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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】鉛含有廃棄物のリサイクル
(51)【国際特許分類】
   C22B 13/00 20060101AFI20220308BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20220308BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20220308BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20220308BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20220308BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20220308BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C22B13/00 101
C22B7/00 C
C22B7/02 B
C22B3/04
C22B1/02
C22B3/44 101Z
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542233
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 GB2020050132
(87)【国際公開番号】W WO2020152457
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】1900833.3
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521320830
【氏名又は名称】アウレリウス エンヴァイロメンタル リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508311226
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】セルヴァラージ ヴィマルナス
(72)【発明者】
【氏名】フォックス エイサン ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ マルセル
(72)【発明者】
【氏名】クマー ラマチャンドラン ヴァサント
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ロバート チー ユン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA20
4K001BA14
4K001BA22
4K001CA15
4K001DB02
4K001DB05
4K001DB22
5H031AA01
5H031EE01
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH08
5H031RR02
(57)【要約】
鉛含有廃棄物をリサイクルする方法は、(a)第1鉛塩の溶液を形成するために、第1酸の水溶液に鉛含有廃棄物を溶解する工程と、(b)鉛枯渇溶液と、第2鉛塩の沈殿物と、を形成するために、第1鉛塩の溶液に第2酸を加える工程と、(c)第2鉛塩の沈殿物を鉛粉(leady oxide)に変化させる工程と、を含み、第1鉛塩は、第2鉛塩よりも水に対して高い溶解度を有する。同方法は、使用済鉛酸バッテリペーストをリサイクルするために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛含有廃棄物をリサイクルする方法であって、
(a)第1鉛塩の溶液を形成するために、第1酸の水溶液に前記鉛含有廃棄物を溶解する工程と、
(b)鉛枯渇溶液と、第2鉛塩の沈殿物と、を形成するために、前記第1鉛塩の前記溶液に第2酸を加える工程と、
(c)前記第2鉛塩の前記沈殿物を鉛粉に変化させる工程と、
を含み、
前記第1鉛塩は、前記第2鉛塩よりも水に対して高い溶解度を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記鉛含有廃棄物は、PbとPbOとPbCOのうちの少なくとも1つ、好ましくはPbOとPbCOのうちの少なくとも1つ、より好ましくは、PbOとPbCOのうちの少なくとも1つと組み合わせてPbを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記鉛含有廃棄物は、鉛酸バッテリペーストまたは電気アーク炉ダストに由来する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1鉛塩は、水に対して少なくとも100g/L、好ましくは少なくとも200g/L、より好ましくは少なくとも300g/Lの溶解度を有し、
前記第2鉛塩は、水に対して少なくとも100g/L、好ましくは少なくとも200g/L、より好ましくは少なくとも400g/Lだけ前記第1鉛塩よりも低い溶解度を有し、および/または、
前記第2鉛塩は、水に対して最高で10g/Lまで、好ましくは最高で1g/Lまで、より好ましくは最高で0.1g/Lまでの溶解度を有する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1酸は、有機酸、好ましくは酢酸である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記鉛含有廃棄物は、
0.1mol/Lから7mol/Lまで、好ましくは0.25mol/Lから3mol/Lまで、より好ましくは0.5mol/Lから1.5mol/Lまでのモル濃度を有する前記第1酸の前記水溶液に溶解し、
前記第1酸の前記水溶液1リットルあたり10gから650gまで、好ましくは50gから300gまで、より好ましくは80gから150gまでの廃棄物の量において前記第1酸の前記水溶液に溶解し、
0℃から90℃まで、好ましくは10℃から50℃まで、より好ましくは15℃から30℃までの温度において前記第1酸の前記水溶液に溶解し、
常圧において前記第1酸の前記水溶液に溶解し、
1分から120分まで、好ましくは5分から60分まで、より好ましくは15分から45分までの時間において前記第1酸の前記水溶液に溶解し、および/または、
アジテーション下において前記第1酸の前記水溶液に溶解する、
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記鉛含有廃棄物は、レドックス試薬、例えば、過酸化水素、金属水素化物、水素ガス、無機塩、または有機レドックス試薬など、好ましくは過酸化水素と接触する、
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記鉛含有廃棄物は、前記第1酸の前記水溶液に対して不溶性である材料を含み、
例えば、ろ過により、前記第1鉛塩の前記溶液から不溶性材料を回収する工程、
を含む、
請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記不溶性材料は、
例えば、硫酸バリウムなどの金属化合物と、
例えば、カーボンブラック、グラフェン、および/または、カーボンナノチューブなどの炭素と、
例えば、リグノスルホン酸塩などの繊維と、
のうちの1種または複数種を含む、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第2酸は、有機酸、好ましくはクエン酸である、
請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第2酸は、
前記第2鉛塩の形成に必要な化学量論量の60%から100%まで、好ましくは75%から98%まで、より好ましくは80%から95%までの量において前記第1鉛塩の前記溶液に加えられ、
-10℃から80℃まで、好ましくは0℃から40℃まで、より好ましくは5℃から30℃までの温度において前記第1鉛塩の前記溶液に加えられ、
常圧において前記第1鉛塩の前記溶液に加えられ、
2分から120分まで、好ましくは5分から60分まで、より好ましくは10分から45分までの時間において前記第1鉛塩の前記溶液に加えられ、および/または、
アジテーション下において前記第1鉛塩の前記溶液に加えられる、
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2鉛塩の前記沈殿物は、例えば、ろ過により、前記鉛枯渇溶液から分離される、
請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記鉛枯渇溶液は、リサイクルされ、前記(a)工程において前記第1酸の前記水溶液として使用される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記鉛枯渇溶液は、残留鉛、好ましくは溶解した形態の前記第1鉛塩を含む、
請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第2鉛塩の前記沈殿物は、焼成により鉛粉へと変化する、
請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記焼成は、
250℃から1000℃まで、好ましくは300℃から600℃まで、より好ましくは325℃から450℃までの温度において行われ、
0.01気圧から5気圧まで、好ましくは0.05気圧から1気圧まで、より好ましくは0.1気圧から0.5気圧までの酸素の分圧において行われ、および/または、
