(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】可溶性コーヒー粉末
(51)【国際特許分類】
A23F 5/28 20060101AFI20220309BHJP
A23F 5/32 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A23F5/28
A23F5/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540403
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2020052604
(87)【国際公開番号】W WO2020161068
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】モーラ, フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】コッター, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロバスキエビッチ, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フー, シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】デュパス, ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB22
4B027FC10
4B027FE03
4B027FQ13
4B027FR04
(57)【要約】
本発明は、乾燥させたコーヒー抽出物を含む可溶性飲料粉末に関する。特に、金の外観を有する可溶性コーヒー粉末に関する。本発明の更なる態様は、飲料を調製するための粉末混合物、及び可溶性飲料粉末の製造方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥させたコーヒー抽出物を含む可溶性飲料粉末であって、金からの色差ΔEが100未満である、可溶性飲料粉末。
【請求項2】
少なくとも0.5グロスユニットの60度ジオメトリ光沢度を有する、請求項1に記載の可溶性飲料粉末。
【請求項3】
前記粉末の骨格密度が、0.7g/mL~1.4g/mLである、請求項1又は2に記載の可溶性飲料粉末。
【請求項4】
前記粉末が、少なくとも1つのプレートを含む粒子を含み、前記プレートは、0.3μm~90μmの平均厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の可溶性飲料粉末。
【請求項5】
粒子内に含まれる2つ以上のプレートが、実質的に平行である、請求項4に記載の可溶性飲料粉末。
【請求項6】
前記2つ以上の実質的に平行なプレートが、間隙によって分離されている、請求項5に記載の可溶性飲料粉末。
【請求項7】
ガラス状非晶質固体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の可溶性飲料粉末。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の可溶性飲料粉末を含む、飲料を調製するための、粉末混合物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の可溶性飲料粉末の製造方法であって、25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、前記コーヒー抽出物を乾燥させる工程と、を含む、方法。
【請求項10】
可溶性飲料粉末の製造方法であって、
i.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、
ii.前記25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を、一方向凍結によって凍結させる工程と、
iii.前記凍結させたコーヒー抽出物を、0.05mm~10mmのD
4,3粒径に粉砕する工程と、
