(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】アルロース由来の新規な化合物
(51)【国際特許分類】
C07H 3/04 20060101AFI20220309BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20220309BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220309BHJP
【FI】
C07H3/04
A23L29/00
A23L27/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541688
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2019009666
(87)【国際公開番号】W WO2020189859
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0032093
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514158497
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンフィ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】カン,インソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンボ
(72)【発明者】
【氏名】キム,テクボム
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,ソンベ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョンミン
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
4C057
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LG19
4B047LB08
4B047LG23
4C057AA05
4C057BB03
(57)【要約】
本出願は、アルロース由来の新規な化合物及びそれを含む耐酸性を有する組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルロース2分子がグリコシド結合(glycosidic bond)で連結され、前記グリコシド結合は、前記アルロース2分子のうちのアルロース1分子の2位の炭素(C2)のヒドロキシ基が、他のアルロース1分子の1位~6位の炭素(C1~C6)のいずれかの炭素のヒドロキシ基にグリコシド結合(glycosidic bond)されるものである化合物。
【請求項2】
前記アルロース2分子のうちの1分子は、環型アルロースである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記結合は、環型アルロース1分子の2位の炭素(C2)のヒドロキシ基と、他のアルロース1分子の6位の炭素のヒドロキシ基のグリコシド結合(glycosidic bond)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記アルロース2分子のうちの1分子はプシコフラノース(psicofuranose)の形態であり、他の1分子はプシコピラノース(psicopyranose)の形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、2-(ヒドロキシメチル)-2-((3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(2-(hydroxymethyl)-2-((3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、下記化学式(1)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化1】
【請求項7】
前記化合物は、(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R,5S)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール((2S,3R,4R,5R)-2-(hydroxymethyl)-2-(((2R,3S,4R,5S)-3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)、又は(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R,5R)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール((2S,3R,4R,5R)-2-(hydroxymethyl)-2-(((2R,3S,4R,5R)-3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、下記化学式(3)又は下記化学式(4)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【化3】
【請求項9】
前記化合物は、pH0.1~7で耐酸性を有するものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物と、単糖類アルロースとを含む糖類組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物を含む食品添加用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アルロース由来の新規な化合物及びそれを含む耐酸性を有するアルロース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルロースは、糖蜜、干しブドウ、イチジクなどに極微量存在する天然糖であり、砂糖の70%の甘味度を有する単糖類である。アルロースは、フルクトースや砂糖とは異なり、人体内で代謝されないのでカロリーがほとんどなく、体脂肪蓄積抑制作用が報告されている(非特許文献1)。また、アルロースは、血糖に影響を与えず、非う蝕及び抗う蝕機能が発表されており、砂糖の代替剤として脚光を浴びている。
【0003】
一方、アルロース由来の物質については、ガスクロマトグラフィー(Gas chromatography; GC)で部分的に確認できることが開示されている(特許文献1)。しかし、このアルロース由来の物質は、液体クロマトグラフィー(Liquid chromatography; LC)では分離されないので、性質を具体的に確認することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/127669号