10分から6時間まで、好ましくは20分から2時間まで、より好ましくは30分から1時間までの時間において行われる、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記鉛粉は、少なくとも99重量%、好ましくは少なくとも99.5重量%、より好ましくは少なくとも99.9重量%の総量のPbOとPbとを含む、
請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記鉛粉をバッテリプレートへと加工する工程と、
任意で、前記バッテリプレートを鉛酸バッテリに組み入れる工程と、
を含む、
請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記(a)工程において使用される前記鉛含有廃棄物は、実質的にPbSOを含まない、
請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記鉛含有廃棄物は、PbSOを含み、
前記(a)工程において使用される前の前記鉛含有廃棄物が脱硫される前処理工程、
を含む、
請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記前処理工程は、
前記鉛含有廃棄物を、アルカリ金属水酸化物などの塩基、例えば、NaOH、KOH、またはLiOHなど、好ましくは、前記鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり1.5モルから3モルまで、好ましくは1.75モルから2.5モルまで、より好ましくは2モルから2.25モルまでの量の塩基、と接触させる工程、あるいは、
前記鉛含有廃棄物を、アルカリ金属炭酸塩などの炭酸塩、例えば、NaCO、KCO、またはLiCOなど、好ましくは、前記鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり0.75モルから1.5モルまで、好ましくは0.85モルから1.25モルまで、より好ましくは1モルから1.1モルまでの量の炭酸塩、と接触させる工程、
を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記鉛含有廃棄物中の前記PbSOの含有量が目標レベル、例えば、最高で500重量ppmまで、好ましくは最高で300重量ppmまで、より好ましくは最高で100重量ppmまでの目標レベルに減少するまで、前記前処理工程をモニタリングする工程を含む、
請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
前記前処理工程をモニタリングする前記工程は、前記鉛含有廃棄物中の前記PbSOの量に相関するパラメータをモニタリングすることにより、間接的に実施される、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載の方法により得られる鉛粉材料。
【請求項25】
請求項24記載の鉛粉材料を含むバッテリプレート、または請求項24記載の鉛粉材料を含むバッテリプレートを組み入れた鉛酸バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛含有廃棄物のリサイクルに関する。特に、本発明は、鉛含有廃棄物が鉛粉(leady oxide)へとリサイクルされる方法に関する。同方法は、鉛酸バッテリペーストのリサイクルにとって特に好適である。
【背景技術】
【0002】
鉛酸バッテリは、それらの再充電可能な性質と比較的低いコストにより、自動車および他の産業において広く使用されている。
【0003】
放電の際、バッテリプレート中に存在する鉛と二酸化鉛は、硫酸鉛へと変化する。バッテリの再充電は、硫酸鉛を鉛と二酸化鉛へと戻す。鉛酸バッテリは、再充電可能であるが、時間が経つにつれて、硫酸鉛は、バッテリプレートにおいて大きな不動態化結晶として結晶化し得て、その結果、硫酸鉛が鉛と二酸化鉛へと戻る特性が低下する。これは、結果として、バッテリ性能の劣化をもたらす。最終的に、バッテリは、取り換えなければならないであろう。
【0004】
欧州と米国では、高い割合の鉛酸バッテリ廃棄物がリサイクルされる。典型的なプロセスにおいて、使用されたバッテリは細分され、鉛含有固体は、他のバッテリ廃棄物成分、例えば、プラスチック材料と電解質などから分離される。鉛含有固体は、バッテリ格子とバッテリペーストで構成されるバッテリプレートに由来する。使用済バッテリペーストは、鉛インゴッドへの高温冶金処理のために精錬所に送られる。鉛インゴットは、次いで、新しい鉛酸バッテリを製造するために使用されてもよい。例えば、鉛インゴットは、新しいバッテリ格子を製造するために使用されてもよく、または鉛インゴットは、鉛粉、典型的には酸化鉛と遊離金属鉛との混合物を製造するために、バートンポットまたはボールミルプロセスを使用して酸化されてもよい。この鉛粉は、次いで、鉛酸バッテリプレートの活性なレドックス材料として再使用されてもよい。
【0005】
これら従来のリサイクルプロセスは、硫酸鉛の分解に必要な約1,100℃の温度において行われ、非常にエネルギ多消費型である。従来のリサイクルプロセスは、非常に汚染的でもあり得る。特に、高温精錬所において、二酸化硫黄、二酸化窒素、そして多くの場合に鉛粒子を生じる。汚染物質が大気中に放出されるのを防ぐために、専用装置と時間のかかるプロセスが必要となる。これらは、リサイクルプロセスおけるかなりの費用を示し得る。
【0006】
近年において、鉛酸バッテリ廃棄物をより効率的に処理することを可能にする方法が開発された。特許文献1には、クエン酸鉛を生じさせるために、使用済バッテリペーストをクエン酸水溶液と混合するプロセスが開示されている。クエン酸鉛は、次いで、焼成により鉛粉へと変化されてもよい。このことは、中間体の鉛インゴットを取り扱うことなく、使用済バッテリペーストから鉛粉を直接的に製造することを可能にする。
【0007】
特許文献1において開示される方法に関連するいくつかの利点がある。特に、鉛粉は、使用済バッテリペーストから直接的に製造され、それにより、鉛粉への鉛インゴットの下流処理に関連するコストと物流が避けられる。その上、クエン酸は、燃焼プロセスにおいて燃料としての役割を果たし、それにより、焼成炉に供給する必要のあるエネルギの量を減らす。鉛粉へのクエン酸鉛の変化は、硫酸鉛の分解に必要な温度より低い温度においても生じ、さらに、リサイクル方法のエネルギ負荷を減らす。実際に、特許文献1において開示される方法は、1,000トンのバッテリスループットあたり約400mWhのエネルギを放出する。
【0008】
鉛粉がバッテリプレートを調製するためのペーストとして再使用されるためには、鉛粉は、非常に高い純度レベルを有さなければならない。従来の精錬技術により製造された鉛インゴットは、典型的には、0.1重量%未満、多くの場合には0.01重量%未満の不純物レベルを示す。したがって、代替ルートにより鉛酸バッテリをリサイクルする商業的方法は、理想的には、これらの純度レベルを有する鉛製造物を提供するであろう。残念ながら、特許文献1において開示される方法に従って製造された鉛粉は、一貫して、バッテリにおいて直接使用するには十分な純度ではなく、代わりに、使用前にさらなる処理を必要とする。
【0009】
特許文献1において開示される方法の別の欠点は、同方法が、使用済バッテリペースト中に存在する鉛の十分な割合をクエン酸鉛へと変化するために大過剰なクエン酸を必要とすることである。このことは、同方法を実施するコストが、クエン酸のコストに大きく依存し、それが、同方法の経済的実現性を、クエン酸の価格の変動に対して脆弱にしていることを意味する。
【0010】
まとめると、特許文献1において開示される方法は、使用済鉛酸バッテリのリサイクルにおける意義のある前進を代表しているが、同方法は、大過剰のクエン酸の使用に依存しており、また、同方法により製造されるペーストの品質は、多くの場合、バッテリプレートでの直接使用にとって十分に高いわけではない。
【0011】
クエン酸が使用されるさらなる方法が、非特許文献1において開示されている。この方法は、特許文献1において開示される方法のいくつかの短所に対処している。しかしながら、同方法は、高温の使用と、比較的長い溶解時間と、高い試薬濃度と、を必要とする。そのため、同方法は、鉛酸バッテリペーストをリサイクルするための、魅力的で、商業的で、拡張可能な方法を代表しない。
【0012】
クエン酸塩が形成される、鉛酸バッテリペーストをリサイクルするさらなる方法が、非特許文献2において提案されている。この論文は、PbOとPbOとPbSOのそれぞれを、クエン酸ナトリウムと酢酸とによる混合物と個別に反応させ、続いて、使用済鉛酸バッテリペーストに対してクエン酸ナトリウムと酢酸とによる混合物を使用することを開示している。しかしながら、この方法により得られるクエン酸鉛の純度は、特許文献1において開示される方法に従って得られる純度とあまり違わない。
【0013】
バッテリペーストをリサイクルする別の方法が、非特許文献3において開示されている。この方法によれば、使用済鉛酸バッテリペーストは、酢酸鉛に変化され、酢酸鉛は、氷酢酸を使用して結晶化されて精製され、精製された酢酸鉛は、酸化鉛を得るために、焼成される。しかしながら、水性系に対する酢酸鉛の溶解度は非常に高い。このことは、水相から酢酸鉛塩を結晶化するために、かなりの努力が必要であろうということを意味する。必然的に、かなりの量の鉛負担も、水相において失われるであろう。したがって、非特許文献3において開示される方法は、産業レベルにおいて拡張可能ではない。
【0014】
