(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ベータ-アレスチン突然変異体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220308BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220308BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220308BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220308BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/47
C07K14/705
C12P21/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543318
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2020051394
(87)【国際公開番号】W WO2020152152
(87)【国際公開日】2020-07-30
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325662
【氏名又は名称】インターアクス バイオテック アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】InterAx Biotech AG
【住所又は居所原語表記】PARK innovAARE, 5234 Villigen, Switzerland
(71)【出願人】
【識別番号】501494414
【氏名又は名称】パウル・シェラー・インスティトゥート
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ メジェール
(72)【発明者】
【氏名】マーティン コンラート オースターマイアー
(72)【発明者】
【氏名】マリア ヴァルトヘーア
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム ツィマーマン
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG20
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4H045AA10
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アレスチン突然変異体、特にベータ-アレスチンの突然変異体、本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体、および本発明の突然変異体ベータ-アレスチンをコードするベクターの分野に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して少なくとも2つのアミノ酸が親ベータ-アレスチンと比較して突然変異した突然変異体ベータ-アレスチンであって、前記親ベータ-アレスチンが自然発生ベータ-アレスチンであり、前記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、前記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にある、突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項2】
前記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して前記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している、請求項1記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項3】
前記少なくとも3つの突然変異アミノ酸の第3のアミノ酸が、配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166A、D298およびR393からなる群から選択されるアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にある、請求項2記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項4】
前記親ベータ-アレスチンが自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項5】
前記親ベータ-アレスチンが、配列番号1および配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項6】
前記親ベータ-アレスチンが自然発生アレスチン-3であり、好ましくは前記自然発生アレスチン-3が自然発生ヒト、ウシ、マウスまたはラットアレスチン-3からなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項7】
前記親ベータ-アレスチンが、配列番号1または配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項8】
前記突然変異体ベータ-アレスチンが、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項9】
独立して少なくとも2個かつ最大で40個のアミノ酸位置、好ましくは少なくとも2個かつ最大で20個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で10個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で5個のアミノ酸位置が前記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している、請求項1から8までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項10】
独立して少なくとも2個かつ最大で4個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で3個のアミノ酸位置が前記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している、請求項1から9までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項11】
前記突然変異がアミノ酸と異なるアミノ酸との交換であり、前記異なるアミノ酸がグリシン、アラニン、2-アミノ酪酸、アロイソロイシン、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、ノルバリンおよびバリンからなる群から選択され、好ましくは前記異なるアミノ酸がグリシン、ロイシン、イソロイシン、アラニンまたはバリンである、請求項1から10までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項12】
前記突然変異体ベータ-アレスチンが配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項13】
前記突然変異体ベータ-アレスチンが配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチン。
【請求項14】
突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体であって、好ましくは前記GPCRがβ2-アドレナリン受容体(β2AR)である、複合体。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項記載の突然変異体ベータ-アレスチンをコードするベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレスチン突然変異体、特にベータ-アレスチンの突然変異体、本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体、および本発明の突然変異体ベータ-アレスチンをコードするベクターの分野に関する。
【0002】
関連技術
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、Gタンパク質を介した経膜シグナル伝達を媒介する膜受容体のファミリーである。刺激に応答して、GPCRがGタンパク質を活性化してセカンドメッセンジャーの生成を調節し、これが続いて下流のシグナル伝達エフェクターを調整する。シグナル伝達応答を止めるには、GPCRキナーゼ(GRK)が動員されてGPCRをリン酸化し、アレスチンが結合するようにする。アレスチン結合は、Gタンパク質媒介シグナル伝達を遮断し、受容体を内在化経路に指向することができる。GPCRに結合することで、アレスチンはGPCRシグナル伝達ネットワークを組織化する足場としても働く(Zhou et al., 2017, Identification of Phosphorylation Codes for Arrestin Recruitment by G Protein-Coupled Receptors, Cell 170, pp. 457-469)。GPCR-アレスチン複合体の独特な立体配座がGPCRと相互作用してGタンパク質を脱感作し、受容体エンドサイトーシスを媒介することが提唱されている(Cahill et al., Distinct conformations of GPCR-β-arrestin complexes mediate desensitization, signaling, and endocytosis, PNAS 114(10), pp. 2562-2567)。
【0003】
