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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】消化管のうっ血を測定する装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0535 20210101AFI20220308BHJP
【FI】
A61B5/0535
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542230
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 FR2020050114
(87)【国際公開番号】W WO2020152429
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】1900629
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521320586
【氏名又は名称】センティンヘルス
(71)【出願人】
【識別番号】516247100
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
【氏名又は名称原語表記】Universite Grenoble Alpes
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドピエララ,シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ポワザ,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】パーマンティエ, チボー
(72)【発明者】
【氏名】グメリ,ピエール-イーヴ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127EE01
4C127EE03
4C127LL04
(57)【要約】
消化管のうっ血を測定する装置(1)が、少なくとも1つの筐体(2)と、電流源(30)及び電位差測定手段(31)であって、筐体内に収容される電流源(30)及び電位差測定手段(31)と、電極の両端にわたって電流源(30)及び/又は電位差測定手段(31)に電気的に接続しているが互いに独立した少なくとも2つの電極を備えた電極の組(3)とを備えるものであって、電極の組(3)の各電極は、電流を送信する及び/又は電位差を測定できるように構成されているものである。電極の組(3)は、少なくとも使用者の胃腸管の組織(14)を通って流れる少なくとも1つの電流の流れのループ(13)を生成して、胃腸管の組織に対する電位差を測定することができるように構成されており、当該胃腸管のバイオインピーダンスを測定する装置(1)は、測定された電位差を受信して、胃腸管の組織に対するこの測定値に従って消化管のバイオインピーダンスの値を算出するように構成された算出モジュール(5)をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の消化管のうっ血を測定する装置(1)において、当該測定装置は、少なくとも1つの筐体(2)と、電流源(30)及び電位差測定手段(31)であって、前記筐体内にそれぞれ収容される当該電流源及び電位差測定手段と、電極の組(3)であって、電極の両端にわたって前記電流源(30)及び/又は前記電位差測定手段(31)に電気的に接続しているが互いに独立した少なくとも2つの電極を備えた当該電極の組とを備えるものであって、該電極の組(3)の各電極は、電流を送信する及び/又は電位差を測定できるように構成されていることを特徴とし、また当該装置(1)において、前記電極の組(3)は、少なくとも前記使用者の胃腸管の組織(14)を通って流れる少なくとも1つの電流の流れのループ(13)を生成して、前記胃腸管の組織(14)に対する電位差を測定することができるように構成されており、また測定装置(1)は、測定された電位差を受信して、前記胃腸管の組織(14)に対するこの測定値に従って消化管のバイオインピーダンスの値を算出するように構成された算出モジュール(5)をさらに備えることを特徴とする、測定装置(1)。
【請求項2】
胃壁の構造的特性又は形態的特性の機械的測定を可能にする手段(100)を備えることを特徴とする、請求項1記載の測定装置(1)。
【請求項3】
胃壁の構造的特性又は形態的特性の機械的測定を可能にする手段は、加速度計(100)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定装置(1)。
【請求項4】
胃壁の構造的特性又は形態的特性の機械的測定を可能にする手段(100)は、前記筐体(2)内に組み込まれることを特徴とする、請求項2又は3に記載の測定装置(1)。
【請求項5】
前記電極の組(3)は、2電極であって、すなわち前記筐体(2)の長手方向の第1の端部(9)に配置される第1の電極(6)と、筐体(2)の反対側の長手方向の第2の端部(10)に配置される第2の電極(7)とを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置(1)。
【請求項6】
前記電極の組(3)は、複数の電極であって、そのうち少なくとも1つの電極(18、23)が前記筐体(2)の外に離されていて、また前記筐体(2)の外側の離れた電極の支持部(20)は前記電流源(30)及び/又は前記電位差測定手段(31)を当該離れた電極(18、23)に接続するように構成されるものである当該複数の電極を備え、前記離れた電極の支持部(20)は、前記筐体(2)と当該離れた電極(18)との間に延在する絶縁性の周辺ケース(21)を備えるものである、請求項1から5のいずれか一項に記載の測定装置(1)。
【請求項7】
前記電極の組(3)の全ての電極は前記筐体の外に離されており、絶縁性の周辺ケース(21)は、互いに電気的に絶縁であるような手法で複数の導電線を収容しており、当該複数の導電線は、前記電流源(30)及び/又は前記電位差測定手段(31)に離れた電極を互いに独立に接続するように構成されるものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の測定装置(1)。
【請求項8】
前記電極の組は、前記筐体(2)と、前記筐体から最も遠い電極を形成する当該離れた電極(18)との間に前記筐体の外側に延在する少なくとも1つの中間電極(23)を備えるものであり、少なくとも1つの中間電極(23)は、導電性分枝(25)の末端に配置されて、絶縁性のケースによって胃腸管の組織と絶縁にされており、当該分枝(25)は、絶縁性の周辺ケース(21)を備えた支持部(20)に対して相対的に展開可能である、請求項6又は7に記載の測定装置(1)。
【請求項9】
前記電極の組は、前記電流源(30)に及び/又は前記電位差測定手段(31)に電気的に接続した複数の電極を備えるものであって、前記測定装置は、前記電流源(30)及び/又は前記電位差測定手段(31)との各電極の独立した電気的接続に対して配置したスイッチの組(32)を備え、算出モジュール(5)が、当該組のどの電極が胃腸管の組織を通る電流を送信及び測定することを実施するかを決定するために、スイッチを駆動するように構成されている、請求項6又は7に記載の測定装置(1)。
【請求項10】
各電極は、電流の胃腸管の組織への伝達を実行する前記電流源(30)と、前記電位差測定手段(31)との両方に接続される、請求項1から9のいずれか一項に記載の測定装置(1)。
【請求項11】
電極の少なくとも1つの対が、前記電流源(30)の両端にわたって接続されて、胃腸管の組織において電流の流れのループの伝達に関与し、また電極の少なくとも1つの対が、前記電位差測定手段(31)の両端にわたって接続される、請求項1から10のいずれか一項に記載の測定装置(1)。
【請求項12】
少なくとも、前記筐体(2)の一方の端部に、及び/又は離れた電極の支持部(20)上に、及び/又は導電性分枝(25)上に配置される、胃腸管の組織(14)に取り付ける少なくとも1つの取り付けデバイス(24)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の測定装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の消化管のうっ血を測定する測定装置(1)を実施する、消化管のうっ血を測定する方法であって、電位差を測定するステップと、少なくとも1つの電位差の測定値を受信して、当該電位差の測定値から消化管のバイオインピーダンス値を算出することが可能である算出モジュール(5)により実施する算出ステップとを含む、方法。
【請求項14】
