(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】靴底具
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20220309BHJP
A43B 5/06 20220101ALI20220309BHJP
A43B 5/12 20060101ALI20220309BHJP
A43B 7/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B5/06
A43B5/12
A43B7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543512
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2020051592
(87)【国際公開番号】W WO2020156914
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】102019102107.3
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329464
【氏名又は名称】ラインハルト ウーゲ-
【氏名又は名称原語表記】Reinhardt UG
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】マイク-マーティン ロバッキ
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA28
4F050BA08
4F050HA53
4F050HA55
4F050JA09
4F050JA11
4F050JA30
(57)【要約】
本発明は、靴に用いられる靴底装置(10)、特にバレエ靴に関し、複数の椎体(14)が関節部(16)によって連結された背骨ソール(12)と、椎体(14)間の中間スペース(18)とを備え、中間スペース(18)は、中間スペース(18)に挿入するための複数のスティック(20)を備える。本発明によれば、複数のスティック(20)の少なくとも2つは、異なる厚さ及び/又は断面を有し、中間スペース(18)の少なくとも1つは、異なる厚さ及び/又は断面を有するスティック(20)を交互に受け入れるように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部(16)によって互いに連結された複数の椎体(14)と、前記関節部(16)に関連して、前記複数の椎体(14)の間に形成される中間スペース(18)と、を含む背骨靴底(12)と、さらに前記中間スペース(18)に挿入する複数のスティック(20)を含み、靴、特にバレエ靴に用いられる靴底具(10)であって、
複数のスティック(20)の少なくとも2つは、異なる厚さ及び/または断面を呈し、前記中間スペース(18)の少なくとも1つは、異なる厚さ及び/または異なる断面を備えた前記スティック(20)を交互に受け入れるように構成されている靴底具(10)。
【請求項2】
前記中間スペース(18)の複数、好ましくは全てが、異なる厚さ及び/または異なる断面を備えた前記スティック(20)を交互に受け入れるように構成されている請求項1記載の靴底具(10)。
【請求項3】
前記スティック(20)の少なくとも1つは、1つの中間スペース(18)にそれが挿入された状態で、前記関連する関節部(16)が直線状となるような厚さ及び/または断面を呈する請求項1または2記載の靴底具(10)。
【請求項4】
前記スティック(20)の少なくとも1つは、1つの中間スペース(18)にそれが挿入された状態で、前記中間スペース(18)に隣接する前記椎体(14)を、互いに離れるように押圧するような厚さ及び/または断面を呈する請求項1から3の何れかに記載の靴底具(10)。
【請求項5】
前記スティック(20)の少なくとも1つは、1つの中間スペース(18)にそれが挿入された状態で、前記中間スペース(18)に隣接する前記椎体(14)を、互いに近づくことを許容するような厚さ及び/または断面を呈する請求項1から4の何れかに記載の靴底具(10)。
【請求項6】
前記中間スペース(18)の少なくとも1つは、長方形または台形の断面を示す請求項1から5の何れかに記載の靴底具(10)。
