(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】航行中での船の船体の抵抗を減少させる船首及び/又は船尾の装置
(51)【国際特許分類】
B63H 1/04 20060101AFI20220308BHJP
B63B 1/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B63H1/04
B63B1/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021528855
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 ES2018070744
(87)【国際公開番号】W WO2020104706
(87)【国際公開日】2020-05-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521217448
【氏名又は名称】カルロス エデュアルド アークシン
【氏名又は名称原語表記】ARCUSIN, Carlos Eduardo
(71)【出願人】
【識別番号】521217459
【氏名又は名称】アレハンドロ ロマン ガンザバル リベラーティ
【氏名又は名称原語表記】GANZABAL LIBERATI, Alejandro Roman
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】カルロス エデュアルド アークシン
(57)【要約】
航行中の船(2)の前進に対する抵抗を減少させる装置であって、前記船(2)の前進速さと同期して回転する少なくとも1つの回転体(1)を備え、前記少なくとも1つの回転体(1)は、前記船(2)の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸(3)と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船(2)に取り付けられ、前記少なくとも1つの回転体(1)は前記船(2)の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられ、前記船(2)の船体に最も近くの前記少なくとも1つの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船(2)の船体から離間している装置。
【選択図面】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置であって、
前記船の前進速さと同期して回転する少なくとも1つの回転体を備え、
前記少なくとも1つの回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、
前記少なくとも1つの回転体は前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられ、
前記船の船体に最も近くの前記少なくとも1つの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間している、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置であって、
前記船の前進速さと同期して回転する回転体を備え、
前記回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、
前記回転体は前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられ、かつ、前記回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間している、
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記支持及び牽引制御手段は、ピストンに関連付けられるフォークで、かつ、航行中に前記回転体を該回転体の最大直径の30%のオーダーだけ沈んだ状態に維持することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置であって、
前記駆動手段は前記回転体を回転可能に推進し、
前記駆動手段はエンジンで、かつ伝送手段によって前記少なくとも1つの回転体の前記長手方向回転軸に関連付けられる、
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記送信手段はベルト、ストラップ、又はギアであることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項2に記載の装置であって、
前記回転体の表面は滑らかで、
前記回転体の内部は、荷物を担持する機能を有するために中空状である、
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項2に記載の装置であって、前記回転体が、前記駆動手段によって供される過回転機能を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項2に記載の装置であって、前記回転体がシリンダであることを特徴とする装置。
【請求項9】
航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置であって、
船の前進速さと同期して回転して、前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられる支持手段へ長手方向回転軸を貫通して取り付けられる2つ以上の回転体を備え、
前記船の船体に最も近くの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間し、
前記2つ以上の回転体は該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ互いに離間し、
前記回転体の長手方向回転軸は前記船の前進方向に対して垂直に配置され、駆動手段に関連付けられ、かつ、
前記支持手段は牽引制御手段に取り付けられている、
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、前記支持手段はフォークであることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置であって、前記牽引制御手段はピストンで、かつ、航行中に前記2つ以上の回転体を該回転体の最大直径の30%のオーダーだけ沈んだ状態に維持することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9に記載の装置であって、
