(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】モータ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/08 20160101AFI20220307BHJP
【FI】
H02P6/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534125
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019083013
(87)【国際公開番号】W WO2020126405
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキン ヘレロ フェルナンデス
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA10
5H560BB04
5H560BB12
5H560EB01
5H560HB00
5H560SS02
5H560UA05
5H560XB02
(57)【要約】
固定子及び回転子を有するBLDC電気モータであって、固定子は複数の電磁コイルを有し、回転子は複数の電磁コイルによって駆動される永久磁石を有するBLDC電気モータを制御する方法であって、a)複数の電磁コイルのうちの第1の電磁コイルに電圧を供給する工程と、b)工程a)の間に、複数の電磁コイルのうちの第2の電磁コイルを短絡させる工程、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子及び回転子を有するBLDC電気モータであって、前記固定子は複数の電磁コイルを有し、前記回転子は前記複数の電磁コイルによって駆動される永久磁石を有する、BLDC電気モータを制御する方法であって、
a)前記複数の電磁コイルのうちの第1の電磁コイルに電圧を供給する工程と、
b)工程a)の間に、前記複数の電磁コイルのうちの第2の電磁コイルを短絡させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記工程a)に続いて、前記複数の電磁コイルのうちの前記第1の電磁コイルを短絡させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)の直後に、前記複数の電磁コイルのうちの前記第1の電磁コイルを短絡させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
固定子及び回転子を有するBLDC電気モータであって、前記固定子は複数の電磁コイルを有し、前記回転子は前記複数の電磁コイルによって駆動される永久磁石を有する、BLDC電気モータを制御する方法であって、前記電気モータは、高接続線と、低接続線と、複数の高スイッチと、複数の低スイッチと、各自が前記複数の高スイッチのうちの1つを介して前記高接続線に接続され、且つ、前記複数の低スイッチのうちの1つを介して前記低接続線に接続された複数の中間接点と、を有するモータ制御回路を備え、前記複数の電磁コイルのうちのそれぞれの電磁コイルが、前記複数の中間接点のうちの第1の中間接点に電気的に接続された第1の端部と、前記複数の中間接点のうちの第2の中間接点に電気的に接続された第2の端部と、を有することにより、前記複数の電磁コイルのうちの前記それぞれの電磁コイルが、前記複数の中間接点のうちの前記第1の中間接点と、前記複数の中間接点のうちの前記第2の中間接点と、を電気的に相互接続するとともに、
前記高接続線と前記低接続線との間に電圧を供給すること、
第1の転流位相の間に、前記複数の高スイッチのうちの第1の高スイッチを閉じることにより、前記複数の中間接点のうちの前記第1の中間接点を前記高接続線に電気的に接続すること、
前記第1の転流位相の間に、前記複数の低スイッチのうちの第2の低スイッチを閉じることにより、前記複数の中間接点のうちの前記第2の中間接点を前記低接続線に電気的に接続すること、そして
前記第1の転流位相の間に、前記複数の低スイッチのうちの第3の低スイッチを閉じることにより、前記複数の中間接点のうちの第3の中間接点を前記低接続線に電気的に接続すること、
を含む方法。
【請求項5】
前記第1の転流位相の後に続く第2の転流位相の間に、前記複数の低スイッチのうちの前記第2の低スイッチを開くことにより、前記低接続線から前記複数の中間接点のうちの前記第2の中間接点を電気的に切断すること、そして
