(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】CAIXに特異的な二環式ペプチドリガンド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/64 20060101AFI20220309BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20220309BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220309BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220309BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220309BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C07K7/64 ZNA
A61K38/12
A61K45/00
A61K47/64
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540809
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 GB2020050069
(87)【国際公開番号】W WO2020148525
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド バルダッサーレ
(72)【発明者】
【氏名】リューホン シェン
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド ラニ
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン ステイス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル トイフェル
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ウォーカー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA24
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4H045AA10
4H045BA16
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、非芳香族分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、カルボニックアンヒドラーゼIX(CAIX)の高親和性バインダーであるペプチドを記載している。本発明は、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、該ペプチドを含む薬物コンジュゲート、該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、並びにCAIXによって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートの使用も含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する非芳香族分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、CAIXに特異的なペプチドリガンド。
【請求項2】
前記ループ配列が2、3、又は7つのアミノ酸を含む、請求項1記載のペプチドリガンド。
【請求項3】
前記ループ配列が、その一方が2つのアミノ酸からなり、そのもう一方が7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む、請求項1又は請求項2記載のペプチドリガンド。
【請求項4】
前記ループ配列が、その一方が3つのアミノ酸からなり、そのもう一方が7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む、請求項1又は請求項2記載のペプチドリガンド。
【請求項5】
【化1】
(ここで、X
1~X
2は、任意のアミノ酸残基を表し、X
3は、存在しないか、又は任意のアミノ酸を表すかのいずれかであり、X
4及びX
5のうちの一方は、任意のアミノ酸を表し、もう一方は、存在せず、かつC
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む、請求項1又は請求項2記載のペプチドリガンド。
【請求項6】
X
4が存在せず、X
5がP又はNを表す、請求項5記載のペプチドリガンド。
【請求項7】
X
5が存在せず、X
4が、T、I、V、又はLを表す、請求項5記載のペプチドリガンド。
【請求項8】
前記
【化2】
のペプチドリガンドが、配列番号1~16
【化3】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)
:のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む、請求項5記載のペプチドリガンド。
【請求項9】
前記
【化4】
のペプチドリガンドペプチドリガンドが、
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号1)(本明細書において、61-01-02-N025と称される);
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号2)(本明細書において、61-01-10-N002と称される);
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号3)(本明細書において、61-01-11-N002と称される);
A-(配列番号4)-A(本明細書において、61-25-00-N001と称される);
A-(配列番号5)-A(本明細書において、61-25-01-N001と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、61-25-02-N001と称される);
A-(配列番号7)-A(本明細書において、61-25-03-N001と称される);
A-(配列番号8)-A(本明細書において、61-26-00-N001と称される);
A-(配列番号9)-A(本明細書において、61-27-00-N001と称される);
A-(配列番号10)-A(本明細書において、61-28-00-N001と称される);
A-(配列番号11)-A(本明細書において、61-29-00-N001と称される);
A-(配列番号12)-A(本明細書において、61-30-00-N001と称される);
A-(配列番号13)-A(本明細書において、61-30-01-N001と称される);
A-(配列番号14)-A(本明細書において、61-30-02-N001と称される);
A-(配列番号15)-A(本明細書において、61-30-03-N001と称される);及び
A-(配列番号16)-A(本明細書において、61-31-00-N001と称される)
:から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8記載のペプチドリガンド。
【請求項10】
前記分子スキャフォールドが1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)から選択され、前記ペプチドリガンドが、
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号1)(本明細書において、61-01-02-N025と称される);
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号2)(本明細書において、61-01-10-N002と称される);
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号3)(本明細書において、61-01-11-N002と称される);
A-(配列番号4)-A(本明細書において、61-25-00-N001と称される);
A-(配列番号5)-A(本明細書において、61-25-01-N001と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、61-25-02-N001と称される);
A-(配列番号7)-A(本明細書において、61-25-03-N001と称される);
A-(配列番号8)-A(本明細書において、61-26-00-N001と称される);
