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特表2022-518461乱用防止長期作用型徐放性オピオイドプロドラッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】乱用防止長期作用型徐放性オピオイドプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/28 20060101AFI20220308BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20220308BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220308BHJP
   C07D 489/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C07D221/28 CSP
A61K31/485
A61P25/04
C07D489/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541426
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 US2020013782
(87)【国際公開番号】W WO2020150414
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】62/793,684
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520019078
【氏名又は名称】スーチョウ ランシンダタイ ファーマシューティクス エルティーディー シーオー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン,フイ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB14
4C086CB23
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA12
4C086NA14
4C086NA15
4C086NA20
4C086ZA08
(57)【要約】
不正変更に耐えるための、および長期作用型徐放性製剤を作製するための高められた物理的および化学的安定性を有するレボルファノールまたはモルヒネなどのオピオイドのプロドラッグ、およびその薬学的に許容可能な塩および溶媒和物が提供される。また、開示化合物を乱用防止製剤として使用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の化合物、または薬学的に許容可能なその塩であって、
【化1】
式中、Rが、R10、-OR10、または-NHR10であり、R10が、任意に置換されてもよい、7~30個の総炭素数を有する直鎖または分岐アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖である、化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項2】
10が、7~30個の炭素を有する非置換直鎖または分岐アルキル鎖である、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項3】
が、式CH(CHn-を有する非置換直鎖アルキル鎖であり、式中、nが8~24(例えば、10~24)の整数である、請求項1または2に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項4】
が、CH(CH10-、CH(CH12-、CH(CH14-、CH(CH16-、およびCH(CH18-から選択される、請求項3に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項5】
前記アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖が、ハロゲン、任意に置換されてもよいC1-6アルキル、酸素および窒素から独立に選択される1または2個のヘテロ原子で任意に置換されてもよいC1-6ヘテロアルキル、任意に置換されてもよいC2-6アルケニル、任意に置換されてもよい、C2-6アルキニル、任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、任意に置換されてもよいC6-14アリール、任意に置換されてもよい5~8員ヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよい5~10員ヘテロアリール、単鎖ペプチド、-NR100101、-C(=O)NR100101、-COOR102、および-OR102から独立に選択される1個または複数の基で任意に置換されてもよく、
100、R101、およびR102が、それぞれ独立に、水素、任意に置換されてもよいC1-6アルキル、酸素および窒素から独立に選択される1または2個のヘテロ原子で任意に置換されてもよいC1-6ヘテロアルキル、任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、任意に置換されてもよいC6-14アリール、任意に置換されてもよい5~8員ヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよい5~10員ヘテロアリールであり、
それぞれの前記任意に置換されてもよい基が、独立に、オキソ、ハロゲン、ヒドロキシル、NH、-NH(C1-4アルキル)、-N(C1-4アルキル)(C1-4アルキル)、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルキル、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、および1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルコキシから選択される1個または複数(例えば、1~3個)の置換基で任意に置換されてもよく、
前記単鎖ペプチドが、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グリシン、およびプロリンから選択されるアルファアミノ酸(例えば、DまたはL-アミノ酸)から誘導される、モノ、ジ、トリ、またはテトラペプチドである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項6】
式2A、2B、または2Cの化合物、または薬学的に許容可能なその塩であって、
【化2】
式中、RおよびR2’は、独立に、R20、-OR20、または-NHR20であり、R20は、出現毎に独立に、任意に置換されてもよい、7~30個の総炭素数を有する直鎖または分岐アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖である、化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項7】
式2Aを有する、請求項6に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項8】
式2Bを有する、請求項6に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項9】
式2Cを有する、請求項6に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項10】
20が、7~30個の炭素を有する非置換直鎖または分岐アルキル鎖である、請求項6~9のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項11】
適用可能な場合には、RおよびR2’が、それぞれ独立に、式CH(CHn-を有する非置換直鎖アルキル鎖であり、式中、nが8~24(例えば、10~24)の整数である、請求項6~10のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項12】
適用可能な場合には、RおよびR2’が、それぞれ独立に、CH(CH10-、CH(CH12-、CH(CH14-、CH(CH16-、およびCH(CH18-から選択される、請求項11に記載の化合物または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項13】
前記アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖が、ハロゲン、任意に置換されてもよいC1-6アルキル、酸素および窒素から独立に選択される1または2個のヘテロ原子で任意に置換されてもよいC1-6ヘテロアルキル、任意に置換されてもよいC2-6アルケニル、任意に置換されてもよい、C2-6アルキニル、任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、任意に置換されてもよいC6-14アリール、任意に置換されてもよい5~8員ヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよい5~10員ヘテロアリール、単鎖ペプチド、-NR100101、-C(=O)NR100101、-COOR102、および-OR102から独立に選択される1個または複数の基で任意に置換されてもよく、
100、R101、およびR102が、それぞれ独立に、水素、任意に置換されてもよいC1-6アルキル、酸素および窒素から独立に選択される1または2個のヘテロ原子で任意に置換されてもよいC1-6ヘテロアルキル、任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、任意に置換されてもよいC6-14アリール、任意に置換されてもよい5~8員ヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよい5~10員ヘテロアリールであり、
それぞれの前記任意に置換されてもよい基が、独立に、オキソ、ハロゲン、ヒドロキシル、NH、-NH(C1-4アルキル)、-N(C1-4アルキル)(C1-4アルキル)、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルキル、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、および1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルコキシから選択される1個または複数(例えば、1~3個)の置換基で任意に置換されてもよく、
前記単鎖ペプチドが、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グリシン、およびプロリンから選択されるアルファアミノ酸(例えば、DまたはL-アミノ酸)から誘導される、モノ、ジ、トリ、またはテトラペプチドである、請求項6~9のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩および薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
注射(例えば、筋肉または皮下注射)用に処方される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
約1~3(例えば、約1.6または約2.4)のpHの酸触媒加水分解条件、または約8~9(例えば、約8.3)のpHの塩基触媒加水分解条件に対し実質的に安定である、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
治療を必要としている対象の疼痛を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩、または請求項14~16のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記投与が、皮下または筋肉内経路である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、前記対象中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間にわたるなどの長期間にわたるレボルファノールまたはモルヒネの放出をもたらす、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
レボルファノールまたはモルヒネの乱用の可能性を減らす方法であって、レボルファノールまたはモルヒネのプロドラッグを用意するステップであって、前記プロドラッグが、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩であるステップ、および前記プロドラッグを長期作用型徐放性乱用防止製剤に処方するステップを含む、方法。
【請求項21】
前記乱用防止製剤が、皮下または筋肉内注射可能製剤などの注射可能製剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記乱用防止製剤の投与を病院に限定し、それにより、患者の前記化合物の入手手段を制限し、前記規制物質の乱用の可能性を減らすことをさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
治療を必要としている対象の疼痛を治療する方法であって、治療有効量のレボルファノールのプロドラッグを前期対象に投与することを含み、前記プロドラッグが、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩であるか、または前記プロドラッグを含む医薬組成物である、方法。
【請求項24】
前記投与が、皮下または筋肉内経路を経由している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が、前記対象中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間にわたるなどの長期間にわたるレボルファノールの放出をもたらす、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月17日に出願された米国仮出願第62/793,684号の優先権を主張する。この米国仮出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
種々の実施形態では、本発明は一般に、処方オピオイド薬物乱用の撲滅を目的とする乱用防止製剤に関する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、乱用防止長期作用型徐放性オピオイド製剤の調製と適用に関する。
【背景技術】
【0003】
モルヒネおよびレボルファノールを含む処方オピオイド薬は、例えば、疼痛の治療などに広く使用される。米国では、処方オピオイド薬の乱用が「蔓延」しており、これは大きな社会的および経済的コストと関連している。処方オピオイド薬の乱用に付随する大きな社会的および経済的コストにもかかわらず、オピオイドは、米国において慢性疼痛を抱えて生きている1億人の成人の医療と転帰を改善するために不可欠である。