前記第2の転流位相の間に、前記複数の高スイッチのうちの第2の高スイッチを閉じることにより、前記複数の中間接点のうちの前記第2の中間接点を前記高接続線に電気的に接続すること、
をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の転流位相が、前記第1の転流位相の直後である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の低スイッチのうちの前記第2の低スイッチが開かれた後、前記複数の高スイッチのうちの前記第2の高スイッチが閉じられる前に、デッドタイム間隔が経過している、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の電磁コイルが3つの電磁コイルで構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の高スイッチが3つの高スイッチで構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の低スイッチが3つの低スイッチで構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の中間接点が3つの中間接点で構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の高スイッチのそれぞれが電界効果トランジスタを備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の低スイッチのそれぞれが電界効果トランジスタを備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
駆動ピストンと、前記駆動ピストンが留め付け要素を下地に打ち込むように前記駆動ピストンを作動させるための作動デバイスであって、BLDCモータを備える作動デバイスと、を有する打ち込み装置を動作させる方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載のBLDCモータを制御する方法を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレス直流電流(BLDC:brush-less direct current)電気モータなどのモータを制御する方法に関する。より詳細には、本発明は、固定子及び回転子を有するBLDC電気モータであって、固定子が、複数の電磁コイルを有し、回転子が、複数の電磁コイルによって駆動される永久磁石を有するBLDC電気モータを制御する方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
BLDC電気モータを使用する際の制約の1つは、どの電気モータでも同様であるが、電気エネルギーを回転エネルギーへと変える際のモータの効率である。BLDC電気モータを使用する際の別の制約は、どの電気モータでも同様であるが、モータに供給される所与の電圧及び/又は電流での回転速度、トルクなどに関するモータの性能である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
上記の制約には、固定子及び回転子を有するBLDC電気モータであって、固定子が、複数の電磁コイルを有し、回転子が、複数の電磁コイルによって駆動される永久磁石を有するBLDC電気モータを制御する方法であって、a)複数の電磁コイルのうちの第1の電磁コイルに電圧を供給する工程と、b)工程a)の間に、複数の電磁コイルのうちの第2の電磁コイルを短絡させることと、を含む方法によって対処する。第1の電磁コイルに電圧を供給することにより、第1の電磁コイルを流れる電流が発生し、この電流が次に、第1の磁気コイルの内側及び外側の領域に磁場を発生させる。このような磁場が永久磁石を加速し、ゆえにBLDCモータの回転を駆動する。工程a)の間に、第2の電磁コイルを短絡させることにより、磁場が、場合によっては永久磁石の上記加速にとって有害な二次電流を第2の電磁コイルに誘導するのを阻止する。
【0004】
本発明の好適な一態様では、方法は、工程a)に続いて、又は、特に、工程a)の直後に、複数の電磁コイルのうちの第1の電磁コイルを短絡することをさらに含む。
【0005】
