(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】フォトインジェクタにおける単結晶シリコンからの電子回折強度
(51)【国際特許分類】
H01S 3/30 20060101AFI20220308BHJP
H05H 13/04 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01S3/30 A
H05H13/04 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541050
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 US2020014188
(87)【国際公開番号】W WO2020150664
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グレイブズ,ウイリアム
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ルーカス
【テーマコード(参考)】
2G085
5F172
【Fターム(参考)】
2G085DA03
2G085DA04
2G085DB08
5F172AG01
(57)【要約】
方法は、結晶の結晶構造からの相対論的電子バンチの透過ジオメトリにおける回折をシミュレートし、それによって複数のブラッグピークへの相対論的電子バンチの回折をシミュレートすることを含む。方法は、回折部分が最大化される角度を含む、相対論的電子バンチの伝播方向と、結晶の法線方向との間の角度の範囲を選択することを含む。方法は、複数の物理電子バンチを、結晶構造を有する物理結晶に向けて相対論的なエネルギーまで順次加速することと、複数の物理電子バンチを物理結晶から異なる角度で回折させることと、異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの回折部分を測定することと、を含む。方法は、異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの測定された回折部分に基づいて最終角度を選択することと、光のパルスを生成することと、を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
結晶の結晶構造からの相対論的電子バンチの透過ジオメトリにおける回折をシミュレートし、それによって前記相対論的電子バンチの複数のブラッグピークへの回折をシミュレートすること、
前記結晶構造からの前記相対論的電子バンチの前記シミュレートされた回折に基づいて、前記相対論的電子バンチの伝播方向と、結晶の法線方向との間の角度の範囲を選択することであって、前記角度の範囲が、前記複数のブラッグピークのそれぞれのブラッグピークへの回折部分が最大化される角度を含むように選択される、選択すること、
複数の物理電子バンチを相対論的なエネルギーまで順次加速することであって、前記複数の物理電子バンチが、前記結晶構造を有する物理結晶に向けて加速される、順次加速すること、
前記複数の物理電子バンチを前記物理結晶から前記角度の範囲内の異なる角度で回折させること、
前記角度の範囲内の前記異なる角度における前記それぞれのブラッグピークへの前記回折部分を測定すること、
前記角度の範囲内の前記異なる角度における前記それぞれのブラッグピークへの前記測定された回折部分に基づいて、最終角度を選択すること、
光のパルスを生成することであって、
後続の物理電子バンチを相対論的なエネルギーまで加速することと、
前記後続の物理電子バンチを前記物理結晶から最終角度で回折させることと、
前記回折された後続の物理電子バンチを使用して、前記光のパルスを生成することと、を含む生成することを含む、方法。
【請求項2】
前記後続の物理電子バンチを前記物理結晶から前記最終角度で回折させることが、前記後続の物理電子バンチを、前記後続の物理電子バンチの前記伝播方向に対して実質的に横方向に分割し、
前記光のパルスが、前記後続の物理電子バンチの前記伝播方向に実質的に平行な方向に分割された前記後続の物理電子バンチを用いて生成され、
前記方法が、
前記分割された後続の物理電子バンチを使用して前記光のパルスを生成する前に、前記分割された後続の物理電子バンチに対してエミッタンス交換を実行すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分割された電子バンチを使用して前記光のパルスを生成することが、前記分割された電子バンチをレーザーからの光から散乱させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分割された電子バンチを使用して前記光のパルスを生成することが、前記分割された電子バンチをアンジュレータに通すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記透過ジオメトリにおける前記回折の前記シミュレーションが、マルチスライス法を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶が、シリコン結晶である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶構造がSi(100)結晶構造である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光のパルスが、X線を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月18日に出願された米国仮出願第62/794,467号および2019年1月18日に出願された同第62/794,468号の利益ならびに優先権を主張し、これらの仮出願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、自由電子レーザー(FEL)に関し、具体的には、X線自由電子レーザー(XFEL)に関する。
【背景技術】
【0003】
X線自由電子レーザー(XFEL)は、各々が、ナノ結晶からの回折パターンを単一ショットで生成するのに十分な光子を含有する一方で、放射線損傷のほとんどの影響を逃れる、100フェムト秒(fs)より短い持続時間を有するX線パルスを生成する。XFELは、天然環境における生体分子の結晶構造およびダイナミクス、分子における基礎電荷・エネルギーダイナミクス、相関電子系おける創発現象、単粒子構造およびダイナミクス、ならびに極端な環境における物質を含む幅広い用途にわたって強力なツールであることが証明されている。最短のXFELパルスは、最速の電子励起の自然の時間スケールに対応する1fsに近づき、原子スケールのダイナミクスの探究で新時代を開いている。
【0004】
調整されたスペクトルおよび時間特性を有する完全にコヒーレントなX線パルスは、X線科学で新しい機会を開くであろう。化学系および生体系では、電荷移動およびエネルギー再分配ダイナミクスは、アト秒(as)からピコ秒(ps)までのタイムスケールにわたるコヒーレントな反応経路および電子運動と核運動との結合を伴う。ポンププローブスキームを使用してそのようなダイナミクスをマッピングするには、時間的にコヒーレントなX線パルスを有することが不可欠である。特に、分子系および相関物質における量子コヒーレンスの多次元非線形X線分光法は、位相面の完全な空間および時間制御を用いて正確に制御されたX線パルスのシーケンスの適用を必要とする。
【0005】
しかしながら、現在運用中のXFELは、完全な空間コヒーレンスは示すが、部分的な時間的コヒーレンスしか示さない。数百電子ボルト(eV)を上回るXFEL光子エネルギーのためのコヒーレントなシード放射は存在しない。したがって、XFELは、自発放出(SASE)の自己増幅を使用して、長い磁場アンジュレータの初めのセクションで放出されるインコヒーレント放射を増幅する。そのようなインコヒーレント放射は、よく知られているショットノイズ特性を有し、本質的に無秩序な増幅された出力をもたらし、大きなショット間強度変動を伴うスパイキーな単発パワースペクトルを生成するランダムな位相ジャンプを含む。そのようなインコヒーレント放射から生じる問題は、増幅することができるコヒーレントシードによって克服され得る。様々なシーディング技術が実装されているが、シードの低い光子エネルギー、または自己シーディングの場合には元のショットノイズ変動の影響のいずれかによって制限される。
【0006】
したがって、時間的にコヒーレントなX線パルスを提供するための改善された方法およびアセンブリが求められている。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態によれば、方法は、電子バンチを伝播方向に沿って相対論的なエネルギーまで加速することと、電子バンチを相対論的なエネルギーで格子を通して透過することによって電子バンチを分割することと、を含む。格子は、複数の交互の狭い部分および広い部分を含む。狭い部分は、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に第1の厚さを有し、広い部分は、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に第2の厚さを有する。第2の厚さは、第1の厚さよりも大きい。方法はまた、分割された電子バンチを使用して光のパルスを生成することも含む。
【0008】
