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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/36 20200101AFI20220309BHJP
【FI】
D06F33/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523621
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2019115039
(87)【国際公開番号】W WO2020093943
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】201811308859.3
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】520148792
【氏名又は名称】海爾智家股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAIER SMART HOME CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 Haier Road, Laoshan District Qingdao, Shandong 266101 China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】劉尊安
(72)【発明者】
【氏名】張皓鈞
(72)【発明者】
【氏名】楊麗梅
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA15
3B167AD07
3B167BA08
3B167BA52
3B167BA83
3B167KA52
3B167LA08
3B167LA23
3B167LA38
3B167LC03
3B167LD03
3B167LD12
3B167LD13
(57)【要約】
本発明は、洗濯機を開示する。当該洗濯機は、衣類を収容する内槽と、洗濯機に動力を供給するモータと、内槽内に設置され、モータにより正逆交互に回転駆動されるパルセータ、を含む。また、少なくとも2種類の洗浄プログラムを更に含み、第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転1回あたりの時間よりも長い。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間よりも長い。本発明は、2種類の異なる洗浄プログラムを設定し、第2の洗浄プログラムにおいて、第1の洗浄プログラムよりもパルセータの正逆回転1回あたりの時間を長くすることで、繊細な衣類の摩耗を低下させる洗濯機を提供する。これにより、パルセータの頻繁な正逆回転に伴う衣類の損傷が回避されるため、洗濯機は、カシミヤや毛織物等の繊細な衣類を正常に洗浄することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容する内槽と、洗濯機に洗浄動力を供給するモータと、前記内槽内に設置され、前記モータにより正逆交互に回転駆動されるパルセータ、を含む洗濯機であって、
更に、少なくとも2種類の洗浄プログラムを含み、
第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転1回あたりの時間よりも長く、及び/又は、前記第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間が前記第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間よりも長いことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転の速度は、前記第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転の速度よりも小さく、及び/又は、前記第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転の速度は、前記第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転の速度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記第2の洗浄プログラムでは、前記パルセータの正回転1回あたりの時間、及び/又は、前記パルセータの逆回転1回あたりの時間が5秒よりも長く、
好ましくは、前記パルセータの正回転1回あたりの時間及び/又は前記パルセータの逆回転1回あたりの時間は2分を超えず、
及び/又は、前記第2の洗浄プログラムでは、前記パルセータの正回転の速度及び/又は前記パルセータの逆回転の速度は15~50rpmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの正逆方向転換過程での停止時間は、前記第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正逆方向転換過程での停止時間よりも長く、
