(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】信号の伝搬時間差に基づく位置決め
(51)【国際特許分類】
G01S 5/10 20060101AFI20220309BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20220309BHJP
【FI】
G01S5/10 Z
H04W64/00 140
H04W64/00 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021540542
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 FI2020050026
(87)【国際公開番号】W WO2020148485
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521308045
【氏名又は名称】エキサロクス オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ペソネン エルッキ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイッコネン ユッカ
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC12
5J062DD01
5J062DD23
5K067DD11
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE24
5K067FF03
5K067FF05
5K067HH22
5K067JJ52
5K067JJ54
(57)【要約】
一態様によれば、位置決め方法、ならびに基地局(T1、T2、T3)および検出器(I)のシステムは、測定サイクル(t1+t2)の間に、外部から制御された電磁パルス(F1、F2、F3)と制御された基地局の到着信号との伝搬時間差を測定することに基づく。一実施形態では、伝搬時間差の測定には基準クロックは必要ないが、代わりに基地局間の正確な固定距離を基準として使用することができる。システムの校正はほとんど行われない。それは基地局の相互の位置関係を確認する。これは部分的に自動化されている場合もある。本位置決めシステムに、センサは必要ない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め方法であって、
測定サイクル(t1+t2)中に基地局(T1、T2、T3)から受信した無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の伝搬時間差を検出器(I)で測定するステップと、
前記検出器(I)に対して、前記基地局(T1、T2、T3)の位置情報を決定するステップと、
前記検出器(I)において、前記伝搬時間差と前記位置情報とに基づいて、前記基地局(T1、T2、T3)に対する前記検出器(I)の位置を決定するステップと、を含み、
前記基地局(T1、T2、T3)は、ケーブルを介して互いに接続され、基地局(T1、T2、T3)からの該無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の送信は、該ケーブルを介して制御されることを特徴とする位置決め方法。
【請求項2】
前記基地局(T1、T2、T3)の校正された位置情報及び基地局間の距離は、前記無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の前記伝搬時間差を測定するための基準として用いられ、前記伝搬時間差の測定には前記基地局(T1、T2、T3)の基準クロックを必要としないことを特徴とする請求項1に記載の位置決め方法。
【請求項3】
前記基地局(T1、T2、T3)の無線送信機は、複数の使用可能な周波数を含む無線周波数電磁放射の広い周波数帯で動作するように構成され、前記動作状況に応じて特定の周波数帯が構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置決め方法。
【請求項4】
1つの基地局(T1)が他の基地局(T2、T3)を制御するように構成され、又は、すべての基地局(T1、T2、T3)がその外部から制御され、又は、外部クロックが測定サイクル(t1+t2)に従ってすべての基地局を制御し、
前記検出器で繰り返される送信期間が時間的に重複しないことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項5】
前記基地局(T1、T2、T3)から位置決めされる前記検出器(I)に送信される前記無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の前記伝搬時間は、トークンリングの原理で同期されるように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項6】
前記検出器(I)は、
最初に受信した無線周波数電磁パルス(F1)とその後に受信した無線周波数電磁パルス(F2、F3)とに基づいて、前記伝搬時間差を決定することによって、