電位差の測定値は、複数の局所的な電位差の測定値の合計に相当し、局所的な電位差の測定値のそれぞれは、ある電極の、又は前記測定装置(1)の電極の組(3)のうちの一対の直ぐ隣接し合う電極の、少なくとも1つの電流源(30)への電気的な接続より生じる、請求項13記載の消化管のうっ血を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の構成部分に適用する測定装置の分野に関し、より詳細には、消化管における人体のバイオインピーダンスを測定することが可能である装置に関する。以下で用いる「組織」の語は、インピーダンス測定が検討される消化管の組織の全てであって、より正確には、胃腸管の組織を示すこととなる。
【背景技術】
【0002】
既知の様式で、例えば心不全等の病理が、ヒトの肺において液体貯留を引き起こす可能性がある。この液体貯留は、浮腫とも呼ばれるが、正しい呼吸を妨げ、すなわち細胞外レベルで肺組織内に留まるようになる水が、そこで行われる酸素と二酸化炭素との気体交換の障害となる。
【0003】
すなわち心不全が、胸部での、特に肺組織での心原性浮腫につながる可能性がある。症状のうち、呼吸が苦痛であること及び息切れは、呼吸の働きを高める肺の代償作用により誘導され、特に胸痛を引き起こす。これら症状は、液体貯留が上流で検出されなければ、重大な呼吸困難へと悪化する。肺浮腫は、医学的に、最初の兆候で治療する必要がある生命の重大な危機と考えられており、当該治療は、初期段階においては組織のうっ血がほとんどないため診断が遅れれば遅れるほど重くなる。
【0004】
肺浮腫は疾患の後期段階で、その治療は、とりわけ利尿剤の使用に基づくものであり、この段階の疾患でのこれら薬剤の有効性は、経口経路では不十分であり(高用量であっても)、入院と利尿剤の静脈注射による治療が必要である。これら経口での薬物治療の有効性が低下することについての説明としては、胃腸壁に水が存在していること(浮腫)があり、これが吸収を妨げる。それでも重篤度に起因して、肺浮腫は、胃壁及び腸壁の浮腫よりも後にあるようである。したがって、特に心不全患者の35%で消化管透過性の増加があることから、消化管における水の存在を測定することが、次の段階、すなわち肺における水の存在の早期兆候となり得る(Sandek A, Bauditz J, Swidsinski A, Buhner S, Weber-Eibel J, von Haehling S et al. Altered Intestinal Function in Patients With Chronic Heart Failure. JACC October 2007. Vol. 50, No. 16, 2007, 2007:1561-9)。
【0005】
したがって、心病変の危険性がある患者はいずれも、肺浮腫の発症の可能性があることを理由に絶えず警戒する必要がある。危険な状態にある患者は、通常、心疾患を識別するために、例えば開業医による聴診、胸部X線、血液検査、及び/又は心電図等、定期健康診断で観察される。当該患者は、その生活習慣を緊密に予防的に観察されて、患者の心病変を治療して、根底にある肺浮腫の合併症を予防するようにせざるを得ない。
【0006】
しかしながら、患者はその肺及び心臓の状態を評価する医療機関と開業医とに左右されるため、医学的観察は患者にとって制限があるままである。別の欠点としては、患者が、定期的な経過観察で、合併症の悪化を予防するために頻繁に医療機関にかからなければならないことがある。さらに、長期的な複数日にわたる観察は、全ての患者にとって、特に良好な自律性を維持している患者にとって、合理的になされ得ない。
【0007】
したがって本発明の目的は、内臓浮腫の発生を検出するために、胃組織内の含水量又はうっ血の変化を頑健に検出するために用いるバイオインピーダンスを測定する装置であって、使用し易く且つ肺浮腫の危険性がある患者を間接的に早期に観察するために複数回使用することができる当該装置を設計することによって、上記記載の欠点に対処することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、使用者の消化管のうっ血を測定する装置に関し、当該測定装置は、少なくとも1つの筐体と、電流源及び電位差測定手段であって、上記筐体内にそれぞれ収容される電流源及び電位差測定手段と、電極の組であって、電極の両端にわたって電流源及び/又は電位差測定手段に電気的に接続しているが互いに独立した少なくとも2つの電極を備えた当該電極の組とを備えるものであって、該電極の組の各電極は、電流を送信する及び/又は電位差を測定できるように構成されているものである。上記電極の組は、少なくとも使用者の胃又は腸の管の組織を通って流れる少なくとも1つの電流の流れのループを生成して、上記胃又は腸の管の組織に対する電位差を測定することができるように構成されており、また測定装置は、測定された電位差を受信して、上記胃又は腸の管の組織に対するこの測定値に従って消化管のバイオインピーダンスの値を算出するように構成された算出モジュールをさらに備える。すなわち、消化管のうっ血を測定する当該装置により、特に消化管の組織のバイオインピーダンスの測定が可能になる。
【0009】
胃又は胃腸管の組織内の液体体積の変化を自動で測定することで、浮腫の出現を相対的な自律性で評価することが可能になることとなる。バイオインピーダンスを測定することは、特に、例えば浮腫の存在等である身体の液体組成における情報を提供する測定である。しかしながら、バイオインピーダンスを測定する公知の装置によっては、胸部の浮腫の存在を特異的に且つ頑健に評価することができるようにならなかった。さらに、消化管の浮腫の存在を評価することが可能になる公知の装置はなかった。
【0010】
本発明の一特徴によれば、測定装置は、胃壁の構造的特性の機械的測定を可能にする別個の手段を備える。
【0011】
すなわち、本発明による測定装置は、マルチモーダルな手法の枠組み内で、胃の組織の電気インピーダンスを測定する手段と、胃壁の構造的又は形態的な特性の機械的測定を可能にする別個の手段とを実施する。
【0012】
そして測定装置は、一方で電気バイオインピーダンス信号を、他方で機械的信号を考慮に入れた測定を可能にする点で、マルチモーダルとして画成され得る。これらデータの交差解析が、例えばこれらデータのそれぞれが閾値を超えたときに、胃の組織がうっ血しているか否か、すなわち液体で充満しているか否か、を確実に判断することが可能になり、続いて当該判断によって、生じ得る心不全を医療従事者が診断可能になる。
【0013】
本発明の一特徴によれば、胃壁の構造的又は形態的特性の機械的測定が可能になる手段は、加速度計からなる。当該センサは、特に、振動を検知して、少なくとも1つの定めた量によって胃壁におけるこれら振動を定量化するように構成されている。
【0014】
特に、心臓ショックに対するSCG波(seismocardiography wave)の特性の発展を、加速度計が集めた加速度測定的信号の解析によって、胃の組織の様々なレベルの電気インピーダンスと結びつけることが有益である。例えば胃壁の振動のエネルギー又は周波数帯域幅である、加速度測定的信号の特性を解析することで、胃壁の構造的及び形態的な変化の兆候を強調できるようになる。この情報をインピーダンスレベルの解析と組み合わせることで、検出された構造的及び形態的な変化が胃壁内に存在する液体の増加に起因しているということを推定できるようになる。
【0015】
機械学習の方法論を用いたラーニングベースを用いて、内臓浮腫の発症に関連した特徴的な変化を検出することが可能である。
【0016】
本発明の一特徴によれば、胃壁の構造的又は形態的特性の機械的測定を可能にする手段、特に加速度計は、先に言及した測定装置の筐体内に組み込まれる。
【0017】
胃壁の構造的又は形態的な特性の機械的測定を可能にする手段、特に加速度計は、すなわち、バイオインピーダンス測定が行われた領域に相当する胃の組織の領域において加速度測定的信号の測定を可能にする電極の近傍に配置されることが有利である。この文脈において、測定データを処理するように構成されている単一の算出モジュールにおいて測定データを集めることと、特に必要であれば次の医学的診断行程の契機となりそうな警戒基準を超えたことを検出するために、当該データを閾値と比較することとがより容易にもなる。
【0018】
この機械的な近接が、同じ筐体の中にセンサと電極とが統合されていることを理由に、測定の同期を最適化することもできるようにする。以下で言及するように、バイオインピーダンスの測定、及び機械的信号、ここでは加速度測定的信号の測定は、安定した比較を得るために同時に実行され、またこれら2つの測定開始の同期は、例えば算出モジュールとセンサ及び電極との間の短経路の制御命令によって促進される。
【0019】