前記駆動手段は伝送手段によって前記回転体を回転可能に推進し、
前記駆動手段は1つ以上のエンジンで、かつ
前記駆動手段は前記2つ以上の回転体の各々に関連付けられる、
ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記送信手段はベルト、ストラップ、又はギアであることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項9に記載の装置であって、
前記回転体の表面は滑らかで、
前記回転体の内部は、荷物を担持する機能を有するために中空状である、
ことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項9に記載の装置であって、前記2つ以上の回転体の各々が、前記駆動手段によって供される過回転機能を有することを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項9に記載の装置であって、前記回転体がシリンダであることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の操縦中での前記船の前進抵抗を減少させる船首及び/又は船尾の装置に関する。
【0002】
本発明の装置によって、摩擦抵抗又は粘性抗力及び圧力抵抗-残留抵抗又は波の生成に対する抵抗とも呼ばれる-によって構成される前進抵抗は減少し、船の消費の減少又は一定の消費に対する船の前進速さの増大が実現される。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、水中に気体を放出し、船体の船首又は船尾内での水位下の所定の位置に複数の気体流出口を供給し、船体を上方に押すことで船体と表面で接する水の平均密度を減少させることによって船の本体部と水との間での摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、腐食防止処置が施された船の外部装甲の表面上での海水の流れの方向に沿って形成される非常に細いスリットによって船体内での圧力を減少させる方法を開示している。その結果船体の抵抗が減少し、海洋生物の付着が防止される。
【0005】
特許文献3は、内部に空気チャンバが存在する船の下部内に形成される複数の穴から気泡を生成する均等な空気噴流を放出する機能を有する船体内での摩擦抵抗を減少させる装置を開示している。
【0006】
特許文献4は、長手方向に沿って特定の距離だけ離間する複数の選ばれた位置から気体を水へ注入することによって水に対する摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。
【0007】
特許文献5は、船の操縦状態又は船の状態に従って気泡の生成位置と気泡の数を適切に変化させる機能を有する水に対する船の摩擦抵抗を減少させることで、乱流が生じるときでさえ気泡の厳密な流れによって摩擦抵抗を実効的に減少させる装置を開示している。
【0008】
特許文献6は、船体内で微細な気泡を生成して船体の沈められた表面上の微細な気泡を含む水の厚い層を生成することによって流体の摩擦抵抗を減少させる装置を開示している。前記装置は、吸い込まれた水中に多量の空気を混合させる機能を有するポンプを用いる。
【0009】
特許文献7は、船の下側装甲の前方船体内に設置される覆いに相互接続される、摩擦抵抗を減少させる気泡生成装置を開示している。
【0010】
特許文献8は、動的圧力が負になる船首バルブの両側の3層中に配置される空気を流す手段を供することによって摩擦抵抗を減少させる装置を開示している。
【0011】
特許文献9は、空気噴流で水を変化させることで船を推進させる抵抗性張力を発生させて、摩擦抵抗を実質的に減少させる、船を推進させる装置を開示している。
【0012】
特許文献10は、マイクロバブルを生成することによって船内での摩擦抵抗を減少させる方法及び装置を開示している。
【0013】
特許文献11は、海洋車両用の気体注入システムを開示している。前記気体注入システムでは、1次気体注入器が船体の下方で軸方向の気体流を生成し、水の通期流を生成する1次通期装置が船体の下方に供され、かつ、主推進効果を与える傾斜面を備えて通期流をさらに精緻化する2次通期装置が供される。
【0014】
特許文献12は、空気を注入することで船首バルブ内の喫水線の下方で前記装甲の表面上にマイクロバブルを生成することによって船体の外部装甲と水との間での船の摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。
【0015】
特許文献13は、所定の直径のマイクロバブルを水流線の開始位置に隣接する位置及び静圧が低い位置から水へ注入することによって船体の摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。マイクロバブルが船体の沈められた部分の周辺領域の少なくとも一部に分布することで、航行中での船体の摩擦抵抗が減少する。
【0016】
最後に同一出願人の特許文献14は、水上車両等の排水を可能にする浮輪を開示している。前記浮輪は、船体に接続される軸に対して自由に回転するように固定される複数のブレードを備える球状の構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0266288A1号公報
【特許文献2】特許出願公開第2001-114185号公報
【特許文献3】特許第4959667号公報
【特許文献4】欧州特許第0926060A3号公報
【特許文献5】特許出願公開第2009-248611号公報
【特許文献6】特許出願公開第2010-280342号公報
【特許文献7】特許出願公開第昭60-139586号公報
【特許文献8】特許出願公開第昭62-268793号公報
【特許文献9】米国特許第276954号公報
【特許文献10】米国特許第5575232号公報
【特許文献11】米国特許第387885号公報
【特許文献12】米国特許第6789491B2号公報
【特許文献13】米国特許第6186085B1号公報
【特許文献14】欧州特許第0265382A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決するための課題】
【0018】
上述した従来技術の対象は多くの欠点を有していると思われる。とりわけこれらは効率的ではなく、航行中に船の摩擦抵抗を減少させるのに多くのエネルギーを必要とする。多くの場合でさえ、この目的のために消費されるエネルギーを考慮すると、摩擦抵抗の減少は最小であるし、この効果を生じさせる装置の複雑さについては言及していない。
