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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220307BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
A61K39/395 Y
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540293
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2020051121
(87)【国際公開番号】W WO2020148425
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】1900724.4
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500532757
【氏名又は名称】キングス カレッジ ロンドン
【氏名又は名称原語表記】KINGS COLLEGE LONDON
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】バックス ヘザー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スパイサー ジェームズ エフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフス デブラ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ペリッツァーリ ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】カラギアニス ソフィア エヌ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA33
4C085BB35
4C085CC12
4C085DD32
(57)【要約】
一態様では、本発明は、対象のがんの治療における第1の表現型から抗腫瘍表現型へのマクロファージの再極性化における使用のための免疫グロブリンE(IgE)であって、第1の表現型が、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を含み、抗腫瘍表現型が、以下のサイトカイン及びケモカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びに/又はインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型を含む、前記IgEに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のがんの治療における第1の表現型から抗腫瘍表現型へのマクロファージの再極性化における使用のための免疫グロブリンE(IgE)であって、前記第1の表現型が、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を含み、前記抗腫瘍表現型が、以下のサイトカイン及びケモカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びにインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型を含む、前記IgE。
【請求項2】
対象のがんの治療における使用のための免疫グロブリンE(IgE)であって、前記対象における腫瘍と関連するマクロファージが、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を有し、前記IgEの治療が、前記腫瘍と関連する前記マクロファージの、以下のサイトカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びにインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型への再極性化を促進する、前記IgE。
【請求項3】
新たに極性化したマクロファージ表現型が、抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較した単球走化性タンパク質1(MCP-1)の発現の増加により、さらに特徴づけられる、請求項1又は2に記載の使用のためのIgE。
【請求項4】
新たに極性化したマクロファージ表現型が、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較したインターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド9(CXCL9)及び/又はケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド11(CXCL11)の発現の増加により、さらに特徴づけられる、請求項1~3のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項5】
IgEの治療が、対象における腫瘍と関連する炎症促進(M1)マクロファージによるIFNγ及び/又はIL-12の発現の増加をさらに促進する、請求項1~4のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項6】
対象における腫瘍と関連するマクロファージが、前記腫瘍の周辺を囲むように分布している、請求項1~5のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項7】
新たに極性化したマクロファージ表現型が、さらなる単球及び/又はマクロファージの対象における腫瘍への動員を促進する、請求項1~6のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項8】
がんが、皮膚がん、乳がん、頭頸部扁平上皮癌、前立腺がん、卵巣がん、結腸がん、神経膠腫、胃がん、肺がん又は膵臓がんを含む、請求項1~7のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項9】
IgEが、抗葉酸受容体α(FRα)抗体、抗高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)抗体、抗ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)抗体又は抗SF-25抗体を含む、請求項1~8のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項10】
それを必要とする対象においてがんを治療するための、治療有効量の免疫グロブリンE(IgE)を前記対象に投与するステップを含む、方法であって、前記対象における腫瘍と関連するマクロファージが、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を有し、前記IgEの治療が、前記腫瘍と関連する前記マクロファージの、以下のサイトカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びにインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型への再極性化を促進し、前記新たに極性化した前記マクロファージ表現型が、前記静止状態(M0)マクロファージ表現型又は前記抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較して抗腫瘍活性の増強を有し、これにより前記対象においてがんを治療する、前記方法。
【請求項11】
対象から得られた腫瘍試料中に存在するマクロファージの1又は2以上の表現型を検出するステップと、静止状態(M0)及び/又は抗炎症(M2a)マクロファージが前記試料中に所定のレベルを超えて存在する場合、IgEを前記対象に投与するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下のサイトカイン:TNFα、IFNγ、IL-1β、IL-6、RANTES、IL-10、MCP-1、IL-4、IL-13、MCP-1、CXCL9、IL-12及び/又はCXCL11の1又は2以上の、試料中に存在するマクロファージによる発現を検出するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
対象における腫瘍と関連するマクロファージの再極性化における使用のための免疫グロブリンE(IgE)であって、前記再極性化により、腫瘍微小環境におけるサイトカイン発現の調節及び抗腫瘍活性の増強が生じる、前記IgE。
【請求項14】
再極性化したマクロファージが、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を発現する、請求項13に記載の使用のためのIgE。
【請求項15】
再極性化したマクロファージが、インターフェロンガンマ(IFNγ)を発現する、請求項13又は14に記載の使用のためのIgE。
【請求項16】
再極性化したマクロファージが、インターロイキン1ベータ(IL-1β)を発現する、請求項13~15のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項17】
再極性化したマクロファージが、インターロイキン6(IL-6)を発現する、請求項13~16のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項18】
再極性化したマクロファージが、RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌)を発現する、請求項13~17のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項19】
再極性化したマクロファージが、インターロイキン10(IL-10)を発現する、請求項13~18のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項20】
再極性化したマクロファージが、以下のサイトカイン及びケモカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びにインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型を含む、請求項13~19のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【請求項21】
再極性化したマクロファージが、単球走化性タンパク質1(MCP-1)を発現する、請求項13~20のいずれかに記載の使用のためのIgE。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療の分野に関し、特に、対象のがんの治療における使用のための抗体に関する。より詳細には、本発明は、マクロファージの抗腫瘍表現型への再極性化による、がんの治療における使用のための抗体及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療抗体は、現在、多数の悪性疾患のための従来の治療を補完するが、現在、開発されている殆ど全ての物質は、5つの主要なヒト抗体クラスのうちの1つのみ、すなわち、血中に最も豊富な抗体クラスであるIgGに依存している(Weiner LM et al (2010) Monoclonal antibodies: versatile platforms for cancer immunotherapy. Nat Rev Immunol 10: 317-327)。ヒト免疫系は、種々の解剖学的コンパートメントにおいて免疫監視を行い、病原体の破壊を媒介する、9つの抗体クラス及びサブクラス(IgM、IgD、IgG1~4、IgA1、IgA2及びIgE)を天然に備えている。しかし、IgGのみ(殆どの場合IgG1)が、がんの免疫療法に適用されている。
【0003】
1つの理由は、IgG抗体(特にIgG1)が、ヒト血中を循環する抗体の最も大きな割合を占めることであり得る。また、抗体クラスの選択は、それぞれFc領域が9つの抗体クラス及びサブクラスのうちの1つに属する同一特異性のキメラ抗体の一団を比較する1980年代後期の先駆的研究に基づいている(Bruggemann M et al (1987) Comparison of the effector functions of human immunoglobulins using a matched set of chimeric antibodies. J Exp Med 166: 1351-1361)。抗体は、補体存在下での抗原発現標的細胞の補体に結合する能力並びに溶血及び細胞傷害を媒介する能力について評価された。IgG1は、インビトロでの補体依存性細胞殺傷において最も有効なIgGサブクラスであるが、IgA及びIgE抗体は、完全に不活性であった。
【0004】
B細胞マーカーCD20を認識する抗体による後続の臨床試験は、IgG1が、B細胞悪性腫瘍、例えば、非ホジキンリンパ腫を有する患者の免疫療法に最も適するサブクラスであるという推論を支持した(Alduaij W, Illidge TM (2011) The future of anti-CD20 monoclonal antibodies: are we making progress? Blood 117: 2993-3001)。この研究以来、種々の抗体クラスによる抗腫瘍作用の比較は、リンパ性悪性腫瘍を有するマウスモデル及び患者の両方においてIgG及びIgMに限局されてきたが、IgAは、リンパ腫のマウスモデルにおいてインビトロ及びインビボでADCCを媒介することが示された(Dechant M, Valerius T (2001) IgA antibodies for cancer therapy. Crit Rev Oncol Hematol 39: 69-77)。
【0005】
補体媒介腫瘍細胞死は、現在、抗体が腫瘍増殖の制限を媒介し得る複数の機構のうちの1つに過ぎないことがわかっている(Weiner GJ (2007) Monoclonal antibody mechanisms of action in cancer. Immunol Res 39: 271-278)。公知の機構は、Fc領域により免疫エフェクター分子を関与させて、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)及び食作用(ADCP)によって免疫細胞により媒介される標的細胞の破壊を誘導することを含む。また、抗体は、腫瘍細胞に直接作用して、増殖シグナル伝達経路を阻害するか、アポトーシスを誘導するか、腫瘍細胞の増殖及び細胞分化を制限するか、又は腫瘍細胞の接着及び遊走を遮断し得る。一部の抗体は、腫瘍が、血液供給により送達される必要不可欠な栄養素を得られないようにするために、腫瘍関連血管系と関連する標的を認識し、一方、他の抗体は、免疫制御標的(例えば、CTLA-4及びPD-1)を攻撃して、T細胞活性化を増強し、腫瘍微小環境の免疫抑制エレメントを克服するように開発されている(Ascierto PA et al (2010) Clinical experiences with anti-CD137 and anti-PD1 therapeutic antibodies. Semin Oncol 37: 508-516、Cai J, Han S, Qing R, Liao D, Law B, Boulton ME (2011) In pursuit of new anti-angiogenic therapies for cancer treatment. Front Biosci 16: 803-814)。また、細胞毒、薬物活性酵素、サイトカイン又は放射性核種の形態の毒性ペイロードを腫瘍に送達する抗体コンジュゲートのデザインに焦点を絞って広範な取り組みがなされた(Govindan SV, Goldenberg DM (2010) New antibody conjugates in cancer therapy. Scientific World Journal 10: 2070-2089)。また、IgG抗体の抗原特異性/親和性及びエフェクター機能を最適化する主な目的により、確証された治療薬、例えば、トラスツズマブを向上させる多重抗体改変方法が考案されている(Kubota T et al (2009) Engineered therapeutic antibodies with improved effector functions. Cancer Sci 100: 1566-1572)。
【0006】
IgEクラスの抗体は、アレルギー反応及び抗寄生虫活性における中心的役割を果たし、がん治療に有利であり得る多くの特性を有する。IgEに基づく能動及び受動免疫療法的方法は、インビトロ及びインビボの両がんモデルにおいて有効であることが示されており、このような方法のヒトにおける潜在的使用を示唆する(Leoh et al (2015) Curr Top Microbiol Immunol.; 388: 109-149)。したがって、IgE治療抗体は、がん細胞に対する免疫監視の増強及び優れたエフェクター細胞能をもたらし得る。
【0007】
完全ヒト抗HER2/neuIgEは、一本鎖FvC6MH3-B1の可変領域を使用して開発されている(Daniels TR et al (2012) Targeting HER2/neu with a fully human IgE to harness the allergic reaction against cancer cells. Cancer Immunol Immunother. 61: 991-1003.)。C6MH3-B1は、ヒトHER2/neuを発現するマウス乳がん細胞(D2F2/E2)の存在下でヒトFcεRIを発現するRBL SX-38細胞の脱顆粒をインビトロで誘導したが、HER2/neu発現を欠くか、又はHER2/neuの細胞外ドメインが脱落した(可溶性の)親D2F2細胞(ECDHER2)の存在下では誘導しなかった。このような結果は、HER2/neu抗原ががん細胞表面上に高いレベルで高発現している腫瘍微小環境内で急性炎症応答(I型過敏症)が生じ、FcεRI架橋結合が促進されエフェクター細胞の脱顆粒が誘発されると予想されることを示唆する(Pegram M, Ngo D. (2006) Application and potential limitations of animal models utilized in the development of trastuzumab (Herceptin): a case study. Adv Drug Deliv Rev. 58: 723-734.)。
【0008】
ヒトMUC1抗原に特異的なマウス/ヒトキメラIgEが開発されている(Teo PZ et al (2102) Using the allergic immune system to target cancer: activity of IgE antibodies specific for human CD20 and MUC1. Cancer Immunol Immunother. 61: 2295-2309.)。この抗体は、膜貫通型のヒトMUC1を発現するマウス乳がん細胞株(4T1.hMUC1)において腫瘍サイズを低下させることが示されている。しかし、おそらくは、4T1腫瘍が高度に無血管性であり、大量に密集して増殖するため応答は弱く、これにより薬物送達又はエフェクター細胞の動員が妨害され得る。
【0009】
また、PSA由来のAR47.47の可変領域からなる新規のマウス/ヒトキメラ抗PSA IgEが調査されている(Daniels-Wells TR et al (2013) A novel IgE antibody targeting the prostate-specific antigen as a potential prostate cancer therapy. BMC Cancer. 13: 195-207.)。ヒト樹状細胞をPSA及び抗PSA IgEの複合体で刺激すると、CD4及びCD8T細胞の活性化がインビトロで生じた。これは、抗PSA IgEがPSAと患者の血中で複合して、細胞傷害性Tリンパ球の活性に関与する第2の免疫応答の誘導が生じる可能性を示唆する。
【0010】
IgEの受動的投与の代替戦略は、内因性IgE応答を誘導することである。活性ワクチン接種プロトコールを確立する新規の方法は、腫瘍抗原特異的IgEを経口経路により誘導することである(Riemer AB et al (2007) Active induction of tumor-specific IgE antibodies by oral mimotope vaccination. Cancer Res. 67: 3406-3411)。合成的に製造したエピトープ模倣物(ミモトープ)が、トラスツズマブにより認識されるヒトHER2/neuのエピトープについて生成された。HER2/neu抗原を標的とする高力価血清IgEの誘導が観察され、内因性抗HER2/neu IgEがHER2/neu発現ヒト乳がん細胞(SK-BR-3)を認識して、げっ歯類FcεRIを発現するラット好塩基性細胞(RBL-2H3)の脱顆粒及び細胞傷害の両方が生じた。
【0011】
がん関連抗原葉酸受容体αに特異的なマウス/ヒトキメラIgE抗体(MOv18IgE)は、同系免疫適格動物において、その他の点では同一のIgGと比較して、IgEに対する優れた抗腫瘍活性を有することが実証されている(Karagiannis et al., Cancer Res. 2017 Jun 1;77(11):2779-2783)。TNFα/MCP-1シグナル伝達が、単球及びマクロファージの活性及び腫瘍への動員のIgE媒介機構として同定された。
【0012】
しかし、IgEに基づく抗がん治療に応答する対象は、現在わかっていない。その上、IgE抗体の抗がん作用を最も有効に促進させる方法も、わかっていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Weiner LM et al (2010) Monoclonal antibodies: versatile platforms for cancer immunotherapy. Nat Rev Immunol 10: 317-327
【非特許文献2】Bruggemann M et al (1987) Comparison of the effector functions of human immunoglobulins using a matched set of chimeric antibodies. J Exp Med 166: 1351-1361
【非特許文献3】Alduaij W, Illidge TM (2011) The future of anti-CD20 monoclonal antibodies: are we making progress? Blood 117: 2993-3001
【非特許文献4】Dechant M, Valerius T (2001) IgA antibodies for cancer therapy. Crit Rev Oncol Hematol 39: 69-77
【非特許文献5】Weiner GJ (2007) Monoclonal antibody mechanisms of action in cancer. Immunol Res 39: 271-278
【非特許文献6】Ascierto PA et al (2010) Clinical experiences with anti-CD137 and anti-PD1 therapeutic antibodies. Semin Oncol 37: 508-516
【非特許文献7】Cai J, Han S, Qing R, Liao D, Law B, Boulton ME (2011) In pursuit of new anti-angiogenic therapies for cancer treatment. Front Biosci 16: 803-814
【非特許文献8】Govindan SV, Goldenberg DM (2010) New antibody conjugates in cancer therapy. Scientific World Journal 10: 2070-2089
【非特許文献9】Kubota T et al (2009) Engineered therapeutic antibodies with improved effector functions. Cancer Sci 100: 1566-1572
【非特許文献10】Leoh et al (2015) Curr Top Microbiol Immunol.; 388: 109-149
【非特許文献11】Daniels TR et al (2012) Targeting HER2/neu with a fully human IgE to harness the allergic reaction against cancer cells. Cancer Immunol Immunother. 61: 991-1003.
