(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気車両においてガソリン圧縮着火を使用するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/10 20160101AFI20220309BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20220309BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220309BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20220309BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20220309BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220309BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20220309BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20220309BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220309BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20220309BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220309BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220309BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20220309BHJP
【FI】
B60W20/10
B60K6/46 ZHV
B60K6/48
B60K6/445
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/13
B60K6/24
B60K6/40
F02D29/06 D
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021540193
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 US2020013873
(87)【国際公開番号】W WO2020150467
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ウ・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンソク・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ククウォン・チョ
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202AA07
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB02
3D202BB11
3D202BB19
3D202CC02
3D202DD24
3D202DD44
3D202DD45
3D202EE23
3D202FF13
3G093AA07
3G093BA20
3G093DA01
3G093DA03
3G093DA04
3G093DA06
3G093DB19
3G093DB20
3G093EA02
3G093EA03
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC12
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA09
5H125EE27
5H125EE42
(57)【要約】
ハイブリッド電気車両(100、200、300、400)は、一組の車輪(125、225、335、445)と、一組の車輪にトルクを提供するように適合された機械的動力伝達機(115、215、325、435)と、機械的動力伝達機に結合されて動力を提供する電気モータ(130、230、340、430)と、電気モータに結合されて電力を供給するバッテリストレージ(135、235、360、450)と、機械的動力伝達機および電気モータの少なくとも一方に結合され、機械的動力伝達機への機械的エネルギーおよび電気モータを作動するためのエネルギーを提供するガソリン圧縮着火(GCI)エンジン(105、205、305、405)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電気車両であって、
一組の車輪と、
前記一組の車輪にトルクを提供するように適合された機械的動力伝達機と、
前記機械的動力伝達機に結合され、前記機械的動力伝達機に動力を提供する電気モータと、
前記電気モータに結合され、前記電気モータに電力を供給するバッテリストレージと、
前記機械的動力伝達機および前記電気モータの少なくとも一方に結合され、前記機械的動力伝達機への機械的エネルギーおよび前記電気モータを作動させるためのエネルギーを提供する、ガソリン圧縮着火(GCI)エンジンと、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに結合され、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの作動を制御するように適合された電子制御部と、を備える、ハイブリッド電気車両。
【請求項2】
40~60のオクタン価を有するオクタンガソリン燃料を提供するためにGCIエンジンに結合された燃料供給カップリングと、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに機械的に結合された動力分割デバイスと、
前記動力分割デバイスに結合された発電機と、をさらに備え、
前記電子制御部が、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの両方によって提供される動力の量を制御して、車両を駆動させる、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項3】
前記電子制御部が、中負荷走行および約115~120ニュートンメートル未満から120~125ニュートンメートル超のトルクへの遷移において、前記GCIエンジンを制御して、前記車両のみに動力を提供するように適合されている、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項4】
前記電子制御部が、加速を高めるために、かつ高負荷において、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの両方を並列に作動させて、同時に動力を提供する、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項5】
前記電子制御部が、前記バッテリストレージの充電量が閾値を下回ったときに、GCIエンジンからのエネルギーを、前記発電機を介して前記バッテリストレージを充電することに向ける、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項6】
前記電子制御部が、低負荷において、前記電気モータを作動させて、前記車両を始動させ、前記車両のみに動力を提供する、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項7】
ガソリン燃料を提供するために前記GCIエンジンに結合された燃料供給カップリングと、
前記GCIエンジンに機械的に結合され、前記GCIエンジンによって動力供給される発電機と、をさらに備え、