【特許文献2】韓国登録特許第10-1723007号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Matuo, T. et. al., Asia Pac. J.Clin. Nutr., 10, 233-237, 2001 ; Matsuo, T. and K. Izumori, Asia Pac. J. Clin. Nutr., 13, S127, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、アルロース由来の物質について鋭意研究を重ねた結果、アルロース製造工程で最初に新規なアルロース二糖類を分離し、その新規な二糖類が従来の二糖類よりも耐酸性に優れるものであることを解明し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、アルロース2分子がグリコシド結合(glycosidic bond)で連結された化合物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本出願は、前記化合物と単糖類アルロースとを含む、耐酸性を有するアルロース組成物を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本出願は、前記化合物を含む食品添加用組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本出願の新規なアルロース二糖類は、構造が類似する他の異性体である砂糖よりも優れた耐酸性を有するので、砂糖の代替剤として食品組成物に用いることができるだけでなく、様々な産業分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アルロースの構造及び炭素番号を示す図である。
【
図2】アルロース製造過程で生成された二糖類のカラム(Biorad Aminex HPX-87C)で分析したHPLCクロマトグラムである。
【
図3】アルロース製造過程で生成された二糖類のカラムで分取した混合物の形態の物質をカラム(YMC Pack Polyamine II)で分析したD1及びD2のHPLCクロマトグラムである。
【
図4】耐酸性に優れるアルロース二糖類であるD1の立体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0013】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本出願に含まれることが意図されている。
【0014】
本出願の一態様は、アルロース2分子がグリコシド結合(glycosidic bond)で連結された化合物を提供する。
【0015】
本出願における「アルロース(allulose)」とは、「プシコース(psicose)」、「サイコース」ともいう化合物であり、ケトヘキソース(ketohexose)の一種であるフルクトースのC-3エピマーを意味する。
【0016】
本出願のアルロース分子は、線形又は環形の構造であり、炭素番号は、当該技術分野で公知のように、ケトン基に近い順に付けられ、ケトン基を有する炭素が2位にナンバリングされる。一具現例において、本出願のアルロースの炭素は、
図1に示すようにナンバリング(numbering)されてもよい。
【0017】
本出願のアルロースは、自然物から抽出してもよく、化学的合成方法又は酵素を用いた生物学的方法で製造してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本出願のアルロースは、L型であってもD型であってもよく、アルロース2分子が両方ともL型又はD型であってもよく、それぞれL型とD型であってもよい。
【0019】
前記アルロースが他のアルロース分子又は他の糖類と結合していない状態であれば、「単糖類アルロース」、「アルロース単糖類」、「アルロース単糖」、「アルロース」などというが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本出願における「グリコシド結合(glycosidic bond)」とは、糖のヘミアセタール性ヒドロキシ基と各種アルコール、フェノール、カルボン酸、アルデヒドなどの官能基間におけるエーテル型結合を意味し、具体的には、単糖類2分子が二糖類を形成する結合である。
【0021】
本出願における「アルロース2分子がグリコシド結合で連結された化合物」は、「アルロース二糖類」、「アルロース二量体」、「二糖類アルロース」などと相互交換的に用いられる。
【0022】
具体的には、前記アルロース二糖類は、アルロース2分子のうちの1分子が環型アルロースであり、前記環型アルロースの2位の炭素のヒドロキシ基と他のアルロース1分子の1位~6位の炭素のいずれかの炭素のヒドロキシ基がグリコシド結合で連結された化合物であってもよい。前記グリコシド結合は、1つ又は2つであってもよく、具体的には1つである。
【0023】
一具現例において、前記結合は、環型アルロースの2位の炭素のヒドロキシ基と、他のアルロースの6位の炭素のヒドロキシ基のグリコシド結合であってもよい。
【0024】
一具現例において、前記アルロース2分子のうちの1分子はプシコフラノース(psicofuranose)の形態であり、他の1分子はプシコピラノース(psicopyranose)の形態であってもよく、また、一具現例において、前記化合物は、化学式(1)で表されるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【0026】
一具現例において、前記アルロース二糖類は、化学式(2)で表されるものであるが、これに限定されるものではない。
【0027】
【0028】
一具現例において、本出願のアルロース二糖類は、2-(ヒドロキシメチル)-2-((3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(2-(hydroxymethyl)-2-((3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)と命名される化合物であってもよく、より具体的には、(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール((2S,3R,4R,5R)-2-(hydroxymethyl)-2-(((2R,3S,4R)-3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)と命名される化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールは、プシコフラノースの形態によって、6-O-β-D-プシコピラノシル-α-D-プシコフラノース(6-O-β-D-Psicopyranosyl-α-D-psicofuranose)、又は6-O-β-D-プシコピラノシル-β-D-プシコフラノース(6-O-β-D-Psicopyranosyl-β-D-psicofuranose)と命名される化合物を総称するものであってもよい。具体的には、6-O-β-D-プシコピラノシル-α-D-プシコフラノースの構造は化学式(3)で表され、6-O-β-D-プシコピラノシル-β-D-プシコフラノースの構造は化学式(4)で表される。
【0030】
【0031】
【0032】
