(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム酸化物材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 25/02 20060101AFI20220307BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20220307BHJP
B01J 23/10 20060101ALI20220307BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20220307BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20220307BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20220307BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220307BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220307BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220307BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220307BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20220307BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220307BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220307BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220307BHJP
【FI】
C01G25/02
B01J35/02 H
B01J23/10 A
B01J37/04 102
B01J37/03 B
B01J37/06
B01J37/08
B01J35/10 301J
B01J35/10 301F
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 241
F01N3/28 301A
F01N3/022 Z
F01N3/10 A
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533692
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 US2019069037
(87)【国際公開番号】W WO2020142472
(87)【国際公開日】2020-07-09
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】バートン,ミラ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユンクイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラシャペル,ジェフリー
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G048
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091AB13
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091GA06
3G091GB04W
3G091GB10W
3G190BA01
3G190CA01
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA08X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BB02
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE06
4G169AA01
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA21C
4G169BA42C
4G169BA47C
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BB20C
4G169BC01C
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BD06C
4G169BD12C
4G169BE08C
4G169BE17C
4G169CA03
4G169CA09
4G169CA10
4G169CA18
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169EB19
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC18X
4G169FA01
4G169FB05
4G169FB09
4G169FB27
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC08
(57)【要約】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物は、少なくとも30質量%の酸化ジルコニウムと、5~55質量%の酸化セリウムと、合計25質量%以下の、ランタン、ネオジム、プラセオジムおよびイットリウムからなる群から選択される希土類金属の少なくとも1種の酸化物と、を含む。このナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物は、d50粒度が1.5μm未満であって、600℃以上の温度で焼成した後の全細孔容積が少なくとも0.7cm3/gであり、2nm~10nmの細孔の割合が15%未満である、階層的秩序構造の強凝集体を呈する。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、共沈法を用いることに続いて、乾燥させて焼成した酸化物材料を粉砕することによって調製される。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、ガスエンジンまたはディーゼルエンジンから生じる排気システムで使用できる微粒子フィルターをなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料であって、
少なくとも30質量%の酸化ジルコニウムと、
5~55質量%の酸化セリウムと、
合計25質量%以下の、ランタン、ネオジム、プラセオジムおよびイットリウムからなる群から選択される希土類金属の少なくとも1種の酸化物と、を含み、
前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物は、d
50粒度が1.5μm未満の階層的秩序構造の強凝集体を呈し、
前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物が、1,000℃以上で少なくとも6時間の時効前後で、特徴的な比表面積(SSA)および細孔容積(PV)を示し、時効後のSSA及びPVが、時効前のSSAおよびPVの70%以上である、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料。
【請求項2】
前記酸化物材料は、酸化ジルコニウムを少なくとも40%含む、請求項1に記載の混合酸化物材料。
【請求項3】
前記階層的秩序構造の強凝集体は、粒度が500nm未満である、請求項1または2に記載の混合酸化物材料。
【請求項4】
階層的秩序構造の強凝集体は、大きさが5nm~20nmの範囲の酸化物微結晶からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項5】
時効後の前記混合酸化物材料のSSAおよびPVは、時効前のSSAおよびPVの少なくとも75%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項6】
時効後の前記混合酸化物材料のSSAおよびPVは、時効前のSSAおよびPVの少なくとも85%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項7】
前記混合酸化物は、600℃~1,100℃の温度範囲で細孔径分布が変化しない、請求項1~6のいずれかに記載の混合酸化物材料。
【請求項8】
前記混合酸化物は、酸素貯蔵場所が動きやすい、請求項1~7のいずれか1項に記載の混合酸化物材料。
【請求項9】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を形成する方法であって、
(a)重合したジルコニウムオリゴマーを含有する酸性溶液を調製する工程と、
(b)セリウム塩と希土類塩の酸性溶液を、前記ジルコニウムオリゴマー含有溶液と混合し、多価金属含有混合物を作る工程と、
(c)前記酸性の多価金属含有混合物を錯化試薬の溶液と混合する工程と、
(d)工程(c)で得られた前記混合物に、構成金属水酸化物を含有するジルコニウムベースの前駆体スラリーを形成させる工程と、
(e)前記ジルコニウム含有前駆体スラリーを塩基で中和し、前記構成金属水酸化物の共沈と、沈殿した混合酸化物材料の形成とを達成する工程と、
(f)前記沈殿した混合酸化物材料を水で洗浄し、未反応のカチオン性混和物およびアニオン性混和物を除去する工程と、
(g)前記洗浄した、沈殿した混合酸化物材料を回収する工程と、
(h)前記洗浄した、沈殿した混合酸化物材料を、周囲温度または高めの温度で所定の時間、時効させる工程と、
(i)前記時効した混合酸化物材料を乾燥させる工程と、
(j)前記乾燥させた、時効した混合酸化物材料を焼成し、前記セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を形成する工程と、
(k)前記焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を、d
50粒度が1.5μm未満になるまで粉砕する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
前記焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の粉砕により、d
50粒度が500nm未満になる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
重合したジルコニウムオリゴマーは、約30~100%の量のジルコニウムオクタマーを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記重合したジルコニウムオリゴマーは、ジルコニアゾル粒子を含有しない、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記錯化試薬は、ジルコニウムに親和性のあるアニオンを含み、前記錯化剤が、硫酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成する前記酸性の多価金属含有混合物中の錯化試薬の量およびジルコニウムの量は、ジルコニウムに対する錯化剤のモル比が約0.35~約1.05の範囲になるように存在する、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記多価金属含有混合物が、水溶性の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩またはそれらの組み合わせを含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水および水酸化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか1項に記載の前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を含む、微粒子フィルター。