前記電気モータが、前記機械的動力伝達機に結合され前記車両に動力を提供し、前記電子制御部が、前記発電機を制御して前記電気モータに電力を提供するように適合されている、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項8】
前記発電機の出力に結合され、かつ前記電気モータの入力に結合されて、整流された電気信号を前記電気モータに供給する整流器をさらに備える、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項9】
前記電子制御部が、要求された電力の大きさを判定し、前記要求された電力量が、バッテリストレージによって提供される電力の量よりも少ない場合に、前記バッテリストレージから前記電気モータを作動させるように適合されている、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項10】
前記電子制御部が、要求された電力の大きさを判定し、前記要求された電力の量が前記バッテリストレージによって提供される前記電力量を超え、前記発電機によって提供される前記電力量よりも少ない場合に、前記発電機から前記電気モータを作動させるように適合され、すべての余剰電力が前記バッテリストレージの充電に使用される、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項11】
前記電子制御部が、要求された電力の大きさを判定し、前記要求された電力の量が前記発電機によって提供される前記電力の量を超える場合に、前記バッテリストレージおよび前記発電機の両方から前記電気モータを作動させるように適合され、すべての余剰電力が前記バッテリストレージを充電するために使用される、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項12】
前記電子制御部が、前記バッテリストレージにおける充電の大きさを判定し、前記判定された充電の大きさが閾値を下回る場合に、前記発電機を制御して前記バッテリストレージを再充電するように適合されている、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項13】
少なくとも85のオクタン価を有するガソリン燃料を提供するための前記GCIエンジンに結合された燃料供給カップリングをさらに備え、
前記GCIエンジンが、前記機械的動力伝達機および前記電気モータの両方に結合され、前記電子制御部が、約65ニュートンメートルのトルクを超える負荷において、前記GCIエンジンを制御して、前記車両のみに動力を提供するように適合されている、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項14】
前記電子制御部が、約65ニュートンメートルのトルクの低負荷において、前記電気モータを作動させて前記車両を始動させ、前記車両のみに動力を提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電子制御部が、前記バッテリストレージの充電量が閾値を下回ったときに、前記電気モータを制御して発電機モードで機能させる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
約60~約85のオクタン価を有するオクタンガソリン燃料を提供するための前記GCIエンジンに結合された燃料供給カップリングと、
前記GCIエンジンに機械的に結合され、前記GCIエンジンによって動力供給される発電機と、をさらに備え、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータが、両方とも、両方の前記機械的動力伝達機に結合されて、同時にまたは個別に前記車両に動力を提供する、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項17】
前記GCIエンジンおよび前記電気モータが、両方とも、両方の前記機械的動力伝達機に結合されて、前記車両に動力を同時に提供し、前記電子制御部が、負荷需要と現在の車両速度に基づいて、前記GCIエンジンおよび前記電気モータによってそれぞれ提供される電力の比率を設定する、請求項5に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項18】
前記GCIエンジンおよび前記電気モータが、両方とも、両方の機械的動力伝達機に結合されて、前記車両に個別に動力を提供する、請求項5に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項19】
前記電子制御部が、中負荷走行および約115~120ニュートンメートル未満から120~125ニュートン超のトルクへの遷移時に、前記GCIエンジンを制御して、前記車両のみに動力を提供するように適合されている、請求項16に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項20】
前記電子制御部が、約65ニュートンメートルのトルク未満の低負荷において、前記電気モータを作動させて前記車両を始動させ、前記車両のみに動力を提供する、請求項16に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項21】
前記電子制御部が、加速を高めるために、かつ約120ニュートンメートル超のトルクの負荷において、前記GCIエンジンおよび電気モータの両方を作動させて、同時に動力を提供する、請求項16に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項22】
内燃機関エンジンおよび前記電気モータを含むハイブリッド電気車両を作動させる方法であって、前記車両は、ガソリン燃料およびバッテリストレージの両方を有し、前記方法は、
前記内燃機関エンジンをガソリン圧縮着火(GCI)モードで作動させて、前記ガソリン燃料を自着火させることと、
前記電気モータを機械的動力伝達機に結合して、前記車両に動力を提供することと、
前記内燃機関エンジンの出力を、機械的動力伝達機および発電機の少なくとも一方を駆動させることに向けることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記電気モータおよび前記内燃機関エンジンを配置して、前記車両に並列に動力供給することができることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記内燃機関エンジンに結合された発電機を提供することをさらに含み、前記内燃機関エンジンが、前記発電機に動力を提供して、前記バッテリストレージを再充電し、前記電気モータに追加の電力を提供することができる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記内燃機関エンジン、発電機、および前記電気モータを直列に配置することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記内燃機関エンジンおよび前記電気モータを動力分割デバイスに結合することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
ハイブリッド電気車両であって、
一組の車輪と、
前記一組の車輪にトルクを供給するように適合された機械的動力伝達機と、
前記機械的動力伝達機に結合され、前記機械的動力伝達機に動力を提供する電気モータと、
前記電気モータに結合され、前記電気モータに電力を供給するバッテリストレージと、
前記機械的動力伝達機および前記電気モータの少なくとも一方に結合されて、前記機械的動力伝達機への機械的エネルギーおよび前記電気モータを作動するためのエネルギーを提供するガソリン圧縮着火(GCI)エンジンと、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに結合され、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの作動を制御するように適合された電子制御部と、
