IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャンハイ シャンシャン テック カンパニー,リミティドの特許一覧

特表2022-518310シリコン系負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池
<>
  • 特表-シリコン系負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池 図1
  • 特表-シリコン系負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】シリコン系負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20220308BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20220308BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020573437
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 CN2019129888
(87)【国際公開番号】W WO2021134197
(87)【国際公開日】2021-07-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520510335
【氏名又は名称】シャンハイ シャンシャン テック カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】リウ トントン
(72)【発明者】
【氏名】マー フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー ユイフー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ リャンチン
(72)【発明者】
【氏名】ウー チーホン
(72)【発明者】
【氏名】ティン シアオヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー フォンフォン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB11
5H050EA07
5H050EA08
5H050EA09
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA15
5H050GA22
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、シリコン系負極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池を提供する。前記シリコン系負極材料はシリコン基材、無定形炭素の塗布層、及び黒鉛化炭素の塗布層を含み、ここで、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接塗布される。前記シリコン系負極材料及びその製造方法は、シリコン系負極材料のサイクル能力を向上させ、かつ、プロセスが簡単であり、大規模な工業生産に適している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非酸化性雰囲気で、炭素源物質を予備分解領域を通過させて分解生成物を形成する工程;及び、
シリコン基材と前記分解生成物が蒸着塗布領域で蒸着塗布反応を発生するように、蒸着塗布領域の反応チャンバーに進入する前記分解生成物の速度V、及び分解生成物のモル流速とシリコン基材の質量比Mc/Mを調整して、前記シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成し、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接塗布する工程;
を含み、
ここで、前記炭素源物質は、ガス状炭素源物質、気化した炭素源物質又は霧化した炭素源物質の中の1つ以上を含み、0.01≦V≦100、0.001≦Mc/M≦1、Vの単位はm/minであり、Mの単位はmol/minであり、炭素原子で、Mはシリコン基材の質量であり、単位はkgである、
シリコン系負極材料の製造方法。
【請求項2】
第1の条件:10≦V≦100、0.001≦Mc/M<0.1の場合、シリコン基材の表面に黒鉛化炭素の塗布層を形成し、第2の条件:0.01≦V≦5、0.2<Mc/M≦1の場合、シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層を形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項3】
前記VとMc/Mの値を第1の条件と第2の条件の間で交互に切り替えるように調整して、前記シリコン基材の表面に交互に塗布される無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成することを特徴とする請求項2に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項4】
前記ガス状炭素源物質は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレンを含み、前記気化した炭素源物質は、n-ヘキサン、エタノール、ベンゼンを含み、前記霧化した炭素源物質は、ポリエチレン、ポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項5】
前記蒸着塗布反応が発生する過程で、N含有物質を通過させることも可能であり、前記N含有物質は、NH、アセトニトリル、アニリン、及びブチルアミンの中の1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項6】
前記非酸化性雰囲気は、水素、窒素、及び不活性ガスの中のいずれか1つ又は複数を含む反応環境であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項7】
前記炭素源物質の予備分解の温度範囲は、500℃~1500℃であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項8】
