(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(54)【発明の名称】一体化成形可能な成形物を備えた熱成形フロントガラス積層物
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20220308BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220308BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20220308BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
B32B7/023
B32B17/06
B29C65/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544606
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 US2020016245
(87)【国際公開番号】W WO2020160492
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519053108
【氏名又は名称】レーシング オプティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スティーブン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、バート イー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK25B
4F100AK25D
4F100AK41E
4F100AK42C
4F100AK42E
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CB00D
4F100DD11A
4F100EJ17
4F100EJ38E
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4F100JJ03E
4F100JK12E
4F100JN01C
4F100JN02E
4F211AA24
4F211AF01
4F211AG03
4F211AG05
4F211AH17
4F211TA03
4F211TC06
4F211TD11
4F211TN41
4F211TW45
(57)【要約】
湾曲した基板上に2つ以上のレンズの積層物を設置する方法において、湾曲した基板上に成形可能なカバーを配置する工程を備え、成形可能なカバーは、2つ以上のレンズの積層物と、2つ以上のレンズの間において隣接するレンズのそれぞれの対の間に挿入される接着剤層と、積層物の最も外側のレンズの上に配置される犠牲層とを有し、犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを有する、方法に関する。この方法は、犠牲層に熱および圧力を加え、犠牲層を剥がして2つ以上のレンズの積層物を露出する工程を備え得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した基板上に2つ以上のレンズの積層物を設置する方法において、
湾曲した基板上に成形可能なカバーを配置する工程を備え、前記成形可能なカバーは、前記2つ以上のレンズの積層物と、2つ以上のレンズの間において隣接するレンズのそれぞれの対の間に挿入される接着剤層と、前記積層物の最も外側のレンズの上に配置される犠牲層とを有し、前記犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを有する、湾曲した基板上に成形可能なカバーを配置する工程と、
前記犠牲層に熱と圧力を加える工程と、
前記2つ以上のレンズの積層物を露出するために前記犠牲層を剥離する工程とを備える、方法。
【請求項2】
前記湾曲した基板が複合湾曲した基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湾曲した基板がフロントガラスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記犠牲層は、前記積層物の最も外側のレンズよりも耐熱性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記犠牲層は、前記積層物の最も外側のレンズよりも耐擦傷性が低い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記犠牲層は、前記積層物の最も外側のレンズよりも耐擦傷性が低い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記犠牲レンズが二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムが、室温から220℃の間の温度に2時間耐えることができる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記犠牲レンズが不透明なポリエステルフィルムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記積層物の最も外側のレンズが、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記湾曲した基板に貼り付け可能な成形可能なカバーであり、成形可能なカバーは、