40~60のオクタン価を有するオクタンガソリン燃料を提供するためにGCIエンジンに結合された燃料供給カップリングと、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに機械的に結合された動力分割デバイスと、
前記動力分割デバイスに結合された発電機と、を備え、
前記電子制御部が、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの両方によって提供される動力の量を制御して、前記車両を駆動させる、ハイブリッド電気車両。
【請求項28】
ハイブリッド電気車両であって、
一組の車輪と、
前記一組の車輪にトルクを供給するように適合された機械的動力伝達機と、
前記機械的動力伝達機に結合され、前記機械的動力伝達機に動力を提供する電気モータと、
前記電気モータに結合され、前記電気モータに電力を供給するバッテリストレージと、
前記機械的動力伝達機および前記電気モータの少なくとも一方に結合されて、前記機械的動力伝達機への機械的エネルギーおよび前記電気モータを作動するためのエネルギーを提供するガソリン圧縮着火(GCI)エンジンと、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに結合され、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの作動を制御するように適合された電子制御部と、
ガソリン燃料を提供するために前記GCIエンジンに結合された燃料供給カップリングと、
前記GCIエンジンに機械的に結合され、前記GCIエンジンによって動力供給される発電機と、をさらに備え、
前記電気モータが、前記車両に動力を提供するために前記機械的動力伝達機に結合され、前記電子制御部が、前記発電機を制御して前記電気モータに電力を提供するように適合されている、ハイブリッド電気車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願への相互参照
本出願は、2019年1月16日に出願された米国出願第16/249,237号、発明の名称「SYSTEM AND METHOD FOR EMPLOYING GASOLINE COMPRESSION IGNITION IN A HYBRID ELECTRIC VEHICLE」の優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、自動車技術に関し、より具体的には、ハイブリッド電気車両(HEV)においてガソリン圧縮着火(GCI)を使用するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO2)排出制限などの世界中の厳しい車両排出規制の結果として、小型車両の多くの自動車製造業者は、車両が電気モータでの走行中に最小限の排出量しか生じさせないため、その生産努力を電気車両またはハイブリッド電気車両(HEV)に切り替えることを検討している。現在のハイブリッド電気車両技術は、電気モータ/バッテリを従来のガソリン火花着火(SI)エンジンまたはディーゼル圧縮着火(CI)エンジンのいずれかと組み合わせている。同様のタイプの通常の完全燃料駆動式車両と比較して、ハイブリッド車両は、都市環境で最大30パーセント少ない燃料消費量を消費する。しかしながら、この燃料効率の向上は、排出量の十分な削減を伴っていない。
【0004】
エンジンを排除し、電力に完全に依拠することによって、排出量をさらに削減することができる。この解決策は、現在のリチウムベースのバッテリストレージが長距離の移動には不十分であり、多くの場所で充電インフラストラクチャが欠如しているという事実によって妨げられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、必要とされているのは、従来のSIおよびディーゼルエンジンと比較して低排出量という側面を有し、最も厳しい排出規制に準拠することができる、ハイブリッド電気車両において使用できるエンジン技術である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、一組の車輪と、一組の車輪にトルクを提供するように適合された機械的動力伝達機と、機械的動力伝達機に結合され、機械的動力伝達機に動力を提供する電気モータと、電気モータに結合され、電気モータに電力を供給するバッテリストレージと、機械的動力伝達機および電気モータの少なくとも一方に結合され、機械的動力伝達機への機械的エネルギーおよび電気モータを作動させるためのエネルギーを提供するガソリン圧縮着火(GCI)エンジンと、GCIエンジンおよび電気モータに結合され、GCIエンジンおよび電気モータの作動を制御するように適合された電子制御部と、を備えるハイブリッド電気車両を提供する。
【0007】
特定の実施形態において、ハイブリッド電気車両は、高オクタン価ガソリン燃料を含むGCIエンジンに結合された燃料供給部をさらに備え、GCIエンジンは、機械的動力伝達機および電気モータの両方に結合され、電子制御部はGCIエンジンを制御して、中負荷および高負荷において車両のみに動力を提供するように適合されている。特定の実装形態において、電子制御部は、電気モータを作動させて車両を始動させ、低負荷において車両のみに動力を提供する。電子制御部は、バッテリストレージの充電量が閾値を下回ったときに、電気モータを制御して発電機モードで機能させることもできる。
【0008】
特定の追加の実施形態において、ハイブリッド電気車両は、中オクタン価ガソリン燃料を含むGCIエンジンに結合された燃料供給部、およびGCIエンジンに機械的に結合され、GCIエンジンによって動力供給される発電機をさらに備える。GCIエンジンおよび電気モータは、両方とも、両方の機械的動力伝達機に結合されており、同時にまたは個別に車両に動力を提供する。特定の実装形態において、電子制御部は、中負荷走行および中負荷から高負荷への遷移時に、GCIエンジンを制御して、車両のみに動力を提供するように適合されている。また、電子制御部は、低負荷において、電気モータを作動させて車両を始動させ、車両のみに動力を提供することができ、加速を高めるために、かつ高負荷においてGCIエンジンおよび電気モータの両方を作動させて動力を同時に提供することができる。
【0009】
特定の追加の実施形態において、ハイブリッド電気車両は、低オクタン価ガソリン燃料を含むGCIエンジンに結合された燃料供給部と、GCIエンジンおよび電気モータに機械的に結合された動力分割デバイスと、動力分割デバイスに結合された発電機とをさらに備える。電子制御部は、GCIエンジンおよび電気モータの両方によって提供される動力量を制御して、車両を駆動させる。特定の実装形態において、電子制御部は、中負荷走行および中負荷から高負荷への遷移時に、GCIエンジンを制御して、車両のみに動力を提供するように適合されている。電子制御部は、加速を高めるために、かつ高負荷において、GCIエンジンおよび電気モータの両方を並列に動作させて動力を同時に提供し、バッテリストレージの充電量が閾値を下回ったときに、GCIエンジンからのエネルギーを、発電機を介してバッテリストレージを充電することに向けることもできる。また、電子制御部は、電気モータを作動させて車両を始動させ、低負荷において車両のみに動力を提供する。
【0010】
