(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】非抗生物質選択マーカーとしてのβ-ガラクトシダーゼαペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/70 20060101AFI20220307BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220307BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220307BHJP
C12N 1/16 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C12N15/70 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/20 A
C12N1/16 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540437
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 IB2020050267
(87)【国際公開番号】W WO2020148652
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AC20
4B065BA02
4B065BA23
4B065BA25
4B065BB16
4B065BC13
4B065BD36
4B065CA46
4B065CA60
(57)【要約】
核酸コンストラクトを選択可能マーカーとして使用する方法が本明細書に提供される。核酸コンストラクトは、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む。また、β-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む単離されたベクター、単離されたベクターを生成する方法、及び単離されたベクターを含むキットも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸コンストラクトを選択可能マーカーとして使用する方法であって、前記方法が、
a.lacオペロンに欠失を含む宿主細胞を前記核酸コンストラクトと接触させることであって、前記核酸コンストラクトが、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、接触させること、及び
b.前記核酸コンストラクトが前記宿主細胞内に維持される条件下で、前記宿主細胞を成長させること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントが、配列番号1と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸配列が、複製起点を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複製起点が、高コピー複製起点である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高コピー複製起点が、pUC57複製起点である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記pUC57複製起点が、配列番号19の核酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットが、二量体分解エレメントを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二量体分解エレメントが、部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含む核酸配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二量体分解エレメントが、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記宿主細胞が、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記二量体分解エレメントが、ColE1二量体分解エレメントである、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ColE1二量体分解エレメントが、配列番号20の核酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記宿主細胞が、LacZΔ15欠失を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
単離されたベクターが、前記単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記単離されたベクターが、約1.5キロベース未満のサイズである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記単離されたベクターが、配列番号9~13、17、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載の単離されたベクターを生成する方法であって、前記方法が、
a.宿主細胞を前記単離されたベクターと接触させること、
b.前記ベクターを産生する条件下で前記宿主細胞を成長させること、及び
c.前記ベクターを前記宿主細胞から単離すること
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記宿主細胞が、最少培地で成長する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記最少培地が、唯一の炭素源としてラクトースを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記最少培地が、容積あたり約1重量%~約4重量%(w/v)のラクトースを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記最少培地が、約2%w/vのラクトースを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
キットであって、
a.請求項1~13のいずれか一項に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセット、及び
b.lacオペロンに欠失を含む宿主細胞
を含む、前記キット。
【請求項24】
前記唯一の炭素源としてラクトースを含む最少培地を更に含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
ベクターが、前記単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、請求項23又は24に記載のキット。
【請求項26】
前記宿主細胞が、前記LacZΔ15欠失を含む、請求項23~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
前記宿主細胞が、E.coli宿主細胞及び酵母宿主細胞からなる群から選択される、請求項26に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非抗生物質選択マーカーを含む単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットに関する。具体的には、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットは、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントを含む。また、β-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む単離されたベクター、単離されたベクターを産生する方法、及び単離されたベクターを含むキットも提供される。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「JBI6031USPSP1Seqlist1」及び2019年1月17日の作成日で、48kbのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出される、配列表を含有する。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
