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特表2022-518673粉砕誘導変換による表面反応カルシウム塩の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】粉砕誘導変換による表面反応カルシウム塩の製造
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20220309BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20220309BHJP
   C01B 25/32 20060101ALI20220309BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20220309BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C09D17/00
C01F11/18 G
C01B25/32 C
C01B25/32 G
C09C1/02
C09C3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021537985
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020052408
(87)【国際公開番号】W WO2020157268
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19155098.7
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エー.ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】ラッシ カルフォネン
【テーマコード(参考)】
4G076
4J037
【Fターム(参考)】
4G076AA16
4G076AB05
4G076AB21
4G076AC04
4G076BA24
4G076BC08
4G076BD01
4G076BD02
4G076BF05
4G076CA02
4G076CA15
4G076CA26
4G076CA28
4G076DA02
4G076DA15
4J037AA10
4J037CA22
4J037DD05
4J037DD07
4J037DD23
4J037DD27
4J037EE29
(57)【要約】
本発明は、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩と、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムとを水と混合し、かつ少なくとも4.2のpH値で得られた水性懸濁液を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁液を形成することによって、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁液を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するための方法:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、
(c)工程(a)の前記カルシウム塩と工程(b)の前記リン酸カルシウムとを水と混合することによって水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の前記水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(a)の前記カルシウム塩と工程(b)の前記リン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、1.75:1~100:1の範囲である。
【請求項2】
工程(a)の前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、工程(a)の前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、工程(a)の前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、最も好ましくは、工程(a)の前記カルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム含有材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、前記炭酸カルシウム含有材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、前記炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)の前記カルシウム塩は、重量メジアン粒径d50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~20μmであり、かつ/又は重量トップカット粒径d98(wt)が、0.15~1500μm、好ましくは1~600μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~80μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の前記カルシウム塩と工程(b)の前記リン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、1.9:1~75:1、好ましくは2:1~50:1、より好ましくは2.2:1~25:1、最も好ましくは2.5:1~10:1の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の前記リン酸カルシウムが、リン酸一水素カルシウム二水和物であり、かつ工程(b)の前記リン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除く前記カルシウム塩の総重量に基づいて、1.7~230重量%、好ましくは2.3~191重量%、より好ましくは3.5~172重量%、最も好ましくは19~115重量%の量で提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)の前記リン酸カルシウムが、無水リン酸一水素カルシウムであり、かつ工程(b)の前記リン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除く前記カルシウム塩の総重量に基づいて、1.4~181重量%、好ましくは1.8~151重量%、より好ましくは2.8~136重量%、最も好ましくは15~91重量%の量で提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の前記リン酸カルシウムが、無水リン酸二水素カルシウムであり、かつ工程(b)の前記リン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除く前記カルシウム塩の総重量に基づいて、1.2~94重量%、好ましくは1.6~84重量%、より好ましくは2.4~78重量%、最も好ましくは12~59重量%の量で提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の前記リン酸カルシウムが、リン酸二水素カルシウム一水和物であり、かつ工程(b)の前記リン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除く前記カルシウム塩の総重量に基づいて、1.3~100.1重量%、好ましくは1.7~90重量%、より好ましくは2.5~84重量%、最も好ましくは13~63重量%の量で提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)で生成する前記水性懸濁物は、固形分含量が、前記水性懸濁物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~75重量%、より好ましくは5~50重量%、さらにより好ましくは7~30重量%、さらに一層より好ましくは9~25重量%、最も好ましくは10~20重量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
4.5~14のpH値で、好ましくは4.7~13.5のpH値で、より好ましくは5~13のpH値で、さらにより好ましくは5.5~12.5のpH値で、最も好ましくは6~12のpH値で、工程(d)を実施する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
0~110℃、好ましくは10~100℃、より好ましくは15~80℃、より好ましくは20~50℃、最も好ましくは20℃±2℃の温度で、工程(d)を実施する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
以下の工程によってリン酸一水素カルシウムを製造する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法:
(i)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(ii)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(iii)工程(i)の前記カルシウムイオン源と工程(ii)の前記リン酸イオン源とを水の存在下で接触させてリン酸一水素カルシウムを生成すること、
ここで、工程(i)の前記カルシウムイオン源と工程(ii)の前記リン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比が、1:2~5:1、好ましくは2:3~2:1、より好ましくは3:4~3:2、さらにより好ましくは5:6~4:3、さらに一層好ましくは10:11~11:10、最も好ましくは約1:1で提供する。
【請求項14】
工程(i)の前記カルシウムイオン源が、請求項1の工程(a)の前記カルシウム塩と同じであり、好ましくは炭酸カルシウム含有材料、より好ましくは粉砕炭酸カルシウムであり、かつ/又は工程(ii)の前記リン酸イオン源が、好ましくはリン酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)~(c)が、以下の工程(I)~(III)に置き換えられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)の前記カルシウムイオン源と工程(II)の前記リン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)の前記カルシウムイオン源と工程(II)の前記リン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、1.75:1~100:1の範囲で提供する。
【請求項16】
前記リン酸イオン源は、リン酸、リン酸の水素を含まない塩、リン酸の一水素塩、好ましくはNaHPO、又はリン酸の二水素塩、又はこれらの混合物であり、好ましくは、前記リン酸イオン源は、リン酸、リン酸の二水素塩、又はこれらの混合物であり、好ましくは、前記リン酸イオン源は、リン酸、NaHPO、KHPO、LiHPO、NHPO、Ca(HPO、Mg(HPO、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって得られる表面反応カルシウム塩粒子。
【請求項18】
前記表面反応カルシウム塩粒子は、窒素及びBET法を使用して測定された比表面積(BET)が、5m/g~200m/g、好ましくは10m/g~180m/g、より好ましくは20m/g~170m/g、さらにより好ましくは25m/g~150m/g、最も好ましくは30m/g~100m/gであり、かつ/又は
前記表面反応カルシウム塩粒子は、炭酸カルシウム対アパタイトリン酸カルシウム、好ましくは、ヒドロキシアパタイト、リン酸オクタカルシウム、フルオロアパタイト、カルボキシアパタイト、又はこれらの混合物、より好ましくはヒドロキシアパタイトの質量比が、0.05:1~59:1、好ましくは0.14:1~44:1、より好ましくは0.2:1~29:1、さらにより好ましくは0.3:1~15:1、最も好ましくは0.5:1~5:1の範囲内である、
請求項17に記載の表面反応カルシウム塩粒子。
【請求項19】
前記表面反応カルシウム塩粒子は、
体積基準メジアン粒径d50(vol)が、0.5~75μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~40μm、さらにより好ましくは2.5~30μm、最も好ましくは3~15μmであり、かつ/又は
体積基準トップカット粒径d98(vol)が、1~150μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは4~80μm、さらにより好ましくは5~60μm、最も好ましくは6~30μmである、
請求項17又は18に記載の表面反応カルシウム塩粒子。
【請求項20】
ポリマー用途、紙コーティング用途、製紙、塗料、コーティング、シーラント、印刷インク、接着剤、食品、飼料、医薬品、コンクリート、セメント、化粧品、水処理、加工木材用途、石膏ボード用途、包装用途、又は農業用途における、請求項17~19のいずれか一項に記載の表面反応カルシウム塩粒子の使用。
【請求項21】
紙製品、加工木材製品、石膏ボード製品、ポリマー製品、衛生製品、医療製品、ヘルスケア製品、フィルター製品、織物材料、不織布材料、ジオテキスタイル製品、農産物、園芸製品、衣類、履物製品、手荷物製品、家庭用品、工業製品、包装製品、建築製品、又は建設製品から選択される、請求項17~19のいずれか一項に記載の表面反応カルシウム塩粒子を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反応カルシウム塩粒子、これらの製造方法、及びこれらの使用に関する。
【0002】
1998年に、新しいタイプの表面反応炭酸カルシウムが、最初に仏国特許第2787802B1号明細書に記載され、続いて国際公開第00/39222A1号及び米国特許出願公開第2004/0020410A1号公報に記載され、この表面反応炭酸カルシウムは、天然の粉砕された炭酸カルシウムとガス状COとの反応、及び一つ又はそれを超える中強度~強力なHイオン供与体との反応に基づくものである。得られた生成物は、特有の表面構造、多孔度、及び比表面積を有する多孔質炭酸カルシウムであり、紙の顔料又はコーティング充填剤として使用すると、物理的特性を失うことなく、一定の表面積に対して紙の重量を減らすことができる。
【0003】
国際公開第2004/083316A1号には、この表面反応炭酸カルシウムの調製におけるさらに有利な改変が記載されており、ここでは、ケイ酸アルミニウム、合成シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸塩、及び/又は一価の塩が関与し、これらは製紙用途にも有用である。
【0004】
また、国際公開第2005/121257A2号は、この表面反応炭酸カルシウムの製造における有利な添加剤の添加について言及し、ここで式R-Xの一つ又はそれを超える化合物が添加され、これらは、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、又は脂肪アルコールから選択される。
【0005】
国際公開第2009/074492A1号は、特に沈降炭酸カルシウムに関する既知の方法の最適化に関するものであり、これは、炭酸カルシウムの沈殿における特別な条件に起因して、天然粉砕炭酸カルシウムに有用な方法が、合成沈降炭酸カルシウムの表面反応について同様の良好な結果を与えないことが判明したことによるものである。
【0006】
表面反応炭酸カルシウムの調製方法のいくつかのさらなる最適化及び改変が引き続き、例えば、表面反応炭酸カルシウムの調製における弱酸の使用を含む国際公開第2010/146530A1号及び国際公開第2010/146531A1号に記載されているものなどが挙げられる。
【0007】
欧州特許出願公開第2 957 603A1号公報は、表面反応炭酸カルシウムを含む顆粒を製造する方法を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、当技術分野では、表面反応カルシウム塩を製造する方法、特に、小さな粒子サイズ及び大きな比表面積を有する表面反応カルシウム塩粒子を製造する経済的方法が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、小さな粒子サイズ及び大きな比表面積を有する表面反応カルシウム塩粒子を製造するための経済的な方法を提供することである。他の方法の副産物や廃棄物などの低品質の出発原料を利用できる方法を提供することが望ましい。粗い出発材料を利用できる方法を提供することもまた望ましい。
【0010】
本発明の目的はまた、連続的な方法として実施することができ、かつ低い開始温度で操作することができる、表面反応カルシウム塩粒子を製造するための方法を提供することである。標準的な装置で実施できる方法を提供することが望ましい。また、この方法が二酸化炭素の添加を必要としないことも望ましい。
【0011】
本発明の目的はまた、少なくとも部分的に天然の供給源から誘導でき、かつ環境中で持続して存在せず、容易に生分解性である材料を提供することである。得られた表面反応カルシウム塩粒子は、充填剤材料として使用することができ、それにより様々な用途で従来から使用されている充填剤に取って代わるか、又はそれらを補うことができることが望ましい。表面反応カルシウム塩粒子の機能を制御することができ、特定の用途に合わせて調整することができることも望ましい。
【0012】
前述の目的及び他の目的は、独立請求項で定義されている主題によって解決される。
【0013】
一つの態様によれば、以下の工程を含む表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物の製造方法が提供される:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、