【0004】
処方オピオイド乱用を撲滅する多くの技術的手段が存在する。1つの方法は、鼻吸引用の経口錠剤または注射用錠剤からのオピオイドの不正変更または抽出を防止する、いわゆる「乱用防止」製剤の採用である。しかし、乱用者は、いつでも「乱用防止」製剤を回避する方法を見つけることができる。別の方法は、オピオイド製剤にナロキソンまたはナルトレキソンなどの抑止化学薬品を加えることであるが、この方法は、潜在的オピオイド乱用を減らすのに成功していない。
【0005】
製剤技術は、乱用防止オピオイド製剤の開発において限られた成果に到達したところである。オピオイド乱用を撲滅するための代替法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
種々の実施形態では、本発明は、レボルファノールおよびモルヒネなどのオピオイドの新規プロドラッグを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書のプロドラッグは、薬物不正変更を防止/抑止する、および/またはインビボで長期作用型徐放性プロファイルを達成する物理的、化学的および生物学的活性を有し得る。長期作用型徐放性プロファイルは、病院または診療所でのみ、医師がオピオイド製剤を使用することを可能とし、医院外での患者のオピオイドの入手手段を制限し、オピオイド乱用の可能性を完全に回避する。
【0007】
いくつかの特定の実施形態では、新規プロドラッグは、レボルファノールのプロドラッグである。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1の化合物、または薬学的に許容可能なその塩であり:
【化1】
式中、Rは本明細書で定義される。いくつかの実施形態では、Rは、7~30個の炭素を有する非置換直鎖アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、7~30個の炭素を有する非置換分岐アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、7~30個の総炭素数を有する置換もしくは非置換直鎖または分岐アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、式CH(CH-を有する非置換直鎖アルキル鎖であり、式中、nは8~24(例えば、10~24)の整数である。いくつかの特定の実施形態では、Rは、CH(CH10-、CH(CH12-、CH(CH14-、CH(CH16-、およびCH(CH18-から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、新規プロドラッグは、モルヒネのプロドラッグである。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式2(2A、2B、または2C)の化合物、または薬学的に許容可能なその塩であり:
【化2】
式中、RおよびR2’は、本明細書で定義される。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式2Aを有するとして特徴付けできる。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式2Bを有するとして特徴付けできる。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式2Cを有するとして特徴付けできる。いくつかの実施形態では、RおよびR2’は独立に、7~30個の炭素を有する非置換直鎖アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、RおよびR2’は独立に、7~30個の炭素を有する非置換分岐アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、RおよびR2’は独立に、7~30個の総炭素数を有する置換もしくは非置換直鎖または分岐アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、RおよびR2’は独立に、式CH(CH-を有する非置換直鎖アルキル鎖であり、式中、nは8~24(例えば、10~24)の整数である。いくつかの特定の実施形態では、RおよびR2’は独立に、CH(CH10-、CH(CH12-、CH(CH14-、CH(CH16-、およびCH(CH18-から選択される。RおよびR2’は、相互に同じであっても、または異なっていてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、化合物番号1~8、または薬学的に許容可能なその塩から選択される化合物を提供する。
【0010】
本開示の特定の実施形態は、本明細書のプロドラッグを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、乱用防止製剤である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、化合物番号1~8のいずれか、または薬学的に許容可能なその塩を含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下または筋肉注射などの注射用に処方できる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、一般的な不正変更条件、例えば、重曹または食酢媒介による、それぞれ約8.3または2.4のpHでの加水分解、または約1.6のpHでのクエン酸媒介加水分解に対し耐えることができる(例えば、これらの条件下で実質的に安定である)。いくつかの実施形態では、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物は、対象使用者中で、レボルファノールまたはモルヒネの長時間作用型放出をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、投与後、対象使用者中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間などの長期間にわたりレボルファノールおよびモルヒネ、またはその代謝物を放出できる。
【0011】
本開示の特定の実施形態はまた、疼痛(例えば、慢性疼痛)を治療する方法にも関する。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の本開示のプロドラッグ、またはプロドラッグを含む医薬組成物(例えば、注射可能製剤)を、それを必要としている対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療を必要としている対象の神経障害性疼痛の治療のためのものであり、該方法は、治療有効量の式1の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、もしくは薬学的に許容可能なその塩、または式1の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、もしくは薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、皮下または筋肉注射などの注射であり得る。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物、または薬学的に許容可能なその塩である。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2の化合物(例えば、化合物番号1~8のいずれか)、または薬学的に許容可能なその塩であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、規制物質の乱用の可能性を低減する方法も提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本開示のプロドラッグを用意すること、およびプロドラッグを乱用防止製剤に処方することを含む。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤は、皮下または筋肉注射可能製剤などの注射可能製剤である。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤は、一般的な不正変更条件、例えば、重曹または食酢媒介による、それぞれ約8.3または2.4のpHでの加水分解、または約1.6のpHでのクエン酸媒介加水分解に対し耐性がある(例えば、これらの条件下で実質的に安定である)。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤は、プロドラッグ含有ミセルを含む。いくつかの実施形態では、方法は、乱用防止製剤の投与を病院設定に制限することをさらに含む。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤はまた、対象使用者中で、レボルファノールまたはモルヒネの長時間作用型放出ももたらす。例えば、乱用防止製剤は、投与後、対象使用者中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間などの長期間にわたりレボルファノールまたはモルヒネ、またはその代謝物を放出できる。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩である。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2の化合物(例えば、化合物番号1~8のいずれか)、または薬学的に許容可能なその塩であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
種々の実施形態では、本開示は、代表的オピオイドのプロドラッグ、特に、レボルファノールおよびモルヒネのプロドラッグ、プロドラッグを含む医薬組成物、プロドラッグを調製する方法、および例えば、疼痛(例えば、神経障害性疼痛または慢性疼痛)の治療および/または薬物乱用の低減のためのプロドラッグの使用方法に関する。本開示は、一部は、長鎖脂肪酸エステルプロドラッグなどの特定のオピオイドのプロドラッグが、薬物不正変更を防止/抑止する、および/またはインビボで長期作用型徐放性プロファイルを達成する物理的、化学的および生物学的活性を有し得るという発見に基づいている。(オピオイドの)長期作用型徐放性プロファイルは、病院または診療所でのみ、医師がプロドラッグを使用することを可能とし、医院外での患者のオピオイドの入手手段を制限し、オピオイド乱用の可能性を完全に回避する。処方オピオイド乱用を撲滅するためのこの一般的プロドラッグ技術はまた、2018年7月19日に出願された、我々の以前の特許出願、PCT/US2018/042880にも記載された。この出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。PCT/US2018/042880に記載のように、2つのオピオイド、ヒドロモルホンおよびオキシモルホンの代表的プロドラッグは、一般的な不正変更条件に対しては安定であり、インビボでの長期作用型徐放性プロファイルを達成するために使用できる。従って、PCT/US2018/042880は、そこで開示された一般的なプロドラッグ手法は、処方オピオイド乱用を抑制するために使用できることを示している。
【0014】
本開示のプロドラッグは、親薬物(例えば、レボルファノールまたはモルヒネ)の投与が有用であるいずれの疾患または障害の治療にも有用である。例えば、レボルファノールおよびモルヒネの両方は、疼痛の治療に有用であることが知られている。従って、本明細書のプロドラッグは、中等度から重度の疼痛、および慢性疼痛などを含む疼痛の治療に有用であり得る。さらに、レボルファノールは、メタドンの良好な代用品として提案されてきた。例えば、Prommer,E.Palliative care:Research and Treatment 8:7-10(2014)を参照されたい;また、Support Care Cancer 15:259-264(2007)も参照されたい。メタドンは、長年にわたり、オピオイド薬物依存性の管理のための揺るぎない薬理的選択肢となっていた。それは、オピオイド作動薬を置換し、他のオピオイドの特性に好ましい特性を付与する特定の薬物動態学的特性を有する。都合の悪いことに、メタドンは、QT延長を引き起こすなどの安全性の問題を含む、いくつかの望ましくなく、心配でもある特徴を有する。メタドンとは異なり、レボルファノールは、より強力なNMDA拮抗薬であり、従って、神経障害性疼痛の治療に有用であり得る。レボルファノールは、より短い血漿中半減期を有するが、しかし、より長い作用の持続時間を有し、CYP450相互作用またはQT延長のリスクはなく、高齢者の対症療法的治療のための実現可能な選択肢となる可能性があり、補助鎮痛剤の同時投与の必要性がほとんどないか、全くない。従って、本開示のレボルファノールのプロドラッグはまた、例えば、神経障害性疼痛の治療のための、メタドンの代用品として使用できる。
【0015】
モルヒネは、天然でケシ植物中に認められる。ケシ中で見出される天然のオピオイドの内で、モルヒネは最も豊富で、強力であり、そのため、その発見以来、よく使われる鎮痛剤になっている。それは通常、手術または外傷後の中等度から重度疼痛までを軽減するために使用される。モルヒネの副作用にもかかわらず、鎮痛剤としてのその有効性は、慢性疼痛を罹患している患者のための必需品であり続けている。それは鎮痛剤の至適基準である。本開示のモルヒネのプロドラッグはまた、例えば、中等度から重度疼痛までの治療のためにも、および慢性疼痛の治療のためにも同様に使用できる。
【0016】
I.定義
本明細書で使用の略語は、化学および生物学技術の範囲内でそれらの通常の意味を有する。
【0017】
部分がそれらの通常の左から右へ記述された化学式により指定される場合、それらは、右から左への構造の記述により得られる化学的に同じ部分も同様に包含し、例えば、-CHO-は、-OCH-と同等である。
【0018】
また、本明細書で記載の可変部分の特定の実施形態は、同じ識別子を有する別の特定の実施形態と同じでもまたは異なっていてもよいことを理解することが意図される。
【0019】
特定の官能基および化学的用語の定義は、以降でより詳細に記載される。化学元素は元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.、表紙裏に従って特定され、特定の官能基は通常、その中に記載されている通りの定義である。さらに、有機化学、ならびに特定の官能基および反応性の一般原則は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;およびCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987、に記載されている。本発明は、どんな形にせよ、本明細書で記載の置換基の例示的列挙により限定することを意図するものではない。
