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特表2022-518257グラフェンナノリボンを含む透明導電膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(54)【発明の名称】グラフェンナノリボンを含む透明導電膜
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/182 20170101AFI20220307BHJP
【FI】
C01B32/182
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542357
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020014509
(87)【国際公開番号】W WO2020154341
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】62/795,226
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517127045
【氏名又は名称】インサーマ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NTHERMA CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】ヌウェン, カティエン, ブイ.
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA11
4G146AA19
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AC16B
4G146AC20A
4G146AC20B
4G146AC25B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146BA12
4G146BC43
4G146CB01
4G146DA27
(57)【要約】
均一な長さ及び90%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜及びその合成方法が本明細書において提供される。均一な長さ及び90%超の純度のグラフェンナノリボンで構成される透明導電膜を含むデバイスも本明細書において提供される。このデバイスは、太陽電池、テレビ、ディスプレイ、タッチスクリーン又はスマートウィンドウであり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な長さ及び約90%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜。
【請求項2】
均一な長さ及び約99%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明伝導膜。
【請求項3】
前記グラフェンナノリボンは、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さを有し、且つ約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度である、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記グラフェンナノリボンは、約10層以下未満又は約5層以下、約1層以下の厚さである、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項5】
可視スペクトルにおいて、約80%超、約85%超、約90%超又は約95%超の光透過性を有する、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項6】
約1000Ω/□未満、約100Ω/□未満又は約50Ω/□未満のシート抵抗を有する、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項7】
約25nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約5nm未満又は約1nm未満の表面粗さを有する、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項8】
硝酸、塩化鉄、塩化金及びアンモニアガスでドープされている、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項9】
ナノワイヤをさらに含む、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項10】
前記ナノワイヤは、Au又はAgから構成される、請求項8に記載の透明導電膜。
【請求項11】
前記ナノワイヤは、前記透明導電膜に封入されている、請求項8に記載の透明導電膜。
【請求項12】
単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブをさらに含む、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項13】
ナノワイヤをさらに含む、請求項12に記載の透明導電膜。
【請求項14】
請求項1に記載の透明導電膜を含むデバイス。
【請求項15】
太陽電池、テレビ、ディスプレイ、タッチスクリーン、スマートウィンドウ又はスマートフォンである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
請求項1に記載の透明導電膜で被覆されたガラス基板。
【請求項17】
前記透明導電膜は、可撓性を有する、請求項16に記載のガラス基板。
【請求項18】
請求項1に記載の透明導電膜で被覆されたプラスチック基板。
【請求項19】
前記透明導電膜は、可撓性を有する、請求項18に記載のプラスチック基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年1月22日に出願された米国仮出願第62/795,226号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【0002】
均一な長さ及び90%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜及びその合成方法が本明細書において提供される。均一な長さ及び90%超の純度のグラフェンナノリボンから構成される透明導電膜を含むデバイスも本明細書において提供される。このデバイスは、太陽電池、テレビ、ディスプレイ、タッチスクリーン又はスマートウィンドウであり得る。
【背景技術】
【0003】
透明導電膜は、例えば、タッチスクリーンペイン、薄膜太陽電池などの種々の光電子デバイスにおいて必要である。従来、透明導電膜としては、高い光透過性及び低いシート抵抗などの良好な物理的性質を有するインジウムドープ酸化スズが挙げられる。インジウムドープ酸化スズの使用では、例えば、近赤外における低い光透過率、低い可撓性、高い屈折率及び大きいコストなどの重大な欠点が存在する。
【0004】
グラフェンナノリボン(GNR)は、単層又は数層のよく知られた炭素同素体の黒鉛状炭素であり、非常に優れた電気的及び物理的性質を有し、これは、特に光電子デバイスなどの家庭用エレクトロニクスにおける用途につながり得る。GNRは、構造的に、長さが幅又は厚さよりもはるかに長い高アスペクト比を有する。
【0005】
従来の研究によると、GNRを含む透明導電膜グラフェン材料は、インジウムドープ酸化スズと比較した場合に優れた光透過性及び性能を有することが示されている。しかし、CVDによって製造されたGNRを含む透明導電膜は、商業的使用には費用がかかりすぎ、長さが不十分である。