(c)工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合することによって水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である。
【0014】
本発明の別の態様によれば、本発明の方法によって得られる表面反応カルシウム塩粒子が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、ポリマー用途、紙コーティング用途、製紙、塗料、コーティング、シーラント、印刷インク、接着剤、食品、飼料、医薬品、コンクリート、セメント、化粧品、水処理、加工木材用途、石膏ボード用途、包装用途、又は農業用途における、本発明の表面反応カルシウム塩粒子の使用が提供される。
【0016】
さらに別の態様によれば、本発明の表面反応カルシウム塩粒子を含む物品が提供され、この物品は、紙製品、加工木材製品、石膏ボード製品、ポリマー製品、衛生製品、医療製品、ヘルスケア製品、フィルター製品、織物材料、不織布材料、ジオテキスタイル製品、農産物、園芸製品、衣類、履物製品、手荷物製品、家庭用品、工業製品、包装製品、建築製品、又は建設製品から選択される。
【0017】
本発明の有利な実施態様は、対応する従属請求項に定義されている。
【0018】
一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、最も好ましくは、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料である。別の実施態様によれば、炭酸カルシウム含有材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、炭酸カルシウム含有材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである。
【0019】
一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、重量メジアン粒径d50(wt)が0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~20μmであり、かつ/又は重量トップカット粒径d98(wt)が0.15~1500μm、好ましくは1~600μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~80μmである。さらなる実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.9:1~75:1、好ましくは2:1~50:1、より好ましくは2.2:1~25:1、最も好ましくは2.5:1~10:1の範囲である。
【0020】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、リン酸一水素カルシウム二水和物であり、かつ工程(b)のリン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.7~230重量%、好ましくは2.3~191重量%、より好ましくは3.5~172重量%、最も好ましくは19~115重量%の量で提供する。さらなる実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、無水リン酸一水素カルシウムであり、かつ工程(b)のリン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.4~181重量%、好ましくは1.8~151重量%、より好ましくは2.8~136重量%、最も好ましくは15~91重量%の量で提供する。
【0021】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、無水リン酸二水素カルシウムであり、かつ工程(b)のリン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.2~94重量%、好ましくは1.6~84重量%、より好ましくは2.4~78重量%、最も好ましくは12~59重量%の量で提供する。さらなる実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、リン酸二水素カルシウム一水和物であり、かつ工程(b)のリン酸カルシウムを、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.3~100.1重量%、好ましくは1.7~90重量%、より好ましくは2.5~84重量%、最も好ましくは13~63重量%の量で提供する。
【0022】
一つの実施態様によれば、工程(c)で生成する水性懸濁物は、固形分含量が、この水性懸濁物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~75重量%、より好ましくは5~50重量%、さらにより好ましくは7~30重量%、さらに一層より好ましくは9~25重量%、最も好ましくは10~20重量%である。さらなる実施態様によれば、工程(d)は、4.5~14のpH値で、好ましくは4.7~13.5のpH値で、より好ましくは5~13のpH値で、さらにより好ましくは5.5~12.5のpH値で、最も好ましくは6~12のpH値で実施される。さらに別の実施態様によれば、工程(d)は、0~110℃、好ましくは10~100℃、より好ましくは15~80℃、より好ましくは20~50℃、そして最も好ましくは20℃±2℃の温度で実施される。
【0023】
一つの実施態様によれば、以下の工程によってリン酸一水素カルシウムを製造する:
(i)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(ii)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(iii)工程(i)のカルシウムイオン源と工程(ii)のリン酸イオン源とを水の存在下で接触させてリン酸一水素カルシウムを生成すること、
ここで、工程(i)のカルシウムイオン源と工程(ii)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比が、1:2~5:1、好ましくは2:3~2:1、より好ましくは3:4~3:2、さらにより好ましくは5:6~4:3、さらに一層好ましくは10:11~11:10、最も好ましくは約1:1で提供する。
さらなる実施態様によれば、工程(i)のカルシウムイオン源は、請求項1の工程(a)のカルシウム塩と同じであり、好ましくは炭酸カルシウム含有材料、より好ましくは粉砕炭酸カルシウムであり、かつ/又は工程(ii)のリン酸イオン源は、好ましくはリン酸である。
【0024】
一つの実施態様によれば、工程(a)~(c)は、以下の工程(I)~(III)に置き換えられる:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、1.75:1~100:1の範囲で提供する。
さらなる実施態様によれば、リン酸イオン源は、リン酸、リン酸の水素を含まない塩、リン酸の一水素塩、好ましくはNaHPO、又はリン酸の二水素塩、又はこれらの混合物であり、好ましくは、リン酸イオン源は、リン酸、リン酸の二水素塩、又はこれらの混合物であり、好ましくは、リン酸イオン源は、リン酸、NaHPO、KHPO、LiHPO、NHPO、Ca(HPO、Mg(HPO、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
一つの実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、窒素及びBET法を使用して測定された比表面積(BET)が、5m/g~200m/g、好ましくは10m/g~180m/g、より好ましくは20m/g~170m/g、さらにより好ましくは25m/g~150m/g、最も好ましくは30m/g~100m/gであり、かつ/又は表面反応カルシウム塩粒子は、炭酸カルシウム対アパタイトリン酸カルシウム、好ましくは、ヒドロキシアパタイト、リン酸オクタカルシウム、フルオロアパタイト、カルボキシアパタイト、又はこれらの混合物、より好ましくはヒドロキシアパタイトの質量比が、0.05:1~59:1、好ましくは0.14:1~44:1、より好ましくは0.2:1~29:1、さらにより好ましくは0.3:1~15:1、最も好ましくは0.5:1~5:1の範囲内である。さらなる実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、体積基準メジアン粒径d50(vol)が、0.5~75μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~40μm、さらにより好ましくは2.5~30μm、最も好ましくは3~15μmであり、かつ/又は体積基準トップカット粒径d98(vol)が、1~150μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは4~80μm、さらにより好ましくは5~60μm、そして最も好ましくは6~30μmである。
【0026】
本発明の目的において、以下の用語は以下の意味を有することを理解されたい。
【0027】
本明細書で使用される「酸」という用語は、ブレンステッド及びローリーによる定義の意味での酸(例えば、HSO、HSO )を指し、ここで、「遊離酸」という用語は、完全にプロトン化された形態の酸のみを指す(例えばHSO)。
【0028】
本発明の意味において「炭酸カルシウム含有材料」は、炭酸カルシウムの含有量が、炭酸カルシウム含有材料の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である鉱物材料又は合成材料であり得る。
【0029】
本出願の目的において「水不溶性」材料は、この材料100gを100gの脱イオン水と混合し、孔径0.2μmのフィルターで、20℃で濾過して液体濾液を回収したときに、その液体濾液100gを95~100℃で周囲圧力において蒸発させた後に回収される固体材料が、1gであるか又はこれ未満である材料、として定義される。「水溶性」材料とは、この材料100gを100gの脱イオン水と混合し、孔径0.2μmのフィルターで、20℃で濾過して液体濾液を回収したときに、その液体濾液100gを95~100℃で周囲圧力において蒸発させた後に回収される固体材料が、1gよりも多い材料、として定義される。
【0030】
本発明の意味において「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、天然の供給源、例えば、石灰石、大理石、又はチョークから得られ、かつ湿式及び/又は乾式処理、例えば、粉砕、スクリーニング、及び/又は、例えばサイクロン又は分類器による分別によって処理された炭酸カルシウムである。
【0031】
本発明の意味において「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性、半乾燥、又は湿潤環境での二酸化炭素と石灰の反応後の沈殿によって、又は水中のカルシウムと炭酸イオン源の沈殿によって得られる合成材料である。PCCは、バテライト、カルサイト、又はアラゴナイトの結晶形であり得る。PCCは、例えば、欧州特許出願公開第2 447 213 A1号公報、欧州特許出願公開第2 524 898 A1号公報、欧州特許出願公開第2 371 766 A1号公報、欧州特許出願公開第1 712 597 A1号公報、欧州特許出願公開第1 712 523 A1号公報、又は国際公開第2013/142473 A1号に記載されている。
【0032】
本出願の意味において「表面反応」という用語は、ある材料について、水性環境におけるこの材料の部分的溶解と、それに続くこの材料の表面上及びその周囲の結晶化プロセス(これは、さらなる結晶化添加剤があってもなくても起こりうる)を含む方法に供されていることを示すために使用される。
【0033】
本明細書において、表面反応カルシウム塩粒子以外の粒状物質の「粒径」は、粒径dの重量に基づく分布によって表される。ここで、値dは、粒子のx重量%が、dよりも小さい直径を有することを表す。このことは、例えば、d20値が、すべての粒子の20重量%がこの粒径よりも小さい粒径であることを意味する。したがって、d50値は、重量メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子の50重量%がこの粒径よりも小さい。本発明の目的において粒子サイズは、他に明記しない限り、重量メジアン粒径d50(wt)として規定される。粒径は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(登録商標)5100装置又はSedigraph(登録商標)5120装置を使用して決定した。この方法及び器具は当業者に知られており、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般的に使用されている。測定は、0.1重量%Naの水溶液中で実施された。
【0034】
本明細書の表面反応カルシウム塩粒子の「粒径」は、体積に基づく粒径分布として記載される。体積に基づくメジアン粒径d50は、Malvern Mastersizer 2000又は3000レーザー回折システムを使用して評価された。Malvern Mastersizer 2000又は3000レーザー回折システムを使用して測定されたd50又はd98値は、粒子のそれぞれ50体積%又は98体積%がこの値よりも小さい直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データは、粒子の屈折率1.57と吸収率0.005を用いて、ミー理論を使用して分析される。
【0035】
本発明の意味において「塩」は、陽イオン(カチオン)と陰イオン(アニオン)の集合体からなる化合物である(IUPAC、化学用語大要、第2版(「ゴールドブック」)、1997年の「塩」を参照)。
【0036】
本明細書を通して使用される材料の「比表面積」(m/gで表される)は、Brunauer Emmett Teller(BET)法により吸着ガスとして窒素を使用して、かつMicromeriticsのASAP 2460装置を使用して測定することができる。この方法は当業者によく知られており、ISO9277:2010で定義されている。試料は、測定前に30分間、100℃で真空下においてコンディショニングされる。この材料の総表面積(m)は、この材料の比表面積(m/g)と質量(g)とを乗算することによって得ることができる。
【0037】
本発明の目的において、液体組成物の「固形分含量」は、すべての溶媒又は水が蒸発した後に残っている材料の量の尺度である。必要であれば、本発明の意味において重量%で示される懸濁物の「固形分含量」は、Mettler-ToledoのMoisture Analyzer HR73(T=120℃、自動スイッチオフ3、標準的乾燥)を使用して、試料サイズ5~20gで測定することができる。
【0038】
他に明記しない限り、「乾燥する」という用語は、200℃で得られた「乾燥された」材料が一定重量に達するように、乾燥すべき材料から水の少なくとも一部を除去するプロセスを指す。さらに「乾燥された」又は「乾燥」材料は、総水分含有量によって定義することができ、これは、他に明記しない限り、乾燥された材料の総重量に基づいて、1.0重量%又はこれ未満、好ましくは0.5重量%又はこれ未満、より好ましくは0.2重量%又はこれ未満、最も好ましくは0.03~0.07重量%である。
【0039】
本発明の目的において、「粘度」又は「ブルックフィールド粘度」という用語は、ブルックフィールド粘度を指す。ブルックフィールド粘度は、この目的において、Brookfield DV-II+ Pro 粘度計によって、25℃±1℃、100rpmで、ブルックフィールドRVスピンドルセットの適切なスピンドルを使用して測定され、mPa・sで規定される。当業者はその技術的知識に基づいて、ブルックフィールドRVスピンドルセットから、測定される粘度範囲に適したスピンドルを選択する。例えば、粘度範囲が200~800mPaの場合、スピンドル番号3を使用することができ、粘度範囲が400~1,600mPaの場合、スピンドル番号4を使用することができ、粘度範囲が800~3,200mPa・sの場合、スピンドル番号5を使用することができ、粘度範囲が1,000~2,000,000mPa・sの場合、スピンドル番号6を使用することができ、粘度範囲が4,000~8,000,000mPa・sの場合、スピンドル番号7を使用することができる。
【0040】
本発明の意味において「懸濁物」又は「スラリー」は、溶解していない固形分及び水、ならびに任意選択約にさらなる添加剤を含み、通常、大量の固形分を含み、したがって、それが生成される液体よりも粘性であり、かつより高い濃度(密度)を有するものとなり得る。
【0041】
「水性」懸濁物という用語は、液相が水を含み、好ましくは水からなる系を指す。しかしながら、この用語は、水性懸濁物の液相が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物を含む群から選択される少なくとも一種の水混和性有機溶媒を少量含むことを排除するものではない。水性懸濁物が少なくとも一種の水混和性有機溶媒を含む場合、この水性懸濁物の液相は、上記の少なくとも一つの水混和性有機溶媒を、水性懸濁物の液相の総重量に基づいて、0.1~40.0重量%、好ましくは0.1~30.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、最も好ましくは0.1~10.0重量%の量で含む。例えば、水性懸濁物の液相は、水からなる。
【0042】
単数名詞を指すときに、「a」、「an」、「the」などの不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合、これは、他に明記しない限り、その名詞の複数形を含む。
【0043】
