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特表2022-518511構造的安定性に優れ、電子放出効率が向上されたエミッタおよびこれを含むX-線管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】構造的安定性に優れ、電子放出効率が向上されたエミッタおよびこれを含むX-線管
(51)【国際特許分類】
   H01J 1/304 20060101AFI20220308BHJP
   H01J 35/06 20060101ALI20220308BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20220308BHJP
   H01J 37/073 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01J1/304
H01J35/06 B
H01J9/02 B
H01J37/073
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542451
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019014069
(87)【国際公開番号】W WO2020153579
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0009430
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521141394
【氏名又は名称】オーエックスオーム レイ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ギム, セ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, クアン ス
【テーマコード(参考)】
5C101
5C227
【Fターム(参考)】
5C101AA39
5C101DD06
5C101DD14
5C227AA05
5C227AA08
5C227AB06
5C227AB13
5C227AB15
5C227AC07
5C227AD07
5C227GG20
(57)【要約】
本発明は、カーボンナノチューブを含み、電子放出効率が優れたエミッタおよびこれを含むX-線管を提供する。本発明は、複数のカーボンナノチューブが凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むするカーボンナノチューブシートからなる第1チューブを含み、前記第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが前記第1方向と平行な仮想の第1軸を中心に巻かれている、第1内部空間を有するパイプ形態であり、前記単位ヤーンのそれぞれの先端が、前記軸と同一方向を向き得る。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンナノチューブが凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むカーボンナノチューブシートからなる第1チューブを含み、
前記第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが前記第1方向と平行な仮想の第1軸を中心に巻かれている、第1内部空間を有するパイプ形態であり、
前記単位ヤーンのそれぞれの先端が、前記軸と同一方向を向いているエミッタ。
【請求項2】
前記第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが、巻かれる開始部位から終了部位まで重畳される部分が存在しないよう巻かれており、
前記開始部位および終了部位は、互いに隣接した状態でπ-π相互作用により固定されている、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項3】
前記第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが巻かれている開始部位から終了部位まで重畳される部分が存在するよう巻かれており、
前記重畳される部分が互いに隣接した状態でπ-π相互作用により固定されている、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項4】
前記第1チューブは、横断面上において、前記第1内部空間をなす内面と外部に露出される外面の間の厚さが1マイクロメートルないし2000マイクロメートルである、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項5】
前記第1チューブは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、
前記第1チューブの横断面上に前記仮想の第1軸を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが3マイクロメートルないし2センチメートルである、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項6】
前記第1内部空間は、前記第1方向の両端部が開放されており、開放された前記両端部の間が連通された構造である、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項7】
前記エミッタは、前記第1内部空間の少なくとも一部を占める導電性ワイヤーをさらに含み、前記第1チューブの少なくとも一部が前記導電性ワイヤーの少なくとも一部を包みながら接続する構造からなる、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項8】
前記導電性ワイヤーは、
前記第1方向に延長形成され、前記第1方向において、先端側の第1端部、基端側の第2端部、および前記第1端部と前記第2端部の外郭線の間に延長される外周面を含むが、前記導電性ワイヤーの前記第1端部および前記第2端部の間の第1方向の長さは第1高さとして規定され、
前記第1高さと第1方向が一致した状態で、前記第1チューブの少なくとも一部に接触された状態で前記第1内部空間に挿入されている、請求項7に記載のエミッタ。
【請求項9】
前記第1チューブは、前記第1方向において、前記導電性ワイヤーと重畳される領域である第1領域および前記導電性ワイヤーと重畳されていない領域である第2領域と、を含み、
前記エミッタは、前記第2領域の先端部を通じて電子を放出させる、請求項8に記載のエミッタ。
【請求項10】
前記エミッタは、
前記第1チューブの第1方向の両端部の間の長さである第2高さおよび前記第2領域の前記第1方向の両端部の間の長さである第3高さと、を含むが、
前記第2高さに対する前記第3高さの比率(=第3高さ/第2高さ)が0.1ないし0.9である、請求項9に記載のエミッタ。
【請求項11】
前記導電性ワイヤーの前記第2端部と隣接する外周面の少なくとも一部には、第1チューブが存在しないマージン部が設定されている、請求項8に記載のエミッタ。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブシートは、
複数の前記単位ヤーンのうち一つの単位ヤーンと隣接する他の単位ヤーンの側部が互いに隣接した状態で、前記単位ヤーンが並んで位置した配列が前記第1方向に対して垂直な第2方向に反復される配列構造を含む、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項13】
前記導電性ワイヤーは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される1つの形状を有し、
前記形状の中心部を通り、前記形状の外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが3マイクロメートルないし2センチメートルである、請求項7に記載のエミッタ。
【請求項14】
前記導電性ワイヤーは、タングステン、銅、ニッケル、ステンレススチール、およびモリブデンからなる群から選択される1種の金属または2種以上の合金からなる、請求項7に記載のエミッタ。
【請求項15】
前記エミッタは、複数の第1チューブがパイプ形態に配列され形成された第2チューブを含み、
前記第2チューブは、前記複数の第1チューブが前記第1方向と平行な仮想の第2軸を中心に配列され形成された第2内部空間を含み、前記第2内部空間は、前記第1方向の両端部が開放されており、開放された前記両端部の間が連通された構造であり、
前記第1チューブのそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向いている、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項16】
前記第2チューブは、
前記複数の第1チューブのうち一つの第1チューブと隣接する他の第1チューブの側部が互いに隣接した状態で、前記第1チューブが並んで位置した配列が前記第1方向と平行な前記仮想の第2軸を取り囲むよう、反復される構造からなる、請求項15に記載のエミッタ。
