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特表2022-518837ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)を粉砕する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)を粉砕する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220309BHJP
   C08G 67/00 20060101ALI20220309BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220309BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220309BHJP
   C09D 173/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEZ
C08G67/00
B33Y10/00
B33Y70/00
C09D173/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544329
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020051768
(87)【国際公開番号】W WO2020156950
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19162687.8
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/799,112
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング, スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】ルーニー, ウィリアム ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4F070
4J005
4J038
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070AB23
4F070AB24
4F070DA41
4F070DB01
4F070DC07
4F070DC08
4F070DC09
4F070DC13
4J005AB00
4J005BB01
4J005BB02
4J005BC00
4J038DF051
(57)【要約】
本開示は、60~85℃に含まれる温度でPEKKポリマーを粉砕することを含む、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーの粉末を得る方法であって、粉末が、40~60μmに含まれるd50値(イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される)を有する、方法に関する。本発明は、本発明の粉砕方法によって得られる、かかる粒径分布(PSD)を示すPEKK粉末にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40~60μmに含まれるd50値(イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される)を有するポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーの粉末を得る方法であって、60~85℃に含まれる温度でPEKKポリマーを粉砕することを含み、
前記PEKKポリマーが、式(P)の反復単位(R)と式(M)の反復単位(R)とを含み、ポリマーにおける反復単位(R)と(R)のモル総数が、ポリマーにおけるモル総数に対して少なくとも50モル%であり;
上記式中、
- R及びRは、それぞれの場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- i及びjは、それぞれの場合に、0~4から独立して選択される、方法。
【請求項2】
前記PEKKポリマーが、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下で30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従った熱重量分析によって測定される、少なくとも500℃、好ましくは505℃、より好ましくは510℃のTd(1%)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末が、イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される、15μmを超えるd10値及び/又は120μm未満のd90値を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記PEKKポリマーが、
工程a/ ルイス酸の非存在下、又はモノマーの総重量に基づいて2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下において、溶媒中での重縮合反応によってPEKKポリマーを調製する工程と、
工程b/ 粗いPEKK粉末を得るために、塩及び溶媒を抽出する工程と、
工程c/ 粉砕する工程と、
を含む、製造方法によって得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PEKKポリマーのガラス転移温度(Tg)~前記PEKKポリマーのより低い溶融温度(Tm)(Tg及びTmはどちらもASTM D3418による示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される)の範囲の温度(Ta)に前記粉末を曝露することにある、更なる工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PEKKポリマーにおける反復単位(P):反復単位(M)のモル比が、1:1~6:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PEKKポリマーが、式(P’)の反復単位(R)及び式(M’)の反復単位(R):