さらに、いくつかの実施形態によれば、光源は、電子バンチを生成するためのエレクトロンフォトインジェクタ(electron photoinjector)を含む。光源は、電子バンチを相対論的なエネルギーまで加速するための第1の線形加速器セクションをさらに含む。光源は、第1の線形加速器セクションの下流の格子であって、電子バンチが、この格子を通って透過されるように配置されている、格子をさらに含む。この格子は、複数の交互の狭い部分および広い部分を含む。狭い部分は、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に第1の厚さを有し、広い部分は、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に第2の厚さを有し、第2の厚さは、第1の厚さよりも大きい。光源は、この格子の下流に、電子バンチから光を生成するための光生成装置をさらに含み、光生成装置は、アンジュレータおよび逆コンプトン散乱レーザーからなる群のうちの1つ以上を備える。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、方法は、結晶の結晶構造からの相対論的電子バンチの透過ジオメトリにおける回折をシミュレートすることを含む。方法は、それによって、相対論的電子バンチの複数のブラッグピークへの回折をシミュレートする。方法は、結晶構造からの相対論的電子バンチのシミュレートされた回折に基づいて、相対論的電子バンチの伝播方向と、結晶の法線方向との間の角度の範囲を選択することを含む。角度の範囲は、複数のブラッグピークのそれぞれのブラッグピークへの回折部分が最大化される角度を含むように選択される。方法は、複数の物理電子バンチを相対論的なエネルギーまで順次加速することを含む。複数の物理電子バンチは、結晶構造を有する物理結晶に向けて加速される。方法は、複数の物理電子バンチを物理結晶から上記の角度の範囲内の異なる角度で回折させることと、上記の角度の範囲内の異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの回折部分を測定することと、上記の角度の範囲内の異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの測定された回折部分に基づいて最終角度を選択することと、を含む。方法はまた、後続の物理電子バンチを相対論的なエネルギーまで加速することと、後続の物理電子バンチを物理結晶から最終角度で回折させることと、回折された後続の物理電子バンチを使用して光のパルスを生成することと、を含む、光のパルスを生成することも含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の特定の実施形態の詳細な説明を、正確な縮尺ではない図面と併せて参照することによってより完全に理解されるであろう。
【
図1A】いくつかの実施形態による、光源(例えば、自由電子レーザー)を示す概略図である。
【
図1B】いくつかの実施形態による、光源(例えば、自由電子レーザー)を示す概略図である。
【
図1C】いくつかの実施形態による、光源(例えば、自由電子レーザー)を示す概略図である。
【
図2A】いくつかの実施形態による、電子回折によって電子バンチを分割する概略図である。
【
図2B】いくつかの実施形態による、電子回折によって電子バンチを分割する概略図である。
【
図3A】入力電子バンチの入射角を変化させることによって、異なるブラッグスポットの強度を制御するための実験結果の例示的な図である。
【
図3B】入力電子バンチの入射角を変化させることによって、異なるブラッグスポットの強度を制御するための実験結果の例示的な図である。
【
図4A】シリコン格子での回折によってパターン化された電子バンチの実験的な明視野像の例示的な図である。
【
図4B】シリコン格子での回折によってパターン化された電子バンチの実験的な明視野像の例示的な図である。
【
図4C】シリコン格子での回折によってパターン化された電子バンチの実験的な明視野像の例示的な図である。
【
図5】シリコン格子における別個の電子バンチスポットサイズから生じる分割された電子バンチの特性を示す実験結果の例示的な図である。
【
図6A】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【
図6B】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【
図6C】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【
図6D】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【
図7】電子バンチをシリコン結晶から回折させるための実験結果の例示的な図である。
【
図8】ブラッグ反射の実験のおよびシミュレートされた強度マップの例示的な図である。
【
図9】様々な角度で散乱される電子の割合を示す実験のおよびシミュレートされた強度マップの例示的な図である。
【
図10】回折の前および後の実験的吸収電子ビームの例示的な図である。
【
図11A】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【
図11B】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【
図11C】本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法のフローチャートをひとまとめに提供する。
【0011】
一般に、図面内の要素のサイズおよび相対的な大きさは、図面の簡潔さ、明確さ、および理解を適宜促進するために、実際のものとは異なるように設定され得る。同じ理由で、ある図面に存在するすべての要素が必ずしも別の図面に示されるとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態は、時間的にコヒーレントなX線パルスを生成するための方法およびアセンブリを提供する。上記で説明されたように、現在のXFELは、部分的な時間的コヒーレンスしか提供しない。時間的コヒーレンスの欠如は、SASEプロセスにおけるバンチ化された電子のランダムな間隔、および増幅のためのコヒーレントなX線シードパルスの欠如の両方に起因する。結果得られる現在のXFELの出力放射は、ショットノイズ、ランダムな位相ジャンプ、およびパルス中の強度の急激な変動、多くの別個の線で満たされる波長スペクトル、ならびにショット間のスペクトル特性およびパルスエネルギーの大きな変動という特性を有する。
【0013】
コヒーレント放射でシーディングする代わりに、本開示の方法およびアセンブリは、電子を(例えば、実験室フレーム内で)所望のX線波長に等しい周期性で別個のバンチ(例えば、ナノバンチ)内に、電子が(例えば、アンジュレータに通されるとき)その波長でコヒーレントに放射するように、配置する。次いで、ヒーレントな自発放出が、比較的控えめな電子バンチパラメータのために、FELプロセスによって増幅されたフェーズドナノバンチ(phased nanobunches)によって放出される。そのようなFELゲインは、出力を占める単一の光学モードを生成し、時間的にコヒーレントなレーザー状の放射をもたらす。それによって、本開示は、電子バンチをパターン化して、所望のX線波長に一致するナノメートル分離を有するバンチを作成することによって、SASEプロセスに固有のランダムな電子間隔を克服する。
【0014】
電子バンチングパターンは、決定論的に繰り返し可能であり、安定した変換制限された(またはほぼ変換制限された)単一スパイクスペクトル、周波数チャープしたX線、固定位相関係を有する複数の波長、および/またはアト秒からフェムト秒レベルまでの範囲の正確かつ調整可能な時間遅延を有する複数の超短X線パルスなどの、異なる実験的特性を達成するために、多種多様な位相関係を生成するように制御され得る。要するに、本方法は、リソグラフィによって半導体ウエハ(例えば、単結晶シリコン膜)上に書かれたパターンから完全にコヒーレントなX線ビームが生成されるための時間構造を可能にする。
【0015】
本開示および添付の特許請求の範囲の目的のために、手元の値、要素、性質または特性の記述子に関して「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」、「約(about)」、および類似の用語の使用は、言及される値、要素、性質、または特性が、必ずしも記載されている通りではないが、それでも実用的な目的では、述べられたとおりであると当業者によって見なされるであろうということを強調するよう意図されている。これらの用語は、特定の特性または品質の記述子に適用されるとき、近似の言語を合理的に示し、指定された特性または記述子を、それらの範囲が当業者によって理解されるように説明するなどのために、「ほとんど(mostly)」、「主に(mainly)」、「かなり(considerably)」、「概して(by and large)」、「基本的に(essentially)」、「大部分またはかなりの程度まで(to great or significant extent)」、「概ね同じだが、必ずしも完全に同じではない(largely but not necessarily wholly the same)」ということを意味する。ある特定のケースでは、「およそ」、「実質的に」、および「約」という用語は、数値に関して使用される場合、指定された値に関してプラスまたはマイナス20%、より好ましくは指定された値に関してプラスまたはマイナス10%、さらにより好ましくはプラスまたはマイナス5%、最も好ましくはプラスまたはマイナス2%の範囲を表す。非限定的な例として、2つの値が互いに「実質的に等しい(substantially equal)」ということは、2つの値の間の差が、その値自体の+/-20%の範囲内、好ましくはその値自体の+/-10%の範囲内、より好ましくはその値自体の+/-5%の範囲内、さらにより好ましくはその値自体の+/-2%以下の範囲内であり得ることを意味する。
【0016】
選択された特性または概念を説明する際のこれらの用語の使用は、不定性の根拠を意味することも提供することもなく、特定の特性または記述子に対して数値限定を追加することの根拠を意味することも提供することもない。当業者によって理解されるように、そのような値、要素、または性質の正確な値または特性の、記載されたものからの実際の逸脱は、そのような目的のために当技術分野で受け入れられている測定方法を使用するときに典型的である実験的測定誤差によって定義される数値範囲内に収まり、その範囲内で変動し得る。
【0017】
例えば、識別された方向またはベクトルまたは線または平面が、参照された線または平面と実質的に平行であるということへの言及は、参照された線または平面のそれと同じであるか、または非常に近いそのような方向またはベクトルまたは線または平面(例えば、0~15度、好ましくは0~10度、より好ましくは0~5度、さらにより好ましくは0~2度、および最も好ましくは0~1度の、関連技術分野で実質的に典型的であると考えられている、参照された線または平面からの角度偏差を有する)と解釈されるべきである。例えば、識別された方向またはベクトルまたは線または平面が、参照された線または平面と実質的に垂直であるということへの言及は、そのような方向またはベクトルまたは線または平面であって、その表面に対する法線が、参照された線または平面に位置するか、または非常に近くに位置する、方向またはベクトルまたは線または平面(例えば、0~15度、好ましくは0~10度、より好ましくは0~5度、さらにより好ましくは0~2度、および最も好ましくは0~1度の、関連技術分野で実質的に典型的であると考えられている、参照された線または平面からの角度偏差を有する)と解釈されるべきである。