【請求項17】
前記第2チューブは、前記第1チューブが重畳されて取り囲まれた部分が存在しないよう、配列が開始される第1チューブおよび終了される第1チューブが互いに隣接し、前記隣接した第1チューブがπ-π相互作用により固定されている、請求項16に記載のエミッタ。
【請求項18】
前記第2チューブは、
配列が終了される第1チューブが配列が開始される第1チューブから離隔された位置にある他の第1チューブに隣接して、配列が開始される第1チューブと終了される第1チューブの間に第1チューブ間に重畳される部分が存在し、
前記重畳される部分にある第1チューブは、π-π相互作用により固定されている、請求項16に記載のエミッタ。
【請求項19】
前記第2チューブは、横断面上において、前記第2内部空間をなす内面と外部に露出される外面の間の厚さが5マイクロメートルないし5000マイクロメートルである、請求項15に記載のエミッタ。
【請求項20】
前記第2チューブは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、前記第2チューブの横断面上の形状の中心部を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが100マイクロメートルないし2センチメートルであり、
前記第1チューブは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、前記第1チューブの横断面上の形状の中心部を通り、前記形状の向かい合う外郭を連結する線分のうち最も長い線分の長さが5マイクロメートルないし200マイクロメートルである、請求項15に記載のエミッタ。
【請求項21】
前記第2内部空間の少なくとも一部を占める導電性ワイヤーをさらに含み、前記第2チューブの少なくとも一部が前記導電性ワイヤーの少なくとも一部を包みながら接触する構造からなる、請求項15に記載のエミッタ。
【請求項22】
前記導電性ワイヤーは、前記第1方向に延長形成され、前記第1方向において、先端側の第1端部、基端側の第2端部、および前記第1端部と前記第2端部の外郭線の間に延長される外周面を含むが、前記導電性ワイヤーの前記第1端部および前記第2端部の間の第1方向の長さは第1高さとして規定され、
前記第1高さと第1方向が一致された状態で、前記第2チューブの少なくとも一部に接触された状態として前記第2内部空間に挿入されている、請求項21に記載のエミッタ。
【請求項23】
前記第2チューブは、前記第1方向において、前記導電性ワイヤーと重畳される領域である第1領域および前記導電性ワイヤーと重畳されていない領域である第2領域と、を含み、
前記エミッタは、前記第2領域の先端部を通じて電子を放出させる、請求項22に記載のエミッタ。
【請求項24】
前記エミッタは、
前記第2チューブの第1方向の両端部の間の長さである第2高さおよび前記第2領域の前記第1方向の両端部の間の長さである第3高さと、を含むが、
前記第2高さに対する前記第3高さの比率(=第3高さ/第2高さ)が0.1ないし0.9である、請求項22に記載のエミッタ。
【請求項25】
前記導電性ワイヤーの前記第2端部と隣接する外周面の少なくとも一部には、第2チューブが存在しないマージン部が設定されている、請求項22に記載のエミッタ。
【請求項26】
前記導電性ワイヤーは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、
前記形状の中心部を通り、前記形状の外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが100マイクロメートルないし2センチメートルである、請求項21に記載のエミッタ。
【請求項27】
前記導電性ワイヤーは、タングステン、銅、ニッケル、ステンレススチール、およびモリブデンからなる群から選択される1種の金属または2種以上の合金からなる、請求項21に記載のエミッタ。
【請求項28】
請求項1項ないし27のうちいずれか一つによるエミッタを含むX-線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(a)によって2019年1月24日大韓民国特許庁に出願された第10-2019-0009430号出願に基づいて優先権を主張し、その開示内容はその全文が本願に参照として含まれる。
【0002】
本発明は、構造的安定性に優れ、電子放出効率が向上されたエミッタ(emitter)およびこれを含むX-線管に関する。
【背景技術】
【0003】
電界放出装置は、真空下においてアノードから放出された電子が加速されてカソードに導かれる構造を有する。このような装置の代表的な例としては、アノードであるエミッタに蛍光物質を付加して可視光線を発生させる照明またはエミッタから放出された電子がカソードである金属ターゲットに衝突してX-線を発生させるX-線管などを挙げられる。
【0004】
このうちX-線管は、肉眼では確認することができない部分の識別のために医療、食品、浄水、および保安などの多様な産業分野に活用されている。
【0005】
X-線管の性能は、エミッタの電子放出性能によって大きく左右され得る。最近の優れた電子放出特性を有するエミッタ材料として、カーボンナノチューブ(carbon nanotube、CNT)が大きな脚光を浴びている。
【0006】
カーボンナノチューブは、金属に準ずる電気伝導性を有し、物理・化学的安定性および機械的強度が非常に優れ、ナノメートル水準の直径およびその直径に比べ1,000倍以上の長さを有する大きな縦横比に基づいて、先端を通じて電子を放出するのに有利である。
【0007】
カーボンナノチューブは、また、電場が印加されると、それに集中される電場とこの優れた電気伝導性に基づいて、先端を通じて電子を放出することができるが、この時に要求される電界強化因子(field enhancement factor)が非常に優れ相対的に低い電界においても電子を容易に放出することができる。
【0008】
このような特性を用いて、電子放出の効率を増大するための目的として、カーボンナノチューブが多様は構造に加工されてエミッタとして活用されている。
【0009】
これに関する一つの例は、複数のカーボンナノチューブがπ-π相互作用として凝集されたカーボンナノチューブ繊維ストランドを活用するものである。
【0010】
前記カーボンナノチューブ繊維は、電子の放出がその先端から行われることが容易であるという利点、即ち、電子が先端に集中して先端が向く特定の方向に放出され得るが、その形態が容易に折曲または屈曲されて耐久性が下がる短所がある。
【0011】
他の側面において、放出された直後に電子が分布する面積は、繊維の断面積に実質的に相応するが、この繊維は、大きな断面積を有する構造に具現し難く、電子の放出範囲が非常に制限的になるという欠点がある。
【0012】
これは、π-π相互作用によってカーボンナノチューブを凝集させることだけでは繊維の直径を一定水準以上に増大させることが困難であるため、このような理由によって、前記カーボンナノチューブ繊維の用途が小型X-線管に限定して使用せざるを得ない。
【0013】
このような点を改善するために、前述した繊維と比較して形状の変形が少なく電子放出範囲が相対的に広いシート(またはフィルム)形態のカーボンナノチューブシートを用いたエミッタが開発された。
【0014】
従来のカーボンナノチューブシートは、カーボンナノチューブペーストを基板の上面に塗布またはスキャタリング(scattering)し、これを乾燥および/または圧着することによって製造され、このように形成されたエミッタは、シートの角とシートに配列されたカーボンナノチューブの先端を通じて電子放出が行われ得る。
【0015】
しかし、カーボンナノチューブペーストを基板の上面に塗布またはスキャタリングする過程においてカーボンナノチューブは、それぞれ他の方向を向きつつ無秩序に配列および凝集されるので、これにより形成されたカーボンナノチューブシートは、実質的にカーボンナノチューブが無秩序に配列された状態として凝集された不織布形状になる。従って、このように形成されたカーボンナノチューブシートに電界を印加すると、カーボンナノチューブシート上に任意の方向に突出形成されたカーボンナノチューブのそれぞれの先端を通じても電子が放出され、特定方向に電子を放出することが困難なだけでなく、電子放出の効率が非常に低いという致命的な欠点がある。
【0016】
従って、前述した技術的な問題を改善することができるエミッタが必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一側面において、エミッタは、複数のカーボンナノチューブが凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むカーボンナノチューブシートからなる第1チューブを含む。
【0018】
第1チューブは、カーボンナノチューブシートが第1方向と平行な仮想の第1軸を中心に巻かれている第1内部空間を有するパイプ形態であり得、このとき、単位ヤーンのそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向く構造であり得る。
【0019】
本発明の他の側面において、エミッタは、複数の第1チューブが配列されてパイプ形態を成している第2チューブを含む。