【0006】
代わりに、GNRは、CVDにより、化学的方法を用いて黒鉛から調製されている。最も典型的には、GNRは、化学的アンジッピングによってCNTから調製され、GNRの品質は、CNT出発物質の純度によって決定される。
【0007】
GNPは、典型的には、化学的剥離、熱衝撃及び剪断により又はプラズマ反応器中で黒鉛から調製される。しかし、上記の方法では、高収率、良好な純度で、GNR長さを十分に制御しながらGNR及びGNPを得ることができない。
【0008】
近年、良好な収率及び高純度でカーボンナノチューブをGNRに変換する多くの方法が出現している(Hirsch,Angew Chem.Int.Ed.2009,48,2694)。しかし、これらのCNTから製造されたGNRの純度及び均一性は、CNTの製造方法によって決定される。
【0009】
現在のCNTの製造方法では、典型的には、例えば金属触媒及び非晶質炭素などの多量の不純物を含むCNTが製造される。CNTの合成後、典型的には精製ステップが必要となり、これは、多量の金属触媒及び非晶質炭素で汚染されていないカーボンナノチューブを得るためのフローリアクター法である。CNT精製ステップには、大型で費用のかかる化学プラントが必要であり、そのため、90%超の純度のCNTを大量に製造するには、非常にコストがかかる。さらに、現在のCNTの製造方法では、構造均一性が低いCNT(すなわち変動し得る長さのCNT)が製造される。
【0010】
したがって、それらの以前の例におけるしわ欠陥が回避される、高純度で十分な長さのGNRを含む高品質で安価な透明導電膜を提供する新規な方法が必要とされている。これらの方法は、高い構造均一性及び純度のCNTの調製を必要とし、次にそれらを高純度で十分な長さのGNRに変換することができ、それらを優れた光透過性及びシート抵抗の透明導電膜の形成に使用することができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、一態様では、均一な長さ及び90%超の純度のナノリボンを含む透明導電膜及びその合成方法を提供することにより、これら及び他の要求を満たす。
【0012】
別の一態様では、均一な長さ及び90%超の純度のグラフェンナノリボンから構成される透明導電膜を含むデバイスが提供される。デバイスは、太陽電池、テレビ、ディスプレイ、タッチスクリーン又はスマートウィンドウであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基板上に触媒を堆積するステップと;基板上にカーボンナノチューブを形成するステップと;基板からカーボンナノチューブを分離するステップと;高純度で構造的に均一なカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの合成の代表的なフローチャートを示す。
図2】基板上にカーボンナノチューブを形成するステップと;基板からカーボンナノチューブを分離するステップと;高純度で構造的に均一なカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの合成の代表的なフローチャートを示す。
図3】常時移動する基板上に触媒を連続的に堆積するステップと;移動する基板上にCNTを形成するステップと;移動する基板からCNTを分離するステップと;高純度で構造的に均一なカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの連続合成の代表的なフローチャートを示す。
図4】金属基板を含む移動する基板上でCNTを形成するステップと;移動する基板からCNTを分離するステップと;高い純度及び構造均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの連続合成の代表的なフローチャートを示す。
図5】モジュールを通過して基板を前に進める移送モジュール;触媒モジュール;ナノチューブ合成モジュール;分離モジュール;及び収集モジュールなどの連続して配置される種々のモジュールを含む、カーボンナノチューブの連続合成のための装置を概略的に示す。
図6】モジュールを通過して基板を前に進める移送モジュール;触媒モジュール;ナノチューブ合成モジュール;分離モジュール;及び収集モジュールなどの連続して配置される種々のモジュールを含む、カーボンナノチューブの連続合成のための基板の閉ループ供給を備えた装置を概略的に示す。
図7】代表的な分離モジュールを概略的に示す。
図8】ナノチューブ合成モジュール中に使用できる、複数の基板を含む長方形の石英チャンバーの平面図を概略的に示す。
図9】ナノチューブ合成モジュール中に使用できる、複数の基板を含む長方形の石英チャンバーの斜視図を示す。
図10】本明細書に記載の方法及び装置によって製造されたMWCNTについて99.4%超の純度を示すTGA結果を示す。
図11】工業グレード試料と比較した場合、本明細書に記載の方法及び装置によって製造されたMWCNTが高結晶性であることを示すラマンスペクトルを示す。
図12】工業グレードの試料と比較した場合、本明細書に記載の方法によって製造されたグラフェンナノリボンが結晶性であることを示すラマンスペクトルを示す。
図13】本明細書に記載の方法によって製造されたグラフェンナノリボンについて99%超の純度を示すTGA結果を示す。
図14】高純度グラフェンナノリボンの電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
特に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において1つの用語に複数の定義が存在する場合、特に記載がない限り、この項における定義が優先される。
【0015】
本明細書において使用される場合、「カーボンナノチューブ」は、円筒形構造を有する炭素同素体を意味する。カーボンナノチューブは、C5及び/又はC7環構造の混在などの欠陥を有する場合があり(それによりカーボンナノチューブが直線状にならない)、コイル状の構造を有する場合があり、C-C結合配列中に不規則に分布する欠陥部位を含む場合がある。カーボンナノチューブは、1つ以上の同心の円筒形層を含むことができる。本明細書において使用される場合、「カーボンナノチューブ」という用語は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブを、精製された形態において単独で又はそれらの混合物として含む。幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブは、多層である。別の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層である。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、二層である。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層及び多層のナノチューブの混合物である。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層及び二層のナノチューブの混合物である。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、二層及び多層のナノチューブの混合物である。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層、二層及び多層のナノチューブの混合物である。
【0016】
本明細書において使用される場合、「多層カーボンナノチューブ」は、黒鉛と同様の層間距離の複数の同心の入れ子状のグラフェンシートで構成されるカーボンナノチューブを意味する。
【0017】