「~を含む(comprising)」という用語が本明細書の説明及び特許請求の範囲で使用される場合、それは他の要素を除外しない。本発明の目的において「~からなる(consisting of)」という用語は、「~を含む(comprising)」という用語の好適な実施態様であると見なされる。これ以後、ある群が、少なくとも特定の数の実施態様を含むものとして定義される場合、これはまた、好ましくは、これらの実施態様のみからなるある群を開示すると理解されるべきである。
【0044】
「得ることができる(obtainable)」又は「定義することができる(definable)」及び「得られた(obtained)」又は「定義された(defined)」などの用語は同じ意味で使用される。例えば、これは、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「得られた(obtained)」という用語は、例えばある実施態様が、例えば「得られた」という用語に続く一連の工程によって得られなければならないことを示すことを意味しないが、そのような限定された理解は、好適な実施態様として、「得られた」又は「定義された」という用語によって常に含まれる。
【0045】
「含む(including)」又は「有する(having)」という用語が使用される場合は、常に、これらの用語は、上記で定義された「含む(comprising)」と同等であることを意味する。
【0046】
表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するための本発明の方法は、以下の工程を含む:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、
(c)工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合することによって水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること。
工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下において、本発明の方法の好適な実施態様をより詳細に記載する。これらの実施態様及び詳細はまた、本発明の生成物及び用途にも適用されることを理解されたい。
【0048】
カルシウム塩
プロセス工程(a)において、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供する。
【0049】
プロセス工程(a)で提供するリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択することができる。
【0050】
一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、最も好ましくは、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料である。
【0051】
一つの実施態様によれば、炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウムの含有量が、炭酸カルシウム含有材料の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である。別の実施態様によれば、少なくとも一つの炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウムからなる。
【0052】
炭酸カルシウム含有材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、又はこれらの混合物から選択することができ、好ましくは、炭酸カルシウム含有材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択することができる。天然粉砕炭酸カルシウムは、好ましくは、大理石、石灰石、及び/又はチョークから選択することができ、かつ/又は沈降炭酸カルシウムは、好ましくは、バテライト、カルサイト、及び/又はアラゴナイトから選択することができる。
【0053】
「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、天然に存在する形態の炭酸カルシウムから製造されるか、石灰岩やチョークなどの堆積岩から、若しくは変成大理石の岩から採掘されるか、又は卵殻、貝殻、又は珊瑚から製造されると理解されている。天然粉砕炭酸カルシウムの供給源は、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などの、さらに天然に存在する成分を含み得る。炭酸カルシウムは、3つのタイプの結晶多形、すなわち、カルサイト、アラゴナイト、及びバテライトとして存在することが知られている。最も一般的な結晶多形であるカルサイトは、炭酸カルシウムの最も安定した結晶形であると考えられている。あまり一般的ではないのはアラゴナイトで、これは離散的又はクラスター化された針状斜方晶構造を有する。バテライトは最も希少な炭酸カルシウム多形体であり、一般的に不安定である。天然粉砕炭酸カルシウムは、ほぼ例外なくカルサイト多形体であり、これは三方晶系-菱面体晶系であると言われており、炭酸カルシウム多形体の最も安定した形態である。
【0054】
一般に、天然粉砕炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式の粉砕工程で行うことができ、例えば、粉砕が主に二次的物体との衝撃から生じるような条件下で、任意の従来からの粉砕装置を用いて、すなわち、以下の一つ又は複数の装置を用いて実施することができる:ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、摩滅ミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に公知の他の同様の装置。炭酸カルシウム含有鉱物材料が、湿った粉砕炭酸カルシウム含有鉱物材料を含む場合、粉砕工程は、自己粉砕が起きるような条件下で、及び/又は水平ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に公知の他の同様のプロセスによって実施することができる。このようにして得られた湿式処理された粉砕炭酸カルシウムを含む鉱物材料は、周知のプロセス、例えば凝集、濾過、又は強制蒸発後の乾燥により、洗浄及び脱水をすることができる。後続の乾燥工程(必要な場合)は、噴霧乾燥などの単一の工程で、又は少なくとも2つの工程で実施することができる。そのような鉱物材料は、不純物を除去するために選鉱工程(例えば浮選、漂白、又は磁気分離工程)を受けることも一般的である。
【0055】
本発明の一つの実施態様によれば、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)の供給源は、大理石、チョーク、石灰石、卵殻、貝殻、若しくは珊瑚、又はこれらの混合物から選択される。好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム(GCC)は、大理石、チョーク、石灰石、又はこれらの混合物から選択される。本発明の一つの実施態様によれば、GCCは乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施態様によれば、GCCは湿式粉砕とその後の乾燥によって得られる。
【0056】
本発明の一つの実施態様によれば、天然粉砕炭酸カルシウムは、一つのタイプの天然粉砕炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施態様によれば、天然粉砕炭酸カルシウムは、異なる供給源から選択される二つ又はそれを超えるタイプの天然の粉砕炭酸カルシウムの混合物を含む。
【0057】
本発明の意味において「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境での二酸化炭素と水酸化カルシウムの反応後の沈殿によって得られるか、又は溶液からの、例えばCaClやNaCOなどのより可溶性の塩から提供されるカルシウムイオン及び炭酸イオンの沈殿によって得られる合成材料である。PCCを製造するためのさらに可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副産物であるソルベイ法である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、及びバテライトの3つの主要な結晶形態で存在し、かつこれらの結晶形にはそれぞれ多くの異なる多形体(晶癖)がある。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水及び乾燥をすることができる。
【0058】
本発明の一つの実施態様によれば、沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライト、又はカルサイトの鉱物学的結晶形態、又はこれらの混合物を含む。
【0059】
本発明の意味において「ドロマイト」は、炭酸カルシウム含有鉱物、すなわち、CaMg(CO(「CaCO・MgCO」)の化学組成を有する炭酸カルシウム-マグネシウム-鉱物である。ドロマイト鉱物は、ドロマイトの総重量に基づいて、少なくとも30.0重量%のMgCOを含むことができ、好ましくは35.0重量%を超え、より好ましくは40.0重量%を超えるMgCOを含むことができる。
【0060】
一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、重量メジアン粒径d50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~20μmである粒子の形態である。追加的又は代替的に、工程(a)のカルシウム塩は、重量トップカット粒径d98(wt)が、0.15~1500μm、好ましくは1~600μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~80μmである粒子の形態であり得る。
【0061】
好適な実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウム、より好ましくは粉砕炭酸カルシウムであり、かつ重量メジアン粒径d50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~20μmであり、かつ/又は重量トップカット粒径d98(wt)が、0.15~1500μm、好ましくは1~600μm、より好ましくは1.5~300μm、そして最も好ましくは2~80μmである粒子の形態である。
【0062】
工程(a)のカルシウム塩は、窒素及びISO9277準拠したBET法を使用して測定されたものとして、1~100m/gの比表面積(BET)を有し得る。一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩の比表面積(BET)は、窒素及びISO9277:2010に準拠したBET法を使用して測定されたものとして、0.1~80m/g、好ましくは0.2~60m/g、より好ましくは0.3~40m/g、最も好ましくは0.5~20m/gである。
【0063】
工程(a)のカルシウム塩は、任意の形態、例えば、溶液、懸濁物、スラリー、分散物、ペースト、粉末、湿ったフィルターケーキとして、又はプレス形態若しくは顆粒形態で提供され得る。一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、乾燥形態で、好ましくは粉末の形態で提供される。
【0064】
別の実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、水性懸濁物の形態で提供される。一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、固形分含量が、水性懸濁物の重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~60重量%、より好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~25重量%の範囲内である水性懸濁物の形態である。本発明の好適な実施態様によれば、この水性懸濁物は、水と工程(a)のカルシウム塩からなる。あるいは、工程(a)のカルシウム塩の水性懸濁物は、さらなる添加剤、例えば分散剤を含み得る。別の適切な分散剤は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、又はイタコン酸、並びにアクリルアミド、又はこれらの混合物をベースとするポリカルボン酸又はこれらの塩のホモポリマー又はコポリマーを含む群から選択することができる。アクリル酸のホモポリマー又はコポリマーが特に好ましい。ホモポリマー又はコポリマーは、完全に酸性の形態であるか、又は部分的若しくは完全に中和され得る。そのような生成物の重量平均分子量Mwは、好ましくは2,000~15,000g/molの範囲であり、3,000~7,000g/mol又は3,500~6,000g/molの重量平均分子量が特に好ましい。例示的な実施態様によれば、分散剤は、重量平均分子量Mwが2,000~15,000g/mol、好ましくは3,000~7,000g/mol、最も好ましくは3,500~6,000g/molであるポリアクリル酸ナトリウムである。
【0065】
さらに別の実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、水溶液の形態で提供される。好適な実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、水溶液の重量に基づいて、1~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20重量%~80重量%、最も好ましくは30~70重量%の量のカルシウム塩を含む水溶液の形態である。
【0066】
本発明の一つの実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムであり、より好ましくは、乾燥した形態で提供された天然粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムである。
【0067】
リン酸カルシウム
本発明のプロセス工程(b)において、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムが提供される。工程(a)のリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩と、工程(b)のリン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である。
【0068】
本発明の目的において、「リン酸二水素カルシウム(リン酸一カルシウム)」という用語は、化学式Ca(HPOを有する無機化合物及びその水和物を指す。リン酸二水素カルシウムの例は、無水リン酸二水素カルシウム(Ca(HPO)又はリン酸二水素カルシウム一水和物(Ca(HPO・HO)である。
【0069】
本発明の意味において「リン酸一水素カルシウム(リン酸二カルシウム)」は、化学式CaHPOを有する無機化合物及びその水和物を指す。リン酸一水素カルシウムの例は、無水リン酸一水素カルシウム(CaHPO)、例えばミネラルモネタイト、リン酸一水素カルシウム半水和物(CaHPO・0.5HO)、又はリン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)、例えばミネラルブルシャイトである。
【0070】
一つの実施態様によれば、本発明のプロセス工程(b)で提供されるリン酸カルシウムは、無水リン酸二水素カルシウム(Ca(HPO)、リン酸二水素カルシウム一水和物(Ca(HPO・HO)、無水リン酸一水素カルシウム(CaHPO)、リン酸一水素カルシウム半水和物(CaHPO・0.5HO)、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、本発明のプロセス工程(b)で提供されるリン酸カルシウムは、無水リン酸一水素カルシウム(CaHPO)、リン酸一水素カルシウム半水和物(CaHPO・0.5HO)、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、本発明のプロセス工程(b)で提供されるリン酸カルシウムは、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)である。
【0071】
一つの実施態様によれば、本発明のプロセス工程(b)で提供されるリン酸カルシウムは、リン酸一水素カルシウムであり、好ましくは、無水リン酸一水素カルシウム(CaHPO)、リン酸一水素カルシウム半水和物(CaHPO・0.5HO)、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、リン酸一水素カルシウムは、リン酸一水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)である。
【0072】
一つの実施態様によれば、工程(a)のリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩、並びに工程(b)のリン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、1.9:1~75:1、好ましくは2:1~50:1、より好ましくは2.2:1~25:1、そして最も好ましくは2.5:1~10:1の範囲である。
【0073】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、リン酸一水素カルシウム二水和物であり、かつリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.7~230重量%、好ましくは2.3~191重量%、より好ましくは3.5~172重量%、そして最も好ましくは19~115重量%の量で提供される。