2つ以上のレンズの積層物と、
2つ以上のレンズのうちで隣接するレンズの対の間に挿入された接着剤層と、
前記積層物の最も外側のレンズ上に配置された犠牲層とを備え、犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを備え、前記犠牲層は、積層物の最も外側のレンズよりも耐熱性が高い、成形可能なカバー。
【請求項12】
前記犠牲レンズが二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、請求項11に記載の成形可能なカバー。
【請求項13】
二軸配向されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、室温と220℃で2時間に耐えることができる、請求項12に記載の成形可能なカバー。
【請求項14】
前記犠牲レンズが不透明なポリエステルフィルムからなる、請求項11に記載の成形可能なカバー。
【請求項15】
前記積層物の最も外側のレンズが透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、請求項14に記載の成形可能なカバー。
【請求項16】
前記湾曲した基板に貼り付け可能な成形可能なカバーであり、成形可能なカバーは、
2つ以上のレンズの積層物と、
2つ以上のレンズのうちで隣接するレンズの対の間に挿入された接着剤層と、
前記積層物の最も外側のレンズ上に配置された犠牲層とを備え、犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを備え、前記犠牲層は、積層物の最も外側のレンズよりも耐擦傷性が低い、成形可能なカバー。
【請求項17】
犠牲レンズが二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、請求項16に記載の成形可能なカバー。
【請求項18】
二軸配向されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、室温と220℃の間で2時間に耐えることができる、請求項17に記載の成形可能なカバー。
【請求項19】
前記犠牲レンズが不透明なポリエステルフィルムからなる、請求項16に記載の成形可能なカバー。
【請求項20】
積層物の最も外側のレンズが透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、請求項19に記載の成形可能なカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓用の透明なカバー一般、より詳細には、複数のレンズが互いに積み重ねられ、接着剤によって一緒に接着されている透明なカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
フロントガラス(ウィンドスクリーンとも呼ばれる)などの湾曲した基板に透明レンズを取り付けることには、様々な利点がある。そのようなカバーは、孔食やひび割れからの保護、着色(例えばプライバシーのために)、断熱、紫外線(UV)の遮断、および/または装飾を提供し得る。このような透明レンズの積層物は、オフロード用の車両で発生し得るように、最も外側のレンズが汚れドライバーの視界が遮られる場合には、簡単に引き剥がすことができる。
【0003】
典型的なフロントガラスの表面は通常複合曲率を示す一方で、ロールツーロールプロセスで製造されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの場合には、透明レンズ自体が平らな場合がある。複合湾曲したフロントガラス表面に平坦なフィルムを取り付けるために、フィルムは、フロントガラス上にドレープ形成をする場合があり、例えば、フロントガラスの上にフィルムを置き、最上面に熱を加えてフィルムを収縮または伸長させてフロントガラスの形状にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、このプロセスにより、不均一な加熱または過熱が発生し、フィルムに光学的歪みが生じたり、フィルムがフロントガラスに適切に接着されていない領域が発生したりする可能性がある。さらに、カードまたはスキージでフィルムに圧力をかけるための設置者の努力により、設置中に目に見える表面に永久的な傷がつく可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、関連技術に伴う上記の欠点を克服するための様々なシステムおよび方法を企図している。本発明の実施形態の一態様は、2つ以上のレンズの積層物を湾曲した基板上に設置する方法である。この方法は、湾曲した基板上に成形可能なカバーを配置する工程を備え、成形可能なカバーは、2つ以上のレンズの積層物と、2つ以上のレンズの間において隣接するレンズの各対の間に挿入される接着剤層と、積層物の最も外側のレンズの上に配置される犠牲層とを有し、犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを有する。この方法は、犠牲層に熱および圧力を加え、犠牲層を剥がして2つ以上のレンズの積層物を露出する工程を備え得る。