本明細書において使用される場合、「二層カーボンナノチューブ」は、2つの同心の入れ子状のグラフェンシートを有するカーボンナノチューブを意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、「単層カーボンナノチューブ」は、1つの円筒形グラフェン層を有するカーボンナノチューブを意味する。
【0019】
本明細書において使用される場合、「垂直に配列されたカーボンナノチューブ」は、カーボンナノチューブの構造が基板に対して垂直に物理的に整列して基板上に堆積するカーボンナノチューブの配列を意味する。
【0020】
本明細書において使用される場合、「触媒」又は「金属触媒」は、炭化水素ガスの分解に使用され、化学気相成長プロセスによるカーボンナノチューブの形成を促進する、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Pt、Pd、Auなどの金属又は金属の組み合わせを意味する。
【0021】
本明細書において使用される場合、「化学気相成長」は、プラズマ強化化学気相成長、熱化学気相成長、アルコール触媒CVD、気相成長、エアロゲル担持CVD及びレーザーによるCVDを意味する。
【0022】
本明細書において使用される場合、「プラズマ強化化学気相成長」は、炭化水素ガス混合物を、カーボンナノチューブを表面上に堆積させる励起種に変換するためにプラズマ(例えば、グロー放電)を使用することを意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、「熱化学気相成長」は、カーボンナノチューブを表面上に堆積するために使用できる、触媒の存在下での炭化水素蒸気の熱分解を意味する。
【0024】
本明細書において使用される場合、「物理気相成長」は、所望の膜材料の蒸発させたものを膜材料上に凝縮させることにより、薄膜を堆積するために使用される真空蒸着方法を意味し、陰極アーク堆積、電子ビーム堆積、蒸発堆積、パルスレーザー堆積及びスパッタ堆積などの技術が挙げられる。
【0025】
本明細書において使用される場合、「カーボンナノチューブの形成」は、反応チャンバー内で基板上にカーボンナノチューブを形成するための、本明細書に記載の化学気相成長方法及び物理気相成長方法などのあらゆる気相成長プロセスを意味する。
【0026】
カーボンナノチューブは、多くの用途において有利となる、優れた電流容量、高い熱伝導率、良好な機械的強度及び広い表面積などの非常に優れた物理的性質を有する比較的新しい材料である。カーボンナノチューブは、ダイヤモンドの熱伝導率よりもわずかに低い3000W/mKという高い値の非常に優れた熱伝導率を有する。カーボンナノチューブは、機械的に強く、大気条件下において400℃より高温でも熱的に安定であり、特に垂直に配列される場合に可逆的な機械的可撓性を有する。したがって、カーボンナノチューブは、この固有の可撓性のために、種々の表面形態に機械的に適合することができる。さらに、カーボンナノチューブは、低い熱膨張係数を有し、高温下の限定された条件において可撓性を維持する。
【0027】
実用的で単純な集積化及び/又は実装化を伴う制御された方法でカーボンナノチューブを経済的に提供することは、多くのカーボンナノチューブ技術を実施するために重要である。非常に優れた純度及び均一な長さの大量のカーボンナノチューブが得られる装置及び方法が本明細書において提供される。本明細書において合成されたCNTは、費用のかかる合成後の精製が不要である。
【0028】
簡潔に述べると、この方法の一般的な特徴は、以下の通りである。最初に、表面上に金属触媒を被覆し、基板を高温に加熱する。次に、高温の基板表面上に触媒を被覆して、基板上に触媒のナノ粒子を提供し、これは、CNT合成の開始部位として機能する。触媒に炭素源を供給することによってCNTが合成される。したがって、炭素源とキャリアガスとの混合物が、触媒で被覆され且つ加熱された基板が入れられたチャンバー内に流されて、CNTが結合した基板が得られる。最後に、合成されたCNTは、基板から取り外され、収集される。任意選択的に、触媒で被覆された基板は、再生される。
【0029】
幾つかの実施形態では、スパッタリング、蒸発、ディップコーティング、印刷スクリーニング、エレクトロスプレー、噴霧熱分解又はインクジェット印刷により、基板上に触媒が堆積される。触媒は、次に、化学的エッチング又は熱アニールを行うことで触媒粒子の核形成を誘発することができる。触媒の選択により、多層CNTよりも単層CNTを優先的に成長させることができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、触媒の溶液中に基板を浸漬することにより、基板上に触媒が堆積される。別の実施形態では、水性溶媒又は有機溶媒の水中の触媒溶液の濃度は、約0.01%~約20%である。さらに別の実施形態では、水性溶媒又は有機溶媒の水中の触媒溶液の濃度は、約0.1%~約10%である。さらに別の実施形態では、水性溶媒又は有機溶媒の水中の触媒溶液の濃度は、約1%~約5%である。
【0031】
CNTが製造されるチャンバーの温度は、基板の溶融温度よりも低く、炭素源の分解温度よりも低く、触媒原材料の分解温度よりも高い温度であるべきである。多層カーボンナノチューブを成長させるための温度範囲は、約600℃~約900℃である一方、単層CNTを成長させるための温度範囲は、約700℃~約1100℃である。
【0032】
幾つかの実施形態では、CNTは、CNTの成長のための金属触媒を含む基板上の化学気相成長によって形成される。留意すべき重要なこととして、常時移動する基板上での連続CNT形成により、CNTは、均一な長さを有することができる。典型的な供給材料としては、一酸化炭素、アセチレン、アルコール、エチレン、メタン、ベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。キャリアガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素などの不活性ガスである一方、水素は、典型的な還元性ガスである。ガス混合物の組成及び基板曝露時間により、合成されるCNTの長さが調節される。例えば、前述の物理気相成長方法、Nikolaev et al.,Chemical Physics Letter,1999,105,10249-10256の方法及び霧状噴霧熱分解(Rao et al.,Chem.Eng.Sci.59,466,2004)など、当業者に周知の別の方法を本明細書に記載の方法及び装置において使用することができる。上記の方法のいずれかを用いてカーボンナノチューブを製造するために、当業者に周知の条件を使用することができる。
【0033】
ここで、図1を参照すると、カーボンナノチューブの合成方法が提供されている。この方法は、図1に示されるように個別のステップで行うことができる。必要に応じて、これらのステップのあらゆる組み合わせを連続的に行うことができることを当業者は認識するであろう。102において、基板上に触媒が堆積され、104において、基板上にカーボンナノチューブが形成され、106において、基板からカーボンナノチューブが分離され、108において、カーボンナノチューブが収集される。
【0034】
ここで、図2を参照すると、カーボンナノチューブの別の合成方法が提供されている。この方法は、図2に示されるように個別のステップで行うことができる。必要に応じて、これらのステップのあらゆる組み合わせを連続的に行うことができることを当業者は認識するであろう。202において、既に触媒を含む基板上にカーボンナノチューブが形成され、204において、基板からカーボンナノチューブが分離され、206において、カーボンナノチューブが収集される。
【0035】
