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特表2022-518413ポリウレタン樹脂を含む化粧用O/Wマスカラ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂を含む化粧用O/Wマスカラ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/87 20060101AFI20220308BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220308BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/06
A61Q1/10
A61K8/92
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540480
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2019025454
(87)【国際公開番号】W WO2020147915
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】19020025.3
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501328614
【氏名又は名称】ザ ブーツ カンパニー ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ビリンガー、エマ
(72)【発明者】
【氏名】トムリンソン、ポール・ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB151
4C083AB171
4C083AB232
4C083AB381
4C083AB431
4C083AB441
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC431
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC811
4C083AC901
4C083AD021
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD111
4C083AD151
4C083AD161
4C083AD241
4C083AD261
4C083AD271
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD411
4C083BB12
4C083CC14
4C083DD23
4C083DD33
4C083DD47
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
本発明によると、水中油型エマルジョンの形態の安定した、流体のチュービングマスカラ組成物であって、(i)全組成物の少なくとも9重量%の1種以上の膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂と、(ii)1種以上のワックスとを含み、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.70~0.92である、チュービングマスカラ組成物が提供される。本発明はまた、睫毛をコーティングするためのマスカラ組成物を包装及び塗布するためのアセンブリ又はキットであって、(i)上で規定したマスカラ組成物を包装するためのデバイスと、(ii)組成物用のアプリケーターとを備える、アセンブリ又はキットを提供する。本発明はまた、マスカラ組成物の層を睫毛上に構築するために上で規定したアセンブリ又はキットを使用する方法であって、(i)マスカラ組成物をアプリケーターに塗布する工程と、(ii)マスカラ組成物が睫毛の根元から睫毛の先端まで睫毛に塗布されるようにアプリケーターを動かす工程と、(iii)マスカラ組成物の均一なコートを睫毛に塗布するため、任意に(ii)を繰り返す工程と、(iv)任意に工程(i)~工程(iii)を繰り返し、睫毛上に存在するマスカラ組成物がまだ乾燥していない間にマスカラ組成物のその後の再塗布を行う工程とを含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルジョンの形態の安定した、流体のチュービングマスカラ組成物であって、
(i)全組成物の少なくとも9重量%の1種以上の膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂と、
(ii)1種以上のワックスと、
を含み、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.70~0.92である、チュービングマスカラ組成物。
【請求項2】
1種以上の前記膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂がポリエーテル-ポリウレタン樹脂、好ましくはPPG-17/IPDI/DMPAコポリマーを含む、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項3】
前記全膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂濃度が、全組成物の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも11重量%、より好ましくは少なくとも12重量%である、請求項1又は2に記載のマスカラ組成物。
【請求項4】
前記1種以上のワックスが、パラフィンワックス等の石油ワックス、微結晶ワックス、特にokerinワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、シナワックス、米ワックス、オークリーワックス、エスパルトグラスワックス、サトウキビワックス、モクロウ、スマックワックス、水素化ホホバ油、水素化パーム油等の植物若しくは動物起源のワックス、モンタンワックス及びオゾケライト等のミネラルワックス、PEG6000等のポリエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュ合成によって得られるワックス、C20~C40アルキルヒドロキシステアリルオキシステアリン酸塩、ワックス状コポリマー、特に、エチレン/酢酸ビニルコポリマー及びそれらのエステル、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~C32脂肪鎖を有する動物油若しくは植物油の触媒水素化によって得られるワックス、ステアリルアルコールでエステル化されたオリーブ油の水素化によって得られるワックス、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックス、炭素数16~45のアルキルジメチコン若しくはアルコキシジメチコン等のシリコーンワックス、フルオロワックス、又はこれらの組合せを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマスカラ組成物。
【請求項5】
前記1種以上のワックスが、パラフィンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、又はこれらの組合せを含む、請求項4に記載のマスカラ組成物。
【請求項6】
前記全ワックス濃度が、全組成物の少なくとも14重量%、好ましくは少なくとも15重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のマスカラ組成物。
【請求項7】
前記組成物が、C16~C40脂肪酸石鹸ベース系又はその組合せ等の1種以上の乳化剤、好ましくはセテアリルアルコール、ステアレス-21、C20~C40パレス-40、ステアレス-2、ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、リン酸セチルカリウム、セテアレス20、ステアレス20、ステアリン酸PEG200グリセリル、又はこれらの組合せを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のマスカラ組成物。