前記蒸着塗布反応を発生する温度は、500℃~1100℃であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項9】
前記炭素源物質の予備分解の温度範囲は、700℃~1300℃であり、前記蒸着塗布反応を発生する温度は、650℃~1000℃であることを特徴とする請求項7又は8に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項10】
前記シリコン基材は、冶金シリコン、ケイ素の酸化物SiOx(0≦x≦1.5)、多孔質シリコンの中の1つ又は複数の混合物を含み、前記シリコン基材の中央径の範囲は1μm~20μmであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項11】
前記シリコン基材は、一般式MSiOyで示される化合物をさらに含み、ここで、0.85<y≦3.5で;Mは、Li、Na、Mg、Al、Fe、Caの中のいずれか1つ又は複数であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン系負極材料の製造方法。
【請求項12】
シリコン基材、無定形炭素の塗布層、及び黒鉛化炭素の塗布層を含むシリコン系負極材料であって、
ここで、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接塗布されるシリコン系負極材料。
【請求項13】
前記無定形炭素の塗布層のラマンスペクトルはId/Ig>0.7であり、前記黒鉛化炭素の塗布層のラマンスペクトルはId/Ig<0.5であることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項14】
空気雰囲気で加熱し、前記無定形炭素の塗布層の酸化開始温度は≦400℃であり、黒鉛化炭素の塗布層の酸化開始温度は≧450℃であることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項15】
前記無定形炭素の塗布層には窒素原子がドープされ、前記黒鉛化炭素の塗布層には窒素原子がドープされることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項16】
前記シリコン基材の表面は、1つ以上の前記無定形炭素の塗布層と、1つ以上の前記黒鉛化炭素の塗布層を含み、前記1つ以上の無定形炭素の塗布層と前記1つ以上の黒鉛化炭素の塗布層は交互に配置されていることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項17】
前記無定形炭素の塗布層の各層の厚さの範囲は1nm~20nmであり、前記黒鉛化炭素の塗布層の各層の厚さの範囲は1nm~20nmであることを特徴とする請求項16に記載のシリコン系負極材料。
【請求項18】
前記シリコン基材の表面の前記無定形炭素の塗布層と前記黒鉛化炭素の塗布層の厚さの合計は、1nm~1000nmであることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項19】
前記シリコン系負極材料に対する前記無定形炭素の塗布層の質量百分比含有量は1~10%であり、前記シリコン系負極材料に対する前記黒鉛化炭素の塗布層の質量百分比含有量は1~10%であることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項20】
前記シリコン基材は、冶金シリコン、ケイ素の酸化物SiOx(0≦x≦1.5)、多孔質シリコンの中の1つ又は複数の混合物を含み、前記シリコン基材の粒子の中央径の範囲は1μm~20μmであることを特徴とする請求項12に記載のシリコン系負極材料。
【請求項21】
前記シリコン基材は、一般式MSiOyで示される化合物をさらに含み、ここで、0.85<y≦3.5で;Mは、Li、Na、Mg、Al、Fe、Caの中のいずかの1つ又は複数であることを特徴とする請求項13に記載のシリコン系負極材料。
【請求項22】
負極は、請求項12~21のいずれか一項に記載のシリコン系負極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の分野に関し、具体的に、シリコン系負極材料及びその製造方法、ならびに当該方法によって製造されたリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々がリチウムイオン電池のエネルギー密度に対する要望が高くなっているため、より高い容量の負極材料が必要になった。現在、酸化ケイ素負極はパワー電池に使用され始めており、急速な成長傾向を示している。
【0003】
酸化ケイ素材料は導電性が悪いため、粒子表面に導電性材料層を塗布する必要があり、現在、カーボン塗布が最も広く使用されている。カーボン塗布は導電性を向上させるだけでなく、リチウム挿入後の酸化ケイ素粒子の体積膨張に一定の抑制効果がある。
【0004】
現在、酸化ケイ素粒子のカーボン塗布には、主に液体塗布法と蒸気塗布法の2つの方法がある。酸化ケイ素粒子のサイズが小さく、表面の原子価結合の極性が高いため、液体塗布法は粒子の分散と塗布の均一性に大きな問題があり、大量生産を達成することは困難である。一方、化学蒸着(CVD)法は、塗布が均一で粒子付着が少ない複合粒子を簡便に製造できるため、現在の主流技術はCVD製造である。すなわち、原料を回転炉やロータリーキルンなどの装置に入れて700~1050℃に設定し、炭素含有ガスまたは水蒸気を直接通過させ、同じ反応チャンバー内での熱分解と縮合重合などの反応により酸化ケイ素粒子の表面に連続した炭素層を形成させる。
【0005】
高温でのSiOの不均化反応により、従来のCVD塗布法の温度は一般的に1000℃未満で、粒子の表面に堆積できるのは無定形炭素の層のみで、炭素層はルーズンでおり、塗布層が粒子への拘束能力は比較的に小さい。リチウムが放出されるとき、酸化ケイ素粒子の体積変化は大きく、塗布層が非常に割れやすくなるため、新しいSEI膜が形成され、SEI膜が厚くなるにつれて、リチウム電池のガス発生が深刻になり、サイクルが悪くなるなどの結果を招く。塗布層の構造がルーズンであるため、負極活物質は脱リチウム後、活性を失いやすい、すなわち、電気的接触が悪くなすため、効果的な導電ネットワークが形成されず、電気化学的活性が失われるため、リチウム電池の容量が急速に減衰する。塗布の量を増やすことで、リチウムインターカレーションの体積変化による塗布層の亀裂を緩和できるが、塗布の含有量が高すぎると、低い容量と低い初期のクーロン効率をもたらし、さらにこの材料で製造されたリチウムイオン電池のエネルギー密度を低下させる。