【0006】
湾曲した基板は、複合湾曲した基板であり得る。湾曲した基板はフロントガラスであってもよい。
犠牲層は、積層物の最も外側のレンズよりも耐熱性が高い場合がある。
【0007】
犠牲層は、積層物の最も外側のレンズよりも耐擦傷性が低い場合がある。
犠牲レンズは、二軸配向のポリエチレンテレフタレートフィルムからなり得る。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、室温から220℃の間の温度に2時間耐え得る。
【0008】
犠牲レンズは、不透明なポリエステルフィルムからなり得る。積層物の最も外側のレンズは、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなり得る。
本開示の実施形態の別の態様は、湾曲した基板に取り付け可能な成形可能なカバーであり、成形可能なカバーは、2つ以上のレンズの積層物と、2つ以上のレンズの間にて隣接するレンズの各対の間に挿入された接着層と、積層物の最も外側のレンズ上に配置された犠牲層とを備え得る。犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを備える。犠牲層は、積層物の最も外側のレンズよりも耐熱性が高い。
【0009】
犠牲レンズは、二軸配向のポリエチレンテレフタレートフィルムからなり得る。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、室温から220℃の間の温度に2時間耐え得る。
【0010】
犠牲レンズは、不透明なポリエステルフィルムからなり得る。積層物の最も外側のレンズは、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなり得る。
本開示の実施形態の別の態様は、湾曲した基板に貼り付け可能な成形可能なカバーである。成形可能なカバーは、2つ以上のレンズの積層物と、2つ以上のレンズの間にて隣接するレンズの各対の間に挿入された接着層と、積層物の最も外側のレンズ上に配置された犠牲層とを備え得る。犠牲層は、犠牲レンズと、犠牲レンズと積層物の最も外側のレンズとの間に挿入された犠牲接着剤とを備える。犠牲層は、積層物の最も外側のレンズよりも耐擦傷性が低い。
【0011】
犠牲レンズは、二軸配向のポリエチレンテレフタレートフィルムからなり得る。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、室温から220℃の間の温度に2時間耐え得る。
【0012】
犠牲レンズは、不透明なポリエステルフィルムからなり得る。積層物の最も外側のレンズは、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなり得る。
本明細書に開示される様々な実施形態のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明および図面に関してよりよく理解され、ここで、同様の番号は、全体を通して同様の部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態による成形可能なカバーの概略を示す側面図。
【
図2】成形可能なカバーの犠牲層に熱および圧力を加えるプロセスの開始時にフロントガラス上に配置された成形可能なカバーを示す斜視図。
【
図3】熱と圧力を加えるプロセスの後にフロントガラスに成形可能なカバーを示す斜視図。
【
図4】犠牲層が剥がされて透明レンズの積層物が見えるようになっているフロントガラスの成形可能なカバーを示す斜視図。
【
図5】フロントガラスに合うようにトリミングされた後の透明レンズの積層物を示す斜視図。
【
図6】本開示の一実施形態による例示的な操作フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、2つ以上のレンズの積層物を含む成形可能なカバーおよびその設置方法の様々な実施形態を包含する。添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、いくつかの現在企図されている実施形態の説明として意図されており、開示された発明が開発または利用され得る唯一の形態を表すことを意図していない。説明は、例示された実施形態に関連する機能および特徴を説明する。しかしながら、同一の、または同等の機能は、本開示の範囲内に包含されることも意図されている異なる実施形態によって達成され得ることが理解されるべきである。さらに、第1および第2などの関係用語は、そのようなエンティティ間の順序で実際のそのような関係を必ずしも要求または暗示することなく、互いに区別するためにのみ使用されることが理解されるべきである。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態による成形可能なカバー100の概略側面図である。成形可能なカバー100は、レンズ110a、110b、・・・110n(総称してレンズ110)の積層物を設置するプロセスの一部として、フロントガラスなどの湾曲した基板10に取り付けられ得る。
【0016】
