(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220309BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20220309BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/26
C12N15/10 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543311
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 AU2020050042
(87)【国際公開番号】W WO2020150781
(87)【国際公開日】2020-07-30
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325570
【氏名又は名称】ハプロミック テクノロジーズ プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ダニエル ソロモン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウォルター ドマーニ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB20
4B029CC01
4B029DC04
4B029GB03
4B029HA05
(57)【要約】
本開示は、個々の中期染色体が該デバイスから別々に分配され得るような、中期染色体の分離のためのマイクロ流体デバイスに関する。マイクロ流体デバイスは、一連の拡張領域と狭窄を含む流路を含む。本開示はまた、中期染色体を分離させる方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中期染色体含有流体中の中期染色体を分離するためのマイクロ流体デバイスであって、
以下の:
中期染色体を含有する流体を受け入れるための入口;
個々の中期染色体を別々に分配するための出口;
一連の拡張領域;及び
一連の拡張領域の中の連続した拡張領域の間に位置する1若しくは複数の狭窄;
を含む流路を含み;
ここで、該狭窄は、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力を適用することができ;かつ
該拡張領域は、互いに染色体を分散させるように動作できる、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
中期染色体含有流体中の中期染色体を分離させるためのマイクロ流体デバイスであって、
以下の:
約10μm~約30μmの幅を有する流路であって、以下の:
入口;
出口;及び
一連の拡張領域、及び該一連の拡張領域中の連続した拡張領域の間に位置する1若しくは複数の狭窄、
を含む流路を含み;
ここで、複数の拡張領域が、約50μm~約150μmのチャンネル幅を有し、及び複数の狭窄の中の各狭窄が、約1μm~約3μmの最小幅を有する、
マイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記流路が、約5μm~約40μmの深さを有する、請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記流路の長さが、約2mm~約15mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
入口から出口までの連続した狭窄のそれぞれが、前の狭窄より狭い最小幅を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記1若しくは複数の狭窄のうちの1若しくは複数が、拡大テーパー出口を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記一連の拡張領域の中のそれぞれの拡張領域が、実質的に同じ幅を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記一連の拡張領域が、少なくとも3つの拡張領域、かつ、最大20個の拡張領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記流路が、一連の拡張領域の中のそれぞれの拡張領域の間に2つ以上の狭窄を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記入口が、2μm~3μmの幅を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記マイクロ流体デバイスが、入口の上流に細胞捕獲及び溶解構造をさらに含み、該細胞捕獲及び溶解構造が、以下の:
細胞を含む流体サンプルから細胞を受け入れ、そして保持するように構成された、流路入口に隣接する細胞トラップであって、以下の:
細胞の検査を可能にするのぞき窓
流路入口に接続した開口部、ここで、該開口部は、それを通る細胞の通過を妨げるようなサイズであり;
細胞トラップに溶解バッファーを導入するように構成された溶解ポート、
を含む細胞トラップ、
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記開口部のサイズが約10μm~20μmであり、かつ、通過部の幅が約2μm~約3μmである、請求項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記細胞トラップが、細胞トラップへの細胞の進入を可能にするための開口面を有するマイクロ流体デバイスの長方形のプリズム形状の空洞構造である、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
前記マイクロ流体デバイスが、出口の下流に染色体分配構造をさらに含み、該染色体分配構造が、以下の:
チャンネル入口とチャンネル出口との間に定義され、かつ、流路の出口からの個々の染色体を受け入れるためにポートを有する分配チャンネル、
を含み;
ここで、該チャンネル出口が、単一染色体を含む流体液滴の形態で、マイクロ流体デバイスからの単一染色体を分配するために構成された分配管に接続される、請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
染色体含有中期流体中の中期染色体を分離するための方法であって、以下の:
それにより狭窄が、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に中期染色体を晒す圧力にて、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスに中期染色体含有流体を通過させること、
を含む方法。
【請求項16】
染色体含有流体中の中期染色体を分離するための方法であって、以下の:
マイクロ流体デバイスに中期染色体を含む染色体含有流体を通過させ、ここで、流路を有するマイクロ流体デバイスは、以下の:
入口と出口の間に位置する複数の拡張領域;及び
1若しくは複数の拡張領域の間に位置する1若しくは複数の狭窄、
を含み;
1若しくは複数の狭窄にて又はその中で、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に中期染色体を晒し;
互いに分離された中期染色体を複数の拡張領域内に分散させること、
を含む方法。
【請求項17】
マイクロ流体デバイスを用いて染色体含有流体中の中期染色体を分離するための方法であって、以下の:
マイクロ流体デバイスの流路を通して流体を通過させること、該流路は、複数の交互の狭窄と拡張を有し、
を含み;
ここで、流体が狭窄を通り抜けるとき、該方法は、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に中期染色体を晒すように圧力パルスを加えることを含み;
ここで、流体が拡張を通り抜けるとき、マイクロ流体デバイスは、互いに分離された染色体を分散させるような圧力にて操作される、
方法。
【請求項18】
前記剪断応力が、狭窄の最小幅の壁で計測した場合に、少なくとも約0.02N/m
2~少なくとも約15,000N/m
2である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、以下の:
マイクロ流体デバイスの細胞トラップ内に中期細胞を捕獲し;そして
溶解バッファーを中期細胞に導入し、そして圧力パルスを加えて、細胞を溶解させるのに十分な剪断応力下、細胞トラップから及び流路内に中期細胞を駆動し、かつ、染色体含有流体中の染色体を提供すること、
を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
方法が、以下の:
