(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ホスホジエステラーゼ阻害剤を含有する放出調節錠剤製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/08 20060101AFI20220309BHJP
A61K 31/4436 20060101ALI20220309BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220309BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20220309BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220309BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220309BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220309BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220309BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A61K45/08
A61K31/4436
A61P17/00
A61K9/22
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541105
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020050798
(87)【国際公開番号】W WO2020148271
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517415609
【氏名又は名称】ユニオン・セラピューティクス・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリアンヌ・ラスムッセン
(72)【発明者】
【氏名】カリン・グリーン・ヘイ
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ラヴン
(72)【発明者】
【氏名】ヤリ・パヤンデル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・イー・ベアテルセン
(72)【発明者】
【氏名】ギッテ・ポマーガード・ペダーセン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC18
4C076DD29
4C076DD41
4C076EE06H
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF06
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4C084AA27
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4C084ZA891
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4C086AA01
4C086AA02
4C086CA05
4C086GA15
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA06
4C086NA12
4C086ZA89
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ホスホジエステラーゼ阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。本医薬製剤は、皮膚の疾患又は病態の処置、予防又は軽減に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)PDE阻害剤、
(ii)薬学的に許容される親水性のマトリックス形成剤のうち1つ又は複数、
(iii)充填剤、流動促進剤及び滑沢剤からなる群から選択される、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤、及び
(iv)任意選択により場合によって、薬学的に許容されるコーティングシステム
を含む、放出調節錠剤製剤。
【請求項2】
前記親水性のマトリックス形成剤が、1つ又は複数のヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はその混合物を含む、請求項1に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、ヒプロメロース2910、ヒプロメロース2208、又はそれらの混合物である、請求項2に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項4】
前記親水性のマトリックス形成剤が、約10%w/w~約30%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えば、15%w/w~約25%w/w、特に17.5%w/wの濃度で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項5】
前記薬学的に許容される添加剤のうち2つが、ラクトース一水和物及び微結晶セルロースから選択される充填剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項6】
前記充填剤が、約30%~約78%w/wのラクトース一水和物、及び0~約40%w/wの微結晶セルロースの濃度で存在する、請求項5に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項7】