【0074】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、リン酸一水素カルシウム半水和物であり、かつリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.7~230重量%の量で提供され、好ましくは2.3~191重量%、より好ましくは3.5~172重量%、最も好ましくは19~115重量%の量で提供される。
【0075】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、無水リン酸一水素カルシウムであり、かつリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.4~181重量%、好ましくは1.8~151重量%、より好ましくは2.8~136重量%、最も好ましくは15~91重量%の量で提供される。
【0076】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、無水リン酸二水素カルシウムであり、かつリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.2~94重量%、好ましくは1.6~84重量%、より好ましくは2.4~78重量%、最も好ましくは12~59重量%の量で提供される。
【0077】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、リン酸二水素カルシウム一水和物であり、かつリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩の総重量に基づいて、1.3~100.1重量%、好ましくは1.7~90重量%、より好ましくは2.5~84重量%、最も好ましくは13~63重量%の量で提供される。
【0078】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、重量メジアン粒径d50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~40μmである粒子の形態である。追加的又は代替的に、工程(b)のリン酸カルシウムは、重量トップカット粒径d98(wt)が、0.15~1500μm、好ましくは1~600μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~110μmである粒子の形態であり得る。
【0079】
一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムはリン酸一水素カルシウムであり、かつ重量メジアン粒径d50(wt)が0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~40μmであり、かつ/又は重量トップカット粒径d98(wt)が、0.15~1500μm、好ましくは1~600μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~110μmである粒子の形態である。
【0080】
工程(b)のリン酸カルシウムは、窒素及びISO9277:2010に準拠したBET法を使用して測定されたものとして、0.1~200m/gの比表面積(BET)を有し得る。一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムの比表面積(BET)は、窒素及びISO9277:2010に準拠したBET法を使用して測定されたものとして、0.2~100m/g、好ましくは0.3~60m/g、より好ましくは0.5~30m/gである。
【0081】
工程(b)のリン酸カルシウムは、任意の形態で、例えば、懸濁物、スラリー、分散物、ペースト、粉末、湿ったフィルターケーキとして、又はプレス形態若しくは顆粒形態で提供され得る。一つの実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、乾燥形態、好ましくは粉末の形態で提供される。
【0082】
別の実施態様によれば、工程(b)のリン酸カルシウムは、水性懸濁物の形態で提供され、好ましくは固形分含量が、水性懸濁物の重量に基づいて、1~90重量%、より好ましくは3~60重量%、さらにより好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~25重量%である。本発明の好適な実施態様によれば、この水性懸濁物は、水と工程(b)のリン酸カルシウムからなる。あるいは、工程(b)のリン酸カルシウムの水性懸濁物は、さらなる添加剤、例えば分散剤を含み得る。別の適切な分散剤は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、又はイタコン酸、ならびにアクリルアミド、又はこれらの混合物に基づくポリカルボン酸又はその塩のホモポリマー又はコポリマーを含む群から選択することができる。アクリル酸のホモポリマー又はコポリマーが特に好ましい。ホモポリマー又はコポリマーは、完全に酸性の形態であるか、又は部分的若しくは完全に中和されていてもよい。そのような生成物の重量平均分子量Mwは、好ましくは、2,000~15,000g/molの範囲であり、重量平均分子量Mwは3,000~7,000g/mol又は3,500~6,000g/molが特に好ましい。例示的な実施態様によれば分散剤は、重量平均分子量Mwが2,000~15,000g/mol、好ましくは3,000~7,000g/mol、そして最も好ましくは3,500~6,000g/molであるポリアクリル酸ナトリウムである。
【0083】
リン酸二水素カルシウム及びリン酸一水素カルシウムは市販されているか、又は例えば、水酸化カルシウム若しくは炭酸カルシウムをリン酸で処理することにより、その場で製造することができる。
【0084】
一つの実施態様によれば、プロセス工程(b)で提供されるリン酸カルシウムはリン酸一水素カルシウムである。リン酸一水素カルシウムは、in situ(その場)で又は別個のプロセスで製造することができる。
【0085】
一つの実施態様によれば、リン酸一水素カルシウムを製造するための別個のプロセスは、以下の工程を含む:
(i)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(ii)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(iii)工程(i)のカルシウムイオン源と工程(ii)のリン酸イオン源とを水の存在下で接触させてリン酸一水素カルシウムを生成すること、
ここで、工程(i)のカルシウムイオン源と工程(ii)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比が1:2~5:1で提供する。
【0086】
別の実施態様によれば、リン酸一水素カルシウムは、本発明のプロセスにおいてin situで製造される。したがって、本発明の方法のプロセス工程(a)~(c)は、上記のプロセス工程(i)~(iii)で置き換えられ、すなわち、プロセス工程(a)~(c)は、次の工程(I)~(III)に置き換えられる:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること。
【0087】
したがって、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するためのin situプロセスは、以下の工程を含むことができる:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、及び
(IV)少なくとも4.2のpH値で工程(III)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応炭酸カルシウム粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、1.75:1~100:1の範囲で提供する。
【0088】
他に明記しない限り、以下の説明及び実施態様は、リン酸一水素カルシウムを製造するための別個のプロセスと、リン酸一水素カルシウムがin situで生成する、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するためのin situプロセスとの両方に適用される。
【0089】
カルシウムイオン源は、炭酸カルシウム含有材料、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択することができる。一つの実施態様によれば、カルシウムイオン源は、リン酸カルシウムを除外する。
【0090】
一つの実施態様によれば、カルシウムイオン源は、炭酸カルシウム含有材料、塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、カルシウムイオン源は、炭酸カルシウム含有材料、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、最も好ましくは、カルシウムイオン源は、炭酸カルシウム含有材料である。好適な実施態様によれば、カルシウムイオン源は、炭酸カルシウム含有材料であり、好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、最も好ましくは、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである。
【0091】
カルシウムイオン源はまた、酸可溶性形態のカルシウム化合物を含む廃棄物又は副産物から選択することもできる。例えば、廃棄物又は副産物は、産業廃棄物、リサイクル廃棄物、パルプ及び/又は製紙産業に由来する廃棄物、工業用石膏廃棄物、又は顔料で変色した天然カルシウム材料から選択することができる。
【0092】
カルシウムイオン源は、固体形態で、又は水性懸濁物若しくは水溶液の形態で提供することができる。
【0093】
一つの実施態様によれば、カルシウムイオン源は、溶液の形態で提供され、好ましくは、カルシウムイオン源を、水溶液の総重量に基づいて、0.1~99重量%の量で、より好ましくは1~80重量%の量で、さらにより好ましくは10~50重量%の量で、最も好ましくは20~40重量%の量で含む。別の実施態様によれば、カルシウムイオン源は、水性懸濁物の形態で提供され、好ましくは、カルシウムイオン源を、水性懸濁物の総重量に基づいて、0.1~99重量%の量で、好ましくは1~80重量%の量で、より好ましくは10~50重量%の量で、最も好ましくは20~40重量%の量で含む。
【0094】
一つの実施態様によれば、リン酸一水素カルシウムを製造するための前述した別個のプロセスの工程(i)で提供されるカルシウムイオン源は、本発明のプロセスの工程(a)で提供されるカルシウム塩と同じであり、好ましくは炭酸カルシウム含有材料、より好ましくは粉砕炭酸カルシウムを含む。
【0095】
一つの実施態様によれば、前述したin situプロセスの工程(I)で提供されるカルシウムイオン源は、上記工程(a)のカルシウム塩について記載された材料から選択され、好ましくは炭酸カルシウム含有材料、より好ましくは粉砕炭酸カルシウムである。
【0096】
一つの実施態様によれば、リン酸イオン源はリン酸である。別の実施態様によれば、リン酸イオン源はリン酸の塩、例えば、水素を含まない塩、一水素塩、好ましくはNaHPO、又はリン酸の二水素塩であり、好ましくは、リン酸イオン源はリン酸の二水素塩であり、より好ましくは、NaHPO、KHPO、LiHPO、NHPO、Ca(HPO、Mg(HPO、及びこれらの混合物から選択される。リン酸イオン源はまた、リン酸とその塩との混合物であり得る。一つの実施態様によれば、リン酸イオン源は、リン酸と、水素を含まない塩、一水素塩、好ましくはNaHPO、又はその二水素塩との混合物、好ましくはリン酸とその二水素塩の混合物、より好ましくはリン酸と、NaHPO、KHPO、LiHPO、NHPO、Ca(HPO、Mg(HPO、及びこれらの混合物からなる群から選択される二水素塩との混合物である。当業者は、前述したリン酸塩の無水形態及び水和物の両方を使用できることを理解するであろう。
【0097】
さらに、リン酸イオン源は、他の適切なリン酸イオン源を含むことができる。例えば、リン酸イオン源は、リン酸の二塩基性又は三塩基性の塩を含み得る。
【0098】
リン酸イオン源はまた、リン酸、その二水素塩、又はこれらの混合物を含む廃棄物又は副産物から得ることもできる。
【0099】
リン酸イオン源は、固体形態で、又は水性懸濁物若しくは水溶液の形態で提供することができる。
【0100】
一つの実施態様によれば、リン酸イオン源は溶液の形態で提供され、好ましくは、水溶液の総重量に基づいて、0.1~99重量%の量、より好ましくは1~80重量%の量、さらにより好ましくは10~50重量%の量、最も好ましくは20~40重量%の量のリン酸イオン源を含む。別の実施態様によれば、リン酸イオン源は水性懸濁物の形態で提供され、好ましくは、水性懸濁物の総重量に基づいて、0.1~99重量%の量、好ましくは1~80重量%の量、さらにより好ましくは10~50重量%の量、最も好ましくは20~40重量%の量のリン酸イオン源を含む。
【0101】
一つの実施態様によれば、リン酸イオン源は、固体形態で、好ましくは粉末の形態で提供される。粉末は、少量の水分、例えば、粉末の総重量に基づいて最大1重量%の水分を含むことができる。
【0102】
一つの実施態様によれば、工程(i)~(iii)を含むリン酸一水素カルシウムを製造するための別個のプロセスにおいて、工程(i)のカルシウムイオン源及び工程(ii)のリン酸イオン源の組み合わせは、カルシウムイオン体リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が、2:3~2:1、好ましくは3:4~3:2、より好ましくは5:6~4:3、さらにより好ましくは10:11~11:10、最も好ましくは約1:1で提供される。
【0103】
一つの実施態様によれば、リン酸一水素カルシウムがin situで生成される工程(I)~(IV)を含むin situプロセスにおいて、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が2:1~9:1、好ましくは3:1~8:1、より好ましくは4:1~7:1、そして最も好ましくは5:1~6:1で提供される。別の実施態様によれば、リン酸一水素カルシウムがin situで生成される工程(I)~(IV)を含むin situプロセスにおいて、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.9:1~75:1、好ましくは2:1~50:1、より好ましくは2.2:1~25:1、最も好ましくは2.5:1~10:1の範囲で提供される。
【0104】
一つの実施態様によれば、工程(i)~(iii)を含むリン酸一水素カルシウムを製造するための別個のプロセスにおいて、プロセス工程(iii)は、5未満のpH値、好ましくは1.0~4.9、より好ましくは1.1~4.7、さらにより好ましくは1.8~4.2、最も好ましくは2.2~4.0のpH値で実施される。pH値は、リン酸イオン源の量によって制御することができる。
【0105】
表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するための方法
本発明の方法の工程(c)において、工程(a)のリン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩と、工程(b)のリン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムとを水と混合することによって、水性懸濁物が生成する。
【0106】
他に明記しない限り、以下の説明及び実施態様は、上記で定義された工程(I)~(IV)を含む表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するためのin situプロセスにも当てはまり、ここで、リン酸一水素カルシウムはin situで生成する。このケースにおいて、プロセス工程(a)はプロセス工程(I)に対応し、プロセス工程(b)はプロセス工程(II)に対応し、プロセス工程(c)はプロセス工程(III)に対応し、プロセス工程(d)はプロセス工程(IV)に対応することを、当業者は理解するであろう。
【0107】
適切な混合方法は当業者に公知である。適切な混合方法の例は、振盪、混合、攪拌(stirring)、撹拌(agitating)、超音波処理、又は邪魔板又は薄板などの手段による乱流若しくは層流の誘発である。適切な混合装置は当業者に公知であり、例えば、ローター固定子システム、ブレード攪拌機、プロペラ攪拌機、タービン攪拌機、又はアンカー攪拌機などの攪拌機、邪魔板又は薄板を含むパイプなどの静的ミキサーから選択することができる。本発明の例示的な実施態様によれば、ローター固定子攪拌機システムが使用される。当業者は、プロセス装置に応じて、混合速度や温度などの混合条件を調整する。
【0108】
プロセス工程(a)及び(b)の間に導入される水の量に応じて、例えば、得られる水性懸濁物の所望の固形分含量又はブルックフィールド粘度を制御及び/又は維持及び/又は達成するために、プロセス工程(c)の間に追加の水を導入することができる。一つの実施態様によれば、工程(c)で生成される水性懸濁物は、固形分含量が、水性懸濁物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~75重量%、より好ましくは5重量%~50重量%、さらにより好ましくは7~30重量%、さらに一層より好ましくは9~25重量%、最も好ましくは10~20重量%である。得られる水性懸濁物のブルックフィールド粘度は、10~10,000mPa・s、好ましくは50~5,000mPa・s、より好ましくは100~1,000mPa・s、最も好ましくは200~800mPa・sであり得る。
【0109】
一つの実施態様によれば、出発材料、すなわち工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムは、室温を呈し、すなわちこれらは20℃±2℃の温度を有する。出発物質は任意の順序で混合することができる。一つの実施態様によれば、工程(c)は以下の工程を含む:
(C1)工程(a)のカルシウム塩を水と混合すること、
(C2)工程(b)のリン酸カルシウムを工程(C1)の混合物と混合すること。
【0110】
別の実施態様によれば、工程(c)は以下の工程を含む:
(C1’)工程(b)のリン酸カルシウムを水と混合すること、
(C2’)工程(a)のカルシウム塩を工程(C1’)の混合物と混合すること。
【0111】
さらに別の実施態様によれば、工程(a)のカルシウム塩、工程(b)のリン酸カルシウム、及び水を同時に混合する。
【0112】
本発明の方法のプロセス工程(d)において、工程(c)の水性懸濁物は、少なくとも4.2のpH値で粉砕されて、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成する。
【0113】
一般に、プロセス工程(d)は、例えば、精製が主に二次的物体との衝撃から生じるような条件下で、任意の従来からの粉砕装置を用いて、例えば、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、サンドミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、摩滅ミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に公知の他の同様の機器の一つ又は複数で実施することができる。粉砕工程(d)はまた、自己粉砕が起きるような条件下で、及び/又は水平及び/又は垂直ボールミル粉砕、及び/又は当業者に公知の他の同様のプロセスによって実施することができる。
【0114】
一つの実施態様によれば、工程(d)は、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、摩滅ミル、サンドミル、又はこれらの組み合わせで実施される。好ましくは、粉砕工程(d)はボールミルで実施することができる。
【0115】
プロセス工程(d)は、少なくとも一つの粉砕装置で実施することができ、すなわち、一連の粉砕装置を使用することも可能であることに留意されたい。
【0116】
一つの実施態様によれば、プロセス工程(d)は一つの粉砕装置で実施される。別の実施態様によればプロセス工程(d)は、一連の粉砕装置、好ましくは一連の2、3、4、又は5つの粉砕装置で実施される。一つの実施態様によれば、プロセス工程(d)は一連の粉砕装置で実施され、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択される追加のリン酸カルシウムが、第1の粉砕装置の後で、かつ一連の粉砕装置の以後の少なくとも一つの粉砕装置の前に加えられる。例えば、プロセス工程(d)は一連の2つの粉砕装置で実施され、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択される追加のリン酸カルシウムが、第1の粉砕装置の後でかつ第2の粉砕装置の前に加えられる。別の例において、プロセス工程(d)は、一連の3つの粉砕装置で実施され、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択される追加のリン酸カルシウムが、第1の粉砕装置の後でかつ第2の粉砕装置の前、及び第2の粉砕装置の後でかつ第3の粉砕装置の前に加えられる。
【0117】
工程(d)を少なくとも4.2のpHで実施することが、本発明の方法の要件であり、それによって、リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩と、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムが、プロセス工程(d)の間に表面反応カルシウム塩粒子に変換されることを確実にするようになっている。一つの実施態様によれば、プロセス工程(d)は、pH値4.5~14、好ましくは4.7~13.5、より好ましくは5~13、さらにより好ましくは5.5~12.5、最も好ましくは6~12で実施される。必要であれば、工程(c)で得られた水性懸濁物のpHは、当技術分野で公知のあらゆる手段によって調整することができる。一つの実施態様によれば、工程(c)で得られた水性懸濁物のpHは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、又はこれらの混合物の添加により、少なくとも4.2のpH値に調整される。
【0118】
プロセス工程(a)、(b)、及び(c)の間に導入される水の量に応じて、例えば、得られた水性懸濁物の所望の固形分含量又はブルックフィールド粘度を制御及び/又は維持及び/又は達成するために、プロセス工程(d)の間に追加の水を導入することができる。一つの実施態様によれば、プロセス工程(d)は、固形分含量が、水性懸濁物の総重量に基づいて1~90重量%、好ましくは3~75重量%、より好ましくは5~50重量%、さらにより好ましくは7~30重量%、さらに一層より好ましくは9~25重量%、最も好ましくは10~20重量%で実施される。水性懸濁物のブルックフィールド粘度は、10~10,000mPa・s、好ましくは50~5,000mPa・s、より好ましくは100~1,000mPa・s、そして最も好ましくは200~800mPa・sであり得る。
【0119】
プロセス工程(d)は、室温で、すなわち20℃±2℃、又はその他の温度で実施することができる。本発明の一つの実施態様によれば、工程(d)は、0~110℃、好ましくは10~100℃、より好ましくは15~80℃、より好ましくは20~50℃、そして最も好ましくは20℃±2℃での温度で実施される。熱は、内部剪断、外部供給源、又はこれらの組み合わせによって導入し得る。必要であれば工程(d)は、冷却条件下で、当技術分野で公知の方法及び装置を使用して実施することができる。
【0120】
本発明の一つの実施態様によれば、工程(d)は、開始温度0~110℃、好ましくは10~100℃、より好ましくは15~80℃、より好ましくは20~50℃、そして最も好ましくは20℃±2℃で実施される。
【0121】
本発明の方法が、上記で定義された工程(I)~(IV)を含むin situプロセスとして実施される場合、工程(IV)は、好ましくは0~35℃、より好ましくは5~30℃、最も好ましくは10~25℃の温度で実施される。一つの実施態様によれば、上記で定義された工程(I)~(IV)を含むin situプロセスにおいて、工程(IV)は、開始温度0~35℃、好ましくは5~30℃、最も好ましくは10~25℃で実施される。
【0122】
一つの実施態様によれば、工程(d)は、10秒~5時間、好ましくは30秒~2時間、より好ましくは1分~60分、さらにより好ましくは5~40分、最も好ましくは10分~30分の範囲の時間実施される。
【0123】
プロセス工程(d)は、それぞれのモニタリングディスプレイに示されているように、粉砕装置の電力消費量(P)(kWで与えられる)と、供給スラリーの体積流速(v)(m/hで与えられる)とを最初に同時に記録することによって決定される任意の適切な比粉砕エネルギー(SGE:specific grinding energy)で実施することができる。さらに、供給スラリーの全固形分(TS)含量(重量%で示される)は、Mettler-Toledoの水分分析器HR73(T=120℃、自動スイッチオフ3、標準的乾燥)を使用し、試料サイズ5~20gで決定した。水の密度(ρ)を1.00T/mとし、適用した乾燥炭酸カルシウム/大理石/チョークの密度(ρ)を2.71T/mと仮定すると、式(1)、(2)、(3)で表されるように、SGEを与えられた量の関数として計算することができる。
SGE=P/((TS)・m) 式(1)
=ρ・v 式(2)
ρ=[ρ・ρ]/[ρ・(1-(TS))+ρ・(TS)] 式(3)
【0124】
一つの実施態様によれば、工程(d)は、最終製品の1乾燥メートルトンあたり50~500kWh、好ましくは最終製品の1乾燥メートルトンあたり70~450kWh、より好ましくは最終製品の1乾燥メートルトンあたり150~350kWh、最も好ましくは最終製品の1乾燥メートルトンあたり200~300kWhの比粉砕エネルギーで実施される。
【0125】
一つの実施態様によれば、プロセス工程(d)は、4μm未満の粒子サイズを有する表面反応カルシウム塩粒子の割合が、表面反応カルシウム塩粒子の総体積に基づいて、10体積%より大きくなるまで、好ましくは20体積%より大きくなるまで、より好ましくは30体積%より大きくなるまで、最も好ましくは50体積%より大きくなるまで実施される。
【0126】
本発明の一つの実施態様によれば、プロセス工程(d)は、バッチプロセス、半連続プロセス、又は連続プロセスの形態で実施することができる。本発明の好適な実施態様によれば、プロセス工程(d)は連続プロセスの形態で実施される。
【0127】
プロセス工程(d)によって得られる表面反応カルシウム塩粒子は、0.05~30μm、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~15μm、さらにより好ましくは1~10μm、最も好ましくは2~5μmの体積基準メジアン粒径d50(vol)を有し得る。追加的又は代替的に、工程(d)で得られる表面反応カルシウム塩粒子は、0.15~150μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは4~80μm、さらにより好ましくは5~60μm、最も好ましくは6~30μmの体積基準トップカット粒径d98(vol)を有し得る。
【0128】
驚くべきことに、本発明者らは、リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されたリン酸カルシウムを、様々なカルシウムイオン源と、少なくとも4.2のpHで共粉砕すると、小さな粒子サイズと大きな比表面積とを有する表面反応カルシウム塩粒子の形成がもたらされることを見出した。特定の理論に拘束されるつもりはないが、本発明者らは、本発明の方法の粉砕工程が、出発材料の新たに調製された表面、したがって、出発材料の反応性の表面を連続的に生成することによって、本発明の方法の(化学)反応速度を増加させるという利点を提供すると考えている。さらに本発明者らは、本発明の方法が、粗い出発材料でも、及びより低い品質を有する出発材料でも、例えば、特定の不純物を含んでいる材料でも、同様に利用できることを見出した。これは、他のプロセスの副産物や廃棄物など、従来のプロセスでは表面反応カルシウム塩粒子の製造に使用することが困難である材料を利用できる可能性を提供する。
【0129】
さらに、本発明の発明者によって、粉砕工程によって導入されるエネルギーは、表面反応カルシウム塩粒子への変換を誘導するのに十分であり得ることが見出された。これは、この方法を、低温で、及び/又は室温(すなわち20℃±2℃の温度)を有する出発材料で操作することができ、したがって、製造コストを低減できる可能性を提供する。本発明の方法の別の利点は、標準的な粉砕装置で実施でき、かつ連続プロセスとして実施できることであり、このことが表面反応カルシウム塩粒子の生成を容易にすることである。さらに本発明の方法は、二酸化炭素の添加を必要としない。
【0130】
本発明のプロセスは、バッチプロセス、半連続プロセス、又は連続プロセスの形態で実施することができる。プロセス工程(c)及び/又は(d)は、必要に応じて1回又は数回繰り返すことができる。
【0131】
バッチプロセスでは、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合して、プロセス工程(c)に従って水性懸濁物を生成する容器を提供することができる。次に、工程(c)で得られた水性懸濁物を粉砕装置に移し、そこで水性懸濁物は少なくとも4.2のpH値で粉砕されて、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物が生成される。
【0132】
一つの例示的なバッチプロセスにおいて、混合装置を含む第1の容器、混合装置を含む第2の容器、及び第3の容器が提供される。第1の工程では、工程(a)のカルシウム塩と水とが第1の容器で混合される。次に、得られた混合物は第2の容器に移され、ここで工程(b)のリン酸カルシウムが加えられる。得られた水性懸濁物は、第3の容器に貯蔵され、そこから粉砕装置に移され、そこで水性懸濁物は、少なくとも4.2のpH値で粉砕されて、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物が生成される。水性懸濁物を長時間、例えば数日間混合するために、第3の容器に低速ミキサーを取り付けることが好ましい場合がある。
【0133】
別の例示的なバッチプロセスにおいて、混合装置を含む第1の容器、混合装置を含む第2の容器、及び混合装置を含む第3の容器が提供される。第1の工程では、工程(i)のカルシウムイオン源、工程(ii)のリン酸イオン源、及び水を、第1の容器中で混合することによって、リン酸一水素カルシウムを別個に製造する。工程(a)のカルシウム塩と水とを第2の容器で混合する。次に、第1の容器の混合物を第2の容器の混合物に加える。得られた水性懸濁物は第3の容器に貯蔵され、そこから粉砕装置に移され、そこで水性懸濁物は、少なくとも4.2のpH値で粉砕されて、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物が生成される。上記のように、第3の容器に低速ミキサーを取り付けることが好ましい場合がある。
【0134】
連続プロセスにおいて、容器及び粉砕装置を提供することができる。工程(a)のカルシウム塩、工程(b)のリン酸カルシウム、及び水を、別々に又は一緒に容器に供給することができ、ここで、工程(a)のカルシウム塩、工程(b)のリン酸カルシウム、及び水が混合され、生成した水性懸濁物は連続的に粉砕装置に移される。粉砕装置において、水性懸濁物は少なくとも4.2のpH値で粉砕されて、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物が生成され、これは、粉砕装置から連続的に排出される。
【0135】
好適な実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子を製造するための方法は、以下の工程を含む:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、ここで、カルシウム塩は、炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウムから選択される、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、ここで、リン酸カルシウムはリン酸一水素カルシウムである、
(c)工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合することによって、水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である。
【0136】
好ましくは、カルシウム塩は、固形分含量が、水性懸濁物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~60重量%、より好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~25重量%の範囲内である水性懸濁物の形態で提供され、かつ/又はカルシウム塩は、重量メジアン粒径d50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~40μmである粒子の形態である。
【0137】
好ましくは、リン酸カルシウムは、固形分含量が、水性懸濁物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~60重量%、より好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~25重量%の範囲内である水性懸濁物の形態で提供され、かつ/又はリン酸カルシウムは、重量メジアン粒径サイズd50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~40μmである粒子の形態である。
【0138】
別の好適な実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するための方法は、以下の工程を含む:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、ここで、カルシウムイオン源は、炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウムから選択される、
(II)リン酸から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、
(IV)少なくとも4.2のpH値で工程(III)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲で提供する。
【0139】
好ましくは、カルシウムイオン源は、固形分含量が、水性懸濁物の総重量に基づいて、1~90重量%、好ましくは3~60重量%、より好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~25重量%の範囲内である水性懸濁物の形態で提供され、かつ/又はカルシウムイオン源は、重量メジアン粒径d50(wt)が、0.05~500μm、好ましくは0.2~200μm、より好ましくは0.4~100μm、最も好ましくは0.6~40μmである粒子の形態である。
【0140】
追加のプロセス工程
