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特表2022-518501脈絡叢オルガノイド及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】脈絡叢オルガノイド及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220308BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220308BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20220308BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20220308BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20220308BHJP
   C12N 5/074 20100101ALN20220308BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/02 ZNA
C12N5/077
C12N5/07
C12N5/0735
C12N5/074
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542374
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2020051631
(87)【国際公開番号】W WO2020152272
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】1900930.7
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ランカスター,マデリーン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ペレグリーニ,ローラ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA18
4B063QQ91
4B063QR77
4B063QS40
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA18
4B065BB34
4B065BC38
4B065BC50
4B065BD05
4B065BD39
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】脈絡叢オルガノイド及びその作製方法に関する。
【解決手段】 (a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞並びに他の真正の特徴及びマーカーを含む培養脈絡叢オルガノイドに関する方法及び材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む脈絡叢オルガノイド。
【請求項2】
前記上皮は、TTR+、MRP1+、Aqp1+及び/又はZO1+である、請求項1に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項3】
前記TTR、Aqp1及び/又はZO1は、前記上皮の頂端側に集積されている、請求項2に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項4】
前記MRP1は、前記上皮の頂端側及び基底側に集積されている、請求項2に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項5】
前記上皮は、頂端微絨毛と、任意に一次繊毛とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項6】
更に(c)間質細胞を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項7】
側脳室脈絡叢オルガノイドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項8】
前記1つ以上の嚢胞は、液体で満たされており、好ましくは、前記液体は、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン(CLU)、アポリポタンパク質E(APOE)、アポリポタンパク質A4(APOA4)及びルミカン(LUM)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の脈絡叢オルガノイド。
【請求項9】
脈絡叢オルガノイドを作製するためのWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の使用であって、前記脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む、使用。
【請求項10】
脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、幹細胞集団から神経上皮細胞集団を作製することと、WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下で前記神経上皮細胞集団を培養することとを含む方法。
【請求項11】
WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で前記神経上皮細胞集団を培養することが、前記幹細胞集団の培養を開始してから約8~12日後に開始される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、
(a)幹細胞集団を培養することにより、胚様体集団を作製するステップ;
(b)神経誘導に好適な条件下で前記胚様体集団を培養するステップ;
(c)ステップ(b)の産物を三次元マトリックス、好ましくは細胞外マトリックス(ECM)に包埋するステップ;
(d)WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下でステップ(c)の産物を培養するステップであって、好ましくはステップ(a)の開始から約8~12日後に開始されるステップ
を含む方法。
【請求項13】
ステップ(d)の前記培養は、撹拌を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記WNT経路活性化因子は、CHIR99021、Wnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、Wnt8a、Wnt8b、Wnt10a、Wnt10b、BML-284、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)、WAY-316606、IQ1、QS11、SB-216763、LY2090314、DCA、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン及びリチウムからなる群から選択され、好ましくは、前記WNT経路活性化因子は、CHIR99021である、請求項9~13のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項15】
前記BMPシグナル伝達経路活性化因子は、Bmp4、Bmp2、Bmp3、Bmp5、Bmp6、Bmp7、Bmp8a、Bmp8b、Bmp10、Bmp11、Bmp15、イソリキリチゲニン、4’-ヒドロキシカルコン、アピゲニン、ジオスメチン及びベントロモルフィン類(例えば、SJ000291942、SJ000063181及び/又はSJ00037178)からなる群から選択され、好ましくは、前記BMPシグナル伝達経路活性化因子は、Bmp4である、請求項9~14のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項16】
創薬スクリーニング又は薬物毒性のアッセイのための、請求項1~8のいずれか一項に記載の脈絡叢オルガノイドの使用。
【請求項17】
前記使用が、候補薬剤が血液脳脊髄液(CSF)関門を通過する能力を試験するためのものである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
候補薬剤が血液脳脊髄液(CSF)関門を通過する能力を試験する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の脈絡叢オルガノイドを前記候補薬剤と接触させることと、前記候補薬剤が前記上皮を通過するかどうかを決定することとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、脈絡叢オルガノイド、詳細にはタイト上皮バリアを含み、且つ脳脊髄液様の液体を産生する能力を有する脈絡叢オルガノイドに関する。本発明は、脈絡叢オルガノイドの作製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
脈絡叢は、脳内における、高度に保存されており且つ依然として研究が進んでいない分泌組織である。この組織は、ヒトではその脳のサイズに比例して大きくなり、保護上皮バリアの形成及び脳脊髄液(CSF)の分泌など、脳における幾つもの重要な機能を呈する(1)。
【0003】
解剖学的には、脈絡叢は、側脳室、第三脳室及び第四脳室に局在し、それぞれの各内腔に現れる。成熟脈絡叢は、間充織由来の間質組織のコア及び有窓毛細血管を単層立方上皮が取り囲んで構成される。上皮細胞は、タイトジャンクションで密着して繋がり、脳室の内腔と向かい合う頂端刷子縁及び間質側にある基底面で高度な極性を有している。
【0004】
脈絡叢の高度な極性を有する腺上皮は、保護上皮バリアの形成及びCSFの分泌など、脳における幾つもの重要な機能を呈する。
【0005】
CSFは、脳内栄養素の生理的レベルの維持、シグナル伝達分子及び成長因子の輸送並びに頭蓋内圧の調節におけるその保護的役割に重要である。CSFは、透明な無色の液体であり、脳室及びくも膜下腔を通して循環し、次に一部がくも膜顆粒を通して血液循環中に再吸収される(2~4)。
【0006】
CSFは、その頂端刷子縁における輸送体及びポンプの数を最大化する脈絡叢上皮細胞からの、及び上皮細胞内でのタイトジャンクションの存在によって付与される血液ろ過からの能動分泌によって産生される。脈絡叢は、CSFの産生及び再吸収速度の維持において重要な役割を有する。この平衡が乱れると、水頭症などの病変につながる。
【0007】
CSF産生には、種々の機構が関わる。第一に、脈絡叢上皮細胞の頂端側に位置するNa-KATPアーゼポンプ及び細胞質炭酸脱水酵素により、主に脳室内腔へのNaの分泌によって促進される浸透圧勾配が生じる。この浸透圧の力は、アクアポリンチャネルを通した経細胞性の水分の流入を促進する。第二に、ATP結合カセット(ABC)タンパク質及び溶質キャリアー輸送体(SLC)は、ATP加水分解を必要とする及び必要としない、アミノ酸、ヌクレオシド及び小ペプチドの交換をそれぞれ可能にする。脈絡叢上皮細胞は、MRP1及びMRP4などの排出輸送体も発現する。これらのポンプは、代謝産物のクリアランスを調節し、薬物及び毒性化合物の侵入を防ぐものであり、従って、CSFにおけるそれらの利用可能性は、低下する。第三に、脈絡叢上皮細胞の分泌系は、高度に特殊化しており、且つ広範囲に及ぶため、一層複雑なタンパク質及びホルモン分泌が可能である。例えば、甲状腺ホルモン及びレチノールの担体であるトランスサイレチン(TTR)は、脈絡叢によって合成及び分泌される最も多量なタンパク質である(Li, X. and Buxbaum, J. N. (2011) Mol. Neurodegener. 6: 1-17;Richardson, S. J. et al. (2015) Front. Neurosci. 9: 1-8;Johnson, B. A. et al. (2018) Fluids Barriers CNS 15: 22)。TTRの媒介によるCSFへの甲状腺ホルモンの送達は、脳の発生の調節において重要な役割を有するように見える。
【0008】
脈絡叢の緊密に密閉された上皮は、血液CSF関門(B-CSF-B)としても知られる。B-CSF-Bは、血液脳関門(BBB)と同様に、循環中の毒性物質又はシグナルが脳に到達することを防ぐ。しかしながら、BBBとは対照的に、B-CSF-Bは、単一の細胞型、脈絡叢上皮細胞によって形成され、これは、直接脳実質というよりむしろ、CSFに面している(5、6)。しかしながら、CSFは、脳に自由に出入りできるため、B-CSF-Bを通る分子の輸送は、脳への代替的な経路である。
【0009】
脈絡叢のヒト発生に関しては、ほとんど分かっていない。脈絡叢の発生後、偽重層上皮から円柱まで一連の段階が続き、その後、最後の段階において、微絨毛及び基底部に局在する核を有する高度に折り畳まれた立方上皮となる。妊娠7週目前後の背側終脳では、局所的BMPシグナル伝達勾配が神経上皮からの脈絡叢の発生を促し、それが脳室内腔に向かって伸長し始める。BMP分泌型シグナルは、局所的閾値を設定することにより、脈絡叢上皮と、海馬原基が発生する元となるウィングレス関連(WNT)シグナル伝達中心である隣接する半球皮質とを徐々に指定する。
【0010】
脈絡叢のパターニングに関する研究がインビトロで行われている。過去十年間、脳オルガノイドなどの3次元培養システムの著しい進歩により、ヒト発生生物学における基礎的な発見が可能となった(7~12)。
【0011】
しかしながら、これまでに作成された誘導性脈絡叢細胞は、生体内の脈絡叢と同じ複雑性の構造を呈することが示されたこともなければ、CSFの生成において機能性であることが示されたこともない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、当技術分野では、脈絡叢の機能モデルを構築することが依然として大いに必要とされている。脈絡叢は、CNSへの薬物の重要な侵入点である。しかしながら、B-CSF-Bの調節及び透過性並びに脳における特定の薬物のアベイラビリティを向上させるツールとしてそれをどのように利用し得るかについては、ほとんど分かっていない。この点において、特にB-CSF-B及び/又はBBBを通過する能力に関して薬物候補をアッセイする際、脈絡叢の機能モデルの研究は、理解を補助し得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明者らは、シグナル伝達分子の組み合わせを使用して脈絡叢オルガノイドを作成するプロトコルを確立した。
【0014】
本オルガノイド(以下で「ChPオルガノイド」と称され得る)は、脳室のCSFと極めてよく類似した、自立型コンパートメント(self-contained compartment)においてCSF様液を分泌する選択的上皮バリアを有する。シングルセルRNAシーケンシングによってChPオルガノイドを特徴付けることにより、上皮及び間質ChP集団の存在が明らかとなる。オルガノイドCSF様液のプロテオーム解析により、ヒト特異的及び発生的因子並びに疾患関連バイオマーカーが明らかとなる。最後に、本発明者らは、NMRを用いて、このインビトロバリアが小分子に対してインビボ対応物と同じ選択性を呈すること及びChP-CSFオルガノイドが新規化合物のCNS透過性を予測し得ることを示す。
【0015】
従って、本発明者らのプロトコルによって提供されるオルガノイドは、脈絡叢の基礎的な機能、即ち分泌及びタイト上皮バリアの形成を再現する。本発明者らは、本発明者らのプロトコルによって提供されるオルガノイドが、脳脊髄液(CSF)に極めて類似した特性を備える分泌液をオルガノイド内で能動的に分泌する極性細胞を含む脈絡叢上皮を高い信頼性で再現性よく発生させることを確定した。
【0016】
更に、本発明者らは、組織学的分析及び電子顕微鏡(EM)分析を用いて、脈絡叢オルガノイド上皮の頂端刷子縁に局在する脈絡叢特異的水チャネル及び輸送体の存在を発見した。この組織は、タイトジャンクションを呈して上皮バリアを形成することが見出され、本発明者らは、オルガノイドから突出して液体で満たされた大型の嚢胞が形成され、その内容物が、質量分析法による分析において、ヒト胎児CSFと高度に類似していることを観察した。
【0017】
本発明は、例えば、脈絡叢機能、CSF産生並びにCSFを介したヒト脳内への化合物、ペプチド及び血清由来タンパク質の透過性を研究するためのツールを提供する。
【0018】
従って、一態様において、本発明は、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む脈絡叢オルガノイドを提供する。