【0018】
異なる実際の状況に適用される「実質的に」、「約」、および/または「およそ」という用語の意味のその他の特定の例が、本開示の他の箇所で提供されていることがある。
【0019】
システムの実施形態は、概して、上記に開示されるような特定のデータ収集/処理および計算ステップを実行するために、少なくとも実施形態の動作を管理し、メモリに記憶された命令によって制御される電子回路(例えば、コンピュータプロセッサ)を含み得る。メモリは、制御ソフトウェアまたは他の命令およびデータを記憶するのに好適なランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、または任意の他のメモリ、もしくはそれらの組み合わせであり得る。当業者は、本実施形態(複数可)の動作を定義する命令またはプログラムが、以下に限定されない、非書き込み可能記憶媒体(例えば、ROMなどのコンピュータ内の読み取り専用メモリデバイス、またはCD-ROMもしくはDVDディスクなどのコンピュータI/Oアタッチメントによって読み取り可能なデバイス)に永久的に記憶される情報、書き込み可能記憶媒体(例えば、フロッピーディスク、リムーバブルフラッシュメモリ、およびハードドライブ)に変更可能に記憶される情報、または有線もしくは無線コンピュータネットワークを含む通信媒体を介してコンピュータに伝達される情報など多くの形態でプロセッサに配信され得ることを容易に理解するであろう。さらに、本発明はソフトウェアに具現化され得るが、本発明の方法を実装するために必要な機能は、任意選択的にまたは代替的に、組み合わせ論理、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他のハードウェア、もしくはハードウェア、ソフトウェアおよび/またはファームウェア構成要素の何らかの組み合わせなどのファームウェアおよび/またはハードウェア構成要素を使用して、部分的または全体的に具現化され得る。
【0020】
本開示に添付される請求の範囲に記載の発明は、全体として本開示に照らして評価されることが意図される。記載された詳細、ステップ、および構成要素の様々な変更が、本発明の原理および範囲内で当業者によって行われ得る。
【0021】
本発明は、上述の例示的な実施形態を通じて説明されるが、例示される実施形態の修正および変形が、本明細書に開示される発明の概念から逸脱することなく行われ得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された実施形態(複数可)に限定されていると見なされるべきではない。
【0022】
図1A~1Cは、いくつかの実施形態による、光源100(例えば、自由電子レーザー)を示す概略図である。簡潔にするために、光源100の最も適切な態様のみが、以下で詳細に考察されることに留意されたい。
【0023】
いくつかの実施形態では、光源100は、X線を生成する。いくつかの実施形態では、光源100は、硬X線(例えば、1keVを上回るエネルギーを有するX線)を生成する。いくつかの実施形態では、光源100は、軟X線または極紫外線を生成する。いくつかの実施形態では、以下に記載されるように、光源100によって生成される光(例えば、X線)は、完全に空間的および時間的にコヒーレントである(例えば、光源100は、光波長、紫外波長、赤外波長、および他の波長の光を生成するために使用される従来のレーザーのものと同様のコヒーレンス特性を有する光を生成する)。いくつかの実施形態では、光源100は、相対論的電子ビームを電磁場と相互作用させることによって光を生成する(例えば、以下に記載されるような逆コンプトン散乱の場合のUVレーザーから、またはアンジュレータからのいずれかで)。しかしながら、アンジュレータが使用される実施形態では、従来のFELよりもはるかに短いアンジュレータ(例えば、100メートルではなく10メートル)を使用して、光源100からコヒーレントな光が生成され得ることに留意されたい。したがって、光源100は、コンパクトX線自由電子レーザー(CXFEL)と呼ばれることがある。
【0024】
図1Cから始めると、エレクトロンフォトインジェクタ102を使用して電子バンチが生成され、最初に加速される。例えば、いくつかの実施形態では、4MeVビーム(例えば、電子バンチ、ビームおよびバンチという用語は、本開示を通して同義に使用されることに留意されたい)が、ソレノイドと、RFガンとを備える4.5セルxバンドフォトインジェクタによって生成される。フォトインジェクタに続いて(例えば、下流に)、1つ以上の線形加速器(LINAC)セクション(それぞれLINACセクション104a~104c)があり、1つ以上のクライストロン(クライストロン106a、106b)によって給電される。例えば、いくつかの実施形態では、3つの長さ35cmのLINACセクション104a~106cが、ビームを35MeVまで加速する。
【0025】
示されるように、単一のクライストロン106からのRF電力が、いくつかの異なる構成要素に印加されてもよい(例えば、クライストロン106bが、LINACセクション104bおよびLINACセクション104cの両方、ならびにRFデフレクタキャビティおよび加速器キャビティ124に給電する一方で、クライストロン106aが、電子バンチの初期加速およびLINAC105cの両方に給電する)ことに留意されたい。さらに、位相シフトが、様々なクライストロン106によって様々な構成要素に供給される電力に、フェーズシフタ108(例えば、フェーズシフタ108a~108d)によって適用されてもよい。RF負荷128(例えば、RF負荷128a、128b)が、負荷バランスおよび制御のために必要なところに含まれ、位置付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、回折格子110(例えば、以下に記載されるシリコン格子などの回折結晶)が、LINACセクションのうちの2つの間(または少なくとも、第1のLINACセクションの後)に位置する。例えば、いくつかの実施形態では、回折格子110が、LINACセクション104aと、LINACセクション104bとの間に位置する。回折格子110は、電子バンチの経路(例えば、電子バンチの伝播方向)に関する透過ジオメトリ内に配置される。いくつかの実施形態では、回折格子110は、電子ビームを最大12MeVの調整可能なエネルギーで回折させる。
【0027】
ここで、
図1Aおよび1Bを参照すると、光源100は、LINACセクション104の下流で電子バンチをパターン化および成形するための様々な電子光学系を含む。光源100の電子光学系は、ナノパターン撮像セクション112、エミッタンス交換(EEX)セクション114、および逆コンプトン散乱(ICS)相互作用セクション116の3つの主要セクションを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、ICS相互作用セクション116が、アンジュレータ(例えば、長さ20m未満のアンジュレータ)で置き換えられることに留意されたい。
【0028】
ナノパターニング撮像セクション112は、LINACセクション104cの下流にあり、いくつかの実施形態では、望遠鏡システムを形成する2つの四重極トリプレット118(例えば、四重極トリプレット118aおよび四重極トリプレット118b)を備える。
【0029】
いくつかの実施形態では、回折格子110が、電子バンチの伝播方向に対して横方向の回折パターンを生成し、エミッタンス交換セクション114が、回折パターンを電子バンチの伝播方向に平行な方向に変換する(例えば、交換する)。そのために、EEXセクション114は、収差補正のための六極磁石122a~122cおよび八極磁石126とともに、独立して位相調整され、給電される、4つの屈曲磁石120a~120d、RFデフレクタキャビティ、および加速器キャビティ(まとめて124)を含む。
【0030】
EEXセクション114の後で、ICS相互作用セクション116が、逆コンプトン散乱レーザー138からのICSレーザーフィールドに電子ビームを衝突させる前に、ICS相互作用点132におけるビームサイズを(例えば、およそ1ミクロンに)減少させる合焦トリプレット130から始まる(例えば、逆コンプトン散乱レーザー138からの光が管で伝送され(piped in)、リダイレクトされて、ICS相互作用点132で電子ビームとほぼ平行になる)。電子ビームのICSレーザーフィールドとの衝突により、X線(または他の光)136が生じる。ICS相互作用点132の下流で、2つのダイポール134a、134bがそれぞれビームを曲げてビームダンプ内に送る(例えば、それぞれ水平方向に30度および90度曲げて垂直ビームダンプ内に送る)。いくつかの実施形態では、電子ビームのICSレーザーフィールドとの衝突は、ダイポール磁石134aの磁場内にある。ICS相互作用セクション116は、光生成装置の一例である。アンジュレータ(図示せず)は、光生成装置の別の例である。
【0031】
図2Aおよび2Bは、いくつかの実施形態による、電子回折によって電子バンチを分割する概略図である。
図2Aは、格子202と、集束磁石206とを含むアセンブリ200の断面図を示す。格子202は、単結晶シリコン膜(例えば、Norcadaによって提供される「UberFlat」シリコン膜)で作製される。例えば、格子202は、[100]結晶構造を有するシリコン膜で作製される。
図2Aの挿入図に示されるように、格子202は、交互の長手方向の狭い部分および広い部分(例えば、交互の狭い部分204-Aおよび広い部分204-B)を画定するナノスケールパターン204を含む。いくつかの実施形態では、格子202は、格子202の広い部分204-Bの表面(例えば、表面202-2)と、対向する表面202-1との間に画定される厚さTを有する。いくつかの実施形態では、厚さTは、50nm~1000nm、50nm~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nm、または50nm~100nmの範囲である。いくつかの実施形態では、格子202は、100nm~300nmの範囲の厚さTを有する。いくつかの実施形態では、厚さTは、200nmである。格子202は、50マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲のエッジによって画定される領域を有する(例えば、格子202は、長方形または正方形の形状を有する)。いくつかの実施形態では、格子202は、50マイクロメートル×50マイクロメートル、100マイクロメートル×100マイクロメートル、または200マイクロメートル×200マイクロメートルに対応する領域を有する。