A-(配列番号9)-A(本明細書において、61-27-00-N001と称される);
A-(配列番号10)-A(本明細書において、61-28-00-N001と称される);
A-(配列番号11)-A(本明細書において、61-29-00-N001と称される);
A-(配列番号12)-A(本明細書において、61-30-00-N001と称される);
A-(配列番号13)-A(本明細書において、61-30-01-N001と称される);
A-(配列番号14)-A(本明細書において、61-30-02-N001と称される);
A-(配列番号15)-A(本明細書において、61-30-03-N001と称される);及び
A-(配列番号16)-A(本明細書において、61-31-00-N001と称される)
:から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は請求項2記載のペプチドリガンド。
【請求項11】
前記医薬として許容し得る塩が、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム塩から選択される、請求項1~10のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項12】
前記CAIXがヒトCAIXである、請求項1~11のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項13】
1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、請求項1~12のいずれか一項記載のペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲート。
【請求項14】
1以上の細胞毒性剤にコンジュゲートされた、請求項1~12のいずれか一項記載のペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲート。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項記載のペプチドリガンド又は請求項13もしくは請求項14記載の薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む、医薬組成物。
【請求項16】
CAIXによって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための、請求項1~12のいずれか一項記載のペプチドリガンド又は請求項13もしくは請求項14記載の薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、非芳香族分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、カルボニックアンヒドラーゼIX(CAIX)の高親和性バインダーであるペプチドを記載している。本発明は、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、該ペプチドを含む薬物コンジュゲート、該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、並びにCAIXによって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートの使用も含む。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
環状ペプチドは、高い親和性及び標的特異性でタンパク質標的に結合することができ、それゆえ、治療薬の開発のための魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドは、例えば、抗菌ペプチドのバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリン、又は抗癌薬のオクトレオチドのように、診療所で使用されるのに既に成功している(Driggersらの文献(2008), Nat Rev Drug Discov 7(7), 608-24)。優れた結合特性は、ペプチドと標的との間で形成される比較的大きな相互作用表面だけでなく、環状構造の立体構造可撓性の低下にも起因する。通常、大環状分子は、環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å2; Wuらの文献(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiongらの文献(2002), Science 296(5565), 151-5)、又はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å2; Zhaoらの文献(2007), J Struct Biol 160(1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
その環状立体配置のために、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも可撓性が低く、標的に結合したときのエントロピー損失がより小さくなり、結果的に、より高い結合親和性が生じる。可撓性の低下はまた、標的特異的立体構造の固定をもたらし、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、その環が開いたときに、他のMMPに対するその選択性を失うマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例証されている(Cherneyらの文献(1998), J Med Chem 41(11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのような、複数のペプチド環を有する多環性ペプチドにおいてさらにより顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前に、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に繋いでいる(Kemp及びMcNamaraの文献(1985), J. Org. Chem; Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。Meloen及び共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子をタンパク質表面の構造的模倣用の合成スキャフォールド上での複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化に使用した(Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。候補薬物化合物(ここで、該化合物は、システイン含有ポリペプチドを、例えば、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)のような分子スキャフォールドに連結させることにより作製される)の作製方法(Heinisらの文献(2014) Angewandte Chemie, International Edition 53(6) 1602-1606)。
【0005】
対象となる標的に対する二環式ペプチドの大型ライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinisらの文献(2009), Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基及び2つのランダムな6アミノ酸領域を含有する直鎖状ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリをファージ上に提示させ、システイン側鎖を低分子スキャフォールドに共有結合させることにより環化させた。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する非芳香族分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、CAIXに特異的なペプチドリガンドが提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた本明細書で定義されるペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、CAIXによって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