【0020】
第2チューブは、複数の第1チューブが前記第1方向と平行な仮想の第2軸を中心に配列され形成された第2内部空間を含み、第1チューブのそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向く構造であり得る。従って、第2チューブは、第1チューブが配列され形成された第2内部空間と、第1チューブが含む第1内部空間を含む多重パイプ形態であり得る。
【0021】
このような側面に係るエミッタは、第1チューブ自体であるか、または、第2チューブ自体であり得る。即ち、エミッタは、パイプ形態のカーボンナノチューブ複合構造体として見なすことができる。
【0022】
カーボンナノチューブ複合構造体であるエミッタは、カーボンナノチューブおよび単位ヤーンの先端が前記第1、第2内部空間と平行な仮想の第1、第2軸と同一方向を向き、カーボンナノチューブ複合構造体の先端をなした構造であり得る。
【0023】
これにより、前記構造体の先端を通じて放出される大部分の電子が各カーボンナノチューブおよび単位ヤーンが延長された方向である第1方向に放出され得る利点がある。即ち、本発明のエミッタは、大部分の電子が一定方向に放出されるよう誘導が容易な構造であり、例えば、金属ターゲットと電子の衝突を通じてX-線を発生させるX-線管に適用されたとき、大部分の電子を所望する衝突部分に集中させることができる点において非常に有利な利点がある。
【0024】
これは、通常的なカーボンナノチューブシート上においてカーボンナノチューブが配列された任意の方向に電子を放出することと対比されるものとして、前記側面に係るエミッタは、従来の問題を解消することができる。
【0025】
このような側面に係るエミッタは、また、パイプ形態の構造体が単位ヤーンの一本または数本を通じて電子を放出する従来のカーボンナノチューブ繊維に比べ相対的に広い断面積を有することができる。
【0026】
前記断面積は、電子の放出範囲に相応することができるので、このような側面に係るエミッタは、従来の技術に比べ電子の放出範囲が広く、また、その直径を所望する水準に調節することができる。
【0027】
本発明のまた別の側面において、エミッタは、導電性ワイヤーをさらに含むことができ、この時、エミッタは、前述のカーボンナノチューブ複合構造体、即ち、第1チューブおよび/または第2チューブが導電性ワイヤーの少なくとも一部を覆って接触する構造からなり得る。
【0028】
このようなエミッタは、導電性ワイヤーによってカーボンナノチューブ複合構造体が支持されることで、実際に電子を放出するカーボンナノチューブ複合構造体が折曲または屈曲されるなどの望ましくない現象が抑制され得、従来の認識された問題を解消することができる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明を具体的に説明する前に、本明細書および請求の範囲において使用された用語や単語は、通常的であったり、事前的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、それ自身の発明を最も最善の方法によって説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立ち、本発明の技術的思想に符合する意味と概念によって解釈されなければならない。
【0030】
従って、本明細書に記載された実施形態の構成は、本発明の最も望ましい一つの実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点において、これらを代替することができる多様な均等物と変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
【0031】
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されなければならない。
【0032】
本明細書に使用された用語「投入」は、本明細書内に「流入、注入」と共に混用して記載されることがあり、液体、気体、または熱などを必要な場所に流し込んだり、入れることを意味するものと理解され得る。
【0033】
本明細書に使用された用語「凝集」は、本明細書内に「集合、糾合、結合」と共に混用して記載されることがあり、複数のカーボンナノチューブがπ-π相互作用することにより、互いに対して付いている形態を意味するものと理解され得る。
【0034】
本明細書において、「ヤーン(yarn)」という用語は、カーボンナノチューブが繊維形状に成長されて形成されたり、複数のカーボンナノチューブが繊維形状で凝集、凝集および/または融合され形成されたものをすべて指す。
【0035】
本明細書において、「基端」は、任意の基準方向に対して物体または対象体の一端またはその端に向く方向を意味することができ、「先端」は、前記任意の基準方向に対して他の一端またはその端に向く方向を意味することができる。この時、基端は物体または対象体をなすいずれか一つの端部、末端および/または端部面と非常に隣接した部位を含むことができ、「先端」は、前記基端と対向する位置にある端部、末端および/または端部ないし末端と非常に隣接した部位を含むことができる。これらの基端と先端は、互いに対の概念として認識されてもよく、これらを除いた他の端部、末端および/または端部ないし末端と非常に隣接した部分と区別され得る。
【0036】
一つの実施形態において、本発明は、複数のカーボンナノチューブが凝集され第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むカーボンナノチューブシートからなる第1チューブを含み、
前記第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが前記第1方向と平行な仮想の第1軸を中心に巻かれている、第1内部空間を有するパイプ形態であり、
前記単位ヤーンのそれぞれの先端が、前記軸と同一方向を向くエミッタを提供する。
【0037】
一つの具体的な例において、前記第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが、巻かれる開始部位から終了部位まで重畳される部分が存在しないように巻かれており、
前記開始部位および終了部位は、互いに隣接した状態でπ-π相互作用により固定され得る。
【0038】
一つの具体的な例において、第1チューブは、前記カーボンナノチューブシートが、巻かれている開始部位から終了部位まで重畳される部分が存在するように巻かれており、
前記重畳される部分が互いに隣接した状態で、π-π相互作用により固定され得る。
【0039】
一つの具体的な例において、前記第1チューブは、横断面上において、前記第1内部空間をなす内面と外部に露出される外面との間の厚さが1マイクロメートルないし2000マイクロメートルであり得る。
【0040】
一つの具体的な例において、前記第1チューブは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、
前記第1チューブの横断面上の前記仮想の第1軸を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが3マイクロメートルないし2センチメートルであり得る。
【0041】
一つの具体的な例において、前記第1内部空間は、前記第1方向の両端部が開放されており、開放された前記両端部の間が連通された構造であり得る。
【0042】
一つの具体的な例において、前記エミッタは、前記第1内部空間の少なくとも一部を占める導電性ワイヤーをさらに含み、前記第1チューブの少なくとも一部が、前記導電性ワイヤーの少なくとも一部を包みながら接触する構造からなり得る。
【0043】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーは、
前記第1方向に延長形成され、前記第1方向において先端側の第1端部、基端側の第2端部、および前記第1端部と前記第2端部の外郭線の間に延長される外周面を含むが、前記導電性ワイヤーの前記第1端部および前記第2端部の間の第1方向の長さは、第1高さとして規定され、
前記第1高さと第1方向が一致した状態で、前記第1チューブの少なくとも一部に接触された状態として前記第1内部空間に挿入され得る。
【0044】
一つの具体的な例において、前記第1チューブは、前記第1方向において前記導電性ワイヤーと重畳される領域である第1領域および前記導電性ワイヤーと重畳されない領域である第2領域と、を含み、
前記エミッタは、前記第2領域の先端部を通じて電子を放出させることができる。
【0045】
一つの具体的な例において、前記エミッタは、
前記第1チューブの第1方向の両端部の間の長さである第2高さおよび前記第2領域の前記第1方向の両端部の間の長さである第3高さと、を含むが、
前記第2高さに対する前記第3高さの比率(=第3高さ/第2高さ)が、0.1ないし0.9であり得る。
【0046】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーの前記第2端部と隣接する外周面の少なくとも一部には、第1チューブが存在しないマージン部が設定され得る。
【0047】
