(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】抗体薬物複合体用薬物リンカーMC-MMAFの調製方法及びその中間体
(51)【国際特許分類】
C07K 5/062 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
C07K5/062
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544579
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2019092950
(87)【国際公開番号】W WO2020181687
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】201910178142.X
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521336325
【氏名又は名称】聯寧(蘇州)生物製薬有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲テツ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 海泓
(72)【発明者】
【氏名】郭 茂君
(72)【発明者】
【氏名】李 輝
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA62
4H045EA20
4H045FA30
4H045GA20
(57)【要約】
本発明によれば、抗体薬物複合体用薬物リンカーMC-MMAFの調製方法及びその中間体が提供される。本発明の調製方法によれば、N末端の反応活性が向上し、それによりラセミ化反応の発生が効果的に制御される。毒素MMAFを直接使用せずに、毒性の低いフラグメントペプチドを採用することにより、大量生産における操作の難易度が低減される。逆相調製を必要とせずに、操作が簡便である。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式が
【化1】
であり、
Rは、水素、スクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、p-ニトロフェニル、フタルアミドから選ばれる一種類である、
MC-MMAFを合成する中間体化合物。
【請求項2】
構造式が
【化2】
である化合物と構造式が
【化3】
である化合物とを溶媒において縮合反応させ、
Rは水素であり、反応時に試薬Mにより、試薬Nを添加し、前記試薬Mは、DCC、DCEP、EDC、DIC、HATU、HBTU、HBPIPU、HBPyU、HSPyU、HCTU、HOTU、HOTT、HSTU、HDMA、TATU、TBTU、TCTU、TCFH、TDBTU、TOTU、TOTT、TPTU、TFFH、BTFFH、TNTU、TSTU、COMU、T3P、BOP、PyBOP、PyBrOP、PyClOP、BrOP、PyAOP、PyCIU、CDI、TPSI、TSTU、DEPBT、DMTMM、EEDQ、CIP、CIB、DMC、HOAt、HOBt及びEDCIから選ばれる一種類又は複数種類であり、前記試薬Nは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピリジン、N,N-ジメチル-4-ピリジンから選ばれる一種類又は複数種類であり、
前記溶媒は、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキシヘキサシクロ及び2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる一種類又は複数種類であり、
反応温度は-20℃~40℃である、
ことを特徴とするMC-MMAFを合成する方法。
【請求項3】
前記試薬Mは、EDCIとHOBtとの混合物であり、
前記試薬Nは、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応温度は-10℃~25℃である、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
構造式が
【化4】
である化合物と構造式が
【化5】
である化合物とを溶媒において縮合反応させ、
Rは、スクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、p-ニトロフェニル、フタルアミドから選ばれる一種類又は複数種類であり、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピリジン、N,N-ジメチル-4-ピリジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム及び炭酸水素リチウムから選ばれる一種類又は複数種類である試薬Pにより反応させ、
前記溶媒は、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及び2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる一種類又は複数種類であり、
