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特表2022-518546無機および有機汚染物質の除去のための高機能性炭素材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】無機および有機汚染物質の除去のための高機能性炭素材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20220308BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220308BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20220308BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220308BHJP
   C01B 32/354 20170101ALI20220308BHJP
【FI】
B01J20/20 B
C02F1/28 B
A61L9/014
B01J20/28 Z
C01B32/354
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543294
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2020014779
(87)【国際公開番号】W WO2020154493
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】62/796,785
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325396
【氏名又は名称】トゥサール・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】TUSAAR CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ゲイリー エル
(72)【発明者】
【氏名】ラニク,ティモシー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェイツ,ジョージ イー
(72)【発明者】
【氏名】スタル,ディーン ピー
(72)【発明者】
【氏名】カンナ,ゴータム
【テーマコード(参考)】
4C180
4D624
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA16
4C180CC04
4C180EA13X
4C180EA14X
4D624AA02
4D624AB04
4D624AB16
4D624BA02
4D624BA03
4G066AA04B
4G066AA05B
4G066AA53D
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA02
4G066CA10
4G066CA46
4G066DA01
4G066DA07
4G146AA06
4G146AC28A
4G146AC28B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD31
4G146CB12
4G146CB14
4G146CB32
(57)【要約】
本発明は、約1.5~約9の平衡pH (pHeq)、約0.8~約3 mequiv./g-Cの総酸官能度 (TAF)、および約70 cmmol/kg-Cを超えるカチオン収着能を有する炭素材料を提供する。前記炭素材料は、電解質溶液と接触した炭素材料のpHeqを決定することによって特定される。前記炭素材料は、酸-塩基滴定によるTAFの定量化によって特定される。前記炭素材料は、前記酸-塩基滴定からプロトン結合曲線を生成することによって特定される。前記炭素材料は、プロトン結合曲線から実測f(pK)分布を積分することによって特定される。前記炭素材料は、平衡等温線を決定し、前記データをカチオン収着能に変換することによって特定される。前記炭素材料は、前記炭素材料のカチオン性収着能を、前記炭素材料を特定するための所定範囲のカチオン性収着能と比較することによって特定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特有の物理的および化学的特性を有する炭素材料であって、