筐体及び電極の組は内在化され、言い換えると使用者に植え込むように構成される。それらは、少なくとも筐体と、適切な場合には電極の全て又は一部とが、使用者の組織と直接接触した状態にあり、より詳細には使用者の組織と長い間接触した状態にあるように構成される。この文脈においては、筐体と電極の組とは、身体に挿入される材料より製造することができる。例えば、筐体と電極の組とは、生体適合性材料より製造され得るか又は生体適合性コーティングを含み得る。用いる材料にかかわらず、電極の組は、その導電性の送信特性及び/又は受信特性を保持する。
【0020】
算出モジュールは、電位差に関する測定データを処理して、特に予め定めた閾値と比較してこれら測定データの発展を処理して、そしてそれより、使用者の状態に関連する情報を抽出することが可能である胃の管のバイオインピーダンス値を推定するように構成される。算出モジュールは、電流源により供給される電極の両端にわたって測定された電位差をそれが受信できるようにする通信手段を少なくとも備える。この電位差を測定するために用いるデバイス、すなわち電圧計と、算出モジュールとは、実施形態に応じて有線で接続されるか又は無線で通信する。算出モジュールは、本発明の文脈を逸脱することなく、筐体内に組み込まれているか又は筐体からある距離だけ離れているものであり得るが、ただし当該筐体は、筐体から離れていてもよく離れていなくてもよい電極に対して互いに独立に電気的に接続することが可能である少なくとも1つの電流源と1つの測定装置とを組み込む。
【0021】
筐体に搭載されているか又は筐体から離れているかにかかわらず、算出モジュールは、一実施形態においては、内在化される、言い換えると使用者に植え込まれるように構成することが可能である。そして算出モジュールは、算出した消化管のバイオインピーダンスの値又は使用者の状態に関連する情報を送信可能となるような通信手段を備える。例えば、算出モジュールは送信部を備える。別の実施形態においては、算出モジュールは外部に置かれる。
【0022】
少なくとも2つの電極を備える電極の組は、これらが筐体内に組み込まれているか又は筐体外に離れているかにかかわらず、電流源と電位差測定手段とに接続されており、当該組の各電極は、互いに独立であり、それを通って電流の流れのループが通過することが望まれる胃又は腸の組織と少なくとも接触するように配置されながら、これら構成要素と電気的に接続する。例えば、電極の組の各電極は、胃又は腸の組織と接触することを意図した少なくとも1つのインタフェース面を備える。電極の組は、胃又は腸の組織内に留置されるように構成されることが有利である。
【0023】
電極を介して使用者の身体を通って流れるように生じる電流は、低強度電流である。「低強度」は特に、1ミリアンペア未満の強度の電流を意味する。より詳細には、例として、電流は、5kHzから1MHzのオーダーでの周波数に対して50から700ミリアンペアのオーダーでの強度をもつ正弦交流とし得、測定はおそらく多周波測定である。
【0024】
電位差の測定は、電極の両端にわたって、オームの法則に従って、一定強度の電流に対してインピーダンス値について実行される。1つの電極から別の電極への、一方向又は他方の方向への電流が流れることにより生じる電位差は、電極は注入及び受信の両方が可能であることが理解されるが、通過した胃又は腸の領域が遭遇した生体組織の抵抗に従って変化する。電流路に配置された電極の両端にわたる測定により、この電位の変化及びそれによる一定強度の電流に対するバイオインピーダンスの変化を定量化できるようになる。
【0025】
本発明による装置により実行される、流れる電流の電気量の測定は、いつくかの要件を満たす。胃又は腸の組織内のバイオインピーダンスの十分に特異的な測定を実行可能であるために局所的な測定を実行する必要があり、そして粘膜下層において及び/又は適切である場合には粘膜において標的となるこの局所的な測定に関して、胃もしくは腸の管腔の内容物に起因した発生し得る電気的な短絡を回避するためでもある。この測定はまた、十分に長い距離にわたって実行して、それによりこれら様々な壁に存在する組織の不均一性を考慮に入れない信頼できる全体的な測定である必要がある。そしてこの文脈において、以下により詳細に説明することとなるように本発明の様々な特徴は、互いに独立に電流源に電気的に接続している複数の電極の一方が、他方の後ろに冗長に配列されている装置を提供して、電流の流れのループが胃内腔に有害に進展することなく、段階的な測定を可能にさせることを目指す。
【0026】
本発明によれば、加速度測定は時間tで実行される。加速度計により集めた値は、心臓ショックに対する胃壁の加速度測定的特徴を抽出する算出モジュールに送信される。既に言及したように、算出モジュールは、内在的で、測定装置の筐体内に配置され得るか、又は機械的手段と電気的手段とが同一筐体内に配置される以上本発明の文脈から逸脱することなく外部に置かれ得る。同時に、胃の組織の電気インピーダンス値を測定する。胃壁の加速度測定的特徴及び経時的な電気インピーダンス値は、特にそれらを閾値と比較することによって解析される。これら電気的及び機械的な2つの測定値の進展が一貫しており、且つ、集めた値のそれぞれが予め定めた対応する閾値を超えている事象においては、情報は、データベースへ及び/又は外部のデータ処理手段へと送信されるものであり、この情報は、後に診断される内臓浮腫の可能性としてみなされているということが理解される。
【0027】
本発明者は、胃壁の液体貯留の場合において、一方では、組織の電気インピーダンスが変動することとなり、筐体の一方の電極から他の電極への電流の移動を促進する水の存在に起因して抵抗が減少し、他方では胃壁はまた、水の存在に起因して、胃壁の肥厚化を含めた構造的な変形を受けて、このことが加速度測定的特徴の変化を引き起こすが、その後心臓ショックにより引き起こされた波は同じようには伝達されない、ということを実際には考えている。
【0028】
本発明に係る測定装置の利点により同時に得られる電気的信号と機械的信号とを考慮することで、水分貯留の存在についての信頼できる情報を提供することができるようになる。
【0029】
本発明の一態様によれば、測定装置は、腔内経路又は開腹手術により胃腸管の組織内に植え込むような大きさである。腔内経路を介して胃腸管の組織に植え込むため、測定装置は、使用者の口腔及び消化管を通って挿入されるような大きさである。例えば、測定装置は、例えば内視鏡等の腔内プローブに挿入されるか又は当該プローブが担持するような大きさである。腔内移植は、測定装置の植え込みを完了させる意図である外科的作業と組み合わせることが可能である。あるいは、測定装置は、腹部において直接実施される外科的作業によって植え込むことが意図される。
【0030】
本発明の一態様によれば、電極の組は、2電極、すなわち筐体の長手方向の第1の端部に配置される第1の電極と、筐体の長手方向の反対側の第2の端部に配置される第2の電極とを備える。筐体の両端にある電極の組を配置することで、局所的に、すなわち、筐体により現れる数センチメートルの距離にわたって、電位差を測定できるようになる。すなわち流れのループは、第1の電極から第2の電極へと通過するものであり、筐体の長手方向の第1の端部と長手方向の第2の端部との間の、筐体近傍の胃の又は腸の組織を通過する。この測定は、筐体外部の電極又は電気的接続線と関与していないことを理由に簡単であるが、非常に局所的な測定と関与しているものであり、これは組織が不均一であることの作用として筐体の植え込み領域に依存して大きく変動する可能性があるということが理解されるであろう。
【0031】
第1の電極は、胃腸管の第1の領域と接触するように構成された第1のインタフェース面を備える。第2の電極は、第1の領域とは異なる、胃腸管の第2の領域と接触するように構成された第2のインタフェース面を備える。例えば、第1の電極/第1の胃又は腸の領域間の接触が、第2の電極/第2の胃又は腸の領域間の接触と同様に確実であるように、第1のインタフェース面は、筐体の長手方向の第1の端部とぴったり重なり、また第2のインタフェース面は、筐体の長手方向の第2の端部とぴったり重なる。
【0032】
各電極のインタフェース面は、ある表面積をもって広がっている。例えば、本発明を限定することなく、各電極のインタフェース面は、20~40mmであり得る。別の例では、各電極のインタフェース面は、筐体の総表面のうちの15%で+/-10%に相当し得る。
【0033】
一実施形態においては、第1の電極は、筐体の長手方向の第1の端部全体にわたって広がっている。これと同じ実施形態においては、第2の電極もまた、筐体の長手方向の第2の端部全体にわたって広がり得る。代替的な実施形態においては、第1の電極は、筐体の長手方向の第1の端部の一部を占有する。これと同じ実施形態においては、第2の電極もまた、筐体の長手方向の第2の端部の一部を占有し得る。例えば、第1の電極及び第2の電極は、長手方向の第1の端部及び長手方向の第2の端部それぞれにおいて、筐体の表面上に配置されるステッカーの形態である。第1のインタフェース面及び第2のインタフェース面は、同じ方向に向けられており、そして第1の電極及び第2の電極は筐体の同じ側に配置されており、各インタフェース面に対する垂線は平行であることが有利である。