一実施態様において、該ループ配列は、2、3、又は7つのアミノ酸を含む。
【0011】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その一方が2つのアミノ酸からなり、そのもう一方が7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0012】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その一方が3つのアミノ酸からなり、そのもう一方が7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0013】
一実施態様において、ペプチドリガンドは、
【化1】
(ここで、X
1~X
2は、任意のアミノ酸残基を表し、X
3は、存在しないか、又は任意のアミノ酸を表すかのいずれかであり、X
4及びX
5のうちの一方は、任意のアミノ酸を表し、もう一方は、存在せず、かつC
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む。
【0014】
一実施態様において、X4は、存在せず、X5は、P又はNを表す。
【0015】
代わりの実施態様において、X5は、存在せず、X4は、T、I、V、又はLを表す。
【0016】
さらなる実施態様において、
【化2】
のペプチドリガンドは、配列番号1~16:
【化3】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)
のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、又はその医薬として許容し得る塩を含む。
【0017】
さらなる実施態様において、
【化4】
のペプチドリガンドは、
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号1)(本明細書において、61-01-02-N025と称される);
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号2)(本明細書において、61-01-10-N002と称される);
β-Ala-Sar
10-A-(配列番号3)(本明細書において、61-01-11-N002と称される);
A-(配列番号4)-A(本明細書において、61-25-00-N001と称される);
A-(配列番号5)-A(本明細書において、61-25-01-N001と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、61-25-02-N001と称される);
A-(配列番号7)-A(本明細書において、61-25-03-N001と称される);
A-(配列番号8)-A(本明細書において、61-26-00-N001と称される);
A-(配列番号9)-A(本明細書において、61-27-00-N001と称される);
A-(配列番号10)-A(本明細書において、61-28-00-N001と称される);
A-(配列番号11)-A(本明細書において、61-29-00-N001と称される);
A-(配列番号12)-A(本明細書において、61-30-00-N001と称される);
A-(配列番号13)-A(本明細書において、61-30-01-N001と称される);
A-(配列番号14)-A(本明細書において、61-30-02-N001と称される);
A-(配列番号15)-A(本明細書において、61-30-03-N001と称される);及び
A-(配列番号16)-A(本明細書において、61-31-00-N001と称される)
:から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)から選択され、ペプチドリガンドは、
β-Ala-Sar10-A-(配列番号1)(本明細書において、61-01-02-N025と称される);
β-Ala-Sar10-A-(配列番号2)(本明細書において、61-01-10-N002と称される);
β-Ala-Sar10-A-(配列番号3)(本明細書において、61-01-11-N002と称される);
A-(配列番号4)-A(本明細書において、61-25-00-N001と称される);
A-(配列番号5)-A(本明細書において、61-25-01-N001と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、61-25-02-N001と称される);
A-(配列番号7)-A(本明細書において、61-25-03-N001と称される);
A-(配列番号8)-A(本明細書において、61-26-00-N001と称される);
A-(配列番号9)-A(本明細書において、61-27-00-N001と称される);
A-(配列番号10)-A(本明細書において、61-28-00-N001と称される);
A-(配列番号11)-A(本明細書において、61-29-00-N001と称される);
A-(配列番号12)-A(本明細書において、61-30-00-N001と称される);
A-(配列番号13)-A(本明細書において、61-30-01-N001と称される);
A-(配列番号14)-A(本明細書において、61-30-02-N001と称される);
A-(配列番号15)-A(本明細書において、61-30-03-N001と称される);及び
A-(配列番号16)-A(本明細書において、61-31-00-N001と称される)
:から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
さらなる実施態様において、分子スキャフォールドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)から選択され、ペプチドリガンドは、
β-Ala-Sar10-A-(配列番号1)(本明細書において、61-01-02-N025と称される);
β-Ala-Sar10-A-(配列番号2)(本明細書において、61-01-10-N002と称される);
β-Ala-Sar10-A-(配列番号3)(本明細書において、61-01-11-N002と称される);
A-(配列番号5)-A(本明細書において、61-25-01-N001と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、61-25-02-N001と称される);
A-(配列番号7)-A(本明細書において、61-25-03-N001と称される);
A-(配列番号8)-A(本明細書において、61-26-00-N001と称される);
A-(配列番号12)-A(本明細書において、61-30-00-N001と称される);及び
A-(配列番号13)-A(本明細書において、61-30-01-N001と称される)
:から選択されるアミノ酸配列を含む。この実施態様のスキャフォールド/ペプチドリガンドは、本明細書中、表1に示されているような優れたCAIX競合結合を示した。
【0020】
さらなる実施態様において、分子スキャフォールドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)から選択され、ペプチドリガンドは、
A-(配列番号5)-A(本明細書において、61-25-01-N001と称される);及び
A-(配列番号13)-A(本明細書において、61-30-01-N001と称される)
:から選択されるアミノ酸配列を含む。この実施態様のスキャフォールド/ペプチドリガンドは、良好な酵素阻害レベルに加えて、本明細書中、表1に示されているような優れたCAIX競合結合を示した。
【0021】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当該分野、例えば、ペプチド化学、細胞培養、及びファージディスプレイ、核酸化学、並びに生化学の分野の専門家によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技法が、分子生物学、遺伝学、及び生化学の方法に使用される(引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(1999) 第4版、John Wiley & Sons社を参照)。
【0022】
(命名法)
(付番)
本発明のペプチド内のアミノ酸残基位置に言及する場合、システイン残基(Ci、Cii、及びCiii)は不変であるので、これらは付番から省略され、それゆえ、本発明のペプチド内のアミノ酸残基の付番は、以下のように言及される:
-Ci-T1-E2-Cii-W3-V4-D5-G6-W7-V8-P9-Ciii-(配列番号1)
。
【0023】