【非特許文献12】Pegram M, Ngo D. (2006) Application and potential limitations of animal models utilized in the development of trastuzumab (Herceptin): a case study. Adv Drug Deliv Rev. 58: 723-734.
【非特許文献13】Teo PZ et al (2102) Using the allergic immune system to target cancer: activity of IgE antibodies specific for human CD20 and MUC1. Cancer Immunol Immunother. 61: 2295-2309.
【非特許文献14】Daniels-Wells TR et al (2013) A novel IgE antibody targeting the prostate-specific antigen as a potential prostate cancer therapy. BMC Cancer. 13: 195-207.
【非特許文献15】Riemer AB et al (2007) Active induction of tumor-specific IgE antibodies by oral mimotope vaccination. Cancer Res. 67: 3406-3411
【非特許文献16】Karagiannis et al., Cancer Res. 2017 Jun 1;77(11):2779-2783
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、一態様では、対象における腫瘍と関連するマクロファージの再極性化における使用のための免疫グロブリンE(IgE)であって、再極性化により、腫瘍微小環境におけるサイトカイン発現の調節及び抗腫瘍活性の増強が生じる、前記IgEを本発明において提供する。
【0015】
別の態様では、対象のがんの治療における第1の表現型から抗腫瘍表現型へのマクロファージの再極性化における使用のための免疫グロブリンE(IgE)抗体であって、第1の表現型が、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を含み、抗腫瘍表現型が、以下のサイトカイン及びケモカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びに/又はインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型を含む、前記IgE抗体を本発明において提供する。
【0016】
別の態様では、対象のがんの治療における使用のための免疫グロブリンE(IgE)抗体であって、対象における腫瘍と関連するマクロファージが、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を有し、前記IgEの治療(IgE treatment)が、腫瘍と関連するマクロファージの、以下のサイトカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びに/又はインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型への再極性化を促進する、前記IgE抗体を本発明において提供する。
【0017】
一実施形態では、新たに極性化したマクロファージは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を発現する。別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージは、インターフェロンガンマ(IFNγ)を発現する。別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージは、インターロイキン1ベータ(IL-1β)を発現する。別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージは、インターロイキン6(IL-6)を発現する。別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージは、RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌)を発現する。別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージは、インターロイキン10(IL-10)を発現する。一般には、新たに極性化したマクロファージ表現型は、このようなサイトカインの2又は3以上の任意の組合せにより特徴づけられ得る。好ましくは、新たに極性化したマクロファージ表現型は、以下のサイトカイン及びケモカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インターロイキン1ベータ(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌)並びにインターロイキン10(IL-10)のうちのいずれか3、4、5又は6つ全ての発現により特徴づけられる。
【0018】
一実施形態では、新たに極性化したマクロファージ表現型は、抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較した単球走化性タンパク質1(MCP-1)の発現の増加により、さらに特徴づけられる。
【0019】
別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージ表現型は、抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較したインターロイキン4(IL-4)の発現の増加により、さらに特徴づけられる。
【0020】
別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージ表現型は、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較したインターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド9(CXCL9)及び/又はケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド11(CXCL11)の発現の増加により、さらに特徴づけられる。
【0021】
別の実施形態では、IgEの治療(IgE treatment)が、対象における腫瘍と関連する炎症促進(M1)マクロファージによるIFNγ及び/又はIL-12の発現の増加をさらに促進する。
【0022】
別の実施形態では、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型は、IL-4、IL-13、MCP-1、CXCL9及び/又はCXCL11の発現により特徴づけられる。
【0023】
別の実施形態では、対象における腫瘍と関連するマクロファージは、前記腫瘍の周辺を囲むように分布している。
【0024】
別の実施形態では、新たに極性化したマクロファージ表現型が、さらなる単球及び/又はマクロファージの対象における腫瘍への動員を促進する。
【0025】
別の実施形態では、がんは、皮膚がん、乳がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、卵巣がん、結腸がん、神経膠腫、胃がん又は膵臓がんを含む。
【0026】
別の実施形態では、IgEは、抗葉酸受容体α(FRα)抗体、抗高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)抗体、抗ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)抗体又は抗SF-25抗体を含む。
【0027】
さらなる態様では、それを必要とする対象においてがんを治療するための、治療有効量の免疫グロブリンE(IgE)を対象に投与するステップを含む、方法であって、対象における腫瘍と関連するマクロファージが、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型を有し、前記IgEの治療(IgE treatment)が、腫瘍と関連するマクロファージの、以下のサイトカイン:腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターフェロンガンマ(IFNγ);インターロイキン1ベータ(IL-1β);インターロイキン6(IL-6);RANTES又はCCL5(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌);並びにインターロイキン10(IL-10)の発現により特徴づけられる新たに極性化したマクロファージ表現型への再極性化を促進し、前記新たに極性化したマクロファージ表現型が、静止状態(M0)マクロファージ表現型又は抗炎症(M2a)マクロファージ表現型と比較して抗腫瘍活性の増強を有し、これにより対象においてがんを治療する、前記方法を本発明において提供する。
【0028】
一実施形態では、方法は、対象から得られた腫瘍試料中に存在するマクロファージの1又は2以上の表現型を検出するステップと、静止状態(M0)及び/又は抗炎症(M2a)マクロファージが試料中に所定のレベルを超えて存在する場合、IgEを対象に投与するステップとを含む。
【0029】
別の実施形態では、方法は、以下のサイトカイン:TNFα、IFNγ、IL-1β、IL-6、RANTES、IL-10、MCP-1、IL-4、IL-13、MCP-1、CXCL9、IL-12及び/又はCXCL11の1又は2以上の、試料中に存在するマクロファージによる発現を検出するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】IgE架橋結合時のTNFα、IFNγ及びIL-12サイトカインプロファイルのマクロファージ上清の多重解析を示すグラフである。サイトカイン放出に対するIgE架橋結合の作用を調査し、細胞をSF-25IgE又はNIP IgE単独、SF-25又はNIP IgE+抗IgE、抗IgE単独で処理した。値は、3つの独立的実験に基づいて、上清pg/ml±SEMとして表す。NIPは、4-ヒドロキシ-3-ヨード-5-ニトロフェニル酢酸である。
図2】IgE架橋結合時のIL-4、IL-10及びIL-13サイトカインプロファイルのマクロファージ上清の多重解析を示すグラフである。サイトカイン放出に対するIgE架橋結合の作用を調査し、細胞をSF-25IgE又はNIP IgE単独、SF-25又はNIP IgE+抗IgE、抗IgE単独で処理した。値は、3つの独立的実験に基づいて、上清pg/ml±SEMとして表す。
図3】IgE架橋結合時のIL-1β、IL-6、MCP-1及びRANTESサイトカインプロファイルのマクロファージ上清の多重解析を示すグラフである。サイトカイン放出に対するIgE架橋結合の作用を調査し、細胞をSF-25IgE又はNIP IgE単独、SF-25又はNIP IgE+抗IgE、抗IgE単独で処理した。値は、3つの独立的実験に基づいて、上清pg/ml±SEMとして表す。
図4】IgE架橋結合時のMIG(CXCL9)及びI-TAC(CXCL11)サイトカインプロファイルのマクロファージ上清の多重解析を示すグラフである。サイトカイン放出に対するIgE架橋結合の作用を調査し、細胞をSF-25IgE又はNIP IgE単独、SF-25又はNIP IgE+抗IgE、抗IgE単独で処理した。値は、3つの独立的実験に基づいて、上清pg/ml±SEMとして表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
IgE治療により、マクロファージの種々の表現型によるサイトカイン及びケモカインの発現の独特なプロファイルがもたらされることが、驚くべきことに見出された。特に、静止状態(M0)及び抗炎症(M2a)マクロファージ表現型は、IgE治療により、抗腫瘍活性が増強された新規のマクロファージ表現型へ再極性化可能であることが見出された。この新規のマクロファージ表現型は本明細書において、新たに極性化したマクロファージ表現型と呼ぶ。新たに極性化したマクロファージ表現型は、古典的な炎症促進(M1)及び抗炎症(M2a)の両マクロファージとは異なる、サイトカイン及びケモカイン発現の特異的プロファイルにより特徴づけられる。
【0032】
したがって、新たに極性化したマクロファージ表現型は、IgE抗体を使用する抗がん治療を増強するために利用することができる。例えば、対象における腫瘍と関連するマクロファージ表現型に基づいて、IgE抗体治療のために対象を選択することができる。特に、腫瘍における静止状態(M0)及び抗炎症(M2a)マクロファージの検出、例えば、所定のレベル又は総マクロファージに占める所定の割合を超える検出は、マクロファージを抗腫瘍表現型へ再極性化させるためにIgE療法を使用する指標として使用し得る。
【0033】
その上、本発明は、免疫療法的方法でがんを治療すること、すなわち、マクロファージの抗腫瘍表現型への再極性化を促進し(例えば、この表現型に特徴的なサイトカイン/ケモカインの発現を増強するために)、その結果、ADCCのような機構による免疫細胞を介したがん細胞の殺傷を増強することが望ましい臨床状況において使用することができる。また、本発明は、例えば、腫瘍細胞自体に加えて、新たに極性化したマクロファージ表現型によりMCP-1のようなケモカインの発現が増加することにより、さらなる単球及び/又はマクロファージの腫瘍組織への動員を促進するために使用することができる。これは、例えば、抗腫瘍マクロファージが腫瘍に存在しないか、又は腫瘍組織周辺部のみに存在する場合、特に望ましいことがある。したがって、本発明は、マクロファージの抗腫瘍表現型への再極性化を必要とする新たな患者のサブグループ及び新たな臨床状況の治療を伴う、がん治療におけるIgE療法の使用の新たな臨床パラダイムを表す。
【0034】
抗体
抗体は、抗原のエピトープ又はこの断片を特異的に認識して特異的に結合する、少なくとも1つの軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含む、ポリペプチドリガンドである。抗体は、重及び軽鎖から典型的になり、このそれぞれは、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域と呼ぶ可変領域を有する。まとめると、VH領域及びVL領域は、抗体により認識される抗原に結合する要因となる。
【0035】
抗体は、インタクトな免疫グロブリン及び、当技術分野において周知の、抗体のバリアント並びに部分を含むが、ただし、このような断片は、IgEの少なくとも1つの機能を保持し、例えば、Fcε受容体に結合可能である。また、抗体は、遺伝的に改変した形態、例えば、キメラ、ヒト化(例えば、可変領域にマウス配列を含むヒト化抗体)又はヒト抗体、二重特異性抗体、例えば、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997に記載されている抗体を含む。