【0019】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、タイト上皮バリアを含む上皮を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。好ましい実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、タイト上皮バリアを含む上皮と、その上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞とを含む。
【0020】
好ましい実施形態において、上皮は、立方上皮である。
【0021】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、(c)間質細胞集団を更に含む。
【0022】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、側脳室アイデンティティを有する。
【0023】
好ましい実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、LUM+、DCN+及びDLK1+である。
【0024】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、TTR+、MRP1+、Aqp1+及び/又はZO1+である。好ましい実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、TTR+、MRP1+、Aqp1+及びZO1+である。
【0025】
他の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、TTR+、MRP1+、MRP4+、Aqp1+及び/又はZO1+である。他の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、TTR+、MRP1+、MRP4+、Aqp1+及びZO1+である。
【0026】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、少なくとも50%のTTR+組織を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、少なくとも60%のTTR+組織を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、少なくとも70%のTTR+組織を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、少なくとも80%のTTR+組織を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、少なくとも90%のTTR+組織を含む。
【0027】
一部の実施形態において、上皮は、TTR+、MRP1+、Aqp1+及び/又はZO1+である。好ましい実施形態において、上皮は、TTR+、MRP1+、Aqp1+及びZO1+である。
【0028】
一部の実施形態において、上皮は、MRP4+である。
【0029】
一部の実施形態において、TTRは、上皮の頂端側に集積されている(enriched on)。一部の実施形態において、Aqp1は、上皮の頂端側に集積されている。一部の実施形態において、ZO1は、上皮の頂端側に集積されている。
【0030】
一部の実施形態において、TTR及びAqp1は、上皮の頂端側に集積されている。一部の実施形態において、TTR、Aqp1及びZO1は、上皮の頂端側に集積されている。
【0031】
一部の実施形態において、MRP1は、上皮の頂端側及び基底側に集積されている。
【0032】
一部の実施形態において、MRP4は、上皮の頂端側及び基底側に集積されている。
【0033】
例えば、細胞についての、特定の領域におけるマーカーの集積は、そのマーカーが他の領域(例えば、他の全ての領域)と比べてその領域に一層豊富に存在することを意味し得る。このマーカーは、他の領域(例えば、他の全ての領域)に実質的に存在しないものであり得る。
【0034】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、FOXG1-である。
【0035】
一部の実施形態において、上皮は、頂端微絨毛を含む。
【0036】
一部の実施形態において、上皮は、中央基底部に位置する核を含む。
【0037】
一部の実施形態において、上皮は、頂底極性を有している。
【0038】
一部の実施形態において、上皮は、極性を有し、Aqp1及びZO1は、上皮の内腔側に発現する。
【0039】
一部の実施形態において、LAT-1は、上皮の頂端側に発現する。
【0040】
一部の実施形態において、上皮には、栄養素の輸送に関わる特定の輸送体、例えばSLC23A2(ビタミンC)及び/又はSLC46A2(葉酸塩)が集積される。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン(CLU)、アポリポタンパク質E(APOE)、アポリポタンパク質A4(APOA4)及びルミカン(LUM)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む液体を分泌する能力を有する。
【0041】
一部の実施形態において、液体は、リン脂質転移タンパク質(PLTP)を含む。
【0042】
一部の実施形態において、液体は、αフェトプロテイン(AFP)を含む。
【0043】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、脳脊髄液(CSF)様液を分泌する能力を有する。
【0044】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、脳脊髄液(CSF)を分泌する能力を有する。
【0045】
好ましい実施形態において、嚢胞は、液体を含む。好ましい実施形態において、液体は、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン(CLU)、アポリポタンパク質E(APOE)、アポリポタンパク質A4(APOA4)及びルミカン(LUM)からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む。一部の実施形態において、液体は、CSFである。
【0046】
一部の実施形態において、液体は、αフェトプロテイン(AFP)を含む。
【0047】
一部の実施形態において、液体は、発生段階特異的(developmental-specific)CSFタンパク質、例えばインスリン様成長因子2(IGF2)、IGFBP7及び/又はフォリスタチン様タンパク質1(FSTL1)を含む。
【0048】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%(v/v)未満の前脳神経組織を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、前脳神経組織を実質的に含まない。
【0049】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%(v/v)未満のFOXG1+組織を含む。一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、FOXG1+組織を実質的に含まない。
【0050】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、細胞外マトリックス(ECM)を含む。
【0051】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、一次繊毛、例えば頂端面に微絨毛があるもの、細胞間のタイトジャンクション、多小胞体及び細胞外小胞を有する。
【0052】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、ヒト又はマウスオルガノイド、好ましくはヒトオルガノイドである。
【0053】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、本発明の方法によって入手可能である。
【0054】
一部の実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、幹細胞、任意に胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞から作製される。
【0055】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製するためのWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の使用を提供し、ここで、脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。
【0056】
Bmp4及び/又はCHIRの使用については、既報告であるが((15)及び(16)を参照されたい)、それらの先行文献では、本明細書で実証される真正の特徴を備えるChPオルガノイドは、もたらされていない。
【0057】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、神経上皮細胞集団をWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子と接触させることを含む方法を提供し、ここで、脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。
【0058】
本方法は、繊維状微小足場を伴って又は伴わずに実施され得る。微小足場がない方が好ましいこともある。
【0059】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、幹細胞集団から神経上皮細胞集団を作製することと、WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することとを含む方法を提供する。
【0060】
好ましい実施形態において、神経上皮細胞集団は、神経上皮細胞の凝集体である。
【0061】
好ましい実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。
【0062】
一部の実施形態において、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態において、幹細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0063】
一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から18日後未満、例えば約8~12日後に開始される。一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約9~11日後に開始される。一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約9.5~10.5日後に開始される。一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約10日後に開始される。
【0064】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、
(a)幹細胞集団を培養することにより、胚様体集団を作製するステップ;
(b)神経誘導に好適な条件下で胚様体集団を培養するステップ;
(c)ステップ(b)の産物を三次元マトリックス、好ましくは細胞外マトリックス(ECM)に包埋するステップ;
(d)WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下でステップ(c)の産物を培養するステップであって、好ましくはステップ(a)の開始から約8~12日後に開始されるステップ
を含む方法を提供する。
【0065】
一部の実施形態において、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態において、幹細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0066】
一部の実施形態において、ステップ(a)の培養は、約4~6日間、好ましくは約4.5~5.5日間、好ましくは約5日間にわたるものである。
【0067】
好ましい実施形態において、ステップ(b)の培養は、神経上皮が存在するようになるまで行われる。一部の実施形態において、ステップ(b)の培養は、約1~3日間、好ましくは約1.5~2.5日間、好ましくは約2日間にわたるものである。
【0068】
一部の実施形態において、ECMは、重合したECMである。一部の実施形態において、ECMは、重合したECMゲルである。一部の実施形態において、ECMは、Matrigelである。
【0069】
このように、一部の実施形態において、ステップ(c)は、培養開始から約5~9日後、より好ましくは6~8日後、最も好ましくは7日後にMatrigelを使用して実施される。
【0070】
一部の実施形態において、ステップ(c)は、包埋された胚様体を培養することを更に含む。一部の実施形態において、ステップ(c)の培養は、約2~4日、好ましくは約2.5~3.5日間、好ましくは約3日間にわたるものである。
【0071】
一部の実施形態において、ステップ(d)は、ステップ(a)の開始から約9~11日後、好ましくは約9.5~10.5日後、好ましくは約10日後に開始される。
【0072】
一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下での培養は、約6~8日間、好ましくは約6.5~7.5日間、好ましくは約7日間にわたるものである。
【0073】
好ましい実施形態において、ステップ(d)の培養は、撹拌を含む。
【0074】
一部の実施形態において、撹拌は、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子との接触中に適用されない。一部の実施形態において、撹拌は、約15日目に開始される。
【0075】
一部の実施形態において、本方法は、15日目から3~4日毎に培養物に培養培地を補給することを含み、任意に30日目から培養培地にECMが加えられる。好ましくは、ECMは、可溶性ECM - 例えば溶解したMatrigelである。
【0076】
好ましい実施形態において、本方法は、インビトロ方法である。
【0077】
一部の実施形態において、WNT経路活性化因子は、CHIR99021、Wnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、Wnt8a、Wnt8b、Wnt10a、Wnt10b、BML-284、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)、WAY-316606、IQ1、QS11、SB-216763、LY2090314、DCA、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン及びリチウムからなる群から選択される。
【0078】
好ましい実施形態において、WNT経路活性化因子は、CHIR99021である。
【0079】
一部の実施形態において、BMPシグナル伝達経路活性化因子は、Bmp4、Bmp2、Bmp3、Bmp5、Bmp6、Bmp7、Bmp8a、Bmp8b、Bmp10、Bmp11、Bmp15、イソリキリチゲニン、4’-ヒドロキシカルコン、アピゲニン、ジオスメチン及びベントロモルフィン類(例えば、SJ000291942、SJ000063181及び/又はSJ00037178)からなる群から選択される。
【0080】
好ましい実施形態において、BMPシグナル伝達経路活性化因子は、Bmp4である。
【0081】
好ましい実施形態において、WNT経路活性化因子は、CHIR99021であり、及びBMPシグナル伝達経路活性化因子は、Bmp4である。
【0082】
一部の実施形態において、本方法又は使用は、細胞をWNT経路阻害薬と接触させることを含まない。
【0083】
一部の実施形態において、本方法又は使用は、細胞を高酸素分圧、例えば空気の酸素分圧(20%)よりも高い酸素分圧に曝露することを含まない。一部の実施形態において、本方法又は使用は、20%以下の酸素分圧下においてのみ培養することを含む。
【0084】
上記で説明したとおり、その選択的バリア機能の一部として、ChP上皮は、治療薬を含めた小分子に対しても高度に選択的である。本発明は、CNS活性薬物の研究及びスクリーニングに特に有用性がある。
【0085】
新薬は、臨床試験に進んだ後、有効性が欠如していること、CNSに通過できないこと又は動物モデル間での解釈可能性が限られているという理由で失敗することが余りにも多い(52)。
【0086】