特定のさらなる実施形態において、ハイブリッド電気車両は、ガソリン燃料を含むGCIエンジンに結合された燃料供給部、およびGCIエンジンに機械的に結合され、GCIエンジンによって動力供給される発電機をさらに備える。電気モータは、機械的動力伝達機に結合されて車両に動力を提供し、電子制御部は、発電機を制御して電気モータに電力を提供するように適合されている。特定の実装形態において、ハイブリッド電気車両は、発電機の出力に結合され、かつ電気モータの入力に結合されて、整流された電気信号を電気モータに供給する整流器をさらに備える。電子制御部は、要求される電力の大きさを判定し、要求される電力の量がバッテリストレージによって提供される電力の量よりも少ない場合に、バッテリストレージから電気モータを作動させるように適合させることができる。電子制御部は、要求される電力の大きさを判定し、要求される電力の量がバッテリストレージによって提供される電力の量を超え、発電機によって提供される電力の量より少ない場合に、発電機から電気モータを作動させるように適合され得、余剰電力はすべて、バッテリストレージを充電するために使用される。加えて、電子制御部は、要求される電力の大きさを判定し、要求される電力の量が発電機によって提供される電力の量を超える場合、バッテリストレージおよび発電機の両方から電気モータを作動させるように適合され得、余剰電力はすべて、バッテリストレージの充電に使用される。さらに、電子制御部は、バッテリストレージの充電の大きさを判定し、判定された充電の大きさが閾値を下回った場合に発電機を制御してバッテリストレージを再充電するように適合され得る。
【0011】
本発明の実施形態により、内燃機関エンジンおよび電気モータを含むハイブリッド電気車両を作動させる方法も提供する。本方法は、車両にガソリン燃料を供給することと、車両にバッテリストレージを供給することと、ガソリン圧縮着火(GCI)モードで内燃機関エンジンを作動させてガソリン燃料を自着火させることと、電気モータを機械的動力伝達機に結合して車両に動力を提供することと、内燃機関エンジンの出力を、機械的動力伝達機および発電機の少なくとも一方を駆動させることに向けることと、を含む。
【0012】
特定の実施形態において、本方法は、電気モータおよび内燃機関エンジンを配置して、車両に並列に動力供給することができることをさらに含む。
【0013】
追加的または代替的に、本方法は、内燃機関エンジンに結合された発電機を提供することをさらに含み得、内燃機関エンジンは、発電機に動力供給して、バッテリストレージを再充電し、電気モータに追加の電力を提供し得る。
【0014】
特定の実施形態において、本方法は、内燃機関エンジン、発電機、および電気モータを直列に配置することをさらに含む。
【0015】
特定の代替的な実施形態において、本方法は、内燃機関エンジンおよび電気モータを動力分割デバイスに結合することをさらに含む。
【0016】
これらおよび他の態様、特徴、および利点は、本発明の特定の実施形態の以下の説明、ならびに添付の図面および特許請求の範囲から理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】GCIエンジンの作動ゾーンを示す負荷/速度グラフである。
【
図2】本発明の一実施形態による、GCIエンジンを用いる「基本」並列HEV構成の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、GCIエンジンを用いる完全並列HEV構成の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、GCIエンジンを用いる動力分割HEV構成の概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるGCIエンジンを用いる直列HEV構成の概略図である。
【
図6】
図6Aは、
図2に示す基本並列HEV構成においてGCIエンジン(内燃機関)を利用するための最適状態を示す概略的な負荷/速度グラフであり、
図6Bは、
図3に示す完全並列HEV構成においてGCIエンジン(内燃機関)を利用するための最適状態を示す概略的な負荷/速度グラフであり、
図6Cは、
図4に示す動力分割HEV構成においてGCIエンジン(内燃機関)を利用するための最適状態を示す概略的な負荷/速度グラフであり、
図6Dは、
図5に示す直列HEV構成においてGCIエンジン(内燃機関)を利用するための最適状態を示す概略的な負荷/速度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、圧縮着火を介して標準的な無鉛ガソリンを自着火するように適合された内燃機関エンジン(以下、GCIエンジンと称される)に電気モータを組み合わせたハイブリッド電気車両を開示する。GCIエンジンは、GCIエンジンの利点が最大化され得る状態で作動され、一方、電気モータは、GCIエンジン単独の作動が最適ではない状態下において、GCIエンジンの代わりに、またはGCIエンジンの補足として作動され得る。GCIハイブリッドパワートレインは、GCIエンジンが、希釈され部分的に予混合された状態下で作動することによって、窒素酸化物(NOx)および粒子状物質(PM)の両方の排出量を大幅に削減し得るため、排出量プロファイルが大幅に改善され、最先端のディーゼルハイブリッドパワートレインよりも高い燃料効率をより低コストで達成し得る。
【0019】
ガソリン圧縮着火
ガソリンは、ディーゼル燃料と比較して、長い着火遅延を有する。これにより、ガソリンを圧縮行程の後半に高い燃料圧力(100~500バール)および高温で噴射して、混合され層状化された燃料/空気充填(すなわち、空気に対する燃料の供給量がより高い局所領域とより低い局所領域とを有する燃料/空気混合物)を得ることが可能になる。
【0020】
GCI工程において、圧縮行程の後半に中央に取り付けられたピストンボウルに高圧で燃料が噴射され、吸気行程中には燃料は噴射されない。混合気は、制御された熱放出工程において自着火する。噴射が遅いため、エンジンノッキングを誘発する末端ガスはほとんど残っていない。さらに、冷却された排気ガス再循環(EGR)を再循環させることにより、混合気が希釈され、これにより、着火遅延期間が長くなり、燃焼温度が低下する。温度が低下することにより、NOxおよび排出生成物が減少し、熱伝達損失も減少する。
【0021】
より具体的には、これらの優れた結果を達成するために、燃料噴射工程の正確な電子制御が提供される。燃料は、いくつかの別個の噴射イベントで噴射され、燃焼室内で制御された混合気の層状化を生成する。燃焼室内の燃料の層状化は、自着火が生じるタイミングおよびその進行速度を左右する。エンジン回転数および負荷に応じて、単一噴射、二重噴射、および燃料量を変化させる他の様々な多重噴射方法を使用し得る。噴射開始タイミングおよび噴射イベントごとに噴射される燃料の量を設定し、それによって混合気の層状化を行うことにより、制御された燃焼火炎面の境界を超える混合気の有害な燃焼が排除され、エンジンノッキングを防止することができる。さらに、最小限の燃料消費で低NOxおよび低PM排出量を達成するために、噴射のタイミングおよび量は、他のエンジン作動パラメータと連係して、速度-負荷-温度マップの範囲にわたって可変的に制御され得る。一般に、GCI工程において、自着火温度に達する前に燃料が十分に混合され、その結果、燃焼工程は、拡散または混合ではなく燃料の反応度によって制御される。燃焼温度および燃料/空気供給量を正確に制御することにより、NOxの形成を回避するのに十分な低温での自着火と、PM排出を回避するのに十分な希薄混合気を可能にするが、これらは両方とも、混合気の拡散に依存する燃焼パラメータでは回避が困難である。要約すると、GCIの作動は、効率および排出量を最適化するために、現在のエンジン状態に基づく着火イベントの電子制御に依拠する。
【0022】
GCIエンジンの作動方法をマッピングすると、一般に、
図1に示すように、負荷/速度グラフ上の4つの異なるゾーンに分類され得る。高負荷かつ高速度を対象とするゾーンIは、拡散燃焼ゾーンと称される。拡散燃焼ゾーンで発生する燃焼は、従来のディーゼルCI燃焼と同様であり、短い予混合燃焼段階および長い拡散制御燃焼段階を含む。拡散燃焼ゾーンにおいては、GCIの作動は、排出量および効率の点で、従来のディーゼルCIエンジンの利益に比べてほとんど利点がない。
【0023】
図1の第2のゾーンであるゾーンIIは、部分予混合燃焼ゾーンと称される。中程度のエンジン負荷ですべてのエンジン回転数を対象とするこのゾーンにおいては、GCI作動の利点を得て、高効率を維持しながら排出量を削減し得る。