レンズ110の設置された積層物は、製品の寿命中に必要に応じて、基板10に、保護、着色、断熱、紫外線(UV)の遮断、装飾、および/または最外層110n(およびその後、新たに明らかにされた層110)を剥離して廃棄する能力を提供し得る。接着剤層120が積層物の隣接するレンズ110の各対の間に挿入されるように、レンズ110に加えて、成形可能なカバー100は、各レンズ110にそれぞれ設けられた接着剤層120a、120b、・・・120n(集合的に接着剤層120)を含み得る。レンズ110の積層物の最も外側のレンズ110n上に、犠牲層130を提供して、レンズ110の積層物を基板10に取り付ける改善されたプロセスを可能にすることができる。犠牲層130は、犠牲レンズ132と、犠牲レンズ132とレンズ積層物110の最も外側のレンズ110nとの間に挿入された犠牲接着剤134とを含み得る。レンズ110の積層物を設置するとき、熱および圧力を犠牲層130に加えて、レンズ110の積層物を湾曲した基板10の形状に適合させることができる。その後、犠牲層130を剥がして、取り付けられたレンズ110を含む最終製品140を露出することができる。
【0017】
犠牲層130なしで湾曲した基板10上にレンズの積層物110をドレープ形成する場合、プロセスは、上記で説明したように不均一な加熱または過熱、ならびに最も外側のレンズ110nをカードまたはスキージで恒久的に引っ掻いてしまう可能性をもたらす可能性がある。発明者は、これらの困難は、レンズ110の積層物が湾曲した基板10によって表されるオスの表面に一致するので、圧力を加えるためのメスのモールド中空部が欠如することに主に起因することを発見した。結果として、設置者がレンズ110の積層物を湾曲した基板10に成形しようとするとき、熱も圧力も均等に分散されず、その結果、上記の困難が生じる。欠落しているメス型キャビティとして機能する犠牲層130を提供することにより、開示された成形可能なカバー100は、少なくとも2つの方法でこれらの欠陥を克服することができる。第1に、犠牲層130は、設置者が、最終製品を引っ掻いたり、さもなければ損傷したりすることを恐れることなく、熱および圧力を加えることを可能にし得る。犠牲層130は、表面の損傷とともに単純に廃棄することができるが、レンズ110の積層物の下にある最も外側のレンズ110nは、傷がないままである。第2に、熱および圧力が、介在する犠牲層130を介してレンズ110の積層物に加えられると、犠牲層130は、熱および圧力をより広い領域に分散させるのに役立ち、その結果、犠牲層130および下にあるレンズ110の積層物は一緒になって、湾曲した基板10の形状に一致するので、熱および圧力がより均一に加えられる。
【0018】
レンズ110は、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BoPET)などの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを含み得、デュポン社が所有する登録商標マイラーの下で販売されるポリエステルフィルムのシートから製造され得る。各レンズ110の厚さは、0.5ミルから7ミル(1ミルは0.001インチ)、例えば2ミルであり得る。接着剤層120の接着剤が2ミル厚のレンズ110に塗布された後でも、接着層120がわずかな厚さしか有しないため、2ミル厚のレンズ110と接着層120の合計の厚さは依然として2ミルであり得る。
【0019】
接着剤層120で使用される接着剤は、例えば、2003年3月25日に発行され、「Tear-off Optical Stack Having Peripheral Seal Mount」と題され、本明細書に援用される、ウィルソンの米国特許第6,536,045号に記載されているように、成形可能なカバー100の周囲の選択領域に塗布することができる。
【0020】
接着剤層120は、透明な光学的低粘着性材料から形成されていてもよく、水性アクリルの光学的に透明な接着剤、または油性の透明な接着剤を含み得る。成形可能なカバー100を基材10に貼り付けるために使用される接着剤層120aは、積層物の隣接するレンズ110のそれぞれの対の間に挿入された接着剤層120b、・・・120nの接着剤層120bと同じであっても、異なっていてもよい(例えば、より強い)。例えば、使用中にレンズ110の積層物全体を基板10から除去することなく、個々のレンズ110を引き剥がす場合には、より強力な接着剤を使用することができる。同様に、隣接するレンズ110の各対の間に挿入された、接着剤層120b、・・・120nに使用される接着剤は、犠牲層130の犠牲接着剤134よりも強力であり得、その結果、犠牲層130は、レンズ110の積層物から最も外側のレンズ110hを除去することなく引き剥がされ得る。犠牲接着剤134は、同様に低粘着性材料であり得、水性アクリルの光学的に透明な接着剤、または油性透明接着剤からなり得る。しかしながら、犠牲接着剤134の場合、犠牲接着剤134が最終製品140から除去されるので、代わりに不透明な接着剤を使用することができる。
【0021】