鉛含有廃棄物、特に、鉛酸バッテリに由来する廃棄物をリサイクルする方法であって、上記において特定された問題の1つまたは複数に対処する方法が求められている。特に、バッテリペーストにおいて直接使用するのに十分な純度の形態の鉛粉を提供し、鉛含有廃棄物から高い割合(例えば、実質的に損失ゼロ)の鉛をリサイクルすることを可能にし、および/または大過剰の試薬の使用を必要としない、方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/056125号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】He et al., Minerals, 2017, 7(6), 93
【非特許文献2】Zhu et al., J. Hazard Mater., 2013, 250-251, 387-396
【非特許文献3】Sun et al., Journal of Power Sources, 2014, 269, 565-576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、過剰なクエン酸の不在下において鉛含有廃棄物から高品質の鉛粉を製造し得る方法を提供するために、様々な鉛酸塩の水溶解度を利用する。特に、同方法は、鉛含有廃棄物を溶解するために、高い水溶解度を有する鉛塩を形成する酸、例えば、酢酸を使用する。それに続いて、第2酸、例えば、クエン酸が溶液に加えられ、低溶解度だが高純度の第2鉛塩が沈殿する。第2鉛塩の沈殿物は、次いで、鉛粉へと変化され得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
比較的高い水溶解度を有する第1鉛塩を形成する酸の使用は、同量のクエン酸が使用される場合よりも高い割合の鉛含有廃棄物が溶解することを意味する。先行技術の方法とは異なり、ちょうど化学量論的量のクエン酸(または、比較的低い溶解度の塩を形成する他の第2酸)を、溶解した鉛に加えることにより、高いレベルの変化が達成され得る。その上、第2酸を加えることで、鉛含有廃棄物を溶解させるために元々使用された酸は、再生され、再使用され得る。したがって、本発明は、試薬負担が最小化される、鉛含有廃棄物をリサイクルする方法を提供する。
【0019】
第1態様において、本発明は、鉛含有廃棄物をリサイクルする方法であって、(a)第1鉛塩の溶液を形成するために、第1酸の水溶液に鉛含有廃棄物を溶解する工程と、(b)鉛枯渇溶液と、第2鉛塩の沈殿物と、を形成するために、第1鉛塩の溶液に第2酸を加える工程と、(c)第2鉛塩の沈殿物を鉛粉に変化させる工程と、を含み、第1鉛塩は、第2鉛塩より水に対して高い溶解度を有する、ことを特徴とする方法を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、本発明の方法により得ることが可能な鉛粉材料、並びに、鉛粉材料を含むバッテリプレート、および、バッテリプレートを含む鉛酸バッテリを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
●様々な実施形態の説明
●鉛含有廃棄物
本発明は、鉛含有廃棄物をリサイクルする方法を提供する。
【0022】
(a)工程において使用される鉛含有廃棄物中に存在する鉛は、いくつかの形態として存在し得る。例えば、鉛含有廃棄物は、金属鉛(本明細書においてPbと称される)または化合物の形態の鉛、例えば、酸化鉛(本明細書において酸化鉛(II)はPbOと称され、酸化鉛(IV)はPbOと称される)、炭酸鉛(本明細書においてPbCOと称される)、または硫酸鉛(本明細書においてPbSOと称される)などを含有し得る。これらの材料は、同材料の化合物の形態、例えば、PbO.PbSO、3PbO.PbSO、または4PbO.PbSO、として存在し得ることは理解されるであろう。
【0023】
好ましくは、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、PbとPbOとPbCOのうちの少なくとも1つを含有する。より好ましくは、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、PbOとPbCOのうちの少なくとも1つを含有してもよく、好ましくはPbも含有してもよい。(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、さらに、PbOを含有してもよい。
【0024】
(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、PbSOの形態の鉛も含んでもよい。しかしながら、鉛含有廃棄物は、鉛含有廃棄物の供給源中にPbSOが存在しないか、または鉛含有廃棄物が前もって脱硫されているかのいずれかにより、PbSOを実質的に含有しない場合もある。(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、好ましくは、10重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の量においてPbSOを含む。鉛を脱硫するために様々な方法が使用されてもよく、それらは、下記においてより詳細に説明される。脱硫の好ましい方法において、PbSOは、PbOまたはPbCOに変化される。
【0025】
鉛含有廃棄物中の様々な鉛含有材料の量は、鉛含有廃棄物の供給源に応じて変わるであろう。(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、好ましくは、鉛(II)化合物、例えば、PbOまたはPbCOなどを、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%の量において含む。
【0026】
鉛含有廃棄物中には、例えば、少なくとも0.1重量%の量において、非鉛成分も存在してもよく、これらは、典型的には、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、例えば、3重量%未満または1重量%未満などの量において存在する。非鉛成分は、金属化合物、炭素、および繊維を含んでもよい。金属化合物としては、硫酸バリウムが挙げられ、これは、多くの場合、硫酸鉛の結晶化を最小限に抑えるかまたは制御するために鉛酸バッテリプレートに含められる添加剤である。不溶性炭素材料としては、典型的には鉛酸バッテリプレートの増量剤として加えられるカーボンブラック、および、グラファイトとカーボンナノチューブが挙げられる。多くの場合に鉛酸バッテリプレートに含められる繊維としては、リグノスルホン酸が挙げられる。非鉛成分は、さらに、例えば、鉛酸バッテリにおいて使用され得るセパレータに由来するポリマまたガラスも含んでもよい。
【0027】
本発明の方法は、鉛酸バッテリペーストのリサイクルにとって特に好適である。したがって、実施形態において、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、鉛酸バッテリペーストに由来する。鉛酸バッテリペーストは、典型的には、PbSOとPbOとPbOとPbとを含む。単一のバッテリ由来の鉛酸バッテリプレート中のこれらの成分の割合は、バッテリが「消費された」、すなわち、使用された程度に著しく依存して変わり得る。例えば、少し使用されたバッテリの鉛酸バッテリペーストは、「廃棄物」となり得るが、典型的には、比較的多量のPb(例えば、30重量%超)とPbO、および、比較的少量のPbSOを含有するであろう。その上、鉛酸バッテリペーストが、負極板だけから取られる場合、鉛酸バッテリプレートは、PbOを全く含有しなくてもよい。
【0028】
しかしながら、鉛酸バッテリ由来の廃棄物は、典型的には、多数のバッテリ由来のペーストで構成され、そのため、様々な鉛含有材料の含有量は、いくらか正規化される。廃棄物鉛酸バッテリペーストは、少なくとも40重量%の量においてPbSOを含有し得る。廃棄物鉛酸バッテリペーストは、少なくとも5重量%の量においてPbOを含有し得る。廃棄物鉛酸バッテリペーストは、少なくとも10重量%の量においてPbOを含有し得る。廃棄物鉛酸バッテリペーストは、少なくとも1重量%の量においてPbを含有し得る。
【0029】
廃棄物鉛酸バッテリペーストが脱硫されている場合、PbSOは、PbCOまたは他の鉛化合物にも変化されてもよいが、典型的には、PbOに変化されるであろう。したがって、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、好ましくは、少なくとも40重量%の量において、PbOとPbCOのうちの少なくとも一方を含有する。脱硫プロセスの際、鉛含有廃棄物中のPbOとPbの量は、典型的には、一定のままであろう。
【0030】
鉛酸バッテリペーストは、既知の方法により鉛酸バッテリから得られてもよい。例えば、鉛酸バッテリペーストは、1つまたは複数の鉛酸バッテリが細分されて、鉛含有廃棄物がバッテリの他の成分、例えば、プラスチック材料および電解質などから分離される方法により得られてもよい。
【0031】
鉛含有廃棄物は、いくつかの他の供給源、例えば、ケーブルシース、建築産業からの鉛板、塗料、核貯蔵物品、およびエレクトロセラミック系PbOなどからも入手可能である。鉛含有廃棄物は、鉱物、冶金工場または化学工場に由来し得る。鉛含有廃棄物は、PbS鉱石採掘の生産物でもあってもよく、それらは、シリカなどの不純物を伴うPbOおよび/またはPbSOを含有するように焙焼することにより酸化されている。
【0032】
場合により、本発明の方法は、電気アーク炉ダストをリサイクルするために使用される。電気アーク炉ダストは、鉄鋼の生産からの残留物である。同ダスト中の亜鉛の存在と処分コストの上昇は、同ダストをリサイクルするイニシアチブに導いた。これは、回転窯において亜鉛含有材料が処理されるWaelzプロセスを使用して最も一般的に行われている。同プロセスは、通常、炭素(例えば、コークの形態)と、好ましくはさらに酸化カルシウム(CaO)または二酸化ケイ素(SiO)との存在下において実施される。窯は、典型的には、1000℃-1500℃の温度において稼働されるであろう。