【0019】
このようなことから、出願人は、船の船首及び/又は船尾内に設けられる少なくとも1つの回転体を有する新規な装置を開発した。回転は前記船の前進速さと同期し、前記船の長手方向の回転軸は前記船の前進方向に対して垂直に配置される。本願では、前記回転体は好適にはシリンダで、2つ以上の回転体の場合では、それらは同一の形状及び寸法である。しかし当業者は、前記回転体の形状及び寸法を任意の他の型の実施形態によって要求される必要性に適合させることができる。前記少なくとも1つのシリンダの長手方向回転軸が支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられる。前記支持手段はたとえばフォーク、枢動アーム等であってよい。駆動手段-たとえばエンジン-を用いることによって前記少なくとも1つのシリンダには回転推進力が与えられる。前記駆動手段は、伝送手段-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記少なくとも1つのシリンダの前記長手方向軸に関連付けられる。前記船の前進中での前記抵抗を減少させるという観点で最適な効果を実現するため、出願人は、前記少なくとも1つのシリンダの牽引は前記シリンダの直径の30%のオーダーでなければならないことを発見した。前記牽引が維持されることを保証するため、前記牽引を制御する手段-ピストン等であってよい-が供される。さらに前記船の前記船体に最も近い前記回転シリンダは、前記水によって与えられる前記前進とは反対の抵抗の最適な現象を実現するため、前記シリンダの直径の約5%以下の距離だけ前記船の前記船体から離間していなければならないことがわかった。
【0020】
上述の第1変形実施形態は、前記船の船首及び/又は船尾内に設けられる上記特徴を満たす単一の回転シリンダを有する。
【0021】
第2変形実施形態は、船の船首及び/又は船尾内に設けられる支持手段に取り付けられる1つ以上の回転シリンダを有する。前記船の前記船体に最も近い回転シリンダは、該シリンダの直径の約5%以下の距離だけ前記船の前記船体から離間し、前記2つ以上の回転シリンダは、前記船の前記前進速さに対して同期するように回転し、前記シリンダの直径の約5%以下の距離だけ互いに離間し、前記直径の30%のオーダーで牽引し、かつ、駆動手段に取り付けられる。前記回転シリンダの前記長手方向回転軸は、前記船の前進方向に対して垂直に配置される。前記駆動手段は、前記2つ以上の回転シリンダに取り付けられる単一のエンジンであってよいし、あるいは、前記シリンダの各々用の個々のエンジンであってもよい。前記エンジンは、伝送手段-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記回転シリンダの前記長手方向軸に関連付けられる。
【0022】
単一のシリンダの場合では、前進に対する抵抗の減少という最適な結果を実現するため、前記回転シリンダの浮遊レベルは、前記回転シリンダの直径の30%のオーダーの牽引によって一定に保たれなければならない。そのため牽引手段は前記支持手段に取り付けられる。前記牽引制御手段はピストン等であってよい。
【0023】
[牽引]
【0024】
研究段階中では、OpenFoamを備えるCFDシステムによってシミュレーションされる多数の試験後、出願人は、前述したように、シリンダの理想的な牽引は直径の30%のオーダーであることを確認した。その理由は、回転しない同一のものと比較した集合体の前進速さと同期した速さでの前記シリンダ―の回転は、前記牽引によって、前記前進に対する抵抗を全体抵抗の最大50%減少させることができるからである。前記牽引が前記直径の50%のときには、この減少はわずか5%である。
【表1】
【0025】
【0026】
[2つ以上のシリンダ間での間隔]
前述したように、出願人は、シリンダ本体同士が直径の約5%以下に接近するときに最適な距離が得られることを確認した。接近することで、非常に顕著な流体力学的相互作用を生じさせる。この相互作用は回転する本体が遠ざかるときに消えてしまう。
【0027】
[船首内での2つ以上のシリンダの構造の前部シリンダの推進力]
【0028】
回転シリンダの約5%以下の最適と約30%のオーダーの最適牽引によって、出願人は、船首内の2つ以上のシリンダの構造中の前方シリンダは、船の前進に対する抵抗の減少に寄与するだけではなく、システムにエネルギー-これは推進力と解される-を提供していることを確認した。
【0029】
この現象は、前記回転シリンダの過圧の効果及び前記シリンダの浸水プロファイルにわたる水流の速さの増大によって実現される。前記シリンダは一部しか沈められず、かつ、既に回転並進運動しているので、沈められた部分は、水の外部の部分と接触する空気よりも約1000倍密な媒質によって与えられる圧力を得る。前記の圧力差によって、集合体の前進方向と一致する推進力が回転並進運動となる。
【0030】
試験から得られた結果によると、直径すなわち長さ6mのシリンダは、深さ2mの牽引及び12mの長さ又はビームであれば、3.162m/秒の同期速さで73.14HPに相当する推進力をシステムに与える。
【0031】
[船首内に取り付けられた構造における3つのシリンダの同期された回転、及び、前方シリンダから後方シリンダまでの過回転]
【0032】
出願人は、集合体の前進速さに対する回転速さの割合の差を評価したことで、以降の図からわかるように前記シリンダで過回転を生成するときの抵抗が連続的に減少するのを観測した。S並進=S5=0.8m/秒回転速さによって計算される全体抵抗の変化
【表3】
【0033】
同期された回転で3つの回転シリンダの集合体を解析するとき、前方シリンダから後方シリンダへ向かって回転速さ又は過回転を増大させた変化についても論じた。その結果、以下の結果が得られた。A)1m/秒の速さで同期された回転をする3つのシリンダでは、得られた減少は集合体の前進に対する全体抵抗の43%であった。B)前方シリンダと中間シリンダの回転速さが同期され、後方シリンダの回転速さは前記同期された速さの2倍である3つのシリンダでは、得られた減少は集合体の前進に対する全体抵抗の52%であった。C)前方シリンダの回転速さが同期され、中間シリンダの回転速さは前記同期された速さの1.5倍で、後方シリンダの回転速さは前記同期された速さの2倍である3つのシリンダでは、得られた減少は集合体の前進に対する全体抵抗の56%であった。
【表4】
【表5】
【表6】
V00=回転なし