【0020】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖飽和脂肪族炭化水素を意味する。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~30個の炭素原子(すなわち、C1-30アルキルあるいはC-C30アルキルとして表される)または示された炭素原子の数(すなわち、メチルなどのCアルキル、エチルなどのCアルキル、プロピルまたはイソプロピルなどのCアルキル、など)を含むことができる。一実施形態では、アルキル基は、直鎖C1-6アルキル基である。別の実施形態では、アルキル基は、分岐鎖C3-6アルキル基である。別の実施形態では、アルキル基は、直鎖C1-4アルキル基である。例示的C1-4アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルおよびイソ-ブチルが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される場合、単独で、または別の基の一部として使用される「シクロアルキル」という用語は、3~12個の炭素原子(すなわち、C3-12シクロアルキル)または示された数の炭素を有する1~3個の環を含む飽和および部分不飽和(例えば、1個または2個の二重結合を含む)環状脂肪族炭化水素を意味する。一実施形態では、シクロアルキル基は2個の環を有する。一実施形態では、シクロアルキル基は1個の環を有する。別の実施形態では、シクロアルキル基は、C3-8シクロアルキル基である。別の実施形態では、シクロアルキル基は、C3-6シクロアルキル基である。「シクロアルキル」はまた、上記で定義のシクロアルキル環が1個または複数のアリールまたはヘテロアリール基と縮合され、その結合点がシクロアルキル環上にある環系を含み、このようなケースでは、炭素数は、引き続きシクロアルキル環系中の炭素数を示す。非限定的シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、デカリン、アダマンチル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルケニル」という用語は、1個または複数(例えば、1、2、または3個)の炭素-炭素二重結合を含む直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素を意味する。一実施形態では、アルケニル基はC2-6アルケニル基である。別の実施形態では、アルケニル基はC2-4アルケニル基である。非限定的アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、sec-ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルキニル」という用語は、1個または複数(例えば、1、2、または3個)の炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素を意味する。一実施形態では、アルキニルは1個の炭素-炭素三重結合を有する。一実施形態では、アルキニル基はC2-6アルキニル基である。別の実施形態では、アルキニル基はC2-4アルキニル基である。非限定的アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、2-ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニル基が挙げられる。
【0024】
用語の「置換アルキル」は、任意の位置の炭素が官能基に結合したアルキル基を意味する。官能基は、限定されないが、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子環ヘテロ原子、またはヘテロアリール基であり得る。
【0025】
用語の「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して、分子の残部に結合したアルキル基を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アルカノイル」という用語は-C(O)Ra1を意味し、Ra1は水素またはアルキルである。例えば、Cアルカノイルは、-C(O)H、Cアルカノイルは-C(O)CHを意味する。
【0027】
用語の「ヘテロアルキル」は、別に定める場合を除き、単独でまたは別の用語と組み合わせて、示した数の炭素原子およびO、N、P、SiおよびSからなる群より選択されるヘテロ原子からなる安定な直鎖または分枝鎖を意味し、また、窒素および硫黄原子は任意に酸化されてもよく、窒素へテロ原子は任意に四級化されてもよい。通常、ヘテロアルキルは飽和鎖である。しかし、簡潔にするために、本明細書では、ヘテロアルキルは、1個または複数の炭素-炭素二重結合を含むものなどのように不飽和鎖も含む。ヘテロ原子のO、N、PおよびSならびにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置されてもよく、またはヘテロアルキル基が分子の残りの部分に結合する位置に配置されてもよい。ヘテロアルキルの例には、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、-CH=CH-N(CH)-CH、O-CH、-O-CH-CH、および-CNが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHのように、2個までのヘテロ原子を連続させてもよい。上述のように、本明細書で使用される場合、ヘテロアルキル基は、-C(O)R'、-C(O)NR'、-NR'R”、-OR',-SR'、および/または-SOR'などのカルボニルまたはヘテロ原子を介して分子の残部に結合した基を含む。「ヘテロアルキル」が記述され、続いて、-NR’R”などの特定のヘテロアルキル基が記述される場合、この用語のヘテロアルキルおよび-NR’R”は、重複性または相互排他的ではない。むしろ、特定のヘテロアルキル基が明確性を与えるために記述される。従って、用語の「ヘテロアルキル」は、本明細書では、-NR’R”などの特定のヘテロアルキル基を排除すると解釈されるべきではない。
【0028】
用語の「ハロ」または「ハロゲン」は、別に定める場合を除き、単独でまたは別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、単独で、または別の基の一部として使用される「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」という用語は、3~14個の環員(すなわち、3~14員ヘテロ環)および少なくとも1個のヘテロ原子を有する1、2、または3個の環を含む飽和および部分不飽和(例えば、1個または2個の二重結合を含む)環式基を意味する。各ヘテロ原子は、例えば、酸素、スルホキシドおよびスルホンを包含する硫黄および/または四級化可能な窒素原子からなる群から独立に選択できる。用語「ヘテロシクリル」は、イミダゾリジニル-2-オンなどの環状ウレイド基、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタムおよびε-ラクタムなどの環状アミド基、およびオキサゾリジニル-2-オンなどの環状カルバメート基を含むことが意図されている。一実施形態では、ヘテロシクリル基は、1個の環および1個または2個の酸素および/または窒素原子を含む4、5、6、7または8員環式基である。ヘテロシクリルは、炭素または窒素原子を介して分子の残部に任意に結合できる。ヘテロシクリル基は、単環式(「単環式ヘテロシクリル」)または二環式系(「二環式ヘテロシクリル」)などの縮合、架橋、スピロ環系であってよく、また、飽和であっても、部分不飽和であってもよい。ヘテロシクリル二環式系は、片方または両方の環中に1個または複数のヘテロ原子を含み得る。「ヘテロシクリル」はまた、上記で定義のヘテロ環が1個または複数のシクロアルキル基と縮合され、その結合点がシクロアルキルまたはヘテロ環上にある環系を含み、または上記で定義のヘテロ環が1個または複数のアリールまたはヘテロアリール基と縮合され、その結合点がヘテロ環上にある環系を含み、このようなケースでは、環員の数は、引き続きヘテロ環系中の環員の数を示す。
【0030】
本明細書で使用される場合、単独でまたは別の基の一部として使用される「アリール」という用語は、6~14個の炭素原子(すなわち、C6-14アリール)を有し、およびヘテロ原子を含まない、単環式、二環式または三環式芳香環系を意味する。いくつかの実施形態では、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「Cアリール」;例えば、フェニル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」;例えば、1-ナフチルおよび2-ナフチルなどのナフチル)。「アリール」はまた、上記で定義のアリール環が、1個または複数のシクロアルキルまたはヘテロシクリル基と縮合され、そのラジカルまたは結合点がアリール環上にある環系も含み、このようなケースでは、炭素原子の数は、引き続きアリール環系中の炭素原子の数を示す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」という用語は、5~14環原子(すなわち、5~14員ヘテロアリール)および酸素、窒素および硫黄から独立に選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を有する単環式、二環式または三環式芳香環系を意味する。一実施形態では、ヘテロアリールは1個のヘテロ原子、例えば、1個の窒素を有する。別の実施形態では、ヘテロアリールは6個の環原子、例えば、ピリジルを有する。一実施形態では、ヘテロアリールは、8~10個の環原子を有する二環式ヘテロアリール、例えば、1、2、または3個の窒素環原子を有する、キノリルなどの二環式ヘテロアリールである。本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、N-オキシドを含む可能性があることも意図されている。「ヘテロアリール」は、上記で定義のヘテロアリール環が、1個または複数のシクロアルキルまたはヘテロシクリル基と縮合され、その結合点がヘテロアリール環上にある環系を含み、このようなケースでは、環員の数は、引き続きヘテロアリール環系中の環員の数を示す。「ヘテロアリール」はまた、上記で定義のヘテロアリール環が、1個または複数のアリール基と縮合され、その結合点がアリールまたはヘテロアリール環上にある環系も含み、このようなケースでは、環員の数は、縮合(アリール/ヘテロアリール)環系中の環員の数を示す。
【0032】
簡潔にするために、用語の「アリール」は、その他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用される場合、上記で定義のアリールおよびヘテロアリール環の両方を含む。用語「アリールアルキル」は、炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子で置換されているアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピル、など)を含むアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル、など)にアリール基が結合されているラジカルを含むことが意図されている。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語の「オキソ」は、炭素原子に二重結合している酸素を意味する。
【0034】
任意に置換されてもよいアルキル、任意に置換されてもよいアルケニル、任意に置換されてもよいアルキニル、任意に置換されてもよいシクロアルキル、任意に置換されてもよいヘテロシクリル、任意に置換されてもよいアリール、および任意に置換されてもよいヘテロアリール基などの「任意に置換されてもよい」基は、非置換であるか、または置換されているそれぞれの基を意味する。一般に、用語「置換」は、基(例えば、炭素または窒素原子)上に存在する少なくとも1個の水素が、許容可能な置換基、例えば、置換時に安定な化合物、例えば、自然に、転位、環化、脱離、または他の反応などの変換を受けない化合物を生じる置換基で置換されることを意味する。通常、「安定な」化合物は、調製および単離でき、その構造および特性が残存するか、または本明細書で記載の目的(例えば、対象への治療投与)のために化合物を使用するのを可能とするのに十分な一定期間にわたり実質的に不変のまま残存させ得る化合物である。別段の指示がない限り、「置換」基は、基の1つまたは複数の置換可能な位置に置換基を有し、任意の所与の構造中の1つ以上の位置が置換される場合、置換基はそれぞれの位置で同じでも、または異なっていてもよい。通常、置換される場合、本明細書では、任意に置換されてもよい基は、1~5個の置換基で置換できる。置換基は、適用可能な場合には、炭素原子置換基、窒素原子置換基、酸素原子置換基または硫黄原子置換基であってよい。任意の置換基の内の2個が連結されて、任意に置換されてもよいシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環を形成できる。置換は、任意の利用可能な炭素、酸素、または窒素原子上で起こり、スピロ環を形成できる。
【0035】
各タイプのラジカルの好ましい置換基部分は、下記に提供される。
【0036】
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロアルキルラジカルに対する置換基部分は、限定されないが、0~(2m'+1)の範囲の数(式中、m'はこのようなラジカル中の炭素原子の総数である)の重水素、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R”、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R”R”’、-OC(O)R'、-C(O)R'、-COR'、-CONR'R”、-OC(O)NR'R”、-NR”C(O)R'、-NR'-C(O)NR”R”’、-NR”C(O)R'、-NR-C(NR'R”R”’)=NR””、-NR-C(NR'R”)=NR”’、-S(O)R'、-S(O)R'、-S(O)NR'R”、-NRSOR'、-CNおよび-NOから選択される種々の基の1個または複数であり得る。R'、R”、R”’およびR””は、それぞれ、好ましくは独立に、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール(例えば、1~3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を意味する。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えば、2個以上のこれらの基が存在する場合、それぞれのR基は、各R’、R”、R”’およびR””基として独立に選択される。R'およびR”が同じ窒素原子に結合する場合、それらは、窒素原子と組み合わせて、4、5、6または7員環を形成できる。例えば、-NR'R”は、限定されないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことが意図されている。
【0037】
