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特表2022-518326導波路に基づく偽造防止セキュリティ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】導波路に基づく偽造防止セキュリティ装置
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/324 20140101AFI20220308BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220308BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20220308BHJP
【FI】
B42D25/324
G02B5/18
B42D25/328 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526722
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 CH2018000044
(87)【国際公開番号】W WO2020097743
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521208228
【氏名又は名称】オレル フュースリ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100159259
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 実
(72)【発明者】
【氏名】マルティン アイヒェンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】シルバン ショーソン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム バセ
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB09
2C005HB10
2C005JB08
2C005JB09
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA66
(57)【要約】
偽造防止セキュリティ装置(5)は、光導波路(6)と、第1マクロ反復要素(18)を有し導波路(6)から光をカップルアウトするために配置されるアウトカプラ(11)と、第2マクロ反復要素(24)を含みアウトカプラ(11)によってカプルアウトされる光を処理するために配置される光処理構造(22)とを含む。第1及び第2要素(18、24)は、導波路(6)の対向する側面に配置される。装置(5)は、導波路(6)に沿って伝搬する光から例えばモアレ及び/又は視差効果を生成する。第3に、吸収要素(52)は、導波路(6)内の光無しで効果を生成するために加えられてよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路(6)と、
第1マクロ反復要素(18)を含むアウトカプラ(11)であって、前記導波路(6)から光をカップルアウトするように配置される、アウトカプラ(11)と、
第2マクロ反復要素(24)を含む光処理構造(22)であって、前記アウトカプラ(11によってカップルアウトされる光を処理するように配置される、光処理構造と、
を含む、偽造防止セキュリティ装置。
【請求項2】
前記導波路(6)は、前記導波路(6)の中の光の伝搬の方向に平行に延在する第1側面(7a)及び第2側面(7b)を有し、
前記アウトカプラ(11)は、前記第1側面(7a)上に配置され、
前記光処理構造(22)は、前記第2側面(7b)上に、前記アウトカプラ(11)に対向して配置される、請求項1に記載のセキュリティ装置。
【請求項3】
前記アウトカプラ(11)は、前記第1側面(7a)上のレリーフを含む、請求項2に記載のセキュリティ装置。
【請求項4】
前記第1側面(7a)上に配置され、前記アウトカプラ(11)を覆う第1コーティング層(28)をさらに含み、
前記第1コーティング層(28)は、前記導波路(6)より低い屈折率を有する、請求項2又は3に記載のセキュリティ装置。
【請求項5】
前記光処理構造(22)は、屈折構造(24)の配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項6】
前記屈折構造(24)は、少なくとも一つのレンズ及びプリズムを含む、請求項5に記載のセキュリティ装置。
【請求項7】
前記屈折構造(24)の配列は、前記第2側面(7b)上に配置される、請求項2~4のいずれか一項を引用する請求項5又は6に記載のセキュリティ装置。
【請求項8】
前記導波路(6)と前記屈折構造(24)の配列との間に配置される第2コーティング層(30)をさらに含み、
前記第2コーティング層(30)は、前記導波路(6)より低い屈折率を有する、請求項5~7のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項9】
前記屈折構造(24)の配列は、前記導波路(6)より低い屈折率を有する、請求項5~8のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項10】
前記第1反復要素(18)及び前記第2反復要素(24)は、少なくとも一方向に、それぞれ第1周期及び第2周期を有し、
前記第1周期は、実質的に前記第2周期と等しい、前記第1周期は、実質的に前記第2周期の整数倍である、又は、前記第2周期は、実質的に前記第1周期の整数倍である、請求項1~9のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項11】
前記第1要素(18)及び前記第2要素(24)は、2次元配列をそれぞれ形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項12】
前記第1要素(18)は、第1色のためのカップリング要素(42a)及び第2色のためのカップリング要素(42b)を含み、
前記第1色及び前記第2色は、異なる、請求項1~11のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項13】