【請求項7】
前記スティック(20)の少なくとも1つは、非回転対称の断面を示し、前記中間スペース(18)の少なくとも1つに回転可能に挿入されるように構成されている請求項1から6の何れかに記載の靴底具(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの回転可能なスティック(20)は、長円形の断面を示す請求項7記載の靴底具(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの回転可能なスティック(20)は、楕円形の断面を示す請求項8記載の靴底具(10)。
【請求項10】
前記スティック(20)は、前記中間スペース(18)に着脱可能に挿入できるように構成されている請求項1から9の何れかに記載の靴底具(10)。
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載の靴底具(10)を備える靴。
【請求項12】
バレエ靴、整形外科用靴、スポーツ靴、及びランニング靴からなる群から選択される請求項11記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節部によって互いに連結された複数の椎体と、関節部に関連して、複数の椎体の間に形成される中間スペースと、を含む背骨靴底と、さらに中間スペースに挿入する複数のスティックを含み、靴、特にバレエ靴に用いられる靴底具に関する。
【背景技術】
【0002】
バレエ靴のインナーソールとして使用する特別の状況のためのそのような靴底具は、本出願人のEP2742818A1により知られている。
【0003】
2つの椎体間の中間スペースへのスティックの挿入、及び挿入されたスティックの中間スペースからの除去は、2つの椎体間の中間スペースに隣接する関節部の領域における靴底具の曲げ挙動を特徴づける。靴底具は、原理上は上向きに自由に可動できるが、下向きの柔軟性は、椎間板とも呼ばれる椎体とスティックによって特徴づけられる。この場合、「上向き」とは、着用者が立っている側の靴底具の側面を示し、「下向き」とは、歩行時に地面を指す側の側面を示す。一体化されたゴム層は、背骨靴底の下側に永続的で弾性的な張力を生み出す。同時に、ゴム層はスティックの横滑りに対するバリアとして機能する。スティックが挿入された状態で、スティックが挿入された中間スペースの領域での靴底具のコースランは真直ぐなままである。スティックがない場合、ゴム層の張力によって、または椎体が互いにぶつかる点まで荷重をかけることによって、この地点で靴底具が下向きに曲げられ得る。
【0004】
一般的な靴底具のスティックは、この既知の靴底具がより幅狭となる踵の領域で、より幅広となる足先の領域よりも短いスティックが使用されるように、その長さを除いて、原則として同じ形状である。
【0005】
したがって、この既知の靴底具の個々の曲げ挙動は、中間スペースにスティックが挿入されるか否か、及び、どの中間スペースにスティックが挿入されるか、ということによってのみ制御される。靴底具の角度挙動は、この状況では、椎間板領域、すなわち、スティックを収容することができる中間スペース、すなわち、直線または角度で明確に定義されている。したがって、靴底具の調整可能な反りのあるコースランは、実質的に急激な増大を示し、したがって、微小な解剖学的な程度まで調整することはできない。同様に、足の上反りに対応して上方に安定した形状に適用可能な靴底具を用いて支持的な負の屈曲性を調整することは不可能である。伝統的なトウシューズは、インナーソールの硬度の様々な程度をさらに区別し、これは、トウシューズの最も重要な変数の1つである。ダンスに関連する医学的考慮事項に関しては、暖かい足は冷たい足とは別の形のインナーソールによるサポートを必要とするという事実のために、他の理由の中でもとりわけ、迅速に調整可能な硬度が望ましい。しかし、従来技術では、硬度を様々に調整可能とする靴底具がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