【0006】
したがって、新たなシリコン系負極材料及びその製造方法を提供することが要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願によって解決されるべき技術的問題は、従来のシリコン系負極材料に含まれている無定形炭素の塗布層構造が割れやすく、電池の性能に影響を与えるという欠陥に対して、新規なシリコン系負極材料及びその製造方法を提供し、並びに当該シリコン系負極材料を含むリチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一側面は、非酸化性雰囲気で、炭素源物質を予備分解領域に通過させて分解生成物を形成させ、ここで、前記炭素源物質は、ガス状炭素源物質、気化した炭素源物質又は霧化した炭素源物質の中の1つ以上を含み;及びシリコン基材と前記分解生成物が蒸着塗布領域で蒸着塗布反応を発生するように、蒸着塗布領域の反応チャンバーに進入る前記分解生成物の速度V、及び分解生成物のモル流速とシリコン基材の質量比Mc/Mを調整し、前記シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成し、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接的に塗布されており、ここで、0.01≦V≦100であり、0.001≦Mc/M≦1であり、Vの単位はm/minであり、Mcの単位はmol/minであり、炭素原子で計算し、Mはシリコン基材の質量であり、単位はkgであるシリコン系負極材料の製造方法を提供する。
【0009】
本出願の一部の実施例において、第1の条件:10≦V≦100であり、0.001≦Mc/M<0.1である場合、シリコン基材の表面に黒鉛化炭素の塗布層を形成し、第2の条件:0.01≦V≦5であり、0.2<Mc/M≦1である場合、シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層を形成する。
【0010】
本出願の一部の実施例において、第1の条件と第2の条件の間で交互に切り替えるように前記VとMc/Mの値を調整して、前記シリコン基材の表面に交互に塗布された無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成させる。
【0011】
本出願の一部の実施例において、前記ガス状炭素源物質は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレンを含み、前記気化した炭素源物質は、n-ヘキサン、エタノール、ベンゼンを含み、前記霧化した炭素源物質は、ポリエチレン、ポリプロピレンを含む。
【0012】
本出願の一部の実施例において、前記蒸着塗布反応が発生する過程において、N含有物質を通過させることも可能で、前記N含有物質は、NH、アセトニトリル、アニリン、またはブチルアミンの中の1つ又は複数を含む。
【0013】
本出願の一部の実施例において、前記非酸化性雰囲気は、水素、窒素、または不活性ガスの中のいずれか1つ又は複数の反応環境を含む。
【0014】
本出願の一部の実施例において、前記炭素源物質の予備分解の温度範囲は、500℃~1500℃である。
【0015】
本発明の一部の実施例において、前記蒸着塗布反応を発生する温度は、500℃~1100℃である。
【0016】
本出願の一部の実施例において、前記炭素源物質の予備分解の温度範囲は、700℃~1300℃であり、前記蒸着塗布反応を発生する温度は、650℃~1000℃である。
【0017】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、冶金シリコン、ケイ素の酸化物SiOx(0≦x≦1.5)、多孔質シリコンの中の1つ又は複数の混合物を含み、前記シリコン基材の中央径の範囲は1μm~20μmである。
【0018】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、一般式MSiOyで示される化合物をさらに含み、ここで、0.85<y≦3.5であり;Mは、Li、Na、Mg、Al、Fe、Caの中のいずれか1つ又は複数である。
【0019】
また、本出願は、シリコン基材、無定形炭素の塗布層、及び黒鉛化炭素の塗布層を含み、ここで、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接的に塗布されているシリコン系負極材料を提供する。
【0020】
本出願の一部の実施例において、前記無定形炭素の塗布層のラマンスペクトルはId/Ig>0.7であり、前記黒鉛化炭素の塗布層のラマンスペクトルはId/Ig<0.5である。
【0021】
本出願の一部の実施例において、空気雰囲気下で加熱し、前記無定形炭素の塗布層の酸化開始温度は≦400℃であり、黒鉛化炭素の塗布層の酸化開始温度は≧450℃である。
【0022】
本出願の一部の実施例において、前記無定形炭素の塗布層は窒素原子がドープされ、前記黒鉛化炭素の塗布層は窒素原子がドープされる。
【0023】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材の表面は、1つ以上の前記無定形炭素の塗布層と、1つ以上の前記黒鉛化炭素の塗布層を含み、前記1つ以上の無定形炭素の塗布層と前記1つ以上の黒鉛化炭素の塗布層は交互に配置される。
【0024】
本出願の一部の実施例において、前記無定形炭素の塗布層の各層の厚さの範囲は1nm~20nmであり、前記黒鉛化炭素の塗布層の各層の厚さの範囲は1nm~20nmである。
【0025】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材の表面の前記無定形炭素の塗布層と前記黒鉛化炭素の塗布層の厚さの合計は、1nm~1000nmである。
【0026】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン系負極材料に対する前記無定形炭素の塗布層の質量百分比含有量は1~10%であり、前記シリコン系負極材料に対する前記黒鉛化炭素の塗布層の質量百分比含有量は1~10%である。