プラスミドベクターは、通常、E.coliにおいて発現される遺伝子を含有し、プラスミドが形質転換又はエレクトロポレーションによって細胞に導入されるとき、プラスミドを含有しないものからプラスミドを含有する細胞を同定又は選択する方法を提供する。最も一般的に使用される選択可能マーカーは、抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子である。しかしながら、抗生物質耐性遺伝子が望ましくないいくつかの状況が存在する。プラスミドを使用して、抗体などの生物製剤の製造細胞株を作製する場合、抗生物質耐性遺伝子は、通常、除去又は破壊される。遺伝子療法では、抗生物質耐性遺伝子も望ましくない。カナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子は、しばしばFDAにより容認されるが、EU規制機関ははるかに厳格である。欧州薬局方は、「別段正当化され、認可されない限り、特に臨床的に有用な抗生物質に関して選択可能遺伝子マーカーとして使用される抗生物質耐性遺伝子は、ベクターコンストラクトに含まれない。組み換えプラスミドの他の選択技術が好ましい」と述べている(「Gene transfer medical products for human use.」European Pharmacopei 7.0(2011))。細胞株の開発に少量のプラスミドを必要とする場合、抗生物質選択マーカーの破壊が可能であり得るが、これらの技術は、より多くのプラスミドを製造する必要がある遺伝子療法用途には実用的ではない。
【0004】
複製起点及び選択マーカーが合わせて1kb未満のサイズであるプラスミドベクターが、インビボでの遺伝子サイレンシングを回避するためのプラスミドに基づく遺伝子療法の開発に必要である。プラスミド骨格は、3kb又は4kb以上のプラスミド骨格を有する従来のプラスミドと比較して、1kb以下である場合、マウスにおいて、より長くかつより高いレベルで発現した(Lu et al.,Mol.Ther.20(11):2111-9(2012))。インビボで発現されなかったDNAの大きなブロックがサイレンシングを誘導したと提案された。したがって、より小さいプラスミド骨格を有するプラスミドがはるかに有効であり得る。
【0005】
より小さいプラスミドはまた、一過性トランスフェクションが治療薬を製造するために使用される用途にも必要とされる。一例は、プラスミドの大規模なトランスフェクションが臨床材料を生成するために使用される、アデノ随伴ウイルスベクターの産生である。より小さいプラスミドは、トランスフェクトされなければならないDNAの量を低減し、コストを低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、遺伝子療法用途に使用することができる選択可能マーカーを含むより小さいプラスミドを生成する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的な一態様では、選択可能マーカーとして核酸コンストラクトを使用する方法が提供される。本方法は、(a)lacオペロンに欠失を含む宿主細胞を核酸コンストラクトと接触させることであって、核酸コンストラクトが、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、接触させること、及び(b)核酸コンストラクトが宿主細胞内に維持される条件下で、宿主細胞を成長させることを含む。
【0008】
別の一般的な態様では、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットが提供される。単離されたカセットは、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントは、配列番号1と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、核酸配列は、複製起点を更に含む。複製起点は、例えば、高コピー複製起点であり得る。ある特定の実施形態では、高コピー複製起点は、pUC57複製起点である。ある特定の実施形態では、pUC57複製起点は、配列番号19の核酸配列を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットは、二量体分解エレメントを更に含む。二量体分解エレメントは、例えば、部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含む核酸配列を含み得る。二量体分解エレメントは、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を更に含み得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を含む。二量体分解エレメントは、例えば、ColE1二量体分解エレメントであり得る。ある特定の実施形態では、ColE1二量体分解エレメントは、配列番号20の核酸配列を含む。
【0012】
また、本発明の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む単離されたベクターも提供される。ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、約1.5キロベース未満のサイズである。ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、配列番号9~13、17、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0013】
また、本発明の単離されたベクターを生成する方法も提供される。本方法は、(a)宿主細胞を単離されたベクターと接触させること、(b)ベクターを産生する条件下で宿主細胞を成長させること、及び(c)宿主細胞からベクターを単離することを含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、宿主細胞を最少培地で成長させる。最少培地は、唯一の炭素源としてラクトースを含み得る。ある特定の実施形態では、最少培地は、容積あたり約1重量%~約4重量%(w/v)のラクトースを含む。ある特定の実施形態では、最少培地は、約2%w/vのラクトースを含む。
【0015】
また、(a)本発明の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセット、及び(b)lacオペロンに欠失を含む宿主細胞を含む、キットも提供される。ある特定の実施形態では、キットは、唯一の炭素源としてラクトースを含む最少培地を更に含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、LacZΔM15欠失を含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、E.coli宿主細胞及び酵母宿主細胞からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な刊行物、論文、及び特許を、背景技術において、及び本明細書全体を通じて引用又は記載する。これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいかなる発明に対しても先行技術の一部を構成することを認めるものではない。
【0018】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0020】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0021】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」あるいはこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって充足される。
【0023】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の接続的な用語「及び/又は」は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用するとき、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「からなる(consists of)」又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用するとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含するが、追加の整数又は整数群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されることはないことを示す。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用するとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群も包含することを示す。M.P.E.P.§ 2111.03を参照されたい。
【0026】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0027】