EP2742818A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、その曲げ挙動の可変性及び精密性が改善されるように、包括的な靴底具をさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、複数のスティックのうちの少なくとも2つが異なる厚さ及び/または断面を示し、中間スペースの少なくとも1つが、異なる厚さ及び/または断面を有するスティックを交互に収容するように設計されているという点で達成されている。
【0009】
したがって、異なるタイプのスティックすなわち、異なる厚さ及び/または断面を有するスティックを、本発明による靴底具の同一の中間スペースに挿入することが可能である。結果として、スティックが挿入されているか完全に除かれているかの2つの状態しかない中間スペースを提供する従来技術よりも、この中間スペースに関連する関節部のコースランは、実質的により細かく調整することができる。
【0010】
特に好ましい実施形態では、複数の、好ましくはすべての中間スペースが、異なる厚さ及び/または断面のスティックを交互に受け入れるように構成される。したがって、すべての中間スペースにおいて、本発明による靴底具の屈曲は、それぞれの使用者、及び計画された使用状況に対して正確に調整することができる。これにより、すべての中間スペースを同じ設計(例えば長方形)で同じ幅で製造することは特に容易である。
【0011】
この目的のために、スティックの少なくとも1つが、中間スペースに挿入された状態で、関連する関節部に直線的なコースランを提供するような厚さ及び/または断面を呈するようになっている。そのような領域では、本発明による靴底具は屈曲を示さない。
【0012】
加えて、または代替として、スティックの少なくとも1つが、中間スペースに挿入された状態で、中間スペースに隣接した椎体を互いに離れるように押圧する厚さ及び/または断面を呈するようになっている。そのようにスティックを挿入すると、本発明による靴底具は局所的に上向きに屈曲し、これは通常負の屈曲性と呼ばれる。スティックをより厚みのあるスティックに置き換えると、隣接するスティックをさらに互いに離し、局所的な負の屈曲性が増す。
【0013】
加えて、または代替として、スティックの少なくとも1つが、中間スペースに挿入された状態で、中間スペースに隣接する椎体が互いにより近づくような厚さ及び/または断面を呈するようになっている。スティックを中間スペースに完全には挿入しない場合、本発明による靴底具の対応する負荷を伴い、通常は正の屈曲性と呼ばれる局所的な下向きの屈曲を可能にする。
【0014】
この状況では、中間スペースの少なくとも1つが長方形または台形の断面を呈することが好ましい。長方形または台形の断面を有するスティック、または円形の断面を有するスティックなど、異なる断面形状を有するスティックを使用することができるので、そのような構成は特に用途が広い。
【0015】
しかしながら、代替的または追加的に、スティックの少なくとも1つが、回転対称ではなく、中間スペースの少なくとも1つに回転可能に挿入されるように構成された断面を呈することも可能である。例えば、隣接する椎体をさらに離して広げ、本発明による靴底具の局所的な屈曲を負の方向に増加させるために、狭いスティックをより広いスティックに置き換える代わりに、スティックの直径が2つの隣接する椎体の間で増加するような方向にスティックを回転させることにより、同じ効果を達成する。
【0016】
この目的のために、少なくとも1つの回転可能なスティックは、長円形の断面を呈する。次に、それはその中間スペースで無段階に回転することができ、これにより、本発明による靴底具の局所的な屈曲を微調整することが可能になる。
【0017】
製造技術の観点から好ましい実施形態では、少なくとも1つの回転可能なスティックは、楕円形の断面を有することができる。
【0018】
これまでに説明した実施形態では、本発明による靴底具は、靴の使用の開始時に、それぞれの使用者の足に合わせて調整することができ、その後、スティックは、例えばしっかりとロックすることによって、それぞれの中間スペースに恒久的に留まる。しかしながら、スティックは中間スペースに取り外し可能に挿入できるように構成されていることが望ましい。これは、スティックが中間スペースで回転可能に受け入れられていない実施形態に特に当てはまる。例えば、スティックは、下側に凹み部(bays)を備えた形状を有することができ、その中に靴底具の前述のゴム層が走り、椎体及び関節部に向けてスティックを押し付ける。これは一般的なEP274281A1で説明されており、その開示は、スティック及び中間スペースの形状、及びスティックが着脱可能に保持できるというゴム層の機能に関して本明細書に参照されている。