【請求項18】
請求項9~16のいずれか1項に記載の方法に従って形成された前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を含む、微粒子フィルター。
【請求項19】
1,000℃で5時間の時効後に、前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料のD
50粒度が1.5μm未満、比表面積が少なくとも40m
2/gである、請求項17または18に記載の微粒子フィルター。
【請求項20】
前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料が、1,000℃で5時間の時効前後で、特徴的な比表面積(SSA)を示し、時効後のSSAが、時効前のSSAの85%超に維持される、請求項19に記載の微粒子フィルター。
【請求項21】
前記微粒子フィルターを形成するために、前記ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料がウォッシュコートとして基材に塗布されている、請求項17または18に記載の微粒子フィルター。
【請求項22】
フロースルー型三元触媒コンバータ(TWC)への適用、ガソリン微粒子フィルター(GPF)への適用またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)への適用における、請求項17~21のいずれか1項に記載の微粒子フィルターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には無機複合体、特に、酸素貯蔵能を有し、かつ熱安定性が高い触媒担体材料、その製造方法およびその用途に関する。本開示の材料は、フロースルー型の三元触媒(TWC)で使用される微粒子フィルターや、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのウォールスルー型の排気触媒コンバータで使用される微粒子フィルターに組み込むことが可能なものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術の記載内容は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものにすぎず、先行技術を構成しない場合もある。典型的なウォッシュコートには、γ-、δ-およびθ-アルミナまたはランタン(La)安定化アルミナの触媒担体、酸素貯蔵能を有するセリアジルコニア、硝酸塩溶液によって導入されるPt、PdおよびRhなどの白金族金属(PGM)が含まれる。このPGMを、コージェライトハニカム基材にコーティングする、触媒担体材料と酸素貯蔵材料とを含むスラリー混合物に配合する、あるいはウォッシュコートスラリー(触媒担体材料と酸素貯蔵材料)塗布後の別工程としてコーティングして、触媒を製造することができる。触媒の機能としては、モバイルエンジンの排気の組成を、一酸化炭素(CO)、あらゆる種類の水素炭素化合物(HC)、窒素酸素化合物(NOx)から、無害な二酸化炭素(CO2)、水(H2O)および窒素(N2)に変えることがあげられる。
【0003】
三元触媒(TWC)の重要な構成要素のひとつであるジルコニア安定化セリアおよびその他のセリア系酸化物は、燃料のリーン条件下およびリッチ条件下での酸素の貯蔵と放出に重要な役割を果たし、それによってCOや揮発性有機物の酸化とNOxの還元が可能になる。また、触媒性能の効率のよさは、比表面積が大きく、熱的安定性が高く、酸素貯蔵能が高いことにも関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
純セリアは最も良い酸素貯蔵材料であるが、熱安定性が低いため、高温での用途が限られる。CeO2よりもジルコニア安定化セリアCeO2-ZrO2のほうが、材料の熱安定性と酸素貯蔵能が改善されている。CeとZrとのモル比が1:1の複合酸化物であれば、立方相の固溶体であるCe0.5Zr0.5O2を生成可能であり、これによってOSC性能が改善される。それにもかかわらず、この種の材料は高温時効後の熱安定性に乏しく、例えば1000℃で数時間の時効後、材料の比表面積が一般に30m2/g未満になる。
【0005】
アルミナは、CeO2-ZrO2と併用される熱安定剤添加物の一例である。他の添加剤としては、アルカリ土類、希土類、ケイ素元素またはそれらの混合物があげられる。このような安定剤の合計添加量は通常、存在する酸化物の総量に対して10wt%未満に制御される。しかしながら、最近になって、熱安定性やOSCを改善するために、最大90wt%のアルミナがCeO2-ZrO2に添加されるようになった。アルミナをCe-Zr酸化物に導入することで、熱安定性とOSCが効率的に改善される。このため、触媒コンバータで用いられる、熱安定性とOSCの高い新たなタイプの触媒担体の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、広義には、酸素貯蔵能を有し、かつ熱安定性が高い触媒担体材料のための組成物、その製造方法および用途を提供するものである。本開示の材料は、フロースルー型の三元触媒(TWC)で使用される微粒子フィルターや、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのウォールスルー型の排気触媒コンバータで使用される微粒子フィルターに組み込むことが可能なものである。