前記充填剤が、約71%w/wのラクトース一水和物の濃度で存在する、請求項5又は6に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項8】
前記薬学的に許容される添加剤のうち1つが、コロイド状二酸化ケイ素である流動促進剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項9】
前記流動促進剤が、約0.1%w/w~約2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、例えば、約0.2%w/w~約1%w/w、特に0.5%w/wの濃度で存在する、請求項8に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項10】
前記薬学的に許容される添加剤のうち1つが、ステアリン酸マグネシウムである滑沢剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項11】
前記滑沢剤が、約0.1%w/w~約2%w/wのステアリン酸マグネシウム、例えば、約0.5%w/w~約1.5%w/w、特に1.0%w/wの濃度で存在する、請求項9に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項12】
前記コーティングシステムがPVA系コーティングシステムである、請求項1~11のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項13】
前記ホスホジエステラーゼ阻害剤がPDE4阻害剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項14】
前記PDE4阻害剤が、式(I)の化合物
【化1】
又はその薬学的に許容される塩若しくは多形形態である、請求項13に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項15】
前記化合物が、2-(3,5-ジクロロ-1-オキシド-ピリジン-4-イル)-1-(7-ジフルオロメトキシ-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-スピロ[1,3-ベンゾジオキソール-2,4’-(4H)-チオピラン-1’,1’-ジオキシド]-4-イル)エテノン、多形形態Eである、請求項14に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項16】
前記化合物が、微粒子化した形態である、請求項1~15のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項17】
前記化合物が、D
50≦5μmの粒径分布を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項18】
前記製剤が、約3.3%w/wの微粒子化した2-(3,5-ジクロロ-1-オキシド-ピリジン-4-イル)-1-(7-ジフルオロメトキシ-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-スピロ[1,3-ベンゾジオキソール-2,4’-(4H)-チオピラン-1’,1’-ジオキシド]-4-イル)エテノン、約17.5%w/wのヒプロメロース、約77.7%w/wのラクトース一水和物、約0.5%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、約1.0%w/wのステアリン酸マグネシウム、及び任意選択により場合によって、PVA系コーティングシステムからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【請求項19】
前記製剤が、約10.0%w/wの微粒子化した2-(3,5-ジクロロ-1-オキシド-ピリジン-4-イル)-1-(7-ジフルオロメトキシ-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-スピロ[1,3-ベンゾジオキソール-2,4’-(4H)-チオピラン-1’,1’-ジオキシド]-4-イル)エテノン、約17.5%w/wのヒプロメロース、約71.0%w/wのラクトース一水和物、約0.5%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、約1.0%w/wのステアリン酸マグネシウム、及び任意選択により場合によって、PVA系コーティングシステムからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の放出調節錠剤製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホジエステラーゼ阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。本製剤は、皮膚の疾患又は病態の処置、予防又は軽減に有用である。
【背景技術】
【0002】
原薬の薬物放出並びに化学的及び物理的特性は、数ある因子の中でも特に、最適治療を得るための成功度に影響を及ぼし得る。
【0003】
放出調節錠剤製剤を使用すると、治療剤の放出を制御することができ、したがって、消化管からの薬物吸収を制御することができる。しかしながら、特定の放出調節製剤が所望の放出プロファイルを提供するかどうかを予測することは困難な場合が多く、所望の効果を有する放出調節製剤を得るためには相当な実験を行う必要があることが、一般に分かっている。
【0004】