さらなる任意選択の実施態様によれば、本発明の方法によって得られる水性懸濁物の固形分含量は調整することができる。水性懸濁物の固形分含量は、当業者に公知の方法によって調整することができる。表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物の固形分含量を調整するために、懸濁物は、濾過、遠心分離、又は熱分離プロセスによって部分的又は完全に脱水することができる。例えば、懸濁物は、ナノ濾過などの濾過プロセス、又は蒸発プロセスなどの熱分離プロセスによって部分的又は完全に脱水することができる。あるいは、所望の固形分含量が得られるまで、水を懸濁物に加えることができる。追加的に又は代替的に、所望の固形分含量が得られるまで、固体粒子の適切なより低い含有量を有する懸濁物を、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物に添加することができる。本発明の方法によって得られる水性懸濁物の固形分含量は、当業者に公知の濃縮方法によっても調整することができる。水性懸濁物の濃縮は、熱プロセスによって、例えば、周囲圧、大気圧、又は減圧下の蒸発器において、又は機械的プロセスによって、例えば、ナノ濾過のようなフィルタープレス、及び/又は遠心分離によって達成することができる。
【0141】
一つの任意選択の実施態様によれば、本発明による方法は、in situプロセスの工程(d)又は工程(IV)で生成された表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物の固形分含量を調整する工程をさらに含む。本発明の一つの実施態様によれば、工程(d)又は工程(IV)で生成された表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物の固形分含量は、懸濁物の総重量に基づいて、20~60重量%、好ましくは25~50重量%、より好ましくは30~45重量%になるように調整される。
【0142】
表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物をさらに処理することができ、例えば、表面反応カルシウム塩粒子は、水性懸濁物から分離することができ、かつ/又は乾燥工程に供することができる。
【0143】
本発明の一つの実施態様によれば、この方法は、工程(d)で得られた水性懸濁物から表面反応カルシウム塩粒子を分離する工程(e)をさらに含む。したがって、表面反応カルシウム塩粒子を製造するための方法は、以下の工程を含み得る:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、
(c)工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合することによって水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である、そして
(e)工程(d)で得られた水性懸濁物から表面反応カルシウム塩粒子を分離すること。
【0144】
本発明の別の実施態様によれば、上記で定義された工程(I)~(IV)を含むin situプロセスは、工程(IV)で得られた水性懸濁物から表面反応カルシウム塩粒子を分離する工程(V)をさらに含む。したがって、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するためのin situプロセスは、以下の工程を含むことができる:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その二水素塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、
(IV)少なくとも4.2のpH値で工程(III)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応炭酸カルシウム粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲で提供する、そして
(V)工程(IV)で得られた水性懸濁物から表面反応カルシウム塩粒子を分離すること。
【0145】
工程(d)又は(IV)から得られた表面反応カルシウム塩粒子は、当業者に公知の任意の従来の分離手段によって、水性懸濁物から分離することができる。本発明の一つの実施態様によれば、プロセス工程(e)では、表面反応カルシウム塩粒子は機械的及び/又は熱的に分離される。機械的分離プロセスの例は、濾過、例えばドラムフィルター又はフィルタープレス、ナノ濾過、又は遠心分離である。熱分離プロセスの例は、例えばエバポレーターで熱の適用による濃縮プロセスである。好適な実施態様によれば、プロセス工程(e)では表面反応カルシウム塩粒子は、機械的に、好ましくは濾過及び/又は遠心分離によって分離される。
【0146】
分離後にあるいは代替的に、表面反応カルシウム塩粒子を乾燥させて、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子を得ることができる。一つの実施態様によれば、この方法は、工程(d)の後又は存在する場合には工程(e)の後に、60~600℃の範囲の温度で、好ましくは表面反応カルシウム塩粒子の水分含量が、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、0.01~5重量%になるまで、表面反応カルシウム塩粒子を乾燥する工程(f)をさらに含む。別の実施態様によれば、in situプロセスはさらに、工程(IV)の後又は存在する場合には工程(V)の後に、60~600℃の範囲の温度で、好ましくは表面反応カルシウム塩粒子の水分含量が、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、0.01~5重量%になるまで、表面反応カルシウム塩粒子を乾燥する工程(VI)をさらに含む。
【0147】
本発明の一つの実施態様によれば、以下の工程を含む、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子を製造するための方法が提供される:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、
(c)工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合することにより水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である、
(e)工程(d)で得られた水性懸濁物から表面反応カルシウム塩粒子を分離すること、及び/又は
(f)表面反応カルシウム塩粒子を乾燥すること。
【0148】
別の実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を製造するためのin situでの方法は、以下の工程を含む:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その二水素塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供する工程、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、
(IV)少なくとも4.2のpH値で工程(III)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応炭酸カルシウム粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲で提供する、
(V)工程(IV)で得られた水性懸濁物から表面反応カルシウム塩粒子を分離すること、及び/又は
(VI)表面反応カルシウム塩粒子を乾燥させること。
【0149】
一般に、乾燥工程(f)又は(VI)は、任意の適切な乾燥装置を使用して行うことができ、例えば、エバポレーター、フラッシュ乾燥機、オーブン、噴霧乾燥機などの装置を使用する熱乾燥及び/又は減圧乾燥、及び/又は真空チャンバーでの乾燥を含み得る。乾燥工程(f)又は(VI)は、減圧、周囲圧力、又は高圧下で実施することができる。100℃未満の温度では、減圧下で乾燥工程を実施することが好ましい場合がある。
【0150】
一つの好適な実施態様によれば、分離は熱的方法によって実施される。これは、機器を変更することなく、表面反応カルシウム塩粒子を続いて乾燥させることを可能にする。
【0151】
一つの実施態様によれば、プロセス工程(f)又は(VI)において、表面反応カルシウム塩粒子は、生成された表面反応カルシウム塩粒子の水分含量が、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、1.0重量%又はこれ未満、好ましくは0.5重量%又はこれ未満、より好ましくは0.2重量%又はこれ未満になるまで乾燥される。別の実施態様によれば、プロセス工程(f)又は(VI)において、表面反応カルシウム塩粒子は、生成された表面反応カルシウム塩粒子の水分含量が、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、0.01~0.15重量%、好ましくは0.02~0.10重量%、より好ましくは0.03~0.07重量%になるまで乾燥される。
【0152】
本発明の一つの実施態様によれば、この方法は、工程(d)、(e)、又は(f)で得られた表面反応カルシウム塩粒子を、少なくとも一つの疎水化剤で、好ましくは炭素原子の総量がC4~C24である脂肪族カルボン酸で、及び/又は置換基中の炭素原子の総量がC2~C30である線状、分枝状、脂肪族、及び環状基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも一つの一置換コハク酸無水物で、及び/又は一つ若しくは複数のリン酸モノエステルと一つ若しくは複数のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンドで処理して、利用可能な表面領域の少なくとも一部に、疎水化剤を含む処理層を含む表面反応カルシウム塩粒子を得る工程(g)をさらに含む。
【0153】
工程(g)は工程(e)及び/又は(f)から独立していることに注意されたい。
【0154】
処理工程(g)で使用される疎水化剤は、表面反応カルシウム塩粒子の利用可能な表面領域の少なくとも一部に疎水性処理層を生成することができる、当業者に公知の任意の化学物質であり得る。
【0155】
工程(d)、(e)、又は(f)で得られた表面反応カルシウム塩粒子を、少なくとも一つの一置換コハク酸無水物及び/又は少なくとも一つのリン酸エステルブレンド及びコーティングに適した化合物で処理するプロセス工程(g)は、欧州特許出願公開第2 722 368 A1号公報及び欧州特許出願公開第2 770 017 A1号公報に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
工程(d)、(e)、又は(f)で得られた表面反応カルシウム塩粒子を処理するための適切な脂肪族カルボン酸は、例えば4~24個の炭素原子を有する脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸であり、欧州特許出願公開第3 042 878 A1号公報に記載されている。
【0157】
表面反応カルシウム塩粒子
本発明のさらなる態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子が提供され、ここで、この表面反応カルシウム塩粒子は、本発明の方法によって得られる。したがって、表面反応カルシウム塩粒子は、以下の工程を含む方法によって得られる:
(a)リン酸二水素カルシウムとリン酸一水素カルシウムとを除くカルシウム塩を提供すること、
(b)リン酸二水素カルシウム及び/又はリン酸一水素カルシウムから選択されるリン酸カルシウムを提供すること、
(c)工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとを水と混合することにより水性懸濁物を生成すること、及び
(d)少なくとも4.2のpH値で工程(c)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応カルシウム塩粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(a)のカルシウム塩と工程(b)のリン酸カルシウムとの組み合わせは、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲である。
【0158】
本発明の別の実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、以下の工程を含むin situでの方法によって得られる:
(I)リン酸一水素カルシウムを除くカルシウムイオン源を提供すること、
(II)リン酸、その二水素塩、又はこれらの混合物から選択されるリン酸イオン源を提供すること、及び
(III)工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源とを水の存在下で混合することによってリン酸一水素カルシウムを生成し、水性懸濁物を生成すること、
(IV)少なくとも4.2のpH値で工程(III)の水性懸濁物を粉砕して、表面反応炭酸カルシウム粒子の水性懸濁物を生成すること、
ここで、工程(I)のカルシウムイオン源と工程(II)のリン酸イオン源との組み合わせを、カルシウムイオン対リン酸イオンのモル比(Ca2+:PO 3-)が1.75:1~100:1の範囲で提供する。
【0159】
一つの実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、窒素とBET法を使用して測定された、5m/g~200m/g、好ましくは10m/g~180m/g、より好ましくは20m/g~170m/g、さらにより好ましくは25m/g~150m/g、最も好ましくは30m/g~100m/gの比表面積を有する。本発明の意味においてBET比表面積は、粒子の表面積を粒子の質量で割ったものとして定義される。そこで使用されている比表面積は、BET等温線(ISO9277:2010)を使用した吸着によって測定され、m/gで規定される。
【0160】
一つの実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子が提供され、ここで、この表面反応カルシウム塩粒子は、炭酸カルシウム含有材料、及び炭酸カルシウム以外の少なくとも一つの水不溶性カルシウム塩、例えばリン酸三カルシウム及び/又はアパタイトリン酸カルシウム、好ましくはヒドロキシアパタイト、リン酸オクタカルシウム、フルオロアパタイト、カルボキシアパタイト、又はこれらの混合物を含む。表面反応カルシウム塩粒子は、炭酸カルシウム対リン酸三カルシウム及び/又はアパタイトリン酸カルシウムの質量比が、0.05:1~59:1、好ましくは0.14:1~44:1、より好ましくは0.2:1~29:1、さらにより好ましくは0.3:1~15:1、最も好ましくは0.5:1~5:1の範囲内にある。
【0161】
本発明の一つの実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、窒素とBET法を使用して測定された、5m/g~200m/g、好ましくは10m/g~180m/g、より好ましくは20m/g~170m/g、さらにより好ましくは25m/g~150m/g、最も好ましくは30m/g~100m/gの比表面積(BET)を有し、かつ表面反応カルシウム塩粒子は、炭酸カルシウム対アパタイトリン酸カルシウム、好ましくはヒドロキシアパタイト、リン酸オクタカルシウム、フルオロアパタイト、カルボキシアパタイト、又はこれらの混合物、より好ましくはヒドロキシアパタイトの質量比が、0.05:1~59:1、好ましくは0.14:1~44:1、より好ましくは0.2:1~29:1、さらにより好ましくは0.3:1~15:1、最も好ましくは0.5:1~5:1の範囲である。
【0162】
一つの実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、0.5~75μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~40μm、さらにより好ましくは2.5~30μm、最も好ましくは3~15μmの体積基準メジアン粒径d50(vol)を有し、かつ/又は1~150μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは4~80μm、さらにより好ましくは5~60μm、最も好ましくは6~30μmの体積基準トップカット粒径d98(vol)を有する。
【0163】
一つの実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、少なくとも一つの疎水化剤で処理されている。したがって、表面反応カルシウム塩粒子は、利用可能な表面領域の少なくとも一部に、疎水化剤を含む処理層を含み、かつ好ましくは、表面反応カルシウム塩粒子は、利用可能な表面領域の少なくとも一部に、C4~C24の総炭素原子量を有する脂肪族カルボン酸、及び/又は置換基中にC2~C30の総炭素原子量を有する直鎖、分枝状、脂肪族、及び環状基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも一つの一置換コハク酸無水物、及び/又は一つ若しくは複数のリン酸モノエステルと一つ若しくは複数のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド、並びにこれらの反応生成物を含む処理層を含む。本発明の意味において、C4~C24の総炭素原子量を有する脂肪族カルボン酸、及び/又は置換基中にC2~C30の総炭素原子量を有する直鎖、分枝状、脂肪族、及び環状基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる一置換コハク酸無水物、及び/又は一つ若しくは複数のリン酸モノエステルと一つ若しくは複数のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンドとの「反応生成物」は、表面反応カルシウム塩粒子をそのような疎水化剤と接触させることによって得られる生成物を指す。
【0164】
本発明の方法によって得られる表面反応カルシウム塩粒子は、表面反応カルシウム塩粒子の懸濁物の形態で、分離された表面反応カルシウム塩粒子として、又は乾燥された表面反応カルシウム塩粒子として提供することができる。好適な実施態様によれば、表面反応カルシウム塩粒子は、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子である。