アルキルラジカルに対し記載された置換基部分と同様に、アリールおよびヘテロアリール基に対する置換基部分は変化し、例えば、0~芳香環系上の未結合原子価の総数の範囲の数の、重水素、ハロゲン、-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R”’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-COR’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R”’、-NR”C(O)R’、-NR-C(NR’R”R”’)=NR””、-NR-C(NR’R”)=NR”’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R”、-NRSOR’、-CNおよび-NO、-R’、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C-C)アルコキシ、およびフルオロ(C-C)アルキルから選択され得;R’、R”、R”’およびR””は、好ましくは独立に、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリールおよび置換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えば、2個以上のこれらの基が存在する場合、それぞれのR基は、各R’、R”、R”’およびR””基として独立に選択される。
【0038】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基部分は、式-Q’-C(O)-(CRR’)-Q”-の環を任意に形成してよく、式中、Q’およびQ”は独立に、-NR-、-O-、-CRR’-または単結合であり、qは0~3の整数である。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基部分は、式-A-(CH-B-の置換基で任意に置換されてもよく、式中、AおよびBは独立に、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-S(O)NR’-または単結合であり、rは1~4の整数である。このようにして形成された新しい環の単結合の1つが、二重結合で任意に置換されてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基部分は、式-(CRR’)-X’-(C”R”’)-の置換基で任意に置換されてもよく、式中、sおよびdは独立に、0~3の整数であり、X’は、-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)-または-S(O)NR’-である。置換基部分R、R'、R”およびR”’は、好ましくは独立に、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、および置換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される。
【0039】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書に記載の化合物上に認められる特定の置換基部分に応じて、相対的に無毒性の酸または塩基で調製される化合物の塩を含むことが意図されている。本開示のプロドラッグが相対的に酸性の官能基を含む場合には、中性型のこのような化合物を、未希釈または好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の塩基と接触させることにより、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または類似塩が挙げられる。本開示のプロドラッグが相対的に塩基性の官能基を含む場合には、中性型のこのような化合物を、未希釈または好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の酸と接触させることにより、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸から誘導されたもの、ならびに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの相対的に無毒性の有機酸から誘導された塩が挙げられる。さらに、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977)を参照)。本開示のある種の特定のプロドラッグは、化合物の塩基または酸付加塩への変換を可能とする塩基性および酸性官能基の両方を含む。
【0040】
中性型の化合物は、好ましくは、塩を塩基または酸と接触させ、必要に応じ、従来の方法で親化合物を単離することにより再生され得る。親型の化合物は、種々の塩型とは、極性溶媒中の溶解度などの特定の物理学的性質が異なる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「本開示のプロドラッグ」という用語は、式1、または2(2A、2B、および2Cを含む)、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ、モルヒネの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ、または任意の化合物番号1~8による本明細書で記載のいずれかの化合物、その同位体標識化合物(例えば、重水素濃縮化合物)、その可能な立体異性体(ジアステレオ異性体、エナンチオマー、およびラセミ混合物を含む)、その互変異性体、その配座異性体、および/または薬学的に許容可能なその塩(例えば、HCl塩などの酸付加塩またはナトリウム塩などの塩基付加塩)を意味する。本開示のプロドラッグの水和物および溶媒和物は、本開示の組成物と見なされ、この場合、プロドラッグは、水または溶媒とそれぞれ結合している。本開示のいくつかのプロドラッグはまた、種々の多形または非晶質型で存在し得る。本明細書で記載のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けて、活性オピオイドを与える化合物を含む。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境中で化学的または生化学的方法により変換できる。例えば、プロドラッグは、好適な酵素または化学試薬を有する経皮貼付剤リザーバー中に置かれると、活性化合物にゆっくり変換され得る。
【0042】
本開示の特定のプロドラッグは、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し、ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体および個別の異性体は、本発明の範囲内に包含される。本開示のプロドラッグは、不安定で合成および/または単離できないことが当技術分野において既知であるものは含まない。
【0043】
本開示のプロドラッグは、天然で最も豊富に見つかる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する1個または複数の原子を含む同位体標識または同位体濃縮型で存在できる。同位体は、放射性または非放射性同位元素であり得る。水素、炭素、リン、硫黄、フッ素、塩素およびヨウ素などの原子の同位体としては、H、H、13C、14C、15N、18O、32P、35S、18F、36Cl、および125Iの同位体が挙げられるが、これらに限定されない。これらのおよび/または他の原子の他の同位体を含む化合物は、本発明の範囲内にある。
【0044】
実線および破線の楔形結合は、当該技術分野において慣例の立体化学を示す。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「対象」(あるいは、本明細書においては、「患者」と呼ばれる)は、治療、観察または実験の対象物となっている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。いくつかの実施形態では、対象は、イヌ、ネコ、ウマまたはサルなどの脊椎動物であり得る。
【0046】
II.化合物
種々の実施形態では、本開示は、オピオイドの新規プロドラッグ、プロドラッグを含む医薬組成物、ならびにプロドラッグを含む乱用防止製剤の調製方法、およびプロドラッグまたはいずれかの医薬組成物、乱用防止製剤の、例えば、神経障害性疼痛および/または慢性疼痛などの疼痛の治療のための使用方法を提供する。通常、プロドラッグは、レボルファノール、モルヒネ、オキシモルホン、またはヒドロモルホンなどのオピオイドの長鎖脂肪酸エステルであり得る。オキシモルホンおよびヒドロモルホンの代表的プロドラッグは、PCT/US2018/042880に記載されている。本開示は、レボルファノールおよびモルヒネのプロドラッグについてより詳細に記載する。
【0047】
いくつかの特定の実施形態では、本開示は、レボルファノールのプロドラッグを提供する。いくつかの実施形態では、レボルファノールのプロドラッグは、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステルである。本明細書で使用される場合、長鎖脂肪酸は、13個以上の炭素を有する脂肪族鎖脂肪酸、例えば、13~28個の炭素を有する天然の脂肪族鎖脂肪酸を意味し、これは、飽和、モノ不飽和(1個の炭素-炭素二重結合を含む)、または多価不飽和(2個以上の炭素-炭素二重結合を含む)脂肪酸であり得、天然の長鎖脂肪酸の例は、16個の炭素を有するパルミチン酸である。本明細書では、天然の脂肪酸としては、天然で主に、トリグリセリドなどのエステルの形で存在する脂肪酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1の化合物、または薬学的に許容可能なその塩であり、
【化3】
式中、Rは、R10、-OR10、または-NHR10であり、R10は、任意に置換されてもよい、合計7~30個の炭素を有する直鎖または分岐アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖である。本明細書で使用される場合、総炭素の総数は、分岐炭素および任意の置換基からの炭素を含むと理解されるべきである。R10は、出現毎に、独立に選択される。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、1個または複数の疎水基で任意に置換されてもよい。本明細書で使用される場合、「疎水基」という用語は、一般的に、ハロゲンまたは酸素および窒素原子から選択される2個以下のヘテロ原子を有する炭素含有基を意味し、これは通常、OHまたはNH基および塩基性窒素原子を含まない。疎水基の例には、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、非塩基性ヘテロ環化合物およびヘテロアリール、などが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、C3-6シクロアルキル、およびC3-6シクロアルコキシから独立に選択される1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の基で任意に置換されてもよい。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、ハロゲン、任意に置換されてもよいアルキル基(例えば、C1-6アルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアルキル(例えば、酸素および窒素から独立に選択される1または2個のヘテロ原子を有する、例えば、C1-6ヘテロアルキル)、任意に置換されてもよいアルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、任意に置換されてもよいアルキニル(例えば、C2-6アルキニル)、任意に置換されてもよいシクロアルキル(例えば、C3-6シクロアルキル)、任意に置換されてもよいアリール(例えば、C6-14アリール)、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル(例えば、5~8員ヘテロシクロアルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール)、単鎖ペプチド(例えば、モノ、ジ、トリまたはテトラペプチド)、-NR100101、-C(=O)NR100101、-COOR102、および-OR102から独立に選択される1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の基で任意に置換することができ、R100、R101、およびR102は、それぞれ独立に、水素、任意に置換されてもよいアルキル(例えば、C1-6アルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアルキル(例えば、酸素および窒素から独立に選択される、例えば、1または2個のヘテロ原子を有する、C1-6ヘテロアルキル)、任意に置換されてもよいシクロアルキル(例えば、C3-6シクロアルキル)、任意に置換されてもよいアリール(例えば、C6-14アリール)、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル(例えば、5~8員ヘテロシクロアルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール)であり、それぞれの任意に置換されてもよい基は、独立に、オキソ、ハロゲン、ヒドロキシル、NH、-NH(C1-4アルキル)、-N(C1-4アルキル)(C1-4アルキル)、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルキル、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、および1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルコキシから選択される1個または複数(例えば、1~3個)の置換基で任意に置換されてもよい。いくつかの実施形態では、単鎖ペプチドは、モノ、ジ、トリ、またはテトラペプチドであり得、これは、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グリシン、およびプロリンから選択されるアルファアミノ酸(例えば、DまたはL-アミノ酸)から誘導できる。本明細書で使用される場合、置換基としての単鎖ペプチドは、置換されている基、例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖に、N末端を経由して(1個の水素がC1-4アルキルまたはC1-6アルカノイルで任意に置換されてもよいNHを経由して)またはC末端を経由して(例えば、-C(=O)、-OC(=O)、-NC(=O)、などを経由して)結合でき、N末端の場合には、非結合端末はNH、またはその保護誘導体、例えば、N-Pg(例えば、NHC(=O)CH)であり、C末端の場合には、COH、またはエステル(例えば、C1-4アルキルエステル)またはそのアミド誘導体である。いくつかの実施形態では、置換基としての単鎖ペプチドは、置換されている基、例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖にN末端を経由して結合できる。いくつかの実施形態では、置換基としての単鎖ペプチドは、置換されている基、例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖にC末端を経由して結合できる。いくつかの実施形態では、R10は、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換直鎖アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、R10は、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換分岐アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換直鎖アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換分岐アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、式CH(CH-を有する非置換直鎖アルキル鎖であり、式中、nは8~24(例えば、10~24)の整数である。いくつかの特定の実施形態では、Rは、CH(CH10-、CH(CH12-、CH(CH14-、CH(CH16-、およびCH(CH18-から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、モルヒネのプロドラッグを提供する。いくつかの実施形態では、モルヒネのプロドラッグは、モルヒネの長鎖脂肪酸エステルであり、これは、モノエステルまたはジエステルであり得る。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式2(2A、2B、または2C)の化合物、または薬学的に許容可能なその塩であり、