好ましくは、前記第2の洗浄プログラムでは、前記パルセータの正逆方向転換過程での停止時間が5秒よりも長いことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記洗濯機は、洗浄過程で前記モータが前記内槽と前記パルセータとを互いに逆方向に回転駆動させるよう配置されており、
前記第2の洗浄プログラムにおける前記内槽の正回転1回あたりの時間は、前記第1の洗浄プログラムにおける前記内槽の正回転1回あたりの時間よりも長く、及び/又は、前記第2の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転1回あたりの時間は前記第1の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転1回あたりの時間よりも長く、
好ましくは、前記第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転1回あたり及び/又は前記内槽の逆回転1回あたりの時間は5秒よりも長く、
より好ましくは、前記第2の洗浄プログラムにおける前記内槽の正回転1回あたり及び/又は前記内槽の逆回転1回あたりの時間は2分を超えないことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記第2の洗浄プログラムでは、前記内槽の正回転の速度が前記第1の洗浄プログラムにおける前記内槽の正回転の速度よりも小さく、及び/又は、前記第2の洗浄プログラムにおける前記内槽の逆回転の速度は、前記第1の洗浄プログラムにおける前記内槽の逆回転の速度よりも小さく、
好ましくは、前記第2の洗浄プログラムにおける前記内槽の正回転及び/又は前記内槽の逆回転の速度は5~20rpmであることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記第2の洗浄プログラムにおいて、前記内槽の回転速度は前記パルセータの回転速度よりも低いことを特徴とする請求項5又は6に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記第2の洗浄プログラムにおける前記内槽の正逆方向転換過程での停止時間は、前記第1の洗浄プログラムにおける前記内槽の正逆方向転換過程での停止時間よりも長く、
好ましくは、前記第2の洗浄プログラムでは、前記内槽の正逆方向転換過程での停止時間が5秒よりも長いことを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記洗濯機は、洗浄過程において、前記モータがパルセータを正逆交互に回転駆動させるように配置されており、
且つ、前記内槽は自由状態となっており、水流により慣性で回転し、及び/又は、前記内槽は前記パルセータと同一方向に差動回転することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記洗濯機は、前記第2の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質の耐摩耗性が前記第1の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質の耐摩耗性よりも弱く、
好ましくは、前記第2の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質には、カシミヤ及び/又は毛織物が含まれることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用電気製品の技術分野に属し、具体的には洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
生活水準が向上の一途をたどる中、生活の質や洗濯体験の質も徐々に高まりを見せている。従来のパルセータ洗濯機は、モータがパルセータ(或いはパルセータと内槽)を頻繁に正逆回転させるよう駆動することで水流を促し、衣類を清浄化するものが一般的である。しかし、この種の洗浄方式では衣類の摩耗が大きく、カシミヤや毛織物等の衣類を洗浄する際に衣類を傷付けやすい。
【0003】
通常の洗濯機では、一般的に、外槽の底部に排水モータが装着されており、排水モータによって、減速器の洗浄・脱水状態の切り替え及び排水弁の制御を同時に行っている。また、従来の方案では、パルセータ(或いはパルセータと内槽)が頻繁に正逆回転することで衣類の摩耗が大きくなるとの課題を解決するために、一般的に、排水部分に電動排水弁を追加することで、排水に特化した制御に用いている。これにより、従来の排水モータは、減速器の洗浄・脱水状態の切り替えに特化した制御を実現可能となる。プログラム制御を通じて、洗濯機は、洗浄段階において排水モータの動作により洗濯機の減速器を脱水状態とする。これにより、内槽とパルセータは同期・同方向回転洗浄を実現可能となるため、衣類の摩耗が軽減される。
【0004】
特許文献1は、パルセータ洗濯機及び制御方法を開示している。パルセータ洗濯機は、内槽ユニットとダブルロータモータを含み、内槽ユニットが、内槽と、内槽の底部に設けられる第1パルセータ及び第2パルセータを含む。ダブルロータモータは内槽ユニットに接続されている。また、ダブルロータモータは第1ロータと第2ロータを含む。ダブルロータモータは、パルセータ洗濯機が洗浄モードの場合に、第1ロータが第1パルセータに接続され、第2ロータが第2パルセータに接続されて、第1パルセータと第2パルセータをそれぞれ第1動作モードから第4動作モードの少なくとも1つのモードで動作させるべく駆動するよう構成されている。また、パルセータ洗濯機が脱水モードの場合には、第1ロータ及び第2ロータの一方が、第1パルセータ、第2パルセータ及び内槽に接続されて、第1パルセータ、第2パルセータ及び内槽を同期回転させるよう駆動する。