iv.前記凍結させたコーヒー抽出物を乾燥させる工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記コーヒー抽出物を総固形分含有量25%未満で抽出する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥を真空下で行う、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記凍結を、-80℃~-30℃の温度で1時間~12時間にわたって行う、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記凍結を、平行な冷却平板の間で行う、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥させたコーヒー抽出物を含む可溶性飲料粉末に関する。特に、金の外観を有する可溶性コーヒー粉末に関する。本発明の更なる態様は、飲料を調製するための粉末混合物、及び可溶性飲料粉末の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、可溶性コーヒーの製造業者は、焙煎して挽いたコーヒーと比較したときの可溶性コーヒーの受容が向上するよう追求してきた。可溶性コーヒーの風味とアロマとを最適化するために多くの努力が払われ、いくつもの技術的進歩が達成されたことにより、今日では複数種の可溶性コーヒーが高級製品として市販されている。高級製品は、消費者により、上質なものとして、特にラグジュアリなものであるとしてみなされる製品である。
【0003】
しかし、可溶性コーヒーの外観に関しては進歩が遅れている。高級な外観を有する可溶性コーヒーに、例えば高級な味とアロマとを付随させ、ビジュアルアイデンティティの観点から消費者体験を向上させることができる技術が、必要とされている。多くの国々では、規制により、ピュアな可溶性コーヒーはコーヒーのみから構成されることが要件とされる。これにより、例えば着色顔料を含めることが許されないことから、新規で魅力的な外観をもたらすことが困難になる。
【0004】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを目的としている。
[発明の概要]
【0005】
本発明の目的は、最先端技術を改良すること、及び技術的解決策を改良し、可溶性飲料粉末に高級な外観をもたらすことである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開するものである。
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は、乾燥させたコーヒー抽出物を含む可溶性飲料粉末であって、金からの色差ΔEが100未満である、可溶性飲料粉末を提供する。第2の態様では、本発明は、第1の態様の可溶性飲料粉末を含む、飲料を調製するための、粉末混合物に関する。本発明の第3の態様は、第1の態様の可溶性飲料粉末の製造方法であって、25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、コーヒー抽出物を乾燥させる工程と、を含む、方法に関する。本発明のまた更に別の態様は、可溶性飲料粉末の製造方法であって、
i.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、
ii.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を、一方向凍結によって凍結させる工程と、
iii.凍結させたコーヒー抽出物を、0.05mm~10mmのD4,3粒径に粉砕する工程と、
iv.凍結させたコーヒー抽出物を乾燥させる工程と、を含む、方法である。
【0007】
驚くべきことに、貴金属である金の外観を有する可溶性コーヒー飲料粉末を製造するよう、コーヒー抽出物を乾燥させることができることが、本発明者らによって見出された。金は、歴史の中で富と贅沢とに関係してきた。金は、金の色相及び磨かれた金属の鏡面反射特性の両方を有する、特有の外観を有する。本発明者らは、驚くべきことに、乾燥させたコーヒーからなるプレートを、分離された平行な層を構成するものとして形成するのに望ましい方法において、コーヒー抽出物を乾燥させることにより、特にコーヒー抽出物を低い総固形分含有量から乾燥させたときに、金の外観を有する可溶性飲料粉末が得られることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に従って調製した可溶性飲料粉末の走査型電子顕微鏡画像を示す。乾燥前のコーヒー抽出物の総固形分含有量(TC)は10%(Fig1a)、15%(Fig1b)、20%(Fig1c)及び40%(Fig1d)であった。白色のスケールバーは、左側の画像では500μm、右側の画像では100μmを表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
