定するとき、得られる利益は、コリメータレンズ218ASの特徴的な残留発散よりも少ない残留発散と、その結果として、公称焦点距離に対してサブマウント幅を増加させることのない、アセンブリレベル開口数(すなわち、輝度)の改善である。
【0027】
図4の光線追跡図は、
図4の光フィールド315Fによって表される3つのセットの光線314
1、314
2、及び314
3を放射するレーザダイオード314を示す。3つのセットの光線314
1、314
2、及び314
3は、Zemax光学設計プログラムにより生成された光線追跡に示されるように、レーザダイオード314の一端、中央、他端から放射される光線をそれぞれ表している。光線314
1、314
2、及び314
3は、速軸コリメータレンズ316を通って伝搬し、メニスカス遅軸コリメータレンズ318上に入射し、メニスカス遅軸コリメータレンズ318は、第1の又は光入射面354及び第2の又は光出射面356を有する。光入射面354は、負のレンズ表面屈折力を付与して、光フィールド315Fの光線を比較的遅い初期発散速度よりも速い速度で外側に発散させ、メニスカス遅軸コリメータレンズ318内を伝搬する光フィールド315FDの急速に発散する光線を形成する。光出射面356は、光フィールド315FDの急速に発散する光線に、負のレンズ表面屈折力よりも強い正のレンズ表面屈折力を付与して、光フィールド315FDの急速に発散する光線をコリメートし、光フィールド315FCのコリメートされた光線を形成する。光入射面354及び光出射面356の曲率は、メニスカス遅軸コリメータレンズ318を作成するように設定され、例えば、15mmの焦点距離360を有するが、12mmの後方焦点距離362は、
図3Aに示す後方焦点距離252Sと同じである。それらの曲率半径は小さいため、光入射面354及び光出射面356は非球面レンズ表面プロファイルを示す。したがって、レーザダイオード314の幅は、アセンブリレベル開口数に悪影響を及ぼすことなく、又はレーザダイオードパッケージのフットプリントを増加させることなく、例えば、200μmから250μmに増大させることができる。
【0028】
別の有益な効果は、パッケージ内に収容され、遅軸残留発散を示すメニスカス遅軸コリメータレンズに入射する際に異なる経路長に沿って伝搬するレーザビームを放射する複数の広域レーザダイオードに対して達成され得る。公称焦点距離よりも長いメニスカスレンズ焦点距離と、公称後方焦点距離と実質的に同じであるメニスカスレンズ後方焦点距離とを有するように設計されたメニスカス遅軸コリメータレンズは、標準平凸遅軸コリメータレンズ218ASの特徴的な遅軸残留発散よりも小さい遅軸残留発散と、その結果として、開口数の減少及び輝度の増加とをもたらす。
【0029】
上述の実施形態のメニスカス遅軸コリメータレンズは各々、好ましくはビーム波長及び出力と動作的に適合するタイプのガラスで作られた透過性光学基板であり、コリメートされた急速に発散するビームの残留発散を最小にする値の中心ガラス厚を有する。
【0030】
以下の実施例は、メニスカスコリメータレンズが標準的な12mm平凸焦点距離の遅軸コリメータの代替であるレーザダイオードパッケージの実施形態の光学設計基準を提示する。実施例1は、代替的なメニスカス遅軸コリメータレンズが、標準平凸遅軸コリメータレンズの12mm公称焦点距離を維持するが、後方焦点距離を短くする実装形態である。実施例2は、代替的なメニスカス遅軸コリメータレンズが、物理的な経路長を維持するが、標準平凸遅軸コリメータレンズの12mm公称焦点距離より長い焦点距離を提供する実装形態である。
【0031】
実施例1は、125μmの遅軸近接フィールド及び9mmの焦点距離を示すレーザダイオードを用いて実装されたレーザダイオードパッケージのためのメニスカス遅軸コリメータレンズ設計基準を提示する。
図5は、レーザダイオードパッケージ250Mのレーザダイオード214A、速軸コリメーション光学系216A、及びメニスカス遅軸コリメータレンズ218AMを含む光学部品の平面図レイアウトであり、
図3Cのものに対応する。
図5は、放射面200及び中心線222を有するレーザダイオード214Aを示す。頂部のフィールド光線214A
1は、中心線222から+62.5μmに放射され、中央のフィールド光線214A
2は、中心線222に放射され、底部のフィールド光線214A
