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特表2022-518547圧力アンロード左心室補助装置およびヒト心臓を補助するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】圧力アンロード左心室補助装置およびヒト心臓を補助するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/165 20210101AFI20220308BHJP
   A61M 60/837 20210101ALI20220308BHJP
   A61M 60/857 20210101ALI20220308BHJP
   A61M 60/88 20210101ALI20220308BHJP
   A61M 60/268 20210101ALI20220308BHJP
   A61M 60/427 20210101ALI20220308BHJP
   A61M 60/515 20210101ALI20220308BHJP
【FI】
A61M60/165
A61M60/837
A61M60/857
A61M60/88
A61M60/268
A61M60/427
A61M60/515
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543299
(86)(22)【出願日】2020-02-01
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 US2020016299
(87)【国際公開番号】W WO2020160526
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/800,208
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325455
【氏名又は名称】カルディアテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】モーティス,クリス エー.
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,ジェイ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ナナス,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD04
4C077DD21
4C077HH18
4C077HH20
4C077JJ08
4C077JJ20
(57)【要約】
植え込み可能なポンプは、偏平回転楕円体形状を有し、かつ移動可能なエラストマー膜によって、駆動ラインを通して外部空気圧源に接続可能なガスサブチャンバと、グラフトアセンブリを通して解剖学的心臓に接続可能である血液サブチャンバと、に分割された内側チャンバを有する剛性ハウジングを含む。ハウジングは、ある角度で、かつハウジングの上部頂点で配向され、かつ血液サブチャンバに接続されている血液ポート開口部と、ハウジングの下部頂点に位置するガスサブチャンバに対して開口しているガスポートとを含む。ポンプは、ガス導管および心臓センサを含む駆動ラインを備え、駆動ラインは、心臓センサによって駆動される信号に応答して、駆動ラインガス導管を通してガス流を送達することができる駆動システムに接続可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能なポンプであって、偏平回転楕円体形状を有し、移動可能なエラストマー膜によって、駆動ラインを通して外部空気圧源に接続可能である空気サブチャンバと、グラフトアセンブリを通して解剖学的心臓に接続可能である血液サブチャンバとに分割された内側チャンバを画定する、剛性ハウジングを備え、前記ハウジングが、前記血液サブチャンバに対して開口している血液ポートを含み、前記血液ポートが、前記ハウジングの上部頂点に隣接し、前記偏平回転楕円体の貫通軸に対して約0度~約50度の範囲内にある角度で配向され、前記ハウジングがまた、前記ガスサブチャンバに対して開口しているガスポートを含み、前記ガスポートが、前記ハウジングの下部頂点に位置する、植え込み可能なポンプ。
【請求項2】
前記血液ポートおよび前記ガスポートの一方または両方が、バルブのない開口部を備える、請求項1に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項3】
前記エラストマー膜が、前記内側チャンバおよび前記血液ポートに概ね適合する形状を有し、前記チャンバおよび前記血液ポートの総体積未満である拡張体積を有する、請求項1に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項4】
前記血液ポートが、前記偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の範囲内にある角度で配向されている、請求項1に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項5】
ハウジングコネクタおよびグラフトアセンブリをさらに備える、請求項1に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項6】
前記グラフトアセンブリが、グラフト導管、ワッシャ、およびグラフトコネクタを備える、請求項5に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項7】
前記グラフトコネクタが、ねじ山付き、スナップ嵌合、またはクイックコネクタのうちのいずれか1つによって、前記ハウジングコネクタと係合可能である、請求項6に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項8】
前記血液ポータルおよびグラフト導管の各々が、内面を有し、各そのような内面が、それらの間の内面界面で本質的に同じ直径を有する、請求項6に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項9】
前記血液ポートが、約35~約45度である角度で前記剛性ハウジングを通る中心軸と交差する血液ポート軸を有する、請求項1に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項10】
前記ガスポートが、約1.5mm~約2mmの範囲の内径を有する、請求項1に記載の植え込み可能なポンプ。
【請求項11】
血液ポンプ用の駆動ラインであって、前記駆動ラインの長さの少なくとも一部にわたって近接して接続されており、かつ前記駆動ラインの第1および第2の端部の各々で分割されている、一対の導管を備え、前記駆動ラインが、円周円盤形状フランジをさらに備え、前記一対の導管が、植え込み可能なポンプのガスポートに第1の端部において取り付け可能なガス導管と、センサ導管を通過する心臓リズムを監視するための心臓センサを備える、前記センサ導管と、を備え、前記心臓センサが、複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上を備え、前記心臓センサが、臨床対象に第1の端部において取り付け可能であり、前記ガス導管および前記センサ導管の各々が、前記心臓センサによって駆動される信号に応答して、前記駆動ラインガス導管を通してガス流を送達することができる駆動システムにその第2の端部において取り付け可能である、駆動ライン。
【請求項12】
血流を補助するためのシステムであって、
(a)偏平回転楕円体形状を有し、移動可能なエラストマー膜によって、駆動ラインを通して外部空気圧源に接続可能である空気サブチャンバと、グラフトアセンブリを通して解剖学的心臓に接続可能である血液サブチャンバとに分割された内側チャンバを画定する剛性ハウジングを備える、植え込み可能なポンプであって、前記ハウジングが、前記血液サブチャンバに対して開口している血液ポートを含み、前記血液ポートが、前記ハウジングの上部頂点に隣接し、前記偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の範囲にある角度で配向されており、前記ハウジングがまた、前記ガスサブチャンバに対して開口しているガスポートを含み、前記ガスポートが、前記ハウジングの下部頂点に位置する、植え込み可能なポンプと、
(b)前記血液ポータルに付着され、グラフトアセンブリと係合するように適合されたハウジングコネクタと、
(c)グラフトアセンブリと、
(d)前記植え込み可能なポンプの前記ガスポートに第1の端部において取り付け可能なガス導管と、センサ導管および心臓リズムを監視するためにそこを通過する心臓センサと、を備える、駆動ラインであって、前記心臓センサが、臨床対象に第1の端部において取り付け可能であり、前記ガス導管および前記センサ導管の各々が、前記心臓センサによって駆動される信号に応答して、前記駆動ラインガス導管を通してガス流を送達することができる駆動システムにそれぞれの第2の端部において取り付け可能である、駆動ラインと、を備える、システム。
【請求項13】
前記駆動ラインの前記ガス導管およびセンサ導管が、前記駆動システムへのそれらの接続において連続しており、前記ガスポートへの前記ガス導管の前記取り付けに先立って2つに分割される、請求項12に記載の血流を補助するためのシステム。
【請求項14】
前記センサが、電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上から選択される、請求項12に記載の血流を補助するためのシステム。
【請求項15】
前記センサが、複数の電極を備える、請求項14に記載の血流を補助するためのシステム。
【請求項16】
前記駆動ラインの前記ガス導管部分が、円盤形状の円周フランジを含む、請求項12に記載の血流を補助するためのシステム。
【請求項17】
血流を促進するための方法であって、
(a)植え込み可能な装置を受容する臨床対象を準備するステップであって、前記臨床対象が、心膜を有する心臓、上行大動脈、肺動脈、上大静脈、ならびに左および右の肺を含む、胸腔を有する、準備するステップと、