したがって、本発明は、一部では、乾燥させたコーヒー抽出物を含む可溶性飲料粉末であって、金からの色差ΔEが100未満、例えば95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、又は85である、可溶性飲料粉末に関する。
【0010】
CIE1976 L*a*b*(以下CIELAB)のカラースケールは、国際照明委員会(CIE)により提案された色測定の1つの方法である[CIE Technical Report,Colorimetry 2nd Edition,CIE 15.2-1986,corrected reprint 1996]。CIELAB色空間は、量L*、a*、b*を直交座標にプロットすることで作成される。オブジェクトのL*座標は、0(黒)から100(完全な白)のスケールで測定される輝度の強さである。a*及びb*座標は、特定の数値による制限を有しない。パラメータa*は純粋な緑(マイナスa*)から純粋な赤(プラスa*)に伸び、一方で、b*は純粋な青(マイナスb*)から純粋な黄(プラスb*)に伸びる。CIELAB色空間では、色差は、2つの試料のL*、a*及びb*の値の差を考慮して単一の値として計算され得る。
【0011】
色差ρEは、以下のように計算される。
【0012】
【0013】
本発明の文脈において、金の色は、CIELAB値、L*=86.9、=a*-1.9、b*=87.1を有すると考える。これは、金の16進法カラーコード#ffd700[ウェブドキュメント<encycolorpedia.com/ffd700>、2019年1月30日にアクセス]に相当する。したがって、金からのρEは、L*、a*、及びb*の測定値から以下のように計算される。
【0014】
【0015】
色測定は、市販の測色計、例えば、光源/オブザーバ設定D65/45°±2°を使用するHunterLab Colorflex(CX1051)装置などによって、鏡面反射を除いて行うことができる。
【0016】
乾燥させたコーヒー抽出物は残留水分を含んでいることがあり、例えば、乾燥させたコーヒー抽出物は、5重量%未満の水、例えば4重量%未満の水を含んでいることがある。
【0017】
磨かれた金属は、入射光を単一の出射方向に反射する、鏡面反射を示す。鏡面反射は、場合により光沢と呼ばれる。本発明の一態様は、鏡面反射を有し、例えば、少なくとも0.5グロスユニットの60度ジオメトリ光沢度を有する、可溶性飲料粉末を提供する。光沢度は、例えば、光源CIE-C及びCIEの標準オブザーバ(standard observer)を用いて測定することができる。光沢度は、例えば、化粧品粉末に適した支持体を備える、BYK Gardner Micro-Tri-Gloss Meterを使用して測定することができる。
【0018】
一実施形態では、金からの色差ΔEが100未満である本発明の可溶性飲料粉末は、少なくとも0.5グロスユニット、例えば少なくとも0.6グロスユニット、例えば0.5グロスユニット~1.7グロスユニットの60度ジオメトリ光沢度を有する。本発明は、金属の金のように、金色と鏡面反射とを合わせて有する材料を提供することが有利である。
【0019】
本発明者らは、本発明の可溶性飲料粉末を製造するために乾燥させた、様々な総固形分のコーヒー抽出物により、様々な骨格密度の粉末が得られることを見出した。骨格密度は、ひいては粉末の色に関連する。金色は、低骨格密度により得ることができる。一実施形態では、粉末の骨格密度は、0.7g/mL~1.4g/mL、例えば0.9g/mL~1.3g/mLである。粉末の嵩密度(例えば、0.4psiaでHgポロシメーターによって測定する)は、0.15g/mL~0.35g/mL、例えば、0.18g/mL~0.30g/mLである。
【0020】
本発明によると、用語「密度」は、材料の単位体積当たりの質量である。多孔質粉末の場合、3つの用語;嵩密度、骨格密度、及びタップ密度が、一般的に使用されている。測定される体積がバルク試料内の粒子間の気孔及び空隙を除くものである場合、骨格密度(真密度又は絶対密度とも呼ばれる)が得られる。嵩密度は、最大開気孔体積(特定の大きさよりも大きい、0.4psiaのHg押出圧力)の体積を差し引いた後の顆粒の単位体積当たりの単位重量として定義される。タップ密度は、容器を試料材料で満たし、それを振動させて、最適に近い充填を得ることにより得られる密度である。タップ密度は体積内の粒子間空隙を含むのに対し、見かけ密度はこれを含まない。骨格密度では、密度計算に使用する体積は、粒子間の気孔及び空隙空間の両方を除いたものである。骨格密度は、例えば、パルス励起、ヘリウム・ピクノメーター法、又は水銀ポロシメーター法によって測定することができる。