また、前記(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールは、(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R,5S)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール((2S,3R,4R,5R)-2-(hydroxymethyl)-2-(((2R,3S,4R,5S)-3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)と命名される化合物であってもよく、(2S,3R,4R,5R)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(((2R,3S,4R,5R)-3,4,5-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール((2S,3R,4R,5R)-2-(hydroxymethyl)-2-(((2R,3S,4R,5R)-3,4,5-trihydroxy-5-(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-2-yl)methoxy)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol)と命名される化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本出願の化合物は、耐酸性を有するものであってもよい。
【0034】
本出願における「耐酸性」とは、酸(acid)に対する安定性を意味する。具体的には、本出願においては、特定の化合物が酸に対して固有の特性を失うことなく維持する安定性を意味し、より具体的には、本出願における耐酸性を有する化合物とは、他の二糖類と耐酸性が同等であるか、他の二糖類よりも耐酸性に優れることを意味するが、これらに限定されるものではない。一具現例において、前記耐酸性を有する化合物は、前記化合物と異性体の関係にある化合物よりも耐酸性に優れるものであってもよく、具体的には、砂糖(sucrose)よりも耐酸性に優れるものであるが、これらに限定されるものではない。前記耐酸性は、酸性環境で化合物を保管し、具体的には、化合物をpH7以下の環境に0時間を超えてさらし、経時的に純度、質量、重量などの変化値を測定して化合物の残存量を測定することにより評価することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本出願の化合物は、pH0.1~pH7の条件で耐酸性を有し、より具体的には、pH0.5~pH7、pH0.7~pH7、pH1~pH7、pH1~pH6.7、pH1~pH6.5、pH1.5~pH6.5、pH1.5~pH6、pH2~pH6、pH2~pH5.5、pH2~pH5、pH2~pH4.5、又はpH2~pH4で耐酸性を有するが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、本出願の化合物は、pH2~pH7の条件で0時間~120時間保管した場合、残存率が、初期の100重量部に対して、40重量部以上、具体的には、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97又は98重量部以上、より具体的には、99重量部以上であり、また、前記保管時間は、120時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、12時間又は6時間以上であるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本出願の他の態様は、本出願のアルロース二糖類と単糖類アルロースとを含む糖類組成物を提供する。
【0038】
前記組成物において、アルロース二糖類は、アルロース二糖類と単糖類アルロースの重量の合計100重量部に対して、0重量部超、20重量部以下含まれてもよく、具体的には、15重量部以下、13重量部以下、11重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、0.001重量部以下もしくは0.0001重量部以下、及び/又は0重量部超、0.1重量部以上、0.5重量部以上、0.7重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上もしくは3重量部以上含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、本出願の組成物は、結晶形態又は液状形態で存在してもよく、その形態によって組成物中のアルロース二糖類の含有量が異なってもよい。具体的には、本出願の組成物が結晶形態の場合、前記組成物において、アルロース二糖類は、アルロース二糖類と単糖類アルロースの重量の合計100重量部に対して、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、0.05重量部以下、0.005重量部以下、0.001重量部以下、0.0005重量部以下もしくは0.0001重量部以下、及び/又は0重量部超、0.1重量部以上、0.5重量部以上、0.7重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上もしくは3重量部以上含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本出願の組成物が液状形態の場合、前記組成物において、アルロース二糖類は、アルロース二糖類と単糖類アルロースの重量の合計100重量部に対して、15重量部以下、13重量部以下、11重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、0.05重量部以下、0.005重量部以下、0.001重量部以下、0.0005重量部以下もしくは0.0001重量部以下、及び/又は0重量部超、0.1重量部以上、0.5重量部以上、0.7重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上もしくは3重量部以上含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本出願のさらに他の態様は、本出願のアルロース二糖類を含む食品組成物を提供する。
【0042】
本出願の食品組成物には、一般食品組成物、健康食品組成物及び医療用(又は患者用)食品組成物が含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的には、本出願の食品組成物は、飲料(例えば、食物繊維飲料、炭酸飲料、ミスッカル、茶など)、アルコール飲料、パン、ソース(例えば、ケチャップ、トンカツソースなど)、乳加工品(例えば、発酵乳など)、肉加工品(例えば、ハム、ソーセージなど)、チョコレート加工品、ガム、キャンディー、ゼリー、アイスクリーム、シロップ、ドレッシング、スナック(例えば、クッキー、クラッカーなど)、果菜漬け(例えば、砂糖漬け、フルーツ漬け、紅参エキス、紅参切片など)、食事代替食品(例えば、冷凍食品、HMRなど)又は加工食品であってもよい。より具体的には、前記食品組成物は、炭酸飲料組成物であるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本出願のアルロース二糖類を食品組成物に用いる場合、本出願の甘味料をそのまま添加してもよく、他の食品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。本出願の食品組成物は、様々な香味剤や天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前述した天然炭水化物は、グルコース、フルクトースなどの単糖類、マルトース、スクロースなどの二糖類、デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを用いることができる。