【0032】
ナノスケールパターニング204は、格子202のシリコン膜の中心に位置する。ナノスケールパターニング204は、交互の狭い部分204-Aおよび広い部分204-Bを画定する格子202のシリコン膜の一部を通して切断(例えば、エッチング)された複数の長手方向の溝または谷を含む。広い部分204-Bは、上記のように、表面202-1と、表面202-2との間の厚さTを有する。厚さTは、表面202-1と、表面202-3との間の狭い部分204-Aの厚さよりも大きい。いくつかの実施形態では、溝は、格子202を形成するシリコン膜のエッジと整列され、それによって、溝は、シリコン膜の結晶面と整列される。いくつかの実施形態では、ナノスケールパターニング204は、20マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲のエッジによって画定される領域を有する。いくつかの実施形態では、ナノスケールパターニング204は、20マイクロメートル×20マイクロメートル、50マイクロメートル×50マイクロメートル、または100マイクロメートル×100マイクロメートルに対応するシリコン膜上の領域を覆う。ナノスケールパターニング204は、
図2Aの挿入図に示されるように、広い部分204-Bおよび狭い部分204-Aの幅の合計に対応するピッチPを有する。いくつかの実施形態では、ピッチPは、600nm以下、500nm以下、200nm以下、300nm以下、または200nm以下である。いくつかの実施形態では、ピッチPは、広い部分204-Bの幅(例えば、200nm)と、狭い部分204-Aの幅(例えば、200nm)との合計に対応する400nmである。格子202のピッチ(すなわち、格子202の周期性)は、生成されるX線光パルスのX線波長を画定し、その結果、電子がその波長でコヒーレントに出射する。
【0033】
いくつかの実施形態では、格子202は、格子202が支持メッシュの中心に位置付けられるように、支持メッシュ(図示せず)によって支持される。例えば、支持メッシュは、3mm以下の直径を有するポリゴンチップである。
【0034】
図2Aでは、格子202は、格子202の表面202-1と、ナノスケールパターニング204の広い部分204-2の表面202-2とによって画定される基準面に実質的に垂直な方向に伝播する相対論的なエネルギー(例えば、少なくとも数MeV)まで加速された電子バンチ212-1を受け取るように構成される。いくつかの実施形態では、格子202は、伝播方向に対して垂直方向および/または水平方向に傾いている(例えば、ピッチ角および/またはヨー角を形成する)。電子バンチ212-1は、相対論的(e,g,MeV)電子の均一な分布を含む。格子202は、電子バンチ212-1を、パターン化された電子バンチ212-2として透過し、回折させる。パターン化された電子バンチ212-2は、パターン化された電子バンチ212-2が焦点面208上の個別のブラッグスポット(例えば、ブラッグスポット212-A、212-B、および212-C)に向けられるように、集束磁石206によってリダイレクトされる。焦点面208上のブラッグスポットは、特定のブラッグ回折の結晶学的ピークに対応する。電子バンチ212-1の回折パターンへの所望の分割(例えば、パターン化された電子バンチ212-2)は、格子202を通る透過ジオメトリにおける相対論的電子の回折によって生じる。電子バンチ212-2の回折パターンは、シリコン膜の結晶面(例えば、シリコン膜の[100]結晶面)からのブラッグ回折によって制御される。回折パターンが、ブラッグ回折によって制御される一方で、ナノスケールパターン204は、特定のブラッグスポット(例えば、焦点面208上のブラッグスポット212-Aおよび212-B)に回折される電子の一部を空間的に制御する。したがって、ブラッグスポット212-Aに向けられた電子バンチは、ブラッグスポット212-Bに向けられた電子バンチの電子特性とは異なる1つ以上の電子特性を有する。いくつかの実施形態では、電子特性は、スポットサイズを含む。電子バンチの電子特性は、電子バンチから生成されたX線光パルスの光学特性と相関する。いくつかの実施形態では、光学特性は、X線光パルスの帯域幅を含む。
【0035】
例えば、電子バンチ212-1の第1の部分は、格子202および集束磁石206を通過しながら、ブラッグスポット212-A上に方向付けられる。ブラッグスポット212-Aでは、電子バンチ212-1の第1の部分は、第1のスポットサイズを有し、電子バンチ212-1の第1の部分から続いて生成されたX線光パルスは、第1の帯域幅を有する。電子バンチ212-1の第2の部分は、格子202および集束磁石206を通過しながら、ブラッグスポット212-Bに方向付けられる。ブラッグスポット212-Bでは、電子バンチ212-1の第2の部分は、第2のスポットサイズを有し、電子バンチ212-1の第2の部分から続いて生成されたX線光パルスは、第2の帯域幅を有する。いくつかの実施形態では、第2のスポットサイズは、第1のスポットサイズとは異なり、第2の帯域幅は、第1の帯域幅とは異なる。
【0036】
図2Aでは、パターン化された電子バンチ212-2は、パターン化された電子バンチ212-2が格子202の明視野像を投影するように、像平面212上で受信される。明視野像は、像平面210上に入力電子バンチ212-1を再生する(例えば、像平面210上の明視野像は、電子バンチ212-1のものと同様のMeV電子の均一な分布を有する)。
図2Aとは対照的に、
図2Bは、像平面210にわたって交互の明るい領域216-Aおよび暗い領域216-Bを含む暗視野像を示す。暗視野像は、像平面210上に透過されるパターン化された電子パターン210-2の単一のブラッグスポットのみを選択することによって作成される。この選択は、焦点面208上にアパーチャ214を位置付けることによって行われる。アパーチャ214は、単一のブラッグ回折ピークを除くすべてをブロックするように構成される。
図2Bに示されるように、アパーチャ214は、他の電子バンチ(例えば、ブラッグスポット212-Bの電子バンチ)がブロックさる一方で、ブラッグスポット212-Aの電子バンチが像平面210上に伝播することを可能にする。
【0037】
等倍において、横方向にパターン化された電子バンチは、シリコン構造と同じ空間周期性を有する。しかしながら、空間周期性は、磁気レンズ(例えば、集束磁石206)を使用してパターンを(例えば、最大100の倍率で)縮小/拡大し、パターンをX線範囲にスケーリングすることによって、広範囲の周期性にわたって連続的に調整され得る。
【0038】
開示された電子バンチの分割(例えば、パターン化)方法は、格子202のナノスケールパターニング204によって決定論的に制御されるX線位相面を画定する。開示される方法は、X線ビーム特性の制御および安定化に適用可能であり、最終的に、シリコン膜上の異なるナノスケールパターンを通して位相の完全な制御をもたらす。いくつかの実施形態では、格子202上の電子スポットサイズを変更することによって、異なる数の格子周期が照射され、それによって、異なる数のパターン化された電子バンチが生成される。これにより、照射された格子周期の数の逆数で与えられる、X線パルスの長さおよびその帯域幅の両方が制御されるであろう。電子パターンのコントラスト比が高いため、X線出力パルスは、ほぼ変換制限されることが予想される。
【0039】
XFEL放射を生成するには、さらに2つのステップが必要で、まず、電子が最終エネルギーまで加速され、パターンが、エミッタンス交換(EEX)と呼ばれる技術を使用して、横方向空間から時間空間にスワップされなければならない。次に、電子が、短い静磁場アンジュレータを通って伝播するか、または等価的に赤外線(IR)レーザーパルスを散乱させて、コヒーレントなX線を生成しなければならない。X線放射の目的で、アンジュレータを使用することと、IRレーザーを使用することとの間の主な違いは、振動の周期である。IRレーザーの短い期間は、アンジュレータに必要なGeVではなく、数十MeVの電子が、硬X線を生成することを可能にし、アンジュレータベースのXFELと比較して、加速器のサイズおよびコストを劇的に縮小する。IRレーザーを使用ことに対するトレードオフは、より低いエネルギーの電子ビームが、より少ない光子を生成し、より厳しいビーム品質要件を有することである。
【0040】
図3Aおよび3Bは、入力電子バンチの入射角を変化させることによって、異なるブラッグスポットの強度を制御するための実験結果の例示的な図である。
図3は、200nmの厚さのパターン化されていない単結晶シリコン膜によって分割されたナノパターン化された電子バンチの暗視野像を示す。実験は、RFフォトインジェクタを使用して、SLAC National Accelerator Laboratoryの超高速電子回折(UED)施設で実施され、数MeVのエネルギーでフェムト秒電子バンチを生成した。電子バンチは、rms7.5×10
-4の相対的なエネルギーの広がりを伴う、180Hzの繰り返し速度および2.26MeVの運動エネルギーで動作された。このバンチは、コリメータ後で約3nm-radの正規化されたエミッタンス、試料における最小5gmのスポットサイズ、および110fsのrmsバンチ長を有する。回折実験中に、バンチ電荷(10fC、20fC、60fC、1pC)およびコリメータサイズ(200gm、500gm)の様々な組み合わせが試験された。
【0041】
UED実験室の固体試料チャンバは、6軸運動制御、すなわち、x方向、y方向およびz方向の並進、x軸およびy軸(ピッチおよびヨー)に沿った±30°回転、z軸に沿った±1°回転で、試料ステージを保持した。平面状のSi膜デバイスが、バンチに対して垂直に取り付けられ、シリコン結晶面の配向が、xおよびy回転軸と1°以内に機械的に整列された。膜の結晶面を試料ホルダのxおよびy回転軸と1°以内に整列させた後、シミュレートされ、同時に、
【数1】