V10=同期された回転速さ=1m/秒
V15=同期された回転速さの1.5倍
V20=同期された回転速さの2倍
TEP=実効出力=(全体抵抗)×(前進速さ)
RP=回転出力
RP=(回転トルク)×(角回転速さ)
【表7】
V00=回転なし
V10=同期された回転速さ=1m/秒
V15=同期された回転速さの1.5倍
V20=同期された回転速さの2倍
TEP=実効出力=(全体抵抗)×(前進速さ)
RP=回転出力
RP=(回転トルク)×(角回転速さ)
【表8】
【0034】
上記からわかるように、過回転は全体抵抗の減少における顕著な効果を有する。エネルギーバランスの観点からは最適な選択は船の前進速さと同一の回転で同期することであるが、船の速さの増大を実現させる必要があるという観点からは、他の選択肢もかなり有効である。
様々な設定が試験された。A)すべてのシリンダの回転を同期するB)前方シリンダのみ同期するC)後方シリンダのみ同期するD)すべてのシリンダを回転させない
【0035】
すべての場合において最大の減少及び推進力さえも、常に前方シリンダによって供されることが観測された。
【0036】
しかし回転中にのみ-過回転の場合でも-後方シリンダが分析されたとき、前記後方シリンダは5%のオーダーで集合体の全体抵抗の減少をもたらす。
【0037】
その理由は、一般的には海事産業への利益をもたらす用途の一が、既存の海上輸送における1つ以上のシリンダと、将来組み込まれるシリンダを有して船首に取り付けられる構造の設置であることを、出願人が理解しているからである。
【0038】
期待されているように、回転の利点は用いられるスケールに漸進的に関連する。その理由は、船首及び/又は船尾における抵抗を減少させる方法を用いる各船は、それぞれの設定で最善のスケール選択を試すべきだからである。
【0039】
本発明の他の特徴は、単一の回転シリンダと2つ以上の回転シリンダのいずれの場合でも、シリンダは、流体又は粒子を装填することでその体積を利用し、かつ、輸送されるトン当たりのコスト比を改善することを可能にするタンクとして機能し得る。
【0040】
回転するシリンダは、如何なる型の羽又は翼を有しておらず、表面は可能な限り滑らかである。
【0041】
前進に対する抵抗を減少させる効果は、水中でのシリンダによって発生する抵抗よりもはるかに大きい。その理由は、圧力抵抗-残留抵抗又は波生成に対する抵抗とも呼ばれる-が修正されるからである。圧力抵抗は、船の全体抵抗の約90%の原因であり、かつ、速さに依存して指数関数的に増大する。
【0042】
さらに河川及び海洋輸送のコストは、燃料の消費と輸送時間に関するすべてのコスト-たとえば日常的なレンタル及び船員の雇用-を含む。それが、この装置によって、船の消費の減少又は一定の消費での船の前進速さの増大が考えられる理由である。この結果、船の汚染は少なくなり、かつ、経済的になり、あるいは、後方支援に関する限り節約によって船のサイクルタイムが短くなる。
【0043】
これにより、輸送される荷物のトン当たりに消費されるエネルギーの効率が非常に高くなり、加えて非常に安定した設計となる。
【0044】
従って本発明の対象は、航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置である。当該装置は、前記船の前進速さと同期して回転する少なくとも1つの回転体を備え、前記少なくとも1つの回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、前記少なくとも1つの回転体は前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられ、前記船の船体に最も近い回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間していることを特徴とする。
【0045】
航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置も請求項に記載されている。当該装置は前記船の前進速さと同期して回転する回転体を備え、前記回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、前記船の船体に最も近くの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間していることを特徴とする。
【0046】
本発明の他の対象は、航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置である。当該装置は、船の前進速さと同期して回転して、前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられる支持手段へ長手方向回転軸を貫通して取り付けられる2つ以上の回転体を備え、前記船の船体に最も近くの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間し、前記2つ以上の回転体は該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ互いに離間し、前記回転体の長手方向回転軸は前記船の前進方向に対して垂直に配置され、駆動手段に関連付けられ、かつ、前記支持手段は牽引制御手段に取り付けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】第1好適実施形態-具体的には直径の30%のオーダーで沈められる船と沈められない船の前進速さと同期して回転する回転シリンダ-の側面図を表している。
【
図2】第2好適実施形態-具体的には直径の30%のオーダーで沈められる船の前進速さと同期して回転する複数の回転シリンダ-の側面図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1の左部分は、船2の船首内に設けられて-船尾内に設けられてもよい-前記船2の前進速さと同期して回転する回転シリンダ1を表している。前記回転シリンダ1は、回転シリンダ1の長手方向回転軸3に関連付けられる支持及び牽引制御手段4によって前記船2に取り付けられる。長手方向回転軸3は、前記船2の前進方向に対して垂直に配置され、駆動手段(不図示)に関連付けられる。前記回転シリンダ1は、前記船の船首及び/又は船尾内に設けられ、かつ、回転シリンダの直径の約5%の距離だけ前記船の船体から離間する。
【0049】
さらに前記支持手段はフォークであってよい。前記回転シリンダ1が外回転シリンダ1の直径の30%のオーダーで沈められるように、前記牽引制御手段は、たとえばピストン等によって前記回転シリンダ1の浮遊レベルを制御してよい。