本ChPオルガノイドは、例えば、CNSへの薬物透過性のインビボでの前臨床試験及びモデル化において有用性があり、これは、CNS透過性の前臨床アッセイにおける現行の標準(例えば、イヌMDCK若しくはCaco-2細胞又は輸送体及びキャリアータンパク質を欠くリン脂質混合物に基づく人工膜アッセイ(53))と比較して利益があり得る。
【0087】
別の態様において、本発明は、創薬スクリーニング又は薬物毒性のアッセイのための本発明の脈絡叢オルガノイドの使用を提供する。薬物は、例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患に対するCNS薬物、例えば小分子薬物であり得る。
【0088】
一部の実施形態において、この使用は、候補薬剤が血液脳脊髄液(CSF)関門を通過する及び/又は選択的に通過する能力を試験するためのものである。別の態様において、本発明は、候補薬剤が血液脳脊髄液(CSF)関門を通過する能力を試験する方法であって、本発明の脈絡叢オルガノイドを候補薬剤と接触させることと、候補薬剤が上皮を通過するかどうかを決定することとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】ヒトPSCからの脈絡叢オルガノイドの作成。(A)H9オルガノイド成長段階からの種々の画像を示すプロトコルタイムライン。プロトコルの10日目にBMP4及びWnt活性化因子CHIRを加えて背側化を促進する。スケールバー:1000μm。(B)H1処理した脈絡叢(ChP)オルガノイドと、未処理(UT)の前脳オルガノイドとの55日目における比較。スケールバー:1mm。(C)40日目におけるH1前脳及び脈絡叢オルガノイドのH&E染色切片。スケールバー:500μm。(D)E18.5マウス胚脳(H&E染色)、妊娠後15週におけるヒト胎児ChP(ニッスル染色、Allen Brain Map http://portal.brain-map.org/から取得)、40日目におけるH1ヒトChPオルガノイド(H&E染色)の組織切片。スケールバー:500μm、拡大像について50μm。(E)、(F)28日目(E)及び39日目(F)にTTR(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)、ZO1(緑色、抗マウスAlexafluor 488)及びSox2(マゼンタ色、抗ウサギAlexafluor 568)に関して染色したIMR90-4 iPSC由来の前脳及びChPオルガノイドの代表的な共焦点像。青色の核は、DAPI染色している。スケールバー:100μm。(G)n=4つの独立したH9バッチ(30日目、40日目、48日目に回収した各バッチについて3~4個のオルガノイド)における全オルガノイド面積に対するTTR陽性面積の割合の定量化。
図2】オルガノイドは、ヒト脈絡叢の組織学的特徴を再現する。(A)TTR(赤色、抗ヒツジAlexafluor 568)、CLIC6(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)及びZO1(灰色、抗マウスAlexafluor 647)について陽性染色された40日目のH1オルガノイドからのChP上皮の代表的な共焦点像。スケールバー:50μm。(B)TTR、FOXG1、CLIC6及び内因性対照GAPDHについてプローブした未処理(UT)並びにBMP4及びCHIR処理ChPオルガノイドからのイムノブロット(75、73及び68日目に回収したn=3つの独立したH9バッチ)。(C)ChP処理オルガノイドにおけるTTR及びCLIC6の集積を示すイムノブロット定量化。(D)Krt18(緑色、抗マウスAlexafluor 488)、5HT-2C(マゼンタ色、抗ウサギAlexafluor 568)、PH3(灰色、抗ratAlexafluor 647)及び青色のDAPIについて染色した30及び46日目のH1オルガノイドの代表的な共焦点像。スケールバー:50μm。(E)TTR(マゼンタ色)及びDLK1(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)について陽性染色されたオルガノイドからのChP上皮及び間質組織の共焦点像。スケールバー:100μm。(F)全てを合わせた試料(55日目に回収した終脳オルガノイド、27、46及び53日目に回収したChPオルガノイド)のscRNAseqにより同定された集団構成を示すUMAP。(G)終脳オルガノイドと比較した処理オルガノイドにおけるChP集団の段階的集積を示すUMAP。(H)同定されたscRNAseqクラスターにおけるChP発生及び成熟に関与する遺伝子(CLIC6、HRT2C、MSX1、PAX6)、皮質ニューロンマーカーDCX及び間質マーカーCOL1A1の集積を示すUMAP。(I)scRNAseq解析により同定されたChP未熟/hem(OTX2、RSPO3、PAX6)、成熟(TTR、KRT18、CA2、NME5、KCNJ13、CA12)及び間質マーカー(LUM、DCN、DLK1)の発現レベルを示すバイオリンプロット。
図3】脈絡叢オルガノイドは、特殊化した上皮特徴を発生し、ヒトインビボ組織の遺伝的構造を緊密に再現する。(A)scRNA-seqからのオルガノイドクラスターとE18.5マウス胚性全ChP及び単離ChP上皮細胞(EC)のPCA。(B)オルガノイドクラスターとインビボヒト試料のピアソン相関分析。(C)インビボヒト試料とオルガノイドの偏りのないクラスタリングを示す色分けしたヒートマップ。(D)マウス、ヒト及びオルガノイド試料のピアソン相関分析。(E)scRNAseqにより同定されたオルガノイド細胞集団におけるDYNLRB2、FOXJ1及びAQP1の発現を示すバイオリンプロット。(F)CCDC67(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)、TTR(灰色、抗ヒツジAlexafuor 647)、Foxj1(マゼンタ色、抗マウスAlexafluor 568)、Arl13b(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)及び青色のDAPIについて染色した、それぞれ40及び46日目のH1 ChPオルガノイドの共焦点像。スケールバー:50μm及び100μm(拡大像:20μm)。(G)オルガノイドからのChP上皮の頂端側に広範にある微絨毛を示す電子顕微鏡画像。矢印は、繊毛(C)、タイトジャンクション(TJ)、多胞体(MVB)及び細胞外小胞(Ex)を示す。スケールバー:1μm。(H)Aqp1(マゼンタ色、抗ウサギAlexafluor 568)及びTTR(緑色、抗ヒツジAlexafluor 488)について陽性染色された40日目のH1 ChPオルガノイド及びマウス胚(E18.5)からのインビボChPの共焦点像、青色の核は、DAPI染色したものである。スケールバー:50μm。(I)scRNAseqにより同定されたオルガノイド細胞クラスターにおけるAPOE、CLU、PLTPの発現レベルを示すバイオリンプロット。(J)脂肪滴(LipidTox、灰色)、TTR(マゼンタ色、抗ヒツジAlexafluor 568)、PH3(緑色、抗ラットAlexafluor 488)及び青色のDAPIについて染色された30日目及び46日目のH1オルガノイドの代表的な共焦点像。スケールバー:50μm。(K)側脳室(LV、LY6E)、第三脳室(3V、INS)及び第四脳室(4V、PENK)の領域性ChPマーカーの発現レベルを示すバイオリンプロット。
図4】脈絡叢オルガノイドは、液体で満たされたコンパートメントを発生し、タイトバリアを形成する。(A)scRNAseqにより同定されたオルガノイド細胞クラスターにおけるクローディン1、3及び5の発現レベルを示すバイオリンプロット。(B)種々のオルガノイド集団並びにChP未熟及び成熟クラスターにおけるタイトジャンクションタンパク質の集積を示すUMAP。タイトジャンクションタンパク質TJP1及びTJP2、オクルディン(OCLN)、INADL及びMPDZの可視化。(C)TTR(マゼンタ色、抗ヒツジAlexafluor 568)、クローディン1(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)(D)、クローディン3(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)(E)、クローディン4(赤色、抗マウスAlexafluor 568)及びクローディン5(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)(F)について陽性染色された40日目のヒトH1 ChPオルガノイドの代表的な画像。青色の核は、DAPIで標識している。スケールバー:50μm。(D)未処理前脳オルガノイド及び液体で満たされたコンパートメントを発生したChPオルガノイドの代表的な明視野像。スケールバー:1cm。自立型液体コンパートメントを発生したChPオルガノイドの拡大明視野像。スケールバー:1mm。(E)ZO1(灰色、抗マウスAlexafluor 647)、TTR(緑色、抗ヒツジ488)、Aqp1(赤色、抗ウサギAlexafluor 568)について陽性染色されたオルガノイドの液体で満たされたコンパートメントを取り囲む上皮の共焦点像。核は、DAPIによって青色で標識する。スケールバー:50μm。
図5】脈絡叢オルガノイドによってヒト発生タンパク質が分泌される。(A)GOカテゴリ細胞成分(GO:CC)、分子機能(GO:MF)及び生物学的過程(GO:BP)、REAC、WP、HPデータベースについての有意な(p<0.05)エンリッチメントを示す少なくとも2つのオルガノイドバッチからのiCSFで検出されたタンパク質のgProfileR解析。(B)少なくとも2つのオルガノイドバッチ(3つのH9バッチ、1つのH1及び1つのiPSCバッチ)からのオルガノイドiCSFで検出されたタンパク質の相対的存在量(emPAI値)並びに培地中及びヒト成人CSF(hCSF、終脳CSF、n=3例の健常ドナー、Caltag-Medsystem)と、ウシ胎仔CSF(bCSF、BioIVT)と、胚性マウスCSF(msCSF、E12.5~13.5)とを含むインビボCSF試料プール中におけるそれらの対応する値を示す色分けしたヒートマップ。示される値は、emPAI≧1のタンパク質の平均値である。(C)scRNAseq解析により同定されたオルガノイド細胞クラスターにおける分泌タンパク質IGFBP7及びSERPINF1発現レベルのバイオリンプロット。(D)オルガノイドscRNAseqにより同定された種々の細胞集団における分泌タンパク質RBP1、IGF2、NPC2並びに特異的輸送体SLC23A2及びSLC46A1の集積を示すUMAP。(E)ヒト初期胚(カーネギー発生段階20)、成人及びChPオルガノイドに存在するCSFタンパク質のベン図プロット。(F)2色で分けしたヒートマップ(emPAI値):上は、ヒト由来試料(オルガノイドiCSF及び成人hCSF)のみで検出されたemPAI≧1の多量タンパク質;下は、オルガノイドiCSF及び胚性又は胎児インビボCSFのみで検出されたemPAI≧1の発生的に関連した多量タンパク質。(G)3つの独立したバッチからのH9未処理及び処理後のChPオルガノイド、培地及びiCSFからのオルガノイド全ライセート中のIGF2及びTTRのイムノブロットによる検証。(H)IGF2(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)及びTTR(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)について陽性染色されたオルガノイドからのChP上皮の代表的な共焦点像。核は、青色のDAPIで標識している。スケールバー:100μm。
図6】脈絡叢オルガノイドは、ヒト脳関門透過性をモデル化する。(A)培地及びiCSF中のドーパ及びL-ドーパのNMRスペクトルの相対的定量化。(B)2時間のインキュベーション後における培地及びiCSF中のブプロピオニル、メトトレキサート及びビンクリスチンの相対的NMRスペクトル定量化。(C)2時間のインキュベーション後における培地及びiCSF中のセフィン1(sephin 1)のNMRスペクトルの相対的定量化。(D)TTR(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)、LAT1(マゼンタ色、抗マウスAlexafluor 568)、Pgp(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)、輸送体MRP4(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)及びMRP1(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)について陽性染色されたオルガノイドからのChP上皮の代表的な画像。スケールバー:50μm。核は、DAPIによって青色で標識する。(E)未結合薬物のインビボCSF/血漿比(Kp,uu,CSF)と、インビトロiCSF/培地比(Km,uu,iCSF)との間の相関(R=0.9921;傾き=1.004)を示す薬物動態モデル(補表5)。セフィン1(赤色の点)インビボCSF/血漿測定値は、マウスにおいて、ヒトオルガノイドで検出されるよりもはるかに高い値を有することが報告されている(45)。(F)2時間のインキュベーション後における培地及びiCSF中のBIA 10-2474のNMRスペクトルの相対的定量化。(G)2時間、12時間、24時間及び72時間の時点における培地に対するiCSF中のBIA 10-2474及びブプロピオニルの比についての経時的分析。(薬物は、全てn=3つの独立した実験で試験した;補表2)。
図7】(A)マーカーTTR、ZO1及びAqp1について陽性染色された回旋状の立方ChP上皮を有する前脳オルガノイドの共焦点像。スケールバー:100μm。(B)14日目の処理後ChPオルガノイドと未処理前脳オルガノイドとの比較。矢印は、早期の処理後ChPオルガノイドにおける伸長した神経上皮芽を指し示す。スケールバー:1mm。(C)繊維播種法を用いたプロトコルの種々の段階の明視野像。スケールバー1000μm。(D)それぞれ30及び34日目の、円形法(round method)及び繊維法(fiber method)を用いて作成したH9 ChPオルガノイドの代表的な共焦点像。スケールバー:500μm。(E)10日目にBMP4及びCHIRで処理した、35日目のiPSC IMR90-4オルガノイド及び40日目のH1オルガノイドの代表的な共焦点像。オルガノイド中のChP組織をTTR(緑色、抗ヒツジAlexafluor 488)について染色し、核をDAPIで可視化した。スケールバー:1000μm(抜き出し図:500μm)。
図8】(A)Sox2(マゼンタ色、抗ウサギAlexafluor 568)、皮質中間前駆細胞マーカーTbr2(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)、神経細胞マーカーHuC/D(緑色、抗マウスAlexafluor 488)について染色したH1前脳及びChPオルガノイドの代表的な共焦点像。スケールバー:100μm。(B)DCN(緑色、抗マウスAlexafluor 488)、LUM(マゼンタ色、抗ウサギAlexafluor 568)、ZO1(灰色、抗マウスAlexafluor 647)、TTR(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)及び青色のDAPIについて染色したH1 ChPオルガノイドの代表的な共焦点像。スケールバー:100μm。
図9】(A)H1未処理及びBMP4+CHIR処理オルガノイド(上から下に:57、54、46、40日)の4つの独立したバッチの代表的な明視野像。(B)14日目から50日目までのiCSFコンパートメントの発生及び拡大を示す、H1処理ChPオルガノイドの画像の時系列経過。スケールバー:1000μm。(C)10日目から31日目までのChPオルガノイドライセートのChP上皮輸送体MRP1、LAT1、CLIC6、分泌タンパク質IGF2及びローディング対照GAPDHに関するイムノブロット。
図10】(A)培地、オルガノイドiCSF及びインビボCSF試料において少なくとも1つの試料中にemPAI≧1で質量分析法により検出されたタンパク質のベン図。(B)質量分析法により分析した全ての試料を示す図3Eの同じタンパク質の色分けしたヒートマップ。少なくとも2つのiCSF試料中で検出されたemPAI≧1のタンパク質を示す。(C)培地と、少なくとも2つのオルガノイドバッチからのiCSF(5試料の平均値を示す)との間で共有される多量タンパク質(emPAI≧1)並びにヒト成人CSF(hCSF)、ウシ胎仔CSF(bCSF)及び胚性マウスCSF(msCSF、E12.5~13.5)からのインビボCSF試料の平均値を示す色分けしたヒートマップ。(D)オルガノイドiCSFから排除された又はそこに存在しないが、少なくとも2つのインビボ試料に存在する多量タンパク質(emPAI≧1)の色分けしたヒートマップ。(E)インビボCSF試料のみで検出されたタンパク質のgProfileR解析。(F)有意な(p<0.05)エンリッチメントのあるgProfileR解析からの上位カテゴリを示すヒストグラム。