【0007】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物は、少なくとも30質量%の酸化ジルコニウムと、5~55質量%の酸化セリウムと、合計25質量%以下の、ランタン、ネオジム、プラセオジムおよびイットリウムからなる群から選択される希土類金属の少なくとも1種の酸化物と、を含む。このナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物は、d50粒度が1.5μm未満であって、600℃以上の温度で焼成した後の全細孔容積が少なくとも0.7cm3/gであり、2nm~10nmの細孔の割合が15%未満である、階層的秩序構造の強凝集体を呈する。この階層的秩序構造の強凝集体は、大きさが5nm~20nmの範囲の酸化物微結晶からなる。このナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、600℃~1,100℃の温度範囲で細孔径分布が変化しない。このセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、1,000℃で5時間の時効後の比表面積(SSA)が、少なくとも40m2/g、あるいは少なくとも50m2/gを示す。
【0008】
本開示の別の態様によれば、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を形成する方法が提供される。この方法は、
(a)重合したジルコニウムオリゴマーを含有する酸性溶液を調製する工程と、
(b)セリウム塩と希土類塩の酸性溶液をジルコニウム含有溶液と混合し、多価金属含有混合物を作る工程と、
(c)酸性の多価金属含有混合物を錯化試薬の溶液と混合する工程と、
(d)工程(c)で得られた混合物に、構成金属水酸化物を含有するジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成させる工程と、
(e)ジルコニウム含有前駆体スラリーを塩基で中和し、構成金属水酸化物の共沈と、沈殿させる混合酸化物材料の生成とを達成する工程と、
(f)沈殿させた混合酸化物材料を水で洗浄し、未反応のカチオン性混和物およびアニオン性混和物を除去する工程と、
(g)沈殿させた混合酸化物材料を洗浄したものを回収する工程と、
(h)沈殿させた混合酸化物材料を洗浄したものを、周囲温度または高めの温度で所定の時間、時効する工程と、
(i)時効した混合酸化物材料を乾燥させる工程と、
(j)乾燥した時効済の混合酸化物材料を焼成し、セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を形成する工程と、
(k)焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を、d50粒度が1.5μm未満になるまで粉砕する工程と、を含む。
【0009】
この方法では、焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の粉砕により、d50粒度が500nm未満になる。錯化試薬は、ジルコニウムに親和性があり、硫酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む。ジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成する酸性の多価金属含有混合物中の錯化試薬の量とジルコニウムの量は、ジルコニウムに対する錯化剤のモル比が約0.35~約1.05の範囲、あるいは約0.35~約0.85の範囲になるように存在する。
【0010】
本開示のさらに別の態様によれば、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物を使用して、微粒子フィルターを作製することができる。微粒子フィルターを作製するために、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物をウォッシュコートとして基材に塗布してもよい。この微粒子フィルターは、三元触媒コンバータ(TWC)での用途、ガソリン微粒子フィルター(GPF)での用途またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)での用途に使用できるものである。
【0011】
本明細書の説明から、応用可能なさらに別の領域が明らかになるだろう。この説明と具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していない旨を理解されたい。
【0012】
本開示が十分に理解されるように、以下、例として与えられる本開示の様々な形態について、添付の図面を参照しながら説明する。各図面の構成要素は必ずしも縮尺通りに描かれているものではなく、本発明の原理を説明することに重点がおかれている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、粉砕後のセシウム-ジルコニウム混合酸化物材料で測定した粒度分布を示すグラフ表示である。
【
図2】
図2は、本開示の教示内容に従って調製したセシウム-ジルコニウム混合酸化物材料または粉末のテクスチャの走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【
図3】
図3は、より高い倍率での
図1のセシウム-ジルコニウム混合酸化物材料の別の走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【
図4】
図4は、本開示の教示内容に従って調製した未粉砕のセシウム-ジルコニウム混合酸化物材料で測定した細孔径分布のグラフ表示である。
【
図5】
図5は、セシウム-ジルコニウム混合酸化物材料を製造するための方法のフローチャートである。
【
図6A】
図6Aは、本開示の教示内容に従って作製した微粒子フィルターを有する車両の排気系の斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の教示内容に従って作製した微粒子フィルターを有する車両の排気系の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で説明する図面は、例示のためだけのものであり、どのような形であっても本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0015】