ここで、図3を参照すると、カーボンナノチューブの別の合成方法が提供されている。この方法は、連続的に行われる。302において、移動する基板上に触媒が連続的に堆積され、304において、移動する基板上でカーボンナノチューブが連続的に形成され、306において、基板からカーボンナノチューブが連続的に分離され、308において、カーボンナノチューブが連続的に収集される。基板に対して、本明細書に記載のステップを1回又は任意選択的に多くの回数、例えば50回超、1,000回超若しくは100,000回超繰り返すことができる。
【0036】
ここで、図4を参照すると、カーボンナノチューブの別の合成方法が提供されている。この方法は、図示されるように連続的に行われる。402において、触媒を既に含む移動する基板上にカーボンナノチューブが連続的に形成され、404において、基板からカーボンナノチューブが連続的に分離され、406において、カーボンナノチューブが連続的に収集される。幾つかの実施形態では、基板に対して、堆積、形成及び分離のステップは、50回超、1,000回超又は100,0000回超繰り返される。
【0037】
移動する基板上でのCNTの堆積により、高い純度及び高い長さ均一性の両方であるCNTが得られる。さらに、プロセス条件を制御することにより、CNTの長さをカスタマイズすることができる。例えば、製造プロセスを通して移動する基板の速度を変更することでCNTの長さが変化し;CNT堆積モジュールを通過する速度を速くすると、より短いCNTが製造され、より遅い速度ではより長いCNTが製造される。
【0038】
幾つかの実施形態では、基板は、金属箔によって完全に覆われる。これらの実施形態では、基板は、触媒の堆積及びCNT合成の条件に対して安定なあらゆる材料であり得る。多くのこのような材料が当業者に周知であり、このような材料としては、例えば、炭素繊維、炭素箔、ケイ素、石英などが挙げられる。別の実施形態では、基板は、本明細書に記載の方法の種々のステップに連続的に進めることが可能な金属箔である。
【0039】
幾つかの実施形態では、金属箔の厚さは、10μm超である。別の実施形態では、金属箔の厚さは、約10μm~約500μmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約500μm~約2000μmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05μm~約100cmである。別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05μm~約100cmである。別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.1mm~約2.5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.5mm~約1.5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約1mm~約5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約1mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約0.5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.5mm~約1mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約1mm~約2.5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約2.5mm~約5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約100μm~約5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、約10μm~約5mmである。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、100μm超である。さらに別の実施形態では、金属箔の厚さは、100μm未満である。
【0040】
幾つかの実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、アルミニウム、コバルト、銅、クロム、金、銀、白金、パラジウム又はそれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、金属箔は、例えば、フェロセン、コバルトセン又はニッケロセンなどの有機メタロセンで被覆することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、クロム、アルミニウム、金又はそれらの組み合わせの2つ以上の合金である。別の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組み合わせの2つ以上の合金である。
【0042】
幾つかの実施形態では、金属箔は、高温金属合金である。別の実施形態では、金属箔は、ステンレス鋼である。さらに別の実施形態では、金属箔は、カーボンナノチューブを成長させるために上に触媒が堆積される高温金属合金である。さらに別の実施形態では、金属箔は、カーボンナノチューブを成長させるために上に触媒が堆積されるステンレス鋼である。
【0043】
幾つかの実施形態では、金属箔は、400℃よりも高温で熱的に安定な金属又は複数の金属の組み合わせである。別の実施形態では、金属箔は、500℃よりも高温、600℃よりも高温、700℃よりも高温又は1000℃よりも高温で熱的に安定な金属又は複数の金属の組み合わせである。上記の実施形態の幾つかでは、複数の金属の組み合わせは、ステンレス鋼である。
【0044】
幾つかの実施形態では、金属箔は、約100μm未満の厚さ及び約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さを有する。幾つかの実施形態では、金属箔は、約100μm超の厚さ及び約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さを有する。さらに別の実施形態では、金属箔は、約100μm未満の厚さ及び約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さを有し、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組み合わせを含む。さらに別の実施形態では、金属箔は、約100μm超の厚さ及び約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さを有し、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組み合わせを含む。さらに別の実施形態では、金属箔は、約100μm未満の厚さ及び約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さを有し、触媒膜を含む。さらに別の実施形態では、金属箔は、約100μm超の厚さ及び約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さを有し、触媒膜を含む。上記の実施形態の幾つかでは、二乗平均平方根粗さは、約100nm未満である。
【0045】
幾つかの実施形態では、基板は、上記の方法のステップを、0.1cm/分超の速度で連続的に進む。別の実施形態では、基板は、上記の方法のステップを、0.05cm/分超の速度で連続的に進む。さらに別の実施形態では、基板は、上記の方法のステップを、0.01cm/分超の速度で連続的に進む。さらに別の実施形態では、基板に対して、堆積、形成、分離及び収集のステップは、10回、50回超、1,000回超又は100,0000回超繰り返される。