ホスホジエステラーゼ(PDE)類は、細胞中の環状AMP及び/又は環状GMPを、それぞれ、5-AMP及び5-GMPに加水分解するのを触媒する酵素であり、このため、cAMPレベル又はcGMPレベルの細胞での制御に極めて重要である。ホスホジエステラーゼ4(PDE4)は、cAMPに対する選択性がある。PDE4は、好中球、マクロファージ及びTリンパ球などの免疫細胞及び炎症細胞の中に発現するcAMPの最も重要な調節因子である。cAMPは、炎症反応の調節における重要な二次メッセンジャーであり、PDE4は、TNF-α、IL-2、IFN-γ、GM-CSF及びLTB4などの炎症性サイトカインを調節することによって、炎症細胞の炎症反応を制御することが分かっている。したがって、PDE4の阻害は、炎症性疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患などの治療のための関心の高い目標となっている。(M.D.Houslay et al.,Drug Discovery Today 10(22),2005,pp.1503-1519)。
【0005】
PDE4阻害剤には、患者に投与した場合に認められる有害作用、主に、悪心、下痢及び嘔吐などの消化管の副作用が付いて回る。
【0006】
本発明の式(I)のPDE4阻害剤を含有する即放性錠剤を患者に投与した臨床試験において、その結果は、PDE4阻害剤が、中等度から重度の尋常性乾癬の患者において有効であることを示したが、発生した消化管関連の有害事象の程度は容認できるものではなかった。
【0007】
したがって、全身曝露を維持し、消化管の有害事象を減少させることが可能な、PDE阻害剤を経口投与するための医薬製剤が必要である。
【0008】
消化管の有害事象に対する忍容性の改善及び全身曝露の維持に関して有益な効果は、PDE4阻害剤を、インビトロでの放出が通常の放出調節プロファイルと比較すると速いが、まだ主要な忍容性の問題が認められた即放性錠剤ほど速くはない放出調節錠剤製剤に製剤化することによって実現されることが見出された。
図1の溶解の標的面積は、最適面積を図示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2011/160632号
【特許文献2】国際公開第2011/160632号
【特許文献3】国際公開第2015/197534号
【特許文献4】国際公開第2017/103058号
【特許文献5】国際公開第2018/234299号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.D.Houslay et al.,Drug Discovery Today 10(22),2005,pp.1503-1519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、皮膚の疾患又は病態の処置、予防又は軽減に有用な、PDE阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、全身曝露の維持、及び消化管の有害事象の減少のための忍容性の改善に関して有益な効果を示す、PDE阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤を提供することである。
【0013】
消化管の有害事象の重要な要因は、PDE4阻害剤の腸内での局所濃度に関連している可能性があること、及びPDE4阻害剤の局所濃度が高いほど、消化管の有害事象のレベルを引き上げる可能性があることが仮定されている。
【0014】
PDE4阻害剤が、消化管に入ってから、ゆっくり放出され、溶解することができれば、そのようにして、PDE4阻害剤の局所濃度が高くなることを腸液中で防止することができるであろう。
【0015】
PDE4阻害剤が経口で投与された場合、極めて狭い吸収域が消化管の上部に存在することが分かった。したがって、全身曝露を維持するために、放出調節錠剤製剤からの原薬の放出及び溶解は、消化管の上部で行われなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様において、本発明は、
(i)PDE阻害剤、
(ii)薬学的に許容される親水性のマトリックス形成剤のうち1つ又は複数、
(iii)充填剤、流動促進剤及び滑沢剤からなる群から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤、及び
(iv)任意選択により、薬学的に許容されるコーティングシステム
を含む、PDE阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、PDE阻害剤がPDE4阻害剤である、放出調節錠剤製剤に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、PDE4阻害剤が、式(I)の化合物
【化1】
又はその薬学的に許容される塩若しくは多形形態である、経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。
【0019】
式(I)の化合物、2-(3,5-ジクロロ-1-オキシド-ピリジン-4-イル)-1-(7-ジフルオロメトキシ-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-スピロ[1,3-ベンゾジオキソール-2,4’-(4H)-チオピラン-1’,1’-ジオキシド]-4-イル)エタノン(以後、化合物Aと呼ぶ)は、種々の疾患、例えば、皮膚の疾患又は病態、例えば、増殖性及び炎症性の皮膚障害、皮膚炎、乾癬、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、がん、表皮の炎症、脱毛症、円形脱毛症、皮膚萎縮症、ステロイド誘発性皮膚萎縮症、皮膚老化、皮膚の光老化、ざ瘡、蕁麻疹、掻痒症、及び湿疹などの処置、予防又は軽減に使用するためのPDE4阻害剤として有用なベンゾジオキソール及びベンゾジオキセペン(benzodioxepene)複素環式化合物に関連して、国際公開第2011/160632号パンフレットに開示された。