【0165】
表面反応カルシウム塩粒子が乾燥されている場合、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の水分含量は、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、0.01~5重量%であり得る。一つの実施態様によれば、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の水分含量は、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、1.0重量%又はこれ未満、好ましくは0.5重量%又はこれ未満、より好ましくは0.2重量%又はこれ未満である。別の実施態様によれば、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の水分含有量は、乾燥された表面反応カルシウム塩粒子の総重量に基づいて、0.01~0.15重量%、好ましくは0.02~0.10重量%、より好ましくは0.03~0.07重量%である。
【0166】
本発明の表面反応カルシウム塩粒子はまた、組成物の形態で提供及び/又は使用され得る。本発明の一つの態様によれば、本発明の表面反応カルシウム塩粒子、及び追加の充填材料、好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、又はこれらの混合物を含む組成物が提供される。この組成物は、この組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%の量の本発明の表面反応カルシウム塩粒子を含むことができる。
【0167】
表面反応カルシウム塩粒子は、様々な用途に使用することができる。
【0168】
一つの実施態様によれば、本発明の表面反応カルシウム塩粒子は、ポリマー用途、紙コーティング用途、製紙、塗料、コーティング、シーラント、印刷インク、接着剤、食品、飼料、医薬品、コンクリート、セメント、化粧品、水処理、加工木材(engineered wood)用途、石膏ボード用途、包装用途、又は農業用途で使用される。好ましくは、表面反応カルシウム塩粒子は、乾燥された表面反応炭酸カルシウムとして使用することができる。
【0169】
表面反応カルシウム塩粒子はまた物品に組み込まれ得る。本発明のさらなる態様によれば、本発明の表面反応カルシウム塩粒子を含む物品が提供され、この物品は、紙製品、加工木材製品、石膏ボード製品、ポリマー製品、衛生製品、医療製品、ヘルスケア製品、フィルター製品、織物材料、不織布材料、ジオテキスタイル製品、農産物、園芸製品、衣類、履物製品、手荷物製品、家庭用品、工業製品、包装製品、建築製品、又は建設製品から選択される。
【0170】
本発明の範囲及び利益は、以下の実施例に基づいてより良く理解され、これらの実施例は、本発明のある特定の実施態様を記載することを意図しており、かつ非限定的なものである。
【実施例
【0171】
1. 測定方法
以下に、実施例で行われた測定方法を説明する。
【0172】
1.1 粒径分布
体積基準メジアン粒径d50(vol)及び体積基準トップカット粒径d98(vol)は、Malvern Mastersizer 2000 レーザー回折システム(Malvern Instruments Plc, Great Britain)を使用して評価した。d50(vol)又はd98(vol)値は、粒子のそれぞれ50体積%又は98体積%が、その値よりも小さい直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データを、粒子の屈折率1.57、及び吸収指数0.005を用いて、ミー理論を使用して分析した。この方法及び装置は当業者に公知であり、充填剤及び顔料の粒径分布を決定するために一般的に使用されている。試料は、乾燥状態で前処理なしで測定された。
【0173】
重量基準メジアン粒径d50(wt)及び重量基準トップカット粒径d98(wt)は、重量分析分野における沈降挙動の分析法である沈降法によって測定した。測定は、米国の Micromeritics InstrumentCorporation のSedigraph(商標)5120を使用して行った。この方法及び装置は当業者に公知であり、充填剤及び顔料の粒径分布を決定するために一般的に使用されている。測定は、0.1重量%Naの水溶液中で行った。試料を、高速攪拌機を使用して分散させ、かつ超音波処理した。
【0174】
1.2. 比表面積(SSA)
比表面積は、ISO9277:2010に準拠したBET法により、窒素とASAP 2460機器(Micromeritics GmbH, Germany)を使用し、試料を100℃で30分間加熱してコンディショニングした後、測定した。このような測定の前に、試料をブフナー漏斗で濾過し、脱イオン水ですすぎ、オーブン内で、110℃で少なくとも12時間乾燥させた。
【0175】
1.3. 比粉砕エネルギー(SGE)
比粉砕エネルギー(SGE)は、それぞれのモニタリングディスプレイに示されているように、粉砕装置の電力消費量(P)(kWで与えられる)と、供給スラリーの体積流速(v)(m/hで与えられる)とを最初に同時に記録することによって決定した。さらに、供給スラリーの全固形分(TS)含量(重量%で示される)は、Mettler-Toledoの水分分析器HR73(T=120℃、自動スイッチオフ3、標準的乾燥)を使用して、試料サイズ5~20gで決定した。水の密度(ρ)を1.00T/mとし、適用した乾燥炭酸カルシウム/大理石/チョークの密度(ρ)を2.71T/mと仮定すると、式(1)、(2)、(3)で表されるように、SGEを与えられた量の関数として計算することができる。
SGE=P/((TS)・m) 式(1)
=ρ・v 式(2)
ρ=[ρ・ρ]/[ρ・(1-(TS))+ρ・(TS)] 式(3)
【0176】
2. 実施例
2.1. 実施例1(リン酸一水素カルシウムのin situ製造)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μmのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0177】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して10重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0178】
高速タンクミキサー中での混合は、気泡が観察されなくなり、かつスラリーのpHが少なくとも7.0になるまで続けた。続いて、スラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移して、固体粒状物質を懸濁状態に維持した。次に、ビーズ材料密度が3.8g/cmである21kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した25Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを75L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度5.3m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)189kWh/Tを得た。少なくとも25Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0179】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)50m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)4.2μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)10.5μmを示した。
【0180】
2.2. 実施例2(リン酸一水素カルシウムのin situ製造)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μmのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0181】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して15重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0182】
高速タンクミキサー中での混合は、気泡が観察されなくなり、かつスラリーのpHが少なくとも7.0になるまで続けた。続いて、スラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移して、固体粒状物質を懸濁状態に維持した。次に、ビーズ材料密度が3.8g/cmである21kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した25Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを75L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度7.5m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)260kWh/Tを得た。少なくとも25Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0183】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)62m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)3.3μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)7.2μmを示した。
【0184】
2.3. 実施例3(リン酸一水素カルシウムのin situ製造)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μmのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0185】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して10重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0186】
高速タンクミキサー中での混合は、気泡が観察されなくなり、かつスラリーのpHが少なくとも7.0になるまで続けた。続いて、スラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移して、固体粒状物質を懸濁状態に維持した。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである36kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した25Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを75L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度5.3m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)290kWh/Tを得た。少なくとも25Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0187】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)48m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)2.9μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)7.0μmを示した。
【0188】
2.4. 実施例4(リン酸一水素カルシウムのin situ製造)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が4μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が16μmのOmya SAS Omey Franceのチョーク微粉末(Aero chalk)を、周囲温度(20℃±2℃)で高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0189】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して10重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0190】
高速タンクミキサー中での混合は、気泡が観察されなくなり、かつスラリーのpHが少なくとも7.0になるまで続けた。続いて、スラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移して、固体粒状物質を懸濁状態に維持した。次に、ビーズ材料密度が3.8g/cmである21kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した25Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを75L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度5.3m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)233kWh/Tを得た。少なくとも25Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0191】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)47m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)3.6μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)8.5μmを示した。
【0192】
2.5. 実施例5(リン酸一水素カルシウムのin situ製造)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μmのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0193】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して10重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0194】
高速タンクミキサー中の混合は、気泡が観察されなくなり、かつスラリーのpHが少なくとも7.0になるまで続けた。続いて、スラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移して、固体粒状物質を懸濁状態に維持した。次に、ビーズ材料密度が3.8g/cmである10kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した6Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを15.8L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度5.0m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)254kWh/Tを得た。一時的に一定の温度プラットフォーム(定常状態で最大±2℃の変動範囲)に達した後に、生成物を回収した。
【0195】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)50m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)3.3μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)7.8μmを示した。
【0196】
2.6. 実施例6(リン酸一水素カルシウムの別個の製造)
バッチ1
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μmのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で、高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して40%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0197】
基本的に乱流撹拌下で、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して98重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。高速タンクミキサー中の混合は、気泡が観察されなくなるまで続けた。
【0198】
バッチ2
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μmのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で、第2の高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して19%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0199】
混合と粉砕