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
PEKKの粉末が粉砕工程後に:
- 25℃の浸漬温度で、ISO9277によって測定される、0.1~5m/gの範囲のBET表面積、
- 少なくとも0.39のかさ密度ρB、及び/又は
- 1.5未満のアスペクト比ARであって、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像から約100個の粒子でカウントされる最大長さ寸法:最小長さの平均比である、アスペクト比、を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉砕工程が、ディスクミルで行われ、その回転円板が、摩擦力によってPEKKポリマーを粉砕する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により得られる、PEKK粉末。
【請求項11】
イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される、40~60μmに含まれるd50値、及び1.5未満のアスペクト比ARを有するPEKK粉末であって、前記アスペクト比が、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像から約60個の粒子でカウントされる最大長さ寸法:最小長さの平均比である、PEKK粉末。
【請求項12】
- 25℃の浸漬温度で、ISO 9277で測定される、0.1~5m/gの範囲のBET表面積、及び/又は
- 少なくとも0.39のかさ密度ρB、
を有する、請求項10又は11に記載のPEKK粉末。
【請求項13】
- 請求項10~13のいずれか一項に記載のPEKK粉末、
- 少なくとも1種類の流動剤(F)、及び/又は
- 充填剤、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、融剤及び電磁吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤(A)、を含む、ポリマー粉末。
【請求項14】
レーザー焼結型付加製造システムを使用して、三次元物体を製造するための、請求項10~12のいずれか一項に記載のPEKK粉末又は請求項13に記載のポリマー粉末の使用。
【請求項15】
請求項10~12のいずれか一項に記載のPEKK粉末又は請求項13に記載のポリマー粉末を含む、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年1月31日出願の米国仮特許出願第62/799112号及び2019年3月13日出願の欧州特許出願公開第19162687.8号に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、60~85℃に含まれる温度にてPEKKポリマーを粉砕することを含む、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーの粉末を得る方法であって、その粉末が、40~60μmに含まれるd50値(イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される)を有する、方法に関する。本発明は、本発明の粉砕法によって得られる、かかる粒径分布(PSD)を示すPEKK粉末、並びにレーザー焼結型付加製造(AM)システムを使用した三次元(3D)物体を製造するための、又はコーティング組成物における、かかる粉末の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
粉砕により特定のPSDを示すポリマー粉末を得る方法が文献に記載されている。一般に、低温でこれらの方法を行うことが推奨されている。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0280263号明細書(Degussa)には、1m/gを超えるBETにより測定される見かけの比表面積を有するPAEKから出発する、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)を粉砕する方法が記載されている。この文献によれば、0℃、好ましくは-20℃未満、より好ましくは-40℃未満の温度で多孔性PAEKを粉砕することは有利である。実施例において、BET表面積50m/gを有するPEEK顆粒は、極低温で動作するピンディスクミルで粉砕される。
【0005】
米国特許第5,247,052号明細書(Hoechst)に、流動床対向型ジェットミルでのPAEKの粉砕方法が記載されており、その方法では、循環する粗い材料が極低温冷媒(窒素又は二酸化炭素)によって冷却される。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0207931号明細書(Toyota)には、注目すべきことには、プラスチックマトリックス材料を含む粗い顆粒を冷却して、脆い、粗い顆粒を形成することと、好ましくは冷却で行われる、これらの顆粒を粉砕することと、を含む、粉末を製造する方法が記載されている。
【0007】
CA2,086,780号明細書(Bayer)には、円柱形若しくは円錐形ローラー間で有機ポリマーをサイズリダクションする方法であって、そのローラーが、ローラーのギャップにおいて特定の回転比又は所定のせん断速度で同一方向又は反対方向に回転する、方法が記載されている。そのローラーは好ましくは、冷却されて、粉砕プロセス中に発生する熱が散逸され、好ましくは0~30℃の範囲の動作温度を有する。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0322441号明細書(Arkema)は、周囲温度、一般に0~50℃の温度で行うことができる、PAEKの粉砕方法に関する。実施例において、PEKKは、温度25℃にて衝撃グラインダー選別器において微粉化される。
【0009】
PEKKポリマーは、通常、0~120℃の範囲の温度で、ルイス酸の存在下でケトン形成反応により調製される。しかしながら、この方法から作製されたPEKKポリマーは、揮発分(例えば、塩素化残留溶媒)を多量に含むという大きな欠点がある。これは、例えば、レーザー焼結型付加製造システムを使用した三次元物体の製造など、特定のいくつかの用途には望ましくない。多量の揮発残留分の問題は、後処理工程を加えることで解決できるが、これにより、ポリマーの全体の生産コストが増加する。