【0021】
一実施形態では、粉末は、少なくとも1つのプレートを含む粒子を含み、当該プレートは、0.3μm~90μm、例えば1μm~60μm、例えば5μm~50μmの平均厚さを有する。乾燥させたコーヒー抽出物を含むこのような厚さのプレートは、金色及び鏡面反射率をもたらすことができる構造の一例である。例えば、本発明の可溶性飲料粉末の少なくとも30重量%は、少なくとも1つのプレートを含む粒子であって、当該プレートが0.3μm~90μmの平均厚さを有する、粒子であってもよい。本発明において、用語「プレート」は、薄く平坦なシートを意味して使用される。例えば、プレートは、厚さが均一であり、平滑、平坦で、比較的薄い固形物であってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのプレートは、その平均厚さより少なくとも10倍大きい最大寸法、例えば、その平均厚さより少なくとも50倍大きい最大寸法を有する。一実施形態では、少なくとも1つのプレートは、その平均厚さより少なくとも5倍大きい最大寸法に対して、垂直な寸法を有する。一実施形態では、少なくとも1つのプレートは、4倍未満、例えば2倍未満で変化する厚さを有する。
【0022】
可溶性飲料粉末内に含まれる粒子がプレート状(又は「扁平(flaky)」)である程度は、形状測定によって測定することができる。例えば、約200個~500個の粒子の投影面積及び平均高さ(厚さ)は、それらがそれらのxy平面上に自然に立つ(すなわち、それらの2つの最大寸法に沿う)測定台の上に手で分散して、測定することができる。好適な測定装置は、Keyence VR5200 3D形状測定器である。微細粒子を除去した後、測定することができる。高さを投影面積の平方根で除算することにより、扁平度の指数が得られる。平均指数を計算し、粒子の見かけの大きさで重み付けする。一実施形態では、粉末は、0.4未満、例えば、0.35未満、更に例えば0.3未満の、粒子高さと投影面積の平方根との平均比を有する粒子を含む。
【0023】
一実施形態では、粒子内に含まれる2つ以上のプレートは、実質的に平行であり、例えば、粒子の少なくとも30重量%が、2つ以上、例えば3つ以上、例えば4つ以上、例えば5つ以上の実質的に平行なプレートを含む。本発明の文脈において、用語「実質的に平行」とは、プレートが互いに平行の10度以内にあることを意味する。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、乾燥させたコーヒー抽出物の薄い平行なプレートが、金色及び鏡面反射率の両方を効果的にもたらすと考える。薄いプレートと相互作用する光は、金色をもたらすよう幾分か選択的に吸収されるが、暗褐色の外観をもたらすほどには吸収されない。光が当たる各プレートによりある程度の鏡面反射が生じ、平行なプレートにより、1つのプレートを通り第2のプレートの表面に到達した光は、第1のプレートからの反射光とほぼ同じ角度で反射されるので、配向した鏡面光沢を作り上げる。
【0024】
一実施形態では、2つ以上の実質的に平行なプレートは、間隙、例えば空気の間隙によって分離されている。2つの実質的に平行なプレート間の間隙は、プレートの平均厚さ以上であってもよく、例えば、プレートの平均厚さよりも大きくかつプレートの平均厚さの10倍未満であってもよい。実質的に平行なプレートは、薄層構造の形態であってもよい。このような倍率未満の構造は、パフ又はフィロペストリーの薄層構造のように見える。
【0025】
間隙によって分離された2つ以上の実質的に平行なプレートは、それらの間に連結要素を有することができ、例えば、粉末粒子は、プレート間に細長い気孔を有するフォーム(foam)構造を含んでおり、プレートはこのフォームの平行な壁を形成することができる。
【0026】
一実施形態では、可溶性飲料粉末は、ガラス状非晶質固体であり、例えば20℃でガラス状非晶質固体である。ガラス状非晶質固体は、ガラス転移温度を示す。ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定によって測定することができる。可溶性飲料粉末は、結晶質材料を含まない場合があり、例えば、偏光を用いる顕微鏡で結晶が観察されない場合がある。
【0027】