【化4】
式中、RおよびR2’は、R20、-OR20、または-NHR20であり、R20は、任意に置換されてもよい、7~30個の総炭素数を有する直鎖または分岐アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖である。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、1個または複数の疎水基(例えば、本明細書で記載のような)で任意に置換されてもよい。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、C3-6シクロアルキル、およびC3-6シクロアルコキシから独立に選択される1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の基で任意に置換されてもよい。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、ハロゲン、任意に置換されてもよいアルキル基(例えば、C1-6アルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアルキル(例えば、酸素および窒素から独立に選択される1または2個のヘテロ原子を有する、例えば、C1-6ヘテロアルキル)、任意に置換されてもよいアルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、任意に置換されてもよいアルキニル(例えば、C2-6アルキニル)、任意に置換されてもよいシクロアルキル(例えば、C3-6シクロアルキル)、任意に置換されてもよいアリール(例えば、C6-14アリール)、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル(例えば、5~8員ヘテロシクロアルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール)、単鎖ペプチド(例えば、モノ、ジ、トリまたはテトラペプチド)、-NR100101、-C(=O)NR100101、-COOR102、および-OR102から独立に選択される1個または複数(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の基で任意に置換することができ、R100、R101、およびR102は、それぞれ独立に、水素、任意に置換されてもよいアルキル(例えば、C1-6アルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアルキル(例えば、酸素および窒素から独立に選択される、例えば、1または2個のヘテロ原子を有する、C1-6ヘテロアルキル)、任意に置換されてもよいシクロアルキル(例えば、C3-6シクロアルキル)、任意に置換されてもよいアリール(例えば、C6-14アリール)、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル(例えば、5~8員ヘテロシクロアルキル)、任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えば、5~10員ヘテロアリール)であり、それぞれの任意に置換されてもよい基は、独立に、オキソ、ハロゲン、ヒドロキシル、NH、-NH(C1-4アルキル)、-N(C1-4アルキル)(C1-4アルキル)、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルキル、1~3個のフッ素で任意に置換されてもよいC1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルキル、および1~3個のフッ素または1~2個のC1-4アルキルで任意に置換されてもよいC3-6シクロアルコキシから選択される1個または複数(例えば、1~3個)の置換基で任意に置換されてもよい。いくつかの実施形態では、単鎖ペプチドは、モノ、ジ、トリ、またはテトラペプチドであり得、これは、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グリシン、およびプロリンから選択されるアルファアミノ酸(例えば、DまたはL-アミノ酸)から誘導できる。
【0049】
いくつかの実施形態では、モルヒネのプロドラッグは、式2Aを有するとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、モルヒネのプロドラッグは、式2Bを有するとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、モルヒネのプロドラッグは、式2Cを有するとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、モルヒネのプロドラッグは、ミリスチン酸エステルではない。いくつかの実施形態では、式2A、2B、または2C中のRは、-OR20または-NHR20である。いくつかの実施形態では、式2B中のR2’は、-OR20または-NHR20である。いくつかの実施形態では、R20は、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換直鎖アルキル鎖であり得る。いくつかの実施形態では、R20は、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換分岐アルキル鎖であり得る。いくつかの実施形態では、式2(2A、2B、または2C)中のRおよびR2’は、適用可能な場合、それぞれ独立に、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換直鎖アルキル鎖であり得る。いくつかの実施形態では、式2(2A、2B、または2C)中のRおよびR2’は、適用可能な場合、それぞれ独立に、7~30(例えば、10~24)個の炭素を有する非置換分岐アルキル鎖であり得る。いくつかの実施形態では、式2(2A、2B、または2C)中のRおよびR2’は、適用可能な場合、それぞれ独立に、CH(CHn-の式を有する非置換直鎖アルキル鎖であり得、式中、nは、8~24(例えば、10~24)の整数である。いくつかの特定の実施形態では、式2(2A、2B、または2C)中のRおよびR2’は、適用可能な場合、それぞれ独立に、CH(CH10-、CH(CH12-、CH(CH14-、CH(CH16-、およびCH(CH18-から選択され得る。式2A、2B、または2C中のRおよびR2’は独立に選択され、相互に同じであっても、異なっていてもよい。R20はまた、出現毎に、独立に選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、化合物番号1~8(実施例セクションを参照)のいずれか1種または薬学的に許容可能なその塩であり得る特定のプロドラッグを提供する。
【0051】
本明細書で記載のいくつかの化合物は、例えば、R-、S-およびラセミ(RS-)型を含む立体異性体型として存在できることは理解されよう。化合物が2つ以上のキラル中心を有する場合、全てのジアステレオマーが本明細書で意図されている。図または他の場合に、化合物中のキラル中心の立体化学が特に指定される場合、化合物は、キラル中心に関連して指定された立体異性体型が主に存在し、他の立体異性体は、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、または検出不能のレベルで存在すると理解されるべきである。明示的に別義が示されない限り、全ての立体異性体型が本明細書で意図されている。
【0052】
本開示のプロドラッグは通常、好適な条件下で、レボルファノールまたはモルヒネを脂肪酸、脂肪アルコール、または脂肪族アミンなどの薬剤と結合させることにより調製できる。いくつかの実施形態では、カルボニルドナー剤も、レボルファノールまたはモルヒネを、このような薬剤と連結させるために使用できる。本明細書のプロドラッグの調製のために、種々のカップリング法を用いることができ、これらの方法は、当該技術分野において既知であり、また、実施例セクションで例示される。
【0053】
例えば、レボルファノールまたはモルヒネの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグの合成は、実施例1および実施例2に示す手法を用いて実施でき、長鎖脂肪酸は、SOClなどの活性化剤を用いて対応するアシルクロリドなどの活性化型に変換される。アシルクロリドなどの得られた活性化型は、その後、ヒドロキシル基と、例えば、レボルファノールまたはモルヒネのフェノール性ヒドロキシル基と結合され、長鎖脂肪酸エステルオピオイドプロドラッグを得ることができる。本開示を考慮すれば、本開示のプロドラッグは、当業者により容易に調製できる。
【0054】
別の態様では、本開示はまた、本開示のプロドラッグの調製に有用な、本明細書で開示の工程および新規中間体を提供する。他の態様では、本開示のプロドラッグの合成、分析、分離、単離、精製、キャラクタリゼーション、および試験方法が提供される。
【0055】
当業者には明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を起こさないようにするために、従来の保護基が必要になる場合がある。種々の官能基のための好適な保護基ならびに特定の官能基の保護および脱保護のための好適な条件は、当該技術分野において周知である。例えば、多数の保護基が、Protective Groups in Organic Synthesis”,4th ed.P.G.M.Wuts;T.W.Greene,John Wiley,2007、およびその中で引用されている文献中に記載されている。本明細書で記載の反応のための試薬は通常、既知の化合物であるか、または既知手順もしくはその自明の修正により調製できる。例えば、多くの試薬は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wisconsin,USA),Sigma(St.Louis,Missouri,USA)などの市販の業者から入手できる。その他の試薬は、次記などの標準的参照テキストに記載の手順、またはその自明の修正により作成し得る:Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-15(John Wiley and Sons,1991),Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5 and Supplemental(Elsevier Science Publishers,1989),Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991),March’s Advanced Organic Chemistry,(Wiley,7th Edition),およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(Wiley-VCH,1999)。
【0056】
III.使用方法
本開示のプロドラッグは、親薬物(例えば、レボルファノールまたはモルヒネ)の投与が有用であるいずれの疾患または障害の治療にも有用である。例えば、レボルファノールまたはモルヒネは、鎮痛薬として使用できるので、レボルファノールまたはモルヒネのプロドラッグは、いくつかの実施形態では、疼痛(例えば、慢性疼痛)の治療方法で使用できる。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、疼痛(例えば、慢性疼痛)を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量の本開示のプロドラッグ(例えば、式1または2(2A、2B、または2C)、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、またはモルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩)、またはプロドラッグを含む医薬組成物を、それを必要としている対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩である。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、化合物番号1~8のいずれか1種、または薬学的に許容可能なその塩である。いくつかの実施形態では、方法は、慢性疼痛の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、方法は、中等度から重度疼痛の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、方法は神経障害性疼痛の治療のためのものであり、プロドラッグは、式1の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩である。いくつかの実施形態では、投与は、皮下または筋肉注射などの注射であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、対応する親薬物(例えば、レボルファノールまたはモルヒネ)をインビボでゆっくり放出でき、持続性の治療効果(すなわち、長時間作用性効果)を提供できる。