【0005】
上記の従来技術は、パルセータ洗濯機の制御方法を提案するとともに、パルセータの正逆交互回転洗浄に対する技術方案を提案しているが、次のような2つの瑕疵が存在する。第一に、同期・同方向回転洗浄の場合には、衣類の摩耗は軽減させられるが、この状態では水流が常に不活性状態となる。そのため、水流による衣類の洗浄効果が不足し、清浄度に劣る。第二に、同期・同方向回転洗浄の場合には、排水制御に特化した電動排水弁を追加する必要がある。よって、方案及び構造が複雑となり、コストが嵩む。
【0006】
そこで、従来技術の瑕疵及び欠点を改良するために、2種類の異なる洗浄プログラムを設定し、第2の洗浄プログラムにおいて、第1の洗浄プログラムよりもパルセータの正逆回転1回あたりの時間を長くすることで、繊細な衣類の摩耗を低下させる洗濯機を提供する必要がある。これにより、パルセータの頻繁な正逆回転に伴う衣類の損傷が回避されるため、洗濯機は、カシミヤや毛織物等の繊細な衣類を正常に洗浄することが可能となる。
【0007】
以上に鑑みて、本発明を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願第201510386727.2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の瑕疵を解消するために、上記の課題を解消可能であるか、上記の課題を少なくとも部分的に解決可能な洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を解決するために、本発明で採用する技術方案の基本思想は以下の通りである。
【0011】
洗濯機は、衣類を収容する内槽と、洗濯機に洗浄動力を供給するモータと、内槽内に設置され、モータにより正逆交互に回転駆動されるパルセータ、を含む。また、少なくとも2種類の洗浄プログラムを更に含み、第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転1回あたりの時間よりも長い。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間よりも長い。また、第2の洗浄プログラムでは、より低い回転速度及びより長い方向転換時間を設定することで、突然の逆回転により水流が相殺されて、内槽内の洗浄液が不活性状態となる結果、水流による衣類の洗浄効果に支障をきたすとの事態を回避する。
【0012】
且つ、前記第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転の速度は、第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転の速度よりも小さい。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転の速度は、第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転の速度よりも小さい。第2の洗浄プログラムでは、より低い回転速度及びより長い方向転換時間を設定することで、突然の逆回転により水流が相殺されて、内槽内の洗浄液が不活性状態となる結果、水流による衣類の洗浄効果に支障をきたすとの事態を回避する。
【0013】
更に、第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転1回あたりの時間、及び/又は、パルセータの逆回転1回あたりの時間が5秒よりも長い。
【0014】
一実施例において、パルセータの正回転1回あたりの時間及び/又はパルセータの逆回転1回あたりの時間は2分を超えない。
【0015】
他の実施例において、第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転の速度及び/又はパルセータの逆回転の速度は15~50rpmである。
【0016】
また、更に、前記第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの正逆方向転換過程での停止時間は、第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正逆方向転換過程での停止時間よりも長い。
【0017】
一実施例において、第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正逆方向転換過程での停止時間が5秒よりも長い。
【0018】
また、前記洗濯機は、洗浄過程でモータが内槽とパルセータを互いに逆方向に回転駆動させるよう配置されている。
【0019】
第2の洗浄プログラムでは、内槽の正回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおける内槽の正回転1回あたりの時間よりも長い。及び/又は、第2の洗浄プログラムでは、内槽の逆回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転1回あたりの時間よりも長い。
【0020】
