(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】嗜癖の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20220308BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20220308BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20220308BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20220308BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P39/00
A61P39/02
A61P25/36
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542362
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2020014818
(87)【国際公開番号】W WO2020154519
(87)【国際公開日】2020-07-30
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】メイツ,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】バノーバー,キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,グレッチェン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZC37
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、オピエート嗜癖の再発の治療または予防のための方法における使用のための、本明細書に記載の、遊離した、固体の、医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の特定の置換複素環縮合γ-カルボリン、その医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オピエート嗜癖の再発の治療または予防のための(例えば、オピオイド嗜癖の解毒および維持治療、またはオピオイド嗜癖の再発の予防のための)方法であって、遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、式I:
【化1】
式I
[式中、
R
1は、H、C
1-6アルキル、-C(O)-O-C(R
a)(R
b)(R
c)、-C(O)-O-CH
2-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8であり;
R
2およびR
3は、独立して、H、D、C
1-6アルキル(例えばメチル)、C
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)、ハロ(例えばF)、シアノまたはヒドロキシより選択され;
Lは、C
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)、C
1-6アルコキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)、C
2-3アルコキシC
1-3アルキレン(例えば-CH
2CH
2OCH
2-)、C
1-6アルキルアミノまたはN-C
1-6アルキルC
1-6アルキルアミノ(例えばプロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、C
1-6アルキルチオ(例えば-CH
2CH
2CH
2S-)、C
1-6アルキルスルホニル(例えば-CH
2CH
2CH
2S(O)
2-)であり、これらの各々は、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよく;
各R
4は、独立して、C
1-6アルキル(例えばメチル)、C
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)、ハロ(例えばF)、シアノまたはヒドロキシより選択され;
Zは、アリール(例えばフェニル)およびヘテロアリール(例えばピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)より選択され、該アリールまたはヘテロアリールは、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよく;
R
8は、-C(R
a)(R
b)(R
c)、-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-N(R
d)(R
e)であり;
R
a、R
bおよびR
cは、各々独立して、HおよびC
1-24アルキルより選択され;
R
dおよびR
eは、各々独立して、HおよびC
1-24アルキルより選択され;
R
6およびR
7は、各々独立して、H、C
1-6アルキル、カルボキシおよびC
1-6アルコキシカルボニルより選択される]
で示される化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
R
1が、Hである、式Iで示される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1が、C
1-6アルキル、例えばメチルである、式Iで示される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R
1が、-C(O)-O-C(R
a)(R
b)(R
c)、-C(O)-O-CH
2-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8である、式Iで示される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Lが、非置換のC
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)であるか、またはLが、1つ以上のR
4部分で置換されているC
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Lが、非置換のC
1-6アルキオキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)であるか、またはLが、1つ以上のR
4部分で置換されているC
1-6アルコキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R
1、R
2およびR
3が各々、Hである、式Iで示される化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Zが、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよいアリール(例えばフェニル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Zが、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノより選択される、1つのR
4部分で置換されているフェニルである(例えば、Zが、4-フルオロフェニル、または4-クロロフェニルまたは4-シアノフェニルである)、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Zが、1つのフルオロで置換されているフェニル(例えば、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルまたは4-フルオロフェニル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Zが、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよいヘテロアリール(例えばピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ヘテロアリールが、単環式5員または6員ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チオフェニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヘテロアリールが、二環式9員または10員ヘテロアリール(例えば、インドリル、イソインドリル、ベンズフラニル、ベンズチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンズチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾジオキソリル、2-オキソ-テトラヒドロキノリニル)である、式Iで示される化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ヘテロアリールが、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノより選択される、1つのR
4部分で置換されている(例えば、ヘテロアリールが、6-フルオロ-3-インダゾリル、6-クロロ-3-インダゾリル、6-フルオロ-3-ベンゾイソオキサゾリルまたは5-クロロ-3-ベンゾイソオキサゾリルである)、式Iで示される化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
化合物が、各々独立して、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化2】
【化3】
からなる群より選択される、式Iで示される化合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
化合物が、各々独立して、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化4】
からなる群より選択される、式Iで示される化合物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
化合物が、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化5】
である、式Iで示される化合物を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
塩、例えば医薬的に許容される塩の形態の式Iで示される化合物を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
式Iで示される化合物が、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して式Iで示される化合物を含む、医薬組成物の形態で投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
医薬組成物が、持続放出または遅延放出製剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医薬組成物が、ポリマーマトリックス中の式Iで示される化合物を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
患者が、不安(全般性不安、社交不安およびパニック障害を含む)、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDD)、精神病(認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想を含む)、統合失調症、片頭痛、疼痛障害および疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長時間治療を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、神経障害性疼痛、歯痛、線維筋痛症、他の薬物依存症、例えば刺激薬依存症および/またはアルコール依存症に罹患している、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
患者が、オピエートまたはオピオイド薬、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せによる、物質使用または物質濫用の病歴を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
オピエート嗜癖の再発の治療または予防のための医薬の製造における、遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1に定義する式Iで示される化合物の使用。
【請求項25】
オピエート嗜癖の再発の治療または予防における使用のための、請求項1に定義する式Iで示される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年1月23日出願の米国仮出願第62/795,899号に基づく優先権および利益を主張する国際出願であり、当該出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
(発明の分野)
本発明は、オピエート嗜癖の再発の治療および/または予防のための方法における使用のための、本明細書に記載の、遊離または医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用、その医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の処置において5-HT2受容体、特に5-HT2A受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許第39680号および米国再発行特許第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および肥満の処置に有用な新規な化合物として記載されている。米国特許第8,309,722号および米国特許第7,081,455号はまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、ならびに中枢神経系障害、例えば嗜癖行動および睡眠障害の制御および予防に有用なセロトニンのアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらのγ-カルボリンの使用を開示している。
【0003】
また、米国特許第8,598,119号は、精神病とうつ病性障害の組合せならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠、うつ病性および/または気分障害の処置のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示する。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドーパミンD2受容体に影響を及ぼすことなくまたは影響を最小限とし、これによりドーパミンD2経路の高い占有率に関連する副作用、または慣用の睡眠鎮静薬(例えばベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、上腹部不快感、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)なしに睡眠障害の処置に有用な、5-HT2A受容体に選択的に拮抗する、低用量におけるこれら化合物の使用を開示し、請求する。米国特許第8,648,077号はまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示する。
【0004】
また、理論に拘束されるものではないが、最近の証拠は、上記の置換縮合複素環γ-カルボリンのいくつかが、一部、ケタミンと類似の方法で、mTOR1シグナル伝達を介する拮抗作用によって作動し得ることを示す。ケタミンは、選択的NMDA受容体アンタゴニストである。ケタミンは、一般的な心因性モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン)と無関係なシステムによって作用し、これが極めてより急速な作用の主な理由である。ケタミンは、シナプス外グルタミン酸作動性NMDA容体に直接拮抗し、これはまた、AMPA型グルタミン酸受容体の活性化を間接的にもたらす。下流の影響は、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびmTORC1キナーゼ経路を含む。ケタミンと同様に、最近の証拠は、本開示のものに関連する化合物が、D1受容体の活性化を介してラット内側前頭前野錐体ニューロンにおけるNMDAおよびAMPA-誘導電流の両方を増強すること、およびこれがmTORC1シグナル伝達の増加に関連することを示唆している。国際出願第PCT/US2018/043100号は、特定の置換縮合複素環γ-カルボリンについてのこのような効果、およびそれに関連する有用な治療適応症を開示している。
【0005】
米国特許出願公開第2017/319580号は、更なる新規な縮合複素環γ-カルボリンを開示する。これらの新規な化合物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドーパミン受容体調節を示すことが見出された。しかしながら、これらの化合物は、予想外にも、μオピエート受容体で著しい活性を示すことが見出された。これらの新規化合物の類似体は、例えば国際公開第2018/126140号および国際公開第2018/126143号、ならびにこれらの対応する米国特許出願公開第2019/0330211号および米国特許出願公開第2019/0345160号に開示されており、これらの内容は、それぞれ出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0006】
例えば、以下に示す式Aの化合物は、強力なセロトニン5-HT
2A受容体アンタゴニストおよびμオピエート受容体パーシャルアゴニストまたはバイアスアゴニストである。この化合物はまた、ドーパミン受容体、特にドーパミンD1受容体と相互作用する。
【化1】
式A
式Aの化合物は、そのD
1受容体活性により、mTOR経路を介するNMDAおよびAMPA介在性シグナル伝達も増強し得るとも考えられている。したがって、式Aの化合物は、オピエート嗜癖、例えばオピエート使用障害を含む、中枢神経系障害の治療または予防に有用である。
【0007】
オピエート使用障害(OUD)などの薬物依存障害は、治療成功が困難である障害の一群である。オピオイド過剰摂取によって米国で毎日約100人の命が失われているといわれており、オピオイドの流行は、米国で広がり続けている。メサドン、ブプレノルフィンおよびナルトレキソンは、OUDの治療で最も頻繁に用いられている。メサドンは、μオピオイド受容体(MOP)アゴニストであり、ブプレノルフィンは、MOPパーシャルアゴニストであり、ナルトレキソンは、MOPアンタゴニストである。嗜癖治療および再発防止におけるこれらの薬物の成功は、限定的であり、OUDのために処方される治療法に対する長期アドヒアランスは低いままである。また、これらの治療は、OUDに関連する一般的な併存疾患、例えば気分および不安障害を悪化させることが多く、これはさらに寛解のリスクを増加させる。急激なオピオイド濫用離脱(すなわち、「コールドターキー(cold turkey)」になること)はまた、不快感、抑うつおよび不安を含む重度の副作用に関連しており、一般的な治療薬は、これらの問題に対処せず、悪化させ得る。したがって、OUD治療の改善が必要に迫られている。
【0008】
薬物嗜癖は、薬物嗜癖者の間で再発が極めて一般的であるため、「再発性疾患」として知られている。薬物を繰り返し使用することにより、自己制御を発揮し、渇望に抵抗するヒトの能力に影響を及ぼす脳に変化を生じさせる。回復した常習者の85%超が、治療開始の1年以内に再発に屈し、薬物使用に戻る。回復した薬物常習者は、治療開始後何年間も再発のリスクが高いままである。
【0009】
回復した常習者は、ほとんど常に、薬物関連の合図(cue)に応答して薬物使用に戻る。再発の最も一般的な引き金は、人(友人または売人)、場所(かつて薬物を濫用または購入した場所)、物(例えば薬物の道具)および気分(例えば不安またはうつ病)などの薬物使用に関連するストレスの合図である。これらの引き金は、嗜癖の2段階の形成プロセスの副産物である。第一に、脳の報酬機能が過剰に刺激される-薬物濫用は、脳におけるドーパミン介在性報酬経路を活性化し、使用者に幸福感またはリラックス感をもたらし、繰り返し実施を促す。第二に、脳における報酬中枢の繰り返しの過剰刺激は、記憶、衝動性および意思決定の長期的な変化をもたらす。ヒトの脳のイメージング研究は、薬物使用が脳の腹側被蓋野(報酬中枢の一部)と脳の記憶ハブ(海馬など)との間の接続を変化させることさえ示している。
【0010】
科学者らは、この再発プロセスを実証する信頼できる動物モデルを開発した。例えば、多くの研究は、ラットが餌または水を供給するレバーよりも嗜癖性の薬物を供給するレバーをすぐに学習することを示している。動物は、薬物から「高揚感」を得る方を好んで、食事および睡眠などの通常の行動さえ放棄する。これらのラットはまた、高揚感を得た環境を記憶しており、これが連合を形成する。したがって、ラットを餌および水のレバーしかないケージに移すと、薬物を利用できないことを受け入れ、餌および水を供給するレバーを押す通常の習慣に戻る。しかしながら、3つ目のレバーが薬物を供給する最初の環境に戻すと、それが引き金となり、薬物報酬の期待を積極的に求める(3つ目のレバーが生理食塩水に接続されている場合さえ)。
【0011】
再発は段階的なプロセスであり、ヒトが薬物使用に戻る数週間前または数か月前にさえ始まり得る。心理学者は、一般的に再発の3つの段階を認識している:(1)しばしば回復した常習者の脳が以前の薬物濫用時と関連付ける気分である、ストレス、不安またはうつ病の感情によって特徴付けられる、感情的段階;(2)回復した常習者が最初に、正当化の考えを含む薬物使用へ戻ることを意識的に考え始める(例えば、「今日必要だが、一度だけ使用して、それで終わりにしよう」)、精神的段階;および(3)常習者が実際に再び薬物を使用するステップを踏む、身体的段階。再発を防止する現在のほとんどの方法は、再発につながる心理的プロセスを妨げることを目的とする。これには、再発を引き起こし得るリスクの高い状況を回避するよう常習者に教えること、および再発プロセスが進行しないように心理的対処ツールおよび技術を成長させることが含まれる。これには、認知行動療法が含まれる。しかしながら、このような技術が失敗し、再発が薬物使用の時点に進む場合、常習者は再び解毒プログラムを開始しなければならないかもしない。
【0012】
再発は、常習者がもはや適応していないレベルの薬物使用に戻るように促し得るため、回復中の常習者に特に危険である。嗜癖性の薬物、特にオピエートを服用しているヒトは、身体的耐性を発達させることが知られている。これは、μオピエート受容体などの細胞受容体の発現レベルの変化により介在される。オピエートなどの薬物の濫用を続けると、受容体が減少し、ますます高用量の薬物が同じ薬理学的効果を達成するのに必要となるという影響がある。したがって、経験の長い常習者は、過剰摂取のリスクなしに比較的大量の薬物を服用できる。しかしながら、同常習者は、一定期間の禁欲後、より薬物ナイーブな状態(すなわち、オピエート受容体の発現レベルがより高い)に戻っている。その後、最後に使用したときと同等の用量の薬物を服用する再発常習者は、致命的な過剰摂取の相当なリスクにさらされる。
【0013】
オピエート嗜癖の既存の治療は、再発を効果的に防止しないことがしばしばある。多くの治療プログラムでは、回復中の常習者は、メサドン、またはあまり一般的ではないが、ブプレノルフィンまたはナルトレキソンなどの薬物での治療を30日間のみ受ける。メサドンは、離脱症候群の症状を軽減するのに有効であるため、最初の解毒期間に好ましい薬物である。典型的には、これらの薬剤は、短期間のみ、例えば1~3か月間投与される。メサドンはまた長期間の治療に用いられ、効果が様々である(回復中の常習者の60%のみが1年目でこの治療に留まり、メサドン維持を受けている常習者の15%が依然として違法なオピエートを使用している)。
【0014】
したがって、オピエート嗜癖の再発を防止する能力が改善された薬物が必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、オピエート嗜癖の再発の治療または予防のための(例えば、オピオイド嗜癖の解毒および維持治療、またはオピオイド嗜癖の再発の予防のための)方法であって、該方法が、式Iで示される化合物またはその医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、式Iで示される化合物が、遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、
【化2】
式I
[式中、
R
1は、H、C
1-6アルキル、-C(O)-O-C(R
a)(R
b)(R
c)、-C(O)-O-CH
2-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8であり;
R
2およびR
3は、独立して、H、D、C
1-6アルキル(例えばメチル)、C
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)、ハロ(例えばF)、シアノまたはヒドロキシより選択され;
Lは、C
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)、C
1-6アルコキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)、C
2-3アルコキシC
1-3アルキレン(例えばCH
2CH
2OCH
2)、C
1-6アルキルアミノまたはN-C
1-6アルキルC
1-6アルキルアミノ(例えばプロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、C
1-6アルキルチオ(例えば-CH
2CH
2CH
2S-)、C
1-6アルキルスルホニル(例えば-CH
2CH
2CH
2S(O)
2-)であり、これらの各々は、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよく;
各R
4は、独立して、C
1-6アルキル(例えばメチル)、C