3は、放射面220の中心線222から-62.5μmに放射される。メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMは、光入射面254AがR1=1.49mm、光出射面256AがR2=2.0mmの偶数の非球面で形成されている。偶数の非球面係数には複数の解が存在するため、実施例1の実装態様では、面256A及び254Aの円錐係数Kの値は、-1<K<0(すなわち、長楕円形)である。メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMは、976nmで特定される1.79高屈折率ガラスから作製され、2.1mmの中心厚を有する。
【0032】
上述の特定レーザダイオード214A及びメニスカス遅軸コリメータレンズ218AMを用いて実装されるレーザダイオードパッケージの実施形態は、5.1mmの後方焦点距離252M(速軸コリメーション光学系216Aのガラスを含む)を示す。これは、ビーム品質を劣化させることなく、メニスカス遅軸コリメータレンズ218AMの光出射面256Aからレーザダイオード214Aの放射面220までの7.2mm(5.1mm+2.1mm)の総物理的経路長260をもたらし、12mmの公称焦点距離に対して25%((12mm-9mm)/12mm)短い焦点距離を表す。
【0033】
輝度(エテンデュ)の保存は、マルチモードレーザダイオードの残留発散が25%増加することを意味する。しかしながら、「より小さい」(125μm)遅軸近接フィールドは、以下の実施例2における250μmレーザダイオードと比較して、より明るいレーザダイオードを発現させるため、全体的な残留発散は、名目上、12mm焦点距離の標準平凸遅軸コリメータのそれから保存される。全体的な結果として、全体の質量及び体積が考慮される、高輝度用途のためのより小さくよりコンパクトなレーザダイオードパッケージが可能になる。
【0034】
実施例2は、250μmの遅軸近接フィールド及び15mmの焦点距離を示すレーザダイオードを用いて実装されたレーザダイオードパッケージのためのメニスカス遅軸コリメータレンズ設計基準を提示する。
図6は、レーザダイオード314、速軸コリメーション光学系316、及びメニスカス遅軸コリメータレンズ318を含む光学部品の平面図レイアウトであり、
図4のものに対応する。
図6は、放射面320及び中心線322を有するレーザダイオード314を示す。頂部のフィールド光線314
1は、中心線322から+125μmに放射され、中央のフィールド光線314
2は、中心線322に放射され、底部のフィールド光線314
3は、放射面320の中心線322から-125μmに放射される。メニスカス遅軸コリメータレンズ318は、光入射面354がR1=2.59mm、光出射面356がR2=2.9mmの偶数の非球面で形成されている。偶数の非球面係数には複数の解が存在するため、実施例2の実装態様では、面356及び354の円錐係数Kの値は、K>0(すなわち、偏平楕円形)である。メニスカス遅軸コリメータレンズ318は、976nmで特定される1.79高屈折率ガラスから作製され、2.14mmの中心厚を有する。
【0035】
上述の特定レーザダイオード314及びメニスカス遅軸コリメータレンズ318を用いて実装されるレーザダイオードパッケージの実施形態は、10.4mmの後方焦点距離362(速軸コリメーション光学系316のガラスを含む)を示す。これは、物理的な経路長を増加させることなく、メニスカス遅軸コリメータレンズ318の光出射面356からレーザダイオード314の放射面320までの12.5mm(10.4mm+2.14mm)の総物理的経路長360をもたらし、12mmの公称焦点距離に対して25%(15mm/12mm)長い焦点距離を表す。
【0036】
輝度(エテンデュ)の保存は、マルチモードレーザダイオードの残留発散が25%減少することを意味する。その結果、追加のエミッタはより長い経路長を有することになるので、レーザダイオードパッケージ内に追加のエミッタを設計することが可能になる。
【0037】
本発明の基礎となる原理から逸脱することなく、上述の実施形態の詳細に対して多くの変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、開示されたレーザダイオードアセンブリは、本特許出願の譲受人に譲渡された米国特許第9,166,369号に記載された、低減モード(REM)ダイオードと呼ばれる最近導入された種類の広域ダイオードを使用して構築することができる。REMダイオードは、マルチモード高反射体ファセットと部分反射体ファセットとの間に延在するフレア電流注入領域を有する広域半導体ダイオードレーザデバイスである。REMダイオードは、高次モードを抑制し、それによって、遅軸輝度を損なうことなくパワーをスケーリングするためのより大きなエミッタの使用を可能にする。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【国際調査報告】