図11】(A)TTR(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)、クローディン2(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)及びAPOE(マゼンタ色、抗マウスAlexafluor 568)について染色したヒトオルガノイドからのChP上皮。スケールバー:50μm。青色のDAPIは、核を標識する。(B)ヒトオルガノイドからのChP上皮のタイトジャンクションマーカーオクルディン(緑色、抗ウサギAlexafluor 488)、TTR(灰色、抗ヒツジAlexafluor 647)、ZO1(マゼンタ色、抗マウスAlexafluor 568)及び青色のDAPIについての染色。スケールバー:50μm。(C)647-Alexafluor標識した10kDaデキストランと共に2時間インキュベートした培地から単離された、自立型iCSF液を有するChPオルガノイドの明視野像。(D)70kDaオレゴングリーン-デキストラン、10kDa Alexa 647-デキストラン及び3~5kDa FITC-デキストランとの2時間のインキュベーション後に培地及びiCSF中において測定された蛍光強度。(E)2時間のインキュベーション後に測定されたドーパ、L-ドーパ及び対照(Ctrl)iCSFのNMRスペクトル。
図12】(A)対照試料(培地及びiCSF)のH-NMR分析(HO/DO)。明確にするため、スペクトルの拡大部分を報告する。(B)L-ドーパ(500μM)及びカルビドパ(500μM)とインキュベートしたときの試料のH-NMR分析(HO/DO)。(C)ドーパミン(500μM)(500μM)とインキュベートしたときの試料のH-NMR分析(HO/DO)。矢印は、目的のピークを示す。
図13】(A)(A)セフィン1(500μM)、(B)ビンクリスチン(500μM)、(C)メトトレキサート(500μM)とインキュベートしたときの試料(培地及びiCSF)のH-NMR分析(HO/DO)。明確にするため、スペクトルの拡大部分を報告する。矢印は、目的のピークを示す。
図14】(A)ブプロピオニル(500μM)とインキュベートしたときの試料(培地及びiCSF)のH-NMR分析(HO/DO)。明確にするため、スペクトルの拡大部分を報告する。矢印は、目的のピークを示す。
図15】(A)BIA10-2474(500μM)とインキュベートしたときの試料(培地及びiCSF)のH-NMR分析(HO/DO)。明確にするため、スペクトルの拡大部分を報告する。矢印は、目的のピークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
発明の詳細な説明
用語「含んでいる」、「含む」及び「から構成される」は、本明細書で使用されるとき、「包含している」若しくは「包含する」;又は「含有している」若しくは「含有する」と同義語であり、包括的又はオープンエンド形式であり、追加的な記載されていないメンバー、要素又はステップを除外しない。用語「含んでいる」、「含む」及び「から構成される」には、用語「からなる」も含まれる。
【0091】
オルガノイド
オルガノイドは、三次元(3D)インビトロ細胞培養物である。オルガノイドは、小型化及び単純化したバージョンの臓器を提供することができ、その臓器の何らかの重要な特徴を取り込んでいるものである。このようなインビトロ培養系は、その臓器と類似した空間的構成を備える複数の臓器特異的細胞型に分化する自己複製幹細胞集団を含有し得る。
【0092】
脈絡叢
脈絡叢は、脳内の高度に保存された分泌組織であり、保護上皮バリアの形成及び脳脊髄液(CSF)の分泌など、幾つもの重要な機能を呈する。
【0093】
解剖学的には、脈絡叢は、側脳室、第三脳室及び第四脳室に局在し、それぞれの各内腔に現れる。成熟脈絡叢は、間充織由来の間質組織のコア及び有窓毛細血管を単層立方上皮が取り囲んで構成される。上皮細胞は、タイトジャンクションで密着して繋がり、脳室の内腔と向かい合う頂端刷子縁及び間質側にある基底面で高度な極性を有している。
【0094】
CSF産生には、種々の機構が関わる。第一に、脈絡叢上皮細胞の頂端側に位置するNa-KATPアーゼポンプ及び細胞質炭酸脱水酵素により、主に脳室内腔へのNaの分泌によって促進される浸透圧勾配が生じる。この浸透圧の力は、アクアポリンチャネルを通した経細胞性の水分の流入を促進する。第二に、ATP結合カセット(ABC)タンパク質及び溶質キャリアー輸送体(SLC)は、ATP加水分解を必要とする及び必要としない、アミノ酸、ヌクレオシド及び小ペプチドの交換をそれぞれ可能にする。脈絡叢上皮細胞は、MRP1及びMRP4などの排出輸送体も発現する(Redzic, Z. (2011) Fluids Barriers CNS 8: 3;Strazielle, N. and Ghersi-Egea, J. F. (2013) Mol. Pharm. 10: 1473-1491)。これらのポンプは、代謝産物のクリアランスを調節し、薬物及び毒性化合物の侵入を防ぐものであり、従って、CSFにおけるそれらの利用可能性は、低下する。第三に、脈絡叢上皮細胞の分泌系は、高度に特殊化しており、且つ広範囲に及ぶため、一層複雑なタンパク質及びホルモン分泌が可能である。例えば、甲状腺ホルモン及びレチノールの担体であるトランスサイレチン(TTR)は、脈絡叢によって合成及び分泌される最も多量なタンパク質である(Li, X. and Buxbaum, J. N. (2011) Mol. Neurodegener. 6: 1-17;Richardson, S. J. et al. (2015) Front. Neurosci. 9: 1-8;Johnson, B. A. et al. (2018) Fluids Barriers CNS 15: 22)。TTRの媒介によるCSFへの甲状腺ホルモンの送達は、脳の発生の調節において重要な役割を有するように見える。
【0095】
脈絡叢組織は、脈絡叢マーカーの発現及び/又は組織の構造的特徴によって同定することができる。
【0096】
脈絡叢は、トランスサイレチン(TTR)、MRP1、MRP4、アクアポリン1(Aqp1)及び閉鎖帯(ZO1)からなる群から選択される1つ以上のマーカーの発現を特徴とし得る。
【0097】
脈絡叢は、特定の種類の細胞に局在又は集積されるマーカーの発現を特徴とし得る。例えば、脈絡叢は、上皮細胞におけるTTR、MRP1、MRP4、Aqp1及びZO1からなる群から選択される1つ以上のマーカーの発現を特徴とし得る。
【0098】
加えて、これらのマーカーは、特定の細胞の特定の領域に局在又は集積され得る。例えば、TTR、Aqp1及び/又はZO1は、上皮の頂端側に集積され得る。MRP1及び/又はMRP4は、上皮の頂端側及び基底側に集積され得る。
【0099】
脈絡叢は、FOXG1の無発現又は低発現を特徴とし得る。
【0100】
脈絡叢は、上皮における頂端微絨毛の存在を特徴とし得る。脈絡叢上皮は、中央基底部に位置する核を含み得る。
【0101】
脈絡叢上皮は、頂底極性を有し得る。例えば、上皮は、極性を有し得、Aqp1及びZO1が上皮の内腔側に発現する。
【0102】
かかるマーカーの存在、非存在及び局在については、当業者が容易に決定し得る。例えば、マーカーは、例えば、共焦点顕微鏡法などの可視化技法と連携した、マーカーに特異的な抗体を用いた免疫染色によって同定され得る。加えて又は代わりに、好ましくはマーカー核酸に結合する特異的オリゴヌクレオチドプローブが利用され得る。
【0103】
タイト上皮バリア
タイト上皮バリアは、上皮細胞間のタイトジャンクションによって形成され得る。
【0104】
タイトジャンクション(閉鎖結合又は閉鎖帯とも称される)は、多タンパク質複合体によって形成され得るものであり、傍細胞経路を塞ぎ、輸送される溶質及び水の漏出を防ぎ得る。
【0105】
脈絡叢の緊密に密閉された上皮は、血液CSF関門(B-CSF-B)としても知られる。B-CSF-Bは、血液脳関門(BBB)と同様に、循環中の毒性物質又はシグナルが脳に到達することを防ぐ。しかしながら、BBBとは対照的に、B-CSF-Bは、単一の細胞型、脈絡叢上皮細胞によって形成され、これは、直接脳実質というよりむしろ、CSFに面している。しかしながら、CSFは、脳に自由に出入りできるため、B-CSF-Bを通る分子の輸送は、脳への代替的な経路である。
【0106】
タイト上皮バリアに含まれるようなタイトジャンクションは、閉鎖帯(ZO1)の発現を特徴とし得る。
【0107】
脳脊髄液(CSF)
脳脊髄液(CSF)は、透明な無色の液体であり、脳室及びくも膜下腔を通して循環し、次に一部がくも膜顆粒を通して血液循環中に再吸収される。
【0108】
CSFは、脳内栄養素の生理的レベルの維持、シグナル伝達分子及び成長因子の輸送並びに頭蓋内圧の調節におけるその保護的役割に重要である。
【0109】
CSFは、その頂端刷子縁における輸送体及びポンプの数を最大化する脈絡叢上皮細胞からの、及び脈絡叢上皮細胞内でのタイトジャンクションの存在によって付与される血液ろ過からの能動分泌によって産生される。脈絡叢は、CSFの産生及び再吸収速度の維持において重要な役割を有する。この平衡が乱れると、水頭症などの病変につながる。
【0110】
CSFは、TTR、クラスタリン(CLU)、アポリポタンパク質E(APOE)、アポリポタンパク質A4(APOA4)及びルミカン(LUM)からなる群から選択される1つ以上のマーカーの存在を特徴とし得る。
【0111】
CSFは、αフェトプロテイン(AFP)の存在を特徴とし得る。
【0112】
WNT経路活性化因子
本発明の脈絡叢オルガノイドの作製に使用し得るWNT経路活性化因子は、特に限定されるものでなく、但し、それは、WNTシグナル伝達経路を活性化させる能力を有するものとする。
【0113】
WNT経路活性化因子としては、限定はされないが、CHIR99021、Wnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、Wnt8a、Wnt8b、Wnt10a、Wnt10b、BML-284、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)、WAY-316606、IQ1、QS11、SB-216763、LY2090314、DCA、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン及びリチウムなどの薬剤が挙げられる。
【0114】
好ましい実施形態において、WNT経路活性化因子は、CHIR99021(本明細書では「CHIR」とも称される)である。
【0115】
CHIR99021は、GSK3β(IC50=6.7nM)及びGSK3α(IC50=10nM)を阻害する極めて強力なGSK3阻害薬であるアミノピリミジン誘導体であり、WNT活性化因子として機能する。CHIR99021は、構造:
【化1】

を有する。
【0116】
一部の実施形態において、CHIR99021は、約1~25、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4又は1~3μMの濃度で使用される。一部の実施形態において、CHIR99021は、約1~5μMの濃度で使用される。
【0117】
一部の実施形態において、CHIR99021は、約2~25、2~20、2~15、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5又は2~4μMの濃度で使用される。好ましい実施形態において、CHIR99021は、約2~4μMの濃度で使用される。
【0118】
一部の実施形態において、CHIR99021は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25μMの濃度で使用される。好ましい実施形態において、CHIR99021は、約3μMの濃度で使用される。
【0119】
骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子
本発明の脈絡叢オルガノイドの作製に使用し得る骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子は、特に限定されるものでなく、但し、それは、BMPシグナル伝達経路を活性化させる能力を有するものとする。
【0120】
BMPシグナル伝達経路活性化因子としては、限定はされないが、Bmp4、Bmp2、Bmp3、Bmp5、Bmp6、Bmp7、Bmp8a、Bmp8b、Bmp10、Bmp11、Bmp15、イソリキリチゲニン、4’-ヒドロキシカルコン、アピゲニン、ジオスメチン及びベントロモルフィン類(例えば、SJ000291942、SJ000063181及び/又はSJ00037178)などの薬剤が挙げられる。
【0121】
好ましい実施形態において、BMPシグナル伝達経路活性化因子は、Bmp4である。
【0122】
骨形成タンパク質4(Bmp4)は、TGF-βタンパク質スーパーファミリーのメンバーである。これは、骨及び軟骨発生、例えば歯及び四肢発生並びに骨折修復に関与する。
【0123】
ヒト胚発生では、Bmp4は、胚の初期分化及び背腹軸の確立に関与する重要なシグナル伝達分子である。
【0124】
ヒトBmp4の例示的アミノ酸配列は、NCBI受託番号NP_001193.2として寄託されている配列である。
【0125】
ヒトBmp4の例示的アミノ酸配列は、
【化2】

である。
【0126】
一部の実施形態において、Bmp4は、約1~40、5~35、10~30、15~25、16~24、17~23、18~22又は19~21ng/mlの濃度で使用される。一部の実施形態において、Bmp4は、約19~21ng/mlの濃度で使用される。
【0127】
一部の実施形態において、Bmp4は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ng/mlの濃度で使用される。好ましい実施形態において、Bmp4は、約20ng/mlの濃度で使用される。
【0128】

本発明の薬剤(例えば、WNT経路活性化因子及び/又はBMPシグナル伝達経路活性化因子)は、塩、詳細には薬学的に許容可能な塩又はエステルとして存在し得る。
【0129】
本発明の薬剤の薬学的に許容可能な塩としては、その好適な酸付加塩又は塩基性塩が挙げられる。好適な薬学的塩のレビューについては、Berge. et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照し得る。塩は、例えば、鉱酸、例えば硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸などの無機強酸;有機強カルボン酸、例えば酢酸など、非置換の又は(例えば、ハロゲンによって)置換されている1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸;飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸;安息香酸;又はメタンスルホン酸若しくはp-トルエンスルホン酸など、非置換の又は(例えば、ハロゲンによって)置換されている、(C~C)-アルキルスルホン酸又はアリールスルホン酸などの有機スルホン酸と形成される。
【0130】
エナンチオマー/互変異性体
本発明は、適切な場合、薬剤の全てのエナンチオマー及び互変異性体も含む。対応するエナンチオマー及び/又は互変異性体は、当技術分野において公知の方法により単離/調製することができる。
【0131】
立体異性体及び幾何異性体
本発明の薬剤の一部は、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在し得る。例えば、薬剤は、1つ以上の不斉中心及び/又は幾何学的中心を有し得、そのため、2つ以上の立体異性形態及び/又は幾何学的形態で存在し得る。本発明は、そうした薬剤のあらゆる個別の立体異性体及び幾何異性体並びにそれらの混合物の使用を企図する。特許請求の範囲で使用される用語は、これらの形態を包含し、但し、前記形態は、適切な機能活性を(同じ程度である必要はないが)保持しているものとする。
【0132】