レンズ110は、耐擦傷性および/またはUV光遮断(吸収または反射)のために最適化することができる。例えば、各レンズ110の外側は、最終製品140に適した特性に好適であるような、耐擦傷性および/またはUV光遮断のために最適化されたコーティング(例えば、シリコンエステルアクリレートオリゴマーおよび/またはアクリレートウレタンポリオール)を堆積、噴霧、積層、または他の方法でコーティングし得る。設置が完了した後、犠牲層130は残らないため、犠牲層130の製造において、これらの特性は緩和され得る。したがって、例えば、犠牲層130は、レンズ120の積層物の最も外側のレンズ120nよりも耐擦傷性が低くてもよい。一方、犠牲層130は耐熱性が最適化され、例えば、耐熱性が最適化されたコーティング(例えば、シリコンエステルアクリレートオリゴマーおよび/またはアクリレート化ウレタンポリオール)でコーティングされ得る。なぜなら、犠牲層130は、以成形可能なカバー100を湾曲した基板10の形状に熱成形する部分として直接に加熱され得るからである。これらのレンズは、犠牲層130を介して間接的にのみ熱にさらされるので、そのような耐熱特性は、レンズ100の積層物では緩和され得る。したがって、例えば、犠牲層130は、レンズ積層物100の最も外側のレンズ110nよりも耐熱性が高くなり得る。
【0022】
犠牲層130は、高温PET、例えば、室温から220℃の間の温度に2時間(例えば、劣化することなく)耐えることができるもので形成されてもよい。高温PETは、成形プロセス中にレンズ110の下にある積層物の視認を可能にする透明なBoPETであり得、例えば、三菱ポリエステルフィルムグループによって商品名ホスタファンRBBで販売されているポリエステルフィルムであり得る。そのような高温BoPETは、成形プロセス中に犠牲層130を加熱するために熱風を使用する場合に好適である場合がある。あるいは、犠牲層130は、三菱ポリエステルフィルムグループによってホスタファンWINの商品名で販売されているものなどの不透明な(例えば、白色の)ポリエステルフィルムから形成されていてもよい。そのような不透明なポリエステルフィルムは、成形プロセス中に犠牲層130を加熱するために赤外線ヒーターを使用するときに、熱均一性を向上させることができる。
【0023】
犠牲層130(例えば、犠牲レンズ132および/または犠牲接着剤134)は、設置プロセスの熱に耐え、下にあるレンズ積層物110に熱および圧力を均一に分配するように最適化され得るが、一般に、犠牲層130は、下方にあるレンズ110の積層物より厳しい性能基準を満たす必要はない。例えば、レンズ積層物は、上記のように、耐擦傷性(例えば、ワイパーによるもの)、および/またはUV光を吸収または反射して、レンズ110を日光による損傷から保護することに加えて、米国規格協会(ANSI)の規格Z26.1-1966およびZ26.1aー1969に規定されているような、可視光透過率の連邦規格(たとえば、70%)を満たすように設計できる。犠牲層130におけるこれらの要件を緩和すると同時に、設置中に心配することなく熱および圧力を加えるためのより頑丈な表面を提供することにより、成形可能なカバー100は、レンズ110の積層物を設置するより効率的な方法を可能にし得る。犠牲層130がメス型モールド中空部として機能することにより、レンズ110および接着剤120の層は、湾曲した基板10に対してよりよく保持され、形成され、硬化し、設置プロセス中に引っかかれることは決してない。
【0024】
図2は、成形可能カバー100の犠牲層130に熱および圧力を加えるプロセスの開始時における、自動車20のフロントガラス上に配置された成形可能カバー100を示し、フロントガラスは基材10として機能する。成形可能なカバー100は、例えば、2016年3月29日に発行され、「Adhesive Mountable Stack of Removable Layers」と題されたウィルソンの米国特許第9,295,297号(この明細書に援用される)に開示されているように、ドライマウント接着剤120a(
図1を参照)によってフロントガラスに接着することができる。
あるいは、例えば、2015年9月8日に発行され、「Touch Screen Shield」と題されたウィルソンの米国特許第9,128,545号(この明細書に援用される)に開示されているように、ウェットマウント接着剤120aが使用され得る。成形可能なカバー100は平坦である可能性があるので(例えば、ロールツーロールプロセスで製造)、成形可能なカバー100は、最初はフロントガラスの湾曲した形状に適合せず、接着が他より多いところや少ないところ、ポケットの領域、及び成形可能なカバー100とフロントガラスとの間の気泡をもたらす可能性がある。したがって、成形可能なカバー100をフロントガラスの形状に適合させるために、熱風源(例えば、ヒートガンまたはブロードライヤー)または赤外線ヒーターなどのヒーター30を使用して、熱および圧力が加えられ得る。同時に、カードまたはスキージを使用して成形可能なカバー100に圧力を加えることができる。設置者が成形可能なカバー100の犠牲層130を加熱および押し下げると、犠牲層130は収縮および伸長して、レンズ110の積層物を間に挟んで対向する湾曲した基板10(フロントガラス)の輪郭をとることができる。このようにして、犠牲層130は、下方にあるレンズ110の積層物をフロントガラスの形状に熱成形するためのメス型モールド中空部として機能し、熱および圧力を均等に分散して、レンズ110を正しい形状に収縮および伸長し、接着剤層120を硬化させる。