【0019】
本発明はさらに、これまでに説明されたような靴底具を含む靴に関する。
【0020】
前記の靴は、例えば、バレエ靴、整形外科用靴、スポーツ靴、またはランニング靴であり得る。
【0021】
本発明の実施形態は、非限定的な例として、図に基づいて以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】デミポワント位置のバレエシューズで使用されている、本発明による靴底具の実施形態の斜め下からの斜視図
【
図2】
図1からの本発明による靴底具を下から見た概略図であり、上部はスティックの斜視図
【
図3】スティックを中間スペースに挿入する前の、本発明による背骨靴底及び靴底具のスティックの実施形態の概略側面図
【
図4】
図3の中間スペースにスティックを挿入した後の、背骨靴底及びスティックの概略側面図
【
図5】背骨靴底及びスティックの別の実施形態の概略側面図
【
図6】背骨靴底及びスティックのさらなる実施形態の概略側面図
【
図7】靴底具の屈曲ゾーンを説明するために、スティックが中間スペースに挿入された、本発明による靴底具の概略側面図
【
図8】曲げ効果及びヒール角効果を説明するために、
図7と同様の概略側面図
【
図9】異なる程度の硬度が調整された、本発明による靴底具の4つの概略側面図
【
図10】バレエシューズに本発明による靴下具を用いた場合の足の位置の3つの概略側面図
【
図11】ポワント位置でバレエシューズを使用する際、硬さの程度が異なって調整された、本発明による靴底具を用いた場合の足の位置の3つの概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、デミポワントの位置のバレエシューズで使用されている、本発明による靴底具10の実施形態の斜め下からの斜視図を示している。
図2は、本発明の
図1による靴底具10の概略図を下から示し、
図3は、概略側面図を示す。
【0024】
靴底具10は、関節部16によって互いに連結された複数の椎体14を備える背骨靴底12を備えている。中間スペース18は、互いに隣接する椎体14の間に形成されており、
図3の概略側面図では、各中間スペース18に関連する関節部16の下に位置している。すべての中間スペース18は本質的に同じ幅を呈し、それぞれがスティック20を収容できるように構成されている。
【0025】
特に
図2に見られる背骨靴底12の下側には、ゴム層22が設けられている。
図2では、ゴム層は右踵の領域にあり、
図2の背骨靴底の下側の左つま先領域に、それがぴんと張って椎体14と接触するように固定されていて、中間スペース18を下向きに閉鎖する。ゴム層22は、背骨靴底12の下側に永久的な弾性張力を生成し、したがって、背骨靴底12に、筋肉のように必要な逆張力を提供する。スティック20は、スティック20の斜視図で
図2の上部に見られるように、適切な寸法の凹み部(bays)が下側に設けられている。スティック20が中間スペース18に挿入されると、ゴム層22はスティックの凹み部(bays)に係合し、横方向の滑りまたは脱落に対してスティックを固定する。換言すれば、ゴム層22は、挿入されたスティック20に対するバリアとして機能する。同様に、ゴム層22は、背骨靴底12の椎体14を安定させ同期させる。
【0026】
図1及び
図2において、二重矢印は、それぞれ、交換されるスティック20が、新たに挿入されるスティック20によって中間スペース18から押し出されることを示している。新しく挿入されたスティック20が交換されるスティック20とは異なる厚さ及び/または異なる断面を有していると、背骨靴底12が局所的に曲げを変化させることができる。交換する場合、新しく挿入されるスティック20は、使用中のスティックを押し出すために挿入されるスティック20にいくらか横方向の圧力を加えるだけでよく、新しいスティック20は、背骨靴底12に係合する。異なる角度配置及び/または異なる幅を有するスティック20でも一定の互換性があるため、背骨靴底12のコースランは、いつでも変更、サポート、及び正確に角度を付けることができ、必要に応じて真っ直ぐに保つことができる、または上向きまたは下向きに傾斜した正確な角度をなすという効果がある。したがって、単一の背骨靴底12の変動性を備えて、バレエポワントシューズまたは他のシューズのインナーソールに関するすべての要件を確保することが可能である。これについては、以下で詳しく説明する。