本発明は、薬剤又はその薬学的に許容可能な塩のあらゆる好適な同位体変化型も含む。本発明の薬剤又はその薬学的に許容可能な塩の同位体変化型は、同じ原子番号を有するが、原子質量が、通常、天然に見られる原子質量と異なる原子によって少なくとも1個の原子が置き換えられているものとして定義される。薬剤及びその薬学的に許容可能な塩に取り込むことのできる同位体の例としては、それぞれH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。薬剤及びその薬学的に許容可能な塩の特定の同位体変化型、例えばH又は14Cなどの放射性同位体が取り込まれるものは、薬物及び/又は基質組織分布研究に有用である。トリチウム化した同位体、即ちH及び炭素14、即ち14C同位体は、その調製し易さ及び検出性が理由で特に好ましい。更に、重水素、即ちHなどの同位体による置換は、より高い代謝安定性、例えば生体内半減期の増加又は投薬必要量の低減から生じる特定の治療的利点を与え、従って状況によっては好ましいものとなり得る。本発明の薬剤及び本発明のその薬学的に許容可能な塩の同位体変化型は、概して、好適な試薬の適切な同位体変化型を用いる従来手順によって調製することができる。
【0133】
溶媒和物
本発明は、本発明の薬剤の溶媒和物形態も含む。特許請求の範囲で使用される用語は、こうした形態を包含する。
【0134】
多形
本発明は、その様々な結晶形態、多形形態及び(無)含水形態の本発明の薬剤にも関する。製薬工業の範囲内では、化学的化合物は、かかる化合物の合成調製に用いられる溶媒からの精製及び又は分離方法をわずかに変えることにより、かかる形態のいずれでも分離し得ることが十分に確立されている。
【0135】
幹細胞
本発明の脈絡叢オルガノイドは、幹細胞から(例えば、インビトロで)作製され得る。この脈絡叢オルガノイドは、動物の脳から単離されるのではなく、従って動物から組織試料を入手する必要がなくなり、組織の作製が容易となる。
【0136】
幹細胞は、より特殊化した細胞に分化する能力があり、且つ分裂して更に多くの幹細胞を産生することもできる細胞である。
【0137】
分化能の低下に伴い、幹細胞は、以下の順序で分化する:多能性、多分化能、単分化能。本開示のオルガノイドの発生中、幹細胞は、例えば、多能性神経幹細胞から多分化能神経幹細胞、更に単分化能幹細胞に分化し、続いて非幹細胞性の組織細胞となり得る。この組織細胞は、例えば、神経上皮細胞であり得る。
【0138】
本発明の方法は、前駆細胞集団(例えば、神経上皮細胞集団)をWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子と接触させることを含み得、ここで、前駆細胞集団自体は、幹細胞集団の分化によって(例えば、インビトロで)作製されている。
【0139】
従って、本発明の方法は、幹細胞集団から(例えば、インビトロで)細胞集団を作製するステップを含み得る。
【0140】
好ましくは、本発明の幹細胞は、多能性幹細胞である。
【0141】
多能性幹細胞は、無限に増殖し得る幹細胞である。多能性幹細胞は、完全な生物体に成長する能力を有しないが、3つ全ての胚葉、即ち中胚葉、内胚葉及び外胚葉に由来する細胞型を生じさせる能力を有し、人体のあらゆる細胞型に分化する能力を有し得る。このような幹細胞は、損傷又は疾患の影響を受けた細胞を取り替え得る細胞の単一の供給源を提供することが期待できる。
【0142】
多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞又は胚性幹細胞の作成など、幾つもの技術によって作り出され得る。
【0143】
一部の実施形態において、本発明の幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0144】
iPSCは、成体細胞から直接作り出され得る多能性幹細胞の一種である。当業者は、例えば、成体細胞に特定の転写因子を導入することによるか、又は成体細胞を特定のタンパク質の組み合わせと接触させることにより、iPSCを容易に調製可能である。
【0145】
iPSCを胚性幹細胞と比べると、iPSCは、胚材料を使用する必要性を解消し、それ(又はそれから作製された細胞)を後に再導入する対象から調製できる点で有利である。かかる自己細胞移植は、移植材料の免疫拒絶リスクを解消し得る。
【0146】
本発明の幹細胞は、胚性幹細胞、詳細には胚の破壊を伴わず作製されるものであり得る。
【0147】
哺乳類胚性幹細胞などの多能性幹細胞を、胚の破壊を伴わず作製する方法は、当技術分野において公知である。詳細には、胚をインタクトなままにしておきながら、単一割球からマウス及びヒト胚性幹細胞を作製し得ることが示されている。例えば、Chung, Y. et al. (2006) Nature 439: 216-219は、単一割球からマウス胚性幹細胞を作る方法を記載している。この手順は、後に進歩し、割球細胞株を他のESCと共培養する必要のない方法が提供された(Chung, Y. et al. (2008) Cell Stem Cell 2: 113-117)。
【0148】
一部の実施形態において、本発明の幹細胞は、哺乳類幹細胞、好ましくはヒト幹細胞である。
【0149】
脈絡叢オルガノイドの作製方法
本発明の脈絡叢オルガノイドは、WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子を使用して作製され得る。
【0150】
一態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製するためのWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の使用を提供し、ここで、脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。
【0151】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、神経上皮細胞集団をWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子と接触させることを含む方法を提供し、ここで、脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。
【0152】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、幹細胞集団から神経上皮細胞集団を作製することと、WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することとを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、脈絡叢オルガノイドは、(a)タイト上皮バリアを含む上皮;及び/又は(b)上皮によって囲まれた1つ以上の嚢胞を含む。
【0153】
一部の実施形態において、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態において、幹細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0154】
好ましい実施形態において、神経上皮細胞集団は、神経上皮細胞の凝集体である。
【0155】
好ましい実施形態において、神経上皮細胞集団は、WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子との接触前に三次元マトリックス、好ましくは細胞外マトリックス(ECM)に包埋される。
【0156】
一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約8~12日後に開始される。一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約9~11日後に開始される。一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約9.5~10.5日後に開始される。一部の実施形態において、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子の存在下で神経上皮細胞集団を培養することは、幹細胞集団の培養開始から約10日後に開始される。
【0157】
一部の実施形態において、本方法又は使用は、好ましくは、WNT経路活性化因子及びBMPシグナル伝達経路活性化因子との接触後に撹拌を含む。撹拌は、例えば、オービタルシェーカーなどのシェーカーを使用して達成され得る。
【0158】
別の態様において、本発明は、脈絡叢オルガノイドを作製する方法であって、
(a)幹細胞集団を培養することにより、胚様体集団を作製するステップ;
(b)神経誘導に好適な条件下で胚様体集団を培養するステップ;
(c)ステップ(b)の産物を三次元マトリックス、好ましくは細胞外マトリックス(ECM)に包埋するステップ;
(d)WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下でステップ(c)の産物を培養するステップであって、好ましくはステップ(a)の開始から約8~12日後に開始されるステップ
を含む方法を提供する。
【0159】
胚様体(EB)は、自発的分化又は定方向分化を起こす多能性幹細胞の三次元の凝集体である。
【0160】
本発明の方法及び使用は、細胞又は細胞凝集体を三次元マトリックス、好ましくは細胞外マトリックス(ECM)に包埋することを含み得る。
【0161】
一部の実施形態において、ECMは、重合したECMである。一部の実施形態において、ECMは、重合したECMゲルである。好適な三次元マトリックスは、コラーゲンを含み得る。好ましくは、三次元マトリックスは、エンゲルブレス・ホルム・スワーム(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されるECM又はその任意の成分、例えばラミニン、コラーゲン、4型コラーゲン、エンタクチン及び任意に更にヘパラン硫酸プロテオグリカン又はこれらの任意の組み合わせなどを含む。一部の実施形態において、ECMは、Matrigelである。Matrigelについては、例えば、米国特許第4829000号に記載されている。
【0162】
典型的には、三次元マトリックスは、生体適合性マトリックスの三次元構造体である。これは、好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、ヒアルロナン、メチルセルロース、ラミニン及び/又はアルギン酸を含む。マトリックスは、ゲル、詳細にはヒドロゲルであり得る。有機化学的ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、多量の親水基を含むアクリレート重合体及び共重合体を含み得る。ヒドロゲルは、親水性のポリマー鎖の網目を含み、ときに水が分散媒であるコロイド状ゲルとして見られることもある。ヒドロゲルは、吸収性の極めて高い(ヒドロゲルは99%を超える水を含むことができる)天然又は合成ポリマーである。ヒドロゲルは、その含水量の多さから、天然組織とよく類似したある程度の柔軟性も備える。
【0163】
胚様体集団の作製は、好適な培地(本明細書では胚様体(EB)培地と称される)で幹細胞集団を培養することにより行われ得る。
【0164】
例示的なEB培地は、血清代替製剤、ウシ胎仔血清、グルタミン、非必須アミノ酸、2-メルカプトエタノール及びFGF(例えば、塩基性FGF)(好ましくは約4ng/ml bFGF)を含む。好ましくは、EB培地は、ROCK阻害薬を含む。好ましくは、EB培地は、幹細胞培養の最初の3日間のみROCK阻害薬を含む。
【0165】
特に好適な培地は、本例で使用されるEB培地又は以下に開示されるEB培地である。
【0166】
神経誘導は、好適な培地(本明細書では神経誘導培地と称される)で培養することにより行われ得る。神経誘導培地は、例えば、血清又は血清代替物を欠いている枯渇培地であり得る。非神経組織に必要なかかる栄養素が存在しない結果、他の非神経アイデンティティが失われ、神経アイデンティティに向けた精製が起こり得る。
【0167】
例示的な神経誘導培地は、N2サプリメント(Price and Brewer (2001) Protocols for Neural Cell Culture 255-264;例えばInvitrogen、カタログ番号17502048)、グルタミン、非必須アミノ酸及びヘパリンを含む。
【0168】
特に好適な培地は、本例で使用される神経誘導培地又は以下に開示される神経誘導培地である。
【0169】
好ましい実施形態では、個々の胚様体が個別の三次元マトリックス液滴中に包埋される。
【0170】
三次元マトリックス中への包埋は、好適な容器内にある可溶性マトリックスに胚様体を加え、続いてマトリックスの重合に好適な条件下でインキュベートすることにより達成され得る。例えば、凹みを作ったパラフィルムに胚様体を1つずつ移し得る。余分な培地を取り除いた後、各胚様体にマトリックス(例えば、Matrigel)の液滴を加え得る。次に、マトリックスの重合に好適な条件下で(例えば、37℃で約20分間)この混合物をインキュベートし得る。
【0171】
好ましい実施形態において、三次元マトリックスに包埋された胚様体は、拡大に好適な条件下で培養される。拡大は、好適な培地(本明細書では拡大培地と称される)で培養することにより行われ得る。
【0172】
例示的な拡大培地は、N2サプリメント(Price and Brewer (2001) Protocols for Neural Cell Culture 255-264;例えばInvitrogen、カタログ番号17502048)、ビタミンA不含B27サプリメント(Price and Brewer (2001) Protocols for Neural Cell Culture 255-264;例えばInvitrogen、カタログ番号12587010)、インスリン、2-メルカプトエタノール、グルタミン及び非必須アミノ酸を含む。
【0173】
特に好適な培地は、本例で使用される拡大培地又は以下に開示される拡大培地である。
【0174】
WNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の存在下での培養及び続くWNT経路活性化因子及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路活性化因子の非存在下での培養は、本明細書では成熟培地と称され得る好適な培地で行われ得る。
【0175】
例示的な成熟培地は、N2サプリメント(Price and Brewer (2001) Protocols for Neural Cell Culture 255-264;例えばInvitrogen、カタログ番号17502048)、ビタミンA含有B27サプリメント(Price and Brewer (2001) Protocols for Neural Cell Culture 255-264;例えばInvitrogen、カタログ番号17504044)、インスリン、2-メルカプトエタノール、グルタミン及び非必須アミノ酸を含む。
【0176】
特に好適な培地は、本例で使用される成熟培地又は以下に開示される成熟培地である。
【0177】
いずれの培地も栄養素及び/又は緩衝液を更に含み得る。好ましい栄養素としては、炭水化物、特にグルコース又はフルクトースなどのモノヘキソース又はモノペントースが挙げられる。
【0178】
本発明の方法における使用に好適な培養条件としては、例えば、
(a)約36~39℃又は36.5~37.5℃、好ましくは約37℃で培養すること;
(b)約4~6%又は4.5~5.5%CO、好ましくは約5%COで培養すること;及び/又は
(c)少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%湿度、好ましくは約100%湿度で培養すること
が挙げられる。
【0179】
更なる例示的EB培地は、(50mL当たり):40ml DMEM/F12(Invitrogenカタログ番号11330-032);10mlノックアウト血清代替物(KOSR;Invitrogenカタログ番号10828-028);1.5ml胚性幹細胞品質FBS;0.5ml GlutaMAX(Invitrogenカタログ番号35050-038);0.5ml MEM非必須アミノ酸(MEM-NEAA;Sigmaカタログ番号M7145);100μlの50mM 2-ME(例えば、Life Technologiesカタログ番号31350-010);4ng/ml bFGF(例えば、Peprotechカタログ番号100-18B)(使用直前に加える;1:2500);及び1:100 Rock阻害薬(Y27632;VWRカタログ番号688000-5)(使用直前に加える)である。
【0180】
更なる例示的神経誘導培地は、(100mL当たり):100ml DMEM/F12(Invitrogenカタログ番号11330-032);1ml N2サプリメント(Invitrogenカタログ番号17502048);1ml Glutamaxサプリメント(Invitrogenカタログ番号35050-038);1ml MEM-NEAA(Sigmaカタログ番号M7145);及び100ulヘパリン溶液(Sigmaカタログ番号H3149)である。
【0181】