【0033】
しかしながら、電気アーク炉ダストは、鉛含有化合物を含むいくつかの不純物を含有する。したがって、実施形態において、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、電気アーク炉ダストに由来する。
【0034】
(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、鉄鋼の生産、好ましくは脱硫された形態から直接得られる電気アーク炉ダストであってもよい。換言すれば、電気アーク炉ダストは、脱硫以外に、さらなる処理工程、例えば、亜鉛リサイクルプロセスなどをまだ受けていない。(a)工程の後、鉛負担は解消されており、残った固体廃棄物は、次いで、亜鉛リサイクルプロセス、例えば、Waelzプロセスなどへと送られてもよい。
【0035】
しかしながら、好ましい実施形態において、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、例えば、Waelzプロセスなどにおいて、電気アーク炉ダストから亜鉛が除去された後に残される材料である。この材料は、スラグ(またはWaelzクリンカ)として知られており、典型的には、少なくとも40重量%の量においてPbSOを含有する。したがって、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、Waelzプロセスからのスラグであってもよい。好ましくは、スラグは、例えば、後述のとおりの方法を使用して、(a)工程での使用の前に脱硫されており、したがって、少なくとも40重量%の量において、PbOとPbCOのうちの少なくとも一方、好ましくはPbOを含有するであろう。
【0036】
(a)工程において使用される鉛含有材料が、Waelzプロセスからのスラグである場合、スラグは、好ましくは、熱で前処理されている。これは、例えば、少なくとも10重量%の量において、Waelzスラグ中に存在し得る、Waelzプロセスにおいて使用される炭素質材料を除去すると考えられる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、Waelzスラグを熱で前処理する工程を含むが、他の実施形態においては、スラグは、既に前処理されている。脱硫も行われる場合、これは、好ましくは、前処理加熱工程の後に行われる。
【0037】
スラグの前処理は、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも550℃、より好ましくは少なくとも600℃の温度において実施され得る。スラグの前処理は、少なくとも最高で800℃まで、好ましくは少なくとも最高で750℃まで、より好ましくは少なくとも最高で700℃までの温度において実施され得る。スラグの前処理は、500℃から800℃まで、好ましくは550℃から750℃まで、より好ましくは600℃から700℃までの温度において実施され得る。
【0038】
スラグの前処理は、少なくとも15分、好ましくは少なくとも30分、より好ましくは少なくとも45分の時間において実施され得る。スラグの前処理は、最長で4時間まで、好ましくは最長で2時間まで、より好ましくは最長で90分までの時間において実施され得る。スラグの前処理は、15分から4時間まで、好ましくは30分から2時間まで、より好ましくは45分から90分までの時間において実施され得る。
【0039】
鉛含有廃棄物は、多くの形態、例えば、ダスト、スラグ、またはスラッジの形態、あるいは、鉱物の形態として見つけられてもよい。しかしながら、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、典型的には、本発明のリサイクル方法の際、細分された形態、例えば、粒体または粉末の形態であろう。例えば、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、1000μm、好ましくは500μm、より好ましくは250μmの直径を有するメッシュを通り抜ける微粒子形態であってもよい。
【0040】
●(a)工程-第1酸における溶解
鉛含有廃棄物は、本発明の方法の(a)工程において、第1酸の水溶液に溶解する。これは、結果として、第1鉛塩の溶液の形成をもたらす。
【0041】
第1鉛塩は、鉛陽イオンを有するであろうし、その場合、陰イオンは、第1酸に由来するであろう。好ましい実施形態において、第1鉛塩は、鉛(II)塩である。第1鉛塩は、好ましくは、水に対して少なくとも100g/L、好ましくは少なくとも200g/L、より好ましくは少なくとも300g/Lの溶解度を有する。本明細書における溶解度の参考値は、25℃での水に対する平衡溶解度を意味する。
【0042】
第1酸は、好ましくは、ブレンステッド-ローリー酸、すなわち、プロトンドナーである。第1酸は、有機酸または無機酸であり得るが、好ましい第1酸は、有機酸である。特に好適な有機酸は、酢酸鉛Pb(CHCOO)の溶液を形成する酢酸である。使用することができる他の有機酸としては、カルボン酸、例えば、マレイン酸、乳酸、およびアクリル酸などが挙げられる。好適な無機酸としては、硝酸が挙げられる。
【0043】
第1酸の水溶液は、好ましくは、少なくとも0.1mol/L、好ましくは少なくとも0.25mol/L、より好ましくは少なくとも0.5mol/Lのモル濃度を有する。第1酸の水溶液は、好ましくは、最高で7mol/Lまで、好ましくは最高で3mol/Lまで、より好ましくは最高で1.5mol/Lまでのモル濃度を有する。したがって、第1酸の水溶液は、0.1mol/Lから7mol/Lまで、好ましくは0.25mol/Lから3mol/Lまで、より好ましくは0.5mol/Lから1.5mol/Lまでのモル濃度を有してもよい。
【0044】
鉛含有廃棄物は、好ましくは、酸性水溶液1リットルあたり少なくとも10g、好ましくは少なくとも50g、より好ましくは少なくとも80gの廃棄物の量において、第1酸の水溶液に加えられる。鉛含有廃棄物は、酸性水溶液1リットルあたり最高で650gまで、好ましくは最高で300gまで、より好ましくは最高で150gまでの廃棄物の量において、第1酸の水溶液に加えられてもよい。したがって、鉛含有廃棄物は、酸性水溶液1リットルあたり10gから650gまで、好ましくは50gから300gまで、より好ましくは80gから150gまでの廃棄物の量において、第1酸の水溶液に加えられてもよい。
【0045】
溶解(a)工程全体を通して、典型的には、酸性環境(すなわち、7未満、好ましくは最高で6.5まで、より好ましくは最高で6までのpH)が存在する。したがって、第1酸の水溶液と第1鉛塩の溶液は両方とも、7未満、好ましくは6.5未満、より好ましくは6未満のpHを示してもよい。pHは、典型的には、(a)工程全体を通して2未満に下がらないであろう。本明細書において言及される全てのpH値は、従来法、例えば、pHプローブなどを使用して測定されてもよい。
【0046】
鉛含有廃棄物は、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃の温度において、第1酸の水溶液に溶解されてもよい。鉛含有廃棄物は、最高で90℃まで、好ましくは最高で50℃まで、より好ましくは最高で30℃までの温度において、第1酸の水溶液に溶解されてもよい。したがって、鉛含有廃棄物は、0℃から90℃まで、好ましくは10℃から50℃まで、より好ましくは15℃から30℃までの温度において、第1酸の水溶液に溶解されてもよい。
【0047】
典型的には、より多い量の鉛含有廃棄物が使用されるほど、より高い温度と、第1酸のより高い濃度と、が溶解(a)工程に使用されるであろうことは理解されるであろう。
【0048】
鉛含有廃棄物は、典型的には、常圧において、すなわち、加圧または減圧なしに、第1酸の水溶液に溶解されるであろう。
【0049】
第1酸の水溶液への鉛含有廃棄物の溶解は、混合物のアジテーション、例えば、撹拌または超音波処理により加速されてもよい。
【0050】
鉛含有廃棄物は、少なくとも1分、好ましくは少なくとも5分、より好ましくは少なくとも15分の時間において、第1酸の水溶液に溶解されてもよい。鉛含有廃棄物は、最長で120分まで、好ましくは最長で60分まで、より好ましくは最長で45分までの時間において、第1酸の水溶液に溶解されてもよい。したがって、鉛含有廃棄物は、1分から120分まで、好ましくは5分から60分まで、より好ましくは15分から45分までの時間において、第1酸の水溶液に溶解されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、鉛含有廃棄物をレドックス剤と接触させることが望ましくあってもよい。これは、+2酸化状態への変化により、+2酸化状態にない鉛含有材料の溶解を支援する。例えば、レドックス剤は、+4酸化状態の鉛含有材料、例えば、PbOなどをPbOへと変化させ得て、PbOは、次いで、可溶性塩を形成するために、第1酸の水溶液と容易に反応する。レドックス試薬を使用しない場合、塩へのPbOの変化は、概して、かなりゆっくりと進行するであろう。Pbは、レドックス試薬との接触なしでも、第1酸と塩を形成してもよいが、レドックス試薬は、PbOへの金属鉛の変化をも支援してもよい。
【0052】
例えば、+4酸化状態の鉛化合物の場合、好ましくは、レドックス試薬は還元剤であろう。さらに、例えば、金属鉛の場合には、好ましくは、レドックス試薬は酸化剤であろう。特に好ましいレドックス試薬としては、酸化剤と還元剤の両方として機能する過酸化水素が挙げられる。しかしながら、他のレドックス試薬を使用してもよい。例えば、金属水素化物、水素ガス、または無機塩も還元剤として使用してもよい。有機レドックス剤も使用してよい。
