(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】温度依存性中性子捕獲断面積を有する材料を用いた温度測定センサ
(51)【国際特許分類】
G21C 17/112 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
G21C17/112
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540024
(86)(22)【出願日】2020-01-02
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 US2020012024
(87)【国際公開番号】W WO2020146183
(87)【国際公開日】2020-07-16
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219442
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WESTINGHOUSE ELECTRIC COMPANY LLC
【住所又は居所原語表記】1000 Westinghouse Drive, Suite 141, Cranberry Township, Pennsylvania 16066 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディ. ヘイベル
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075BA03
2G075CA08
2G075DA03
(57)【要約】
原子炉内で使用するための温度測定センサ(10)が記載されており、第1中性子検出部材(12)と、第2中性子検出部材(42)と、を含んでおり、第1中性子検出部材(12)は第1電流信号を出力し、第2中性子検出部材(42)は第2電流信号を出力する。第1信号と第2信号との間の電気的接続(40)は、第1信号と第2信号との間の電流の差である正味の電流を生成する。この差は温度の変化に比例する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉内で使用するための温度測定センサ(10)であって、
第1中性子検出器部材(12)と、
第2中性子検出器部材(42)と、を備え、
前記第1中性子検出器部材及び前記第2中性子検出器部材(12、42)の各々は、内側電子エミッタ(14、44)と、前記エミッタを囲む第1絶縁層(16、46)と、前記第1絶縁層(16、46)を囲む電荷コレクタ(18、48)と、前記電荷コレクタ(18、48)から外側に延びる負電荷出力ピン(26、36)と、前記エミッタ(16、46)から外側に延びる正電荷出力ピン(28、38)と、から構成されており、
前記第1中性子検出器部材(12)は、前記第1中性子検出器電荷コレクタ(18)を囲む第2絶縁層(20)と、前記第2絶縁層(20)を囲む電子吸収層(22)と、前記電子吸収層(22)を囲む中性子を捕獲するための外側シールド(24)と、をさらに備え、
使用時において、前記第1中性子検出器部材(12)は第1電流信号を出力し、前記第2中性子検出器部材(42)は第2電流信号を出力し、
前記第1電流信号と前記第2電流信号との間の電気的接続(40)は、前記第1信号と前記第2信号との間における電流の差を計算することが可能であり、前記差は温度の変化に比例する、
温度測定センサ。
【請求項2】
各電子エミッタ(16、46)は、放射性崩壊からの中性子を吸収し、電子を放出する材料から作られている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
各電子エミッタ(16、46)の材料は、ロジウム及びバナジウムからなる群から選択される、請求項2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記第1絶縁層(16、46)及び前記第2絶縁層(20)は、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムのうちの1つから作られている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