【0027】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、冶金シリコン、ケイ素の酸化物SiOx(0≦x≦1.5)、多孔質シリコンの中の1つ又は複数の混合物を含み、前記シリコン基材の中央径の範囲は1μm~20μmである。
【0028】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、一般式MSiOyで示される化合物をさらに含み、ここで、0.85<y≦3.5であり;Mは、Li、Na、Mg、Al、Fe、Caの中のいずかの1つ又は複数である。
【0029】
本出願はリチウムイオン電池をさらに提供し、前記リチウムイオン電池の負極は、上記シリコン系負極材料を含む。
【0030】
本出願の実施例に記載のシリコン系負極材料は、シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成させることで、前記シリコン系負極材料の充放電サイクル能力を向上させ、さらに二次電池の寿命を向上させる。
【0031】
また、本出願の実施例は、さらに前記シリコン系負極材料の製造方法を提供し、前記製造方法は、全体の製造プロセスの操作が簡単で、工業生産に非常に適している。
【0032】
本出願の他の特徴については、以下の説明で部分的に説明する。この説明により、以下の図面及び実施例に記載の内容は、当業者にとって明らかになる。本出願の発明のポイントは実践または以下に記載の詳しい実施例で述べた方法、手段、及びそれらの組み合わせによって、十分に説明され得る。
以下の図面は、本願明細書に開示されている例示的な実施例を詳細に説明する。ここで、同じ符号は、いくつかの図において同様の構造を示す。これらの実施例は非限定的で例示的な実施例であることは、当業者にとっては理解できるはずであり、図面は、説明及び記載のみを目的としており、本開示の範囲を限定するものではなく、他の実施例も同様に本出願の発明の意図を達成することができる。図面は比例して描かれていないことは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の実施例によって提供されるシリコン系負極材料のSEM画像である。
図2図2は、本発明の実施例によって提供されるシリコン系負極材料における無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は、本出願の特定の応用場合及び要件を提供しており、当業者が本出願の内容を製造及び使用できるようにすることを目的とする。当業者にとっては、開示された実施例の様々な部分的な修正は明らかであり、本開示の要旨及び範囲から逸脱しない限り、ここで定義された一般的な原理を他の実施例及び応用に適用することができる。したがって、本開示は、例示された実施例に限定されず、特許請求の範囲と一致する最も広い範囲に限定される。
【0035】
以下、実施例及び図面を合わせ、本発明の技術的手段を詳細に説明する。
【0036】
本出願の一側面は、シリコン系負極材料を提供し、前記シリコン系負極材料は、主にリチウムイオン電池に使用される。前記シリコン系負極材料は、シリコン基材、無定形炭素の塗布層、及び黒鉛化炭素の塗布層を含み、ここで、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接塗布される。
【0037】
即ち、前記シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層が形成されている。本出願の一部の実施例において、前記無定形炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接塗布され、前記黒鉛化炭素の塗布層は、次いで、前記無定形炭素の塗布層の表面に塗布される。本出願のもう一つの実施例において、前記黒鉛化炭素の塗布層は、次いで、前記シリコン基材の表面に直接塗布され、前記無定形炭素の塗布層は黒鉛化炭素塗布の表面に塗布されている。本発明の実施例に記載の「塗布」は、部分的な塗布でも完全な塗布であってもよく、前記シリコン系負極材料の製造方法の相違により、前記「塗布」の程度も異なる。
【0038】
例えば、前記シリコン基材の表面の無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の塗布厚さの合計は500nmであり、ここで、厚さの合計が400nmである無定形炭素の塗布層は前記シリコン基材の表面に塗布され(前記厚さの合計が400nmである無定形炭素の塗布層は、厚さが1nm~20nmである単層の無定形炭素の塗布層をいくつか含むことができる)、厚さの合計が100nmである黒鉛化炭素の塗布層は前記無定形炭素の塗布層の表面に塗布され(厚さの合計が100nmである黒鉛化炭素の塗布層は、厚さが1nm~20nmである単層の黒鉛化炭素の塗布層をいくつか含むことができる)、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層の塗布度は比較的高く、完全塗布に近い。本発明の実施例において、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層の厚さが約5nmに達した場合、完全塗布の構造を形成していると考えられる。
【0039】
また、例えば、前記シリコン基材の表面の無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の塗布厚さの合計は30nmであり、ここで、前記シリコン基材の表面に、順次に5nmの黒鉛化炭素の塗布層、3nmの無定形炭素の塗布層、4nmの黒鉛化炭素の塗布層、2nmの無定形炭素の塗布層、10nmの黒鉛化炭素の塗布層、6nmの無定形炭素の塗布層が塗布されている。
【0040】
以上の実施例では、前記シリコン基材の表面は、1つ以上の前記無定形炭素の塗布層と、1つ以上の前記黒鉛化炭素の塗布層を含み、且つ前記1つ以上の前記無定形炭素の塗布層と前記1つ以上の前記黒鉛化炭素の塗布層は交互に配置されている。前記無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層が交互に配置された構造では、前記無定形炭素の塗布層又は前記黒鉛化炭素の塗布層のいずれも、前記シリコン基材の表面に直接塗布されることができる。