本発明の別の態様は、飲料を調製するための粉末混合物であって、本発明の可溶性飲料粉末を含む、粉末混合物に関する。粉末混合物は、例えば、水に添加して加糖ミルクコーヒーを形成することができる、コーヒーと砂糖と粉乳とのブレンドであってもよい。粉末混合物は、更に例えば、本発明の可溶性飲料粉末と従来のピュアな可溶性コーヒー粉末との混合物であってもよい。
【0028】
本発明の更なる態様は、本発明の可溶性飲料粉末の製造方法であって、25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、コーヒー抽出物を乾燥させる工程と、を含む、方法を提供する。総固形分含有量は、溶液又は懸濁液中の物質の質量を指す。コーヒー溶液又は懸濁液の総固形分含有量は、元のコーヒー溶液又は懸濁液の重量/重量パーセント(w/w%)での百分率として表される、乾燥させたコーヒー残分の重量として定義される。
【0029】
本発明の更に別の態様は、可溶性飲料粉末の製造方法であって、
i.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、
ii.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を、一方向凍結によって凍結させる工程と、
iii.凍結させたコーヒー抽出物を、0.05mm~10mmのD4,3粒径に粉砕する工程と、
iv.凍結させたコーヒー抽出物(例えば、0.05mm~10mmのD4,3粒径を有する凍結したコーヒー抽出物)を乾燥させること工程と、を含む、方法を提供する。
【0030】
一方向凍結中、水は、単一の平面に沿って凝固し氷になる。これは、例えば、コーヒー抽出液の容器を単一の平坦な凍結面と接触させて配置して、凍結面に対して垂直に氷の結晶を成長させることによって行うことができ、又は、液体コーヒーを複数の平行な冷却平板間に配置して、平行な凍結面に対して垂直に結晶を成長させることによって行うことができる。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、低固形分のコーヒー抽出物の一方向凍結中に、コーヒー溶質が凍結濃縮され、平面状態凍結界面(planar freezing front)で氷結晶が形成されるにつれ、それらの間にコーヒー抽出物の薄いプレートが形成されると考える。乾燥中に氷が昇華した後、乾燥させたコーヒー抽出物の薄い平行なプレートを含む多孔質構造が得られる。
【0031】
一実施形態では、凍結を、厚板凍結機(slab freezer)を使用して行う。一実施形態では、凍結を、平行な冷却平板の間で、例えば平行平板型冷凍機を使用して行う。
【0032】
一実施形態では、凍結させたコーヒー抽出物の乾燥を、真空下で、例えば、真空下で1時間~4時間乾燥させることにより行う。
【0033】
凍結させたコーヒー抽出物の粉砕をミリングによって行い、例えば、凍結させた抽出物を、ハンマーミルを使用して最初に破砕し、次いでグラインダーを使用してすりつぶすことができる。
【0034】
一実施形態では、凍結前にコーヒー抽出物にガスを入れない(not gassed)。凍結前にコーヒー抽出物にガスが含められると、規則的な氷の結晶成長が妨害される。
【0035】
本発明のまた更なる態様は、可溶性飲料粉末の製造方法であって、25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を、-80℃~-30℃(例えば、-50℃~-30℃)の温度で1時間~12時間、凍結させる工程と、凍結させたコーヒー抽出物を、0.05mm~10mmのD4,3粒径に粉砕する工程と、凍結させたコーヒー抽出物(例えば、0.05mm~10mmのD4,3粒径を有する凍結させたコーヒー抽出物)を乾燥させる工程と、を含む、方法を提供する。
【0036】
コーヒー抽出物は、ある程度の加水分解を促進する抽出プロセスによって準備することができる。焙煎して挽いたコーヒーには、抽出の間に化学的変換、例えば加水分解が起こることがあり、例えば、高分子量多糖類が、開裂を受けて可溶化される。
【0037】
一実施形態では、焙煎して挽いたコーヒーは25%未満の総固形分含有量で抽出され、例えば、25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物の準備は、25%超の総固形分含有量を有する抽出物の希釈によることなく行うことができる。低い総固形分含有量での、例えば総固形分含有量25%未満でのコーヒーの抽出により、焙煎して挽いたコーヒーから淹れた飲料に非常に近いものを再現する(closely replicating)味とアロマとが得られる。緩慢凍結(Slow freezing)することにより、所望のアロマ化合物が更に維持される。一実施形態では、焙煎して挽いたコーヒーは、コーヒー抽出物を準備するための抽出プロセス中に加水分解しない。