(b)偏平回転楕円体形状を有する剛性ハウジングを有し、内側チャンバを有する植え込み可能なポンプを提供するステップであって、前記ハウジングが、前記内側チャンバに対して開口している血液ポートであって、前記血液ポートが、前記偏平回転楕円体の上部頂点に隣接し、前記偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の角度で配向されている、血液ポートと、前記内側チャンバに対して開口しているガスポートであって、前記ガスポートが、前記偏平回転楕円体の下部頂点に位置し、前記偏平回転楕円体の前記貫通軸に垂直に配向されている、ガスポートと、を含み、前記ポンプが、前記内側チャンバおよび前記血液ポートに概ね適合し、前記チャンバおよび前記血液ポートの総体積未満の拡張体積を有する、内部エラストマー膜を含む、提供するステップと、
(b)前記臨床対象の前記心臓と前記右肺との間に前記植え込み可能なポンプを配置するステップと、
(c)前記臨床対象の前記上行大動脈を部分的にクランプするステップと、
(d)組織取り付け端部と、ワッシャおよびグラフトコネクタを備えるポンプ取り付け端部と、を含む、可撓性グラフト導管を備える、グラフトアセンブリを提供するステップと、
(e)前記可撓性グラフト導管の前記組織取り付け端部を前記部分的にクランプされた大動脈に付着させるステップと、
(f)前記植え込み可能なポンプの前記ガスポートに第1の端部において取り付け可能なガス導管を備える駆動ラインを提供するステップであって、前記駆動ラインが、センサ導管およびそれを通過する心臓センサをさらに含み、前記心臓センサが、複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上を備え、前記心臓センサが、前記臨床対象に第1の端部において取り付け可能であり、前記ガス導管の前記第2の端部および前記センサ導管の第2の端部が、前記心臓センサによって駆動される信号に応答して、前記駆動ラインガス導管を通してガス流を送達するための駆動システムに取り付け可能であり、前記駆動ラインが、円盤形状の円周フランジを含む、提供するステップと、
(g)前記フランジが切開部に当接している状態で、前記駆動ラインを前記臨床対象の前記切開部を通過させるステップと、
(g)前記ガス導管を前記ポンプの前記ガスポートに取り付けるステップと、
(h)前記心膜の一部から選択された前記臨床対象の解剖学的構造上、ならびに肺動脈および動脈のうちの1つ内に、前記複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上の各々を配置するステップと、
(i)前記駆動ラインの前記導管の前記第2の端部を前記駆動システムに接続するステップと、
(j)前記グラフトコネクタと、前記ポンプの前記血液ポート上のハウジングコネクタとの間の係合によって、前記植え込み可能なポンプを前記グラフトアセンブリに付着させるステップと、
(k)前記臨床対象の大動脈から前記クランプを取り外して、前記グラフトを介して前記心臓から前記血液ポンプ内への血流を可能にし、前記駆動システムを作動させるステップと、を含む、方法。
【請求項18】
前記方法が、心肺バイパスの使用を必要としない、請求項17に記載の血流を促進するための方法。
【請求項19】
前記ポンプの前記血液ポートが、前記グラフト導管のねじれおよび上大静脈圧迫の可能性を低減しながら、前記上行大動脈への解剖学的適合および取り付けを可能にする角度で、前記臨床対象の解剖学的構造内に配向される、請求項18に記載の血流を促進するための方法。
【請求項20】
血流を補助するための植え込み可能な装置であって、
(i)偏平回転楕円体形状を有し、血液ポータルセクションと、ガスポートセクションと、を備える、剛性ハウジングであって、前記上部およびガスポートセクションが、前記剛性ハウジング内に偏平回転楕円体形状を有するチャンバを画定し、
(1)前記血液ポータルセクションが、円筒形状を有し、かつ前記剛性ハウジングの外部と前記チャンバとの間に貫通チャネルを画定する血液ポータルを備え、前記血液ポータルが、前記剛性ハウジングの前記上部およびガスポートセクションを通る中心軸と交差する血液ポータル軸を有し、
(2)前記ガスポートセクションが、ベースを含む内面を有し、前記ベースが、複数の溝と、前記剛性ハウジングの前記外部と前記チャンバとの間にガス流導管を画定するガスポートとを備え、前記ガスポートが、前記剛性ハウジング軸に垂直なガスポート軸を有する、剛性ハウジングと、
(ii)バルブセクション、円筒形ネック、およびハウジングコネクタとインターフェースするカフを備え、前記チャンバおよび前記血液ポータルに概ね適合する形状を有し、前記チャンバおよび前記血液ポータルの総体積未満である拡張体積を有する、エラストマー膜であって、前記チャンバは、前記エラストマー膜がその最大拡張体積にあるときに、約3cc~約10ccのデッド体積を含む、エラストマー膜と、
(iii)前記血液ポータルに付着され、グラフトアセンブリと係合するように適合されたハウジングコネクタと、
(iv)グラフト導管、ワッシャ、および前記ハウジングコネクタと係合可能なグラフトコネクタを備えるグラフトアセンブリと、を備える、植え込み可能な装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願および優先権
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年2月1日に出願された、COUNTER-PULSATILE IMPLANTABLE PUMPと題する、米国特許仮出願第62/800,208号の利益を主張するものであり、その出願全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
心不全は、高い罹患率、死亡率、およびコストを伴う主要な公衆衛生上の課題を代表している。先進国の成人人口の2%で蔓延している心不全は、蔓延がエスカレートしている唯一の心臓疾病として選び出されており、米国における現在の年間医療費は約310億ドルであり、2030年には700億ドルに達すると推定されている。進行性心不全は、心不全の管理に費やされるリソースの大部分を占めており、1年間の死亡率は約80%に達する。進行性心不全の患者は、心臓移植のためのドナー心臓へのアクセスが限られており、機械的サポート装置が最後の手段であることが多い。
【0003】
左心室補助装置(LVAD)を使用した慢性機械循環サポートは、末期心不全患者を移植に「橋渡し」するため、または永続的な「心臓移植代替」療法として採用されてきた。まれに、LVADサポートは、心臓機能の部分的な回復後に少数の患者が装置から離脱できるまで心臓リモデリングを逆転させると見られ、したがって、移植および補助技術の長期的な使用の両方を回避する。残念ながら、臨床的に利用可能なLVADは、左心室をバイパスし、不全の左心室が、LVAD自体によって生成された動脈圧を上回るのに十分な圧力を生成するのに役立たなくなるまで、重度の心室アンロードを生成する。加えて、血流の脈動性は、心筋の回復を促進するために重要であるように思われ、一方、現在使用されている連続血流LVADは、旧世代の脈動代替物と比較して、回復率において3分の1の減少と関連付けられている。まとめると、臨床的に利用可能なLVADは、本来の左心室機能を激しく抑制するという代償を払って左心室をアンロードし、補助し、この長期にわたる機能の抑制は、線維症を促進し、心臓の生来の回復の可能性を犠牲にする可能性がある。
【0004】
臨床的に利用可能なLVAD技術のさまざまな問題を考慮すると、移植への橋渡しおよび心臓移植代替療法の利点を提供することができ、心筋の回復の機会を最適化するために生来の左心室機能および脈動性を維持することができる補助技術の臨床的必要性が存在する。
【0005】
機械的アンロードによって誘発される心臓回復のこれらのニーズに対処するために、本開示は、左心室の収縮活動と脈動性の両方を維持しながら、不全心臓をアンロードするように設計された新規の植え込み可能な対抗脈動補助ポンプである、新規の圧力アンロードLVAD(PULVAD)を提供する。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施形態において、本開示は、左心室性能の増強および脈動性の保持によって心室アンロードを提供するように設計された、新規の植え込み可能な対抗脈動LVADを提供する。
【0007】
第1の実施形態において、植え込み可能なポンプが提供される。植え込み可能なポンプは、偏平回転楕円体形状を有し、かつ移動可能なエラストマー膜によって、駆動ラインを通して外部空気圧源に接続可能である空気サブチャンバと、グラフトアセンブリを通して解剖学的心臓に接続可能である血液サブチャンバとに分割された内側チャンバを画定する剛性ハウジングを含み、ハウジングは、血液サブチャンバに対して開口している血液ポートを含み、血液ポートは、ハウジングの上部頂点に隣接する。いくつかの実施形態において、血液ポートは、偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の範囲内にある角度で配向されている。いくつかの他の実施形態において、血液ポートは、約0度であるか、または偏平回転楕円体の貫通軸に対して約1度~約20度の範囲内にある角度で配向されている。ハウジングはまた、ガスサブチャンバに対して開口しているガスポートを含み、ガスポートは、ハウジングの下部頂点に位置する。
【0008】
第1の実施形態によるいくつかの実施例において、血液ポートおよびガスポートの一方または両方は、バルブのない開口部を備える。
【0009】
第1の実施形態によるいくつかの実施例において、エラストマー膜は、内側チャンバおよび血液ポートに概ね適合する形状を有し、チャンバおよび血液ポートの総体積未満である拡張体積を有する。いくつかの特定の実施例において、エラストマー膜は、バルブセクション、円筒形ネック、およびハウジングコネクタとインターフェースするカフを備える。
【0010】
第1の実施形態によるいくつかの実施例において、ポンプは、ハウジングコネクタおよびグラフトアセンブリをさらに含む。いくつかの特定の実施例において、グラフトアセンブリは、グラフト導管、ワッシャ、およびグラフトコネクタを備える。いくつかのさらなる実施例において、グラフトコネクタは、ねじ山付き、スナップ嵌合、またはクイックコネクタのうちのいずれか1つによって、ハウジングコネクタと係合可能である。
【0011】
第1の実施形態によるいくつかの実施例において、血液ポータルおよびグラフト導管の各々は、内面を有し、各そのような内面は、それらの間の内面界面で本質的に同じ直径を有する。
【0012】
第1の実施形態によるいくつかの実施例において、血液ポートは、約0~約50度の角度で、剛性ハウジングを通る中心軸と交差する血液ポート軸を有する。また、第1の実施形態によるいくつかの実施例において、ガスポートは、約1.5mm~約5mmの範囲の内径を有する。