【0041】
前記無定形炭素の塗布層が、ルーズ無定形炭素構造であるため、シリコン基材のリチウム挿入による膨張を緩衝できるのに対して、黒鉛化炭素の塗布層は、グラファイト化度の高い結晶型カーボン構造であるため、シリコン基材のリチウム挿入による膨張に一定の抑制効果があり、リチウム放出過程でのシリコン基材中の塗布層の割れや活性物質の失活を防止でき、したがって、前記無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層が交互に配置された構造は、前記シリコン系負極材料の充放電性能をより適切に制御し、電池のサイクル寿命を向上させることができる。
【0042】
本出願の一部の実施例において、前記無定形炭素の塗布層の各層の厚さ範囲は1nm~20nmであり、前記黒鉛化炭素の塗布層の各層の厚さ範囲は1nm~20nmである。前記シリコン基材の表面の前記無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の厚さの合計は2nm~1000nmである。例えば、前記シリコン基材の表面の前記無定形炭素の塗布層と前記黒鉛化炭素の塗布層の厚さの合計が300nmである場合、前記シリコン基材の表面に、厚さが10nmである無定形炭素の塗布層と厚さが10nmである黒鉛化炭素の塗布層が15回交互に配置される。
【0043】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン系負極材料に対する、前記無定形炭素の塗布層の質量百分比含有量は1~10%であり、前記黒鉛化炭素の塗布層の質量百分比含有量は1~10%である。前記シリコン系負極材料における前記無定形炭素の塗布層と前記黒鉛化炭素の塗布層の合計の質量百分比は2~20%である。前記シリコン系負極材料の最外層が無定形炭素の塗布層である場合、前記シリコン系負極材料の比表面積は一般的に高く(1~20m/g)、前記シリコン系負極材料の最外層が層状黒鉛化炭素の塗布層である場合、前記シリコン系負極材料の比表面積は一般的に低い(0.1~15m/g)。
【0044】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン系負極材料に対する前記無定形炭素の塗布層の質量百分比含有量は、5%、3%、8%であってもよく、前記シリコン系負極材料に対する前記黒鉛化炭素の塗布層の質量百分比含有量は、4%、6%、9%であってもよく、また、5%、3%、8%あってもよい。即ち、前記シリコン系負極材料において、前記無定形炭素の塗布層と前記黒鉛化炭素の塗布層との質量百分比含有量は同じであっても異なっていてもよい。
【0045】
本出願の実施例において、ラマン分光法により、前記無定形炭素の塗布層のラマンスペクトルはId/Ig>0.7であり、前記黒鉛化炭素の塗布層のラマンスペクトルはId/Ig<0.5である。なお、大気雰囲気での加熱試験では、前記無定形炭素の塗布層の酸化開始温度は≦400℃であり、黒鉛化炭素の塗布層の酸化開始温度は≧450℃である。前記シリコン系負極材料の構造が酸化開始温度に決定的な役割を果たすため、前記無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の酸化開始温度は、前記シリコン系負極材料の塗布層の特性を反映している。
【0046】
ラマンスペクトル中、Dピークの強さは炭素層の無秩序の度合いを表し、Gピークの強さは材料の秩序の度合いを表し、即ち、Id/Igは、炭素層のグラファイト化の度合いを有効的に表すことができる。酸化性雰囲気では、無定形炭素の酸化開始温度はより低く、黒鉛化炭素の酸化開始温度はより高い。
【0047】
本出願の一部の実施例において、前記無定形炭素の塗布層はまた、窒素原子がドープされてもよい。前記黒鉛化炭素の塗布層は、窒素原子がドープされてもよい。前記窒素原子はNを含有する物質、例えば、NH、アセトニトリル、アニリン、及びブチルアミンの中の1つ又は複数からなってもよい。前記無定形炭素の塗布層及び黒鉛化炭素の塗布層に窒素原子を添加することで、シリコン系負極材料の充放電能力をさらに向上させることができ、これは、窒素をドープすると材料の導電率をさらに向上させることができ、これにより、電池の内部抵抗を減らし、電池の高電流充放電能力を確保できるからである。
【0048】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、冶金シリコン、ケイ素酸化物SiOx(0≦x≦1.5)、多孔質シリコンの中の1つ又は複数の混合物を含み、前記シリコン基材の中央径の範囲は1μm~20μmである。本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、一般式MSiOyで示される化合物をさらに含み、ここで、0.85<y≦3.5であり;Mは、Li、Na、Mg、Al、Fe、Caの中のいずれかの1つ又は複数である。
【0049】
本出願の実施例で説明するシリコン系負極材料は、シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成することにより、シリコン系負極材料の充放電サイクル能力を向上させ、二次電池の寿命をさらに向上させる。
【0050】
また、本出願の実施例は、さらに全体の製造プロセスの操作が簡単で工業生産に非常に適している前記シリコン系負極材料の製造方法を提供する。
【0051】
本発明の実施例は、非酸化性雰囲気で、炭素源物質を予備分解領域に通過させて分解生成物を形成し、ここで、前記炭素源物質は、ガス状炭素源物質、気化した炭素源物質又は霧化した炭素源物質の中の1つ以上を含む工程と、シリコン基材と前記分解生成物が蒸着塗布領域で蒸着塗布反応を発生するように、蒸着塗布領域の反応チャンバーに進入する前記分解生成物の流速V、及び分解生成物のモル流速とシリコン基材の質量比Mc/Mを調整して、前記シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成し、前記無定形炭素の塗布層又は黒鉛化炭素の塗布層は、シリコン基材の表面に直接塗布する工程を含み、ここで、0.01≦V≦100であり、0.001≦Mc/M≦1であり、Vの単位はm/minであり、Mcの単位はmol/minであり、炭素原子で計算し、Mはシリコン基材の質量であり、単位はkgである工程を含む、シリコン系負極材料の製造方法を提供する