アレスチンは、視覚アレスチン、S抗原または48kDaタンパク質とも呼ばれるアレスチン-1;β-アレスチン1とも呼ばれるアレスチン-2;β-アレスチン2とも呼ばれるアレスチン-3;および錐体アレスチンまたはX-アレスチンとも呼ばれるアレスチン-4等の幾つかのサブタイプを含む小さなタンパク質ファミリーを形成する。アレスチン-1は、最初に発見されたアレスチンであり、光情報伝達におけるその極めて重要な役割から視覚アレスチンと名付けられた。β-アレスチン(ベータ-アレスチン)は、β-アレスチン1(ARRB1遺伝子によってコードされる)およびβ-アレスチン2(ARRB2遺伝子によってコードされる)と称される2つの異なるアイソフォームとして存在する細胞質アダプタータンパク質である。近年、α-アレスチンと称されるアレスチンの別のサブタイプが同定された。α-アレスチンは、それらの視覚/錐体およびβ-アレスチン対応物と構造的に類似しており、脂肪分解および肥満の発症機序を調節することが提唱されている(Ahmadzai et al., Canonical and Noncanonical Signaling Roles of β-Arrestins in Inflammation and Immunity, Advances in Immunology 136, pp. 279-313)。
【0004】
Potter et al., 2002 (Arrestin Variants Display Differential Binding Characteristics for the Phosphorylated N-Formyl Peptide Receptor Carboxyl Terminus, J Biol Chem 277(11), pp. 8970-8978, 2002)では、アレスチンファミリーの様々なメンバーとGPCR受容体ファミリーのメンバーであるホルミルペプチド受容体(FPR)との相互作用が調べられた。アレスチン-2およびアレスチン-3は、FPRカルボキシル末端ペプチドにリン酸化依存的に結合したが、アレスチン-1は結合しなかった。切断型アレスチン-2(1~382)およびアレスチン-3(1~393)は、無傷受容体へのリン酸化非依存的な結合を示す。アレスチン-2の2つの付加的な突然変異体をFPRカルボキシル末端へのそれらの結合親和性について評価した。単一点突然変異体であるアレスチン-2 R169Eは、FPRカルボキシル末端への結合について完全長アレスチンと同様の親和性を示したが、三重点突然変異体であるアレスチン-2 I386A/V387A/F388Aは、より切断型のアレスチンに近い親和性を示した。
【0005】
発明の概要
本発明者らは、細胞ベースの生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイにおいて実証されるように、GPCR、特にβ2-アドレナリン受容体(β2AR)へのリガンドの動員の増大を示すベータ-アレスチン突然変異体を設計した。野生型(WT)アレスチン-3と比較して、本発明のアレスチン-3突然変異体による動員は、最大で30%増大する。
【0006】
さらに、本発明のベータ-アレスチン突然変異体はバイオセンサーとして機能し、WTベータ-アレスチン突然変異体と比較してより高感度に細胞中のβ2ARイソプロテレノール活性化立体配座を検知することが可能である。本発明のベータ-アレスチン突然変異体、特にアレスチン-3突然変異体は、WTアレスチン-3と比較して細胞中のより少量の活性化受容体を認識することができ(より高い効力)、最高濃度のβ2ARアゴニストを用いた場合に検出される最大シグナルの30%までの増大を示す(より高い有効性)。
【0007】
加えて、GPCRに対する本発明のベータ-アレスチン突然変異体の相対反応性を比較することで、種々の立体配座状態をBRETアッセイにおいて区別することができる。BRETアッセイは、アレスチン動員の反応速度測定を可能にし、GPCR立体配座が平衡によって遷移することから、本発明のベータ-アレスチン突然変異体は、かかる変化のモニタリングに適している。アレスチンを刺激後のGPCRのリン酸化カルボキシ末端により低感度にすることで、特に配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置での突然変異による本発明のベータ-アレスチン突然変異体は、受容体のリン酸化非依存的立体配座を検知することも可能にする。
【0008】
さらに、本発明のベータ-アレスチン突然変異体の細胞における発現レベルを、(例えば融合緑色蛍光タンパク質(GFP)等のレポータータンパク質を用いて)モニタリングした。
【0009】
ヒトHEK293細胞におけるアレスチン-3突然変異体の一貫したより低い発現(WTアレスチン-3と比較して26%~55%の範囲)にも拘らず、β2ARへのより強い動員が依然として観察された。この点を考慮に入れて、本発明者らは、本発明のアレスチン-3突然変異体のタンパク質間相互作用の実際の強度は、BRETアッセイによって与えられる実験値を超えるはずであると予測する。
【0010】
このため、第1の態様では、本発明は、独立して少なくとも2つのアミノ酸が親ベータ-アレスチンと比較して突然変異した突然変異体ベータ-アレスチンであって、上記親ベータ-アレスチンが自然発生ベータ-アレスチンであり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にある、突然変異体ベータ-アレスチンを提供する。
【0011】
更なる態様では、本発明は、突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体であって、好ましくは上記GPCRがβ2-アドレナリン受容体(β2AR)である、複合体を提供する。
【0012】
更なる態様では、本発明は、本発明のベータ-アレスチンをコードするベクターを提供する。
【0013】
更なる態様では、本発明は、上記複合体または上記複合体の上記GPCRの構造の解明のための本発明の突然変異体ベータ-アレスチンまたは本発明の複合体の使用を提供する。
【0014】
更なる態様では、本発明は、薬物スクリーニングのための本発明の突然変異体ベータ-アレスチンまたは本発明の複合体の使用であって、GPCRへのアレスチン-3突然変異体の動員を測定する、使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)に基づくB2ARへのアレスチン-3突然変異体の古典的アレスチン動員アッセイを行い、新規のアレスチン-3突然変異体の動員効率を比較した。β2ARへの野生型アレスチン-3ならびにアレスチン-3突然変異体A、B、CおよびDのイソプロテレノール誘導性動員の濃度応答曲線を示す。
【
図2】オンラインツールProtein BLAST/blastpアルゴリズム(マトリックスBLOSUM62、条件付き組成スコアマトリックス調整(conditional compositional score matrix adjustment)、米国国立生物工学情報センター)を用いた野生型アレスチン-3(Query)とT299A、I386AおよびR166Aを有する三重突然変異体B(Sbjct)とのタンパク質配列アラインメントを示す図である。突然変異R166A、T299AおよびI386Aは空白によって表される。この表示では開始コドン(ATG、メチオニン)が除かれていることから、アミノ酸番号が1アミノ酸ずれる。
【
図3】ヒト野生型アレスチン-3(ARRB2_HUMAN)とマウス、ラットおよびウシ相同アレスチン-3タンパク質との配列アラインメントを示す図である。濃い灰色:同一の残基;薄い灰色:側鎖の極性およびサイズの点で類似した残基;強調表示なし:異なる残基;「-」:他の配列への挿入。全体として非常に高い相同性(91.92%)が387個の同一の残基、15個の類似した残基および7個の異なる残基で全配列において見られた。分析は、Soeding, J. el al., Protein homology detection be HMM-HMM comparison, Bioinformatics 21, pp. 951-960に記載されるようにデフォルトの遷移マトリックスGonnetおよびHHalignアルゴリズムを用いるプログラムclustal-omegaによってそのデフォルト設定で行った。
【
図4】2つのアイソフォームアレスチン-2(ARRB2_HUMAN)およびアレスチン-3(ARRB1_HUMAN)のアラインメントを示す図である。濃い灰色:同一の残基;薄い灰色:側鎖の極性およびサイズの点で類似した残基;強調表示なし:異なる残基;「-」:他の配列への挿入。全体として73.47%の相同性が313個の同一の残基、63個の類似した残基および33個の異なる残基で全配列において見られた。分析は、Soeding, J. el al., Protein homology detection be HMM-HMM comparison, Bioinformatics 21, pp. 951-960に記載されるようにデフォルトの遷移マトリックスGonnetおよびHHalignアルゴリズムを用いるプログラムclustal-omegaによってそのデフォルト設定で行った。
【0016】
発明の詳細な説明
他に規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語または「含む(include)」という語、ならびに「含む(comprises/includes)」および「含んでいる(comprising/including)」等の変化形は、要素、規定の整数、工程またはそれらの群を含むことを意味するが、任意の他の要素、規定の整数、工程またはそれらの群を除外することを意味しないと理解されるものとする。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の指定がない限り、複数の指示対象を含む。
【0019】
「約」または「およそ」という用語は、数値に関連して使用される場合、指定の数値より0~10%小さい下限を有し、指定の数値より0~10%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することが意図される。「約」または「およそ」という用語は、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±3%または最も好ましくは±0%(それぞれ所与の数値を指す)を意味する。本発明の実施形態のそれぞれにおいて、「約」が削除されている場合がある。本明細書で開示される値の全範囲が、範囲を規定する値を含む、上記範囲内に含まれるあらゆる値を指し、含むものとする。