前記第1カップリング要素(42a)及び前記第2カップリング要素(42b)は、少なくとも一方向に沿って交互に配置される、請求項12に記載のセキュリティ装置。
【請求項14】
前記アウトカプラ(11)の前記第2要素(24)の少なくともいくつかのために、前記第1色のための少なくとも一つのカップリング要素(42b)及び前記第2色のための少なくとも一つのカップリング要素(42b)は、存在する、請求項13に記載のセキュリティ装置。
【請求項15】
前記第1要素(18)は、回折格子(44)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項16】
前記第1要素(18)は、少なくとも二つの異なる格子間隔の回折格子(44a、44b)を含む、請求項15に記載のセキュリティ装置。
【請求項17】
前記第1要素(18)は、周期的にチャープした格子間隔を有する回折格子(44′)を含む、請求項15又は16に記載のセキュリティ装置。
【請求項18】
第3マクロ反復要素(52)を含む吸収構造(50)をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項19】
前記第3反復要素(52)及び前記第2反復要素(24)は、少なくとも一方向に、それぞれ第3周期及び第2周期を有し、
前記第3周期は、実質的に前記第2周期と等しい、前記第3周期は、実質的に前記第2周期の整数倍である、又は、前記第2周期は、実質的に前記第3周期の整数倍である、請求項18に記載のセキュリティ装置。
【請求項20】
前記吸収構造(50)は、前記第1側面(7a)上に配置される、請求項2を引用する請求項18又は19に記載のセキュリティ装置。
【請求項21】
前記第1コーティング層(28)は、前記アウトカプラ(11)と前記吸収構造(50)との間に配置される、請求項4を引用する請求項20に記載のセキュリティ装置。
【請求項22】
前記アウトカプラ(11)から離れて、光を前記導波路(6)にカップルインするように配置されるインカプラ(10)をさらに含み、
特に、前記インカプラ(10)は、前記導波路(6)の側面に沿って配置される、請求項1~21のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項23】
前記インカプラは、前記第1色及び前記第2色の光をカップルインすることに適合している、請求項12を引用する請求項22に記載のセキュリティ装置。
【請求項24】
少なくとも二つのインカプラ(10a、10b)を含み、
前記少なくとも二つのインカプラは、異なる色の光を前記導波路(6)にカップリング(10a、10b)する、及び/又は、前記少なくとも二つのインカプラは、異なる方向(60a、60b)への光を前記導波路(6)にカップリングする、請求項22又は23に記載のセキュリティ装置。
【請求項25】
少なくとも二つのアウトカプラ(11a、11b)を含み、
前記少なくとも二つのアウトカプラ(11a、11b)は、前記導波路(6)から外に異なる色の光をカップリングする、及び/又は、前記少なくとも二つのアウトカプラ(11a、11b)は、前記導波路(6)から外に異なる方向からの光をカップリングする、請求項1~24のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項26】
前記第1アウトカプラ(11a)は、第1インカプラ(10a)によってカップルインされた光をカップルアウトするように構築され、
前記第2アウトカプラ(11b)は、第2インカプラ(10b)によってカップルインされた光をカップルアウトするように構築される、請求項24を引用する請求項25に記載のセキュリティ装置。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載のセキュリティ装置を含むセキュリティ文書。
【請求項28】
前記アウトカプラ(11)は、前記文書の透明な部分(54)に配置される、請求項27に記載のセキュリティ文書。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を有する偽造防止セキュリティ装置に関する。それは、そのようなセキュリティ装置を含むセキュリティ文書にも関する。
【背景技術】
【0002】
偽造防止セキュリティ装置は、物品のコピーをより困難にするために使用される。特に、それらは、紙幣又は価値がある他の文書のようなセキュリティ文書と同様に、身元確認資料、商品引換券、クレジットカード、アクセスカード等に使用される。
【0003】
いくつかのセキュリティ装置は、独特かつコピーが困難な光学的効果に基づく。そのような装置の例は、体積ホログラム又は回折表面格子を含む。
【発明の概要】
【0004】
本発明により解決される問題は、そのような装置のセキュリティをより改善することである。
【0005】
この問題は、請求項1の偽造防止セキュリティ装置によって解決される。
【0006】
それゆえに、このセキュリティ装置は、
- 光導波路:これは、以下の「定義」で定義される導波構造である。
- アウトカプラ:これは、導波路から光をカップルアウト(couple out)することに適合した構造である。それは、第1マクロ反復要素を含む。「マクロ反復」という用語は、以下の「定義」で定義される。
- 光処理構造:この構造は、アウトカプラによってカップルアウトされる光を処理する(すなわち変更する)ために配置される。それは、以下の「定義」で定義される「マクロ反復」をまた伴う第2マクロ反復要素を含む、
を含む。
【0007】
第1及び第2マクロ反復要素の相互作用は、独特な光学的効果を生成するために使用され得る。
【0008】
導波路は、その中に光の伝搬の方向に平行に延在する第1及び第2側面を有することが好ましい。この場合、アウトカプラは、第1側面上に配置され、光処理構造は、第2側面上にアウトカプラと対向して配置され得る。言い換えると、導波路は、アウトカプラと処理構造との間に位置する。それゆえに、導波路は、これらの2つの構造の間にスペーサーを形成し、それは、目視角度に強く依存する明確な明るいモアレ及び/又は視差効果を生成することを可能にする。
【0009】
特に、アウトカプラは、導波路の第1側面上のレリーフを含み得る。そのようなレリーフ、すなわち導波路の、それに隣接する媒体への境界面内の構造は、空気に対して、又は導波路より低い屈折率の固体に対して形成され得る。そのような構造は、導波路から光を効率的にカップルアウトするために使用され得る。