以下の説明は、本質的には単なる例にすぎず、決して本開示またはその用途もしくは使用法を限定することを意図したものではない。例えば、本明細書に含まれる教示内容に従って製造および使用されるナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料については、本開示全体を通して、その構造的な要素および使用法を一層完全に例示するために、自動車の排気触媒コンバータで用いられる微粒子フィルターとの関連で説明する。このような混合酸化物材料を、様々な工業プロセスで触媒単体として使用することを含むがこれに限定されるものではない他の用途に取り入れて使用することは、本開示の範囲内であると考えられる。明細書と図面の全体を通して、対応する参照数字は、同様のまたは対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0016】
本開示の目的で、本明細書では、「約」および「実質的に」という語は、当業者に知られた予想されるばらつき(例えば、測定における限界および変動)による測定可能な値および範囲に関して使用される。
【0017】
本開示の目的で、「少なくとも1つの」および「1つ以上の」要素という表現を同義に用いられ、同じ意味を持つことがある。単一の要素または複数の要素を含むことを示すこれらの表現については、要素の最後に「(s)」という接尾辞を付けて表すこともできる。例えば、「少なくとも1種の金属」、「1種類以上の金属」および「金属(s)」を同義に用いることができ、同じ意味を持つことを意図している。
【0018】
本開示は、広義には、ナノ結晶サイズのセリア-ジルコニア混合酸化物材料を提供する。これは、フロースルー型の三元触媒(TWC)コンバータやウォールスルー型のガソリン微粒子フィルター(GPF)またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)の用途での使用に適している。このセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、酸素貯蔵場所が動きやすい。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の具体的な特徴のひとつは、1,000℃で5時間の時効前後に特徴的な比表面積(SSA)を示し、時効後のSSAが時効前のSSAの85%超に維持されることである。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料のSSAは、1000℃での時効後に40m2/gより大きく、粉砕後のD50粒度は1.5μm未満である。ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、粒度が1.5μm未満、あるいは500nm未満、あるいは約200nm未満の階層的秩序構造の強凝集体になる、大きさが5nm~20nmの範囲の酸化物微結晶を含むか、これらの微結晶からなるか、本質的にこれらの微結晶からなる。
【0019】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、酸化ジルコニウムと、酸化セリウムと、希土類金属の少なくとも1種の酸化物との混合物を含むか、当該混合物からなるか、本質的に当該混合物からなる。希土類金属は、ランタン、ネオジム、プラセオジムまたはイットリウムであってもよいが、これらに限定されるものではない。あるいは、希土類金属は、ランタン、ネオジム、プラセオジムまたはイットリウムのいずれかになるように選択される。本開示の一態様によれば、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の組成は一般に、少なくとも30質量%の酸化ジルコニウムと、5~55質量%の酸化セリウムと、合計25質量%以下の、希土類金属の少なくとも1種の酸化物とを含む。あるいは、セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の組成は、少なくとも35質量%の酸化ジルコニウム、あるいは少なくとも40質量%の酸化ジルコニウムを含む。あるいは、セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料中の希土類金属酸化物の量は、約1~25質量%、あるいは5~20質量%の範囲である。
【0020】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、大きさが5nm~20nmの範囲の酸化物微結晶からなる、D
50粒度が1.5μm未満の階層的秩序構造の強凝集体を呈する。あるいは、階層的秩序構造の強凝集体のD
50粒度は、1マイクロメートル(μm)未満であり、あるいは約500ナノメートル(nm)未満、あるいは約300nm未満、あるいは200nm以下である。
図1を参照すると、本開示の教示内容に従って形成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の粒度を1つのバッチで測定したところ、500nm未満であり、最も多いのが約200nm未満であることがわかる。粒度分布の測定は、レーザー粒度分析器を使用することを含むがこれに限定されるものではない、従来の既知のどのような技術を用いて行っても構わない。
【0021】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、1,000℃で5時間の時効後、比表面積(SSA)が少なくとも40m2/gを示す。あるいは、1,000℃で5時間の時効後の比表面積(SSA)は少なくとも50m2/gであり、あるいは55m2/g以上である。