【0027】
図3は、4つの異なるスティック20が中間スペース18に挿入される前の、本発明による背骨靴底12及び靴底具10のスティック20の実施形態の概略側面図を示し、
図4は、スティック20を中間スペース18に挿入した後の状態を示す。この特に単純に構成された実施形態では、中間スペース18はすべて同じ形状及び幅を有する。
【0028】
図3及び
図4の「a」には、4本のスティック20のうち左側のスティックの挿入が示される。このスティック20は、中間スペース18の幅及び断面に対応する長方形の断面及び厚さを示す。言い換えれば、このスティック20の垂直側面は、中間スペース18の垂直側面と0°の角度を形成する。中間スペース18へのスティック20の挿入は、上向きの矢印によって
図3に示されている。
図4のセクション「a」に示される中間スペース18に挿入された状態では、中間スペース18の上部に位置する関連する関節部16に、図中「180°」と示されているように、直線状のコースランを与える。従ってこのスティック20は、基本的に、背骨靴底12の局所的な屈曲に関して中立的に動作するが、この領域において背骨靴底12の下向きへの局所的な屈曲を防ぐ。
【0029】
次に
図3及び
図4の「b」に、左から2番目のスティック20が示される。このスティック20は台形の断面を示し、上部領域における厚さは、空の中間スペース18の幅に対応し、上から下方に向かって大きくなる。このスティック20の左側壁は、空の長方形の中間スペース18の左側壁と-aoの外角を形成し、このスティック20の右側壁は、空の長方形の中間スペース18の右側壁と-boの外角を形成する。図に示すように、負の角度は、側壁が上から下に向かって外側に傾斜しているコースランを示す。スティック20の中間スペース18への挿入は、
図3において上向きの矢印によって示されている。中間スペース18への挿入時に、このスティック20は、隣接する椎体14をそれらの下部領域で互いに押し離す。
図4の「b」に示す中間スペース18に挿入した状態では、このスティック20は関連する関節部16に対して、中間スペース18の上で負の屈曲つまり局所的な上向きの傾斜のコースランを与える。これは図中「180°-a°-b°」と記されている。言い換えれば、このスティック20は、その外角の合計に対応する角度だけ負の屈曲を引き起こす。これは、スティック20に表示される「-」のマーキングによって識別できる。記載された効果を達成するために、スティック20は、材料、特に背骨靴底12の材料、少なくとも関節部16の材料よりも高い硬度及び強度を示すプラスチック材料で作ることができる。言い換えれば、屈曲によって最も影響を受ける材料領域であるとして、
一方でスティック20に異なる材料を適切に選択し、他方では背骨靴底12の異なる領域を適切に選択することによって、スティック20を中間スペース18に押し込むことにより、関連する関節部16の屈曲がもたらされることが確実になり得る。原則として、一方でスティック20及び他方で背骨靴底12は、同じ材料、特にプラスチック材料でできている。使用されている、引裂きに強く、伸縮性が最小限であるプラスチックは、一定の柔軟性があり、材料の厚さが増すにつれて柔軟性が低下する。すなわち、背骨靴底12の関節部16において薄層材料によって達成される屈曲能力は、本発明による屈曲効果に十分であるが、他の点では同じ材料で、椎体14及びスティック20のより厚い材料が、必要な安定性を備えて力を伝達する。したがって、スティック20の場合、スティック20は自身の縦方向の構成にわたって力を分散せず、横方向に分散するので、実際には関連する弾性効果を特定できないため、別の材料を使用する必要はない。
【0030】
いずれにしても、背骨靴底12、椎体14、及び関節部16の材料は、原則として、射出成形により単一部品として製造し、靴を使用するときに必要なサポート圧力を維持できるほど十分に強くかつ安定したものでなければならない。