【0050】
続いて
図1の右部分は、沈んでいないすなわち前記支持及び牽引制御手段4によって持ち上げられる前記回転シリンダ1を表している。
【0051】
前記回転シリンダ1には、前記駆動手段(不図示)-たとえばエンジン-によって回転推進力が与えられる。前記駆動手段は、伝送手段(不図示)-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記回転シリンダの前記長手方向回転軸3に関連付けられる。このようにして前記船2の前進速さと同期した前記回転シリンダ1の回転が実現される。前記回転シリンダ1の表面は滑らかである。前記回転シリンダ1はまた、前記駆動手段(不図示)によって与えられる過回転能力をも有する。
【0052】
図2は、長手方向回転軸10を貫通する支持手段11に取り付けられている2つ以上の回転シリンダ8を表している。前記支持手段11は船9の船首内に配置されている(ただし前記支持手段11は船9の船尾内に配置されてもよい。)。前記船9の船体に最も近い回転シリンダは、該シリンダの直径の約5%以下の距離だけ前記船9の前記船体から離間している。前記長手方向回転軸10は船9の前進方向に対して垂直に配置される。前記支持手段11は牽引制御手段13に関連付けられる。牽引制御手段13は、前記2つ以上の回転シリンダ8が直径の30%のオーダーで沈むように前記2つ以上の回転シリンダ8の浮遊レベルを制御する。前記2つ以上の回転シリンダ8には駆動手段(不図示)-たとえば1つのエンジン又は回転シリンダ8の各々の独立したエンジン-によって回転推進力が与えられる。前記駆動手段は、伝送手段(不図示)-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記回転シリンダの前記長手方向回転軸10に関連付けられる。
【0053】
前記支持手段11はたとえばフォークであってよい。前記牽引制御手段13はたとえばピストンであってよい。繰り返しになるが前記回転シリンダ8の表面は滑らかである。
【0054】
また前記1つの回転シリンダ1又は前記2つ以上の回転シリンダ8は内部に荷物を担持してよい。
【手続補正書】
【提出日】2020-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の操縦中での前記船の前進に対する抵抗を減少させる船首及び/又は船尾の装置に関する。
【0002】
本発明の装置によって、摩擦抵抗又は粘性抗力及び圧力抵抗-残留抵抗又は波の生成に対する抵抗とも呼ばれる-によって構成される前進に対する抵抗は減少し、船の消費の減少又は一定の消費に対する船の前進速さの増大が実現される。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、水中に気体を放出し、船体の船首又は船尾内での水位下の所定の位置に複数の気体流出口を供給し、船体を上方に押すことで船体と表面で接する水の平均密度を減少させることによって船の本体部と水との間での摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、腐食防止処置が施された船の外部装甲の表面上での海水の流れの方向に沿って形成される非常に細いスリットによって船体内での圧力を減少させる方法を開示している。その結果船体の抵抗が減少し、海洋生物の付着が防止される。
【0005】
特許文献3は、内部に空気チャンバが存在する船の下部内に形成される複数の穴から気泡を生成する均等な空気噴流を放出する機能を有する船体内での摩擦抵抗を減少させる装置を開示している。
【0006】
特許文献4は、長手方向に沿って特定の距離だけ離間する複数の選ばれた位置から気体を水へ注入することによって水に対する摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。
【0007】
特許文献5は、船の操縦状態又は船の状態に従って気泡の生成位置と気泡の数を適切に変化させる機能を有する水に対する船の摩擦抵抗を減少させることで、乱流が生じるときでさえ気泡の厳密な流れによって摩擦抵抗を実効的に減少させる装置を開示している。
【0008】
特許文献6は、船体内で微細な気泡を生成して船体の沈められた表面上の微細な気泡を含む水の厚い層を生成することによって流体の摩擦抵抗を減少させる装置を開示している。前記装置は、吸い込まれた水中に多量の空気を混合させる機能を有するポンプを用いる。
【0009】
特許文献7は、船の下側装甲の前方船体内に設置される覆いに相互接続される、摩擦抵抗を減少させる気泡生成装置を開示している。
【0010】
特許文献8は、動的圧力が負になる船首バルブの両側の3層中に配置される空気を流す手段を供することによって摩擦抵抗を減少させる装置を開示している。
【0011】
特許文献9は、空気噴流で水を変化させることで船を推進させる抵抗性張力を発生させて、摩擦抵抗を実質的に減少させる、船を推進させる装置を開示している。
【0012】
特許文献10は、マイクロバブルを生成することによって船内での摩擦抵抗を減少させる方法及び装置を開示している。
【0013】
特許文献11は、海洋車両用の気体注入システムを開示している。前記気体注入システムでは、1次気体注入器が船体の下方で軸方向の気体流を生成し、水の通期流を生成する1次通期装置が船体の下方に供され、かつ、主推進効果を与える傾斜面を備えて通期流をさらに精緻化する2次通期装置が供される。
【0014】
特許文献12は、空気を注入することで船首バルブ内の喫水線の下方で前記装甲の表面上にマイクロバブルを生成することによって船体の外部装甲と水との間での船の摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。
【0015】
特許文献13は、所定の直径のマイクロバブルを水流線の開始位置に隣接する位置及び静圧が低い位置から水へ注入することによって船体の摩擦抵抗を減少させる方法を開示している。マイクロバブルが船体の沈められた部分の周辺領域の少なくとも一部に分布することで、航行中での船体の摩擦抵抗が減少する。
【0016】
特許文献14は、水との摩擦を減少させるローラーが供された船体を有する高速ボートを開示している。
【0017】
特許文献15は表面効果船用の船首シールを開示している。前記表面効果船は少なくとも部分的に、船体と表面水との間に生成されて含まれる加圧気体のクッションによって支持される。ローラーには、船首と船尾のシールの引っ張りを減少させる機能が竜骨の船尾に供される。
【0018】