前記伝搬時間差と前記基地局(T1、T2、T3)の位置とに基づいて、前記無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の伝搬距離を決定するために、且つ
前記伝搬距離に基づいて、前記検出器(I)の位置を決定するために、
検出器自体の位置を決定するように適合することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項7】
前記検出器(I)の位置の前記位置情報は、モノのインターネットの方法により、各位置決め対象からその外部の対象に転送されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項8】
前記位置情報は、正確に測定された位置に置かれ、前記基地局(T1、T2、T3)の前記位置に到着すると直ちに位置決め検出器(I)に認識される別の基地局(T1、T2、T3)によって、校正されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項9】
前記校正は、リモートセンサによって行われ、前記リモートセンサは、前記リモートセンサが恒久的に設置されている位置の座標がプログラムされ、又は恒久的に記録されていることを特徴とする請求項2に記載の位置決め方法。
【請求項10】
位置決めは、屋内および屋外のいずれにも適用できることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項11】
1次元、2次元または3次元の位置決めの次元は、前記基地局(T1、T2、T3)の数によって選択されることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項12】
位置決め領域に基地局(T1、T2、T3)を追加することで、位置決めの信頼性が高められることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項13】
位置決め領域で複数の検出器(I)を同時に使用することができることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の位置決め方法。
【請求項14】
位置決め方法であって、
測定サイクル(t1+t2)中に他の基地局(T2、T3)および検出器(I)から受信した無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の伝搬時間差を1つの基地局(T1)で測定するステップと、
前記1つの基地局(T1)および前記他の基地局(T2、T3)の位置情報をいずれも決定するステップと、
前記1つの基地局(T1)において、前記伝搬時間差と前記位置情報とに基づいて、前記基地局(T1、T2、T3)に対する前記検出器(I)の位置を決定するステップと、を含み、
前記基地局(T1、T2、T3)は、ケーブルを介して互いに接続され、前記基地局(T1、T2、T3)からの該電磁パルス(F1、F2、F3)の送信は、該ケーブルを介して制御されることを特徴とする位置決め方法。
【請求項15】
検出器(I)であって、
所定の期間(t1)内に基地局(T1、T2、T3)から受信した無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の伝搬時間差を測定し、
前記基地局(T1、T2、T3)の互いの距離を決定し、
前記伝搬時間差と前記距離とに基づいて、前記検出器(I)の位置情報を決定し、
前記基地局(T1、T2、T3)は、ケーブルを介して互いに接続され、前記基地局(T1、T2、T3)からの該電磁パルス(F1、F2、F3)の送信は、該ケーブルを介して制御されることを特徴とする検出器。
【請求項16】
基地局(T1)であって、
測定サイクル(t1+t2)中に他の基地局(T2、T3)および検出器(I)から受信した無線周波数電磁パルス(F1、F2、F3)の伝搬時間差を測定し、
基地局(T1、T2、T3)の位置情報を決定し、
前記伝搬時間差と前記位置情報とに基づいて、前記検出器(I)に前記基地局(T1、T2、T3)に対する前記検出器(I)の位置を決定し、
前記基地局(T1、T2、T3)は、ケーブルを介して互いに接続され、前記基地局(T1、T2、T3)からの該電磁パルス(F1、F2、F3)の送信は、該ケーブルを介して制御されることを特徴とする基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載されている一実施形態は、位置決め方法、システム、および基地局およびその検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、位置決めは、検出器デバイスのように、人、車両、または他の移動体の位置を識別することを指す場合がある。電波のような電磁放射に基づく既知の位置決めシステムは、振幅変化の測定、位相識別、または時間測定に使用され、この時間測定は、連続的な時間校正と基準クロックを必要とする。これらは、システムの性能と電力を必要とする比較的複雑な配置となる。
【0003】