【0022】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、600℃以上の温度で焼成した後の全細孔容積が少なくとも0.7cm3/gを示し、2nm~10nmの細孔の割合は15%未満である。あるいは、セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料は、1,000℃で焼成した後の全細孔容積が少なくとも0.4cm3/gを示し、2nm~10nmの細孔の割合は10%未満である。
【0023】
また、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物では、600℃~1,100℃の温度範囲で細孔径分布が変化せずに維持される。ここで
図2を参照すると、(a)700℃で2時間、(b)1,000℃で6時間、(c)1,100℃で6時間の時効後のセリウム-ジルコニウム混合酸化物の細孔径分布が比較されている。(a)、(b)、(c)に示す細孔径分布は、基本的に変わっていない。
【0024】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料で時効前に測定した比表面積(SSA)および細孔容積(PV)は、1,000℃以上で少なくとも6時間の時効または焼成後に、時効前に測定したSSAおよびPVの少なくとも70%の水準に保たれる。あるいは、時効後、SSAおよびPVは、時効前に測定したSSAおよびPVの少なくとも75%、あるいは少なくとも85%の水準に保たれる。比表面積(SSA)と細孔容積(PV)については、従来のBET法を用いて測定することができる。
【0025】
ここで
図3を参照すると、実施例1に従って調製したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した画像が示されている。セリウム-ジルコニウム混合酸化物は、約2~3マイクロメートル(μm)から最大約10~15μmの範囲で大きさが変わり得る不規則な形状または準球状の弱凝集体を含むか、当該弱凝集体からなるか、本質的に当該弱凝集体からなる粉末材料として観察される。そのようなミクロンサイズの弱凝集体1つを高倍率で撮影した、
図4に示すSEM画像から、この弱凝集体が実際に複雑な微細構造を呈しているのは明らかである。この複雑な微細構造は、寸法が約50ナノメートル(nm)~約200ナノメートル(nm)の範囲のナノサイズの粒子で形成されている。セリウム-ジルコニウム混合酸化物は、X線回折(XRD)および/または透過型電子顕微鏡(TEM)データで決定される微結晶の平均的な大きさが約5から最大約20nmの結晶性材料であるので、セリウム-ジルコニウム混合酸化物は、階層的秩序構造を含む。
【0026】
本開示の別の態様は、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を作る沈殿法を特徴とする。この方法は主に、ジルコニウムに親和性のある錯化試薬と相互作用してジルコニウムベースの前駆体を作ることができる、予備重合したジルコニウムオリゴマー、セリウム塩、希土類塩および遷移金属塩を含有する溶液を調製することを含む。この前駆体に存在するすべての構成金属水酸化物を塩基で共沈させた後、材料を回収し、洗浄し、乾燥させる。このセシウム-ジルコニウム混合酸化物材料に粉砕処理をほどこすと、ナノ結晶サイズの材料が得られる。
【0027】
ここで
図5を参照して、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を調製する方法を詳細に説明する。この方法100は、
図5に記載され、本明細書でさらに定義される(a)~(k)の工程を含む。工程(a)は、重合したジルコニウムオリゴマーを含有する酸性溶液を調製(105)することを含む。次に、工程(b)では、セリウム塩と希土類塩の酸性溶液を、ジルコニウムオリゴマー含有溶液と混合(110)し、多価金属含有混合物を作る。工程(c)では、酸性の多価金属含有混合物を、錯化試薬の溶液と混合(115)する。次に、工程(c)で得られた混合物を工程(d)で反応させ、構成金属水酸化物を含有するジルコニウムベースの前駆体スラリーを生成させる(120)。次に、ジルコニウム含有前駆体スラリーを、工程(e)において塩基で中和(125)し、構成金属水酸化物の共沈と、沈殿させる混合酸化物材料の生成とを達成する。工程(f)では、沈殿させた混合酸化物材料を水で洗浄(130)し、未反応のカチオン性混和物およびアニオン性混和物を除去する。沈殿させた混合酸化物材料を洗浄したものを工程(g)で回収(135)し、工程h)では、周囲温度または高めの温度で所定の時間、時効する(140)。その後、時効した混合酸化物を工程(i)で乾燥(145)させた後、工程(j)で焼成(150)し、セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を形成する。最後に、焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を工程(k)で粉砕(155)し、粒度を小さくする。粉砕後、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料のD
50粒度は、1.5μm未満であるか、あるいは1.0μm未満、あるいは500nm未満、あるいは300nm未満、あるいは約200nm未満である。
【0028】
工程(a)では、重合したジルコニウムオリゴマーは、ジルコニウムオクタマーを含んでもよいが、これに限定されるものではない。これらのジルコニウムオクタマーは、ジルコニウムオリゴマーの約30~100質量%の範囲の量で存在してもよい。本開示の一態様によれば、重合したジルコニウムオリゴマーは、ジルコニアゾル粒子を含まない。
【0029】
工程(b)では、セリウム塩と希土類金属塩の酸性溶液を、アニオンが硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオンまたはそれらの組み合わせである、セリウムおよび希土類金属の1種類以上の水溶性塩を用いて作ることができる。
【0030】