反応温度は0℃~100℃である、
ことを特徴とするMC-MMAFを合成する方法。
【請求項6】
試薬Pは、炭酸ナトリウム又はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応温度は15℃~50℃である、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が完了した後に、MC-MMAFを反応液から分離する、
ことを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離操作は、減圧により溶媒を蒸発乾燥させ、それから、中圧クロマトグラフィーで精製又は再結晶することを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
保護基を有するポリペプチド
【化6】
を用い、まず
【化7】
と反応させて化合物
【化8】
を合成し、次に化合物
【化9】
が得られるように酸性条件下で保護基を脱離させ、
酸濃度範囲が30%~50%である酸性条件を提供するためにトリフルオロ酢酸を選択可能である、
ことを特徴とする
【化10】
を合成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成分野に関し、特に、抗体薬物複合体用薬物リンカーMC-MMAFの調製方法及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate,略してADC)は、一種の新規抗腫瘍薬物であり、その原理は、細胞毒素を抗体に接続し、抗体による癌細胞表面における特定の抗原の認識によりエンドサイトーシスを介して癌細胞に入り込み、それにより細胞毒素を標的に輸送し、悪性腫瘍の標的治療の目的を達成することである。ADCは、従来の小分子抗腫瘍薬物と比較して、抗体の標的認識と毒素の高い活性に依存できるため、より特異的で効率的である。
【0003】
ADCは、三つの異なる構成部分、すなわち抗体、リンカー及び細胞毒素を含む。抗体は標的化を実現し、リンカーは血液輸送中のADCの安定性を保証し、作用標的に到達した後、毒素は癌細胞に対して殺傷効果を発揮する。作用機構によっては、ADCに適した毒素は微小管系阻害剤(Microtubule inhibitors)、DNA損傷剤(DNAdamaging agents)、RNAポリメラーゼ阻害剤(RNApolymerase inhibitors)などに分類される。現在、市場で販売及び臨床試験におけるADCに採用される毒素は、主に微小管系阻害剤であり、主に例えば、MMAE、MMAF、MMADなどの海ウサギ毒素(Dolastatin-based)に基づいて設計される化合物及び、例えば、DM1及びDM4などのマイタンシン(Maytansine-based)に基づいて設計される化合物を含む。リンガーに関しては、例えば、バリン-シトルリン(Valine-Citriline)やシクロヘキシルギ酸(MCC)などの分裂不可型が主に適用され、リソソーム加水分解後も薬物は依然として活性を有し、接続領域を介してアミノ酸残基に結合する。
【0004】
抗体薬物複合体の形成方式は、複数ある。抗体におけるアミノ基又はメルカプト基と薬物リンカーとの化学反応によって結合してもよく、抗体を修飾し、抗体に特定の機能基を導入した後、薬物リンカーと化学反応させて結合し、又は酵素触媒反応させて結合してもよい。本発明に係る抗体薬物複合体MC-MMAF構造を以下に示す。
【化11】
【0005】
現在文献で報告されているMC-MMAFの合成経路は、MC-MMAFが得られるように、毒素MMAFを用いてMC-hex-Acid(1-マレイミド-n-ヘキサン酸)と脱水反応させることである。MMAFの構造は、
【化12】
である。
【0006】
文献で報告されている合成案は、
【化13】
である。
【0007】
当該経路MMAFのN末端バリンは、Nにメチル基を有し、立体障害が大きい。この場合、1-マレイミド-n-ヘキサン酸をMMAFに接続すると反応速度が遅くなり、異なるアミド縮合剤を採用したとしても、MMAFのフェニルアラミド基に接続されたキラル炭素のラセミ化を引き起こすことになる。当該経路は、1g未満のMC-MMAF合成に使用され、最終的に高圧逆相調製を適用して異性不純物を除去する必要があり、収率は50%未満である。
【0008】
当該反応経路は、拡大生産時に一定の欠陥を示す。例えば、1.当該方法では、縮合剤がMMAFにおけるカルボキシル基を同時に活性化するため、30~50%のラセミ化を引き起こし、除去が困難な異性体不純物を形成し、収率に影響を与える。2.前述の立体障害により、反応時間が長く、不純物が多く、反応の後処理及び精製に困難を引き起こす。3.最終生成物は、異性体を除去するために高圧逆相調製を必要とし、操作コストが増加される。4.原料として毒素MMAFを直接適用するため、大量の合成操作に防護を行い、防護装置を選択する必要があり、生産操作に障害をもたらす。
【発明の概要】
【0009】
一態様において、従来技術に存在する欠点に対して、本発明によれば、MC-MMAFの合成方法が提供される。当該反応のキーは、MC-MMAF又はその塩が直接得られるように、構造式が