【0036】
典型的には、天然に存在する免疫グロブリンは、重(H)鎖及び軽(L)鎖がジスルフィド結合により相互接続する。2つの型の軽鎖、ラムダ(λ)及びカッパ(k)が存在する。抗体分子の機能活性を決定する9つの主なアイソタイプ又はクラス:IgA1~2、IgD、IgE、IgG1~4及びIgMが存在し、重鎖型α、δ、ε、γ及びμに対応する。したがって、存在する重鎖の型により、抗体のクラスが定義される。特有の重鎖は、サイズ及び組成が異なり、α及びγは、約450アミノ酸を含み、一方、μ及びεは、約550アミノ酸を有する。各重鎖型の定常領域における差により、これらが特定の受容体型(例えば、Fc受容体)へ選択的に結合することから、各抗体アイソタイプの種々のエフェクター機能が判別できる。したがって、本発明の実施形態では、抗体は、好ましくは、イプシロン(ε)重鎖を含み、すなわち、抗体は、Fcε受容体に結合するIgEアイソタイプである。
【0037】
各重鎖及び軽鎖は、定常領域及び可変領域を含む(領域は、「ドメイン」としても知られる)。ともに重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原に特異的に結合する。軽鎖及び重鎖の可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ぶ3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、定義されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照)。Kabatのデータベースは、現在、オンラインで維持されている。種々の軽又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種、例えば、ヒトにおいて比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成する軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の組合せであり、CDRを三次元空間に配置してアラインメントするように作用する。
【0038】
CDRは主に、抗原のエピトープに結合する役割を担っている。各鎖のCDRは、N末端から連番を付したCDR1、CDR2及びCDR3と典型的に呼ばれ、また、特定のCDRが位置する鎖により識別されるのが一般的である。したがって、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインのCDR1である。
【0039】
抗体は、特異的VH領域及びVL領域配列を有し、このため特異的CDR配列を有し得る。種々の特異性(すなわち、種々の抗原の種々の結合部位)を有する抗体は、種々のCDRを有する。CDRは抗体に応じて異なるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが、抗原結合に直接関与する。CDR内のこのような位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ぶ。「VH」とは、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」とは、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0040】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンにより、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子をトランスフェクトした細胞により産生される抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、骨髄腫細胞の免疫脾臓細胞との融合によるハイブリッド抗体形成細胞を生成するなど、当業者に公知の方法により作製される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0041】
「キメラ抗体」は、2つの異なる抗体に由来する配列を含み、これらは典型的には異なる種に由来する。例えば、キメラ抗体は、ヒト及びマウスの抗体ドメイン、例えば、ヒト定常領域及びマウス可変領域(例えば、標的抗原に特異的に結合するマウス抗体からのもの)を含み得る。
【0042】
キメラ抗体は、典型的には、異なる種に属する軽鎖及び重鎖の免疫グロブリン遺伝子の可変及び定常領域を、例えば、遺伝子工学によって融合させることによって構築される。例えば、マウスモノクローナル抗体の遺伝子の可変セグメントは、ヒト定常セグメント、例えば、カッパ及びイプシロンに連結させることができる。したがって一例では、治療的キメラ抗体は、マウス抗体の可変ドメイン若しくは抗原結合ドメイン、及びヒト抗体の定常ドメイン若しくはエフェクタードメイン、例えば、ヒトIgE抗体のFc(エフェクター)ドメインからなるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種も使用可能であり、又は可変領域は、分子技術により生成することもできる。キメラ抗体を生成する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,807,715号を参照されたい。
【0043】
「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(例えば、マウス、ラット又は合成)抗体の1又は2以上のCDRを含む抗体である。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼び、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ぶ。一実施形態では、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリンのドナー免疫グロブリン由来である。定常領域は、典型的には、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85~90%、例えば、約95%以上同一である。したがって、CDRを除いて、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。
【0044】
ヒト化抗体は、ヒト化免疫グロブリン軽鎖及びヒト化免疫グロブリン重鎖を典型的に含む。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同一の抗原に典型的に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから得られたアミノ酸による限られた数の置換を有し得る。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に対して実質的に影響しない、さらなるアミノ酸の保存的置換を有し得る。
【0045】
ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子工学的手段により構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照)。典型的には、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重及び軽可変鎖のドナー抗体相補性決定領域をヒト可変ドメインに移行させ、次いで、ドナー対応物のフレームワーク領域にヒト残基を置換することにより生成する。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体コンポーネントの使用は、ドナー抗体の定常領域の免疫原性と関連する潜在的問題を取り除く。ヒト化モノクローナル抗体を生成するための技術は、例えば、Jones et al., Nature 321:522, 1986、Riechmann et al., Nature 332:323, 1988、Verhoeyen et al., Science 239:1534, 1988、Carter et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. U.S.A. 89:4285, 1992、Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437, 1992及びSinger et al., J. Immunol. 150:2844, 1993により記載されている。
【0046】
「ヒト」抗体(「完全ヒト」抗体とも呼ばれる)は、ヒトフレームワーク領域及びヒト免疫グロブリン由来のCDRの全てを含む抗体である。一例では、フレームワーク及びCDRは、同一起源のヒト重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列由来である。しかし、あるヒト抗体のフレームワークは、異なるヒト抗体由来のCDRを含むように改変することができる。
【0047】
本発明の実施形態では、抗体は、キメラ、ヒト化又は完全ヒト抗体を含む、モノクローナル又はポリクローナル抗体であってもよい。
【0048】
一実施形態では、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも約65%同一であり得る。したがって、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列は、ドナー免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの配列と少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約99%又は少なくとも約95%同一であり得る。ヒトフレームワーク領域、及びヒト化抗体フレームワーク領域において生じさせ得る変異は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,585,089号を参照)。
【0049】
また、特定の抗原に対するさらなる抗体を十分に確立された方法により生成してもよく、このような抗体由来の少なくとも可変領域又はCDRを本発明の抗体において使用してもよい(例えば、生成した抗体を使用してCDR又は可変領域配列をIgEアクセプター配列に供与し得る)。ポリペプチドの合成及び宿主動物の免疫のための方法は、当技術分野において周知である。典型的には、宿主動物(例えば、マウス)は、一定量の免疫原、並びに(モノクローナル抗体を生成する場合)Kohler, B. and Milstein, C. (1975) Nature 25 6:495-497の一般的体細胞ハイブリダイゼーション技術を使用して、そのリンパ球及び不死化骨髄腫細胞から調製したハイブリドーマを、腹腔内に接種する。
【0050】
適する抗体を産生させるハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで公知の手順を使用して増殖させ得る。モノクローナル抗体は、必要に応じて、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー及び限外濾過により培養培地又は体液から単離し得る。望ましくない活性が存在する場合、例えば、固相に結合する免疫原で生成した吸着剤上で調製を行い、所望の抗体を免疫原から溶出又は放出することにより除去することができる。必要に応じて、目的の抗体(モノクローナル又はポリクローナル)をシーケンシングしてもよく、次いで、ポリヌクレオチド配列をベクターにクローニングして発現又は増殖させてもよい。抗体をコードする配列を宿主細胞においてベクター内に維持してもよく、次いで、宿主細胞を増殖及び凍結させて将来的に使用することができる。
【0051】
ファージディスプレイ技術、例えば、米国特許第5,565,332号及び他の公表文献に記載のものを使用して、ヒト抗体及び抗体断片をインビトロで非免疫ドナー由来の(例えば、関連する障害に罹患している患者を含むヒト対象由来の)免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパトワから選択及び生成し得る。例えば、既存の抗体ファージディスプレイライブラリーは、合成ポリペプチドの膨大なコレクションに対して並行してパニングし得る。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージのメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子、例えば、M13又はfdのいずれかにインフレームでクローニングし、機能性抗体断片としてファージ粒子の表面上に提示する。糸状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能特性に基づく選択により、このような特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がまた生じる。したがって、ヒトライブラリーによるファージディスプレイを使用して選択される抗体配列は、特異的抗原への特異的結合を付与するヒトCDR又は可変領域配列を含む可能性があり、これを使用して本発明における使用のための完全ヒト抗体を用意してもよい。
【0052】
ヒトB細胞及び形質細胞クローン由来の重及び軽鎖配列を得るための方法も当技術分野において周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して典型的に実施し、この方法の例は、Kuppers R, Methods Mol Biol. 2004;271:225-38、Yoshioka M et al., BMC Biotechnol. 2011 Jul 21;11:75、Scheeren FA et al., PLoS ONE 2011, 6(4): e17189. doi:10.1371/journal.pone.0017189、Wrammert J et al., Nature 2008 453, 667-671、Kurosawa N et al., BMC Biotechnol. 2011 Apr 13;11:39、Tiller et al., J Immunol Methods. 2008 January 1; 329(1-2): 112-124に記載されている。したがって、B細胞クローンを使用して選択された抗体配列は、標的抗原への特異的結合を付与するヒトCDR又は可変領域配列を含んでもよく、これを使用して、本発明における使用のための完全ヒト抗体を提供してもよい。
【0053】
IgE抗体