【0010】
装置は、導波路の第1側面上に配置されアウトカプラを覆う第1コーティング層をさらに含み得る。そのようなコーティング層は、アウトカプラを機械的に保護し、接触コピーをより困難にする。より低い屈折率を有することにより、それは、その第1側面上に導波路を区切る境界面を生成する。
【0011】
光処理構造は、屈折構造の配列を含んでよい。これは、1次元又は2次元の配列、すなわち1つ又は2つの方向に沿った屈折構造の反復的な配置であり得る。
【0012】
屈折構造は、好ましくは少なくとも1つのレンズ又はプリズムを含む。
【0013】
屈折構造の配列は、アウトカプラから来る光を処理するために、導波路の第2側面上に配置されることが好ましい。これは、アウトカプラが導波路の第1側面上に配置されるときに特に有利である。なぜならば、その場合、導波路は、屈折構造から定義された距離にアウトカプラを維持し、アウトカプラがそれらに接近しすぎることを防止するためである。これは、偽造防止セキュリティ装置の厚さを増加させることなく、屈折構造の焦点距離を最適化することと、より弱い曲率又は表面の傾斜の屈折構造を潜在的に(potentially)使用することとを可能にする。これは、セキュリティ装置のより容易な統合とよりよい柔軟性とを、順番に(in turns)可能にする。
【0014】
セキュリティ装置は、導波路と屈折構造の配列との間に配置された第2コーティング層を含んでよい。この第2コーティング層は、導波路より低い屈折率を有し、したがって、屈折構造が導波路からの光をカップルアウトすることを防止する。導波路と直接的に接触する屈折構造の配列(すなわち導波路コア)のような光処理構造は、導波光(guided-light)を散乱/屈折/回折させるだろう。屈折構造の配列のような光処理構造が導波光のアウトカップリングを防止又は最小化することは、良く見えかつコントラストのあるモアレ及び/又は視差効果を生成することを可能にする。
【0015】
代わりに、又はそれに追加して、屈折構造の配列は、導波路より低い屈折率を有してよい。その場合、屈折構造の配列は、そこから光をカップルアウトすることなく、導波路に隣接してよい。
【0016】
第1及び第2反復要素(すなわち、アウトカプラの要素及び処理構造の要素)は、それぞれ、第1及び第2周期を、少なくとも1つの方向に有することが好ましい。その場合、以下の条件の少なくとも1つを満たすことが有利である:
【0017】
- 第1周期は、実質的に第2周期と等しい。第1及び第2周期は、局所的に、10%以下異なることが好ましい。これは、第2要素が第1要素からの光を処理するとき、モアレ効果、拡大効果又は傾斜効果のような明確な干渉効果を生み出すことを可能にする。
【0018】
- 第1周期は、実質的に第2周期の整数倍である、又はその反対である。2つの周期の間の比率は、整数値から0.1以下であることが好ましい。例えば、比率は、1.9と2.1との間、又は2.9と3.1との間であってよい。これはまた、第1の場合のそれと同様な効果を生成することを可能にする。
【0019】
1つの実施形態において、第1及び第2反復要素(すなわち、アウトカプラの要素及び処理構造の要素)の両方は、2次元配列を形成する。これは、2方向で繰り返す光学的効果を生成することを可能にする。
【0020】
第1要素、すなわちアウトカプラの要素は、セキュリティ機能をより明確にするため、第1色と第2色とが異なる場合に、第1色のためのカップリング要素及び第2色のためのカップリング要素を含んでよい。これに関連して、明確な色は、視覚的に知覚できるほどに異なる色、少なくとも20nm、特に少なくとも50nm異なる波長に特に対応する色を意味する。
【0021】
第1要素、すなわちアウトカプラの要素は、回折格子を含み得る。
【0022】
その場合、第1要素は、明確な色を生成するために、少なくとも2つの異なる格子間隔の回折格子、及び/又は周期的にチャープした(chirped)格子間隔の回折格子を含んでよい。これに関連して、格子間隔は、実質的に連続した方法で第1要素の1つのマクロな周期に従って変わる場合、「チャープした」である。
【0023】
セキュリティ装置は、光処理構造及びアウトカプラに加えて、第3マクロ反復要素を有する吸収構造をさらに含んでよい。
【0024】
この吸収構造は、アウトカプラと同様な方法で、光処理構造と相互に作用し得る。
【0025】
第3及び第2反復要素(すなわち吸収構造の要素及び処理構造の要素)は、それぞれ、第3及び第2周期を少なくとも1方向に有することが好ましい。その場合、以下の条件の少なくとも1つを満たすことが有利である。
【0026】
- 第3周期は、実質的に第2周期と等しい。第3及び第2周期は、局所的に、10%以下異なることが好ましい。これは、第2要素が第1要素からの光を処理するとき、モアレ効果、拡大効果又は傾斜効果のような明確な干渉効果を生み出すことを可能にする。
【0027】
- 第3周期は、実質的に第2周期の整数倍である、又はその反対である。2つの周期の間の比率は、整数値から0.1以下であることが好ましい。例えば、比率は、1.9と2.1との間、又は2.9と3.1との間であってよい。これはまた、第1の場合のそれと同様な効果を生成することを可能にする。
【0028】
セキュリティ装置は、アウトカプラから離れ、光を導波路にカップルインするように配置されるインカプラをさらに含み得る。インカプラは、導波路の側面、例えば1つ又は複数の回折格子に沿って配置されることが好ましい。
【0029】
インカプラとアウトカプラとの間の距離は、アウトカプラを妨害することなくインカプラに(電話のカメラ光のような)光源を容易に当てられるようにするために、少なくとも1cm、特に少なくとも3cmであることが好ましい。
【0030】
発明は、また、上に記述したセキュリティ装置を含むセキュリティ文書に関する。セキュリティ装置は、例えば、セキュリティ文書の基板に積層され得る、又は、それは、例えば、文書の基板の不可欠な部分であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下の詳細な記述を考慮するとき、発明は、よりよく理解され、上で説明されたもの以外のものは、明白になるであろう。この記述は、添付の図面に言及するものである。
図1】セキュリティ装置を伴うセキュリティ文書の上面図である。
図2図1の線II-IIに沿った第1実施形態の断面図である。