一つの具体的な例において、前記カーボンナノチューブシートは、前記複数の単位ヤーンのうち一つの単位ヤーンと隣接する他の単位ヤーンの側部が互いに隣接した状態で、前記単位ヤーンが並んで位置した配列が、前記第1方向に対して垂直な第2方向に反復される配列構造を含むことができる。
【0048】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、前記形状の中心部を通り、前記形状の外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが3マイクロメートルないし2センチメートルであり得る。
【0049】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーは、タングステン、銅、ニッケル、ステンレススチール、およびモリブデンからなる群から選択される1種の金属または2種以上の合金からなり得る。
【0050】
一つの実施形態において、前記エミッタは、複数の第1チューブがパイプ形態として配列され形成された第2チューブを含み、前記第2チューブは、前記複数の第1チューブが前記第1方向と平行な仮想の第2軸を中心に配列され形成された第2内部空間を含み、前記第2内部空間は、前記第1方向の両端部が開放されており、開放された前記両端部の間が連通された構造であり、前記第1チューブのそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向いている構造であり得る。
【0051】
一つの具体的な例において、前記第2チューブは、前記複数の第1チューブのうち一つの第1チューブと隣接する他の第1チューブの側部が互いに隣接した状態で、前記第1チューブが並んで位置した配列が、前記第1方向と平行な前記仮想の第2軸を取り囲むよう、反復される構造からなり得る。
【0052】
一つの具体的な例において、前記第2チューブは、前記第1チューブが重畳され取り囲んだ部分が存在しないよう、配列が開始される第1チューブおよび終了される第1チューブが互いに隣接し、前記隣接した第1チューブがπ-π相互作用により固定され得る。
【0053】
一つの具体的な例において、前記第2チューブは、配列が終了される第1チューブが配列が開始される第1チューブから離隔された位置にある他の第1チューブに隣接して、配列が開始される第1チューブと終了される第1チューブの間に第1チューブ間の重畳される部分が存在し、前記重畳される部分にある第1チューブは、π-π相互作用により固定され得る。
【0054】
一つの具体的な例において、前記第2チューブは、横断面上において前記第2内部空間をなす内面と外部に露出される外面の間の厚さが5マイクロメートルないし5000マイクロメートルであり得る。
【0055】
一つの具体的な例において、前記第2チューブは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、前記第2チューブの横断面上の形状の中心部を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが100マイクロメートルないし2センチメートルであり、前記第1チューブは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、前記第1チューブの横断面上の形状の中心部を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが5マイクロメートルないし200マイクロメートルであり得る。
【0056】
一つの具体的な例において、前記第2内部空間の少なくとも一部を占める導電性ワイヤーをさらに含み、前記第2チューブの少なくとも一部が前記導電性ワイヤーの少なくとも一部を包みながら接触する構造からなり得る。
【0057】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーは、前記第1方向に延長形成され、前記第1方向において先端側の第1端部、基端側の第2端部、および前記第1端部と前記第2端部の外郭線の間に延長される外周面を含むが、前記導電性ワイヤーの前記第1端部および前記第2端部の間の第1方向の長さは、第1高さとして規定され、前記第1高さと第1方向が一致した状態で、前記第2チューブの少なくとも一部に接触された状態として前記第2内部空間に挿入され得る。
【0058】
一つの具体的な例において、前記第2チューブは、前記第1方向において前記導電性ワイヤーと重畳される領域である第1領域および前記導電性ワイヤーと重畳されない領域である第2領域を含み、前記エミッタは、前記第2領域の先端部を通じて電子を放出させることができる。
【0059】
一つの具体的な例において、前記エミッタは、前記第2チューブの第1方向の両端部の間の長さである第2高さおよび前記第2領域の前記第1方向の両端部の間の長さである第3高さを含むが、前記第2高さに対する前記第3高さの比率(=第3高さ/第2高さ)が0.1ないし0.9であり得る。
【0060】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーの前記第2端部と隣接する外周面の少なくとも一部には、第2チューブが存在しないマージン部が設定され得る。
【0061】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーは、横断面上に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、前記形状の中心部を通り、前記形状の外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さが100マイクロメートルないし2センチメートルであり得る。
【0062】
一つの具体的な例において、前記導電性ワイヤーは、タングステン、銅、ニッケル、ステンレススチール、およびモリブデンからなる群から選択される1種の金属または2種以上の合金からなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明に係るカーボンナノチューブシートを製作するためのシート予備体の模式図である。
図2】一つの例に係るシート予備体の縦断面図である。
図3】さらに他の例に係るシート予備体の縦断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブシートの模式図である。
図5】カーボンナノチューブシートの製作方法に関する模式図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係るカーボンナノチューブシートの模式図である。
図7図4に係るカーボンナノチューブシートを撮影した写真である。
図8図6に係るカーボンナノチューブシートを撮影した写真である。
図9】本発明の一つの実施形態に係る第1チューブを含むエミッタの模式図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態に係る第1チューブを含むエミッタの模式図である。
図11】本発明のさらに他の実施形態に係る第1チューブを含むエミッタの模式図である。
図12】本発明のさらに他の実施形態に係る第1チューブを含むエミッタの模式図である。
図13図12の第2チューブを製作するための第1チューブ集合体の模式図である。
図14図13の第1チューブの模式図である。
図15図14の「P」を拡大した平面模式図である。
図16】本発明のさらに他の実施形態に係る第1チューブを含むエミッタの模式図である。
図17】本発明のさらに他の実施形態に係る第1チューブを含むエミッタの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
<カーボンナノチューブシート>
本発明のエミッタは、カーボンナノチューブシートを含むことができる。
カーボンナノチューブシートの製作方法およびこの詳細な構造が図1ないし図8に模式的に図示されている。
【0065】
先ず、図1を参照すると、カーボンナノチューブシートは、シート予備体10から製造され得る。
シート予備体10は、軸を中心に回転する、例えば、ボビンのようなワインディング手段1を用いて複数のカーボンナノチューブを含む第1方向に延長された長尺のヤーン2をワインディングし、巻かれているヤーン2をワインディング手段1から分離することで製造され得る。
【0066】
ヤーン2は、一つのカーボンナノチューブが長く成長した繊維形態または図2のような複数のカーボンナノチューブ3の側面がπ-π相互作用によって互いに凝集して、実質的に円筒形(中央部が満たされた中実円筒形または中央部が空いた中空円筒形)に長く形成された繊維形態として、カーボンナノチューブ3とこれに構成されたヤーン2が互いに同じ方向に整列され得る。
【0067】
前記シート予備体10は、軸と平行な第2方向にヤーン2の側部が連続して隣接するよう巻かれており、内部空間11を有する中空型パイプ形態からなり得る。
【0068】
図2および図3には、シート予備体10の断面が模式的に図示されており、図1と共に参照すると、ヤーン2をワインディングするときにワインディング手段1の外周面に沿ってヤーン2が2周22以上巻かれ得、ワインディング開始部から終了部に至るまで、各周22に巻かれるのに所要されたヤーン2とヤーン2の間の間隔は、実質的に均一であり得る。前記パイプ形態のシート予備体10においても、連続して隣接するよう巻かれているヤーン2とヤーン2の間の間隔は、実質的に均一であり得る。