対象に投与する抗体は、IgE抗体、すなわち、IgEアイソタイプの抗体である。IgE及びIgGの間にいくらかの根本的な構造的差異が存在し、これらは、機能的作用を有する。IgEは、他のクラスの抗体と同一の基本的分子構造を共有するが、IgEの重鎖は、IgGの重鎖よりも1つ多いドメインを含む。IgEのCε3及びCε4ドメインは、IgGのCγ2及びCγ3ドメインと配列が相同であり、構造が類似し、このためCε2ドメインは、IgEの最も明白で際立った特徴である。Cε2ドメインは、重鎖IgEに対して折り畳まれており、Cε3ドメインと緊密に接触することが見出されている。IgE重鎖のこの屈曲構造により、開又は閉構造をとることが可能となる。非結合IgE二量体は、開構造において1つの鎖を、閉構造において1つの鎖を有する。FcεRIのIgEへの結合は、二相性であり、開Cε鎖への最初の結合の後、大規模な構造的再配列に関与して、閉Cε鎖への結合が可能となると考えられる。IgE二量体及びFcεRIの間の結合は、2つの同一のCε鎖の存在にもかかわらず1:1の化学量論で生じる。この再配列により、IgE及びFcεRIの間の非常に密接な相互作用、並びにIgG及びFcγRに見出されるよりもはるかに高いFc受容体に対するIgEの親和性が生じる(McDonnell, J. M., R. Calvert, et al. (2001) Nat Struct Biol 8(5): 437-441)。
【0054】
本発明において使用する抗体は、Fcε受容体に、例えば、FcεRI及び/又はFcεRII受容体に結合することが典型的に可能である。好ましくは、抗体は、FcεRI(すなわち、高親和性Fcε受容体)に結合することが少なくとも可能であるか、又はFcεRII(CD23、低親和性Fcε受容体)に結合することが少なくとも可能である。典型的には、抗体はまた、Fcε受容体を活性化することが可能であり、例えば、免疫系の細胞上で発現して、IgEにより媒介されるエフェクター機能を開始する。
【0055】
イプシロン(ε)重鎖は、IgE抗体に固有であり、N末端可変ドメインVH及び4つの定常ドメインCε1~Cε4を含む。他の抗体アイソタイプと同様に、可変ドメインは、抗原特異性を付与し、定常ドメインは、アイソタイプ特異的エフェクター機能を動員する。
【0056】
IgEは、補体を固定することが不可能であり、単核細胞、NK細胞及び好中球の表面上に発現するFc受容体FcγRI、RII及びRIIIに結合しない点で、より豊富なIgGアイソタイプとは異なる。しかし、IgEは、多様な免疫細胞、例えば、マスト細胞、好塩基球、単球/マクロファージ、好酸球上の「高親和性」IgE受容体(FcεRI、Ka.1011-1)並びに炎症細胞及び抗原提示細胞(例えば、単球/マクロファージ、血小板、樹状細胞、T及びBリンパ球)上に発現する「低親和性」受容体、CD23としても知られるFcεRII(Ka.10-1)との非常に特異的な相互作用が可能である。
【0057】
このような受容体相互作用の要因となるIgE上の部位は、Cε鎖上のペプチド配列に位置しており、特有である。FcεRI部位は、Gln301及びArg376の間に残基により作られた間隙に位置し、Cε2及びCε3ドメインの間の接合部を含む(Helm, B. et al. (1988) Nature 331, 180183)。FcεRII結合部位は、Cε3内の残基Val370の周囲に位置する(Vercelli, D. et al. (1989) Nature 338, 649-651)。2つの受容体を識別する主な差は、FcεRIは単量体Cεに結合するが、FcεRIIは二量体化Cεにのみ結合すること、すなわち、2つのCε鎖は、結合していなければならないことである。IgEは、インビボでグリコシル化されるが、これはFcεRI及びFcεRIIへの結合に必要ではない。
【0058】
したがって、Fcε受容体への結合及び関連するエフェクター機能は、抗体の重鎖定常ドメインにより、特に、抗体のFc領域をともに形成するドメインにより、典型的に媒介される。本明細書に記載する抗体は、IgE抗体の少なくとも一部分、例えば、IgE、好ましくは、ヒトIgEに由来する1又は2以上の定常ドメインを典型的に含む。特定の実施形態では、抗体は、Cε1、Cε2、Cε3及びCε4から選択される1又は2以上のドメイン(IgEに由来)を含む。一実施形態では、抗体は、少なくともCε2及びCε3、より好ましくは、少なくともCε2、Cε3及びCε4を含み、好ましくは、この場合、ドメインはヒトIgEに由来する。一実施形態では、抗体は、イプシロン(ε)重鎖、好ましくは、ヒトε重鎖を含む。
【0059】
ヒトIgEに由来する定常ドメイン、特に、Cε1、Cε2、Cε3及びCε4ドメインをコードするヌクレオチド配列は、例えば、国際公開第2013/050725号に開示されている。ヒトCε1、Cε2、Cε3及びCε4ドメイン並びにヒトε重鎖配列を含む、他のヒト及び哺乳動物のIgE及びこれらのドメインのアミノ酸配列は、当技術分野において公知であり、公的に利用可能なデータベースから入手可能である。例えば、ヒト免疫グロブリン配列のデータベースは、国際免疫遺伝学情報システム(International ImMunoGeneTics Information System、IMGT(登録商標))のウェブサイトhttp://www.imgt.org.から利用可能である。一例としては、種々のヒトIgE重(ε)鎖アレル及びこれらの個々の定常ドメイン(Cε1~4)の配列が、http://www.imgt.org/IMGT_GENE-DB/GENElect?query=2+IGHE&species=Homo+sapiens.において利用可能である。
【0060】
好ましい抗体
本発明において使用するIgE抗体は、任意の標的抗原に結合し得る。このような標的抗原の一部の非限定的な例としては、例えば、葉酸受容体α(FRα)抗体、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4又はCSPG4としても知られる)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2/neu、erbB2としても知られる)、CD20、ムチン1(MUC1)及び前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられる。すなわち、本発明は、上記の標的のいずれか又は他の任意の抗原に特異的に結合する抗体を包含する。適するIgE抗体の例は、例えば、国際公開第2013/050725号、Karagiannis et al., J Immunol 2007; 179:2832-2843、Daniels et al (2012), Cancer Immunol Immunother. 61: 991-1003、Daniels-Wells et al (2013), BMC Cancer. 13: 195-207、Teo et al (2012), Cancer Immunol Immunother. 61: 2295-2309、Karagiannis et al., Cancer Immunol Immunother. 2009 Jun;58(6):915-30及びKaragiannis et al., Cancer Res; 77(11), 2017に記載されている。
【0061】
一般には、本明細書に記載する抗体の機能性断片を本発明において使用し得る。機能性断片は、抗体に存在するときに必要とされる活性(例えば、抗原及びFcε受容体への特異的結合)を保持することを条件として、上記に特定する任意の長さ(例えば、少なくとも50、100、300若しくは500ヌクレオチド、又は少なくとも50、100、200若しくは300アミノ酸)であってもよい。
【0062】
また、上記のアミノ酸及びヌクレオチド配列のバリアントも、得られる抗体がFcε受容体に結合することを条件に、本発明において使用し得る。典型的には、このようなバリアントは、上に特定する配列のうちの1つとの高度な配列同一性を有する。
【0063】
アミノ酸又はヌクレオチド配列間の類似性は、配列間の類似性を単位として表し、別の言い方をすれば配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、パーセント同一性(又は類似性若しくは相同性)を単位として頻繁に測定され、パーセントが高いほど2つの配列はより類似する。アミノ酸又はヌクレオチド配列の相同体又はバリアントは、標準的方法を使用してアラインメントした場合、比較的高度の配列同一性を有する。
【0064】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野において周知である。種々のプログラム及びアラインメントアルゴリズムは、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988、Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988、Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989、Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988及びPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994では、配列アラインメント方法及び相同性算出の詳細な考察を示す。
【0065】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、米国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI、Bethesda, Md)及びインターネット上を含む、複数のソースから入手可能であり、配列解析プログラムblastp, blastn, blastx, tblastn及びtblastxと関連する使用を目的とする。このプログラムを使用した配列同一性を判定する方法の説明は、インターネットのNCBIウェブサイト上で利用可能である。
【0066】
典型的には、バリアントは、本来のアミノ酸又はヌクレオチド配列と比較して1又は2以上のアミノ酸の保存的置換を含む。保存的置換は、抗体の標的抗原及び/又はFcε受容体に対する親和性に実質的には影響又はこれを低下させない置換である。例えば、標的抗原に特異的に結合するヒト抗体は、本来の配列(例えば、上に定義する配列)と比較して最大1、最大2、最大5、最大10又は最大15の保存的置換を含み、標的ポリペプチドへの特異的結合を保持し得る。また、保存的変異の用語は、抗体が標的抗原に特異的に結合することを条件に、非置換親アミノ酸の位置における置換アミノ酸の使用を含む。非保存的置換は、活性又は標的抗原及び/若しくはFcε受容体への結合を低下させる置換である。
【0067】
保存的置換により交換し得る、機能的に類似するアミノ酸は、当業者に周知である。以下の6つのグループは、相互に保存的置換であると考えられるアミノ酸の例である:1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0068】
サイトカイン
本発明の実施形態では、IgE治療を使用して、サイトカイン発現の特異的プロファイルにより特徴づけられる新規の抗腫瘍マクロファージ表現型への再極性化を促進し得る。一般には、「サイトカイン」の用語は、本明細書において使用する場合、ケモカインを含み、これは典型的に、単球、リンパ球及び他の免疫系細胞のような細胞の走化性の促進に関与する小型のサイトカインである。
【0069】
インターフェロンγ(IFN-γ)は、生物学的活性が、細胞媒介適応免疫応答の間に細胞増殖抑制性/細胞傷害性及び抗腫瘍機構と通常関連付けられるサイトカインである。腫瘍免疫監視におけるIFN-γの役割を関係づける十分な証拠があるにもかかわらず、このIFN-γが、特定の状況下で腫瘍形成促進作用も有し得ることを示唆する報告が絶え間なくなされている。IFN-γの最もよく特徴づけられた機能は、主要組織適合(MHC)クラスI分子を上方制御して、プロフェッショナル抗原提示細胞における抗原の刺激及び提示に役立つことである(Seliger B et al (2008) IFN inducibility of major histocompatibility antigens in tumors. Adv Cancer Res. 101: 249-76)。IFN-γは、多くの免疫細胞型の分化及び機能を制御して、T細胞の分化、活性化及び恒常性の制御によりTh1媒介免疫応答のあらゆる状況に本質的に関与し、これは、Th2細胞の発生を阻害するが、制御性T(Treg)細胞の発生を促進する(Agnello D et al (2003) Cytokines and transcription factors that regulate T helper cell differentiation: new players and new insights. J Clin Immunol. 23(3): 147-61)。これはまた、マクロファージを活性化し、ケモカインの生成を誘導する。したがって、IFN-γは、腫瘍拒絶の誘導に重要であり得る。
【0070】
炎症促進サイトカイン、例えば、インターロイキン1α(IL-1α)、IL-1β、IL-6及び腫瘍壊死因子α(TNFα)が、がんを促進又は抑制することがわかっている。しかし、このような相反する結果の根底にある細胞及び分子的基盤は、謎のままである。インターロイキン1(IL-1)は、多くの腫瘍型において上方制御されることが知られ、転移性及び血管形成性の遺伝子及び増殖因子の発現による腫瘍の進行における因子として関係づけられており、がん細胞は、IL-1を直接的に生成するか、腫瘍微小環境において細胞にIL-1を生成するよう誘導し得る(Portier M et al (1993) Cytokine gene expression in human multiple myeloma. Br J Haematol. 85: 514-520)。しかし、Haabehtら(Oncoimmunology (2016) 5(1): e1039763)は、IL-1(IL-1α及びIL-1β)がIFN-γと協同して、腫瘍浸潤マクロファージにおいて殺腫瘍活性を誘導することを示した。IL-1及びIFN-γの間のこの相乗作用により、炎症が、腫瘍特異的Th1細胞により駆動される場合、がんを促進するのではなく抑制するしくみが説明され得る。まとめると、これらのデータは、炎症の、より詳細には、がんに対してTh1により媒介される免疫の増強において基準となる炎症促進サイトカインIL-1の、中心的役割を示唆する。
【0071】
炎症及びがんの間の強力な関連性は、腫瘍形成を促進する腫瘍微小環境におけるIL-6レベルが高レベルであることからうかがえる。IL-6は、炎症の状況下においてTNFα及びIL-1βの機能に匹敵する機能を有する炎症促進サイトカインとみなされることが多い。
【0072】
最近まで、インターロイキン10(IL-10)は、抗腫瘍免疫を妨げる免疫抑制サイトカインであるとみなされていた。IL-10が、Tヘルパー1細胞機能及び抗腫瘍細胞溶解活性に必須であることが明らかとなっている。IL-10の強力な抗炎症機能は、主に間接的かつ細胞を介したものであり、その免疫刺激機能と協同して腫瘍特異的免疫監視を向上させる(Dennis et al (2013) Curr Opin Oncol. 25(6): 637-645)。
【0073】