分配された個々の染色体を、マイクロ流体デバイスの流路の出口から分配チャンネル内に受け入れ;
個々の染色体を分配管に輸送し;
単一染色体を含有する流体液滴の形態で、分配管を介してマイクロ流体デバイスから単一染色体を分配すること、
をさらに含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月23日に出願された豪州特許出願第2019900210号の恩恵を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、染色体の分離のためのマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
動植物種を含めた多くの真核生物の細胞は、倍数性として知られているセット数で、2セット以上の染色体を含有している。例えば、ヒトは、二倍体であり、ゲノムを形成する対合セットの染色体(母方及び父方のコピー)を所有している。特異的染色体の各位置又は遺伝子座では、個体は、同じ配列(遺伝子対立遺伝子、突然変異、マーカー、又はエピジェネティック成分など)の2つのコピー、又はそれぞれ染色体対に対して1つのバージョンを有する、2つの異なった配列、のいずれかを有し得る。異なった遺伝子座からの遺伝子対立遺伝子、突然変異、マーカー、又はエピジェネティック成分などの配列エレメントが、染色体対の同じメンバーで(シス配列で)、又は染色体対の向かい合ったメンバーで(トランス配列で)一緒に生じるか決定することは、相決定として知られている。2以上の配列(対立遺伝子、突然変異、マーカー、又はエピジェネティックス)がcisで生じるとき、これはハプロタイプとして知られている。これらのハプロタイプの配列におけるバリエーションは、遺伝子発現、タンパク質機能、及び疾患の違いなどの機能差をもたら可能性がある。このように、個々の相決定又はハプロタイプを知ることは、改善された診断法及び/又は治療方法などの生物学的経路の理解と制御につながる。残念ながら、相決定及びハプロタイプ決定のための既存のプロセスには多くの短所がある。
【0004】
Quakeら(Nature Methods, Vol. 11, No. 1, 2014, pp 19-21)による総説では、Quakeは、ゲノム「分析は「平均」ヒトゲノムの基準配列を決定することから個々のゲノムの大量配列決定へと進歩した」が、ゲノム解析のいくつかの態様において、困難が残っていることを明らかにしている。特に、Quakeは、既存の従来技術がハプロタイプ測定に十分に適合していないと訴え続けている。
【0005】
Dolezelら(Funct. Integr. Genomics, 2012, 12:397-416)は、個々の染色体の分離及び単離のアプローチの範囲を考察している。Dolezelによって考察された1つのアプローチとしては、勾配遠心分離によるものなどの相対密度に基づく染色体の分離が挙げられるが;しかしながら、それは大きい染色体と小さい染色体の分離のためだけに提供され、特定の染色体の分離に適合していないので、このアプローチには多くの短所がある。Dolezelで考察された別のアプローチは、染色体特異的プローブを用いて官能化された磁性ビーズの使用であるが;しかしながら、このアプローチの短所は、単離された画分が低い純度のものである点である。Dolezelは、最もうまくいっているアプローチはフローサイトメトリーの使用であると訴え続けている。フローサイトメトリーでは、染料で染色した染色体の液滴が、フローチャンバーから放出され、そして散乱光が分析されて、光の散乱と蛍光に従って染色体含有液滴中の着目の染色体が同定されるレーザビームを通過し、そして電場を使用してそれらの液滴を収集コンテナ内に向かわせる。しかしながら、Dolezelは、フローサイトメトリーでは、(ヒト、イヌ、ブタ、及びニワトリを含めた)様々な動物種において全ての染色体を解決できないと考察している。Dolezelは、多くの研究グループが個々の染色体を分離及び単離するためのフローサイトメトリーの改善に対して彼らの努力を注いだと訴え続けている。
【0006】
別の技術は、Fanら(Nat. Biotechnol., January 2011, 29(1):51-57)に採用されたアプローチである。Fanらは、現在の技術(メイト-ペアショットガンゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の様々な形態、カーボンナノチューブを用いた原子力顕微鏡、フォスミド/コスミドクローニング、及びハイブリダイズドプローブの使用など)はすべて、幅広い採用を妨げる多くの重大な短所を有すると明らかにした。代わりに、Fanらは、単一のヒト中期細胞からそれぞれの染色体の相同コピーを分離及び増幅するためのマイクロ流体デバイスの開発を報告している。Fanらのデバイスは、それらの機能に応じて5つの別個の領域に分離される。第一の領域は、単一の中期細胞を同定するための光学顕微鏡の使用を含む。中期細胞が同定された時点で、一連の周囲の弁が、その細胞がデバイスの第二の領域に導入され得るように、その細胞を捕獲するように作動する。第二の領域では、中期細胞をペプシンと接触させて、細胞の細胞質を消化し、そして染色体懸濁液を形成する。次に、この懸濁液は、それがデバイス内の一連の弁を作動させることによって48のチャンバーに仕切られる第三の領域内に通される。第四の領域では、次に、48のチャンバーのそれぞれの内容物は、トリプシン、アルカリ、及び多重鎖置換増幅法のためのその後の中和を用いた処理によって一連の異なったチャンネルを通ってデバイスで個別に増幅される。デバイスの第五の領域は、それぞれ増幅された染色体の収集のための別々の出口を含む。
【0007】
特に、発明者らの知っている限り、Fanらが開示したデバイスは採用されていない。発明者らは、成功することなく、Fanらによって報告されたプロトコールを複製することを試みた。発明者らは、Fanらのデバイス及びプロセスの再現性の欠如が採用を妨げたと推測した。これに関して、Dolezelは、Fanらのマイクロ流体デバイスからの脱却を示唆し、そして、「フロー細胞遺伝学の適用は、最近開発されたマイクロ流体アプローチに対する的確な代替手段であり得、そしてそれは、単一のヒト中期からの個々の染色体は、異なったチャンネル及び増幅に分割される(Fan et al. 2011)」と訴えた。
【0008】
直接的な相決定のための染色体を分離するための技術の短所のため、(例えば、骨髄移植患者と将来のドナーを照会するために)相決定又はハプロタイプを推測するための最も最近の試みは、例えば家族隔離研究、連鎖不均衡又は配列されたDNA断片から相の確立を得るためのアルゴリズムなど、推論や思い込みから成る間接法を使用する。
【0009】
中期状況では、染色体は、密に折り畳まれたDNAとタンパク質の個別のバンドルを構成する。斯かる染色体は、互いにつながりを形成し、そして染色体のクラスタの形態で存在し得る。
【0010】
上記を考慮すると、直接的な相決定及びハプロタイプ決定を可能にするために染色体を選別及び分離するデバイス及び/又はプロセスの開発が必要である。しかしながら、従来技術のアプローチには大きな短所がある。これにより、従来技術の1若しくは複数の短所に対処する及び/又は改善することが、本発明の目的である。
【0011】
明細書におけるどのような従来技術に対する参照も、この従来技術があらゆる法域の一般的な一般知識の一部を形成すること、或いはこの従来技術が理解されると合理的に期待される可能性があること、つまり、当業者によって従来技術の他の部分と関連する及び/又は組み合わせられると見なされること、を承認また示唆ではない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第一の態様において、中期染色体含有流体中の中期染色体を分離するためのマイクロ流体デバイスであって、
以下の:
中期染色体を含有する流体を受け入れるための入口;
個々の中期染色体を別々に分配するための出口;
一連の拡張領域;及び
一連の拡張領域の中の連続した拡張領域の間に位置する1若しくは複数の狭窄;
を含む流路を含み;
ここで、該狭窄は、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力を適用することができ;かつ
該拡張領域は、互いに染色体を分散させるように動作できる、
マイクロ流体デバイス、を提供する。
【0013】
本発明の更なる態様において、流体中のクラスタ化中期染色体を分離するためのマイクロ流体デバイスであって、
以下の:
流体を受け入れるための入口;
分離された中期染色体を分配するための出口;
1若しくは複数の拡張領域;及び
狭窄領域の下流に少なくとも1つの拡張領域を有する1若しくは複数の狭窄;
を含む流路を含み;