「同一」又は「同一性」パーセントという用語は、2つ又は3つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、アミノ末端β-ガラクトシダーゼペプチド及びそれらをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載の単離されたベクターの核酸)との関連において、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、又は目視検査によって測定される最大一致について比較及びアライメントされたとき、同一であるか、又は同じアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの特定の百分率を有する2つ又は3つ以上の配列又はサブ配列を指す。
【0028】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブシーケンス座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0029】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照)によって行うことができる。
【0030】
配列同一性及び配列類似性のパーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの例は、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402にそれぞれ記載されているBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードとアラインメントしたときに一致するか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(Altschul et al.、上記)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。
【0031】
ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基の対についてのリワードスコア、常に>0)及びN(不一致の残基についてのペナルティスコア、常に<0)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ又は2つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)。
【0032】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0033】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「単離された」は、生物学的構成成分(例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、又は細胞)が、これらの構成成分が天然に生じる生物の他の生物学的構成成分(すなわち、他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、タンパク質、細胞、並びに組織)から実質的に分離されているか、これらの構成成分とは別に産生されているか、又はこれらの構成成分から精製されているものであることを意味する。したがって、「単離された」核酸、ペプチド、タンパク質、及び細胞は、標準的な精製方法及び本明細書に記載の精製方法によって精製された核酸、ペプチド、タンパク質、及び細胞が挙げられる。「単離された」核酸、ペプチド、タンパク質、及び細胞は、組成物の一部であることができ、組成物が核酸、ペプチド、タンパク質、又は細胞の本来の環境の一部ではない場合であっても依然として単離される。また、この用語は、宿主細胞中での組み換え発現により調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質、並びに化学合成された核酸も包含する。
【0035】
本明細書で使用するとき、「ポリヌクレオチド」なる用語は、同義的に、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、これらに限定されるものではないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖又はより典型的には二本鎖又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。用語、ポリヌクレオチドには、1つ又は2つ以上の修飾塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAも含まれる。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的に天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと呼ばれる)も包含する。
【0036】
本明細書で使用するところの「ベクター」なる用語は、別の核酸セグメントを機能的に挿入することによってそのセグメントの複製又は発現を行うことができるレプリコンのことである。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「発現」は、遺伝子産物の生合成を指す。かかる用語には、遺伝子のRNAへの転写が含まれる。また、かかる用語には、RNAの1つ又は2つ以上のポリペプチドへの翻訳も含まれ、全ての天然に生じる転写後及び翻訳後修飾も更に含まれる。発現されるCARは、宿主細胞の細胞質内、細胞培養の成長培地などの細胞外環境中に存在し得るか、又は細胞膜に固定され得る。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「操作可能に連結された」は、構造的又は機能的関係に配置されるとき、核酸(例えば、プロモータ及びポリペプチドをコードする核酸)間の連結を指す。例えば、核酸配列の1つのセグメントは、同じ連続する核酸配列上に互いに対して配置され、コード配列の転写を促進するようにコード配列に対して配置されるプロモータ又はエンハンサなどの構造的又は機能的関係を有する場合、核酸配列の別のセグメント、翻訳を促進するようにコード配列に対して配置されるリボソーム結合部位、又は前タンパク質(例えば、コードされたポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質)の発現を促進するように、コード配列に対して配置されるプレ配列又は分泌リーダーに操作可能に連結され得る。他の実施例では、操作可能に連結された核酸配列は連続していないが、核酸として、又はそれらによって発現されるタンパク質として互いに機能的関係を有するように配置される。エンハンサは、例えば、連続している必要はない。連結は、簡便な制限部位でライゲーションすることによって、又は合成オリゴヌクレオチドアダプター若しくはリンカーを使用することによって達成することができる。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「プロモータ」は、メッセンジャーRNAにおける遺伝子配列の転写の開始を可能にする核酸配列を指し、このような転写は、プロモータ上又はプロモータ付近のRNAポリメラーゼの結合により開始される。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「複製起点」又は「複製の起点」は、プラスミドの複製に必要な核酸配列を指す。複製起点の例としては、pBR322複製起点、ColE1複製起点、pUC57複製起点、pMB1複製起点、pSC101複製起点、及びR6K γ複製起点が挙げられるが、これらに限定されない。複製起点は、高コピー又は低コピーであり得る。ベクター中に存在する場合、高コピー複製起点は、細胞あたりのベクターの高コピー数(例えば、150~200)をもたらすことができる。ベクター中に存在する場合、中コピー複製起点は、細胞あたりのベクターの中コピー数(例えば、25~50)をもたらすことができる。ベクター中に存在する場合、低コピー複製起点は、細胞あたりのベクターの低コピー数(例えば、1~3)をもたらすことができる。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「二量体分解エレメント」は、核酸配列(例えば、ベクター又はプラスミド)の多量体の、当該配列が存在するモノマーへのインビボ変換を促進する核酸配列を指す。二量体分解エレメントは、部位特異的リコンビナーゼ標的部位(例えば、LoxP標的部位、rfs標的部位、FRT標的部位、RP4 res標的部位、RK2 res標的部位、及びres標的部位)を含む核酸配列を含み得る。二量体分解エレメントは、部位特異的リコンビナーゼ(例えば、Creリコンビナーゼ、ResDリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ、ParAリコンビナーゼ、Sinリコンビナーゼ、βリコンビナーゼ、γδリコンビナーゼ、tnpRリコンビナーゼ、及びpSK41リゾルバーゼ)をコードする核酸配列を含み得る。