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、対象中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間にわたるなどの長期間にわたりレボルファノールまたはモルヒネの放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本開示の筋肉注射プロドラッグは、対応する親薬物(例えば、レボルファノールまたはモルヒネ)をインビボでゆっくり放出でき、持続性の治療効果(すなわち、長時間作用性効果)を提供できる。この放出プロファイルは、少なくとも、それが、より少ない頻度の投与およびより良好な患者服薬遵守を可能とするという点で有利であり得る。また、プロドラッグは注射により投与されるので、製剤は病院での使用に限定でき、従って、乱用者が、レボルファノールまたはモルヒネの抽出を試みる(または別の方法で不正変更を試みる)ために、多量のプロドラッグを入手する可能性を大きく低減できる。さらに、レボルファノールまたはモルヒネまたはその代謝物は、本開示のプロドラッグの投与後、ゆっくりとしか放出されないので、乱用者の潜在的多幸感の報償は、単なる製剤の注射だけでは達成され得ない。従って、乱用の可能性も低減される。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示のプロドラッグは、乱用防止製剤の調製のために使用できる。本明細書に記載のように、発明者らはまた、プロドラッグおよびこれを含む医薬組成物を、薬物乱用者によりよく使われる、噛み砕き、圧潰、注射、および吸入、または有機溶媒による単純な抽出を含む一部のまたは全ての化学的および物理的条件に効果的に耐えるように設計した。用語の「乱用防止」および「乱用耐性」は、本明細書では同義で使用され、これら用語は両方とも、完全な乱用防止を必要としない。乱用防止または乱用耐性特性/方法には、限定されないが、製剤が潜在的乱用者による一般的な加水分解条件に耐性を持つことを可能とする特性、潜在的乱用者の規制物質に対する入手手段を制限する方法などの本明細書で記載の薬物乱用を防止するのに有用な特性/方法のいずれかが含まれる。用語の「乱用」は、たとえ1回であっても、所望の心理的なまたは生理学的効果を得るために、製剤または物質の意図的な非治療的使用と理解されるべきである。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、レボルファノールまたはモルヒネの乱用の可能性を低減する方法も提供する。いくつかの実施形態では、方法は、レボルファノールまたはモルヒネのプロドラッグを用意すること、およびプロドラッグを乱用防止製剤に処方することを含む。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステル、モルヒネの長鎖脂肪酸エステル、または薬学的に許容可能なその塩である。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2の化合物(例えば、化合物番号1~8のいずれか)、または薬学的に許容可能なその塩であり得る。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤は、皮下または筋肉注射可能製剤などの注射可能製剤である。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤は、一般的な不正変更条件、例えば、重曹または食酢媒介による、それぞれ約8.3または2.4のpHでの加水分解、または約1.6のpHでのクエン酸媒介加水分解に対し耐性がある(例えば、これらの条件下で実質的に安定である)。本明細書で使用される場合、「実質的に安定な」は、所与の条件下、例えば、本明細書で記載の一般的な不正変更条件下での加水分解で30%未満、20%未満、または5%未満の分解と理解されるべきである。従って、たとえ、乱用者がプロドラッグ製剤を得ることができる場合でも、プロドラッグ製剤からレボルファノールまたはモルヒネを得ることが困難であるために、薬物乱用の可能性も低減される。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤は、プロドラッグ含有ミセルを含む。理論に拘泥することを望むものではないが、ミセル形成は、加水分解速度をさらに低下させることができ、従って、プロドラッグ製剤からレボルファノールまたはモルヒネを回収することを試みる一般的な不正変更条件に対する製剤の安定性を改善すると考えられている。いくつかの実施形態では、方法は、乱用防止製剤の投与を病院設定に制限することをさらに含む。従って、方法は、潜在的乱用者に対するプロドラッグ製剤の入手手段を制限し、これも同様に、乱用の可能性を低減させる。いくつかの実施形態では、乱用防止製剤はまた、レボルファノールまたはモルヒネの長時間作用型放出ももたらす。例えば、乱用防止製剤は、投与後、対象使用者中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間などの長期間にわたり規制物質、またはその代謝物を放出できる。規制物質またはその代謝物は、投与後、ゆっくりとしか放出されないので、乱用者の潜在的多幸感の報償は、単なる製剤の注射だけでは達成され得ない。従って、乱用の可能性も低減される。
【0060】
理論に拘泥することを望むものではないが、長鎖脂肪酸をベースにした例示的プロドラッグに関する次の論理的根拠は、本開示のプロドラッグまたはプロドラッグを含む医薬組成物の使用による薬物乱用可能性を低減するなどの本開示のプロドラッグおよび/または方法の利点をさらに示す。
【0061】
理論に拘泥することを望むものではないが、長鎖脂肪酸をベースにしたプロドラッグは、不正変更に耐える物理的および化学的条件で安定であると考えられている。エステルプロドラッグは、通常の貯蔵条件下で、通常、安定である。FDAの承認を得るために、これらの販売されているカルボキシルエステルプロドラッグは、通常の貯蔵条件下で適切な安定性、通常、室温で18~24ヶ月の貯蔵寿命を有さなければならない。カルボキシルエステルプロドラッグはまた、一般的なキッチンケミストリー不正変更条件下で安定である。酢酸(1.0MでpH=2.4)、クエン酸(1.0MでpH=1.57)および重曹(1.0MでpH=8.3)などのキッチン化学薬品により生成される弱酸および弱塩基条件は、高温で数時間かけても、カルボキシルエステルを加水分解できない。
【0062】
理論に拘泥することを望むものではないが、長鎖脂肪酸をベースにしたプロドラッグからの規制物質の酵素媒介放出は、調節できるとも考えられている。制御可能な加水分解速度は、人体中への投与直後のエステルプロドラッグからの活性親薬物の放出を防ぐことができる。エステラーゼは、一般的に、基質特異性を欠いている。一般に、エステルプロドラッグは全ての組織中で種々のエステラーゼにより加水分解されると考えられている。しかし、最近、1種のカルボキシルエステラーゼが常に、それぞれの基質に対し支配的であり、主要な加水分解経路として機能することを報告している。
【0063】
望ましい酵素変換速度は、本明細書に記載の適切なプロドラッグを選択することにより達成できる。第1に、長鎖脂肪酸エステルの酵素触媒加水分解速度は、短鎖脂肪酸エステルの場合より遅い。より長い脂肪酸鎖を選択することにより、エステルプロドラッグの加水分解速度を遅くすることができる。従って、「持続」放出プロファイルは、適切な脂肪酸鎖長により達成できる。
【0064】
第2に、エステラーゼとリパーゼとの間の差異を利用することにより、長鎖脂肪酸をベースにしたプロドラッグを用いて、酵素変換の部位を限定できる。カルボキシルエステラーゼまたはその他のエステラーゼにより加水分解できる、ほとんどの販売されている短鎖脂肪酸エステルプロドラッグと異なり、長鎖脂肪酸エステルは、カルボキシルエステルリパーゼにより主に加水分解される。長鎖脂肪酸エステルオピオイドプロドラッグの血漿中の変換速度は、消化管中よりも遙かに小さい。プロドラッグはまた、血漿中でカルボキシルエステラーゼに対し不活性のまま残存するミセルを形成できる。ミセルは、徐々に取り込まれ、内皮細胞壁中でリパーゼにより開裂されるが、これもまた、薬物乱用者により望まれる多幸感を生成するにはあまりにもゆっくりすぎる。従って、吸引または鼻で吸われる場合、長鎖脂肪酸エステルオピオイドプロドラッグは、体循環中で「持続」放出プロファイルを示す。
【0065】
本開示のプロドラッグは、注射可能製剤(例えば、筋肉注射)に処方でき、これは、長期間にわたるレボルファノールまたはモルヒネの長期作用型徐放性をもたらすことができる。PCT/US2018/042880に示すように、代表的オキシモルホンまたはヒドロモルホンプロドラッグの脂肪酸鎖長を変えることにより、異なるPKプロファイルが観察できる。従って、本明細書に記載の異なる脂肪酸エステルプロドラッグを用いて、異なる用途に使用できる。
【0066】
本開示のプロドラッグは、レボルファノールまたはモルヒネの長時間作用性放出をもたらすように処方でき、これにより、薬物乱用の可能性を低減し、患者の服薬遵守を高めることができる。例えば、長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ(例えば、レボルファノールまたはモルヒネパルミテートまたはアラキデート)の注射(例えば、筋肉注射)は、長期間にわたり規制物質を供給できる。理論に拘泥することを望むものではないが、中程度に水溶性の化合物の場合には、長鎖脂肪酸の添加は、プロドラッグの溶解度を顕著に低減させると考えられている。得られた親油性のプロドラッグが筋肉内経由で注射される場合、プロドラッグは、注射部位で徐放性製剤を形成でき、変換されてゆっくりと親薬物に戻り、徐々に体循環中に放出され得る。PCT/US2018/042880で示すように、この効果は、いくつかの代表的オキシモルホンまたはヒドロモルホンプロドラッグについて観察された。
【0067】
同様に、理論に拘泥することを望むものではないが、脂質化化合物は、アルブミンまたは血清リポタンパク質に結合することにより、長時間作用効果を達成できるという仮説が立てられている。タンパク質への結合は、化合物を安定化し、その循環半減期を増大させる。
【0068】
まとめると、本開示のプロドラッグは、親薬物であるレボルファノールまたはモルヒネをゆっくり放出するように使用できる。さらに、プロドラッグが1~4週毎の、通常、病院での使用に限定できる、筋肉注射などの注射により投与される場合、レボルファノールまたはモルヒネの薬物乱用および流用の機会を減らすことができる。さらに、例えば、慢性疼痛の治療のための、血漿中の一日中変わらないレベルのレボルファノールまたはモルヒネにより、および低減した注射頻度により、患者のアドヒアランスおよび服薬遵守も大きく改善できる。本明細書で考察したように、プロドラッグを作製する化学は、費用対効果が大きく、直接的である。さらに、無数の潜在的脂肪酸は、特定の特性にあわせて、プロドラッグを作製可能にする。
【0069】
IV.医薬組成物
別の態様では、本発明は、本開示のいずれかのプロドラッグ(例えば、式1または2(2A、2B、または2C)の化合物、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ、モルヒネの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ、または化合物番号1~8のいずれか1つ、または薬学的に許容可能なその塩)を含む医薬組成物を提供する。通常、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤および、例えば治療有効量の本開示のプロドラッグ(例えば、式1または2(2A、2B、または2C)、レボルファノールの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ、モルヒネの長鎖脂肪酸エステルプロドラッグ、または化合物番号1~8のいずれか1つ、または薬学的に許容可能なその塩)を含む。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式1または2の化合物(例えば、化合物番号1~8のいずれか)、または薬学的に許容可能なその塩であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象使用者中で、レボルファノールまたはモルヒネの長時間作用型放出をもたらすことができる。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、投与後、対象使用者中で、少なくとも1日間、少なくとも2日間、または少なくとも3日間などの長期間にわたりレボルファノールまたはモルヒネ、またはその代謝物を放出できる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、乱用防止作用がある。本明細書で説明されるように、本開示の医薬組成物は、薬物乱用の可能性を低減できる。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下または筋肉注射などの注射用に処方でき、これは、病院での使用に限定できる。これは、製剤の潜在的乱用者の利用可能性を減らすので、規制物質の薬物乱用の可能性も低減される。さらに、医薬組成物は通常、投与後、レボルファノールまたはモルヒネまたはその代謝物をゆっくり放出するので、乱用者の潜在的多幸感の報償は、単なる医薬組成物の投与(例えば、注射による)だけでは達成され得ない。さらに、本明細書の医薬組成物はまた、一般的な乱用条件に対して耐性がある(例えば、実質的にその条件下で安定である)として特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酸または塩基触媒加水分解条件下、例えば、約1~3のpH(酸触媒)での加水分解条件下または食酢もしくは重曹媒介加水分解などの約8~9(塩基触媒)での加水分解条件下、約2.4または約8.3のpHでの加水分解条件下、または約1.6のpHでのクエン酸媒介加水分解条件下で実質的に安定である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示のプロドラッグを含むミセルを含むことができる。理論に拘泥することを望むものではないが、ミセルは通常、酸または塩基触媒加水分解に対しより安定であるので、プロドラッグのミセルを含む医薬組成物は、同様に、乱用防止作用があり得る。
【0071】
例示的実施形態では、医薬組成物は、1μg~2000mg、例えば、1μg~1mg、1mg~10mg、1mg~100mg、1mg~1000mg、1mg~1500mg、さらには、1mg~2000mgの本明細書で開示のプロドラッグを含む。
【0072】
本開示のプロドラッグは、多種多様の経口、非経口、および局所剤形で調製および投与できる。経口剤には、患者による摂取に好適する、錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤、などが挙げられる。本開示のプロドラッグはまた、注射、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内注射により投与できる。また、本明細書で記載の本開示のプロドラッグは、吸入により、例えば、鼻腔内に投与できる。さらに、本開示のプロドラッグは、経皮的に投与できる。本開示のプロドラッグは、坐剤、吹送法、散剤およびエアロゾル処方薬を含む眼内、膣内および直腸内経路により投与することもできる。本明細書に記載の医薬組成物は、経口投与に適合され得る。