【0010】
先行技術の粉砕方法は、国際公開第2018/115033号パンフレット(Solvay)に記載の求核性合成経路に従って製造されるPEKKポリマーの粉砕に対しては評価されているが、40~60μmに含まれるd50値を有する粉末を得ることは不成功に終わっている。
【発明の概要】
【0011】
本開示の一態様は、60~85℃に含まれる温度でPEKKポリマーを粉砕することを含む、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーの粉末を得る方法であって、その粉末が40~60μmに含まれるd50値を有する方法に関する。好ましくは、PEKKの粉末は粉砕工程後に:
-25℃の浸漬温度で、ISO9277により測定される、0.1~5m/gの範囲のBET表面積
-少なくとも0.39のかさ密度ρB、及び/又は
-1.5未満のアスペクト比AR、
を有し、そのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像から約100個の粒子でカウントされる最大長さ寸法:最小長さの平均比である。
【0012】
粉砕工程は例えば、ディスクミルで行われ得て、その回転円板が、摩擦力によってPEKKポリマーを粉砕する。
【0013】
本開示の他の態様は、本発明の方法によって得られるPEKK粉末に関し、イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される40~60μmに含まれるd50値、及び1.5未満のアスペクト比ARを有するPEKK粉末に関し、そのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像から約60個の粒子でカウントされる最大長さ寸法:最小長さの平均比である。PEKK粉末は好ましくは:
-25℃の浸漬温度でISO9277で測定される、0.1~5m/gの範囲のBET表面積、及び/又は
-少なくとも0.39のバルク密度ρBを有する。
【0014】
本開示の他の態様は、
-本発明のPEKK粉末、
-少なくとも1つの流動剤(F)及び/又は
-充填填剤、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、融剤及び電磁吸収剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(A)を含む、ポリマー粉末に関する。
【0015】
本発明は、レーザー焼結型付加製造システムを用いた三次元物体の製造のためのポリマー粒子の使用、並びにこのPEKK粉末を含むコーティング組成物にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、60~85℃に含まれる温度でPEKKポリマーを粉砕することを含む、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーの粉末を得る方法であって、その粉末が、イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される、40~60μmに含まれるd50値を有する、方法に関する。
【0017】
好ましくは、この方法から得られるPEKK粉末は、25μmを超えるd10値及び/又は120μm未満のd90値(イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される)もまた有する。
【0018】
本発明は、本発明の粉砕法によって得られる、かかる粒径分布(PSD)を示すPEKK粉末、並びにレーザー焼結型付加製造(AM)システムを使用した三次元物体を製造するための、又はコーティング組成物における、かかる粉末の使用にも関する。
【0019】
本出願では、
-いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
-要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態において、要素又は成分は、別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、及び
-端点による数値範囲の本明細書でのいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0020】
PEKK粉末を得る方法
本発明の目的は、60~85℃、好ましくは70~80℃に含まれる温度でPEKKポリマーを粉砕することを含む、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーの粉末を得る方法であって、その粉末が、40~60μmに含まれるd50値、及び好ましくは25μmを超えるd10値及び/又は120μm未満のd90値(イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される)も有する、方法に関する。
【0021】
粉砕工程の温度を60~85℃、好ましくは65~82℃、又は70~80℃と様々な温度範囲に調節することができる限り、粉砕ミルはいずれのタイプであってもよい。
【0022】
一実施形態に従って、粉砕又はミルされるべきPEKKポリマーは、いわゆる「粗いPEKK粉末」状であり、例えばPEKK粉末は、500~4,000μm、好ましくは600~2,000μmmのd90値、及び/又は200~2,000μm、好ましくは300~1,000μmのd50値を有する。かかる粗いPEKK粉末は、重縮合後に、重縮合反応によって、且つ溶媒及び塩を抽出する更なる工程によって、並びに重縮合/抽出から得られたPEKKポリマーの任意の後処理工程(焼戻し又は熱処理など)によって得られる。この実施形態に従って、粗いPEKK粉末を粉砕して、40~60μmに含まれるd50値(イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定される)、及び好ましくは25μmを超えるd10値及び/又は120μm未満のd90値も有する、本発明のPEKK粉末が製造される。
【0023】
PEKK粉末の粉末粒子は好ましくは、球形又はほぼ球形を有する。これは、PEKK粉末の粉末粒子が好ましくは、2.0未満のアスペクト比を有することを意味する。粉末粒子のかかるアスペクト比は、より好ましくは1.5未満、最も好ましくは1.48未満である。本明細書で使用されるアスペクト比という用語は、本発明の方法によって得られるPEKK粉末粒子の走査型電子顕微鏡法(SEM)画像から約60個の粒子でカウントされる最大長さ寸法:最小長さ寸法(=最大長さ/最小長さ)の平均比を意味する。粉末粒子の寸法は種々の異なる方向で測定される。