約1.5~約9の間の平衡pH (pHeq);
約0.8~約3 mequiv./g-Cの間の総酸官能度(TAF);および
約70 cmmol/kg-Cより大きなカチオン収着能
を含む炭素材料。
【請求項2】
前記カチオン収着能が、鉛 (Pb)溶液に暴露することによって定量される、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項3】
前記Pb溶液は、約6.5のpHである、請求項2に記載の炭素材料。
【請求項4】
前記カチオン収着能が、約10 ppbの溶液中平衡鉛 (Pb)濃度にて決定される、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項5】
気液相環境から無機および有機成分を吸着する能力をさらに含む、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項6】
前記pHeqが2~8の間である、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項7】
前記TAFが1.0~3 mequiv./g-Cの間である、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項8】
汚染物質除去実行用の炭素材料であって、
電解質溶液と接触した炭素材料の平衡pH (pHeq)を決定すること;
酸-塩基滴定によって総酸官能度(TAF)を定量すること;
前記酸-塩基滴定からプロトン結合曲線 (PBC)を生成すること;
前記プロトン結合曲線から計算 f(pK) 分布を統合すること;
等温吸着データを有する平衡等温線を決定すること;
前記等温吸着データを、前記炭素材料のモル質量および荷電数を用いて、カチオン収着能に変換すること;および
前記炭素材料のカチオン収着能を、前記炭素材料を特定する所定の範囲のカチオン収着能と比較すること
を含む物理的および化学的特性の測定によって特定される炭素材料。
【請求項9】
前記酸-塩基滴定が、NaOHおよびKOH滴定液で行われる、請求項8に記載の炭素材料。
【請求項10】
前記滴定液が0.05~0.2モラーの間である、請求項9に記載の炭素材料。
【請求項11】
前記滴定が0.05~0.1 ml/滴下速度で行われる、請求項10に記載の炭素材料。
【請求項12】
さらに、滴定液の滴下間に120~180秒間の平衡時間を含む、請求項11に記載の炭素材料。
【請求項13】
前記酸-塩基滴定が窒素ガス雰囲気下で、pH1.5~pH12の間で行われる、請求項8に記載の炭素材料。
【請求項14】
前記電解質溶液が硝酸ナトリウム溶液である、請求項8に記載の炭素材料。
【請求項15】
前記TAFが、炭素のグラムあたりミリ当量で測定される、請求項8に記載の炭素材料。
【請求項16】
さらに、約1.5~約9の間の平衡pH (pHeq)、約0.8~3 mequiv./g-Cの間の総酸官能度(TAF)および約70 cmmol/kg-Cより大きなカチオン収着能を含む、請求項8に記載の炭素材料。
【請求項17】
約1.5~約9の間の平衡pH (pHeq)、約0.8~3 mequiv./g-Cの間の総酸官能度(TAF)および約70 cmmol/kg-Cより大きなカチオン収着能を有する汚染物質除去実行用炭素材料であって、前記炭素材料が、さらに、
約30~120分間、電解質溶液と接触した炭素材料の平衡pH (pHeq)を決定すること;
酸-塩基滴定によって総酸官能度(TAF)を定量し、前記TAFが炭素のグラムあたりミリ当量で測定されること;
前記酸-塩基滴定からプロトン結合曲線 (PBC)を生成すること;
前記プロトン結合曲線から計算 f(pK) 分布を統合すること;
等温吸着データを有する平衡等温線を決定すること;
前記等温吸着データを、前記炭素材料のモル質量および荷電数を用いて、カチオン収着能に変換すること;および
前記炭素材料のカチオン収着能を、前記炭素材料を特定する所定の範囲のカチオン収着能と比較すること
を含む方法によって特定される、炭素材料。
【請求項18】
前記酸-塩基滴定がNaOHおよびKOH滴定液で行われ、前記滴定液が0.05~0.2モラーであり、前記滴定が0.05~0.1 ml/滴下速度で行われ、かつ、前記滴定が、窒素ガス雰囲気下、pH1.5~pH12の間で行われる、請求項17に記載の炭素材料。