【0013】
第2の実施形態において、血液ポンプのための駆動ラインが提供されている。駆動ラインは、駆動ラインの長さの少なくとも一部にわたって近接して接続されており、かつ駆動ラインの第1および第2の端部の各々で分割されている、一対の導管を含み、駆動ラインが、第1および第2の端部の間に、かつ一対の導管の間の分割を超えて位置付けされた円盤形状円周フランジをさらに備え、一対の導管が、植え込み可能なポンプのガスポートに第1の端部において取り付け可能なガス導管と、センサ導管を通過する心臓リズムを監視するための心臓センサを備える、センサ導管と、を備え、心臓センサが、複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上を備え、心臓センサが、臨床対象に第1の端部において取り付け可能であり、ガス導管およびセンサ導管の各々が、心臓によって駆動される信号に応答して、駆動ラインガス導管を通してガス流を送達することができる駆動システムにその第2の端部において取り付け可能である。
【0014】
第3の実施形態において、血流を補助するシステムが提供されている。システムは、
【0015】
(a)偏平回転楕円体形状を有し、移動可能なエラストマー膜によって、駆動ラインを通して外部空気圧源に接続可能である空気サブチャンバと、グラフトアセンブリを通して解剖学的心臓に接続可能である血液サブチャンバとに分割された内側チャンバを画定する剛性ハウジングを備える、植え込み可能なポンプであって、ハウジングが、血液サブチャンバに対して開口している血液ポートを含み、血液ポートが、ハウジングの上部頂点に隣接する、植え込み可能なポンプ、を含む。いくつかの実施形態において、血液ポートは、偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の範囲内にある角度で配向されている。いくつかの他の実施形態において、血液ポートは、約0度であるか、または偏平回転楕円体の貫通軸に対して約1度~約20度の範囲内にある角度で配向されている。ハウジングはまた、ガスサブチャンバに対して開口しているガスポートを含み、ガスポートは、ハウジングの下部頂点に位置している。
【0016】
(b)血液ポータルに付着され、グラフトアセンブリと係合するように適合されたハウジングコネクタと、
【0017】
(c)グラフトアセンブリと、
【0018】
(d)植え込み可能なポンプのガスポートに第1の端部において取り付け可能なガス導管と、センサ導管と、心臓リズムを監視するためにそこを通過する心臓センサと、を備える、駆動ラインであって、心臓センサが、臨床対象に第1の端部において取り付け可能であり、ガス導管およびセンサ導管の各々が、心臓センサによって駆動される信号に応答して、駆動ラインガス導管を通してガス流を送達することができる駆動システムにそれぞれの第2の端部において取り付け可能である、駆動ラインと、を含む。
【0019】
第3の実施形態によるいくつかの実施例において、駆動ラインのガス導管およびセンサ導管は、駆動システムへのそれらの接続において連続しており、ガスポートへのガス導管の取り付けに先立って2つに分割される。いくつかの特定の実施例において、センサは、電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上から選択される。さらなる実施例では、センサは、複数の電極を含む。
【0020】
第3の実施形態によるいくつかの実施例において、駆動ラインのガス導管部分は、円盤形状の円周フランジを含む。
【0021】
第4の実施形態において、血流を促進するための方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む。
【0022】
(a)植え込み可能な装置を受容する臨床対象を準備するステップであって、臨床対象が、心膜を有する心臓、上行大動脈、肺動脈、上大静脈、ならびに左および右の肺を含む、胸腔を有する、準備するステップ。
【0023】
(b)偏平回転楕円体形状を有する剛性ハウジングを有し、内側チャンバを有する植え込み可能なポンプを提供するステップであって、ハウジングが、内側チャンバに対して開口している血液ポートを含み、血液ポートが、偏平回転楕円体の上部頂点に隣接している、提供するステップ。いくつかの実施形態では、血液ポートは、偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の範囲内の角度で配向されている。いくつかの他の実施形態において、血液ポートは、約0度であるか、または偏平回転楕円体の貫通軸に対して約1度~約20度の範囲内の角度で配向されている。ハウジングはまた、内側チャンバに対して開口しているガスポートを含み、ガスポートが、偏平回転楕円体の下部頂点に位置し、偏平回転楕円体の貫通軸に垂直に配向されており、ポンプが、内側チャンバおよび血液ポートに概ね適合し、かつチャンバおよび血液ポートの総体積未満の拡張体積を有する内部エラストマー膜を含む。
【0024】
(b)臨床対象の心臓と右肺との間に植え込み可能なポンプを配置するステップ。
【0025】
(c)臨床対象の上行大動脈を部分的にクランプするステップ。
【0026】
(d)組織取り付け端部と、ワッシャおよびグラフトコネクタを備えるポンプ取り付け端部と、を含む、可撓性グラフト導管を備える、グラフトアセンブリを提供するステップ。
【0027】
(e)可撓性グラフト導管の組織取り付け端部を部分的にクランプされた大動脈に付着させるステップ。
【0028】
(f)植え込み可能なポンプのガスポートに第1の端部において取り付け可能なガス導管を備える駆動ラインを提供するステップであって、駆動ラインが、センサ導管およびそれを通過する心臓センサをさらに含み、心臓センサが、複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上を備え、心臓センサが、臨床対象に第1の端部において取り付け可能であり、ガス導管の第2の端部およびセンサ導管の第2の端部が、心臓センサによって駆動される信号に応答して、駆動ラインガス導管を通してガス流を送達するための駆動システムに取り付け可能であり、駆動ラインが、円周円盤形状フランジを含む、提供するステップ。
【0029】
(g)フランジが切開部に当接している状態で、駆動ラインを臨床対象の切開部に通過させるステップ。
【0030】
(g)ガス導管をポンプのガスポートに取り付けるステップ。
【0031】
(h)心膜の一部から選択された臨床対象の解剖学的構造上、ならびに肺動脈および動脈のうちの1つ内に、複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上の各々を配置するステップ。
【0032】
(i)駆動ラインの導管の第2の端部を駆動システムに接続するステップ。
【0033】
(j)グラフトコネクタと、ポンプの血液ポート上のハウジングコネクタとの間の係合によって、植え込み可能なポンプをグラフトアセンブリに付着させるステップ。
【0034】
(k)臨床対象の大動脈からクランプを取り外して、グラフトを介して心臓から血液ポンプ内への血流を可能にし、駆動システムを作動させるステップ。
【0035】
第4の実施形態によるいくつかの実施例において、方法は、心肺バイパスの使用を必要としない。
【0036】
第4の実施形態によるいくつかの実施例において、ポンプの血液ポートは、グラフト導管のねじれおよび上大静脈圧迫の可能性を低減しながら、上行大動脈への解剖学的適合および取り付けを可能にする角度で、臨床対象の解剖学的構造内に配向される。
【0037】
第5の実施形態において、血流を補助するための植え込み可能な装置が提供される。装置は、
【0038】
(i)偏平回転楕円体形状を有し、血液ポータルセクションと、ガスポートセクションとを備える剛性ハウジングであって、上部およびガスポートセクションが、剛性ハウジング内に偏平回転楕円体形状を有するチャンバを画定し、
【0039】
(1)血液ポータルセクションが、円筒形状を有し、かつ剛性ハウジングの外部とチャンバとの間に貫通チャネルを画定する血液ポータルを備え、血液ポータルが、剛性ハウジングの上部およびガスポートセクションを通る中心軸と交差する血液ポータル軸を有し、
【0040】
(2)ガスポートセクションが、ベースを含む内面を有し、ベースが、複数の溝と、剛性ハウジングの外部とチャンバとの間にガス流導管を画定するガスポートとを備え、ガスポートが、剛性ハウジング軸に垂直なガスポート軸を有する、剛性ハウジングと、
【0041】
(ii)バルブセクション、円筒形ネック、およびハウジングコネクタとインターフェースするカフを備え、チャンバおよび血液ポータルに概ね適合する形状を有し、チャンバおよび血液ポータルの総体積未満である拡張体積を有する、エラストマー膜であって、チャンバは、エラストマー膜がその最大拡張体積にあるときに、約3cc~約10ccのデッド体積を含む、エラストマー膜と、
【0042】
(iii)血液ポータルに付着され、グラフトアセンブリと係合するように適合されたハウジングコネクタと、
【0043】
(iv)グラフト導管、ワッシャ、およびハウジングコネクタと係合可能なグラフトコネクタを備えるグラフトアセンブリと、を含む。
【0044】
本発明の他の特徴および利点は、例として、本発明の原理を例証する好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の前述および他の目的および利点は、添付の図面と併せて考慮されるとき、以下の詳細な説明から明らかになり、図面では、同様の参照符号は、いくつかの図を通して同様の部分を指定する。
図1】植え込み可能なポンプの側面図である。
図2】植え込み可能なポンプの断面の側面図である。
図3】植え込み可能なポンプの分解斜視図である。
図4】植え込み可能なポンプのハウジングのセクションの図である。
図5】植え込み可能なポンプのハウジングのセクションの図である。
図6】植え込み可能なポンプのハウジングのセクションの図である。
図7】植え込み可能なポンプのハウジングのセクションの図である。
図8】植え込み可能なポンプのハウジングのセクションの図である。
図9】植え込み可能なポンプの構成要素の図である。
図10】植え込み可能なポンプの構成要素の図である。
図11】植え込み可能なポンプのハウジングの第2のセクションの図である。
図12】植え込み可能なポンプのハウジングの第2のセクションの図である。
図13】植え込み可能なポンプのハウジングの第2のセクションの図である。
図14】植え込み可能なポンプのハウジングの第2のセクションの図である。