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)、ハロ(例えばF)、シアノまたはヒドロキシより選択され;
Zは、アリール(例えばフェニル)およびヘテロアリール(例えばピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)より選択され、該アリールまたはヘテロアリールは、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよく;
R
8は、-C(R
a)(R
b)(R
c)、-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-N(R
d)(R
e)であり;
R
a、R
bおよびR
cは、各々独立して、HおよびC
1-24アルキルより選択され;
R
dおよびR
eは、各々独立して、HおよびC
1-24アルキルより選択され;
R
6およびR
7は、各々独立して、H、C
1-6アルキル、カルボキシおよびC
1-6アルコキシカルボニルより選択される]
で示される化合物である、方法を提供する。
【0016】
更なる態様において、本開示は、オピエート嗜癖の再発の治療または予防のための医薬の製造における、本開示の化合物、例えば式Iで示される化合物の使用を提供する。本開示は、オピエート嗜癖の再発の治療または予防における使用のための、本開示の化合物、例えば式Iで示される化合物をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1態様において、本開示は、オピエート嗜癖の再発の治療または予防のための(例えば、オピオイド嗜癖の解毒および維持治療、またはオピオイド嗜癖の再発の予防のための)方法(方法1)であって、該方法が、式Iで示される化合物、または式Iで示される化合物を含む、医薬組成物I、I-A、I-B、I-CまたはP.1~P.7のいずれかを、それを必要とする患者に投与することを含み、式Iで示される化合物が、遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、式I:
【化3】
式I
[式中、
R
1は、H、C
1-6アルキル、-C(O)-O-C(R
a)(R
b)(R
c)、-C(O)-O-CH
2-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8であり;
R
2およびR
3は、独立して、H、D、C
1-6アルキル(例えばメチル)、C
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)、ハロ(例えばF)、シアノまたはヒドロキシより選択され;
Lは、C
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)、C
1-6アルコキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)、C
2-3アルコキシC
1-3アルキレン(例えばCH
2CH
2OCH
2)、C
1-6アルキルアミノまたはN-C
1-6アルキルC
1-6アルキルアミノ(例えばプロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、C
1-6アルキルチオ(例えば-CH
2CH
2CH
2S-)、C
1-6アルキルスルホニル(例えば-CH
2CH
2CH
2S(O)
2-)であり、これらの各々は、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよく;
各R
4は、独立して、C
1-6アルキル(例えばメチル)、C
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)、ハロ(例えばF)、シアノまたはヒドロキシより選択され;
Zは、アリール(例えばフェニル)およびヘテロアリール(例えばピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)より選択され、該アリールまたはヘテロアリールは、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよく;
R
8は、-C(R
a)(R
b)(R
c)、-O-C(R
a)(R
b)(R
c)または-N(R
d)(R
e)であり;
R
a、R
bおよびR
cは、各々独立して、HおよびC
1-24アルキルより選択され;
R
dおよびR
eは、各々独立して、HおよびC
1-24アルキルより選択され;
R
6およびR
7は、各々独立して、H、C
1-6アルキル、カルボキシおよびC
1-6アルコキシカルボニルより選択される]
で示される化合物である、方法を提供する。
【0018】
本開示は:
1.1 R
1が、Hである、式Iの化合物を含む、方法1;
1.2 R
1が、C
1-6アルキル、例えばメチルである、式Iの化合物を含む、方法1;
1.3 R
1が、-C(O)-O-C(R
a)(R
b)(R
c)である、式Iの化合物を含む、方法1;
1.4 R
aが、Hであり、R
bおよびR
cが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.3;
1.5 R
aおよびR
bが、Hであり、R
cが、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルである、式Iの化合物を含む、方法1.3;
1.6 R
a、R
bおよびR
cが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.3;
1.7 R
a、R
bおよびR
cが各々、Hである、式Iの化合物を含む、方法1.3;
1.8 R
aおよびR
bが、Hであり、R
cが、C
10-14アルキルである(例えば、R
cが、CH
3(CH
2)
10またはCH
3(CH
2)
14である)、式Iの化合物を含む、方法1.3;
1.9 R
1が、-C(O)-O-CH
2-O-C(R
a)(R
b)(R
c)である、方法1;
1.10 R
aが、Hであり、R
bおよびR
cが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.9;
1.11 R
aおよびR
bが、Hであり、R
cが、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルである、式Iの化合物を含む、方法1.9;
1.12 R
a、R
bおよびR
cが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.9;
1.13 R
a、R
bおよびR
cが各々、Hである、式Iの化合物を含む、方法1.9;
1.14 R
1が、-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8であり、R
8が、-C(R
a)(R
b)(R
c)である、式Iの化合物を含む、方法1;
1.15 R
1が、-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8であり、R
8が、-O-C(R
a)(R
b)(R
c)である、式Iの化合物を含む、方法1;
1.16 R
aが、Hであり、R
bおよびR
cが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.14または1.15;
1.17 R
aおよびR
bが、Hであり、R
cが、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルである、式Iの化合物を含む、方法1.14または1.15;
1.18 R
a、R
bおよびR
cが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.14または1.15;
1.19 R
a、R
bおよびR
cが各々、Hである、式Iの化合物を含む、方法1.14または1.15;
1.20 R
6が、Hであり、R
7が、C
1-3アルキルであり(例えば、R
7が、メチルまたはイソプロピルである)、R
8が、C
10-14アルキルである(例えば、R
8が、CH
3(CH
2)
10またはCH
3(CH
2)
14である)、式Iの化合物を含む、方法1.14~1.19のいずれか;
1.21 R
1が、-C(R
6)(R
7)-O-C(O)-R
8であり、R
8が、-N(R
d)(R
e)である、式Iの化合物を含む、方法1;
1.22 R
dが、Hであり、R
eが、独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.21;
1.23 R
dおよびR
eが、各々独立して、C
1-24アルキル、例えば、C
1-20アルキル、C
5-20アルキル、C
9-18アルキル、C
10-16アルキル、またはC
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキルまたはC
16アルキルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.21;
1.24 R
dおよびR
eが各々、Hである、式Iの化合物を含む、方法1.21;
1.25 R
6が、Hであり、R
7が、Hである、式Iの化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
1.26 R
6が、C
1-6アルキルであり、R
7が、C
1-6アルキルである、式Iの化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
1.27 R
6が、Hであり、R
7が、C
1-6アルキルである、式Iの化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
1.28 R
6が、Hであり、R
7が、カルボキシである、式Iの化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
1.29 R
6が、Hであり、R
7が、C
1-6アルコキシカルボニル、例えば、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニルである、式Iの化合物を含む、方法1.14~1.24のいずれか;
1.30 R
2およびR
3が、Hである、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.29のいずれか;
1.31 R
2が、Hであり、R
3が、Dである、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.29のいずれか;
1.32 R
2およびR
3が、Dである、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.29のいずれか;
1.33 Lが、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよいC
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)、C
1-6アルコキシ(例えばプロポキシ)、C
2-3アルコキシC
1-3アルキレン(例えばCH
2CH
2OCH
2)、C
1-6アルキルアミノ(例えばプロピルアミノまたはN-メチルプロピルアミノ)、またはC
1-6アルキルチオ(例えば-CH
2CH
2CH
2S-)である、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.32のいずれか;
1.34 Lが、非置換のC
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)である、式Iの化合物を含む、方法1.33;
1.35 Lが、1つ以上のR
4部分で置換されているC
1-6アルキレン(例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン)である、式Iの化合物を含む、方法1.33;
1.36 Lが、非置換のC
1-6アルキオキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)である、式Iの化合物を含む、方法1.33;
1.37 Lが、1つ以上のR
4部分で置換されているC
1-6アルコキシ(例えばプロポキシまたはブトキシ)である、式Iの化合物を含む、方法1.33;
1.38 Lが、非置換のC
2-3アルコキシC
1-3アルキレン(例えばCH
2CH
2OCH
2)である、式Iの化合物を含む、方法1.33;
1.39 Lが、1つ以上のR
4部分で置換されているC
2-3アルコキシC
1-3アルキレン(例えばCH
2CH
2OCH
2)である、式Iの化合物を含む、方法1.33;
1.40 R
1、R
2およびR
3が各々、Hである、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.39のいずれか;
1.41 Lが、-(CH
2)
n-X-であり、nが、2、3および4より選択され、Xが、-O-、-S-、-NH-、-N(C
1-6アルキル)-およびCH
2より選択される、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.40のいずれか;
1.42 Lが、-(CH
2)
n-X-であり、nが、2、3および4より選択され、Xが、-O-である、式Iの化合物を含む、方法1.41;
1.43 Lが、-(CH
2)
n-X-であり、nが、3であり、Xが、-O-、-S-、-NH-および-N(C
1-6アルキル)-(例えば-N(CH
3)-)より選択される、式Iの化合物を含む、方法1.41;
1.44 Lが、-(CH
2)
n-X-であり、nが、3であり、Xが、CH
2である、式Iの化合物を含む、方法1.41;
1.45 Zが、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよいアリール(例えばフェニル)である、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.44のいずれか;
1.46 Zが、1つ以上のR
4部分で置換されているアリール(例えばフェニル)である、式Iの化合物を含む、方法1.45;
1.47 Zが、1つ、2つ、3つまたは4つのR
4部分で置換されているフェニルである、式Iの化合物を含む、方法1.46;
1.48 1つ、2つ、3つまたは4つのR
4部分が、独立して、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.46;
1.49 Zが、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノより選択される、1つのR
4部分で置換されているフェニルである(例えば、Zが、4-フルオロフェニル、または4-クロロフェニルまたは4-シアノフェニルである)、式Iの化合物を含む、方法1.46;
1.50 Zが、1つのフルオロで置換されているフェニル(例えば2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルまたは4-フルオロフェニル)である、式Iの化合物を含む、方法1.46;
1.51 Zが、4-フルオロフェニルである、式Iの化合物を含む、方法1.46;
1.52 Zが、1つ以上のR
4部分で置換されていてもよいヘテロアリール(例えばピリジル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル)である、式Iの化合物を含む、方法Iまたは1.1~1.44のいずれか;
1.53 ヘテロアリールが、単環式5員または6員ヘテロアリール(例えばピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チオフェニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル)である、式Iの化合物を含む、方法1.52;
1.54 ヘテロアリールが、ピリジル、ピリミジニルおよびピラジニルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.53;
1.55 ヘテロアリールが、二環式9員または10員ヘテロアリール(例えばインドリル、イソインドリル、ベンズフラニル、ベンズチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンズチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾジオキソリル、2-オキソ-テトラヒドロキノリニル)である、式Iの化合物を含む、方法1.52;
1.56 ヘテロアリールが、インダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、キノリニル、ベンゾジオキソリルおよび2-オキソ-テトラヒドロキノリニルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.55;
1.57 ヘテロアリールが、インダゾリル、ベンゾイソオキサゾリルおよびキノリニルより選択される、式Iの化合物を含む、方法1.55;
1.58 ヘテロアリールが、1つ、2つ、3つまたは4つのR
4部分で置換されている、式Iの化合物を含む、方法1.52~1.57のいずれか;
1.59 1つ、2つ、3つまたは4つのR
4部分が、独立して、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、シアノ、ヒドロキシ、またはC
1-6アルコキシ(例えばメトキシ)より選択される、式Iの化合物を含む、方法1.58;
1.60 ヘテロアリールが、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)およびシアノより選択される、1つのR
4部分で置換されている(例えば、ヘテロアリールが、6-フルオロ-3-インダゾリル、6-クロロ-3-インダゾリル、6-フルオロ-3-ベンゾイソオキサゾリルまたは5-クロロ-3-ベンゾイソオキサゾリルである)、式Iの化合物を含む、方法1.58または1.59;
1.61 化合物が、各々独立して、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化4】
【化5】
からなる群より選択される、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.60のいずれか;
1.62 化合物が、各々独立して、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化6】
からなる群より選択される、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.60のいずれか;
1.63 化合物が、各々独立して、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化7】
からなる群より選択される、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.60のいずれか;
1.64 化合物が、遊離または医薬的に許容される塩形態の:
【化8】
である、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.61のいずれか;
1.65 遊離形態の式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.64のいずれか;
1.66 塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.64のいずれか;
1.67 化合物が、酸付加塩形態、例えば塩酸塩またはトルエンスルホン酸塩形態である、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.64のいずれか;
1.68 実質的に純粋なジアステレオマー形態(すなわち、実質的に他のジアステレオマーを含まない)の式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.67のいずれか;
1.69 70%超、好ましくは80%超、より好ましくは90%超および最も好ましくは95%超のジアステレオマー過剰率を有する、式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.67のいずれか;
1.70 固体形態、例えば結晶形態の式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.69のいずれか;
1.71 単離または精製された形態(例えば、少なくとも90%、または少なくとも95%または少なくとも98%または少なくとも99%純粋な形態)の式Iの化合物を含む、方法1または1.1~1.70のいずれか;
1.72 式Iの化合物が、式Iの化合物が、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して含む、医薬組成物の形態で投与される、方法1または1.1~1.71のいずれか;
1.73 式Iの化合物が、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合した医薬的に許容される塩形態である、方法1.72;
1.74 医薬組成物が、例えば本明細書に記載の医薬組成物1-Aによる、持続放出または遅延放出製剤である、方法1.72または1.73;
1.75 医薬組成物が、例えば本明細書に記載の医薬組成物1-Bによる、ポリマーマトリックス中の式Iの化合物を含む、方法1.72、1.73または1.74;
1.76 医薬組成物が、例えば本明細書に記載の医薬組成物1-CまたはP.1~P.7のいずれかによる、浸透圧による制御放出経口送達システムとして製剤化される、方法1.72~1.75のいずれか;
1.77 医薬組成物が、錠剤またはカプセル剤の形態である、方法1.72~1.76のいずれか;
1.78 医薬組成物が、経口、舌下またはバッカル投与のために製剤化される、方法1.72~1.77のいずれか;
1.79 医薬組成物が、即溶性経口錠剤(例えば即溶性舌下錠剤)である、方法1.72~1.78のいずれか;
1.80 医薬組成物が、鼻腔内または肺内投与のために(例えば、吸入用エアロゾル、ミストまたは粉末として)製剤化される、方法1.72~1.76のいずれか;
1.81 医薬組成物が、注射による投与のために、例えば無菌水溶液として製剤化される、方法1.72~1.75のいずれか;
1.82 医薬組成物が、静脈内、髄腔内、筋肉内、皮下または腹腔内注射のために製剤化される、方法1.81
含む、更なる例示的な実施態様の方法1を提供する。
【0019】
本明細書で用いる用語「本開示の化合物」は、方法1に記載の化合物のいずれか、または方法1.1~1.71の実施態様のいずれかに記載の化合物を指す。したがって、方法1.1~1.71の実施態様のいずれか1つ以上による化合物への本明細書での言及は、該方法に記載の化合物を指す。
【0020】
いくつかの実施態様において、方法1は、持続または遅延放出製剤(医薬組成物1-A)、例えばデポー製剤のための形態の本開示の化合物の投与を含む。いくつかの実施態様において、式Iの化合物または1.1~1.71のいずれかは、好ましくは、化合物の持続または遅延放出を提供する、注射可能なデポーの形態で、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して、遊離または医薬的に許容される塩形態で提供される。
【0021】
特定の実施態様において、医薬組成物1-Aは、遊離塩基または医薬的に許容される塩形態、所望により結晶形態の式Iの化合物または本開示の化合物のいずれかを含み、ここで、該化合物は、マイクロ粒子またはナノ粒子サイズ、例えば、0.5~100μm、例えば5~30μm、10~20μm、20~100μm、20~50μmまたは30~50μmの体積ベースの粒子径(例えば直径またはDv50)を有する粒子または結晶に粉砕されているかまたは結晶化される。このような粒子または結晶は、適切な医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水と組み合されて、注射用デポー製剤を形成し得る。例えば、デポー製剤は、4~6週間の治療に適した投与量の薬物を有する筋肉内または皮下注射に製剤化され得る。いくつかの実施態様において、粒子または結晶は、0.1~5m2/g、例えば0.5~3.3m2/gまたは0.8~1.2m2/gの表面積を有する。
【0022】
別の一実施態様において、本開示は、医薬組成物Iであり、式Iの化合物(または本開示の化合物のいずれか)がポリマーマトリックス中である、医薬組成物I-Bを提供する。一の実施態様において、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解している。更なる実施態様において、ポリマーマトリックスは、デポー製剤において用いられる標準的ポリマー、例えばヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体より選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカルボネート、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステルおよびその混合物のポリマーを含む。更なる実施態様において、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリd,l-乳酸、ポリグリコール酸、PLGA50:50、PLGA85:15およびPLGA90:10のポリマーからなる群より選択される。別の一実施態様において、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどより選択される。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)を含む。
【0023】
医薬組成物I-Bは、持続または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14から約30から約180日間にわたる本開示の化合物の制御および/または持続放出のために(例えばデポー組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30、約60または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の一例において、ポリマーマトリックスは、約120または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0024】