ここで、該狭窄は、クラスタ化中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力を適用することができ;かつ
ここで、該拡張領域は、分離された中期染色体を分散させるように動作できる、
マイクロ流体デバイス。
【0014】
「するように動作できる」とは、マイクロ流体デバイスが、染色体が狭窄における比較的高い剪断応力及び/又は(流路の非拡張領域における流速に対して)拡張領域において比較的遅い流速にさらされるような、流動及び/又は圧力条件下で操作されることを意味する。例えば、デバイスは、狭窄と拡張における流速の変化がそれぞれの剪断応力と分散をもたらす一定圧力にて;或いは染色体が狭窄を通り抜けるときに、圧力パルスが対象である染色体に適用されるように、及び染色体が拡張領域を通り抜けるときに、速度低下が、染色体が分散するのを可能にするような変動圧力にて操作され得る。
【0015】
本発明の一形態において、中期染色体は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタの形態で存在し、及びマイクロ流体デバイスは、中期染色体の1若しくは複数のクラスタを個々の中期染色体に分離するためのものである。そのような場合、狭窄は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタに対して、そのクラスタから中期染色体を分離するか、又はそのクラスタをより小さいクラスタに破砕するのに十分な剪断応力を適用するように動作でき;及び拡張領域は、互いに分離された中期染色体及び/又は1若しくは複数のクラスタを分散させるように動作できる。
【0016】
「クラスタ」又は「クラスタ化」とは、中期染色体が「接着する」か又は互いに密に結合する中期染色体の分類又は集合を意味する。このクラスタ化は、多くの染色体の物理化学的相互作用の結果として生じる可能性があり、例えばクラスタ化は、中期染色体が直接(タンパク質又はDNA相互作用によって)又は細胞質基質などの物質の存在のため、互いに結合を形成し得る場合に、起こり得る。そのため、特に他の細胞内容物と結合したとき、流体中の染色体は、接着するか又は一緒に凝集する傾向があり得る。
【0017】
本発明の一形態において、拡張領域は、互いに分離された中期染色体を分散させるように動作できる。
【0018】
当然のことながら、デバイスの出口から分配された中期染色体のかなり大きな割合、又は好ましくはすべてが、別々に分配された個々の中期染色体である。
【0019】
本発明の一形態において、中期染色体含有流体は、流体調製物中に含まれる、(単数若しくは複数の)中期細胞からの溶解物又は溶解物の成分である。
【0020】
本明細書中に使用される場合、「流体」としては、溶解された材料を挙げてもよい。例えば、流体としては、溶解バッファー及び/又は分離バッファーなどのバッファーの溶存成分が挙げられる。
【0021】
本発明の更なる態様において、中期染色体含有流体中の中期染色体を分離させるためのマイクロ流体デバイスであって、
以下の:
約10μm~約30μmの幅を有する流路であって、以下の:
入口;
出口;及び
一連の拡張領域、及び該一連の拡張領域中の連続した拡張領域の間に位置する1若しくは複数の狭窄、
を含む流路を含み;
ここで、複数の拡張領域が、約50μm~約150μmのチャンネル幅を有し、及び複数の狭窄の中の各狭窄が、約1μm~約3μmの最小幅を有する、
マイクロ流体デバイス、を提供する。
【0022】
それぞれの狭窄の最小幅のサイズは、染色体の通過を妨害するためのものであり、狭窄を通る中期染色体を駆動し、及び互いに中期染色体を分離させる剪断応力に染色体を晒すのに十分な圧力を必要とする。
【0023】
拡張領域のサイズは、それらが拡張部分を出たときに染色体間の間隔を増やすのを助ける1若しくは複数の拡散及び移流によって横軸方向と軸方向の両方で分離された中期染色体を分散させるためのものである。拡張領域はあらゆる好適なサイズ及び形状をとってもよい。
【0024】
本発明の一形態において、中期染色体は、染色体の1若しくは複数のクラスタの形態で存在し、及びマイクロ流体デバイスは、中期の1若しくは複数のクラスタを個々の中期染色体に分離するためのものである。
【0025】
本発明の上記の態様のある実施形態において、(任意選択で拡張領域及び/又は狭窄及び/又は狭窄にすぐ隣接する流路の領域を除いた)流路は、約5μm~最大約40μmの深さを有する。好ましくは、流路の深さは約12μm~である。より好ましくは、流路の深さは約14μm~である。より一層好ましくは、流路の深さは約16μm~である。最も好ましくは、流路の深さは約18μm~である。これに代えて又はこれに加えて、流路の深さは最大35μmである。より好ましくは、流路の深さは最大約30μmである。最も好ましくは、流路の深さは最大約25μmである。制限されることのない一例において、流路の深さは20μm±2μmである。
【0026】
ある実施形態において、狭窄は、流路の深さより浅い深さを有する。好ましくは、狭窄の深さは、流路の深さより約5μm~約15μm浅い。狭窄の深さが約5μm~約15μmであり得ることが好ましい。流路に対した狭窄の深さが浅いのは、染色体が狭窄内で受ける剪断を増強するために有用である。
【0027】
上記の実施形態の一形態において、流路の大部分の深さと狭窄の深さとの間で深さのステップ変化がある。好ましくは、深さのステップ変化は、約5μm~約15μm、例えば、流路が10μm以上のバルク深さを有するとき、約5μmの狭窄の深さである。狭窄にすぐ隣接した流路の領域が、深さのステップ変化がその流路の中にあるような、狭窄と同じ深さを有することもまた好ましい。
【0028】
上記の実施形態のある形態において、(拡張領域及び/又は狭窄及び/又は狭窄にすぐ隣接する流路の領域を除いた)流路の深さは、流路の全長に沿て一定である。すなわち、流路の深さは、±2μmの範囲内までなど、流路の全長に沿って実質的に変化しない。
【0029】
本発明の上記の態様のある実施形態において、(拡張領域及び狭窄を除いた)流路は、約10μm~約30μmの幅を有する。好ましくは、流路幅は約12μm~である。より好ましくは、流路幅は約14μm~である。最も好ましくは、流路幅は約16μm~である。これに代えて又はこれに加えて、流路幅は最大28μmである。より好ましくは、流路幅は最大約26μmである。最も好ましくは、流路幅は最大約24μmである。制限されることのない一例において、流路幅は20μm±2μmである。
【0030】
当然のことながら、流路の外形は、特殊適用に好適な場合に選択される。例えば、流路の幅は、流路の深さより大きくてもよく、又はその逆もまた同様である。
【0031】
本発明の上記の態様のある実施形態において、流路長は約2mm~約15mmである。好ましくは、流路長は約3mm~である。最も好ましくは、流路長は約4mm~である。これに代えて又はこれに加えて、流路長は最大12mmである。より好ましくは、流路長は最大約10mmである。最も好ましくは、流路長は最大約8mmである。制限されることのない一例において、流路長は約5mmである。
【0032】
ある実施形態において、1若しくは複数の狭窄又はそれぞれの狭窄の最小幅は、約1.00μm~約3.00μmである。好ましくは、最小幅は約1.25μm~である。より好ましくは、最小幅は約1.50μm~である。最も好ましくは、最小幅は約1.75μm~である。これに代えて又はこれに加えて、最小幅は最大約2.75μmである。より好ましくは、最小幅は最大約2.50μmである。最も好ましくは、最小幅は最大約2.25μmである。制限されることのない一例において、最小幅は2.00μm±0.20μmである。
【0033】
ある実施形態において、狭窄の最小幅の部分の長さは、約4μm~最大約16μmである。好ましくは、長さは約6μm~である。最も好ましくは、長さは約8μm~である。これに代えて又はこれに加えて、長さが最大約14μmであることが好ましい。最も好ましくは、最大約12μmである。制限されることのない一例において、長さは約10μmである。
【0034】
ある実施形態において、入口から出口までのそれぞれの連続した狭窄は、前の狭窄より小さい最小幅及び/又は深さを有する。ある実施形態において、連続した狭窄の少なくともいくつかが、同じ最小幅及び/又は深さを有する。
【0035】
ある実施形態において、1若しくは複数の狭窄のうちの1若しくは複数は、拡大テーパー出口を有する。好ましくは、拡大テーパー出口は、流路の幅の約2/3以下の幅まで広くなる。好ましくは、拡大テーパー出口は、流路の幅の半分以下の幅まで広くなる。
【0036】