図15】植え込み可能なポンプのハウジングの第2のセクションの図である。
図16】植え込み可能なポンプおよび駆動ラインを含むシステムの概略図である。
図17】心臓の概略図である。
図18】人体解剖学の文脈において、植え込み可能なポンプおよび駆動ラインを含むシステムの概略図である。
図19】駆動ラインの概略図である。
図20】開示された植え込み可能な装置を使用した心臓圧アンロードに関する結果を提供する。
図21】開示された植え込み可能な装置を使用した心臓のメカノエナジェティクスの最適化に関する結果を提供する。
図22】開示された植え込み可能な装置を使用した心臓の血圧に関する結果を提供する。
図23】開示した植え込み可能な装置を使用した不全LVの心収縮性に関する結果を提供する。
図24】開示された植え込み可能な装置を使用した不全心臓における心臓冠動脈血流に関する結果を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示による、血流を補助するための植え込み可能なポンプ装置、より具体的には、左心室性能の増強を伴う心室アンロードおよび短期(例えば、1週間)または長期(例えば、6ヶ月)の両方の植え込みのための脈動性の保持を提供するように設計された新規の植え込み可能な対抗脈動LVAD。
【0047】
本明細書でさらに記載されるように、植え込み可能な装置は、特に他の補助ポンプの植え込みと比較して、手術を簡略化し、生来の心臓組織への有害な外傷を低減するのに有利である。臨床的に利用可能な胸腔内LVAD装置は、典型的には、心肺バイパスを必要とすることが周知であり、一方で、開示されるポンプを植え込むために使用され得る外科的アプローチは、植え込み中の心臓バイパスの必要性を排除する。さらに、装置が心臓に取り付けられない、または心臓に挿入されないため、装置は、胸骨切開および大動脈の部分的クランプを介して植え込まれてもよく、それによって、吻合を使用して装置の可撓性グラフトを部分的にクランプされた大動脈に取り付け、大動脈クランプを解放する前に適切な脱気を可能にする。したがって、開示された装置の使用は、開心バイパスで典型的に使用される心肺機械、酸素供給器などの必要性を排除する。さらに、装置は、大動脈への1つの解剖学的接続のみを必要とする。これは、装置を単純にオフにし、適切な準備の後、装置を外植するために再操作する必要がなく、ガスポートチューブおよび電極のクロップされた端部を皮下に埋めることを可能にする。さらに、装置の植え込みは、ほとんどのLVAD植え込みで典型的な心臓組織へのコアリングまたは損傷を意図的に回避する。実際、他のほとんどの主流のLVADと心室の頂点との接続は、心筋の外科的切開を必要とし、それらは、心筋のコア領域に植え込まれた電極の使用を伴う。本装置は、心筋に損傷を与えることなく、上行大動脈に付着され、電極リードが、使用されるとき、心膜に取り付けられた心筋リードを使用して付着される。本装置の使用は、心臓の生来の機能を回復する見込みを可能にする。
【0048】
装置のさらなる利点は、装置が心臓と右肺との間に適合するようにどのように設計されているか、およびグラフトコネクタのねじれや上大静脈圧迫の可能性を減らしながら、解剖学的適合および大動脈への取り付けを可能にするために、ポンプの血液ポートの向きがどのように角度付けされているかを含めて、その設計に関連している。また、装置にはバルブは組み込まれていない。代わりに、血液は、同じ経路に沿って装置に出入りして流れる。このアプローチは、装置の血液接触面の洗浄を増進させ、うっ血を最小限に抑え、血栓形成の可能性を減少させる。また、装置は、膜のそれぞれのガス側および血液側上の流体の移動に応答して弾性的に変形するポリウレタン膜以外の移動部品を本質的に有さない。加えて、本装置は、心周期および心膜上に配置された領域を感知するために使用される電極の数においてユニークである。現在、5本の電極が心臓の心膜上に配置されて装置をトリガするための信号を提供する。心外膜上の場所とは対照的に、心膜内の複数の場所は、より信頼性の高い信号検出を可能にし、心臓の心外膜層を損傷することはない。また、装置には、電気信号と空気圧パワーの両方を装置に送達する新規駆動ラインが組み込まれている。駆動ラインは、腹壁を通って出て、出口部位を安定させ、かつ管形成および出口部位感染の可能性を低減するのに役立つ可撓性フランジを組み込んでいる。また、本装置は、ほとんどの商用IABPドライバによって駆動されるように独自に設計されているが、他のLVADは、高価で独自開発の専用ドライバを必要とする。これらおよび他の利点は、本明細書に記載の通りである。
【0049】
以下の実施例に示されるように、開示された植え込み可能なポンプは、従来のLVADと比較して有意差を提示し、これにより、心筋回復への橋渡しとして特に魅力的となる。第一に、装置は部分的な左心室圧力アンロードを提供し、著しく低減したアフターロードおよび生理学的に調整された減少したプリロードの好ましい血行力学状態を促進し、この好ましい血行力学状態は、生来の左心室機能の同時改善を可能にする。対照的に、臨床的に使用されるLVADは、過剰なアフターロード(LVAD自体によって生成される)を維持しながら、左心室プリロードを著しく減少させる(Frank-Starling曲線の左下に向かって生来の左心室機能を駆動する)。このようにして、従来のLVADは、生来の左心室機能を抑制することを代償にして左心室をアンロードし、これは、回復を犠牲にし、線維症を促進する可能性がある。第二に、PULVADサポートは、脈動血流を生成し、これは、現在使用されている連続血流LVADと比較して、より高い回復率に関連付けられている。第三に、開示された装置は、典型的なLVADの挿入および除去の不利な特徴である、体外循環または心筋の破壊のいずれも必要とせずに、比較的単純で安全な植え込み/外植手法を提供する。第四に、駆動コンソールの幅広い可用性(PULVADは標準的なIABPコンソールによって駆動される)により、PULVADは、ほとんどの病院で容易に実装され得る広範囲にアクセス可能な治療アプローチとなる。第五に、複雑な電気機械部品およびバルブがないため、(少なくとも理論的観点から)結果として血栓形成およびLVAD関連の合併症のリスクが低下するはずである。
【0050】
ここで参照される図1図19は、本発明の様々な態様およびそれらが組み立てられる様態を例示し、各々、図面および本明細書で提供される参照番号への手引きに従って同様の参照番号が同様の構成要素を指す。
【0051】
植え込み可能なポンプ100の構成要素およびシステム
ここで図面を参照すると、植え込み可能なポンプ100が図1に示されている。植え込み可能なポンプ100は、血液ポート125およびガスポート147を備えた偏平回転楕円体形状を有する剛性ハウジング101を含む。剛性ハウジング101は、移動可能なエラストマー膜200によってガスサブチャンバ163および血液サブチャンバ162に分割される内側チャンバ160を画定する。使用中、ポンプは、心臓からの信号に基づいてポンプにガス流を提供する駆動源に接続されたとき、エラストマー膜200の変位によって動作して、ガスサブチャンバ163に出入りするガスの流れと同期して、血液で充填し、血液を排出して臨床対象の体内に戻すことを交互に行う。様々な実施形態によれば、内側チャンバ160は、約15cc~約100cc、または約40cc~約90cc、または約50cc~約80cc、または約60cc~約70ccの範囲内にある体積を有する。内側チャンバ160の体積は、植え込み可能なポンプ100のレシピエントの解剖学的要件を満たすように構成される。そのように、植え込み可能なポンプ100は、様々な可能な範囲の内側チャンバ160体積を有するサイズの範囲で提供され得ることが企図される。内側チャンバ160の体積は、駆動ユニットによって供給される一回拍出量(すなわち、ガスサブチャンバ163へのガスの流入の結果として血液サブチャンバ162から変位する流体の体積)を適切に満たすように構成される。例えば、50ccの一回拍出量がドライバによって供給される場合、内側チャンバ160は、エラストマー膜200の完全膨張で、エラストマー膜200が剛性ハウジング101の血液ポート部分の内壁と接触する可能性を最小限に抑えるために、40%大きく(総体積70cc)されてもよい。別の方法として、患者をサポートからゆっくりと離脱させるためにドライバによって提供される一回拍出量を減少させる必要がある場合、内側チャンバ160は、十分な血液交換を容易にし、うっ血および血液血栓症の可能性を最小限に抑えるようなサイズにすることができる。例えば、35ccの一回拍出量で動作する70ccの総体積を有する内側チャンバ160は、ストロークごとに血液の50%を交換し、さらに、うっ血を最小限に抑えるために、血液サブチャンバ162の壁の適切な洗浄を可能にする。
【0052】
ガスサブチャンバ163は、駆動ライン600から、外部空気圧源、例えば、大動脈内バルーン植え込み可能なポンプドライバ(IABPドライバ)に通じるガスポート147に接続可能である。血液サブチャンバ162は、血液ポート125を介して、例えば、可撓性Dacron(登録商標)グラフトを含むグラフトアセンブリ400を通して、解剖学的心臓に接続可能である。いくつかの実施例において、血液ポート125およびガスポート147の一方または両方は、バルブのない開口部を含む。例えば、図面で表される実施形態に示すように、血液ポート125およびガスポート147の各々は、バルブのない開口部を有する。有利なことに、図示された実施形態によるバルブの不在は、バルブによって提示される故障点の可能性を排除し、血栓形成の可能性を低減する]。
【0053】
図面を再び参照すると、植え込み可能なポンプ100の図示された実施形態によれば、剛性ハウジング101は、2つの部分で形成されている。ここで図2を参照すると、剛性ハウジング101は、血液ポート125セクション120およびガスポート147セクション140を含む2つの部分で形成されている。血液ポート125セクション120およびガスポートセクション140の各々は、それぞれ、図4図8、および図11図15に示されている。示されるように、血液ポート125セクション120およびガスポートセクション140は各々、剛性ハウジング101のおよそ半分を形成し、それらの間の係合嵌合121、141界面で接合され、係合は、剛性ハウジング101の中心軸102に垂直な平面内で偏平回転楕円体のほぼ中心線かそれより下に位置する。図5および図15に示されるように、血液ポートセクション120およびガスポートセクション140の各々は、円形の断面形状を有し、2つのセクションは、同一の全体的形状を有さない。ガスポートセクション140は、血液ポートセクション120よりも大きな総体積を可能にするように構成され、したがって、ガスポートセクション140のものとは異なる形状および全体寸法を有する。再び図2を参照すると、偏平回転楕円体の中心面からガスポートセクション140のドームまで(すなわち、偏平回転楕円体の下部頂点まで)の距離は、血液ポートセクション120のドームまで(すなわち、偏平回転楕円体の上部頂点まで)の距離よりも大きい。また、血液ポートセクション120の半径の曲率は、ガスポートセクション140の半径の曲率よりも大きい。