【0052】
前記シリコン系負極材料の製造は、回転炉やロータリーキルンなどの塗布装置を使用して均一な塗布の目的を達成することができる。前記塗布装置は、予備分解領域及び蒸着塗布領域を含むように構成されることができ、前記予備分解領域及び蒸着塗布領域は、いずれも反応チャンバを含む。ここで、前記予備分解領域は、炭素源物質を予備分解するために使用される。例えば、前記炭素源物質を、前記塗布装置の予備分解領域に通過させ、非酸化性雰囲気中で、前記炭素源物質は、熱分解、分解、重縮合などの反応を経て、ガス状物質になる。ここで、前記炭素源物質中の低分子物質は、熱分解、重縮合、付加などの反応を経て、中高分子量物質になり、高分子物質から中小分子物質への分解も、同様に、熱分解、重縮合、及び付加などの反応を伴う。
【0053】
前記非酸化性雰囲気を提供するガスは、例えば、水素、窒素、または不活性ガスのいずれか1つ又は複数を含み、前記予備分解領域での反応のための保護ガス、キャリアガス、及び希釈ガスとして使用される。
【0054】
前記ガス状炭素源物質には、室温でガス状である炭化水素系及び室温でガス状であるアルデヒド系が含まれ、前記ガス状炭素源物質には、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、及びプロピレンが含まれる。
【0055】
前記気化した炭素源物質は、室温で液体であり、室温より高いが、予備分解領域の温度より低い場合、ガス状炭素質物質であり、前記気化した炭素源物質は、例えば、n-ヘキサン、エタノール、ベンゼンが含まれる。
【0056】
前記霧化した炭素源物質は、加熱によって蒸発しにくいが、アトマイズ装置を介して小さな液滴に製造することができる材料であり、例えば、温度が予備分解領域よりも低いときに液体である材料などである。前記霧化した炭素源物質には、ポリエチレン、ポリプロピレンが含まれる。
【0057】
本発明の一部の実施例において、シリコン基材と前記分解生成物が蒸着塗布領域で蒸着塗布反応を発生するように、蒸着塗布領域の反応チャンバーに進入する前記分解生成物の流速V、及び分解生成物のモル流速とシリコン基材の質量比Mc/Mを調整して、前記シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成する。ここで、0.01≦V≦100であり、0.001≦Mc/M≦1であり、Vの単位はm/minであり、Mcの単位はmol/minであり、炭素原子で計算し、Mはシリコン基材の質量であり、単位はkgである。
【0058】
第1の条件:10≦V≦100であり、0.001≦Mc/M<0.1である場合、黒鉛化炭素の塗布層がシリコン基材の表面に形成し、第2の条件:0.01≦V≦5であり、0.2<Mc/M≦1である場合、無定形炭素の塗布層がシリコン基材の表面に形成する。即ち、本発明の実施例で説明するシリコン系負極材料の製造過程では、反応物の流量や質量、反応時間を制御するだけで、形成された無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の厚さと交互塗布の配置を制御することができる。1つの塗布層の厚さが設定値に達した後、反応物の流量と質量をすばやく調製すれば、もう一つの塗布層に切り替えられる。当然なことで、実際の過程では、反応物の流速と質量を設定し速度を比較的遅く調整する場合、無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の両方を同時に含む複合塗布層が形成される場合がある。
【0059】
即ち、V(m/min)、Mc/M(Mcの単位はmol/minであり、炭素原子で計算し、Mはシリコン基材の質量であり、単位はkgである)を調整することで、塗布層の結晶構造を制御でき、無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層が得られる。同時に、反応時間と合わせて、その炭素塗布層の質量百分比含有量を制御する。
【0060】
前記シリコン基材の実行速度と反応チャンバーに進入する分解生成物の流速を調製することで、反応過程で均一で連続的な無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を得、同時に、材料の損失を最小限に抑えることができる。
【0061】
本出願の一部の実施例において、第1の条件と第2の条件とを交互に切り替えるように、前記V及びMc/Mの値を調整して、前記シリコン基材の表面に交互に塗布された無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素塗布を層を形成する。前記無定形炭素の塗布層が、ルーズ無定形炭素構造であるため、シリコン基材のリチウム挿入による膨張を緩衝できるのに対して、黒鉛化炭素の塗布層は、グラファイト化度の高い結晶型カーボン構造であるため、シリコン基材のリチウム挿入による膨張に一定の抑制効果があり、リチウム放出過程でのシリコン基材中の塗布層の割れや活物質の失活を防止でき、したがって、前記無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層が交互に配置された構造は、シリコン系負極材料の充放電性能をより適切に制御し、電池のサイクル寿命を向上させることができる。
【0062】
本出願の一部の実施例において、霧化した炭素源は、予備分解領域で加熱分解された後、熱分解生成物のモル流速Mを計算し、酸化燃焼後のCO含有量を測定する方法によって測定できる。一方、ガス状及び蒸気状の炭素源については、進入したガスの分子構造に基づいて熱分解生成物のモル流速Mを直接決定する。
【0063】
本出願の一部の実施例において、前記蒸着塗布反応が発生する過程において、N含有物質をさらに通過させらせてもよく、前記N含有物質は、NH、アセトニトリル、アニリン、またはブチルアミンの1つ又は複数を含む。
【0064】
本出願の実施例において、前記予備分解炭素源物質の温度範囲を、500℃~1500℃、好ましくは700℃~1300℃に設定し、こにれよって、前記炭素源物質を予備分解領域でガス状に変化させ、かつ、急速に熱分解又は重縮合反応を発生させ、その後の塗布反応を急速に起こせることができる予備分解領域生成物を形成する。前記予備分解領域では、目的の温度に到達させるために、従来の加熱方法又はマイクロ波又は無線周波数を使用することができる。ただし、マイクロ波での加熱する方法を使用すると、C含有物質をイオン化することができるため、他の加熱方法と比較して、予備分解の温度を大幅に下げ、予備分解の効率を向上させることができる。