図3】アウトカプラの要素の配列の一部を示す。
図4】第1目視角度からの観察者に対して生成されたパターンの例を示す。
図5】第2目視角度からの観察者に対して生成されたパターンの例を示す。
図6】第2実施形態の断面図を示す。
図7】第3実施形態の断面図を示す。
図8】第4実施形態の断面図を示す。
図9】セキュリティ装置の第5実施形態の上面図を示す。
図10】第1インカプラの上に設置される光源を伴うセキュリティ装置の第6実施形態の上面図を示す。
図11】第2インカプラの上に設置される光源を伴う図10の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義:
【0033】
- 光導波路は、特に250nmと2000nmとの間の少なくとも1つの波長の、赤外線光、可視光及び/又は紫外光のための導波構造である。導波路は、3dB/mm未満、すなわちmm当たり50%未満、特に3dB/mm未満、すなわちcm当たり50%未満の少なくとも1波長の減衰を有することが好ましい。光導波路は、マルチモード導波路、またの名を光導体、好ましくは大規模マルチモード光導体、として理解されることが好ましく、その厚さは、好ましくは10ミクロンより厚く、したがって可視スペクトル、近赤外スペクトル及び/又は近紫外線スペクトル、すなわち250nmと2000nmとの間の波長に対する多数のモードをガイドすることができる。一般に利用可能な光源の制限された空間的及び時間的なコヒーレンスを考慮すると、導波路は、ガイドモードの有限な数に制限されないことが好ましい。すなわち、導波路は、太陽光、LED光又は他の広スペクトル光源のような一般に利用可能な光源に対するインコヒーレントな光学システムである。導波路は、導波路に入射した光の少なくとも一部の光を、導波路の側面の全反射によってガイドする。
【0034】
- 伝搬の方向という用語は、偽造防止セキュリティ装置の上の光の伝搬のマクロな主方向を示すために使用され、導波路内の、その側面の間を行ったり来たり(way and back)バウンドする(bouncing)正確な航路を記述しない。その進行角度は、例えば回折導波路カプラを使用するとき異なる波長に対して、変化し複数であり得る。
【0035】
- 「マクロ反復」という用語は、波長より十分長い周期を伴う反復的な構造、すなわち回析しない構造又はその回析が非常に弱い構造を示すために使用される。特に、周期は少なくとも10μm、特に少なくとも50μmである。そのようなマクロ反復構造はまた、より小さい回析構造を含んでも含まなくてもよい。
【0036】
- 材料が「導波路より低い」屈折率を有すると示される場合、その屈折率は、その材料が導波路に隣接して位置する場合、導波路内の光を制限するように十分に低いと理解される。1つの実施形態において、材料は、導波路の屈折率の少なくとも0.1、特に少なくとも0.2低い屈折率を有する。当業者に知られるように、最小の屈折率の差(minimum refractive index difference)は、層の厚さにも依存し得る。屈折率の差は、例えば非常に厚いコーティング層に対してより小さいことがあり得る。
【0037】
- 周期は、空間的な周期として理解されるべきである。技術水準(state of the art)で知られるように、モアレ及び/又は視差効果は、周期的な又は疑似的に周期的な配置を使用して生み出され得る。例えば、疑似的に周期的な配置は、主に空間的な周期性(main spatial periodicity)を有し、主に空間的な周期性よりも所与の範囲(すなわち10%)程度内の周期性の逸脱を含みうる。疑似的に周期的な配置は、個々の要素がいくつかの周期にわたって徐々に変化する要素の周期的配置をも含みうる。この文脈において、疑似的に周期的な配置は、「周期的な」という用語に含まれる。
【0038】
第1実施形態及び一般的なコメント:
【0039】
図1は、紙幣又は身分証明書のようなセキュリティ文書1の上面図を示す。それは、基板2を含み、基板2は、例えば人または機械が読むことができる情報又は図柄を示す様々な印刷された記号3a、3bを載せて(carry)よい。それは、1つ又は複数のセキュリティ装置4、5をも載せる。これらは、例えば、偽造することが困難な回析構造、OVI又は他の特徴を含んでよい。
【0040】
セキュリティ装置の1つ、すなわち図1の実施形態のセキュリティ装置5は、図2~5においてより詳細に説明される。
【0041】
セキュリティ装置5は、例えば基板2に積層されるが、以下の実施形態に示されるように基板2に統合されてもよい。それは、可視光のような光をガイドするための光導波路6をその中に含む。導波路6は、第1側面7aと第2側面7bとの間に延在し、導波路6内の光の伝搬方向8は、第1及び第2側面7a、7bに平行である。
【0042】
セキュリティ装置5は、光を導波路6内にカップリングするためのインカプラ10と、光を導波路6からカップルアウトする(coupling light out from waveguide 6)ためのアウトカプラ11とをさらに含む。
【0043】
本実施形態のインカプラ10は、導波路6の第1側面7aの中又は上に配置される回析表面格子12を含む。それは、例えば第2側面7bを通って入る光14を、伝搬方向8に回折させる。
【0044】
本実施形態のアウトカプラ11は、複数の第1マクロ反復要素18を含む。図2の実施形態において、各要素18は、図2の拡大された詳細Aに示されるように、第1側面7aの中又は上に回折表面格子20を含む。
【0045】
上から要素18のいくつかの実施形態を描写する図3に示されるように、要素18は、規則的な、2次元配列で配置されてよい。
【0046】
セキュリティ装置5は、アウトカプラ11によってカップルアウトされた光を処理するための第2マクロ反復要素24を伴う光処理構造22をさらに含む。これらの第2マクロ反復要素24は、レンズ26を含んでよい。
【0047】
レンズ26の焦点距離は、セキュリティ装置の媒体内の焦点距離として計算される、レンズ26と第1要素18との間の距離Dに対応し、媒体は、空気の屈折率を上回る屈折率を有することが好ましい。レンズ26は、第1要素18の近似フーリエ変換を行うために配置される。その場合、要素18は、リラックスした目(すなわち無限遠に調整された)でレンズ26を目視する観察者が第1要素18の像を見るように、無限遠に投影される。
【0048】