上記の制約には、固定子及び回転子を有するBLDC電気モータであって、固定子が、複数の電磁コイルを有し、回転子が、複数の電磁コイルによって駆動される永久磁石を有するBLDC電気モータを制御する方法であって、電気モータが、高接続線と、低接続線と、複数の高スイッチと、複数の低スイッチと、複数の高スイッチのうちの1つを介して高接続線に接続され、且つ、複数の低スイッチのうちの1つを介して低接続線に接続された複数の中間接点と、を有するモータ制御回路を備え、複数の電磁コイルのうちのそれぞれの電磁コイルが、複数の中間接点のうちの第1の中間接点に電気的に接続された第1の端部と、複数の中間接点のうちの第2の中間接点に電気的に接続された第2の端部と、を有することにより、複数の電磁コイルのうちのそれぞれの電磁コイルが、複数の中間接点のうちの第1の中間接点と、複数の中間接点のうちの第2の中間接点と、を電気的に相互接続するとともに、
高接続線と低接続線との間に電圧を供給すること、
第1の転流位相の間に、複数の高スイッチのうちの第1の高スイッチを閉じることにより、複数の中間接点のうちの第1の中間接点を高接続線に電気的に接続すること、
第1の転流位相の間に、複数の低スイッチのうちの第2の低スイッチを閉じることにより、複数の中間接点のうちの第2の中間接点を低接続線に電気的に接続すること、そして
第1の転流位相の間に、複数の低スイッチのうちの第3の低スイッチを閉じることにより、複数の中間接点のうちの第3の中間接点を低接続線に電気的に接続すること、
を含む方法によってさらに対処する。
【0006】
好適な一態様では、方法は、
第1の転流位相の後に続く第2の転流位相の間に、複数の低スイッチのうちの第2の低スイッチを開くことにより、複数の中間接点のうちの第2の中間接点を低接続線から電気的に切断することと、
第2の転流位相の間に、複数の高スイッチのうちの第2の高スイッチを閉じることにより、複数の中間接点のうちの第2の中間接点を高接続線に電気的に接続することと、
をさらに含む。
【0007】
好適な一態様では、第2の転流位相は、第1の転流位相の直後であり、その間に他の転流位相はない。別の好適な態様では、複数の低スイッチのうちの第2の低スイッチが開かれた後、及び複数の高スイッチのうちの第2の高スイッチが閉じられる前に、デッドタイム間隔が経過している。
【0008】
別の好適な態様では、複数の電磁コイルが3つの電磁コイルで構成されている。別の好適な態様では、複数の高スイッチが3つの高スイッチで構成されている。別の好適な態様では、複数の低スイッチが3つの低スイッチで構成されている。別の好適な態様では、複数の中間接点が3つの中間接点で構成されている。別の好適な態様では、複数の高スイッチのうちのそれぞれ、及び/又は複数の低スイッチのうちのそれぞれが、電界効果トランジスタを備える。
【0009】
別の好適な態様では、方法は、駆動ピストンと、駆動ピストンが留め付け要素を下地に打ち込むように駆動ピストンを作動させるための作動デバイスであって、上記の態様のいずれかにおけるように制御されるBLDCモータを備える作動デバイスと、を有する打ち込み装置を動作させる方法に組み込まれている。
【0010】
留め付け具のさらなる態様及び利点、関連部品、並びにその使用方法が、単に例示として、また添付の図面を参照して、与えられる以下の説明から、明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ハウジングが開いた状態の打ち込み装置の側面図である。
【
図4】ピンと張った状態の引張デバイスの斜視図である。
【
図7】電気モータ内の永久磁石のいくつかの配置を示す図である。
【
図9】電気モータを制御する方法の転流表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、留め付け要素、例えば、釘又はボルトを下地に打ち込むための打ち込み装置10を側面図で示したものである。打ち込み装置10は、留め付け要素を下地に打ち込むための駆動ピストン(
図3及び
図4に示される)と、駆動ピストン及び駆動ピストンを作動させるための作動デバイスを収容するハウジング20と、を有する。打ち込み装置10は、ハンドル30と、マガジン40と、ハンドル30をマガジン40に接続するブリッジ50と、を有する。足場などに打ち込み装置10を吊るすための足場フック60、及び電気バッテリ590が、ブリッジ50に固定されている。トリガ34及び手押しスイッチ35がハンドル30に配置されている。打ち込み装置10は、留め付け要素を導くためのガイドチャネル700と、打ち込み装置10を下地の上に押圧したことを検出するための押圧プローブ750と、をさらに有する。支持素子45によって、打ち込み装置10は下地の表面に垂直に位置合わせし易くなっている。