【0020】
「自然発生」という用語は、本明細書で使用される場合、全体またはその一部が合成ではなく、天然に存在するまたは産生されることを意味する天然起源の配列を指す。より好ましくは、「自然発生」という用語は、本明細書で使用される場合、配列全体が合成ではなく、天然に存在するまたは産生されることを意味する天然起源の配列を指す。
【0021】
「ベータ-アレスチン」という用語は、好ましくはアレスチン-2(β-アレスチン1)およびアレスチン-3(β-アレスチン2)を含む。より好ましくは、「ベータ-アレスチン」という用語は、アレスチン-2およびアレスチン-3のみを指す。「ベータ-アレスチン」という用語は、完全なおよび切断型のベータ-アレスチンを含む。典型的にかつ好ましくは、アレスチン-2およびアレスチン-3という用語は、古典的配列を指す。
【0022】
「突然変異した」、「突然変異」および「突然変異体」という用語は、本明細書で区別なく使用される。典型的にかつ好ましくは、上記突然変異アミノ酸または突然変異は、1つのアミノ酸と1つ以上のアミノ酸との交換、挿入、欠失またはそれらの組合せである。最も好ましくは、上記突然変異アミノ酸または突然変異は、単一アミノ酸と異なる単一アミノ酸との交換である。
【0023】
突然変異したまたは突然変異体ベータ-アレスチンは、親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは、典型的にかつ好ましくは自然発生ベータ-アレスチンである。突然変異したまたは突然変異体アレスチン-3は、親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは、典型的にかつ好ましくは自然発生アレスチン-3である。
【0024】
アレスチン-3のアミノ酸位置は、本明細書で、好ましくは構造アラインメントによってヒトアレスチン-3(配列番号1)に対してアラインメント(またはマッピング)される。本明細書で使用される場合、「対応するアミノ酸残基」または「にアミノ酸位置が対応する」という表現は、配列番号1のヒトアレスチン-3中の所与のアミノ酸残基に対してアラインメントされるベータ-アレスチン中のアミノ酸残基を指す。典型的にかつ好ましくは、構造アラインメントを、Schroedinger, LLCのソフトウェアであるPyMOL、Molecular Graphics System、Version 2.0組み込みアラインメントアルゴリズムを用いて行う。典型的にかつ好ましくは、アラインメントは構造アラインメントである。ウシアレスチン-3に基づくかかるアラインメントの一例は、Zhan, X. et al,, 2011 (“Crystal Structure of Arrestin-3 Reveals the Basis of the Difference in Receptor Binding Between Two Non-visual Subtypes”, J. Mol. Biol. 406(3), pp. 467-478)(Swiss-model)に説明され、本願の
図2、
図3および
図4にも示される。典型的にかつ好ましくは、アラインメントは、標準アルゴリズムパラメーターを用いたタンパク質間BLASTを用いて行われる。好ましい標準パラメーターは、閾値10、ワードサイズ3、マトリックスBLOSUM62、ギャップコストExistence 11/Extension 1、条件付き組成スコアマトリックス調整、フィルターおよびマスキングなしである。
【0025】
「Gタンパク質共役受容体」という用語(GPCR)は、典型的にかつ好ましくは、クラスA(または1)(ロドプシン様)、クラスB(または2)(セクレチン受容体ファミリー)、クラスC(または3)(代謝型グルタミン酸/フェロモン)、クラスD(または4)(真菌接合フェロモン受容体)、クラスE(または5)(サイクリックAMP受容体)、クラスF(または6)(Frizzled/Smoothened)の受容体を指す。より好ましくは、GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。より好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。上記アドレナリン受容体は、典型的にかつ好ましくは、アルファ1A(ADRA1A、A1AA)、アルファ1B(ADRA1B、A1AB)、アルファ1D(ADRA1D、A1AD)、アルファ2A(ADRA2A、A2AA)、アルファ2B(ADRA2B、A2AB)、アルファ2C(ADRA2C、A2AC)、ベータ1(ADRB1、B1AR)、ベータ2(ADRB2、B2AR)、ベータ3(ADRB3、B3AR)を含む。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0026】
第1の態様では、本発明は、独立して少なくとも2つのアミノ酸が親ベータ-アレスチンと比較して突然変異した突然変異体ベータ-アレスチンであって、上記親ベータ-アレスチンが自然発生ベータ-アレスチンであり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にある、突然変異体ベータ-アレスチンに言及する。
【0027】
好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3である。好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスまたはラットアレスチン-3からなる群から選択される。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1もしくは配列番号7~9のいずれか1つ、または配列番号1のいずれか1つもしくは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択される。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0028】
好ましくは、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、独立して少なくとも2つのアミノ酸が親アレスチン-3と比較して突然変異した突然変異体アレスチン-3であり、ここで、上記親アレスチン-3は自然発生アレスチン-3であり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にある。より好ましくは、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、独立して少なくとも2つのアミノ酸が親アレスチン-3と比較して突然変異した突然変異体アレスチン-3であり、ここで、上記親アレスチン-3は自然発生アレスチン-3であり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にある。
【0029】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、独立して少なくとも2つのアミノ酸が親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンであり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にあり、任意に、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、第3のアミノ酸位置でアミノ酸が突然変異している。好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がさらにより好ましい。
【0030】
より好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、独立して少なくとも2つのアミノ酸が親アレスチン-3と比較して突然変異した突然変異体アレスチン-3であり、好ましくは、上記親アレスチン-3は自然発生アレスチン-3であり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第1のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記少なくとも2つの突然変異アミノ酸の第2のアミノ酸が配列番号1のヒトアレスチン-3中のT299に相当するアミノ酸位置にあり、任意に、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、第3のアミノ酸位置でアミノ酸が突然変異している。好ましくは、上記親アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。より好ましくは、上記親アレスチン-3は配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がより好ましい。
【0031】
好ましくは、上記の任意の第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の位置R166、D298およびR393からなる群から選択される。より好ましくは、上記の任意の第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166またはD298である。さらにより好ましくは、上記の任意の第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166である。
【0032】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。上記親ベータ-アレスチンは、好ましくは配列番号1のいずれか1つまたは配列番号6~12のいずれか1つのものである。別の好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3であり、好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は、配列番号1または配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0033】