さらに別の一実施態様において、医薬組成物IまたはI-AまたはI-Bは、例えば無菌水溶液として、注射による投与のために製剤化される。
【0025】
別の一実施態様において、本開示は、米国特許出願公開第2001/0036472号および米国特許出願公開第2009/0202631号に記載の浸透圧による制御放出経口送達システム(OROS)において前記の式Iの化合物(または本開示の化合物のいずれか)を含む医薬組成物(医薬組成物I-C)を提供し、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、一実施態様において、本開示は、(a)遊離または医薬的に許容される塩形態の式Iの化合物を、所望により医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して、含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順序で、(i)バリア層、(ii)膨張層および(iii)半透過層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;および(c)および壁を通って形成されているかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(医薬組成物P.1)を提供する。
【0026】
別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式Iの化合物(または本開示の化合物のいずれか)を、所望により医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して、含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.2)を提供する。
【0027】
さらに別の一実施態様において、本発明は液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式Iの化合物(または本開示の化合物のいずれか)を、所望により医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して、含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が膨張層と出口オリフィスでの環境との間にシールを形成する、組成物(医薬組成物P.3)を提供する。
【0028】
さらに別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式Iの化合物(または本開示の化合物のいずれか)を、所望により医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して、含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層の一部に接触している膨張層、少なくとも膨張層を包含する半透過層、およびゼラチンカプセル表面から使用環境まで延びている投与剤形に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、組成物(医薬組成物P.4)を提供する。膨張層は、1つ以上の個別のセクション、例えばゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションに形成され得る。
【0029】
特定の態様において、浸透圧による制御放出経口送達システム(すなわち組成物P.1~P.4)中の本開示の化合物は、液体製剤中であり、ここで、該製剤は、純粋な液体活性剤、溶液、懸濁液、エマルションもしくは自己乳化組成物中の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0030】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の更なる情報は、米国特許出願公開第2001/0036472号に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0031】
式Iの化合物(または本開示の化合物のいずれか)または本開示の医薬組成物のための他の浸透圧による制御放出経口送達システムは、米国特許出願公開第2009/0202631号に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、別の一実施態様において、本発明は、(a)第1層および第2層を含む2つ以上の層であって、該第1層が遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の式I以降の化合物(例えば、本開示の化合物のいずれか)を、所望により医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して、含み、該第2層がポリマーを含む、2つ以上の層;(b)2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁におけるオリフィスを含む、組成物またはデバイス(医薬組成物P.5)を提供する。
【0032】
医薬組成物P.5は、好ましくは、3層コアを囲む半透膜を利用し;これらの実施態様において、第1層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば式I以降の化合物または本開示の化合物のいずれか)および塩などの浸透圧調整剤を含有し、中間層は、第2薬物層と称され、多量の薬物、添加剤を含有し、塩を含有せず:第3層は、プッシュ層と称され、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない(医薬組成物P.6)。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層端部の膜を通して穿孔される。
【0033】
医薬組成物P.5またはP.6は、区画を画定する膜であって、該膜が内部保護サブコート、そこに形成されているかまたは形成可能な少なくとも1つの出口オリフィスおよび半透過性の膜の少なくとも一部を囲む膜;出口オリフィスから遠位の区画内に位置する膨張層であって、膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および第1薬物層と膨張層間の区画内に位置する第2薬物層であって、本開示の化合物を遊離またはその医薬的に許容される塩で含む薬物層を含み得る(医薬組成物P.7)。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度に応じて、異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは必須である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方、厚さに依存する。
【0034】
特定の実施態様において、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、医薬組成物P.7を提供する。医薬組成物P.5~P.7は、所望により、膜と薬物層との間に流動促進層を含み得る。
【0035】
医薬組成物P.1~P.7は、一般的に、浸透圧による制御放出経口送達システム組成物と称される。
【0036】
第1態様の更なる実施態様において、本開示は、下記の方法1の更なる実施態様を提供する:
1.83 患者が、不安(全般性不安、社交不安およびパニック障害を含む)、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDD)、精神病(認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想を含む)、統合失調症、片頭痛、頭痛、特発性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長時間治療を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、神経障害性疼痛、歯痛、線維筋痛症を含む、疼痛障害および疼痛に関連する状態、他の薬物依存症、例えば刺激薬依存症および/またはアルコール依存症に罹患している、方法1または方法1.1~1.82のいずれか;
1.84 患者が、物質使用障害または物質濫用障害、例えばオピオイド使用障害、オピエート使用障害(OUD)、オピオイド依存症またはオピオイド嗜癖と診断されている、方法1または1.1~1.83のいずれか;
1.85 患者が、オピエートまたはオピオイド薬、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せによる、物質使用または物質濫用(例えば嗜癖または依存症)の病歴を有する、方法1または方法1.1~1.84のいずれか;
1.86 患者が、オピエート依存症、コカイン依存症、アンフェタミン依存症および/またはアルコール依存症であるかもしくは診断されているか、あるいは薬物またはアルコール依存症(例えばオピエート、コカインまたはアンフェタミン依存症)からの離脱症状に罹患している、方法1または1.1~1.85のいずれか;
1.87 患者が、以前にオピエート過剰摂取をしていた、方法1または1.1~1.86のいずれか;
1.88 方法が、患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、方法1または1.1~1.86のいずれか;
1.89 有効量が、1mg~1000mg、例えば2.5mg~50mg、あるいは、長時間作用型製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mg、250mg~1000mg、50mg~750mgまたは75mg~300mgである、方法1.88;
1.90 有効量が、1日当たり1mg~100mg、例えば1日当たり2.5mg~60mg、1日当たり2.5mg~45mgまたは1日当たり5mg~25mgである、方法1.89;
1.91 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.92 SSRIが、シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンより選択される、方法1.91;
1.93 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.94 SNRIが、ベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランより選択される、方法1.93;
1.95 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、抗精神病薬の併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.96 抗精神病薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンより選択される、方法1.95;
1.97 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、NMDA受容体アンタゴニストの併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.98 NMDA受容体アンタゴニストが、ケタミン(例えばS-ケタミンおよび/またはR-ケタミン)、ヒドロキシノルケタミン、メマンチン、デキストロメトルファン、デキストロアロルファン、デキストロルファン、アマンタジンおよびアグマチン、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される、方法1.97;
1.99 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物の併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.100 GABA調節化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群より選択される、方法1.99;
1.101 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、5-HT2A受容体アンタゴニストの併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.102 更なる5-HT2A受容体アンタゴニストが、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis、France)の1つ以上より選択される、方法1.101;
1.103 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、セロトニン受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)の併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.104 セロトニン受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)が、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーンおよびトラゾドンの1つ以上からなる群より選択される、方法1.103;
1.105 投与が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、抗うつ薬の併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.106 抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンより選択される、方法1.105;
1.107 方法が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、オピエートアゴニストまたはパーシャルオピエートアゴニストの併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.108 オピエートアゴニストまたはパーシャルオピエートアゴニストが、オピエートアゴニストまたはオピエートパーシャルアゴニスト、例えばμアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、またはκアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、例えば混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えばμパーシャルアゴニスト活性およびκアンタゴニスト活性を有する薬物)である、方法1.107;
1.109 オピエートアゴニストまたはパーシャルアゴニストがブプレノルフィンであり、所望により、該治療が抗不安薬、例えばGABA化合物またはベンゾジアゼピンの併用治療を含まない、方法1.108;
1.110 方法が、例えば同時に、別個にまたは連続して投与される、オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニストの併用投与をさらに含む、前記方法のいずれか;
1.111 オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニストが、フルオピエートアンタゴニスト、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロダイムまたはノルビナルトルフィミンより選択されるものである、方法1.110。
【0037】
別の一実施態様において、本開示は、本開示の化合物またはそれを含む医薬組成物が、約14日間、約30~約180日間にわたる、好ましくは約30、約60または約90日間にわたる化合物の制御および/または持続放出のために投与される、方法1または方法1.1~1.111のいずれかを提供する。制御および/または持続放出は、治療、特に投薬レジメンのノンコンプライアンスまたは不遵守が一般的に生じる抗精神病薬治療の早期中止を回避するために特に有用である。
【0038】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSMの第5版(精神障害の診断と統計マニュアル、またはDSM-V)により定義される物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個人が、結果をして問題を経験するにもかかわらず摂取を継続する物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害は、嗜癖、離脱、物質誘発精神障害、例えば物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能不全、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害を含む。
【0039】
DSM-5は、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する基準を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害より選択される。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、重度物質使用障害である。DSMの過去の版では、オピオイド嗜癖およびオピオイド依存という用語、ならびにオピオイド嗜癖の解毒および維持治療、およびオピオイド嗜癖の再発の予防という関連用語が用いられていた。これらの用語は現在、オピオイド使用障害およびその続発症の診断に含まれる。
【0040】
不安およびうつ病は、物質使用または物質濫用の治療を受けている患者において極めて一般的な併存障害である。物質濫用障害の一般的治療は、オピオイドパーシャルアゴニストであるブプレノルフィンとオピオイドアンタゴニストであるナロキソンとの組合せであるが、これらの薬物はいずれも、不安またはうつ病に対して顕著な効果がなく、それ故に、第3の薬物、例えばベンゾジアゼピン系抗不安薬またはSSRI抗うつ薬も処方しなければならないという共通の結果をもたらす。これは、治療レジメンおよび患者コンプライアンスをより困難にする。対照的に、本開示の化合物は、セロトニン拮抗作用およびドーパミン調節と共にオピエート拮抗作用を提供する。これにより、不安および/またはうつ病と併存して物質使用または濫用障害を有する患者の治療が顕著に増強され得る。
【0041】
本開示の化合物は、抗不安薬での患者の治療の必要性を軽減する抗不安特性を有し得て、ここで、該患者は、しばしば再発の引き金であり得る併存性不安に罹患している。したがって、いくつかの実施態様において、本開示は、患者が、不安または不安の症状に罹患しているか、あるいは併存性障害または残遺障害として不安と診断されており、該方法が、抗不安薬、例えばベンゾジアゼピンおよび本明細書に記載の他のものを投与することを含む、方法1以降による方法を提供する。
【0042】
本開示の化合物を1つ以上の第2治療薬と共に投与する、方法1以降の実施態様のいずれかにおいて、1つ以上の第2治療薬は、本開示の化合物を含む医薬組成物の一部として投与され得る。あるいは、1つ以上の第2治療薬は、本開示の化合物の投与と同時に、連続してまたは別個に投与される、別個の医薬組成物(例えば丸剤、錠剤、カプセル剤および注射剤)で投与され得る。
【0043】
第2態様において、本開示は、方法1または方法1.1~1.111のいずれかの使用のための医薬の製造における、本開示の化合物、例えば式Iの化合物または方法1.1~1.71のいずれかの化合物のいずれかの使用を提供する。
【0044】
第3態様において、本開示は、方法1または方法1.1~1.111のいずれかの使用のための、本開示の化合物、例えば式Iの化合物または方法1.1~1.71のいずれかの化合物のいずれかを提供する。
【0045】
理論に拘束されるものではないが、本開示の化合物、例えば式Aの化合物は、強力な5-HT2A、D1およびμオピエートモジュレーター(例えばアンタゴニスト)であり、これはまた、中等度のD2およびSERT調節(例えば拮抗作用)を提供すると考えられる。さらに、このような化合物が、「バイアス」μオピエートリガンドとして作動し得ることを予想外にも見出した。これは、化合物がμオピエート受容体と結合するとき、G-タンパク質共役シグナル伝達によりμパーシャルアゴニストとして作動し得るが、β-アレスチンシグナル伝達によりμアンタゴニストとして作動し得ることを意味する。これは、G-タンパク質シグナル伝達およびβ-アレスチンシグナル伝達の両方を強力に活性化する傾向があるモルヒネおよびフェンタニルなどの従来のオピエートアゴニストと対照的である。このような薬物によるβ-アレスチンシグナル伝達の活性化は、典型的にオピエート薬が介在する消化管機能不全および呼吸器抑制を介在すると考えられる。したがって、本開示による化合物、例えば式Iの化合物は、既存のオピエート鎮痛薬より重度消化管および呼吸器副作用の少ない疼痛改善をもたらすと予想される。この効果は、バイアスμアゴニストのオリセリジンの前臨床試験および第2相、第3相臨床試験において示されている。オリセリジンは、モルヒネと比較してβ-アレスチンシグナル伝達が低下したG-タンパク質共役シグナル伝達によりバイアスμ作動作用をもたらすことを示し、これは、モルヒネと比較して呼吸器副作用が低下した鎮痛を生じるその能力に関連している。さらに、これらの化合物は、β-アレスチン経路に拮抗するため、疼痛緩和を提供しながら最も重度のオピエート副作用を阻害するため、オピエート過剰摂取の治療に有用であると予想される。さらに、これらの化合物はまた、そのセロトニン作動活性により睡眠維持効果を有する。慢性疼痛に罹患している多くの人々は、疼痛により睡眠が困難であるため、これらの化合物は、セロトニン作動活性とオピエート受容体活性の相乗効果によりこのような患者が一晩中眠ることを助け得る。
【0046】
したがって、本開示の化合物は、オピエート使用障害(OUD)、オピエート過剰摂取またはオピエート離脱の患者において、単独で、またはオピエートアンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えばナロキソンまたはナルトレキソン)と組み合わせていずれかでオピエート嗜癖の再発を治療および/または予防するのに有効である。本開示の化合物は、薬物離脱(例えば気分および不安障害、睡眠障害)に関連する不快感および精神医学的併存疾患を緩和する強力な能力を示すと予測され、それはまた、強力な鎮痛を提供するが、副作用(例えばGI効果および肺抑制)および他のオピオイド治療(例えばオキシコドン、メサドンまたはブプレノルフィン)で見られる濫用の可能性がない。これらの化合物の独特な薬理特性がまた、薬物間相互作用(例えばアルコール)のリスクを緩和するはずである。したがって、これらの化合物は、オピエート常習者の長期治療および回復維持に特に適する。μ受容体活性に対する化合物の直接的な効果に加えて、セロトニン作動性経路に対する化合物の効果は、抗うつ薬、睡眠維持および抗不安作用をもたらす。うつ病および不安が回復常習者に再発を引き起こすため、本開示の化合物は、再発を促進する心理的誘因を減少させると同時にオピエート離脱の症状を減少させる(再発のリスクを減少させる二面戦略)。これらの化合物により提供される睡眠維持は、オピエート嗜癖回復治療を受けている患者のクオリティ・オブ・ライフをさらに改善する。
【0047】
本開示のいくつかの実施態様において、式Iの化合物は、天然の代謝活性が不安定な官能基を除去し、インビボで式Iの別の化合物をもたらすように、化合物内に配置された生物学的に不安定な官能基を1つ以上有する。例えば、基R1が、C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であるとき、生物学的条件下で、この置換基は加水分解を受け、R1がHである同化合物を生成し、それ故に元の化合物をR1がHである同化合物のプロドラッグにする。このようなプロドラッグ化合物のいくつかは、ほとんどまたは全く生物学的活性を有しないか、または中等度の生物学的活性のみを有するが、R1がHである化合物が加水分解されると、該化合物は、強力な生物学的活性を有し得る。したがって、選択する化合物に応じて、本開示の化合物をそれを必要とする患者に投与することは、即時の生物学的および治療効果、または即時のおよび遅延した生物学的および治療効果、または遅延した生物学的および治療効果のみをもたらし得る。よって、このようなプロドラッグ化合物は、R1がHである式Iで示される薬理学的に活性な化合物のリザーバーとして機能する。このように、いくつかの本開示の化合物は、長時間作用型注射剤(LAI)または「デポー」医薬組成物としての製剤に特に適している。理論に拘束されるものではないが、本開示の化合物を含む注入された「デポー」は、該化合物を身体組織に徐々に放出し、組織において、該化合物は徐々に代謝されて、R1がHである式Iの化合物を生成する。このようなデポー製剤は、本開示の化合物の溶解および放出の速度を制御するのに適した成分の選択によってさらに調整され得る。式Iの化合物に関連する化合物のこのようなプロドラッグ形態は、以前に、例えば国際出願第PCT/US2018/043102号(国際公開第2019/023063号)に開示されている。
【0048】
本明細書で用いられる「アルキル」は、他に明記されない限り、例えば長さが1~21個の炭素原子の、飽和または不飽和炭化水素部分であり;あらゆるこのようなアルキルは、他に明記されない限り、直鎖または分岐鎖(例えばn-ブチルまたはtert-ブチル)であり得て、好ましくは直鎖である。例えば、「C1-21アルキル」は、1~21個の炭素原子を有するアルキルを意味する。一の実施態様において、アルキルは、1つ以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えばエトキシ)基で置換されていてもよい。別の一実施態様において、アルキルは、好ましくは直鎖で、所望により飽和または不飽和の、1~21個の炭素原子を含み、例えば、R1が、1~21個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、16~21個の炭素原子を含むアルキル鎖であるいくつかの実施態様において、例えばそれが結合する-C(O)-と一緒になって、例えば式Iの化合物から切断されたとき、天然または非天然の、飽和または不飽和脂肪酸の残基を形成する。
【0049】