インターロイキン(IL)4及び13は、構造的に及び機能的に関連している。これらは、正常な生理的条件下だけでなく、がんにおいても免疫応答及び免疫微小環境を制御する。両方のサイトカインは、シグナル伝達を開始し、生物学的作用、例えば、腫瘍増殖、細胞生存、細胞接着及び転移を媒介する。特定のがんでは、このようなサイトカイン受容体の存在は、がんの悪性度のバイオマーカーとして作用し得る。加えて、このような両サイトカイン及びこれらの受容体は、腫瘍増殖のための免疫系の調節において重要な役割を果たすことがわかっている。IL-4は、Bリンパ球の増加及び抗体の産生を生じ、Tリンパ球の産生をも増加させる。IL-13は、T細胞に直接的には作用できないため、IL-4ほど免疫偏位に重大ではないと考えられている。しかし、IL-13の最近の研究では、このサイトカインが、免疫制御の多くの状況において重大な役割を果たすことが明らかとなっている。Terabeらによる研究(Cancer Immunol Immunother. (2004) 53(2): 79-85)等では、IL-13が、NKT細胞により腫瘍免疫監視が抑制される新規の免疫制御経路の中心であることを示している。
【0074】
インターロイキン12(IL-12)は、自然(NK細胞)及び適応(細胞傷害性Tリンパ球)免疫の両方を活性化する能力のため、腫瘍免疫療法の理想的候補となると思われていた。IL-12は多様な免疫細胞に作用するが、IL-12の生理学的な全体的役割によって、特定の病原体に対するTh1型免疫応答が組織化されていると思われる。IL-12の強力な抗腫瘍作用は十分に確立されているが、このサイトカインは、例外はあり得るとしても、がん増殖を直接阻害することは不可能であると考えられる(Ferretti E et al (2010) Direct inhibition of human acute myeloid leukemia cell growth by IL-12. Immunol Lett. 133: 99-105)。むしろ、IL-12は、がんに対するTh1型免疫応答の主要な編成因子として作用する。別の重要な概念は、IL-12が、全身的に存在するのではなく、腫瘍部位に直接存在している場合、より強力な抗腫瘍応答を誘発すると思われることである。
【0075】
ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)としても知られる、RANTES(活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌)は、ケモカインのベータファミリーのメンバーであり、リンパ球及び単球の炎症部位への強力な化学遊走因子である。また、T細胞により放出される特定のサイトカイン(例えば、IL-2及びIFN-γ)の助けにより、RANTESは、特定のナチュラルキラー(NK)細胞の増殖及び活性化を誘導してCHAK(CCケモカイン活性化キラー)細胞を形成する。
【0076】
ケモカインCXCL9は、免疫細胞の走化性において重要な役割を果たし、蓄積された証拠により、CXCL9を含む腫瘍微小環境の操作によって腫瘍特異的T細胞による戦略の治療有効性が増強され得ることが示されている(Ding et al (2016) Cancer Med. 5(11): 3246-3259)。CXCL9によって、腫瘍細胞の遊走及び浸潤の増強によりがん転移(Ding Q et al (2016) An alternatively spliced variant of CXCR3 mediates the metastasis of CD133+ liver cancer cells induced by CXCL9. Oncotarget. 7: 14405-14414)並びに内皮細胞単層の破壊(Amatschek S et al (2011) CXCL9 induces chemotaxis, chemorepulsion and endothelial barrier disruption through CXCR3-mediated activation of melanoma cells. Br. J. Cancer. 104: 469-479)が促進され得る。しかし、腫瘍抑制因子として、腫瘍浸潤CD8+T細胞及びNK細胞を動員し(Clancy-Thompson E et al (2015) Melanoma induces, and adenosine suppresses, CXCR3-Cognate chemokine production and T-cell infiltration of lungs bearing metastatic-like disease. Cancer Immunol. Res. 3: 956-967)、腫瘍血管形成を阻害する(Addison C. L et al (2000) The CXC chemokine, monokine induced by interferon-gamma, inhibits non-small cell lung carcinoma tumor growth and metastasis. Hum. Gene Ther. 11: 247-261)ことが主に示されている。
【0077】
インターフェロン誘導性T細胞化学遊走因子(I-TAC/CXCL11)は、IFN誘導性ケモカインであり、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞及び単球/マクロファージの動員を感染部位において媒介する。
【0078】
Nakamuraらは(記事において)、「古典的」Th1、Th2、Th9及びTh17応答の免疫メディエーターの高い腫瘍内発現が、臨床結果と任意の関連性を有し得るかどうかを評価した。個々のメディエーターの検査では、22のうち9のメディエーター:CXCL-9、CXCL-10、CXCL-11、IFNγ、TNFα、IL-4、MCP-1、IL-23、CXCL-13が、ゲノム発現が低い患者と比較して、患者の生存率向上と有意に関連することが示された。生存率向上との最も顕著な関連性を有するサイトカインは、CXCL-10及びIFNγであり、22%低い死亡リスクを伴った(CXCL-10:HR=0.78、P=0.0037;IFNγ:HR=0.78、P=0.0036)。その上、Th2サイトカイン、IL-4及びMCP-1の腫瘍内発現が高い対象は、優れた生存率を示し、死亡リスクがそれぞれ19%及び17%低下した(IL-4:HR=0.78、P=0.012;MCP-1:HR=0.83、P=0.029)。M2aマクロファージのIgE架橋から生じる新たに極性化したマクロファージ表現型が、IL-4及びMCP-1の両方の発現の増加を示すことがわかっている。
【0079】
また、Nakamuraらは、一定の割合のTh1サイトカインの高発現(IFNγ(HR=0.78、P=0.0036)、CXCL-9(HR=0.81、P=0.012)、CXCL-10(HR=0.78、P=0.0037)及びCXCL-11(HR=0.8、P=0.0078))で、生存率向上との最大の関連性を観察し、また、このようなメディエーターを組み合わせた場合、2つのメディエーターの組合せであるCXCL-9及びCXCL-10は、0.74のHRを伴い(P=0.0006)、CXCL-9、CXCL-10及びCXCL-11の組合せは、0.73のHRを伴い(P=0.00028)、患者生存率における最も高い向上は、4つ全てのメディエーター(IFNγ、CXCL-9、CXCL-10及びCXCL-11)の高発現(HR=0.72、P=0.00021)により測定された。これらは、生存利益を付与し得るこのようなメディエーターの相乗機能を示し得る。やはり、M2aマクロファージに由来する新たに極性化したマクロファージ表現型が、IFNγの出現並びにCXCL9及びCXCL11の分泌の増加を伴う類似のプロファイルを示すことがわかっている。
【0080】
Nakamuraらは、まとめると、このような知見は、細菌及びウイルスに対する免疫をある程度保護する「古典的」(Th1、Th2及びTh17)応答の免疫セクレトームメディエーター(immune secretome mediator)を同定し、さらに、アレルギー及び自己免疫のような病態に関与するメディエーターは、卵巣がん生存におけるポジティブな予後の文脈において、より良い予後と関連したと結論づける。詳細には、TNFα/MCP-1の特性は、抗がん免疫における役割を有し得る。通常、感染クリアランスにおいて展開される、このような及び他の免疫特性は、特異的な免疫療法的方法、例えば、抗腫瘍特異的IgEにより、又は弱毒寄生体ワクチンにより増強されて(Baird, J.R. et al (2013) Avirulent Toxoplasma gondii generates therapeutic antitumor immunity by reversing immunosuppression in the ovarian cancer microenvironment. Cancer Res. 73(13): 3842-51、Fox, B.A. et al (2017) Cancer therapy in a microbial bottle: Uncorking the novel biology of the protozoan Toxoplasma gondii. PLoS Pathog. 13(9): e1006523)、免疫抑制を回復させ、卵巣及び他のがんにおける治療的利益を付与し得る。
【0081】
本明細書に記載するサイトカイン及びケモカイン並びにこれらのアミノ酸配列(及びアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)は、当業者に周知であり、これらの配列は、公的に利用可能なデータベースから入手可能である。マクロファージ集団によるサイトカイン及びケモカインの発現は、適する任意の方法により(例えば、ポリペプチド又はRNAのレベルで)、例えば、それらに対する抗体(標識していてもよい)を使用して検出し得る。このような抗体は、公知であり、市販されている。例えば、サイトカイン及びケモカインは、例えば、ELISA、磁気ビーズ及び/又は蛍光標識を含む、標準的方法により検出し得る。特に、蛍光標識(すなわち、フルオロフォア)は、抗サイトカイン抗体に(又は、例えば、抗サイトカイン抗体を同様に結合させる磁気微小粒子に)結合させ得る。一実施形態では、サイトカインは、実施例に記載するように磁気Luminex(登録商標)アッセイを使用して検出し得る。しかし、任意の他の適するものを代わりに使用してもよく、サイトカインをコードする転写物の発現を検出するために、例えば、RT-PCRを含む。
【0082】
組成物及び治療方法
担体及び1若しくは2以上の治療IgE抗体又はこの機能性断片を含む組成物を本明細書において提供する。組成物は、対象への投与のための単位剤形で調製することができる。投与の量及びタイミングは、所望の目的を達成するために、治療する医師の判断に委ねられる。抗体は、全身又は局所(例えば、腫瘍内)投与のために製剤化することができる。一例では、治療IgE抗体は、非経口投与、例えば、静脈内投与のために製剤化する。
【0083】
投与のための組成物は、薬学的に許容される担体、例えば、水性担体中に溶解した抗体(又はこの機能性断片)の溶液を含み得る。多様な水性担体、例えば、緩衝食塩水等を使用することができる。このような溶液は、無菌であり、望ましくない物質は一般に含まない。このような組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌し得る。組成物は、生理学的条件に近づけるのに必要とされる場合、薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤等、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含み得る。このような製剤における抗体の濃度は、広範に変化してもよく、選択される特定の投与方法及び対象のニーズに従って、主に液量、粘度、体重等に基づいて選択される。
【0084】
静脈内投与用の医薬組成物の典型的な用量は、1日に対象の体重1kgあたり抗体約1μg~1g、より好ましくは10μg~100mg、最も好ましくは0.1~15mgを含む。特に、循環又はリンパ系ではなく隔離された部位、例えば、体腔又は器官の内腔に薬剤を投与する場合、1日に1kgあたり0.1~最大約100mgの用量を使用し得る。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるか又は明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1995)のような公表文献により詳細に記載されている。
【0085】
抗体は、凍結乾燥形態で提供し、投与前に滅菌水で再水和し得るが、これらはまた、既知濃度の滅菌溶液により提供する。次いで、抗体溶液は、0.9%の塩化ナトリウム、USPを含む輸液バッグに加え、0.5~15mg/体重kgの用量で典型的に投与する。抗体医薬の投与における当技術分野の経験による豊富な技術が利用可能であり、これは、1997年のRITUXAN(登録商標)の認可以来、米国において市販されている。抗体は、静注又は急速静注ではなく緩徐な注入により投与することができる。一例では、高負荷用量を投与した後、低レベルの維持用量を投与する。例えば、4mg/kgの初回負荷用量を約90分の期間にわたって注入した後、先の用量が十分に許容される場合、30分の期間にわたって注入される2mg/kgの、4~8週の間の毎週の維持用量が投与される。
【0086】
抗体(又はこの機能性断片)は、がん細胞などの細胞の増殖を遅延又は阻害するために投与することができる。このような適用では、治療有効量の抗体を、がん細胞の増殖、複製若しくは転移の阻害、又はがんの徴候若しくは症候の阻害に十分な量で対象に投与する。一部の実施形態では、抗体は、転移の進行を阻害若しくは予防するため、又は、局所リンパ節への微小転移などの微小転移などの転移のサイズ若しくは数を減少させるために対象に投与する(Goto et al., Clin. Cancer Res. 14(11):3401-3407, 2008)。
【0087】
適する対象は、それらに限定されないが、メラノーマ、前立腺がん、扁平上皮がん(例えば、頭頸部扁平上皮がん)、乳がん(基底乳がん、腺管がん及び小葉乳がんを含むが、これらに限定されない)、肺がん(例えば、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん及び中皮腫を含む、小細胞肺がん又は非小細胞肺がん)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病及び11g23陽性急性白血病)、リンパ腫(例えば、皮膚リンパ腫)、神経堤腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠腫又は神経芽細胞種)、卵巣がん、結腸がん、胃がん、膵臓がん、骨がん(例えば、脊索腫)、神経膠腫、又は肉腫(例えば、軟骨肉腫)のようながんを有すると診断された対象を含み得る。好ましくは、抗体は、固形腫瘍を治療するために投与する。別の実施形態では、抗体は、血液腫瘍(例えば、白血病又はリンパ腫)を治療するために投与する。