【0020】
化合物Aは、この化合物の任意の薬学的に許容される形態及び塩を含むものと理解されるべきである。化合物Aは、結晶形態又は非結晶形態で存在してもよい。化合物Aは、難溶性の化合物であると考えられる。化合物A及びその塩、並びにこの化合物を合成する方法は、国際公開第2011/160632号パンフレット、国際公開第2015/197534号パンフレット、国際公開第2017/103058号パンフレット、及び国際公開第2018/234299号パンフレットに開示されている。
【0021】
別の態様において、本発明は、増殖性及び炎症性の皮膚障害、皮膚炎、乾癬、尋常性乾癬(局面型乾癬)、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、がん、表皮の炎症、脱毛症、円形脱毛症、皮膚萎縮症、ステロイド誘発性皮膚萎縮症、皮膚老化、皮膚の光老化、ざ瘡、蕁麻疹、掻痒症、及び湿疹からなる群から選択される皮膚の疾患又は病態の処置、予防又は軽減においてPDE4阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。
【0022】
別の態様において、本発明は、尋常性乾癬の処置、予防又は軽減においてPDE4阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。
【0023】
別の態様において、本発明は、中等度から重度の尋常性乾癬の処置、予防又は軽減においてPDE4阻害剤を経口投与するための放出調節錠剤製剤に関する。
【0024】
別の態様において、本発明は、本願の背景技術の項で示されたように、インビトロでの放出が通常の放出調節プロファイルと比較すると速いが、まだ即放性錠剤ほど速くはない放出調節錠剤製剤に関する。
【0025】
溶解速度は、例えば、親水性のマトリックス形成剤、添加剤(充填剤及びコーティング剤)の種類及び量、並びに原薬の粒径など、幾つかの要因によって決定されることになる。
【0026】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細が、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、その説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】溶解の標的面積を図示するチャート。溶解方法:パドル75rpm、900ml 0.1N HCI+0.5%SDS、37℃、HPLC検出。
【
図2】F1の溶解プロファイル。
図2に示した曲線は、11頁に記載されている溶解方法のパラメーターによって試験した場合の、製剤F1からの化合物Aの放出を表す。
【
図3】F2の溶解プロファイル。
図3に示した曲線は、11頁に記載されている溶解方法のパラメーターによって試験した場合の、製剤F2からの化合物Aの放出を表す。
【
図4】放出調節錠剤中の、本発明の式(I)のPDE4阻害剤を、1日2回、10mg、20mg又は30mg投与した場合に発症した、対象における消化管の有害事象の存在を図示するチャート。各ドットは消化管関連の1つの有害事象を表し、バーは有害事象の持続時間を表す。
【
図5】即放性錠剤中の、本発明の式(I)のPDE4阻害剤を、1日2回、10mg、20mg又は30mg投与した場合に発症した、対象における消化管の有害事象の存在を図示するチャート。各ドットは消化管関連の1つの有害事象を表し、バーは有害事象の持続時間を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用される場合、以下の用語は示された意味を有する。
【0029】
「ホスホジエステラーゼ」という表現は、本明細書で使用する場合、ホスホジエステラーゼ(PDE)類のうち1種又は複数種を指し、PDE4、PDE7及びPDE8がcAMPについて選択的である。PDE4は、cAMPの最も重要な調節因子である。
【0030】
「PDE阻害剤」という表現は、本明細書で使用する場合、PDEを阻害する任意の物質とすることができる。PDE阻害剤は、好ましくはヒトPDE阻害剤である。PDE阻害剤は、好ましくはPDE4阻害剤である。例えば、PDE4阻害剤は、化合物A又はその薬学的に許容される塩若しくは多形形態、好ましくは化合物A、より好ましくは化合物Aの多形形態Eとすることができる。
【0031】
「処置」という用語は、本明細書で使用する場合、症状の改善、悪化の予防、寛解の維持、増悪の予防、及び再発の予防を含む。「予防」という用語は、症状の発生を抑制することを指す。
【0032】
「処置」という用語はまた、疾患、障害若しくは病態の進行の遅延、症状及び合併症の改善、軽減若しくは緩和、並びに/又は疾患、障害若しくは病態の治癒若しくは除去も含む場合がある。
【0033】
「疾患」、「障害」及び「病態」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトの正常な生理学的状態ではない患者の状態を特定するために、互換的に使用される。
【0034】
「親水性のマトリックス形成剤」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。例えば、親水性のマトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はその混合物とすることができる。
【0035】
「充填剤」という用語は、本明細書で使用する場合、ラクトース、例えば、ラクトース一水和物、含水の又は無水のラクトース、微結晶セルロース、マンニトール、イソマルト、ectを含む。例えば、充填剤は、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、又はそれらの混合物とすることができる。
【0036】