【0046】
幾つかの実施形態では、基板は、幅が約1cm超である。別の実施形態では、基板は、1m超、10m超、100m超、1,000m超又は10,000m超の長さを有する。これらの実施形態の幾つかでは、基板は、金属箔である。
【0047】
幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブは、基板のすべての側面の上に形成される。別の実施形態では、金属箔の両側の上にカーボンナノチューブが形成される。
【0048】
幾つかの実施形態では、基板上に堆積される触媒の濃度は、約0.001%~約25%である。別の実施形態では、基板上に堆積される触媒の濃度は、約0.1%~約1%である。さらに別の実施形態では、基板上に堆積される触媒の濃度は、約0.5%~約20%である。
【0049】
幾つかの実施形態では、基板上のカーボンナノチューブの濃度は、約1ナノチューブ/μM~約50ナノチューブ/μMである。別の実施形態では、基板上のカーボンナノチューブの濃度は、約10ナノチューブ/μM~約500ナノチューブ/μMである。
【0050】
幾つかの実施形態では、基板の表面からCNTを機械的に除去することにより、基板からCNTが分離される。別の実施形態では、基板からのCNTの分離は、機械的工具(例えば、ブレード、研磨面など)を用いて基板の表面からCNTを除去することを含み、これにより金属不純物がほとんど又はまったくない高純度のCNTが得られ、このため、さらなる精製は、不要である。さらに別の実施形態では、基板からのCNTの分離は、基板に対するCNTの付着を妨害する化学的方法を含む。さらに別の実施形態では、超音波処理により、基板に対するCNTの付着を妨害する。さらに別の実施形態では、加圧ガス流により、基板に対するCNTの付着を妨害する。基板上へのCNTの堆積と、基板からのCNTの分離との組み合わせにより、触媒及び非晶質炭素の不純物がない均一な長さのCNT生成物が得られる。
【0051】
CNTは、例えば、開放容器、ワイヤーメッシュスクリーン、固体表面、濾過装置などのあらゆる好都合な物体中又は上に収集することができる。収集装置の選択は、基板に対するCNTの付着を妨害するために使用される方法と関連するであろう。
【0052】
幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブは、不規則に配列される。別の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に配列される。さらに別の実施形態では、均一な長さは、平均で約30μm、50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである。さらに別の実施形態では、均一な長さは、50μm~2cmの範囲であり得る。一般に、均一な長さは、記載の長さの約±10%である。したがって、約100μmの均一な長さを有する試料は、90μm~110μmの長さのナノチューブを含むことになる。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に配列され、均一な長さである。
【0053】
幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブの密度は、約2mg/cm~約1mg/cmである。別の実施形態では、約2mg/cm~約0.2mg/cmのカーボンナノチューブの密度である。
【0054】
幾つかの実施形態では、垂直に配列されたカーボンナノチューブは、約50W/mK超の熱伝導率を有する。別の実施形態では、垂直に配列されたカーボンナノチューブは、約70W/mK超の熱伝導率を有する。
【0055】
幾つかの実施形態では、垂直に配列されたカーボンナノチューブの厚さは、約100μm~約500μmである。別の実施形態では、垂直に配列されたカーボンナノチューブの厚さは、約100μm未満である。
【0056】
幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブは、約90%超、約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度である。別の実施形態では、カーボンナノチューブは、約90%超、約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度であり、約10μm、約20μm、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さである。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に配列され、約90%超、約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度であり、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さである。
【0057】
幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約11GPa~約63GPaである。別の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約20GPa~約63GPaである。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約30GPa~約63GPaである。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約40GPa~約63GPaである。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約50GPa~約63GPaである。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約20GPa~約45GPaである。
【0058】
幾つかの実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約1.3TPa~約5TPaである。別の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約1.7TPa~約2.5TPaである。さらに別の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約2.7TPa~約3.8TPaである。
【0059】
ここで、図5を参照すると、CNTを連続的に合成するための装置が提供されている。移送モジュールは、基板506によって連結されるドラム501A及び501Bを含む。基板506は、ドラム501Aから触媒モジュール502、ナノチューブ合成モジュール503及び分離モジュール504を経由してドラム501Bまで連続的に移動する。未処理の基板506Aは、触媒モジュール502によって改質されて、触媒を含む基板506Bが得られることに留意されたい。幾つかの実施形態では、触媒モジュール502は、基板506Aが浸漬される触媒の溶液である。ナノチューブ合成モジュール503を通過する間、基板506B上にカーボンナノチューブが連続的に形成されて、カーボンナノチューブを含む基板506Cが得られる。幾つかの実施形態では、ナノチューブ合成モジュール503は、CVDチャンバーである。基板506Cは、分離モジュール504によって連続的に処理され、付着するカーボンナノチューブが剥離されて、基板506Aが得られ、次に、これは、ドラム501Bによって収集される。幾つかの実施形態では、分離モジュール504は、新しく形成されたCNTを基板506Cから機械的に剪断するブレードを含む。基板506Cから取り外されたカーボンナノチューブは、プロセス506Dによって収集モジュール505で連続的に収集されることに留意されたい。幾つかの実施形態では、収集モジュール505は、単に、分離モジュール504によって基板表面から分離したCNTを収集するために適切に配置された空の容器である。上記の実施形態では、基板506は、製造工程中に再利用されない。