この説明のために、全ての二環式ペプチドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)で環化され、三置換構造を生じると考えられる。TATAによる環化は、Ci、Cii、及びCiii上で生じる。
【0024】
(分子フォーマット)
二環コア配列へのN-又はC-末端伸長は、ハイフンによって隔てられた、配列の左側又は右側に付加される。例えば、N-末端βAla-Sar10-Alaテールは:
βAla-Sar10-A-(配列番号X)
と表される。
【0025】
(逆向きのペプチド配列)
Nairらの文献(2003) J Immunol 170(3), 1362-1373における開示を考慮して、本明細書に開示されるペプチド配列は、そのレトロ-インベルソ(retro-inverso)形態でも有用性を見出すことが想定される。例えば、配列が逆転し(すなわち、N-末端がC-末端になり、C-末端がN-末端になる)、その立体化学も同様に逆転する(すなわち、D-アミノ酸がL-アミノ酸になり、L-アミノ酸がD-アミノ酸になる)。
【0026】
(ペプチドリガンド)
本明細書において言及されるペプチドリガンドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチドを指す。典型的には、そのようなペプチドは、スキャフォールドとの共有結合を形成することができる2以上の反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチドがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチドは、少なくとも3つのシステイン残基(本明細書において、Ci、Cii、及びCiiiと呼ばれる)を含み、かつスキャフォールド上に少なくとも2つのループを形成する。
【0027】
(ペプチドリガンドの利点)
本発明の特定の二環式ペプチドは、それを注射、吸入、経鼻、眼球、経口、又は局所投与のための好適な薬物様分子とみなすことができるいくつかの有利な特性を有する。そのような有利な特性としては、以下のもの挙げられる:
-種交差反応性。これは、前臨床的な薬力学及び薬物動態評価の典型的な必要条件である;
-プロテアーゼ安定性。二環式ペプチドリガンドは、理想的には、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜固定型」)プロテアーゼ、胃腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対する安定性を示すべきである。プロテアーゼ安定性は、二環式リード候補を動物モデルで開発するだけでなく、自信を持ってヒトに投与することもできるように、異なる種の間で維持されるべきである;
-望ましい溶解度プロファイル。これは、製剤化及び吸収目的で重要である、荷電残基及び親水性残基と疎水性残基の比率並びに分子内/分子間H-結合の関数である;
-循環中での最適な血漿半減期。臨床的適応及び治療レジメンに応じて、急性疾患管理設定で短期曝露用の二環式ペプチドを開発するか又は循環中での保持が増強された二環式ペプチドを開発する必要があり得るため、より慢性的な疾患状態の管理に最適である。望ましい血漿半減期を推進する他の要因は、最大治療効率のための持続的曝露の要求と薬剤の持続的曝露による随伴毒性である;及び
-選択性。本発明の特定のペプチドリガンドは、他のカルボニックアンヒドラーゼよりも良好な選択性を示す。
【0028】
(医薬として許容し得る塩)
塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及が該リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0029】
本発明の塩は、従来の化学的方法、例えば、医薬塩:特性、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、P. Heinrich Stahl(編者)、Camille G. Wermuth(編者)、ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁、August 2002に記載されている方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、適切な塩基又は酸と、水中もしくは有機溶媒中で、又はこれら2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。
【0030】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機と有機の両方の多種多様な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸など)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸など)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
【0031】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0032】
化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩を有機又は無機塩基で形成させ、好適なカチオンを生成させることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、及びAl3+又はZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンなどのアミノ酸:に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。
【0033】
本発明のペプチドがアミン機能を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成し得る。そのような第四級アンモニウム化合物は、本発明のペプチドの範囲内である。
【0034】
(修飾誘導体)
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。そのような好適な修飾誘導体の例としては、N-末端及び/又はC-末端修飾; 1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換(例えば、1以上の極性アミノ酸残基の1以上の等配電子又は等電子アミノ酸による置換; 1以上の非極性アミノ酸残基の他の非天然等配電子又は等電子アミノ酸による置換);スペーサー基の付加; 1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換; 1以上のアミノ酸残基のアラニンによる置換、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1以上のアミド結合のN-アルキル化; 1以上のペプチド結合の代用結合による置換;ペプチド骨格長の修飾; 1以上のアミノ酸残基のα-炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びチロシンなどのアミノ酸を官能基化するような、該アミノ酸の好適なアミン、チオール、カルボン酸、及びフェノール反応性試薬による修飾、並びに官能基化に好適である直交反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキン又はアジドを有する部分による官能基化を可能にするアジド又はアルキン基を有するアミノ酸の導入又は置換:から選択される1以上の修飾が挙げられる。
【0035】
一実施態様において、修飾誘導体は、N-末端及び/又はC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、ここで、修飾誘導体は、好適なアミノ反応化学を用いるN-末端修飾、及び/又は好適なカルボキシ反応化学を用いるC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、該N-末端又はC-末端修飾は、限定されないが、細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団を含む、エフェクター基の付加を含む。
【0036】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、N-末端修飾は、N-末端アセチル基を含む。この実施態様において、N-末端システイン基(本明細書においてCiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間に無水酢酸又は他の適切な試薬でキャッピングされ、N-末端がアセチル化された分子をもたらす。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0037】