電子バンチを最大化し、(000)電子バンチを消滅させることが認められた領域で、角度走査が行われた。結晶を電子バンチに対して法線方向に完全に整列させるために、2Dピッチ/ヨー回転走査が行われ、ブラッグスポットの強度が均等化される正規点を見出した。その後、正規点におけるピッチおよびヨーの設定が、すべてのさらなる画像の基準として設定された。次いで、結晶が、以前のマルチスライスシミュレーションに基づいて、特定のピッチ角およびヨー角だけ回転され、最大80%の前方電子バンチが1つのブラッグスポットに回折された2電子バンチ条件を見出した。画像収集および処理に使用された検出器は、Andor IXon Ultra 888 EMCCDである。
図3Aおよび3Bを作成する際に収集された回折像では、ゲインは150であり、露光は0.1sであった。紫外線レーザーをOFFにし、RFをパルスさせた状態で複数の背景画像の平均値を取ることで、CCDバックグラウンドおよび暗電流を減算した。さらに、各回折像から一定のバックグラウンドを減算した。すべての可視回折ピークの中心を極大値に設定し、中心から25ピクセル以内のすべてのカウントを、それぞれの反射について合計した。次いで、これらを、すべての可視回折ピークにおける総カウントを使用することによって、正規化した。
【0042】
電子バンチエネルギーを、シンチレータスクリーン内の45mmアパーチャを使用して計算し、画像のピクセルサイズを計算した。画像検出器の較正は、ピクセル当たり36ミクロンである。(440)スポットと
【数2】
スポットとの間の間隔は822.12ピクセルであり、29.60mmに対応した。試料からシンチレータスクリーンまでの距離(3124mm)を使用して、ブラッグ角を計算し、次に、結晶格子間隔は、膜に使用されたシリコン(100)については既知であるので、運動エネルギーを計算することができた。
【0043】
シリコン膜の厚さ(例えば、厚さT)は、直接電子バンチを消滅させるために、動的消滅距離の約半分である。所与の回折条件、電子バンチ発散、および電子バンチエネルギーに必要な厚さが、非弾性散乱を考慮するために、散乱ポテンシャルの虚部を含む動的計算に基づいて推定された。
【0044】
入力電子バンチの入射角を制御するために、シリコン膜の結晶面を試料ホルダと整列させた。次いで、同時に、
【数3】
電子バンチを最大化し、(000)電子バンチを消滅させるために、試料ホルダを回すことによって、入射角の範囲にわたって角度を走査した。角度は、垂直方向(ヨー角)および/または電子の伝播方向に垂直な横方向(ピッチ角)で走査された。
【0045】
図3Aおよび3Bは、2つの異なる回折パターンを比較する。
図3Aでは、直接電子バンチ(000)が、-2.19mradのヨー角で最大化され、
図3Bでは、
【数4】
反射が、-1.15mradのヨー角で最大化される。
図3Aでは、電子バンチの約80%の透過が、示されたピッチ/ヨー角で(000)ブラッグスポットに散乱している。
図3Bでは、電子バンチの約80%が、示されたピッチ/ヨー角で(220)ブラッグスポットに散乱している。パーセンテージは、入射電子バンチに対して計算された。
図3Bでは、(000)ブラッグスポットは、入射強度の約5%に減少し、残りの数パーセントが他のピークに散乱している。明確なブラッグ回折ピークを撮像するには、膜における電子バンチ発散角が、2.26MeVでの1.2mradの一次ブラッグ角よりも有意に小さいことが必要である。さらに、集束系内の色収差がピークを重複させないように、相対的なエネルギーの広がりが十分に低くなければならない。発散およびエネルギーの広がりに関するこれらの要件は、
図3Bに示されるようなフォトインジェクタ電子バンチによって満たされる。シリコン膜の寿命は、最終的に、放射線障害効果によって設定される。放射線障害効果は、高電圧電子顕微鏡を用いて検討することができる。シリコンおよび0.1A/m
2(100ミクロン径のスポットに1kHzの繰り返し速度で1pC)の現実的な電子バンチ電流密度における「ノックオン」弾道原子変位プロセスのための適切な断面を使用して、1%の原子変位を蓄積するために、24時間年中無休で動作する277日間の曝露時間を推定した。
図3Aおよび3Bに関して本明細書に記載される例示的な実験結果は、
図2Aおよび2Bに関して記載されるように、ナノパターン化された電子バンチを生成および使用するための十分に達成可能なフォトインジェクタ動作、安定性、および電子バンチ品質を示す。
【0046】
図4A~4Cは、200nmの厚さ(例えば、
図2Aの厚さT)および200nmのピッチ(例えば、格子202の狭い部分204-Aの200nmの幅と、広い部分204-Bの200nmの幅との合計に対応するピッチP)のナノスケールの単結晶シリコン格子(例えば、
図2Aの格子202)を用いて実施された実験の実験結果を示す。
図4Aは、シリコン格子での回折によってパターン化された電子バンチの実験の明視野像の例示的な図である。(例えば、
図3Bに関して説明されるような)
【数5】
ブラッグスポットを最大化する配向において、アパーチャ(例えば、
図2Bに関して説明されるアパーチャ214)を導入して、
【数6】
ブラッグスポットの電子バンチ以外のすべての電子バンチをブロックし、
図4Aに示される明視野像を生成した。明るい部分404-Aは、格子202のナノスケールパターニング204の狭い部分204-Aに対応し、暗い部分404-Bは、格子020のナノスケールパターニング204の広い部分204-Bに対応する。明るい部分404-A(例えば、明るい領域)は、暗い部分404-B(例えば、暗い領域)よりも高い電子密度を有する。
図4Bは、参照線(reference line)AA’に沿った
図4Aの明視野像の断面図を示す。格子の広い部分を通過する電子バンチの約80%が、ゼロ次のスポットから偏向され、それによって、
図4Bによって示されるように、他のスポットがアパーチャによってブロックされるときに、像平面(例えば、
図2Bの像平面210)内に強い4:1のコントラスト比を生成する。
図4Cは、FELバンチング因子として知られる、
図4Bに示される分布のフーリエ変換の振幅を示す。フーリエ変換は、FEL飽和後に見られる最大バンチング因子と同様に、0.5付近のピーク値を有する。
図4Cはまた、基本的なものよりもさらに高い光子エネルギーに到達するために利用され得る顕著な高調波含有率を示す。フーリエ変換ピークが変換限界の数パーセント以内であることは、完全にコヒーレントなバンチングを生成するためのこの方法の適用可能性を示している。
図4Cのフーリエ変換ピークの特性は、フーリエ変換された特性が、生成されたX線パルスの光学特性と相関するように、エミッタンス交換後に時間周波数領域に転送される。
【0047】
図5は、シリコン格子における別個の電子バンチスポットサイズから生じる分割された電子バンチの特性を示す実験結果の例示的な図である。パネルIは、ナノパターン化された格子(例えば、格子202)において第1のスポットサイズを有する第1のスポットの明視野像を示す。パネルIIは、パネルIの明視野像の断面図を示し、パネルIIIは、パネルIIに示される分布のフーリエ変換の振幅を示す。同様に、パネルIVは、ナノパターン化された格子において第2のスポットサイズを有する第2のスポットの明視野像を示す。パネルIIは、パネルIの明視野像の断面図を示し、パネルIIIは、パネルIIに示される分布のフーリエ変換の振幅を示す。示されるように、第1の電子バンチスポットサイズは、第1の電子バンチスポットサイズが第2の電子バンチスポットサイズよりも多くの格子周期を照射するという点で、第2の電子バンチスポットサイズよりも大きい。電子バンチスポットサイズを互い違いにすることによって、分割された電子バンチの帯域幅が変化する。スポットサイズが大きいほど、帯域幅が狭くなる。示されるように、(より大きい)第1のスポットサイズを有する第1の電子バンチスポットから生じる明視野像のフーリエ変換ピークは、(より小さい)第2のスポットサイズを有する第2の電子バンチスポットから生じる明視野像のフーリエ変換ピークよりも狭い帯域幅を有する。
【0048】
X線光パルスのパルス長は、いくつかのナノパターン化された電子バンチによって画定される。
図5に示される画像の場合、四極レンズによる縮小および(6倍の別の縮小を提供する)エミッタンス交換の実施、パルスは、第1の電子バンチスポットサイズ(パネルI~III)および第1の電子バンチスポットサイズ(パネルI~III)についてそれぞれ、約69および25周期の長さになるであろう。69および25周期は、それぞれ、1.24nmの波長における0.1fsおよび0.3fsのパルス長に対応する。
【0049】
図6A~6Dは、本開示のいくつかの実施形態による、ナノパターン化された電子バンチを生成するための方法600のフローチャートをひとまとめに提供し、任意選択のブロックは、破線ボックスで示されている。
【0050】
図6Aのブロック602。方法600は、電子バンチを伝播方向に沿って相対論的なエネルギーまで加速することを含む。例えば、
図1A~1Cでは、第1の線形加速器セクション104aが、エレクロトンフォトインジェクタ102によって生成された電子バンチを相対的なエネルギーまで加速する。
【0051】
図6Aのブロック604。方法600はまた、電子バンチを相対論的なエネルギーで格子を通して透過することによって、電子バンチを分割する(例えば、パターン化する)ことを含む。格子は、複数の交互の狭い部分および広い部分を含む(ブロック606)。狭い部分は、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に第1の厚さを有する(ブロック608)。広い部分は、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に第2の厚さを有する。第2の厚さは、第1の厚さよりも大きい(ブロック610)。例えば、
図2Aの格子202は、伝播方向に沿って加速された電子バンチ212-1を受信し、透過する。格子202は、単結晶シリコン膜で作製され、交互の長手方向に広い部分204-Bおよび狭い部分204-Aを有するナノスケールパターン204を含む。透過中、格子202は、回折パターンが、格子402のシリコン膜の結晶面からのブラッグ回折によって制御される一方で、ナノスケールパターン204が、特定のブラッグスポット(例えば、集束磁石206の焦点面208上のブラッグスポット212-Aまたは212-B)に回折された電子バンチの一部を空間的に制御するように、電子バンチ212-1を複数のサブバンチ(例えば、ナノバンチ)を含むパターン化された電子バンチ212-2として回折させる(例えば、リダイレクトする)。