【請求項8】
全乳化剤濃度が、全組成物の6重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは4重量%未満、より好ましくは3.5重量%未満である、請求項7に記載のマスカラ組成物。
【請求項9】
前記マスカラ組成物が、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、ポリアミド粉末、ナイロン粉末、例えばナイロン6、レーヨン、シリカ、処理されたシリカ、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、ポリエチレン粉末、PTFE粉末、デンプン、窒化ホウ素、コポリマーマイクロスフェア、シリコーン樹脂マイクロビーズ、タルク、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、及びこれらの組合せ等の1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のマスカラ組成物。
【請求項10】
全ボリューマイジング粉末/充填剤濃度が、全組成物の2重量%~20重量%、好ましくは5重量%~15重量%、より好ましくは8重量%~12重量%である、請求項9に記載のマスカラ組成物。
【請求項11】
前記全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が、0.72~0.92、0.74~0.92、0.76~0.92、0.78~0.92、0.79~0.92、0.70~0.90、0.70~0.88、0.70~0.86、0.70~0.84、0.70~0.82、0.70~0.81、0.70~0.80、0.72~0.88、0.74~0.84、0.76~0.82、又は0.78~0.80である、請求項1~10のいずれか一項に記載のマスカラ組成物。
【請求項12】
前記マスカラ組成物が水溶性ポリマーを更に含み、好ましくは、前記水溶性ポリマーが、キサンタンガム等のガム、デキストリン、デンプン、ゼラチン及びアルブミン等のタンパク質、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、可溶性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸クロスポリマー、ポリアクリル酸、ベントナイト、ラポナイト、非分散シリコン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、又はこれらの組合せである、請求項1~11のいずれか一項に記載のマスカラ組成物。
【請求項13】
睫毛をコーティングするためのマスカラ組成物を包装及び塗布するためのアセンブリ又はキットであって、
(i)請求項1~12のいずれか一項に記載のマスカラ組成物を包装するためのデバイスと、
(ii)前記組成物用のアプリケーターと、
を備える、アセンブリ又はキット。
【請求項14】
マスカラ組成物の層を睫毛上に構築するために請求項13に記載のアセンブリ又はキットを使用する方法であって、
(i)前記マスカラ組成物をアプリケーターに塗布する工程と、
(ii)前記マスカラ組成物が睫毛の根元から睫毛の先端まで前記睫毛に塗布されるように前記アプリケーターを動かす工程と、
(iii)前記マスカラ組成物の均一なコートを前記睫毛に塗布するため、任意に(ii)を繰り返す工程と、
(iv)任意に工程(i)~工程(iii)を繰り返し、前記睫毛上に存在する前記マスカラ組成物がまだ乾燥していない間に前記マスカラ組成物のその後の再塗布を行う工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリュームのある化粧効果を提供するために構築可能な(buildable)新規の安定した流体チュービングマスカラ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者はロングウェア(long-wear)のカラー化粧品を求め続けている。Mintel社によると、「化粧持ちがよい(long-lasting)」は2016年及び2017年にカラー化粧品部門内で最も頻繁に主張されており、消費者は、再塗布せずに一日中長持ちし、湿気の多い環境において又は運動中につけることができる化粧品の使用をますます望んでいる。
【0003】
マスカラ化粧品に関して、従来のマスカラは、摩擦又は水等の外力を受けた場合、睫毛に十分に定着しない傾向がある。さらに、これらのマスカラは、製剤が睫毛から剥がれると、しばしばユーザーの顔を汚して、見栄えの良くない「パンダ目」の外観を生じる。かかる課題を解決しようとすると、所望の増粘効果(thickening effect)を提供しないか、又は除去し難いため、かかる製剤を除去した後に睫毛が損傷するマスカラが出てきている。
【0004】
チュービングマスカラは、「チューブ」、すなわち円筒状の塊で取れることで、汚れず、上記で説明した「パンダ目」の課題を解決する。これは、製剤中に比較的高濃度の膜形成性ポリマー(脂肪族ポリウレタン樹脂等)を使用することによって達成される。これらのチュービングマスカラは、一般的に温水を使用することで除去することができるため、耐汗性、耐湿性のロングウェアを提供する。
【0005】
しかしながら、出版物で検討されているように(例えば、2018年3月14日付の非特許文献1)、チュービングマスカラに共通する欠点は、ボリュームのある外観を実現するために層状に構築するのが非常に難しいことである。チュービングマスカラでボリュームのある外観を実現するために、当該技術分野で検討されている手法としては、横方向の塗布(side-ways application)(2018年4月11日付の非特許文献2を参照されたい)を用いることが挙げられるが、これは実際には塊(ダマ)を作らずに実施することは困難である。別の手法は、チュービングマスカラと組み合わせてペンシルアイライナーを使用することを含む(https://www.lorealparisusa.com/beauty-magazine/makeup/eye-makeup/how-to-use-tubing-mascara.aspx(2018年9月13日にアクセス)から得られる非特許文献3を参照されたい)が、この手法は複数の製品を使用することを含み、あまり簡便ではなく、これも実際に行うことが困難である。
【0006】
特許文献1は、構築可能ではないワンコート(one-coat)マスカラ組成物に関する。
【0007】
特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、及び特許文献11はいずれも、チューブ形成性ではないマスカラ組成物に関する。
【0008】
特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、及び特許文献23はいずれも、本発明のエマルジョンではなくゲル形態のマスカラ組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8992899号
【特許文献2】米国特許出願公開第2015283062号
【特許文献3】米国特許出願公開第2015174056号
【特許文献4】仏国特許第2920092号
【特許文献5】米国特許出願公開第2008014164号
【特許文献6】米国特許出願公開第2007025943号
【特許文献7】米国特許第8211415号
【特許文献8】米国特許出願公開第20050180936号
【特許文献9】米国特許第6517823号
【特許文献10】米国特許第6491931号
【特許文献11】米国特許第6482400号
【特許文献12】仏国特許第2859100号
【特許文献13】米国特許第7993632号
【特許文献14】米国特許出願公開第2004180021号
【特許文献15】米国特許出願公開第2003118542号
【特許文献16】米国特許第6991782号
【特許文献17】仏国特許第2818900号
【特許文献18】米国特許第6835399号