好ましい実施形態では、上記少なくとも3つの突然変異アミノ酸の第3のアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166A、D298およびR393からなる群から選択されるアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にある。好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0034】
好ましい実施形態では、上記少なくとも3つの突然変異アミノ酸の第3のアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166A、D298およびR393からなる群から選択されるアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にあり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3であり、好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は、配列番号1または配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0035】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸が、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386、および第3のアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がさらにより好ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。より好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体であり、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にあり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記ベータ-アレスチンは配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がさらにより好ましい。
【0037】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の位置R166、D298およびR393からなる群から選択される。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0038】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386に相当するアミノ酸位置にあり、上記第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の位置R166、D298およびR393からなる群から選択され、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。より好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がさらにより好ましい。
【0039】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にあり、上記第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166またはD298である。別の好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のR166に相当するアミノ酸位置にある。別の好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のD298に相当するアミノ酸位置にある。別の好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のR393に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0040】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にあり、上記第3のアミノ酸位置は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中のR166またはD298であり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。別の好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のR166に相当するアミノ酸位置にあり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。別の好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のD298に相当するアミノ酸位置にあり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。別の好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のR393に相当するアミノ酸位置にあり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3突然変異体である。より好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がさらにより好ましい。
【0041】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも4つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも4つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386、第3のアミノ酸位置のR166、D298またはR393、および第4のアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0042】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも4つのアミノ酸が独立して親アレスチン-3と比較して突然変異しており、上記少なくとも4つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386、第3のアミノ酸位置のR166、D298またはR393、および第4のアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置にあり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3である。より好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がさらにより好ましい。
【0043】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも2つのアミノ酸が独立して、自然発生ベータ-アレスチンである親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にある(二重突然変異体T299+I386)。好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも2つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは好ましくは自然発生アレスチン-3であり、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にある(二重突然変異体T299+I386)。
【0044】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、
-少なくとも2つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にあるか、または
-少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386、および第3のアミノ酸位置のR166、D298またはR393に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0045】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、
-少なくとも2つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にあるか、または
-少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386、および第3のアミノ酸位置のR166またはD298に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0046】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、
-少なくとも2つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にあるか、または
-少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のR166に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0047】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、
-少なくとも2つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にあるか、または
-少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のD298に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0048】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、