【0052】
図6Aのブロック612。方法600はまた、分割された電子バンチを使用して光のパルスを生成することも含む。
図1A~1Cは、分割された電子バンチを、UVレーザーなどの逆コンプトン散乱(ICS)レーザーからの光と相互作用させることによって、光のパルス(例えば、X線)が生成される例を示す。
【0053】
図6Bのブロック614。格子の交互の狭い部分および広い部分(例えば、
図1Aの格子202の狭い部分204-Aおよび広い部分204-B)は、光のパルスがチャープされるようにパターン化される(例えば、光のパルスにわたって光の周波数が変化する)。
【0054】
図6Bのブロック616。相対論的なエネルギーで格子を通して電子バンチを透過することにより、電子バンチが格子の結晶構造から回折され、それによって複数の結晶学的ピークを有する回折パターンが生成される。例えば、パターン化された電子バンチ212-2は、
図2Aの焦点面208のブラッグスポット212-Aおよび212-Bに結晶学的ピークを有する回折パターンを有する。複数の結晶学的ピークは、複数の交互の狭い部分および広い部分(例えば、狭い部分204-Aおよび広い部分204-B)のために空間的に分離される。
【0055】
図6Bのブロック618。方法600は、アパーチャを使用して、複数の結晶学的ピークのそれぞれの結晶学的ピーク内の電子を選択して、分割された電子バンチとして使用し、(例えば、それぞれの結晶学的ピークの一部ではない)残りの電子を破棄することを含む。例えば、
図2Bでは、アパーチャ214は、ブラッグスポット212-A上に回折された電子バンチが透過される一方で、他のすべての電子バンチ(例えば、ブラッグスポット212-B上に回折された電子バンチ)がブロックされるように、焦点面208上に位置付けられている。
【0056】
図6Bのブロック620。相対論的なネルギーで格子を通って電子バンチを透過することにより、電子バンチが、電子バンチの伝播方向に対して実質的に横方向(例えば、実質的に垂直方向)に分割される。例えば、
図2Aにおいて、長手方向(例えば、水平方向)に伝播する電子バンチ212-1が、電子バンチ212-1の伝播方向に対して実質的に横方向である(垂直な)焦点面208に沿って異なるブラッグスポット(例えば、ブラッグスポット212-Aおよび212-B)に分割される。
【0057】
図6Bのブロック622。光のパルスは、電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向に分割された電子バンチを用いて生成される(例えば、
図1のエミッタンス交換セクション114によって生成または変換されるような、例えば、
図2Bのバンチ212-A)。
【0058】
図6Bのブロック624。分割された電子バンチを使用して光のパルスを生成する前に、分割された電子バンチに対してエミッタンス交換を実行しなさい(例えば、横方向の分割を長手方向の分割にスワップまたは変換すること、
図1のエミッタンス交換セクション114を参照されたい)。
【0059】
図6Cのブロック626。電子バンチは、第1の電子特性を有する第1の電子バンチであり、光のパルスは、第1の光学特性を有する光の第1のパルスである。例えば、
図5に示されるように、第1の電子特性を有する電子バンチ(例えば、パネルIにおける電子バンチ画像)は、第1の光学特性(例えば、パネルIIIにおけるフーリエ変換ピークによって示されるような)を有する光の第1のパルスを生成するために使用される。
【0060】
図6Cのブロック628。方法600は、第1の電子特性とは異なる第2の電子特性を有する第2の電子バンチを加速することを含む。例えば、
図5のパネルIVで撮像された第2の電子バンチは、
図5のパネルIで撮像された第1の電子バンチとは異なる特性を有する。方法600はまた、第2の電子バンチを格子を通して透過することによって、第2の電子バンチを分割することと、分割された第2の電子バンチを使用して、光の第2のパルスを生成することと、を含む。光の第2のパルスは、第1の光学特性とは異なる第2の光学特性を有する。例えば、パネルVIのフーリエ変換ピークは、パネルIIIのフーリエ変換ピークとは異なる光学特性を有する。
【0061】
図6Cのブロック630。第1の電子特性は、第1のスポットサイズを含み、第2の電子特性は、第1のスポットサイズとは異なる第2のスポットサイズを含む(例えば、
図5のパネルIおよびIV)。
【0062】
図6Cのブロック632。第1の光学特性は、第1の帯域幅を含み、第2の光学特性は、第1の帯域幅とは異なる第2の帯域幅を含む(例えば、
図5のパネルIIIおよびVI)。
【0063】
図6Dのブロック634。分割する電子バンチを使用して光のパルスを生成することは、分割された電子バンチをレーザーからの光から散乱させること(例えば、
図1Cに示されるように、逆コンプトン散乱を実行すること)を含む。
【0064】
図6Dのブロック636。分割された電子バンチを使用して光のパルスを生成することは、分割された電子バンチをアンジュレータに通すこと(例えば、分割された電子バンチを、アンジュレータを通して透過すること)を含む。
【0065】
図6Dのブロック638。光のパルスは変換限界の10%以内である。
【0066】
図6Dのブロック640。光のパルスは、光のパルスの複数の波長にわたって、長手方向にコヒーレントである。例えば、長手方向に分割された電子バンチは、複数のサブバンチ(例えば、
図2Aのブラッグスポット212-Aおよび212-Bにおけるサブバンチ)を備え、複数のサブバンチのうちの第1のサブバンチから生成された光は、第1のサブバンチとは異なる複数のサブバンチのうちの第2のサブバンチから生成された光と長手方向に(時間的に)コヒーレントである。
【0067】
図6Dのブロック642。光のパルスは、格子を含む第1の光源(例えば、光源100、
図1A~1C)で生成される。
【0068】
図6Dのブロック644。第1の光源とは異なる第2の光源をシードしてコヒーレント光を生成するために、光のパルスを使用しなさい(例えば、第2のより高出力の自由電子レーザー、図示せず)。
【0069】
図6Dのブロック646。光のパルスは、X線を含む。
【0070】
図6A~6Dのフローチャートに関して上述した方法および特徴は、時間的コヒーレンスを有するナノパターン化された電子バンチ(例えば、電子ビーム)を提供する。本方法はまた、X線自由電子レーザーの決定論的位相制御も提供する。シリコン格子からの回折は、最終的にX線相を駆動する電子バンチパターンの精密なテーラリングを可能にする。
【0071】
横方向空間で低収差エミッタンス交換ラインを通して実施されるテーラリングは、縦方向の次元に転写され、位相制御されたX線出力パルスを生じる。放射中に、1X線波長の相対的なスリップがアンジュレータ周期ごとにX線と電子との間に発生し、瞬時位相シフトを実行する能力を制限する。それにもかかわらず、この方法は、X線パルスの周波数、帯域幅、偏光、パルス長、および/または振幅をコヒーレントに制御することを含む、X線特性を操作するための新規の方法を提供する。したがって、この方法は、他に類を見ない位相制御を有する調整可能でコヒーレントなフェムト秒光子ビームを提供する。さらに、この電子バンチパターン化法は、ほぼあらゆる所望の時間構造を、半導体リソグラフィによって作成された電子バンチ内のマスクによって、電子バンチに印加することを可能にする。エミッタンス交換を介したアト秒スケールの時間遅延に対応するマスクの横断距離として、ほぼゼロのジッタでのX線ポンプ、X線プローブ実験のための初期時間=0パルスを生成すること、およびSASEモードが基づく増幅されたノイズとは異なり、完全な時間的コヒーレンスと、決定論的パルスプロファイルとを有するチャープされたビームを随意に生成することが可能になる。
【0072】
大きな(約10eV)帯域幅の光パルスを生成する能力と、チャープパルス圧縮の適用とが、アト秒の持続時間を有する硬X線パルスを可能にする。これにより、化学反応の最初のステップ、すなわち、核の運動を引き起こし、分子骨格に変化を生じさせる電子再配列および電荷移動の探究が可能になる。アト秒X線パルスを使用して、光化学反応の初期段階における電子相関および電子核結合の役割に関する多くの未解決の問題に取り組むことができる。そのような研究は、工業用化学生産のため、および人体生化学を制御する酵素のための両方で、光合成、視覚、触媒作用などの生命を生み出すプロセスの基本的なステップを理解するための鍵である。
【0073】
本開示の方法は、非線形4波混合または刺激X線ラマン散乱などの技術を使用して、分子および物質におけるコヒーレントな電荷・エネルギー移動ダイナミクスの画期的な探究のための、正確に調整可能なアト秒~フェムト秒の遅延を有する位相ロックされた多色X線パケットの生成を提供する。その赤外線および可視光類似物とは対照的に、多次元X線分光法は、基本的特異性を提供する能力により、非常に大きな希望を提供する。したがって、多次元X線分光法は、触媒の特定の原子間の電荷流動、または光合成における発色団間のコヒーレントなエネルギー伝達の研究を可能にし得る。このアプローチは、各々が化学系内の特定の原子種の吸収端に調整された複数のX線パルスの適用を伴う。X線パルスの時間遅延および周波数を変化させることにより、電荷およびエネルギーの再分配のための経路を明らかにする多次元吸収マップを得ることができる。
【0074】
これらの方法に基づいて逆コンプトン散乱を使用するコンパクトなソース機構は、大規模なXFELにコヒーレントシードを提供することもできる。シードは、計算された数MWのピーク電力よりもはるかに低い約10kWのSASE起動ノイズからのものよりも著しく大きい電力と、ショット間の高安定性と、を有しなければならない。そうすると、そのようなシードが、決定論的位相特性を大型XFELのより高電力のビームに転送する。
【0075】
現在の方法およびアセンブリは、ナノ科学、生物学、および化学のための広範な学際的用途を有する。例としては、(多くの分子にわたる)極端な時間的コヒーレンス(extreme temporal coherence)を有する単色および多色分光法、分光実験および回折実験の両方のためのパターン化された位相コヒーレントな時間構造およびエネルギー構造(例えば、分子動画のための時間分解ラウエ回折、ラウエレンズを使用するマイクロ回折、ならびに細胞ほど大きい試料の高速コヒーレンス回折撮像)、ならびに試料誘導性スーパールミナンスが挙げられる。