特許文献16は、船体の底部に沿って延びて動作中には一部だけ喫水線より下に存在する排水管を備える変位した船体を開示している。抗力装置は容器へ推進力を与える。一の実施形態では、前記抗力装置は、軸が容器の運動方向に対して水平かつ垂直である回転駆動シリンダである。
【0019】
特許文献17は、浮力を増大させ、この方法によって濡れた船体領域を減少させることで進行時での外板の摩擦を抑制する船体の下側内の加圧された空気ポケットを備える海洋製品を開示している。
【0020】
最後に同一出願人の特許文献18は、水上車両等の排水を可能にする浮輪を開示している。前記浮輪は、船体に接続される軸に対して自由に回転するように固定される複数のブレードを備える球状の構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0266288A1号公報
【特許文献2】特許出願公開第2001-114185号公報
【特許文献3】特許第4959667号公報
【特許文献4】欧州特許第0926060A3号公報
【特許文献5】特許出願公開第2009-248611号公報
【特許文献6】特許出願公開第2010-280342号公報
【特許文献7】特許出願公開第昭60-139586号公報
【特許文献8】特許出願公開第昭62-268793号公報
【特許文献9】米国特許第276954号公報
【特許文献10】米国特許第5575232号公報
【特許文献11】米国特許第387885号公報
【特許文献12】米国特許第6789491B2号公報
【特許文献13】米国特許第6186085B1号公報
【特許文献14】米国特許第1364470A号公報
【特許文献15】米国特許第3981260A号公報
【特許文献16】米国特許第4070982A号公報
【特許文献17】英国特許第2426488A号公報
【特許文献18】欧州特許第0265382A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決する課題】
【0022】
上述した従来技術の対象は多くの欠点を有していると思われる。とりわけこれらは効率的ではなく、航行中に船の摩擦抵抗を減少させるのに多くのエネルギーを必要とする。多くの場合でさえ、この目的のために消費されるエネルギーを考慮すると、摩擦抵抗の減少は最小であるし、この効果を生じさせる装置の複雑さについては言及していない。
【0023】
このようなことから、出願人は、船の船首及び/又は船尾内に設けられる少なくとも1つの回転体を有する新規な装置を開発した。回転は前記船の前進速さと同期し、前記船の長手方向の回転軸は前記船の前進方向に対して垂直に配置される。本願では、前記回転体は好適にはシリンダで、2つ以上の回転体の場合では、それらは同一の形状及び寸法である。しかし当業者は、前記回転体の形状及び寸法を任意の他の型の実施形態によって要求される必要性に適合させることができる。前記少なくとも1つのシリンダの長手方向回転軸が支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられる。前記支持手段はたとえばフォーク、枢動アーム等であってよい。駆動手段-たとえばエンジン-を用いることによって前記少なくとも1つのシリンダには回転推進力が与えられる。前記駆動手段は、伝送手段-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記少なくとも1つのシリンダの前記長手方向軸に関連付けられる。前記船の前進中での前記抵抗を減少させるという観点で最適な効果を実現するため、出願人は、前記少なくとも1つのシリンダの牽引は前記シリンダの直径の30%のオーダーでなければならないことを発見した。前記牽引が維持されることを保証するため、前記牽引を制御する手段-ピストン等であってよい-が供される。さらに前記船の前記船体に最も近い前記回転シリンダは、前記水によって与えられる前記前進とは反対の抵抗の最適な現象を実現するため、前記シリンダの直径の約5%以下の距離だけ前記船の前記船体から離間していなければならないことがわかった。
【0024】
上述の第1変形実施形態は、前記船の船首及び/又は船尾内に設けられる上記特徴を満たす単一の回転シリンダを有する。
【0025】
第2変形実施形態は、船の船首及び/又は船尾内に設けられる支持手段に取り付けられる1つ以上の回転シリンダを有する。前記船の前記船体に最も近い回転シリンダは、該シリンダの直径の約5%以下の距離だけ前記船の前記船体から離間し、前記2つ以上の回転シリンダは、前記船の前記前進速さに対して同期するように回転し、前記シリンダの直径の約5%以下の距離だけ互いに離間し、前記直径の30%のオーダーで牽引し、かつ、駆動手段に取り付けられる。前記回転シリンダの前記長手方向回転軸は、前記船の前進方向に対して垂直に配置される。前記駆動手段は、前記2つ以上の回転シリンダに取り付けられる単一のエンジンであってよいし、あるいは、前記シリンダの各々用の個々のエンジンであってもよい。前記エンジンは、伝送手段-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記回転シリンダの前記長手方向軸に関連付けられる。
【0026】
単一のシリンダの場合では、前進に対する抵抗の減少という最適な結果を実現するため、前記回転シリンダの浮遊レベルは、前記回転シリンダの直径の30%のオーダーの牽引によって一定に保たれなければならない。そのため牽引手段は前記支持手段に取り付けられる。前記牽引制御手段はピストン等であってよい。
【0027】
[牽引]
【0028】
研究段階中では、OpenFoamを備えるCFDシステムによってシミュレーションされる多数の試験後、出願人は、前述したように、シリンダの理想的な牽引は直径の30%のオーダーであることを確認した。その理由は、回転しない同一のものと比較した集合体の前進速さと同期した速さでの前記シリンダ―の回転は、前記牽引によって、前記前進に対する抵抗を全体抵抗の最大50%減少させることができるからである。前記牽引が前記直径の50%のときには、この減少はわずか5%である。
【表1】
【0029】
【0030】
[2つ以上のシリンダ間での間隔]
前述したように、出願人は、シリンダ本体同士が直径の約5%以下に接近するときに最適な距離が得られることを確認した。接近することで、非常に顕著な流体力学的相互作用を生じさせる。この相互作用は回転する本体が遠ざかるときに消えてしまう。
【0031】
[船首内での2つ以上のシリンダの構造の前部シリンダの推進力]
【0032】
回転シリンダの約5%以下の最適と約30%のオーダーの最適牽引によって、出願人は、船首内の2つ以上のシリンダの構造中の前方シリンダは、船の前進に対する抵抗の減少に寄与するだけではなく、システムにエネルギー-これは推進力と解される-を提供していることを確認した。