用語「医薬的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈液および担体を意味することが意図される。したがって、医薬的に許容される希釈液または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を除外する。適切な医薬的に許容される希釈液および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の論文のいずれか、例えばGoodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001; Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000; and Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999) に見ることができ、これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0050】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセス(例えば反応混合物)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態を指す。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載または当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度の、精製プロセスまたは本明細書に記載もしくは当業者に周知のプロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶化、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態を指す。
【0051】
他に断らない限り、本開示の化合物、例えば化合物Iまたは1.1~1.25は、遊離または塩、例えば酸付加塩の形態で存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩は、例えば無機または有機酸、例えば塩酸またはトルエンスルホン酸などとの酸付加塩である。また、十分に酸性である本開示の化合物の塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩、または生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基との塩である。特定の実施態様において、本開示の化合物の塩は、トルエンスルホン酸付加塩である。
【0052】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、それ故に医薬的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本開示の遊離化合物の単離または精製に有用であり得て、それ故に本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0053】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。したがって、化合物は、個々の異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)-、(S)-、または(R,S)-配置にあるあらゆる異性体が存在し得る。本発明は、個々の光学活性異性体両方およびその混合物(例えばラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると理解されるべきである。したがって、本開示の化合物は、ラセミ混合物であってもよく、または、例えば主に純粋、または実質的に純粋な異性体形態、例えば70%超のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは95%超のeeであってもよい。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床など)により達成され得る。
【0054】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)体であり得て、両方の異性体が本発明の範囲に包含される。
【0055】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有することが予想される。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定な同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素(2HまたはD)、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して複数の追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本開示の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本開示の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。また、より重い同位体で分布する天然同位体を有する原子の置換は、これらの置換が代謝的に起こりやすい部位でなされるとき、薬物動態速度において所望の変化をもたらし得る。例えば、水素の位置における重水素(2H)の組込みは、水素の位置が酵素または代謝活性の部位であるとき、代謝分解を遅くし得る。
【0056】
本開示の化合物は、デポー製剤、例えば前記ポリマーマトリックス中に本開示の化合物を分散、溶解、懸濁または被包させることによる、デポー製剤である医薬組成物の形態で投与され得て、化合物は、ポリマーが時間とともに分解するにつれて持続的に放出される。ポリマーマトリックスからの本開示の化合物の放出は、化合物を例えば医薬デポー組成物から、その医薬デポーが投与される対象体、例えば温血動物、例えばヒトへ制御および/または遅延および/または持続放出することを提供する。したがって、医薬デポーは、本開示の化合物を対象体へ特定の疾患または病状の治療に有効な濃度にて長時間、例えば14~180日間、好ましくは約30、約60または約90日間にわたって送達する。
【0057】
本開示の組成物(例えば本開示のデポー組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の化学物質、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカルボネート(例えばポリエチレンカルボネートまたはポリエチレンプロピレンカルボネート)、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどのポリマーを含み得て、これらポリマーの1つ以上が用いられ得る。
【0058】
ポリマーが共重合体である場合、それは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体のいずれかであり得る。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸が、その分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つが用いられ得る。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸重合体)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステルなどが用いられ得て、乳酸-グリコール酸共重合体(ポリ(乳酸-α-グリコール酸)またはポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)とも称され、以下PLGAを称する)が好ましい。したがって、一態様において、ポリマーマトリックスに有用なポリマーは、PLGAである。本明細書で用いられる、用語PLGAは、乳酸の重合体を含む(ポリ乳酸、ポリ(乳酸)またはPLAとも称される)。最も好ましくは、ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)ポリマーである。
【0059】
好ましい実施態様において、本開示のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、身体で容易に排泄可能な生成物に体内プロセスによって分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどが挙げられる。本発明の実施において用いるのに好ましいポリマーは、dl(ポリ乳酸-グリコール酸共重合体)である。このような共重合体におけるラクチド対グリコリドのモル比は、およそ75:25から50:50の範囲であることが好ましい。
【0060】
有用なPLGAポリマーの重量平均分子量は、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであり得る。達成すべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを用い得る。薬物放出の拡散メカニズムについて、ポリマーは、すべての薬物がポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままであるべきであり、その後分解するべきである。薬物はまた、高分子添加剤が生体浸食される(bioerode)に連れて、ポリマーマトリックスから放出され得る。
【0061】
PLGAは、任意の慣用の方法により製造されてもよく、または商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適切な触媒での開環重合により製造され得る(欧州特許第58481号;Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structure参照)。
【0062】
PLGAは、生理学的条件下で(例えば、ヒトなどの温血動物の組織に見ることができる水および生物学的酵素の存在下で)加水分解可能であり、かつ酵素的に切断可能であるエステル結合の分解により固形ポリマー組成物全体が分解して乳酸およびグリコール酸を形成することによって生分解性であると考えられる。乳酸およびグリコール酸のいずれも、水溶性で、通常の代謝の無毒性の生成物であり、これは、さらに分解されて、二酸化炭素と水を形成する。言い換えれば、PLGAは、水の存在下で、例えばヒトなどの温血動物の体内でそのエステル基の加水分解によって分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、酸性微小環境を作ると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理学的条件下のヒトなどの温血動物の体内における様々な代謝経路の副産物であり、それ故に良好な忍容性を示し、最小の全身毒性をもたらす。
【0063】
別の一実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形である星形ポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸性残基鎖により囲まれる中心部分として単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えばグルコースまたはマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であって、英国特許出願公開第2,145,422号および米国特許第5,538,739号に記載されており、これら各出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0064】
星形ポリマーは、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを開示剤として用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、エステルの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つのヒドロキシ基を有するポリオールはエステル基の形態であり、これらはポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分岐ポリエステル、例えばポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0065】
前記の本開示のデポー組成物(例えばポリマーマトリックスにおける組成物6および6.1~6.10)は、本開示の化合物が分散または被包しているマイクロ粒子もしくはナノ粒子の形態または液体形態のポリマーを含み得る。「マイクロ粒子」は、粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本開示の化合物が分散または溶解している溶液または固体形態のいずれかで本開示の化合物を含有する固形粒子を意味する。ポリマーマトリックスの適切な選択により、得られたマイクロ粒子が拡散放出性および生分解放出性の両方を示すマイクロ粒子製剤が作られ得る。
【0066】
ポリマーがマイクロ粒子形態であるとき、マイクロ粒子は、任意の適切な方法を用いて、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法により製造され得る。例えば、溶媒蒸発法において、本開示の化合物およびポリマーを、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンなどのケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンなどの環状エーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、またはエタノールなどのアルコール)に溶解させて、適切なエマルション安定化剤(例えばポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させ得る。その後、有機溶媒を蒸発させて、本開示の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。溶媒抽出法において、本開示の化合物およびポリマーを、極性溶媒(例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解させて、その後、水相(例えば水/PVA溶液)に分散させ得る。エマルションを調製して、本開示の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。スプレードライは、マイクロ粒子を製造するための別の製剤技術である。
【0067】
本開示のマイクロ粒子を製造する別の方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号の両方に記載されている。
【0068】
マイクロ粒子は、注射可能な組成物における使用に許容されるサイズ範囲のマイクロ粒子を製造できる任意の方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法において、活性剤を適切な溶媒に溶解または分散させる。活性剤含有溶媒に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を加える。所望により、マイクロ粒子生成物の成分すべてを溶媒媒体中で一緒に混合し得る。
【0069】
本開示の化合物および本発明の実施において用いられ得るポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンなど;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一の実施態様において、本開示の実施における使用のための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本開示に有用なマイクロ粒子の製造に関する更なる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号に見ることができ、該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0070】
マイクロ粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%は、マイクロ粒子の総重量当たりの本開示の化合物部分を意味する。
【0071】
医薬デポー組成物は、医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性の希釈剤または担体を含み得る。
【0072】
浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の詳細は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0073】
「有効量」は「治療有効量」を意味し、すなわち、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、治療に予定している時間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬組成物または投与形態において含有されるような)本開示の化合物の量である。
【0074】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば治療されるべき特定の疾患または状態、用いられる本開示の特定の化合物および所望の治療に応じて当然変化する。他に断らない限り、投与のための本開示の化合物の量(遊離塩基または塩形態として投与される)は、遊離塩基形態の本開示の化合物の量を指すかまたはそれに基づく(すなわち、量の計算は遊離塩基量に基づく)。
【0075】
本開示の化合物は、経口、非経腸(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む任意の満足な経路によって投与され得る。特定の実施態様において、本開示の化合物は、例えばデポー製剤中であり、好ましくは非経腸、例えば注射、例えば筋肉内または皮下注射により投与される。
【0076】
一般に、上記方法1以降についての満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは2.5mg~50mg、例えば1日1回2.5mg、5mg、l0mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの投与量にて経口投与することで得られることが示されている。
【0077】
デポー組成物がより長期間の作用を達成するために用いられる本明細書に記載の障害の治療のために、投与量は、短期作用組成物と比較して高く、例えば1~100mgより高く、例えば25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mgまたは1000mg超である。本開示の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成、すなわちポリマー:薬物の比率およびマイクロ粒子サイズの操作により制御され得る。本開示の組成物がデポー組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0078】
本開示の化合物の医薬的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で反応させることにより製造され得て;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。これら塩、例えばアモルファスまたは結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造についての更なる詳細については、国際特許出願第PCT/US08/03340号および/または米国仮出願第61/036,069号)(米国特許出願公開第2011/112105号に各々対応する)に見ることができる。
【0079】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または添加剤(例としてはゴマ油があげられるがこれに限定されない)およびガレヌス分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形は、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを含み得る。
【0080】
用語「並行して(concurrently)」は、治療上の使用を指すとき、2つ以上の活性剤が同一または異なる時に与えられるか、あるいは同一または異なる投与経路により与えられるかを問わず、疾患または障害の治療のためのレジメンの一部として2つ以上の活性成分を患者に投与することを意味する。2つ以上の活性成分の並行投与は、同じ日の異なる時間に、または異なる日に、または異なる頻度であり得る。
【0081】
用語「同時に(simultaneously)」は、治療上の使用を指すとき、同一投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【0082】
用語「別個に(separately)」は、治療上の使用を指すとき、異なる投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【実施例】
【0083】
本開示の化合物の製造方法
式Aの化合物、および下記合成スキームで用いる中間体の合成を含むその合成方法は、例えば、米国特許第8,309,722号および米国特許出願公開第2017/319580号に開示されている。類似の縮合γ-カルボリンの合成は、例えば、米国特許第8,309,722号、米国特許第8,993,572号、米国特許出願公開第2017/0183350号、国際公開第2018/126140号および国際公開第2018/126143号に開示されており、これらの各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。本開示の化合物は、類似の方法を用いて合成され得る。
【0084】
R1が、C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)、-C(O)-O-CH2-O-C(Ra)(Rb)(Rc)または-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8である、式Iで示される化合物は、国際出願第PCT/US2018/043102号に記載の手順にしたがって製造され得る。
【0085】
他の本開示の化合物は、当業者に知られている類似の手順により製造された。
【0086】
本開示の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で知られている慣用方法、例えば、カラム精製法、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、擬似移動床法などによって行うことができる。
【0087】
本開示の化合物の塩は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;第8,648,077号;第9,199,995号;第9,586,860号;米国再発行特許第39680号;米国再発行特許第39679号(それぞれの記載内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に同様に記載されているように製造することができる。
【0088】
製造された化合物のジアステレオマーは、室温にてChiralpak(登録商標)AY-H(5μ、30×250mm)を用いてHPLCによって分離し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶出することができる。ピークを230nmにて検出して、98~99.9%eeのジアステレオマーを生成することができる。
【0089】
実施例1:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化9】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(100μL、0.65mmol)およびヨウ化カリウム(KI)(144mg、0.87mmol)のジメチルホルムアミド(DMF)(2mL)中の混合物をアルゴンで3分間脱気し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(150μL、0.87mmol)を加える。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。混合物を室温まで冷却し、その後ろ過する。ろ過ケーキを、溶離剤としてのメタノール/7N NH
3のメタノール中の混合物(1:0.1v/v)中において0~100%酢酸エチルのグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、部分的に精製した生成物を得て、これをさらに、0.1%ギ酸を含有する水中における0~60%アセトニトリルのグラジェントを用いたセミ分取HPLCシステムで16分間かけて精製して、表題生成物を固体として得る(50mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1]
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.3 (s, 1H), 7.2 - 7.1 (m, 2H), 7.0 - 6.9 (m, 2H), 6.8 (dd, J = 1.03, 7.25 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.79 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.35 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.74 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 (dd, J = 6.35, 11.13 Hz, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.66 Hz, 1H), 2.0 (d, J = 14.50 Hz, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 3H), 1.7 (t, J = 11.04 Hz, 1H).