【0065】
本出願の一部の実施例において、前記ガス状炭素源物質が前記予備分解領域を通過した後、脱水素化、フリーラジカル付加などの反応が起こり、相対分子量が大きい、ギブスの自由エネルギーがより低い直鎖又は芳香族化合物になり、前記気化した炭素源物質は、前記予備分解領域を通過した後、脱水素(分解)、フリーラジカル付加などの反応を経て、直鎖又は芳香族化合物になり、前記霧化した炭素源物質は、前記予備分解領域を通過した後、分解、フリーラジカル付加などの反応が発生し、直鎖又は芳香族化合物になる。
【0066】
本出願の実施例において、予備分解反応後、前記予備分解領域を通過した混合ガスは分解生成物であり、前記分解生成物は、反応雰囲気中に通過させた非酸化性ガスと、予備分解した炭素源物質とを含む。本出願の一部の実施例において、予備分解した炭素源物質(ガス状)が占める前記分解生成物の体積百分率は1~70%であり、前記予備分解反応工程によって、前記シリコン系負極材料の製造方法における反応温度を制御しやすくさせ、炭素源物質の分解や付加などの反応の進行を制御するのに役立ち、塗布領域の温度への干渉が少ない。
【0067】
その後、前記分解生成物を前記塗布装置の蒸着塗布領域に通過させ、シリコン基材と前記予備分解後の炭素源物質に蒸着塗布反応を発生させ、前記シリコン基材の表面に無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を形成し、ここで、前記無定形炭素の塗布層又は前記黒鉛化炭素の塗布層は、前記シリコン基材の表面に直接塗布される。
【0068】
本出願の一部の実施例において、前記蒸着塗布反応が発生する温度は、500℃~1100℃であり、好ましくは、前記蒸着塗布反応が発生する温度は、650℃~1000℃である。ここで、前記蒸着塗布反応が発生する過程で、温度が低すぎると、前記負極材料の表面塗布層のC/H比が高すぎて、導電性が悪くなり、性能に影響を与える。なお、温度が高すぎると、シリコン基材内のシリコン酸化物の過度の不均化につながりやすく、シリコン系負極材料の容量とサイクル性能に影響を与える。
【0069】
前記シリコン基材は、冶金シリコン、ケイの素酸化物SiOx(0≦x≦1.5)、多孔質シリコン中の1つ又は複数の混合物を含み、前記シリコン基材の中央径の範囲は1μm~20μmである。本出願の一部の実施例において、前記シリコン基材は、一般式MSiOyで示す化合物をさらに含み、ここで0.85<y≦3.5であり、Mは、Li、Na、Mg、Al、Fe、及びCaの中のいずれか1つ又は複数である。
【0070】
前記蒸着塗布反応が発生する過程で、N含有物質も通過させることができ、前記N含有物質は、NH、アセトニトリル、アニリン、及びブチルアミン中の1つ又は複数を含む。前記N含有物質を通過させることにより、N原子がドープされた無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を得ることができる。前記N原子がドープされた無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層は、シリコン系負極材料の充放電能力をさらに向上させることができ、これは、前記無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層に、N原子をドープした後、材料の導電性をさらに向上させることができるため、それによって電池の内部抵抗を低減し、ひいては電池の大電流充放電能力を確保することができる。
【0071】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン系負極材料に記載の無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層の質量百分率は、例えば、0.01~99:1であり、好ましくは、前記無定形炭素の塗布層が占める割合は10~90%であり、例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%などである。
【0072】
本出願の一部の実施例において、前記シリコン系負極材料中のシリコン基材の表面は、1つ以上の前記無定形炭素の塗布層及び/又は1つ以上の前記黒鉛化炭素の塗布層を有し、さらに、前記1つ以上の無定形炭素の塗布層と1つ以上の黒鉛化炭素の塗布層は交互に配置される。
【0073】
例えば、まず流速10m/minでメタンを予備分解領域に通過させ、保護ガスとして窒素を使用し、反応温度は摂氏1000℃で、180min通過させた後停止させ、予備分解領域で続いてn-ヘキサンを流速1m/minで通過させ、続いて、保護ガスとして窒素ガスを使用し、120min通過させた後に停止させる。前記メタンとn-ヘキサンを通過させるプロセスは交互に行うことができる。
【0074】
もう一つの実施例では、まず5m/minの流速でプロピレンを予備分解領域に通過させ、Arを保護ガスとして使用し、反応温度は1000℃で、300min通過させた後に停止させ、予備分解領域で続いて流速0.1m/minでポリプロピレンメルトを通過させ、保護ガスとしてArを使用し、240min通過させた後に停止する。前記プロピレンとポリプロピレンを通過させるプロセスは交互に行うことができる。
【0075】
本発明のさらなるもう一つの実施例では、保護ガスとして水素を使用し、エタンとエタノールの混合ガスを予備分解領域に通過させ、ここで、エタンとエタノールの流速は50m/minで、反応温度は1200℃で、100min通過させた後停止させた。
【0076】
実施例1
予備分解領域と蒸着塗布領域を備えた回転炉を使用し、中央径が5μmであるケイ素酸化物SiOx(x=0.9)1kgをシリコン基材として選択し、保護ガスとして窒素ガスを使用し、V=1m/minの流速で予備分解領域にエタンガスとエタノール蒸気の混合物を通過させ、ここで、エタンとエタノールのモル比は1:1であり、反応温度は摂氏900℃であり、M/M=0.25mol/minに調整し、前記回転炉の蒸着塗布領域に通過させ、蒸着塗布領域の温度は900℃であり、総反応時間は20minであり、前記シリコン系負極材料S1-1を形成する。