【0088】
抗体の治療有効量は、疾患の重症度及び患者の健康の一般的状態に依存する。抗体の治療有効量は、症候(複数可)の主観的な緩和、又は臨床医若しくは他の有資格観察者により認められた場合の客観的に同定可能な改善のいずれかをもたらす量である。このような組成物は、別の化学療法剤と組み合わせて、同時に又は順次投与することができる。
【0089】
本発明の実施形態では、治療用IgE抗体は、がんなどの疾患に罹患している患者、例えば、マクロファージの抗腫瘍表現型への再極性化から利益を得うる対象のサブグループを治療するために使用し得る。したがって、治療する患者のサブグループは、例えば、静止状態(M0)マクロファージ又は抗炎症(M2a)マクロファージが腫瘍内に存在する患者であり得る。このようなM0又はM2aマクロファージの腫瘍内における存在は、公知の技術を使用して、例えば、サイトカイン及び/若しくはケモカイン並びに/又は細胞表面マーカーの特徴的プロファイルの発現の検出により判定し得る。
【0090】
ここで、本発明は、例示のみのために、以下の非限定的実施形態を参照して、さらに記載する。
[実施例]
【0091】
マクロファージ活性化及び極性化におけるIgE抗体の役割を調査した。IgEのマクロファージとの相互作用の下流作用のうちの1つは、FcεRI架橋結合時の細胞による可溶性メディエーターの放出であり得る(Josephs et al (2017) Anti-Folate Receptor-α IgE but not IgG Recruits 330 Macrophages to Attack Tumors via TNFα/MCP-1 Signaling. Cancer Research 77(5): 1127-1141)。
【0092】
この理由から、M0、M1及びM2aマクロファージの細胞培養物は、SF-25又はNIP IgEで処理し、次いで、抗ヒトIgEとともにインキュベートして、FcεRI結合抗体の架橋結合を誘発した。この試験のコントロールは、SF-25又はNIP IgE抗体処理単独、抗IgE単独及び無処理細胞からなる。上清は、サイトカイン産生及び放出を可能とするために、処理後4時間に採取した。
【0093】
IgEのマクロファージとの相互作用により、炎症促進性及び抗炎症性メディエーターの明瞭な産生が生じるかどうかの理解を目的として、サイトカイン及びケモカインの広範な集団を解析した。磁気ビーズを用いた多重アッセイの実施により、M0、M1及びM2aマクロファージのサイトカインプロファイルを得ることが可能であった。これにより、多くの異なる可溶性メディエーターの同一試料における同時検出が可能となる。
【0094】
方法及び材料
一次細胞の単離及び培養
K2EDTAスプレーコーティング採取チューブを使用して、末梢静脈血(50ml)を健常ドナーから採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離するために、等量の血液及び2%のFCS/2mMのEDTAを最終容量30mlまで穏やかに混合し、50mlのコニカルチューブに入れたFicoll-Paque(商標)PLUS15mlの密度勾配上にピペットで穏やかに滴下した。次いで、チューブを1200×gで緩加速して制動せずに室温(RT)で20分間遠心分離した。プラスチックのパスツールピペットを使用して血漿界面を回収し、新たなバイアルに移して、PBSを用いて600×gで最大加速して減速することにより4℃で10分間洗浄した。試料中に存在する赤血球は、細胞をRBC溶解緩衝液5mlにより5分間RTでインキュベートした後、PBS+2%のFCS/2mMのEDTAで洗浄することにより溶解した。
【0095】
単球をヒト血液から間接磁気標識システムPan Monocyte Isolation Kit(Miltenyi Biotec社)を使用して単離して、自然のままの単球をヒトPBMCから単離した。この技術を利用して、古典的(CD14++CD16++)、非古典的(CD14+CD16++)及び中間的(CD14++CD16+)単球集団の同時濃縮を実施した。高純度の単球集団を、標識され磁気的に結合させた細胞を除去することにより得る。PBMCを単離した後、細胞を40μmの細胞濾過器に通して、いかなる凝集塊をも除去し、試料中の細胞数を、血球計算器を使用して定量した。次いで、PBMC1×10を新たなバイアルに移し、PBSを用いて600×gで5分間、最大加速して減速することにより洗浄した。上清の廃棄後、細胞をMACS緩衝液(0.5%のウシ胎仔血清及び2mMのEDTAを添加したPBS)400μl中に再懸濁した。
【0096】
ヒト単球をネガティブセレクションにより単離するために、Pan Monocyte Isolation Kit(Miltenyi Biotec社)プロトコールに従った。簡潔には、抗体のヒトFc受容体への不要な結合をブロッキングするために、FcRブロッキング試薬100μlを試料に加え、ピペットで上下に混合した後、ビオチン抗体カクテル100μlを加え、抗体の単球への結合を促進するために、試料を4℃で5分間インキュベートした。この後、MACS緩衝液300μl及び抗ビオチンマイクロビーズ200μlを十分に混合することによりバイアルに加えた。次いで、細胞を4℃で10分間、再度インキュベートした。インキュベーション後、LSカラムをMultiStand(Miltenyi Biotec社)上に乗せたMidiMACS(商標)分離器に挿入することにより、試料を磁気細胞分離に供した。カラムは、MACS緩衝液3mlで最初にすすぎ、容器が空になったところで、細胞懸濁液をカラムに投入した。濃縮単球画分であるフロースルーを採取した。MACS緩衝液3mlを添加することによりカラムを3回洗浄し、非標識細胞を採取して、前のステップで採取した流出液と混合した。主にリンパ球である標識細胞を採取するために、カラムを分離器から取り外して、適する採取チューブ上に静置した。MACS緩衝液5mlをカラム上に添加し、プランジャーを使用して磁気標識した非単球を流し出した。
【0097】
単球集団の純度のレベルを確認するために、フローサイトメトリー(King’s College LondonのBiomedical Research Centre Flow Cytometry CoreにおけるBD FACSCanto(商標)IIを使用して実施)用の試料を次のように調製した。CD14を認識するBV786コンジュゲートmAb(1×10細胞あたり1μl)及びCD16に対するBV711コンジュゲートmAbにより4℃で30分間、細胞を染色した。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液(2%のウシ胎仔血清(Gibco社)を添加したリン酸緩衝食塩水(PBS、Gibco社))で1回洗浄し、フローサイトメーターにおけるデータ取得の準備ができるまで新鮮なFACS緩衝液で維持した。各フルオロフォアについて、単一の陽性コントロール及びFMOコントロールを使用して、ゲートを設定した。
【0098】
単球を上記の磁気分離により単離し、これらをRPMI1640培地GlutaMAX(Gibco社)、2%のFBSに再懸濁して接着を促進して、細胞を1~1.5×10細胞/mlの密度で6ウェルのプレートに播種し、各ウェルに細胞懸濁液2mlを添加して、プレートを組織培養インキュベーター内に静置した。2時間のインキュベーション後、単球の接着を顕微鏡下で確認し、プレートを傾けてピペットで取り除くことにより培地を注意深く除去した。完全には接着しなかった細胞を除去するために、各ウェルを滅菌PBS1mlにより洗浄し、10%のFCSを添加したRPMI1640並びに20ng/mlのM-CSF(単球コロニー刺激因子、Peprotech社)を加えたペニシリン/ストレプトマイシン(ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100U/ml)(Life Technologies社))を2ml補充して、単球をエクスビボで増殖させた。その後3日毎に、各新鮮ウェルの半量を40ng/mlのM-CSFを含む培地と交換した。7日後に、分化したマクロファージを観察した。
【0099】
この時点から、所望の細胞表現型:M1又はM2のマクロファージに基づいて、種々のサイトカインを細胞培養物に加えた。マクロファージをM1表現型に極性化するために、20ng/mlのインターフェロンガンマ(IFNγ、Life Technologies社)及び100ng/mlのリポ多糖(LPS、Sigma社)を細胞に加え72時間おいた。一方、マクロファージをM2表現型に極性化するために、20ng/mlのインターロイキン4(IL-4、Peprotech社)を加え72時間おいた。
【0100】
SF-25IgE及びIgG1抗体の生成
スピナーボトルによるSF-25IgEの生成
SF-25IgE抗体を発現するSp2/0細胞を、IMDM培地を総初期容量180mlで有する1Lのスピナーボトルに、細胞密度5×105細胞/mlで播種した。次いで、懸濁液に新鮮培地を500mlまでつぎ足し、37℃及び5%CO2、定速7.5rpmの加湿インキュベーター内のスピナープレートに静置した。3日後、新鮮培地を最終容量1Lまで細胞懸濁液に加え、新鮮培地はそれ以上加えずに3週間、細胞を増殖させた。3日毎に、試料1mlを各細胞懸濁液から採取して、抗体産生を経時的に観察した。試料を1.5mlのチューブに採取し、12500×gで5分間遠心分離し、0.45μmのフィルターで濾過滅菌して-20℃で保存した。
【0101】
振盪フラスコによるSF-25IgEの生成
SF-25IgE抗体を発現するSp2/0細胞を、IMDM完全培地を初期容量60mlで有する1Lのエルレンマイヤーフラスコに、細胞密度5×105細胞/mlで播種した。次いで、懸濁液に新鮮完全培地を150mlまでつぎ足し、定速55rpmの振盪プラットフォーム上の37℃及び5%CO2の加湿インキュベーターに静置した。3日毎に、試料1mlを細胞懸濁液から採取して、抗体産生を経時的に観察した。試料を1.5mlのチューブに採取し、12500×gで5分間遠心分離し、0.45μmのフィルターで濾過滅菌して-20℃で保存した。
【0102】
ローラーボトルにおけるSF-25IgEの生成
SF-25IgE抗体を発現するSp2/0細胞を、IMDM完全培地を総量250mlで有する2Lのローラーボトルに、細胞密度5×105細胞/mlで播種した。次いで、10mlの滅菌ピペットを細胞懸濁液に挿入することにより、細胞にCO2注入を行い、次いで、ピペットをCO2タンクに接続して、ガスを細胞培養物内に最大圧力1.5mBarで2分間流動させた。ピペットを除去すると、ボトルの蓋を堅く閉じ、ボトルを回転シリンダー上に37℃で静置した。3日毎に、細胞密度を監視し、最大可動容量1200mlに達するまで細胞培養物を新鮮培地で1:2に希釈した。これまでに記載のように3日毎、又は2週間の培養の終わりに細胞にCO2を与え、この時点で細胞上清を回収した。
【0103】
SF-25IgE抗体の精製
Sp2/0細胞上清における抗体の生成後、SF-25IgE抗体を精製するために、細胞上清を400×gで30分間遠心分離して、細胞をペレット状にした。遠心分離後、上清を採取し、Stericup(登録商標)0.45μmフィルターユニットを使用して濾過した。上清に0.01%のアジ化ナトリウムを加えた後、アフィニティークロマトグラフィーに適用した。ヒトキメラSF-25IgEの精製は、HiTrap KappaSelectカラム(GE Healthcare Life Sciences社)を使用して実施した。
【0104】
SF-25IgEの全てのアフィニティークロマトグラフィー精製は、蠕動ポンプ(AKTA Prime社)を取り付けた自動装置を使用し、液体を1ml/分でカラムに通過させて実施した。最初のステップでは、カラムをPBSで洗浄し、次いで、分泌された抗体を含む細胞培養物上清をカラムに通過させてアガロースビーズに結合させた。次いで、補足された抗体を溶出緩衝液(0.2Mのグリシン、pH2.3)で溶出した。溶出液を中和緩衝液(1Mのトリス、pH8.2)で直ちに中和した。次いで、PBS溶液の循環によりカラムを再平衡化した。任意の凝集及び/又は分解した抗体産物を除外するために、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のサイズ排除クロマトグラフィーを実施した。全プロセスは、4℃で実行した。
【0105】
IgE抗体によるマクロファージの活性化
単球由来マクロファージ(MDM)に対するIgEの架橋結合
マクロファージの極性化及び活性化においてIgE抗体が果たし得る役割を理解するために、単球由来マクロファージ表面に対するIgEの関与及び架橋結合実験を、例えば、欧州特許第0397700号明細書及びGould, H. J et al., Eur. J. Immunol. 1999. 29: 3527-3537に記載のようにSF-25及びNIP IgE抗体を使用して行った。NIP IgEは、ハプテンのニトロヒドロキシヨード酢酸(4-ヒドロキシ-3-ヨード-5-ニトロフェニル酢酸)に対して産生される非特異的IgEである。
【0106】
M0、M1及びM2a(MDM)マクロファージは、5μg/mlのIgE抗体(Dako社)とともに1時間37℃で、抗体溶液を細胞培養プレート上に直接加えることによりインキュベートした。1時間後、滅菌ピペットで上清を完全に除去し、滅菌PBS1mlを各ウェルに加え、次いで、いかなる非結合抗体をも洗浄除去した。次いで、適用可能であれば、細胞を1μg/mlのポリクローナル抗ヒトIgE抗体で処理して、細胞表面に既に結合しているIgE抗体に架橋結合させた。細胞は、さらに1時間、37℃でインキュベートした。
【0107】
刺激後4時間に細胞を回収して、MDM細胞表面マーカー発現を調べ、刺激後24時間に上清を採取してサイトカイン放出を調査した。
【0108】
マクロファージ上清のサイトカイン検出のための磁気Luminexアッセイ
マクロファージ上清を刺激後4時間に採取して、種々の刺激条件下で細胞にサイトカインを産生及び分泌させた。上清は、接着細胞を妨害することなく、培養プレートを穏やかに傾けてピペットで取り除くことにより回収した。次いで、試料を600×gで遠心分離して、浮遊する細胞及びデブリを除去し、次いで、新しいチューブに移して使用まで-20℃で保存した。
【0109】
アッセイの日には、試料を室温で解凍し、滅菌PBSで1:1に希釈して、アッセイプレート上に添加する準備ができるまで氷上に維持した。
【0110】
多重アッセイを磁気Luminexキットにより、プロトコールの指示に従って実施した。簡潔には、微小粒子カクテル50μlをプレートの各ウェルに加えた直後、試料50μlを加えた。プレートを密封し、室温で2時間、軌道振盪機上でインキュベートした。洗浄緩衝液100μlを各ウェルへ追加及び除去することにより洗浄を実施した。洗浄手順を3回繰り返した。最終洗浄の液体を除去すると、各ウェルに希釈したビオチン抗体カクテル50μlを添加し、プレートを密封して、室温で1時間、軌道振盪機上でインキュベートした。洗浄ステップは、上記のように繰り返し、ストレプトアビジンPEを50μlウェルに加えた。プレートを再度密封し、上記のように30分間インキュベートした。さらなる洗浄ステップを実施した後、洗浄緩衝液100μlを各ウェルに加えることにより微小粒子を再懸濁し、プレートを密封して、Luminex(商標)解析器上で解析する準備ができるまで最大90分、振盪機上に放置した。