【0090】
実施例2:(6bR,10aS)-8-(3-(6-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化10】
工程1:BCl
3・MeS(10.8g、60mmol)のトルエン中の撹拌溶液に、0~5℃にて3-フルオロアニリン(5.6mL、58mmol)を加え、続いて4-クロロブチロニトリル(7.12g、68.73mmol)および塩化アルミニウム(AlCl
3)(8.0g、60.01mmol)を加える。混合物を130℃にて一晩撹拌し、50℃まで冷却する。塩酸(3N、30mL)を注意深く加え、得られた溶液を90℃にて一晩撹拌する。得られた褐色溶液を室温まで冷却し、蒸発乾固させる。残渣をジクロロメタン(DCM)(20mL)中に溶解させ、pH=7~8に飽和Na
2CO
3で塩基性にする。有機相を分離し、Na
2CO
3で乾燥し、その後濃縮する。残渣を、溶離剤としてのヘキサン中における0~20%酢酸エチルのグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、2'-アミノ-4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノンを黄色固体として得る(3.5g、収率28%)。MS (ESI) m/z 216.1 [M+1]
+.
【0091】
工程2:2'-アミノ-4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(680mg、3.2mmol)の濃縮HCl(14mL)中の懸濁液に、0~5℃にて、水(3mL)中のNaNO2(248mg、3.5mmol)を加える。得られた褐色溶液を0~5℃にて1時間撹拌し、その後濃縮HCl(3mL)中のSnCl2・2H2O(1.74g、7.7mmol)を加える。混合物を0~5℃にてさらに1時間撹拌し、その後ジクロロメタン(30mL)を加える。反応混合物をろ過し、ろ液をK2CO3で乾燥し、蒸発乾固させる。残渣を、溶離剤としてのヘキサン中における0~35%酢酸エチルのグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、3-(3-クロロプロピル)-6-フルオロ-1H-インダゾールを白色固体として得る(400mg、収率60%)。MS (ESI) m/z 213.1 [M+1]+.
【0092】
工程3:(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、3-(3-クロロプロピル)-6-フルオロ-1H-インダゾール(124mg、0.65mmol)およびKI(144mg、0.87mmol)の混合物を、アルゴンで3分間脱気し、DIPEA(150μL、0.87mmol)を加える。得られた混合物を78℃にて2時間撹拌し、その後室温まで冷却する。生じた沈殿物をろ過する。ろ過ケーキを、0.1%ギ酸を含有する水における0~60%アセトニトリルのグラジェントを用いたセミ分取HPLCシステムで16分間かけて精製して、(6bR,10aS)-8-(3-(6-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンをオフホワイト固体として得る(50mg、収率28%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1]+.1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 12.7 (s, 1H), 10.3 (s, 1H), 7.8 (dd, J = 5.24, 8.76 Hz, 1H), 7.2 (dd, J = 2.19, 9.75 Hz, 1H), 6.9 (ddd, J = 2.22, 8.69, 9.41 Hz, 1H), 6.8 - 6.7 (m, 1H), 6.6 (t, J = 7.53 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.83 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.51 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 1H), 3.2 (s, 2H), 2.9 (dt, J = 6.35, 14.79 Hz, 3H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.4 - 2.2 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.42 Hz, 1H), 2.0 - 1.8 (m, 3H), 1.8 - 1.7 (m, 1H), 1.7 (t, J = 10.89 Hz, 1H).
【0093】
実施例3:(6bR,10aS)-8-(3-(6-フルオロベンゾ[d]イソキサゾール-3-イル)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化11】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(148mg、0.65mmol)、3-(3-クロロプロピル)-6-フルオロベンゾ[d]イソキサゾール(276mg、1.3mmol)およびKI(210mg、1.3mmol)の混合物を、アルゴンで脱気し、その後DIPEA(220μL、1.3mmol)を加える。得られた混合物を78℃にて2時間撹拌し、その後室温まで冷却する。混合物を真空下濃縮する。残渣をジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、その後水(20mL)で洗浄する。有機相をK
2CO
3で乾燥し、ろ過し、その後真空下濃縮する。粗生成物を、1%7N NH
3含有酢酸エチル中における0~10%メタノールのグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を固体として得る(80mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 407.2 [M+1]
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.3 (s, 1H), 8.0 - 7.9 (m, 1H), 7.7 (dd, J = 2.15, 9.19 Hz, 1H), 7.3 (td, J = 2.20, 9.09 Hz, 1H), 6.8 (d, J = 7.22 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.54 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 7.75 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.53 Hz, 1H), 3.3 (s, 1H), 3.2 (s, 1H), 3.2 - 3.1 (m, 1H), 3.0 (t, J = 7.45 Hz, 2H), 2.9 - 2.8 (m, 1H), 2.7 - 2.5 (m, 1H), 2.4 - 2.2 (m, 2H), 2.2 - 2.0 (m, 1H), 2.0 - 1.8 (m, 3H), 1.8 - 1.6 (m, 2H).
【0094】
実施例4:4-(3-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)プロポキシ)ベンゾニトリルの合成
【化12】
工程1:(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(21.5g、66.2mmol)、クロロアセトアミド(9.3g、100mmol)およびKI(17.7g、107mmol)のジオキサン(60mL)中の脱気懸濁液を、104℃にて48時間撹拌する。溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(200mL)中に懸濁させ、水(100mL)で抽出する。分離したジクロロメタン相を炭酸カリウム(K
2CO
3)で1時間乾燥し、その後ろ過する。ろ液を蒸発させて、粗生成物を褐色油として得る。褐色油に酢酸エチル(100mL)を加え、混合物を2分間超音波処理する。黄色固体が混合物から段々と沈殿し、室温にてさらに2時間放置するとこれがゲルになる。更なる酢酸エチル(10mL)を加え、得られた固体をろ過する。ろ過ケーキを酢酸エチル(2mL)ですすぎ、さらに高真空下乾燥して、(4aS,9bR)-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートをオフホワイト固体として得る(19g、収率75%)。この生成物を、さらに精製することなく次の工程で直接用いる。MS (ESI) m/z 382.0 [M+H]
+.
【0095】
工程2:(4aS,9bR)-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(12.9g、33.7mmol)、KI(10.6g、63.8mmol)、CuI(1.34g、6.74mmol)のジオキサン(50mL)中の混合物を、アルゴンで5分間バブリングする。この混合物に、N,N,N,N'-テトラメチルエチレンジアミン(3mL)を加え、得られた懸濁液を100℃にて48時間撹拌する。反応混合物を室温まで冷却し、シリカゲルパッドに注ぎ、ろ過する。ろ過ケーキを酢酸エチル(1L×2)ですすぐ。合わせたろ液を濃縮乾固して、生成物(6bR、10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステルを白色固体として得る(8g、収率79%)。MS (ESI) m/z 302.1 [M+H]+.
【0096】
工程3:(6bR、10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(6.4g、21.2mmol)を、HBr/酢酸溶液(64mL、33%w/w)中に室温にて懸濁させる。混合物を50℃にて16時間加熱する。冷却し、酢酸エチル(300mL)で処理した後、混合物をろ過する。ろ過ケーキを酢酸エチル(300mL)で洗浄し、その後真空下乾燥する。その後、得られたHBr塩をメタノール(200mL)中に懸濁させ、イソプロパノール中のドライアイスで冷却する。激しい撹拌下で、アンモニア溶液(10mL、メタノール中7N)を懸濁液にゆっくり加えて、混合物のpHを10に調整する。得られた混合物を、さらに精製することなく真空下乾燥して、粗製(6bR、10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(8.0g)を得て、これを次の工程で直接用いる。MS (ESI) m/z 230.2 [M+H]+.
【0097】
工程4:(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、4-(3-ブロモプロポキシ)ベンゾニトリル(99mg、0.40mmol)およびKI(97mg、0.44mmol)のDMF(2mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(80μL、0.44mmol)を加える。得られた混合物を76℃に加熱し、この温度にて2時間撹拌する。溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル中における0~100%混合溶媒(酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1v/v))のグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を白色泡沫として得る(35mg、収率45%)。MS (ESI) m/z 389.1 [M+1]+. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.8 (d, J = 8.80 Hz, 2H), 7.1 (d, J = 8.79 Hz, 2H), 6.8 (d, J = 7.39 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 6.78 Hz, 1H), 4.1 (t, J = 6.36 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.53 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 3.0 - 2.8 (m, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.2 - 2.0 (m, 1H), 2.0 - 1.8 (m, 3H), 1.8 - 1.7 (m, 1H), 1.7 (t, J = 11.00 Hz, 1H).
【0098】
実施例5:(6bR,10aS)-8-(3-(4-クロロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化13】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ-[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(110mg、0.48mmol)、1-(3-ブロモプロポキシ)-4-クロロベンゼン(122mg、0.49mmol)およびKI(120mg、0.72mmol)のDMF(2.5mL)中の脱気混合物に、DIPEA(100μL、0.57mmol)を加える。得られた混合物を76℃まで加熱し、この温度にて2時間撹拌する。溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル中における0~100%混合溶媒(酢酸エチル/メタノール/7N NH
3(10:1:0.1v/v))のグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。表題生成物を白色固体として得る(41mg、収率43%)。MS (ESI) m/z 398.1 [M+1]
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.3 (s, 1H), 7.4 - 7.2 (m, 2H), 6.9 (d, J = 8.90 Hz, 2H), 6.8 - 6.7 (m, 1H), 6.6 (t, J = 7.53 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.04, 7.80 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.37 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.53 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 - 2.8 (m, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.4 (ddt, J = 6.30, 12.61, 19.24 Hz, 2H), 2.1 - 2.0 (m, 1H), 2.0 - 1.9 (m, 1H), 1.9 - 1.7 (m, 3H), 1.7 (t, J = 10.98 Hz, 1H).
【0099】
実施例6:(6bR,10aS)-8-(3-(キノリン-8-イルオキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化14】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(120mg、0.52mmol)、8-(3-クロロプロポキシ)キノリン(110mg、0.50mmol)およびKI(120mg、0.72mmol)のDMF(2.5mL)中の混合物を、アルゴンで3分間バブリングし、DIPEA(100μL、0.57mmol)を加える。得られた混合物を76℃まで加熱し、この温度にて2時間撹拌する。溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(30mL)中に懸濁させ、水(10mL)で洗浄する。ジクロロメタン相をK
2CO
3で乾燥する。分離した有機相を蒸発乾固させる。残渣を、酢酸エチル中における0~100%混合溶媒(酢酸エチル/メタノール/7N NH
3(10:1:0.1v/v))のグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を淡褐色固体として得る(56mg、収率55%)。MS (ESI) m/z 415.2[M+1]
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.1 (s, 1H), 8.9 (dd, J = 1.68, 4.25 Hz, 1H), 8.3 (dd, J = 1.71, 8.33 Hz, 1H), 7.7 - 7.5 (m, 3H), 7.3 (dd, J = 1.50, 7.44 Hz, 1H), 7.0 - 6.8 (m, 1H), 6.8 - 6.5 (m, 2H), 4.4 (t, J = 5.85 Hz, 2H), 3.9 (d, J = 14.55 Hz, 1H), 3.8 - 3.6 (m, 2H), 3.5 (s, 1H), 3.4 (d, J = 14.47 Hz, 1H), 2.9 (b, 1H), 2.3 (d, J = 23.61 Hz, 5H), 1.3 (d, J = 7.00 Hz, 3H).