-少なくとも2つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも2つのアミノ酸は、配列番号1のヒトアレスチン-3中のI386およびT299に相当するアミノ酸位置にあるか、または
-少なくとも3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチン、好ましくは自然発生ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386および第3のアミノ酸位置のR393に相当するアミノ酸位置にある。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0049】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも3つのアミノ酸が独立して、自然発生ベータ-アレスチンである親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記少なくとも3つのアミノ酸は、それぞれ配列番号1のヒトアレスチン-3中の第1のアミノ酸位置のT299、第2のアミノ酸位置のI386、および第3のアミノ酸位置のR166、D298またはR393に相当するアミノ酸位置にある。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0050】
好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチン、または上記自然発生ベータ-アレスチンのいずれか1つと80%~100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質からなる群から選択される。更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは、自然発生ヒトベータ-アレスチンまたは自然発生ヒトベータ-アレスチンと80%~100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である。またさらに好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒトベータ-アレスチンである。別の好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3、または上記自然発生アレスチン-3のいずれか1つと80%~100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質からなる群から選択される。更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、自然発生ヒトベータ-アレスチンまたは自然発生ヒトベータ-アレスチンと80%~100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である。またさらに好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は自然発生ヒトベータ-アレスチンである。好ましくは、上記自然発生ベータ-アレスチンまたはアレスチン-3のいずれか1つと80%~100%のアミノ酸配列同一性を有する上記タンパク質は、GPCRに対してリガンド結合能を保持する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはβ2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0051】
更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスまたはラットベータ-アレスチンと比較した場合に80%~100%、より好ましくは85%~100%、さらにより好ましくは90%~100%、さらにより好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質であり、ヒトアレスチンがより好ましい。更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、自然発生ヒト、ウシ、マウスまたはラットアレスチン-3と比較した場合に80%~100%、より好ましくは85%~100%、さらにより好ましくは90%~100%、さらにより好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質であり、ヒトアレスチンがより好ましい。
【0052】
更なる好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは、自然発生ヒト、ウシ、マウスまたはラットベータ-アレスチンと比較した場合に80%~100%、より好ましくは85%~100%、さらにより好ましくは90%~100%、さらにより好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質であり、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記突然変異体アレスチン-3は、自然発生ヒト、ウシ、マウスまたはラットアレスチン-3と比較した場合に80%~100%、より好ましくは85%~100%、さらにより好ましくは90%~100%、さらにより好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質であり、ヒトアレスチン-3がより好ましい。
【0053】
別の好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。本発明の更なる好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは突然変異体アレスチン-3であり、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3である。本発明の更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、上記ベータ-アレスチンはアレスチン-3であり、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチン-3がより好ましい。
【0054】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号1のいずれか1つまたは配列番号6~12のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%のアミノ酸配列同一性を有する。別の好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号1のいずれか1つまたは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%のアミノ酸配列同一性を有する。更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3であり、上記突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号1のいずれか1つまたは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0055】
好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1もしくは配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1のいずれか1つもしくは配列番号6~12のいずれか1つと80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、配列番号1もしくは配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1のいずれか1つまたは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1、または配列番号1と80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1のいずれか1つもしくは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、配列番号1もしくは配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1のいずれか1つもしくは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましくは、配列番号1のいずれか1つもしくは配列番号7~9のいずれか1つと80%~100%の同一性を有する上記アミノ酸配列、または配列番号1のいずれか1つもしくは配列番号6~12のいずれか1つと80%~100%の同一性を有するアミノ酸配列は、GPCRに対するリガンド結合能を保持する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0056】
更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列と比較した場合に80%~100%、より好ましくは85%~100%、さらにより好ましくは90%~100%、さらにより好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質であり、配列番号1または6がより好ましい。更なる好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、配列番号1または配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列と比較した場合に80%~100%、より好ましくは85%~100%、さらにより好ましくは90%~100%、さらにより好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質であり、配列番号1がより好ましい。