特許文献1には、このような複雑な配置を用いた位置決めシステムが開示されている。これは、搬送変調された検出信号を必要とする。専用のマスタ基地局は、時間信号の計算を測定し、維持する。各基地局は、送信機および受信機と同様に、計算に使用されるいくつかのループを有していなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0282558号明細書
【発明の概要】
【0005】
発明の概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の一部を簡略化して提示するために作成されたものである。発明の概要は、請求項で定義された主題の本質的または決定的な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求項で指定された主題の範囲を限定することを意図していない。
【0006】
本発明の目的は、位置決め方法、システム、基地局、および検出器を実現することである。独立請求項の特徴によってそれらの目的が達成される。従属請求項は、いくつかの実施形態を説明する。
【0007】
一態様によれば、位置決め方法は、測定サイクル中に、制御された電磁パルスと制御された基地局の到着信号との伝搬時間差を測定することに基づいている。この検出器は、測定サイクル中に基地局から受信した電磁パルスの伝搬時間差を測定することができる。この検出器は、基地局の位置情報を決定する。これらに基づいて、基地局に対する検出器の位置を決定することができる。一実施形態では、伝搬時間差の測定に基準クロックを必要としないが、代わりに、基地局の正確な固定位置情報を基準として用いることができる。システムの校正はほとんど行われない。これは、基地局の相互の位置関係と同様に無線信号の送受信の遅延を確認するものである。これは部分的に自動化してもよい。特に、システムは位置の識別子やIDを必要としないが、単純な電磁パルスとこれらの基地局の位置情報の時間差に基づいて、代わりに直接動作してもよい。特別な識別信号は必要ない。位置決めは、外部の計算装置を必要とせず、検出器で直接行うことができる。伝搬時間差だけでなく基地局の位置情報があれば、検出器で直接位置決めできる。
【0008】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、基地局は、電磁放射の任意の周波数帯で動作することができ、それにより、動作状況に最も適した許可された周波数帯を常に選択することができる。一実施形態では、周波数帯は、使用中の複数の周波数を有していてもよい。
【0009】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、検出器における反復的な送信期間が時間的に重複しないように、1つの基地局が他の基地局を制御するか、すべての基地局がその外部から制御されるか、または外部クロックがすべての基地局を制御する。
【0010】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、基準クロックは、電磁パルスの伝搬時間を測定するために必要とされないが、代わりに、基地局の相互に計算された位置情報が基準として使用される。
【0011】
一実施形態では、上記に加えて、基地局から検出器までの電磁パルスの伝搬時間は、トークンリングの原理で同期される。
【0012】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、検出器での結果の計算は、基地局と検出器との間の距離と、伝搬時間の差とを変数として考慮して、例えば最尤法に基づいて、方程式の群を解くことに基づく。
【0013】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、IoT(モノのインターネット)の方法で各位置決め対象からその外部の対象に位置情報を転送することができる。
【0014】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、位置情報は、正確に測定された位置に置かれ、Rの位置に到着すると直ちに位置検出器に認識される別の送信機Rによって校正されてもよい。
【0015】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、位置決め方法は、屋内と屋外の位置決めに等しく適している。位置決めは、1次元、2次元、または3次元で行われる。位置決めの次元は、送信機の数によって選択される。
【0016】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、位置決め領域に基地局を追加することで、位置決め方法の信頼性を高めることができる。
【0017】
一実施形態では、上記に加えて、または変更して、無制限の数の別の検出器を同時に位置決め領域で使用することができる。
【0018】
添付の図に関連して検討される以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解されるように、いくつかの関連する特徴はより簡易的に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書は、添付の図に関連して考慮される以下の詳細な説明からよりよく理解される。