代わりの実施態様において、N-末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーション及びその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。
【0038】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、C-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、C-末端修飾は、アミド基を含む。この実施態様において、C-末端システイン基(本明細書において、Ciiiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C-末端がアミド化された分子をもたらす。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。
【0039】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様においては、分解性プロテアーゼによって認識されることも、標的効力に何らかの有害作用を有することもない等配電子/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択してもよい。
【0040】
或いは、近くのペプチド結合のタンパク質分解性加水分解が立体構造的に及び立体的に妨害されるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用してもよい。特に、これらは、プロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、及びアミノ-シクロプロピルカルボン酸の単純な誘導体であるシクロアミノ酸に関する。
【0041】
一実施態様において、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端システイン(Ci)及び/又はC-末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0042】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニン又はアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドに医薬安定性プロファイルを改善するという利点を提供する。
【0043】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の荷電アミノ酸残基の1以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。代わりの実施態様において、修飾誘導体は、1以上の疎水性アミノ酸残基の1以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しいバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、したがって、血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を及ぼし、一方、荷電アミノ酸残基(特に、アルギニン)は、ペプチドと細胞表面のリン脂質膜との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。この2つの組合せは、ペプチド薬の半減期、分布容積、及び曝露に影響を及ぼす可能性があり、臨床的なエンドポイントに応じて調整することができる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しい組合せ及び数は、注射部位(ペプチド薬が皮下投与された場合)での刺激を軽減することができる。
【0044】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害により及びβ-ターン立体構造を安定化させるD-アミノ酸の傾向により、タンパク質分解の安定性を高めると考えられる(Tugyiらの文献(2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0045】
一実施態様において、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去及びアラニンによる置換を含む。この実施態様は、潜在的なタンパク質分解攻撃部位を除去するという利点を有する。
【0046】
上述の修飾の各々は、ペプチドの効力又は安定性を意図的に向上させる役割を果たすことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力向上は、以下の機序によって達成することができる:
-より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を利用し、より低い解離速度をもたらす疎水性部位を組み込むこと;
-長距離イオン相互作用を利用し、より速い会合速度をもたらし、より高い親和性をもたらす荷電基を組み込むこと(例えば、Schreiberらの文献、タンパク質の急速静電アシスト会合(Rapid, electrostatically assisted association of proteins)(1996)、Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照);並びに
-例えば、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、アミノ酸の側鎖を正しく拘束すること、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、骨格のねじれ角度を拘束すること、及び同一の理由で分子内にさらなる環化を導入することにより、さらなる拘束性をペプチドに組み込むこと
(総説については、Gentilucciらの文献、Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、及びNestorらの文献、Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418を参照)。
【0047】
(同位体バリエーション)
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、本発明の医薬として許容し得る全ての(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、並びに関連する(放射性)同位体を保持することができる金属キレート基が取り付けられている本発明のペプチドリガンド(「エフェクター」と呼ばれる)、並びに特定の官能基が関連する(放射性)同位体又は同位体標識された官能基で共有結合的に置き換えられている本発明のペプチドリガンドを含む。
【0048】
本発明のペプチドリガンドに含めるために好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば、2H(D)及び3H(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125I、及び131I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、硫黄の同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Ga又は68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、並びにルテチウムの同位体、例えば、177Lu、並びにビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0049】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において、並びに罹患組織上のCAIX標的の存在及び/又は不在を臨床的に評価するために有用である。本発明のペプチドリガンドは、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との間の複合体の形成を検出又は同定するために使用することができるという点で、価値ある診断特性をさらに有することができる。検出又は同定方法は、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)などの標識剤で標識されている化合物を使用することができる。放射性同位体のトリチウム、すなわち、3H(T)及び炭素-14、すなわち、14Cは、その組込みの容易さ及び検出の手段が用意されていることを考慮して、この目的のために特に有用である。