ある実施形態において、拡張領域は、約50μm~約150μmの幅を有する。好ましくは、拡張領域の幅は約60μm~である。より好ましくは、拡張領域の幅は約70μm~である。最も好ましくは、拡張領域の幅は約80μm~である。これに代えて又はこれに加えて、拡張領域の幅は最大140μmである。より好ましくは、拡張領域の幅は最大約130μmである。最も好ましくは、拡張領域の幅は最大約120μmである。制限されることのない一例において、拡張領域の幅は約100μmである。
【0037】
ある実施形態において、拡張領域の長さは、約0.2mm~最大約0.8mmである。好ましくは、長さは約0.3mm~である。最も好ましくは、長さは約0.4mm~である。これに代えて又はこれに加えて、長さは最大約0.7mmであることが好ましい。最も好ましくは、最大約0.6mmである。制限されることのない一例において、長さは約5mmである。
【0038】
ある実施形態において、一連の拡張領域の中のそれぞれ拡張領域は、実質的に同じ幅を有する。
【0039】
ある実施形態において、流路は、一連の拡張領域の中に少なくとも3つの拡張領域を含む。好ましくは、少なくとも4つの拡張領域を含む。最も好ましくは、少なくとも5つの拡張領域を含む。これに代えて又はこれに加えて、流路は、最大20個の拡張領域を含む。好ましい形態において、流路は、以下の:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19、から選択される数の拡張領域を含む。
【0040】
ある実施形態において、流路は、一連の拡張領域の中のそれぞれの拡張領域の間に1若しくは複数の狭窄を含む。
【0041】
ある実施形態において、流路の入口は、2μm~3μmの幅を有する。好ましくは、狭窄は入口より狭い幅を有する。
【0042】
ある実施形態において、流路の出口は、約1μm~2μmの幅を有する。
【0043】
ある実施形態において、マイクロ流体デバイスは、入口の上流に細胞捕獲及び溶解構造をさらに含み、該細胞捕獲及び溶解構造は、以下の:
細胞を含む流体サンプルから細胞を受け入れ、そして保持するように構成された、流路入口に隣接する細胞トラップであって、以下の:
細胞の検査を可能にするのぞき窓
流路入口に接続した開口部、ここで、該開口部は、それを通して細胞の通過を妨げるようなサイズであり;
細胞トラップに溶解バッファーを導入するように構成された溶解ポート、
を含む細胞トラップ、
を含む。
【0044】
ある実施形態において、開口部と通過部のサイズは、約2μm~約3μmである。
【0045】
ある実施形態において、細胞トラップは、細胞トラップへの細胞の進入を可能にする開口面を有するマイクロ流体デバイスの長方形のプリズム形状の空洞構造である。
【0046】
好ましくは、細胞トラップ開口部は、開口面の反対側にある面にある。
【0047】
好ましくは、細胞トラップは、流路の深さと実質的に同じ深さを有する。より好ましくは、細胞トラップは、深さと同じ幅及び長さの寸法を有する。好ましいサイズは、20μm×20μm×20μm(±5μm)である。
【0048】
細胞トラップは、流路入口及び/又は細胞トラップへの細胞の進入を可能にする開口部から、流路入口に接続された開口部を隔絶するために弁及び/又はポンプを含んでもよい。
【0049】
ある実施形態において、マイクロ流体デバイスは、出口の下流に染色体分配構造をさらに含み、該染色体分配構造は、以下の:
チャンネル入口とチャンネル出口との間に定義され、かつ、流路の出口からの個々の染色体を受け入れるためにポートを有する分配チャンネル、
を含み;
ここで、該チャンネル出口は、単一染色体を含む流体液滴の形態で、マイクロ流体デバイスからの単一染色体を分配するために構成された分配管に接続される、
マイクロ流体デバイス。ある実施形態において、分配チャンネルは、流路の深さと同じ深さを有する。
【0050】
ある実施形態において、分配構造は、一連の拡張部分の下流に染色体保持領域をさらに含み、ここで、該染色体保持部分は、中期染色体が流路を通って移動する上流と同時に下流への移動からその中に1若しくは複数の染色体を保持するように機能する拡張領域を含む。
【0051】
ある実施形態において、マイクロ流体デバイスは、検出ゾーンをさらに含み、ここで、該検出ゾーンは、中期染色体の存在を検出するためのデバイスで含むか又は関連する。ある実施形態において、デバイスは、個々の中期染色体の存在を検出できる。例えば、デバイスは光検出器であってもよい。検出のための好適な出力は蛍光を含む。
【0052】
検出ゾーンでは、個々の中期染色体は、流路の出口の下流で検出され得、ここで、それらは、別々に分配され、そして更なる分析のためにスライド又はウェルプレート上に乗せられる。
【0053】
本発明の更なる態様において、染色体含有中期流体中の中期染色体を分離するための方法であって、以下の:
それにより狭窄が、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に対して中期染色体を晒す圧力にて、本発明の1若しくは複数の態様において先に定義したマイクロ流体デバイスに中期染色体含有流体を通過させること、
を含む方法が提供される。
【0054】
本発明のこの態様のある実施形態において、方法は、出口から染色体を別々に分配されることをさらに含む。
【0055】
本発明のこの態様の一形態において、中期染色体は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタの形態で存在し、かつ、ここで、狭窄は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタを個々の中期染色体に分離させるのに十分な剪断応力に対して、中期染色体の1若しくは複数のクラスタを晒し;かつ、ここで、個々の中期染色体は、出口から別々に分配される。
【0056】
本発明のこの態様の一形態において、圧力はパルス状圧力である。パルス状圧力は、流路に沿って前方と後方の両方に交互に加えられ得、ここで、加えられる全体的な圧力のバランスは、中期染色体が出口に向かって徐々に動くようなものである。あるいは、圧力は定圧であってもよい。
【0057】
本発明の更なる態様において、染色体含有流体中の中期染色体を分離するための方法であって、以下の:
マイクロ流体デバイスに中期染色体を含む染色体含有流体を通過させ、ここで、該流路を有するマイクロ流体デバイスは、以下の:
入口と出口の間に位置する複数の拡張領域;及び
1若しくは複数の拡張領域の間に位置する1若しくは複数の狭窄、
を含み;
1若しくは複数の狭窄にて又はその中で、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に中期染色体を晒し;そして
互いに分離された中期染色体を複数の拡張領域内に分散させること、
を含む方法が提供される。
【0058】
本発明のこの態様のある実施形態において、方法は、マイクロ流体デバイスから分離された中期染色体を別々に放出することをさらに含む。
【0059】
本発明のこの態様の一形態において、中期染色体は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタの形態で存在し、そしてここで、狭窄は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタを、染色体の1若しくは複数のクラスタを個々の染色体に分離させるのに十分な剪断応力に晒す。
【0060】
本発明の更なる態様において、マイクロ流体デバイスを用いて染色体含有流体中の中期染色体を分離するための方法であって、以下の:
マイクロ流体デバイスの流路を通して流体を通過させること、該流路は、複数の交互の狭窄と拡張を有し、
を含み;
ここで、流体が狭窄を通り抜けるとき、該方法は、互いに中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に中期染色体を晒すように圧力パルスを加えることを含み;
ここで、流体が拡張を通り抜けるとき、マイクロ流体デバイスは、互いに分離された染色体を分散させるような圧力にて操作される、
方法が提供される。
【0061】
本発明のこの態様のある実施形態において、方法は、マイクロ流体デバイスから分離された染色体が別々に放出されることをさらに含む。
【0062】
本発明のこの態様の一形態において、中期染色体は、中期染色体の1若しくは複数のクラスタの形態で存在し、そしてここで、流体が狭窄を通り抜けるとき、圧力パルスは、中期染色体の1若しくは複数のクラスタから中期染色体を分離させるのに十分な剪断応力に、中期染色体の1若しくは複数のクラスタを晒す。
【0063】