【0069】
それぞれの周22をシート予備体10に関する一つの単位として見るとき、すべての周22は、連続して第2方向に整列されており、結果的にそれぞれの周22を形成するヤーン2は、連続して第2方向に整列された配列構造を有する。これらの配列構造は、以後説明するカーボンナノチューブシートの配列構造を形成することができる。
【0070】
前記シート予備体10は、また、それ自体で自己支持性を有するものであり得、これは、細かく巻かれているヤーン2が、隣接する他のものとπ-π相互作用することによるものであり得る。
【0071】
以上にて説明したシート予備体10は、ヤーン2の側部が連続して隣接した構造が1つの単層パイプ形態10a(図2)、または、単層パイプ形態10aが2つ以上の重畳されている多層パイプ形態10b(図3)からなり得る。
【0072】
単層パイプ形態10aは、ワインディング手段1上において第2方向にヤーン2の側部が連続して隣接するよう1回巻いて具現することができる。
【0073】
多層パイプ形態10bは、単層パイプ形態10aを形成した後、再び連続して単層パイプ形態10a上から第2方向にヤーン2の側部が連続して隣接するように1回以上追加して巻いて具現することができる。
【0074】
前記のように製造されたシート予備体10を切断および/または圧着すると、板状のカーボンナノチューブシートを製作することができる。
【0075】
例えば、図1のシート予備体10を仮想の軸A-A’に沿って切断する場合、シート予備体10を成していた一つのヤーン2が分離されつつ、複数のヤーン(単位ヤーン)を形成する。このとき、シート予備体10において整列されていたヤーンの配列構造は、カーボンナノチューブシートにおいてもそのまま維持され得る。
【0076】
これに関連して、図4には、切断によって製造されたカーボンナノチューブシートが模式的に図示されている。
【0077】
これに図1ないし図4を共に参照すると、パイプ形態をなすヤーン2が存在しないよう、シート予備体10の少なくとも一部を前記第2方向(図2のA-A’)に切断してカーボンナノチューブシート100を製作することができる。
【0078】
このように製造されたカーボンナノチューブシート100は、シート予備体10の切断から由来し、両側末端部の間が第2方向に垂直な第1方向に延長されている複数の単位ヤーン110を含むことができる。
【0079】
カーボンナノチューブシート100は、また、複数の単位ヤーン110のうち一つの単位ヤーン110と隣接する他の単位ヤーン110の側部が互いに隣接した状態で、単位ヤーン110が並んで位置した配列が第1方向に対して実質的に垂直な第2方向に反復される配列構造を含むことができる。
【0080】
前記のように製造したカーボンナノチューブシートを撮影した写真が図7に図示されている。図7を参照すると、本発明のカーボンナノチューブシートが非常に滑らかな表面形態を有することを確認することができる。
【0081】
一方、図5には、圧着によって製造されたカーボンナノチューブシート100’が模式的に図示されている。
【0082】
圧着は、これによりシート予備体10の一部が折り曲げられつつパイプ形態が平坦に変形されてカーボンナノチューブシート100’を形成する方式である。圧着は、二つの板型部材の間にシート予備体10を配置した次に二つの板型部材をシート予備体10側に加圧する方式または隣接した二つのローラーの間にシート予備体10を通過させて圧延する方式によることができるが、これに限定されるものではない。
【0083】
図1ないし図5を共に参照すると、折り曲げられた部位は、上部からカーボンナノチューブシート100’の上面を眺める時を基準にシート100’の外周辺のうち互いに平行な二つの辺101’をなし得る。
【0084】
折り曲げられた部位において、ヤーン2は、その破断なく実質的に180度の角度に折り曲げられた状態として一体となしつつ、カーボンナノチューブシート100’を構成することができる。これに関する一つの例において、前記内部空間11を間に置き、対面しているシート予備体10の内面が重畳されるよう、前記シート予備体10を圧着してカーボンナノチューブシート100’を製作することができる。
【0085】
カーボンナノチューブシート100’は、圧着によって切断されず、平面上に両側末端部の間が第1方向に延長されている複数の単位ヤーンを含むことができる。
【0086】
カーボンナノチューブシート100’は、また、複数の単位ヤーンのうち一つの単位ヤーンと隣接する他の単位ヤーンの側部が互いに隣接した状態で、単位ヤーンが並んで位置した配列が第1方向に対して実質的に垂直である第2方向に反復される配列構造を含むことができ、単位ヤーンと配列構造は、図4のそれと同じであり得る。参考として、前記のように製造したカーボンナノチューブシートを撮影した写真が図8に図示されている。
【0087】
場合によっては、シート予備体10の少なくとも一部を仮想の軸A-A’に沿って切断した後、切断部位と最長の距離をなすシート予備体10の他の部位、即ち、パイプ形態において、A-A’切断部位の向かい側部位が実質的に180度の角度で折り曲げられ、折曲部位を中心に両側のパイプ面が互いに重畳されるよう圧着することで、カーボンナノチューブシートを製造してもよい。
【0088】
前記によって製造されたカーボンナノチューブシートは、前記配列構造、即ち、複数の単位ヤーンのうち一つの単位ヤーンと隣接する他の単位ヤーンの側部が互いに隣接した状態で、単位ヤーンが並んで位置した配列が第2方向に反復される配列構造が一つの第1形態(図4の100)または前記配列構造が二つ以上重畳されている第2形態(図6の200)からなり得る。
【0089】
本発明の一側面において、第1形態100はワインディング手段1上において第2方向にヤーンの側部が連続して隣接するよう、1回巻いて製造した単層パイプ形態10aのシート予備体10を切断して具現することができる。
【0090】
本発明の他の一側面において、単層パイプ形態10aまたは多層パイプ形態10bのシート予備体10の圧着時、例えば、上部に位置する配列構造の単位ヤーンが下部に位置する配列構造の単位ヤーンの間に挿入され得、このとき、二つの配列構造が圧着によって糾合されて一つの配列構造を有する第1形態100が具現されてもよい。
【0091】
本発明の一側面において、第2形態200は、単層パイプ形態10aまたは多層パイプ形態10bのシート予備体10を圧着して具現することができる。
【0092】
本発明の他の一側面において、第2形態200は、多層パイプ形態10bのシート予備体10を切断して第1形態100を形成し、第1形態が折り曲げられるように圧着して具現することができる。
【0093】
以上の説明したようなカーボンナノチューブシートは、前述したシート予備体と同様に、それ自体が自己支持性を有することで、基材のような別途の支持体がなくともシートの形態を維持することができる。
【0094】
これは、シート予備体においての規則的に整列された状態のヤーンが、本発明に係る配列構造、即ち、単位ヤーンが並んで位置した配列が第2方向に反復される配列構造を形成するためであり、配列構造を有するカーボンナノチューブシートは、単位ヤーン間のπ-π相互作用が優れたことにより得る。
【0095】
本発明において、単位ヤーンの直径は、1マイクロメートルないし700マイクロメートル、詳細には、10マイクロメートルないし300マイクロメートルの範囲から選択され得る。
直径が前記範囲から選択されるとき、単位ヤーンと単位ヤーンの間にπ-π相互作用が極大化され得る。
【0096】
<第1チューブ>
本発明に係るエミッタは、前述したカーボンナノチューブシートが第1方向と平行な仮想の第1軸を中心に巻かれている第1内部空間を有するパイプ形態からなるものを特徴として含み得る。
【0097】
これに関連した一つの例が図9に模式的に図示されている。図9は、例えば、図4によるカーボンナノチューブシートが巻かれた形態の第1チューブであり得る。
【0098】
図9を参照すると、第1チューブ100aは、カーボンナノチューブシート100の単位ヤーン110が延長された方向である第1方向と平行な仮想の第1軸B1-B1’を取り囲むようにこの軸を中心に巻かれており、これにより巻かれた状態で第1軸B1-B1’に沿って連通する第1内部空間102を含み、複数の単位ヤーン110は、このうち一つの単位ヤーン110と隣接する他の単位ヤーン110の側部が互いに隣接した状態で、前記単位ヤーン312が並んで位置した配列が第1方向と平行な仮想の第1軸B1-B1’を取り囲むよう、反復して配列される。
【0099】
即ち、第1内部空間102は、第1方向の両端部が開放されており、開放された両端部の間が連通された構造からなり得る。また、単位ヤーン110は、この先端が前記第1軸B1-B1’と同一方向を向くことができる。
【0100】
このように形成された第1チューブ100aの単位ヤーン110の先端を通じて電子が放出され得る。
【0101】
第1チューブ100aは、実質的に複数のカーボンナノチューブ3が凝集された状態(単位ヤーン)で所定の形態に配列され形成されたカーボンナノチューブ複合構造体であり得、エミッタは前述したような第1チューブ100a自体であり得る。
【0102】