【0060】
ここで、図6を参照すると、CNTを連続的に合成するための別の装置が概略的に示されている。移送モジュールは、基板606によって連結されるドラム601A及び601Bを含む。基板606は、ドラム601Aから触媒モジュール602、ナノチューブ合成モジュール603及び分離モジュール604を経由してドラム601Bまで連続的に移動する。未処理の基板606Aは、触媒モジュール602によって改質されて、触媒を含む基板606Bが得られることに留意されたい。幾つかの実施形態では、触媒モジュール502は、基板606Aが浸漬される触媒の溶液である。ナノチューブ合成モジュール603を通過する間、基板606B上にカーボンナノチューブが連続的に形成されて、基板506Cが得られる。幾つかの実施形態では、ナノチューブ合成モジュール603は、CVDチャンバーである。基板606Cは、分離モジュール604によって連続的に処理され、付着するカーボンナノチューブが剥離されて、基板606Aが得られ、次に、これは、ドラム601Bによって収集される。幾つかの実施形態では、分離モジュール604は、新しく形成されたCNTを基板606Cから機械的に剪断するブレードを含む。基板606Cから取り外されたカーボンナノチューブは、プロセス606Dによって収集モジュール605で連続的に収集されることに留意されたい。幾つかの実施形態では、収集モジュール605は、単に、分離モジュール604によって基板表面から分離したCNTを収集するために適切に配置された空の容器である。上記の実施形態では、基板は、製造工程を通して少なくとも1回再利用される。
【0061】
上記の実施形態の多くは、ナノチューブを連続的に合成するとして記載されているが、本明細書に記載の方法及び装置を不連続に使用できることを当業者は認識するであろう。
【0062】
図7は、代表的な分離モジュールを概略的に示す。触媒モジュール(図示せず)及びカーボンナノチューブ堆積モジュール(図示せず)によって処理されており、カーボンナノチューブで覆われている基板701は、ドラム704によって工具700まで進められ、そこでカーボンナノチューブ702が除去されて、カーボンナノチューブがない基板703が得られる。幾つかの実施形態では、工具700は、切断ブレードである。基板703は、ドラム705によって収集される。カーボンナノチューブ702は、容器706内に収集される。図示されるように、基板701は、一方の側のみがカーボンナノチューブで被覆される。ナノチューブは、基板の両側上で成長させることができ、前述の方法と類似の方法において、両側が被覆された基板を処理できることを当業者は認識するであろう。
【0063】
図8は、触媒を含む複数の基板801を含むナノチューブ合成モジュールで使用できる代表的な長方形の石英チャンバー800の平面図を示す。図9は、触媒を含む複数の基板901を含むナノチューブ合成モジュールで使用できる代表的な長方形の石英チャンバー900の斜視図を示す。石英チャンバーは、キャリアガス及び炭素供給材料のためのシャワーヘッド(図示せず)を含み、CNTの形成に十分な温度に加熱される。幾つかの実施形態では、チャンバーは、0.2インチ超の内部チャンバー厚さを有する。別の実施形態では、基板を超えるものがチャンバーによって同時に処理される。
【0064】
CNTは、例えば、ラマン分光法、UV、可視、近赤外分光法、蛍光及びX線光電子分光法、熱重量分析、原子間力顕微鏡法、走査トンネル顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法並びにトンネル電子顕微鏡法などの複数の技術によって特性決定を行うことができる。上記のすべてではないとしても多くを組み合わせたものは、カーボンナノチューブの十分な特性決定に十分となる。
【0065】
CNTの用途の幾つかの例としては、より強く、より軽量の防弾チョッキを得るためのCNTと金属又は金属合金との混合、種々の産業において多くの応用範囲を有する熱伝導性及び又は導電性のプラスチック及び又はポリマーを得るためのCNTとプラスチック及び又はポリマーとの混合、タイヤのタイヤ寿命を増加させるためのタイヤへのCNTの添加、材料の機械的亀裂を防止するか若しくは最小限にするより高い性能及び耐久性(例えば、優れた耐摩耗特性、改善された機械的強度など)の複合材料を得るためのCNTとアスファルト、コンクリート、金属、プラスチック又はそれらの組み合わせとの混合並びに被覆及び/又は潤滑された装置及び構造の寿命を増加させるためのCNTと被覆材料及び潤滑剤との混合が挙げられる。さらに、CNTは、機械的用途、建築材料、リチウムイオン電池、潤滑剤用添加剤、マイクロエレクトロニクス、スーパーキャパシタ、電界コンデンサ、太陽電池、センサー、布地、タッチスクリーンディスプレイ、導線、種々の医療用途(例えば、薬物送達、人工移植片、防腐剤、ナノプローブ、癌治療、遺伝子導入、生体撮像バイオセンサーなど)において且つインクとして使用することができる。
【0066】
CNTの品質、特に純度及び例えばCNTの長さなどの構造均一性は、高性能で優れた品質のCNT含有製品を一貫して提供するための製造の規則性のために重要である。CNTを利用し、且つ潜在的商業化を最大化させるために優れた品質でコストが低下したCNTを必要とする、例えば医薬用途及び生物学的用途などの多くの他の使用である。
【0067】
幾つかの実施形態では、CNTは、約1.20未満のI/I比を有する。別の実施形態では、CNTは、約1.10未満のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約1.20未満のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約1.00未満のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約0.90未満のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約0.85未満のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.76~約0.54のI/I比を有する。
【0068】
幾つかの実施形態では、CNTは、約1.20未満且つ約0.76超のI/I比を有する。別の実施形態では、CNTは、約1.10未満且で約0.76超のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約1.00未満且つ約0.76超のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約0.90未満且つ約0.76超のI/I比を有する。さらに別の実施形態では、CNTは、約0.85未満且つ約0.76超のI/I比を有する。
【0069】
幾つかの実施形態では、CNTは、約700℃超の変曲点及び約600℃超の開始点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約710℃超の変曲点及び約610℃超の開始点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約720℃超の変曲点及び約620℃超の開始点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約730℃超の変曲点及び約640℃超の開始点を有する。幾つかの実施形態ではCNTは、約740℃超の変曲点及び約650℃超の開始点を有する。上記の実施形態の幾つかでは、開始点は、約800℃未満である。