【0044】
前記以外に、本出願の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、本出願の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、独立して又は組み合わせて用いることができる。これらの添加剤の比率は、本出願の食品組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲から選択されてもよい。
【0045】
本出願のアルロース由来の新規な化合物は、食品学的に許容される塩の形態で用いられてもよい。
【0046】
本出願における「食品学的に許容される塩」とは、「薬学的に許容される塩」と相互交換的に用いられ、化合物が投与される有機体に深刻な刺激を誘発させず、化合物の生物学的活性及び物性を損なわない、化合物の剤形を意味する。前記塩とは、前記化合物又は誘導体の望ましい生物学的及び/又は生理学的活性を有し、望ましくない毒物学的効果を最小限に抑えたあらゆる塩を意味する。一具現例として、前記塩は、薬学的に許容される遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩の形態であってもよい。酸付加塩は、通常の方法、例えば化合物を過剰量の酸水溶液に溶解し、その塩を水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン又はアセトニトリルを用いて沈殿させて作製する。等モル量の化合物及び水中の酸又はアルコール(例えば、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、次に前記混合物を蒸発させて乾燥させるか、又は析出した塩を吸引濾過してもよい。ここで、遊離酸としては、無機酸と有機酸を用いることができ、無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸などを用いることができ、有機酸としては、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸(maleic acid)、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸(fumaric acid)、マンデル酸、プロピオン酸(propionic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリコール酸(glycollic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、塩基を用いて薬学的に許容される金属塩を形成することができる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、例えば化合物を過剰量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液に溶解し、溶解しない化合物の塩を濾過して濾液を蒸発、乾燥させて得る。ここで、金属塩としては、特にナトリウム、カリウム又はカルシウム塩を用いることが製薬上好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を好適な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0048】
本出願の食品学的に許容される塩には、特に断らない限り、存在し得る酸性基又は塩基性基の塩が全て含まれる。例えば、食品学的に許容される塩としては、ヒドロキシ基のナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などが挙げられ、アミノ基のその他の食品学的に許容される塩としては、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)などが挙げられ、当該技術分野で公知の塩の作製方法で製造することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び実験例を挙げて本出願をより詳細に説明する。これらの実施例及び実験例はあくまで本出願をより具体的に説明するためのものであり、本出願がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
新規なアルロース二糖類の分離
特許文献2に開示されているアルロース製造過程において、アルロース結晶化ステップの前に、原液から、特許文献1とは異なり、HPLCにより二糖類を分離した。具体的には、表1のHPLCクロマトグラフィー条件で分析したところ、原液から、
図2のように、アルロース以外に、従来知られていない新規な物質(unknown)が生成されることが確認された。
【0051】
このように分離した新規な物質は、製造工程によって含有量に多少差があるが、最初の原液には2%以下で存在し、保管時間によっては5%のレベルに増加することが確認された。
【0052】
【0053】
その結果、アルロースは21.1分、新規な物質は31.7分に確認された。よって、生成された新規な物質を分離するために、分取HPLCを用いて新規な物質を純度95%以上に精製し、カラムを用いてさらに精密に分離した。
【0054】
具体的には、HPLCクロマトグラフィーを行った。
【0055】
クロマトグラフィーの分離条件を表2に示す。
【0056】
【0057】
その結果、表1のHPLC条件では1つのピークを示した物質が表2の分離条件では2つのピークを示すことが確認された。よって、それを分離し(
図3)、22.5分に確認されたピークの物質をD1と命名し、17.7分に確認されたピークの物質をD2と命名した。
【実施例2】
【0058】
アルロース二糖類の同定
実施例1で確認されたD1についてさらに分析を行った。
【0059】
Major 6-O-β-D-Psicopyranosyl-α-D-psicofuranoseは、白色の無定形粉末であった。
ESI-MS m/z 365 [M+Na]+; 1H NMR (850 MHz, D2O) δH 3.44 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.47 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.56 (1H, dd, J = 11.0, 5.0 Hz), 3.60 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.62 (1H, dd, J = 11.0, 2.5 Hz), 3.70 (1H, br d, J = 12.5 Hz), 3.75 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.75 (1H, br ma), 3.82 (1H, br d, J = 12.5 Hz), 3.84 (1H, br s), 3.92 (1H, t, J = 3.0 Hz), 3.97 (1H, d, J = 5.5 Hz), 4.09 (1H, t, J = 5.5 Hz), 4.13 (1H, br m) [D2O signal δH 4.70]; 13C NMR signalsb δC 57.6, 60.4, 62.9, 64.7, 64.9, 69.1, 68.9, 70.2, 70.3, 81.2, 101.8, 103.4.