セキュリティ装置5は、導波路6の第1側面7a上に配置される第1コーティング層28と、導波路6の第2側面7b上に配置される第2コーティング層30とをさらに含む。これらの両方のコーティング層は、導波路6に隣接することが好ましい。
【0049】
コーティング層28、30は、導波路6の屈折率より低い屈折率を有し、導波路6を光学的に区切りその中に光を封じ込める(contain)。両コーティング層は、少なくとも1μm、特に少なくとも3μmの厚さを有することが好ましい。当業者に知られるように、コーティング層28、30の最小厚は、コーティング層28、30と導波路6との間の屈折率の違いに主に依存する。
【0050】
コーティング層28、30は、導波路6内をガイドされる光、又は導波路内をガイドされる光スペクトルの少なくとも一部を吸収しない。
【0051】
セキュリティ装置5は、マスク層32をさらに含んでよく、マスク層32は、不透明であり得る。それは、導波路6内をガイドされる光に影響を及ぼさないために、コーティング層6の外側に配置されることが好ましい。
【0052】
マスク層32は、例えばインクの印刷層であってよい。
【0053】
マスク層32は、インカプラ10の位置の第1領域34を覆わないので、光のための入口窓を形成する。さらに、マスク層32はアウトカプラ11の位置の第2領域36を覆わないので、光のための出口窓を形成する。
【0054】
マスク層32は、例えばアウトカプラ11の位置の後の導波路内を伝搬する残りの光を吸収するために、又は、このセキュリティ装置を含むセキュリティ文書のセキュリティ装置の1又は複数の端で明確な明るいパターンを生み出すために、セキュリティ装置の又はこのセキュリティ装置を含むセキュリティ文書の、一部の中の導波路6上に直接配置され得る。
【0055】
図2及び図3に見られ得るように、アウトカプラ11の要素18(すなわち表面格子20)、及び光処理構造22の要素24(すなわちレンズ26)は、上で記述した明確な光学的効果を生成するためにマクロ反復される。
【0056】
示された実施形態において、アウトカプラ11の要素18は、方向Xに第1周期X1を有し、光処理構造22の要素24は、第2周期X2を有する。周期X1及びX2は、光学的効果を生成するために、上に記述された意味で、実質的に等しい、又は互いの整数倍であることが好ましい。
【0057】
第1要素18及び第2要素24は、それぞれ2次元配列を形成してよい。第1要素18の2次元配列は、図3に示される。各要素18は、例えば図2の回析構造20を含んでよい。第1要素18の2次元配列は、方向X及びYに沿って延在し、それらは互いに直角に交わってよい。第2要素24は、方向X及びYに沿って同様な2次元配列を形成する。しかしながら、2つの配列は、互いに関して他の角度で方向づけられてもよく、それらの軸方向X、Yの間の角度は、必ずしも90°でなくてもよい。
【0058】
X及びYに沿った反復の周期は、第1要素18に対して異なってよく、それらは、第2要素24に対して異なってもよい。
【0059】
しかしながら、方向Yにおいて、第1及び第2要素はまた、上に記述された意味で、実質的に等しい、又は互いの整数倍の周期を有することが好ましい。
【0060】
方向Xは、示された実施形態において、導波路6内の光伝搬方向8と平行である。しかしながら、それは、そこへの任意の角度であってもよい。
【0061】
そのような反復的な構造は、モアレ効果を生成する。ここで示されるように、第1要素18及び第2要素26が互いに距離D離れている場合、図2の矢印40で説明されるように、投射方向は位置と共に変化するので、効果は、目視角度と共に変化する。
【0062】
したがって、例えば、第1方向から、図4に示されるようにユーザは干渉パターンを見てよく、一方、第2目視方向から、その干渉パターンは、図5にあるように見えてよい。
【0063】
第2実施形態:
【0064】
図6は、第2実施形態を示す。それは、第1実施形態と、とりわけ第1反復要素18の設計によって異なる。この実施形態において、第1要素18は、第1色及び第2色に対するカップリング要素42a、42bを含む。
【0065】
これは、例えば、図6の拡大された差込図B内に描写されたように、2つの異なる回折表面格子44a、44bを使用することによって実装されてよい。
【0066】
その代わりに、表面格子44a、44bは、1つの、図6の拡大された差込図B′内に示されたチャープ格子44′の一部であってよい。徐々に変化する格子間隔を有するチャープ格子は、その領域の上で、同一の波長又は色領域を変化する角度で回折させ得る。これは、例えば、そのような反復要素18の領域の上で安定した色を提供するために、特に対応する第2要素24、例えばレンズ26、によって処理された後の安定した色を提供するために使用され得る。
【0067】
少なくともいくつかの第2要素24に対して、すなわち少なくともいくつかのレンズ26に対して、少なくとも1つのそのような第1及び第2カップリング要素42a、42bがあることが好ましい。したがって、矢印46a、46bによって示されるように、2つのカップリング要素42a、42bの像(すなわちそれらにおいてカップルアウトした異なる色の光波)は、異なる方向に投影され、異なる方向から見られ得る。それはまた、目視方向によって変化する明確な色効果を生じさせる。
【0068】
図6にも見られるように、第1及び第2カップリング要素42a、42bは、方向Xに沿うような少なくとも1方向に沿って、交互に配置される。
【0069】
この実施形態において、インカプラ10は、両方の色の光をカップルインするように設計されるべきである。これは、例えば、異なる格子間隔、特に2つのカップリング要素42a、42bによって使用される格子間隔と同じ格子間隔の格子を含む表面格子を使用することによって達成され得る。インカプラ10のこれら2つの格子は、例えば、図6に示されるように、交互に、並んで(side by side)配置され得る、又は、それらは、同じ位置で重ね合わせられ得る。
【0070】
図6の実施形態は、マスク層32(cf. 図2)が任意であることも説明する。
【0071】
第3実施形態:
【0072】
図7の実施形態は、第3反復要素52を有する吸収構造50を含む。
【0073】
これに関連して、「吸収(absorbing)」は、250nmと2000nmとの間のNIR-VIS-UVスペクトルの少なくとも1つの波長に対する光を吸収する材料を示す。それらは、400と800nmとの間の可視スペクトルの少なくとも1つの波長に対する光を吸収することが好ましい。特に、それらは肉眼で見える。