【0073】
本開示のプロドラッグからの医薬組成物の調製のための、薬学的に許容可能な担体は固体または液体であり得る。固体形態の製剤には、散剤、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、または封入物質としても作用し得る1種または複数の物質であり得る。製剤および投与の技術に関する詳細は、科学および特許文献で十分に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(“Remington’s”)の最新版を参照されたい。
【0074】
粉末では、担体は、微粉化された活性物質との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と適切な比率で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。
【0075】
散剤および錠剤は、5重量%~70重量%の活性化合物を含むのが好ましい。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター、などである。用語の「製剤」は、活性化合物と、他の担体を含有または非含有の活性成分が担体によりに取り囲まれてカプセルを形成するように組み込まれる担体としての封入物質と活性化合物の配合物を含むことが意図されている。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル、丸薬、カシェ剤、およびトローチ剤は、経口投与に好適する固形剤形として使用できる。
【0076】
適切な固体賦形剤は炭水化物またはタンパク質充填剤であり、限定されないが、ラクトース、シュクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;およびアラビアおよびトラガカントを含むゴム:ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質を含む。必要に応じ、架橋化ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのなどの塩のなどの崩壊剤または可溶化剤を加えてもよい。
【0077】
糖衣錠コアは、濃縮糖溶液などの好適なコーティングを用いて形成され、この糖溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物も含み得る。色素または顔料を、製剤を識別するために、または活性化合物の量を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。本発明の製剤は、例えば、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングから作製されたソフトシールカプセルを用いて、経口でも使用できる。プッシュ・フィット型カプセルは、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および必要に応じて安定化剤と混合した本開示のプロドラッグを含むことができる。軟カプセルでは、本開示のプロドラッグを、好適な液体、例えば、安定剤を含有または非含有の、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールに溶解または懸濁させ得る。
【0078】
坐剤の調製のために、脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物などの低融点ワックスを最初に融解させ、撹拌しながらその中に活性成分を均一に分散させる。その後、融解した均一混合物を都合のよい寸法のモールドに注ぎ込み、冷却することにより固化させる。
【0079】
液体形態の製剤は、溶液、懸濁液、乳剤を含み、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液を含む。非経口注射のために、液状製剤が、ポリエチレングリコール水溶液中で処方できる。
【0080】
経口使用に好適な水溶液は、活性成分を水中に溶解し、好適な着色剤、香味料、安定剤、および必要に応じ増粘剤を加えることにより調製できる。経口使用に好適する水性懸濁液は、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアゴムなどの粘着性物質、および天然ホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)などの分散または湿潤剤を含む水中に微粉化活性成分を分散させることにより作製できる。また水性懸濁液は、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸などの1種または複数の防腐剤、1種または複数の着色剤、1種または複数の香味剤およびスクロース、アスパルテームまたはサッカリンなどの1種または複数の甘味剤を含むこともできる。製剤は、モル浸透圧濃度を調節することができる。
【0081】
また、固体形態製剤も含まれ、これは、使用の少し前に、経口投与用の液体形態製剤に変換されることが意図されている。このような液体形態の製剤は、溶液、懸濁液、乳剤を含む。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、香味料、安定剤、緩衝液、人工および天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤、などを含み得る。
【0082】
ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油などの植物油、または流動パラフィンなどの鉱物油またはこれらの混合物などの油担体は、同様に本開示のプロドラッグの処方に、例えば、注射可能製剤用として使用することができる。いくつかの実施形態では、油は担体として使用され、プロドラッグが油担体中に懸濁される。いくつかの実施形態では、油懸濁液は、蜜ろう、硬質パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含み得る。グリセロール、ソルビトールまたはスクロースなどの甘味剤を加えて口当たりの良い経口剤を提供することができる。これらの製剤はまた、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加により保存できる。本発明の医薬製剤は、水中油型乳剤の形態とすることもできる。油性相は上記の植物油または鉱物油、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤には、アラビアゴムおよびトラガカントゴムなどの天然ゴム、 ダイズレシチンなどの天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されるエステルもしくは部分エステル、およびポリエチレンソルビタンモノオレエートなどのこれら部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が含まれる。また乳液はシロップおよびエリキシル製剤におけるような甘味剤および香味剤も含むことができる。このような製剤は粘滑薬、防腐剤または着色剤も含むことができる。
【0083】
本開示のプロドラッグは、アプリケータースティック、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、散剤およびエアロゾルとして処方され、局所的経路により経皮的に送達することができる。
【0084】
本開示のプロドラッグは、体内での持続放出のためのマイクロスフェアまたはインプラントとして送達することもできる。例えば、マイクロスフェアは、生分解性および注射可能ゲル製剤として、薬物含有マイクロスフェアの皮内注射を介して投与でき、皮下にゆっくり放出される、または経口投与用のマイクロスフェアとして投与される。経皮および皮内経路の両方が数週間または数カ月間、一定の送達を提供する。
【0085】
本開示のプロドラッグは、体内での持続放出のために、皮下(SC)または筋肉内(IM)注射可能インサイツ徐放性製剤として送達することもできる。プロドラッグは、注射器中で有機溶媒と混合して、液体形態のままで残存するようにできる。注射後、プロドラッグは、インサイツ徐放性製剤を形成でき、これは、数週間または数カ月間、薬物を絶えず送達する。
【0086】
本開示のプロドラッグは、塩として提供することができ、この塩は、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの異なる種類の酸を用いて形成することができる。塩は、対応する遊離塩基型と比較して、水性溶媒またはその他のプロトン性溶媒への可溶性がより高い傾向がある。他の場合では、製剤は、4.5から5.5のpH範囲の1mM~50mMのヒスチジン、0.1%~2%のスクロース、2%~7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってよく、これは、使用前に緩衝液と混合される。
【0087】
別の実施形態では、本開示のプロドラッグは、静脈内(IV)投与または臓器の体腔または内腔中への投与などの非経口的投与に有用である。投与用の製剤は一般に、薬学的に許容可能な担体中に溶解した化合物溶液を含む。用いることができる許容可能なビークルおよび溶媒は、特に、水およびリンゲル液、等張性塩化ナトリウムである。加えて、無菌の不揮発性油を溶媒または懸濁剤として従来どおり使用することができる。この目的には、合成のモノまたはジグリセリドを含む任意の銘柄の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も同様に、注射剤の調製に使用することができる。これらの溶液は滅菌され、また、一般に望ましくない物質を含まない。これらの製剤は通例のよく知られた滅菌技術により滅菌され得る。製剤は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの製薬学的に許容され得る補助物質を適切な生理学的条件の必要性に応じて含み得る。これらの製剤中のプロドラッグの濃度は極めて広範囲に変動し得るが、選択した特定の投与方法および患者のニーズに従い、主に液量、粘度、体重、などに基づき選択される。IV投与の場合、製剤は無菌の注入可能な水性または油性懸濁液などの無菌の注入可能な調製物であり得る。この懸濁液はこれらの適切な分散または湿潤剤および沈殿防止剤を使用して、既知の技術により処方することができる。また無菌の注射可能な調製物はまた、1,3-ブタンジオールの溶液などの非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得る。
【0088】
別の実施形態では、本開示のプロドラッグは、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスにより取り込まれるリポソームの使用により、すなわち、リポソームに結合するリガンドを採用することにより、またはエンドサイトーシスを生ずる細胞の表面膜タンパク質受容体に結合するオリゴヌクレオチドに直接結合するリガンドを採用することにより、送達することができる。リポソームを使用することにより、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを持つ場合、またはそうではなく特異的な臓器に優先的に向けられる場合、プロドラッグの送達をインビボで標的細胞に向けることができる。
【0089】
医薬品は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、製剤は、適切な量の活性成分を含む単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージ化された製剤であり得、パッケージは、バイアルまたはアンプル中の小分けされた錠剤、カプセル、および散剤などの別々の量の製剤を含む。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤、またはトローチ剤それ自体であり得、またはパッケージ化形態にした適切な数のこれらのいずれかであり得る。
【0090】
単位用量製剤中の活性成分の量は、特定の用途および活性成分の効力に応じて、0.1mg~10000mg、より典型的には1.0mg~1000mg、最も典型的には、10mg~500mgに変化または調節し得る。組成物はまた、必要に応じ、他の適合性のある治療薬も含むことができる。
【0091】
本開示のプロドラッグは、リパーゼまたはエステラーゼにより代謝され得る。プロドラッグがリパーゼまたはエステラーゼにより代謝される場合、エステル結合は切断され、レボルファノールまたはモルヒネなどの活性オピオイドが放出される。
【0092】
本明細書で提供される教示を利用して効果的投与計画を策定でき、この計画には、化合物の効力、相対的バイオアベイラビリティ、放出速度、患者の体重、有害副作用の存在および重症度、好ましい投与方法、および選択した薬剤の毒性プロファイルなどの因子を考慮することによる、活性化合物の注意深い選択が必要となる場合がある。
【0093】
V.実施例
実施例1-レボルファノールエステルプロドラッグの合成
【化5】
レボルファノールパルミチン酸(n=14)エステルの例示的調製手順。脂肪酸(パルミ
チン酸)およびスルホニルクロリド(>10mol当量)を乾燥した丸底フラスコに加えた。混合物を油浴中、85℃で2時間還流した。液体スルホニルクロリドを減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて除去し、油ポンプを用いてさらに除去した。無水CHClを混合物に加えた。その後、加えた溶媒を減圧下でロータリーエバポレーターを用いて除去し、油ポンプを用いてさらに除去した。無水CHCHの添加と除去のステップを3回繰り返し、確実に残留スルホニルクロリドを除去した。得られた淡黄色結晶をさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0094】
レボルファノール酒石酸塩(1.0mol当量)およびトリエチルアミン(4.0mol当量)を丸底フラスコ中の無水CHClに溶解した。フラスコを氷水浴中で保持した。上記で調製した脂肪酸クロリド(パルミチン酸クロリド)(1.1mol当量)を混合物に加えた。混合物を一晩撹拌した。混合物を0.1Nクエン酸(2回)および水(1回)で洗浄した。有機相を回収し、無水KSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターを用いて、有機溶剤を除去した。次に、反応混合物をCHCl:MeOH=20:1を用いてシリカクロマトグラフィーで精製した。
【0095】
上記手順後に、化合物番号1~4、n=10、14、16および18のレボルファノールエステルをそれぞれ合成した。
【0096】
化合物番号1~4のキャラクタリゼーション:
化合物1.レボルファノールドデカネート(nは10)。MS(m/z):440.4.H NMR(300MHz,CDCl)δ7.17(1H,d),6.97(2H,m),3.49(1H,s),2.97-3.16(2H,m),2.79(3H,d),2.3-2.7(4H,m),1.0-1.8(29H,m),0.87(3H,t).