【特許文献19】米国特許出願公開第2004022752号
【特許文献20】米国特許第6946123号
【特許文献21】米国特許第7867504号
【特許文献22】米国特許第6464969号
【特許文献23】米国特許第6264933号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Abbersteen, Lucy "Tubing mascaras: What are they and should you be using one?", Marie Claire, 2018年3月14日
【非特許文献2】George, Jenn "Tubing mascaras: The smudge-free formulas that dreams are made of", Glamour, 2018年4月11日
【非特許文献3】L'Oreal Beauty Magazine "How to Use Tubing Mascara"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
チューブ形成性(すなわち、除去の際に汚れず、温水で除去されてチューブを形成する)であって、ボリュームのある外観を実現するため構築可能であるマスカラを提供する手段は依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、驚いたことに、高濃度の膜形成性ポリマー(脂肪族ポリウレタン樹脂等)を含み、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.70~0.92であるエマルジョン組成物を配合することで、マスカラ組成物においてチューブ形成性のロングウェアを提供することと、構築可能なボリューマイジング効果を提供することとの間でバランスをとることができることを実証した。
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、水中油型エマルジョンの形態の安定した、流体のチュービングマスカラ組成物であって、(i)全組成物の少なくとも7重量%の1種以上の膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂と、(ii)1種以上のワックスとを含み、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.70~0.92である、チュービングマスカラ組成物を提供する。
【0014】
一実施の形態では、マスカラ組成物の1種以上の膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂はポリエーテル-ポリウレタン樹脂、好ましくはPPG-17/IPDI/DMPAコポリマーを含む。一実施の形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の全濃度は、全組成物の少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも9重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも11重量%、より好ましくは少なくとも12重量%である。
【0015】
更なる態様によれば、本発明は、水中油型エマルジョンの形態の安定した、流体のチュービングマスカラ組成物であって、(i)全組成物の少なくとも9重量%の1種以上の膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂と、(ii)1種以上のワックスとを含み、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.70~0.92である、チュービングマスカラ組成物を提供する。
【0016】
一実施の形態では、マスカラ組成物の1種以上の膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂はポリエーテル-ポリウレタン樹脂、好ましくはPPG-17/IPDI/DMPAコポリマーを含む。一実施の形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の全濃度は、全組成物の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも11重量%、より好ましくは少なくとも12重量%である。
【0017】
一実施の形態では、マスカラ組成物中に存在する1種以上のワックスは、パラフィンワックス等の石油ワックス、微結晶ワックス、特にokerinワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、シナワックス(Chinese insect waxes)、米ワックス、オークリーワックス(ouricury wax)、エスパルトグラスワックス、サトウキビワックス、モクロウ(Japan wax)、スマックワックス(sumach wax)、水素化ホホバ油、水素化パーム油等の植物若しくは動物起源のワックス、モンタンワックス及びオゾケライト等のミネラルワックス、PEG6000等のポリエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)合成によって得られるワックス、C20~C40アルキルヒドロキシステアリルオキシステアリン酸塩、ワックス状コポリマー、特に、エチレン/酢酸ビニルコポリマー及びそれらのエステル、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~C32脂肪鎖を有する動物油若しくは植物油の触媒水素化によって得られるワックス、ステアリルアルコールでエステル化されたオリーブ油の水素化によって得られるワックス、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックス、炭素数16~45のアルキルジメチコン若しくはアルコキシジメチコン等のシリコーンワックス、フルオロワックス、又はこれらの組合せを含む。好ましい実施の形態では、1種以上のワックスは、パラフィンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、又はこれらの組合せを含む。一実施の形態では、マスカラ組成物中に存在するワックスの全濃度は、全組成物の少なくとも14重量%、好ましくは少なくとも15重量%である。一実施の形態では、マスカラ組成物中に存在するワックスの全濃度は、全組成物の25重量%未満である。
【0018】
一実施の形態では、マスカラ組成物は、1種以上の乳化剤を更に含む。更に好ましい実施の形態では、1種以上の乳化剤は、C16~C40脂肪酸石鹸ベース系又はその組合せ、好ましくはセテアリルアルコール、ステアレス(steareth)-21、C20~C40パレス-40、ステアレス-2、ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、リン酸セチルカリウム、セテアレス(ceteareth)20、ステアレス20、ステアリン酸PEG200グリセリル、又はこれらの組合せを含む。当業者は、上記の乳化剤の幾つかは、例えばトリエタノールアミン、トロメタミン、又はアミノメチルプロパンジオールを用いる中和が必要であることを理解するであろう。一実施の形態では、マスカラ組成物中に存在する乳化剤の全濃度は、全組成物の6重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは4重量%未満、より好ましくは3.5重量%未満である。
【0019】