前記S1-1材料を続いて同じ温度下で反応させ、V=10m/minのメタンとエチレンの混合ガスを通過させ、ここで、メタンとエチレンの体積比は3:1であり、M/M=0.05に制御し、反応時間は120minであり、前記シリコン系負極材料S1-2を形成する。
上記S1-2材料を同じ温度で連続的に反応させ、V=5m/minのベンゼン蒸気を通過させ、M/M=0.5に制御し、反応時間は10minであり、前記シリコン系負極材料S1-3を形成する。
前記S1-3材料を同じ温度で連続的に反応させ、V=1m/minのエタンガスとエタノール蒸気の混合物を通過させ、ここで、エタンとエタノールのモル比は1:1であり、M/M=0.25に制御し、反応時間は10minであり、前記シリコン系負極材料S1-4を形成する。
【0077】
実施例2
実施例1と同じ装置を使用し、中央径が8μmであるケイ素の酸化物SiOx(x=0.9)1kgをシリコン基材として選択し、保護ガスとして窒素ガスを使用し、流速V=10m/minのメタンとエチレンの混合ガスを予備分解領域に通過させ、ここで、メタンとエチレンの体積比は3:1であり、反応温度は900℃であり、M/M=0.05mol/minに調整し、前記回転炉の蒸着塗布領域を通過させ、蒸着塗布領域の温度は900℃であり、総反応時間は120minであり、前記シリコン系負極材料S2-1を形成する。
上記S2-1材料を同じ温度で連続的に反応させ、V=1m/minのエタンガスとエタノール蒸気の混合物を通過させ、ここで、エタンとエタノールのモル比は1:1であり、M/M=0.25に制御し、反応時間は10minであり、塩基シリコン系負極材料S2-2を形成する。
前記S2-2材料を続いて同じ温度で反応させ、V=10m/minのメタンとエチレンの混合ガスを通過させ、メタンとエチレンの体積比は3:1であり、M/M=0.05に制御し、反応時間は120minであり、前記シリコン系負極材料S2-3を形成させる。
上記S2-3材料を同じ温度で連続的に反応させ、V=5m/minのベンゼン蒸気を通過させ、M/M=0.5に制御し、反応時間は10minであり、前記シリコン系負極材料S2-4を形成する。
実施例3~6の具体的なプロセス条件は、表1を参照する。
【0078】
比較例1
シリコン基材として中央径が5μmであるケイ素酸化物SiOx(x=0.9)1kgを選択し、保護ガスとして窒素ガスを使用し、反応温度を900℃に設定し、M/M=0.5に制御し、反応時間は30minであり、前記シリコン系負極材料D1を形成する。
【0079】
比較例2
シリコン基材として中央径が5μmであるケイ素の酸化物SiOx(x=0.9)1kgを選択し、保護ガスとして窒素ガスを使用し、反応温度を1000℃に設定し、M/M=0.05に制御し、反応時間は300minであり、前記シリコン系負極材料D2を形成する。
【0080】
比較例及び比較例2の他のプロセス条件は、表1を参照する。
【0081】
表1は、実施例1~実施例6、並びに比較例1及び比較例2のシリコン系負極材料の製造方法の各工程のプロセス条件を示し、具体的なプロセスの説明は、実施例1及び実施例2ならびに比較例1及び比較例2のテキスト部分を参照する。
【0082】
表2は、実施例1~実施例6、並びに比較例1及び比較例2のシリコン系負極材料の製造方法により形成されたシリコン系負極材料における無定形炭素の塗布層(AC)及び黒鉛化炭素の塗布層(GC)の各層の厚さ、炭素元素の質量百分比含有量、及びラマン分光法の検出データを示す。リチウム電池の負極材料とし前記て前記シリコン系負極材料を使用し、前記負極材料の電気化学的性能の検出結果も図2を参照する(容量mAh/g、効率%、及び30回サイクル容量維持率%、ここで、前記効率%は、初期のクーロン効率%を指す)。表のデータから、本出願の実施例に記載のシリコン系負極材料の製造方法によって形成されたシリコン系負極材料は、リチウム電池の負極材料として使用される場合、その単位質量あたりの容量mAh/g、初期のクーロン効率及び30回サイクル容量維持率は、比較試験のシリコン系負極材料よりもはるかに高いことが分かる。
【0083】
本出願の図1図2はまた、本出願の実施例に記載のシリコン系負極材料のSEM画像、及び本発明の実施例により提供されたシリコン系負極材料における無定形炭素の塗布層及び黒鉛化炭素の塗布層のラマンスペクトルを提供する。図1から、本出願の実施例に記載の表面に無定形炭素カーボン塗布層と黒鉛化炭素の塗布層を有するシリコン系負極材料の粒子が均一に分散していることがわかる。図2から、前記シリコン系負極材料の無定形炭素の塗布層と黒鉛化炭素の塗布層は、いずれもGピークとDピークを有し、且つ前記無定形炭素の塗布層と前記黒鉛化炭素の塗布層にそれぞれに対応するピーク強度が異なることが分かる。その中、ライン1は黒鉛化炭素の塗布層で、ライン2は無定形炭素の塗布層である。前記無定形炭素の塗布層のラマンスペクトルのId/Igは0.92であり、前記黒鉛化炭素の塗布層のラマンスペクトルのId/Igは0.43である。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
以上のように、本出願の詳細な開示を読んだ後、上述した詳細な開示は一例としてのみ提示され、限定的ではないことが当業者には理解されるべきである。ここでは明確に説明されていないが、当業者は、本願は実施例に対する様々な合理的な変更、改良、及び修正をカバーすることを意図していることを理解されたい。これらの変更、改良、及び修正は、本開示によって提案されることが意図されており、本開示の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
【0087】
本願の実施例で使用される「及び/又は」という用語は、関連するリストされた項目の1つ又は複数の任意又はすべての組み合わせを含むことを理解されたい。
また、「含有する」、「含有している」、「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、記載されている特徴、全体、工程、作業、材料及び/又は部品が存在することを示すが、他の1つまたは複数の特徴、全体、工程、作業、材料、部品、及び/又はそれらの組み合わせの存在又は追加は、除外されないことも理解されたい。
【0088】
さらに、例示的な実施例は、理想的な例示的な図の断面図及び/又は平面図を参照することによって説明される。
図1
図2
【国際調査報告】