【0054】
もちろん、他の実施形態において、剛性ハウジング101は、別の様態で、例えば、中心軸102に沿って分割され得るか、または何らかの他の様態で分割され得ることが理解されよう。さらに、いくつかの実施形態において、剛性ハウジング101は一体型であるか、または2つより多い部分から形成され得ることが理解されよう。図示されるように、血液ポート125セクション120とガスポートセクション140との間の嵌合界面は、スナップ嵌合係合を含み、係合嵌合121、141の各々は、各々がスナップ嵌合歯122、142、および接着剤などのシーラントのビーズを保持するのに適した凹部を含む相補的な形状を有する。もちろん、他の実施形態において、係合嵌合121、141は、スナップ嵌合以外の手段によって係合してもよく、一例では、概して円形の断面を有する2つの部分を接合するために当該技術分野で一般的に知られている相補的なねじ山または他の係合特徴を含んでもよい。
【0055】
図面を再び参照すると、様々な実施形態によれば、剛性ハウジング101は、剛性ハウジング101の上部頂点に隣接し、かつ剛性ハウジング101の中心軸102に対してある角度で配向された血液ポート軸127を有する、血液サブチャンバ162に対して開口している血液ポート125を含む。様々な実施形態において、角度は、約0度(すなわち、中心軸102に対して垂直/法線)~約50度、または約20度~約50度、または約35度~約45度の範囲内にある。いくつかの特定の実施形態において、図面に示される代表的な実施形態に示されるように、角度は約45度である。もちろん、角度は、20度、25度、30度、35度、40度、45度、および50度から、かつそれらを含む任意の角度であってもよく、その間の任意の部分範囲および1度~5度の任意の増分を含む。したがって、いくつかの実施形態において、血液ポートは、偏平回転楕円体の貫通軸に対して約20度~約50度の範囲内にある角度で配向される。いくつかの他の実施形態において、血液ポートは、約0度であるか、または偏平回転楕円体の貫通軸に対して約1度~約20度の範囲内にある角度で配向される。
【0056】
図面を再び参照すると、様々な実施形態によれば、剛性ハウジング101は、ガスサブチャンバ163に対して開口しているガスポート147を含み、このガスサブチャンバ163は、図示された本実施形態において、サック形状のエラストマー膜200の外側の内側チャンバ160である。様々な実施形態によれば、ガスポート147は、剛性ハウジング101の下部頂点に位置する。図示されるように、ガスポート147は、偏平回転楕円体の中心軸102に対して垂直に配向されている。代替の実施形態において、ガスポート147は、剛性ハウジング101の中心軸102に対して約1度~約60度の範囲内にある角度で下向きに角度を付けられ得ることが理解されよう。図示された実施形態において、ガスポート147は、それによってポンプを駆動ライン600に接続するためのホースを取り付けるためのレシーバ150を備え、駆動ライン600は次に、ガスをポンプに送達するための駆動システムに接続される。レシーバ150は、ガスポート147の出口端にテーパーを含む円錐台形ホースバーブ151の形態であり、剛性ハウジング101のベース145を出るガスポート147の外径よりも大きい直径を有する幅広いベースを有する。もちろん、ホースバーブ151以外の他の形態の係合が採用されてもよい。
【0057】
様々な実施形態において、ガスポート147は、概して円筒形であるガス流導管148を画定する。いくつかの非限定的な実施例では、例えば、本開示の実施例に記載の植え込み可能なポンプ100の実施形態によれば、ガスポート147は、約1mm~約5mmの範囲の内径を有し得、いくつかの実施形態では、約1.5mm~約2.0mmである。いくつかの特定の実施例では、ガスポート147は、2mm未満、例えば、約1.8mmの内径を有する。これらの寸法は、本開示に従って作製および試験された実施形態の代表に過ぎず、他の可能な寸法が採用されてもよいことが理解されるであろう。有利なことに、本発明者らは、内側チャンバ160(すなわち、ガスサブ内側チャンバ160163)内の膨張空気圧を、植え込み可能なポンプ100の恩恵を受ける臨床対象の生来の血圧をちょうど上回る圧力(すなわち、比較的小さい圧力差が、エラストマー膜200の血液側と空気側との間に存在する)に低減することを容易にするガス流路特徴を採用するときに得ることができる利益を見出した。本明細書でさらに説明されるように、植え込み可能なポンプ100および駆動ライン600を含むシステムは、ポンプ内の制御された圧力差を達成するために効率的な様態でガスの送達を可能にする追加の特徴を含む。
【0058】
図面を再び参照すると、様々な実施形態によれば、植え込み可能なポンプ100はまた、例えば、図3、ならびに図9および図10に示されるエラストマー膜200を含む。植え込み可能なポンプ100の図示された実施形態のエラストマー膜200は、血液サブチャンバ162を画定する。いくつかの実施形態において、エラストマー膜200は、内側チャンバ160および血液ポート125に概ね適合する形状を有し、内側チャンバ160および血液ポート125の総体積未満である拡張体積を有する。もちろん、他の実施形態において、エラストマー膜200は、内側チャンバ160内に付着された、例えば、剛性ハウジング101の個別のセクションの縁の間に固定された、または別の方法で、剛性ハウジング101の壁上の内部構造(図示せず)に付着された、シートであってもよい。図面を再び参照すると、図3図9および図10に示すように、エラストマー膜200は概ねサック形状である。示されるように、エラストマー膜200は、バルブ210セクション、円筒形ネック220、および剛性ハウジング101のコネクタとインターフェースするカフ230を備える。図示されるように、エラストマー膜200は、内側チャンバ160内に篏合するように成形および適合され、例えば、剛性ハウジング101のコネクタを介する取り付けによって血液ポート125に付着される。図2および図3に示されるように、いくつかの実施例において、エラストマー膜200は、カフ230を含み、剛性ハウジング101コネクタに固定されている。
【0059】
図示された実施形態によれば、エラストマー膜200は、チャネル126を通る内側チャンバ160および血液ポート125の総体積の100%未満である拡張体積を有する。いくつかの特定の実施例では、エラストマー膜200によって画定される血液サブチャンバ162の最大拡張体積は、内側チャンバ160内で少なくとも約3cc~約20ccのデッド体積161を可能にする。デッド体積161は、例えば、約25ccまでわずかに大きくてもよい。エラストマー膜200は、血液との接触に適した任意の材料、例えば、医療用グレードのポリウレタンから形成される。好適な材料の他の例として、射出成形された液体シリコーンゴムおよび熱可塑性エラストマーが挙げられ得る]。ここで図4および図5を参照すると、剛性ハウジング101は、内面143上の内側チャンバ160内に、溝146の形態の1つ以上の成形された特徴を含み、溝146は、エラストマー膜200が最大限に拡張されたときにそれによって占有されない最小のすき間空間を確保する役割を果たす。図面に示されるように、溝146は、内側チャンバ160の内面上のベース145内に放射状に並んだ溝146によって接合された一連の円周リングを含み、溝146は、ガスポート147に接続されるガス流導管148に相互接続している。この設計により、溝146は、ガス流路に流体接続され、その結果、流入および流出ガスは、膨張または収縮サイクル(REVIEW)中いつでもエラストマー膜200によって塞がれない。有利なことに、溝146は、真空が作られず、エラストマー膜200が、内側チャンバ160の基部145で内面143に接触することをさらに保証する。より多くまたはより少ない溝が用いられ得、溝146は、エラストマー膜200との接触に耐性のある専用空間を提供するのに適した他の形状および形態および寸法を有し得ることが理解されよう。また、エラストマー膜200が崩壊して、ガスポート147を通って流出するガスの移動を塞がないことを保証するように、構造がガス流導管148と連通している限り、溝以外の構造が用いられ得ることも理解されよう。
【0060】
図面に示された実施形態によれば、エラストマー膜200は、ガスポートセクション140の形状よりも小さく構成され、結果として、エラストマー膜200の完全収縮時にベース145内にすき間空間またはデッド体積161をもたらす。膜が膨張するにつれて、ガスポートセクション140の内壁とエラストマー膜200との間の空間は、エラストマー膜200の半径方向の移動および拡張を可能にし、エラストマー膜200が完全に膨張するにつれて、エラストマー膜200内の座屈の形成を最小限に抑える。これは、エラストマー膜200上の応力および疲労破壊の可能性を最小限に抑える役割を果たす。いくつかの実施形態によれば、エラストマー膜200は、その外面の少なくとも一部分にわたって、剛性ハウジング101の血液ポートセクション120の内壁に結合され得、この結合は、医学的に適切なシーラントによって達成される。この結合は、内側チャンバ160内にエラストマー膜200をさらに固定して、座屈を最小限に抑え、エラストマー膜200の屈曲をガスサブチャンバ163のベース145に直接対向するその下面へ集中させる役割を果たすことができる。
【0061】