本発明の種々の上記態様によると、剪断応力は、狭窄の最小幅の壁で計測した場合、少なくとも約0.02N/m2~少なくとも約15,000N/m2又はその間の任意の値であり得る。好ましくは、剪断応力は、狭窄の最小幅の壁で計測される場合、約0.02N/m2~約12,500N/m2、約0.02N/m2~約10,000N/m2、約0.02N/m2~約9,000N/m2、約0.02N/m2~約8,500N/m2、約0.02N/m2~約8,000N/m2、約0.02N/m2~約7,000N/m2、約0.02N/m2~約6,000N/m2、約0.02N/m2~約5,000N/m2、約0.02N/m2~約4,000N/m2、約0.02N/m2~約3,500N/m2、約0.02N/m2~約3,000N/m2、約0.02N/m2~約2,500N/m2、約0.02N/m2~約2,000N/m2、約0.02N/m2~約1,500N/m2、約0.02N/m2~約1,000N/m2、約0.02N/m2~約800N/m2、約0.02N/m2~約600N/m2、約0.02N/m2~約500N/m2、約0.02N/m2~約400N/m2、約0.02N/m2~約300N/m2、約0.02N/m2~約250N/m2、約0.02N/m2~約200N/m2、約0.02N/m2~約150N/m2、約0.02N/m2~約100N/m2、約0.02N/m2~約80N/m2、約0.02N/m2~約60N/m2、約0.02N/m2~約50N/m2、約0.02N/m2~約40N/m2、約0.02N/m2~約30N/m2、約0.02N/m2~約25N/m2、約0.02N/m2~約10N/m2、約0.02N/m2~約5N/m2、又は約0.02N/m2~約1N/m2である。好ましくは、剪断応力は、狭窄の最小幅の壁で計測される場合、約1N/m2~約15,000N/m2、約2N/m2~約12,500N/m2、約5N/m2~約10,000N/m2、約5N/m2~約9,000N/m2、約10N/m2~約8,500N/m2、約10N/m2~約8,000N/m2、約15N/m2~約7,000N/m2、約15N/m2~約6,000N/m2、約20N/m2~約5,000N/m2、約20N/m2~約4000N/m2、from 約25N/m2~約4,000N/m2、約50N/m2~約3,000N/m2、約100N/m2~約2,000N/m2、約200N/m2~約1,000N/m2、約100N/m2~約500N/m2、約200N/m2~約400N/m2、約5N/m2~約500N/m2、約10N/m2~約400N/m2、約20N/m2~約100N/m2、又は約30N/m2~約60N/m2である。好ましくは、剪断応力は、狭窄の最小幅の壁で計測される場合、約0.2N/m2超、約1N/m2、約5N/m2、約10N/m2、約25N/m2、約30N/m2、約40N/m2、約50N/m2、約60N/m2、約80N/m2、約100N/m2、約150N/m2、約200N/m2、約250N/m2、約300N/m2、約400N/m2、約500N/m2、約600N/m2、約800N/m2、約1,000N/m2、約1,500N/m2、約2,000N/m2、約2,500N/m2、約3,000N/m2、約3,500N/m2、約4,000N/m2、約5,000N/m2、約6,000N/m2、約7,000N/m2、約8,000N/m2、約8,500N/m2、約9,000N/m2、約10,000N/m2、又は約12,500N/m2である。好ましくは、剪断応力は、狭窄の最小幅の壁で計測される場合、約1N/m2、約5N/m2、約10N/m2、約25N/m2、約30N/m2、約40N/m2、約50N/m2、約60N/m2、約80N/m2、約100N/m2、約150N/m2、約200N/m2、約250N/m2、約300N/m2、約400N/m2、約500N/m2、約600N/m2、約800N/m2、約1,000N/m2、約1,500N/m2、約2,000N/m2、約2,500N/m2、約3,000N/m2、約3,500N/m2、約4,000N/m2、約5,000N/m2、約6,000N/m2、約7,000N/m2、約8,000N/m2、約8,500N/m2、約9,000N/m2、約10,000N/m2、約12,500N/m2、又は約15,000N/m2未満である。
【0064】
本発明の種々の上記態様によると、圧力は、好ましくは流路にわたって加えられる。流路にわたって加えられる圧力は、約0mbar~約10,000mbar又はその間の任意の値である。好ましくは、加えられる圧力は、約2mbar~約7,000mbar、約30mbar~約5,000mbar、約50mbar~約2,500mbar、約100mbar~約1,000mbar、約250mbar~約1,000mbar、約300mbar~約1,000mbar、又は約400mbar~約700mbarである。好ましくは、加えられる圧力は、約0mbar超、約2mbar、約30mbar、約50mbar、約100mbar、約250mbar、約300mbar、約400mbar、約700mbar、約1,000mbar、約2,500mbar、約5,000mbar、又は約7,000mbarである。好ましくは、加えられる圧力は、約2mbar、約30mbar、約50mbar、約100mbar、約250mbar、約300mbar、約400mbar、約700mbar、約1,000mbar、約2,500mbar、約5,000mbar、約7,000mbar、又は約10,000mbar未満である。
【0065】
本発明の種々の上記態様によると、方法は、以下の:
マイクロ流体デバイスの細胞トラップ内に中期細胞を捕獲し;そして
溶解バッファーを中期細胞に導入し、そして圧力パルスを加えて、細胞を溶解させるのに十分な剪断応力下、細胞トラップから及び流路内に中期細胞を駆動し、かつ、染色体含有流体中の中期染色体を提供すること、
を含んでもよい。
【0066】
本発明の種々の上記態様において、方法は、以下の:
分配された個々の染色体を、マイクロ流体デバイスの流路の出口から分配チャンネル内に受け入れ;
個々の染色体を分配管に輸送し;
単一染色体を含有する流体液滴の形態で、分配管を介してマイクロ流体デバイスから単一染色体を分配すること、
をさらに含み得る。
【0067】
好ましくは、流体液滴は、約100nL~最大約500nLの体積を有する。より好ましくは約100nL~最大約400nLである。より一層好ましくは100nL~最大約300nLである。
【0068】
先に記載の1若しくは複数の態様及びその実施形態において、染色体含有流体は、方法が中期染色体の化学的に補助された剪断分離のための方法になるような溶解バッファーを含む。
【0069】
当然のことながら、溶解バッファーは、細胞の溶解を支援するバッファーである。分離バッファーは、染色体の分離を支援するバッファーである。溶解バッファーは分離バッファーを含んでもよく、そしてその逆もまた同様である。
【0070】
先に記載の1若しくは複数の態様及びその実施形態において、溶解バッファーは、溶解バッファーの化学的作用又は化学的作用と物理的作用の組み合わせによって細胞が溶解されるように、導入される。溶解バッファー中に組み込まれるか又は溶解バッファーの後に、分離バッファーが、染色体含有流体中の中期染色体の導入前又はそれと共に、流路の入口に導入される。
【0071】
先に記載の発明の1若しくは複数の態様及びその実施形態において、染色体特異的標識;及び/又はDNA染色は、デバイスの入口内への細胞の導入前に加えられてもよい。先に記載の本発明の1若しくは複数の態様及びその実施形態において、中期細胞は、固定され、そして透過化されて、デバイスの入口内への細胞の導入前の染色体特異的標識のハイブリダイゼーション;及び/又はDNA染色を容易にする。
【0072】
本発明の更なる態様及び前段落に記載の態様の更なる実施形態は、例として与えられる以下の説明、及び添付図面に対する言及から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの図解。
【0074】
【
図2】狭窄を例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0075】
【
図3】それを通過して細胞がマイクロ流体デバイス内に導入されるサンプリングポートを例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0076】
【
図4】上流の細胞トラップ及び溶解構造を例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0077】
【
図5】化学的に補助された細胞の剪断溶解、並びに細胞トラップから及び流路内への圧力パルス下の転送を例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0078】
【
図6】流路と拡張領域を例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0079】
【
図7】流路出口と染色体検出を例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0080】