【0050】
重水素、すなわち、2H(D)などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した必要投薬量の結果として得られる、特定の治療的利点をもたらす場合があり、それゆえ、いくつかの状況では、好ましい場合がある。
【0051】
11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)試験において有用であり得る。
【0052】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、通常、当業者に公知の従来の技法によるか、又は以前に利用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例に記載されているものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0053】
(非芳香族分子スキャフォールド)
「非芳香族分子スキャフォールド」という用語への本明細書における言及は、芳香族(すなわち、不飽和)炭素環式又はヘテロ環式環系を含有しない本明細書で定義される任意の分子スキャフォールドを指す。
【0054】
非芳香族分子スキャフォールドの好適な例は、Heinisらの文献(2014) Angewandte Chemie, International Edition 53(6) 1602-1606に記載されている。
【0055】
前述の文書に記載されているように、分子スキャフォールドは、低有機分子などの低分子であってもよい。
【0056】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、高分子であってもよい。一実施態様において、分子スキャフォールドは、アミノ酸、ヌクレオチド、又は炭水化物から構成される高分子である。
【0057】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、ポリペプチドの官能基と反応して、共有結合を形成することができる反応基を含む。
【0058】
分子スキャフォールドは、ペプチドとの結合を形成する化学基、例えば、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、アジド、無水物、スクシンイミド、マレイミド、ハロゲン化アルキル、及びハロゲン化アシルを含み得る。
【0059】
αβ不飽和カルボニル含有化合物の例は、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)である(Angewandte Chemie, International Edition(2014), 53(6), 1602-1606)。
【0060】
(エフェクター及び官能基)
本発明のさらなる態様によれば、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた本明細書で定義されるペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0061】
エフェクター及び/又は官能基は、例えば、ポリペプチドのN及び/もしくはC末端に、ポリペプチド内のアミノ酸に、又は分子スキャフォールドに取り付けることができる。
【0062】
適切なエフェクター基は、抗体及びその部分又は断片を含む。例えば、エフェクター基は、1以上の定型領域ドメインの他に、抗体軽鎖定型領域(CL)、抗体CH1重鎖ドメイン、抗体CH2重鎖ドメイン、抗体CH3重鎖ドメイン、又はこれらの任意の組合せを含むことができる。エフェクター基は、抗体のヒンジ領域(IgG分子のCH1ドメインとCH2ドメインの間に通常見られるそのような領域)を含み得る。
【0063】
本発明のこの態様のさらなる実施態様において、本発明によるエフェクター基は、IgG分子のFc領域である。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、もしくは7日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、又はそれからなるものである。最も有利には、本発明によるペプチドリガンドは、1日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、又はそれからなる。
【0064】
官能基としては、一般に、結合基、薬物、他の実体の取付けのための反応基、大環状ペプチドの細胞への取込みを補助する官能基などが挙げられる。
【0065】
ペプチドが細胞内に透過する能力は、細胞内標的に対するペプチドが効果的になることを可能にする。細胞内に透過する能力を有するペプチドによりアクセスされ得る標的としては、転写因子、チロシンキナーゼなどの細胞内シグナル伝達分子、及びアポトーシス経路に関与する分子が挙げられる。細胞の透過を可能にする官能基としては、ペプチド又はペプチドもしくは分子スキャフォールドのいずれかに付加された化学基が挙げられる。例えば、Chen及びHarrisonの文献、Biochemical Society Transactions(2007)、第35巻、第4部、821頁; Guptaらの文献、Advanced Drug Discovery Reviews(2004)、第57巻、9637に記載されている、例えば、VP22、HIV-Tat、ショウジョウバエのホメオボックスタンパク(アンテナペディア)などに由来するものなどのペプチド。細胞膜を通る移動に効率が良いことが示されている短いペプチドの例としては、ショウジョウバエのアンテナペディアタンパク質由来の16アミノ酸のペネトラチンペプチド(Derossiらの文献(1994) J Biol. Chem. 第269巻、10444頁)、18アミノ酸の「モデル両親媒性ペプチド」(Oehlkeらの文献(1998) Biochim Biophys Acts、第1414巻、127頁)、HIV TATタンパク質のアルギニンリッチ領域が挙げられる。非ペプチド性アプローチとしては、生体分子に容易に取り付けることができる低分子模倣物又はSMOCの使用が挙げられる(Okuyamaらの文献(2007) Nature Methods、第4巻、153頁)。分子にグアニジニウム基を付加する他の化学的戦略も、細胞透過を増強する(Elson-Scwabらの文献(2007) J Biol Chem、第282巻、13585頁)。ステロイドなどの低分子量の分子を分子スキャフォールドに付加して、細胞への取込みを増強することができる。
【0066】
ペプチドリガンドに取り付けることができる官能基の1つのクラスとしては、抗体及びその結合断片、例えば、Fab、Fv、又は単一ドメイン断片が挙げられる。特に、ペプチドリガンドの半減期をインビボで増加させることができるタンパク質に結合する抗体を使用することができる。
【0067】
一実施態様において、本発明によるペプチドリガンドエフェクター基は: 12時間以上、24時間以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、又は20日以上からなる群から選択されるtβ半減期を有する。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基又は組成物は、12時間~60時間の範囲のtβ半減期を有する。さらなる実施態様において、それは、1日以上のtβ半減期を有する。なおさらなる実施態様において、それは、12~26時間の範囲である。
【0068】
本発明の1つの特定の実施態様において、官能基は、医薬関連の金属放射性同位体を錯化させるのに好適である金属キレート剤から選択される。
【0069】
可能なエフェクター基としては、例えば、ペプチドリガンドがADEPTにおいて抗体の代わりになる酵素/プロドラッグ療法において使用するためのカルボキシペプチダーゼG2などの酵素も挙げられる。
【0070】