一実施の形態では、マスカラ組成物は、1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤を更に含む。更に好ましい実施の形態では、1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤は、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、ポリアミド粉末、ナイロン粉末、例えばナイロン6、レーヨン、シリカ、処理されたシリカ、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、ポリエチレン粉末、PTFE粉末、デンプン、窒化ホウ素、コポリマーマイクロスフェア、シリコーン樹脂マイクロビーズ、タルク、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、及びこれらの組合せを含む。更に好ましい実施の形態では、1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤は、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、ポリアミド粉末、例えばOrgasol(商標)、ナイロン粉末、例えばナイロン6、レーヨン、シリカ、処理されたシリカ、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、ポリエチレン粉末、PTFE粉末、例えばTeflon(商標)、デンプン、窒化ホウ素、コポリマーマイクロスフェア、例えばExpancel(商標)及びPolytrap(商標)、シリコーン樹脂マイクロビーズ、例えばTospearl(商標)、タルク、マイカ、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの組合せを含む。一実施の形態では、全ボリューマイジング粉末/充填剤濃度は、全組成物の2重量%~20重量%、好ましくは5重量%~15重量%、より好ましくは8重量%~12重量%である。
【0020】
一実施の形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.72~0.92、0.74~0.92、0.76~0.92、0.78~0.92、0.79~0.92、0.70~0.90、0.70~0.88、0.70~0.86、0.70~0.84、0.70~0.82、0.70~0.81、0.70~0.80、0.72~0.88、0.74~0.84、0.76~0.82、又は0.78~0.80である。
【0021】
一実施の形態では、マスカラ組成物は、ガム(例えば、キサンタンガム)、デキストリン、デンプン、タンパク質(例えば、ゼラチン及びアルブミン)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、可溶性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸クロスポリマー、ポリアクリル酸、ベントナイト、ラポナイト、非分散シリコン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、又はこれらの組合せ等の水溶性ポリマーを更に含む。
【0022】
更なる態様によれば、本発明は、睫毛をコーティングするためのマスカラ組成物を包装及び塗布するためのアセンブリ又はキットであって、(i)上で規定したマスカラ組成物を包装するためのデバイスと、(ii)上記組成物用のアプリケーターとを備える、アセンブリ又はキットを提供する。
【0023】
更なる態様によれば、本発明は、マスカラ組成物の層を睫毛上に構築するために上で規定したアセンブリ又はキットを使用する方法であって、(i)マスカラ組成物をアプリケーターに塗布する工程と、(ii)マスカラ組成物が睫毛の根元から睫毛の先端まで睫毛に塗布されるようにアプリケーターを動かす工程と、(iii)マスカラ組成物の均一なコートを睫毛に塗布するため、任意に(ii)を繰り返す工程と、(iv)任意に工程(i)~工程(iii)を繰り返し、睫毛上に存在するマスカラ組成物がまだ乾燥していない間にマスカラ組成物のその後の再塗布を行う工程とを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
マスカラ
「マスカラ」という用語は、ケラチン繊維(特に睫毛)に塗布されることを意図した組成物を意味すると理解され、ケラチン繊維に化粧を施すための組成物、ケラチン繊維に化粧を施すためのベース、トップコートとも称されるマスカラに塗布される組成物、或いはケラチン繊維の美容処理のための組成物であり得る。マスカラは、より詳しくは、ヒトのケラチン繊維だけでなく、つけ睫毛も対象とする。マスカラの塗布は、特に睫毛のボリュームを増加させ、その結果、視線の強さを増すことを目的としている。これを行うための多数のボリュームアップ又はボリューマイジングマスカラが存在し、その原理は、このボリューマイジング(又はローディング)効果を得るために睫毛に最大量の材料を堆積させることにある。特に、組成物に対する所望の塗布特異性、例えば、それらの流動性又は粘稠度、更にはそれらのボリュームアップ力(ローディング力又はメークアップ力としても知られる)等を調整することができるのは、固体粒子(特に組成物を構築することを可能にするワックス)の量による。
【0025】
流体
「流体」という用語は、本発明によれば、「固体」組成物(マスカラケーキ等)とは対照的に、周囲温度にて自重で流れる組成物を意味すると理解される。
【0026】
安定した水中油型エマルジョン
「エマルジョン」という用語は、IUPACの定義によれば、液体液滴が液体中に分散している流体系である。液滴を形成する液体(分散相とも呼ばれる)と、液滴が内部に分散している液体(連続相とも呼ばれる)とは不混和性である。本発明の関連で、マスカラは水中油型エマルジョンの形態であり、これは油が分散相を形成し、水を含む水相が連続相を形成することを意味する。
【0027】
エマルジョンとゲルは両方ともコロイド状(顕微鏡的に分散した不溶性粒子の1つの物質が別の物質全体に懸濁されている)であるが、重要なことに、ゲルは、架橋ポリマーネットワークで形成された固相内の液体分散相を備えるという点で異なる。ゲル組成物は、本発明の範囲には含まれない。
【0028】
「安定」という言葉によって、マスカラ組成物が最終包装に入る時点から最後の組成物が消費者によって使用される時点まで、マスカラ組成物がエマルジョン形態のままである(すなわち、2相に分離しない)ことが理解される(充填から製品が消費者によって購入される時点までに異常な遅れがないと仮定し、また消費者が異常な期間マスカラを放置しないと仮定する)。したがって、「安定したエマルジョン」は、周囲室温で少なくとも3年間エマルジョン形態のままであるマスカラ組成物を包含するものとする。
【0029】
チュービングマスカラ
本発明のマスカラ組成物はチューブ形成性である。「チュービング」マスカラは、マスカラが汗、涙、湿度、及び機械的摩擦に対して耐性があるだけでなく、温水を使用して容易に除去することができる、ロングウェア、エクストリームウェア(extreme-wear)、耐汗性、涙でにじまない、耐湿性、又は化粧持ちのよいマスカラの特定の形態である。さらに、チュービングマスカラは、温水をかけると、周囲の皮膚を汚す場合がある液体の形態で睫毛から離れるのではなく、代わりにチューブ状の塊(したがってこの名称である)で外れる。
【0030】
チュービングマスカラには、従来のロングウェアマスカラよりも次の幾つかの利点がある:(1)チュービングマスカラは、除去するために、眼を刺激する可能性があるメイクアップリムーバーを使用する必要はなく、メイクアップリムーバーが手に入らない場合に便利である;(2)チュービングマスカラを除去するために大きな機械的力を必要としないので、マスカラの除去が睫毛の除去にもつながる可能性が低い;及び(3)何らかの理由でチュービングマスカラ製剤が早くにとれた場合、マスカラは、周囲の皮膚を汚して見た目を悪くする可能性がある液体の形態ではなく、容易に払い落すことができる塊の形態でとれる。
【0031】
チュービングマスカラは、睫毛に塗布した直後に乾燥することで各睫毛又はひとまとまりの睫毛の周りにポリマー管状フィルムを形成することによって機能する。このポリマーは、このフィルムを冷水に強くするだけでなく、温水で簡単に除去することができるようにする。
【0032】