化合物2.レボルファノールヘキサデカネート(nは14)。MS(m/z):496.8.H NMR(300MHz,CDCl)δ7.17(1H,d),6.95(2H,m),3.51(1H,s),2.97-3.21(2H,m),2.80(3H,s),2.3-2.7(4H,m),1.0-1.8(37H,m),0.87(3H,t).
化合物3.レボルファノールオクタデカネート(nは16)。MS(m/z):524.7.H NMR(300MHz,CDCl)δ7.18(1H,d),6.97(2H,m),2.97-4.00(3H,m),2.79(3H,s),2.3-2.7(4H,m),1.0-1.8(41H,m),0.87(3H,t).
化合物4.レボルファノールエイコサネート(nは18)。MS(m/z):552.8.H NMR(300MHz,CDCl)δ7.16(1H,d),6.94(2H,m),2.97-4.00(3H,m),2.71(3H,s),2.3-2.7(4H,m),1.0-1.8(45H,m),0.87(3H,t).
【0097】
実施例2-モルヒネエステルプロドラッグの合成
【化6】
実施例1に記載の手順に従い、代わりにモルヒネクロリド塩を使って、化合物番号5~8、n=12、14、16、および20のモルヒネモノエステルをそれぞれ調製した。モルヒネジエステルも、2当量以上のアシルクロリドを用いることを除いて、類似の方法により調製できる。他のモノエステルもまた、同様に調製できるが、保護/脱保護工程を使用して反応収率を高めてもよい。
【0098】
実施例3-不正変更条件下での安定性試験
プロドラッグを、80℃での1.0Mの重曹(pH=8.3)、食酢(5%酢酸、pH=2.5)、およびウォッカ(40%アルコール)、ならびに25℃での塩素および過酸化水素を含む一般的不正変更条件に供される。最終インキュベーション混合物は、0.5mLの最終体積の不正変更媒質中に10μMの試験化合物を含む。プロドラッグを加えて、インキュベーションを開始する。0、30、および60分で、0.05mLの分取量をインキュベーション混合物から取り出し、0.15mLのメタノールでクエンチし、氷上に置く。分析用に一定分量を取り出す。プロドラッグおよび親薬物の両方の濃度をLC-MS/MSで分析し、プロドラッグの安定性を比較する。
【0099】
実施例4-ヒトカルボキシルエステラーゼおよびリパーゼ中の安定性試験
プロドラッグを、ヒト組換えカルボキシルエステラーゼ1b、ヒト組換えカルボキシルエステラーゼ1c、およびヒト組換えカルボキシルエステラーゼ2を含む組換えヒトカルボキシルエステラーゼ混合物中で試験した。プロドラッグはまた、組換えヒト膵リパーゼ中でも試験した。カルボキシルエステラーゼおよびリパーゼ中の加水分解速度により、生物学的条件下でのプロドラッグの安定性の順位付けが可能となる。
【0100】
最終インキュベーション混合物は、1.0mLの最終体積の0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH=6.0)中の1μMの試験化合物および0.1mg/mLのヒト組換えカルボキシルエステラーゼ混合物またはリパーゼを含む。酵素活性の阻害を防ぐためのインキュベーション中のDMSOの最終パーセンテージは1.0%以下である。37℃でのプレインキュベーション後に、試験品を加えて、反応を開始する。0、30、および60分で、0.02mLの一定分量をインキュベーションから取りだし、0.18mLの新しく調製した0.01%(v/v)のリン酸を含む、水中6Nのグアニジニウム塩酸塩溶液の添加によりクエンチした。次に、混合物を7500g、4℃で10分間遠心分離し、上清がLC-MS/MSを用いて分析される。プロドラッグの残留および親薬物の形成パーセンテージが記録される。
【0101】
実施例5-ヒト血漿中の安定性試験
選択したプロドラッグをヒト血漿中で試験し、それらの安定性を評価する。最終インキュベーション混合物は、1.0mLの最終体積のヒト血漿中に1μMの試験化合物を含む。酵素活性の阻害を防ぐためのインキュベーション中のDMSOの最終パーセンテージは1.0%以下である。37℃でのプレインキュベーション後に、試験品を加えて、反応を開始する。0、30、および60分で、0.02mLの一定分量をインキュベーションから取りだし、0.18mLの新しく調製した0.01%(v/v)のリン酸を含む、水中6Nのグアニジニウム塩酸塩溶液の添加によりクエンチする。次に、混合物を7500g、4℃で10分間遠心分離し、上清がLC-MS/MSを用いて分析される。プロドラッグの残留および親薬物の形成パーセンテージが記録される。
【0102】
実施例6-ラットにおける薬物動態学的試験
基本手順:1.8gのプロドラッグを50mlのガラスバイアルに加えることにより、オピオイドエステルプロドラッグ製剤を調製して、180mg/mlの懸濁液を得る。固形物に、30mlの注射用ビークルを加える。得られた混合物を10分間超音波処理し、静置する。次に、投与の前に、バイアルの内容物を均一な凝集塊不含懸濁液が得られるまで振盪する。
【0103】
12匹の体重が約250gの雄スプラーグドーリーラットをこの試験で使用する。エステルプロドラッグ(180mg)の単回の筋肉注射をラットに投与する。投与の0(投与前)、0.5、1、2、4、8、12および24日後に血液試料を集める。凝血活性化因子を含む商業的に入手できるプラスチックチューブを用いて、血液を収集する。収集後、10分以内に、血液を2,500gで10分間遠心分離する。血漿を分離し、LC-MS/MSによる分析を行うまで、-18℃で凍結する。プロドラッグおよびその対応する親薬物の両方が分析される。試験品の薬物動態学的パラメーター(AUC、Tmax、Cmax、T1/2、など)を対比して、プロドラッグの特性をそれらの親薬物と比較する。
【0104】
製剤は、ゴマ油または水性懸濁液中で調製される。スプラーグドーリーラットへの投与前に、油および懸濁液配合物の両方を電子ビームにより殺菌した。
【0105】
発明の概要および要約セクションを除く、詳細説明セクションは、特許請求の範囲を解釈するために使用されることが意図されていることは理解されるべきである。発明の概要および要約セクションは、本発明の全てではなく、1つまたは複数の本発明により意図されている例示的実施形態を記載し得るものであり、従って、本発明および添付特許請求の範囲を多少なりとも限定する意図はない。
【0106】
本発明は、特定機能の実施態様およびそれらの関連性を例示する機能的構成単位を使用してこれまで記載されてきた。これらの機能的構成単位の境界は、説明の便宜のために本明細書で適宜定義されている。別の境界は、特定の機能およびそれらの関連性が適切に実施される限り、定義できる。
【0107】
類として記載された本発明の態様に関しては、全ての個別の種は、個々に本発明の別々の態様と見なされる。本発明の態様が、特徴を「含む(comprising)」として記載される場合、実施形態もまた、特徴「からなる(consisting of)」または特徴「から本質的になる(consisting essentially of)」ことが意図されている。
【0108】
前述の特定の実施形態の記載は、当該技術の範囲内の知識を適用することにより、他者が、過度の実験をすることなく、また本発明の一般的概念から逸脱することなく、様々な用途に向けてこのような特定の実施形態を容易に修正および/または適合させることができるという本発明の一般的性質を完全に明らかにしている。従って、このような適合および修正は、本明細書で提示された教示および手引きに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味および範囲に入ことが意図されている。本明細書の用語または表現が教示および手引きを考慮して当業者により解釈され得るように、本明細書の表現または用語は、説明を目的とし、限定を目的とするものではないことを理解されたい。
【0109】
本発明の広がりと範囲は、上述した例示的実施形態によって限定されるべきではなく、次の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ定められるべきものである。
【0110】
本明細書で記載の種々の外観、実施形態、および選択肢の全ては、いずれかのおよび全ての変種の形態で組み合わせることができる。
【0111】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれがあたかも具体的に、個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における用語のいずれかの意味または定義が、参照により組み込まれた文献中の同一の用語のいずれかの意味または定義と矛盾する場合には、本明細書でその用語に与えられた定義または意味が優先されるものとする。
【国際調査報告】