【0020】
【
図1】一実施形態による、位置だけでなく基地局によって送信された電磁放射の伝搬時間差を検出器が検出する位置決めシステムのブロック図を示す。
【
図2】一実施形態による、測定サイクルt1+t2の活動期間t1の送信と、沈黙期間t2の非送信とを示す。添付の図では、対応する部分を指定するために、対応する参照記号が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の図に関連して与えられる詳細な説明は、本発明の実施形態の説明を意図したものであり、本実施例が構築または利用され得る唯一の可能な形態を表すことを意図したものではない。しかし、対応するまたは同等の機能および構造は、様々な実施例によって実施することができる。本説明は、例えば、基地局から送信される信号の伝搬時間差に基づく検出器の位置決めに用いられる以下の図面を参照する。
【0022】
図1を参照すると、位置決めシステムは、基地局T1、T2、T3および検出器Iで構成されている。基地局Tは、送信機または対応する装置であってもよい。また、基地局Tは、位置決めシステムにおけるその役割に応じて、必要であれば受信機を有する。検出器Iは、対象(object)として、受信機として、または対応する位置決め装置として表現されてもよい。検出器Iは、位置決めシステムの構成とその中での検出器Iの役割に応じて、必要であれば送信機を有してもよい。検出器Iは、それ自体の位置を認識するか、または検出器Iの位置は外部から認識される。このシステムは、屋内でも屋外でも同じように動作し、検出器Iは静止したままであることも移動することもできる。
【0023】
一実施形態では、位置決めは、測定サイクル中の同期した到着信号からの電磁パルスF1、F2、F3、例えば外部で制御される基地局Tから発信される電波やその信号など、の時間差測定に基づく。電磁パルスFは、例えば、中断された搬送波または搬送波に変調された信号のいずれかから生成される。校正には、基地局Tの固定された相互距離が用いられ、すでに分かっている位置情報に基づく。
【0024】
無線通信は、少なくとも部分的に自動制御され、基地局Tと受信機Iの対によって行われる。周波数帯は、動作環境からの干渉を低減し、信頼性を向上させるために、ケースバイケースで定義することができる。
【0025】
基地局Tの台数は、1次元、2次元、3次元のいずれの位置関係にあるかによって選択される。基地局Tの台数をケースバイケースで増やしていくことで、困難な状況下でも位置計算測定の信頼性を高く維持することができる。
【0026】
このように、位置決め領域内の検出器Iの数は制限されない。そのため、位置を特定する対象の数も限定されない。一実施形態では、位置決めに関する時間校正は、測定サイクルを使用することによって解決される。位置決め信号が動作する適切な活動時間と、信号が使用されていない沈黙時間とが、測定サイクルで使用されてもよい。これは、システムがそれ自体の信号に干渉しないようにするためである。
【0027】
従来の位置決め方法と比較して、時間校正からの独立は、例えばパルスの伝搬時間測定に基づく位置決めシステムにおいて、既知の位置決め技術に典型的に見られる高価で煩雑な基準クロックから、本実施形態の位置決めシステムを解放する。
【0028】
位置決めは、別の外部の計算装置を必要とせず、検出器で直接行うことができる。このため、検出器は、基地局の位置の他に、伝搬時間の差のみを必要とする。従来のように、基地局や位置決めされた機器と通信する位置決めセンターは必要ない。
【0029】
一実施形態では、位置計算のためのデータは、位置決めシステムの測定サイクルを十分な回数繰り返すことによって得られる。これにより、位置決めの信頼性と精度を高めることができる。測定サイクルは、人間にはほとんど気づかれないような非常に速い時間で繰り返されるので、ユーザを煩わせない。
【0030】
位置決めシステムの精度は、信号の入射角の測定に基づいた既知の位置決め位置決めシステムのように、位置決め領域の大きさの機能として大きく変化することはない。
【0031】
本実施形態のいくつかの用途には、コンテナポート、特に手動および自動のフォークリフトの交通の制御と、入出庫の状況、デパート、及び空港におけるコンテナの正確な位置決めとが含まれる。もちろん、これらは主に記載された例であり、実施形態の範囲をそれらの例または同様の実施形態のみに限定することを意図していない。
【0032】
例えば、自動輸送、船舶及び自動車は、正確な位置情報を必要とする。港に出入りする船舶、路上、駐車及び通勤の車。本実施の形態による位置決めシステムは、港や道路沿いに簡単に設置することができる。港では1のシステムで十分であり、そこから道路沿いに位置決めネットワークを構築することができる。
【0033】
次に、一実施形態の動作を説明する。
【0034】