基本的に層流が確立されるように攪拌しながら、バッチ1をバッチ2に加え、それによって、合わせたスラリーに加えられた大理石の合計が、加えられたHPO水溶液の重量を除いて、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に対応するようにした。
【0200】
続いて、固体粒状物質を懸濁状態に保つために、このスラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移した。次に、ビーズ材料密度が3.8g/cmである21kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した25Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを、75L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度5.3m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)211kWh/Tを得た。少なくとも25Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0201】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)54m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)4.0μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)9.2μmを示した。
【0202】
2.7. 実施例7(リン酸一水素カルシウムの別個の製造)
バッチ1
重量基準メジアン粒径d50(wt)が4μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が16μmのOmya SAS Omey Franceのチョーク微粉末(Aero chalk)を、周囲温度(20℃±2℃)で高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して40%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0203】
基本的に乱流撹拌下で、この炭酸カルシウムに、水溶液の総重量に基づいて75重量%のHPOを有する水溶液を、90~120秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して98重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。高速タンクミキサー中の混合は、気泡が観察されなくなるまで続けた。
【0204】
バッチ2
重量基準メジアン粒径d50(wt)が4μmで、重量基準トップカット粒径d98(wt)が16μmのOmya SAS Omey Franceのチョーク微粉末(Aero chalk)を、周囲温度(20℃±2℃)で第2の高速タンクミキサーにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して19%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0205】
混合と粉砕
基本的に層流が確立されるように攪拌しながら、バッチ1をバッチ2に加え、それによって、合わせたスラリーに加えられたチョークの合計が、加えられたHPO水溶液の重量を除いて、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に対応するようにした。
【0206】
続いて、固体粒状物質を懸濁状態に保つために、このスラリーを、低速混合装置を備えた貯蔵タンクに移した。次に、ビーズ材料密度が3.8g/cmである21kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した25Lの垂直ビーズミルを通じて、このスラリーを、75L/hの速度でポンプ輸送し、かつミルローター先端速度5.3m/sで流して、比粉砕エネルギー(SGE)204kWh/Tを得た。少なくとも25Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0207】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)42m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)4.0μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)9.6μmを示した。
【0208】
実施例1~7で記載したプロセスパラメータを、得られた生成物のそれぞれの比表面積(SSA)、d50(vol)、及びd98(vol)値とともに、以下の表1にまとめる。
【0209】
2.8. 実施例8(リン酸イオン源としての一水素塩)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μm、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μm、及び比表面積(SSA)が1.1m/gのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で、オーバーヘッド撹拌機を備えた15Lバケットにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して40%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0210】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウム懸濁物に、水性混合物の総重量に基づいて6.8重量%のNaHPO・2HOを有する水性混合物を、45~60秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して18.2重量%のNaHPO・2HO塩に相当する量で添加し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20重量%の乾燥炭酸カルシウムに相当する含量となるようにした。
【0211】
オーバーヘッド撹拌機を備えたバケットにおける混合を少なくとも10分間続けた。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである1.070kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した0.6Lの水平ビーズミルを通じて、このスラリーを、17.7L/hの速度でポンプ輸送し、かつミル攪拌機先端速度14m/sで流した。少なくとも5Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0212】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)20.6m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)7.9μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)19.2μmを示した。
【0213】
2.9. 実施例9(リン酸イオン源としての二水素塩)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μm、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μm、及び比表面積(SSA)が1.1m/gのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で、オーバーヘッド撹拌機を備えた15Lバケットにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して40%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0214】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウム懸濁物に、水性混合物の総重量に基づいて6.0重量%のNaHPO・2HOを有する水性混合物を、45~60秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して15.9重量%のNaHPO・2HO塩に相当する量で添加し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20重量%の乾燥炭酸カルシウムに相当する含量となるようにした。
【0215】
オーバーヘッド撹拌機を備えたバケットにおける混合を少なくとも10分間続けた。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである1.070kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した0.6Lの水平ビーズミルを通じて、このスラリーを、18.1L/hの速度でポンプ輸送し、かつミル攪拌機先端速度14m/sで流した。少なくとも5Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0216】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)34.1m/g、体積基準中央粒子サイズd50(vol)9.4μm、及び体積基準トップカット粒子サイズd98(vol)22.8μmを示した。
【0217】
2.10. 実施例10(リン酸イオン源としての二水素塩)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μm、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μm、及び比表面積(SSA)が1.1m/gのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で、オーバーヘッド撹拌機を備えた15Lバケットにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して40%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0218】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウム懸濁物に、水性混合物の総重量に基づいて4.9重量%のCa(HPO・HOを有する水性混合物を、45~60秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して12.9重量%のCa(HPO・HO塩に相当する量で添加し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20重量%の乾燥炭酸カルシウムに相当する含量となるようにした。
【0219】
オーバーヘッド撹拌機を備えたバケットにおける混合を少なくとも10分間続けた。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである1.070kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した0.6Lの水平ビーズミルを通じて、このスラリーを、18.6L/hの速度でポンプ輸送し、かつミル攪拌機先端速度14m/sで流した。少なくとも5Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0220】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)46.9m/g、体積基準中央粒子サイズd50(vol)8.0μm、及び体積基準トップカット粒子サイズd98(vol)20.2μmを示した。
【0221】
2.11. 実施例11(リン酸イオン源としての二水素塩)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が10μm、重量基準トップカット粒径d98(wt)が50μm、及び比表面積(SSA)が1.1m/gのOmya SPA Carrara Italyの粉砕大理石を、周囲温度(20℃±2℃)で、オーバーヘッド撹拌機を備えた15Lバケットにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して40%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0222】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウム懸濁物に、固体KHPO結晶を、15~25秒間かけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して13.9重量%のKHPO塩に相当する量で添加し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20重量%の乾燥炭酸カルシウムに相当する含量となるようにした。
【0223】
オーバーヘッド撹拌機を備えたバケットにおける混合を少なくとも10分間続けた。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである1.070kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した0.6Lの水平ビーズミルを通じて、このスラリーを、20.1L/hの速度でポンプ輸送し、かつミル攪拌機先端速度14m/sで流した。少なくとも5Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0224】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、比表面積(SSA)27.1m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)8.1μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)19.7μmを示した。
【0225】
2.12. 実施例12(カルシウムイオン源としての石灰石)
重量基準メジアン粒径d50(wt)が3.5μm、重量基準トップカット粒径d98(wt)が10.5μm、及び比表面積(SSA)が1.5m/gのOmya SAS Orgon Franceの粉砕石灰石を、周囲温度(20℃±2℃)で、オーバーヘッド撹拌機を備えた15Lバケットにおいて水で希釈し、それによって、得られた水性懸濁物の固形分含量が、懸濁物の総重量に対して20%の乾燥重量に相当する含量となるようにした。
【0226】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウム懸濁物に、水溶液の総重量に基づいて85重量%のHPOを有する水性混合物を、25~35秒間にかけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して10重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0227】
気泡が観察されず、スラリーのpHが少なくとも7.0になるまで、オーバーヘッド撹拌機を備えたバケットにおける混合を少なくとも10分間続けた。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである1.070kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した0.6Lの水平ビーズミルを通じて、このスラリーを、20.4L/hの速度でポンプ輸送し、かつミル攪拌機先端速度14m/sで流した。少なくとも5Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0228】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、プロセス直後に測定されたものとして、比表面積(SSA)47.1m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)8.7μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)25.0μmを示した。
【0229】
2.13. 実施例13(カルシウムイオン源としての偏三角面体沈降炭酸カルシウム(S-PCC))
体積基準メジアン粒径d50(wt)が3.3μmで、比表面積(SSA)が5.5m/gのOmya GmbH Hausmening Austriaの偏三角面体沈降炭酸カルシウムの20%スラリーを、周囲温度(20℃±2℃)で、オーバーヘッド撹拌機を備えた15Lバケットにおいて撹拌した。
【0230】
基本的に層流が確立されるように撹拌しながら、この炭酸カルシウム懸濁物に、水溶液の総重量に基づいて85重量%のHPOを有する水性混合物を、25~35秒間にかけて、乾燥炭酸カルシウム重量に対して10重量%の活性リン酸に相当する量で添加した。この添加に続いて、CO気泡が生成し、懸濁物中を上方に通過することが観察された。
【0231】
気泡が観察されず、スラリーのpHが少なくとも7.0になるまで、オーバーヘッド撹拌機を備えたバケットにおける混合を少なくとも10分間続けた。次に、ビーズ材料密度が6.2g/cmである1.070kgのZrOベースの粉砕媒体を充填した0.6Lの水平ビーズミルを通じて、このスラリーを、18.3L/hの速度でポンプ輸送し、かつミル攪拌機の先端速度14m/sで流した。少なくとも3Lのスラリーを、ミルを通じてポンプ輸送した後、生成物を回収した。
【0232】
得られた表面反応カルシウム塩粒子は、プロセス直後に測定されたものとして、比表面積(SSA)36.0m/g、体積基準メジアン粒径d50(vol)1.95μm、及び体積基準トップカット粒径d98(vol)15.5μmを示した。
【0233】
【表1】
【0234】
【表2】
【国際調査報告】