本発明の1つの特定の実施態様において、官能基は、癌療法のための細胞毒性剤などの薬物から選択される。好適な例としては:シスプラチン及びカルボプラチン、並びにオキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドなどのアルキル化剤;プリン類似体のアザチオプリン及びメルカプトプリン又はピリミジン類似体を含む代謝拮抗剤;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む植物アルカロイド及びテルペノイド;ポドフィロトキシン並びにその誘導体エトポシド及びテニポシド;当初はタキソールとして知られた、パクリタキセルを含む、タキサン;カンプトテシンを含むトポイソメラーゼ阻害剤;イリノテカン及びトポトテカン、並びにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、及びテニポシドを含むII型阻害剤が挙げられる。さらなる薬剤としては、免疫抑制物質ダクチノマイシン(これは、腎移植に使用される)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、カリケアマイシンなどを含む抗腫瘍性抗生物質を挙げることができる。
【0071】
本発明の1つのさらなる特定の実施態様において、細胞毒性剤は、メイタンシノイド(例えば、DM1)又はモノメチルオーリスタチン(例えば、MMAE)から選択される。
【0072】
DM1は、メイタンシンのチオール含有誘導体である細胞毒性剤であり、以下の構造を有する:
【化5】
。
【0073】
モノメチルオーリスタチンE(MMAE)は、合成抗新生物剤であり、以下の構造を有する:
【化6】
。
【0074】
一実施態様において、細胞毒性剤は、ジスルフィド結合又はプロテアーゼ感受性結合などの切断可能な結合によって二環式ペプチドに連結される。さらなる実施態様において、ジスルフィド結合に隣接する基は、ジスルフィド結合の障害、並びにこれにより、細胞毒性剤の切断及びそれに付随する放出の速度を制御するように修飾される。
【0075】
発表された研究により、ジスルフィド結合のどちらかの側に立体障害を導入することにより、還元に対するジスルフィド結合の感受性を修飾する可能性が確立された(Kelloggらの文献(2011) Bioconjugate Chemistry, 22, 717)。より大きい程度の立体障害は、細胞内グルタチオン、そしてまた細胞外(全身)還元剤による還元の速度を低下させ、結果的に、細胞の内側と外側の両方において、毒素が放出される容易さを低下させる。したがって、細胞内環境における効率的な放出(これは、治療効果を最大化する)の最適化と対比した循環中のジスルフィド安定性(これは、毒素の望ましくない副作用を最小化する)における最適条件の選択は、ジスルフィド結合のどちらかの側における障害の程度の注意深い選択によって達成することができる。
【0076】
ジスルフィド結合のどちらかの側における障害は、標的化実体(ここでは、二環式ペプチド)又は分子コンストラクトの毒素側のどちらかに1以上のメチル基を導入することにより調節される。
【0077】
一実施態様において、細胞毒性剤及びリンカーは、WO 2016/067035号に記載されているものの任意の組合せから選択される(該細胞毒性剤及びそのリンカーは、引用により本明細書中に組み込まれる)。
【0078】
(合成)
本発明のペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、Timmermanらの文献(上記)に開示されているもののような従来の化学を用いて達成され得る。
【0079】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチド又はコンジュゲートの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下に説明されるような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチド/コンジュゲートに対して実施される。
【0080】
任意に、対象となるポリペプチド中のアミノ酸残基は、コンジュゲート又は複合体を製造するときに置換されてもよい。
【0081】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0082】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は例えば(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて、酵素により行われてもよい。
【0083】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールドは、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0084】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用される。
【0085】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0086】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0087】
通常、本ペプチドリガンドは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0088】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0089】
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択されたポリペプチドの組合せさえも含むことができる。
【0090】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメーターによって決まる。
【0091】
本発明のペプチドリガンドは、保存前に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0092】
本発明のペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメーターを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択されるペプチドリガンドの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本ペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0093】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載されるペプチドリガンドを体外で又はインビトロで選択的に用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を選択的に死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0094】
(治療的使用)
本発明の二環式ペプチドは、CAIX結合剤としての具体的な有用性を有する。
【0095】
様々な形態の酵素カルボニックアンヒドラーゼ(CA)は、二酸化炭素の水和を触媒して、炭酸水素アニオン(HCO3-)とプロトンを発生させる。CAによって触媒される反応の基質は、CO2、プロトン、及び炭酸水素アニオンの形成及び輸送を含む、いくつかの生理的プロセス、例えば、呼吸、pHレベルの維持、骨発生、及び他のプロセスを調節する。人体において、様々な組織におけるその細胞内局在及びその発現が異なる12種の触媒活性CAイソ酵素が同定された。
【0096】
低分子阻害剤によるヒトカルボニックアンヒドラーゼ(hCA)の活性の臨床的調節は、いくつかのヒト疾患の信頼できる治療法であることが分かっており、これは、既に数十年間、高血圧、緑内障、甲状腺機能亢進症(hyperthyrosis)、及び低血圧症の治療の主要な成分であり続けている(Supuranの文献(2008) Nat. Rev. Drug Discov. 7, 168)。CAの活性部位に結合するカルボニックアンヒドラーゼの古典的阻害剤は、芳香族又はヘテロ芳香族スルホンアミドである。
【0097】
ヒトカルボニックアンヒドラーゼIX(hCA IX)は、外側の細胞膜に結合したアイソフォームである(その触媒ドメインは、細胞外空間に位置する)。生理的条件において、hCAIXは、消化管の特定の組織でのみ発現される。その過剰発現は、低酸素状態の間、インビトロとインビボの両方の癌細胞で示された。hCAIXの発現は、子宮頸部、卵巣、腎臓、食道、肺、乳房、及び脳の癌で検出された。腫瘍において、hCAIXは、正常なレベルでの細胞内pHの維持に重要な分子であり、その発現は、低酸素腫瘍細胞に、酸性条件での増殖における利点を与える(Chicheらの文献(2009) Cancer Res 69, 358)。したがって、hCAIX酵素は、新しい作用機序を有する抗癌治療薬として使用される特異的な阻害剤の開発のための好都合な標的である(Neri and Supuran (2011) Nature Reviews 10, 767)。