【0057】
好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、上記親ベータ-アレスチンは親アレスチン-3であり、上記親アレスチン-3は、配列番号1または配列番号7~9のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0058】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、少なくとも2個かつ最大で80個のアミノ酸位置、好ましくは少なくとも2個かつ最大で40個のアミノ酸位置、さらに好ましくは少なくとも2個かつ最大で20個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で10個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で5個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で4個のアミノ酸位置、最も好ましくは少なくとも2個かつ最大で3個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。
【0059】
好ましい実施形態では、少なくとも2個かつ最大で40個のアミノ酸位置、さらに好ましくは少なくとも2個かつ最大で20個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で10個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で5個のアミノ酸位置が、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。上記親ベータ-アレスチンは自然発生ベータ-アレスチンである。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0060】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは突然変異体アレスチン-3であり、少なくとも2個かつ最大で80個のアミノ酸位置、好ましくは少なくとも2個かつ最大で40個のアミノ酸位置、さらに好ましくは少なくとも2個かつ最大で20個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で10個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で5個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で4個のアミノ酸位置、最も好ましくは少なくとも2個かつ最大で3個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3である。好ましい実施形態では、少なくとも2個かつ最大で40個のアミノ酸位置、さらに好ましくは少なくとも2個かつ最大で20個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で10個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で5個のアミノ酸位置が、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3であり、好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は、配列番号1または7~9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がさらにより好ましい。
【0061】
更なる好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、独立して少なくとも2個かつ最大で4個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で3個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。更なる好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、独立して少なくとも2個かつ最大で4個のアミノ酸位置、さらにより好ましくは少なくとも2個かつ最大で3個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3であり、好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は、配列番号1または7~9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0062】
更なる好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、ちょうど2つまたはちょうど3つのアミノ酸が独立して上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。更なる好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、独立してちょうど4個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。さらに非常に好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、独立してちょうど2個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。さらに非常に好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、独立してちょうど3個のアミノ酸位置が上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。より好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットベータ-アレスチンからなる群から選択され、ヒトベータ-アレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記親ベータ-アレスチンは、配列番号1または配列番号6~12のいずれか1つからなる群から選択され、配列番号1または6がより好ましい。
【0063】
更なる好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンにおいて、ちょうど2つまたはちょうど3つのアミノ酸が独立して親ベータ-アレスチンと比較して突然変異しており、上記親ベータ-アレスチンは自然発生アレスチン-3であり、好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は、配列番号1または7~9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。更なる好ましい実施形態では、上記の本発明のベータ-アレスチン突然変異体において、独立してちょうど4個のアミノ酸位置が、自然発生アレスチン-3である上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。さらに非常に好ましい実施形態では、上記の本発明のベータ-アレスチン突然変異体において、独立してちょうど2個のアミノ酸位置が、自然発生アレスチン-3である上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。さらに非常に好ましい実施形態では、上記の本発明のベータ-アレスチン突然変異体において、独立してちょうど3個のアミノ酸位置が、自然発生アレスチン-3である上記親ベータ-アレスチンと比較して突然変異している。より好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は自然発生ヒト、ウシ、マウスおよびラットアレスチン-3からなる群から選択され、ヒトアレスチンがより好ましい。さらにより好ましくは、上記自然発生アレスチン-3は配列番号1、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択され、配列番号1がさらにより好ましい。
【0064】
好ましい実施形態では、上記突然変異アミノ酸または突然変異は、単一アミノ酸と異なる単一アミノ酸との交換であり、上記異なるアミノ酸はグリシン、アラニン、2-アミノ酪酸、2-アミノヘプタン酸、tertロイシン、ジエチルアラニン、ホモロイシン、3-メチル-l-アロイソロイシン、アロイソロイシン、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、ノルバリン、バリン、ビニルグリシンおよび2-アリル-グリシンからなる群から選択される。より好ましくは、上記異なるアミノ酸はグリシン、アラニン、2-アミノ酪酸、アロイソロイシン、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、ノルバリンおよびバリンからなる群から選択される。さらにより好ましくは、上記異なるアミノ酸はグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシンまたはバリンである。またさらにより好ましくは、上記異なるアミノ酸はアラニンである。しかしながら、親の特定のアミノ酸残基が既にアラニンである場合、これがグリシン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンに置き換えられることが好ましい。
【0065】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%、より好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0066】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16からなる群から選択される配列を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、上記突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のいずれか1つと80%~100%、好ましくは90%~100%、より好ましくは95%~100%、さらにより好ましくは99%~100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0068】