【0034】
本発明の一態様によれば、電極の組は、複数の電極であって、そのうち少なくとも1つの電極が筐体外に離れていて、また筐体に対して外側にある離れた電極の支持部が電流源の両端部及び/又は電位差測定手段の両端部のうちの一方を当該離れた電極に接続するように構成されるものである、当該複数の電極を備え、離れた電極の支持部は、筐体と当該離れた電極との間に延在する絶縁性の周辺ケースを備える。
【0035】
本発明の一態様によれば、電極の組は、必要であれば実質的に整列させつつ、幾何学的に順々に筐体から遠ざかるように移動させて配置した、複数の電極を備える。
【0036】
本構成においては、電極の組の2つの電極間において取り得る最長の距離は、筐体内に電極を収容した場合の構成と比較すると長い。これにより、胃又は腸の組織に対するバイオインピーダンス測定領域の良好な達成範囲を得ることができるようになり、一方で筐体は、筐体の及び離れた電極の支持部の侵襲的な影響を最小限にするために比較的小さいままである。
【0037】
離れた電極の支持部は、筐体の外側に配置される。当該支持部は、それを包囲する周辺ケースによって電気的に絶縁であり、また少なくとも1つの離れた電極を、電流源及び/又は電位差測定手段に接続する。本発明に係る測定装置が設置された場合に電極間の距離を維持するため、離れた電極の支持部は一定の剛性を有し得る。例えば、当該支持部は、この剛性を確実にすることが可能となるような絶縁性の周辺ケースである。絶縁性の周辺ケースは、使用者の邪魔とならないように半硬質とすることが可能であることが有利である。
【0038】
先述及び後に続くことにおいて、「電極」の語は、概して、1つの電極、又は規定の領域において並べて配置される電極の組を指すために用いる。本発明による測定装置は、互いに離間している、送信部/受信部である電極と送信部/受信部である別の電極との間の電流の流れとして理解される、2電極でのバイオインピーダンス測定により、又は互いにある距離を置いた、送信電極の組と受信電極の組との間の電流の流れとして理解される、4電極でのバイオインピーダンス測定により、等しく良好に実施され得るものである。
【0039】
特に後者の場合には、別個の局所的な測定を同時に又は交互に実施する場合に、電極の組が、電流を注入して流れのループを形成して、さらに別の流れのループから電流を受信するように構成され得る。
【0040】
本発明の一態様によれば、電極の組の全ての電極が筐体外に離れており、絶縁性の周辺ケースが互いに電気的に絶縁であるような手法で複数の導電線を収容するものであり、該複数の導電線は、電流源及び/又は電位差測定手段に、離れた電極を互いに独立に接続するように構成される。筐体から遠ざかるように移動させる方向に幾何学的に順々に配置した電極のうち、筐体に最も近い第1の末端の電極及び筐体から最も遠い第2の末端の電極による両末端の電極、ならびに1又は複数の中間電極を特定することが可能である。そして「中間」の語は、電極の幾何学的な位置を指すものであり、その技術的な特徴を指すものではないことに留意されたい。中間電極は、筐体から離れている。
【0041】
本発明の一態様によれば、電極の組は、中間電極のそれぞれを通過する、筐体から、筐体から最も遠い電極まで延在する一次元のマトリックスを形成する。このように形成された電極の組による複数の電極により、いくつかの局所的な電位差測定を実行することができるようになる。電位の局所的な測定はそれぞれ、局所的な流れのループに相当するものであり、これは、電極の組の電極によって段階的に生じさせた最短の流れのループに相当する。互いに独立に電流源に電気的に接続されている電極の配置がこうした冗長性であることにより、段階的に測定を実行することと、胃腸の管腔の内側で、胃又は腸の管腔の内容物の伝導性が電極にわたる電位差の測定の解析を歪める可能性があるような、当該胃腸の管腔への流れのループの侵入が皆無かそれに近いことを確実にしつつ、測定が実行される距離を拡大することとが可能になる。
【0042】
複数の連続する点での測定により、測定の範囲を拡大し、それにより組織の不均一性に左右されることなく、全体的な信頼できる測定を提案できるようになるということが理解される。例として、4つの中間電極を提供することができ、これらは筐体と筐体から最も遠い末端電極との間に配置されるが、これに限定されない。本発明の文脈から逸脱することなく、上記において既に記載したように、閉鎖した電流の流れのループを段階的に生成する限り、様々な数の電極を提案することが可能となるということが理解されるであろう。
【0043】
本発明の一態様によれば、各電極は、その直ぐ隣の電極から均一な距離で離間され得る。言い換えると、電極の組の電極は、2つずつ同一の電極間距離で離間している。
【0044】
本発明の一態様によれば、筐体から離れた電極はそれぞれ、胃又は腸の組織とのインタフェース面を備える。当該装置は、これら電極のインタフェース面が同じ方向及び同じ向きで配向されて、当該インタフェース面の方向及び向きが、インタフェース面が広がる面に対する垂線に対して規定されるように、植え込むことが可能である。当該装置は、電流の流れのループが可能な限り胃又は腸の組織を通過することを確実にするために、電極のインタフェース面が胃又は腸の組織と接触するように植え込むことが可能である。流れのループ全体が、胃又は腸の組織を通過することが有利である。すなわち、実行される電位の測定は、消化管のバイオインピーダンス状態を明らかにするものであるが、組織に特異的なのであって、例えば胃又は腸の壁によって区切られる腔等の隣接環境に対して特異的なのではない。
【0045】
本発明の一態様によれば、電極の組は、筐体と、筐体から最も遠い電極を形成する当該離れた電極との間に筐体外に延在する少なくとも1つの中間電極を備えるものであり、少なくとも1つの中間電極は、導電性の分枝の末端に配置されて、絶縁性のケースによって消化管の組織と絶縁にされており、当該分枝は、絶縁性の周辺ケースを備えた導電線に対して相対的に展開可能である。
【0046】
離れた電極の支持部の導電線及び導電性分枝に電流が流れて、互いに独立である当該装置の電極に供給し、そして胃のバイオインピーダンス値を決定するために検討される流れのループそれぞれを形成することができるようになる。展開可能である導電性分枝により、離れた電極の支持部から電極が出て行くように電極が移動できるようになる。離れた電極の支持部が植え込まれる場合、遠ざかるように電極が移動することで、導電線が接続された装置の筐体の植え込みに次いで離れた電極の支持部の周辺で生じる組織の線維の変性を回避することができるようになる。そして実施される電位差の測定がより頑健になる。作動位置においては、導電性分枝は、離れた電極の支持部に対して実質的に垂直に延在する。この位置を維持するために、導電性分枝は、剛性であることが有利である。
【0047】
導電性分枝は、本発明に係る測定装置の設置の前では、折り畳まれた位置にあるか、又は引き込まれた位置にあり得る。折り畳まれた位置又は引き込まれた位置では、導電性分枝は、離れた電極の支持部に沿って延在する。測定装置が作動位置になると、導電性分枝は、離れた電極の支持部から出て行くように電極を動かすために展開位置になる。導電性分枝の展開能力は、胃の又は腸の組織内での展開に適合させる。すなわち、展開は、導電性分枝とそれが担持する電極とが遭遇し得る抵抗にかかわらず行われなければならない。展開可能であるために、導電性分枝は、例えば展開機構に結合する。例えば、展開機構は、留置機構又はバネ展開機構である。
【0048】
導電性分枝は、それを含有する展開機構のように生体適合性である。
【0049】
本発明の一特徴によれば、筐体と結合する電極の組は、当該電極が筐体内に収容されるか又は筐体外に離れているかにかかわらず、電流源に及び/又は電位差測定手段に電気的に接続した複数の電極を備えるものであって、また測定装置は、電流源及び/又は電位差測定手段との各電極の独立の電気的接続において配置されたスイッチの組を備え、算出モジュールが、当該組のどの電極が胃又は腸の組織を通る電流を送信及び測定することを実施するかを決定するために、各スイッチの開閉を駆動するように構成されている。これら制御されたスイッチを実装することで、考慮にいれる電流の流れのループを形成するために電極のうちのいずれの対を選択するかを選択できるようになる。そしてそれにより、2つの隣接し合う電極間の、必要であれば直ぐ隣接し合う電極間の、一連の局所的な測定を実行するために、次いでこれら局所的な測定値を平均化して全体的な測定値を定めるために、スイッチの一連の開閉をプログラムすることができる。
【0050】
先に記載したように、測定装置は、2電極の測定又は4電極の測定が可能であるように構成できる。2電極による測定では、各電極は、胃又は腸の組織を通過する電流を注入すること及び受信することによって作動するように、電流源及び電位差測定装置の両方に接続される。そして4電極による測定では、一対の電極が、電流源の両端にわたって接続されており、また別の対の電極が、電位差測定手段の両端にわたって接続されており、各電極は、電流の送信又は受信の際にそれぞれ作動することができる。