「充填剤」という用語はまた、本明細書で使用する場合、結合剤としても機能する。
【0037】
「流動促進剤」という用語は、本明細書で使用する場合、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ectを含む。例えば、流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素とすることができる。
【0038】
「滑沢剤」という用語は、本明細書で使用する場合、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ectを含む。例えば、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムとすることができる。
【0039】
「コーティングシステム」という用語は、本明細書で使用する場合、HPMC系コーティングシステム、PVA系コーティングシステム(ポリビニルアルコール)、PVA-PEG系コーティングシステム(ポリエチレングリコール)又はエチルセルロース系機能性隔膜コーティングシステムを含む。例えば、コーティングシステムは、PVA系コーティングシステムとすることができる。
【0040】
「約」という用語は、およそ、~の辺り、大まかに、又は~の前後を意味するために本明細書で使用される。
【0041】
実施形態
放出調節錠剤製剤の実施形態は、以下の特徴のうち1つ又は複数を含むことができる。
【0042】
放出調節錠剤製剤の一実施形態では、PDE阻害剤はPDE4阻害剤である。
【0043】
別の実施形態では、PDE4阻害剤は均等に分布する。
【0044】
別の実施形態では、PDE4阻害剤は微粒子化されている。
【0045】
別の実施形態では、PDE4阻害剤は、結晶質であり、微粒子化されている。
【0046】
放出調節錠剤製剤の別の実施形態では、PDE4阻害剤は化合物Aである。
【0047】
別の実施形態では、PDE4阻害剤は、化合物A、好ましくは化合物Aの多形形態Eである。
【0048】
別の実施形態では、化合物Aは微粒子化されている。別の実施形態では、化合物Aの多形形態Eは微粒子化されている。
【0049】
別の実施形態では、化合物Aは均等に分布する。別の実施形態では、化合物Aの多形形態Eは均等に分布する。
【0050】
別の実施形態では、化合物Aは、結晶質であり、微粒子化されている。
【0051】
別の実施形態では、化合物Aの多形形態Eは、結晶質であり、微粒子化されている。
【0052】
別の実施形態では、放出調節錠剤製剤は、親水性のマトリックス形成剤、又はその混合物を含有することができる。例えば、親水性のマトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はそれらの混合物とすることができる。例えば、親水性のマトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びその混合物とすることができる。
【0053】
親水性のマトリックス形成剤は、約10%w/w~約30%w/wのHPMC、例えば、約15%w/w~約25%w/wのHPMC、特に17.5%w/wのHMPCの、種々の濃度及び組合せで存在することができる。
【0054】
別の実施形態では、放出調節錠剤製剤は、ラクトース一水和物、含水の又は無水のラクトース、微結晶セルロース、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の充填剤/結合剤を含むことができる。例えば、充填剤はラクトース一水和物とすることができる。
【0055】
充填剤は、約30%w/w~約78%w/wのラクトース一水和物、及び約0~約40%w/wの微結晶セルロースの、種々の濃度で存在することができる。例えば、充填剤は、71%w/wのラクトース一水和物とすることができる。
【0056】
別の実施形態では、放出調節錠剤製剤は、1つ又は複数の流動促進剤を含むことができる。例えば、流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素とすることができる。
【0057】
流動促進剤は、約0.1%w/w~約2%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、例えば、約0.2%w/w~約1%w/w、特に0.5%w/wの種々の濃度で存在することができる。
【0058】
別の実施形態では、放出調節錠剤製剤は、1つ又は複数の滑沢剤を含むことができる。例えば、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムとすることができる。
【0059】
滑沢剤は、約0.1%w/w~約2%w/wのステアリン酸マグネシウム、例えば、約0.5%w/w~約1.5%w/w、特に1.0%w/wの種々の濃度で存在することができる。
【0060】
別の実施形態では、放出調節錠剤製剤は、錠剤コアのフィルムコーティングを含むことができる。
【0061】
別の実施形態では、コーティングシステムは、PVA系コーティングシステムとすることができる。例えば、コーティングシステムは、Opadry(登録商標)IIとすることができる。例えば、コーティングシステムは、錠剤製剤の約3%~約5%の重量増加、特に4%の重量増加の量で存在することができる。
【0062】
本発明の別の実施形態では、PDE阻害剤の粒径分布は、D50≦25μm、例えばD50≦20μm、D50≦10μm、D50≦5μm、又はD50≦3μmを有することができる。
【0063】
別の態様において、PDE阻害剤の量は、約5mg~約60mgの範囲とすることができる。PDE阻害剤の量は、例えば、10mg~50mg、20mg~45mg、及び30mg~40mgの範囲とすることができる。
【0064】
別の態様において、本発明は、尋常性乾癬を処置する方法に関する。本方法は、それを必要とする患者に、PDE阻害剤を含有する放出調節錠剤製剤を投与するステップを含む。