【化14】
である化合物を用いて、MMAFの構造フラグメントペプチドDap-Phe-OHと縮合反応させることである。Rは水素、スクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、p-ニトロフェニル及びフタルイミドから選ばれる一種類又は複数種類である。
【0010】
Dap-Phe-OHの化学構造を以下に示す。
【化15】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の技術的手段により実現される。
【化16】
【0012】
当該合成方法は、以下のステップを含む。1)MC-MMAFが得られるように、化合物
【化17】
を適切な溶媒に溶解し、Dap-Phe-OHとアミド縮合反応させる。
【0013】
ステップ1)において、前記適切な溶媒は、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及び2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる一種類又は複数種類であることが好ましい。前記適切な溶媒は、ジクロロメタン及びN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる一種類又は複数種類であることがより好ましい。
【0014】
ステップ1)において、Rが水素である場合、試薬Mにより、試薬Nを添加し、前記試薬Mは、DCC、DCEP、EDC、DIC、HATU、HBTU、HBPIPU、HBPyU、HSPyU、HCTU、HOTU、HOTT、HSTU、HDMA、TATU、TBTU、TCTU、TCFH、TDBTU、TOTU、TOTT、TPTU、TFFH、BTFFH、TNTU、TSTU、COMU、T3P、BOP、PyBOP、PyBrOP、PyClOP、BrOP、PyAOP、PyCIU、CDI、TPSI、TSTU、DEPBT、DMTMM、EEDQ、CIP、CIB、DMC、HOBt及びEDCIから選ばれる一種類又は複数種類であることが好ましい。前記試薬Mは、EDCI、EDC、DIC、HOAt及びHOBtから選ばれる一種類又は複数種類であることがより好ましい。前記試薬Mは、EDCI、EDC又はDICとHOAt又はHOBtとの混合物であることがさらに好ましい。前記試薬Mは、EDCIとHOBtとの混合物であることが最も好ましい。前記試薬Nは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピリジン、N,N-ジメチル-4-ピリジンから選ばれ、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)であることが好ましい。反応温度は-20℃~40℃であり、-10℃~25℃であることが好ましい。
【0015】
ステップ1)において、Rがスクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、p-ニトロフェニル及びフタルイミドから選ばれる一種類又は複数種類である場合、MC-MMAFが得られるように試薬Pにより、Dap-Phe-OHと反応させることが好ましい。前記試薬Pは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピリジン、N,N-ジメチル-4-ピリジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム及び炭酸水素リチウムから選ばれる一種類又は複数種類であり、炭酸ナトリウム又はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)であることが好ましい。反応温度は、0℃~100℃であり、15℃~50℃であることが好ましい。
【0016】
ステップ1)において、前記反応が完了した後に、MC-MMAFを反応液から分離するステップをさらに含むことが好ましい。
【0017】
MC-MMAFが得られるように、前記分離は、減圧により溶媒を蒸発乾燥させ、それから、中圧クロマトグラフィーで精製又は再結晶することを含むことが好ましい。
【0018】
本発明の調製方法によれば、N末端の反応活性が向上し、それによりラセミ化反応の発生が効果的に制御される。毒素MMAFを直接使用せずに、毒性の低いフラグメントペプチドを採用することにより、大量生産における操作の難易度が低減される。逆相調製を必要とせずに、操作が簡便である。上記のように、当該方法によれば、操作の難易度が低減され、品質基準が制御しやすくなり、100グラムレベルの調製にも適用することができる。
【0019】
一態様において、本特許によれば、構造式が
【化18】
であり、
Rは、水素、スクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、p-ニトロフェニル、フタルアミドから選ばれる一種類であるMC-MMAFを合成する中間体化合物がさらに提供される。表1に示すように、以下の化合物であることが好ましい。
【表1】
【0020】
さらなる態様において、本発明によれば、合成ステップが
【化19】
【化20】
である
【化21】