図1の例示におけるこのゾーンのサイズ、およびゾーンIIの上限は、低反応度(高RON)燃料を使用して増大させることができ、下限は、低反応度燃料を使用して低下させることができる。
【0024】
図1の第3のゾーンであるゾーンIIIは、高騒音燃焼ゾーンと称され得る。エンジン回転数が低く、エンジン負荷が中~高のこのゾーンにおいては、GCI燃焼の前半が希薄化する傾向があり、エンジンノッキング(騒音)のリスクが高くなる。低速での騒音の制御は、高速での制御よりも困難である。加えて、エンジン回転数が低いほど乱流レベルが低くなるため、噴射圧力を下げて燃焼騒音を軽減する能力が、粒子状物質の排出への影響によって妨げられる。
【0025】
過混合燃焼と称され得るゾーンIVは、低負荷状態を対象とする。このような状態になるには、GCIの作動とタイミングイベントが、燃料および空気の過剰混合をもたらす。過剰混合により、完全に燃焼できない非常に希薄な混合気の局所的なポケットが形成されるため、HCおよびCOの排出量は、従来のディーゼル燃焼よりも高くなる傾向がある。
【0026】
ここで、上記のGCIエンジンの特性を考慮して、GCI作動を用いたハイブリッド電気構成について説明する。
【0027】
並列GCI/電気ハイブリッド
様々な並列または動力分割ハイブリッド構成は、様々な燃料を用いて、最小のコストでICE性能を最大化し得る。特定のGCIエンジンに応じて、およびGCIエンジンで使用されるガソリン燃料の様々な自着火品質の品質に従って、様々な構成を選択し得る。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態によるGCIエンジンを用いる「基本」並列ハイブリッド車両100の概略図である。車両100は、燃料を受け取るための燃料供給部110および差動ギアボックス115に結合されたGCIエンジン(ICE)105を含む動力を供給するための第1の経路を備える。GCIピストン内の燃焼は、ギアボックス115のギアに結合された動力伝達機112を駆動する。ギアボックス115内のギアは、一組の車両車輪125が取り付けられている車輪軸120に結合されている。また、車両100は、発電機としても機能し得る電気モータ130を含む動力を供給するための第2の経路を備える。電気モータ130は、バッテリストレージ135によってモータに送達される電気エネルギーの量を調節するように適合されたパワーエレクトロニクスモジュール140を介してバッテリストレージ135に結合されている。電気モータは、GCIエンジン105、および、別の経路を介して、差動ギアボックス115に直接結合されている(両方の結合は、図示されるように中間クラッチを介し得る)。
【0029】
電子制御部(ECU)150は、1つ以上のプロセッサおよび特定用途向け回路を備え得、GCIエンジン105および電気モータ130に通信可能に結合されて、エンジンおよびモータの両方の作動を統御するための制御信号を送信する。また、ECU150は、例えば、エンジン負荷、エンジン回転数、混合気、圧力、および温度を含む現状に関する情報を提供する1つ以上のセンサ要素(図示せず)から信号を受信する。
図6A~
図6Dは、本明細書に記載の
図2、
図3、
図4、および
図5に示されるハイブリッドエンジンの実施形態においてGCIエンジン(内燃機関)を利用するための最適状態を示す概略的な負荷/速度グラフである。様々な実施形態において、ECU150は、現在の負荷/速度状態から、GIエンジンを始動するべきか、および/またはモータに動力を提供するために動力伝達機に結合するべきかどうかを判定することができるように構成されている。いくつかの実装形態において、ECUは、そのような状態に対応した参照テーブルを含み得、特定のハイブリッド車両の実施形態に適合した値を含んでいる。例えば、
図6Aの概略的な負荷/速度グラフにおいて、「X」マークは、
図2のハイブリッド車両の実施形態においてGCIエンジンが作動されことになる負荷および速度の組み合わせを表している。参照テーブルを実装して「X」値を示し得、制御アルゴリズムを実装して、車両の負荷および速度の現在の値を取得し、現在の値を参照テーブルと比較し得る。代替的に、参照テーブルの代わりに、制御アルゴリズムは、燃料パラメータを組み込んだ動的モデルに基づいて「X」値をリアルタイムで判定し得る動的方程式を用いることができる。動的モデルの組み込みは、静的参照値を修正する必要がある特定の実施形態、例えば、燃料のオクタン価が高と中の境界線に近づくときなどに、より好適であり得る。すべての実施形態において、ECUは、車両の実施形態、および車両の実施形態が特に適合する対応する燃料タイプに適したデータおよび命令を使用して構成される。
【0030】
図2の並列HEV構成は、最も広く市販され、公的に入手可能なガソリンである高オクタン価燃料(すなわち、85を超えるオクタン価(RON)を有する)での使用に特に適している。(
図1の)ゾーンIIの負荷/速度状態の下では、この構成における高オクタン価燃料でのGCI作動は、GCI燃焼モード(グリーンゾーン)でのCO
2、NOx、およびPM排出量を著しく低減する。ゾーンII以外の他の負荷/速度状態の下では、ハイブリッド化は、低効率領域における作動をサポートすることによって効率改善を可能にする。言い換えれば、GCIエンジン105は、中~高負荷において差動ギアを駆動するために用いられ得、一方、電気モータ130は、低負荷においてギアを駆動するために用いられ得る。述べたように、
図6Aは、GCIエンジンが高オクタン価燃料を使用して作動する負荷/速度グラフの領域を示している。ECU150は、負荷/速度状態を判定し、それに応じてエンジンとモータとの作動を切り替えさせるように適合されている。
【0031】
いくつかの実装形態において、ハイブリッド車両100は、以下のモードで作動され得る。a)電気モータ130を使用して、静止状態から始動し、および/または低負荷状態の下で車両のギアを最大に駆動し得る、電気車両モード。b)GCIエンジン105が中負荷および高負荷において最大動力を提供するICEモード。c)バッテリストレージレベルが選択された閾値未満に低下したことが検出されたときにGCIエンジンが車両に動力を供給する、EM発電を伴うICEモード。この場合、電気モータ130を発電モードに切り替え得、GCIエンジン105を使用して、バッテリストレージ135を充電し得る。d)好適な場合、回生制動が中程度の制動および機械的制動に最大に使用され得る、制動モード。
【0032】
電気モータ130は、より低い電力仕様を有し得、例えば、約20kW~約40kWの電力範囲を有するモータを使用し得、補助発電機は必要とされない。いくつかの実装形態において、滑らかさおよび駆動応答性を改善し、ならびに燃料消費を低減するために、ギアボックス115を無段変速機(CVT)モードで作動させることが好ましい場合がある。また、バッテリストレージ135の電圧容量は比較的低く、例えば、約0.6~約2.0キロワット時(kWh)の範囲であり得る。モータおよびバッテリストレージの低電力定格はコストを抑えるのに役立ち、
図2に示すハイブリッドの実施形態の単純さと費用対効果は、高オクタン価市場のガソリン燃料用途のGCIエンジンに非常に好適である。
【0033】
完全並列GCI/電気ハイブリッド
ここで