本発明のエミッタは、第1チューブ100aを構成するカーボンナノチューブ3およびこれらが凝集された単位ヤーン110の先端を通じて単位面積内において電子が集中的に放出されるのが容易であり、特にパイプ形態に基づいて互いに異なる単位ヤーン110をなすカーボンナノチューブ3および互いに異なる単位ヤーン110から単位面積内において電子が集中的に放出されるのが容易である。また、縦横比が非常に大きいカーボンナノチューブの特性によって互いに凝集されず、独立している形態のカーボンナノチューブベースエミッタに比べ、本発明のエミッタは、高い自己支持性によって本来の形態を維持するのに有利である。
【0103】
このように、単位面積内において集中的に放出された電子は、例えば、X-線管においてエミッタから放出された電子がカソード(例えば、ベリリウムなどのような金属ターゲット)に到達して単位面積において発生するX-線の総量を極大化する効果を発揮することができ、これによって、本発明のエミッタは、高出力のX-線管の製造において小型化の問題を解決することができる主要な手段になり得る。
【0104】
その反面、例えば、エミッタが板状の通常的なカーボンナノチューブシートの形状である場合、シートの各先端から放出される電子が集中的に放出されるよりも、無作為の方向に放射される現象が優勢に示され得、これは放出された電子が、例えば、カソードに到達する電子密度の均一性を落とし単位面積内の電子の密度を低減させることができる。
【0105】
第1チューブ100aは、例えば、マイクロメートル単位ないしセンチメートル単位の直径を有するワイヤーを第1軸B1-B1’とし、図4において説明したカーボンナノチューブシート100にワイヤーを包むように巻いて製造することができ、続けて、ワイヤーを除去することで、第1軸B1-B1’を沿って連通される第1内部空間102を有するパイプ形態が具現され得る。
【0106】
図9には、横断面上に実質的に円形を有するパイプ形態の第1チューブ100aを図示しているが、この他にも、円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有することができる。
【0107】
第1チューブ100aにおいて、横断面上の形状の中心部を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さL1は、3マイクロメートルないし2センチメートル、詳細には100マイクロメートルないし1センチメートルであり得る。
【0108】
前記線分の長さL1が前記範囲を下回る場合、第1内部空間102を間に置いている単位ヤーン110が過度に近接するようになるため相互作用することがあり、これにより第1内部空間が閉塞され得る。
【0109】
また、エミッタから放出された直後の電子が分布する面積は、第1チューブ100aの断面積に実質的に相当するが、前記線分の長さL1が前記範囲を下回り第1チューブ100aの断面積が狭くなると、電子の放出範囲が非常に限定的になり得る点においても特に望ましくない。
【0110】
前記線分の長さL1が前記範囲を上回る場合、第1内部空間が占める体積が増加することになり、これは第1チューブ100aの形態が折り曲げられたり、屈曲されるなどの構造的側面に対して望ましくない様態につながることがあり、効果的な側面において、前述した電子の集中放出効果が実質的に発現されないことがあるため特に望ましくない。
【0111】
前記第1チューブ100aは、巻かれる開始部位から終了部位まで重畳される部分が存在しないように巻かれた構造であり得る。この時、前記開始部位および終了部位は、それぞれの単位ヤーン110a、110bであり得、これらは互いに隣接してπ-π相互作用により固定され得る。
【0112】
これとは異なり、第1チューブは100bは、カーボンナノチューブシートが巻かれている開始部位110cから終了部位110dまで重畳される部分が存在するように巻かれる構造も可能であり、これに関する第1チューブ110bの横断面形状が図10に開示されている。
【0113】
図10に係る第1チューブ110bは、また、図9のそれと実質的に同一方法として製造され得、第1内部空間、線分の長さ、単位ヤーンの配列構造などにおいて実質的に同一の構造を有することができるが、図9場合、シートを第1方向と平行な仮想の第1軸B1-B1’を取り囲むように第1軸B1-B1’を中心に単回巻いて具現すると、図10の場合、2回またはそれ以上を巻いて具現することのできる点に差がある。
【0114】
参考として、図6に係る多層に形成されたカーボンナノチューブシート200の場合、シートを第1方向と平行な仮想の第1軸B1-B1’を取り囲むよう、第1軸B1-B1’を中心に単回巻いて具現しても、図10に図示されたものと同一の多層構造を具現することができる。
【0115】
一方、本発明に係るエミッタは、第1チューブと共に導電性ワイヤーをさらに含むことができる。
これに関して、図11には、本発明の一つの実施形態に係るエミッタの模式図が示されている。
【0116】
図9および図11を共に参照すると、エミッタ400は、図11に図示された第1チューブ100aおよび導電性ワイヤー420を含むことができる。
【0117】
エミッタ400は、第1チューブ100aの第1内部空間102の少なくとも一部を占める導電性ワイヤー420からなっており、第1チューブ100aの少なくとも一部が導電性ワイヤー420の少なくとも一部を包みながら接触する構造である。
【0118】
導電性ワイヤー420は、第1方向に延長された形状であり、第1方向において先端側の第1端部421、基端側の第2端部422、および第1端部421と第2端部422の外郭線の間に延長される外周面424を含む。このとき、導電性ワイヤー420の第1端部421および第2端部422の間の第1方向の長さは、第1高さH1として規定され得る。
【0119】
エミッタ400は、例えば、図4に図示されたカーボンナノチューブシート100を導電性ワイヤー420に接触した状態に巻いて製造され得る。
【0120】
具体的には、カーボンナノチューブシート100をなす単位ヤーン110が延長された第1方向と導電性ワイヤー420の第1高さH1方向が一致した状態で、カーボンナノチューブシート100は、第1方向に対して垂直な第2方向に導電性ワイヤー420の外周面424の少なくとも一部に接触し、外周面424に沿って巻かれ得る。
【0121】
結果的にエミッタ400は、導電性ワイヤー420の第1高さH1と第1チューブ100aの第1内部空間102と平行な第1方向が一致した状態で、導電性ワイヤー420が第1チューブ100aの少なくとも一部に接触された状態として第1内部空間102に挿入されている構造であり得る。
【0122】
ここで、第1チューブ100aは、第1方向において導電性ワイヤー420と重畳される領域である第1領域160および導電性ワイヤー420と重畳されていない領域である第2領域180を含むことができる。エミッタ400は、第1チューブ100aの第2領域180の先端部430を通じて電子を放出することができる。
【0123】
エミッタ400は、また、第1チューブ100aの第1方向を基準に両端部の間、即ち、第2領域180にある先端部430から、第1領域160にある基端部(または末端部)の長さである第2高さH2および第1方向を基準に第2領域180の両端部の間の長さである第3高さH3を含むことができる。
【0124】
参考として、第2領域180の両端部の間の長さとは、第1領域160と第2領域180が導電性ワイヤー420の第1端部421を基準に区画されるので、第2領域180の先端部430から第1端部421と対応する位置にある第2領域180の一部までを意味することができる。
【0125】
ここで、本発明に係るエミッタ400は、第2高さに対する第3高さの比率(=第3高さ/第2高さ)が0.1ないし0.9、詳細には0.2ないし0.7、さらに詳細には0.2ないし0.4であり得る。
【0126】
エミッタ400の第2高さに対する第3高さの比率が前記比率の範囲を下回ると、電子が放出される第2領域180の先端部430が導電性ワイヤー420に過度に近接することになるが、これは先端部430から放出された電子が導電性ワイヤー420に吸収され電子放出効率を大幅に低下させ得る。
【0127】
その反面、エミッタ400の第2高さに対する第3高さの比率が前記比率の範囲を上回ると、導電性ワイヤー420に接触して支持される第1領域160の面積が狭くなり、これにより第2領域180において折曲または屈曲される変形が発生されることがあるので、耐久性の側面において望ましくない。
【0128】
前記導電性ワイヤー420の前記第2端部422と隣接する外周面424の少なくとも一部には、第1チューブ100aが存在しないマージン部426が設定され得る。
【0129】
このマージン部426は、エミッタ400が、例えば、X-線管として活用されるとき、チューブ内ホルダーなどに直接または間接的に固定されている部分であり得、第1チューブ100aに電流を通電させる通電経路として作用し得る。
【0130】
前述したような第1チューブは、横断面上において、前記第1内部空間をなす内面と外部に露出される外面の間の厚さが1マイクロメートルないし2000マイクロメートル、詳細には30マイクロメートルないし300マイクロメートル、より詳細には30マイクロメートルないし100マイクロメートルであり得る。
【0131】