【請求項19】
前記酸-塩基滴定が、さらに、滴定液の滴下間に120~180秒間の平衡時間を含む、請求項17に記載の炭素材料。
【請求項20】
前記電解質溶液が0.01モラー硝酸ナトリウム溶液である、請求項17に記載の炭素材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2019年1月25日に出願された「無機および有機汚染物質の除去のための高機能性炭素材料」と題する、Carlsonらの米国仮特許出願第62/796,785号の優先権利益を主張し、出典明示により、そこに記載された全てを通して全体が本明細書の一部とみなされる。
【背景技術】
【0002】
活性炭およびカーボンチャー(木炭)材料は、何十年もの間、悪臭、色、味のような不純物を除去するため、ならびに、塩素系溶媒その他の産業汚染物質、農薬および選択された重金属のような有機不純物を除去することによって飲料水の安全性を向上するために用いられてきた。多大なる労力が、暴露表面上の機能性を増強することによって、炭素材料を用いる金属や不純物除去の向上に向けられてきた。例えば、吸着および酸-塩基滴定;またはFTIRおよびXPSを含む、より高度な技術を用いた化学的/物理的機能性の解明が、生成物の最適化、開発および特定に重要である。残念ながら、高度な技術は、時間がかかり、かつ、高価であり、観察された材料性能に関して難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炭素材料の表面の表面改質および機能化を実行して、材料の物理的および化学的性質を変化させて、有機物、悪臭、色および塩素のような酸化剤を除去する性能を促進することができる。様々な方法を採用して、炭素材料表面上に機能特性を生じさせることができ、限定されないが、液体および気体酸化剤を利用する酸化、材料表面上への官能基のグラフト化、リガンドの物理吸着、蒸着および/または炭素活性化プロセス中に成長した官能基が含まれる。
【0004】
これらの改質炭素材料の識別は、これらの炭素材料の製造者が、専売炭素材料が承認なしに(例えば、「闇市」で)販売または頒布されていないことを保証するために重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
広汎な活性化および活性化後処理技術に付される炭素材料の様々な測定された化学的および物理的特性の丹念な調査は、特定の化学的/物理的特性が互いに関連しているとき、明確に区別される差異を示す。例えば、簡単な分析技術からのパラメータ間の関係は、炭素材料との接触後に、酸-塩基滴定、吸着等温線、および溶液のpHを測定すると、対象のある炭素材料について特有の明確なパラメータ空間を与える。異なる炭素材料に対するこれらのパラメータの比較を行って、ある製造業者の炭素材料と、他の製造業者のものとを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、活性炭材料の例示的な滴定曲線を示す。
図2図2は、活性炭材料由来のプロトン結合曲線 (PBC)の例示を示す。
図3図3は、プロトン結合曲線への近似スプライン関数log(G)の粗さ対適合度のプロットである。
図4図4は、明確な複数のpK値を持つ既知の有機酸を用いる確定された手順の実例的な検証を示す。
図5図5は、改質活性炭材料について分析されたpK分布の実例を示す。
図6図6は、改質炭素材料のグラムあたり吸着したPbの質量対溶液中のPbの平衡濃度のプロットである。
図7図7は、2から11.2の間のpHeq範囲、0.2から2.3 mequiv/g-CのTAFの範囲、および2から275 cmmol/kg-C超の間のカチオン収着能で試験した、広汎な未処理および処理炭素材料の実例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実例として、限定されないが、滴定データ、吸着等温線データおよび平衡接触pHによって決定された総酸性度などの分析技術を用いて、様々な製造業者からの改質炭素材料を特徴付けし、識別し、区別する。
【0008】
本開示は、他の製造業者の(処理または未処理の)炭素材料に対して、様々な技術で処理された出願人の炭素材料に特異的な炭素表面の化学的および物理的特性を特定することに関する。これらの測定された特性を組み合わせて、ある炭素材料を別の炭素材料と識別することができる。