【0076】
本発明の実施形態はまた、単結晶シリコン膜からの回折強度マップに基づいて、時間的にコヒーレントなX線パルスを提供するための方法も開示する。上記で説明されたように、従来のXFELは、部分的な時間的コヒーレンスしか提供しない。コヒーレンスは、上述のように、逆コンプトン散乱(ICS)を用いて予めバンチされたビーム(例えば、予めバンチされた電子バンチ)を使用するコンパクトX線自由電子レーザー(CXFEL)によって達成され得る。プリバンチングは、横方向空間変調を、4桁異なるエミッタンスの交換を容易にするための収差補正光学系を有するエミッタンス交換(EEX)ビームラインに通すことによって生成され得る。いくつかの実施形態では、変調源は、単結晶シリコン膜である。いくつかの実施形態では、単結晶シリコン膜は、ナノスケールパターニングを含む(例えば、
図2Aのナノスケールパターニング204を有する格子202)。
【0077】
多くのビームエネルギーで空間パターンのコントラストを最大化する動的ビームブロックを作成するには、1つのビームが強度の大部分を受け取る、電子回折のための2つ以上の運動学的レジームを考慮しなければならない。最終的な空間変調に直接ビームを使用することには利点がある。したがって、シリコン結晶膜の特定の部分に沿って、直接ビームを消滅させる必要がある。フォトインジェクタの電子回折のための比較的高いエネルギーでは、回折パターンにおける複数のブラッグ反射が励起され、二波近似の適用可能性が低下し、所与の膜厚およびビームエネルギーのための最適な結晶学的方位を決定するためのシミュレーションの必要性が高まるであろう。したがって、本開示によって提供される回折強度マッピングなどの動的マルチビームアプローチが求められている。
【0078】
実験的回折パターンのシミュレーションに基づいて、単一電子の複数の散乱事象を含む、結晶(例えば、単結晶シリコン膜)の深さにわたる散乱を計算することができる。いくつかの実施形態では、マルチスライス法を使用して、実験的回折パターンをシミュレートする。
【0079】
マルチスライス法は、シュローディンガー方程式を反復的に使用することと、結晶のポテンシャルを電子の進行方向に沿って複数の層に分割することと、を含み、電子波動関数
【数7】
は、結晶の出口で計算され得る。第n+1層について、波動関数は
【数8】
式中、p
n(x,y)はフレネルプロパゲータであり、t
n(x,y)は透過関数であり、*は2次元畳み込みである。物理光学の解釈では、プロパゲータは、近接場回折を考慮し、透過関数は、位相格子を表現する。
【0080】
畳み込み定理と併せて高速フーリエ変換を適用することによって、方程式1のより計算集約性の低い形式が得られる。すると、電子波動関数は、下式で与えられ、
【数9】
式中、P
n(k
x,k
y)は実空間プロパゲータのフーリエ変換であり、FおよびF
-1はそれぞれ、フーリエ変換および逆フーリエ変換である。実空間プロパゲータ(最大1°の傾きの近似で)は、
【数10】
式中、
【数11】
であり、k
xおよびk
yは、波数のxおよびy成分であり、
【数12】
は、試料の傾きのxおよびy成分であり、かつ
【数13】
は、スライス厚さである。
【0081】
さらに、透過関数は、下式で与えられ、
【数14】
式中、σは、
【数15】
で与えられる相対論的電子の相互作用定数であり、m
0は電子の静止質量、γはローレンツ因子、eは電子電荷、λは相対論的電子波長、および
【数16】
は換算プランク定数である。
【0082】
式(4)で、V(x,y)は、現在の層の距離
【数17】
内のポテンシャルを示す、ビーム方向zに沿って投影された結晶ポテンシャルであり、これを、フーリエ係数として扱うことができる、層内のすべての個々の原子ポテンシャルの合計として近似する。これらは、電子散乱係数に比例し、式
【数18】
に従ってデバイ-ウォーラー温度因子Bによって重み付けされ、式中、
【数19】
であり、式中、
【数20】
は、
【数21】
回折点のブラッグ角であり、λは相対論的電子波長である。温度因子は、温度の上昇に伴って、高角度散乱の減衰を増加させる。計算に関しては、様々な要素および温度について電子散乱係数およびデバイ-ウォーラー因子を計算することを可能にする多くのパラメータ表現が存在する。
【0083】
入射ビームの角発散を考慮するために、まず波動関数
【数22】
を用いて電子平面波を考察するが、式中、
【数23】
は、ビーム法線に対する結晶の逆格子空間の偏向である。シミュレーションで離散的角度間の干渉がないと仮定すると、角度にわたってインコヒーレントに合計し、重み関数
【数24】
を適用して、総強度を得ることができ、
【数25】
式中、
【数26】
は、結晶からの出口における透過波動関数、Nは、合計に含まれる角度の数である。ビームはガウスプロファイルを有するので、対応する重み関数
【数27】
が使用されるであろう。
【0084】
図7は、電子バンチをシリコン結晶から回折させるための実験結果の例示的な図である。
図7は、
図3Aおよび3Bに関して説明される実験結果と同様に、厚さ200nmの単結晶シリコン膜によって分割されたナノパターン化された電子バンチの暗視野像を示す。
図7は、2.26MeV電子の、シンチレータ上のシリコン膜の(100)結晶学的回折パターンを示す。画像は、回折パターンにおける20個のブラッグ反射702に対応する強度ピークを示す。関心の高いブラッグ反射702は、
図7に注釈が付けられているように、反射
【数28】
、反射
【数29】
、反射(000)、反射
【数30】
、および反射
【数31】
を含む。
【0085】
単結晶膜がホルダに位置付けられ、ピッチ角および/またはヨー角の範囲にわたって走査された。膜の結晶面に対する試料ホルダのピッチ軸およびヨー軸の配向を決定するために必要な後処理を最小限に抑えるために、試料が、1°未満のロールでホルダに位置付けされた。そのような値は、その場で修正され得る。2.26MeVの運動エネルギーが使用された。セットアップに関しては、コリメータが、RFガンの0.56m下流に位置付けられ、この実験のために、90.7μmのコリメータが挿入されて、ショット当たり10.3fCの電荷を得た。1.0mにある二次ソレノイドが、ガンから約1.36mに位置する6軸試料ホルダ上にビームを合焦した。ホルダを越えて、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)スクリーンへの3.12mのドリフトがあり、検出器(例えば、Andor iXon Ultra 888 EMCCD)を使用して撮像される。ピクセルサイズは、実空間で36μm、逆格子空間で
【数32】
と計算された。試料なしでビームを調整したところ、RMS逆格子空間幅σ
kは
【数33】
であり、これは、61μRadのRMS角度σ
x’に対応する。
【0086】
シリコン結晶構造の法線と、電子ビームとの間の角度は、試料ホルダで試料をまず傾けることによって、回折パターンが対称的な強度を有するまで決定した。次いで、提案された法線を囲む傾きの小さなセットについて、強度マップを撮影した。強度マップ内の対称性を使用して、ビーム法線を決定した。次いで、関心の波数(Kx、Ky)値の集合と一致したホルダのピッチおよびヨー設定を介して試料をラスタして、回折パターンを撮像した。
【0087】
図8は、ブラッグ反射の実験のおよびシミュレートされた強度マップの例示的な図である。パネルA1は、
【数34】
結晶面のブラッグ反射のシミュレートされた強度マップを示し、パネルA2は、
【数35】
結晶面のブラッグ反射の実験の強度マップを示し、パネルB1は、(000)結晶面のブラッグ反射のシミュレートされた強度マップを示し、パネルB2は、(000)結晶面のブラッグ反射の実験の強度マップを示す。強度バーに表されるパーセンテージは、弾性散乱の割合を表す。
図8の強度マップは、元の電子バンチの弾性散乱成分の非弾性成分からの分離を示す。200nmのシリコン(100)結晶の推定吸収は、2.26MeVである。
【0088】
シミュレートされた強度マップは、方程式1~5に関して上述したマルチスライスシミュレーション法を用いて得られた。実験の強度マップは、(100)シリコン結晶構造の8×8個の単位セルによって回折される電子バンチの回折パターンを撮像することによって、
図7に関して説明された方法と同様の方法を使用して得られた。8×8個の単位セルは、逆格子空間分解能を得るために必要であった。増大した単位セル数の投影ポテンシャルを適切にシミュレートするための実空間分解能を得るためには、512×512の格子が必要であった。パネルA1およびB1のシミュレートされたマップは、回折パターンで見える(例えば、
図7に示されるような)20個のブラッグ反射に対して正規化された。膜の結晶面がホルダのピッチおよびヨー平面に対して回転されたため、k
xおよびk
y軸(例えば、方程式2を参照)が、結晶の(100)平面に対して135度回転される。ブラッグ反射
【数36】
および(100)の両方について、シミュレートされた値の最大値はより大きく、シミュレートされた(000)反射は最大89%であり、実験の反射は83%である。シミュレートされたパターンはまた、実験のパターンよりも詳しく示される。例えば、k
x=0.5、-0.5の底近くで始まる2つの谷は、実験データではあまり顕著ではない。これは、実験画像を収集するために使用される検出器のレンズによる
【数37】
反射と
【数38】
反射とのクリッピングによって説明され得る。各反射は、強度の大部分を受け取るそれぞれの値を有する。クリッピングが起因して、(000)反射への寄与が増大して現れ、谷がより浅くなる。注目すべきは、3.5%の(000)ビームの弾性的散乱の最小値で、これが、パターン化された膜の文脈で、有意なコントラストを可能にするであろう。以下で説明されるように、高次反射のうちの1つに対して(000)ビームのコントラストが望ましい。
【0089】
図9は、様々な角度で散乱される電子の割合を示す実験のおよびシミュレートされた強度マップの例示的な図である。パネルIは、より高次のブラッグ反射のシミュレートされた弾性散乱強度を示し(
図7に示される20個のブラッグ反射を除く)、パネルIIは、
図7の20個のブラッグ反射について測定された実験の弾性散乱強度を初期電荷のパーセンテージとして示し、パネルIIIは、20個のブラッグ反射について測定された実験の非弾性散乱強度を初期電荷のパーセンテージとして示す。
【0090】
図9のパネルIIでは、初期電子パルスの最大67%が弾性的に散乱される。