を合成する方法がさらに提供される。
【0021】
本経路には、重要な中間体Dを合成することが含まれており、これまで当該化合物の合成方法に関する報告はない。
【0022】
化合物Dは、保護基を有しないポリペプチドXでは合成できず、実験によりポリペプチドX自体の縮合物が得られる。すなわち、以下に示す合成経路では化合物Dを直接合成できない。
【化22】
【0023】
本発明で採用される技術的手段において、まず、保護基を有するポリペプチドを用いて化合物Cを合成し、次に化合物Dが得られるように酸性条件下で保護基を脱離させる。しかし、実験では、化合物Cと化合物Dは酸性条件下で非常に不安定であり、分子の中央のアミド結合が断裂し、収率が非常に低くなることが発見された。さらなる研究により、酸の濃度の上昇は保護基を脱離させる速度を大幅に増加させ、副反応の速度をそれほど増加させないことが発見された。トリフルオロ酢酸濃度(当該濃度は反応液においてジクロロメタンなどの溶媒におけるトリフルオロ酢酸の濃度を指す)範囲は、30%から50%であり、35%であることが好ましい。保護基を脱離させる反応はすばやく完了し、その後、すぐに反応をクエンチし、最終的に化合物Dの収率を5%から50%に向上させることができる。
【化23】
副反応:
【化24】
【0024】
酸試薬を選択し、酸濃度の反応条件を制御することにより、化合物Dの収率が大幅に向上し、当該経路が生産に適用される可能性を有することになる。
【0025】
本発明では、従来のMMAF合成経路を放棄し、MC-MMAFを全体と見なして合成する。ここで、最大の問題は、MCリンカーが比較的に反応活性の高いフラグメントであり、MCを事前に接続すると合成の難易度が増加されることであり、当業者はこの経路を思い付かない。我々は、多くの研究を通じて、MCフラグメント化合物の事前導入が合成に不安定である問題を解決し、この全体的な合成経路を実現することを可能にした。
【0026】
本明細書において、一般的に使用される有機物の略語の定義及び対応するCAS番号を表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明により合成されたDMT-3の高速液体クロマトグラムである。
【
図2】本発明により合成された化合物Aの液体クロマトグラムである。
【
図3】本発明により合成された化合物Aのマススペクトルである。
【
図4】本発明により合成された化合物Cの液体クロマトグラムである。
【
図5】本発明により合成された化合物Cのマススペクトルである。
【
図6】本発明により合成された化合物Dの液体クロマトグラムである。
【
図7】本発明により合成された化合物Dのマススペクトルである。
【
図8】本発明により合成された化合物Fの液体クロマトグラムである。
【
図9】本発明により合成された化合物Fのマススペクトルである。
【
図10】本発明により合成された対象生成物MC-MMAFの液体クロマトグラムである。
【
図11】本発明により合成された対象生成物MC-MMAFのマススペクトルである。
【
図12】本発明により合成された対象生成物MC-MMAFの核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下は、本発明の技術的手段について、具体的な実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の技術的概念及び特徴を説明するものに過ぎず、その目的は、当業者が本発明の内容を理解し、実施することができるようにすることであり、本発明の保護範囲を制限するものではない。本説明の精神の本質に基づく同等の変更又は修正は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0029】
LCMSは液体クロマトグラフィー/質量分析検出法を表し、HPLCは高速液体クロマトグラフィー検出法を表する。
【0030】
本発明に係る各ステップの反応のための原料及び試薬は、市場から購入し、又は本発明に記載の方法に従って調製することができる。
【0031】
本発明によれば、以下のステップを含むMC-MMAFを合成する方法が提供される。
【0032】
1)MC-MMAFが得られるように、化合物
【化25】
を、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキシヘキサシクロ及び2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる一種類又は複数種類である適切な溶媒に溶解し、構造式が
【化26】
であるDap-Phe-OHとアミド縮合反応させる。
【0033】