工程(c)では、錯化試薬は、ジルコニウムに親和性のあるアニオンを含んでいてもよい。錯化剤については、硫酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。工程(d)でジルコニウムベースの前駆体スラリーを作るのに用いる酸性の多価金属含有混合物中に存在する錯化試薬の量とジルコニウムの量は、ジルコニウムに対する錯化剤のモル比が約0.35~約1.05の範囲、あるいは約0.35~約0.85の範囲になるように存在する。
【0031】
工程(e)では、ジルコニウムベースの前駆体スラリーを中和するのに用いる塩基を、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水および水酸化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択することができる。あるいは、塩基は、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはそれらの混合物を含むものであってもよい。共沈の間、pHを、約6.0~約10.0の範囲、あるいは約6.0~約9.0の範囲になるように選択することができ、沈殿温度を、約40~90℃の範囲になるように選択することができる。
【0032】
界面活性剤を使用するかまたは使用せずに、沈殿物を濾過し(工程g)、洗浄し(工程f)、最終的に乾燥させて(工程i)、セリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を得る。界面活性剤を用いる場合、当該界面活性剤としては、約1%~約30%、あるいは約6~約10%の範囲の用量または量の、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミン、ポリエチレングリコール-200(PEG-200)、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノールおよびメラミンのいずれか1つまたはその組み合わせがあげられる。
【0033】
乾燥させ、時効した混合酸化物材料を約500℃~約1100℃で約2~6時間焼成し、粉末状のセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を形成する。あるいは、乾燥させ、時効した混合酸化物材料を、約600℃~約800℃で約3~5時間焼成する。
【0034】
本開示の別の態様によれば、上述した組成および特性を有するナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を使用して、微粒子フィルターを作製する。あるいは、
図5の方法に従って調製したナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム酸化物材料を使用して、微粒子フィルターを作製する。この微粒子フィルターを、フロースルー型の三元触媒コンバータ(TWC)の用途、ガソリン微粒子フィルター(GPF)の用途またはディーゼル微粒子フィルター(DPF)の用途で使用することができる。
【0035】
ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料を使用して、自己支持型微粒子、モノリシック構造の形態で、あるいは微粒子フィルターを作製するために基材の表面に形成される1層以上のウォッシュコートとして、触媒組成物を調製してもよい。ここで
図6Aおよび
図6Bを参照すると、車両5のための排気システム1が示されている。この排気システムでは、排気ガス10が、車両のエンジン15からパイプまたはダクト20を通り、微粒子フィルター25を通る。この微粒子フィルター25は、
図6Aに示すように三元触媒(TWC)コンバータ30の一部として組み込まれてもよいし、これとインラインで配置されてもよい(
図6B)。
【0036】
触媒組成物は通常、ナノ結晶サイズのセリウム-ジルコニウム酸化物を単独で含むか、1種類以上の白金族金属を取り込んで含む。ウォッシュコートは、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然由来の粘土、TiO2、ZrO2およびSnO2などのバインダー材料をさらに含むものであってもよい。
【0037】
基材またはモノリシック構造は、1本以上のガス流路が通った任意のセラミックまたは金属のハニカム構造を含んでもよい。モノリス基材のためのハニカム形状によって、全体の大きさと圧力降下が最も小さい、大きな触媒表面が提供される。触媒組成物は、通路を流れるガスが触媒組成物に接触するように、前記通路を規定する構造壁の一部に塗布されてもよい。流路は、台形、長方形、正方形、楕円形および円形を含むがこれらに限定されるものではない、所望の断面形状または大きさを有する薄肉の溝である。
【0038】
基材がウォールフロー型のフィルター基材すなわちガスが一方向にしか流れないように流路が交互に目封じされたものであってもよいことは、当業者であれば理解できよう。このようにウォールフロー型の基材を使用すると、流れるガスから、気体状の汚染物質のみならず粒子状物質も除去できる別の利点がある。ウォールフロー型のフィルター基材は、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素など、従来技術において一般に知られている材料で製造することができるものである。ウォールフロー型の基材に塗布される触媒組成物の量は、多孔度や壁厚などの基材の特性に依存する。
【0039】
本開示で提供される具体例は、本発明の様々な実施形態を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。以上、明確かつ簡潔な明細書を書くことができるような方法で実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく、これらの実施形態を様々に組み合わせたり、分離したりすることが意図され、また理解されるであろう。例えば、本明細書に記載したすべての好ましい特徴は、本明細書に記載した本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【実施例】