本発明のマスカラ組成物に関して、このチューブ形成効果を得るために、膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂が不可欠である。これらの樹脂は、典型的には、水性環境に置かれた場合にポリウレタンポリマーのコロイド状に分散した粒子を形成する。ポリウレタンポリマーは、ポリエステル-ポリウレタンコポリマー又はポリエーテル-ポリウレタンコポリマーのいずれかであり得る。ポリエーテル-ポリウレタンポリマーは、主に脂肪族のポリイソシアネート成分及びポリエーテルポリオール成分の反応生成物である。本明細書で使用される場合、「主に脂肪族」という用語は、ポリイソシアネート成分の少なくとも70重量パーセント(重量%)が脂肪族ポリイソシアネートであることを意味し、芳香族基もまた存在するかどうかにかかわらず、全てのイソシアネート基が脂肪族基又は脂環式基に直接結合する。より好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートの量は、ポリイソシアネート成分の少なくとも85重量%、最も好ましくは100重量%である。適切な脂肪族ポリイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI)及びそのメタ異性体(m-TMXDI)、水素化2,4-トルエンジイソシアネート、並びに1-イソシアナト(isocyanato)-1-メチル-3(4)-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IMCI)が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの混合物を使用することができる。適切なポリエーテルポリオールは、環状酸化物の重合又は多官能性開始剤への1種以上のかかる酸化物の添加によって得られる生成物を含む。かかる重合環状酸化物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びテトラヒドロフランが挙げられる。酸化物を添加したかかる多官能性開始剤としては、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン(trimethylolpropane)、ペンタエリスリトール、及びビスフェノールが挙げられる。
【0033】
適切なポリエーテルとしては、ポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、適切な開始剤へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの同時又は逐次の添加によって得られるポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)ジオール及びトリオール、並びにテトラヒドロフランの重合によって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。本発明において有用な市販のポリエーテル-ポリウレタンとしては、Lubrizol製のAVALURE UR-450(商標)(PPG-17/IPDI/DMPAコポリマー)、SANCURE 878(商標)(ポリエステル-ポリウレタンコポリマー)及びSANCURE 861(商標)(ポリエステル-ポリウレタンコポリマー)、並びにDSM製のNEOREZ R-551(商標)(脂肪族ポリエステルポリウレタン)の商品名で販売されるものが挙げられる。
【0034】
ポリエステル-ポリウレタンポリマーは、主に脂肪族のポリイソシアネート成分及びポリエステルポリオール成分の反応生成物である。有用な脂肪族ポリイソシアネートは上に記載されている。ポリエステルポリオール成分に使用され得るポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、フランジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、若しくはペンタエリスリトール、又はそれらの混合物等の多価アルコールのヒドロキシル終端反応生成物が挙げられる。また、ポリカルボン酸、特にジカルボン酸、及びそれらのエステル形成誘導体も挙げられる。例としては、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸、又はそれらのメチルエステル、無水フタル酸及びジメチルテレフタレートが挙げられる。ポリオールと組み合わせてラクトン、例えばカプロラクトンの重合によって得られるポリエステルも使用することができる。本発明で有用な市販のポリエステル-ポリウレタンとしては、Lubrizol製のAVALURE UR-425(商標)(ポリウレタン-2)及びAVALURE UR-405(商標)(ポリウレタン-2)、並びにDSM製のNEOREZ R-989(商標)(脂肪族ポリウレタン)等の商品名で販売されているものが挙げられる。
【0035】
マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度は、全組成物の少なくとも7重量%である。一実施形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度は、全組成物の少なくとも8重量%である。更なる実施形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度は、全組成物の少なくとも9重量%である。更なる実施形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度は、全組成物の少なくとも10重量%である。更なる実施形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度は、全組成物の少なくとも11重量%である。更なる実施形態では、マスカラ組成物中に存在する膜形成性脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度は、全組成物の少なくとも12重量%である。
【0036】
ワックス
「ワックス」という用語は、周囲温度で又は周囲温度付近において疎水性で展性の固体である有機化合物である。当該技術分野で知られているように、ワックスは、構造を提供することによってボリューム感を与えるために、マスカラ組成物内で使用される。
【0037】
一実施形態では、マスカラ組成物中に存在する1種以上のワックスは、パラフィンワックス等の石油ワックス、微結晶ワックス、特にokerinワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、シナワックス、米ワックス、オークリーワックス、エスパルトグラスワックス、サトウキビワックス、モクロウ、スマックワックス、水素化ホホバ油、水素化パーム油等の植物若しくは動物起源のワックス、モンタンワックス及びオゾケライト等のミネラルワックス、PEG6000等のポリエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュ合成によって得られるワックス、C20~C40アルキルヒドロキシステアリルオキシステアリン酸塩、ワックス状コポリマー、特に、エチレン/酢酸ビニルコポリマー及びそれらのエステル、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~C32脂肪鎖を有する動物油若しくは植物油の触媒水素化によって得られるワックス、ステアリルアルコールでエステル化されたオリーブ油の水素化によって得られるワックス、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックス、炭素数16~45のアルキルジメチコン若しくはアルコキシジメチコン等のシリコーンワックス、フルオロワックス、又はこれらの組合せを含む。好ましい実施形態では、1種以上のワックスは、パラフィンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、又はこれらの組合せを含む。
【0038】
一実施形態では、マスカラ組成物中に存在するワックスの全濃度は、全組成物の少なくとも14重量%である。更なる実施形態では、マスカラ組成物中に存在するワックスの全濃度は、全組成物の少なくとも15重量%である。一実施形態では、マスカラ組成物中に存在するワックスの全濃度は25%未満である。