【0111】
結果
Th1応答に関与するサイトカインIL-12、IFNγ、TNFα
IgEの架橋結合により、M0及びM2aの両マクロファージにおいてTNFα分泌の劇的な増加(100~約2,000pg/ml)が生じ、一方、M1細胞においては、試験した全ての実験条件下で、そのメディエーターの産生が非常に低度か又は全く検出されなかった(図1)。
【0112】
程度は低いが、IgEの架橋結合によって、M0及びM2aの両サブセットでIFNγの産生が増強された。M1マクロファージは、他のサブセットと比較して4倍高いIFNγのベースラインレベルを示したが、IFNαの濃度は、IgEによる活性化時にも安定したままであった。
【0113】
IL-12濃度を測定すると、同一の型及び規模の調節が観察され、SF-25及びNIP IgEの両抗体で架橋結合された場合、M0及びM2aマクロファージでは、IL-12産生が100から約1500~2000pg/mlまで増加した。M1細胞では、IL-12の高いベースラインレベル(約1,500pg/ml)が特徴的であり、これは、IgE処理でも影響されないままであった。
【0114】
抗炎症サイトカインIL-4、IL-10、IL-13
IgE架橋結合時に、M0及びM2aの両サブセットでは、IL-4産生は、わずかに増加したが、M1細胞では、影響されないままであった。
【0115】
IL-10に関しては、ベースラインレベルは、M0及びM1のマクロファージ間で非常に類似し(20及び25pg/ml)、M2aでは、はるかに低かった(約7pg/ml)。しかし、IgE架橋結合により、M0及びM2aサブセットでは、IL-10の放出が効果的に上方制御され、一方、M1マクロファージでは、レベルは変化しないままであった。
【0116】
IL-13のバックグラウンド濃度は、3つ全てのマクロファージ集団にわたって同一であった。しかし、細胞表面上でのSF-25及びNIP IgEの架橋結合後、M1マクロファージではなくM0及びM2a細胞では、IgEの架橋結合によりIL-13分泌が増加した(図2)。
【0117】
炎症応答に関与するサイトカインIL-1γ及びIL-6
IL-1β及びIL-6の両分泌を解析した場合、IgE活性化に対する応答は、M0及びM2aの表現型間で再び類似した。両サイトカインのベースライン濃度は、3つの細胞サブセットにわたって非常に低くなり、M1マクロファージでは、全ての処理にわたって安定したままであった。しかし、M0及びM2aマクロファージでは、細胞結合IgEの架橋結合により、IL-1β及びIL-6の分泌におけるネットの増加(net increase)が生じた(図3)。
【0118】
マクロファージ化学遊走ケモカインMCP-1(CCL2)及びRANTES(CCL5)
MCP-1により、単球、マクロファージ及び樹状細胞が炎症部位に動員されることがわかっている。また、炎症部位へのこの作用は、走化性及び食作用のような多くの重要なマクロファージ機能の調節物質であるRANTESにより促進される。したがって、任意の分泌調節により、この抗体クラスのマクロファージとの相互作用のさらなる解析が助けられるため、IgE活性化時のMCP-1及びRANTESの濃度をここで試験した。
【0119】
M0又はM1マクロファージのいずれにおいても、細胞結合IgEの架橋結合により、MCP-1上清濃度の調節は生じなかった。一方、M2aサブセットは、試験した全ての条件下でMCP-1の放出を増強することによりIgE活性化に応答した。
【0120】
IgE処理時のRANTES分泌の調節により、M0及びM2aの両マクロファージにおいて同一のパターンが示され、ここで発明者らは、細胞結合IgEが架橋結合された場合、この産生の劇的な増加を検出した。興味深いことには、M0及びM2aマクロファージにおいてRANTESレベルが増加した場合、ピーク濃度がM1細胞におけるベースライン濃度にほぼ一致し、このM1細胞では、代わりにRANTES分泌の調節は、試験した全ての条件にわたって検出されなかった(図3)。
【0121】
インターフェロンガンマ誘導ケモカインMIG(CXCL9)及びI-TAC(CXCL11)
M1マクロファージにおけるMIG濃度は、試験した種々の条件間で変化しないままであり、このマクロファージサブセットにおいて、IgE活性化が、この産生には影響しないことを示した。類似の作用は、代わりにM0及びM2aマクロファージ間で観察され、この場合、IgEの架橋結合により、MIG分泌のわずかな増加が生じた。
【0122】
I-TAC濃度の解析により、このケモカインのバックグラウンドレベルが、M1マクロファージにおいて、他の2つのサブセットと比較してはるかに高かったことが明らかとなり、M1では、約400pg/mlのベースライン濃度が特徴的であって、M0及びM2a細胞において検出されたベースライン濃度の約4倍の高さであった。それにもかかわらず、M0及びM2a培養物のIgE架橋結合による処理によって、上清中に放出されたI-TACの量が劇的に増加して、この濃度がM0細胞では約80から約160pg/mlに、M2aマクロファージでは50から約200pg/mlに上昇した(図4)。
【0123】
まとめると、MCP-1由来を除く試験した全ての可溶性メディエーターでは、細胞結合IgEの架橋結合により、M0及びM2aマクロファージに対して同一の作用が誘発されたことが観察された。M0又はM1サブセットではなくM2aマクロファージにおけるIgE架橋結合により、MCP-1分泌の増強が誘発された。一方、M1マクロファージは、IgE活性化に対してほぼ無応答となったが、2つの注目すべき例外を有し、IgE架橋結合により炎症促進メディエーターIFNγ及びIL-12の上方制御が誘発された(表3)。
【0124】
【表1】
【0125】
表3では、IgE架橋結合前後のマクロファージにおけるサイトカイン及びケモカイン放出の変化を↑増加の検出、↓減少の検出と設定し、可溶性メディエーターが見出し列「生理学的状態」から「IgE架橋結合」と名付けられた列へと繰り返されない場合は、この産生は、2つの条件間で不変のままであった。M0及びM2aマクロファージに対する細胞結合IgEの架橋結合により、試験した全ての可溶性メディエーターの産生が維持又は増加した。興味深いことには、MCP-1は、M2a細胞の架橋結合時のみ上方制御され、M2aマクロファージによるMCP-1産生及び分泌の誘導における抗腫瘍IgE抗体の潜在的役割を示唆した。M1マクロファージの極性化状態は、IgEによる細胞の刺激時に保持され、IgE抗体が、TMEにおいて炎症促進プロファイルを維持することを示唆した。対照的に、M0及びM2aマクロファージに対する細胞結合IgEの架橋結合により、炎症促進性及び抗炎症性の両メディエーターを分泌する新たに極性化したマクロファージ表現型が生じ、これにより、静止状態(M0)又は腫瘍促進(M2a)表現型の、新たな炎症促進活性を特徴とする新たな表現型への偏向におけるIgE抗体の注目すべき作用が説明される。
【0126】
マクロファージは、循環する末梢血単核球から分化する組織常在性食細胞及び抗原提示細胞(APC)である。これらは、自然並びに適応免疫において重要な活性及び制御機能を果たす(Murray PJ, Wynn TA (2011). Protective and pathogenic functions of macrophage subsets. Nat Rev Immunol, 11(11): 723-37)。種々の表現型の活性化マクロファージは、M1マクロファージ(CAM)及びM2マクロファージ(AAM)に通常分類される。古典的活性化M1マクロファージは、急性炎症性表現型を有する免疫エフェクター細胞を含む。これらは、細菌に対して高度に攻撃的であり、大量のリンフォカインを産生する(Murray PJ, Wynn TA (2011). Obstacles and opportunities for understanding macrophage polarization. J Leukoc Biol, 89(4):557-63)。選択的活性化抗炎症M2マクロファージ(alternatively activated, anti-inflammatory M2-macrophages)は、少なくとも3つのサブグループに分けることができる。このようなサブタイプは、免疫の制御、寛容性の維持、及び組織修復/創傷治癒を含む様々な機能を有する。実際、単球/マクロファージ系列の細胞は、内因的並びに外因的刺激に対する応答において異常な柔軟性を示し、これにより最初のM1/M2極性化プロセスの無効化が可能となり、例えば、M2極性化マクロファージを特定の条件下でM1活性化状態に転換させることができる。
【0127】
ヒトの初代マクロファージは、組織から十分な量で単離することが困難であり、培養において増殖しない。加えて、得られた細胞が、著しい表現型的不均一性を示すことが多いことが一般に認められている。ヒト血中単球が、容易に多数入手可能であり、インビトロでマクロファージに分化させることができるため、単球由来マクロファージ(MDM)は、優れた代替物となる。
【0128】
マクロファージの特性決定についての殆どの研究は、ヒト由来マクロファージとプロファイルがかなり異なるマウス細胞に対して行われてきた。例えば、CD206は、マウスにおいて良好なM2マーカーであるが、CD200Rは、ヒト細胞において、より良好に作用すると思われる。加えて、M1及びM2マーカー間の差は、定量的な傾向を有する。例えば、M1及びM2の両方は、MHCIIを発現するが、M1は、はるかに高い強度でこれを発現する。M1/M2の分化に使用される表面マーカーの全てではないが殆どにも同じことが当てはまるため、「陽性コントロール」があることが非常に望ましい。しかし、M1マクロファージの一般に認められているマーカープロファイルは、CD68+/CD80+/CD163-又はCD163lowであるが、M2マクロファージは、CD68+/CD80-/CD163+と特徴づけられる。しかし、CD163の上方制御は、マクロファージの極性化方法(IL-4/IL-10、RPMI培地又はエクスビボ)に依存する。理想的には、形態学(M1:卵形又は円形、M2:目玉焼き形又は樹状突起を有する)、遺伝子発現(例えば、iNOS/Arg1比、サイトカインIL-1ベータ、ケモカインCCL2及びPtgs2)及びフローサイトメトリー解析を含む、複数の方法を特性決定に使用する。
【0129】
考察
モノクローナル抗体(mAb)は、多数の機構により抗腫瘍作用を発揮することができる。しかし、Fc媒介機構により作用するmAbが、免疫系の関与及び腫瘍微小環境の免疫プロファイルの調節においてどのように鍵となる役割を果たすかが最近わかってきた(Bakema et al (2014) Fc Receptor-Dependent Mechanisms of Monoclonal Antibody Therapy of Cancer. In Current topics in microbiology and immunology, 382: 373-392、Moore et al (2010) Engineered Fc variant antibodies with enhanced ability to recruit complement and mediate effector functions. mAbs 2(2): 181-189)。現在、使用されるいくつかのmAb、例えば、トラスツズマブ及びイピリムマブは、Fc媒介機構が、このようなクラスの抗がん剤の臨床的有効性に付与し得る実質的寄与の証拠をもたらした(Peggs et al, J Exp Med 2009 Aug 3;206(8):1717-1725; Simpson et al. J Exp Med 2013 Aug 26;210(9):1695-1710; Romano et al. Proc Natl Acad Sci USA 2015 May 12;112(19):6140-6145; Arce Vargas et al (2018) Fc Effector Function Contributes to the Activity of Human Anti-CTLA-4 Antibodies. Cancer Cell. 33(4): 649-663.e4; Shi et al (2014) Engagement of immune effector cells by trastuzumab induces HER2/ERBB2 downregulation in cancer cells through STAT1 activation. Breast Cancer Research. 16(2): R33)。したがって、mAbの細胞傷害機能を調節するだけでなく、固形悪性腫瘍の大多数における免疫抑制微小環境をも克服するFc改変が、特別、注目されている(Bakema et al (上記参照)、Dahan et al (2015) FcγRs Modulate the Anti-tumor Activity of Antibodies Targeting the PD-1/PD-L1 Axis. Cancer Cell. 28(3): 285-295、Moore et al (上記参照))。臨床的有効性を向上させるようにFcドメインを改変するために探求された戦略の中でも、グリコシル化プロファイルの修飾及び種々のアイソタイプサブクラスの選択は、最も調査された戦略である(Ferrara et al (2006) Modulation of therapeutic antibody effector functions by glycosylation engineering: Influence of Golgi enzyme localization domain and co-expression of heterologous β1, 4-N-acetylglucosaminyltransferase III and Golgi α-mannosidase II. Biotechnology and Bioengineering. 93(5): 851-861、Kellner et al (2017) Modulating Cytotoxic Effector Functions by Fc Engineering to Improve Cancer Therapy. Transfusion Medicine and Hemotherapy: Offizielles Organ Der Deutschen Gesellschaft Fur Transfusionsmedizin Und Immunhamatologie. 44(5): 327-336、Schlothauer et al (2016) Novel human IgG1 and IgG4 Fc-engineered antibodies with completely abolished immune effector functions. Protein Engineering Design and Selection. 29(10): 457-466)。