A.ピークの重なりにより、スピン-スピン分裂(multiplicity)及び結合定数(coupling constant)の測定が困難である
B.13C NMRのピーク情報は、NMRのHSQC(850MHz,D2O)及びHMBC(850MHz,D2O)のspectral dataを解析して得た
【0060】
Minor 6-O-β-D-Psicopyranosyl-β-D-psicofuranoseは、白色の無定形粉末であった。
ESI-MS m/z 365 [M+Na]+; 1H NMR (850 MHz, D2O) δH 3.49 (1H, d, J = 13.0 Hz), 3.73 (1H, d, J = 13.0 Hz), 3.58 (1H, ma), 3.68 (1H, dd, J = 11.0, 2.5 Hz), 3.62 (1H, ma), 3.71 (1H, br d, J = 12.0 Hz), 3.82 (1H, br d, J = 12.0 Hz), 3.76 (1H, br ma), 3.78 (1H, ma), 3.87 (1H, br s), 3.98 (1H, t, J = 3.0 Hz), 3.95 (1H, d, J = 4.5 Hz), 4.00 (1H, br m), 4.34 (1H, dd, J = 8.0, 4.5 Hz) [D2O signal δH 4.70]; 13C NMR signalsb δC 57.7, 61.4, 62.2, 64.7, 64.8, 69.0, 69.2, 70.8, 74.4, 80.8, 101.8, 105.9.
A.ピークの重なりにより、スピン-スピン分裂及び結合定数の測定が困難である
B.13C NMRのピーク情報は、NMRのHSQC(850MHz,D2O)及びHMBC(850MHz,D2O)のspectral dataを解析して得た
【0061】
その結果、D1が新規なアルロース二糖類であり、化学式(2)の構造を有することが確認された。
【0062】
【0063】
一方、D1は、2種類の光学異性体の構造を有し、具体的には、major/minor formで五環状のD-アルロース(D-psicofuranose)の2位の炭素(IUPAC nameでは5位)の立体化学が異なることが確認された(
図4)。すなわち、化学式(3)がmajor、化学式(4)がminorの形態であることが確認された。
【0064】
【0065】
【0066】
また、D2は、化学式(2)と構造異性体の関係にあり、アルロースの2位の炭素(C2)のヒドロキシ基と、他のアルロース1分子の1位~6位の炭素(C1~C6)のいずれかの炭素のヒドロキシ基のグリコシド結合(glycosidic bond)である、新規なアルロース二糖類であることが確認された。
【実施例3】
【0067】
アルロース二糖類の耐酸性評価
D1 1%(in 10mM citrate buffer)溶液を作製して耐酸性を測定した。対照群としては、類似する構造の二糖類であるスクロース(sucrose)と、他のアルロース二糖類であるD2を用いた。
【0068】
クエン酸及びクエン酸ナトリウム10mM bufferを用いてpHを2.0、4.0及び6.0に調整した溶液を作製し、それぞれRoom temperature(約40度)で保管し、0時間、24時間、72時間及び120時間経過後に残っている物質の純度をHPLC分析(HPX-87C column,80度,60min,20ul)により確認した。D1、D2及びスクロースの残存率を表3に示す。それぞれの物質の濃度は1%(w/v)、反応温度は40度にした。
【0069】
同一条件で統計的有意差がある場合は異なるアルファベットを付した。
【0070】
【表3】
※異なる文字列A、B、Cは、横の行の結果値の有意差を示す
※*はp<0.1であり、D1とD2はSucroseに比べて有意傾向である
【0071】
測定された各保管期間における結果値は、統計分析として分散分析(ANOVA)を用い、事後検定としてtukey’s多重範囲検定(tukey’s multiple range test)を用いて分析し、統計的有意性はp<0.05に設定した。
【0072】
確認の結果、時間が長くなるほど、また、pHが低くなるほど、残存率の差が大きくなり、特に強い酸性条件であるpH2で120時間経過した後のD1の残存率はスクロースに比べて約130%高かった。
【0073】
前記結果から、D1は、pH6以下で、構造が類似するD2やスクロースよりも優れた耐酸性を有するものであることが確認された。これは、構造が類似する二糖類であっても耐酸性が異なり得ることを示すものであり、本出願の新規なアルロース二糖類が優れた耐酸性を有することを示すものである。
【0074】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】