【0033】
この現象は、前記回転シリンダの過圧の効果及び前記シリンダの浸水プロファイルにわたる水流の速さの増大によって実現される。前記シリンダは一部しか沈められず、かつ、既に回転並進運動しているので、沈められた部分は、水の外部の部分と接触する空気よりも約1000倍密な媒質によって与えられる圧力を得る。前記の圧力差によって、集合体の前進方向と一致する推進力が回転並進運動となる。
【0034】
試験から得られた結果によると、直径すなわち長さ6mのシリンダは、深さ2mの牽引及び12mの長さ又はビームであれば、3.162m/秒の同期速さで73.14HPに相当する推進力をシステムに与える。
【0035】
[船首内に取り付けられた構造における3つのシリンダの同期された回転、及び、前方シリンダから後方シリンダまでの過回転]
【0036】
出願人は、集合体の前進速さに対する回転速さの割合の差を評価したことで、以降の図からわかるように前記シリンダで過回転を生成するときの抵抗が連続的に減少するのを観測した。S並進=S5=0.8m/秒
回転速さによって計算される全体抵抗の変化
【表3】
【0037】
同期された回転で3つの回転シリンダの集合体を解析するとき、前方シリンダから後方シリンダへ向かって回転速さ又は過回転を増大させた変化についても論じた。その結果、以下の結果が得られた。A)1m/秒の速さで同期された回転をする3つのシリンダでは、得られた減少は集合体の前進に対する全体抵抗の43%であった。B)前方シリンダと中間シリンダの回転速さが同期され、後方シリンダの回転速さは前記同期された速さの2倍である3つのシリンダでは、得られた減少は集合体の前進に対する全体抵抗の52%であった。C)前方シリンダの回転速さが同期され、中間シリンダの回転速さは前記同期された速さの1.5倍で、後方シリンダの回転速さは前記同期された速さの2倍である3つのシリンダでは、得られた減少は集合体の前進に対する全体抵抗の56%であった。
【表4】
【表5】
【表6】
V00=回転なし
V10=同期された回転速さ=1m/秒
V15=同期された回転速さの1.5倍
V20=同期された回転速さの2倍
TEP=実効出力=(全体抵抗)×(前進速さ)
RP=回転出力
RP=(回転トルク)×(角回転速さ)
【表7】
V00=回転なし
V10=同期された回転速さ=1m/秒
V15=同期された回転速さの1.5倍
V20=同期された回転速さの2倍
TEP=実効出力=(全体抵抗)×(前進速さ)
RP=回転出力
RP=(回転トルク)×(角回転速さ)
【表8】
【0038】
上記からわかるように、過回転は全体抵抗の減少における顕著な効果を有する。エネルギーバランスの観点からは最適な選択は船の前進速さと同一の回転で同期することであるが、船の速さの増大を実現させる必要があるという観点からは、他の選択肢もかなり有効である。
様々な設定が試験された。A)すべてのシリンダの回転を同期するB)前方シリンダのみ同期するC)後方シリンダのみ同期するD)すべてのシリンダを回転させない
【0039】
すべての場合において最大の減少及び推進力さえも、常に前方シリンダによって供されることが観測された。
【0040】
しかし回転中にのみ-過回転の場合でも-後方シリンダが分析されたとき、前記後方シリンダは5%のオーダーで集合体の全体抵抗の減少をもたらす。
【0041】
その理由は、一般的には海事産業への利益をもたらす用途の一が、既存の海上輸送における1つ以上のシリンダと、将来組み込まれるシリンダを有して船首に取り付けられる構造の設置であることを、出願人が理解しているからである。
【0042】
期待されているように、回転の利点は用いられるスケールに漸進的に関連する。その理由は、船首及び/又は船尾における抵抗を減少させる方法を用いる各船は、それぞれの設定で最善のスケール選択を試すべきだからである。
【0043】
本発明の他の特徴は、単一の回転シリンダと2つ以上の回転シリンダのいずれの場合でも、シリンダは、流体又は粒子を装填することでその体積を利用し、かつ、輸送されるトン当たりのコスト比を改善することを可能にするタンクとして機能し得る。
【0044】
回転するシリンダは、如何なる型の羽又は翼を有しておらず、表面は可能な限り滑らかである。
【0045】
前進に対する抵抗を減少させる効果は、水中でのシリンダによって発生する抵抗よりもはるかに大きい。その理由は、圧力抵抗-残留抵抗又は波生成に対する抵抗とも呼ばれる-が修正されるからである。圧力抵抗は、船の全体抵抗の約90%の原因であり、かつ、速さに依存して指数関数的に増大する。
【0046】
さらに河川及び海洋輸送のコストは、燃料の消費と輸送時間に関するすべてのコスト-たとえば日常的なレンタル及び船員の雇用-を含む。それが、この装置によって、船の消費の減少又は一定の消費での船の前進速さの増大が考えられる理由である。この結果、船の汚染は少なくなり、かつ、経済的になり、あるいは、後方支援に関する限り節約によって船のサイクルタイムが短くなる。
【0047】
これにより、輸送される荷物のトン当たりに消費されるエネルギーの効率が非常に高くなり、加えて非常に安定した設計となる。
【0048】
従って本発明の対象は、航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置である。当該装置は、前記船の前進速さと同期して回転する少なくとも1つの回転体を備え、前記少なくとも1つの回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、前記少なくとも1つの回転体は前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられ、前記船の船体に最も近い回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間していることを特徴とする。
【0049】
航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置も請求項に記載されている。当該装置は前記船の前進速さと同期して回転する回転体を備え、前記回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、前記船の船体に最も近くの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間していることを特徴とする。
【0050】