【0053】
レドックス試薬は、リサイクル方法の(a)工程の前またはその際に、鉛含有廃棄物と接触させられ得る。レドックス試薬が、(a)工程の際に鉛含有廃棄物と接触する場合、レドックス試薬は、鉛含有廃棄物が溶解する前に、第1酸の水溶液中に導入されてもよく、またはレドックス試薬は、鉛含有廃棄物が部分的に溶解次第、導入されてもよい。
【0054】
レドックス試薬は、少なくとも1mol/L、好ましくは少なくとも3mol/L、より好ましくは少なくとも5mol/Lのモル濃度を有する溶液の形態において使用されてもよい。レドックス試薬は、最高で25mol/Lまで、好ましくは最高で20mol/Lまで、より好ましくは最高で15mol/Lまでのモル濃度を有する溶液の形態において使用されてもよい。したがって、レドックス試薬は、1mol/Lから25mol/Lまで、好ましくは3mol/Lから20mol/Lまで、より好ましくは5mol/Lから15mol/Lまでのモル濃度を有する溶液の形態において使用されてもよい。
【0055】
レドックス試薬溶液は、酸性水溶液1リットルあたり少なくとも1ml、好ましくは少なくとも5ml、より好ましくは少なくとも10mlの量において、第1酸の水溶液に加えられてもよい。レドックス試薬溶液は、酸性水溶液1リットルあたり最高で100mlまで、好ましくは最高で50mlまで、より好ましくは最高で30mlまでの量において、第1酸の水溶液に加えられてもよい。したがって、レドックス試薬溶液は、酸性水溶液1リットルあたり1mlから100mlまで、好ましくは5mlから50mlまで、より好ましくは10mlから30mlまでの量において、第1酸の水溶液に加えられてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、方法の(a)工程の際に、アルカリ金属酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウム(CHCOONa)などを加えることが望ましくあってもよい。アルカリ金属酢酸塩は、PbSOをPbOに変化させることによりPbSOを脱硫する。しかしながら、実質的にアルカリ金属イオンの不在下において、(a)工程を実施するのが、一般的には好ましい。したがって、脱硫は、好ましくは、前処理工程として実施され、それについては、下記において詳細に説明される。
【0057】
いくつかの実施形態において、(a)工程において使用される鉛含有廃棄物は、第1酸の水溶液に不溶性で、そのため第1鉛塩の溶液において不溶性材料として残るような、材料を含んでもよい。不溶性材料は、少なくとも0.01重量%、より典型的には少なくとも0.1重量%、さらにより典型的には少なくとも1重量%の量において、鉛含有廃棄物中に存在してもよい。例えば、鉛酸バッテリペーストは、典型的には、2重量%から5重量%まで、より典型的には3重量%から3.5重量%までの不溶性材料を含有する。しかしながら、埋立地から再生されるような他の鉛含有廃棄物は、はるかに高いレベルの、例えば、最高で約60重量%までの、不溶性材料を含有してもよい。
【0058】
不溶性材料は、例えば、硫酸バリウムなどの金属化合物と、例えば、カーボンブラック、グラフェン、および/または、カーボンナノチューブなどの炭素と、例えば、リグノスルホン酸塩などの繊維と、のうちの1種または複数種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、不溶性材料は、金属化合物と炭素と繊維とを含む。不溶性材料は、ポリマまたはガラスを含んでもよい。不溶性材料は、一般的に、あまり好ましくないが、いくらかの鉛を含んでもよい。例えば、不溶性材料は、Pb(例えば、比較的大きい粒子サイズにおいて存在するかまたは溶解時間が短い場合)またはPbSOを含んでもよい。
【0059】
鉛含有廃棄物が不溶性材料を含む場合、それらは、好ましくは、(a)工程において形成される溶液から回収される。このことは、本発明の主要な利点である。第1酸の水溶液に鉛含有廃棄物を溶解することにより、鉛粉中に不純物として存在するがその単離された形態においては貴重であるような不溶性成分を除去する機会が提供される。このことは、クエン酸鉛の懸濁液が鉛含有廃棄物から直接調製される先行技術の方法とは異なる。いくつかの実施形態において、除去された不溶性材料は再使用される。
【0060】
(a)工程において形成される第1鉛塩の溶液から不溶性材料を回収する好適な方法としては、セットリングタンクまたは遠心分離などの他の様々な方法を使用してもよいが、ろ過が挙げられる。
【0061】
●(b)工程-第2酸を使用した沈殿
本発明の(b)工程において、第1鉛塩の溶液に第2酸を加えることにより、第2鉛塩が沈殿する。これは、鉛枯渇溶液と第2鉛塩の沈殿物の形成につながる。
【0062】
第2鉛塩は、鉛陽イオンを有するであろうし、その場合、陰イオンは、第2酸に由来するであろうことは理解されるであろう。好ましい実施形態において、第2鉛塩は、鉛(II)塩である。第2鉛塩は、例えば、水に対して少なくとも100g/L、好ましくは少なくとも200g/L、より好ましくは少なくとも400g/Lだけ第1鉛塩よりも低い溶解度を有する。第2鉛塩は、好ましくは、水に対して最高で10g/Lまで、好ましくは最高で1g/Lまで、より好ましくは最高で0.1g/Lまでの溶解度を有する。
【0063】
第1酸と同様に、第2酸は、好ましくは、ブレンステッド-ローリー酸であり、すなわち、第2酸は、プロトンドナーである。第2酸は、有機酸または無機酸であり得るが、好ましい第2酸は、有機酸である。特に好ましいのは、クエン酸鉛沈殿物を形成するクエン酸である。クエン酸鉛は、水性条件下において非常に低い溶解度を有するため、溶液中に留まることにより「失われる」クエン酸塩は、最小量である。
【0064】
クエン酸鉛沈殿物は、典型的には、式Pb(Cを有する化合物の形態として存在するであろう。クエン酸鉛沈殿物は、典型的には、Pb(Cからなるであろうが、クエン酸鉛の一部は、例えば、過剰なクエン酸が存在する場合、Pb(C)という安定性に劣る形態としても存在してもよい。有利なことに、クエン酸三鉛は、形成するためにクエン酸一鉛より少ない量のクエン酸を必要とする。クエン酸鉛沈殿物は、水和形態、例えば、Pb(C2xO[式中、xは、1から3までであり得る]でもよい。
【0065】
好ましくは、第2酸は、第1鉛塩の溶液において鉛イオンからの第2鉛塩を形成するために、化学量論までの量が第1鉛塩の溶液に加えられる。化学量論量または化学量論よりわずかに少ない量の第2酸を使用することにより、第2酸の第2鉛塩への完全な変化は、確実にされる。このことは、高レベルの変化のために、大過剰のクエン酸と、長い反応時間と、加熱と、が多くの場合に必要とされる先行技術の方法と異なっている。実際に、(b)工程において初めて、クエン酸または別の第2酸を加えることにより、本発明の方法は、第2酸と使用済鉛酸バッテリペーストとの間の反応が、効果的に定量的でもよいことを確実にする。
【0066】
第2酸は、第2鉛塩の形成に必要な化学量論量の最高で100%まで、好ましくは最高で98%まで、好ましくは最高で95%までにおいて第1鉛塩の溶液に加えられてもよい。第2酸は、第2鉛塩の形成に必要な化学量論量の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%において第1鉛塩の溶液に加えられてもよい。したがって、第2酸は、第2鉛塩の形成に必要な化学量論量の60%から100%まで、好ましくは75%から98%まで、より好ましくは80%から95%までにおいて第1鉛塩の溶液に加えられてもよい。
【0067】
第1鉛塩の溶液中に存在する鉛イオンの量は、既知の技術を使用して測定されてもよい。鉛イオンの量は、例えば、鉛イオンセンサを使用して直接的に、または間接的に測定されてもよい。次いで、必要な第2酸の量が、測定された鉛イオンの量に基づいて計算されてもよい。
【0068】
第1鉛塩の溶液中の鉛イオンをPb(Cに変化させるためのクエン酸の化学量論量は、鉛イオン1モルあたり0.67モルであることは理解されるであろう。このことは、酢酸鉛がクエン酸鉛に変化する下記の式により実証される。
3Pb(CHCOO)+2C→Pb(C+6CHCOOH
【0069】
したがって、クエン酸は、溶液中の鉛イオン1モルあたり、最高で0.67モルまで、好ましくは最高で0.65モルまで、より好ましくは最高で0.63モルまでの量において第1鉛塩の溶液に加えられてもよい。クエン酸は、溶液中の鉛イオン1モルあたり、少なくとも0.40モル、好ましくは少なくとも0.50モル、より好ましくは少なくとも0.55モルの量において第1鉛塩の溶液に加えられてもよい。したがって、クエン酸は、第1鉛塩の溶液中の鉛イオン1モルあたり、0.40モルから0.67モルまで、好ましくは0.50モルから0.65モルまで、より好ましくは0.55モルから0.63モルまでの量において、加えられてもよい。
【0070】
第2酸は、粉末形態または水溶液として、第1鉛塩の溶液に加えられてもよい。
【0071】
典型的には、沈殿(b)工程全体を通して、酸性環境(すなわち、7未満のpH)が存在する。第1酸の遊離により、典型的には、pHは、沈殿(b)工程の際に、例えば、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、より好ましくは少なくとも0.3下がるであろう。pHは、典型的には、(b)工程全体を通して2未満に下がらないであろう。
【0072】
第2鉛塩の沈殿は、少なくとも-10℃、好ましくは少なくとも0℃、より好ましくは少なくとも5℃の温度において行われてもよい。第2鉛塩の沈殿は、最高で80℃まで、好ましくは最高で40℃まで、より好ましくは最高で30℃までの温度において行われてもよい。したがって、第2鉛塩の沈殿は、-10℃から80℃まで、好ましくは0℃から40℃まで、より好ましくは5℃から30℃までの温度において行われてもよい。