更なる例示的拡大培地は、(250mL当たり):125ml DMEM/F12(Invitrogenカタログ番号11330-032);125ml Neurobasal培地(Invitrogenカタログ番号21103049);1.25ml N2サプリメント(Invitrogenカタログ番号17502048);5ml B27サプリメント(Invitrogenカタログ番号12587010又は17504044);62.5ulインスリン(Sigmaカタログ番号I9278);250ulの50mM 2-ME溶液(例えば、Life Technologiesカタログ番号31350-010);2.5ml Glutamaxサプリメント(Invitrogenカタログ番号35050-038);1.25ml MEM-NEAA(Sigmaカタログ番号M7145);及び2.5mlペニシリン/ストレプトマイシン(Sigmaカタログ番号P0781)である。
【0182】
更なる例示的成熟培地は、(250mL当たり):125ml DMEM/F12(Invitrogenカタログ番号11330-032);125ml Neurobasal培地(Invitrogenカタログ番号21103049);1.25ml N2サプリメント(Invitrogenカタログ番号17502048);5ml B27サプリメント(Invitrogenカタログ番号12587010又は17504044);62.5ulインスリン(Sigmaカタログ番号I9278);250ulの50mM 2-ME溶液(例えば、Life Technologiesカタログ番号31350-010);2.5ml Glutamaxサプリメント(Invitrogenカタログ番号35050-038);1.25ml MEM-NEAA(Sigmaカタログ番号M7145);及び2.5mlペニシリン/ストレプトマイシン(Sigmaカタログ番号P0781)である。
【0183】
スクリーニング及びアッセイ方法
一態様において、本発明は、創薬スクリーニング又は薬物毒性のアッセイのための本発明の脈絡叢オルガノイドの使用を提供する。
【0184】
一部の実施形態において、本使用は、候補薬剤が血液脳脊髄液(CSF)関門を通過する能力を試験するためのものである。
【0185】
別の態様において、本発明は、候補薬剤が血液脳脊髄液(CSF)関門を通過する能力を試験する方法であって、本発明の脈絡叢オルガノイドを候補薬剤と接触させることと、候補薬剤が上皮を通過するかどうかを決定することとを含む方法を提供する。
【0186】
例えば、脈絡叢オルガノイドを含む培養物の培養培地に候補薬剤を加え、インキュベートし得る。続いて、例えば好適な時間が経った後、脈絡叢オルガノイドの1つ以上の嚢胞中の液体を抜き出し、候補薬剤の存在に関して分析し得る。候補薬剤の存在に関するアッセイには、当業者に公知の任意の好適な技術を用いることができる。例えば、質量分析法を用いて薬剤が同定され得る。
【0187】
当業者は、開示されるとおりの本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を組み合わせ得ることを理解するであろう。
【0188】
ここで、本発明の好ましい特徴及び実施形態を非限定的な例として説明する。
【0189】
本発明の実施には、特に指示されない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来技術が用いられることになり、そうした技術は、当業者の能力の範囲内である。かかる技法は、文献中に説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel, F. M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons;Roe, B., Crabtree, J. and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons;Polak, J. M. and McGee, J. O’D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press;Gait, M. J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press;及びLilley, D. M. and Dahlberg, J. E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般的なテキストの各々は、本明細書において参照により援用される。
【実施例
【0190】
材料及び方法
幹細胞培養
WiCellからヒトH9及びH1 ES細胞を入手し、これらの研究についてUKSCB Steering Committeeによる承認を受けた。WiCellからiPS細胞(IMR90-4)を入手し、全ての細胞株が多能性且つマイコプラズマ不含であることを確認した。細胞は、培養下に維持し、StemFlex培養培地(Gibco A3349401)を供給した。
【0191】
脳及び脈絡叢オルガノイド培養条件
以前に記載されているとおり(1)、hES及びiPSCからの単一細胞懸濁液から胚様体(EB)を調製した。Stem Cell Technologies脳オルガノイドキット(カタログ番号08570、08571)試薬を使用して脳及びChPオルガノイドを作成した。EBは、既報告のとおり(2)、いずれの場合にも表面積の増加及び神経誘導効率の向上のため、繊維状微小足場及び18,000個のhES若しくはiPS細胞を使用するか、又はより小さいEBの作成のために微小足場の非存在下でより少ない細胞(2000~4000個)を使用するかのいずれかで作成した。これを、EB培地及び50μM Y-27632 ROCK阻害薬が入った96ウェルU字底低接着性プレートに3日間播き、続いてEB培地単独に2日間播いた。5日目、同じ96ウェルにおいて培地をNI培地に交換した。2日後、以前に記載されているとおり(2)、凹みを作ったパラフィルムのシートを使用してEBを20μl matrigelに包埋し、37℃で20分間インキュベートした。次に、各ウェルについて3mlの拡大培地が入った6ウェルプレートにEBを移し替えた。ChPパターニングのため、10日目に、各5cmディッシュに最大数の6つのEBを保ちながら、成熟培地中での3μM CHIR及び20ng/ml BMP4による処理を用いた。この処理は、成熟培地中で7日間続けた。15日目、オルガノイドをシェーカー付きのインキュベーターに移し、3~4日毎に成熟培地を補給した。30日目から、溶解したmatrigel(1:50)を成熟培地に加えた。
【0192】
免疫染色及びイムノブロッティング
オルガノイドを4%PFAに4℃で一晩固定し、次にPBSで3回、各10分間洗浄し、次に4℃の30%ショ糖緩衝液に少なくとも24時間移した。次に、以前に記載されているとおり(1)、オルガノイドをゼラチンに包埋して切片化した。0.25%トリトン及び1%ロバ血清緩衝液でブロッキング及び透過処理した後、切片を以下の一次抗体と共に一晩インキュベートした:ヒツジ抗TTR(1:500、Abcam、ab9015)、マウス抗ZO1(1:300、BD Transduction、610966)、ウサギ抗Aqp1(1:200、Abcam ab15080)、マウス抗MRP1(1:200、Abcam ab24102)、ウサギ抗MRP4(1:200、Cell Signaling Technology、12705)、ウサギ抗Sox2(1:300、Abcam、ab97959)、ウサギ抗CLIC6(免疫染色のために1:500、イムノブロットのために1:1000、Abcam、ab204567)、ウサギ抗Foxg1(免疫染色のために1:200、イムノブロットのために1:1000、Abcam、ab18259)、マウス抗GAPDH(1:1000、Abcam、ab8245)、ウサギ抗IGF2(免疫染色のために1:200、イムノブロットのために1:1000、Abcam、ab9574)、ラット抗ヒストンH3リン酸化(PH3、1:300、Abcam ab10543)、マウス抗ケラチン18(Krt18、1:200、Novus biologicals NBP2-47985)、ウサギ抗セロトニン(5HT2C、1:200、Sigma S5545);ウサギ抗CCDC67(1:200、Abcam ab102688)、マウス抗Foxj1(1:100、Thermo Fisher 14-9965-82);ウサギ抗Arl13b(1:200、Proteintech 17711-1-AP)、ウサギ抗DLK1(1:200、Abcam、ab21682)、ヒツジ抗Tbr2(1:200、R&D Systems、AF6166)、マウス抗HuC/D(1:500、LifeTech、A21271)、マウス抗LAT1(1:50、Santa Cruz、sc-374232)、ウサギ抗Pgp/MDR1(1:200、Cell Signaling Technology、12683)。3回の10分間PBS洗浄後、Alexafluor 488、568、647で標識した二次抗体を室温で1時間適用した。核をマーキングするため、二次抗体インキュベーションにDAPIを加えた。次に、スライドをPBSで3回洗浄し、次にProlong Diamondマウント用培地でマウントした。組織学的分析のため、続いて切片をヘマトキシリン、次にエオシンに浸し、エタノール及びキシレンで脱水し、最後にキシレンベースの封入剤培地を使用してマウントした。Zeiss LSM 780共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して画像を収集し、Fiji(NIH)を使用して調製した。
【0193】
イムノブロッティングのため、オルガノイドを液体窒素で急速凍結し、続いて1:100のHaltプロテアーゼ阻害薬(Thermo Fisher)を含有するRIPA緩衝液中でホモジナイズして、組織抽出物を作製した。iCSFを回収するため、オルガノイドを新鮮培地で2回洗浄し、ガラスキャピラリーを使用したマウスピペッティングで液体を回収した。ブラッドフォードアッセイを用いてタンパク質濃度を測定した。次に、約10μgのタンパク質を含有する試料をNuPAGE LDS試料緩衝液4×及びDTT 1Mで調製し、次に95℃で15分間加熱した。タンパク質試料及びラダーをポリアクリルアミドゲルにロードし、90mVで2時間流した。試料をPVDF膜(Immobilon)に4℃で3時間転写した。膜をPBS-T中5%乳でブロッキングし、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、Alexafluorコンジュゲート二次抗体を室温で1時間加えた。Li-COR Odyssey CLx赤外線撮像装置を使用して膜を画像化した。
【0194】
シングルセルRNAシーケンシング及び分析
単一細胞解離の実施は、初めに15mlコニカルチューブに、55日間終脳オルガノイド(試料1)、53日間脈絡叢(試料2)、27日間脈絡叢(試料3)及び46日間脈絡叢(試料4)の各条件について2つのオルガノイドをプールすることによった。試料を1mlのAccumax(Sigma、A7089)中、400μg DNアーゼI及び15μMアクチノマイシンDと共に37℃で20分間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。5分間隔で試料チューブを軽く叩き、最後にP1000チップで10回上下にピペッティングした。大きい集塊を沈降させて、上清を回収し、そこに100μl FBSを加えた後、35μmろ過管(Corning、352235)でろ過した。次に、試料を300×gで5分間スピンした。次に、死細胞除去キット及びMACSカラム(Miltenyi、130-090-101)を使用して細胞ペレットから死細胞を取り除いた後、もう一度300×gで5分間スピンした。細胞を適切な容積のPBS中0.04%BSAに再懸濁し、10X Chromiumシステム(10X Genomics)に1ウェル当たり16,000細胞をロードした。
【0195】
10X Genomics Chromiumシングルセル3’ライブラリ&ゲルビーズキットv3(10X Genomics)ワークフローを用いて、製造者の指示に従ってシングルセルRNA-seqライブラリを調製した。エマルション混合物中に単一細胞ゲルビーズを作製するプロトコルに従ってChromium Controllerを実行した。逆転写酵素反応及び続く増幅をC1000 Touchサーマルサイクラー(Biorad)で行い、2100 Bioanalyzer Instrument(Agilent)を使用してライブラリの品質を検査した。試料を1つにプールし、Novaseqシーケンサー(Illumina)のS1フローセルの2レーンでシーケンシングした。
【0196】
未加工のシーケンシング出力をbcl2fastqによって標準fastqフォーマットに変換した後、CellRanger Count(バージョン3.1.0、10X Genomics)にかけ、これは、STARを使用したGRCh38ヒト参照ゲノムとのリードアラインメントも実施した。QC出力により、試料1について1細胞当たりの平均リード数39,973及び1細胞当たりのUMI中央値4,660の10,327個の細胞;試料2について1細胞当たりの平均リード数41,815及び1細胞当たりのUMI中央値11,899の8,573個の細胞;試料3について1細胞当たりの平均リード数67,938及び1細胞当たりのUMI中央値16,252の5,347個の細胞;試料4について1細胞当たりの平均リード数45,030及び1細胞当たりのUMI中央値9,927の8,603個の細胞が明らかになった。次に、各試料のフィルタリング後の特徴バーコード行列をSeurat v3 Rパッケージで更に分析し、これは、初めに行列をマージし、次にSCTransformを使用して全細胞にわたるリード深さで正規化し、データをスケーリングし、且つ変数特徴を見つけ出すことによった。正規化中にミトコンドリアマッピング率及び細胞周期の両方を回帰除去し、これらの変動交絡源を取り除いた。次元数の選択の指針とするため、ElbowPlotを使用して主成分分析(PCA)によって偏りのないクラスタリングを実施し(4)、続いてFindNeighbors、FindClusters及びUMAP次元削減可視化を行った。各クラスターにおける上位10個の差次的に発現する遺伝子並びに既知のマーカー遺伝子の分析に基づいてクラスターを同定した。
【0197】
インビボデータとの比較のため、初めにそれぞれの個別のクラスターのサブセットを作成した。ヒトの発生中の脳のscRNA-seqとの比較のため、Nowakowski et al. (3)からの発現行列及びメタデータをUCSC Cell Browserからダウンロードし、Seurat v3により、上記と同様に、細胞周期状態回帰及びPCAクラスター分析とUMAP可視化で処理すると、上位の差次的に発現する遺伝子及び既知のマーカー遺伝子に基づいて同定された12個のクラスターが生じた。次に、これらのクラスターの各々についてサブセットを作成した。各クラスター内にある全単一細胞にわたり、オルガノイド及びヒトインビボからのクラスターサブセットの各々についての正規化後特徴カウントデータの平均を求め、続いて行列のピアソン相関係数を計算し、マンハッタン法によるheatmap. 2関数及びward. D2クラスタリングを用いて偏りのない階層的クラスター分析を行った。
【0198】
マウス胚バルクRNA-seqデータとの比較のため、NCBI GEO(GSE66312)(4)から未加工の特徴カウントをダウンロードし、TPMを計算した後、続いてヒト遺伝子名に変換して、重複しているもの及びヒトに存在しない遺伝子を除去した。試料の少なくとも1つに1のカットオフTPMを設定し、続いて1)全脈絡叢試料及び2)選別した上皮細胞試料の平均値を計算した。次に、データを対数変換し、オルガノイドサブセットクラスター(上記のとおり平均したもの)とマージした。比較した全ての群に現れない遺伝子を除去し、続いてスケーリング及び主成分分析を行った。
【0199】
電子顕微鏡法
ガラスバイアル内において0.1Mカコジル酸緩衝液、pH7.4(CB)中の2.5%グルタルアルデヒド及び2%パラホルムアルデヒド(EMグレード、Agar Scientific)によってオルガノイドを4℃で一晩固定した。翌日、それをCBでその日のうちに6回リンスし、4℃で一晩保存した。次に、試料をもう1回リンスし、CB中の1%四酸化オスミウムによって氷上及び暗所下で1時間にわたり後固定し、蒸留水で1時間かけて5回洗浄し、漸増エタノール系列(30%、50%、70%、90%、100%)、次に酸化プロピレンでステップ毎に10分間脱水した。脱水された試料をCY212アラルダイトエポキシ樹脂に浸透させて包埋した。包埋試料から薄金色の70nm切片を切り出し、飽和酢酸ウラニル水溶液で対比染色した。電子顕微鏡写真は、FEI Tecnai Spirit TEMにおいて80kVで記録した。
【0200】
質量スペクトルデータ解析