【0051】
本発明の一態様によれば、測定装置は、胃又は腸の組織に取り着けるための少なくとも1つのデバイスを備える。当該取り付けデバイスは、測定装置を胃又は腸の組織に固定させることができる任意の構成要素に相当する。すなわち固定されると、電極の互いに対する正確な位置が概算ではないことを理由に、消化管のバイオインピーダンスを測定する装置が、信頼できる電位差の測定値を得ることができるようになる。取り付けデバイスは、例えば、測定装置を胃又は腸の組織に取り付けるのに好適であるクランプを備える。
【0052】
本発明の一態様によれば、筐体の少なくとも一方の端部が、胃又は腸の組織に取り付けるためのデバイスを備える。言い換えれば、測定装置は、長手方向の第1の端部に配置される胃もしくは腸の組織に取り付けるためのデバイス、及び/又は長手方向の第2の端部に取り付けるためのデバイスを備え得る。胃又は腸の組織に取り付けるためのデバイスは、電極のインタフェース面と反対側の筐体の各端部上に位置することが有利である。すなわち、電流の流れを妨害しない。
【0053】
本発明の一態様によれば、離れた電極の支持部は、胃又は腸の組織に取り付けるためのデバイスの全て又は一部を備える。すなわち当該取り付けデバイスは、離れた電極の支持部に存在し得る。離れた電極の支持部により担持される電極、すなわち第3の電極及び可能性のある一連の中間電極の向き及び位置が確保され、電位測定の再現性が保証される。離れた電極の支持部が、取り付けデバイスを各電極と一体にすることができる。
【0054】
本発明の一態様によれば、少なくとも導電性分枝が、胃又は腸の組織に取り付けるためのデバイスを備える。導電性分枝を展開することができる場合、この展開を妨害しないように取り付けデバイスを位置させる。当該取り付けデバイス又は固着用デバイスは、導電性分枝の展開後に、胃又は腸の組織に取り付けられる。
【0055】
すなわち、筐体の少なくとも一方の端部及び/又は離れた電極の支持部及び/又は導電性分枝が、胃又は腸の組織に取り付けるためのデバイスを備える。
【0056】
本発明はまた、上記に記載した測定装置を実施する、消化管のうっ血を測定する方法に関するものであり、当該方法は、電位差を測定するステップと、少なくとも1つの電位差の測定値を受信して、電位差の測定値から消化管のバイオインピーダンス値を算出することが可能である算出モジュールにより実施する算出ステップとを含む。
【0057】
電位差を測定するステップは、電流を注入することが可能である電極を介して電流を注入することと、胃又は腸の組織を通る流れのループを通過した電流を受信する電極によって受信することとを含む。
【0058】
算出ステップは、算出モジュールによって実施する。算出モジュールは、電極の組において用いられる電極の数に応じて、電位差の測定値、又は局所的な電位差の測定値を統合する。算出モジュールは、電極の両端にわたって実施される電位差の測定のために、消化管のバイオインピーダンス値を決定する。
【0059】
本発明の一態様によれば、電位差の測定値は、複数の局所的な電位差の測定値の合計に相当し、局所的な電位差の測定値のそれぞれは、測定装置の電極の組のうちの直ぐ隣接し合う一対の電極の、少なくとも1つの電流源への電気的な接続より生じる。測定ステップの間、局所的な電位差の測定値が集められる。局所的な電位差の測定値のそれぞれは、段階的に電極に対してできる限り最短の流れのループに関して測定される電位差に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、以下の図面に関して表示として以下に与える記載を一読することでより明確になることとなる:
【0061】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による消化管のうっ血を測定する装置の概略斜視図である。
図2図2は、作動モードにある、図1に示す測定装置のうち植え込まれた構成要素の図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態による測定装置のうち、植え込むことを意図した構成要素の概略斜視図である。
図4図4は、作動モードにある、図3に示す測定装置のうち植え込まれた構成要素の図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態による測定装置のうち、植え込むことを意図した構成要素の概略斜視図である。
図6図6は、作動モードにある、図3に示す測定装置のうち植え込まれた構成要素の図である。
図7図7は、本発明の第4の実施形態による測定装置のうち、植え込まれた構成要素の原位置(in situ)での図である。
図8図8は、本発明の第5の実施形態による測定装置のうち、植え込まれた構成要素の原位置(in situ)での図である。
図9図9は、本発明の第6の実施形態による測定装置のうち、植え込むことを意図した構成要素の概略斜視図である。
図10図10は、作動モードにある、図9に示す測定装置のうち植え込まれた構成要素の図である。
図11図11は、図9に示す測定装置のうち、植え込むことを意図した構成要素の設置方法を記載している。
図12図12は、図9に示す測定装置のうち、植え込むことを意図した構成要素の設置方法を記載している。
図13図13は、本発明の測定装置の正しい作動のための適切な電気接続図を示している。
図14図14は、本発明の測定装置の正しい作動のための適切な電気接続図を示している。
図15図15は、本発明の測定装置の正しい作動のための適切な電気接続図を示している。
図16図16は、所謂、2電極測定の作動を詳細に示している。
図17図17は、所謂、4電極測定の作動を詳細に示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図面は、その実施について詳細に本発明を説明しているが、これら図面はもちろん、必要に応じて本発明をより良好に規定するために用いることができるということを、まずはじめに留意されたい。
【0063】
その他の説明において、「長手方向の」又は「横方向の」、「上の」、「下の」、「前」、「後」の呼び方は、本発明による消化管のうっ血を測定する装置の筐体の向きを指す。長手方向は、それが延在する筐体の主軸に相当する一方で、横方向の向きは、共存する直線、すなわち、特に筐体の長手方向軸に対して垂直である、長手方向と交差する、当該共存する直線に相当する。
【0064】
はじめに図1を参照すると、使用者の消化管のうっ血を測定するための装置1を示している。測定装置1は、少なくとも1つの筐体2と、該筐体2に接続する電極の組3と、当該筐体内に収容される電流源30であって、電極の組3の各電極がそれぞれ独立に電気的に接続される電流源30とを備える。測定装置1は、電流源のように概略的に示す、電位差を測定する手段、例えば電圧計31をさらに備える。
【0065】
測定装置は、測定装置が植え込まれる消化管の構造、形状又は形態を示す機械的信号を記録するように構成されたセンサをさらに備える。図示した例によれば、センサは、筐体内に収容される加速度計100である。加速度計100は、筐体内において実質的中央の位置に、電流源30の近傍に、配置される。
【0066】
測定装置1はまた、消化管のバイオインピーダンス値と、ここでは加速度計100であるセンサにより測定される信号値とを算出するために、電極の組3のうちの2電極間で測定された電位差を受信することが可能である算出モジュール5を備える。
【0067】
図1に示す第1の実施形態においては、電極の組3は、筐体の体積内に配置される少なくとも2つの電極6、7を備え、そしてそれらは、測定装置1が導電媒質内に、より詳細には図2に示すように使用者の導電組織内に配置されるときに、電流源30にそれぞれ電気的に接続することによって、閉じた流れのループの形成に関与する。
【0068】
筐体2は、外面8を有する閉じた構造である。筐体2は長手方向軸Xに沿ってその最大寸法が延在する。例えば、長手方向軸Xに沿って測定した筐体2は、2~4cmと測定される。
【0069】
筐体2は、長手方向の第1の端部9と、長手方向の第1の端部9と反対側の、長手方向の第2の端部10とを備える。図1の実施形態においては、電極の組3の第1の電極6が、筐体2の長手方向の第1の端部9に配置されて、また電極の組3の第2の電極7が、筐体2の長手方向の第2の端部10に配置される。この実施形態においては、第1の電極6及び第2の電極7は、筐体2の外面8に接続しており、それぞれが長手方向の第1の端部9及び長手方向の第2の端部10を覆う。電極は、読者に見やすくするために灰色で示している。
【0070】
筐体2は、絶縁材料でできているため、筐体2自体は導電性でない。
【0071】