各電荷コレクタ(18、48)は、鋼、インコネル(登録商標)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作られている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記電子吸収層(22)は、アルミニウム、インコネル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作られている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記外側シールド(24)は、前記エミッタの材料の対応する断面積よりも大きいドップラー温度中性子捕獲断面積を有する材料から作られている、請求項7に記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記外側シールド(24)の材料は、ウラン238、タングステン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記第1電流信号と前記第2電流信号との間の電流の差は、前記原子炉の外部の受信器に単一の信号として送られる、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記電流信号の差は、無線送信される、請求項9に記載のセンサ(10)。
【請求項11】
前記センサ(10)は、核燃料棒の内部に配置される、請求項10に記載のセンサ(10)。
【請求項12】
前記電流信号の差は、有線接続によって送られる、請求項9に記載のセンサ(10)。
【請求項13】
前記センサ(10)は、核燃料棒の外部に配置される、請求項12に記載のセンサ(10)。
【請求項14】
前記第1中性子検出器部材及び前記第2中性子検出器部材(12、42)は、同心円筒の形態であり、
各円筒は、それぞれの内側エミッタによって囲まれた開放された中央空間を画定し、
前記第2部材は、前記第1部材の開放された中央空間内に配置される、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項15】
前記第1中性子検出器部材及び前記第2中性子検出器部材(12、42)は、互いに隣接する別個の円筒である、請求項1に記載のセンサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出器に関し、より詳細には、原子炉環境で使用するための自己出力中性子検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内の温度測定は、現在、熱電対又は抵抗温度検出器(RTD)といったセンサを用いて取得されている。
【発明の概要】
【0003】
以下の概要は、開示される実施形態に特有の革新的な特徴のいくつかを理解することを容易にするために提供されており、完全な説明であることを意図しない。明細書全体、特許請求の範囲、及び要約書を総括して理解することによって、実施形態の様々な態様の完全な理解が得られ得る。
【0004】
原子炉環境で使用するための温度センサの様々な実施形態が、本明細書に記載される。センサの動作は、ドップラー温度係数特性がいくつかの材料の中性子捕獲断面積に及ぼす影響に基づいている。
【0005】
原子炉内で使用するための温度測定センサは、一般に、第1中性子検出器部材と、第2中性子検出器部材とを含んでもよく、第1中性子検出器部材は第1電流信号を出力し、第2中性子検出器部材は第2電流信号を出力する。第1信号と第2信号との間の電気的接続は、第1信号と第2信号との間の電流の差を生成する。この差は温度の変化に比例する。
【0006】
第1部材及び第2部材の各々は、内側電子エミッタと、エミッタを囲む第1絶縁層と、第1絶縁層を囲む電荷コレクタと、電荷コレクタから外側に延びる負電荷出力ピンと、エミッタから外側に延びる正電荷出力ピンとを含む。第1中性子検出器部材は、第1中性子検出器電荷コレクタを囲む第2絶縁層と、第2絶縁層を囲む電子吸収層と、電子吸収層を囲む中性子を捕獲するための外側シールドと、をさらに含む。
【0007】
様々な態様において、電子エミッタは、例えば、ロジウム又はバナジウムといった放射性崩壊からの中性子を吸収し、電子を放出する材料から作られている。第1絶縁層及び第2絶縁層は、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムのうちの1つから作られてもよい。電荷コレクタは、例えば、鋼、インコネル(登録商標)合金、又はこれらの組み合わせから作られてもよい。電子吸収層は、例えば、アルミニウム、インコネル合金、又はこれらの組み合わせから作られてもよい。シールドの材料は、ウラン238、タングステン、又はこれらの組み合わせから作られてもよい。インコネルは、オーステナイトニッケル-クロム系又はニッケル-クロム-鉄系合金の市販のファミリーである。
【0008】
第1信号と第2信号との間における電流の差は、原子炉の外部の受信器に単一の信号として送られてもよい。様々な態様において、電流信号の差は無線送信される。センサは、核燃料棒の内部に配置されてもよい。様々な態様において、電流信号の差は、有線接続によって送られ、センサは、核燃料棒の外部に配置される。
【0009】
特定の実施形態において、第1部材及び第2部材は、同心円筒の形態であってもよく、各円筒は、それぞれの内側エミッタによって囲まれた開放された中央空間を画定する。特定の実施形態において、第2部材は、第1部材の開放された中央空間内に配置される。特定の他の実施形態において、第1及び第2部材は、互いに隣接する別個の円筒の形態であってもよい。