【0070】
一般に、限定するものではないが、酸酸化(例えば、Kosynkin et al.,Nature,2009,458,872;Higginbotham et al.,ACS Nano,210,4,2596;Cataldo et al.,Carbon,2010,48,2596;Kang et al.,J.Mater.Chem.,2012,22,16283;及びDhakate et al.,Carbon 2011,49,4170)、プラズマエッチング(例えば、Jiao et al.,Nature,2009,458,877;Mohammadi et al.,Carbon,2013,52,451;及びJiao et al.,Nano Res 2010,3,387)、イオンインターカレーション(例えば、Cano-Marques et al.,Nano Lett.2010,10,366)、金属粒子触媒反応(例えば、Elias et al.,Nano Lett.Nano Lett.,2010,10,366;及びParashar et.al.,Nanaoscale,2011,3,3876)、水素化(Talyzin et al.,ACS Nano,2011,5,5132)及び音化学(Xie et al.,J.Am.Chem.Soc.2011,DOI:10.1021/ja203860)などの従来技術において、周知の従来方法によってCNTからグラフェンナノリボンを調製することができる。上記の方法のいずれかを用いて、本明細書に記載のCNTからグラフェンナノリボンを調製することができる。ここで、図14を参照すると、この電子顕微鏡写真は、本明細書に記載の方法によって製造されたグラフェンナノリボンが高純度であることを示している。
【0071】
幾つかの実施形態では、グラフェンナノリボンの均一な長さは、平均で約10μm、約20μm、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである。別の実施形態では、均一な長さは、約30μm~約2cmの範囲であり得る。一般に、均一な長さは、記載の長さの約±10%である。したがって、約100μmの均一な長さを有する試料は、約90μm~約110μmの長さのGNRを含むことになる。
【0072】
幾つかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、平均で約10μm、約20μm、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さのカーボンナノチューブから製造される。
【0073】
幾つかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、約90%超、約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度である。別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約90%超、約95%超、99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度であり、約10μm、約20μm、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さである。
【0074】
幾つかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.20未満のI2d/I比を有する。別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.10未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.20未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.00未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.90未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.80未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.70未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.60未満のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.60~約0.54のI2d/I比を有する。
【0075】
幾つかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.20未満且つ約0.60超のI2d/I比を有する。別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.10未満且つ約0.60超のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.00未満且つ約0.60超のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.90未満且つ約0.60超のI2d/I比を有する。さらに別の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.85未満且つ約0.60超のI2d/I比を有する。
【0076】
幾つかの実施形態では、CNTは、約650℃超の変曲点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約660℃超の変曲点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約670℃超の変曲点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約680℃超の変曲点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約690℃超の変曲点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約700℃超の変曲点を有する。幾つかの実施形態では、CNTは、約710℃超の変曲点を有する。上記の実施形態の幾つかでは、開始点は、800℃未満である。
【0077】
幾つかの実施形態では、均一な長さ及び約90%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜が提供される。別の実施形態では、均一な長さ及び約99%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜が提供される。透明導電膜は、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さ及び約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0078】
幾つかの実施形態では、透明導電膜は、約10層以下未満、又は約5層以下、又は約1層以下未満の厚さのグラフェンナノリボンを含む。別の実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて、約80%超、85%超、90%超又は95%超の光透過性を有する。さらに別の実施形態では、透明導電膜は、約1000Ω/□未満、約100Ω/□未満又は約50Ω/□未満のシート抵抗を有する。さらに別の実施形態では、透明導電膜は、約25nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約5nm未満又は約1nm未満の表面粗さを有する。