図面を再び参照すると、植え込み可能なポンプ100は、図3に示されるように、剛性ハウジング101コネクタおよびグラフトアセンブリ400をさらに含む。示されるように、ハウジングコネクタ300は、エラストマー膜200をそのカフ230で剛性ハウジング101の血液ポート125に固定するために使用される。ハウジングコネクタ300は、円筒形の血液ポート125と係合可能な概ねリング形状を含み、いくつかの実施形態では、窓割り302を含む。ハウジングコネクタは、血液ポートにエポキシ化されてもよい。ハウジングコネクタの周りに半径方向に位置する窓割り302は、機械的インターロックを提供し、より強固な結合を容易にするために表面積を増加させ、]これは、ハウジングコネクタ300と血液ポート125との固定を容易にする。ハウジングコネクタ300の図示された実施形態はまた、血液ポート125の末端に固定するために、エラストマー膜200のカフ230を受容する円周方向の溝303を含む。いくつかの他の実施形態において、エラストマー膜200とハウジングコネクタ300との間の係合は、別の手段によって行われてもよい。さらに、エラストマー膜200がサックの形態ではないいくつかの実施形態では、ハウジングコネクタ300は、エラストマー膜200と接触していない場合がある。図面を再び参照すると、例えば、図3に示されるように、ハウジングコネクタ300はまた、以下に説明するグラフトコネクタ430内の対応するねじ山431との嵌合に適した外部ねじ山301を含む。もちろん、ハウジングコネクタ300とグラフトコネクタ430との間の係合は、ねじ山付き以外であってもよく、いくつかの代替の実施例では、2つの構成要素は、例えば、スナップ嵌合または捻じれ接続を使用するなど、当該技術分野で知られている他の手段によって係合可能であり得ることが理解されよう。
【0062】
図面を再び参照すると、植え込み可能なポンプ100は、グラフトアセンブリ400をさらに含む。いくつかの特定の実施例では、グラフトアセンブリ400は、組織取り付け端部411、ポンプ取り付け端部412を有し、グラフト導管410、ワッシャ420、およびグラフトコネクタ430を含む。示されるように、グラフトコネクタ430は、剛性ハウジング101コネクタ上のねじ山301に相補的な内部ねじ山431を有するナットである。いくつかの実施例において、グラフトコネクタ430およびハウジングコネクタ300は、代替の構成を有してもよく、ハウジングコネクタ300は、内部ねじ山を含み、グラフトコネクタ430は、それらの間で係合するための外部ねじ山を含む。また、もちろん、ハウジングコネクタ300に関して本明細書で言及されるように、2つのコネクタは、相補的なねじ山以外の手段によって係合し得る。図示されたグラフトアセンブリ400はまた、ワッシャ420を含む。ここで図2を参照すると、ワッシャ420は、グラフト導管410のポンプ取り付け端部412に一体化されて、グラフト導管410の崩壊を防止し、グラフトコネクタ430内でのその固定を容易にするフープ強度を提供する。いくつかの実施例において、グラフト導管410のグラフト材料は、最初に延伸され、ワッシャ420上に折り畳まれ、グラフト材料の2つの層が重なるところに細い縫合糸で固定される。
【0063】
図面を再び参照すると、グラフトアセンブリ400は、可撓性であり、かつ、生体組織、例えば、心臓の大動脈への外科的取り付けに適した、概ね円筒形状を有するグラフト導管410をさらに含む。グラフト導管410は、大動脈への取り付けのために外科医によって選択された長さおよび特定の角度を達成するために、その組織取り付け端部411でのトリミングに適するように提供される。グラフト導管410は、血液ベースの生物学的材料との接触に適した任意の材料、例えば、1つ以上のゼラチン密封された織ポリエステルグラフト、および可撓性Dacron(登録商標)材料、で形成され得る。ハウジングコネクタ300と係合するとき、グラフトアセンブリ400は、導管410の管腔および血液ポート125の貫通チャネル126によって画定される連続血流路500を提供する。図示された実施形態において、血液ポート125とグラフト導管410の各々は内面を有し、各そのような内面は、それらの間の内面界面501において本質的に同じ直径を有し、それにより、係合された血液ポート125と、ハウジングコネクタ300と、グラフトアセンブリ400との間の内面界面501が、連続血流路500が均一な直径を有するようにゼロステップダウンを提供する。
【0064】
図面を再び参照すると、様々な実施形態によれば、血液ポンプシステムを形成するために植え込み可能なポンプ100に取り付け可能な新規の駆動ライン600も提供されている。駆動ライン600は、臨床対象に植え込まれたセンサを通して得られた心機能信号に基づいてポンプにガス流を提供するように構成された、ポンプと駆動システムとの間のインターフェースを提供する。図16は、駆動ライン600の実施形態に接続されたポンプの実施形態の代表的な実施例を示す。図示されるように、駆動ライン600は、その長さの少なくとも一部分に沿って、ガス導管630およびセンサ導管640の線形統合を含み、駆動ライン600は、植え込み可能なポンプ100と連通するガス導管630および患者に接続するためのセンサのそれぞれの第1の端部を含む第1の端部、およびドライバに取り付けるための第2の端部を有する。
【0065】
いくつかの実施例において、駆動ライン600のガス導管630部分は、植え込み可能なポンプ100が植え込まれた臨床対象の駆動ライン出口部位で皮膚または真皮の下に位置付けするように適合された円盤形状の円周フランジ660を含む。円周フランジ660は、駆動ライン600の順応性のある移行を提供し、出口部位の外傷および感染を減少させるように設計されており、例えば、医療用グレードのシリコーンを含む任意の適切な材料から作製され得る。駆動ライン600は、中間接続ハブをさらに含み得、それによって、ガス導管630およびセンサ導管640の第2の端部は、患者接触端部から切り離され得る。また、駆動ライン600は、患者に流入し得る任意の有害な電流を制限するための統合された患者安全回路を含み得る。
【0066】
ここで図19を参照すると、駆動ライン600は、駆動ライン600の長さの少なくとも一部分にわたって近接して接続され、かつ駆動ライン分割650で駆動ライン600の第1の端部610および第2の端部620の各々に分割されるガス導管630およびセンサ導管640を備える一対の導管を含み、駆動ライン600は、一対の導管の間の駆動ライン分割650先立って第1の端部610と第2の端部620との間に位置付けられた円周円盤形状フランジ660をさらに含む。ここで図16を参照すると、ガス導管630の第1の端部610は、植え込み可能なポンプ100のガスポート147に取り付け可能であり、センサ導管640の第1の端部7 1 0は、臨床対象の解剖学的部位に取り付け可能である。ガス導管630の各々は、第2の端部620で駆動システムに取り付け可能であり、第2の端部620でのガスおよびセンサ接続は、順に、駆動システムに接続可能な外部ケーブルおよび空気ラインに接続される。
【0067】
図面を再び参照すると、ガス導管630は、導管内に一体的に形成され得るか、または導管内にチューブを含み得る内部ガス流チャンネルを含む。流れチャンネルは、植え込み可能なポンプ100のガスポート147との接続を通して連通して、ガスの流入および流出を送達し、その第1および第2の端部の各々において、植え込み可能なポンプ100およびドライバの各々への安定した接続に適した取り付け特徴を含む。様々な実施形態において、ガス流チャネルは、約1mm~約4mmの範囲の内径を有し、その第1の端部に取り付け特徴を介している。ガス導管630は、ポンプ内の膨張空気圧が血圧をちょうど上回るように制御するために、ポンプに入る空気流制限を可能にする様態で、ガスポート147で植え込み可能なポンプ100に取り付け可能である。したがって、ガス導管630は、導管の流れチャネルからポンプのガスポート147への流れチャネル直径のステップダウンを可能にするように適合される。
【0068】
いくつかの代替の実施形態において、ガス導管630は、駆動ライン600の長さに沿って1つを超える部分に提供されてもよく、例えば、ガス導管630の長さが、別個のチューブ、例えば、ガス導管630の第2の駆動取り付け端部620に近い直径よりも小さい直径を有するチューブ、を含む「ツーピース」の実施形態として提供されてもよい。第2のチューブの端部におけるダブルバーブコネクタなどのカプラの使用は、同じ、または異なる内径を有する新しいチューブへのチューブの交換を容易にし得る。もちろん、ステップダウン設計は、ドライバ、駆動ライン600、および植え込み可能なポンプ100の間のガス流制御のための1つの選択肢に過ぎず、他の実施形態では、より多くのまたはより少ないステップダウン特徴が存在し得、いくつかの実施形態では、流れチャネルならびにガス流導管148は、同じ直径を有し得ることが理解されるであろう。様々な実施形態によれば、駆動ライン600は、駆動ライン600の長さに沿った内径がガスポート147の内径(例えば、1mm~5mm、または1.8mm)と連続し得るように、1つまたは一連のチューブを含み得るガス導管630を含み、またはいくつかの実施形態では、ガス導管630が駆動ライン600の第2の端部620に近づくにつれて、より大きな直径(例えば、2mmよりも大きい)へのステップアップを含み得る。
【0069】
図19の図面を再び参照すると、センサ導管640は、臨床対象の心臓リズムを監視するための心臓センサ700を含む。様々な実施形態において、心臓センサ700は、複数の電極、および光ファイバセンサのうちの1つ以上から選択される。図16および図18に図示されるように、心臓センサ700は、複数の電極であり、具体的に示されるように、複数は、5つの電極751を含む。
【0070】
いくつかの代替の実施形態では、センサ700は、より少ないまたはより多くの電極を含み得、これらは、心膜以外の臨床対象の解剖学的構造の部分上に配置するために選択され得る。いくつかの実施形態において、センサ700は、電気的以外の心機能を検出するのに適した1つ以上の圧力型センサまたは他のセンサを含み得、これらは、1つ以上の解剖学的血管の管腔内に配置され得る。例示される実施形態によれば、電極、具体的には心筋電極の使用は、ほとんど(すべてではなくても)が5つの皮膚ECGリードを必要とするため、これが広範囲の従来のIABP駆動ユニットとのインターフェースを可能とするので、植え込み型ポンプ100に良好な結果を提供する。従来のIABP駆動ユニットが、患者の血管系に植え込まれたバルーンの膨張/収縮のタイミングを調整するために5つのECGリードを使用することは、当該技術分野で周知である。この植え込み可能なポンプ100と共に使用する場合、対象の心臓の心膜に付着された5つの電極751の使用は、ポンプ用のカスタムドライバの必要性を回避する。また、市販のIABPユニットは、5つの皮膚リードを感知し、かつリードの中から最適な信号を自動的に選択するペーシングアルゴリズムを有するため、新しいドライバシステムの開発に依拠する必要性を回避する。これらのユニットはまた、例えば、光ファイバセンサを使用して感知される大動脈圧に基づいて膨張/収縮をトリガすることができ、したがって、臨床対象の管腔内に配置された1つ以上の光ファイバセンサを使用する駆動ライン600の代替の実施形態をサポートする。本開示は、様々な可能性のある心臓センサが、臨床対象からの信号に応答するガス流の機能性を提供する様々な既知および可能性のあるカスタムドライバのいずれかと共に使用するために、選択され、使用され得るという意味で限定的ではない。