【0031】
図3及び
図4の「c」には、右から2番目のスティック20が示される。このスティック20は台形の断面を示し、その上部領域における厚さは、空の中間スペース18の幅に対応し、上から下に向かって薄くなる。スティック20の左側の壁は、空の長方形の中間スペース18の左側の側壁とcoの角度を形成し、スティック20の右側の壁は、空の長方形の中間スペース18の右側の側壁とdoの角度を形成する。正の角度は、図に示すように、側壁が上から下に向かって内側に傾斜するコースランを示す。スティック20の中間スペース18への挿入は、
図3において上向きの矢印によって示されている。中間スペース18への挿入時に、スティック20は、中間スペースに隣接する椎体14がそれらの下部領域において互いに接近することを可能にする。したがって、
図4の「c」に示される中間スペース18に挿入された状態では、スティック20は、関連する関節部16に中間スペース18上で正の屈曲、すなわち図中「180°+c°+d°」で示されるように、局所的に下向きに屈曲する。つまり、スティック20は外角の合計に対応する角度で正の屈曲を引き起こす。これはスティック20に表示されている「+」マークで識別できる。
【0032】
図3及び
図4の「d」には、一番右のスティック20が示される。これは、
図3及び
図4のセクション「c」のスティック20と同様の台形の断面を有するが、その側壁がそれぞれ空の長方形の中間スペース18の左側及び右側の側壁で囲む角度eo及びfoは、隣接するスティック20のそれぞれの角度co及びdoよりも大きい。「c」の隣接するスティック20と比較して、
図3及び
図4の「d」の右側のスティック20は、関連する関節部16にさらに強い正の屈曲、すなわち図中「180°+e°+f°」で示されるように、局所的にさらに強く下向きに傾斜するコースランを与える。これはスティック20に表示されている「++」マークで識別できる。全体として、スティック20は、異なる細かく段階的な角度を有することができ、これは、背骨靴底12の静的角度とほぼ自由に組み合わせることができる。
図4はまた、椎体14とスティック20との間の大表面で安定した力の連係を見ることができ、その結果、とりわけ、背骨靴底12の材料の厚さを従来のものと比較して減らすことが可能になる。
【0033】
本発明による靴底具10は、
図3及び
図4の「d」に示されるスティック20と同様、正の屈曲に対して異なる角度を示す台形形態を有するスティック20だけでなく、負の屈曲に対して異なる角度を示す台形形態に対応して成形されるスティック20も含むことができることが理解される。また、各屈曲方向に対して異なる角度を示す台形形態を有するスティック20を2本提供するだけではなく、各中間スペース18で可能な限り細かい局所的な屈曲を可能にするために、はるかに多数のスティックを提供することも可能である。
【0034】
同様に、
図3及び
図4の「a」のように、直線的なコースランは、長方形のスティック20を同じ幅の長方形の中間スペース18に挿入することによってだけでなく、例えば、台形のスティック20を補足的な台形の中間スペース18に挿入することによっても、三角のスティック20を補足的な三角の中間スペース18に挿入することによっても達成することができる。
【0035】
一般的に、中間スペース18の形状は、多様な角度及び形状を示すことができ、これらは、背骨靴底12の直線的なコースランを確実にするために、スティック20の断面及び/または幅によってミラーリングされる。または代替の断面及び/または厚さを用いて、中間スペース18の断面及び/または厚さを足したり引いたりして、背骨靴底12の曲げ挙動を正確な角度で制御する。
【0036】
図5は、本発明による背骨靴底12及びスティック20の別の実施形態の概略側面図を示す。左のスティック20は、
図3及び
図4の「a」に示すスティックに対応する。従って長方形で、空の中間スペース18内に正確に収まる厚さ、断面を呈する。局所的な屈曲に関しては、このスティックは挙動が中立であり、すなわち関連する関節部16の局所的な直線のランは影響を受けないが、隣接する椎体が互いに接近するのを阻止し、したがって、局所的に正の屈曲の発生を変化させる。