【0024】
本発明の一実施形態に従って、本発明の方法における粉砕工程は、その回転円板が、摩擦力によって粗いPEKKポリマーを粉砕する、ディスクミルで行われる。粗いPEKK粉末を粉砕するために使用されるディスクミルは、例えば、駆動軸と、駆動軸のそれぞれの端に取り付けられた、軸方向にスペースがある同時動作ミルディスクの対と、を含み得る。2つのディスクのうちの1つは、駆動軸上に回転可能に取り付けることができ、もう一方のディスクは固定されて、ディスク間のギャップは固定されているが、調節可能である。そのディスクの対は、作業されるべき材料の導入用の入口と、ディスクによって作業後に材料を放出するための出口と、を有するハウジングに含有され得る。一実施形態に従って、粉砕されるPEKK材料は、ディスクの中央に入り、ディスクにおけるギャップを通して遠心的に力をうける。粉砕された材料は、サイクロンに空気圧で運搬され、回収容器内へと材料が落ちる。
【0025】
粉砕されるPEKK材料は、ふるい、若しくは空気分級を可能であれば用いて、目的の材料粉末度が達成されるまで、同じミルを通って戻ってもよいし、又は他の直列に配置されたミルを通ってもよい。したがって、粗いPEKK粉末は、例えば、単一のミルに通され得て、それを通過する材料の一連の連続的なパスが使用される。その代わりとして、一連のミルを使用した場合、それぞれのミルを通る単一パスが用いられ得る。
【0026】
本発明の粉砕プロセスは連続的又は半連続的であり得る。
【0027】
一実施形態に従って、本発明の方法において粉砕又はミルされるPEKKポリマーは、最大で25℃の浸漬/排気温度を用いて、ISO9277によって測定される、1~100m/g、好ましくは10~60m/gの範囲のBET表面積を有するようなポリマーである。
【0028】
一実施形態に従って、本発明の方法において粉砕又はミルされるPEKKポリマーは、0.70未満、例えば0.65~0.2又は0.6~0.3のかさ密度ρBを有するようなポリマーである。
【0029】
一実施形態によれば、本発明の方法において粉砕又はミルされるPEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて、窒素下にて30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従った熱重量分析で測定される、少なくとも500℃、好ましくは505℃、より好ましくは510℃のTd(1%)を有するようなポリマーである。かかる低い揮発物含有量を有するPEKKポリマーは、求核性重縮合法によって得ることができる。
【0030】
一実施形態に従って、本発明の方法において粉砕又はミルされるPEKKポリマーは、重縮合反応から得られ、その反応において、モノマーの重縮合は、ルイス酸の存在下では起こらない、或いはモノマーの全重量に対して2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下にて起こる。
【0031】
一実施形態に従って、本発明の方法において粉砕又はミルされるPEKKポリマーは:
-ルイス酸の非存在下又はモノマーの全重量に対して2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下において、溶媒中での重縮合反応によってPEKKポリマーを調製する工程と、
-粗いPEKK粉末を得るために、塩及び溶媒を抽出する工程と、
を含む製造方法から得られる。
【0032】
本発明の文脈において、ルイス酸は、BF、AlCl、FeCl、CFSOH及びCHSOHからなる群から選択され得る。
【0033】
一実施形態に従って、本発明の方法において粉砕又はミルされるPEKKポリマーは:
工程a)溶媒において、モノマー(P-OH)、(M-OH)、(P-F)及び/又は(M-F):
(式中、
-R、R、R及びRは、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-p、q、r及びsは、それぞれの場合において、0~4から独立して選択される)
を重縮合する工程であって、
(P-OH)及び(M-OH)のモル数:(P-F)及び(M-F)のモル数のモル比が、
であるようなモル比である、工程と、
工程b)粗いPEKK粉末を得るために、溶媒及び塩を抽出する工程と、
を含む、製造方法から得られる。
【0034】
一実施形態によれば、R、R、R及びRは、上記の式(P-OH)、(P-F)、(M-OH)及び(M-F)のそれぞれの位置で、1つ又は複数のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び四級アンモニウム基を任意に含むC1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0035】
別の実施形態によれば、p、q、r、及びsは、それぞれR、R、R、及びR基において、ゼロである。この実施形態によれば、工程a)は、溶媒中での、モノマー(P’-OH)、(M’-OH)、(P’-F)及び/又は(M’-F)の重縮合にある:
【0036】
この実施形態によれば、(P-OH)及び(M-OH)のモル数:(P-F)及び(M-F)のモル数のモル比は、
好ましくは
より好ましくは
さらに好ましくは
であるようなモル比である。
【0037】
一実施形態に従って、重縮合反応によるPEKKポリマーの製造は好ましくは、溶媒中で行われる。溶媒は、ジフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンジオキシド、ベンゾフェノン、又はそのいずれか1つ若しくは複数の組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。好ましくは、溶媒はジフェニルスルホンを含む。より好ましくは、溶媒は、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%のジフェニルスルホンを含む。
【0038】