【0010】
本明細書に記載される温度センサは、電流信号を、受信することができ、かつ適切な工学単位に容易に変換することができる無線周波数信号に変換するように設計された無線データ送信方法論を様々な態様で提供することによって、燃料棒上部プレナム内の温度を連続的に測定するために使用されてもよい。本明細書に記載される装置及び方法論は、温度を、センサ装置を取り囲む温度に比例する電流信号として直接測定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特徴及び利点は、添付の図面を参照することによって、より理解されることができる。
【0012】
【
図1】図は、2つの中性子検出器信号から温度測定を生成するために必要とされる温度測定装置及び出力信号の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、前後関係がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。従って、冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的な対象の1つ又は複数(即ち、少なくとも1つ)を意味するために用いられている。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0014】
本明細書で使用される方向の表現は、例えば、頂部、底部、左、右、下、上、前、後、及びそれらの変形例などであり、それらに限定されないが、添付の図面に示される要素の向きに関係し、特に明記しない限り、特許請求の範囲を限定しないものとする。
【0015】
特許請求の範囲を含む本出願においては、特にそうではないと明記されていない限り、量、数値又は特性を表すすべての数字は、いかなる場合においても、「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきである。従って、「約」という語が数字と明示的に表わされていなくても、数字は、「約」という語が先行するかのように読み取られてもよい。従って、そうでないと示されていない限り、以下の説明に記載される任意の数値パラメータは、本開示による組成物及び方法において得ようとする所望の特性に応じて変化してもよい。最低でも、特許請求の範囲に均等論を適用することを限定する試みとしてではなく、本明細書に記載される各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、かつ、通常の数字を概数で表わす(四捨五入など)技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0016】
さらに、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての下位範囲を含むことが意図される。例えば、「1~10」という範囲は、1という記載された最小値と10という記載された最大値との間の(及びそれらを含む)任意のすべての下位範囲、即ち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有する、任意のすべての下位範囲を含むことが意図される。
【0017】
原子炉内部の温度を測定するためには、温度信号は、送信前に電圧から電流に変換されなければならない。これまで利用可能であった処理よりも複雑な処理が必要とされている。
【0018】
図を参照すると、温度センサ装置10の一実施形態の概略図が、例示的な出力信号構成とともに示されている。センサ装置10は、核燃料棒の上部プレナム内、又は核燃料集合体内の他の領域内に配置されてもよい。様々な態様において、センサ装置10は、図に示されるように、第1中性子検出器部材12と、第2中性子検出器部材42とを含む。第1部材12は、内側電子エミッタ14と、エミッタ14を囲む第1絶縁層16と、第1絶縁層16を囲む電荷コレクタ18と、電荷コレクタ18から外側に延びる負電荷出力ピン26と、エミッタ14から外側に延びる正電荷出力ピン28とを含む。絶縁体30及び32は、それぞれピン28及び26を囲んでいる。
【0019】
第1中性子検出器部材12はまた、第1中性子検出器電荷コレクタ18を取り囲む第2絶縁層20と、第2絶縁層20を取り囲む電子吸収層22と、電子吸収層22の長さ部分を取り囲む中性子を捕獲するための外側シールド24とを含む。頂部キャップ50は、電子吸収層22の頂部エッジ54を含む第1部材12の頂部に亘って延在し、底部キャップ52は、電子吸収層22の底部エッジ52を含む第1部材12の底部に亘って延在する。頂部キャップ50及び底部キャップ52はまた、電子吸収材料から作られていてもよい。
【0020】