【0038】
一実施形態では、コーヒー抽出物は、アラビカコーヒー(アラビアコーヒーノキ)からの抽出物である。一実施形態では、コーヒー抽出物は、ロブスタコーヒー(ロブスタコーヒーノキ)からの抽出物である。一実施形態では、コーヒー抽出物は、アラビカ(アラビアコーヒーノキ)とロブスタコーヒー(ロブスタコーヒーノキ)とのブレンドからの抽出物である。
【0039】
一実施形態では、コーヒー抽出物を濃縮後に凍結させることにより、凍結プロセスを加速する。好ましくは、コーヒー抽出物を加熱によることなく濃縮することにより、所望のアロマを可能な限り維持する。コーヒー抽出物は、膜濃縮によって濃縮することができ、例えば、焙煎して挽いたコーヒーを総固形分含有量12%未満で抽出し、次いで抽出物を総固形分含有量25%未満まで濃縮することができる。コーヒー抽出物は、凍結濃縮によっても濃縮することができ、例えば、焙煎して挽いたコーヒーを総固形分含有量12%未満で抽出し、次いで抽出物を総固形分含有量25%未満まで濃縮することができる。
一実施形態では、方法は、
i.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を準備する工程と、
ii.25%未満の総固形分含有量を有するコーヒー抽出物を、-80℃~-30℃(例えば、-50℃~-30℃)の温度で1時間~12時間、一方向凍結によって凍結させる工程と、
iii.凍結させたコーヒー抽出物を、0.05mm~10mmのD4,3粒径に粉砕する工程と、
iv.凍結させたコーヒー抽出物(例えば、0.05mm~10mmのD4,3粒径を有する凍結させたコーヒー抽出物)を乾燥させる工程と、を含む。
【0040】
D4,3、d90、及びd10の値は、粒径分布を説明する一般的な手段である。d90(場合によりD90と記述)は、試料中の粒子の90体積%がその値よりも小さい体積を有する径である。本発明の文脈では、質量によるd90は、体積によるd90と等価である。同様に、d10は、試料中の粒子の10体積%がその値よりも小さい体積を有する径である。用語「D4,3粒径」は、本発明において従来どおりに用いられており、場合により体積平均径と呼ばれる。粉末のD4,3、d90、及びd10の値は、好都合には、デジタル画像分析によって(例えばCamsizer XTを使用して)測定することができる。試料の性質に応じて粒子径分布についてのその他の測定法を使用してもよい。例えば、分散液は一般に、レーザー光散乱を使用して(例えばMastersizer Malvern3000を使用することによって)測定するのに対し、好都合にふるい分けするのに十分な粒径を有する粉末は、ふるい分けによって測定することができる。
【0041】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解されたい。特に、本発明の製品に関して記載された特徴を、本発明の方法と組み合わせることができ、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているものとして組み込める。
【0042】
本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定例から明らかである。
【実施例】
【0043】
実施例1:トレイ平板上で凍結させることによって製造したコーヒー粉末
広範囲の様々な総固形分含有量の値(5%、15%、35%、及び45%)を有するコーヒー抽出物を、-40℃に保持した矩形トレイ容器に入れた。
【0044】
抽出物を固化し(1時間~4時間)、その後、Frewittハンマーミルを使用して破砕し、2mm間隔のUrschelグラインダーを使用してすりつぶした。
【0045】
得られた凍結させた抽出物を凍結乾燥トレイに入れ、真空下で乾燥させ、温度勾配100℃→80℃→60℃→40℃で3時間乾燥させ、次いで40℃で15時間保持した。→→→総固形分含有量5%及び15%のコーヒー抽出物により、金色の輝く粉末が得られた。
【0046】
粉末の色は、HunterLab Colorflex(CX1051)装置を使用し、光源/オブザーバ設定D65/45°±2°とし、47mmの試料ホルダを使用して測定した。金からの色差ρEについては、L*、a*、及びb*の測定値(3回繰り返し)から以下のように計算した。
【0047】
【数3】