PBS又は新鮮培地を使用してオルガノイドを洗浄し、ガラス製ミクロキャピラリーによるマウスピペッティングによってiCSF試料を回収した。オルガノイド液及び培地を500gで5分間遠心して死細胞及び残屑を取り除き、続いてマススペクトロメトリーで分析した。マススペクトロメトリー分析のために、Janus液体ハンドリングシステム(PerkinElmer、UK)を使用して精製タンパク質を含むポリアクリルアミドゲルスライス(1~2mm)を調製した。簡潔に言えば、切り出したタンパク質ゲル片を96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに置き、50%v/vアセトニトリル及び50mM炭酸水素アンモニウムで脱染し、10mM DTTで還元し、55mMヨードアセトアミドでアルキル化した。アルキル化後、タンパク質を6ng/μLエンドプロテアーゼAsp-N(Promega、UK)によって37℃で一晩消化した。得られたペプチドを2%v/vギ酸、2%v/vアセトニトリルで抽出した。消化物を、Ultimate U3000 HPLC(Thermo Scientific Dionex、San Jose, USA)を使用して約300nL/分のフローを送り込むことでナノスケールキャピラリーLC-MS/MSにより分析した。C18 Acclaim PepMap100 5μm、100μm×20mm nanoViper(Thermo Scientific Dionex、San Jose, USA)でペプチドを捕捉した後、C18 Acclaim PepMap100 3μm、75μm×250mm nanoViper(ThermoScientific Dionex、San Jose, USA)で分離した。ペプチドを60分間のアセトニトリル勾配(2%から80%)で溶出させた。分析カラム出力は、ナノフローエレクトロスプレーイオン化源を介して、ハイブリッド四重極オービトラップ型質量分析計(Q-Exactive Plus Orbitrap、ThermoScientific、San Jose, USA)と直接連動させた。完全MSスペクトルに30,000の分解能を用いた後、続いて10のMS/MSスペクトルを用いてデータ依存的分析を行った。MSスペクトルは、300~2000のm/z範囲にわたって収集した。MS/MSスキャンは、高エネルギー衝突解離(HCD)のための27の閾値エネルギーを用いて収集した。次に、Mascot検索エンジンプログラム(Matrix Science、UK)を用いてLC-MS/MSデータをタンパク質データベース(UniProt KB)で検索した(5)。データベース検索パラメータは、前駆体許容差10ppm及びフラグメントイオン質量許容差0.8Daと設定した。1回の見逃された酵素切断を許容し、酸化メチオニン、カルバミドメチルシステイン、ピログルタミン酸、リン酸化セリン、スレオニン及びチロシン並びにメチルアルギニンについて変数の修正を含めた。MS/MSデータをバリデートし、Scaffoldプログラム(Proteome Software Inc. 、USA)を用いてemPAI値を計算した(6)。異なる種の試料間で対応するタンパク質を比較するため、各試料について最も高いemPAI値のみを所与のタンパク質のペプチドカウントと見なした。従って、例えば、ヒト試料(オルガノイド及びヒト成人CSF)については、ヒトTTR emPAI値のみが考慮される一方、ウシ胎仔CSFについては、ウシTTR emPAI値が、及びマウス胚性CSFについては、マウスTTR emPAI値が考慮された。これにより、その受託番号の違いにも関わらず、試料間で対応する相同タンパク質を比較することが可能になった。
【0201】
NMR試料調製及び分析
NMR実験のため、フェノールレッド不含完全IDM+A培地及び1:50 Geltrex(Gibco、A14132-02)中でChPオルガノイドを2時間、12時間、24時間、48時間又は72時間インキュベートした。オルガノイド培地及びiCSFを回収し、500gで5分間遠心して残屑を取り除いた。H-NMRスペクトルは、400.1MHzで作動させたBruker Ultrashield 400 Plusを使用して収集した。HOD抑制を用いてH-NMRデータを回収することにより、HO/DO混合物からなる試料を分析した。化学シフト(δ)は、ppm単位で示す。H-NMRスペクトル中のシグナルの相対積分値によって変換収率を決定した。データ解析は、MestReNova(バージョン7.0)及びGraphPad Prism(バージョン7.0b)を使用して実施した。
【0202】
CSF中の小分子のインビトロレベルとインビボレベルとを比較するため、インビボ未結合CSF対血漿比、Kp,uu,CSFを、以前記載された(7)と同様に、血漿中の未結合薬物(Cu,p)に対するCSF中の未結合薬物(Cu,CSF)の比として計算した(式A)。
【数1】
【0203】
CSF及び血漿の各々における未結合薬物の量は、総薬物濃度(C)又は(CCSF)と、未結合の薬物の割合(fu,p)又は(fu,CSF)との積である(式B及び式C)。
u,p=Cu,p (B)
u,CSF=CCSFu,CSF (C)
【0204】
、CCSF及びfu,pは、文献から採用した(表S2)。しかしながら、大量のCSFを入手することは、困難であるため、ほとんどの薬物について、fu,CSFは、未知である。従って、fu,CSFは、fu,pから計算し、ここで、薬物-タンパク質解離は、血漿及びCSFで同じであるものとし(式D)、ヒトにおける既報告のとおり、アルブミンCSF対血漿比(Qalb)を0.005とすることにより、CSFの血漿タンパク質含量の低下を補正した。
【数2】
【0205】
インビトロ液のNMR測定は、未結合薬物を検出したため、比(Km,uu,iCSF)は、培地中の薬物(Cu,m)に対するインビトロCSF中の薬物(Cu,iCSF)の比の単純な関数であった(式E)。
【数3】
【0206】
実施例1
既報告のとおり、脳オルガノイドは、固有の自己組織化を特徴とし、ごく最近のプロトコルでは主に前脳アイデンティティが生じており(13、14)、これは、ChP上皮も含んでいる(図7A)(9、13)。従って、ヒトChPの発生を研究するため、本発明者らは、脳オルガノイド方法に基づき、信頼性及び再現性のある方法でChPを作成するプロトコルを確立した。
【0207】
背側化因子Bmp4を単独(15)及びWnt活性化因子分子CHIRとの組み合わせ(16)の両方で使用したChP細胞のインビトロ誘導が以前に報告されている。
【0208】
従って、脳オルガノイドにおいてChP運命を促進するため、改良脳オルガノイドプロトコルの10日目からBmp4及びCHIRをパルスとして与えた(「方法」を参照されたい)(図1A図7B図7C)(7、9、13)。14日目に、定方向に方向付けられていない前脳オルガノイドは、大型の円形神経上皮葉を発生した一方、Bmp4/CHIR処理オルガノイドでは、本発明者らは、より細長い神経上皮組織を観察した(図7B)。この観察は、インビボでChPが背側正中線の神経上皮から発生し、それが脳室の内腔で徐々に細長くなって拡大することと一致する(1、17、18)。主に大型の背側皮質アイデンティティの葉を発生した前脳オルガノイドと比較すると(図1B図1C)、ChPオルガノイドは、ChP立方上皮がほぼ全体に集積されているように見えた(図1B図1C)。40日の時点におけるChPオルガノイドの組織切片を妊娠後15週におけるヒト胚性ChP及びE18.5の胚性マウス脳からのChPと比較すると、ヒト胚試料とオルガノイド組織とは、複雑性及び組織化の点で極めて類似していることが示された(図1D)。
【0209】
インビボでは、ChP上皮は、当初、偽重層上皮として発生し、その後、中間円柱段階が続き、高度に折り畳まれた立方上皮に成熟する(1、18、19)。組織特異性を確認するため、本発明者らは、初期及び後の時点でChPマーカーTTR、神経幹細胞マーカーSox2及びタイトジャンクションマーカーZO1についての染色を実施した(図1E図1F)。Bmp4及びCHIRで処理したChPオルガノイドは、28日目までに、TTR陽性範囲を伴う偽重層神経上皮を発生した(図1E)。39日目までに、処理オルガノイドは、より円柱形の極性のあるChP上皮を発生し、TTR免疫染色が一層集積されて、細胞間ジャンクションに比較的強力なZO1発現があり、Sox2免疫染色は、希薄であった(図1F)。TTR陽性領域を定量化すると、処理オルガノイドでは、未処理対照と比較して再現性のある集積が示された(図1G)。まとめると、これらのデータは、種々のヒト多能性幹細胞株からの、及び2つの異なる播種方法による、インビトロでのChP組織の信頼性及び再現性のある作成を実証している(図7C図7G)。
【0210】
ChPは、脳内で最も高いレベルのチャネルタンパク質-塩化物細胞内チャネル(CLIC6)を発現する(20)。本発明者らは、免疫組織化学(図2A)及びイムノブロットの両方により、対照の未処理オルガノイドと比較してChPオルガノイド上皮にCLIC6を検出することができた(図2B図2C)。並行して、処理オルガノイドには、対照と比較してより低いレベルの前脳マーカーFoxg1が検出された(図2B図2C)。皮質特異的Tbr2陽性中間前駆細胞及びHuC/D陽性ニューロンも、対照と比較して初期ChPオルガノイドで大きく減少し、成熟ChPオルガノイドでほぼ完全に欠けていた(図8A)。
【0211】
ChPは上皮成分と間質成分との両方を含む:極性のある上皮は、頂端側で脳室の内腔に面し、有窓毛細血管に露出した間質コアを取り囲んでいる。ChPオルガノイドに存在する種々の細胞集団をよりよく特徴付けるため、本発明者らは、異なる成熟段階にあるChPオルガノイドの3つの別個のバッチからの2つのオルガノイド及び対照としての2つの未処理終脳オルガノイドを標本抽出して、シングルセルRNAシーケンシング(scRNA-seq)を実施した(図2F図2G)。複合解析により、未処理オルガノイドにおいてニューロン及びニューロン前駆体のマーカーを発現する細胞の予想されたクラスターが同定された一方、ChPオルガノイドでは未熟及び成熟ChPアイデンティティが集積された(図2F)。偏りのない分析により、処理オルガノイドでは、ChP集団が時間と共に一貫して次第に集積されることが明らかになった(図2G)。時間が経った処理オルガノイドほど、初期段階のオルガノイド及び未処理対照と比較してChP成熟上皮細胞の大型の成分並びに間質細胞の集積を示した(図2G)。本発明者らの以前の染色と一致して、本発明者らは、CLIC6及びその他の、セロトニン受容体HRT2Cなどの特異的ChPマーカーの発現を確認した(21)(図2H)。予想どおり、細胞の未熟ChP/hemクラスターは、ホメオボックスタンパク質MSX1、OTX2、R-スポンジン3(RSPO3)及びPAX6など、ChP発生に関与する初期調節因子の発現レベルがより高かった(図2H図2I)。成熟ChP細胞集団は、TTR、炭酸脱水酵素2及び12(CA2、CA12)、ヌクレオシド二リン酸キナーゼホモログ5(NME5)、内向き整流性カリウムチャネル13(KCNJ13)及び上皮マーカーケラチン18(Krt18)の発現レベルがより高かった(図2I)。より成熟したKrt18陽性細胞が側脳室に遠位に位置するというインビボでのChP上皮における成熟勾配が以前に報告されている(21)。Krt18は、初期の未熟のものと比較して、より成熟したChPオルガノイドに集積された(図2D)。本発明者らのシステムにおけるChPの間質成分を調べるため、本発明者らは、ChP間充織に発現する遺伝子であるDLK1(デルタ様ノンカノニカルnotchリガンド1)(21)の発現について、免疫組織化学により調べた(図2E)。DLK1及び他のChP間質タンパク質(ルミカン、LUM及びデコリン、DCN)の発現は、ChPを取り囲むオルガノイドの範囲及び上皮中で検出された(図2E図8B)。これらの結果と一致して、scRNA-seqにより検出されたChP間質集団は、高レベルのDCN、LUM及びDLK1(図2I)並びに細胞外マトリックス成分コラーゲンα-1鎖1(COL1A1)(図2H)を発現した。これらのデータは、インビトロ由来のChPオルガノイドが上皮成分及び間質成分の両方を発生することを示唆している。
【0212】
次に、本発明者らは、本発明者らのインビトロモデルとインビボでのChP組織との間の類似性を同定しようとした。本発明者らは、マウスChP組織(1)及び発生中のヒト脳(2)の既発表のデータセットで偏りのないクラスタリング及び主成分分析(PCA)を実施した(図3A図3D)。初めに、本発明者らは、本発明者らが同定したオルガノイドクラスターと、インビボE18.5マウス胚性全ChP及び単離された上皮ChP細胞からのRNAseqデータ(4)との間のPCAを実施した。本発明者らは、他の同定されたクラスターと比較して、本発明者らの成熟ChPクラスターと、インビボ試料からのChPとの間に最も密接な近接性を観察することができた(図3A)。次に、本発明者らは、オルガノイドクラスターと、インビボでのヒト発生中の脳のもの(22)との間の相関分析を実施し、オルガノイドとインビボChPクラスターとの間及びオルガノイドとインビボ間質クラスターとの間の高い相関が明らかになった(図3B)。更なる偏りのない階層クラスタリングにより、オルガノイド成熟及び未熟ChPがインビボChPと一緒にクラスター化し、及びオルガノイドChP間質がインビボ間質アイデンティティとクラスター化することが明らかになった(図3C)。本発明者らのシステムが特にヒトChPをより良好にモデル化することができるかどうかを更に調べるため、本発明者らは、次に、オルガノイド成熟ChPクラスターをインビボのヒト及びマウスの両方と比較したところ(図3D)、マウスと比べてヒトChPとの相関がより高いことが明らかになった(図3D)。最後に、特異的領域性ChPマーカー(4、24)を調べると、脈絡叢オルガノイドは、第三又は第四脳室というよりむしろ、側脳室アイデンティティであることが明らかになり(図3E)、これは、それが終脳由来であることと整合した。これらのデータは、全体的に見て、オルガノイドのChP上皮及び間質組成がインビボでのヒトChPの細胞組成及び遺伝的構造を再現しているように見えることを実証している。
【0213】
ChPオルガノイドの成熟の程度を調べるため、本発明者らは、以前に記載されているChP成熟マーカーに注目した。本発明者らは、ChP上皮成熟中に発現することが示唆されている(3)繊毛マーカーの存在を観察することができ、加えて、より成熟度の高いChP上皮のマーカー、アクアポリン1(AQP1)も観察することができた。本発明者らは、成熟ChPクラスターにおけるDYNLRB2及びFOXJ1などの繊毛遺伝子の集積並びにAQP1の集積も検出することができた(図3F)。染色により、更に、両方とも毛様体発生の調節因子であるCCDC67及びFOXJ1並びにChP上皮における頂端繊毛の房を染色した繊毛タンパク質ARL13Bの存在が明らかになった(図3G)。AQP1染色により、インビボと同様に上皮の頂端側への局在性を示す、この成熟度のより高いマーカーの存在も確認された(図3H)。ChP上皮は、極めて高効率の分泌機構であり(23)、頂端側でのその表面積を増強する多数の微絨毛、運動型繊毛及び緻密な細胞質小胞の網目構造を備えている。ChPオルガノイドがこれらの基本的な超微細構造上の特徴を再現するかどうかを更に調査するため、本発明者らは、EMイメージングを実施した。本発明者らは、一次繊毛、頂端に位置する広範な微絨毛、細胞間のタイトジャンクション、多小胞体及び多数の細胞外小胞を観察した(図3I;矢印で指示される)。脳脂質代謝におけるその役割と一致して、本発明者らは、脂肪滴及びリポタンパク質(ApoE、クラスタリン/ApoJ及びリン脂質転移タンパク質PLTP)の集積も観察した_(図3J)。これらの特徴は、能動的に循環する細胞周期マーカーホスホヒストンH3(PH3)陽性細胞の喪失と共に(図3K図2D)、ChPオルガノイドにおける完全に成熟した腺上皮を示唆している。
【0214】
次に、本発明者らは、ChP上皮バリアの細胞間にある細胞間隙を塞ぐクローディン及びオクルディン(25、26)などのタイトジャンクションマーカーの発現を調べることにより、ChPオルガノイドがタイトバリアを発生できるかどうかを問うた。scRNA-seqにより、幾つかのクローディン(図4A)並びに他のタイトジャンクション成分オクルディン(OCLN)、ZO1(TJP1)、ZO2(TJP2)並びにPDZタンパク質PATJ(INADL)及びMPDZの存在が明らかになった(図4B)。染色により、ChPオルガノイドの極性上皮におけるクローディン1、3、4及び5の頂端側への局在化が明らかになり、その発現の集積が確認された(図4C)。ChPオルガノイド上皮では、低レベルのクローディン2(図11A)及びOCLNの存在(図11B)も観察された。最後に、ChP上皮のバリア機能を直接評価するため、本発明者らは、様々な分子量(70、10及び3~5kDa)の蛍光標識デキストランを適用し、オルガノイドへのその侵入を調べた。2時間のインキュベーション後、オルガノイド内部において、10kDaのAlexa-647標識デキストランの明らかな漏出は、見られなかった(図11C)。70kDa、10kDa及び3~5kDa標識デキストランと共に2時間インキュベートした後に回収した培地及び内液の蛍光強度から、これらの分子がオルガノイドから完全に排除されることが確認された(図11D)。