【0100】
実施例7:受容体結合プロファイル
受容体結合を、実施例1の化合物(式Aの化合物)および実施例2~6の化合物について決定する。下記文献の手順を用い、これらの文献の各々は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする:5-HT2A:Bryant, H.U. et al. (1996), Life Sci., 15:1259-1268;D2:Hall, D.A. and Strange, P.G. (1997), Brit. J. Pharmacol., 121:731-736;D1:Zhou, Q.Y. et al. (1990), Nature, 347:76-80;SERT:Park, Y.M. et al. (1999), Anal. Biochem., 269:94-104;μオピエート受容体:Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222。
【0101】
一般的に、結果は、試験化合物の存在下で得られた、対照特異的結合のパーセント:
【数1】
として、および対照特異的結合の阻害パーセント:
【数2】
として表される。
【0102】
IC
50値(対照特異的結合の最大阻害の半分を生じる濃度)およびヒル係数(nH)を、ヒル式カーブフィッティング:
【数3】
[式中、Y=特異的結合、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C
50=IC
50およびnH=傾斜係数]
を用いて平均複製値で作成した競合曲線の非線形回帰分析により決定する。この分析は、社内ソフトウェアを用いて実施され、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 Windows(登録商標)用(SPSS Inc.による著作権1997)により作成したデータとの比較によりバリデートした。阻害係数(Ki)を、チェン・プルソフ式:
【数4】
[式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度およびK
D=受容体に対する放射性リガンドの親和性]
を用いて計算した。スキャッチャードプロットを用いて、K
Dを決定する。
【0103】
下記の受容体親和性の結果を得た:
【表1】
更なる式Iの化合物を実施例1~6に記載のものと類似の手順により製造する。これらの化合物の受容体親和性の結果を下記表に示す:
【表2】
【0104】
実施例8:マウスのDOI誘発首振り運動モデル
R-(-)-2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)は、セロトニン5-HT2受容体ファミリーのアゴニストである。それは、マウスに投与されると、頻繁な首振り運動を伴う行動プロファイルを生じる。所定の時間中のこれら首振り運動の頻度は、脳内の5-HT2受容体アゴニズムの推定値として取ることができる。逆に、この行動アッセイは、アンタゴニスト有りまたは無しでDOIを投与し、アンタゴニストの投与後のDOI誘発首振り動作の減少を記録することによって、脳内の5-HT2受容体アンタゴニズムを決定するために用いることができる。
【0105】
いくらか改変をしたDarmani et al., Pharmacol Biochem Behav. (1990) 36:901-906(この内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)の方法を用いる。(±)-DOI HClを皮下注射し、マウスをすぐに慣用のプラスチックケージに入れる。DOI投与の1分後から始めて6分間、首振り運動の回数をカウントする。DOI注射の0.5時間前に試験化合物を経口投与する。結果を、DOI誘発首振り運動の減少についてのEC
50として計算する。結果を下記表に示す:
【表3】
結果は、実施例1の化合物がDOI首振り運動を強くブロックし、実施例5に示されるインビトロ5-HT
2A結果と一致することを示す。
【0106】
実施例9:マウステールフリック(tail flick)アッセイ
マウステールフリックアッセイは、拘束されたマウスの疼痛反射閾値によって示される鎮痛の測定である。雄性CD-1マウスを、高強度赤外熱源の集束ビーム下にその尾を配置し、これにより尾が加熱される。動物は不快になるといつでも熱源から尾を引き抜くことができる。加熱装置を付けた時と熱源の通路の外側にマウスの尾をフリックした時との間の時間量(潜時(latency))を記録する。モルヒネの投与により、鎮痛され、これにより、熱に対するマウスの反応の遅延が生じる(潜時の増大)。モルヒネ受容体(MOR)アンタゴニスト、すなわちナロキソン(NAL)の前投与により、当該効果は逆転し、正常な潜時となる。この試験を、μオピエート受容体のアンタゴニズムを計測するための機能アッセイとして用いる。
【0107】
実施例9a:実施例1の化合物によるモルヒネ誘発鎮痛作用のアンタゴニズム
5つの処置群の各々に10匹の雄性CD-1マウス(約8週齢)を割り当てる。群を以下のとおり処置する:群(1)[陰性対照]:テールフリック試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルを経口投与し、テールフリック試験の30分前に生理食塩水ビヒクルを投与する;群(2)[陽性対照]:試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルを経口投与し、試験の30分前に生理食塩水中モルヒネ5mg/kgを投与する;群(3)[陽性対照]:試験の50分前に生理食塩水中ナロキソン3mg/kgを投与し、試験の30分前に生理食塩水中モルヒネ5mg/kgを投与する;群(4)~(6):試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクル中試験化合物0.1mg/kg、0.3mg/kgまたは1mg/kgを経口投与し、試験の30分前にモルヒネ5mg/kgを投与する。結果を、秒で測定した平均潜時として下記表に示す:
【表4】
【0108】
結果は、実施例1の化合物がモルヒネ誘発μオピエート受容体活性の用量依存的遮断を発揮することを示す。
【0109】
実施例9b:ナロキソンによって阻害される、実施例1の化合物による鎮痛
上記のマウステールフリックアッセイを用いる第2の試験において、さらに、3mg/kg(腹腔内)のナロキソンによる前投与を行った場合および行わなかった場合で、実施例1の化合物を1.0mg/kg、3.0mg/kgおよび10mg/kgの用量で、5mg/kgのモルヒネと比較する。前処置群では、テールフリック試験の20分前にナロキソンを投与する。非前処置対照では、テールフリック試験の20分前に生理食塩水を投与する。各群において、テールフリック試験の30分前にビヒクル、モルヒネまたは実施例1の化合物を投与する。結果を平均潜時(秒)として下記表に示す:
【表5】
【0110】
全ての用量における実施例1の化合物の投与がテールフリックに対する潜時を有意に増加させること、およびこの効果がナロキソンによる前処置により弱まることが判明する。この結果は、実施例1の化合物によって生じる用量依存的鎮痛効果を示しており、さらに、この効果がμオピオイド受容体アゴニズムによって媒介されることを示唆している。
【0111】
実施例9c:鎮痛の経時変化、実施例1の化合物
上記のテールフリックアッセイを繰り返して、実施例1の化合物の投与により得られる鎮痛の経時変化を決定する。マウスに、(1)アッセイの30分前にビヒクルを、(2)アッセイの30分前に5mg/kgのモルヒネを、または(3)~(7)アッセイの30分前、2時間前、4時間前、8時間前または24時間前に1mg/kgの実施例1の化合物を、皮下投与する。結果を平均潜時(秒)として下記表に示す:
【表6】
【0112】
結果は、実施例1の化合物がテールフリックアッセイの30分前または2時間前に投与された場合に有効な鎮痛をもたらすことを示す(ANOVA、対ビヒクルP<0.001)。テールフリックアッセイの4時間前、8時間前または24時間前に投与した場合、1mg/kgの実施例1の化合物は、ビヒクル対照と有意に異なる鎮痛効果を生じない。したがって、実施例1の化合物は長期鎮痛を生じず、これは、実施例1の化合物が、他のオピエート鎮痛薬と比較して、濫用の可能性が低く、かつ、薬物間相互作用のリスクが低いことを意味する。
【0113】
実施例9d:実施例1の化合物の慢性投与による鎮痛
動物が14日慢性処置レジメンを受け、続いてテールフリックアッセイの30分前に急性処置を受ける試験モデルを用いて、上記のテールフリックアッセイを繰り返す。マウスを、それぞれマウス10匹からなる6つのサブ群を有する3つの大きな群に分ける。当該3つの群に、慢性処置として、(A)ビヒクル、(B)0.3mg/kgの実施例1の化合物、または(C)3.0mg/kgの実施例1の化合物のいずれかを投与する。さらに、各サブ群に、急性処置として、(1)ビヒクル、または(2)~(6)0.01、0.03、0.1、0.3または1.0mg/kgの実施例1の化合物のいずれかを投与する。全ての処置を皮下投与する。結果を、テールフリックに対する平均潜時(秒)として下記表に示す:
【表7】
【0114】
実施例1の化合物による0.1、0.3および1.0mg/kg急性処置が、ビヒクルによる群内急性処置と比較して統計的に有意な用量依存的鎮痛効果を生じることが判明する。これは、慢性群(A)、(B)および(C)にあてはまる。ビヒクルによる前処置と比較して、0.3mg/kgまたは3.0mg/kgの実施例1の化合物による前処置は、同一急性処置サブ群を比較した場合、概してテールフリック潜時の統計的に有意な減少を示した。これらの結果は、14日間の慢性処置の後に実施例1の化合物の鎮痛効果に対するある程度の耐性が生じるが、得られた鎮痛は慢性前処置にもかかわらず有効なままであることを示す。
【0115】
実施例10:CNSリンタンパク質プロファイル
実施例1の化合物の中枢神経系(CNS)プロファイルを試験するために、包括的な分子リン酸化試験もまた行う。マウスの側坐核において、選択した重要な中枢神経系タンパク質についてのタンパク質リン酸化の程度を測定する。試験タンパク質としては、ERK1、ERK2、Glu1、NR2BおよびTH(チロシンヒドロキシラーゼ)が挙げられ、実施例1の化合物を抗精神病薬のリスペリドンおよびハロペリドールと比較する。
【0116】
3mg/kgの実施例1の化合物または2mg/kgのハロペリドールでマウスを処置した。マウスを、注射後30分~2時間で、集束マイクロ波全脳照射によって屠殺し、死亡時に脳のリンタンパク質は存在しているのでそれを保存する。その後、各マウスの脳から側坐核を切断し、スライスし、液体窒素で凍結させた。Zhu H, et al., Brain Res. 2010 Jun 25; 1342:11-23に記載されるように、SDS-PAGE電気泳動に次いでリンタンパク質特異的イムノブロット法によるリンタンパク質分析のために、さらに試料を調製した。各部位でのリン酸化を定量化し、タンパク質(非リン酸化)の全レベルに正規化し、ビヒクル処置対照マウスにおけるリン酸のレベルのパーセントとして表した。
【0117】
結果は、THリン酸化において400%超の増加を生じるハロペリドールおよび500%超の増加を生じるリスペリドンとは対照的に、実施例1の化合物が、30分および60分にて、Ser40でのチロシンヒドロキシラーゼリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示す。これは、本発明の化合物がドーパミン代謝を妨害しないことを示す。
【0118】
結果は、さらに、実施例1の化合物が、30~60分でのTyr1472でのNR2Bリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示す。該化合物は、Ser845でGluR1リン酸化のわずかな増加を生じ、Thr183およびTyr185でERK2リン酸化のわずかな減少を生じる。特定のタンパク質の様々な部位でのタンパク質リン酸化は、タンパク質輸送、イオンチャネル活性、シナプスシグナル伝達の強度および遺伝子発現の変化などの細胞の様々な活動に関連していることが知られている。NMDA型グルタミン酸受容体におけるTyr1472のリン酸化は、神経障害性疼痛の維持に不可欠であることが示されている。GluR1 AMPA型グルタミン酸受容体のSer845のリン酸化は、シナプス伝達の強化と受容体のシナプス局在の強化のいくつかの側面に関連しており、認知能力に関連する長期増強をサポートする。この残基のリン酸化により、チャネルが開く確率が高くなることも報告されている。MAPキナーゼカスケードのメンバーであるERK2キナーゼの残基T183およびY185でのリン酸化は、このキナーゼの完全な活性化に必要であり、ERK2は、細胞の増殖、生存、および転写の調節を含む細胞生理学の多くの側面に関与する。このキナーゼは、シナプス形成と認知機能において重要であると報告されている。
【0119】
実施例11:μオピエート受容体活性アッセイ
HTRFベースのcAMPアッセイキット(CisbioからのcAMP Dynamic2 Assay Kit、#62AM4PEB)を用いて、hOP3(ヒトμオピエート受容体μ1サブタイプ)を発現するCHO-K1細胞において実施例1の化合物を試験する。凍結細胞を37℃の水浴で解凍し、10%FBSを含有するHam F-12培地10mLに再懸濁させる。遠心分離により細胞を回収し、アッセイバッファー(5nM KCl、1.25mM MgSO4、124mM NaCl、25mM HEPES、13.3mM グルコース、1.25mM KH2PO4、1.45mM CaCl2、0.5g/L プロテアーゼ不含BSA、1mM IBMX添加)に再懸濁させる。μオピエート受容体パーシャルアゴニストであるブプレノルフィン、およびμオピエート受容体アンタゴニストであるナロキソン、および合成オピオイドペプチド完全アゴニストであるDAMGOを対照として実施する。
【0120】
アゴニストアッセイのために、細胞懸濁液12μL(2500細胞/ウェル)をフォルスコリン6μL(最終アッセイ濃度10μM)と混合し、漸増濃度の試験化合物6μLを384ウェル白色プレートのウェル中にて合わせ、プレートを室温で30分間インキュベートする。溶解バッファーを添加し、さらに1時間インキュベートした後、キットの説明書に従ってcAMP濃度を測定する。全てのアッセイポイントを3回測定する。XLfitソフトウエア(IDBS)を用いてカーブフィッティングを行い、4パラメータロジスティックスフィットを用いてEC50値を決定する。アゴニストアッセイは、フォルスコリン刺激cAMP蓄積を阻害する試験化合物の能力を測定する。
【0121】
アンタゴニストアッセイのために、細胞懸濁液12μL(2500細胞/ウェル)を漸増濃度の試験化合物6μLと混合し、384ウェル白色プレートのウェル中にて合わせ、プレートを室温で10分間インキュベートする。DAMGO(D-Ala2-N-MePhe4-Gly-オール-エンケフェリン、最終アッセイ濃度10nM)とフォルスコリン(最終アッセイ濃度10μM)との混合物6μLを添加し、プレートを室温で30分間インキュベートする。溶解バッファーを添加し、さらに1時間インキュベートした後、キットの説明書に従ってcAMP濃度を測定する。全てのアッセイポイントを3回測定する。XLfitソフトウエア(IDBS)を用いてカーブフィッティングを行い、4パラメータロジスティックスフィットを用いてIC50値を測定する。改変Cheng-Prusoff式を用いて見かけの解離定数(KB)を計算する。アンタゴニストアッセイは、DAMGOによって引き起こされるフォルスコリン誘発cAMP蓄積の阻害を逆転させる試験化合物の能力を測定する。
【0122】
結果を下記表に示す。結果は、実施例1の化合物が、ナロキソンと比較して極めて高いIC
50を示す、μ受容体の弱いアンタゴニストであること、および、それが中程度に高い親和性であるが、DAMGOに比べて(DAMGOに比べて約79%のブプレノルフィンの活性と比較して)約22%のアゴニスト活性しか示さない、パーシャルアゴニストであることを示す。実施例1の化合物はまた、中程度に強いパーシャルアゴニスト活性を有することも示されている。
【表8】
【0123】
ブプレノルフィンは、慢性疼痛処置およびオピエート離脱に用いられる薬物であるが、その高いパーシャルアゴニスト活性のために、使用者は嗜癖になり得るという問題がある。これを相殺するために、ブプレノルフィンとナロキソンの市販の組合せが用いられている(Suboxoneとして販売されている)。理論に拘束されるものではないが、ブプレノルフィンよりも弱いパーシャルμアゴニストであり、いくらか中程度のアンタゴニスト活性を有する本発明の化合物により、患者を、より低い嗜癖リスクで、疼痛および/またはオピエート離脱に対してより効果的に処置できると考えられる。
【0124】
組換えヒトMOP-β停止シグナル伝達経路を用いる追加の関連試験では、実施例1の化合物が、10μMまでの濃度ではMOP受容体を介するβ停止シグナル伝達を刺激しないが、IC50が0.189μMであるアンタゴニストであることが見出されている。対照的に、完全オピオイドアゴニストであるMet-エンケファリンは、0.08μMのEC50でβ停止シグナル伝達を刺激する。
【0125】
実施例12:ラット耐性/依存性試験