一実施形態に従って、縮合反応によるPEKKポリマーの製造は好ましくは、少なくとも1種類の塩基、例えば、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩、より正確には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸カリウムの存在下にて行われる。好ましくは、重縮合反応によるPEKKポリマーの製造に使用される塩基は、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムである。最も好ましくは、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの混合物が使用される。
【0039】
一実施形態に従って、重縮合工程は、180~320℃、例えば185~310℃又は190~305℃の第1温度へと反応混合物を加熱することにある少なくとも1つの工程を含み得る。重縮合工程は、300~340℃、例えば305~335℃又は310~330℃の第2温度へと反応混合物を加熱することにある第2の工程を含み得る。
【0040】
PEKK製造方法の工程b)に従って、重縮合後に、塩を濾過し、粉末を洗浄し、任意に乾燥させることによって、PEKKポリマーが回収され得る。例えば、アセトン及び水を使用して、塩と溶媒を抽出することができる。
【0041】
本発明のPEKKポリマーの粉末を得る方法は、60~85℃に含まれる温度で粉砕する工程に加えて、好ましくは空気分離器又は分級機において分離する、更なる工程を含み得る。
【0042】
本発明のPEKKポリマーの粉末を得る方法は、60~85℃に含まれる温度で粉砕する工程に加えて、PEKKポリマーのガラス転移温度(Tg)からPEKKポリマーのより低い融解温度(Tm)の範囲の温度(Ta)に粉末を曝露することにある更なる工程であって、Tg及びTmのどちらも、ASTM D3418に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される、更なる工程を含み得る。温度Taは、PEKKポリマーのTgより少なくとも20℃高く、例えばPEKKポリマーのTgより少なくとも30、40又は50℃高くなるように選択され得る。温度Taは、PEKKポリマーのTmより少なくとも5℃低く、例えばPEKKポリマーのTmより少なくとも10、20又は30℃低くなるように選択され得る。温度Taへの粉末の暴露は、例えば、熱処理によるものであり得、且つオーブン(静的、連続、バッチ、対流)、流動床ヒーターで起こり得る。代わりに、温度Taへの粉末の曝露は、電磁放射線又は粒子放射線での放射によることができる。熱処理は、空気下又は不活性雰囲気下で行うことができる。好ましくは、熱処理は、不活性雰囲気下、より好ましくは2%未満の酸素を含有する雰囲気下で行われる。熱処理の任意の工程は、粉砕前又は粉砕後に行われ得るが、好ましくは粉砕工程後に行われる。
【0043】
PEKK粉末
本発明はまた、本発明の粉砕方法によって得られるPEKK粉末に関する。
【0044】
粉砕工程後のPEKK粉末の粉末粒子は好ましくは、アスペクト比2.0未満を有する。粉末粒子のかかるアスペクト比は、より好ましくは1.5未満であり、最も好ましくは1.48未満である。本発明の文脈において、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像から約60個の粒子でカウントされる最大長さ寸法:最小長さの平均比である。粉末粒子の寸法は、様々な異なる方向で測定される。
【0045】
熱処理後のPEKK粉末の粉末粒子は好ましくは、アスペクト比1.5未満、好ましくは1.48未満を有する。
【0046】
本発明において、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)は、式(M)の反復単位(R)及び式(P)の反復単位(R)を含み、反復単位(R)及び(RP)の総モル数は少なくとも50モル%(ポリマーにおける総モル数に対して)であり:
(式中、
-R及びRは、各場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、且つ
-i及びjは、各場合に、0~4から選択される。i及び/又はjがゼロである場合に、反復単位(M)及び/又は(P)は置換されない)。
【0047】
一実施形態によれば、R及びRは、上記の式(P)及び(M)のそれぞれの位置で、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び四級アンモニウム基を任意に含むC1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0048】
別の実施形態によれば、i及びjは、各R及びR基についてゼロである。この実施形態によれば、PEKKポリマーは、式(M’)及び(P’)の反復単位を少なくとも50モル%含み、そのモル%は、ポリマーにおける総モル数に対する%である。
【0049】
本開示の一実施形態によれば、PEKK中の反復単位の少なくとも55モル%少なくとも60モル%少なくとも70モル%少なくとも80モル%少なくとも90モル%少なくとも95モル%少なくとも99モル%又は、すべてが、式(M)、(M’)、(P)及び(P)の反復単位である(ポリマーにおける総モル数に対する)。
【0050】
PEKKポリマーにおいて、反復単位(P)又は/及び(P’):反復単位(M)又は/及び(M’)のモル比は、少なくとも1:1~6:1、例えば、少なくとも1.2:1~4:1、少なくとも1.4:1~3:1、又は少なくとも1.4:1~1.86:1である。
【0051】
本発明のPEKKは、1つ又は2つの融解温度Tm(℃)を有し得る。融解温度は、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)による第1の加熱走査で測定される。明瞭にするために、本出願において、PEKKポリマーの融解温度を参照するとき、PEKKが2つのTm温度を有する場合、実際には最も高いTmを参照する。
【0052】
PEKKポリマーは、好ましくは、濃HSO(最小96重量%)における0.5重量/体積%の溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、少なくとも0.50dL/g、例えば、少なくとも0.60dL/g又は少なくとも0.65dL/g、例えば、最大で1.50dL/g、最大で1.40dL/g、又は最大で1.30dL/gの固有粘度を有する。
【0053】