【0013】
図2は、ハウジング20が開いた状態の打ち込み装置10を示したものである。駆動ピストンを作動させるための作動デバイス70が、ハウジング20に収容されている。作動デバイス70は、電気バッテリ590からの電気エネルギーを回転エネルギーに変換するための電気モータ(
図5に示される)と、電気モータのトルクをスピンドル駆動装置300に伝達するための動力伝達装置400と、スピンドル駆動装置300からの力をばね200に伝達し、ばね200からの力を駆動ピストンに伝達するためのロール列260と、を備える。
【0014】
図3及び
図4はそれぞれ、伸長した状態(
図3)、及びピンと張った状態(
図4)でのロール列260をより詳細に示したものである。ロール列260は、ベルト270と、前ロール291を有する前ロール保持具281と、後ロール292を有する後ロール保持具282と、を備える。ロール保持具281、282は、例えば、繊維強化プラスチックで作られている。例えば、ハウジング(
図1及び
図2に示される)の図示されていない溝でロール保持具281、282を導くために、ロール保持具281、282はガイドレール285を備える。スピンドル駆動装置300は、スピンドル310と、スピンドルナット320(
図3では目に見えない)と、スピンドルギア440と、を備える。ベルト270は、スピンドルナット302及び駆動ピストン100と係合し、ロール291、292に巻回されて走行することにより、ロール列260を形成している。駆動ピストン100は、カプラ150の中に保持されている。
【0015】
ばね200は、前ばね端部230を有する前ばね素子210と、後ばね端部240を有する後ばね素子220と、を備える。前ばね端部230は、前ロール保持具281の中に保持されており、一方、後ばね端部240は、後ロール保持具282の中に保持されている。ロール列260は、ばね端部230、240の互いに対する相対速度を、駆動ピストン100の速度の2倍にステップアップした伝達を提供する。ばね素子210、220は、支持リング250によってハウジングに対面する側で支持されている。ばね素子210、220の左右相称の配置によって、ばね素子210、220によって引き起こされた反動力がすべて相殺され、これにより、打ち込み装置10の操作快適性が向上する。
【0016】
上記で言及したように、
図3は、ロール列260を伸長した状態で示したものであり、ばね素子210、220は弛緩している。
図4は、ロール列260をピンと張った状態で示したものであり、ばね素子210、220は圧縮されている。スピンドルナット320は、ここではスピンドル310の前端部に位置しており、ベルト270を後ばね素子220に引き込む。したがって、ロール保持具281、282は、互いの方に向かって移動し、ばね素子210、220はピンと張られる。駆動ピストン100は、カプラ150によって、ばね素子210、220のばね力に逆らって保持されている。ピストン100を作動させて留め付け要素を下地に打ち込むために、ユーザは、トリガ34(
図1、
図2)を引いて、カプラ150に駆動ピストン100を解放させる。
【0017】
図5は、モータ出力490を有する作動デバイス70(
図2)の電気モータ480を断面図で示したものである。電気モータ480は、ブラシレス直流電流(BLDC)モータとして形成されており、モータ出力490を駆動するための永久磁石491を備える電磁コイル495を有する。モータ出力490は、回転軸560を中心に回転する。電気モータ480は、図示されていないモータレセプタクルによって保持されており、圧着端子506によって電気バッテリ590から電気エネルギーが供給されている。打ち込み装置10は、下記に説明するようなやり方で制御線505によって電気モータ480を制御する制御ユニットを備える。
【0018】
モータ出力490には、モータピニオン410が圧入によって回転不能に固定されている。モータピニオン410は、モータ出力490によって駆動され、動力伝達装置400(
図2)及びスピンドルギア440(
図3、
図4)によって、スピンドル駆動装置300を駆動する。保持機構450は、一方では、回転可能であるようにモータ出力490上で軸受け452によって支持され、他方では、モータレセプタクル上でリング状のアセンブリ素子470によって回転不能に支持されている。リング状のモータ制動素子460は、電気モータ480とモータレセプタクルとの間の相対運動を制動するためにある。保持機構450は、通電時に磁気アーマチュア456に引力を加えることができる磁気コイル455を備える。磁気アーマチュア456は、モータピニオン410に形成された開口部457内に延びている。引力により、磁気アーマチュア456は保持機構450に押し付けられることで、磁気コイル455が通電されると、モータ出力490の回転が制動、又は阻止されるようになっている。