【0009】
ある実例において、特性の独特の組合せが、出願人のプロセスおよび炭素表面処理方法を用いて製造された炭素材料を特定する。その炭素材料は、約1.5~約9の平衡pH (pHeq);約0.8~約3 mequiv./g-Cの総酸官能度 (TAF);および約70 cmmol/kg-Cより高いカチオン収着能を有する。
【0010】
本開示による炭素材料の分析は、酸-塩基滴定、元素分析、ヨウ素数、メチレンブルー数、および熱重量分析のような標準化分析技術によるものであり、定量的および定性的に(例えば、Boehm滴定によって)、活性炭表面の特性を決定する。
【0011】
そのようなひとつの分析技術、酸-塩基滴定は、pH応答対添加した滴定液の量をモニターすることを含む。滴定液濃度、滴下速度、測定時間の長さなど、滴定方法の間に採用され得る差異があるが、結果は、炭素材料の表面上の化学機能を決定するのに用いる得る情報を提供する。
【0012】
この滴定情報を、次いで、各炭素材料に特有の「プロトン結合曲線 (PBC)」に転換する。この曲線は、炭素材料がその表面にプロトン[H+]を吸着したり、そこから放出したりする能力についての情報を提供する。各材料由来のPBCを、次いで、数学的に解析して、材料の機能的「フィンガープリント」を提供するpK値の分布対pHを得る。
【0013】
総酸官能度 (TAF)の総量は、pK値の分布から決定され、希釈されたイオン性水溶液中のpH平衡およびカチオン収着能のような他の測定可能な数量に関連する。これらの測定可能な数量は、炭素材料に適用される処理方法の知識を必要としない。
【0014】
水溶液および非水溶液中の無機/有機汚染物質の除去に対する炭素材料の実測特性間の相関は、各炭素材料につき、特有かつ特定可能なパラメータ範囲を示し、炭素メディアを他から区別する。
【0015】
活性炭表面特性を決定する方法において、酸-塩基滴定、平衡pH測定、および数学的データ分析を行って、未処理および処理炭素材料の目的とする表面特性をキャラクタライズする。このキャラクタリゼーション法は、炭素材料間の識別を可能とする表面および化学的特性の詳細な分析を与える。
【0016】
炭素材料の測定可能な表面特性に加えて、吸着等温特性およびカチオン収着能(cmmol/kg-C)を用いて、高い吸着除去およびキャパシティに相関する機能特性の範囲を画定できる。異なる原子価状態をもつ様々なカチオンを収着物として用いて、炭素材料に対する全体的な収着親和性および結果の信頼性によって最後に決定される最終選択で、カチオン収着能を規定できる。
【0017】
先に進める前に、ここで用いるとき、用語「含む (includes)」および「含んでいる (including)」は、限定されないが、「含む (includes)」または「含んでいる (including)」および「少なくとも含む (includes at least)」または「少なくとも含んでいる (including at least)」を意味する。用語「基づく (based on)」は、「基づく (based on)」および「少なくとも部分的に基づく (based at least in part on)」を意味する。
【0018】
さらに、ここで用いる以下の用語は、次のように定義される:
【0019】
炭素材料:未処理または化学的および/もしくは物理的手段によって処理された天然または工業的に製造される炭素系材料。
【0020】
総酸官能度 (TAF):酸性度分布関数 f(pK)に転換された酸-塩基滴定データから決定された、炭素材料表面上の滴定可能な官能基の数量であり、定量可能な官能基の概数をmequiv./g-Cで提示する。TAFパラメータは、約2.3~約10.8のpH範囲に渡って決定される。
【0021】
カチオン収着能:特定の平衡収着物濃度にて算出された、単位質量の炭素材料に吸着された等価正電荷(+)のミリモル数。カチオン収着能は、炭素材料によって吸着された吸着物の質量を前記カチオン吸着物のモル質量および荷電数で除し、この値を炭素材料の質量で除して、cmmol/kg-Cを得ることによって算出する。
【0022】
実測特性:炭素材料および炭素表面の化学的および物理的属性両方を含む、直接測定からの定量可能な特性。
【0023】