【0037】
図5の中央のスティック20も長方形であるが、その厚さは空の中間スペース18の幅よりも大きい。したがって、このスティック20が、中間スペース18に挿入されると、背骨靴底12に局所的に負の屈曲、すなわち上向きの局所的な屈曲を引き起こす。当然のことながら、スティック20は隣接する椎体14が互いに接近するのを阻止し、局所的な正の屈曲を防止する。
【0038】
図5の右のスティック20も同様に長方形であるが、その厚さは、空の中間スペース18の幅よりも小さい。したがって、このスティックが中間スペース18に挿入されると、負荷がかかったときに隣接する椎体14が互いから離れるように、スティック20に接触するまで動く。換言すれば、スティック20は背骨靴底12の所定の正の屈曲すなわち下向きの局所的な屈曲を可能にする。
【0039】
本発明による靴底具10の
図5に示される実施形態は、椎体14とスティック20との間の力の連係が
図3及び
図4の実施形態に比べ少ないが、長方形のスティック20のみが製造されるため、製造するのにより経済的である。したがって、
図5の実施形態は、靴底具10へのストレスが少ない場合に使用されるべきである。
【0040】
図6は、背骨靴底12及びスティック20のさらなる実施形態の概略側面図を示しており、この実施形態では、長円形の断面を示している。この実施形態では、スティック20は、背骨靴底12の材料によって完全に囲まれているので、関節部16は隣接する椎体14を互いに連結するスティック20の上下両方に存在する。
【0041】
この実施形態では、スティック20は、それぞれの中間スペース18で回転可能に受け入れられ、隣接する椎体14によって横方向に境界付けられ、隣接する関節部16によってそれぞれ上向きまたは下向きに区切られる。回転によって、2つの隣接する椎体14の間でスティック20の異なる直径を調整することができる。例えばスティック20が、スティック20の長径が背骨靴底12の長手方向に本質的に平行に走る位置に回転される場合、隣接する椎体14は最大に押し離され、これにより、背骨靴底12に局所的に負の屈曲、すなわち上方への屈曲が与えられる。例えば、
図6の左から2番目のスティックである。
【0042】
逆に、スティック20が、その短径が背骨靴底12の長手方向に本質的に平行となる位置に回転される場合、隣接する椎体14は、荷重下で互いに向かって移動することができ、これにより背骨靴底12に局所的に正の屈曲、すなわち下向きの屈曲を与える。例えば、
図6の右のスティック20である。
【0043】
靴底材料によって完全に囲まれる回転可能なスティック20を有する
図6に示される実施形態は、特により柔らかい靴底を有するスポーツシューズについて考えられ、材料の弾性が周囲の靴底素材内で長円形のスティック20の展開を可能にする。ここでの効果は、特に、靴底張力の可変弾性コースランである。しかしながら、そのような長円形のスティック20は、他のタイプの靴、特にバレエ靴にも使用でき、
図3に示す長方形または台形の中間スペース18に導入され、それに応じて回転に影響を与える。どちらの場合も、長円形のスティック20は、ねじのような配置によって、または例えば、歯車機構などの係合機構によって、固定及び回転させることができる。
【0044】
図7は、靴底具10の屈曲ゾーンを明確にするために、異なるスティック20が中間スペースに挿入された、本発明による靴底具10の概略側面図を示す。靴底具10のつま先領域はこの図の左側にあり、踵領域は右側にある。
図8は、前方屈曲効果及び踵角効果を説明するために、
図7と同様の概略側面図を示し、
図9は、異なる硬さにそれぞれ調節した異なるスティック20を用いた、本発明による靴底具10の4つの概略側面図を示す。靴底具10のつま先領域は、この図のすべての側面図の下部にあり、踵領域は上部にある。
図10は、歩行時(上)及びデミポワント(左下)、ならびにポワント(右下)におけるバレエシューズに、本発明による靴底具を使用した場合の足の位置の概略側面図を示す。
図11は、本発明による靴底具10を使用した、ポアントの姿勢で立ったときのバレエシューズの硬度の程度が異なって調整された、足の位置の概略側面図を示している。
【0045】