一実施例において、第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転1回あたり及び/又は内槽の逆回転1回あたりの時間は5秒よりも長い。
【0021】
一実施例において、第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転1回あたり及び/又は内槽の逆回転1回あたりの時間は2分を超えない。
【0022】
更に、第2の洗浄プログラムでは、内槽の正回転の速度が第1の洗浄プログラムにおける内槽の正回転の速度よりも小さい。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転の速度は、第1の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転の速度よりも小さい。
【0023】
一実施例において、第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転及び/又は内槽の逆回転の速度は5~20rpmである。
【0024】
また、更に、前記第2の洗浄プログラムにおいて、内槽の回転速度はパルセータの回転速度よりも低い。
【0025】
且つ、更に、前記第2の洗浄プログラムでは、内槽の正逆方向転換過程での停止時間が第1の洗浄プログラムにおける内槽の正逆方向転換過程での停止時間よりも長い。
【0026】
一実施例において、第2の洗浄プログラムでは、内槽の正逆方向転換過程での停止時間が5秒よりも長い。
【0027】
また、前記洗濯機は、洗浄過程において、モータがパルセータを正逆交互に回転駆動させるよう配置されている。且つ、内槽は自由状態となっており、水流により慣性で回転する。
【0028】
このほか、前記洗濯機は、洗浄過程において、モータがパルセータを正逆交互に回転駆動させるよう配置されている。また、内槽はパルセータと同一方向に差動回転する。
【0029】
且つ、前記洗濯機は、第2の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質の耐摩耗性が第1の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質の耐摩耗性よりも弱い。
【0030】
一実施例において、第2の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質には、カシミヤ及び/又は毛織物が含まれる。
【0031】
本発明では、パルセータの回転過程における正逆回転1回とは、パルセータの正回転、停止、逆回転で構成される回転周期の1回の正回転及び1回の逆回転を意味する。
【0032】
本発明では、内槽の回転過程における正逆回転1回とは、内槽の正回転、停止、逆回転で構成される回転周期の1回の正回転及び1回の逆回転を意味する。
【発明の効果】
【0033】
上記の技術方案を用いることで、本発明は、従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。即ち、本発明では、2種類の異なる洗浄プログラムを設定し、第2の洗浄プログラムにおいて、第1の洗浄プログラムよりもパルセータの正逆回転1回あたりの時間を長くすることで、繊細な衣類の摩耗を低下させる。これにより、パルセータの頻繁な正逆回転に伴う衣類の損傷が回避されるため、洗濯機は、カシミヤや毛織物等の繊細な衣類を正常に洗浄することが可能となる。また、第2の洗浄プログラムでは、より低い回転速度及びより長い方向転換時間を設定することで、突然の逆回転により水流が相殺されて、内槽内の洗浄液が不活性状態となる結果、水流による衣類の洗浄効果に支障をきたすとの事態を回避する。
【0034】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に述べる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明確とすべく、以下では、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0036】
本発明の記載において、説明すべき点として、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、且つ特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0037】
本発明の記載において、説明すべき点として、別途明確に規定及び限定しない限り、「装着する」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定的な接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体的な接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。更には、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【0038】
生活水準が向上の一途をたどる中、生活の質や洗濯体験の質も徐々に高まりを見せている。従来のパルセータ洗濯機は、モータがパルセータ(或いはパルセータと内槽)を頻繁に正逆回転させるよう駆動することで水流を促し、衣類を清浄化するものが一般的である。しかし、この種の洗浄方式では衣類の摩耗が大きく、カシミヤや毛織物等の衣類を洗浄する際に衣類を傷付けやすい。