【0079】
幾つかの実施形態では、透明導電膜は、硝酸、塩化鉄、塩化金及びアンモニアガスでドープされる。別の実施形態では、請求項1の透明導電膜は、Au又はAgのナノワイヤであり得るナノワイヤを含む。さらに別の実施形態では、透明導電膜は、ナノワイヤを封入する。
【0080】
幾つかの実施形態では、透明導電膜は、単層カーボンナノチューブ及び/又は二層カーボンナノチューブをさらに含む。別の実施形態では、透明導電膜は、ナノワイヤをさらに含み得る。
【0081】
幾つかの実施形態では、約30μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さであり、約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜を含むデバイスが提供される。別の実施形態では、デバイスは、太陽電池、テレビ、ディスプレイ、タッチスクリーン、スマートフォン又はスマートウィンドウである。
【0082】
幾つかの実施形態では、約30μm、50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さであり、約95%超、約99%超、約99.5%超又は約99.9%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜で被覆されたガラス基板が提供される。別の実施形態では、約50μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さであり、約95%、約99%、約99.5%又は約99.9%超の純度のグラフェンナノリボンを含む透明導電膜で被覆されたプラスチック基板が提供される。
【0083】
グラフェンナノリボンの純度及び例えば長さなどの構造均一性は、グラフェンナノリボンを含む高性能及び優れた品質の透明導電膜を一貫して提供するための製造の規則性のために重要である。最後に、本発明の別の実施方法が存在することに留意すべきである。したがって、これらの実施形態は、説明的であり、非限定的なものとして見なすべきであり、本発明は、本明細書に示される詳細に限定されるべきではなく、添付の請求項の範囲及び同等物の範囲内で修正することができる。
【0084】
本明細書で引用されるすべての刊行物及び特許は、それらの全体が参照として組み入れられている。
【0085】
以下の実施例は、単に説明を目的として提供され、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【実施例
【0086】
実施例1:多層CNTの熱重量分析
CNTの炭素純度及び熱安定性について、熱重量分析器(TGA)、TA instruments、Q500を用いて試験した。試料を空気雰囲気下(Praxair AI NDK)において10℃/分の速度で温度から900℃まで加熱し、900℃で10分間維持した後に冷却した。炭素純度は、(全炭素質材料の重量)/(全炭素質材料の重量+触媒の重量)として定義される。変曲点は、熱分解がその最大値に到達する温度である。開始点は、高温のために材料の約10%が分解する温度である。図10は、本明細書に記載の方法及び装置によって製造された多層カーボンナノチューブの熱安定性データを示す。本明細書において製造された多層カーボンナノチューブは、約5nmの内径を有し、5~8つの壁を有し、10μm~200μmのカスタマイズ可能な長さを有する。400℃未満の領域では、耐熱性が低い非晶質炭素及び炭素質材料が分解した。グラフから分かるように、本明細書に記載の方法及び装置によって製造された多層カーボンナノチューブ中には、非晶質炭素及び炭素質材料がほとんど存在しない。変曲点は、721℃であり、開始点は、644℃であり、炭素純度は、99.4%超である。対照的に、市販のCNT(図示せず)では、変曲点は、643℃であり、開始点は、583℃であり、炭素純度は、90%である。
【0087】
実施例2:多層CNTのラマン分析
10mgのCNTを約100mLのメタノール中に懸濁させて、黒みがかった溶液を形成した。ラマンスペクトルのためにCNTの薄層が必要であるため、得られた懸濁液を次に約10分間音波処理して、懸濁液中にCNTを均一に分散させた。次に、懸濁液をSi基板上に広げて薄層を形成した。被覆されたSi基板を次に130℃のオーブン中に10分間入れて、試料から分散剤を蒸発させた。次に、Thermos Nicolet Dispersive XR Raman Microscopeを用いて、532nmのレーザー放射線、50sの積分、10×の対物レンズ及び24mWのレーザーを用いて、ラマンスペクトルを記録した。CNTの構造的完全性を検証する診断用手段としてDバンド及びGバンドの強度の比が使用されることが多い。
【0088】
図11は、本明細書に記載の方法及び装置によって製造された多層カーボンナノチューブのラマンスペクトル(実線)及び市販のCNTのラマンスペクトル(破線)を示す。本明細書に記載の方法及び装置によって製造された多層カーボンナノチューブのI/I比及びI/IG’比は、それぞれ0.76及び0.44であり、市販のCNTの同じ比は、それぞれ1.27及び0.4である。以上のことは、本明細書に記載の方法及び装置によって製造された多層カーボンナノチューブが、別の方法によって製造されたものよりも結晶性が高いことを示しており、熱安定性データと合致している。
【0089】
実施例3:多層GNRの熱重量分析
CNTの炭素純度及び熱安定性について、熱重量分析器(TGA)、TA instruments、Q500を用いて試験した。試料を空気雰囲気下(Praxair AI NDK)において10℃/分の速度で温度から900℃まで加熱し、900℃で10分間維持した後に冷却した。炭素純度は、(全炭素質材料の重量)/(全炭素質材料の重量+触媒の重量)として定義される。変曲点は、熱分解がその最大値に到達する温度である。開始点は、高温のために材料の約10%が分解する温度である。図13は、本明細書に記載の方法によって製造されたGNRの熱安定性データを示す。製造されたGNRは、10μm~200μmのカスタマイズ可能な長さを有する。400℃未満の領域では、耐熱性が低い非晶質炭素及び炭素質材料が分解した。グラフから分かるように、本明細書に記載の方法及び装置によって製造されたGNR中には、非晶質炭素及び炭素質材料がほとんど存在しない。変曲点は、690℃であり、炭素純度は、99.4%超である。
【0090】
実施例4:GNRのラマン分析
10mgのCNTを約100mLのメタノール中に懸濁させて、黒みがかった溶液を形成した。ラマンスペクトルのためにCNTの薄層が必要であるため、得られた懸濁液を次に約10分間音波処理して、懸濁液中にCNTを均一に分散させた。次に、懸濁液をSi基板上に広げて薄層を形成した。被覆されたSi基板を次に130℃のオーブン中に10分間入れて、試料から分散剤を蒸発させた。次に、Thermos Nicolet Dispersive XR Raman Microscopeを用いて、532nmのレーザー放射線、50sの積分、10×の対物レンズ及び24mWのレーザーを用いて、図に示されるようなラマンスペクトルを記録した。CNTの構造的完全性を検証する診断用手段としてDバンド及びGバンドの強度の比が使用されることが多い。
【0091】
図12は、本明細書に記載の方法によって製造されたGNRのラマンスペクトル(実線)を示す。本明細書に記載の方法によって製造されたGNRのI2D/I及びI/Iは、それぞれ0.6及び0.75であり、これは、標準的なグラフェンのシグネチャーを示しており、化学的アンジッピングプロセスによる欠陥が最小限であることを示している。

図1
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【国際調査報告】