【0039】
当該技術分野では、パラフィンワックス(固形パラフィンとも称される)は、マスカラに構築可能なボリューマイジング効果を提供するのに特に効果的であることが知られている。これは、製品に硬度及び構造を与えるのに役立つ大きな結晶構造によるものである。一実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの1%~100%を形成する(100%はマスカラ組成物内のワックスが専らパラフィンワックスである場合である)。更なる実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの2%~80%を形成する。更なる実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの3%~60%を形成する。更なる実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの4%~40%を形成する。更なる実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの5%~20%を形成する。更なる実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの7%~15%を形成する。更なる実施形態では、パラフィンワックスは、マスカラ組成物内の全ワックスの8%~12%を形成する。
【0040】
全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比
この比は、組成物内に存在する全てのワックスの濃度で組成物内に存在する合わせた全ての脂肪族ポリウレタン樹脂の濃度を除算することによって決定される。
【0041】
当該技術分野では、チューブ形成特性を実現することができるマスカラと、構築可能なボリューム感を実現することができるマスカラとの間に矛盾があることが理解されている。驚くべきことに、高濃度の膜形成性ポリマー(脂肪族ポリウレタン樹脂等)を使用して、0.70~0.92の全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比を達成することで、チューブ形成特性及びボリューマイジング特性の両方を有するマスカラを実現することができることがわかった。
【0042】
一実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.72~0.92である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.74~0.92である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.76~0.92である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.78~0.92である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.79~0.92である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.90である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.88である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.86である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.84である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.82である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.81である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.70~0.80である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.72~0.88である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.74~0.84である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.76~0.82である。更なる実施形態では、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比は、0.78~0.80である。
【0043】
乳化剤
一実施形態では、マスカラ組成物は、1種以上の乳化剤を更に含む。「乳化剤」(エマルジェント(emulgent)とも称される)という用語は、その速度論的安定性を高めることによってエマルジョンを安定させる物質である。乳化剤は、界面活性剤(又は表面活性剤(surface-active agents))及び可溶化剤を包含することが理解される。乳化剤は、典型的には極性又は親水性(すなわち水溶性)部分及び非極性(すなわち疎水性又は親油性)部分を有する化合物である。本発明に関連して、乳化剤は、水油界面において活性でない場合でも立体障害を高める化合物を覆って、エマルジョン安定性を支持する。
【0044】
本発明に関連して、マスカラに一般的に使用される乳化剤としては、ステアレス20、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、リン酸セチル、セテアレス20、ステアレス21、ステアリン酸PEG200グリセリル、リン酸セチルカリウム、ステアリン酸、及びこれらの組合せ等の脂肪酸及び脂肪アルコールが挙げられる。好ましくは、乳化剤は、ステアレス20とセテアリルアルコールとの組合せである。
【0045】
一実施形態では、乳化剤が存在する場合、マスカラ組成物中に存在する乳化剤の全濃度は、全組成物の6重量%未満である。更なる実施形態では、乳化剤が存在する場合、マスカラ組成物中に存在する乳化剤の全濃度は、全組成物の5重量%未満である。更なる実施形態では、乳化剤が存在する場合、マスカラ組成物中に存在する乳化剤の全濃度は、全組成物の4重量%未満である。更なる実施形態では、乳化剤が存在する場合、マスカラ組成物中に存在する乳化剤の全濃度は、全組成物の3.5重量%未満である。
【0046】
ミツロウは、本発明に関連して、ワックスであるがそれ自体は乳化剤ではないとされる。当該技術分野で容易に知られているように、ミツロウはホウ酸ナトリウム等の塩基と組み合わせると乳化剤効果を有する可能性のあるエステルを含むが、この塩基がなければ、乳化剤効果は不可能である。
【0047】
顔料
本発明のマスカラ組成物は、1種以上の顔料を更に含み得る。顔料は、有機であってもよく、又は無機であってもよい。好ましくは、顔料は無機である。
【0048】
有機の場合、顔料はカーボンブラック(D&C Black No2)、アゾ化合物、キサンテン、キノン又はレーキ顔料であり得る。
【0049】
アゾ化合物は当該技術分野で知られており、2つの炭素原子の間に二価のN=N-を持つ化合物に関する。
【0050】
レーキ顔料は当該技術分野で知られており、不活性バインダー、又は媒染剤、通常は金属塩で染料を沈殿させることによって製造することができる。レーキ顔料の例としては、アルミニウムレーキ、ストロンチウムレーキ、又はバリウムレーキが挙げられる。
【0051】
有機の場合、顔料は好ましくはカーボンブラックである。
【0052】
顔料は、しばしばアルキルシランで表面処理されて、疎水性媒質中の分散を改善することができる。最も一般的な顔料表面処理は、トリエトキシカプリリルシランである。しかしながら、表面処理は、水相中に存在する場合にはほとんど利益をもたらさないことが当該技術分野で知られており、これは本発明の組成物に典型的な例である。
【0053】
無機の場合、顔料は酸化鉄(黒色、黄色及び赤色の酸化鉄等)、二酸化チタン、酸化亜鉛、フェリシアン化カリウムK33Fe(CN)、フェロシアン化カリウムKFe(CN)6.3O、フェロシアン化カリウム無水物(dehydrate)、亜鉛、ジルコニウム及び/又はセリウムの酸化物、酸化クロムグリーン、水酸化クロムグリーン、マンガンバイオレット又はフェロシアン化第二鉄であり得る。無機の場合、顔料は好ましくは酸化鉄である。