【0039】
通常の洗濯機では、一般的に、外槽の底部に排水モータが装着されており、排水モータによって、減速器の洗浄・脱水状態の切り替え及び排水弁の制御を同時に行っている。また、従来の方案では、パルセータ(或いはパルセータと内槽)が頻繁に正逆回転することで衣類の摩耗が大きくなるとの課題を解決するために、一般的に、排水部分に電動排水弁を追加することで、排水に特化した制御に用いている。これにより、従来の排水モータは、減速器の洗浄・脱水状態の切り替えに特化した制御を実現可能となる。プログラム制御を通じて、洗濯機は、洗浄段階において排水モータの動作により洗濯機の減速器を脱水状態とする。これにより、内槽とパルセータは同期・同方向回転洗浄を実現可能となるため、衣類の摩耗が軽減される。
【0040】
上記の技術的課題に対し、本発明は、2種類の異なる洗浄プログラムを設定し、第2の洗浄プログラムにおいて、第1の洗浄プログラムよりもパルセータの正逆回転1回あたりの時間を長くすることで、繊細な衣類の摩耗を低下させる洗濯機を提供する。これにより、パルセータの頻繁な正逆回転に伴う衣類の損傷が回避されるため、洗濯機は、カシミヤや毛織物等の繊細な衣類を正常に洗浄することが可能となる。具体的な技術方案は以下の通りである。
【実施例1】
【0041】
本実施例で記載する洗濯機は、衣類を収容する内槽と、洗濯機に洗浄動力を供給するモータと、内槽内に設置され、モータにより正逆交互に回転駆動されるパルセータ、を含む。一般的な洗濯機では、モータの回転方向を頻繁に切り替えて、内槽内の洗浄液及び衣類の回転方向を頻繁に切り替えることで衣類の洗浄を実現する。しかし、従来の方案では、パルセータ(或いはパルセータと内槽)が頻繁に正逆回転することで衣類の摩耗が大きくなるとの課題を解決するために、一般的に、排水部分に電動排水弁を追加することで、排水に特化した制御に用いている。これにより、従来の排水モータは、減速器の洗浄・脱水状態の切り替えに特化した制御を実現可能となる。ところが、比較的繊細な衣類や耐摩耗性に乏しい衣類を洗浄する際には、回転方向を頻繁に切り替えることで衣類が損傷する。そこで、本発明では、プログラム制御を通じて、洗濯機が、洗浄段階において排水モータの動作により洗濯機の減速器を脱水状態とする。これにより、内槽とパルセータは同期・同方向回転洗浄を実現可能となるため、衣類の摩耗が軽減される。
【0042】
具体的に、本発明では、洗濯機の洗浄システムに第1の洗浄プログラム及び第2の洗浄プログラムという少なくとも2種類の洗浄プログラムを設定する。第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転1回あたりの時間よりも長い。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転1回あたりの時間よりも長い。また、第2の洗浄プログラムでは、より低い回転速度及びより長い方向転換時間を設定することで、突然の逆回転により水流が相殺されて、内槽内の洗浄液が不活性状態となる結果、水流による衣類の洗浄効果に支障をきたすとの事態を回避する。また、第2の洗浄プログラムにおける回転時間は第1の洗浄プログラムよりも長いため、衣類がよりしっかりと洗浄される。
【0043】
本発明では、2種類の異なる洗浄プログラムを設定し、第2の洗浄プログラムにおいて、第1の洗浄プログラムよりもパルセータの正逆回転1回あたりの時間を長くすることで、繊細な衣類の摩耗を低下させる。これにより、パルセータの頻繁な正逆回転に伴う衣類の損傷が回避されるため、洗濯機は、カシミヤや毛織物等の繊細な衣類を正常に洗浄することが可能となる。
【実施例2】
【0044】
本実施例は、上記実施例1を更に限定する。本実施例で記載する第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転の速度は、第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正回転の速度よりも小さい。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転の速度は、第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの逆回転の速度よりも小さい。第2の洗浄プログラムでは、より低い回転速度及びより長い方向転換時間を設定することで、突然の逆回転により水流が相殺されて、内槽内の洗浄液が不活性状態となる結果、水流による衣類の洗浄効果に支障をきたすとの事態を回避する。
【実施例3】
【0045】
本実施例は、上記実施例1又は実施例2を更に限定する。本実施例で記載する第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転1回あたりの時間、及び/又は、パルセータの逆回転1回あたりの時間が5秒よりも長く、回転時間を比較的長く設定する。これは、衣類に十分な洗浄時間を提供することで、一時停止が長すぎるために洗浄時間が短縮されて、衣類がしっかり洗浄されないとの事態を回避するためである。また、回転速度が低下した場合でも衣類の洗浄効果を高めることが可能である。
【0046】
本実施例では、好ましくは、第2の洗浄プログラムにおいて、パルセータを正回転させる時間及び/又はパルセータを逆回転させる時間が2分を超えないよう制御することで、回転時間が長すぎるために繊細な衣類が摩耗するとの事態を回避する。