電極の組3の各電極は、使用者の胃又は腸の組織と接触することを意図したインタフェース面を有する。電極の組3の各電極は、電流注入用の電極及び/又は測定用電極として機能することができ、一方の電極から別の電極までの電位差を測定し、一方で、一方の電極から他方の電極まで流れて流れのループを閉じる電流が胃又は腸の組織を通過できるようになる。電極の組3のうちの同一の電極が、ここに示す実施形態において送信及び受信であるこれら2つの機能を同時に有することができる。しかしながら、これら機能はまた、本発明の範囲から逸脱することなく交互に行うことも可能である。
【0072】
筐体2は、生体適合性材料で作製される。筐体2は平行六面体形状であり、また植え込んだ際にその周囲にある組織を保護するように圧延された縁部11を備える。筐体2は、その使用に適合した任意の形状をとることが可能である。筐体2は、周囲にある組織への影響を軽減してその位置決めを容易にするために、長方形形状であることが有利である。
【0073】
ここでは、算出モジュール5は、筐体2に対して外部に置くように示している。算出モジュール5は、測定した電位を受信するために通信手段を備える。例えば、算出モジュール5は受信部を備える。次いで、電極の組3は、送信部に接続されており、電位差を測定する手段によって測定された情報を波12で示しているように算出モジュール5に送信することができるようになる。ここで送信部は、筐体2内に備えられ、電極の組3と接続する。図示していない変形例では、筐体内に組み込まれるようにした算出モジュールを提供することができる。
【0074】
図2は、消化管のうっ血を測定する方法の間実施される、消化管のうっ血を測定するための装置1であって、ここでは粘膜下層に植え込まれる胃又は腸のデバイスである測定装置1を示している。この植込みに限定されるものではなく、本発明の装置は、消化管のその他の組織内に植え込むことが可能であることが理解される。
【0075】
電極の組3は、電流源30が起動しているときに電流の少なくとも流れのループ13を生成するように構成されている。そして当該流れのループ13は、図2に示すように使用者の胃腸管組織14を通って、少なくとも、1つの電極から別の電極へ循環する。この実施形態において、筐体2及び電極の組3は、当該組織14内に配置される。特に、筐体2及び電極の組3は、使用者の組織14の粘膜下組織15内に組み込まれる。すなわち、流れのループ13は、少なくとも、使用者の組織14の粘膜下組織15を通って循環する。
【0076】
一実施形態においては、流れのループ13は、組織14の粘膜下組織15及び粘膜16を通過するものであり、当該粘膜16は、組織14によって区切られる腔17から粘膜下組織15を隔離し、そして組織14内に含まれている。電極の組3の位置に依存して、流れのループ13の一部は、組織14の外へ、例えば胃腸管組織14によって区切られる腔17内に、流れるように発生し得る。
【0077】
筐体2及び電極の組3は、電極の組3の位置決めにより少なくとも胃腸管14の組織を通過する閉じた流れのループ13の形成が可能である以上、本発明の範囲から逸脱することなく、別個に配置することができることを理解されたい。
【0078】
測定装置1によって実施される、消化管のうっ血を測定する方法は、電位差を測定する少なくとも1つのステップと、算出ステップとを含む。当該方法はまた、胃壁の構造的又は形態的な特性の機械的測定と、特に加速度計手段100による、心臓ショックの後の波の測定とを含む。
【0079】
電位差を測定するステップの間、電極の組3のうちの少なくとも1つの電極、ここでは第1の電極6が、電流源30よりの電流を粘膜又は粘膜下層内に送信するが、この電流は、電極の組のうちの別の電極、ここでは第2の電極7の方へ向けて、胃腸管の組織14を通って引き込まれる。当該電流は、流れのループ13が閉じるように最短のルートをとる。
【0080】
電位差測定手段31を形成する電圧計は、一方の電極からもう一方の電極までの電位差の測定値を決定するように電流源の両端にわたって接続され、この電位差の測定値は、胃組織を介した電流の循環し易さを反映しており、したがってこれら組織における液体の存在を反映するものであるため、それから消化管のバイオインピーダンスの状態を推定することが可能である。
【0081】
受信した電位差の情報は、ここでは本実施形態の筐体内に内在化された送信手段によって、算出モジュール5に送信される。
【0082】
算出ステップは、ここでは示さないが図1で見られる外部に置かれた算出モジュール5によって実施する。電位差を測定することにより、算出モジュール5が消化管のバイオインピーダンス値を算出する。そしてこの結果は、使用者の消化管のバイオインピーダンスの状態に応じて情報価値があり、例えば使用者又は適切な医療従事者に使用者の健康及び例えば使用者の心不全のあり得る状態に関する情報を送信できるようになる。使用者の消化管のバイオインピーダンスの測定値の使用は、使用者の心不全の状態に関する情報を提供することに制限されないこと、及び使用者の健康状態に関する他の情報を特徴づけることができるようになり得るということに留意されたい。
【0083】
追加的に及び同時にバイオインピーダンス測定が提供される機械的測定、特に加速度測定は、測定期間中に生じる心臓ショックに応じて実行する。加速度計は、胃壁を通じて伝えられる、心臓ショックに起因する波を定量化することができる。それにより取得された機械的信号の経時的な変化は、特に、その構成に左右されて同じように波を伝えるものではない胃壁の構造的な変化に起因するものである。
【0084】
加速度計により集めた値は、心臓ショックに応じた胃壁の加速度測定的特徴を抽出する算出モジュールに送信される。
【0085】
次いで、先に記載した算出ステップは、算出モジュールにより実施されるが、取得した機械的信号を考慮に入れる。同じ算出モジュールを用いて、センサ及び電極により取得した電気的及び機械的データを回収及び処理することが有利である。
【0086】
加速度測定的信号の少なくとも1つの特性の測定に基づいて、算出モジュール5が、バイオインピーダンス測定がなされる領域と同じ領域における消化管の構造的又は形態的な特性を表す値を算出する。次いで、これら2つの値を組み合わせて、特にこれら値の、それらに関連し且つ算出モジュールのメモリ内に格納される閾値との比較の組み合わせが、使用者の消化管内の液体の存在に応じて情報価値があり、また例えば使用者又は適切な医療従事者に使用者の健康状態及び例えば使用者の心不全のあり得る状態に関する情報を送信できるようになる。
【0087】
図3は、測定装置1が、図1に記載のものとは以下のとおり異なるものである実施形態を示している。測定装置1は、電極の組3の中に、筐体2に対して離れている第3の電極18と呼ぶ電極を備える。第1の電極、第2の電極及び第3の電極は、第1の電極6と第3の電極18との間の組織14を通って全体的として長い距離を進行する電流供給ループの伝達に関与するように、互いに独立に電流源30に電気的に接続される。測定は、筐体2の長手方向の寸法ではなく、第1の電極6から第3の電極18までの距離にわたってなされる。より詳細には、図4で見ることができるように、第1の電極から第3の電極への全体的な距離を、第1の電極と第2の電極との間に延在する第1の流れのループ13が、及び第2の電極と筐体からある距離を置いた第3の電極との間に延在する第2の流れのループ13が進行する。当該ループのそれぞれに対して電位を調べることで、第1の電極から第3の電極までの距離にわたる組織の伝導性を全体的に考慮することができるようになることが理解されるであろう。
【0088】
本実施形態においては、第1の電極6及び第2の電極7は、筐体2の外面8に接続する。電極の組3の各電極は、同じ方向に配向され組織14と接触することが意図される、インタフェース面19を有する。各インタフェース面19の垂線は互いに平行であり、さらにインタフェース面19は、組織14に対して、例えば粘膜下組織15に対して、同一の配向である。インタフェース面19は、インタフェース面19の相対的な位置が考慮されている限り、任意の形状のペレット形態をとる。
【0089】
ここで第3の電極18は、筐体2から離れていることを除き、第1の電極6及び第2の電極7と一致している。筐体2に対して外側にある離れた電極の支持部20は、この筐体からある距離を置いて少なくとも第3の電極18を支持するように、筐体の長手方向の第2の端部から延在する。第3の電極18は、他の電極とは独立に電流源30に電気的に接続する。これを達成するために、離れた電極の支持部20が、筐体から第3の電極18に延在する少なくとも1つの導電線と絶縁性の周辺ケース21とを備える。
【0090】
ここでまた測定装置は、加速度計100を備えるものであり、これは、互いに最も離れた2つの電極間の距離に対してできる限り中央の位置を取るために、この場合は第2の電極7に近づくように寄せられているということに留意されたい。先に記載した第1の実施形態によれば、バイオインピーダンス測定が実施されるこの胃の管の領域に対して機械的信号の測定を行うものである胃の管の領域を中心にすることが求められる。