単離されたベクター/核酸の二量体は、二量体分解エレメント内に含まれる標的DNA配列に作用する酵素によって分解され得る。酵素は、標的DNA配列を組み換える。非限定的な例として、宿主細胞又は二量体分解エレメントを含むベクターのいずれかによって発現される酵素XerC及びXerDは、ColE1二量体分解エレメントの標的部位を認識し、ベクター/核酸のモノマーが産生されることを確実にするために、いくつかの追加の補因子と共に機能する。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」は、アミノ酸から構成される分子を指すことができ、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字コードが使用される。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖又は分枝鎖であり得、修飾されたアミノ酸を含むことができ、非アミノ酸により中断され得る。本用語はまた、自然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識構成成分とのコンジュゲート。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ又は2つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当該技術分野において既知の他の修飾が含まれる。
【0043】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0044】
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、及び使用方法
一般的な一態様では、選択可能マーカーとして核酸コンストラクトを使用する方法が提供される。本方法は、(a)lacオペロンに欠失を含む宿主細胞を核酸コンストラクトと接触させることであって、核酸コンストラクトが、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、接触させること、及び(b)核酸コンストラクトが宿主細胞内に維持される条件下で、宿主細胞を成長させることを含む。
【0045】
別の一般的な態様では、本発明は、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットに関する。
【0046】
ある特定の実施形態では、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントは、配列番号1と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントは、配列番号1と少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントは、配列番号1を含み得る。
【0047】
ある特定の実施形態では、核酸配列は、複製起点を更に含む。複製起点は、例えば、高コピー複製起点であり得る。ある特定の実施形態では、高コピー複製起点は、pUC57複製起点である。ある特定の実施形態では、pUC57複製起点は、配列番号19と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、pUC57複製起点は、配列番号19の核酸配列を含む。
【0048】
ある特定の実施形態では、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットは、二量体分解エレメントを更に含み得る。二量体分解エレメントは、例えば、部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含む核酸配列を含み得る。部位特異的リコンビナーゼ認識部位は、例えば、LoxP部位、rfs部位、FRT部位、RP4 res部位、RK2 res部位、及びres部位からなる群から選択され得る。二量体分解エレメントは、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を更に含み得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を含む。部位特異的リコンビナーゼは、例えば、Creリコンビナーゼ、ResDリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ、ParAリコンビナーゼ、Sinリコンビナーゼ、βリコンビナーゼ、γδリコンビナーゼ、tnpRリコンビナーゼ、及びpSK41リゾルバーゼからなる群から選択され得る。
【0049】
二量体分解エレメントは、例えば、ColE1二量体分解エレメントであり得る。ColE1二量体分解エレメントは、配列番号20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、ColE1二量体分解エレメントは、配列番号20の核酸配列を含む。
【0050】
ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、本発明の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む。本開示の観点から、当業者に既知の任意のベクター、例えば、プラスミド、コスミド、人工染色体(例えば、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、及び/又はP1由来人工染色体(PAC))、トランスポゾン、ファージベクター、又はウイルスベクターなどを使用することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドなどの組み換え発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモータ、リボソーム結合エレメント、ターミネータ、エンハンサ、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモータは、常時発現型、誘導型、又は再形成可能なプロモータであり得る。細胞に核酸を送達することができるいくつかの発現ベクターが当該技術分野において知られており、β-ガラクトシダーゼペプチドのアミノ末端フラグメントを産生するために、本明細書で使用することができる。従来のクローニング技術、又は人工遺伝子合成を使用して、本発明の実施形態に従った組み換え発現ベクターを生成することができる。
【0051】
ある特定の態様では、単離されたベクターは、約1.5キロベース未満のサイズである。単離されたベクターは、例えば、約700塩基対、約800塩基対、約900塩基対、約1000塩基対(約1キロベース)、約1100塩基対(約1.1キロベース)、約1200塩基対(約1.2キロベース)、約1300塩基対(約1.3キロベース)、約1400塩基対(約1.4キロ塩基)、又は約1500塩基対(約1.5キロベース)の長さであり得る。ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、約1キロベース未満のサイズである。ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、約900未満の塩基対のサイズである。ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、約800未満の塩基対のサイズである。
【0052】
ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、配列番号9~13、17、及び18からなる群から選択される核酸と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、単離されたベクターは、配列番号9~13、17、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0053】
また、本発明の単離されたベクターを生成する方法も提供される。本方法は、(a)宿主細胞を単離されたベクターと接触させること、(b)ベクターを産生する条件下で宿主細胞を成長させること、及び(c)宿主細胞からベクターを単離することを含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、宿主細胞を最少培地で成長させる。最少培地は、唯一の炭素源としてラクトースを含み得る。ある特定の実施形態では、最少培地は、容積あたり約1重量%~約4重量%(w/v)のラクトースを含む。ある特定の実施形態では、最少培地は、約1%~約4%w/v、約1%~約3%w/v、約1%~約2%w/v、約1.5%~約4%w/v、約1.5%~約3%w/v、約1.5%~約2%w/v、約2%~約4%w/v、約2%~約3%w/v、約2.5%~約4%w/v、約2.5%~約35%w/v、又は約3%~約4%w/vのラクトースを含む。ある特定の実施形態では、最少培地は、約2%w/vのラクトースを含む。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の単離されたベクターを含む宿主細胞に関する。本開示の観点から、当業者に既知の任意の宿主細胞は、本発明の単離されたベクターを含めるために使用され得る。好適な宿主細胞としては、LacZΔM15欠失を有するが、残りのラクトース生合成経路は無傷である細胞が挙げられる。バクテリオファージΦ80の組み込み(すなわち、Φ80lacZΔM15マーカー)との関連においてこの変異を含有する株は、完全なlacオペロンとの関連においてこの変異を含有し、したがって好適な宿主である。LacZ-α相補性プラスミドで形質転換されたときに有意なレベルのβ-ガラクトシダーゼを産生するLacZ遺伝子のアミノ末端(N末端)領域において異なる欠失を有する他の宿主もまた、好適な宿主であり得る。本発明の好適な宿主細胞は、E.coli宿主細胞又は酵母宿主細胞を含み得る。