ここに記載される実例は、例示の目的で提供されるものであり、制限するものではないことも特記する。ひとつの例として、図面に描写された成分および接続を用いることができる。他の装置および/または装置構成を用いてここに記載する操作を行うことができる。同様に、ここに示され、記載される操作は、例としての実行を例示するために提供されている。しかしながら、操作は、表示された順序には限定されない。さらに他の操作も実行することができる。
【0024】
炭素材料は、広汎な温度範囲にわたって様々な異なる技術のいずれかに従って改質することができることを特記する。実施できる炭素表面改質法は、限定されないが、硝酸、硫酸、燐酸、塩酸、およびそれらの組合せを含む無機酸;過塩素酸塩、過マンガン酸塩、活性酸素種、または過硫酸アンモニウムのような無機酸化剤;過酸化物、金属酸化物ならびに、過酸化水素、過酸化一硫酸、過酢酸、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、および過酸化カリウムを含むペルオキシ酸による酸化;ベンゾトリアゾール型、EDTA、リンゴ酸、ピコリン酸、およびクエン酸のようなモノ-およびポリ-カルボン酸を含む有機リガンドの添加;ジアゾニウム塩、有機シラン、モノ-およびポリ-カルボン酸ならびに酸性アルコールを用いることによる、末端アルコール、末端アミン、および末端カルボン酸のグラフト化;水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素塩、炭酸塩、エトキシド、および他のアルカリ/アルカリ土類の水酸化塩/炭酸塩を含むアルカリ性物質での酸化された炭素表面の後処理;ならびにアルカリ土類金属または遷移金属を添加して、金属酸化物および/または錯体を形成することによるメディア改質を含む。
【0025】
本開示は、様々な表面処理法を用いて製造された炭素材料の定量可能な酸基の総数、炭素材料と希イオン溶液との間の平衡接触pH、およびカチオン収着能の実測値と計算値との間の相関を規定して、前記メディア材料を特定し、本発明者の炭素材料を別の物から識別する。
【0026】
例示的技術は、測定可能量と、これらの材料に特有の性能測定基準との間の相関を提示する分析方法および分析物を規定することによって、炭素材料を独自に特定し、規定し、特徴付ける物理的および化学的特性の範囲を確立する。
【0027】
例示的技術は、以下の分析的およびデータ分析から得られた情報に関する:酸-塩基滴定、水接触pH、プロトン結合曲線、連続pK分布の決定、および平衡吸着等温線。
【0028】
図1は、活性炭材料の例示的滴定曲線を示す。例示的酸-塩基滴定法は、0.6 gの前記炭素サンプルを粉砕して、450 USメッシュスクリーンを通過させること;0.5 gの前記粉砕材料を250-ml枝付き三角フラスコに移すこと;100-mlのNaNO3の0.01モラー溶液を前記フラスコに添加すること;前記炭素スラリー溶液を真空下に60分間置くこと;前記炭素スラリーを自動滴定装置 (Hanna Instruments, Model HI 902)密閉滴定ベッセルに移すこと;前記溶液を90分間、窒素ガス (N2) 雰囲気下で混合すること; 平衡炭素接触pHをデュアルジャンクションpHプローブ (Hanna Instruments HI-1131 または類似物)で測定すること;0.01モラーNaOHまたはKOHからなる0.05 mlアリコートの塩基滴定を時間間隔毎に添加すること;各滴定液添加後に、pH変化を記録することを含む。
【0029】
水接触pHの手順は、ASTM方法 383-80「活性炭のpHに関する標準試験法」またはASTM D-6851-02「活性炭との接触pHの決定に関する標準試験法」に準ずる。
【0030】
連続酸官能度分布の決定に関する手順である、滴定データからのプロトン結合曲線 (PBC)の生成は、以下の関係式を用いて、炭素表面上のプロトンの結合曲線におけるアルカリ滴定データを変換することを要件とする。
【0031】
【数1】
【0032】
この関係は、滴定液添加前の初期pHから滴定液の添加後のpHへとpHを変化させるために必要な、水酸化物イオン (OH-)の添加により中和されたプロトン (H+)数と、炭素表面上で中和された(または取得された)プロトン数との間の差異を、単に算出する。活性炭材料由来のプロトン結合曲線 (PBC)の実例を図2に示す。
【0033】