【0074】
吸収構造50は、視覚的に明確であるために、導波路6の中をガイドされアウトカプラ11によってカップルアウトされる光と異なる、知覚できる色を有してよい。
【0075】
第3反復要素22は、それらが処理構造22から遠く離れ、観察者が彼の目視方向を変えるときにモアレ及び/又は視差効果を生成することができるように、導波路6の第1側面7a上に配置されることが好ましい。
【0076】
示された実施形態において、第3反復要素52は、方向Xに第3周期X3を有する。周期X2及びX3は、光学的効果を生成するために、上に記述された意味で、実質的に等しい、又は互いの整数倍であることが好ましい。
【0077】
第3周期X3は、アウトカプラ11の第1要素18の第1周期X1と実質的に等しいことが好ましい。
【0078】
したがって、モアレ及び/又は視差効果は、2つの異なる方法でセキュリティ装置内で観察され得る。
【0079】
- 導波路6に導波光がない場合、これらの効果は、第2要素24と第3要素52との相互作用によって生成される。
【0080】
- 光が導波路6の中をガイドされるとき、さらにそのような効果は、第2要素24と第1要素18との相互作用によって生成される。
【0081】
第1コーティング層28は、吸収構造50が導波路6の中をガイドされる光を吸収しないように、アウトカプラ11と吸収構造50との間に配置されることが好ましい。
【0082】
図7の実施形態は、セキュリティ文書2がアウトカプラ11の位置で、例えばアウトカプラ11の位置に窓のような開口部又は切り欠き54を有することによって、透明であってよいことをさらに説明する。これは、第2側面7aから入る光56の伝達下で構造を観察することを可能にする。
【0083】
これは、第3要素52がある場合に特に有用であり、それは、伝達中に容易に観察され得る。しかしながら、第1要素18は伝達中に見えてもよく、それゆえに、アウトカプラ11を文書1の透明な領域(開口部又は窓のような)に位置させることは、第3要素52の存在があってもなくても有利であるかもしれない。
【0084】
第4実施形態:
【0085】
図8の実施形態は、装置のいくつかのさらなる態様を説明する。
【0086】
この例において、導波路6は、基板2の部分を形成する。すなわち、それは、基板2の内部層を、その第1及び/又は第2側面7a、7bに配置された少なくとも1つの追加層2a、2bで形成する。
【0087】
追加層2a、2bは、可視スペクトルの少なくとも1つの波長に対して不透明であることが好ましい。それらは、例えばインク及び/又は紙の層によって形成されてよい。
【0088】
図8に示されるさらなる態様は、処理構造22が第2コーティング層30の、すなわち導波路6より低い屈折率を有する材料の少なくとも一部に形成されてよいことである。
【0089】
第5実施形態:
【0090】
図9の実施形態は、少なくとも2つのインカプラ10a、10bを有するセキュリティ装置を示す。
【0091】
インカプラ10a、10bは、互いに離れて、互いに隣接して、又は部分的に重なってよい。それらは、しかしながら、互いに離れて位置する明確な領域を有することが好ましい。
【0092】
2つのインカプラは、以下の態様の少なくとも1つ又は両方で異なる:
【0093】
- それらは、例えば異なる格子間隔を有する回折格子であることによって、異なる色の光を導波路6内にカップリングする。
【0094】
- それらは、例えば異なる方向に延在する格子ベクトルを伴う回折格子であることによって、異なる伝搬方向への光を導波路6内にカップリングする。図9において、これは、それぞれ矢印60a、60bによって説明される。異なる伝搬方向は、好ましくは15度又は15度より大きな角度によって区別される。
【0095】
図9の実施形態は、2つのアウトカプラ11a、11bをさらに含む。示される実施形態において、それらは、異なる種類の第1要素18a、18bによって形成され、それらは、異なる、任意で重なっている領域に配置されることが好ましい。
【0096】
示される実施形態において、第1領域、すなわち第1アウトカプラ11aは、実質的に三角の形状を有し、一方、第2領域、すなわち第2アウトカプラ11bは、実質的に四角の形状を有する。
【0097】
2つのアウトカプラ11aが重なる場合、2種類の第1要素18a、18bは、交互に(例えば示されるようにチェス盤のパターンで)配置されてよく、又は、それらは、重ね合わせられてもよい。
【0098】
2つのアウトカプラ11a、11bは、以下の態様の少なくとも1つで異なる:
【0099】
- それらは、例えば異なる格子間隔を有する回折格子であることによって、異なる色の光を導波路6からカップルアウトする。
【0100】
- それらは、例えば異なる方向に延在する格子ベクトルを伴う回折格子であることによって、異なる方向からの光を導波路6からカップルアウトする。図9において、これは、それぞれ矢印60a、60bによって説明される。
【0101】
第1アウトカプラ11aは、第1インカプラ10aによってカップルインされた光をカップルアウトするように構築され、第2アウトカプラ11bは、第2インカプラ10bによってカップルインされた光をカップルアウトするように構築されることが好ましい。
【0102】
また、装置は、例えばモアレ効果及び/又は視差効果を生成するために、ここに記述された実施形態に沿ってアウトカプラ11a、11bからの光を処理する、レンズなどの第2反復要素24を有する光処理構造22を含む。
【0103】
この設計は、例えば図10、11に描写された方法で使用され得る。ここで、2つのアウトカプラ11a、bは、例えば、重ね合わせられた格子によって形成され、それらの第2要素18a、18bは、文字A及び文字Bのように、異なる形状を有する。
【0104】
光が(例えば統合された光源を伴う携帯電話62を使用して)第1インカプラ10aの位置でカップルインされるとき、第1アウトカプラ11aの要素18aは、点灯するだろう(図10参照)。光が第2インカプラ10bの位置でカップルインされるとき、第2アウトカプラ11bの要素18bは、点灯するだろう(図11参照)。
【0105】
図10、11の実施形態はまた、光処理構造(不図示)を含む。例えば、光処理構造の周期とアウトカプラ11a、bの周期との間の相互の不整合は、第2要素18a、18bが観察者に対して視覚的に拡大されるように選択され得る。したがって、例えば、図10、11の点線64a、64bに示されるように、認識可能な、拡大された文字A及びBをもたらす。