【0091】
図4は特に、第2の電極7及び第3の電極18により生じた流れのループ13を示している。図4はまた、破線で示しているように、離れた電極の支持部20内の導電線に沿って第3の電極の方へ向かう電流の流れも示している。図4に示す他の構成要素に関しては、図2で与えた記載が、変更すべきところは変更して参照され得る。すなわち、図4に記載の実施形態に係る発明の実施及び理解のために、図2を参照し得る。
【0092】
電流は、電極の組3の3箇所において、すなわち電極のそれぞれにおいて、電流源から送信されるため、互いに電気的に絶縁である。図示するように、第1の電極6と第2の電極7との距離と比較して、第2の電極7と第3の電極18との電極間の距離の方がより大きく隔たれている。したがって第2の電極7と第3の電極18との間で生じた流れのループ13は、第1の電極6と第2の電極7との間で生じたループよりも大きく、当該電流は、第2の電極7と第3の電極18を接続するようにより長い距離を移動する。図示するような段階的な測定は、流れのループ13が、電極の組3から極端に離れて腔17を通過するのを防ぐことができるようになるということが理解されるであろう。すなわち電極は、内部で胃液が電気的な短絡を形成する可能性がある腔17を回避する流れのループ13を形成することができるように、互いに対して相対的に位置決め及び配置される。
【0093】
当該測定装置1は、電位差測定手段によって、直ぐ隣接し合う2つの電極間で行われる2箇所の局所的な電位差の測定値を生成する。消化管のバイオインピーダンス値を算出するために用いる電位差の測定値は、電位差のこれら2箇所の局所的な測定値の合計に相当するが、これは電位差の測定中に局所的に注入される電流が、1つの局所的な測定から別のものまで同一であるからである。あるいは、局所的な電位差の測定値からそれぞれ算出される、局所的なバイオインピーダンス値を決定することが提供され得る。そしてこれら局所的なバイオインピーダンス値を合算して、より全体にわたる、したがってより信頼性のある程度にわたる測定に相当する消化管のバイオインピーダンス値を決定することが可能である。
【0094】
図5は、離れた電極の支持部20が、筐体の長手方向の第2の端部と当該支持部20の開放端に配置される第3の筐体18との間において、1又は複数の中間電極23の支持として機能するものである第3の実施形態を示している。一連の中間電極に関することを除き、図3に表す第2の実施形態による測定装置1の記載が、必要な変更を加えて図5の記載に適用され、また本発明の実施及び理解のために、それを参照し得る。
【0095】
少なくとも2つの電極が筐体外に離れており、少なくとも第3の電極18が支持部20の末端に配置され且つ少なくとも1つの中間電極が第3の電極と筐体との間の当該支持部上に配置されているこの実施形態及び以下の実施形態において、例えば図9から12に示すように、離れた電極の全てと、それにより筐体外に延在する電極の全てとに対して供給がなされ得る。
【0096】
この場合、一連の中間電極は、4つの中間電極23を備える。第3の電極18と同様に、中間電極23は、離れた電極の支持部20に接続する。離れた電極の支持部20は、ちょうど第3の電極18に対するように、一連の中間電極の電極を直接支持する。
【0097】
各中間電極23は、ここでは、電流の送信とそれと同時の電気信号の回収との両方を行い、電位の測定が可能になるように構成される。これにおいて、電極の組3の全ての電極は、中間電極23も含めて同様とすることが可能である。
【0098】
ここで、各中間電極23は、一連の中間電極22から等間隔で離間する。測定装置1全体として、電極の組3の各電極は、当該同じ距離で直ぐ隣の電極から離間する。
【0099】
各中間電極23は、他の電極に対して独立に、電流源30及び/又は電位差測定手段に対して電気的に接続されている。上記に記載したように、これら電気的接続は、特に互いに独立に電極を電流源にそれぞれ接続する導電線によってなされる。
【0100】
図6は、粘膜下組織15に植え込まれた図5に示した測定装置1を示している。図6に示す他の構成要素に関しては、図2で与えた記載が、変更すべきところは変更して参照され得る。すなわち、図6に記載の実施形態に係る発明の実施及び理解のために、図2が参照され得る。
【0101】
本実施形態においては、ここでは等しいものである、電極の組3の直ぐ隣接し合う電極を離間する距離が、電極の組3のうちの2つの隣接し合う電極に関してそれぞれ閉じた局所的な流れのループ13を段階的に形成することを可能にする。電極の組3の電極は、局所的な流れのループ13が電極の組3の隣接組織の一方又は他方を通るようにいくつかの方向に送信できる。
【0102】
すなわち、本発明による消化管のうっ血を測定する方法において、バイオインピーダンス測定値は、複数の局所的な電位差の測定値を合算することによって算出される全体的な電位差の測定値を介して決定することができるが、これは、電位差の測定中に局所的に注入される電流が、1つの局所的な測定から別の測定まで同一であるからであり、局所的な電位差の測定値のそれぞれは、測定装置1の電極の対の両端にわたってなされる測定値から得られる。あるいは、局所的な電位差の測定値からそれぞれ算出される、局所的なバイオインピーダンス値を決定することが提供され得る。そしてこれら局所的なバイオインピーダンス値を合算して、より全体にわたる、したがってより信頼性のある程度にわたる測定に相当する消化管のバイオインピーダンス値を決定することが可能である。
【0103】
図7及び図8は、第3の電極18及び一連の中間電極のうちの中間電極23がそれぞれ、第3の電極18及び中間電極23のインタフェース面19が同じ方向及び同じ向きで配向されるように、使用者の身体の胃腸管の組織14とのインタフェース面19を備えるものである実施形態を示している。当該方向及び向きは、先に記載したように各インタフェース面19に広がる面に対する垂線に対して決定される。特に、第1の電極6及び第2の電極7のインタフェース面19もまた、当該同じ方向に配向される。測定装置1を配置する際、電極の組3の各インタフェース19に関して、特定の様式で、胃腸管の組織14の中心に向けられるように位置させることを目指すことが可能である。この構成により、胃腸管の組織14、ここでは粘膜下組織15を介して、それらの全体に局所的な流れのループ13が移動可能になる。電極の組3においては、各インタフェース19は、反対に電気的に絶縁である面とすることが可能であり、組織に注入される電流を特定の方向に定めてそれにより流れのループ13が電極と反対の装置の側に形成されることを回避することができるようになる。例えば、電気的に絶縁である面はシリコーンで覆われている。
【0104】
図7の例においては、一連の中間電極23及び第3の電極18が、粘膜下組織15内に植え込まれる。電極の組3の各インタフェース面19は、粘膜16の側ではなく、粘膜下組織15の中心に面するように配置される。
【0105】
図8の例においては、電極の組3の各インタフェース面19は、胃腔17の反対側の胃の組織14の表面上に配置される。図8の説明は概略的であるので、直前に記載したとおり電極が消化管の組織に対して胃腔17の反対側に配置される以上、さらなる組織の層が、粘膜下組織15と電極のインタフェース面との間に位置し得ることとが理解されるであろう。言い換えると、電極の組3の各インタフェース面19が、当該胃の組織14の中心の方に向けられるように位置決めされる以上、電極の組3は、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の他の胃の組織14と接触するように配置され得る。
【0106】
図8に記載のこの構成を可能にし、電極の組3を適切な場所に維持するために、測定装置1は、胃腸管の組織14に取り付けるためのデバイス24を少なくとも1つ備える。ここで筐体2の両端部、すなわち長手方向の第1の端部9及び長手方向の第2の端部10が組織14に取り付けるためのデバイス24を備え、第1の電極6及び第2の電極7の位置を維持することができるようになる。1又は複数の取り付けデバイスは、離れた電極の支持部20上に分配され得る。取り付けデバイス24は、筐体2から最も遠い電極である第3の電極18を保持するように、少なくとも第3の電極18の近傍に配置されることが有利である。
【0107】
当該取り付けデバイスの利点は、他の実施形態のデバイスと同様に強度があるということ、及びその利点は、筐体又は導電線に当該取り付けデバイスを備える本発明により提供され得ることが理解されるであろう。
【0108】