試料の鏡面反射については、化粧品粉末に適した支持体を備える、BYK Gardner Micro-Tri-Gloss Meterを使用して測定した。光沢度については、60°の入射光、CIE-C光源、及びCIE標準オブザーバを使用して測定した。計器は、100グロスユニットの光沢値が割り当てられた標準黒色タイルで較正する。測定を行うために、粉末を測定カップに入れ、その表面を平らにし、次いで光沢計を取り付け、部屋の照明が入り込まないようしっかりと取り付けられていることを確認した。この手順を各試料について6回繰り返した。
【0048】
金からの差異及び光沢についての結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
全ての試料を顕微鏡で偏光により観察したところ、結晶は観察されなかった。
【0051】
乾燥前に5%の総固形分含有量を有する試料を、Keyence製のVR5200 3D形状測定器を使用して観察した。500μm未満の粒子を除くため、粉末を測定前にふるい分けした。測定台の上に手で分散させた約200~500個の粒子の平均高さ(厚さ)を測定した。粒子は、それらのxy平面上に(すなわち、それらの2つの最大寸法に沿って)自然に立つ。高さを投影面積の平方根で除算することにより、扁平度の指数が得られる。
【0052】
【0053】
試料は、0.25のサイズ加重平均指数を有することが判明した。市販の凍結乾燥した可溶性コーヒーは、0.42の指数を有することが判明した。
【0054】
実施例2:コーヒー粉末の顕微鏡検査及び多孔率測定
可溶性コーヒー粉末を、乾燥前総固形分含有量の値10%、15%、20%、及び40%で、実施例1と同様にして製造した。総固形分含有量10%、15%、及び20%のコーヒー抽出物により、金色の輝く粉末が得られた。
【0055】
この粉末を、走査電子顕微鏡を使用して観察した。SEM画像を
図1に示す。総固形分含有量10%(Fig1a)、15%(Fig1b)、及び20%(Fig1c)のコーヒー抽出物では、薄い平行なプレートを有する「扁平状」微細構造が得られた一方で、総固形分含有量40%の抽出物(Fig1d)では、より厚い壁を有し、あまり多孔質ではない構造が得られたことを観察することができる。
【0056】
TC10%、15%、及び20%の試料に関しては水銀ポロシメーターのデータも得て、嵩密度、骨格密度、及び開気孔体積を評価した。AutoPore IV9520を構造評価に使用した(Micromeritics Inc.(Norcrose,GA,USA))。Hg圧入のための動作圧力は、0.4psia~9000psia(0.4psia~40psiaの低圧及び20psia~9000psiaの高圧のポート)であった。この圧力下での孔径は、500~0.01μmを範囲とする。様々な孔径(μm)での体積(mL/g)についてデータを報告した。
【0057】
約0.1g~0.4gの試料を正確に秤量し、針入度計(容積3.5mL、ネック又はキャピラリステム直径0.3mm、ステム容積0.5mL)に詰めた。
【0058】
針入度計を低い方の圧力ポートに挿入した後、試料を1.1psia/分で排出し、次いで0.5psiaで中間速度に、900μmHgで速い速度に切り替えた。排出目標は、60μmHgであった。目標に達した後、排出を5分間継続し、その後Hgを充填した。
【0059】
測定を、設定時間平衡化(set-time equilibration)にて行った。すなわち、圧力は、データを取得する箇所、及び設定時間平衡化(10秒)モードにおけるその圧力における経過時間を指す。およそ140のデータ点をその圧力範囲で収集した。
【0060】
径範囲0.001~500μm(ミクロン)での製品1グラム当たりの開気孔の体積により、「開気孔体積」が得られる。嵩密度は、最大開孔の体積(特定の大きさよりも大きい、0.4psiaのHg押出圧力)の体積を差し引いた後の顆粒の単位体積当たりの単位重量として定義される。嵩密度に含まれる最大孔の典型的な値は、180μmである。骨格密度については、材料によって占められている推定体積から、約0.005μmより大きい全ての気孔の体積を除いた後に、計算する。結果を次の表に示す。
【0061】
【0062】
実施例3:平行な平板の間で凍結させることによって製造した金色の輝くコーヒー粉末
焙煎して挽いたアラビカコーヒーを、総固形分含有量10%で抽出した。膜濃縮を用いて、総固形分含有量を20%に高めた。抽出物を、平行な平板の間で、-35℃~-45℃の温度で12時間ゆっくり凍結乾燥した。ガスの取り込みは行わなかった。凍結乾燥させた粉末は、約1.5mmの粒径を有し、金色の輝く外観を有した。
【国際調査報告】