より好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択される配列を有する。
【0069】
好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群から選択される配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号2または配列番号4の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号2の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号3の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号4の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号5の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号13の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号14の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号15の配列を有する。好ましい実施形態では、上記の本発明の突然変異体ベータ-アレスチンは、配列番号16の配列を有する。
【0070】
更なる態様では、当該発明は、本発明のベータ-アレスチン突然変異体を含む組成物に関する。
【0071】
更なる態様では、当該発明は、突然変異体ベータ-アレスチンおよびGPCRの組合せに関する。
【0072】
好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0073】
更なる態様では、当該発明は、突然変異体ベータ-アレスチンおよびGPCRの組合せを含む組成物に関する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。上記組合せにおいて、上記突然変異体ベータ-アレスチンおよび上記GPCRは、互いに結合していなくても、または互いに結合していてもよい。突然変異体ベータ-アレスチンおよびGPCRの組合せを含む上記組成物では、上記突然変異体ベータ-アレスチンおよび上記GPCRは、互いに結合していなくても、互いに結合していても、または互いに部分的に結合し、かつ部分的に結合していなくてもよい。
【0074】
更なる態様では、当該発明は、突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体に関する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0075】
更なる態様では、当該発明は、突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体を含む組成物に関する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。複合体において、上記突然変異体ベータ-アレスチンおよび上記GPCRは互いに結合している。
【0076】
更なる態様では、当該発明は、本発明の突然変異体ベータ-アレスチンをコードするベクターに関する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0077】
更なる態様では、当該発明は、本発明の突然変異体ベータ-アレスチンをコードするベクターを含む組成物に関する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0078】
更なる態様では、当該発明は、本発明の突然変異体ベータ-アレスチンおよび本発明の突然変異体ベータ-アレスチンをコードするベクターを含む組成物に関する。
【0079】
更なる態様では、本発明は、GPCRまたはGPCRと本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとの複合体の構造の解明のための本発明の突然変異体ベータ-アレスチンまたは本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体の使用に関する。好ましくは、上記GPCRはロドプシン様受容体、より好ましくはサブファミリーA17のロドプシン様受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはアドレナリン受容体である。さらにより好ましくは、上記GPCRはベータ-2アドレナリン受容体である。好ましくは、上記ベータ-2アドレナリン受容体は古典的自然発生ヒト、マウス、ラットまたはウシベータ-2アドレナリン受容体である。
【0080】
本発明のベータ-アレスチン突然変異体は、GPCRと上記ベータ-アレスチン突然変異体との複合体を安定させる。好ましい実施形態では、上記ベータ-アレスチン突然変異体は、GPCRをリガンド誘導活性化状態に安定させる。GPCRと本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとの複合体は、例えばタンパク質結晶化または他の手段によるGPCRまたはGPCR-アレスチン複合体の構造の解明に適した特性を有する。好ましい実施形態では、GPCRまたはGPCRとベータ-アレスチン突然変異体との複合体の解明された構造が、コンピューターによる薬物候補の設計およびスクリーニングに用いられる。
【0081】
更なる態様では、本発明は、薬物スクリーニング、好ましくはコンピューターによる薬物スクリーニングのための本発明の突然変異体ベータ-アレスチンまたは本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体の使用に関する。好ましい実施形態では、上記GPCRはβ2ARである。好ましい実施形態では、本発明の突然変異体ベータ-アレスチンとGPCRとの複合体は、本発明のベータ-アレスチン突然変異体によって安定する。好ましくは、上記の本発明のベータ-アレスチン突然変異体は、GPCRをリガンド誘導活性化状態に安定させることが可能である。GPCRのかかる活性状態は、β2ARによって例示的に示される(Rasmussen et al., Structure of a Nanobody-Stabilized Active State of the Beta2-Adrenoceptor, Nature, 2011、Rasmussen et al., Crystal Structure of the Beta2-Adrenergic Receptor-Gs Protein Complex, Nature, 2011)。かかる安定化GPCR/突然変異体ベータ-アレスチン複合体は、無細胞および細胞ベースのアッセイにおいて薬物スクリーニングに用いられる。好ましい実施形態では、薬物スクリーニングは、無細胞および細胞ベースのアッセイに基づく。上記の本発明のベータ-アレスチン突然変異体は、BRETアッセイにおいて明らかなようにGPCR、好ましくはβ2ARへのベータ-アレスチン動員の有効性および効力を増大させることが可能である(実施例1、表1)。動員値の増大は、特にアレスチンを本質的に低効率で動員し、低いシグナル対ノイズ比をもたらすGPCR型についてシグナル対ノイズ比を増大させるために、細胞ベースおよび無細胞のアレスチン動員アッセイにおいて有用であり得る。好ましい実施形態では、GPCRへの本発明のベータ-アレスチン突然変異体の動員の効率を測定する。
【0082】
配列
【化1】
配列番号1:ヒト野生型(wt)アレスチン-3
【0083】
【化2】
配列番号2:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT299AおよびI386Aを有するアレスチン-3二重突然変異体A(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299AおよびI386Aに相当する)。
【0084】
【化3】
配列番号3:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT299A、I386AおよびR166Aを有するアレスチン-3三重突然変異体B(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299A、I386AおよびR166Aに相当する)。
【0085】
【化4】
配列番号4:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT299A、I386AおよびD298Aを有するアレスチン-3三重突然変異体C(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299A、I386AおよびD298Aに相当する)。
【0086】
【化5】
配列番号5:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT299A、I386AおよびR393Aを有するアレスチン-3三重突然変異体D(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299A、I386AおよびR393Aに相当する)。
【0087】
【化6】
配列番号6:ヒト野生型アレスチン-2
【化7】
配列番号7:マウス野生型アレスチン-3
【化8】
配列番号8:ラット野生型アレスチン-3
【化9】
配列番号9:ウシ野生型アレスチン-3
【化10】
配列番号10:マウス野生型アレスチン-2
【化11】
配列番号11:ラット野生型アレスチン-2
【化12】
配列番号12:ウシ野生型アレスチン-2
【化13】