前記範囲を下回る厚さは、カーボンナノチューブシートの剛性低下により、パイプ形態がよく維持され得ず、前記範囲を上回るものは、製造費用対比効用性が低いので、経済的側面において望ましいと見なすことができない。
【0132】
<第2チューブ>
本発明に係るエミッタは、複数の第1チューブがパイプ形態として配列され形成された第2チューブを含むことができる。
【0133】
これに関連して、図12ないし図15には、第2チューブに関する模式図が図示されている。
【0134】
先ず、図12を参照すると、第2チューブ300は、複数の第1チューブ310が第1方向と平行な仮想の第2軸B2-B2’を中心に配列され形成された第2内部空間302を含む。
【0135】
具体的に、第2チューブ300は、複数の第1チューブ310のうち一つの第1チューブ310と隣接する他の第1チューブ310の側部が互いに隣接した状態で、第1チューブ310が並んで位置した配列(例えば、図13の300a)が第1方向と平行な前記仮想の第2軸B2-B2’を取り囲むよう、反復される構造からなり得る。参考として、第1チューブ310の側部は、第1チューブ310の両端部の間から延長されている面において任意の部分を意味することができる。
【0136】
このとき、第2内部空間302は、前記第1方向の両端部が開放されており、開放された前記両端部の間が連通された構造であり、第1チューブ310のそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向いている。
【0137】
第2チューブ300は、例えば、図13に図示されたように、複数の第1チューブ310が所定の形態に配列された集合体300aを用いて製造され得る。
【0138】
これに図13ないし図15を参照すると、集合体300aは、パイプ形態の複数の第1チューブ310を含む。
【0139】
第1チューブ310は、複数の単位ヤーン312のうち一つの単位ヤーン312と隣接する他の単位ヤーン312の側部が互いに隣接した状態で、前記単位ヤーン312が並んで位置した配列が第1方向と平行な仮想の第3軸B3-B3’を取り囲むよう、反復される構造からなり得る。
【0140】
第1チューブ310は、例えば、マイクロメートル単位ないしセンチメートル単位の直径を有するワイヤーを第3軸B3-B3’として、図4または図6において説明したカーボンナノチューブシート100と同様であり、代わりに厚みと幅がより小さい任意のカーボンナノチューブシートでワイヤを包むように巻いて製造することができ、続けて、ワイヤーを除去することで、第3軸B3-B3’を沿って連通される第1内部空間320を有する第1チューブが具現され得る。
【0141】
第1チューブ310は、横断面上に実質的に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有することができ、第1チューブ310の横断面上の形状の中心部を通り、形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分の長さL3が5マイクロメートルないし200マイクロメートルであり得る。
【0142】
前記線分の長さL3が前記範囲を下回る場合、第1内部空間320を間に置いている単位ヤーンが過度に近接するようになるため相互作用することがあり、これにより第1内部空間320が閉塞され得る。
【0143】
その反面、前記線分の長さL3が前記範囲を上回る場合、第1内部空間が占める体積が増加することになり、これは第2チューブ300の形態が折り曲げられたり、屈曲されるなどの構造的側面に関して望ましくない様態につながることがあり、効果的な側面において、前述した電子の集中放出効果が実質的に発現されないことがあるため特に望ましくない。
【0144】
第1チューブ310において、単位ヤーン312と単位ヤーン312は、隣接した状態でπ-π相互作用によって固定され、巻かれている開始部位と終了部位に該当する単位ヤーン312、または、π-π相互作用によって固定され得る。
【0145】
単位ヤーン312は、一つのカーボンナノチューブが長く成長した繊維形態または図15のように、複数のカーボンナノチューブ3の側面がπ-π相互作用によって互いに凝集して円筒形(中央部が満たされた中実円筒形または中央部が空いた中空円筒形)に長く形成された繊維形態として、カーボンナノチューブ3とこれらによって構成された単位ヤーン312が互いに同じ方向に整列され得る。
【0146】
図13に図示された集合体300aは、このような構造の第1チューブ310を複数含む構造からなっており、具体的には、複数の単位のチューブのうち一つの第1チューブ310と隣接する他の第1チューブ310の側部が互いに隣接した状態で、前記単位のチューブ310が並んで位置した配列が前記第1方向に対して垂直な第2方向に反復される配列構造を含むことができる。このとき、第1チューブ310と第1チューブ310は、π-π相互作用によって互いに固定され得る。
【0147】
場合によっては、隣接する第1チューブ310の間に導電性接着剤、例えば、カーボンナノチューブペースト、銀ペースト、および/またはπ-π相互作用を強化することができる溶媒を付加して隣接する第1チューブ310間の接着を直接図ったり、π-π相互作用を向上させることができる。
【0148】
前記溶媒は、エタン、エチレン、エタノール、メタン、メタノール、プロパン、プロペン、プロパノール、アセトン、キシレン、一酸化炭素、クロロホルム、アセチレン、エチル酢酸、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコール、エチルポルメイト、メッシュレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、カーボンテトラクロライド、ナフタレン、アントラセン、ジクロロメタン、ケトン、エーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、ペンテン、ヘキセン、ベンゼン、四塩化炭素、およびトルエンからなる群から選択される1種以上の有機溶媒あり得るが、これらのみに限定されるものではない。
【0149】
以上で説明したような第2チューブ300は、第1チューブ310が配列されることによる第2内部空間302および第1チューブ310の単位ヤーン312が配列されることによる第1内部空間320を含み、カーボンナノチューブ3、単位ヤーン312、第1チューブ310、および第2チューブ300のすべての先端が第2軸B2-B2’と同一方向を向いている。
【0150】
前記先端のすべてを通じて電子が放出され得、本発明に係る一つの例において、エミッタは、このように形成された前記第2チューブ300自体であり得、第2チューブ300は、実質的に複数のカーボンナノチューブ3が凝集された状態(単位ヤーン)において所定の形態に配列され形成された第1チューブが再び所定の形態に配列された、他の形態のカーボンナノチューブ複合構造体であり得る。
【0151】
このような第2チューブ300からなるエミッタは、電子の放出経路がカーボンナノチューブ3、これらが凝集された単位ヤーン312、およびこれらの単位ヤーンからなる第1チューブ310を含む複合的な構造であり、それぞれから放出された電子が単位面積内においてより確実に均一性を維持することができる。
【0152】
このように、単位面積内において集中的に放出された電子は、例えば、X-線管においてエミッタから放出された電子がカソードに到達して単位面積において発生するX-線の総量を極大化する効果を発揮することができ、高出力のX-線管の製造において、小型化の問題を解決することができる主要な手段になり得る。
【0153】
これが本発明のエミッタが相対的により低い電界下においても、非常に優れた電子放出効率性を発現する主要な利点である。また、多重パイプ形態に基づいた前記エミッタは、(i)単位チューブをなす互いに異なる単位ヤーンにおいての電子集中放出効果および(ii)互いに異なる単位チューブにおいての電子集中放出効果が複合的に作用して、前述した効果が極大化され得る。
【0154】
その反面、例えば、エミッタが単純な板状の通常的なカーボンナノチューブシート形状である場合、シートの各先端から放出される電子が集中的に放出されるよりも、無作為の方向に放射される現象が優勢に示され得、これは、放出された電子が、例えば、カソードに到達して衝突する電子の総量を低減させることがある。
【0155】
前記第2チューブ300は、例えば、マイクロメートル単位ないしセンチメートル単位の直径を有するワイヤーを軸B-B’として、図13において説明した集合体300aにワイヤを包むように巻いて製造することがことができ、続いて、ワイヤーを除去することで、軸B2-B2’を沿って連通される第2内部空間302を有し、第1チューブ310の第1内部空間320も含む多重パイプ形態が具現され得る。
【0156】
第2チューブ300は、横断面上に実質的に円形、楕円形、半円形、および多角形からなる群から選択される一つの形状を有し、第2チューブ300の横断面上の形状の中心部を通り、前記形状の向き合う外郭をつなぐ線分のうち最も長い線分(図12のL2)の長さが100マイクロメートルないし2センチメートルであり得る。
【0157】