第2部材42は、内側電子エミッタ44と、エミッタ44を囲む第1絶縁層46と、第1絶縁層46を囲む電荷コレクタ48と、電荷コレクタ48から外側に延びる負電荷出力ピン36と、エミッタ44から外側に延びる正電荷出力ピン38とを含む。
【0021】
様々な態様において、抵抗器40は、第1及び第2中性子検出器部材12、42の間の電気的接続を提供してもよい。使用時において、第1中性子検出器部材12は第1電流信号を出力し、第2中性子検出器部材42は第2電流信号を出力する。第1信号と第2信号との間の電気的接続は、第1信号と第2信号との間における電流の差を生成することが可能であり、この差は温度の変化に比例する。これは、電流が互いに逆方向に流れるように2つの信号を接続することによって、一方の出力電流を使用して他方の信号を電気的に打ち消すことによって達成される。
【0022】
様々な態様において、電子エミッタ14、44は、放射性崩壊からの中性子を吸収して、電子を放出する材料で作られている。エミッタの材料は、崩壊し、電子を放出する。従って、各電子エミッタ14、44には、その各々の正の出力ピン28、38を通過する正の電荷信号が残る。例示的なエミッタの材料には、ロジウム及びバナジウムが含まれる。放出された電子は、第1絶縁層16、46を通過して、各々の電荷コレクタ18、48に到達し、その結果、全体として負の電荷信号が負の出力ピン26、36を通過する。第1及び第2絶縁層は、酸化アルミニウム等の任意の適切な絶縁材料から作られてもよい。電荷コレクタは、例えば、鋼、インコネル、又はそれらの組み合わせから作られてもよい。インコネルは、熱及び圧力にさらされる極限環境によく適したオーステナイトニッケル-クロム系合金のファミリーを指す。
【0023】
第1検出器部材12において、燃料棒内の核分裂性物質から放出された中性子は、外側シールド24、例えばエミッタの材料の対応する断面積よりも大きい、比較的大きなドップラー温度中性子捕獲断面積を有する材料によって捕獲される。放出された電子は、出力ピン26からの負の電荷信号に寄与しないように、電子吸収層22によって捕獲される。外側シールドの材料は、ウラン238(238U)、タングステン(W)、又はこれらの組み合わせから作られてもよい。電子吸収層は、例えば、アルミニウム、インコネル、又はそれらの組み合わせから作られていてもよい。
【0024】
当業者は、他の適切なエミッタの材料、絶縁材料、電荷コレクタの材料、電子吸収材料、及びシールドの材料が、本明細書で識別される材料の代わりに、特定の態様において置換されてもよいことを認識するであろう。
【0025】
図示される温度センサ10は、本質的に同一の中性子束及び周囲温度を有する核燃料棒の内部又はその近傍の領域への配置のために、互いに等しい中性子有感体積(neutron sensitive volumes)を有し、ワイヤ又は円筒の形態で、2つの自己出力中性子検出器12、42として構成されている。図中に示されているIRの値は、所与の入射中性子束に対して、典型的な自己出力中性子検出器42によって測定されるであろう信号である。IRの値は、周囲環境の気温変化に、本質的に影響を受けない。Iの値は、238U又はWといった、エミッタの材料にとって最適な中性子捕獲断面積エネルギを超える中性子エネルギの中性子捕獲共鳴に、大きく影響される中性子捕獲断面積を有する材料によって包まれた、又は取り囲まれた自己出力中性子検出器12からの信号出力を表す。Iの値は、センサ装置10の周囲の温度変化とともに変化する。センサ装置10の周囲の温度が変化すると、Iの値は、ドップラー中性子捕獲共鳴広がり効果によって変化する。IRの値は、変化しない。2つのセンサ間の電気的通信は、抵抗器40によって表わされている。Iの値とIRの値との差分(IDと表わす)は、センサ装置10の周囲の温度変化に比例する。周囲の温度を決定するための2つの信号間における電流の差分(ID)を送信し、使用することにより、原子炉出力変化によって引き起こされる信号値の変化を識別することが可能になる。このアプローチは、単一の電流信号から温度を決定することも可能にする。
【0026】
温度と検出器出力電流との関係は次式で表される。
【数1】
ここで、
【数2】
、d=検出器カバーの厚み、Σc=検出器カバーの材料の巨視的な中性子捕獲断面積、To=初期温度、to=初期時刻、t=現在時刻である。また、
【数3】
である。感度は、温度の関数としてI(t)の式の導関数によって与えられる。
【数4】
また、
【数5】
である。感度は、μ、I(to)、及びdを最大化することによって、最大化される。具体的には、感度は、以下の場合に最大になる。
【数6】
【0027】
様々な態様において、センサ装置10は、核燃料棒の外部ではあるが、その近くに配置されてもよい。センサ装置10によってワイヤが使用される場合、ワイヤは、核燃料棒(不図示)の被覆壁の内側(又は外側)に沿って延びる螺旋状に組み合わされてもよい。核燃料ペレット(不図示)が中空の中心環を有する場合、組み合わされたワイヤは、その環に挿入されてもよい。ワイヤは炉心の外側を延びており、メータに接続されている。標準的な市販の電流測定ツールを、有線センサ装置10とともに使用してもよい。