図9は、第3の電極18及び中間電極23が、離れた電極の支持部20の延在方向に対して横方向に離れている本発明の実施形態を示している。第3の電極18及び中間電極23はそれぞれ、導電性分枝25によって、離れた電極の支持部20と接続する。絶縁性の周辺ケース21は、導電性分枝25のそれぞれを覆うようにも構成されており、又は各分枝に対して特有な絶縁ケースが絶縁性の周辺ケース21に接続されている。すなわち電流は、離れた電極の支持部20を介して、横方向に離れた電極のそれぞれまで電流源30から流れることが可能であるため、この配置により、全ての電極が互いに独立に電流源に接続することを妨げられることがないようになる。
【0109】
上記に記載したように、本実施形態は、特に、先に筐体内に存在していた第1の電極及び第2の電極が、ここでは除去されているものでもある。これにより、電極の組は離され、電流源によりそれぞれ供給される全ての電極は、筐体から距離を置いて配置される。少なくとも2つの電極が筐体の外側に延在する先述の実施形態もまた、筐体内に組み込まれた電極を含まずにこのように配置され得るということが理解されるであろう。
【0110】
図10は、使用者の胃腸管の組織14に植え込まれる、原位置(in situ)での消化管のうっ血を測定する装置1を示している。図8に示すように、電極の組3の各電極は、粘膜下組織15内において局所的な流れのループ13を生成する。局所的な流れのループ13は、離れた電極の支持部20から離れるように、したがって離れた電極の支持部20の近傍に位置する粘膜16から離れるように、図8に示したループよりも横方向に離れている。その後局所的な流れのループ13は、健常な組織、又は離れた電極の支持部20の植え込みにより結果的に生じ得る線維様変性による影響がほとんどない組織を通過する。すなわち、局所的な電位差の測定は、胃腸管の組織14の線維様変性により生じ得る人為的な現象に左右されない。
【0111】
図11及び図12は、導電性分枝25が胃腸管の組織14内で展開可能である測定装置1を示している。図9に与える記載が、変更すべきところは変更して図11及び12の記載に適用されて、また本発明の実施及び理解のために、図9の記載が参照され得る。
【0112】
図11及び12は、導電性分枝25の展開可能性についての実施形態を示す。例えば、胃腸管の組織14内における離れた電極の支持部20の植え込みの間、展開可能な導電性分枝25が用いられる。そして導電性分枝25の展開可能性により、電極が、胃の組織を断裂させることなく電極の組3から遠ざかるように移動できるようになり、したがって胃腸管の組織14に対する影響が小さい。展開可能な導電性分枝25はまた、胃腸管の組織14において、又はその外側表面8上で、電極を配向させるのに有用であり得る。
【0113】
これにより、挿入の際に線維を断裂すること及び電極周辺の線維の再形成を再び生じることの影響があり得るといった、既に展開された分枝を備える装置を植え込むことによる欠点が回避される。
【0114】
消化管のうっ血を測定する装置1を使用者に設置するとき、導電性分枝25が、測定装置1の設置中に組織に食い込む傾向がある。したがって、図11に示すように離れた電極の支持部20を保護ケース26により覆うことができる。この保護ケース26は、測定装置1が配置されたら取り外すこととなる。保護ケース26は、図12に示すように取り外す。
【0115】
図11に示すように、離れた電極の支持部20が保護ケース26で覆われているとき、導電性分枝25は、好ましくは、より小さい体積を占有するように離れた電極の支持部20に沿って折り畳まれ又は引き込まれた位置に存在して、当該分枝の損傷を防止する。
【0116】
図12に示すように、離れた電極の支持部20のカバーを外して保護ケース26が取り外されるとき、導電性分枝25を、太線の矢印28で示すように延ばした位置まで移動する。こうするために、ここでは図示しない展開機構を、例えば保護ケース26が導電性分枝25の展開をもはや抑制しなくなったときに自動的に作動する。
【0117】
保護ケース26は、離れた電極の支持部20が実装のために位置決めされたら取り外される。好ましくは、保護ケース26は、矢印27で示すように筐体2の挿入方向とは反対の方向に取り外され、それによって筐体2に挿入されるときに使用者に形成された経路が用いられる。
【0118】
図13図14及び図15は、本発明の測定装置の正しい作動のための適切な電気接続図を示している。
【0119】
図13は、電流源と電位差測定手段とを統合している制御チップをそれぞれが形成する複数のサブモジュール300、301、302を備える制御ユニットを示している。各サブモジュール300、301、302は、2つの電極に電気的に接続しており、それぞれが接続する電極のうちの少なくとも1つはまた、別のサブモジュール300、301、302に接続されている状態である。例として、第1のサブモジュール301は、第1の電極6及び第2の電極7に接続し、第2のサブモジュール302は同じ第2の電極7及び中間電極23に接続する。第1のサブモジュール301において電流が発生するとき、スイッチ32が、第2の電極7を第1のサブモジュール301に接続して、第1の電極6と第2の電極7との間にある第1のサブモジュール301において電位差の測定が行われることを確実にする。次いで第2のサブモジュール302において電流が発生するとき、スイッチ33が、第2の電極7をこのときは第2のサブモジュール302に接続して、隣の電極、すなわちここでは中間電極23も第2のサブモジュール302に接続して、次いで第2の電極7と中間電極23との間にある第2のサブモジュール302において電位差の測定が行われることを確実にする。
【0120】
図14及び図15は、特に電位差の全体的な測定値を得ることができるようになる、複数の局所的測定の文脈での、2電極又は4電極による測定の変形例を示している。
【0121】
図14においては、例えば電流源30におけるスイッチの制御が示されているが、これにより2つの直ぐ隣接し合う電極を含めて段階的に流れのループを形成できるようになる。ここで、2電極による局所的な測定について述べることとする。より詳細には、これら電極の接続を図16に示す。筐体から第3の電極が配置された電極の支持部の開放端まで、N個の電極23、18を備える一連の電極に関して、スイッチを制御して電極nに電流を供給するとき、スイッチが、直ぐ隣の電極n+1を同一の電流源に電気的に接続するように駆動するため、関連の電圧計が、電位差についての情報を回収し、その後この同一のスイッチがこのときは電極n+1と直ぐ隣の電極n+2とを同一の電流源に接続するように駆動するため、関連の電圧計が、電位差に関する別の情報項目を回収する、といったことを同様に段階的に行い、電位差に関する情報を全て回収するということが理解される。
【0122】
図15は、本発明に係る装置の変形例を示しており、当該装置においては、4電極による局所的な測定が、4電極の組により実施され、それはスイッチの適切な制御により段階的に形成することが可能である。より詳細には、これら電極の組の接続を図17に示す。当該スイッチは、電極が、2電極の組において4個ずつで作動されるように制御される。全体的な測定は、複数の局所的な測定を考慮に入れて再び行われる。
【0123】
先において言及したように、図16は、2電極による測定を可能にするアセンブリを示しており、電位差測定手段31が、ここでは粘膜下組織15内に埋め込まれた電極23がそれぞれ接続している電圧源30の両端にわたって接続している。そして図17には、図16に示すものとは異なる構成を示しており、当該装置では4電極による測定が可能であり、粘膜下組織15内に流れのループを形成する当該源に接続された一対の電極と、電位差測定手段31に直接接続される一対の電極とを備える。4電極測定により、電極に起因する接触インピーダンスが最小化される。
【0124】
これまでに記載及び示した様々な実施形態は、これらアセンブリのうちの一方又は他方により実施することが可能である。
【0125】
先の記載を一読することにより、本発明は、信頼性のある心不全の兆候となる肺浮腫の検出を行うように構成された消化管のうっ血を測定する装置を提案するということが理解されるであろう。本測定装置は、特に使用者の胃の組織内に又は胃の組織に対して植え込むことを意図しているが、危険な状態にある使用者の定期的な観察を容易にする。組織特異性及び使用される電極の位置安定性を理由に、本発明の種々の実施形態では、消化管のバイオインピーダンス測定の有効性が増す。さらに、バイオインピーダンス測定を別個の追加的な機械的測定と組み合わせることにより、胃壁の形態又は構造の変化の兆候を強調することができ、胃壁の過剰な水分含量に関する解析をより信頼性のあるものにすることができるようになる。
【0126】
しかしながら本発明は、本明細書において記載して示した手段及び構成に限定され得ないものであり、またそれは、任意の均等な手段又は構成まで、及び当該手段を用いた任意の技術的組み合わせまで拡張される。特に、測定装置の形状は、測定装置として終局的に本明細書に記載のものと同じ機能性を満たす限り、発明を妨げることなく変形可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】