【0215】
ChPオルガノイドの顕著な特徴は、大型の液体で満たされたコンパートメント又は無色の液体が入った嚢胞が後に発生したことであり、これは、前脳の未処理オルガノイドに稀にのみ存在するか又は全く見られないものであった(図4D図9A図9B)。本発明者らは、これらのコンパートメントが培地から完全に単離され、培地に溶解Matrigelを加え続けることにより維持できることを見出した。本発明者らは、同じ立方上皮がこれらのコンパートメントを取り囲み、且つ極性のある配向を呈して、頂端マーカーAqp1及びZO1が液体に向かって内腔側にあることを観察した(図4D)。
【0216】
この液体の組成を調査するため、本発明者らは、マススペクトロメトリー分析を実施することにより、インビトロオルガノイドCSF様液(iCSF)(H9の3バッチ、H1の1バッチ及びiPSC IMR-90の1バッチ)を3つの異なるインビボ試料(3例の健常ドナーからプールしたヒト成人終脳CSF、E13.5のマウス胚性CSF及びウシ胎仔CSF)並びに培地と比較した。本発明者らは、オルガノイドiCSFに総計248個の多量タンパク質を検出し、そのうちの199個は、インビボCSF試料と共通していた(図10A)。遺伝子オントロジー解析により、オルガノイド液プロテオームにおいてGO:CCカテゴリ「細胞外小胞」及び「細胞外間隙」並びにGO:BPカテゴリ「細胞外移行」及び「細胞からの分泌」がエンリッチされたことが明らかになった(図5A)。インスリン様成長因子、特にIGF2は、ChPによって分泌され、発生段階のCSFにおいて皮質前駆細胞増殖を調節する(2)。発生段階のCSFにおけるIGFの役割と一致して、オルガノイドiCSFでは、REACカテゴリ「インスリン様成長因子の調節」も大きくエンリッチされた。
【0217】
次に、本発明者らは、技術的アーチファクトを除外するため、少なくとも2つのオルガノイドiCSF試料で検出されたタンパク質に焦点を置き、次に、本発明者らは、観察されるペプチドの数に基づき、emPAI報告値が1である最も多量にあるタンパク質を調べた。オルガノイドiCSFで検出されたこれらの83個の多量タンパク質のうち、80個は、インビボ試料でも検出され、高い類似性が更に指摘された(図5B図10C)。これらのタンパク質の中で、本発明者らは、クラスタリン(CLU)、リン脂質転移タンパク質(PLTP)及びアポリポタンパク質E(APOE)など、幾つかのバイオマーカーを検出した(図5B、補表1)。インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、セルピンファミリーFメンバー1(SERPINF1)、ニーマン・ピック病C2型タンパク質(NPC2)及びレチノール結合タンパク質1など、iCSFで検出されたタンパク質の多くは、scRNA-seq ChPクラスターでも検出することができ(図5C図5D)、その産生が更に確認された。一部のタンパク質は、ヒトオルガノイド及び成人ヒトCSF試料にのみ存在し、潜在的にヒト特異的な分泌であることが示唆された(図5E)。本発明者らは、インスリン様成長因子2(IGF2)、IGFBP7及びフォリスタチン様タンパク質1(FSTL1)を含めた、成人ヒト試料には見られない幾つかの発生段階特異的CSFタンパク質も検出し、これは、ChPオルガノイドによって分泌されたiCSFがヒトCSFの発生段階の特徴を少なくとも部分的に保持していることを示すものであった(図5E)。オルガノイド液中のIGF2レベルをイムノブロットにより検証し(図5G図8C)、免疫組織化学により、ChP上皮におけるその存在が明らかになった(図5H)。葉酸塩及びビタミンC(両方とも脳の恒常性及び機能に極めて重要である(27、28))の輸送におけるChPの独自の役割と一致して、本発明者らは、これらの栄養素の輸送に関与する特異的輸送体SLC23A2(ビタミンC)及びSLC46A2(葉酸塩)の集積をChP上皮クラスターで検出している(図5D)。
【0218】
次に、本発明者らは、ヒト胚性カーネギー発生段階20 CSFの既発表のプロテオミクスデータセット(29)と更に比較することにより、オルガノイドからのiCSFがいずれ段階で最良に適合するかを問うた。本発明者らは、オルガノイドiCSFが成人CSFと一層大きく重複し、iCSFと胚性インビボCSFとの間で51個のタンパク質が共有されるのと比較して、121個のタンパク質が共通していたことを観察することができ(図5E)、iCSFは、恐らく成人CSFとの類似性がより高いが、一部の発生段階の特徴をなおも保持していることが示された。
【0219】
全体的に見て、インビトロ試料とインビボ試料との間に極めて良好な一致があった。しかしながら、インビボとの類似性を十分に確かめるため、本発明者らは、異常な分布を有するタンパク質を更に調べた。第一に、検出されたタンパク質の圧倒的多数は、培地中に存在しなかったことから、高度に選択的なバリアであることが指摘される一方、プロテオーム解析により、培地中の14個の多量タンパク質のうちの13個は、オルガノイドiCSFにも存在したことが明らかになった(図10D)。重要なことに、これらの多くは、インビボ試料でも検出され、ChP上皮を越えて能動輸送するアルブミン(ALB)及びトランスフェリン(TF)などのタンパク質を含んでいた。インビボで検出されないものは、幾つかのラミニンを含めた、Matrigelによって提供されるタンパク質である。第二に、インビボ試料では再現性よく検出されるが、オルガノイドiCSFでは検出されないタンパク質が幾つかあったが、これらは、オルガノイドが正しく作製されない要因であり得るため、これは、更なる調査を正当化するものであった。しかしながら、本発明者らは、インビボCSF試料のみで検出され、しかし、オルガノイドiCSFでは検出されないタンパク質がGO:CC「血液マイクロパーティクル」、GO:BP「血小板脱顆粒」及びKEGG:「補体及び凝固カスケード」のエンリッチメントを示すことを見出した(図10B図10E図10F)。これは、腰椎穿刺(脊椎穿刺)CSF採取の侵襲的手技において末梢血及び骨髄の混入が起こることが多いという事実によって説明することができた。従って、オルガノイドシステムの利点の1つは、ChPオルガノイドが血管成分を欠いていることである。従って、本発明者らは、この液体が専らChPセクレトームであるものと予想する。まとめると、これらの知見から、1.ChPオルガノイドは、周囲の培地とはタイトな上皮バリアによって区別できる自立型コンパートメントを発生すること、2.ChPオルガノイドは、血液の混入のない、ヒトの発生段階特異的CSFタンパク質が集積されたCSF様液を能動的に分泌することが示唆される。
【0220】
その選択的バリア機能の一部として、ChP上皮は、治療薬を含めた小分子に対しても高度に選択的である。従って、小分子に対するかかる選択的透過性を試験するため、本発明者らは、様々な治療的に関連性のある小分子を適用し、オルガノイドiCSFのNMR分析により、それらの透過性をアッセイした。原理証明として、本発明者らは、ドーパミン(ドーパ)及びその前駆体、レボドパ(L-ドーパ)に対するバリアの透過性を試験しており、これは、それらがインビボで透過性が極めて異なる高度に類似した分子であり、BBBのいかなるインビトロモデルでも、かかる特異性が報告されたことがこれまでないためである。ドーパは、インビボで脳に侵入しない一方、L-ドーパは、LAT-1輸送体によってCSFに能動輸送されることが十分に確立されており(30~33)、従ってパーキンソン病患者のドーパミン補充療法において治療用薬剤として与えられている。本発明者らは、L-ドーパからドーパへの変換を妨げる小分子であるカルビドパ(34、35)の存在下でオルガノイドをドーパ及びL-ドーパと共にインキュベートした。2時間後、本発明者らは、培地中においてL-ドーパ及びドーパの両方の存在を検出することができたが、iCSF中ではL-ドーパのみが検出可能であり、これは、CNS関門のインビボ特性と一致した(図6A図11E)。L-ドーパiCSF/培地比は、ドーパiCSF/培地比と比較して一貫して高く、本発明者らのモデルが小分子に対してインビボと同じ選択性を呈したことが示唆された(図6A)。
【0221】
これらの知見から、血液CNS関門における主要な輸送体の本来あるべき発現があり得ることが示唆される。実際、本発明者らは、ChPオルガノイド上皮の頂端側に輸送体LAT-1の発現を検出することが可能であったが(図6D図8C)、これは、本発明者らの透過性アッセイで見られたL-ドーパの本来あるべき輸送を説明している。本発明者らは、薬物が脳に侵入することをATP依存的機構によって阻止する周知の排出ポンプP-糖タンパク質1(Pgp又は多剤耐性タンパク質1、MDR1)(36、37)についても染色した(図6D)。本発明者らは、ChP上皮において、細胞内小胞に局在するように見えるPgpの頂端及び亜頂端発現を検出した(図6D)。ChPにおけるPgpの局在性について十分には確立されていないが(38、39)、しかしながら、これは、CSFから血液への分子のポンプ輸送において役割を果たすことが報告されている(38、40)。ChPにおける更なる重要な排出輸送体は、MRP1及びMRP4であり、これらは、毒性化合物及び望ましくないシグナルがCSFに到達することを妨げる(38、41)。MRP1は、培養下40日の時点でChP上皮の頂端及び基底の両方に局在した(図6D図8C)一方、MRP4は、ChP上皮において頂端に発現した(図6D)。これらの結果は、インビトロで作成したChP上皮が、ヒト脳においてB-CSF-Bが正しく機能するのに決定的に重要な輸送及び排出ポンプを内因的に発現することを示唆している。
【0222】
次に、本発明者らは、このシステムが薬物透過性を定量的に予測できるかどうかを試験した。このため、本発明者らは、同様の透過性実験を実施して、BBBを容易に通過することが公知の抗鬱薬であるブプロピオニル(42)及びBBBをほとんど通過しない2つの化学療法化合物メトトレキサート及びビンクリスチン(43、44)を試験した。予測どおり、ブプロピオニルは、2時間後にiCSFで容易に検出可能であった一方、メトトレキサート及びビンクリスチンは、iCSFから完全に排除された(図6B)。最も重要なことに、本発明者らは、インビトロiCSF/培地比と、同じ薬物について文献に報告されるインビボCSF/血漿比との間に極めて高い相関を見出した(R=0.9921)。それだけでなく、実際の値が著しく良好に対応し(1.004の傾きによって示されるとおり)、このインビトロシステムが、インビボで報告される薬物の透過性を定性的及び定量的に再現し得ることが示された(図6E)。
【0223】
これらの結果から、このChPオルガノイドシステムを使用して未知の薬物のCNS透過性をモデル化し、予測し得ることが示唆される。この説を試験するため、本発明者らは、BBBを通過し、且つシャルコー・マリー・トゥース病1B型のマウスモデルでタンパク質ミスフォールディングに対して保護的CNS役割を有することが示されている、タンパク質ホスファターゼ1の調節性サブユニットPPP1R15Aの新規阻害薬であるセフィン1(45)に注目した。この分子のヒトにおける前臨床又は臨床データは、依然として入手できないが、第I相臨床試験が進行中であり、そのため、いかなる追加的なヒトインビトロデータであれ、情報価値があり得る。以前の記載と同じ実験条件を用いて、セフィン1が2時間のインキュベーション後にiCSFで検出可能であったことから、この化合物もヒトCNS関門を通過し得ることが示された(図6C)。しかしながら、注目すべきことに、ヒトオルガノイドモデルにおける透過性は、マウスモデルで記載されるものと比べてはるかに低かったことから、ヒトで同じCNSレベルを実現するには、より高い用量が必要となり得ることが示唆される。
【0224】
薬物の薬物動態プロファイルに関連する問題は、多くの臨床試験の失敗の原因である(46、47)。1つの極端な例は、慢性痛及び多発性硬化症など、幾つかの病態の治療のために開発中であった脂肪酸アミドヒドロラーゼ阻害薬である化合物BIA-10-2474が関わるものであった(48、49)。残念ながら、第I相臨床試験は、6例の試験参加者が重度の神経毒性を呈し、そのうちの1例が死亡したところで突如中止となった(49、50)。フランス保健省によって行われた調査で幾つかの可能性のある説明が示唆され、そのうちの1つは、脳内の毒性薬物の蓄積であり、これは、試験したいずれの動物モデルでも明らかではなかった(49~51)。しかしながら、それ以上の研究が中止されたため、正確な原因は、依然として不明である。動物モデルでかかる有害作用を検出できなかったことを所与として、本発明者らは、ヒトChPオルガノイドがヒトCNS透過性をより正確に予測し得る可能性があるかどうかを試験し、この蓄積説を試験しようとした。本発明者らは、BIA-10-2474と、上皮バリアを容易に通過するが、かかる毒性蓄積を呈することが示されていない安全化合物、ブプロピオニルとの薬物動態プロファイルを比較した。ブプロピオニルと同様に、BIA-10-2474は、2時間のインキュベーション後にChP上皮バリアを通過することができた(図6F)。しかしながら、24時間後にベースラインレベルにまで安定化したブプロピオニルと比較して、BIA-10-2474は、iCSFに蓄積し続けた(図6G)。これらのデータは、試験参加者の脳にBIA-10-2474が蓄積していた可能性があるという説と整合し、なぜこの薬物が臨床試験で失敗したのかの説明となる可能性が指摘される。要約すれば、本発明者らの知見は、未知の化合物の透過性を定量的に予測するのみならず、時間の経過に伴うその動態も予測するヒトインビトロ前臨床モデルとして本オルガノイドシステムを利用し得ることを示唆している(図6H)。
【0225】
結論として、ChPオルガノイドを使用すると、ヒトChPの発生及び機能をかつてない信頼性のある方法で研究することができる。この臓器について、あまり研究が進んでいないものの、発生及び神経変性などの疾患におけるその重要な役割に起因して一層注目が集まっている。
【0226】
補表1.ChPオルガノイドは、ヒト疾患関連バイオマーカーを分泌する。iCSFで検出されたバイオマーカー(50個の最も多量にあるiCSFタンパク質のうちの31個を示す)、それらのバイオマーカーレベルが変化する疾患又は病態及び関連文献を示す表。星印は、培地中でも検出されるタンパク質を示す(8~59)。
【0227】
補表2.タイムポイント透過性実験。図6に示されるChPオルガノイドに関して試験した関連薬物の細胞株、バッチ数、iCSFの回収日(DIV)を示す表。
【0228】
補表3.タイムポイントプロテオミクス用iCSF。図5に示されるプロテオーム解析に使用した試料の細胞株、バッチ作成日及びiCSFの回収日(DIV)を示す表。星印は、合わせてプールした試料を指示している。
【0229】
補表4.タイムポイントプロテオミクス用インビボCSF。図5に示されるプロテオーム解析に使用したインビボ試料の種類及びサンプルサイズを示す表。星印は、合わせてプールした試料を指示している。
【0230】
補表5.薬物CSFレベルに関するインビボ及びインビトロデータ。CSF及び血漿(インビボ)又は培地(インビトロ)にある未結合小分子の測定値及び計算された比(K)(60~68)を示す表。
【0231】
【表1】
【0232】
【表2】
【0233】
【表3】
【0234】
【表4】
【0235】
【表5】
【0236】
上記の本明細書において言及される刊行物は、全て参照により本明細書に援用される。当業者には、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の開示される製品、使用及び方法の様々な改良形態及び変形形態が明らかであろう。本発明は、具体的な好ましい実施形態に関連して開示されているが、特許請求されるとおりの本発明は、かかる具体的な実施形態に過度に限定されてはならないことが理解されなければならない。実際に、当業者に自明である、開示されている本発明の態様の様々な改良形態は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0237】
実施例1に関する参考文献
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図1
図2A-C】
図2D-E】
図2F
図3A-B】
図3C
図3D-F】
図3G-I】
図3J-K】
図4A-B】
図4C-E】
図5A-C】
図5B.D】
図5E-H】
図6A-F】
図6G-H】
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2022518501000001.app
【国際調査報告】