【0071】
外科的手法
本開示によれば、様々な実施形態において、疾患心臓および/または損傷心臓をサポートするために血流を促進するための外科的手法が提供される。いくつかの実施例において、臨床対象は、ヒト患者である。この手法によれば、臨床対象は、まず、植え込み可能なポンプ100を受容するために準備され、それによって、患者の上行大動脈と流体連通する血液植え込み可能なポンプ100の配置を可能にするために、胸腔へのアクセスが達成される。図面を参照すると、図17は、心臓の心膜上の電極の可能な配置位置を示す概略図であり、図18は、ヒト対象の大動脈に取り付けられた植え込み可能なポンプ100、およびポンプに取り付けられ、フランジにおいて対象の皮膚を通過する接続された駆動ライン600を示す概略図である。
【0072】
植え込み可能なポンプ100は、本明細書に開示される実施形態に従って提供される。実施例において、偏平回転楕円体形状を有し、内側チャンバ160を有する剛性ハウジング101を有する植え込み可能なポンプ100が提供され、剛性ハウジング101は、内側チャンバ160に対して開口している血液ポート125であって、血液ポート125は、偏平回転楕円体の上部頂点に隣接し、偏平回転楕円体の中心軸102に対して約0度~約50度の角度で配向されている、血液ポート125と、内側チャンバ160に対して開口しているガスポート147であって、ガスポート147は、偏平回転楕円体の下部頂点に位置し、偏平回転楕円体の中心軸102に対して垂直に配向されたガスポート軸149を有する、ガスポート147と、を含み、植え込み可能なポンプ100は、内側チャンバ160および血液ポート125に概ね適合し、かつ内側チャンバ160および血液ポート125の総体積未満である拡張体積を有する内部エラストマー膜200を含む。最初の配置ステップにおいて、植え込み可能なポンプ100は、臨床対象の心臓と右肺との間に位置付けられ、続いて、臨床対象の上行大動脈を少なくとも部分的にクランプする。
【0073】
組織取り付け端部411と、ワッシャ420およびグラフトコネクタ430を含む植え込み可能なポンプ取り付け端部412と、を含む、可撓性グラフト導管を含むグラフトアセンブリ400が提供される。可撓性グラフト導管の組織取り付け端部411は、部分的にクランプされた大動脈に吻合され、植え込み可能なポンプ100への取り付けの準備が整う。
【0074】
駆動ライン600が提供され、駆動ライン600は、植え込み可能なポンプ100のガスポート147に第1の端部において取り付け可能なガス導管630、センサ導管640、およびそれを通過する心臓センサを含み、心臓センサは、複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上を備える。駆動ライン600は、その長さに沿った点において可撓性フランジを含む。次いで、駆動ライン600は、フランジが臨床対象の体の外側の切開部に当接している状態で、臨床対象の切開部を通過する。次いで、駆動ライン600のガス導管630は、植え込み可能なポンプ100のガスポート147に取り付けられる。複数の電極および光ファイバセンサのうちの1つ以上の各々は、心膜の一部から選択される臨床対象の解剖学的構造上で、肺動脈および動脈のうちの1つ内に位置付けされる。特定の実施例では、心臓センサは、複数の電極750、例えば、5つの電極を含み、その各々が、例えば、図17および図18に示されるように、臨床対象の心膜に付着される。電極は、心筋電極であってもよい。その後、駆動ライン600のガス導管630およびセンサ導管640は、駆動システムに取り付けられる。
【0075】
駆動構成要素が配置され、接続されると、植え込み可能なポンプ100は、グラフトコネクタ430と植え込み可能なポンプ100の血液ポート125上の剛性ハウジング101コネクタとの間の係合によって、グラフトアセンブリ400に付着される。植え込み可能なポンプ100の血液ポート125は、グラフト導管のねじれなしで、かつ上大静脈圧迫なしで、心臓と右肺との間の植え込み可能なポンプ100の密接な解剖学的適合、および上行大動脈への取り付けを可能にするために、臨床対象の解剖学的構造内で角度をもって配向されることが理想的である。次いで、クランプが、臨床対象の大動脈から取り外されて、グラフトを介して血液が心臓から血液植え込み可能なポンプ100内に流れることを可能にし、駆動システムが、心臓にサポートを提供するように作動される。
【0076】
理想的には、外科的手法は、心肺バイパスを使用せずに実行される。
【実施例
【0077】
実施例1:外科的手順および実験プロトコル
重量80~90kgの7頭の農場ブタを、開示された植え込み可能な装置(本明細書では「PULVAD」と呼ぶ)を使用して研究した。すべての動物は、胸骨正中切開および上行大動脈へのPULVADの植え込みを受けた。装置は、可撓性駆動ラインを備えた従来のIABP駆動コンソールに接続された。一時的なペースメーカリードがECG監視のために心膜に植え込まれ、PULVADが、ECGに基づいて同期されて、拡張期大動脈圧の増強が提供された。動物に、1)総頸動脈内(大動脈圧を記録するため)および右外頸静脈内(右心房圧を監視し、液体を投与するため)のカテーテル、2)LV圧を記録するためのMillar圧力チップカテーテル、3)LV体積11を測定するための4つの圧電結晶(LV心外膜下に植え込まれている)、4)血流を測定するために左前下行枝(LAD)動脈の周りに配置されたドプラーフロープローブを装着した。大動脈圧およびLV圧のベースライン測定値を得た。次いで、心筋虚血を、1時間、中部LAD動脈の結紮によって誘発し、続いて再灌流した。再灌流中に15分間の血行動態安定化を行った後、満了時に換気を一時停止し、PULVADサポートなしで以下のパラメータを記録した:動脈圧およびLV圧、心拍数、二重積(収縮期動脈圧Å~心拍数)、圧電結晶間の距離(LV体積計算のため)、駆出分画(EF)、SV、心拍出量(CO)、一回仕事量(SW)(圧力-体積ループ内の面積)、dP/dTmax、dP/dTmin、およびLAD血流。その後、PULVADをオンにし、PULVADオンで新しい血行動態定常状態が達成されると、前述のパラメータを記録した。PULVADサポートの持続時間(新しい血行動態定常状態が達成されるまで)は、30秒~60秒で変化した。その後、下大静脈は徐々に部分的に閉塞され、圧力-体積ループのファミリー(プリロードの減少時の)が、PULVADのサポートなしで、およびPULVADのサポート中(最初の30~60秒後)に取得されて、収縮末期圧-体積関係(ESPVR)および拡張末期圧-体積関係(EDPVR)が決定された。ESPVRの傾きから,収縮性最大エラスタンス(Emax)の負荷に依存しない指標を算出した。ESPVRおよびEDPVRから、圧力-体積面積(PVA)(ESPVR、EDPVR、および圧力-体積ループの収縮期セグメント内に含まれる面積として計算される心筋酸素消費のプロキシ)を測定した。SW対PVAの比率は、LVの機械的性能のエネルギー効率の指標として計算した。実験は、心臓の電気的細動による少なくとも3組の連続記録(PULVADをオフおよびオンにして)の収集に成功した後に終了した。データをCardioSoftProソフトウェア(Sonometrics Corporation,London,Canada)で分析した。
【0078】
実施例2:統計分析
データは、テキストおよび表における平均±標準偏差として、ならびに図における平均±平均の標準誤差として提示される。連続記録(PULVADオンの状態で、PULVADサポート無しおよびPULVADサポートの30~60秒後)から得られたデータを、ペアードt検定を使用して比較した。係数rは、線形回帰分析によって変数間の相関の存在を調べるために計算された。すべての試験は両側で行われ、p値<0.05は統計的に有意であるとみなされた。
【0079】
実施例3:圧力アンロード左心室補助装置サポートは、マークされた左心室圧力アンロードを提供する
図面を参照すると、図20は、PULVADが不全LVの重度の圧力アンロードを提供することを示す。A:PULVADサポート無し(PULVADオフ)およびPULVADサポート有り(PULVADオン)の大動脈圧波形。PULVADは、収縮期大動脈圧(112から95mmHg[上部]、85から65mmHg[下部])および拡張末期圧(85から65mmHg[上部]、60から35mmHg[下部])を低下させた。PULVAD誘発アフターロード減少の大きさは、収縮期大動脈圧の幅広い範囲わたって類似していることに留意されたい。収縮期大動脈圧の劇的な低下にもかかわらず、平均大動脈圧は、PULVADによって提供される拡張期圧増強のために正常のままである。*収縮期大動脈圧、■拡張末期圧、#拡張期圧増強。収縮期動脈圧(B)、拡張末期動脈圧(C)、および二重積(D)におけるPULVAD誘発変化の定量分析(PULVADオフと比較して*p<0.05)。PULVAD、圧力アンロード左心室補助装置。
【0080】
左前下行枝結紮は急性HFの誘発をもたらし、LV拡張末期圧の有意な増加として現れた(ベースライン:9.3±1.4mmHg、急性HF:16.4±5.6mmHg;p<0.001)。圧力アンロード左心室補助装置サポートは、不全LVの重度の圧力アンロードを提供し、LVアフターロードにおいて有意な減少として現れ、収縮期大動脈圧は、19.2±8.6mmHgだけ低下し、拡張末期大動脈圧は、22.3±10.7mmHg.bpmだけ低下し、二重積は、1094±921mmHg.bpmだけ低下した(図20、表1)。PULVAD対抗脈動がない場合とある場合の代表的な大動脈圧波形が、図20Aに提供されており、収縮期および拡張末期の大動脈圧における劇的なPULVAD誘発減少と、拡張期の動脈圧における増加を示している。
【0081】
実施例4:圧力アンロード左心室補助装置サポートは、左心室メカノエナジェティクスを最適化する