【
図8】個々の染色体分配のための下流の染色体分離を例示するマイクロ流体デバイスの図解。
【0081】
【
図9】ウェルプレート上へのマイクロ流体デバイスからの単一染色体含有液滴の分配を例示する図解。
【0082】
【
図10】マイクロ流体デバイスのポンプ配置を示す図解。
【0083】
【
図11】マイクロ流体デバイスの流路内の狭窄の詳細を示す拡大図面。
【0084】
参照文献
Quake et al. (Nature Methods, Vol. 11, No. 1, 2014, pp 19-21)
【0085】
Dolezel et al. (Funct. Integr. Genomics, 2012, 12:397-416)
【0086】
Fan et al. (Nat. Biotechnol., January 2011, 29(1):51-57)
【発明を実施するための形態】
【0087】
本発明の詳細な説明
実施形態の詳細な説明
本発明は、互いに中期染色体を分離させるためのマイクロ流体デバイス及び方法に関する。
【0088】
好ましい形態において、マイクロ流体デバイスは、単一の中期細胞を捕獲及び溶解し、単一化染色体中に排除された染色体を懸濁し、それぞれの単一化染色体を検出し、次に、後工程のために、各染色体をマイクロ流体デバイスから容器(ガラススライド又はウェルプレートなど)に分配するために構成される。
【0089】
おおまかに言えば、細胞は、その細胞が中期細胞であるか否か決定するために(光学顕微鏡によるなど)それが分析されるマイクロ流体デバイスに導入される。細胞が中期細胞であれば、それは捕獲され、次に、溶解バッファーが、チャンネル制限を通り抜け及びマイクロ流体デバイスの流路内に細胞トラップから細胞及びその内容物を駆動するための高圧力パルスを伴ったマイクロ流体デバイス内に導入され、それと同時に、それがチャンネル制限を通過する場合に、細胞膜に対する剪断によって細胞を溶解する。次に、染色体は、典型的には1若しくは複数のクラスタの形態で、マイクロ流体流路に現れる。マイクロ流体流路では、染色体の1若しくは複数のクラスタは、交互に並ぶ一連の狭窄及び拡張を通り抜ける。
【0090】
狭窄は、流路を通る染色体の1若しくは複数のクラスタの流れに対する障害を提供する。圧力パルスが、狭窄を通る染色体の1若しくは複数のクラスタを駆動し、そしてそれは、同時に、1若しくは複数のクラスタを1つずつに壊すために染色体の1若しくは複数のクラスタに対して大きな剪断応力を加える。
【0091】
拡張では、染色体は、染色体が分散し、互いに切り離されるようになる、低い流速と変化する流れプロフィルに晒される。拡張はまた、個々の染色体と混合されて、それらの染色体を安定させる、並びに染色体の1若しくは複数のクラスタと混合されて、その後の狭窄における染色体の剪断分離を化学的に助ける機会を有する溶解バッファーも提供する。
【0092】
染色体の1若しくは複数のクラスタは、染色体の1若しくは複数のクラスタが別々及び個々の染色体へ破砕されるまで、複数の交互の狭窄と拡張に晒される。これらの個々の染色体は、流路の出口で検出され、そこで、それらは別々に分配され、更なる分析のためにスライド又はウェルプレート上に乗せられる。
【0093】
このように、本発明のデバイス及び方法は、その後のハプロタイプ決定のために個々の染色体を分離させる機構を提供する。
【0094】
本発明の実施形態が以下で説明される。
【0095】
図1は、染色体懸濁液から単一染色体を分離及び分配するためのマイクロ流体デバイス100の図解である。この場合、マイクロ流体デバイス100は、ウエハーツーリングによるポリジメチルシロキサン(PDMS)鋳造として形成される。当業者は、多くの異種材料が使用され得ることを理解しているであろう。PDMS鋳造はガラスカバースリップでふたをされる。この場合もやはり、異種材料が使用されてもよい。しかしながら、ガラスは、容易にマイクロ流体デバイス100の成分の観察を可能にするその光学特性(例えば、光学的明澄度にもかかわらず自発蛍光がない)及びプラズマ活性化によりPDMSと結合できるその能力のため、キャッピング材料として選択される。
【0096】
マイクロ流体デバイス100は、入口104及び出口106を有するマイクロ流体流路102を含む。この実施形態において、流路102は、5mmの長さを有する。しかしながら、異なった長さ、例えば3mm~15mmなどが使用される場合がある。流路102は、(
図1では、1~5とラベルされる)5つのゾーンに分割される。これらのゾーンのそれぞれは、第一の流路部分108と拡張部分110を表す第二の流路部分を含む。第一の流路部分108は、拡張部分110の断面積より小さい流れ方向の断面積横断を有する。この場合は、流路102には20μmの深さがあり、第一のチャンネル部分108には20μmの幅 (例えば、400μm
2の横断流路面積)があり、及び拡張部分110には100μmの幅 (例えば、2000μm
2の横断流路面積)がある。よって、当該実施形態において、第一の流路部分108対拡張部分110の横断流路の比は1:5である。この実施形態において1:5の比があるが、発明者らは1:2~1:10の比が好適であるという意見である。
【0097】
第一の流路部分108のそれぞれは、狭窄202を含む(
図2及び
図11、拡大図を参照)。第一の流路部分108のそれぞれが、複数の狭窄202を含んでもよいことが理解される。この実施形態において、狭窄202は約1μm~約2μmの幅を有する。さらに、入口104から出口106までの連続した第一の流路部分108のそれぞれの狭窄202の幅は、先の第一の流路部分108の狭窄202の幅より狭い。
【0098】
図11は、流路部分1102と1104の間の狭窄1100の実施形態を例示する。狭窄1100は、流路の幅の約半分である幅までテーパーがかかった拡大テーパー出口1106を有する。
図11では、狭窄は、流路部分1102と1104より浅い深さを有する。この特定の実施形態において、狭窄は、約5μmの深さを有するにもかかわらず、流路部分1102と1104は約20μmのバルク深さを有する。項目1108及び1110と標識された、狭窄1100にすぐ隣接した流路の領域は、狭窄1100の深さ(例えば、約5μm)から流路のバルク深さ(例えば、約20μm)への流路の中で深さが段階的に変更するように、狭窄(例えば、約5μm)と同じ深さを有する。
【0099】
流路102の構成要素の運転はここで簡潔に説明される。運転中、染色体の1若しくは複数のクラスタを含む流体は、圧力下、入口104を介して流路102に導入される。流体は、それが狭窄202を通り抜ける、ゾーン1の第一の流路部分108を通って流れる。狭窄202は、それを通る染色体の1若しくは複数のクラスタの通過を妨害する。単一の中期染色体の大体のサイズは約0.5μm~約3μmであるのに対して;染色体クラスタは、単一の中期染色体よりわずかに大きい~中期細胞のサイズよりわずかに小さい(約10μm~15μm)のサイズの範囲をとり得る。とにかく、狭窄内の流体は、狭い流路面積を提供することによる流路102に対して増強された流速に晒され、この増強された流速が制限を抜ける染色体の1若しくは複数のクラスタを推し進め、それと同時に、染色体の1若しくは複数のクラスタを、狭窄の寸法、(次々に速度に作用する)加えられた圧力及び流体特性に依存する壁における約0.02N/m2~約1N/m2などの大きな剪断に晒す。この剪断応力は、染色体の1若しくは複数のクラスタからより小さい染色体クラスタに離散させる、取り外された単一染色体をもたらし得る染色体の1若しくは複数のクラスタの断片化に十分である。次に、単一染色体203及び/又はより小さい染色体クラスタ204は、第二のチャンネル部分、例えばゾーン1の拡張部分110に入る前に、狭窄202の下流の流路102の第一の流路部分108の狭窄202の拡大テーパー出口を介して現れる。拡張部分110では、単一染色体及び/又はより小さい染色体クラスタは、より広い流路面積による第一の流路部分108に対して減少した流速に晒される。この拡張部分110では、単一染色体及び/又はより小さい染色体クラスタは、それらがゾーン2のより狭い第一の流路部分108に拡張部分が出るとき、染色体間の間隔増大をもたらし得る拡散と移流の組み合わせによって半径方向と軸方向の両方で分散させる。さらに、拡張領域110の染色体及び/又はより小さい染色体クラスタの分散は、染色体含有流体中に存在し得る試薬が混合され、そして染色体及び/又はより小さい染色体クラスタの表面の周りに拡散されることを可能にする(例えば、安定剤、或いは染色体の分離を促進する及び/又は凝集を予防するか若しくは最小化する他の試薬)。
【0100】