【0056】
また、(a)本発明の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセット、及び(b)lacオペロンに欠失を含む宿主細胞とを含む、キットも提供される。ある特定の実施形態では、ベクターは、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、LacZΔM15欠失を含む。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、E.coli宿主細胞又は酵母宿主細胞から選択され得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、キットは、唯一の炭素源としてラクトースを含む最少培地を更に含む。ある特定の実施形態では、最少培地は、容積あたり約1重量%~約4重量%(w/v)のラクトースを含む。ある特定の実施形態では、最少培地は、約1%~約4%w/v、約1%~約3%w/v、約1%~約2%w/v、約1.5%~約4%w/v、約1.5%~約3%w/v、約1.5%~約2%w/v、約2%~約4%w/v、約2%~約3%w/v、約2.5%~約4%w/v、約2.5%~約35%w/v、又は約3%~約4%w/vのラクトースを含む。ある特定の実施形態では、最少培地は、約2%w/vのラクトースを含む。
【0058】
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
実施形態1は、核酸コンストラクトを選択可能マーカーとして使用する方法であり、本方法は、
a.lacオペロンに欠失を含む宿主細胞を核酸コンストラクトと接触させることであって、核酸コンストラクトが、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、接触させること、及び
b.核酸コンストラクトを含有する宿主細胞のみが宿主細胞内に維持される条件下で、宿主細胞を成長させることを含む。
【0059】
実施形態2は、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントが、配列番号1と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法である。
【0060】
実施形態3は、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態1又は2に記載の方法である。
【0061】
実施形態4は、核酸配列が、複製起点を更に含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0062】
実施形態5は、複製起点が、高コピー複製起点である、実施形態4に記載の方法である。
【0063】
実施形態6は、高コピー複製起点が、pUC57複製起点である、実施形態5に記載の方法である。
【0064】
実施形態7は、pUC57複製起点が、配列番号19の核酸配列を含む、実施形態6に記載の方法である。
【0065】
実施形態8は、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットが、二量体分解エレメントを更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0066】
実施形態9は、二量体分解エレメントが、部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含む核酸配列を含む、実施形態8に記載の方法である。
【0067】
実施形態10は、二量体分解エレメントが、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を更に含む、実施形態8又は9に記載の方法である。
【0068】
実施形態11は、宿主細胞が、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を含む、実施形態8又は9に記載の方法である。
【0069】
実施形態12は、二量体分解エレメントが、ColE1二量体分解エレメントである、実施形態8~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0070】
実施形態13は、ColE1二量体分解エレメントが、配列番号20の核酸配列を含む、実施形態12に記載の方法である。
【0071】
実施形態14は、宿主細胞がLacZΔM15欠失を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0072】
実施形態15は、単離されたベクターが、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0073】
実施形態16は、単離されたベクターが、約1.5キロベース未満のサイズである、実施形態15に記載の方法である。
【0074】
実施形態17は、単離されたベクターが、配列番号9~13、17、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む、実施形態15又は16に記載の方法である。
【0075】
実施形態18は、実施形態15~17のいずれか1つに記載の単離されたベクターを生成する方法であり、本方法は、
a.宿主細胞を単離されたベクターと接触させること、
b.ベクターを産生する条件下で宿主細胞を成長させること、及び
c.ベクターを宿主細胞から単離することを含む。
【0076】
実施形態19は、宿主細胞が、最少培地で成長する、実施形態18に記載の方法である。
【0077】
実施形態20は、最少培地が、唯一の炭素源としてラクトースを含む、実施形態19に記載の方法である。
【0078】
実施形態21は、最少培地が、容積あたり約1重量%~約4重量%(w/v)のラクトースを含む、実施形態20に記載の方法である。
【0079】
実施形態22は、最少培地が、約2%w/vのラクトースを含む、実施形態21に記載の方法である。
【0080】
実施形態23は、プロモータに操作可能に連結されたβ-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントをコードする核酸配列を含む、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0081】
実施形態24は、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントが、配列番号1と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態23に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0082】
実施形態25は、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端フラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態23又は24に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0083】
実施形態26は、核酸配列が複製起点を更に含む、実施形態23~25のいずれか1つに記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0084】
実施形態27は、複製起点が高コピー複製起点である、実施形態26に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0085】
実施形態28は、高コピー複製起点がpUC57複製起点である、実施形態27に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0086】
実施形態29は、pUC57複製起点が配列番号19の核酸配列を含む、実施形態28に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0087】
実施形態30は、単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットが、二量体分解エレメントを更に含む、実施形態23~29のいずれか1つに記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0088】