配列番号13:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT298AおよびI386Aを有するアレスチン-2二重突然変異体(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299AおよびI386Aに相当する)。
【0088】
【化14】
配列番号14:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT298A、I386AおよびR165Aを有するアレスチン-2三重突然変異体(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299A、I386AおよびR166Aに相当する)。
【0089】
【化15】
配列番号15:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT298A、I386AおよびD297Aを有するアレスチン-2三重突然変異体C(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299A、I386AおよびD298Aに相当する)。
【0090】
【化16】
配列番号16:ヒトwtアレスチン-3と比較した場合にT298A、I386AおよびR393Aを有するアレスチン-2三重突然変異体D(上記アミノ酸位置は、ヒトwtアレスチン-3(配列番号1)中のT299A、I386AおよびR393Aに相当する)。
【0091】
【0092】
実施例
実施例1-生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイにおけるβ2-アドレナリン受容体(β2AR、B2AR)への野生型アレスチン-3ならびにアレスチン-3二重および三重突然変異体の動員
材料および方法:
位置R166A、D298およびR393のHE細胞を、ポリ-L-リジンコーティング白色96ウェルプレートに1ウェル当たり約25000細胞の密度で播種した。24時間後に、細胞をBRETドナー構築物(90ng/ウェルのRLuc8β2AR)および10ngのBRETアクセプター構築物(10ng/ウェルのGFP-アレスチン-3 WTまたは突然変異体A、B、CもしくはD)でLipofectamine 2000(ThermoFisher)を用いて一過性にコトランスフェクトした。トランスフェクションの翌日に、細胞培養培地を新鮮培地と交換した。さらに24時間後に、細胞培養培地をアッセイバッファー(HBSS+20mM HEPES、pH7.4)に置き換え、BRETドナーRLuc8によって触媒され、発光(λ
max=410nm)を生じる5mMの細胞透過性基質Coelenterazine 400A(Cayman Chemical)で細胞を処理した。BRET測定は、光モジュール(BRET2 plus、515~30、410~80)を備えるプレートリーダーPheraStar FSX(BMG Biotech)において行った。t=4.5分で、イソプロテレノール(Tocris Bioscience)を漸増濃度で細胞に添加した(10pM~10μM)。BRET比は、Rluc8/Coelenterazine 400Aによって放出される光強度(410nm)に対するGFPによって放出される光強度(515nm)の比率を算出することで決定した。BRET比ベースライン(イソプロテレノール刺激前)を減算し、曲線下面積(AUC)(19.5分のイソプロテレノール刺激)を算出し、イソプロテレノール濃度に対してプロットした。BRETシグナルをGFP-アレスチン-3 WT(100%に設定)に対する動員のパーセントとして表し、効力(pEC
50±SD)および有効性(E
max±SD)をGraphPad Prism 7.04 Software(San Diego,California,USA)において非線形回帰から算出した。最大有効性(E
max)を全ての突然変異体についてそれらのそれぞれのWTアレスチン-3の10μMイソプロテレノール条件(100%に設定)に対して正規化した。決定係数R
2は0~1の範囲とすることができ、実験値(印、
図1)と非線形回帰分析(曲線、
図1)との間のフィッティングの品質を表す。実験は2回の独立実験において技術的反復で行った。
【0093】
結果:
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)に基づくアレスチン動員アッセイを行い、B2ARに対するアレスチン-3二重および三重突然変異体と野生型アレスチン-3との動員効率を比較した。それぞれのアレスチンのイソプロテレノール誘導性動員の濃度応答曲線を
図1に示す。二重突然変異体A(黒の三角)、三重突然変異体B(白抜きの丸)およびC(黒塗りのひし形)は全て、非修飾アレスチン-3(野生型アレスチン-3、半分黒の四角)と比較してB2ARへの動員有効性の増大を示す。さらに、試験した突然変異体は、非修飾アレスチン-3よりも強くB2ARへと動員された(表1も参照されたい)。これにより、配列番号1においてアミノ酸位置T299A、I386A、R166A、D298AおよびR393Aでアラニンに置き換えられたアミノ酸がアレスチン-3とB2ARとの相互作用において重要な役割を果たすことが明らかに示される。
【0094】
動員応答は、2つの薬理学的パラメーター:効力および有効性によって規定することができる。概して、有効性(Emax)は、化合物/薬物から期待される最大効果の尺度である。効力は概して、化合物の活性の尺度であり、所与の強度の効果をもたらすのに必要とされる化合物の量として規定される。効力は、EC50値として与えられることが多く、その化合物の最大効果の50%をもたらすのに必要とされる化合物の量を規定する。より簡単な説明のために、モル濃度でのEC50の負の対数であるpEC50値を示す。
【0095】
アレスチン動員アッセイでは、EmaxによりB2ARへの野生型または突然変異体アレスチン-3タンパク質のイソプロテレノール誘導性動員の最大量が説明される。pEC50は、B2ARへのアレスチン動員の最大半量効果をもたらすのに必要とされるイソプロテレノール濃度を規定する。β2ARへの野生型ならびに二重および三重アレスチン-3突然変異体の動員のpEC50およびEmax値を表1に示す。効力(pEC50)は、各アレスチンについてアレスチン-3の完全な動員または効率(Emax)の半分を得るのに必要とされるイソプロテレノールのモル濃度を表す。WTアレスチン-3について測定された効力は6.8±0.02または158.5nMであり、二重突然変異体Bについて測定された効力は7.3±0.06または50.1nMである。二重突然変異体Aが最高の動員応答を示す(pEC50=7.1±0.03、Emax 131.5±1.82)。野生型アレスチン-3と比較して、この突然変異体は約30%増大したアレスチン動員の有効性を示す。
【0096】
【0097】
論考
本発明者らは、野生型アレスチン-3と比較した場合により高いB2ARへの動員の有効性および効力の両方を示すアレスチン-3突然変異体を開発したが(表1および図面を参照されたい)、それらのうち1つが動員効率の30%の増大を示す(二重突然変異体A)。本発明者らは、アミノ酸を或る特定の位置で、例えばアラニンまたは他のアミノ酸に置き換えることで、アレスチン-3突然変異体が受容体に動員される前に「予め活性化され」、野生型アレスチン-3とは異なる基本立体配座を示すと結論付けた。言い換えると、アレスチン-3突然変異体の活性化機序は、非修飾アレスチン野生型タンパク質よりもエネルギー需要が低い。本発明者らは、β2ARへのアレスチンの動員が、この追加の活性化段階を除くことによって促進されると仮定する。これにより、低いアレスチン動員能力を示すGPCRへのアレスチン動員応答、例えばアレスチンとの弱い一時的な相互作用しか受けないことが知られ、アレスチン動員応答を測定することが困難であり得るクラスAのGPCRによる応答を検出することが可能となる。さらに、例えば結晶化または他の手段によるGPCRの、特にその活性立体配座での、GPCR単独またはGPCR-アレスチン複合体としての精製または構造の解明を容易にするために、この新規の「より強いアレスチン動員因子」を用いてβ2ARまたは他の任意のGPCRを安定させることができる。
【0098】
実施例2-突然変異体アレスチン-3の発現レベルのモニタリング
材料および方法:
実施例1のプロトコルに従い、アレスチン-3突然変異体をeGFPプローブと融合させた。構築物の発現レベルを、光モジュールFI 485 520を用いるプレートリーダー(例えばBRET測定の前)においてGFP蛍光を測定することによって決定した。
【0099】
結果:
全てのアレスチン-3突然変異体が、表3に示されるように細胞においてWTアレスチン-3と比較してより低く発現される(26%~55%)。BRETアッセイとは対照的に、GFP蛍光は485nmでのランプフラッシュによって誘導され、同じプレートリーダーで各ウェルについて測定した。値を2回のアッセイで平均し、WTに対して正規化した。ヒトHEK293細胞におけるアレスチン-3突然変異体の一貫したより低い発現(WTアレスチン-3と比較して40%~65%の範囲、表3を参照されたい)にも拘らず、β2ARへのより強い動員が依然としてアレスチン-3突然変異体で観察された。この点を考慮に入れると、本発明のアレスチン-3突然変異体のタンパク質間相互作用の実際の強度は、BRETアッセイによって与えられる実験値を超えるはずであり、すなわちB2ARへのアレスチン-3突然変異体の動員能力は、それらのより低い発現レベルに対して値を補正すると、さらに高いようである。
【0100】
論考:
細胞におけるタンパク質発現は予測可能ではない。例えば、二重突然変異体Aでは2つのアラニン突然変異をWTアレスチン-3に付加することで発現が74%減少したが、三重突然変異体C中の別の突然変異により発現が36%から55%にまで増大した。
【0101】
細胞における発現レベルの測定は、厳密なタンパク質間親和性が効力、有効性、さらには発現レベルと相関するため、タンパク質間動員を分析する際に不可欠である。アレスチン-3突然変異体におけるより低い発現プロファイルにも拘らず、突然変異体A、BおよびCについてより高い動員プロファイルが検出された。このため、β2AR-アレスチン-3突然変異体複合体の見掛けの親和性は、化学量論的条件で行われることから結晶学的研究では悪化する。
【0102】
【配列表】
【国際調査報告】