【0028】
様々な態様において、センサ装置10は、核燃料棒の内部に配置されてもよい。温度測定は、原子炉容器の内部からの原子炉の外部に配置された受信器への無線送信によって、原子炉の炉心及び関連する燃料棒の内部で取得されてもよい。例示的な無線送信システムは、Seidelの米国特許第8,767,903号「Wireless In-Core Neutron Monitor」に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
図中に示されている実施形態において、第1及び第2部材12、42は、互いに隣接する別個の円筒の形態である。他の態様において、第1及び第2部材12、42は、同心円筒の形態であってもよく、各円筒は、それぞれの内側エミッタによって囲まれる開放された中央空間を画定し、第2部材42は、第1部材12の開放された中央空間内に配置される。
【0030】
本明細書に記載されているように、温度センサ装置10の動作は、ドップラー温度係数特性がいくつかの材料の中性子捕獲断面積に及ぼす影響に基づいている。ドップラー係数は、核燃料の温度の変化1度当たりの反応度の変化である。例えば、第1検出器部材12の外側シールド24は、原子炉内の核分裂性物質からの中性子を吸収することになる。ウラン238のような材料が外側シールド24として使用される場合、エピ熱中性子捕獲共鳴における有効中性子捕獲断面積の温度誘起増加(広がり)のため、温度が上昇するにつれて、ウラン238の材料の厚みを通過する核分裂スペクトル中性子の数は減少することとなる。熱化され、原子炉内の核分裂性物質における核分裂速度に寄与する中性子の量は減少する。この中性子分布の減少は、介在する外側シールド24の材料の中性子捕獲共鳴において、捕獲されるエネルギを有する中性子に依存する中性子検出器からの信号出力を減少させる。この結果、たとえ核分裂源中性子分布が変化していなくても、中性子センサ12から出力される信号は減少する。中性子センサ出力信号の変化は、介在する材料における温度の変化に比例することになる。この温度と出力信号との間の関係は、理論的にも、測定された較正プロセスによっても証明されることができる。このプロセスは、十分に証明された信号処理方法を使用して、原子炉の炉心内の所望の位置における温度を測定することを可能にする。
【0031】
本発明は、いくつかの実施例に従って記載されており、これらの実施例は、限定的ではなく、すべての態様において例示的であることが意図される。従って、本発明は、詳細な実施において多くの変形が可能であり、それらは、当業者によって、本明細書に含まれる記載から導き出されることができる。
【0032】
本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、刊行物、又は他の開示資料は、個々の参考文献が、参照されることにより明示的に組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれるとされるすべての参照、及び任意の資料、又はその一部は、その組み込まれる資料が本開示に記載される従来の定義、宣誓、又は他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。従って、必要な程度まで、本明細書に記載される開示は、参照により本明細書に組み込まれる任意の矛盾する資料より優先され、及び本出願に明示的に記載されている開示が優先する。
【0033】
本発明は、様々な典型的かつ例示的な実施形態を参照して説明されてきた。本明細書に記載された実施形態は、開示された発明の様々な実施形態の様々な詳細について、例示的な特徴を提供するものとして理解される。従って、特にそうではないと明示されない限り、可能な範囲で、開示された実施形態の1つ又は複数の特徴、要素、構成要素、構成要素、成分、構造、モジュール、及び/又は態様は、開示された発明の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態の1つ又は複数の他の特徴、要素、構成要素、構成要素、成分、構造、モジュール、及び/又は態様と組み合わされ、分離され、交換され、及び/又は再配置されてもよいことを理解されたい。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の様々な置換、修正、又はそれらの組み合わせをなしてもよいということが、当業者には理解されよう。さらに、当業者は、本明細書を検討する際に、本明細書に記載される本発明の様々な実施形態に相当する多くの均等物を認識するか、又は日常的な実験のみを用いて確かめることができるであろう。従って、本発明は、様々な実施形態の説明によって限定されず、むしろ特許請求の範囲によって限定される。
【国際調査報告】