前記線分の長さL2が前記範囲を下回る場合、第2内部空間302を間に置いている第1チューブ310が過度に近接するようになるため相互作用することがあり、これにより、第2内部区間302が閉塞され得る。
【0158】
また、エミッタから放出された直後の電子が分布する面積は、第2チューブ300の断面積に実質的に相応するが、前記線分の長さL2が前記範囲を下回り第2チューブ300の断面積が狭くなると、電子の放出範囲が非常に限定的であり得る点においても、特に望ましくない。
【0159】
前記線分の長さL2が前記範囲を上回る場合、第2内部空間302が占める体積が増加することがあり、これは第2チューブ300の形態が折り曲げられたり、屈曲されるなどの構造的な側面に関して望ましくない様態につながることがあり、効果的側面において、前述した電子の集中放出効果が実質的に発現されないことがあるため、特に望ましくない。
【0160】
図12においては、第1チューブ310が重畳され取り囲んだ部分が存在しないよう、配列が開始されている第1チューブSおよび終了される第1チューブFが互いに隣接し、隣接した第1チューブS,Fがπ-π相互作用により固定された構造の第2チューブ300が図示されているが、重畳された部分が存在する第2チューブも可能である。
【0161】
具体的には、図16を参照すると、第2チューブ300’は、第2軸B2-B2’を中心に、配列が終了される第1チューブF’が配列が開始される第1チューブS’から離隔された位置にある他の第1チューブF’’に隣接して、配列が開始される第1チューブS’と終了される第1チューブの間F’に第1チューブ間が重畳されている部分が存在し得る。
このとき、重畳される部分にある第1チューブすべてがπ-π相互作用により固定され得る。
【0162】
一方、本発明に係るエミッタは、第2チューブと共に導電性ワイヤーをさらに含むことができる。これに関する模式図が図17に図示されている。
【0163】
図17図12ないし15と共に参照すると、エミッタ500は、図12に図示された第2チューブ300および図17に図示された導電性ワイヤー520を含む。
【0164】
エミッタ500は、第2チューブ300の第2内部空間302の少なくとも一部を占める導電性ワイヤー520を含み、第2チューブ300の少なくとも一部が導電性ワイヤー520の少なくとも一部を包みながら接触する構造からなる。
【0165】
導電性ワイヤー520は、第1方向に延長形成されており、第1方向において先端側の第1端部521、基端側の第2端部522、および前記第1端部521と前記第2端部522の外郭線の間に延長される外周面524を含むが、導電性ワイヤー520の第1端部521および第2端部522の間の第1方向の長さは、第1高さH1として規定され得る。
【0166】
エミッタ500は、第2チューブ300の第2内部空間302が連通された方向である第1方向と導電性ワイヤー520の第1高さH1の方向が一致した状態で、第2チューブ300の少なくとも一部に接触された状態に導電性ワイヤー520が第2内部空間302に挿入された構造である。
【0167】
ここで、第2チューブ300は、第1方向において導電性ワイヤー520と重畳される領域である第1領域360および導電性ワイヤー520と重畳されない領域である第2領域380を含むことができる。エミッタ500は、第2チューブ300の第2領域380の先端部430を通じて電子を放出させることができる。
【0168】
エミッタ500は、また、第2チューブ300の第1方向を基準に両端部の間、即ち、第2領域380にある先端部430から、第1領域360にある基端部(または末端部)の長さである第2高さH2および第1方向を基準に第2領域380の両端部の間の長さである第3高さH3を含むことができる。
【0169】
参考として、第2領域380の両端部の間の長さとは、第1領域360と第2領域380が導電性ワイヤー520の第1端部521を基準に区画されるので、第2領域380の先端部430から第1端部521と対応する位置にある第2領域380の一部までを意味し得る。
【0170】
ここで、本発明に係るエミッタ500は、第2高さに対する第3高さの比率(=第3高さ/第2高さ)が0.1ないし0.9、詳細には0.2ないし0.7、さらに詳細には0.2ないし0.4であり得る。
【0171】
エミッタ500の第2高さに対する第3高さの比率が前記比率の範囲を下回ると、電子が放出される第2領域380の先端530が導電性ワイヤ520に過度に近接することになるが、これは先端530から放出された電子が導電性ワイヤー520に吸収されて、電子放出効率を大幅に低下させ得る。
【0172】
その反面、エミッタ500の第2高さに対する第3高さの比率が前記比率の範囲を上回ると、導電性ワイヤー520に接触して支持される第1領域360の面積が狭くなり、これによって第2領域380における折曲または屈曲される変形が発生されることがあるため、耐久性の面において望ましくない。
【0173】
前記導電性ワイヤー520の前記第2端部522と隣接する外周面424の少なくとも一部には、第2チューブ300が存在しないマージン部526が設定され得る。
【0174】
このマージン部526は、エミッタ500が、例えば、X-線管として活用されるとき、チューブ内ホルダーなどに直接または間接的に固定されている部分であり得、第2チューブ300に電流を通電させる通電経路として作用し得る。
【0175】
以上、本発明の実施形態を参照して説明したが、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内から多様な応用および変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明のエミッタは、複数のカーボンナノチューブが凝集されて第1方向に延長された構造の単位ヤーンを複数含むカーボンナノチューブシートからなる第1チューブを含むことができる。
【0177】
第1チューブは、カーボンナノチューブシートが第1方向と平行な仮想の第1軸を中心に巻かれている第1内部空間を有するパイプ形態であり得、このとき単位ヤーンのそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向く構造であり得る。
【0178】
本発明のエミッタは、また、複数の第1チューブが配列されてパイプ形態を成している第2チューブを含むことができる。
【0179】
第2チューブは、複数の第1チューブが前記第1方向と平行な仮想の第2軸を中心に配列され形成された第2内部空間を含み、第1チューブのそれぞれの先端が前記軸と同一方向を向く構造であり得る。従って、第2チューブは、第1チューブが配列され形成された第2内部空間と、第1チューブが含む第1内部空間を含む多重パイプ形態であり得る。
【0180】
このような側面に係るエミッタは、第1チューブ自体であったり、または、第2チューブ自体であり得る。即ち、エミッタは、パイプ形態のチューブ構造体として見なすことができる。
【0181】
このようなエミッタは、カーボンナノチューブおよび単位ヤーンの先端が前記第1、第2内部空間と平行な仮想の第1、第2軸と同一方向を向き、チューブ構造体の先端をなすことができ、これは前記チューブ構造体の先端を通じて大部分の電子が各カーボンナノチューブおよび単位ヤーンが延長された方向である第1方向に放出され得る利点がある。即ち、本発明のエミッタは、大部分の電子が一定方向に放出されるよう誘導しやすい構造であり、例えば、前述のエミッタが金属ターゲットと電子の衝突を通じてX-線を発生させるX-線管に適用されたとき、大部分の電子を所望する衝突部分に集中させることができる点において非常に有利な利点がある。
【0182】
これは、通常的なカーボンナノチューブシートを用いた従来のエミッタがシート上におおいてカーボンナノチューブが配列された任意の方向に電子を放出することと対比されるものとして、前記側面に係るエミッタは従来の問題を解消することができる。
【0183】
本発明のエミッタは、また、パイプ形態のチューブ構造体が有する先端を通じて電子を放出するので、単位ヤーンを通じて電子を放出する従来のカーボンナノチューブ繊維に比べ電子の放出範囲を比較的広く形成することができ、パイプ形態の直径を調節して放出範囲を所望することにより、容易に調節することができる。
【0184】
本発明のエミッタは、また、導電性ワイヤーをさらに含むことができる。導電性ワイヤーは、第1チューブおよび第2チューブを支持して、電子が放出される第1チューブと第2チューブが屈曲されたり折り曲げられる非-望ましい現象を抑制することができ、これに本発明のエミッタは、従来認識された問題を解消することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【図
【図
【図
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【図
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【図
【図
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【図
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【図
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【国際調査報告】