図面を再び参照すると、図21は、PULVADが、急性H FにおいてLVメカノエナジェティクスを最適化する(機械的性能を向上させ、エネルギー消費を低減する)ことを示す。EF(A)、CO(B)、SV(C)、SW(D)、圧力-体積面積(E)、および圧力-体積面積に対するSWの比率(F)におけるPULVAD誘発変化、の定量分析(PULVADオフと比較して*p<0.05)。G:PULVADサポート無し(PULVADオフ)および短時間のPULVADサポート中(PULVADオン)の不全ブタLVの代表的な圧力-体積ループ。PULVADサポートは、圧力-体積ループの底部(重度の圧力アンロード)および左側(間接的な体積アンロード)への劇的なシフトを生成する。加えて、PULVADサポートは、LVメカノエナジェティクスを最適化し、SVおよびEFは増加し、同時に一回仕事量(ループ内の面積として測定)は減少する。COは心拍出量、EFは駆出分画、HFは心不全、PULVADは圧力アンロード左心室補助装置、PVAは圧力-体積面積、SVは一回拍出量、SWは一回仕事量。
【表1】
【0082】
HFは心不全、LADは左前下行動脈、PULVADは圧力アンロード左心室補助装置、PVAは圧力-体積面積。
【0083】
圧力アンロード左心室補助装置サポートは、不全LVの機械的性能を改善し、LVEF、SV、およびCOにおいて有意な増加として現れた(図21、A~C、表1)。PULVADが誘発するLV機械的性能の増強は、SWおよび総LVエネルギー消費量(PVAによって測定される)において同時減少を伴った(図21、DおよびE、表1)。加えて、PULVADサポートは、LVメカノエナジェティクス効率を最適化し、SW対PVAの比率の増加によって示された(図21F、表1)。さらに、PULVADサポートは、LV EDVにおいて(結果として、LV拡張末期圧において)有意な減少があったため、LVの間接的な体積アンロードを生じさせた(表1)。LVのこの間接的な体積アンロードは、以下のように合理化することができる。PULVAD誘発の改善されたLV収縮期性能の設定において、LVプリロード(すなわち、LV拡張末期体積)は、Frank-Starlingの法則によって決定されるように、LVが末梢ニーズを満たすのに十分なSVを排出するために必要な最低レベルまで生理学的に調整される。
【0084】
図21Gは、PULVADサポート無しおよびPULVADサポート中の、不全ブタLVの代表的な圧力-体積ループを示す。圧力アンロード左心室補助装置サポートは、圧力-体積ループの底部(重度の圧力アンロード)および左側(間接的な体積アンロード)への劇的なシフトを生じさる。加えて、PULVADサポートはLVメカノエナジェティクスを最適化し、SVおよびEFは増加し、同時に、SW(ループ内の面積として測定される)は減少する。
【0085】
実施例5:圧力アンロード左心室補助装置のサポートは、左心室の収縮性を改善する
図面を再び参照すると、図22は、dP/dTmaxおよびdP/dTminに対するPULVAD効果を示す。dP/dTmax(A)およびdP/dTmin(B)におけるPULVAD誘発変化の定量分析(PULVADオフと比較して*p<0.05)。C~F:dP/dTmaxおよびdP/dTminにおけるPULVAD誘発変化は、虚血中の収縮期および拡張末期の動脈圧におけるPULVAD誘発低下と有意に相関した。PULVAD、圧力アンロード左心室補助装置。
【0086】
急性HF設定では、PULVADサポートは、dP/dTmaxの有意な減少およびdP/dT minの有意な増加を誘発した。しかしながら、dP/dTmaxおよびdP/dTminは、負荷に依存しており(それらは、アフターロードの増加に伴って改善される)、本発明者らは、(IABPを使用して)対抗脈動によって誘発されるアフターロードの減少が、dP/dTにおける変化と有意に相関することを以前に示している。PULVADサポート中のdP/dTmaxおよびdP/dTminの変化は、収縮期および拡張末期動脈圧におけるPULVAD誘発性低下と有意に相関した(心臓アフターロードのマーカーとして使用される)(図22)。したがって、PULVADサポート中に観察されたdP/dTmaxにおける減少およびdP/dTminにおける増加は、PULVAD誘発のLV収縮期および拡張期機能の悪化と解釈されるのではなく、圧力アンロード(すなわち、心臓アフターロードにおける減少)に起因するはずである。
【0087】
図面を再び参照すると、図23は、PULVADサポートが不全LVの収縮性を改善することを示す。A:短時間PULVADサポート無しおよびサポート後の(プリロードの減少時の)圧力-体積ループのファミリー。最大エラスタンス(Emax、すなわち収縮末期圧と体積の関係の傾き)は、PULVADサポート後に増加する。右側の破線は、左側の実線(PULVADオフ)の傾きを示す。B:EmaxにおけるPULVAD誘発変化の定量分析(PULVADオフと比較して、*p<0.05)。PULVAD、圧力アンロード左心室補助装置。PULVADサポートは、Emaxにおける有意な増加を誘発し、ESPVRのより急峻な傾斜として現れ(図23、表1)、不全LVの改善された収縮性を示唆している。
【0088】
実施例6:圧力アンロード左心室補助装置サポートは、再灌流心筋における左前下行枝血流を増加させる
図面を再び参照すると、図24は、PULVADが不全心臓における冠動脈血流を増加させることを示す。A:再灌流中に短時間PULVADサポート無しおよび有りのLAD血流波形。PULVADによって誘発される拡張期血流における劇的な増強(*で表される)に留意されたい。平均LAD血流(B)、収縮期LAD血流(C)、および拡張期LAD血流(D)におけるPULVAD誘発変化の定量分析(PULVADオフと比較して*p<0.05)。LAD左前下行動脈、PULVADは圧力アンロード左心室補助装置。図24Aは、急性HF設定におけるPULVADサポートの有無による代表的なLAD血流記録を示す。PULVADサポートは、収縮期中のLAD血流を減少させた(32.5±13.9から11.0±28.0ml/分、p=0.090)が、拡張期中のLAD血流を劇的に増加させ(62.4±31.4から98.3±36.3、p=0.001)、平均LAD血流において正味の有意な増加をもたらした(50.8±23.4から64.6±24.2、p=0.034)(図24、B~D、表1)。収縮期LAD血流における減少と拡張期血流における劇的な増加とは、大動脈血圧におけるPULVAD誘発変化(すなわち、収縮期圧における減少と拡張期圧増強とをそれぞれ)を反映している。これらの発見は、再灌流された虚血性心臓(冠動脈の自動調節が著しく損なわれている)では、(心筋の酸素要求ではなく)灌流圧が、冠動脈流の主な決定要因となるという考え方と一致する。14、15対照的に、総頸動脈における血流はPULVADサポートによって影響を受けないままであり(PULVADオフ:88.0±55.8対PULVADオン:85.1±56.1、p=0.173)、脳循環の損なわれていない自己調節能力を示している。
【0089】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、特に文脈で明らかに指示されない限り、複数の形態も同様に含むことが意図される。任意の物体に関連して使用される「近位」という用語は、物体のオペレータ(または何らかの他の記述された基準点)に最も近い物体の部分を指し、「遠位」という用語は、物体のオペレータ(または何らかの他の記述された基準点)から最も遠い物体の部分を指す。「オペレータ」という用語は、特に医療の提供に関連して、医療患者に臨床的ケアを提供する任意の専門家または準専門家を意味し、指す。
【0090】
別段の指示がない限り、本明細書、図面、および特許請求の範囲で使用される量、特性などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値的特性は、本発明の実施形態において所望される好適な特性に応じて変化し得る近似値である。一般的な発明概念の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値は、できるだけ正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの測定値に見出される誤差から必ず生じる特定の誤差を本質的に含んでいる。
【0091】
開示された実施形態は、ヒト脊椎の文脈で説明され、図面に図示されているが、本明細書の実施形態のすべてまたは様々な態様は、他の種と関連して、および組織内での深いアクセスが望ましい身体の他の部分上の任意の種内で使用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。
【0092】
本明細書で明示的に除外されない限り、かかるすべての組み合わせおよび部分組み合わせは、一般的な発明の概念の範囲内であることが意図される。さらに、本発明の様々な態様、概念、および特徴に関して様々な代替の実施形態(代替の材料、構造、構成、方法、装置および構成要素、形成、適合および機能などの代替案など)が本明細書に説明され得るが、そのような説明は、現在知られているか、または後で開発されるかにかかわらず、利用可能な代替の実施形態の完全なまたは網羅的なリストであることを意図するものではない。
【0093】
当業者は、たとえ本明細書に明示的に開示されていないとしても、本発明の態様、概念、および特徴のうちの1つ以上を追加の実施形態に容易に採用し得、一般的な発明の概念の範囲内で使用する。加えて、本発明のいくつかの特徴、概念、および態様は、好ましい配置または方法であるとして本明細書で説明され得るが、そのような説明は、明示的に述べられない限り、そのような特徴が要求されること、または必要であることを示唆することを意図するものではない。さらに、例示的または代表的な値および範囲は、本開示を理解するのを助けるために含まれ得るが、そのような値および範囲は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、明示的に述べられている場合にのみ、重要な値または範囲であることが意図される。
【0094】
さらに、様々な態様、特徴、および概念は、本明細書において、発明である、または発明の一部を形成するものとして明示的に特定され得るが、そのような特定は、排他的であることを意図するものではなく、むしろ、そのようなものとして、または特定の発明の一部として明示的に特定されることなく、本明細書で完全に説明される発明の態様、概念、および特徴が存在し得る。例示的な方法またはプロセスの説明は、すべての場合において必要とされるとしてすべてのステップを含むことに限定されず、明示的に述べられない限り、ステップが要求されるまたは必要とされると解釈されるように提示される順序に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】