例えば、固定された位置にある基地局Tは、パルスシーケンスまたは搬送変調信号のいずれかを送信する。送信は1つの基地局Tから制御され、それにより、すべての送信機の信号が検出器Iに到着すると、送信シーケンス、すなわち測定サイクルが完了する。次に送信シーケンスに新たな指示が与えられる。あるいは、送信は、対象Aから基地局Tの外部で制御され、各完全な測定シーケンスの後に検出器Iの位置が読み取られる。あるいは、すべての基地局Tは互いに認識しており、すべての基地局Tが検出器Iに信号を一度送信するたびに、測定シーケンスを繰り返す。
【0035】
図1による一実施形態を考慮すると、3つの基地局Tが用いられる。これらの1つの基地局T1はいわゆるマスタであり、他はスレーブT2、T3である。マスタ基地局T1は、送信機のみの最小構成を有し、スレーブ基地局T2、T3は、受信機とトランシーバの両方を有している。一般的な場合には、マスタ基地局T1も送信機と受信機の両方を有する。位置決めの対象、つまり対象検出器Iは、最低でも受信機のみを有する。一実施形態による位置決めシステムにおける無線通信は、時間ウィンドウt1の間は予め選択された周波数で送信され、時間ウィンドウt2の間は送信されない識別周波数からなる基地局Tによって送信される自動制御される無線バーストFで構成される。この測定サイクル、すなわち動作サイクル(送信/非送信)は、位置決めシステムの基地局Tが動作している限り繰り返される。このように、各基地局Tは「モールス電信装置」として機能する。この場合、電磁信号には実際の「コード」やIDは必要ない。もちろん、使用することは可能であるが、位置決め動作には必要ない。
図2は、活動時間t1による送信と、沈黙時間t2による非送信を示している。活動時間t1の間、位置決め送信Fが有効であり、沈黙時間t2の間、それらの送信Fが無効である。これにより、検出器Iやスレーブ基地局T2、T3での位置決めプロセスにおいて、送信Fが干渉されないようにする。測定サイクルはt1+t2である。
【0036】
位置決めは、スレーブ基地局T2、T3、マスタ基地局T1が開始したときに始まる。スレーブ基地局T2、T3は、所定の周波数で長さt1のマスタ基地局T1の無線ベースバースト信号F1を待っているので、基地局Tが開始される順序は重要ではない。スレーブ基地局T2、T3は、位置決めシステムにおいてトランシーバまたはリピータとして機能するため、マスタ基地局T1が送信したバーストF1の検出を待ち、同時に無線バーストF2、F3を同じまたは自身の無線周波数で前に(マルチチャネル広帯または狭帯域技術を使用して)送信する。スレーブ基地局T2、T3において、受信したマスタバーストF1と送信バーストF2、F3との間には、常に決定性の時間遅延Δtが存在し、この時間遅延Δtは、システム校正ステップ中に決定される。スレーブ基地局T2、T3は、バーストF1のプログラム的な検出を必要としないが、検出は高速で単純な構成(例えば、いわゆるトリガ検出)で直接実行できることに留意すべきである。もちろん、固定周波数の水晶発振器に基づいて、基地局Tごとに指定された無線送信機を構築することや、送信バーストFの周波数や長さが設定された既製の高速無線送信機(例えば460MHz~2.3GHz)を使用することが可能である。基地局Tは全体として、高速の論理ゲート、あるいは高速のマイクロコントローラによって制御される。アンテナの前に十分な電力増幅が行われる。先に一実施形態で説明したように、基地局T2、T3がバーストF2、F3を再生成するのに必要な時間は、システム校正ステップの間に決定される。
【0037】
一実施形態では、位置決めされる検出器Iは、各瞬間にマスタT1およびスレーブT2、T3の基地局のバーストF1、F2、F3を受信するマルチチャネル受信機で構成される。この場合には、バーストF1、F2、F3は異なる周波数で動作するため、バーストF1、F2、F3間の時間遅延は必要なくてもよい。別の実施形態では、検出器Iは単一の周波数で動作し、それにより、基地局TのトランスミッションFの間の決定性の遅延は、信号F1、F2、F3の重複を排除し、バーストF1、F2、F3が相互に干渉しないようにするために用いられる。マスタT1とスレーブT2、T3の基地局からのバーストF1、F2、F3の到着時間差と、3つの基地局T1、T2、T3の位置が分かっているとき、位置決めすべき対象Iの位置は、計算で決定される。
【0038】
マスタT1及びスレーブT2、T3の基地局の両方と、位置決めされる検出器Iについての上述した位置決めシステムの動作は、単純なシナリオである。一般的な場合には、マスタ基地局T1を含む全ての基地局Tが送信機と受信機の両方を有し、基地局Tと位置決め対象Iの数は限定されず、位置決め領域の形状や大きさも自由に選択可能である。また、送信パルスのパルスF、送信時間、送信パルスパケットの構造なども、無線通信を規制するライセンス要求を満たす限り、自由に選択することができる。
【0039】
次に、一実施形態における無線通信Fの動作について検討する。一実施形態では、全ての基地局Tは、送信機と受信機の両方を有している。基地局Tの送信機は、用途に応じて500μs~100psの範囲で選択した電磁パルスFを制御する。電力は、無線通信に関する国内の規制および国際的な規制を考慮して、位置決め領域の大きさに応じて調整される。アンテナは無指向性で、受信機はすべての送信周波数に対応している。