ステップ1)において、Rが水素である場合、試薬Mにより、試薬Nを添加し、前記試薬Mは、DCC、DCEP、EDC、DIC、HATU、HBTU、HBPIPU、HBPyU、HSPyU、HCTU、HOTU、HOTT、HSTU、HDMA、TATU、TBTU、TCTU、TCFH、TDBTU、TOTU、TOTT、TPTU、TFFH、BTFFH、TNTU、TSTU、COMU、T3P、BOP、PyBOP、PyBrOP、PyClOP、BrOP、PyAOP、PyCIU、CDI、TPSI、TSTU、DEPBT、DMTMM、EEDQ、CIP、CIB、DMC、HOBt及びEDCIから選ばれる一種類又は複数種類であることが好ましい。前記試薬Mは、EDCI、EDC、DIC、HOAt及びHOBtから選ばれる一種類又は複数種類であることがより好ましい。前記試薬Mは、EDCI、EDC又はDICとHOAt又はHOBtとの混合物であることがさらに好ましい。前記試薬Mは、EDCIとHOBtとの混合物であることが最も好ましい。前記試薬Nは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピリジン、N,N-ジメチル-4-ピリジンから選ばれ、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)であることが好ましい。反応温度は-20℃~40℃であり、-10℃~25℃であることが好ましい。
【0034】
ステップ1)において、Rがスクシンイミド、ペンタフルオロフェニル、p-ニトロフェニル及びフタルイミドから選ばれる一種類又は複数種類である場合、MC-MMAFが得られるように試薬Pにより、Dap-Phe-OHと反応させることが好ましい。前記試薬Pは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピリジン、N,N-ジメチル-4-ピリジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム及び炭酸水素リチウムから選ばれる一種類又は複数種類であり、炭酸ナトリウム又はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)であることが好ましい。反応温度は、0℃~100℃であり、15℃~50℃であることが好ましい。
【0035】
ステップ1)において、前記反応が完了した後に、MC-MMAFを反応液から分離するステップをさらに含む。MC-MMAFが得られるように、前記分離は、減圧により溶媒を蒸発乾燥させ、それから、中圧クロマトグラフィーで精製又は再結晶することを含むことが好ましい。
【0036】
本発明によれば、保護基を有するポリペプチド
【化27】
を用い、まず
【化28】
と反応させて化合物
【化29】
を合成し、次に化合物
【化30】
が得られるように酸性条件下で保護基を脱離させ、
酸濃度範囲が30%~50%である酸性条件を提供するためにトリフルオロ酢酸を選択可能である、
【化31】
を合成する方法がさらに提供される。トリフルオロ酢酸濃度範囲は、30%から50%であり、35%であることが好ましい。保護基を脱離させる反応はすばやく完了し、その後、すぐに反応をクエンチし、最終的に化合物Dの収率を5%から50%に向上させることができる。
【0037】
(実施例1)
本実施例の反応経路は以下のとおりである。
【化32】
【化33】
【0038】
3Lの三口フラスコに、1.5LのジクロロメタンとDil.HCl(202.3g,0.683mol 1.0eq)を添加し、磁気で攪拌し、窒素で保護し、Z-Val-OH(163.23g、0.65mol、0.95eq)及びHATU(311.6g、0.82mol,1.20eq)を順次添加し、室温で30min攪拌した後に氷浴まで冷却し、温度を10度に制御し、DIEA(452.5ml,4.0eq)を滴下し、滴下が完了し、氷浴下で30min攪拌した後、室温に移し、16h反応させ、HPLCで検出し、主ピークを製品ピーク(保持時間29.98min)とし、原料Dil.HClが完全に反応し、反応が終了する。反応液をクエン酸水溶液で洗浄し(2L*1)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し(2L*1)、飽和食塩水で洗浄し(2L*1)、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、吸引ろ過し、析出させて粗品531gが得られる。当該粗品を800mlのメタノールに溶解し、1.1ml(1mol/L)の希塩酸(約1時間)を氷浴撹拌下で滴下し、室温で12h撹拌し、層状化し、上層水層を分離し、収率が91%である325gのDMT-1が得られるように下層製品をオイルポンプで乾燥させる。
【0039】
2Lの一口フラスコに、800mlのメタノール、DMT-1(LN114-38,325g,0.66mol)及び110gのPd(OH)2/Cを添加し、H2を3回置換し、室温で5h反応させ、TLCは原料DMT-1が完全に反応するのを監視する。フリット漏斗に珪藻土を添加し、吸引ろ過し、1Lのメタノールでろ過ケーキを洗浄し、ろ液を収集し、ろ液を蒸発させ、純度が94%で、収率が97%である230.2gのDMT-2が得られるように製品が泡立たなくなるまでオイルポンプで引き出す。
【0040】