図9のパネルIにおけるシミュレートされた高次弾性散乱に基づいて、パネルIIにおける測定された強度の変動は、より高次の反射への弾性散乱に起因され得る。非弾性散乱(
図9のパネルIII)を計算するために画像中の総電荷を調べると、中心に谷を有する弾性散乱と同様のパターンが観察される。より高次の反射への回折は、プラズモン散漫散乱と一致すると予想される。このような散乱では、入射電子が物質中の価電子を励起し、入射電子がエネルギーを失い、それにより散乱することになる。このような散乱は異方性であり、ブラッグ反射がローレンツ分布および
【数39】
(式中、はエネルギー損失であり、Eはビームの運動エネルギーである)の半角を有する状態で試料が傾いているので、明るいブラッグピークを中心とする。エネルギー損失は、シリコンでは16.7eVであるプラズモンエネルギーに等しい。2.26MeVでは、これは、3.7μradの半角をもたらす。
図9を検討すると、ガウス成分を、予想されるローレンツ成分を有する何かと比較するときに予想されるテールが存在する。
図9はまた、回折された(000)反射および
【数40】
反射の両方が同様のテールを有するので、プラズモン散漫散乱が最も明るい反射にシフトすることを支持する。
【0091】
ビームのガウスプロファイルを維持し、コントラスト低減を最小限に抑えるために、
図9の結果は、回折物質の厚さを低減することに有利である。検討されているエネルギーおよびナノメートルスケールの厚さでは、電子バンチは回折をほとんど経験せず、したがって、最終的なパターニングに使用されるビームは、直接(000)再反射であるべきである。したがって、明視野撮像が使用されるべきである。さらに、撮像電子バンチの近くのプラズモン散漫散乱を制限するために、パターンのブロック部分は、励起された反射が直接ビームから比較的遠くなるように配向されるべきである。
【0092】
図10は、回折の前および後の実験的吸収電子ビームの例示的な図である。
図10は、回折前(「オリジナル」とラベル付けされている)、および回折後に(000)回折面および
【数41】
回折面で測定された吸収スペクトルを示す。すべての吸収スペクトルについて、局所的なバックグラウンドが除去された。元のビームの画像は、75のゲインおよび0.102sの露光で撮影され、回折パターンの画像は、150のゲインおよび0.102sの露光で撮影されたが、ゲイン差は補償されている。
【0093】
結晶内で発生する吸収を推定するために、結晶の投影ポテンシャルに虚数項が追加される。これにより、強度
【数42】
に関して指数関数的に減衰する減衰項が生じ、平均自由行程は、下式で与えられる。
【数43】
【0094】
式6で
【数44】
は、波動ベクトルのz成分であり、高エネルギー電子については、ほぼ電子波長λ
eである。V’
0は、ポテンシャルの虚部であり、ボルト単位である。原子ポテンシャルの虚部は、Hartree-Fock-Slater(HFS)原子関数を使用して、100keVであると計算されている(例えば、G. Radi, Acta Crystallographica Sception A 26,41(1970)を参照されたい)。これらは、実験で使用されるエネルギーにスケーリングされ得、3.57μmの平均自由行程をもたらし、200nmで5.5%の吸収を与える。弾性および非弾性散乱成分が、合わせて、元のビームの約88%を占める。ビームの残り約12%は、結晶によって吸収され、画像の測定領域の外側である非弾性プロセスに入るか、バックグラウンド除去手順中に減算された。
【0095】
まとめると、実験的に得られた弾性散乱と、シミュレーションによって得られた弾性散乱との対応関係が見出された。電子パケット内の電荷のパーセンテージとしての非弾性および弾性散乱の割合は、それぞれ67%および少なくとも21%であり、残りのパーセンテージは、吸収プロセスおよび非弾性プロセスの何らかの組み合わせであることが見出された。このことから、空間変調は、明視野像から形成されるべきであり、この画像を形成するために使用される動的ビームブロックの厚さは最小限に抑えされるべきであることが決定され得る。その後、生成された画像は、逆コンプトン散乱光源をCXFELに変換するために必要なプリバンチングを提供するためのEEXビームラインへの入力として機能する。
【0096】
図11A~11Cは、本開示のいくつかの実施形態による、単結晶シリコン膜から回折強度マップに基づいて時間的にコヒーレントなX線パルスを提供する方法1100のフローチャートをひとまとめに提供し、任意選択のブロックは、破線ボックスで示されている。
【0097】
図11Aのブロック1102。方法1100は、結晶の結晶構造からの相対論的電子バンチの透過ジオメトリにおける回折をシミュレートし、それによって複数のブラッグピークへの相対論的電子バンチの回折をシミュレートすることを含む。いくつかの実施形態では、シミュレートすることは、方程式1~5に関して説明されるマルチスライシングシミュレーション法によって行われる。
【0098】
図11Aのブロック1104。方法1100は、結晶構造からの相対論的電子バンチのシミュレートされた回折に基づいて、相対論的電子バンチの伝播方向と、結晶の法線方向との間の角度の範囲を選択することを含む。角度の範囲は、複数のブラッグピークのそれぞれのブラッグピークへの回折部分が最大化される角度を含むように選択される。
【0099】
図11Aのブロック1106。方法1100は、(例えば、
図1CのLINACセクション104を使用して)複数の物理電子バンチを相対論的なエネルギーまで順次加速することを含む。複数の物理電子バンチは、結晶構造(例えば、
図2Aの格子202)を有する物理結晶に向けて加速される。いくつかの実施形態では、結晶構造を有する物理結晶は、単結晶シリコン膜である。
【0100】
図11Aのブロック1108。方法1100は、複数の物理電子バンチを物理結晶から上記の角度の範囲内の異なる角度で回折させることを含む。例えば、格子(例えば、
図2Aのナノスケールパターニング204を除く格子202)が、電子ビーム(例えば、
図2Aの電子バンチ212-1)に曝露されている間に、ピッチ角および/またはヨー角の範囲にわたって走査される。いくつかの実施形態では、走査は、格子が取り付けられている試料ホルダを回転させることを含む。
【0101】
図11Aのブロック1110。方法1100は、上記の角度の範囲内の異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの回折部分を測定することを含む。いくつかの実施形態では、異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの回折部分を測定することは、ブラッグ反射の強度マップ(例えば、それぞれ、結晶面
【数45】
および(000)におけるブラッグ反射に対する
図8のパネルA2およびB2に示される強度マップ)を生成することを含む。
【0102】
図11Aのブロック1112。方法1100は、上記の角度の範囲内の異なる角度におけるそれぞれのブラッグピークへの測定された回折部分に基づいて、最終角度を選択することを含む(例えば、最終角度は、最終角度でのそれぞれのブラッグピークの強度に基づいて選択される)。
【0103】
図11Aのブロック1114。方法1100は、後続の物理電子バンチを相対論的なエネルギーまで加速することと、後続の物理電子バンチを物理結晶から最終角度で回折させることと、回折された後続の物理電子バンチを使用して光のパルスを生成することと、を含む、光のパルスを生成することも含む。例えば、エレクトロンフォトインジェクタ102(
図1C)は、回折格子110に異なる特性を有する電子バンドを提供するように調整され得る。
【0104】
図11Bのブロック1116。後続の物理電子バンチを物理結晶から最終角度で回折させることは、後続の物理電子バンチを、後続の物理電子バンチの伝播方向に対して実質的に横方向に分割する。例えば、格子202における電子バンチ212-1は、電子バンチを
図2Aのパターン化された電子バンチ212-2に分割する。分割は、電子バンチ212-1の伝播方向に対して実質的に横方向である焦点面208に沿った方向にある。
【0105】
図11Bのブロック1118。光のパルスは、後続の物理電子バンチの伝播方向に実質的に平行な方向(例えば、長手方向)に分割された後続の物理電子バンチを用いて生成される。例えば、
図1A~1Cに示されるように、電子パンチは、横方向の分割を長手方向の分割にスワップするエミッタンス交換セクション114に供される。
【0106】
図11Bのブロック1120。分割された後続の物理電子バンチを使用して光のパルスを生成する前に、分割された後続の物理電子バンチ上でエミッタンス交換を実行しなさい(例えば、上述のように、横方向の分割を長手方向の分割にスワップするために)。
【0107】
図11Bのブロック1122。分割された電子バンチを使用して光のパルスを生成することは、
図1Aの逆コンプトン散乱相互作用点を参照して上記で説明したように、分割された電子バンチをレーザーからの光から散乱させること(例えば、逆コンプトン散乱を実行すること)を含む。
【0108】
図11Bのブロック1124。分割された電子バンチを使用して光のパルスを生成することは、分割された電子バンチをアンジュレータに通すこと(例えば、分割された電子バンチを、アンジュレータを通して透過すること)を含む。
【0109】
図11Bのブロック1126。光のパルスは、X線を含む。
【0110】
図11Cのブロック1128。透過ジオメトリにおける回折のシミュレーションは、マルチスライス法を使用して実行される(例えば、方程式1~5に関して説明されるように)。
【0111】
図11Cのブロック1130。結晶は、シリコン結晶である(例えば、
図2Aのナノスケールパターニング204を除く格子202)。
【0112】
図11Cのブロック1132。結晶構造は、Si(100)結晶構造である。
【0113】
政府の支援
本開示に記載のいくつかの発明は、米国国立科学財団によって授与されたNSF Accelerator Science award 1632780、NSF BioXFEL STC award 1231306、およびNSF Grant CBET-1604971、ならびに米国エネルギー省によって授与された契約番号DE-ACO2-76SF00515の下で政府の支援を受けて行われた。
【0114】
米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【国際調査報告】