実施形態31は、二量体分解エレメントが、部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含む核酸配列を含む、実施形態30に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0089】
実施形態32は、二量体分解エレメントが、部位特異的リコンビナーゼをコードする核酸配列を更に含む、実施形態30又は31に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0090】
実施形態33は、二量体分解エレメントがColE1二量体分解エレメントである、実施形態30~32のいずれか1つに記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0091】
実施形態34は、ColE1二量体分解エレメントが、配列番号20の核酸配列を含む、実施形態33に記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットである。
【0092】
実施形態35は、実施形態23~34のいずれか1つに記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む単離されたベクターである。
【0093】
実施形態36は、単離されたベクターが、約1.5キロベース未満のサイズである、実施形態35に記載の単離されたベクターである。
【0094】
実施形態37は、単離されたベクターが、配列番号9~13、17、及び18からなる群から選択される核酸配列を含む、実施形態35又は36に記載の単離されたベクターである。
【0095】
実施形態38は、
a.実施形態23~37のいずれか1つに記載の単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセット、及び
b.Lacオペロンに欠失を含む宿主細胞を含む、キットである。
【0096】
実施形態39は、唯一の炭素源としてラクトースを含む最少培地を更に含む、実施形態38に記載のキットである。
【0097】
実施形態40は、ベクターが単離されたβ-ガラクトシダーゼ発現カセットを含む、実施形態38又は39に記載のキットである。
【0098】
実施形態41は、宿主細胞がLacZΔM15欠失を含む、実施形態38~40のいずれか1つに記載のキットである。
【0099】
実施形態42は、宿主細胞が、E.coli宿主細胞及び酵母宿主細胞からなる群から選択される、実施形態41に記載のキットである。
【実施例】
【0100】
実施例1:TOP10細胞において抗生物質選択の代わりにβ-ガラクトシダーゼのα相補性を介したプラスミド選択
材料
細胞:One Shot Top10コンピテント細胞(Thermo-Fisher;Waltham,MA、カタログ番号C404003)。NEB 5-α(New England Biolabs,Ipswich,MA、カタログ番号(C2987)。GT115(InvivoGen,San Diego,CA、カタログ番号GT115-21)。NEB Stable(New England Biolabs、カタログ番号C3040H)。Stellar(Takara Bio USA,Mountain View,CA、カタログ番号636766)。DH10B(Thermo-Fisher、カタログ番号18297010)。Stbl3(Thermo-Fisher、カタログ番号C737303)。Xli-blue(Agilent,Santa Clara,CA、カタログ番号200236)。
プラスミド:pUC19(Thermo-Fisher Scientific、カタログ番号SD0061);pBluescript II.KS(-)(Agilent;Santa Clara,CA、カタログ番号212208)。クローンP215(配列番号9)及びP216(配列番号10)。GWIZ-ルシフェラーゼ(Genlantis Corporation;San Diego,CA;P030200);P219(配列番号13、
図5)。P469-2(配列番号17、
図6)。
培地:M9+ラクトース培地(Teknova,Hollister CA、カタログ番号M1348-04(プレート)):0.3% KH
2PO
4、0.6% Na
2HPO
4、0.5%(85mM)NaCl、0.1% NH
4Cl、2mM MgSO
4、50mg/リットルのL-ロイシン、50mg/Lのイソロイシン;1mMチアミン、2%ラクトース、及び1.5%寒天。
M9+グルコース培地(Teknova Hollister CA、カタログ番号M1346-04(プレート)):0.3% KH
2PO
4、0.6% Na
2HPO
4、0.5%(85mM)NaCl、0.1% NH
4Cl、2mM MgSO
4、50mg/リットルのL-ロイシン、50mg/リットルのイソロイシン、1mMチアミン、1%グルコース、及び1.5%寒天。LB-カルベニシリン(100)プレート(Teknova,Hollister CA、カタログ番号L1010)。LBプレート(Teknova Hollister CA L1100)。LB+60μg/mLのX-Gal、0.1mM IPTG(Teknova Hollister CA L1920)。SOC媒体(Thermo-Fisher 15544034)。LBブロス(Thermo-Fisher 10855021);
D-PBS、pH7.1、Mg
2+なし、Ca
2+なし(ThermoFisher 14200-075)
【0101】
結果
抗生物質選択マーカーを含まないプラスミドは、遺伝子療法用途及び治療用製品の細胞株の開発に望ましい。1kb以下のプラスミド骨格は、インビボで動物に送達されたときに遺伝子サイレンシングを回避するのに有用であったことも報告されている。これらの実験の目的は、E.coli中のプラスミド含有細胞を選択するための、小さい代謝選択マーカーを開発するための新しい戦略を探索することであった。
【0102】
β-ガラクトシダーゼのαペプチドを発現するプラスミドは、TOP10細胞におけるLacZΔ15対立遺伝子を補完し、ラクトースオペロンを完成させ、ラクトースを唯一の炭素源として最少培地で細胞を成長させることができると仮定された。
【0103】
プラスミドpUC19及びpBluescript IIは両方ともβ-ガラクトシダーゼαペプチド融合タンパク質を発現する。これらのプラスミドは、Top10宿主株におけるlac変異を補完することができ、最少培地での成長を可能にしたかどうかを試験した。
【0104】
pUC19及び/又はpBluescript IIが、TOP10細胞におけるLacZΔ15変異を補完することが可能であったかどうかを試験するために、これらのプラスミドを、以下の手順を使用して細胞に形質転換した。
【0105】
2つの形質転換混合物を次のように減菌微小遠心管中で調製した。1)1μL(100pg)のpBluescript IIプラスミド+50μLのOne Shot TOP10細胞。2)1μL(10pg)のpUC19プラスミド+50μLのOne Shot TOP10細胞。形質転換混合物を氷上で30分間インキュベートした後、42℃で30秒間熱ショックを与えた。熱ショック後、形質転換混合物を氷上で1分間インキュベートした。形質転換混合物に、450μLのSOC培地を加え、細胞を37℃で1時間振盪させながらインキュベートした。細胞を含有する形質転換混合物を遠心分離し、細胞を500μLの減菌D-PBS緩衝液中に再懸濁した。細胞を遠心分離し、更に2回再懸濁した。各試料について、細胞の2つの1:10連続希釈物をD-PBSで作製した。200μLの各希釈液を、M9+ラクトースプレート上に広げた。200μLの第1の2つの希釈液も、LB-カルベニシリン(100)プレート上に広げた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0106】
一晩インキュベートした後、LB-カルベニシリン(100)プレート上にプレーティングされた両方の形質転換物からのコロニーが多く存在し、これらのプレートを4℃で保管した。M9+ラクトースプレート上にプレーティングされた形質転換物のいずれかからの目に見えるコロニーは存在せず、これらのプレートを37℃で更に24時間インキュベートした。M9-ラクトースプレート上にコロニーは見えなかった。細胞を30℃で更に48時間培養した。これらのプレート上には、長時間インキュベートした後でもコロニーは見えなかった。
【0107】
LacZ-α融合ペプチドを発現するクローニングベクターのいずれも、TOP10宿主株におけるLac変異を補完せず、唯一の炭素源としてラクトースを含有する最少培地での成長は可能ではなかった。
【0108】
pUC19及びpBluescript IIクローニングベクターによるLacZ-αペプチド融合タンパク質の発現は、試験した宿主株におけるlac変異を適切に補完するのに十分な高さではなかった可能性があった。両方のベクターは、マルチクローニング領域を通して転写される融合タンパク質を産生し、このような融合タンパク質は、LacZΔ15変異を補完するために準最適であり得る。