【0054】
顔料は、黒色、あずき色、暗褐色、群青色、洋紅色、緑色又は紫色であり得る。これらの色の混合物を、所望のマスカラの色を得るために使用することができる。
【0055】
一実施形態では、組成物が1種以上の顔料を含む場合、これらは全組成物の0.1重量%~10重量%の濃度で存在する。更なる実施形態では、組成物は、全組成物の2重量%~8重量%の濃度で1種以上の顔料を含む。更なる実施形態では、組成物は、全組成物の3重量%~5重量%の濃度で1種以上の顔料を含む。
【0056】
ボリューマイジング粉末/充填剤
本発明のマスカラ組成物は、1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤を更に含むことができる。これらの粉末及び充填剤は、マスカラ組成物の構築可能なボリューマイジング効果を更に改善することができる。1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤は、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、ポリアミド粉末、ナイロン粉末、例えばナイロン6、レーヨン、シリカ、処理されたシリカ、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、ポリエチレン粉末、PTFE粉末、デンプン、窒化ホウ素、コポリマーマイクロスフェア、シリコーン樹脂マイクロビーズ、タルク、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、及びこれらの組合せを含み得る。1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤は、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、ポリアミド粉末、例えばOrgasol(商標)、ナイロン粉末、例えばナイロン6、レーヨン、シリカ、処理されたシリカ、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、ポリエチレン粉末、PTFE粉末、例えばTeflon(商標)、デンプン、窒化ホウ素、コポリマーマイクロスフェア、例えばExpancel(商標)及びPolytrap(商標)、シリコーン樹脂マイクロビーズ、例えばTospearl(商標)、タルク、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、及びこれらの組合せを含み得る。
【0057】
一実施形態では、1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤が存在する場合、組成物は、全組成物の2重量%~20重量%の濃度の1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤を含む。更なる実施形態では、組成物は、全組成物の5重量%~15重量%の濃度の1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤を含む。更なる実施形態では、組成物は、全組成物の8重量%~12重量%の濃度の1種以上のボリューマイジング粉末又は充填剤を含む。
【0058】
その他の添加剤
本発明のマスカラ組成物は、マスカラ製剤で一般的に使用される原料を更に含んでもよい。
【0059】
マスカラ組成物は、水溶性ポリマーがマスカラエマルジョンの安定化を更に助けることができるため、1種以上のこれらのポリマーを更に含み得る。水溶性ポリマーは、ガム(例えば、キサンタンガム)、デキストリン、デンプン、タンパク質(例えば、ゼラチン及びアルブミン)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、可溶性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエステル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸クロスポリマー、ポリアクリル酸、ベントナイト、ラポナイト、非分散シリコン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、又はこれらの組合せを含み得る。水溶性ポリマーが存在する場合、マスカラ組成物内の水溶性ポリマーの濃度は、全組成物の0.05重量%~2重量%、0.1重量%~1重量%又は0.2重量%~0.5重量%であり得る。
【0060】
マスカラ組成物は、製品の使用を通して製品が病原性濃度の微生物を含まないことを保証するために、1種以上の防腐剤及び/又は増強剤を更に含み得る。防腐剤及び/又は増強剤は、フェノキシエタノール(フェノキセトール)、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン、ペンチレングリコール、1,2ヘキサンジオール、二ナトリウム/三ナトリウムEDTA、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びこれらの組合せを含み得る。防腐剤及び/又は増強剤が存在する場合、マスカラ組成物内の防腐剤及び/又は増強剤の濃度は、全組成物の0.1重量%~3重量%、0.2重量%~2重量%又は0.5重量%~1.5重量%であり得る。
【0061】
マスカラ組成物は、眼瞼の毛に潤いを与えるために、1種以上の保湿剤を更に含み得る。保湿剤は、ブチレングリコール及び/又はプロパンジオールを含み得る。1種以上の保湿剤が存在する場合、マスカラ組成物内の1種以上の保湿剤の濃度は、0.1%~20%、1%~10%、2%~8%又は4%~6%であり得る。
【0062】
マスカラは、パンテノール等のビタミン及び/又はミネラルのサプリメントを更に含み得る。
【0063】
包装
本発明はまた、睫毛をコーティングするためのマスカラ組成物を包装及び塗布するためのアセンブリ又はキットであって、(i)上で規定したマスカラ組成物を包装するためのデバイスと、(ii)組成物用のアプリケーターとを備える、アセンブリ又はキットを提供する。これは、アプリケーターが上記包装デバイス用のキャップを形成する把持部材と一体型であるマスカラ包装によく見られる。言い換えれば、上記アプリケーターを、上記組成物を包装するためのデバイスの閉位置と分配開口の開放位置との間の上記デバイス上の取り外し可能な位置に取り付けることができる。
【0064】
当業者は、(プラスチック製の毛又は布製の毛のいずれかを有する櫛、三角形、曲線、球、円錐、倒立円錐、長方形、バブル、スキニー、ワイド、スパイラル、砂時計形状から)利用可能な幅広い種々のアプリケーター(ワンドとも呼ばれる)があることを理解するであろう。当業者は、上で規定したマスカラ組成物に最も適したアプリケーターを選択することができる。一実施形態では、アプリケーターは、比較的大量のマスカラ組成物を保持するように設計され、これは、構築可能なボリュームのある外観を作り出すのに有益である。
【0065】
使用方法
本発明はまた、マスカラ組成物の層を睫毛上に構築するために上で規定したアセンブリ又はキットを使用する方法であって、(i)マスカラ組成物をアプリケーターに塗布する工程と、(ii)マスカラ組成物が睫毛の根元から睫毛の先端まで睫毛に塗布されるようにアプリケーターを動かす工程と、(iii)マスカラ組成物の均一なコートを睫毛に塗布するため、任意に(ii)を繰り返す工程と、(iv)任意に工程(i)~工程(iii)を繰り返し、睫毛上に存在するマスカラ組成物がまだ乾燥していない間にマスカラ組成物のその後の再塗布を行う工程とを含む、方法を提供する。
【0066】
好ましくは、上記工程(ii)の間に、アプリケーターの毛に、睫毛を通して動かすときに最小限の横方向の動きが適用される。背景技術で述べたように、横方向の動きは当該技術分野でチュービングマスカラを使用してボリューム感を実現するのに効果的な可能性があるが、実際には塊を形成せずに行うことは困難であり、消費者はかかる手法を使用しないことを好むであろう。