3Lの三口フラスコに、DMT-2(LN114-40-01,230.2g、実際は0.60mol、1.0eq)を500mlのDCMに溶解し、十分に攪拌し、Fmoc-Me-val(202.6g、0.57mol、0.95eq)及びHATU(292.9g,0.77mol、1.20eq)を添加し、さらに1LのDCMを添加し、室温で30min攪拌した後に氷浴まで冷却し、DIEA(212.7ml,2.0eq)を滴下し、滴下が完了し、氷浴下で30min攪拌した後、室温に移し、16.0h反応させ、HPLCで検出し、主ピークを製品ピーク(保持時間36.00min)とし、原料DMT-2が完全に反応し、反応が終了する。反応液を水で洗浄し(2.0L*1)、クエン酸水溶液で洗浄し(2L*1)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し(2L*1)、飽和食塩水で洗浄し(1L*1)、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、吸引ろ過し、析出させて粗品655gが得られる。当該粗品を650mlのメタノールに溶解し、360ml(1mol/L)の希塩酸を攪拌下で滴下し、室温で12h攪拌し、攪拌を停止し、層状化し、上層水層を分離し、このように二回行う。HPLC純度が96.7%で、収率が90%である373gのDMT-3が得られるように下層製品をオイルポンプで乾燥させる。
【0041】
化合物DMT-3(5.0g、7.22mmol)とジエチルアミン(5mL)をジクロロメタン(20mL)に添加し、窒素保護下で室温で4h攪拌反応させ、LCMSが反応液における化合物DMT-3が3%未満であることを表示する場合は反応の終了と見なされる。反応液を遠心脱水し、粗品を中圧逆相で精製し(220gの工業用充填C18逆相カラムを使用)、勾配水/アセトニトリル(90/10-10/90、v/v)を精製し、時間は1時間である。白色固体化合物A(白色固体、3.15g、収率93%)が得られるように純粋な製品を収集して凍結乾燥させる。MS:472.26(M+H+)
【0042】
ジクロロメタン(50mL)に化合物B(1.77g,8.04mmol)、HATU(3.82g,10.05mmol)及びDIEA(1.72g,13.4mmol)を添加し、窒素保護下で室温で30分間攪拌反応させ、さらに化合物A(3.15g、6.68mmol)を添加し、窒素保護下で室温で4時間攪拌反応させ、LCMSが反応液における化合物Aが3%未満であることを表示する場合は反応の終了と見なされる。反応液をクエン酸水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて脱水し、粗品を中圧逆相で精製し(120gの工業用充填C18逆相カラムを使用)、勾配水/アセトニトリル(90/10-10/90、v/v)を精製し、時間は1時間である。白色固体化合物C(白色固体、3.86g、収率87%)が得られるように純粋な製品を収集して凍結乾燥させる。MS:665.37(M+H+)
【0043】
化合物C(3.86g,5.81mmol)をジクロロメタンとトリフルオロ酢酸の混合溶媒(20mL,2/1,v/v)に溶解し、窒素保護下で室温で20分間攪拌反応させ、LCMSが反応液における化合物Cが5%未満であることを表示する場合は反応の終了と見なされる。反応液に40mLのアセトニトリルを添加して希釈し、約10mLの体積に低温で濃縮し、中圧逆相で精製し(220gの工業用充填C18逆相カラムを使用)、勾配水/アセトニトリル(90/10-10/90、v/v)を精製し、時間は2時間である。白色固体化合物D(1.59g、収率45%)が得られるように純粋な製品を収集して凍結乾燥させる。MS:609.30(M+H+)
【0044】
化合物D(1.59g,2.61mmol)、化合物E(0.36g,3.13mmol)及び化合物EDCI(0.60g,3.13mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、窒素保護下で室温で2時間攪拌反応させ、LCMSが反応液における化合物Dが5%未満であることを表示する場合は反応の終了と見なされる。反応液を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて脱水し、粗品を中圧逆相で精製し(40gの工業用充填C18逆相カラムを使用)、勾配水/アセトニトリル(90/10-10/90、v/v)を精製し、時間は1時間である。白色固体化合物F(白色固体、1.79g、収率97%)が得られるように純粋な製品を収集して凍結乾燥させる。MS:706.32(M+H+)
【0045】
化合物F(1.79g,2.53mmol)、化合物G(0.93g,2.78mmol)及びDIEA(0.72g,5.56mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、窒素保護下で室温で18時間攪拌反応させ、LCMSが反応液における化合物Fが3%未満であることを表示する場合は反応の終了と見なされる。反応液をクエン酸水溶液(20mL)と飽和食塩水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて脱水し、粗品を中圧逆相で精製し(80gの工業用充填逆相カラムを使用)、勾配水/アセトニトリル(90/10-10/90、v/v)を精製し、時間は1時間である。白色固体化合物MC-MMAF(白色固体、2.01g、収率86%、HPLC純度99%by UV 220nm)が得られるように純粋な製品を収集して凍結乾燥させる。MS:925.66(M+H+)
【国際調査報告】