本発明によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱により測定される、40~60μm、好ましくは43~57μm、又は45~55μm、又は46~54μmに含まれるd50値を有する。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、120μm未満のd90値を有する。一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱によって測定される、115μm未満、好ましくは110μm未満又は105μm未満のd90値を有する。
【0055】
本発明によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、15μmより高いd10値を有する。一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱によって測定される、20μmより高い、好ましくは25μmより高い又は28μmより高いd10値を有する。
【0056】
本発明によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、195μm未満のd99値を有する。一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱によって測定される、190μm未満、好ましくは180μm未満又は170μm未満のd99値を有する。
【0057】
本発明の粉末は、最大で25℃の浸漬/排気温度を使用して、ISO9277により測定される、0.05~5m/g、好ましくは0.1~4m/g、より好ましくは0.15~2.0m/gの範囲のBET表面積を有し得る。
【0058】
本開示の一実施形態によれば、PEKKは、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、270~360℃、好ましくは280~315℃の範囲のTmを有する。
【0059】
本開示の別の実施形態によれば、PEKKは、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、140~170℃、好ましくは145~165℃の範囲のTgを有する。
【0060】
本開示の好ましい実施形態によれば、粉末は、少なくとも0.39、好ましくは少なくとも0.42、最も好ましくは少なくとも0.45のかさ密度ρB(又は、実施例に記載される注ぎ込みかさ密度(poured bulk density))を有する。
【0061】
用途
本発明は、様々な用途における、例えばレーザー焼結型付加製造(AM)システムを使用した三次元物体を製造するための、又はコーティング組成物における、本発明のPEKK粉末の使用にも関する。
【0062】
更なる成分は注目すべきことには、最終用途でそれを使用する前に、上述の粉砕プロセスから得られる粉砕PEKKポリマーに添加され得る。例えば、更なる成分は流動剤(F)であり得る。この流動剤(F)は例えば、親水性であり得る。親水性流動助剤の例は、シリカ、アルミナ及び酸化チタンからなる群からとりわけ選択される無機顔料である。ヒュームドシリカを挙げることができる。ヒュームドシリカは、Aerosil(登録商標)(Evonik)及びCab-O-Sil(登録商標)(Cabot)の商標名で市販されている。
【0063】
明確にするために、「PEKK粉末」は、粉砕工程を含む本発明の方法から得られるPEKK粉末として本明細書で定義され、最終用途で使用されるPEKK粉末は本明細書において「ポリマー粉末」と呼ばれる。
【0064】
一実施形態によれば、本発明の方法で使用されるポリマー粉末は、少なくとも50重量%のPEKK粉末、例えば、少なくとも60重量%のPEKK粉末、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%の本明細書に記載のPEKK粉末を含む。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー粉末は、0.01~10重量%の流動剤(F)、例えば0.05~8重量%、0.1~6重量%、又は0.15~5重量%の少なくとも1つの流動剤(F)、例えば、少なくともヒュームドシリカを含む。
【0066】
これらのシリカは、ナノメートルの一次粒子(ヒュームドシリカについては通常、5~50nm)で構成される。これらの一次粒子は、結合すると凝集体を形成する。流動剤としての使用において、シリカは、様々な形態(基本粒子及び凝集体)で見出される。
【0067】
本発明のポリマー粉末は、少なくとも別のポリマー材料をさらに含み得る。この更なるポリマー材料は、例えば、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー、例えば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)ポリマー及び/又はポリスルホン(PSU)ポリマー、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマー、例えば、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)ポリマーからなる群から選択されることができる。
【0068】
本発明のポリマー粉末は、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料、加工助剤、染料、充填剤、ナノ充填剤又は電磁気吸収剤などの1つ又はいくつかの添加剤(A)もまた含み得る。これらの任意の添加剤の例は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ又は硫化亜鉛、ガラス繊維、炭素繊維である。
【0069】
本発明のポリマー粉末は、ハロゲンなどの難燃剤及びハロゲン不含難燃剤も含み得る。
【0070】
一実施形態によれば、本発明のポリマー粉末は、PEKK粉末の総重量に対して、
-少なくとも50重量%のPEKK粉末と、
-0.01重量%~10重量%、0.05~8重量%、0.1~6重量%又は0.15~5重量%の少なくとも1つの流動剤(F)と、
-任意に、例えば充填剤(破砕炭素繊維、シリカビーズ、タルク、炭酸カルシウムなど)、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤(ハロゲン及びハロゲン不含難燃剤など)、核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、融剤及び電磁吸収剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(A)と、