【0065】
別の態様において、本発明は、尋常性乾癬の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、化合物Aを10mgの濃度で含有する放出調節錠剤製剤を投与するステップを含む方法に関する。
【0066】
別の態様において、本発明は、尋常性乾癬の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、化合物Aを30mgの濃度で含有する放出調節錠剤製剤を投与するステップを含む方法に関する。
【0067】
別の態様において、本発明は、尋常性乾癬の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、化合物Aを30mgの濃度で含有する放出調節錠剤製剤を、1日2回投与するステップを含む方法に関する。
【0068】
本発明の別の態様において、放出調節錠剤製剤の調製方法が提供され、当該製造方法は、原薬と添加剤とを混合するステップ及び篩過するステップ、その後、直接打錠するステップ、又はローラー圧縮した後に打錠するステップ、及び最後に任意選択によりコーティングするステップからなっていた。
【0069】
別の態様において、本発明は、本発明のPDE阻害剤;薬学的に許容される親水性のマトリックス形成剤のうち1つ又は複数;充填剤、結合剤、流動促進剤及び滑沢剤からなる群から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤;及び硬カプセル殻材料を含む粒状化した混合製剤に関することができる。
【0070】
親水性のマトリックス形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はそれらの混合物とすることができる。親水性のマトリックス形成剤は、約10%w/w~約20%w/wのHPMCの、種々の濃度及び組合せで存在することができる。
【0071】
充填剤/結合剤は、ラクトース一水和物、含水ラクトース又は微結晶セルロース、及びそれらの混合物から選択することができる。充填剤/結合剤は、約20%w/w~約75%w/wのラクトース一水和物、及び0~約50%w/wの微結晶セルロースの、種々の濃度で存在することができる。
【0072】
流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素とすることができ、約0.1%w/w~約2%w/wの種々の濃度で存在することができる。
【0073】
滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムとすることができ、約0.1%w/w~約2%w/wの種々の濃度で存在することができる。
【0074】
混合製剤は、硬カプセルに入れて調剤することができる。硬カプセルのカプセル殻材料は、幾つかの材料で作製することができる。例えば、ゼラチン(ブタ、ウシ、魚など)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール、デンプン及びプルランを適用することができる。
【0075】
粒状化した混合製剤の製造方法は、原薬と添加剤とを混合するステップ及び篩過するステップ、その後、粒状化ステップ、例えばローラー圧縮、及びカプセル化ステップからなるものとすることができる。
【実施例】
【0076】
<実施例1>
放出調節錠剤製剤
【0077】
【0078】
<実施例2>
製剤FI及びF2の溶解プロファイル
放出調節錠剤からの化合物Aの放出を、インビトロの溶解方法により調査した。以下を参照されたい。
【0079】
溶解方法:
溶解装置:USP/Ph.Eur.app.II(パドル)
75rpm、900ml 0.1N HCl+0.5%SDS、37℃、HPLC検出。
【0080】
放出調節製剤F1
【0081】
【0082】
【0083】
放出調節製剤F2
【0084】
【0085】
【0086】
<実施例3>
経口用量の臨床試験において、健常な対象に、本発明の放出調節錠剤製剤中の式(I)のPDE4阻害剤を投与した。対象は、1~2日目に式(I)の化合物を10mg、3~4日目に式(I)の化合物を20mg、5~6日目に式(I)の化合物を30mg、7~8日目に式(I)の化合物を40mg、9~10日目に式(I)の化合物を50mg、及び11~17日目に式(I)の化合物を60mgの用量で、1日2回摂取した。
【0087】
図4に示すように、対象における消化管の有害な出現(adverse advents)を、式(I)のPDE4阻害剤を10mg、20mg又は30mg投与した場合の発症に関して収集した。
【0088】
この放出調節錠剤製剤試験の結果(
図4)を、以前に完了した比較可能な経口用量臨床試験(健常な対象に、即放性錠剤製剤中の本発明の式(I)のPDE4阻害剤を投与した)の結果と比較した。
【0089】
即放性錠剤製剤試験において、対象は、1~3日目に本発明の式(I)のPDE4阻害剤を10mg、4~6日目に式(I)の化合物を20mg、及び7~13日目に式(I)の化合物を30mgの用量で、1日2回摂取した。対象における消化管の有害な出現(adverse advents)を、式(I)のPDE4阻害剤を10mg、20mg又は30mg投与した場合の発症に関して収集した。
図5に示すその結果は、即放性錠剤製剤は忍容性が不十分であったことを示す。
【0090】
図4に示す結果(式(I)のPDE4阻害剤を含有する放出調節錠剤を投与した場合の、対象における消化管関連の有害事象の存在)を、
図5に示す結果(式(I)のPDE4阻害剤を含有する即放性錠剤を投与した場合の、対象における消化管関連の有害事象の存在)と比較すると、放出調節錠剤製剤試験は、消化管の有害事象の総数が、即放性錠剤と比較して臨床的に有意に低かったことを示している。
【国際調査報告】