【0073】
第2鉛塩は、典型的には、常圧において、すなわち、加圧または減圧なしに、第1鉛塩の溶液から沈殿するであろう。
【0074】
第1鉛塩の溶液からの第2鉛塩の沈殿は、溶液のアジテーション、例えば、撹拌または超音波処理により、加速されてもよい。
【0075】
第2鉛塩の沈殿は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも5分、より好ましくは少なくとも10分の時間において行われてもよい。第2鉛塩の沈殿は、最長で120分まで、好ましくは最長で60分まで、より好ましくは最長で45分までの時間において行われてもよい。したがって、第2鉛塩の沈殿は、2分から120分まで、好ましくは5分から60分まで、より好ましくは10分から45分までの時間において行われてもよい。
【0076】
第2鉛塩の沈殿物は、好ましくは、鉛粉への変化の前に、鉛枯渇溶液から分離される。これは、鉛含有廃棄物中に存在する水溶性不純物を鉛枯渇溶液の一部として除去することを可能にする。第2鉛塩の沈殿物を鉛枯渇溶液から分離するための好適な方法としては、セットリングタンクまたは遠心分離などの他の様々な方法を使用してもよいが、ろ過が挙げられる。典型的には、全ての第2鉛塩沈殿物を捕捉することを確実にするために、より小さいメッシュサイズが好ましい。しかしながら、いくつかの実施形態において、第2鉛塩沈殿物は、より大きいメッシュサイズが好適であってもよいことを意味するようなサイズのものでもよい。
【0077】
分離された第2鉛塩は、例えば、水を使用して、洗浄されてもよい。これは、沈殿物から全ての水溶性不純物を除去する。
【0078】
第2鉛塩は、精製してもよい。精製のための好適な方法としては、再結晶化が挙げられる。しかしながら、概して、精製は、本発明の方法が高純度の第2鉛塩を提供するために、必要ではない。したがって、第2鉛塩は、好ましくは、第2鉛塩が精製されているかどうかにかかわらず、最高で5重量%まで、好ましくは最高で1重量%まで、より好ましくは最高で0.1重量%までの不純物(すなわち、非第2鉛塩材料)を含む。純度は、既知の方法、例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分光法)などの分光技術を使用して測定され得る。ICP-AESは、実施例において詳述されるように実施されてもよい。
【0079】
鉛枯渇溶液は、(a)工程において鉛含有廃棄物を溶解させるために使用した第1酸を含有する。第1酸は、(a)工程において比較的可溶性の第1鉛塩を形成するが、第1酸は、(b)工程において第1鉛塩を第2鉛塩に変化させる際に再生される。好ましい実施形態において、鉛枯渇溶液は、リサイクルされ、(a)工程において鉛含有廃棄物を溶解させるための第1酸の水溶液として使用される。鉛枯渇溶液をリサイクルすることにより、第1酸は、消費されず、繰り返し使用することができる。したがって、第1酸は、リサイクルプロセスにおいて、試薬としてではなく触媒として認識されてもよい。
【0080】
鉛枯渇溶液は、残留鉛、好ましくは溶解した形態の第1鉛塩も含んでもよい。これは、特に、(b)工程において、第1鉛塩の溶液中の鉛イオンと比較して化学量論量に満たない第2酸が使用される場合である。鉛枯渇溶液の一部として残留鉛をリサイクルすることは、本発明の方法の際に鉛が失われないことを確実にする。
【0081】
●(c)工程-鉛粉への変化
本発明の方法の(c)工程において、第2鉛塩の沈殿物は、鉛粉へと変化する。鉛粉は、PbOと、典型的には、いくらかの金属鉛も含む。例えば、鉛粉は、少なくとも1重量%の量において金属鉛を含有してもよい。概して、鉛粉は、40重量%を超える量において金属鉛を含有しないであろう。
【0082】
好ましくは、第2鉛塩の沈殿物は、焼成により鉛粉へと変化する。これは、第2鉛塩沈殿物を焼成炉に導入する工程と、鉛粉を得るために第2鉛塩が分解および/または燃焼する温度まで加熱する工程と、を伴う。有利なことに、第2鉛塩がクエン酸鉛である場合、クエン酸は、焼成の際に燃料として機能して燃焼し、その結果、必要なエネルギの量を減少させる。
【0083】
焼成は、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも325℃の温度において行われてもよい。焼成は、最高で1000℃まで、好ましくは最高で600℃まで、より好ましくは最高で450℃までの温度において行われてもよい。したがって、焼成は、250℃から1000℃まで、好ましくは300℃から600℃まで、より好ましくは325℃から450℃までの温度において行われてもよい。これらの温度は、クエン酸鉛沈殿物の焼成に対して特に適している。より低い温度がPbを含まない鉛粉の調製のために一般的に使用されるため、典型的に、同温度は、PbOとPbの混合物を含む鉛粉を提供する。
【0084】
焼成は、酸素を含む大気中において行われてもよい。概して、より多い酸素の量は、PbOの形成に有利であろうし、その一方で、概して、低酸素環境は、金属鉛の形成に有利であろうことは理解されるであろう。
【0085】
焼成は、少なくとも0.01気圧、好ましくは少なくとも0.05気圧、好ましくは少なくとも0.1気圧の酸素分圧において行われてもよい。焼成は、最高で5気圧まで、好ましくは最高で1気圧まで、より好ましくは最高で0.5気圧までの酸素分圧において行われてもよい。したがって、焼成は、0.01気圧から5気圧まで、好ましくは0.05気圧から1気圧まで、より好ましくは0.1気圧から0.5気圧までの酸素分圧において行われてもよい。例えば、焼成は、大気圧において、すなわち、加圧または減圧なしに、空気中で行われてもよい。
【0086】
焼成は、少なくとも10分、好ましくは少なくとも20分、より好ましくは少なくとも30分の時間において行われてもよい。焼成は、最高で6時間まで、好ましくは最高で2時間まで、より好ましくは最高で1時間までの時間において行われてもよい。したがって、焼成は、10分から6時間まで、好ましくは20分から2時間まで、より好ましくは30分から1時間までの時間において行われてもよい。
【0087】
本発明の方法の利点は、方法が、非常に高純度の鉛粉を調製するのに好適であることである。したがって、鉛粉は、好ましくは、少なくとも99重量%、好ましくは少なくとも99.5重量%、より好ましくは少なくとも99.9重量%の総量のPbOとPbとを含む。これらの純度を有する鉛粉は、鉛インゴットが酸化されるバートンポットまたはボールミルプロセスを使用して得られるものに匹敵する。純度は、既知の方法、例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分光法)などの分光技術を使用して測定され得る。ICP-AESは、実施例において詳述されるように実施されてもよい。
【0088】
場合により、鉛粉よりもむしろ、金属鉛Pbの方が所望の生成物である場合もあり、その場合、好ましくは、1000℃を超える温度が、本発明の(c)工程において使用される。還元剤、例えば、一酸化炭素またはコークスも使用され得て、その場合、1000℃未満の温度を使用することもできる(例えば、400℃から600℃まで)。好ましくは、系における酸素の分圧は、例えば、最高で0.000167気圧までに制限されるであろう。反応環境から酸素を除去するために、窒素などの不活性ガスまたは真空が使用されてもよい。
【0089】
他の例において、クエン酸鉛が、所望の生成物である場合もあり、その場合、本発明の方法は、(c)工程を含まないであろう。
【0090】
●鉛粉のさらなる処理
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、方法の最終生成物として鉛粉を生成する。したがって、本発明は、本発明の方法により得ることができる鉛粉材料を提供する。しかしながら、他の実施形態では、鉛粉をさらに処理することが望ましい。
【0091】
例えば、鉛粉は、バッテリプレートへと加工されてもよい。鉛粉は、既知の方法により、バッテリプレートへと加工されてもよい。例えば、鉛粉は、ペーストを形成するために、1種または複数種のバッテリプレート添加物と酸と組み合わせられてもよい。必要であれば、鉛粉は、バッテリプレート添加剤と酸と組み合わせられる前に、細分されてもよい。典型的には硫酸が酸として使用され、硫酸は、鉛粉中のPbOをPbSOへと変化させる。好適なバッテリプレート添加剤は、上記において列挙されたものを含み、金属化合物、不溶性炭素、および繊維を含む。いくつかの実施形態において、本発明の(a)工程の終了時に回収され得る不溶性成分の1つまたは複数は、バッテリプレート添加剤として使用されてもよい。次いで、ペーストは、グリッド、典型的には、鉛合金グリッドに適用されてもよく、硬化させられてもよい。
【0092】
次いで、バッテリプレートは、鉛酸バッテリに組み入れられてもよい。バッテリプレートは、既知の方法を使用して、鉛酸バッテリに組み入れられてもよい。例えば、バッテリプレートは、プラスチックバッテリケーシングに導入されてもよく、そしてバッテリは、硫酸で満たされてもよい。バッテリが組み立てられると、バッテリプレート中の鉛酸、例えば、PbSOは、電流を印可することにより、正極板上ではPbOへと変化し、負極板上では金属鉛へと変化する。
【0093】
したがって、本発明は、鉛含有廃棄物からバッテリプレートを調製する方法を提供する。本発明は、さらに、鉛含有廃棄物から鉛酸バッテリを調製する方法を提供する。本発明の方法により得られるバッテリプレートと、同バッテリプレートを組み込んだ鉛酸バッテリも提供される。
【0094】
●鉛含有廃棄物の前処理過程