本発明の他の対象は、航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる装置である。当該装置は、船の前進速さと同期して回転して、前記船の前記船首及び/又は前記船尾内に設けられる支持手段へ長手方向回転軸を貫通して取り付けられる2つ以上の回転体を備え、前記船の船体に最も近くの回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間し、前記2つ以上の回転体は該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ互いに離間し、前記回転体の長手方向回転軸は前記船の前進方向に対して垂直に配置され、駆動手段に関連付けられ、かつ、前記支持手段は牽引制御手段に取り付けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】第1好適実施形態-具体的には直径の30%のオーダーで沈められる船と沈められない船の前進速さと同期して回転する回転シリンダ-の側面図を表している。
【
図2】第2好適実施形態-具体的には直径の30%のオーダーで沈められる船の前進速さと同期して回転する複数の回転シリンダ-の側面図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1の左部分は、船2の船首内に設けられて-船尾内に設けられてもよい-前記船2の前進速さと同期して回転する回転シリンダ1を表している。前記回転シリンダ1は、回転シリンダ1の長手方向回転軸3に関連付けられる支持及び牽引制御手段4によって前記船2に取り付けられる。長手方向回転軸3は、前記船2の前進方向に対して垂直に配置され、駆動手段(不図示)に関連付けられる。前記回転シリンダ1は、前記船の船首及び/又は船尾内に設けられ、かつ、回転シリンダの直径の約5%の距離だけ前記船の船体から離間する。
【0053】
さらに前記支持手段はフォークであってよい。前記回転シリンダ1が外回転シリンダ1の直径の30%のオーダーで沈められるように、前記牽引制御手段は、たとえばピストン等によって前記回転シリンダ1の浮遊レベルを制御してよい。
【0054】
続いて
図1の右部分は、沈んでいないすなわち前記支持及び牽引制御手段4によって持ち上げられる前記回転シリンダ1を表している。
【0055】
前記回転シリンダ1には、前記駆動手段(不図示)-たとえばエンジン-によって回転推進力が与えられる。前記駆動手段は、伝送手段(不図示)-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記回転シリンダの前記長手方向回転軸3に関連付けられる。このようにして前記船2の前進速さと同期した前記回転シリンダ1の回転が実現される。前記回転シリンダ1の表面は滑らかである。前記回転シリンダ1はまた、前記駆動手段(不図示)によって与えられる過回転能力をも有する。
【0056】
図2は、長手方向回転軸10を貫通する支持手段11に取り付けられている2つ以上の回転シリンダ8を表している。前記支持手段11は船9の船首内に配置されている(ただし前記支持手段11は船9の船尾内に配置されてもよい。)。前記船9の船体に最も近い回転シリンダは、該シリンダの直径の約5%以下の距離だけ前記船9の前記船体から離間している。前記長手方向回転軸10は船9の前進方向に対して垂直に配置される。前記支持手段11は牽引制御手段13に関連付けられる。牽引制御手段13は、前記2つ以上の回転シリンダ8が直径の30%のオーダーで沈むように前記2つ以上の回転シリンダ8の浮遊レベルを制御する。前記2つ以上の回転シリンダ8には駆動手段(不図示)-たとえば1つのエンジン又は回転シリンダ8の各々の独立したエンジン-によって回転推進力が与えられる。前記駆動手段は、伝送手段(不図示)-たとえばベルト、ストラップ、鎖等-によって前記回転シリンダの前記長手方向回転軸10に関連付けられる。
【0057】
前記支持手段11はたとえばフォークであってよい。前記牽引制御手段13はたとえばピストンであってよい。繰り返しになるが前記回転シリンダ8の表面は滑らかである。
【0058】
また前記1つの回転シリンダ1又は前記2つ以上の回転シリンダ8は内部に荷物を担持してよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航行中に船の前進に対する抵抗を減少させる装置であって、
少なくとも1つの回転体を備え、前記少なくとも1つの回転体は、前記船の前進方向に垂直に配置される長手方向回転軸と駆動手段に関連づけられる支持及び牽引制御手段によって前記船に取り付けられ、前記少なくとも1つの回転体は前記船の前記船首
の前方/又は前記船尾
の後方に設けられ、
前記少なくとも1つの回転体の回転は前記船の前進速さと同期し、前記船の船体に最も近い回転体は、該回転体の最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の船体から離間し、
前記支持及び牽引制御手段は、ピストンに関連付けられるフォークで、航行中に最大直径の30%のオーダーで沈む状態に前記回転体を維持し、
前記駆動手段は前記回転体を回転可能に推進
し、
前記駆動手段はエンジンで、かつ伝送手段によって前記少なくとも1つの回転体の前記長手方向回転軸に関連付けられる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記送信手段はベルト、ストラップ、又はギアであることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記少なくとも1つの回転体の表面は滑らかで、
前記少なくとも1つの回転体の内部は、荷物を担持する機能を有するために中空状である、
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの回転体がシリンダであることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、最大直径の約5%以下の距離だけ互いに離間する2つ以上の回転シリンダを備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置を用いることによって航行中の船の前進に対する抵抗を減少させる
方法であっ
て、
前記船の前進速さと同期するように前記少なくとも1つの回転体を回転させる段階と、
航行中に前記最大直径の30%のオーダーで沈む状態に前記少なくとも1つの回転体を維持する段階と、
航行中に前記最大直径の約5%以下の距離だけ前記船の前記船体から離間するように前記少なくとも1つの回転体を維持する段階と、
を有する方法。
【国際調査報告】