【0025】
図3は、熱および圧力を加えるプロセスの最後のフロントガラス上の成形可能なカバー100を示している。この段階で、犠牲層130および下にあるレンズ110を含む成形可能なカバー100は、エアポケット/気泡のない状態でフロントガラスの湾曲した形状に成形される。犠牲層130の上面は、設置者がスキージまたはカードを使用して成形可能なカバー100に圧力を加えたときに、設置者によって引き起こされる様々な引っかき傷および他の傷を有する可能性がある。しかしながら、下にあるレンズ110は、犠牲層130によって保護されており、したがって、接触されない状態にある。
【0026】
図4は、犠牲層130が剥離されて透明レンズ110の積層物が現れる時の、フロントガラス上の成形可能なカバー100を示している。フロントガラス上に残っているのは、レンズ110の積層物および接着剤層120からなる最終製品140(
図1を参照)である。最終製品140は、可視光透過率(例えば、70%)に関する連邦基準、ならびに耐擦傷性および/またはUV光の吸収または除去を含む、上記の性能基準を満たすことができる。最終製品140のレンズ110は、フロントガラスの形状に正確に適合させることができ、最も外側のレンズ110h上でさえ、傷がないことができる。剥離した犠牲層130は、単に廃棄することができる。
【0027】
図5は、透明レンズ110の積層物が基材10として機能するフロントガラスに合うようにトリミングされた後の透明レンズ110の積層物を含む最終製品140を示している。透明レンズ110の積層物は、ステンレス鋼ブレードを備えた万能ナイフまたはボックスカッターなどのナイフを使用してトリミングすることができる(カーボンブレードはフロントガラスを損傷する可能性がある)。トリミングは、
図5に示すように、犠牲層130が成形可能なカバー100から除去された後に行われ得、その結果、表に現れた最終生成物140のみがトリミングされる。あるいは、
図3に示すように、成形可能なカバー100がフロントガラスの形状に適合した後、犠牲層130を除去する前にトリミングを行うことができる。いずれの場合も、結果として得られるトリミングされた最終製品140は、下のフロントガラスの形状と一致するため、事実上見えない可能性がある(ただし、ウィンドウティントの場合などではフロントガラスの色が変わる可能性はある)。
【0028】
図6は、本開示の一実施形態による例示的な操作フローを示すフローチャートである。
図6の操作フローは、
図1に示されるレンズ110の積層物を含む最終製品140を設置する例示的な方法として役立ち得る。まず、最終製品140と犠牲層130の両方を含む成形可能なカバー100を、接着剤層120aがフロントガラスの上にあり、かつ犠牲層130がフロントガラスと反対側に面している状態で、
図2(工程610)に示されるように、自動車20のフロントガラスなどの湾曲した基板10上に配置することができる。設置を容易にするために、成形可能なカバー100は、フロントガラスの外側に行き過ぎないように(例えば、電気フィルムカッターを使用して)粗く切断され得る。工程の流れは、成形可能なカバー100をフロントガラスの湾曲した形状に熱成形するために、
図2および3に関連して記載したように、成形可能なカバー100の犠牲層130に熱および圧力を加える工程へと続けることができる(工程620)。成形可能なカバー100を冷却させた後、工程の流れは、犠牲層130を剥がして、
図6(工程630)に関連して記載したように、犠牲層130を剥離して最終製品140を露出し、
図6(工程640)に関連して説明したように最終的なトリミングを実行することで終了する。上記のように、工程630,640は、
図6に示される順序で、または逆の順序で実行され得る。レンズ110の積層物を含む最終製品140は、今や均一に形成され、フロントガラス表面に貼り付けられている。
【0029】
図1の例では、3つのレンズ110が示されている。しかしながら、成形可能なカバー100は、4つ以上のレンズの積層物110、または2つのレンズの積層物110、あるいは単一のレンズ110を含むことが企図され、レンズ110の数は、用途に依って様々である。直感に反して、本発明者は、複数のレンズ110の積層物は、単一のレンズ110を有する積層物よりも、湾曲した基板10に熱成形する方が容易であることを発見した。
【0030】
この明細書を通して、「透明」という言葉は、透けて見えるあらゆる材料を包含するために広く使用されている。「透明」という言葉は、半透明、かすんでいる、つや消し、着色、または着色された材料を除外することを意図していない。
【0031】
本開示を通して記載されるコーティングは、スピンコーティング、ディップコーティング、または真空堆積などの既知の方法に従って適用することができる。
上記の説明は、限定ではなく例として与えられている。上記の開示を考えると、当業者は、本明細書に開示される本発明の範囲および精神の範囲内である変形を考案することができる。さらに、本明細書に開示される実施形態の様々な特徴は、単独で、または互いに様々な組み合わせで使用することができ、本明細書に記載の特定の組み合わせに限定されることを意図しない。したがって、特許請求の範囲は、例示された実施形態によって限定されるべきではない。
【国際調査報告】