【0098】
本発明の方法によって選択されるポリペプチドリガンドは、インビボ治療及び予防用途、インビトロ及びインビボ診断用途、インビトロアッセイ及び試薬用途などに利用することができる。選択されたレベルの特異性を有するリガンドは、交差反応性が望ましい非ヒト動物での試験を伴う用途において、又はホモログもしくはパラログとの交差反応性が注意深く制御される必要がある診断用途において有用である。ワクチン用途などのいくつかの用途において、所定の範囲の抗原に対する免疫反応を誘発する能力を利用して、ワクチンを特定の疾患及び病原体に合わせて調整することができる。
【0099】
少なくとも90~95%の均質性を有する実質的に純粋なペプチドリガンドが哺乳動物への投与に好ましく、98~99%又はそれを上回る均質性が、医薬用途に、特に、哺乳動物がヒトである場合に、最も好ましい。ひとたび、所望に応じて部分的に又は均質になるまで精製されれば、選択されたポリペプチドは、診断的にもしくは治療的に(体外を含む)、又はアッセイ手順、免疫蛍光染色などの開発及び実施において使用することができる(Lefkovite及びPernisの文献(1979及び1981)、Immunological Methods、第I巻及び第II巻、Academic Press, NY)。
【0100】
本発明のさらなる態様によれば、CAIXによって媒介される疾患又障害の予防、抑制、又は治療において使用するための、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートが提供される。
【0101】
本発明のさらなる態様によれば、CAIXによって媒介される疾患又障害の予防、抑制、又は治療の方法であって、それを必要としている患者に、本明細書で定義されるペプチドリガンドのエフェクター基及び薬物コンジュゲートを投与することを含む、方法が提供される。
【0102】
一実施態様において、CAIXは、哺乳動物CAIXである。さらなる実施態様において、哺乳動物CAIXは、ヒトCAIX(hCAIX)である。
【0103】
一実施態様において、CAIXによって媒介される疾患又は障害は、癌から選択される。
【0104】
治療(又は抑制)され得る癌(及びその良性対応物)の例としては、上皮起源の腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、移行細胞癌、及び他の癌腫を含む、様々なタイプの腺腫及び癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、消化管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、並びに肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、口腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔の癌)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、及び付属器の癌(黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、角化棘細胞腫、異形成母斑);血液悪性腫瘍(すなわち、白血病、リンパ腫)並びに前悪性血液障害及びリンパ系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患を含む境界領域悪性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性障害)、並びに骨髄系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性障害、例えば、真性多血症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、並びに前骨髄細胞性白血病);間葉起源の腫瘍、例えば、軟部組織、骨、もしくは軟骨の肉腫、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質性腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、並びに隆起性皮膚線維肉腫;中枢もしくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経膠腫、及び膠芽細胞腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン細胞腫);内分泌腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼球及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽腫);生殖細胞及び栄養膜腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに小児性及び胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍);又は患者を悪性腫瘍に罹りやすい状態にしておく先天性もしくはその他の症候群(例えば、色素性乾皮症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
さらなる実施態様において、癌は、子宮頸部、卵巣、腎臓、食道、肺、乳房、及び脳の癌から選択される。
【0106】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0107】
疾患からの防御又は疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができるポリペプチドリガンドの開発を可能にする本発明によって促進される。
【0108】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例】
【0109】
(実施例)
(材料及び方法)
(ペプチド合成)
ペプチド合成は、Peptide Instrumentsにより製造されたSymphonyペプチド合成装置及びMultiSynTech製のSyro II合成装置を用いるFmoc化学に基づいた。標準的なFmoc-アミノ酸(Sigma, Merck)を適切な側鎖保護基とともに利用し:適用可能な場合、標準的なカップリング条件を各々の場合に使用し、その後、標準的な方法論を用いて、脱保護を行った。HPLCを用いてペプチドを精製し、単離後、これを1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(TATA、Sigma)で修飾した。このために、直鎖状ペプチドを50:50のMeCN:H2Oで約35mLまで希釈し、アセトニトリル中の約500μLの100mM TATAを添加し、H2O中の5mLの1M NH4HCO3で反応を開始させた。反応をRTで約30分から60分間進行させておき、(MALDIにより判断して)反応が終了したら、凍結乾燥させた。終了したら、H2O中の1mlの1M L-システイン塩酸塩一水和物(Sigma)を反応液にRTで約60分間添加して、余分なTATAをクエンチした。
【0110】
凍結乾燥後、修飾されたペプチドを上記のように精製し、一方、Luna C8をGemini C18カラム(Phenomenex)と交換し、酸を0.1%トリフルオロ酢酸に変更した。正しいTATA修飾材料を含有する純粋な画分をプールし、凍結乾燥させ、保存のために-20℃で保持した。
【0111】
別途特記しない限り、アミノ酸は全て、L-立体配置で使用した。
【0112】
(生物学的データ)
(CAIX競合結合アッセイ)
ヒトCAIXに対する本発明のペプチドの親和性(Ki)は、
【化7】
を蛍光リガンドとして使用する、Duboisらの文献(2011) Radiotherapy and Oncology, 99(3), 424-43に記載されているものと類似した競合蛍光偏光アッセイを用いて決定した。
【0113】
(CAIX酵素阻害アッセイ)
酵素阻害は、Hovankyらの文献(2014) Journal of Young Investigators 27 (2), 1-10に記載されているものと類似した方法により決定した。
【0114】
本発明のペプチドリガンドを上述のCAIX競合結合及び酵素阻害アッセイで試験した。結果は、表1に示されている:
表1:本発明のペプチドリガンドの生物学的アッセイデータ
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】