【0040】
基地局Tの送信機は,搬送波変調された信号を送信することができる。変調は、検出器Iが各基地局Tから受信した信号を認識するように、異なる送信機の間で同期される。
【0041】
一実施形態は、一例として、位置を特定すべき対象Iがその位置を特定する基地局の送信を同期させるためのトークンリングの原理を例示している。マーク:Fiは送信信号の周波数であり、Tiは送信周波数がFiである基地局Tであり、xjは位置を特定すべき検出器Iである。サブインデックスは連続した自然数である。基地局Tの測定サイクルt1+t2、Δは、パルスパケット持続時間t+遅延δである。δは送信機のウェイクアップ時間+予め設定された待ち時間である。測定期間は、基地局T間で可能なすべての測定サイクルが発生した事象である。無線パルスFiは、固定された基地局Tiから検出器Iに送信される。基地局Tの間の距離は、基地局Tの位置によって正確に分かっている。例えば、基地局Tiからのパルスは、検出器および1つの基地局Ti+1によって認識され、基地局Ti+1からのパルスは、検出器Iiおよび基地局Ti+2のみで認識される。基地局の1つは開始局T1である。位置決め処理は、ここから開始される。開始は、自動でまたはコマンドで行われる。
【0042】
各基地局Tは、時間t1の間、固有の周波数Fiを送信し、時間t2の間、送信しない。パルスパケットの持続時間、すなわち測定サイクルは、t1+t2である。位置を特定する対象の受信機Iは,測定サイクルと基地局Tの送信周期ウィンドウの長さ、(n+1)(t1+t2)+nδ、を認識し、ここで、nは基地局の数-1である整数と分かっている。
【0043】
測定サイクルは、基地局Tと検出器Iに予めプログラムされている。基地局Ti+1が周波数Fiを認識し、時間t1+t2+δ後に同じ周波数Fi(基地局Tiによって送信されたパルスFi)を認識し、それを認識などした基地局Ti+2にパルスFi+1を送信することが認識される。
【0044】
基地局T2、T3が一度に1つの周波数のみ認識できる場合には、前の局の最後の測定期間が終了した後にのみ、次の基地局Tが送信を開始するように基地局Tは動作する。
【0045】
また、基地局T2、T3が複数の周波数を同時に認識できる場合には、基地局Tは基地局T自体が受信した測定サイクルを認識すると直くに動作し、基地局Tは基地局T自体の周波数F、測定サイクルで送信を開始する。したがって、受信機は、各基地局Tによって送信される測定サイクルと、これに起因するパルスパケットFをほぼ同時に認識する。
【0046】
本発明の位置決めシステムは、同時に複数の物体Iを含んでもよく、それぞれの物体Iは、移動中または定位置によらず、その位置情報を正確に受信する。それぞれの物体Iは、同様の位置標識を有する。このように位置決めは、GPSに似ているが、水平方向、垂直方向のいずれもはるかに正確である。
【0047】
一実施形態では、短時間のパルスFが選択された周波数帯で生成される。それらは時間ウィンドウt1から送信される。予めプログラムされた方法で送信されたパルスFの受信。タイミングの監視、パルスの構造、干渉信号。
【0048】
また、物体の検出器Iの位置をその外部から認識することもできる。ここで、検出器Iは、逆に同期することで、逆に位置決めされ、ここで、検出器Iは基地局T1を同期する。検出器Iが同期装置であり、基地局T1の1つが計算を行う。測定サイクルの開始時に、検出器(つまり、位置を特定する対象)Iは、基地局T1、T2、T3,…,Tnによって受信される信号を送信する。これらの基地局の1つ、例えばT1は、位置計算ユニットとして機能してもよく、これは、T1が前に信号を送信しないことを意味してもよい。代わりに、他の基地局Ti、i=2,…,nは、検出器Iからの信号を最初に受信したときに信号を前方に送信する。これらの基地局Ti、i=2,…,nからの信号が最終的にT1に到着すると、T1は、検出器Iから到着した信号と比較して、基地局Ti、i=2,…,nから到着した信号からの信号到着時間差を計算することができ、基地局T1は、検出器すなわち物体の位置を計算することができる。つまり、検出器Iは、位置決めされる対象として動作する。
【0049】
このように、本実施形態による逆のシステムは、検出器Iが検出器I自体の位置を計算する代わりに、基地局の1つが、上記の例ではT1が、位置を計算するように単純に動作し、この基地局は、このように、通常の用途における検出器Iと同じ方法で動作し、逆の解法では、通常の状況と同じ方法で検出器Iが、第1の信号を提供する基地局が測定サイクルの開始時に動作する。位置は、その基地局において、単純な信号の伝搬時間差と基地局の位置とにのみ基づいて、算出される。特別な計算センターや、基地局と任意の計算センターとの間の他の通信は必要ない。
【0050】
マスタ基地局T1は送信機のみを有し、他の基地局T2、T3は送信機と受信機の両方を有する。これが最もシンプルな構成である。マスタ基地局T1は、例えばケーブルを介してスレーブ送信機T2、T3を制御する。
【0051】