【0019】
図6は、電気モータ480を概略図で示したものである。電磁コイル495は、電気モータ480の円周に沿って等距離で配置された3対の電磁コイルA、B、Cを備え、各対A、B、Cは、(
図6の投影面に垂直な方向に向いた)回転軸に対して互いに対向する位置に配置された2つの電磁コイルを備える。図示されていない実施例では、電磁コイルは、電気モータの円周に沿って等距離で配置された1対、2対、4対以上の電磁コイルを備える。永久磁石491は、回転軸上に位置決めされており、同様に回転軸の対向する側に配置された北極N及び南極Sを有する。
【0020】
動作原理は、永久磁石491と、電磁コイル495に誘導される回転磁場との間の磁気引力によって、電気エネルギーが機械的エネルギーに変換されることに基づいている。磁場を回転させるために、電磁コイル495又は電磁コイルの対に電流が次々に供給される(転流)。しかしながら、回転する永久磁石491は、電磁コイル495に二次的な磁場を誘導し、逆起電力(BEMF:back-electromotive force)を発生させ、電気モータ480の効率を低下させる。本発明は、モータの効率を高めることを目的としており、これは、逆起電力を低減させることによって解決し得る。
【0021】
図7は、複数個の永久磁石を有する回転子の別の3つの実施例を示す。
図7a)は、シャフト711と、シャフト711にマウントされ、シャフト711とともに回転するハブ712と、ハブ712の外側表面にハブ712の円周に沿って等距離でマウントされ、それぞれ北極N及び南極Sを有する2対の永久磁石713と、を備える回転子710を示す。
図7b)は、シャフト721と、シャフト721にマウントされ、シャフト721とともに回転するハブ722と、ハブ722のバルク材にハブ722の円周に沿って等距離で埋め込まれ、それぞれ北極N及び南極Sを有する3対の永久磁石723と、を備える回転子720を示す。
図7c)は、シャフト731と、シャフト731にマウントされ、シャフト731とともに回転するハブ732と、ハブ732に設けられたそれぞれの保持部、例えば、穿孔の中にハブ732の円周に沿って等距離で挿入され、それぞれ北極N及び南極Sを有する4対の永久磁石733と、を備える回転子730を示す。
【0022】
図8は、固定子810と、電気バッテリ830によって電気エネルギーが供給されるモータ制御回路820と、を有する電気モータ801の配線
図800を示す。電気バッテリ830は、高接続接点831及び低接続接点832を備え、高接続接点831と低接続接点832との間にバッテリ電圧V
BATT、例えば、12ボルト、又は22ボルト、又は48ボルトを供給する。モータ制御回路820は、高接続接点831に電気的に接続された高接続線821と、低接続接点832に電気的に接続された低接続線822と、を備えることで、高接続線と低接続線との間に、バッテリ電圧V
BATTが供給されるようになっている。モータ制御回路820は、3つの高スイッチA
H、B
H、C
Hと、3つの低スイッチA
L、B
L、C
Lと、3つの中間接点V
A、V
B、V
Cと、をさらに備える。中間接点V
A、V
B、V
Cはそれぞれ、高スイッチA
H、B
H、C
Hのうちの1つをそれぞれ介して高接続線821に電気的に接続され、また、低スイッチA
L、B
L、C
Lのうちの1つをそれぞれ介して低接続線822に電気的に接続されている。高スイッチA
H、B
H、C
H及び低スイッチA
L、B
L、C
Lは、電界効果トランジスタ、例えば、MOSFETとして形成されている。
【0023】
固定子810は、3つの電磁コイル811、812、813を備える。第1の電磁コイル811は、第1の端部が中間接点VAに電気的に接続され、第2の端部が中間接点VBに電気的に接続されている。このように第1の電磁コイル811は、中間接点VAとVBを互いに対して相互接続している。第2の電磁コイル812は、第1の端部が中間接点VBに電気的に接続され、第2の端部が中間接点VCに電気的に接続されている。このように第2の電磁コイル812は、中間接点VBとVCを互いに対して相互接続している。第3の電磁コイル813は、第1の端部が中間接点VCに電気的に接続され、第2の端部が中間接点VAに電気的に接続されている。このように第3の電磁コイル813は、中間接点VCとVAを互いに対して相互接続している。各電磁コイル811、812、813は、それぞれの固有のインダクタンスLAB、LBC、LCAと、それぞれの抵抗RAB、RBC、RCAと、交流電圧電源eAB、eBC、eCAとして表されるそれぞれの逆起電力と、を有する。