を含む。
【0071】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0072】
原材料
1,2-ジクロロベンゼン、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイル、3,5-ジクロロベンゾイルクロリド、塩化アルミニウム(AlCl)、メタノールは、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)から購入した。
【0073】
1,4-ビス(4’-FB)B:1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、IN特許193687号明細書(1999年6月21日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製した。
【0074】
1,4-ビス(4’-FB)B:1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼンは、Gilbらに付与された米国特許第5,300,693号明細書(1992年11月25日に出願、参照により本明細書に援用される)の実施例1に従ってフルオロベンゼンのフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)アシル化によって調製し、クロロベンゼンでの再結晶によって精製して99.9%のGC純度に達した。
【0075】
1,4-ビス(4’-HB)B及び1,4-ビス(4’-HB)B:1,4-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン及び1,3-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンは、Hackenbruchらに付与された米国特許第5,250,738号明細書(1992年2月24日出願、参照により本明細書に援用される)の実施例1に記載される手順に従って、それぞれ、1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン及び1,3-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼンの加水分解によって生成し、DMF/エタノールでの再結晶化によって精製して99.0%のGC純度に達した。
【0076】
DPS:ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)(純度99.8%)は、Provironから市販として得た。
【0077】
NaCO:炭酸ナトリウム、商標名Soda Solvay(登録商標)Lで販売され、Solvay SAから市販されている軽質ソーダ灰。炭酸ナトリウムは、d0.9<150μmを有し、使用前に乾燥させた。
【0078】
CO:Armand Products Company(USA)から市販されている炭酸カリウム(d0.9<45μm)。炭酸カリウムを使用前に乾燥させた。
【0079】
LiCl:Acros Organics(Geel、Belgium)から市販されている塩化リチウム(無水粉末)。
【0080】
PEKKの調製
PEKK#1(e-PEKK)
この例は、ルイス酸の存在下での調製方法を使用したPEKKの合成、及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0081】
重縮合
攪拌機、乾燥N注入管、反応媒体に入れられた熱電対、及び凝縮器を備えた200mLの4つ口反応フラスコに、1,2-ジクロロベンゼン1000g及び1,4-B(4-PB)B 40.63gを導入した。乾燥窒素のスイープ下にて、次いで、塩化テレフタロイル3.375g、塩化イソフタロイル13.880g、及び3,5-ジクロロベンゾイルクロリド0.354gを反応混合物に添加した。次いで、反応器を-5℃に冷却し、温度を5℃未満に保ちながら、塩化アルミニウム(AlCl)71.88gをゆっくりと加えた。反応を5℃で10分間保持し、次いで混合物の温度を5℃/分で90℃に上げた。反応混合物を90℃で30分間保持し、次いで30℃に冷却した。30℃で、250gのメタノールをゆっくりと添加して、温度を60℃未満に維持した。添加終了後、反応混合物を2時間攪拌し続け、次いで30℃に冷却した。
【0082】
濾過及び洗浄
次いで、ブフナーでの濾過により固体を除去した。更なるメタノール188gで湿ったケークをフィルター上ですすいだ。次いで、湿ったケークをビーカー内でメタノール440gで2時間再スラリー化した。ポリマー固体をブフナー漏斗で再度濾過し、メタノール188gで湿ったケークをフィルター上ですすいだ。この固体を、塩酸水溶液470g(3.5重量%)で2時間スラリー化した。次いで、ブフナーでの濾過により固体を除去した。更なる水280gで、湿ったケークをフィルター上ですすいだ。次いで、湿ったケークを、0.5N水酸化ナトリウム水溶液250gでビーカーにおいて2時間再スラリー化した。次いで、水475gを用いてビーカーにおいて、湿ったケークを再スラリー化し、ブフナー漏斗で濾過した。最後の水洗工程をさらに3回繰り返した。ポリマー反応器の粉末を、180℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。
【0083】
PEKK#2(n-PEKK)
この実施例は、ルイス酸を使用しない調製方法を用いたPEKKの合成及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0084】
重縮合
攪拌機、N注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対付きClaisenアダプター並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4つ口反応フラスコに、DPS127.82g、1,3-ビス(4’-HB)B36.129g、1,4-ビス(4’-HB)B9.032g、及び1,4-ビス(4’-FB)B46.365gを導入した。
【0085】
フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のOを含む)高純度窒素で満たした。次いで、反応混合物を一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0086】
反応混合物を200℃までゆっくり加熱した。200℃で、NaCO15.609g及びKCO0.098gを60分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で163分後に、反応器において窒素パージを保ちながら、1,4-ビス(4’-FB)B0.914gを反応混合物に添加した。5分後、LiCl0.601gを反応混合物に添加した。10分後に、別の1,4-ビス(4’-FB)B0.457gを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0087】
抽出
次いで、反応器内容物を反応器からSS受皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリションミルで摩砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12のアセトンと水との混合物から抽出した。次いで、粉末を反応器から取り出し、真空下120℃で12時間乾燥させ、81gのオフホワイト/黄色の粉末を得た。ポリマーは、60/40のT/I比を有する。粉末のd0.9値は1425μm、d0.5値は650μmである。
【0088】
粗いPEKK粉末の特徴付け
熱分解温度(Td)
1重量%損失での熱分解温度、Td(1%)は、ASTM D3850に従って熱重量分析(「TGA」)によって測定した。TGAは、10℃/分の加熱速度にて窒素下で(60mL/分)30~800℃までTA Instruments TGA Q500で行った。
【0089】
熱転移(Tg、Tm)
ポリマーのガラス転移温度及び融解温度は、10℃/分の加熱及び冷却速度を用いて、ASTM D3418に従って示差走査熱量分析(DSC)を使用して測定した。それぞれのDSC試験に対して3つの走査を用いた:360℃までの第1の加熱、続いて30℃への第1の冷却、続いて360℃までの第2の加熱。Tg及びTmは、第2の加熱から決定した。DSCは、窒素をキャリアガスとして使用して(純度99.998%、50mL/分)TA Instruments DSC Q20で実行した。
【0090】
メルトフローインデックス(MFI)
MFIは、ASTM D1238を用いて340℃で6分間の滞留時間にて重量8.4kgで測定した。
【0091】
固有粘度(IV)
IVは、ASTM D2857に従って、Cannon-Fenskeキャピラリー、サイズ200を使用して、30℃で濃HSO(最低限度96重量%)中の0.5重量/体積%の溶液で測定した。
【0092】
【0093】
粉砕試験
以下のPSD規格:
15μmを超えるd10
120μm未満のd90
40~60μmに含まれるd50
を得る目的で、以下に記載のようにいくつかの方法を用いた。
【0094】
PEKK粉末の特性評価
PSD(d10、d50、d90
PSD(体積分布)は、湿式モード(128チャネル、0.0215~1408μm)でレーザー散乱Microtrac S3500分析器を使用して、平均3回実行して決定した。溶媒は、屈折率1.38のイソプロパノールであり、粒子は、屈折率1.59を有すると想定された。超音波モードが有効になり(25W/60秒)、流量は55%に設定した。
【0095】
BET表面積
粉末の多孔度を、25℃の浸漬/排気温度を使用してISO9277に従って測定した。
【0096】
注ぎかさ密度(ρB)
かさ密度は、風袋引きした100mLメスシリンダーに摩砕したポリマーを約90~95mLまで加え、材料を自然に沈降させることにより決定した。体積を読み取り、シリンダーを再計量した。かさ密度を以下の式によって決定した。
ρB=質量/体積
【0097】
アスペクト比(AR)
アスペクト比という用語は、PEKK粉末粒子の走査型電子顕微鏡法(SEM)画像からの少なくとも60個の粒子での測定値であった。粉末粒子の寸法は、様々な異なる方法で測定された。アスペクト比の値は、最大長さ寸法と最小長さ寸法(=最大長さ/最小長さ)の平均比を表す。
【0098】
粉砕試験1
最初に、2つのPEKKをアトリションミル(Retsch)で処理した。グラインダーにおいて測定された温度は40℃未満であった。
【0099】
この処理はPEKK#1で成功し、著しく粒径が低減した。しかしながら、PEKK#2ではこれは成功せず、有意には粒径は低減しなかった。
【0100】
【0101】
粉砕試験2
粉砕試験2a:マイクロジェット(Micro-jet)ミル(流体エネルギー)
【0102】
最初に、PEKK#2を8インチのマイクロジェットミル(流体エネルギー)で処理した。
【0103】
この処理はPEKK#2では成功せず、有意には粒径が低減しなかった。
【0104】
粉砕試験2b:室温でのRoto-Jetミル(流体エネルギー)
次いで、PEKK#2をRoto-Jetシステム(流体エネルギー)で処理した。
【0105】
最初に、これは、d50値61μmが得られたように思われたが、さらに処理した後に、Roto-Jetでは、供給原料中に存在する粉末を単に分級されただけだった。これは、粉末の収量が少量であるためだと判明した。ミルを開けると、床に含有される供給原料は未粉砕であることが分かった。
【0106】
粉砕試験2c:材料の予冷を用いたRoto-Jetミル(流体エネルギー)
材料を予冷した場合でさえ、これは、粉砕能の向上を示さなかった。
【0107】
粉砕試験2d:45℃未満(40℃)のディスクミル
次いで、PEKK#2をディスクミル(Wedco Therm-O-Fine Mill System, Model SE-12-C)で処理した。粉砕ディスクの出口で測定された温度は45℃未満(約40℃)であった。
【0108】
粉砕装置は、1つが静止しており、もう1つがギャップ0.1mmで回転する、半径方向に溝のある1セットのディスクからなる。
【0109】
粉砕試験2e:72~74℃でのディスクミル
グラインダーの温度が72~74℃であるように、粉砕パラメーターを調節したことを除いては、試験2dに使用された装置と同じ装置を使用した。粉砕された粉末を以下のように熱処理した;室温から268℃へと2.5時間の上昇、次いで268℃(オーブン内で測定された温度)で1.5時間維持した。
【0110】
【国際調査報告】