図3を参照すると、本発明の別の実施形態によるGCIエンジンを用いる完全並列ハイブリッド電気車両200の概略図が示されている。車両200は、燃料を受け取るための燃料供給部210およびクラッチを介して機械的動力伝達機212に結合されたGCIエンジン(ICE)205を含む動力を供給するための第1の経路を備える。機械的動力伝達機は、差動ギアボックス215に結合されている。ギアボックス115内のギアは、一組の車両車輪225が取り付けられている車輪軸220に結合されている。また、車両200は、これも動力伝達機212に結合されている電気モータ230を含む、動力を提供するための第2の経路を備える。電気モータ230は、バッテリストレージ235によって電気モータに提供される電圧および電流を調整するように適合された第1の電力制御部240を介してバッテリストレージ235に結合されている。別個の発電機250が結合されて、GCIエンジン205から動力を受け取り、電力を生成する。発電機によって供給される電力は、第1の電力制御部に電気的に結合された第2の電力制御部255を介して送達される。この配置により、電気モータに電力を提供するための独立した経路が存在し、その結果、バッテリストレージが閾値を下回った場合、または他の理由により、発電機250から電気モータに電力が供給され得る。電子制御部(ECU)260は、1つ以上のプロセッサおよび特定用途向け回路を備え得、GCIエンジン205および電気モータ1230に通信可能に結合されて、エンジンおよびモータの両方の作動を統御するための制御信号を送信する。また、ECU260は、例えば、エンジン負荷、エンジン回転数、混合気、圧力、および温度を含む現状に関する情報を提供する1つ以上のセンサ要素(図示せず)から信号を受信する。
【0034】
完全並列HEVは、例えば、約1.0kWh~約5.0kWhの範囲である、
図2の基本並列HEVと比較して、より強力な電気モータおよびより大きなバッテリサイズを利用する。無段変速機(CVT)による監視制御を提供することが好ましい。
【0035】
図3の完全並列HEV構成は、GCIエンジンおよび電気モータが同時に車両に動力供給し得るという点で、
図2の構成とは異なる。この場合も、
図2の実施形態と比較して、
図3の実施形態は、中オクタン価燃料(すなわち、60~85のより大きいオクタン価(RON)を有する)での使用に特に適している。中オクタン価燃料では、軽負荷での失火または部分燃焼のリスクが大幅に軽減されるが、過度の圧力上昇率は課題である。
図6Bは、GCIエンジンが中オクタン価燃料を使用して作動している場合の負荷/速度グラフの領域を示している。
【0036】
一般に、始動速度(0RPM)で電気モータが利用可能なトルクは、モータが生成し得る最大レベルである。高レベルの瞬間トルクを提供する電気モータのこの特性は、GCエンジンの立ち上げ中に電気モータから追加トルクを指令して、始動および加速を改善することによって利用される。これにより、完全並列ハイブリッドは、加速性能において、低効率領域におけるGCエンジンのサポートを通じて効率改善を可能にする。
【0037】
いくつかの実装形態において、ハイブリッド車両200は、以下のモードで作動され得る。a)電気モータ230が、始動時および低負荷状態での作動中に使用され得る、電気車両モード。b)中負荷走行および中負荷から高負荷への遷移中に使用されるICE単独モード。c)急加速を提供するためのICE/電気モータ併用モード。非常に高い負荷状態下で、GCIエンジン205は、発電機250を介して追加の電力を供給して、バッテリストレージ235によって供給される電力を補足する。d)GCIエンジン205および電気モータ230の両方が動力を供給するが、バッテリストレージが変化して選択された閾値を下回る場合、GCIエンジンは発電機250に動力供給して、電力制御ユニット240、255を介してバッテリストレージ235を再充電する、ICE+電気モータ充電モード。f)好適な場合、回生制動が中程度の制動および機械的制動に完全に使用され得る、回生制動モード。
【0038】
動力分割GCI/電気ハイブリッド
ここで
図4を参照すると、本発明の実施形態によるGCIエンジンを用いる動力分割ハイブリッド電気車両300の概略図が示されている。車両300は、燃料を受け取るための燃料供給部310に結合されたGCIエンジン305を備える。また、GCIは、GCIエンジン305と電気モータとの動力の分割を制御するように適合された動力分割デバイス315に結合されている。今度は、動力分割デバイス315が、発電機320におよび機械的動力伝達機325に結合されている。動力分割デバイス315は、変速を必要とせずに継続的に係合される遊星ギアセットを使用する無段変速機(CVT)を提供する。この実施形態において、GCIエンジン305の速度を変更することは、必ずしも車両の速度に直接影響を与えるとは限らない。GCIエンジンは、必要とされる電力量に応じてより高速またはより低速で作動し得、抵抗または電気モータからの助力のいずれかを用いて、車両は、GCIエンジンを最適な効率範囲内で作動させながら、所望の速度を達成し得る。機械的動力伝達機325は、一組の車両車輪335が取り付けられている車輪軸330に動作可能に直接結合されている。したがって、GCIエンジン305から車輪335への直接の機械的経路が存在し、これは、差動ギアボックスによって仲介されていない。この直接的な機械的結合は、走行中などの安定した作動状態において非常に効率的である。
【0039】
動力分割デバイス315は、発電機320を介して電気モータ340に結合されている。また、発電機320は、インバータ355に電気的に結合され、インバータ355は、今度は、バッテリストレージ360および電気モータ340に電気的に結合されている。また、電気モータ350は、機械的動力伝達機325に電気機械的に接続されている。ECU370は、GCIエンジン305、電気モータ340、および動力分割デバイス315に結合され、例えば、エンジン負荷、エンジン回転数、混合気、圧力、および温度を含む現状に関する情報を提供する1つ以上のセンサ要素(図示せず)から信号を受信する。
【0040】
図4の動力分割HEV構成は、低オクタン価ガソリン状燃料(40~60のオクタン価(RON)を有する)での使用に特に適合する。しかしながら、低オクタン価燃料は、自着火の閾値が低く、
図6Cに示される広い拡散ゾーンでのディーゼル燃焼と同様の特性を有し、標準的なディーゼルエンジンに比べてほとんど利益がない。より高負荷とより低速に偏った予混合ゾーン(マーキングがICEを用いるのに最適な状態を示している)の部分においてGCIエンジンを作動させることには利益がある。動力分割構成は、並列構成および直列構成の特定の利点を組み合わせることが意図されている(後者については、
図5に関して以下で考察される)。利点の1つは、並列HEV構成とは異なり、GCIエンジンは車両の速度とは独立して作動され得るため、バッテリの充電または動力の供給に常に使用され得ることである。
図3に示される完全並列構成と比較して、
図4の動力分割HEV構成は、ICEが直接車輪に動力供給し得るので、より小型で、より出力の小さい駆動電気モータを用いることができる。発電機および動力分割デバイスを追加することにより、ある程度のコストおよび複雑さをパワートレインに加える。
【0041】
いくつかの実装形態において、ハイブリッド車両300は、以下のモードで作動され得る。a)電気モータ340を使用して、低負荷状態において車両を始動させ走行させる電気モード。b)GCIエンジン305が車輪に直接動力供給する、中負荷走行および中負荷から高負荷への遷移時に始動されるICE単独モード。c)GCIエンジン305が電気モータと並行して車両に動力供給し、非常に高負荷状態の下でも急加速が要求される、ICE+電気モータモード。d)GCIエンジン305が車両に動力供給し、バッテリストレージの充電量が選択された閾値を下回ると、GCIエンジンが発電機320に動力供給して、インバータ355を介してバッテリストレージ360を充電する、ICE +発電モード。このモードにおいて、電気モータ340は、発電機として作動する場合もあり、または電力を供給しない場合もある。e)回生制動が中程度の制動および機械的制動に完全に使用され得る制動モード。
【0042】
直列GCI/電気ハイブリッド