これらすべての図に例として示されている背骨靴底12は、全体として、合計10個の中間スペース18を含むことを意図しており、いずれもスティック20が挿入されている。背骨靴底12はまた、異なる数の中間スペース18を有することができ個々の中間スペース18はまた空のままであることもあり、靴の用途に応じて、そのインナーソールは、本発明による背骨靴底12を含むことが理解される。
【0046】
図7の破線でマークされ、「A」で示されているセクションは、「デミポワントゾーン」とも呼ばれるデミポワントまでの自由な動きのゾーンを表している。この例では、このゾーンに6本の最前部のスティック20が配置されており、背骨靴底12は上向きの屈曲に制限されていないため、背骨靴底12が足をなめらかに動かしてデミポワントに立つことができる。対照的に、下向きの屈曲は、挿入されたスティック20によって制御される。
【0047】
図7の破線でマークされ、「B」で示されるセクションは、この例では3本のスティック20を持つセクション「A」の後部に関連し、前方屈曲の調整のためのゾーン、すなわち硬度の程度を表す。
【0048】
伝統的なトウシューズは、インナーソールの硬度の違いを区別する。背骨靴底12の高さ及び屈曲の程度は、代替のスティック20によって調整可能であり、ポワントの姿勢で立っているときのトウシューズの角度を決める。
図8の「B」で示される上部の影付き領域と
図9の4つの概略側面図を比較されたい。
図11Aに示すように、屈曲がより大きいと、前方へ傾けるために、背骨靴底12によって靴にスペースができる。一方
図11Bのように、前方への屈曲が少ないと、靴は後方へ押しやられる。前方への屈曲と踵の角度を最適に調整することで、背骨靴底12は、
図11Cに示す最高のサポート機能を発揮する。 したがって、このようにして、圧力はすでに踵角の領域に分散され、つま先はキャップ内のストレスから解放される。
【0049】
図7の破線でマークされ、「C」で示されているセクションは、踵の角度を調整するためのゾーンを表す。
図8の「C」で示される下側の影付き領域と
図9の4つの概略側面図を比較されたい。この例では、セクション「C」は、背骨靴底12の後部4本のスティック20を含む。足を伸ばすと足の裏から踵への移行時に知覚できる曲げ部(fold)が表示されている。したがって、トウシューズのインナーソールは、一方では踵に必要なスペースを与え、他方ではサポートのどのポイントでもインナーソールの足への接触を失わないように、この曲げ部(fold)を最適な方法で調整できる位置にある必要がある。踵の角度は、足ごとに異なっており、本発明による靴底具10を用いて、正確な角度に調整することができる。背骨靴底12の後部領域では、踵の角度の高さ及び程度が正確に定義されている。この状況では、「高さ」は、必要な踵角度を決定するスティック20の位置を示す。
図7~9では、黒でマークされ角度を決定するこれらのスティック20は、位置9及び10に配置されているが、サイズ及び個々の足の構造に応じて、他の位置、例えば、8及び9、または7及び8も選択することができる。
図7~9に示されるように、いずれの場合も同じヒール角度設定であり、「硬度設定」と呼ばれる前方への屈曲効果の違いがより明らかである。「踵角度の程度」は、使用するスティック20の数とその角度設定で決まる。したがって、背骨靴底12の独自のサポート機能が保証され、それは踵角度の点での圧力を低減し、その結果、
図11Cに示されているように、医学的には、トウシューズのキャップのつま先への応力はすでに著しく和らいでいる。
【0050】
図3及び
図4のセクション「b」に例として表されているように、負の角度に設定されたスティック20によって、本発明による靴底具10を用いて、背骨靴底12は、正確に定義された負の屈曲で上向きに屈曲することが可能で、足の上向きのそりは、正確に足の構造に沿うことができるという状況が達成される。したがって、背骨靴底12の発明は、より良いサポート機能を保証し、特に、ポワントで立つには、正確に踵角度のどの位置を調整するのかによる。スティック20の負の屈曲は、背骨靴底12の材料の固有の膨張をさらに補償する。これは、踵角領域における力のより高い吸収を保証し、背骨靴底12の衝撃吸収特性は、より効果的である。
図9では、負の屈曲の影響は、より簡単に表現するために誇張されて表されている。
【国際調査報告】