【0109】
実施例2:E.coliにおいて代謝選択マーカーとして使用されるLacZ発現プラスミド。
培地及び強力なプロモータ(それぞれLacZYA及びOmpF)を有する2つのLacZ-α発現カセットを設計した。OmpFプロモータ配列は、Stavropoulosら(Stavropoulos and Strathdee,Genomics 72(1):99-104(2001))によって使用されたOmpFプロモータに基づくものであった。LacZYAプロモータは、lacリプレッサーによって結合されたlacオペレータ配列と共に、pBluescriptの配列に由来した。
【0110】
LacZαペプチドのオープンリーディングフレーム(ORF)に関して、Reddy(Reddy,Biotechniques 37(6):948-52(2004)は、プラスミドpUC19が、pBluescriptよりも約10倍多いβ-ガラクトシダーゼ活性をもたらしたことを報告した。これらのプラスミドは、lacZαペプチドを駆動する同じプロモータエレメントを有する。しかしながら、pBluescriptはpUC19よりもはるかに長いポリリンカーを有し、pUC19は非lacZ C末端残基をコードする。これらの違いの中で、高いpUC19β-ガラクトシダーゼ活性をもたらすことは不明である。Nishiyamaらは、60アミノ酸のN末端αペプチドが、それらのアッセイにおいて最大β-ガラクトシダーゼ活性を有したことを見出した(Nishiyama et al.,Protein Sci.24(5):599-603(2015))。残基60で切断短縮されたMG1655株からの次の野生型LacZα領域を使用した。MTMITDSLAVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASWRNSEEARTD
RPSQQLRSLNGEWR(配列番号1)。
【0111】
ターミネータ配列は、Oroszら(Orosz et al.,Eur.J.Biochem.201(3):653-9(1991))によって記載されるrrnBT2ターミネータに由来した。
【0112】
P215(配列番号9)(
図1)及びP216(配列番号10)(
図2)プラスミドを、GeneWiz(South Plainfield,NJ)での遺伝子合成により構築した。プラスミドは、アンピシリン耐性カセット及び4.9kbの導入遺伝子を含有する。
【0113】
結果
抗生物質選択マーカーを含まないプラスミドは、遺伝子療法用途及び治療用製品の細胞株の開発に望ましい。1kb以下のプラスミド骨格は、インビボで動物に送達されたときに遺伝子サイレンシングを回避するのに有用であったことも報告されている。これらの実験の目的は、E.coli中のプラスミド含有細胞を選択するための、小さい代謝選択マーカーを開発するための新しい戦略を探索することであった。
【0114】
β-ガラクトシダーゼのαペプチドを発現するプラスミドは、Top10細胞におけるLacZΔ15対立遺伝子を補完し、ラクトースオペロンを完成させ、ラクトースを唯一の炭素源として最少培地で細胞を成長させることができると仮定された。
【0115】
実施例1では、lacZα融合ペプチドを発現するpUC19及びpBluescriptベクターが、TOP10細胞を補完し、ラクトースを有する最少培地でそれらを成長させることが可能であるかどうかを試験した。これらの実験は成功しなかった。
【0116】
これらのベクターによりコードされたlacZα融合タンパク質は、LacZΔ15変異を補完する際に準最適であり、ラクトース含有最少培地での成長を可能にするのに十分な高レベルで発現されなかったという仮説に基づいて、ベクターを新しいlacZα発現カセットで合成した。LacZΔ15変異を補完するこれらのベクターの能力を試験した。10ナノグラム(ng)のプラスミドP215及びP216、並びにpBluescript IIを50μLのOneShot Top10細胞に形質転換した。細胞を氷上で20分間DNAと共にインキュベートし、42℃で30秒間熱ショックを与え、氷上での1分間のインキュベートに戻した。450μLのSOCを細胞に加え、細胞を振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。250μLの細胞を除去し、残りの細胞をインキュベータに戻した。抽出した細胞を500μLのD-PBSで2回洗浄し、最後の洗浄後に200μLのD-PBS中に再懸濁した。50μLの細胞を、LB-カルベニシリン(100)、M9+グルコース、及びM9+ラクトースプレート上にプレーティングし、プレートを37℃でインキュベートした。熱ショックの4.5時間後、インキュベータからの残りの細胞を上述のように洗浄し、M9+グルコース及びM9+ラクトースプレート上にプレーティングした。プレートを一晩37℃でインキュベートした。
【0117】
M9+グルコース上にプレーティングされた形質転換物は、細胞の菌叢を作り、Top10宿主細胞がこれらのプレート上で成長することができることを示す。LB-カルベニシリン(100)上にプレーティングされた形質転換物も、多くのコロニーを同様に産生した。LB-カルベニシリンプレートを4℃で保管した。M9+ラクトースプレートを37℃で維持し、更に24時間インキュベートした。
【0118】
形質転換物は、1時間又は4時間のいずれかで回復させることができ、両方とも、M9+ラクトースプレート上にプレーティングしたときに多数のコロニーを産生した。pBluescript II形質転換物上にコロニーは存在せず、実施例1の結果を確認し、pBluescript IIが、ラクトース最少培地での成長を可能にするために、LacZΔ15変異の補完を通して十分なβ-ガラクトシダーゼを産生することができなかったことを示す。プレートを4℃で保管した。
【0119】
ColE1などの天然プラスミドは、抗生物質選択の不在下でE.coli宿主内で効率的に維持される一方で、pUCシリーズのベクターは、選択の不在下で高い率で細胞から失われ得る(Summers,Molecular Microbiology 29:1137-1145(1998))。しかしながら、最少培地対リッチLB培地でのP215及びP216形質転換細胞の成長速度が非常にゆっくりであることを考慮すると、プラスミドの損失頻度があまり高くない場合には、選別の不在下で、LB中で細胞培養物を成長させることがプラスミドDNA精製のためにははるかに速く、より安価であろう。β-ガラクトシダーゼα相補性プラスミド含有細胞は、β-ガラクトシダーゼが細胞を青色に変えるXGAL(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド)インジケータを加水分解するため、LB-IPTG-XGALプレート上で成長させたプラスミド不含細胞とは容易に区別される。このアッセイを使用して、LB培地で抗生物質を含まずにこれらの細胞を成長させたときのプラスミド損失の頻度を調査した。
【0120】
細胞の純粋な集団を、LB-IPTG-XGALプレート上に細胞を画線することによって得、プラスミドを含有するコロニーは青色になった。プレートに画線されたコロニーのほとんどは、予想どおり青色であった。
【0121】
細胞の純粋な集団を得た後、連続細胞培養物を成長させた。単一の青色コロニーを採取し、15mLのチューブ内で2mLのLB培地で成長させた。振盪しながら、培養物を37℃で一晩インキュベートした。
【0122】
培養物からの細胞をLB-IPTG-XGALプレート上に画線し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。再画線されたプレート上のコロニーは青色であった。単一のコロニーを、250mLフラスコ中の50mLのLBに播種し、振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。
【0123】
一晩培養物の10-4希釈物50μLを、LB-IPTG-XGALプレート上にプレーティングした。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。50mL培養物1μLを、50mLのLB(50,000倍希釈)の新たな培養物に希釈した。培養物を37℃で一晩成長させた。
【0124】
一晩インキュベートした後、プレート上の全てのコロニーは青色であることが観察された。前の晩からの50mL培養物の10-4希釈物50μLを、LB-IPTG-XGALプレート上にプレーティングした。前の晩の50mL培養物1μLを、50mLのLB(50,000倍希釈)の新たな培養物に希釈した。培養物を37℃で一晩成長させた。
【0125】
一晩インキュベートした後、50μLの10-4希釈物を含むプレート上に約1000のコロニーが観察された。P215形質転換物の全てのコロニーは青色であり、P216形質転換プレート上に観察された白色のコロニーは3つしか存在しなかった。
【0126】