【0130】
対照的に、調査が不十分なままである戦略のうちの1つは、一般に使用されるIgGとは異なるクラスのFc領域を有する抗体の使用である。IgEクラスの抗体の改変は、このような戦略の1つである。実際、種々のFc受容体が特有な免疫細胞サブセットにより発現するため、IgEのような新たな抗体アイソタイプの使用は、免疫エフェクター細胞の多様な集団の関与への橋渡しとなり、最終的には、臨床結果の潜在的な向上への橋渡しとなる。
【0131】
固形悪性腫瘍の治療におけるIgE抗体の潜在的利点は、免疫グロブリンクラスの独特な生物学的特性とともに、多くのカギとなるIgE受容体発現免疫エフェクター細胞の腫瘍微小環境における実証された浸潤に依存する。このような知見に基づいて、腫瘍抗原を標的とする組換えIgE抗体を含む、いくつかのIgEに基づく免疫治療的方法が、腫瘍細胞に対するIgE媒介免疫応答の誘発を目的として開発された(Daniels et al (2012) Targeting HER2/neu with a fully human IgE to harness the allergic reaction against cancer cells. Cancer Immunology, Immunotherapy. 61(7): 991-1003、Josephs et al (2017) Anti-Folate Receptor-α IgE but not IgG Recruits 330 Macrophages to Attack Tumors via TNFα/MCP-1 Signaling. Cancer Research. 77(5): 1127-1141、Josephs et al (2018) An immunologically relevant rodent model demonstrates safety of therapy using a tumour-specific IgE. Allergy. 2018 Dec;73(12):2328-2341、Karagiannis et al (2012) Recombinant IgE antibodies for passive immunotherapy of solid tumours: from concept towards clinical application. Cancer Immunology, Immunotherapy: CII, 61(9), 1547-1564、Kershaw et al (1998) Tumor-specific IgE-mediated inhibition of human colorectal carcinoma xenograft growth. Oncology Research. 10(3): 133-142)。
【0132】
IgEで刺激したマクロファージ細胞培養物から採取した上清について実施した、サイトカイン及びケモカインの解析により、IgEとの関与又はIgE架橋結合時の可溶性メディエーターの同定が可能となった。
【0133】
M1マクロファージでは、IgE架橋結合で、IFNγ及びIL-12のような炎症促進サイトカインの産生が保持された。Josephsらは、IL-12を含む炎症促進免疫関連経路の上方制御及びNK細胞免疫活性化特性を、MOv18IgEで処置した腫瘍を有するラットの肺において最近、実証した(Josephs et al., 2018上記参照)。このような知見を考慮すると、そのサブセットの公知の炎症促進及び抗原提示機能と一致して、IgEの関与及び架橋結合により、少なくともM1マクロファージが保持され得る可能性がある。
【0134】
1つを除く試験した全てのメディエーター(IL-1β、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、IFNγ、TNFα、RANTES、MIG及びI-TAC)の分泌は、非活性化M0及びM2aマクロファージに対する細胞結合IgEの架橋結合により同一の方法で調節された。これは、2つのサブセットが、FcεRI経路の活性化を制御する能力において類似の分子機構を特徴とし得ることを示唆する。より詳細には、試験した全ての可溶性メディエーターの産生は、同一レベルで保持されたか、又はIgE架橋結合とともに増加した。SF-25IgEとの架橋結合後にM0及びM2aにより分泌されたサイトカインの集団は、定義のマクロファージサブタイプと一致しなかった。しかし、IgE刺激細胞により提示されるメディエーター特性に基づけば、これは、炎症促進性及び抗炎症性の両メディエーター、並びに化学遊走因子を分泌する、新たに極性化したマクロファージサブセットに対応する。誘発されたM0及びM2aの両マクロファージに対するIgE架橋結合により、炎症促進M1サイトカインTNFαのレベルが増強された。一方、IgE架橋結合は、M0及びM2マクロファージにおいて、マクロファージ化学遊走物質MCP-1の産生に関して異なる作用を示した。M2aマクロファージでは、IgEで処理すると、MCP-1の産生及び放出が増強された。
【0135】
単球走化性タンパク質1(MCP-1)のようなケモカインは、ヘテロ三量体Gタンパク質と共役する特異的細胞表面膜貫通受容体に結合し、このヘテロ三量体Gタンパク質の活性化により、ケモカインソースへの遊走を促す細胞内シグナル伝達カスケードの活性化が生じる。CCL2とも呼ばれるMCP-1により、単球、メモリーTリンパ球、及びナチュラルキラー(NK)細胞の遊走及び浸潤が制御される。単球は、灌流領域間の大きな圧力差から生じる剪断応力の増加により活性化された内皮に、接着及び侵入するため、腫瘍動脈形成の開始に重要である(Scholz et al (2001) Arteriogenesis, a new concept of vascular adaptation in occlusive disease. Angiogenesis. 4: 247-257)。MCP-1は、単球を誘引するだけでなく、活性化された内皮において発現する細胞内接着分子1(ICAM-1)の受容体であるMAC-1を上方制御するように誘導することによって接着を促進するため、このプロセスに関係づけられる。また、MCP-1は、組織培養におけるマクロファージへの追加時に腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制活性を増大させ(Zachariae et al (1990) Properties of monocyte chemotactic and activating factor (MCAF) purified from a human fibrosarcoma cell line. J Exp Med. 171: 2177-2182)、これにより細胞のアポトーシスを駆動することが示されている。
【0136】
増え続ける疫学的及び臨床的データにより、慢性炎症によって腫瘍の増殖及び進行が促進されるという概念が支持されている。主要な炎症促進サイトカインとして、腫瘍壊死因子(TNFα)は、炎症及び発癌の仲立ちをする内因性腫瘍促進因子として作用することが可能であり、TNFαにより、TNF誘導細胞傷害に対して抵抗性の殆どのがん細胞において増殖、生存、遊走、及び血管形成が刺激されて、腫瘍促進が生じることがわかっている。しかし、TNFαは、腫瘍細胞の増殖を抑制して腫瘍の退縮を誘導する能力をも有する。したがって、TNFαは、両刃の剣であり、腫瘍形成促進性又は抗腫瘍形成性のいずれかとなり得る(Wang and Lin (2008) Tumor necrosis factor and cancer, buddies or foes? Acta Pharmacol Sin. 29(11): 1275-1288)。天然に存在する化合物及び合成化合物を含む多数の薬剤は、NF-κB活性化を阻害することによりTNFα誘導細胞死に対して腫瘍細胞を感作することが示されている。このような化合物をTNFαと組み合わせると、腫瘍細胞において相乗的細胞傷害が生じた(Wang X et al (2006) 17-allylamino-17-demethoxygeldanamycin synergistically potentiates tumor necrosis factor-induced lung cancer cell death by blocking the nuclear factor-kappaB pathway. Cancer Res. 66(2): 1089-95、Zhang S et al (2004) Suppressed NF-kappaB and sustained JNK activation contribute to the sensitization effect of parthenolide to TNF-alpha-induced apoptosis in human cancer cells. Carcinogenesis. 25(11): 2191-9、Fas SC et al (2006) Wogonin sensitizes resistant malignant cells to TNFalpha- and TRAIL-induced apoptosis. Blood. 108(12): 3700-6、Ju W et al (2007) A critical role of luteolin-induced reactive oxygen species in blockage of tumor necrosis factor-activated nuclear factor-kappaB pathway and sensitization of apoptosis in lung cancer cells. Mol Pharmacol. 71(5): 1381-8、Rae C et al (2007) Elevated NF-kappaB responses and FLIP levels in leukemic but not normal lymphocytes: reduction by salicylate allows TNF-induced apoptosis. Proc Natl Acad Sci U S A. 104(31): 12790-5、Shukla S, Gupta S (2004) Suppression of constitutive and tumor necrosis factor alpha-induced nuclear factor (NF)-kappaB activation and induction of apoptosis by apigenin in human prostate carcinoma PC-3 cells: correlation with down-regulation of NF-kappaB-responsive genes. Clin Cancer Res. 10(9): 3169-78、Shishodia S et al (2006) A synthetic triterpenoid, CDDO-Me, inhibits IkappaBalpha kinase and enhances apoptosis induced by TNF and chemotherapeutic agents through down-regulation of expression of nuclear factor kappaB-regulated gene products in human leukemic cells. Clin Cancer Res. 12(6): 1828-38)。加えて、TNFαは、アジュバント試薬として使用して、ドキソルビシンのような化学療法剤の抗がん作用を促進するか(Cao W et al (2005) TNF-alpha promotes Doxorubicin-induced cell apoptosis and anti-cancer effect through downregulation of p21 in p53-deficient tumor cells. Biochem Biophys Res Commun. 330(4): 1034-40)、上皮増殖因子受容体(EGFR)低発現がん腫を抗EGFR療法に対して感作するか(Hambek M et al (2001) Tumor necrosis factor alpha sensitizes low epidermal growth factor receptor (EGFR)-expressing carcinomas for anti-EGFR therapy. Cancer Res. 61(3): 1045-9)、又は非小細胞肺がん細胞においてEGFRチロシンキナーゼ阻害物質に対する獲得耐性を克服することができる(Ando K et al (2005) Enhancement of sensitivity to tumor necrosis factor alpha in non-small cell lung cancer cells with acquired resistance to gefitinib. Clin Cancer Res. 11(24 Pt 1): 8872-9)。TNFα及び化学療法剤の組合せは、治療に対する腫瘍感受性を増加させることにより、多くの腫瘍に有効な治療戦略となることが示されている。また、TNFαによって、T細胞及び樹状細胞を活性化して宿主の抗腫瘍適応免疫応答を増強させることが可能である。
【0137】
本明細書において提示する知見は、M0及びM2aマクロファージを刺激してTNFαを分泌させることが可能であり、選択的活性化M2aマクロファージが、IgEによる架橋結合時にMCP-1を上方制御する唯一の細胞型であることを示す。したがって、IgEは、この通常は抗炎症性選択的活性化マクロファージサブセットを、古典的活性化M1マクロファージと通常、関連する一部の特性を有する、より成熟し、より活性化した表現型に対して特異的に刺激する能力を有する。このような知見は、マクロファージの標的化によるがん治療における、IgEにより媒介される選択的活性化マクロファージの極性化の役割、例えば、マクロファージを活性表現型に、腫瘍において直接再教育するための、マクロファージを中心とする免疫療法の使用を示唆する。
【0138】
上記明細書において言及する全ての公表文献は、参照により本明細書において組み込む。本発明の記載する方法及び系の種々の変更形態及び変形形態は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、主張する本発明が、このような特定の実施形態に不当に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際、当業者に明白な、本発明を実行するための記載の方法の種々の変更形態は、以下の特許請求の範囲内であることを意図する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】