【0106】
注釈:
【0107】
導波路6は、プラスチック材料であることが好ましい。それは、透明であってよく、250nmと2000nmとの間の、可視、近赤外線及び/又は近紫外線スペクトルの一部またはすべてにわたって波をガイドしてよい。
【0108】
導波路6の典型的な厚さは、10と100μmとの間であり、特に20と50μmの間である。この厚さの導波路は、柔軟であっても適度に(reasonably)ロバストであり、セキュリティ装置及びそれを含むセキュリティ文書の機械的な特性に大きく影響を及ぼすものではない。
【0109】
上の実施形態のインカプラ10は、側面7a、7bの1つを通じて入る光を伝搬方向8に屈折させる回折格子(側面7a、7bの1つ又は両方に配置される表面格子、又は体積格子(volume grating))である。表面格子は、例えば導波路6の側面7a及び/又は7bに浮き彫りにされてよい。従来技術で知られるように、表面格子は、例えば高屈折率の絶縁体でコーティングされ、埋め込まれてそれらの回折効果を維持又は向上させる(例えばUS9739950参照)。
【0110】
インカプラ10は、しかしながら、特に光のより広いスペクトルが導波路内にカップリングされる場合、散乱構造又は屈折構造であってもよい。それはまた、蛍光色素、及び/又は量子ドット、及び/又は(アップコンバートする色素又は非線形光学材料のような)光学的なアップコンバーターを含んでよい。
【0111】
インカプラ10はまた、光が(図2の端16のような)導波路6の端からカップルインされる場合、又は(エレクトロルミネセント染料(electroluminescent dye)のような)光源が導波路6に組み込まれる場合、なしで済まされ得る(dispensed)。
【0112】
同様に、アウトカプラ11の要素18は、上で示されたように、回折格子、特に表面格子20であってよい。代わりに、それらは、例えば体積格子、散乱又は屈折構造、及び/又は蛍光色素を含んでもよい。
【0113】
光処理構造は、屈折マイクロレンズアレイ、フレネルマイクロレンズのような回折マイクロレンズアレイを含んでよい。光処理構造は、カバー層でコーティングされることに適合してよく、又はカバー層、例えば光処理構造と異なる屈折率を有する透明な材料、でコーティングされてよい。一例として、屈折レンズ26は、保護カバー層より大きな屈折率で作成され得るし、レンズ26の設計(すなわち曲率)は、2つの材料屈折率に適合する。
【0114】
アウトカプラは、例えば回折格子に加えて、又は回折格子に代えて、以下の要素の少なくとも1つを含んでもよい:
【0115】
- マイクロプリズム、特に高屈折率絶縁体コーティング、金属コーティング、又は多層コーティングでコーティングされ埋め込まれるマイクロプリズム。そのようなプリズムは、特に、非回折プリズム(non-diffractive prism)、すなわち1μmよりはるかに大きい周期、特に10μmより大きい周期を備える周期的なプリズム、を含み得る。
【0116】
- 拡散構造が浮き彫りにされた表面のような光散乱構造。そのような構造はまた、コーティングされても埋め込まれてもよい。これは、回折を生じさせない非周期的構造を含んでよい。
【0117】
- 例えば、レーザーでポリマー導波路の一部を炭化する及び/又は一時的に融解させることによって生み出される、レーザーで生成された散乱又は吸収構造。
【0118】
吸収構造は、少なくとも部分的に炭化ポリマー材料によって形成されてもよく、炭化は、レーザー照射によって実行されてよい。言い換えると、吸収構造は、レーザーで導波路を不均一に照射することによって製造されてよい。
【0119】
光処理構造の要素は、上述したように、レンズであってよく、レンズの1又は2次元配列を含む。それらは、円形のレンズを含み得るが、例えば並列に且つ互いに並んで配置されるシリンドリカルレンズの組立品(assembly)を含んでもよい。それらは、プリズム、溝、穴(well)等のような非レンズ状の要素を含んでもよい。
【0120】
第1要素及び第2要素の配列の軸の間の、及び/又は、第1要素及び第3要素の配列の軸の間の角度は、言及したように、0又は任意の他の角度であってよい。
【0121】
説明したように、本技術は、アウトカプラを伴う、及び/又は吸収構造を伴う光処理構造の相互作用に基づいて、モアレタイプの効果を生成することを可能にする。例えば、以下の文献の任意の1つまたはいくつかに記述された効果が使用されてよい:
【0122】
- US 5995638, “Methods and apparatus for authentication of docu-ments by using the intensity profile of moire patterns” by Isaac Amidror, Roger D. Hersch, see.
【0123】
- US 6819775, “Authentication of documents and valuable articles by using moire intensity profiles”, by I. Amidror, R.D. Hersch
【0124】
- US 7194105, “Authentication of documents and articles by moire patterns” by R.D. Hersch, S. Chosson
【0125】
- US 7751608, “Model-based synthesis of band moire images for authenticating security documents and valuable products” by R.D. Hersch, S. Chos-son
【0126】
- US 7305105, “Authentication of secure items by shape level lines”, R. D. Hersch, S. Chosson
【0127】
- US 7058202, “Authentication with built-in encryption by using moire intensity profiles between random layers” by I. Amidror.