【実施例4】
【0047】
本実施例は、上記実施例1~実施例3のいずれかの実施例を更に限定する。本実施例における第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正回転の速度及び/又はパルセータの逆回転の速度を15~50rpmとする。これに対し、一般的な洗濯機では、正逆が交互に行われるとともに、通常はパルセータの回転速度が120~200rpm程度、即ち、第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの回転速度となっている。回転速度が高い場合には衣類がしっかりと洗浄され、衣類の清浄度及び洗浄効果を高めることができる。しかし、回転速度が高すぎる場合には、正逆交互回転の方向転換時に衣類にかかる作用力が大きくなり、方向転換の過程でより大きな摩耗力が作用する。このとき、耐摩耗性に乏しい衣類は、頻繁な回転方向の切り替え過程で損傷を受ける。一方、本発明では、第2の洗浄プログラムにおける回転速度を一般的な第1の洗浄プログラムの回転速度よりも低く設定することで、耐摩耗性に乏しい衣類をしっかりと洗浄することを前提に、摩耗が最低限となるよう保証している。
【実施例5】
【0048】
本実施例は、上記実施例1~実施例4のいずれかの実施例を更に限定する。本実施例で記載する第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正逆方向転換過程での停止時間が第1の洗浄プログラムにおけるパルセータの正逆方向転換過程での停止時間よりも長くなっている。第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正逆方向転換過程での停止時間が5秒よりも長い。これに対し、一般的な洗濯機の洗浄プログラムでは、正逆が交互に行われるとともに、一般的なモータの回転停止時間が0.3~3秒以内となっている。しかし、短い一時停止時間では洗浄液と衣類の回転速度を低下させることができず、洗浄液と衣類の双方が高速回転している状況でモータが逆回転すると、必然的に衣類に深刻な摩耗を生じさせることになる。
【実施例6】
【0049】
本実施例は、上記実施例1~実施例5のいずれかの実施例を更に限定する。本実施例で記載する洗濯機は、洗浄過程でモータが内槽とパルセータを互いに逆方向に回転駆動させるよう配置されている。第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転1回あたりの時間は、第1の洗浄プログラムにおける内槽の正回転1回あたりの時間よりも長い。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転1回あたりの時間は、第1の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転1回あたりの時間よりも長い。
【0050】
更に、第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転又は逆回転1回あたりの時間は5秒よりも長い。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転又は逆回転1回あたりの時間は2分を超えない。
【0051】
一般的なモータの回転停止時間は0.3~3秒以内となっている。しかし、短い一時停止時間では洗浄液と衣類の回転速度を低下させることができず、洗浄液と衣類の双方が高速回転している状況でモータが逆回転すると、必然的に衣類に深刻な摩耗を生じさせることになる。
【実施例7】
【0052】
本実施例は、上記実施例6を更に限定する。本実施例で記載する第2の洗浄プログラムでは、内槽の正回転の速度が第1の洗浄プログラムにおける内槽の正回転の速度よりも小さい。及び/又は、第2の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転の速度は、第1の洗浄プログラムにおける内槽の逆回転の速度よりも小さい。第2の洗浄プログラムにおける内槽の正回転又は逆回転の速度は5~20rpmである。また、前記第2の洗浄プログラムにおいて、内槽の回転速度はパルセータの回転速度よりも低くなっている。これに対し、一般的な洗濯機では、正逆が交互に行われるとともに、通常はパルセータの回転速度が120~200rpm程度である。また、ダブル駆動の場合、内槽の回転速度は50~90rpm程度である。パルセータ及び内槽の回転速度が高い場合には、衣類がしっかりと洗浄され、衣類の清浄度及び洗浄効果を高めることができる。しかし、回転速度が高すぎる場合には、正逆交互回転の方向転換時に衣類にかかる作用力が大きくなり、方向転換の過程でより大きな摩耗力が作用する。このとき、耐摩耗性に乏しい衣類は、頻繁な回転方向の切り替え過程で損傷を受ける。一方、本発明では、第2の洗浄プログラムにおける回転速度を一般的な第1の洗浄プログラムの回転速度よりも低く設定することで、耐摩耗性に乏しい衣類をしっかりと洗浄することを前提に、摩耗が最低限となるよう保証している。
【実施例8】
【0053】
本実施例は、上記実施例7を更に限定する。本実施例で記載する第2の洗浄プログラムでは、内槽の正逆方向転換過程での停止時間が第1の洗浄プログラムにおける内槽の正逆方向転換過程での停止時間よりも長くなっている。第2の洗浄プログラムでは、パルセータの正逆方向転換過程での停止時間が5秒よりも長い。