ゾーン2では、単一染色体203及び/又はより小さい染色体クラスタ204は、それらが狭窄202を有する第一の流路部分108を通り抜ける類似のプロセスを受ける。しかしながら、この場合、ゾーン2の狭窄202はゾーン1の狭窄202より狭い。この理由は、より小さい染色体クラスタの通過を妨害するためであり、染色体クラスタをさらに分裂させ及び/又は染色体クラスタから単一染色体を分離させるために、より小さい染色体クラスタをより高い剪断応力に晒すためのより高い流速を提供するためである。一方、この狭窄を通り抜けた後に、染色体は同様に、ゾーン2の第一の流路部分108に現れ、その後、更なる分散のためにゾーン2の拡張領域110に入る。
【0101】
上記のプロセスはゾーン3、4、及び5をを通して反復され、それによって、これらのゾーンの第一の流量部分110の各狭窄202は、染色体クラスタの通過を妨害し、より小さい染色体クラスタ204を分裂させる幅に縮小し;そしてこれらのゾーンのそれぞれの拡張領域110は、互いに単一染色体203及び/又は染色体クラスタ204をさらに分散させる。
【0102】
それぞれのゾーンの流路102を通り抜けた後に、次に、染色体は、互いに軸方向に離間された単一の染色体として流路の出口106を通過する。単一染色体が軸方向に離れて離間されるので、単一染色体は下流の目的のために互いに単離される。
【0103】
図1で示された実施形態において、マイクロ流体デバイス100は、流路102の上流に細胞捕獲及び溶解構造112を含む。細胞捕獲及び溶解構造112は、細胞を含む流体を導入するためのサンプルポート114、細胞を捕獲して細胞の調査を可能にする細胞トラップ402(
図4、拡大図を参照)、溶解バッファーを導入して細胞を溶解し、そして細胞が好適であると見なされた場合にそこに含まれた染色体が放出される溶解ポート116、及び廃棄試薬と不適当と見なされた細胞を排出するための廃棄物ポート118を含む。流路の出口では、デバイスは、個々の中期染色体を検出して、染色体が分配されることを保証するための検出ゾーン119を含む(
図7、拡大図を参照)。流路102の川下では、マイクロ流体デバイスは、分配ポート122、抽出ポート124及び分配チャンネル704を含む分配構造120を含む。細胞トラップ402は、単一の中期細胞を保持するのに十分なほど小さい20μm×20μm×20μmの寸法がある。細胞トラップ402は、流路102の入口への開口部404を含む。開口部404は、細胞が細胞トラップ402から流路102内に通過するのを防ぐために約2μm~約3μmの幅を有する。
【0104】
運転の間、細胞サンプルは、サンプルポート114を介してマイクロ流体デバイスに提供される。
【0105】
図3は、サンプルポート114を介した細胞403を含む流体サンプルの添加を示す。
図3では、サンプルポート114は高圧力で運転され、廃棄物ポート118は低圧力で運転され、溶解ポート116と分配ポート122は基準圧力で運転され、及び抽出ポート124は閉じられる。この配置を考えて、サンプルは、サンプル転移チャンネル126を通って廃棄物ポート118に流れる。
【0106】
図4は、調査のための細胞トラップ402における細胞403の捕獲を例示する。
図4では、サンプルポート114、溶解ポート116、及び廃棄物ポート118は基準圧力で操作され;分配ポート122は低圧力で操作され;そして抽出ポート124は閉じられる。この配置の効果は、細胞トラップ内に細胞403を維持する圧力差を提供することであり、例えば、開口部404に対して細胞トラップ402内の細胞を偏らせる吸引効果が存在する。しかしながら、細胞403は、開口部404を通り抜けることができない。細胞403が細胞トラップ402内に保持された時点で、ガラスカバースリップを通して目視検査が可能である。目視検査の目的は、細胞403が中期細胞である-そしてこれにより、染色体懸濁液を得るのに好適であると確認することである。
【0107】
細胞403が中期細胞でない場合、次に、細胞403は、例えば分配ポート122を介して背圧を加えること及び廃棄物ポート118を通して細胞を排出することなどによって細胞トラップ402から洗い流される。すなわち、分配ポート122は高圧力で操作され;廃棄物ポート118は低圧力で操作され、サンプルポート114と溶解ポート116は基準圧力で操作され;そして抽出ポート124は閉じられる。
【0108】
細胞が中期細胞である場合、次に、細胞は、細胞膜を破裂させ、細胞内から染色体を放出させるための溶解プロセスに晒される。このプロセスは
図5に示されている。
図5では、
溶解ポート116をより高い圧力(例えば、40~45 mbar)で操作し、分配ポート122を低圧力(例えば、30未満mbarなどの35mbarの基準圧力未満)で操作し;サンプルポート114と廃棄物ポート118を基準圧力(例えば、35mbar)で操作し、そして抽出ポート124は閉じられる、ことによって、溶解バッファー405が加えられる。この効果は、溶解バッファー405が、溶解ポート116から、それが溶解させる細胞と接触する溶解チャンネル502を通って流れることである。
【0109】
次に、圧力パルスが、開口部を通って、細胞膜を剪断することによって細胞を溶解する狭窄に沿って細胞を押し進め、そして入口104を介して流路102内に(染色体の1若しくは複数のクラスタを含む)細胞の内容物を通過させるために使用される。この圧力形態では、サンプルポート114、廃棄物ポート118、及び溶解ポート116がパルス圧下で操作され;分配ポート122が低圧力で操作され、そして抽出ポート124は閉じられる。
【0110】
溶解バッファーは、Type1超純水、2v/v%の酢酸、ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテルとしても知られている5w/v%のトリトン X-100(親水性ポリエチレンオキシド鎖(平均で、それは9.5エチレンオキシドユニット)及び芳香族炭化水素の親油又は疎水基を有する非イオン性界面活性剤)、0.1w/vの%ペプシン、75mMの塩化カリウムをに含む水溶液である。このバッファーでは;酢酸が染色体形状を固定及び保存し、トリトンX-100が細胞膜成分及び疎水性タンパク質を可溶化/溶解させ、かつ、染色体を放出するのに第二の役割があり、ペプシンがそれらのクラスタから個々の染色体を放出し、そして細胞分解及び細胞タンパク質除去を支援し、並びに塩化カリウムは、浸透圧により細胞を膨張させ、及びペプシン溶解性を高めるのに使用される塩である。あるいは、バッファーは、酢酸でpH5に緩衝化した0.1% w/vのペプシン、1mMのEDTA、73mMの酢酸カリウム緩衝液、2mMの硫酸マグネシウムを含んでもよい。あるいは、これらのバッファーのいずれかの酢酸の固定液の役割は、固定液ホルムアルデヒドによって実施される場合がある。当業者は、当該技術分野で知られている他の緩衝液組成もまた、溶解及び/又は分離バッファーとしての使用に好適であるだろうことを理解しているであろう。
【0111】
図2は、狭窄202を通して染色体クラスタを駆動するための圧力パルスの使用を例示する。これは、溶解ポート116を通して高圧力パルス(例えば、300~1000mbar)を適用することによって達成される。この作動モード下では、サンプルポート114及び廃棄物ポート118は基準圧力(例えば、35mBar)で操作され;分配ポート122は低圧力(例えば、<30mbar)で操作され;そして、抽出ポート124は閉じられる。溶解ポート118からの追加の圧力は、狭窄202によって妨害されたクラスタ化染色体204(例えば、狭窄202の狭い開口部で捕獲されるようになり得る染色体の1若しくは複数のクラスタ)を駆動し、そして、染色体の1若しくは複数のクラスタを、染色体の1若しくは複数のクラスタ204を単一染色体203及び/又はより小さい染色体クラスタに破砕するための高剪断応力条件に晒す。このプロセスは、様々なゾーンに反復される。
【0112】
代替アプローチでは、サンプルポート114(例えば、250~950mBar又は250~1,000mBar)、廃棄物ポート118(例えば、250~950mBar又は250~1000mBar)、及び溶解ポート116(例えば、300~1000mBar)を介して高圧力パルスが加えられ、並びに分配ポート122(例えば、0mBar)に低い圧力が加えられ、そして、抽出ポート124は閉じられる。
【0113】
記載した圧力管理下では、狭窄ゾーンを通した剪断応力は、狭窄の寸法及び適用された圧力に応じて、約0.02N/m2~15,000N/m2の範囲に及ぶ。
【0114】
溶解バッファーと、溶解ポート116と分配ポート122の間で異なる圧力の組み合わせは、細胞膜の破砕を引き起こし、かつ、開口部404を通して流路102内に細胞の内容物を押し進める、化学的に補助された剪断溶解プロセスを引き起こす。細胞の内容物は、染色体の1若しくは複数のクラスタ204(及び潜在的に単一染色体203)を含む。次に、染色体の1若しくは複数のクラスタは、染色体を分離させるために、本明細書で先に記載したとおりチャンネル102における剪断処理プロセスに晒される。