【0128】
偽造防止セキュリティ装置は、セキュリティ文書に接着される又はホットスタンプされるホットメルト接着剤のような接着剤を含んでよく、又は、セキュリティ装置は、セキュリティ文書にコールドスタンプされてよい。製造上の理由により、それは、セキュリティ文書との組み立ての前に、キャリア箔上で製造されてよい。このキャリア箔は、その組み立ての後にセキュリティ装置から分離される。
【0129】
セキュリティ装置は、公知技術で知られる様々な他の公然の及び秘密のセキュリティ機能を含んでよい。
【0130】
現在好ましい発明の実施形態が示され記述されたが、発明はこれに制限されず、以下の請求項の範囲内において様々に具体化され実施されてよいことは、明りょうに理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止セキュリティ装置であって、
光導波路(6)と、
第1マクロ反復要素(18)を含、前記導波路(6)から光をカップルアウトするように配置されるアウトカプラ(11)と、
第2マクロ反復要素を、前記アウトカプラ(11)によってカップルアウトされる光を処理するように配置される光処理構造(22)であって、前記光処理構造(22)は、屈折構造(24)の配列を含む、光処理構造(22)と、
を含み、
前記セキュリティ装置は、前記導波路(6)と前記屈折構造(24)の配列との間に配置される第2コーティング層(30)によって特徴づけられ、
前記第2コーティング層(30)は、前記導波路(6)より低い屈折率を有する、偽造防止セキュリティ装置。
【請求項2】
前記導波路(6)は、前記導波路(6)の中の光の伝搬の方向に平行に延在する第1側面(7a)及び第2側面(7b)を有し、
前記アウトカプラ(11)は、前記第1側面(7a)上に配置され、
前記光処理構造(22)は、前記第2側面(7b)上に、前記アウトカプラ(11)に対向して配置される、請求項1に記載のセキュリティ装置。
【請求項3】
前記アウトカプラ(11)は、前記第1側面(7a)上のレリーフを含む、請求項2に記載のセキュリティ装置。
【請求項4】
前記第1側面(7a)上に配置され、前記アウトカプラ(11)を覆う第1コーティング層(28)をさらに含み、
前記第1コーティング層(28)は、前記導波路(6)より低い屈折率を有する、請求項2又は3に記載のセキュリティ装置。
【請求項5】
前記屈折構造(24)の配列は、前記第2側面(7b)上に配置される、請求項2~4のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項6】
前記屈折構造(24)は、少なくとも一つのレンズ及びプリズムを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項7】
前記屈折構造(24)の配列は、前記導波路(6)より低い屈折率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項8】
前記第1反復要素(18)及び前記第2反復要素(24)は、少なくとも一方向に、それぞれ第1周期及び第2周期を有し、
前記第1周期は、実質的に前記第2周期と等しい、前記第1周期は、実質的に前記第2周期の整数倍である、又は、前記第2周期は、実質的に前記第1周期の整数倍である、請求項1~のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項9】
前記第1要素(18)及び前記第2要素(24)は、2次元配列をそれぞれ形成する、請求項1~のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項10】
前記第1要素(18)は、第1色のためのカップリング要素(42a)及び第2色のためのカップリング要素(42b)を含み、
前記第1色及び前記第2色は、異なる、請求項1~のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項11】
前記第1カップリング要素(42a)及び前記第2カップリング要素(42b)は、少なくとも一方向に沿って交互に配置される、請求項10に記載のセキュリティ装置。
【請求項12】
前記アウトカプラ(11)の前記第2要素(24)の少なくともいくつかのために、前記第1色のための少なくとも一つのカップリング要素(42b)及び前記第2色のための少なくとも一つのカップリング要素(42b)は、存在する、請求項11に記載のセキュリティ装置。
【請求項13】
前記第1要素(18)は、回折格子(44)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項14】
前記第1要素(18)は、
少なくとも二つの異なる格子間隔の、及び/又は、
- 前記格子間隔を連続した方法で前記第1要素の一つのマクロな周期に従って変えることによって周期的にチャープした格子間隔を有する、
回折格子(44a、44b)を含
それによって異なる色を生成する、請求項13に記載のセキュリティ装置。
【請求項15】
第3マクロ反復要素(52)を含む吸収構造(50)をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項16】
前記第3反復要素(52)及び前記第2反復要素(24)は、少なくとも一方向に、それぞれ第3周期及び第2周期を有し、
前記第3周期は、実質的に前記第2周期と等しい、前記第3周期は、実質的に前記第2周期の整数倍である、又は、前記第2周期は、実質的に前記第3周期の整数倍である、請求項15に記載のセキュリティ装置。
【請求項17】
前記吸収構造(50)は、前記第1側面(7a)上に配置される、請求項2を引用する請求項15又は16に記載のセキュリティ装置。
【請求項18】
前記第1コーティング層(28)は、前記アウトカプラ(11)と前記吸収構造(50)との間に配置される、請求項4を引用する請求項17に記載のセキュリティ装置。
【請求項19】
前記アウトカプラ(11)から離れて、光を前記導波路(6)にカップルインするように配置されるインカプラ(10)をさらに含み、
特に、前記インカプラ(10)は、前記導波路(6)の側面に沿って配置される、請求項1~18のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項20】
前記インカプラは、前記第1色及び前記第2色の光をカップルインすることに適合している、請求項10を引用する請求項19に記載のセキュリティ装置。
【請求項21】
少なくとも二つのインカプラ(10a、10b)を含み、
前記少なくとも二つのインカプラは、異なる色の光を前記導波路(6)にカップリング(10a、10b)する、及び/又は、前記少なくとも二つのインカプラは、異なる方向(60a、60b)への光を前記導波路(6)にカップリングする、請求項19又は20に記載のセキュリティ装置。
【請求項22】
少なくとも二つのアウトカプラ(11a、11b)を含み、
前記少なくとも二つのアウトカプラ(11a、11b)は、前記導波路(6)から外に異なる色の光をカップリングする、及び/又は、前記少なくとも二つのアウトカプラ(11a、11b)は、前記導波路(6)から外に異なる方向からの光をカップリングする、請求項1~21のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項23】
前記第1アウトカプラ(11a)は、第1インカプラ(10a)によってカップルインされた光をカップルアウトするように構築され、
前記第2アウトカプラ(11b)は、第2インカプラ(10b)によってカップルインされた光をカップルアウトするように構築される、請求項21を引用する請求項22に記載のセキュリティ装置。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載のセキュリティ装置を含むセキュリティ文書。
【請求項25】
前記アウトカプラ(11)は、前記文書の透明な部分(54)に配置される、請求項24に記載のセキュリティ文書。
【国際調査報告】