【0040】
実施例1: 30%CeO2-60%ZrO2-5%La2O3-5%Pr6O11を含むセリウム-ジルコニウム酸化物材料の調製
【0041】
合計76.6グラムのZrOCl2*8H2Oと、37.9グラムのCe(NO3)3*6H2O結晶を、1,000グラムの脱イオン(DI)水に溶解する。次に、このセリウム-ジルコニウム含有溶液に、27.4重量%の硝酸プラセオジム溶液9.1グラムと、26.85重量%の硝酸ランタン溶液9.3グラムを加え、多価金属含有溶液を作る。次に、この多価金属含有溶液に10重量%のNaOH溶液合計78グラムを加え、溶液が透明になるまで混合する。最後に、合計9.6グラムの(NH4)2SO4と6.9グラムの(NH4)2C2O4結晶とを200グラムの脱イオン(DI)水に溶解したものを多価金属混合物に加えた後、反応混合物の塩基性がpH13になるまで、20重量%のNaOH溶液をゆっくりと加える。その後、生成した沈殿物をブフナー漏斗で濾過し、脱イオン水で洗浄して過剰なカチオンおよび/またはアニオンを除去する。
【0042】
回収した湿った沈殿物を130℃のオーブンで約12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成した混合酸化物を1,000℃で6時間、1,100℃で6時間、追加で時効する。700℃での焼成後と、1,000℃および1,100℃での追加時効後に、材料の細孔半径を測定する(
図2参照)。
【0043】
700℃で焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物を脱イオン水で再スラリー化して20重量%のスラリーとした後、ジャーミルを用いて粒度d
50=150nmになるように湿式ボールミル粉砕してもよい(
図1参照)。粉砕したセリウム-ジルコニウム混合酸化物を回収し、110℃のオーブンで約12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成する。焼成して粉砕した混合酸化物を、1,000℃および1,100℃で6時間、追加で時効する。
【0044】
1,000℃および1,100℃で焼成後の、粉砕したセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料と未粉砕のセリウム-ジルコニウム混合酸化物材料の比表面積(SSA)および細孔容積(PV)を、表1にまとめておく。
【0045】
【0046】
実施例2: 8%CeO2-76%ZrO2-3.5%La2O3-12.5%Y2O3を含むセリウム-ジルコニウム酸化物材料の調製
【0047】
97.0グラムのZrOCl2*8H2Oと、10.1グラムのCe(NO3)3*6H2Oと、26.85重量%の硝酸ランタン溶液6.5グラムと、18.4重量%の硝酸イットリウム溶液33.9グラムを、1,000グラムの脱イオン(DI)水と混合することによって、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、ランタン(La)およびイットリウム(Y)の塩を含有する溶液を調製する。次に、この多価金属含有溶液に10重量%のNaOH溶液120グラムを加え、透明な溶液になるまで混合する。次に、20重量%のNa2SO4溶液合計100グラムを、重合したジルコニウムオリゴマーを含有する溶液に加えた後、反応混合物の塩基性がpH13になるまで、20重量%のNaOH溶液をゆっくりと加える。生成した沈殿物をブフナー漏斗で濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオンを除去する。
【0048】
回収した湿った沈殿物を130℃のオーブンで約12時間乾燥させた後、空気中にて800℃で2時間焼成する。焼成した試料を、さらに1,000℃で4時間する。
【0049】
700℃で焼成したセリウム-ジルコニウム混合酸化物を脱イオン(DI)水で再スラリー化して20重量%のスラリーとした後、ジャーミルを用いて粒度d50=280nmになるように湿式ボールミル粉砕してもよい。粉砕したセリウム-ジルコニウム混合酸化物を110℃の電気オーブンで約12時間乾燥させた後、空気中にて700℃で2時間焼成した。焼成して粉砕した混合酸化物を、1,000℃で4時間、追加で時効する。
【0050】
1,000℃で焼成後の、粉砕したセリウム-ジルコニウム混合酸化物と未粉砕のセリウム-ジルコニウム混合酸化物の表面積および細孔容積を、表2にまとめておく。
【0051】
【0052】
当業者であれば、本開示に照らして、本開示の意図または範囲から逸脱したりこれを越えたりすることなく、本明細書に開示した特定の実施形態に多くの変更を加えることが可能であり、それでもなお同様の結果または類似の結果を得ることができる旨を理解するであろう。また、当業者であれば、本明細書で報告した特性はいずれも、日常的に測定され、複数の異なる方法で得られる特性を表していることも、理解するであろう。本明細書で説明した方法は、そのような方法の1つを表しており、本開示の範囲を越えることなく、他の方法を用いることができる。
【0053】
本発明の様々な形態についての上述した説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。網羅的であることや、開示された厳密な形態に本発明を限定することは、意図されていない。上記の教示内容に照らして、多数の改変または変形を施すことが可能である。ここに示す形態は、本発明の原理およびその実用的な用途を最もよく示すことで、当業者が、考えられる特定の用途に適した様々な改変を施して様々な形態で本発明を利用できるようにするために選択され、説明されたものである。このようなすべての改変および変形は、特許請求の範囲が公正かつ適法に、公平に与えられる範囲に従って解釈されると、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内である。
【国際調査報告】