【0067】
当業者であれば、本発明の一実施形態又は態様の任意の特徴が、適宜、本発明の他の実施形態又は態様に適用可能であり得ることを理解するであろう。
【実施例
【0068】
実施例1-マスカラ製剤
3種類の比較マスカラ製剤(CE1、CE2及びCE3)及び1種類の本発明のマスカラ製剤(IE)をバッチ製造した。これらの製剤の主要成分を以下の表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
上記のマスカラ製剤を、以下の方法を用いて製造した。
1)支持容器において、ワックス(サラシミツロウ、カルナウバロウ、固形パラフィン及びキャンデリラロウ)及び乳化剤(セテアリルアルコール及びステアレス-21)を全てのワックスが溶けるまで80℃~85℃に加熱した。
2)主容器において、sequestrene四ナトリウムを手で撹拌して水に分散した。
3)PPG-17/IPDI/DMPAコポリマーを溶液が均一になるまで手で撹拌して主容器に混合した。
4)黒色酸化鉄C33-7001を、均質化が完了するまで4000rpmの速度でホモジナイザーを用いて主容器に混合した。
5)ヒドロキシエチルセルロースを、均質化が完了するまで4500rpmの速度でホモジナイザーを用いて主容器に混合した。
6)キサンタンガムを、均質化が完了するまで4500rpmの速度でホモジナイザーを用いて主容器に混合した。
7)防腐剤(フェノキセトール、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸メチル、カプリリル(caprylyl)グリコール及びエチルヘキシルグリセリン)及びブチレングリコールを均質化が完了するまで手で撹拌して主容器に混合した。
8)4500rpmでホモジナイザーを作動させながら、主容器に支持容器の内容物を添加する前に、主容器を80℃~85℃に加熱した。組成物が滑らかで光沢が出るまで連続均質化を行った。
9)HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー及びポリアミド-5を組成物が滑らかで光沢が出るまで4500rpmの速度でホモジナイザーを用いて組成物に混合した。
10)組成物を50℃未満に冷却した。
11)パンテノールを組成物が均一になるまで手で撹拌して組成物に混合した。
【0071】
製剤中に存在する脂肪族ポリウレタン樹脂は、PPG-17/IPDI/DMPAコポリマーである。上記の製剤中に存在するワックスは、サラシミツロウBP、カルナウバロウ、固形パラフィンBP、及びキャンデリラロウである。表2に、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
実施例2-専門家による調査
方法論
市販のマスカラの種類及びマスカラの塗布方法に関する知識があると考えられる9名の女性ボランティアに、マスカラ製剤CE3及びマスカラ製剤IEの試験を依頼した。ボランティアには1種類のマスカラ製剤を3コート塗布するように依頼し、第2及び第3のコートを塗布するためにはアプリケーターを再充填するためにマスカラブラシをパックに再浸漬する必要があった。ボランティアには、彼女らが望む回数の「スイープ」を行ってもよいことを知らせた。「スイープ」とは、アプリケーターを再充填せずに睫毛の上にアプリケーターをストロークさせることである。その後、ボランティアに、冷水を顔にかけた後にマスカラで汚れているかどうかを評定するように依頼した。ボランティアに、その後、2分間睫毛に温水を数回かけ、続いて(i)コットンメークアップリムーバーパッドを使用して穏やかな圧力で塗布物を拭き取るか、又は(ii)指先で塗布物を引っ張ってマスカラ塗布物を除去するように依頼した。
【0074】
各ボランティアが両方の製剤を試験するように、他のマスカラ製剤を用いて上記を繰り返すようボランティアに依頼した。その後、ボランティアにアンケートの記入を依頼した。詳しくは、各ボランティアは、意見に同意する程度に応じて、一連の意見に0~5のスコアを与えた(0は強い意見の不一致を示し、5は強い同意を示す)。
【0075】
結果
表3に、各マスカラ製剤について提起された意見に関する平均同意スコアを示す。
【0076】
【表3】
【0077】
結果は、CE3(全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比0.70未満)がIE(全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比0.70超)を下回っていることを明らかに示す。特に、ボランティアは、マスカラを除去する際に、マスカラがチューブを形成せず、代わりに小さな塊を形成したというCE3に関する問題を報告した。これは、チュービングマスカラと比較して、より小さな塊がマスカラの通常の使用中に外れる可能性がより高いことを懸念する消費者にとって魅力的ではない。
【0078】
実施例3-ユーザー試用調査
方法論
18歳~55歳の31名の女性ボランティアにマスカラ製剤CE1、CE2、及びIEの試験を依頼した。この調査で試験したボランティアは全員、毎日マスカラを使用する者で、ボリュームのある外観を好んだ。実施例2と同様に、ボランティアには1種類のマスカラ製剤を3コート塗布するように依頼し、第2及び第3のコートを塗布するためにはアプリケーターを再充填するためにマスカラブラシをパックに再浸漬する必要があった。上記のように、ボランティアには、彼女らが望む回数の「スイープ」を行ってもよいことを知らせた。「スイープ」とは、アプリケーターを再充填せずに睫毛の上にアプリケーターをストロークさせることである。その後、ボランティアにマスカラ塗布物を最低24時間つけておくように依頼し、この塗布期間の一部では、マスカラ製剤のロングウェア性を十分に試験するために、発汗及び/又は湿気の多い状態を経験する必要があった。上記のように、ボランティアに、その後、2分間睫毛に温水を数回かけ、続いて(i)コットンメークアップリムーバーパッドを使用して穏やかな圧力で塗布物を拭き取るか、又は(ii)指先で塗布物を引っ張ってマスカラ塗布物を除去するように依頼した。
【0079】
各ボランティアが3種類の製剤の全てを試験するように、他の2種類のマスカラ製剤を用いて上記を繰り返すようボランティアに依頼した。その後、ボランティアにアンケートの記入を依頼した。
【0080】
結果
下の表4は、各マスカラ製剤に関して提起された意見に肯定的に回答したボランティアの割合を示す。
【0081】
【表4】
【0082】
当業者は、製品のパック又はマーケティング資料に提示することができる主張としていずれかの意見を述べるためには、ボランティアの少なくとも3分の2がその意見に肯定的に回答しなければならないことを理解するであろう。この要件を満たさなかった意見を表4においていずれも斜体で示す。
【0083】
結果は、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.92を上回っている場合(CE1及びCE2において)、つけ睫毛効果及び劇的なボリュームに関する主張はできないことを示している。対照的に、0.92未満の全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が達成されれば(IEにおいて)、これらの主張を行うことができる。
【0084】
全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比を0.92未満に下げると(IEにおいて)、ロングウェアの主張(マスカラは耐汗性で、涙でにじまず、耐湿性で汚れをつけない)に対してわずかな悪影響があった。しかしながら、全ワックス濃度に対する全脂肪族ポリウレタン樹脂濃度の比が0.92を下回っても、IEは依然として十分なレベルのロングウェアを提供した。したがって、本発明の実施例は、劇的なボリュームを提供することとロングウェアを提供することとの間の正しいバランスを提供する。
【0085】
IEは、少なくとも24時間持続する「ウルトラボリューム」を提供するのに最も効果的であった。組成物はいずれも温水で簡単に除去された。
【国際調査報告】