基地局T1が信号F1を検出器Iに送信すると、スレーブ基地局T2、T3に信号F2、F3を検出器Iに送信するように指示F1を送信する。送信期間は、前の期間が検出器Iで処理された後にのみ新しい期間が検出器Iに到着するように制御される。統計的に完全なデータが位置を計算するために利用可能になるまで、各測定点についてこれが繰り返される。各点の位置決めには、正確に多くのデータが収集される。
【0052】
パルスF1、F2、F3の受信、測定サイクル、計算、記録、表示は、例えば、以下の実施形態に従って行われてもよい。測定サイクルの活動時間t1を開くステップ。nの連続したパルスFを受信して検出するステップ。nは予め設定された定数である。1ns未満である受信したパルスFの時間をトリガするステップ。n個のパルスがすべて受信されたかどうかを推定するステップ。測定サイクルの活動時間t1を沈黙時間t2に閉じるステップ。計算のためにサンプルをエクスポートするステップ。次のサンプルが次のトランスミッターT2、T3から到着することが分かっている。所定の沈黙時間t2の後に活動時間t1を開くステップ。計算シーケンスをm回回転させるステップ。計算結果をエクスポートするステップ。
【0053】
以下、一実施形態による位置決めの計算における信号Fの伝搬時間差の利用について説明する。
【0054】
基地局をT1、T2,…,Tnとする。3D位置情報が必要な場合、基地局Tの数は少なくとも4以上(つまりn≧4)であることが望ましい。すべての基地局Tの座標をTi=(Xi,Yi,Zi),i=1,…,nとして分かっている。また、位置を特定する対象をI=(X,Y,Z)とする。
【0055】
次に、基地局T1が他の基地局T2,…,Tnと検出器Iに信号を送信する、いわゆるマスタ基地局であると仮定する。検出器IがT1から送信された信号F1を受信すると、対象でクロックが開始する。信号F1が他の基地局T2、T3から循環し、検出器Iに到着すると、検出器Iは、T1から受信した信号と他の基地局T2、T3、Tnとの間の到着時間差を計算する。これらの時間差をdt1i,i=2,…,nと記す。このように、得られる時間差の数は、使用している基地局Tの数よりも1つ少ない。例えば、4つの基地局Tがある場合、位置決めの対象Pでは3つの時差dt12、dt13、dt14が得られる。
【0056】
基地局Tの信号Fの伝送に遅延がなく、信号Fの伝搬速度がvであったとする。すると、各時間差dt1i,i=2,…,nに対応する信号伝搬距離が次式で算出できる。
【0057】
【0058】
一連の式において、s1iは、基地局T1から他の基地局Tiまでの距離に相当し、i=2,…,nであり、基地局の位置が分かっているので、これらの距離も分かる。また、変数siI、i=2,…,nは、基地局Tiから位置決めする検出器I=(X,Y,Z)までの距離であり、これに対応するs1Iは、基地局T1から検出器Iまでの距離である。したがって、以下の方程式群は、3つの未知数(X,Y,Z)を有し、i≧4であれば、対象の座標(X,Y,Z)を、例えば、最尤法で解くことができる。
【0059】
ここに示した各領域や装置の値は、求められる効果、有効性を損なわない範囲で拡大または変更されてもよい。また、明示的に否定されていない限り、いずれの実施形態や特徴を他の実施形態と組み合わせることができる。
【0060】
発明の主題は、特定の構造的特徴および/または機能を用いて説明されているが、添付の請求項で定義されている主題は、必ずしも上述の特定の特徴または機能に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、上述の特定の特徴および機能は、要件の実施によって例示されており、他のそのような特徴および機能が均等の物は、保護の範囲内にあることが意図されている。
【0061】
上述の利点は、1つまたは複数の実施形態に関するものであることを理解されたい。実施形態は、特定された問題のいずれかまたはすべてを解決するもの、または記載された利益および利点のいずれかまたはすべてを有するものに限定されない。
【0062】
本明細書に記載のプロセスの各ステップは、都合の良い順序で任意に、または必要に応じて同時に行われる。
【0063】
さらに、個々のステップは、本明細書に記載された主題の精神および範囲から逸脱することなく、任意の方法によって除去される。上述した実施例の態様は、所望の効果を失うことなく、他の任意の実施例の態様と組み合わせることができる。
【0064】
用語「含む(comprising)」は、本明細書において、識別された方法、ブロックまたは要素を含むことを意味するが、そのようなブロックまたは要素は排他的リストを含まず、方法または装置は他のブロックまたは要素を含んでもよい。
【0065】
上記の説明は例示としてのみ与えられ、当業者によって様々な変更が加えられることが理解されるべきである。上記の説明、実施形態、およびデータは、特定の実施形態の構造および使用に関する包括的な説明を提供する。様々な実施形態を、特定の特徴を用いて、または1つ以上の個別の実施形態を参照して上記で説明したが、当業者は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、示された実施形態に多数の変更を加えることができる。
【国際調査報告】