実施例1の化合物を、雄性Sprague-Dawleyラットへの反復(28日)毎日皮下投与中に評価し、投与に対する影響をモニターして、薬理学的耐性が生じるかを決定する。また、反復投与の突然の中止の後にラットの行動的、身体的および生理学的兆候をモニターして、化合物が離脱への身体的依存症を誘発するかを判断する。さらに、耐性および依存性試験と並行して薬理学的試験を行って、耐性および依存性試験で用いる特定の用量での化合物の血漿薬物曝露レベルを決定する。モデルの妥当性を確保するための陽性対照として、また、類似の薬理学的クラスからの参考対照薬として、モルヒネを用いる。
【0126】
実施例1の化合物を、1日4回皮下投与される2つの用量、0.3および3mg/kgで評価する。反復投与は、0.3mg/kgの投与では15~38ng/mL(平均、n=3)、また、3mg/kgの投与では70~90ng/mL(平均、n=3)のピーク血漿濃度をもたらすことが判明する。投与後30分から1.5時間でピーク濃度に達し、同等の結果が投与1日目、14日目および28日目に得られる。
【0127】
実施例1の化合物の両方の用量で、投与期間または離脱期のいずれかの間に、動物の体重、餌および水の摂取、または体温に有意な影響がないことが判明する。0.3mg/kgでの反復投与により引き起こされる主な行動的および身体的影響は、投与期間に、猫背の姿勢(hunched posture)、ストラウブ挙尾(Straub tail)および立毛(piloerection)であることが判明する。高用量では、観察される主な行動的および身体的兆候は、猫背の姿勢、不活発な行動(subdued behavior)、ストラウブ挙尾、テールラトル(tail rattle)および立毛である。
【0128】
試験の28日目に化合物の突然の中止後に行動的および身体的兆候の同様のプロファイルが観察される。0.3mg/kgでの投与期間中に立ち上がり(rearing)および身体の緊張の高まり(increased body tone)は観察されないが、離脱期の間は有意に増大することが判明する。高用量では、投与期間中に軽度の立ち上がりが観察されるが、離脱期の間は、立ち上がりがより顕著になり、身体の緊張の高まりが観察される。
【0129】
陽性対照として、モルヒネを30mg/kgにて1日2回経口投与する。この投与レジメンは、予想通り、体重、餌および水の摂取、および直腸温の変化、ならびに耐性および離脱誘発依存症の発症と一致する臨床的兆候に関連していることが観察される。体重は、ビヒクル処置対照群と比較して、2日目および3日目では有意に増加したが、5日目から有意に減少した。モルヒネは1~9日目にて餌の摂取を有意に減少させた。その後、餌の摂取は、概して、対照群よりも少ないことが観察されるが、9、13、14、16、18、21、22および25日目には対照と有意な差はなかった。体重および餌の摂取に対するこれらの影響は、モルヒネの影響に対する耐性を示している。
【0130】
モルヒネ処置群の水の摂取もまた、投与期間中28日間のうち25日で対照群よりも有意に少ないことが判明する。体温もまた、概して、投与期間中、対照群よりも有意に低く、20日目、21日目および27日目に顕著である。投与期間中にモルヒネにより誘発される主な行動的影響は、ストラウブ挙尾、ジャンピング、ディギング(digging)、身体の緊張の高まり、自発運動活性の増大、爆発的動作(explosive movement)および眼球突出(exopthalmus)であることが観察される。
【0131】
さらに、28日目のモルヒネ投与の離脱は、餌の摂取の初期のさらなる減少、その後の反跳性過食をもたらし、33日目に対照群と比較して食物摂取が有意に増加することが観察される。食物摂取は35日目までに対照レベルに戻る。同様に、以前にモルヒネを投与されていたラットもまた、29日目に水摂取の初期の減少、その後の反跳性多渇症(rebound hyperdipsia)(水消費量は31日目までに対照レベルに戻る)が観察される。さらに、投与中に直腸体温の統計学的に有意な低下が観察されるが、離脱期中に体温は対照レベルに戻る。
【0132】
さらに、モルヒネからの離脱中に、新しい行動的および身体的兆候が観察され、これは、依存性の存在を示している。これらの兆候としては、立毛、運動失調/千鳥足(rolling gait)、激しい震え(wet dog shakes)および腹部の縮こまり(pinched abdomen)が挙げられる。投与期間中に観察される他の異常な行動は、離脱期に徐々に消失する。35日目までに、立ち上がりが、以前にモルヒネを投与されたラットにおいて高い発生率で観察された唯一の行動または身体的兆候であった。
【0133】
したがって、モルヒネの反復投与は、体重、餌および水の摂取、および直腸温の変化、ならびに耐性および離脱誘発依存症の発症と一致する臨床的兆候とともに、この試験において耐性および依存症の明確な兆候を引き起こすことが示される。これは、投与中および投与休止の間の生理学的変化の検出における該試験方法の妥当性を示している。
【0134】
対照的に、0.3および3mg/kgの両方の実施例1の化合物の4回の反復投与は、28日間の皮下投与の間に、耐性を引き起こさない。さらに、離脱時に、高用量では、行動的および身体的兆候の同様であるが減少するプロファイルが観察されるが、これは臨床的意義をもつとは考えられない。したがって、全体として、実施例1の化合物は、投与中止への身体的依存症候群を引き起こさないことが判明した。
【0135】
実施例13:マウスにおけるオキシコドン依存離脱試験
オキシコドンを、雄性C57BL/6Jマウスに、1~2日目、3~4日目、5~6日目および7~8日目にそれぞれ9、17.8、23.7および33mg/kg、1日2回(注射の間隔は7時間)の漸増用量レジメンで8日間投与する。9日目の朝に、マウスに0.3、1または3mg/kgのいずれかにて実施例1の化合物を皮下投与する。30分後に、ビヒクルの注射または3mg/kgのナロキソンの注射を行う。別のコホートのマウスは陰性対照として機能し、これらのマウスには、オキシコドンの代わりに、1~8日目に生理食塩水を投与する。9日目に、これらのマウスにビヒクル(上記のように、ナロキソンが続く)または3mg/kg(皮下注射)の実施例1の化合物(上記のように、ナロキソンが続く)のいずれかを投与する。
【0136】
9日目に、ナロキソン(またはビヒクル)の注射直後に、マウスを個別に透明なプラスチックケージに入れ、30分間連続して観察する。マウスを、ジャンプ、激しい震え、足振戦(paw tremor)、後退り(backing)、眼瞼下垂および下痢を含むオピエート離脱の一般的な身体的兆候についてモニターする。そのような行動をすべて、少なくとも1秒間隔が空いた場合または正常な行動によって中断された場合には新しい発生として記録する。ナロキソン(またはビヒクル)注射の直前および30分後の動物の体重もまた記録する。ANOVA、適切な場合には、その後多重比較のためのTukey検定により、データを分析する。有意なレベルをp<0.05で確認する。
【0137】
【0138】
兆候の総数には、足振戦、ジャンプおよび激しい震えが含まれる。オキシコドン処置マウスにおいて、ナロキソンは、有意な兆候の総数、足振戦、ジャンプおよび体重変化(それぞれについてp≦0.0001)を誘発することが判明する。実施例1の化合物は、試験したすべての用量で、兆候の総数および足振戦の有意な減少を引き起こす。また、該化合物は、3.0mg/kgでは、ジャンプの有意な減少および体重減少の減衰(attenuated body weight loss)も引き起こす。
【0139】
これらの結果は、実施例1の化合物が、オピエート依存ラットにおいてオピエート投与の突然の中止後のオピエート離脱の兆候および症状を用量依存的に減少させることを示す。
【0140】
実施例14:ホルマリン足試験(Formalin Paw Test)(炎症性疼痛モデル)
ホルマリンなどの化学刺激の足底下投与は、マウスに即時の痛みと不快感、続いて炎症を引き起こす。2.5%ホルマリン溶液(37重量%ホルムアルデヒド水溶液、生理食塩水で希釈)を後足に皮下注射して、急性疼痛応答および遅延炎症応答の二相性応答を引き起こす。したがって、この動物モデルは、同一の動物における急性疼痛および亜急性/強直性疼痛の両方に関する情報も提供する。
【0141】
最初にC57マウスを観察チャンバー内で慣らす。ホルマリン負荷の30分前に、ビヒクルを皮下注射、5mg/kgのモルヒネ(生理食塩水中)を皮下注射、または0.3、1.0もしくは3.0mg/kgのいずれかの実施例1の化合物(45%w/vシクロデキストリン水溶液)を皮下注射により、マウスに投与する。また、別の組のマウスを対照ビヒクルまたは3.0mg/kgの実施例1の化合物で、皮下注射ではなく経口投与により処置する。
【0142】
その後、マウスの左後ろ足の足底表面に2.5%ホルマリン溶液20μLを皮下注射する。次の40分間にわたって、処置した後足を舐めるかまたは噛むことに費やされた合計時間を記録する。最初の10分間は急性侵害受容応答を表し、後の30分間は遅延炎症応答を表す。1分(minter)間隔で、0~4のスケールでスコア付けする「平均行動評価(Mean Behavioral Rating)」を用いて各動物の行動を評価する:
0:応答なし、動物は眠っている
1:動物は処置した足で、軽く、例えばつま先で、歩いている
2:動物は処置した足を上げている
3:動物は処置した足を振っている
4:動物は処置した足を舐めるかまたは噛んでいる
ANOVA、適切な場合には、その後Fisher検定を用いるポストホック比較により、データを分析する。有意性はp<0.05に設定される。
【0143】
【0144】
結果は、初期段階(0~10分)および後期段階(11~40分)のいずれの応答期間中も有意な処置効果を示す。ポストホック比較は、ビヒクル処置と比較して、モルヒネまたは実施例1の化合物(3mg/kg)の皮下注射が、ホルマリン注射によって誘発される疼痛行動評価を有意に減衰させ、舐める時間を有意に減少させることを示す。ポストホック比較もまた、モルヒネまたは実施例1の化合物(3mg/kg)の皮下注射、および実施例1の化合物(3mg/kg)の経口投与により、舐めることに費やされた時間を有意に減少させることを示す。1.0mg/kgの化合物の皮下使用、および3.0mg/kgの経口使用で平均疼痛行動評価も低下したが、これらの効果はこの試験では統計学的に有意ではなかった。1.0mg/kgの実施例1の化合物の皮下使用で舐める時間も同様に減少したが、結果はこの試験では統計学的に有意ではなかった。体重の有意な変化を試験中に受けたマウスはどの試験群にもいなかったことが判明した。
【0145】
実施例15:ヘロイン維持ラットにおける自己投与
ヘロイン嗜癖ラットが実施例1の化合物を自己投与するかを決定するために試験を行い、それらがそうしないことが判明し、さらに、本開示の化合物の非嗜癖性の性質が強調される。
【0146】
試験は3段階で行われる。第1段階では、ラットは、まず餌のレバーを押すように訓練され、次に、静脈内頚静脈カテーテルが留置され、ヘロインを自己投与するように訓練される。合図(ケージ内のライトの点灯)に応答して、動物がレバーを3回押すことにより、カテーテルを介してヘロインが1回注射される。ヘロインは、初期用量0.05mg/kg/注射で提供され、その後、0.015mg/kg/注射に増加させる。次いで、ヘロインの供給を生理食塩水に置き換えることにより、この訓練された応答を消失させる。第2段階では、生理食塩水溶液を、0.0003mg/kg/注射、0.001mg/kg/注射、0.003mg/kg/注射および0.010mg/kg/注射の4つのうちの1つの用量での実施例1の化合物の溶液に置き換える。各々のマウスに、1種類または2種類の用量の化合物を上昇方式で投与する。次いで、この応答を生理食塩水注射で消失させ、その後、0.015mg/kg/注射でのヘロインの使用を繰り返す第3段階を行う。第3段階の目的は、試験の終わりに依然としてラットがヘロインへの嗜癖行動を示すことを実証することである。試験結果を下記表に示す:
【表11】
【0147】
結果は、ヘロインを投与した場合ラットがレバーを押す回数が統計学的に有意に増加するが、生理食塩水または実施例1の化合物を投与した場合有意な差はなかったことを示す。したがって、結果は、ラットが実施例1の化合物の嗜癖にならないことを示唆する。
【0148】
この試験は、実施例1の化合物の自己投与に関心を示さなかったラットが、利用可能になった場合にヘロインを自己投与することを示すために、用語「復活(reinstatement)」を用いることに留意されたい。したがって、ここでの「復活」は、動物がヘロインを静脈内に自己投与する能力または訓練を保持していることを意味する。しかしながら、試験結果は、これらの環境下のラットが実施例1の化合物を自己投与することを選択しないことを示し、それがラットに心理的に報酬を与えない(すなわち、心理的に嗜癖性がない)ことを示している。
【0149】
実施例16:ヘロイン嗜癖ラットにおける合図誘発再発
実施例1の化合物をまた、ラットにおける消滅したヘロイン強化レバー押しの合図誘発復活を減少させる能力について試験する。動物は、静脈内ヘロイン注入で強化されたレバーを押すことを容易に学習する。この応答を学習した後に、レバー押しがいくつかの実験セクションでもはや強化されなくなった場合(すなわち、一種の強制的禁欲である実験的消滅にさらされる場合)、応答は低率に減少する。復活は、実験操作の結果として以前に消滅した応答が再び現れると、生じる。ヘロイン注入により以前強化された応答の復活を呼び起こすことができる実験操作の一種は、以前ヘロインと関連付けられていた環境的刺激(合図)を提示することである。
【0150】
新薬が再発を防止する可能性を評価するために、応答が確実に応答随伴性ヘロイン関連合図とともに回復する試験セッションの前に、実験化合物を投与する。このような試験セッション中に、応答率が試験化合物のビヒクルが投与されたときと比較して低下する結果は、ヘロイン関連合図が再発を引き起こす能力の鈍化または遮断を示す。このような効果のある化合物は、ヘロイン濫用の再発を防止するのに有用であり得る。
【0151】
配送時に体重275~300gの成体雄性Long-Evans hoodedラット(Envigo、Indianapolis、IN)を用いる。試験中でないときは、ラットを、水に自由にアクセスできる温度制御された(22℃)設備の標準的なプラスチックのげっ歯類ケージに個別に収容する。ラットは、訓練開始前の少なくとも1週間は標準的なラット飼料(show)を自由に食べることができ、その後、制御された給餌によって毎日320gの餌で維持される。ラットを、実験期間中、12時間/12時間で逆転する明暗サイクルで維持する、このサイクルの暗セグメント中に訓練および試験する。
【0152】
動物施設に順応した後、50mg/kgケタミンと8.7mg/kgキシラジンの組合せで誘発された外科的麻酔下で、留置静脈カテーテルを各ラットの右外頸静脈に留置する。カテーテルを右外頸静脈に導入する。ラットは、自己投与訓練の開始前の少なくとも5日間、手術から回復させる。訓練中定期的に、5mg/kgケタミンまたは5mg/kgメトヘキシタールを、カテーテルを通して注入して、即時麻酔が誘発されたときに推測される開存性を決定する。セッション間で、カテーテルに、250単位/mlヘパリンおよび200mg/mlアンピシリン/100mg/mlスルバクタムを含有する25%グリセロール/75%滅菌生理食塩水ロック溶液0.1mlを流し、それで満たす。実験中にカテーテルが開存していると判断した場合、左外頸静脈にカテーテルを挿入し、ラットを試験に戻す。消失および復活試験中に、カテーテルによる注入は行われず、これらのカテーテル維持手順は用いられなかった。
【0153】
2つの格納式レバー、5ワットの室内灯およびSonalert(登録商標)音源を備える市販の試験チャンバー(MED Associates、Inc.、St. Albans、VT)を用いる。各レバーの上に白色合図灯が配置される。各セッション中、ステンレス鋼のスプリングテザーで保護された注入チューブは、各ラットに留置された背面に取り付けられたペデスタルを、各チャンバーの上に吊るされた平衡液体スイベルに接続する。続いて、注入チューブは、作動すると6秒0.14ml注液を送達する注入ポンプにスイベルの他端を接続した。レバー押しならびに照明、ポンプおよびSonalert(登録商標)の作動の記録は、マイクロコンピューター、インターフェースおよび関連ソフトウェアによって実現される。
【0154】
ヘロイン自己投与の訓練セッションを、週5日、1日2時間実施する。右側のレバーでの各応答(固定比率1の強化スケジュール;すなわち、「FR1」)は、0.01mg/kgヘロイン注入(0.14ml/6秒)の送達を生じる。注入の間、音が鳴り、両レバーの上の刺激灯が3Hzにて点滅した。注入中のアクティブな(右側)レバー押し、およびすべての非アクティブな(左側)レバー押しを記録するが、スケジュールされた結果はない。
【0155】
自己投与の訓練は、3つの基準を満たすまで継続する:1)少なくとも12回の自己投与セッションが生じた;2)少なくとも15回のヘロイン注入が、最後の4つのセッション各々中に生じた;および3)少なくとも125回の生存期間ヘロイン注入が得られ、その後消失訓練が開始される。続いて、12回の2時間連続の毎日の消失セッションを実施する。消失セッション中、室内灯を点灯させ、レバーを伸ばすが、注入は実施されず、他のスケジュールされた刺激の変更は生じない(すなわち、Sonalert(登録商標)の作動も刺激灯の点灯も生じない)。最後の4回の消失セッションの前に、実施例1の化合物のビヒクルを、ラットを注射手順に順応させるために、セッションの30分前に皮下注射する。最後の3回の消失セッション中のアクティブなレバー押しの平均回数が、最初の3回の消失セッション中のアクティブなレバー押しの平均回数より低い場合、ラットは、復活試験の対象であるとみなされる。この消失基準を満たさないラットは、その後の試験から除外される。