図2は、活性炭材料由来のプロトン結合曲線 (PBC)の実例を示す。プロトン結合曲線に変換し、次いで、連続pK分布(酸性度分布関数)に変換することにより酸-塩基滴定データを分析して、あらゆる測定可能なpH値での表面酸官能度の包括的キャラクタリゼーションを提供する。ある実例において、炭素表上の各酸性部位は、初期算定数、Kでキャラクタライズされる。これらの酸定数のpK分布は、pKとpK + DpKとの間の測定されたpH間隔中の一定酸性度での酸-塩基官能度の数として規定された連続関数 f(pK)によってモデル化することができる。プロトン結合曲線 (PBC)は、以下の積分方程式による酸官能度分布に関する。
【0034】
【数2】
【0035】
この式の困難な側面は、f(pK)分布関数を決定することであり、それは、微分非正規化量である。よく機能する方法は、気固吸着等温線由来の吸着エネルギー分布に基づく吸着積分方程式の局所解に基づき、その解は以下の級数によって与えられる。
【0036】
【数3】
【0037】
計算されたパラメータは、上記級数の最初の2項を使用することに基づく。これら2項は、前記プロトン結合曲線の1次および3次導関数が含まれる。これらの導関数は、一連のデータポイントの各々に沿って平滑化三次スプラインをあてはめることによって所与pHについての各Q値にて計算する。プロトン結合データ対pHは、次の関数を最小化する三次スプライン関数g(x)によって近似される。
【0038】
【数4】
【0039】
平滑化パラメータ(ラムダ)は、2つの連続するpH値の間の元のプロトン結合曲線の「粗さ」と、平滑化三次スプライン関数のあてはめの適合性とをバランスさせる。どの程度の平滑度を要求するかの決定は、プロトン結合曲線に対するあてはめスプライン関数log(G)の粗さ対あてはめの適合度をプロットすることによって、決定する。典型的なプロットを図3に提示する。
【0040】
図3は、プロトン結合曲線に対するあてはめスプライン関数log(G)の粗さ対あてはめの適合度のプロットである。図3の曲線の形状は、導出された平滑化スプラインの変動を平滑化することによって粗さが急激に変化し、その後、log(G)はあてはめの適合度ほど急激に変化しない過剰平滑化の領域が続くことを示している。過剰平滑化の開始時点の少し後に、平滑化パラメータ(ラムダ)の値を選択することが、臨界f(pK)分布データの平滑化と保存の最適なバランスを与えることが示された。
【0041】
規定された手順の検証は、明らかに異なる複数のpK値を持つ既知の有機酸を用いて得られた。方法検証の実例を図4に示し、そこでは、クエン酸の10 mmol(30ミリ当量の総酸性度)溶液をNaOHで滴定し、PBCおよび対応するf(pK)分布に変換した
【0042】
図4は、明らかに異なる複数のpK値を持つ既知の有機酸を用いる、規定された手順の実例の検証を示す。対応するpK分布への逆畳み込みでのプロトン結合曲線への滴定曲線の変換は、クエン酸の3つのpK値ならびに95%(30ミリ当量に対して28.6)以内の総酸性度の定量化を正確に特定する、ということが分かる。
【0043】
図5は、改質された活性炭材料についての分析されたpK分布の実例を示す。総酸官能度は、pH 2.3~10.8の上限下限間のf(pK)曲線下の積分によって算出される。これらの上限下限は、この規定された範囲外のpK値を持つ表面基がアルカリ滴定中に反応しないが、それらは、0.01N NaNO3溶液と接触した正にその瞬間にプロトンと結合する可能性のため、正確な測定の限界を表している。
【0044】
計算された官能度は、3つの官能性酸群:カルボン酸pH 2.3~5.5、ラクトン酸pH 5.5~7.5、およびフェノール酸pH 7.5~10.8に分類することもできる。これは、規定されたpKを持つ他の材料や典型的なBoehm滴定との全般的比較を与える、pK分布を分類する便利な方法を提供する。f(pK)曲線の積分によって決定された総酸性度(TAF)は、材料特性を規定するための重要なパラメータである。
【0045】
所定の溶質についての平衡等温線を精製する手順は、ASTM方法D 5919-96「ppb濃度での活性炭の吸着物のマイクロ等温技術による活性炭の吸着能の定量のための標準技法」またはASTM D 3860-98「水相等温技術による活性炭の吸着能の定量のための標準技法」に概説される手順に準ずる。
【0046】