【0115】
図6は、細胞が溶解された後に、染色体205が流路102内に排除され、そしてゾーンのうちの1つの拡張領域110を通って動く、マイクロ流体デバイス100の運転の例示を提供する。
図6では、サンプルポート114、溶解ポート116、及び廃棄物ポート118が溶解バッファー適用設定を維持し;分配ポート122は基準圧力で操作され;そして、抽出ポート124は閉じられる。よって、圧力差は、流路102の入口104から流路の出口106に向かって染色体を駆動する流路102全体にわたって存在する。拡張セクションは、ゾーン1の拡張領域110を通って分散及び分離された単一染色体203を示す。拡張領域110は、単一染色体の分散を補助するようなヘリンボンミキサーなどの混合装置を含んでもよい。
【0116】
染色体が分離された時点で、それらは、蛍光シグナルの生記録によるなどして、出口106で検出される。それぞれの検出事象が、分配システムが活性化するきっかけとなる。
図7及び
図8は、染色体の検出及びカウント、並びに抽出ポート124を介したマイクロ流体デバイス100の外への単一染色体の移動を例示する。
図7は、光検出器702を使用した出口106における単一染色体203の検出を例示する。検出制限703は、染色体が一列で存在することを確実にする。染色体の検出のときに、分配システムが起動される。(存在する場合、ペプシン活性から染色体形状の分解を止めるための)中和バッファーの流量が、マイクロ流体デバイス100から、検出された染色体を捕獲し、そしてそれを分配するために分配ポート122を介して提供される。各染色体は、液滴の形態でマイクロ流体デバイスから放出される。液滴は、容器(例えば、ガラススライド又は特殊なウェルプレート)上に分配される。さらに詳細には、染色体が検出された時点で、抽出ポート124の弁が閉鎖位置(
図7に示す)から開放位置に切り換えられ、そして、分配ポート122の圧力が増して、中和剤を提供する。この増強された流量709(
図8に示す)は、出口106から、それに続いてそれがウェルプレート又はガラススライド上に乗せられる、分配チャンネル704に分配される単一染色体203をもたらす。増強された流量709はまた、流路102で流動逆転をもたらし、分離された染色体を維持するのに役立つ。
【0117】
一例として、検出の間、サンプルポート116及び廃棄物ポート118は0mBarにて操作され;溶解ポート116は2~5 mBarで操作され;及び分配ポート122は2mBarで操作される。代替例として、検出の間、サンプルポート116及び廃棄物ポート118は10mBarで操作され;溶解ポート116は20mBarで操作され;及び分配ポート122は2mBarで操作される。この低圧力差は、出口106での染色体の検出を可能にするための流路102を通した流れを示す。染色体が検出された時点で、分配ポート122の圧力は、出口106から分配チャンネル704へと染色体を分配するために15mBarまで増強される。
【0118】
図9は、分配チューブ705を通した分配チャンネル704の出口から移動するウェルプレート902への、単一染色体203を含む200nLの液滴900の堆積を例示する。このプロセスは、それぞれ単一染色体を含む46個の個別の液滴があるアレイ、例えば、ヒト細胞から採取した染色体に関するものなどのウェルプレート902上に各染色体を乗せるまで繰り返され得る。分配チューブの疎水性コーティング706は、液滴が分配チューブ705に接着しないことを確実にする。
図9はまた、カートリッジ707及びガラスカバースリップ708に関連する分配チャンネル704を例示する。
【0119】
図10は、基準圧力を用いた、本発明の一実施形態によるポンプ配置を示す。この実施形態において、サンプルポート114は、35mBarに設定された基準圧力を用いた69mBar圧力ポンプを使用するために構成され;溶解ポート116は、35mBarに設定された基準圧力を用いた1000mBar圧力ポンプを使用するために構成され;廃棄物ポート118は、35mBarに設定された基準圧力を用いた70mBar圧力ポンプを使用するために構成され;分配ポート122は、35mBarに設定された基準圧力を用いた345mBar圧力ポンプを使用するために構成され;及び抽出ポート124は通常閉じられている。
【0120】
概して先に記載のように、マイクロ流体デバイス100の運転は、マイクロ流体デバイスの様々な流体ポートを圧力/流量制御器に接続することによって実施される。345mbar圧力ポンプが、サンプルポート114及び廃棄物ポート118に接続されるが、なぜなら、それらが細胞スクリーニング及び捕獲中の細胞運動を制御するために使用され、そしてそれは、低流量を作り出し、かつ、維持するための圧力変化の高度な分解能を必要とするからである。1つの1000mBar圧力ポンプが溶解ポート116に接続されて、トラップ内に保持される細胞における剪断を引き起こすための高圧力パルスを提供する。69mBarは分配ポート122に接続されて、染色体移動のための分配チャンネルにおける圧力低下を可能にする。分配チャンネル704は、液滴を分配するときを除いて、運転中には通常閉じられている抽出ポート124上に弁(ガスケット上に設置されたチューブ)を有する。すべての圧力調節器が、最初に35mBarの基準圧力に設定され、この基準圧力から、各圧力ラインは、マイクロ流体デバイス100内の流れの求められる方向性によって上げられても又は下げられてもよい。
【0121】
あるいは、この実施形態において、サンプルポート114は、35mBarに設定された基準圧力を用いた1000mBar圧力ポンプを使用するために構成され;溶解ポート116は、35mBarに設定された基準圧力を用いた1000mBar圧力ポンプを使用するために構成され;廃棄物ポート118は、35mBarに設定された基準圧力を用いた1000mBar圧力ポンプを使用するために構成され;分配ポート122は、35mBarに設定された基準圧力を用いた345mBar圧力ポンプを使用するために構成され;及び抽出ポート124は通常閉じられている。
【0122】
概して先に記載のように、マイクロ流体デバイス100の運転は、マイクロ流体デバイスの様々な流体ポートを圧力/流量制御器に接続することによって実施される。1000mbar圧力ポンプが、サンプルポート114及び廃棄物ポート118に接続されるが、なぜなら、それらが細胞スクリーニング及び捕獲中の細胞運動を制御するために使用され、そしてそれは、低流量を作り出し、かつ、維持するための圧力変化の高度な分解能を必要とするからである。1つの1000mBar圧力ポンプが溶解ポート116に接続されて、トラップ内に保持される細胞における剪断を引き起こすための高圧力パルスを提供する。1000mBarは分配ポート122に接続されて、染色体移動のための分配チャンネルにおける圧力低下を可能にする。分配チャンネル704は、液滴を分配するときを除いて、運転中には通常閉じられている抽出ポート124上に弁(ガスケット上に設置されたチューブ)を有する。すべての圧力調節器が、最初に35mBarの基準圧力に設定され、この基準圧力から、各圧力ラインは、マイクロ流体デバイス100内の流れの求められる方向性によって上げられても又は下げられてもよい。
【0123】
分配は、分配管705(例えば、当該実施形態の分配管は、0.79mmの外径、0.15mmの内径、及び7mmの長さを有する)を介してマイクロ流体デバイス100から液滴を分配することによって実施され、ここで、各液滴は染色体を含む。これは、分配ポート122にてより高い圧力を引き起こし、かつ、抽出ポート124にて弁を開けることによっておこなわれる。次に、流れは、分配チャンネル704を通して、分配管を通して、及び分配管チップの外側の圧力低下により移動した。適当な液滴サイズが生じた時点で(液滴サイズは、圧力低下を変えることによって変えられるが、サイズの一例は200nLである)、各液滴はガラススライド又は特別に設計されたウェルプレート上に分配される。次に、分配ポート122からの圧力は、基準圧力に戻される。液滴は、形成された液滴の表面張力によって容器に付着する。アレイ及び容器上に各液滴を分配するために、容器を保持する自動化機構が利用される。その機構は、例えば、容器上に液滴のアレイを作成するために×及びy軸に沿って、及び容器に各液滴を取り付けるためにz軸で、などの3つの軸でカートリッジまで独立に移動する。
【0124】
当然のことながら、この明細書に開示及び定義される本発明は、テキスト又は図面から言及されたか又は明白である2以上の個々の特徴のすべての選択的組み合わせまで拡大される。これらの様々な組み合わせのすべてが、本発明の様々な選択的態様を構成する。例えば、先に記載した個々の特徴の選択的トポロジーが、本発明の選択的態様を構成することは理解される。
【図】
【国際調査報告】