図5は、本発明の実施形態によるGCIエンジンを用いる直列ハイブリッド電気車両400の概略図である。車両400は、燃料を受け取るための燃料供給部410に結合されたGCIエンジン405を備える。GCIエンジン405は、発電機420に動力を提供する。発電機420からの電力は、整流器425を介して送給され、次いで、電気モータ430に供給される。電気モータ430は、車輪軸440およびそれに取り付けられた一組の車輪445に結合された機械的動力伝達機435を駆動する。また、電気モータは、インバータ455を介してバッテリストレージ450に結合されている。さらに、整流器425はまた、バッテリストレージ450に結合され、発電機420によって提供される電力を使用してバッテリストレージを充電または再充電し得る。発電機からの受信電力はまた結合される。ECU460は、GCIエンジン405および電気モータ460に動作可能に結合される。また、ECU460は、例えば、エンジン負荷、エンジン回転数、混合気、圧力、および温度を含む現状に関する情報を提供する1つ以上のセンサ要素(図示せず)から信号を受信する。
【0043】
図5に示される直列構成において、GCIエンジンは、特定の作動点で、車両の範囲を拡張するために使用される。
図6Dの例示的なグラフに示されるように、作動点は、一般的には、予混合ゾーンにおける特定の状態である。火花着火(SI)エンジンと比較して、GCIエンジンを用いる直列構成は、あらゆるレベルのオクタン価ガソリン状燃料でより効率的である。さらに、直列ハイブリッド構成には、燃料消費量および排出量、ならびにエンジン作動状態の柔軟性および簡素化された制御方法の点でいくつかの利点を有する。例えば、直列ハイブリッド構成は、ガソリンのようなクリーンな燃料と圧縮着火などの高効率の熱力学的サイクルを組み合わせることによって、クリーンでかつ高効率のパワートレインを創出することができるため、GCI作動に特に好適であり得る。加えて、直列ハイブリッド構成は、伝達損失を回避するために一部の機械的連結を排除する。しかしながら、直列ハイブリッド構成は、エネルギーが機械的形態と電気的形態とで(および、その逆に)変換される高周波の欠点も抱えており、構成部品の摩耗および摩擦損失が付随する。
【0044】
いくつかの実装形態において、ハイブリッド車両400は、以下のモードで作動され得る。a)要求される電力がバッテリストレージによって提供される利用可能な電力以下であると判定された場合に、モータ430がバッテリストレージ450から作動される、電気単独モード。b)要求された電力が利用可能なバッテリ電力と発電機電力の間にある場合に使用される、ICE発電+電気モータモード。電力は、GCIエンジンによって作動される発電機によって提供され、余剰電力は、発電モードにおいて、電気モータによって使用され、バッテリストレージ450を充電する。c)要求された電力が発電機420によって供給される電力よりも大きい場合に使用される、ICE+電気モータモード。この場合、電気モータは、バッテリストレージ450および発電機420の両方によって動力供給され、余剰電力はすべて、バッテリストレージの充電に使用される。d)バッテリの充電量が最小閾値を下回った場合に使用されるICE+発電機単独モード。この場合、バッテリストレージ450は、電力が要求されても電力を供給しない。バッテリストレージ450が電池の最小充電に達すると、発電機420は、バッテリストレージが最大充電に達するまで電力を供給し続ける。e)中程度の制動および機械的制制動に完全に使用され得る、回生制動モード。
【0045】
上記の実施形態は、標準的なディーゼルハイブリッドと同等の高効率を提供し、ディーゼルおよび火花着火ハイブリッドのいずれかと比較して、CO2、NOx、および粒子状物質の排出が改善される。
【0046】
図2~
図5のそれぞれにおいて、単一の一組の車輪(車軸に取り付けられた2つの車輪を含む)が示されていることに留意されたい。これは単に説明を簡単にするためである。GCIハイブリッド電気構成は、本発明の範囲から逸脱することなく、追加の一組の車輪(例えば、全輪駆動)および/または異なる位置(例えば、後輪駆動または前輪駆動)の複数組の車輪を駆動するために使用され得る。
【0047】
本明細書に開示されたいずれの構造および機能の詳細も、システムおよび方法を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、当業者に、方法を実施するための1つ以上の方法を教示するための代表的な実施形態および/または構成として提供されることを理解されたい。
【0048】
図面中の類似の数字が、いくつかの図を通して類似の要素を表すこと、ならびに図に関連して説明および図示された構成要素および/またはステップのすべてが、すべての実施形態または構成に必要とされるわけではないことをさらに理解されたい。
【0049】
本明細書で使用する用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別のことを示している場合を除き、複数形も含むものと意図する。さらに、本明細書で使用するとき、「備える」および/または「備えている」という用語は、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0050】
配向に関する用語は、本明細書では単に慣例および参照の目的で使用され、限定するものとして解釈されるべきではない。しかしながら、これらの用語が、見る人を基準にして使用される可能性があることが認識される。したがって、制限が示唆されることも、推測されることもない。
【0051】
また、本明細書で使用する表現および用語は、説明の目的のためであり、限定するものとみなすべきではない。本明細書内の「含む」、「備える」、または「有する」、「包含する」、「伴う」、およびこれらの変形の使用は、それ以降に列挙された項目およびその等価物、ならびに追加項目を包含することを意味する。
【0052】
本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更を行うことができ、均等物を実施形態の要素の代わりに用いることができることを理解されよう。さらに、当業者であれば、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の機器、状況、または材料を本発明の教示に適応させるための多くの修正を理解するであろう。したがって、本発明は、本発明を実施するために想到される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されるべきではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に収まるすべての実施形態を含むことが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2020-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電気車両であって、
一組の車輪と、
前記一組の車輪にトルクを提供するように適合された機械的動力伝達機と、
前記機械的動力伝達機に結合され、前記機械的動力伝達機に動力を提供する電気モータと、
前記電気モータに結合され、前記電気モータに電力を供給するバッテリストレージと、
前記機械的動力伝達機および前記電気モータの少なくとも一方に結合され、前記機械的動力伝達機への機械的エネルギーおよび前記電気モータを作動させるためのエネルギーを提供する、ガソリン圧縮着火(GCI)エンジンと、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに結合され、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの作動を制御するように適合された電子制御部と、を備える、ハイブリッド電気車両。
【請求項2】
前記GCIエンジンおよび前記電気モータに機械的に結合された動力分割デバイスと、
前記動力分割デバイスに結合された発電機と、をさらに備え、
前記電子制御部が、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの両方によって提供される動力の量を制御して、車両を駆動させる、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項3】