図6は、改質炭素材料のグラムあたり吸着したPbの質量対溶液中のPbの平衡濃度のプロットである。曲線の形状は、Pbの平衡濃度の上昇と共に鉛吸着(能)の上昇を示しており、吸着理論と一致する。
【0047】
平衡吸着等温線の決定からのデータは、炭素材料吸着物の単位質量あたりに吸着された吸着物の質量から、単位質量の炭素材料によって吸着された等価正電荷のミリモル数で与えられたカチオン収着能に変換される。この変換は、異なる価数状態を持つ様々なカチオン性収着物の直接比較を可能にする。詳細に評価されたそのような関心のあるカチオンのひとつがPbであり、処理された炭素材料と未処理の炭素材料との間の機能的比較を付与する。Pbは、その大きなイオン半径および困難な吸着除去特性のため、標的カチオン性収着物として選ばれた。Pbのカチオン収着能は、初期Pb濃度を150 ppbに設定し、かつ、平衡接触時間を24時間で、pH 6.5に調節した非緩衝pH溶液を用いて決定した。
【0048】
収着等温線から決定されたカチオン収着能を分析し、種々の溶質平衡濃度にて活性炭の収着能(性能)を比較して、それらの炭素材料の能力が高いか低いかを特定した。これらのレベル間の差異は、関心のある溶質(収着物)および等温線が生成された環境条件に依存する。例えば、pH 6.5でのPb吸着は、接触溶液における鉛平衡濃度が10 ug/L (ppb)であるとき、カチオン収着能>70 cmmol/kg-Cの高度能、カチオン収着能25-70 cmmol/kg-Cの中度能、およびカチオン収着能<25 cmmol/kg-Cの低度能に任意に分類することができる。10 ppbの平衡濃度を選択したのは、高平衡濃度での収着能データが、典型的に、能力により大きな差異を示し、低い平衡濃度と解釈されないほどの吸着差を潜在的に示しているからである。それゆえ、10 ppbという低い平衡濃度は、様々な炭素材料間でのカチオン交換のより確かな比較分析を提供する。Pb吸着(> 70 cmmol/kg-C)につき高い能力の材料の相関を用いて、パラメトリック領域(実測物理的パラメータの組合せ)を特定し規定した。
【0049】
7つの市販活性炭および様々な処理方法によって改質された30の活性炭材料の評価に基づき、独特の炭素材料を規定するために用いた関心のある3つの主たるパラメータは、0.01モラーNaNO3溶液内の炭素の平衡接触pH、酸-塩基滴定による実測総酸官能度(mequiv./g-炭素)、および10 ppbのPb平衡濃度での鉛カチオン性収着能を含む。
【0050】
実測TAF対平衡接触pHおよびPbカチオン性収着能の3Dプロットは、10 ppbの平衡Pb濃度に関するパラメトリック領域を画定し(図7)、改質炭素材料と未処理(バージン)活性炭との比較を可能にする。
【0051】
図7は、2.3~10.8の間のpHeq範囲、0.2~2.3 mequiv/g-CのTAF範囲、および2~200 cmmol/kg-C超の鉛カチオン性収着能で試験された広汎な未処理および処理炭素材料を例示する。図7中の各ポイント(記号)は、10 ppbのPb溶液と平衡接触にある各炭素材料について、総実測酸官能度(TAF)対平衡pH (pHeq)および実測Pbカチオン性収着能を示す。
【0052】
2.3~10.8の間の実測pHeq範囲、0.2~0.75 mequiv./Lの間のTAFにおいて、鉛カチオン収着能< 25 cmmol/kg-Cとして規定された低度能材料と、2~8の間のpHeqおよび1~2.4 mequiv/Lの間のTAFにおいて、鉛カチオン収着能>70 cmmol/kg-Cと規定されたPb吸着カチオン収着能と規定された高度能材料との間で明らかな分離がある。
【0053】
高性能材料は低めのpHeq値および高めの実測TAF値を有し、一方、劣った(低)性能材料はpHeqとは無関係に典型的に低いTAF値を有することが、図7から分かる。
【0054】
図7に示すプロットを参照して、高度能(>70 cmmol/kg-C)の材料を特定できる。その領域はpHeqおよびTAF値の独自の組合せを含む。2~8の間のpH範囲、TAF値 > 1 mequiv/g-C、および10 ppb Pb溶液平衡にて平衡Pbカチオン収着能値> 70 cmmol/kg-Cからなる画定されたパラメトリック領域内の炭素材料は、炭素表面を改質するための発明者の様々な処理法によって製造された。
【0055】