結果は、プラスミドP215及びP216が、選択の不在下でも安定であったことを示した。これらのプラスミドは、P215及びP216についてそれぞれ7.2及び7.3kbである。単一のコロニーから50mLに希釈し、次いで1:50,000に希釈し、コンフルエンスまで2回成長させると、細胞は、細胞のほとんどに依然としてプラスミドを保持しながら、選択なしに1.25×108リットルの体積まで成長させることができることを示唆する。形質転換効率は、細胞を、熱ショック後のSOC培地中で1時間対4時間回復させたときに同様であった。
【0127】
構築されたα相補性プラスミドは、Top10細胞におけるLacZΔ15変異を補完し、唯一の炭素源としてラクトースを有する最少培地での成長を可能にする。これらのプラスミドもまた、選択的圧力の不在下でLB液体培養物中で安定であることが見出された。
【0128】
実施例3:β-ガラクトシダーゼ-α相補性プラスミドのサイズの低減
以前の実験では、P215及びP216プラスミドからのβ-ガラクトシダーゼαペプチドの発現は、プラスミド上の選択マーカーとして有用であり、抗生物質耐性遺伝子を置換することが示された。次に、最小の可能なレプリコンを定義する目的で、E.coliにおいてプラスミド選択及び複製にプラスミドのどの領域が必須であるかを定義することが求められた。
【0129】
結果
標準的なクローニング技術を使用して、mCherry及びピューロマイシン耐性遺伝子をプラスミドP215から除去してプラスミドP217(配列番号11)を作製した(
図3)。
【0130】
プラスミドP217から、標準的なクローニング技術を使用して、アンピシリン耐性遺伝子を除去した。ライゲーションしたDNAを50μLのTOP10細胞に形質転換し、氷上で20分間インキュベートし、30秒間熱ショックを与え、更に3分間氷上でインキュベートした。インキュベーション後、450μLのSOCを細胞に加え、細胞を振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。細胞をペレット化し、1mLのd-PBSで3回洗浄した。細胞をM9-ラクトースプレート上にプレーティングし、37℃で2日間インキュベートした。形質転換物からコロニーを採取し、LB-IPTG-XGALプレート上に画線した。得られたコロニーは、各クローンに関して青色であった。単一のクローンを採取し(クローンP218(配列番号12、
図4))、DNA配列決定は、所望の欠失が作製されたことを確認した。
【0131】
β-ガラクトシダーゼ選択カセットのサイズを更に減少させるために、rrnBT2転写ターミネータ(配列番号7)を欠失させた。転写物の安定性を維持するためにこの配列が必要ではなかった可能性に加えて、pUC57/pMB1起源の上流のプロモータからのリードスルー転写は、起源の複製プライマー領域を通して転写を増加させることによってコピー数を増加させることができることが報告された(Panayotatos,Nucleic Acid Res.12(6):2641-8(1984)、Oka et al.,Mol Gen Genet.172(2):151-9(1979))。
【0132】
標準的なクローニング技術を使用して、欠失コンストラクトP219(配列番号13、
図5)のコロニーを得た。DNA配列決定により欠失が確認された。
【0133】
この作業により解明された最小β-ガラクトシダーゼ発現カセット/複製起点カセット(配列番号18)は、938bpである。それは、より大きなプラスミド骨格に関連する哺乳類細胞におけるDNAサイレンシングを回避するために、1kbよりも小さいことの目的が満たされる(Lu et al.,Mol.Ther.20(11):2111-9(2012))。
【0134】
実施例4:ホタルルシフェラーゼ発現カセットを有するβ-ガラクトシダーゼ-α相補性ベクターの作製
上に提供される実施例では、抗生物質耐性遺伝子の代わりに選択マーカーとしてβ-ガラクトシダーゼ変異のα相補性を使用するプラスミドを構築した。プラスミドサイズが増加する場合でもDNA複製が依然として効率的であったかを決定するために、上記に定義した最小β-ガラクトシダーゼ発現カセット/複製起点配列(配列番号18)を使用して、標準的なクローニング技術を使用して、既存のプラスミドの抗生物質選択マーカー及び複製起点を置換した。
【0135】
標準的なクローニング技術を使用して、GWIZ-ルシフェラーゼプラスミド(配列番号16)からCMVプロモータ-ルシフェラーゼ-ポリA発現カセットをP219にクローニングした。One Shot TOP10細胞への形質転換、M9+ラクトースプレートへのプレーティング、及び37℃で2日間のインキュベーションにより、大きなコロニーが産生された。コロニーをLB-IPTG-XGALプレート上に再画線し、37℃で一晩インキュベートした。
【0136】
形質転換反応の青色コロニーを、プライマーCNFOR(配列番号14)、及びP455R2(配列番号15)を使用してインサートについてスクリーニングした。2つのPCR陽性コロニーを採取し、37℃で成長させた6mLのLB培養物に播種した。DNAを培養物から単離し、DNA収率を、分光光度計を用いてそれらのOD260を測定することによって推定した(表1)。
【0137】
【0138】
500mLのフラスコ中の200mLのLBに、クローンP469-2の単一の青色コロニーを播種し、シェーカーインキュベータ内で37℃で18時間成長させた。Qiagen HiSpeed MaxiPrepキットを使用して、この培養物からDNAを精製し、440μgのDNAを回収した。
【0139】
プラスミドP469-2(配列番号17)を配列決定し、GeneWizで確認した。
【0140】
この実施例では、カナマイシン耐性遺伝子及びGWIZ-ルシフェラーゼの複製起点は、上記に定義した最小β-ガラクトシダーゼ/複製起点に正常に置き換えられた。このクローンをLB培地で選択的圧力を加えずに成長させたとき、許容可能なプラスミド収率が達成された。
【0141】
実施例5:様々なE.coli株におけるβ-ガラクトシダーゼ-α相補性ベクター機能の試験
抗生物質耐性遺伝子の代わりに、β-ガラクトシダーゼαペプチドを選択可能マーカーとして使用することができる追加のE.coli株を同定するために、上記で構築されたプラスミドのうちの1つを、8つの異なる株へのDNAトランスフェクションによって試験した。
【0142】
【0143】
結果
表2の50μLのE.coli株を、減菌微小遠心管内で、氷上で1ngのプラスミドP469-2と共に30分間インキュベートした。42℃で30秒間細胞に熱ショックを与え、氷上で1分間インキュベートした。NEB-Stable細胞を除く全ての細胞に450μLのSOC培地を加えた。形質転換したNEB-Stable細胞に、450μLのNEB-Stable増生(outgrowth)培地(製造業者により供給された)を加えた。細胞を、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。細胞をペレット化し、1mLのD-PBSで3回洗浄した。細胞をM9-ラクトースプレート上にプレーティングし、37℃で3日間インキュベートした。
【0144】
予想どおり、陰性対照として含まれたStbl3形質転換細胞からのプレート上にコロニーは検出されなかった。株のうちの5つ(Top10、GT115、NEB-Stable、Stellar、及びDH10B)は、正常なサイズのコロニーを有した。2つの株(NEB-Alpha及びXL1-Blue)は、小さなコロニーを有した。これは、NEB-alpha(DH5alpha)及びXL1-Blueと同様の株が、最少培地での成長を遅らせるpurB遺伝子に変異を含有するため予想された(Jung et al.Appl Environ.Micro.76:6307-6309(2010))。
【0145】
XL1-blue及びNEB-Alphaプレートを37℃で更に1日インキュベートした。
【0146】
M9-ラクトースプレートからLB-IPTG-XGALプレート上にコロニーを画線し、37℃でインキュベートすることによって、純粋なコロニーを得た。LB-IPTG-XGALプレート上に青色コロニー(プラスミド含有細胞)を画線し(2回目)、37℃でインキュベートし、これはほとんど青色細胞を産生した。
【0147】
Φ80dlacZΔM15マーカーを含有した試験株の全ては、β-ガラクトシダーゼαペプチド発現プラスミドP469-2により形質転換され、唯一の炭素源としてラクトースを有するM9最少培地で選択され得る。Fエピソーム上にマーカーlacIqZΔM15を含有する株XL1-blueのプラスミドP469-2トランスフェクタントもまた、M9-ラクトースプレート上で選択可能であった。したがって、7つの市販のE.coli株は、β-ガラクトシダーゼ選択可能マーカーと適合性があることが示された。
【0148】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本説明によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【配列表】
【国際調査報告】