前述のとおり、鉛含有廃棄物は、多くの場合、PbSOを含有する。例えば、廃棄物鉛酸バッテリペーストと電気アーク炉ダストは両方とも、PbSOを含有する。これらの実施形態において、本発明の方法は、好ましくは、鉛含有廃棄物が脱硫される前処理工程を含む。これは、PbSOが、本発明の(a)工程において酸性水溶液とほとんど反応しないためである。前処理工程は、(a)工程の前に行われることは理解されるであろう。
【0095】
前処理工程は、好ましくは、PbSOを別の鉛含有化合物、典型的には、鉛(II)化合物に変化させることにより鉛含有廃棄物を脱硫する工程を含む。好ましい脱硫方法において、PbSOは、PbOまたはPbCO、より好ましくはPbOへと変化される。次いで、PbOまたはPbCOは、第1鉛塩を形成するために、本発明の(a)工程において第1酸の水溶液と反応するであろう。
【0096】
PbOへのPbSOの変化は、鉛含有廃棄物を塩基と接触させることにより達成され得る。様々な塩基が、前処理工程において使用され得る。好適な塩基としては、アルカリ金属水酸化物、例えば、NaOH、KOH、またはLiOHが挙げられる。NaOHとの反応の化学量論は、下記の式に示される。
PbSO+2NaOH→NaSO+PbO+H
【0097】
塩基は、鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり、少なくとも1.5モル、好ましくは少なくとも1.75モル、より好ましくは少なくとも2モルの量において加えられてもよい。塩基は、鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり、最高で3モルまで、好ましくは最高で2.5モルまで、より好ましくは最高で2.25モルまでの量において加えられてもよい。したがって、塩基は、鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり、1.5モルから3モルまで、好ましくは1.75モルから2.5モルまで、より好ましくは2モルから2.25モルまでの量において加えられてもよい。
【0098】
多すぎるまたは少なすぎる塩基の添加は、結果として、PbOではなく水酸化鉛を生じ得る。しかしながら、混合物中の著しい量の水酸化鉛は、ケーキングを生じ得る。適性量の塩基が加えられることを確実にするために、前処理工程の際に鉛含有廃棄物中のPbSO含有量をモニタリングすることと、PbSO含有量が目標レベルに減少するまで塩基を加えることが、概して好ましい。目標レベルは、鉛含有廃棄物の、最高で500重量ppmまで、好ましくは最高で300重量ppmまで、より好ましくは最高で100重量ppmまでであり得る。
【0099】
モニタリングは、例えば、ICP-AESなどの分光技術を使用して鉛含有廃棄物中のPbSOの含有量を測定することによる直接モニタリングであってもよい。ICP-AESは、実施例において詳述されるように実施されてもよい。あるいは、モニタリングは、鉛含有廃棄物中のPbSOの量に相関するパラメータをモニタリングすることにより、間接的に実施してもよい。
【0100】
PbCOへのPbSOの変化は、鉛含有廃棄物を炭酸塩と接触させることにより達成されてもよい。好適な炭酸塩としては、アルカリ金属炭酸塩、例えば、NaCO、KCO、またはLiCOが挙げられる。
【0101】
炭酸塩は、鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり、少なくとも0.75モル、好ましくは少なくとも0.85モル、より好ましくは少なくとも1モルの量において加えられてもよい。炭酸塩は、鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり、最高で1.5モルまで、好ましくは最高で1.25モルまで、より好ましくは最高で1.1モルまでの量において加えられてもよい。したがって、炭酸塩は、鉛含有廃棄物中の硫酸鉛1モルあたり、0.75モルから1.5モルまで、好ましくは0.85モルから1.25モルまで、より好ましくは1モルから1.1モルまでの量において加えられてもよい。
【0102】
前述のように、前処理工程の際に鉛含有廃棄物中のPbSO含有量をモニタリングすることと、PbSO含有量が、例えば、鉛含有廃棄物の最高で500重量ppmまで、好ましくは最高で300重量ppmまで、より好ましくは最高で100重量ppmまでの目標レベルに減少するまで炭酸塩を加えることが、概して好ましい。
【0103】
脱硫前処理工程は、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃の温度において実施され得る。脱硫工程は、最高で90℃まで、好ましくは最高で50℃まで、より好ましくは最高で30℃までの温度において実施され得る。したがって、脱硫工程は、0℃から90℃まで、好ましくは10℃から50℃まで、より好ましくは15℃から30℃までの温度において実施され得る。これらの温度の範囲を超えるような熱が反応に対して適用されることはないであろうが、反応において生じた熱自体が、反応の温度をこれらの値を超えさせ得ることは理解されるであろう。
【0104】
前処理工程は、典型的には、常圧において、すなわち、加圧または減圧なしに、実施されるであろう。
【0105】
前処理工程は、混合物のアジテーション、例えば、撹拌または超音波処理により、加速されてもよい。
【0106】
前処理工程は、好ましくは、PbSOの目標レベルに達するまでの時間において実施されるであろう。典型的には、脱硫工程は、30分から24時間まで、好ましくは1時間から12時間まで、より好ましくは1.5時間から10時間までの時間において実施され得る。
【0107】
脱硫された鉛含有廃棄物は、ろ過を使用して水相から分離され得るが、沈殿槽または遠心分離などの他の様々な方法を使用してもよい。脱硫された鉛含有廃棄物は、任意で、(a)工程において使用される前に、(例えば、水により)洗浄され、乾燥されてもよい。
【0108】
前処理工程が完了した後、硫酸イオンは、例えば、前処理工程においてNaOHまたはNaCOが使用された場合には溶存したNaSOの形態において、脱硫された鉛含有廃棄物から水相として除去されてもよい。硫酸イオンは、例えば、水を蒸発させた結果として結晶化させることにより、単離されてもよく、任意で、別の用途に使用されてもよい。例えば、回収された硫酸塩は、ガラスの製造において使用されてもよい。水の蒸発に必要なエネルギの少なくとも一部は、(c)工程において鉛粉を形成するために使用され得る焼成プロセスから回収されてもよい。
【0109】
例えば、PbSOをPbCOに変化させることなどにより既に脱硫されている鉛含有廃棄物、例えば、鉛酸バッテリペーストなどは、商業的に、または好適な商業システムを使用して得られても良い。例えば、脱硫された鉛含有廃棄物は、PbSOの目標レベルが、鉛含有廃棄物の最高で30重量%まで、または最高で10重量%までであるような商業システムを使用して得られてもよい。必要に応じて、市販の脱硫された廃棄物は、鉛含有廃棄物の、最高で500重量ppmまで、好ましくは最高で300重量ppmまで、より好ましくは最高で100重量ppmまで、の目標レベルのPbSOを得るために、例えば、本明細書において開示される方法を使用して、さらに脱硫されてもよい。しかしながら、過剰なPbSOは、単純に、本発明の(a)工程において、他の不溶性材料、例えば、硫酸バリウム、炭素、および有機繊維などと一緒に単離されてもよい。
【実施例
【0110】
本発明は、以下の非限定的な実施例により例示されるであろう。
【0111】
実施例において、D8 Advance Bruker回折計を用いてX線回析を実施し、ソフトウェアHighscoreにより分析した。以下の設定を使用した:Ni-0.012フィルタによるCu Kα放射線照射、40mAにおいて40kVにて操作する、範囲:2Θ=5°から90°まで、ステップサイズ:0.03°、スキャン速度:3.5°min-1
【0112】
STA 409 EP Netzsch装置により、熱重量分析と示差走査熱量測定を実施した。以下の設定を使用した:静大気中(約0.15Lのチャンバ)、試料サイズ:20mgから30mgまで、温度範囲:0℃から600℃まで、および昇温速度:5℃/分。
【0113】
Perkin Elmer Optima 8000 ICP-OESを使用して、誘導結合高周波プラズマ原子発光分析(ICP-AES)を実施した。以下の設定を使用した:ガス:アルゴン、プラズマガスフロー:8L/分、補助ガスフロー:0.2L/分、ネブライザガスフロー:0.7L/分、RF出力:1500ワット。
【0114】
ICP-AESで分析する固体試料(通常、0.10gから0.50gまでの粉末)は、水性媒体に完全に溶解させるために、異なる処理を施して、各試料の特定の組成物に対して適合させた。各処理には、特定の順序において、1種、2種、または3種の異なる溶液の組み合わせを用いた。使用した溶液は、70重量%の硝酸と、30重量%の過酸化水素と、1Mの水酸化カリウムと、であった(それぞれ、純度99.9%)。各調製は、最終溶液の硝酸の濃度が2重量%に達するように選択された濃度の硝酸を用いて100mlにおいて完了した。
【0115】
最初、Sigmaから標準溶液を購入したが、その後、マトリックス効果を考慮に入れるために、Sigma製の超純元素と、脱イオン水と、純粋な硝酸と、を使用して標準溶液を調製した。
【0116】
●実施例1:バッテリペースト廃棄物の混合物のリサイクル
●脱硫
廃棄物バッテリペーストの代表的混合物を乾燥させ、細砕し、250μm未満のサイズの篩にかけた。結果として得られる乾燥粉末は、主にPbSO(70重量%)を含んでいた。
【0117】
乾燥粉末(30.00g)に、水(60ml)中におけるNaOH(7.96g)の溶液を加えた。結果として得られる懸濁液を、室温において400rpmで2時間撹拌した。次いで、粉末をろ過により懸濁液から分離し、脱イオン水で洗浄して、吸引下において風乾した。