2~8の間のpH範囲、TAF値 > 1 mequiv/g-C、および10 ppb Pb溶液平衡にて平衡Pbカチオン収着能値 > 70 cmmol/kg-Cの画定領域内で、平衡pH、総酸官能度 (TAF)、およびPbカチオン収着能の実測値で製造され、全体もしくは部分として使用され、または、他の材料と混合されて、液相および気相環境から無機および有機汚染物質を除去/破壊用に適合した最終製品を製造する炭素材料は独特である。
【0056】
具体例において、図6の3次元キューブに示される、高カチオン収着能(>70 cmmol/kg-C)を有する炭素材料は、以下の処理方法によって製造することができる。1 kgの活性炭を、2.38リットルのH2Oおよび2.38リットルの15.8モラー (70重量%) 硝酸 (HNO3)と混合する。前記溶液を混合して、炭素粒子懸濁の完了を確実にし、80°Cの温度に加熱する。混合炭素スラリーは、4時間温度を維持する。酸化窒素(NO)および一酸化炭素 (CO)が、それぞれ、100,000および8,000 ppm(ガス体積で)を超過するガスヘッドスペース濃度で生成され、実行可能かつ適切なスクラビング/デストラクション装置を用いて破壊する必要がある。前記溶液を周囲環境で50°C未満にまで冷却し、その後、圧力フィルター (SEPOR Inc., Wilmington, CA)を用いて、酸化液から炭素分離する。炭素スラリー混合物を、10-um フィルター紙を取り付けた8-インチ直径 x 14.5-インチ高の圧力フィルターに添加し、0.25-lpmの平均溶出流を作り出す50-psigにて操作した。実際の炭素メディア粒子径と全分布は濾過時間および効率に影響する。濾過された炭素材料を、高圧フィルターから取り出し、0.5 l/kg-乾燥Cの体積/質量滴下比にて水と再度混合する。前記溶液を5分間混合し、前記高圧フィルターに戻す。前記高圧フィルターを上記と同じ条件で操作する。一連の水での炭素メディアの洗浄は、すすぎ液の実測pHが4を超えるまで繰り返す。このすすぎおよび濾過された炭素材料は、ついで、5 L/kg-乾燥Cの体積/質量比にて、0.1M 炭酸水素ナトリウム溶液と混合する。前記溶液を、溶液pHをモニターしながら2時間混合する。溶液pHを、炭酸水素ナトリウムまたはHClを添加して6.5~7のpHに調節し、混合しながら、この範囲に維持する。得られたメディアを、次いで、上記のように圧力フルターにかけ、5 L/kg-乾燥Cの体積/質量比にて水ですすいで残存するナトリウムおよび炭酸水素塩を除去する。このすすぎ/濾過プロセスは、残存ナトリウムが1 ppmを下回るまで繰り返す。この処理材料をオーブンに入れ、100℃にて24時間乾燥する。
【0057】
図6に示すように規定された画定パラメトリック領域内の炭素材料を製造するために変更し得るプロセス変数は、2~10モラーの硝酸濃度、45℃~110℃の反応温度、および0.5~to 24 時間の接触時間を含む。硝酸接触後の炭素材料すすぎは、2~10 L/kg-Cの体積/質量比を用いることができ、2~6の溶液pHにまですすぐ。すすぎ/濾過された炭素は、炭化水素ナトリウム、炭酸ナトリウムその他のアルカリ金属水酸化物/炭酸塩のような種々の中和剤に接触させることができる。出発炭素材料は、石炭、ココナッツ、木材、バイオチャーまたは他の製造業者独自の出発材料などタイプが変化し;粒径も、10 USメッシュから400 USメッシュ未満まで変化する。出発炭素材料は、Kuraray (GW, GH, GG, GW-H, PGW-20MP, PGWHH-20MDT), Jacobi (AquaSorb CT, CX, CX-MCA, HSN, HX, WT , WX, HAC, X7100H), Cabot, JB, Haycarb, ActiveChar, KX, およびOxbowのような様々な製造業者;またはその他に由来する炭素(特定)を含むことができる。炭素製造業者によって遂行された非公開独自製造プロセスと組み合わせた上記のバリエーションは、最終製品をもたらすものや、規定されたパラメータを満たさないバリエーションを生成するであろう。
【0058】
ここに示され、記載された実施例は、例示の目的であり、制限する意図はないことを特記する。さらに他の実施例も想定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】