前記電子制御部が、
中負荷走行において、前記GCIエンジンを制御して、前記車両のみに動力を提供するように適合されている、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項4】
前記電子制御部が、加速を高めるために、かつ高負荷において、前記GCIエンジンおよび前記電気モータの両方を並列に作動させて、同時に動力を提供する、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項5】
前記電子制御部が、前記バッテリストレージの充電量が閾値を下回ったときに、GCIエンジンからのエネルギーを、前記発電機を介して前記バッテリストレージを充電することに向ける、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項6】
前記電子制御部が、低負荷において、前記電気モータを作動させて、前記車両を始動させ、
車両のみに動力を提供する、請求項2に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項7】
ガソリン燃料を
供給するために前記GCIエンジンに結合された燃料供給カップリングと、
前記GCIエンジンに機械的に結合され、前記GCIエンジンによって動力供給される発電機と、をさらに備え、
前記電気モータが、前記機械的動力伝達機に結合され前記車両に動力を提供し、前記電子制御部が、前記発電機を制御して前記電気モータに電力を提供するように適合されている、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項8】
前記発電機の出力に結合され、かつ前記電気モータの入力に結合されて、整流された電気信号を前記電気モータに供給する整流器をさらに備える、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項9】
前記電子制御部が、要求された電力の大きさを判定し、前記要求された
電力の量が、バッテリストレージによって提供される電力の量よりも少ない場合に、前記バッテリストレージから前記電気モータを作動させるように適合されている、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項10】
前記電子制御部が、要求された電力の大きさを判定し、
要求された電力の量が前記バッテリストレージによって提供される
電力の量を超え、前記発電機によって提供される
電力の量よりも少ない場合に、前記発電機から前記電気モータを作動させるように適合され、すべての余剰電力が前記バッテリストレージの充電に使用される、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項11】
前記電子制御部が、要求された電力の大きさを判定し、
要求された電力の量が前記発電機によって提供される
電力の量を超える場合に、前記バッテリストレージおよび前記発電機の両方から前記電気モータを作動させるように適合され、すべての余剰電力が前記バッテリストレージを充電するために使用される、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項12】
前記電子制御部が、前記バッテリストレージにおける充電の大きさを判定し、前記判定された充電の大きさが閾値を下回る場合に、前記発電機を制御して前記バッテリストレージを再充電するように適合されている、請求項7に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項13】
前記GCIエンジンが、前記機械的動力伝達機および前記電気モータの両方に結合され、前記電子制御部が、約65ニュートンメートルのトルクを超える負荷において、前記GCIエンジンを制御して前記車両のみに動力を提供するように適合されている、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項14】
前記電子制御部が、約65ニュートンメートルの
トルク下の低負荷において、前記電気モータを作動させて前記車両を始動させ、前記車両のみに動力を提供する、請求項13に記載の
ハイブリッド車両。
【請求項15】
前記電子制御部が、前記バッテリストレージの充電量が閾値を下回ったときに、前記電気モータを制御して発電機モードで機能させる、請求項13に記載の
ハイブリッド車両。
【請求項16】
ハイブリッド電気車両であって、
前記GCIエンジンに機械的に結合され、前記GCIエンジンによって動力供給される発電機
をさらに備え、
前記GCIエンジンおよび前記電気モータが、両方とも、両方の前記機械的動力伝達機に結合されて、同時にまたは個別に前記車両に動力を提供する、請求項1に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項17】
前記GCIエンジンおよび前記電気モータが、両方とも、両方の前記機械的動力伝達機に結合されて、前記車両に動力を同時に提供し、前記電子制御部が、負荷需要と現在の車両速度に基づいて、前記GCIエンジンおよび前記電気モータによってそれぞれ提供される
動力の比率を設定する、請求項5に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項18】
前記GCIエンジンおよび前記電気モータが、両方とも、両方の機械的動力伝達機に結合されて、前記車両に個別に動力を提供する、請求項5に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項19】
前記電子制御部が、
中負荷走行において、前記GCIエンジンを制御して、前記車両のみに動力を提供するように適合されている、請求項16に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項20】
前記電子制御部が、
低負荷において、前記電気モータを作動させて前記車両を
始動し、前記車両のみに動力を提供する、請求項16に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項21】
前記電子制御部が、加速を高めるために、かつ
高負荷において、前記GCIエンジンおよび
前記電気モータの両方を作動させて、同時に動力を提供する、請求項16に記載のハイブリッド電気車両。
【請求項22】
内燃機関エンジンおよび
電気モータを含むハイブリッド電気車両を作動させる方法であって、前記車両は、ガソリン燃料およびバッテリストレージの両方を有し、前記方法は、
前記内燃機関エンジンをガソリン圧縮着火(GCI)モードで作動させて、前記ガソリン燃料を自着火させることと、
前記電気モータを機械的動力伝達機に結合して、前記車両に動力を提供することと、
前記内燃機関エンジンの出力を、機械的動力伝達機および発電機の少なくとも一方を駆動させることに向けることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記車両に並列に動力供給することができるように前記電気モータおよび前記内燃機関エンジンを
配置することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記内燃機関エンジンに結合された発電機を提供することをさらに含み、前記内燃機関エンジンが、前記発電機に動力を提供して、前記バッテリストレージを再充電し、前記電気モータに追加の電力を提供することができる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記内燃機関エンジン、発電機、および前記電気モータを直列に配置することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記内燃機関エンジンおよび前記電気モータを動力分割デバイスに結合することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】