【実施例9】
【0054】
本実施例は、上記実施例1~実施例8のいずれかの実施例を更に限定する。本実施例で記載する洗濯機は、洗浄過程において、モータがパルセータを正逆交互に回転駆動させるよう配置されている。また、内槽は自由状態となっており、水流により慣性で回転する。
【実施例10】
【0055】
本実施例は、上記実施例1~実施例9のいずれかの実施例を更に限定する。本実施例で記載する洗濯機は、洗浄過程において、モータがパルセータを正逆交互に回転駆動させるよう配置されている。また、内槽はパルセータと同一方向に差動回転する。
【実施例11】
【0056】
本実施例は、上記実施例1~実施例10のいずれかの実施例を更に限定する。本実施例で記載する洗濯機では、第2の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質の耐摩耗性が、第1の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質の耐摩耗性よりも弱い。本発明では、第2の洗浄プログラムにおける洗浄時間と洗浄回転速度をいずれも相応に設定している。そのため、内槽とパルセータが逆方向に回転する場合、同一方向に差動回転する場合、或いは内槽が自由状態の場合のいずれであったとしても、第2の洗浄プログラムにおいて、繊細な衣類や耐摩耗性に乏しい衣類をしっかりと洗浄可能であり、摩耗の度合も低下させられる。よって、ユーザエクスペリエンスが向上する。
【実施例12】
【0057】
本実施例は、上記実施例11を更に限定する。本実施例で記載する第2の洗浄プログラムで洗浄する衣類の材質には、カシミヤ及び/又は毛織物が含まれる。
【0058】
ここで提供した明細書では、多数の具体的詳細事項について説明した。しかし、本発明の実施例はこれらの具体的詳細事項が伴わない場合でも実践し得ると解釈可能である。また、一部の実施例では、本明細書の理解が曖昧とならないよう、公知の方法、構造及び技術については詳細に提示していない。
【0059】
同様に、本開示を簡潔とし、各発明の1又は複数の局面についての理解を助けるために、上述した本発明の例示的実施例の記載では、本発明の各特徴を一括して1つの実施例、図面又は記載に組み込んでいる場合があると解釈すべきである。しかし、本開示における方法が、各請求項に明記されている特徴よりも多くの特徴の保護を本発明が求めているとの意図を反映するものであるとは解釈すべきでない。より適切に言うと、後述の特許請求の範囲に示したように、発明の局面は上記で開示した各実施例の全ての特徴よりも少ない。つまり、具体的実施形態に従う特許請求の範囲は、これをもって明らかに当該具体的実施形態に組み込まれており、各請求項自体がいずれも本発明の各実施例となっている。
【0060】
このような特徴、及び/又は過程、又はユニットの少なくとも一部は、互いに排除し合う場合を除き、任意の組み合わせでもって、本明細書(不随する請求項、要約書及び図面を含む)で開示したあらゆる特徴、及びここで開示した任意の方法又はデバイスの全ての過程或いはユニットと組み合わせることが可能である。また、別途明確に記載している場合を除き、本明細書(不随する請求項、要約書及び図面を含む)で開示した各特徴は、同一、同等又は類似の目的の代替的な特徴を提供して置き換えることが可能である。
【0061】
このほか、当業者であれば理解可能なように、ここで記載した一部の実施例は、その他の実施例に含まれるいくつかの特徴を含んでおり、その他の特徴は含んでいないが、異なる実施例の特徴を組み合わせることは、本発明の範囲内であって、且つ異なる実施例を形成することを意味している。例えば、後述の特許請求の範囲で保護を請求する実施例のいずれかは、任意の組み合わせで使用することが可能である。
【0062】
注意すべき点として、上記の実施例は本発明を説明するものであって、本発明を制限するものではない。且つ、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、代替的な実施例を設計することができる。請求項において、括弧内に記載した符号はいずれも請求項を制限するものではない。また、「含む」との用語は、請求項に記載していない部材又はステップを排除するものではない。また、部材の前に記載される「1の」又は「1つの」との用語は、これらの部材が複数存在することを排除するものではない。また、いくつかの装置を列挙するユニットの請求項において、これらの装置のうちのいくつかは同一のハードウェアによって具体的に体現可能である。また、第1、第2及び第3等の用語の使用は、何らかの順序を表すものではない。つまり、これらの用語は名称と解釈すればい。
【0063】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に制限するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて実施可能なわずかな変形或いは補足は、同等に変形された等価の実施例とみなされ、いずれも本発明の技術方案の内容を逸脱するものではない。また、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる任意の簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲に属する。
【国際調査報告】