【0024】
電気モータ801を制御するために、
図9を参照して以下に説明するような転流スキームに従って、高スイッチA
H、B
H、C
H、及び低スイッチA
L、B
L、C
Lを作動させる。
【0025】
図9は、電気モータ820を制御する方法の転流表900を示す。第1の転流位相1の間、高スイッチA
H、並びに低スイッチB
L及びC
Lが閉じられ、すなわち「オン」に切り替えられ(「1」)、これにより、中間接点V
Aを高接続線821に、また、中間接点V
B及びV
Cを低接続線822にそれぞれ電気的に接続している。残りの高スイッチ及び低スイッチ、すなわち、A
L、B
H及びC
Hは、開かれており、すなわち、「オフ」に切り替えられている(「0」)。それに応じて、第1の電磁コイル811が通電されて、永久磁石を加速し、ゆえに、回転子810の回転を駆動する。同時に、第2の電磁コイル812を短絡させることにより、磁場が、場合によっては永久磁石の上記加速にとって有害な二次電流を第2の電磁コイル812に誘導するのを阻止する。
【0026】
第1の転流位相1の終了時に、低スイッチBLが「オフ」に切り替えられ(「0」)、これにより、中間接点VBを低接続線822から電気的に切断するとともに、高スイッチBHが「オン」に切り替えられ(「1」)、これにより、中間接点VBを高接続線821に電気的に接続する。残りの高スイッチ及び低スイッチ、すなわち、AH、AL、CH及びCLはそれぞれ、開いたままであるか、又は閉じたままである。それに応じて、第1の転流位相1の直後の第2の転流位相2では、第3の電磁コイル813が通電されて、永久磁石を加速し、同時に、第1の転流位相1の直後に第1の電磁コイル811を短絡させる。第1の転流位相1から第2の転流位相2に切り替わる間に、中間接点VBを介して高接続線821が低接続線822と短絡するのを阻止するために、低スイッチBLが「オフ」に切り替えられた(「0」)後で、及び高スイッチBHが「オン」に切り替えられる(「1」)前に、デッドタイム間隔を設けて、経過させる。デッドタイム間隔の間、スイッチBL、BHはいずれも閉じられていない。デッドタイム間隔は、ソフトウェアで実装、又はハードウェアで実装されているデッドタイム間隔によって設けられる。
【0027】
電気モータ801が発生させる機械的出力及び/又はトルクは、相電流と発生する逆起電力(BEMF)との積に依存する。それらの2つの関数の値がどのように相互作用するかによって、発生するエネルギーの大きさが決まる。例えば、相電流とBEMFの最大値を整合させると、高出力のピークが生み出され、平均機械的出力に寄与する。電力のリップルが高いと、トルクも振動するので好都合ではなく、したがって、BEMFが低いときには、高電流を避けなければならず(逆も然り)、すなわち、2つの信号を可能な限り一致させなければならない。別の態様は、2つの信号の極性が一致しないと、負の力、すなわち、モータの回転感覚を前に押し進めるのではなく、それに逆らうトルクが生じてしまうので、これを回避している。
【0028】
上述した方法により、速度、トルク及び効率が向上する。一方、トルク特性はより均一になり、したがって、回転子へのエネルギー伝達により、モータの回転がよりスムーズになる。
【0029】
本発明の実施例の前述の説明を、例示目的、及び説明目的で示してきた。この説明は、網羅的であること、又は本発明を開示されている正確な形態に限定するものであること意図するものではなく、修正及び変更は、上記の教示に照らして可能であり、又は本発明を実践することで得ることができる。記載されている機能性は、本明細書に記載のものとは機能性の数及び分布が異なるモジュール間に分散させてもよい。加えて、機能を実行する順番は、実施例に応じて変更してもよい。実施例は、本発明の原理を説明するために、及び当業者が、本発明を様々な実施例で、また、企図される特定の使用に適するように様々な修正をともなって利用することが可能であるように、本発明の実用的応用として選択され、記述された。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義されるように意図するものである。
【国際調査報告】