【0118】
得られた最終質量は、24.41gの粉末であり、これは、24.46gの計算値に近かった。
【0119】
X線回析分析では、生成物中に残留する硫酸鉛(PbSO、PbO.PbSO、3PbO.PbSO、または4PbO.PbSO)が検出されなかった。検出された主な相は、予想されるように、PbOと、PbO.HOと、PbOと、であった。この粉末の試料に対するICP-AES測定は、BaSO添加剤に起因し得る0.1重量%(未処理のペーストの場合の18.22重量%に対して)の硫酸イオンの含有量を示した。
【0120】
ろ液に対するICP-AES分析は、実際に、ペーストから抽出されたSO 2-イオンと、NaOH由来のNaイオンのほとんどが残留していることを明らかにした。
【0121】
●溶解
脱硫された鉛酸バッテリペースト(10.00g)を、水(100ml)中における氷酢酸(5.2ml)の溶液に溶解させ、続いて、H(2.0ml、30重量%)を加えた。固体の大部分の溶解が数十秒内に直接観察でき、液相に少量の不溶性材料が懸濁した無色透明な溶液を生じた。この混合物を、室温において500rpmの速度で5分間撹拌した。
【0122】
次いで、無色透明な溶液をろ過した。ろ物(3.4重量%のペースト)を分析したところ、主に、BaSOと、炭素と、繊維と、であることが示された。
【0123】
●クエン酸鉛の沈殿
溶解工程からのろ液にクエン酸の固体結晶(5.17g)を加えた。白色のクエン酸鉛の沈殿が即座に始まったが、溶液を、400rpmにおいて撹拌しながら、80℃で1時間反応させた。次いで、溶液をろ過して、ろ物(クエン酸鉛)を回収し、乾燥させて秤量した。得られた質量は、13.12gであり、それは、13.32gの予想値に非常に近かった。得られた粉末がもっぱらPb(Cであることを確認するために、X線回析を使用し、純粋なPb(Cと合成した粉末との両方に対する熱重量分析は、完全な一致を示した。粉末に対するICP-AES分析は、SとBaとSnとAlとFeとZnとSbの完全な不在(0%)と、10ppmのオーダのCu含有量と、500ppmのオーダのNa含有量と、を示した。
【0124】
より徹底的な洗浄プロトコルにより、Na含有量は、100ppm未満の値まで減少し、それにより、上記の実施例におけるNa含有量は、水質と洗浄効率の作用であることが実証された。
【0125】
●クエン酸鉛の焼成
クエン酸鉛(10.00g)を、マッフル炉にて、空気中において350℃で1時間加熱し、次いで、室温まで冷ました。次いで、結果として得られるオレンジ色/黄色/緑色の粉末(一酸化鉛)を回収し、分析した。PbOへのPb(Cの総燃焼に対して予想された質量は6.70gであった。プロセスにより得られた材料の実際の質量は6.18gであったが、これは、焼成-燃焼プロセスの際にPbOの一部が鉛金属(Pb)へと還元されたためである。Pbの存在は、示差走査熱量測定により確認した。
【0126】
得られた相がPbOであることを確認するために、粉末をXRDにより分析した。材料の高純度を確認するために、ICP-AESを使用し、それは、上記のクエン酸鉛の場合に見られる純度レベルと同等であった。
【0127】
●実施例2:使用済バッテリ負極グリッドのリサイクル
●脱硫
使用済負極グリッド(100g)を、水(250ml)中におけるKOH(37g)の溶液に完全に沈め、低速(50rpm)で撹拌しながら8時間反応させた。反応前の外観は淡灰色/白色だったグリッドは、PbSO(白色)がβPbO(緑色)へと変化するに従って、緑色へと変わった。反応後、グリッドは、透明な溶液から取り出されて、ペーストは、金属集電装置から容易に分離され、その後、濯がれ、乾燥され、分析された。
【0128】
反応後、XRDは、残留するPbSOを検出できず、検出された成分は、主に、PbOと、PbO水和物と、水酸化鉛と、金属Pbと、であった。ペースト中の硫酸塩含有量を滴定分析により確認したところ、反応後のペースト中の硫酸塩含有量が0.1重量%未満であることが明らかとなった。
【0129】
●溶解
次いで、脱硫されたペースト(50.00g)を含水酢酸溶液(400ml、8重量%)に溶解させ、400rpmで10分間撹拌した。グリッドが負極板であり、PbOを全く含有しないため、Hは加えなかった。懸濁液中の固体の量は、溶解により明らかに減少した。
【0130】
次いで、溶液をろ過し、ろ物を分析したところ、主に、BaSOと、炭素と、繊維と、ペーストの総質量の7重量%を占めるグリッド由来の金属Pbの断片と、であることが分かった。
【0131】
酢酸鉛であることが予想されるものを結晶化させるために、溶液の一部を蒸発させた。結晶に対するXRDパターンは、純粋な酢酸鉛三水和物と完全な一致を示し、熱重量分析による結晶の分解は、同様の分解パターンを示し、生成された溶液が本当に酢酸鉛の溶液であることが確認された。
【0132】
●クエン酸鉛の沈殿
クエン酸の溶液(10ml、50重量%)をろ液(200ml)に加え、室温で10分間撹拌した。直ちに、白色固体の沈殿が観察された。次いで、沈殿物をろ別し、乾燥させて秤量した。得られた質量は12.76gであり、これは、使用したクエン酸の量により形成させることができるクエン酸鉛の最大量に対応する予想された12.88gに近かった。
【0133】
XRDと熱重量分析は、Pb(Cに対する完全な一致を示した。
【0134】
●クエン酸鉛の燃焼
沈殿物を、マッフル炉にて、空気中において400℃で1時間燃焼させ、XRDにより分析した。色は、純白から、PbOの形成を示す明るいオレンジ色へと変わったことが、XRD分析により確認された。検出することができた他の唯一の相は、金属Pbであった。
【0135】
●実施例3:硫酸塩リッチな鉛ペーストからのクエン酸鉛の生成
約75重量%のPbSO含有量を有する使用済鉛酸バッテリペーストに対して、実験を実施した。
【0136】
●脱硫
第1実験では、化学量論量のNaOHを使用して、鉛ペーストを脱硫した。第2実験では、化学量論量のNaCOを使用して、鉛ペーストを脱硫した。両方の実験において、測定された重量損失は、脱硫の結果として予想された理論上の重量損失に近かった。
【0137】
●溶解
各脱硫実験より、脱硫されたペーストの試料5.00gを取った。試料を、それぞれ別々に、酢酸(2.15ml)と、H(1.00ml、約35%)と、脱イオン水(50ml)と、に混合した。結果として得られる混合物を、室温において、400rpmで約30分間撹拌した。混合物をろ過し、不溶性成分を回収した。
【0138】
●クエン酸鉛の沈殿
化学量論量のクエン酸を2つのろ液に加えた。両方の実験において、直ちに、微細な白色沈殿物としてのクエン酸鉛の形成が観察された。混合物を、室温においてマグネチックスターラを使用して400rpmで1時間撹拌した。混合物をろ過し、白色沈殿物を80℃で一晩乾燥させた。両方の実験において、XRD分析は、Pb(Cの特徴的ピークを示した。
【0139】
●実施例4:脱硫されたペーストのリサイクル
市販の脱硫された鉛含有ペーストを入手した。入手したままの脱硫されたペーストは、約28重量%のPbSOレベルまで部分的に脱硫されていた(炭酸塩を使用)。実施例3において使用したペーストは、名目上、商業的脱硫プロセスのための代表的な供給ペーストであり、それを、実施例4において入手したままの脱硫されたペーストを提供するために使用した。
【0140】
●溶解
入手したままの脱硫されたペースト(10.00g)を、酢酸(4.3ml)と、H(3.00ml、約35%)と、脱イオン水(100ml)と、に混合した。結果として得られる混合物を、室温にて、400rpmで、5分間未満において撹拌した。混合物をろ過し、不溶性成分を回収した。
【0141】
●クエン酸鉛の沈殿
化学量論量のクエン酸をろ液に加えた。直ちに、微細な白色沈殿物としてのクエン酸鉛の形成が観察された。混合物を、室温においてマグネチックスターラを使用して400rpmで1時間撹拌した。混合物をろ過し、白色沈殿物を80℃で一晩乾燥させた。XRD分析は、Pb(Cの特徴的ピークを示した。
【0142】
●クエン酸鉛の燃焼
乾燥させた沈殿物を、マッフル炉において、5℃/分で350℃まで加熱し、1時間維持した。試料を室温まで冷まし、その後、XRDを使用して分析した。純度の低い鉛粉が生成された。
【0143】
比較のため、実施例3において炭酸塩脱硫経路を介して生成されたクエン酸鉛を、同じ方法で加熱処理した。XRD分析は、純粋な鉛粉が生成されて、鉛粉は、PbOと金属Pbの両方を含有することを示した。
【0144】
●実施例5:電気アーク炉ダストのリサイクル
鉄鋼産業ダストの試料を入手した。試料は、既に、従来の亜鉛回収処理を施されており、約60重量%から70重量%までのPbSOを含有した。NaOHを使用して試料に対して脱硫処理を行い、続いて、クエン酸鉛への変化および焼成を行った。
【0145】
試料に対する初期リサイクル実験は、脱硫と、クエン酸鉛への変化と、がゆっくりと進行することを示した。試料のさらなる分析により、約20重量%から30重量%までの量のCとSiOの存在が明らかとなり、これは、試料中の粒子をコーティングしていると考えられる。
【0146】
炭素を排除するために必要な最適な前処理温度を特定するために、入手したままの材料の試料を、500℃と600℃に予め加熱した。試料を、1分あたり5℃の速度において加熱し、温度を、500℃または600℃で1時間維持した。両方の試料において炭素の量は減少したが、600℃で処理した試料は、500℃で処理した試料と比べて、炭素の著しく大きな減少を示した。
【0147】
前処理した試料を、NaOHを使用して脱硫し、クエン酸鉛へと変化させ、次いで、鉛粉を与えるために、450℃において空気中で焼成した。得られた鉛粉生成物は、PbOと金属Pbを含有し、最も高い純度の生成物は、600℃で前処理した試料から得られた。

【国際調査報告】