【0156】
復活試験が消失訓練に続く。復活試験中の条件は、実施例1の化合物またはビヒクルのいずれかの用量がセッションの30分前に投与され、ヘロイン自己投与注入が生じないことを除き、自己投与中の条件と同一である。また、以前ヘロイン注入に関連付けられていた合図を、復活試験セッションの開始時に6秒間非偶発的に提示する(すなわち、セッションの開始時に、音が鳴り、両レバーの上の刺激灯が3Hzにて点滅し、室内灯がオフである)。0(ビヒクル)、1、3および10mg/kgの皮下注射の用量の実施例1の化合物を、それぞれ12匹のラットからなる別個の群を用いて試験する。特定の群へのラットの割り当てを、最後の消失セッションの直後に行い、その時点にて、各群で試験されるラット数と、最後の消失セッション中および最後の自己投与セッションにて呼び起されるレバー押しレベルの類似性が最大になるように行う。
【0157】
ヘロインを滅菌した0.9%生理食塩水で調製し、6秒0.14mlの量で注入液を送達する。5単位/mlのヘパリンをさらにヘロインおよび生理食塩水の注入液に加える。実施例1の化合物を40%w/vの(2-ヒドロキシプロピル)-b-シクロデキストリン水溶液ビヒクル中に溶解させ、それを1ml/kg体重に相当する量で試験の30分前に皮下投与する。
【0158】
最初に、復活試験日におけるアクティブなレバー押しの数(すなわち、押すことが以前ヘロンで強化された、右側レバー)を、外れ値に関するGrubbs検定(Extreme Studentized Deviate)を用いて分析し、p<0.05の場合ラットのデータをすべての分析から除外する。群間の最後の自己投与セッションおよび最後の消失セッション中に生じるアクティブなレバー押しの数を、個々のANOVAを用いて別個に比較する。ANOVAの結果が有意(p<0.05)と判明した場合、別の群との各群間の比較を、Tukeyの多重比較検定を用いて実施する。実験課題が、復活試験の前に、各群がヘロインを自己投与し、同等のレベルまで応答を消滅するように訓練されているかであるため、この分析アプローチを用いる。各薬物処置群の復活試験セッション中のアクティブなレバー押しの数を、無補正のFisherのLSD検定を用いて、ビヒクル群の数と比較する。実験課題が、いずれかの実施例1の化合物の用量での処置が復活のレベルを低下させるかであるため、この分析アプローチを用いる。対応のある片側t検定を実施して、最後の消失セッション中のアクティブなレバー押しのレベルをビヒクル群の復活試験セッション中のレベルと比較して、用いたヘロインの合図条件が応答を復活できるかを決定する。また、試験セッション中に生じる非アクティブなレバー押しの数(すなわち、左側レバーを押すこと)を、群間でANOVAを用いて比較する。ANOVAの結果が有意(p<0.05)と判明した場合、別の群との各群間の比較を、Tukeyの多重比較検定を用いて実施する。すべての統計検定を、マイクロコンピューターソフトウェア(Macintosh用Prism 7、GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて実施し、全タイプの比較を、p<0.05の場合統計的に有意であるとみなす。
【0159】
ラットの1匹は、Grubbs検定を満たさなかったためそのデータを除外した(1mg/kg用量群のラット)。自己投与の最終日中のアクティブなレバー押しの数は、用量群間で統計的に有意ではないことが判明し、これは、ラットが、消失訓練の前に同様のレベルにヘロインを自己投与するように訓練されていることを示している。消失の最終日中のアクティブなレバー押しの数は、用量群間で統計的に有意ではなく、これは、ラットで復活試験の前に同様のレベルに消滅したことを示している。ビヒクル処置群から出る最終の消失セッション中のアクティブなレバー押しの平均数(±SEM)は、9.83(±3.1)であり、復活試験セッション中に60.3(±18.0)まで増加し、これは統計的に有意な増加(p=0.0083)であり、これは、この試験で用いた条件がビヒクル処置群における復活を効果的にもたらすことを示している。
【0160】
下記表は、各々試験群についての復活試験セッション中に出るアクティブなレバー押しの平均数を示す。3つすべての用量の実施例1の化合物は、ビヒクル対照レベルと比較して合図復活応答を有意に(p<0.05)減少させる(1、3および10mg/kg用量群について、それぞれp=0.0133;p=0.0473;およびp=0.0365)。
【表12】
【0161】
また、復活試験中の非アクティブなレバー押しは、全体的に低く、群間で統計的に差異がない(p=0.0697)ことが判明した。
【0162】
これらの結果は、3つすべての用量の実施例1の化合物が、ラットにおいて以前ヘロイン注入により強化された、消滅した応答の合図誘発復活を統計的に減少させたことを示している。このデータは、本開示の化合物が、オピエート濫用に関連する刺激(例えば合図)への再曝露により生じる、オピエート使用の再発を防止するのに有効であるという予測を強く支持する。
【0163】
実施例17:動物の薬物動態データ
標準的な手順を用いて、実施例1の化合物の薬物動態プロファイルを数匹の動物で試験する。
【0164】
実施例17a:ラットのPK試験
第1の試験において、45%Trapposolビヒクル中1mg/kgにて静脈内ボーラス(IV)により、または0.5%CMCビヒクル中10mg/kgにて経口(PO)により、実施例1の化合物をラットに投与する(各群N=3)。第2の試験において、各々45%Trapposolビヒクル中、10mg/kgにてPOによりまたは3mg/kgにて皮下注射(SC)により、実施例1の化合物をラットに投与する(各群N=6)。薬物の血漿濃度を、投与後0~48時間の時点で測定する。代表的な結果を以下に示す(*は、測定可能な定量限界未満の血漿濃度を示す)。
【表13】
【0165】
実施例17b:マウスのPK試験
マウスにおける同様の試験を、実施例1の化合物の10mg/kgのPO投与を用いて実施し、以下の結果を得る:Tmax=0.25時間;Cmax=279ng/mL;AUC(0-4h)=759ng-hr/mL;血液対血漿の比(0.25~4時間)が3.7~6.6の範囲である。0.1mg/kgのSC投与でも試験を実施する。代表的な結果を下記表に示す。
【表14】
【0166】
これらの結果と合わせて、実施例1の化合物は、十分に吸収され、脳および組織に分布し、治療用量の1日1回投与を可能にするのに適度に長い半減期で保持されることを示す。
【0167】
実施例18:ヘロイン維持霊長類における自己投与
用量設定試験では、試験化合物(実施例1の化合物)を、固定比率(FR)10の餌送達スケジュール下で応答する2匹のアカゲザルにおけるレバー押しの割合を変化させる能力について評価した。その後、FR 30の静脈内(IV)自己投与のスケジュール下で応答する4匹のアカゲザルにおいて、試験化合物をヘロインと比較した。試験化合物を、自己投与を維持する能力およびヘロイン自己投与を変化させる能力について試験した。
【0168】
5匹の成体アカゲザル(3匹が雄性、2匹が雌性)を、14/10時間の明暗サイクル、約21℃の温度および約50%の相対湿度で維持された部屋に個別に収容する。すべてのサルは従前に薬物を投与しており、オペラント手順のレバーで応答した。サルは、年齢に応じた体重を維持するのに十分な量の餌、ピーナッツ、新鮮な果物をホームケージで毎日与えられた。
【0169】
すべての試験で、首と腕を拘束する椅子にサルを座らせた。実験セッション中に、椅子を、座っているサルに簡単にアクセスできるように、部屋の壁に取り付けられたカスタムメイドのオペラントパネルを備えた換気された防音室に配置した。パネルには、2つの応答レバーおよび関連する刺激灯が含まれていた。個々のサルについてレバーの1つのみがアクティブ化した:アクティブ化した特定のレバー(左または右)は、この試験に用いた動物の行動歴に基づく。ペレットディスペンサーを各部屋の外側に配置し、応答要件が完了すると、ラズベリー風味のスクロースペレット300mgがレバーパネル下に取り付けられた餌入れに送られた。注入ポンプもまた部屋の外側に配置し、留置カテーテルを滅菌チューブおよびヒューバーポイント針と接続した。応答パネルおよび注入ポンプは、インターフェースとコンピューター化されたシステムに接続され、制御された。開存性を維持するために、各セッション後にカテーテルおよびポートを2.5mlのヘパリン化生理食塩水(100U/ml)で洗い流し、ロックする。
【0170】
実施例1の化合物(遊離塩基)を、1つを除くすべての試験について、生理食塩水中の20%βシクロデキストリン(重量/体積)に溶解させた。その除外した試験(1mg/kgの化合物の皮下投与がヘロイン自己投与を変更する能力)では、化合物を100%PEGに溶解させた。すべての用量をmg/kg体重で表す。ヘロイン塩酸塩(自己投与試験)を、自己投与試験では生理食塩水中の20%βシクロデキストリン(重量/体積)に溶解させ、前処理試験では生理食塩水のみに溶解させた。ヘロインの用量を塩としてmg/kg体重で表す。対照ビヒクルは、生理食塩水のみまたは生理食塩水中の20%βシクロデキストリン(重量/体積)であった。
【0171】
自己投与置き換え試験では、ヘロイン、試験化合物およびビヒクルを、注入ポンプに取り付けられたシリンジサイズ、サルの体重および薬物濃度に応じて、2.3ml/分(すなわち30mlシリンジ)または3.4ml/分(すなわち60mlシリンジ)の流速にて、注入当たり0.6~3.7ml(14.8~65.6秒の注入時間に対応)の範囲の量で、IV投与した。前処理試験では、試験化合物およびビヒクルを、サルの体重および薬物濃度に応じて、0.2~11.7mlの範囲の量で、セッション開始の15分前に、静脈内(IV)または皮下(SC)注射により投与した。用量設定試験では、試験化合物およびビヒクルを、セッション直前にIV投与した。サルの体重を毎日量り、それに従って用量を調節した。これらの試験におけるサルの体重は、6.1kgから11.9kgまで変化した。試験物質の溶液は毎日新たに調製した。ヘロインの溶液は毎週調製した。
【0172】
用量設定試験では、データを、1秒当たりの応答におけるレバー押しの割合として示す(n=2)。自己投与試験では、データを、90分間のセッション当たりの受けた注入の数として示す(n=4)。個々のサル、ならびに2匹(用量設定試験)または4匹(自己投与および前処理試験)のサル(平均±1 SEM)について、データを示す。これらの試験のデータでは推測統計分析を実施しなかった。
【0173】
用量設定試験
サルを、餌ペレットを受け取るために、独特の視覚刺激の存在下で、10回(FR 10)レバーを押すように予め訓練した。毎日のセッションは、8つの15分サイクル(2時間)で構成された。サイクルは10分間のタイムアウトで始まり、その間、部屋は暗く、レバーを押してもプログラムされた結果はなかった。10分間のタイムアウト後は、緑色のライトの点灯によって合図される応答期間であり、サルは餌についてのFR 10のスケジュール下応答できた。応答期間が終了し、10個の餌ペレットの送達または5分のいずれか早い方の後、部屋を暗くした。
【0174】
試験化合物(0.0001~0.32mg/kg)を、餌のためのレバー押しの割合を減少させる能力について、2匹のサルにおいて評価した。試験化合物をSCアクセスポートおよび留置カテーテルによりIV投与した。薬物が投与されていない試験セッションの前の最後の3回のセッションによって示されるように、4日に1回以下の頻度で、応答が安定している間のみ試験を実施した。応答率を、各セッションの平均割合を得るためにサイクル間で平均化し、その後3つのセッション感で平均化した。応答は、個々のセッションの割合が3つのセッションの平均割合が75%を超える場合、安定とみなされた。
【0175】
自己投与試験
ヘロイン(ベースライン)自己投与およびビヒクル置き換え(消失)。サル(n=4)を、IVヘロイン(0.0032mg/kg/注入)についてのFR 30のスケジュール下応答するように訓練した。緑色のライトの存在下で、アクティブなレバーの30回ごとの応答が完了すると(非アクティブなレバーでの応答は記録されないが、プログラムされた結果はなかった)、赤色の刺激灯の5秒間の提示を伴うIV注入の送達が行われた。180秒間のタイムアウト時間中すべての刺激灯はオフにされ、応答はプログラムされた結果を有さず、続いて各薬物を注入した。セッションは90分間続き、サルは、成績に応じて1セッション当たり最大25~30回の注入を受けることができた。ヘロインの「プライミング」(非偶発的)注入を、各セッションの直後に行った。最低5回のヘロイン自己投与セッションを実施して、能力の安定性を確立し、これは、サルが少なくとも18回注入を受け、各セッションで受けた注入の平均数が±20%超変化しない3回の連続セッションで定義される。その後、最低4回のセッションで、平均応答率がヘロインを利用可能なときのセッションの平均応答率の20%未満である(その個別のサルについて)、3回の連続セクションの各々において、サルが8回未満の注入を受けるまで、ビヒクルをヘロインに置き換えた(すなわち消失)。
【0176】
試験化合物の置き換え。異なる機会に、実施例1の化合物の用量をビヒクル(0.01、0.032および0.1mg/kg/注入)に置き換えた。各用量を最低5回かつ最大10回のセッションで試験した。試験物質の「プライミング」(非偶発的)注入を各セッションの直後にった。試験物質の用量を評価した後、ビヒクルを最低4回のセッションで自己投与に利用可能にした(すなわちウォッシュアウト)。
【0177】
ヘロイン自己投与の再試験。試験化合物の3つの用量での試験が完了した後、サルを、最低5回のセッションで、上記基準にしたがって、ヘロイン(0.0032mg/kg/注入)で試験した。
【0178】
前処理試験
サルは、少なくとも3回のセッションで、応答が上記のように安定するまで、生理食塩水中のヘロイン(0.0032mg/kg/注入)に対して応答した。異なる機会に、ビヒクルまたは試験化合物の単回用量を、ヘロイン自己投与セッションの15分前に、IV(0.032、0.1、0.32および1.0mg/kg、生理食塩水中の20%βシクロデキストリン(重量/体積)中)またはSC(1.0mg/kg、100%PEG中)投与した。試験化合物の注射は、少なくとも4回のセッションで分離した。
【0179】
行動測定の記録
用量設定試験のために、応答率(1秒当たりの応答)および受け取ったペレットの数を記録した。自己投与試験のために、受け取った注入の数および総薬物摂取量を記録した。
【0180】
結果
用量設定試験:0.32mg/kgの用量までは、試験物質は、餌に対する応答に影響を及ぼさなかった。ビヒクルの注射後の2匹のサルの平均応答率は、1秒当たり0.95±0.03回の応答であった。試験物質の注射後の平均応答率は、0.94±0.01(0.0001mg/kg)、0.98±0.08(0.00032mg/kg)、0.86±0.11(0.001mg/kg)、0.92±0.11(0.0032mg/kg)、0.97±0.21(0.01mg/kg)、0.99±0.22(0.032mg/kg)、0.98±0.24(0.1mg/kg)および0.95±0.12(0.32mg/kg)であった。
【0181】
自己投与試験:ヘロイン(ベースライン)自己投与およびビヒクルの置き換え(消失)。4匹すべてのサルが、試験の開始時および終了時にヘロインに対して確実に反応した。試験の開始時および終了時の最後の3回のヘロイン自己投与セッションについてセッション当たりに受けた注入の平均数は、それぞれ23.2±2.3および23.6±2.3であった。ビヒクル(20%βシクロデキストリン)をヘロインと置き換えたとき、応答は著しく減少した。試験化合物をビヒクルと置き換えたとき、受けた注入の数は低いままであり、ビヒクルと統計的に差はなかった。データを下記表に要約する。
【表15】
【0182】
前処理試験:前処理試験の開始時および終了時に、ビヒクルの注入が先行するセッションにおいて、サルは、それぞれセッション当たり平均24.2+1.4および25.6+0.8回のヘロインの注入を受けた。1.0mg/kg IVの用量まで、試験化合物は、ヘロイン自己投与に著しくは影響を及ぼさなかった。ヘロイン自己投与に対する、100%PEG中の試験化合物の1.0mg/kgでのSC投与の影響もなかった。
【表16】
【0183】
これらの結果は、0.32mg/kgの用量までの実施例1の化合物は、餌に対する応答に統計的に影響を及ぼさないことを示している。ヘロインは、4匹すべてのサルにおいて高い応答率を維持し、これは、この方法の、十分特徴付けられたμオピオイド受容体アゴニストの正の強化効果に対する感受性を示している。ビヒクルをヘロインと置き換えると、応答は著しく減少し、これは、ビヒクルに対してではなくヘロインに対する選択的強化効果があることを示している。0.1mg/kg/注入の単位用量まで、試験化合物は、ビヒクルより大きい応答を維持できず、1.0mg/kgの用量まで、試験化合物は、IVヘロインに対する応答を変化させなかった。まとめると、これらの結果は、試験した用量で、IVまたはSC経路の投与による試験物質は、餌にする応答に影響を及ぼさず、明らかな正の強化効果はなく、またヘロインに対する応答に影響を及ぼさないことを示す。この試験で検討した条件内で、非ヒト霊長類における自己投与手順の確立された予測妥当性に基づいて、これらの結果は、本発明の化合物が、重大な濫用の責任を負わず、ヘロインの濫用関連影響を減少させないことを示唆している。
【国際調査報告】