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特表2022-518845有機過酸化物製造の水性廃棄物流から塩を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】有機過酸化物製造の水性廃棄物流から塩を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 3/06 20060101AFI20220309BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C01D3/06 G
C02F1/40 A
C02F1/40 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544503
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020052039
(87)【国際公開番号】W WO2020157061
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19154884.1
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Velperweg 76, 6824 BM Arnhem, the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】スティーンスマ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】タメル,マルティヌス,キャサリヌス
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,クラウス
【テーマコード(参考)】
4D051
【Fターム(参考)】
4D051AA01
4D051AB02
4D051BA01
4D051CA02
4D051CA04
(57)【要約】
1つまたは複数の有機過酸化物製造方法からの水性排液からNaClおよび/またはKClを含む塩を製造する方法であって、(a)水性排液のpHが、1~5の範囲であることを確実にするステップと、b)排液を液体有機層および水層に分離するステップと、(c)有機層を除去するステップと、(d)水性層のpHを6~14の範囲の値に上昇させるステップと、(e)6~14の範囲のpHを有する水性層から塩を結晶化するステップとを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の有機過酸化物製造方法からの水性排液から、NaClおよび/またはKClを含む塩を製造する方法であって、
a)水性排液のpHが1~5の範囲にあることを確実にするステップと、
b)排液を液体有機層および水層に分離するステップと、
c)有機層を除去するステップと、
d)水性層のpHを6~14の範囲の値に上昇させるステップと、
e)6~14の範囲のpHを有する水性層から前記塩を結晶化させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップa)が、排液を1~4の範囲のpHに酸性化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HClが、酸性化のために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)の前に、水層に水蒸気蒸留を施して、揮発性有機化合物を除去する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
揮発性有機化合物が、イソ酪酸、n-酪酸、ピバル酸、tert-アミルヒドロペルオキシド、および/またはtert-ブチルヒドロペルオキシドを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)の前または間に有機溶媒が添加される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)で収集された有機層が、場合によりアルカリ性水溶液で洗浄された後、リサイクルされ、有機溶媒として再利用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)が、オイルスキマーの使用を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップe)が水性相を蒸発させ、それにより前記塩を結晶化して塩スラリーを形成することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップe)で得られた前記塩が、0.5重量%未満の水分量まで乾燥される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的製造方法の排液、より具体的には有機過酸化物製造の排液から、塩、より具体的にはNaClおよび/またはKCl含有塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、およびペルオキシジカーボネートなどの種々の有機過酸化物の製造は、アルカリ条件下で、酸塩化物またはクロロホルメートと有機ヒドロペルオキシドまたはHとの反応を含む。特定の方法に応じて、アルカリ条件は、NaOH、KOH、またはそれらの組み合わせの添加によって得られる。
【0003】
副生成物として、かなりの量の塩(KClおよび/またはNaCl)が形成される。また、NaSOなどの他の塩が存在する可能性もある。高い塩濃度は、一般に、塩含有水性排液を生物学的廃水処理ユニットに直接処理することができないほどのものである。
【0004】
排液を希釈する代わりに、繊維品製造、皮革のなめし、またはクロルアルカリプロセスなどの他のプロセスに使用を見出せる形で塩を分離することは、環境および経済的な観点からより魅力的である。
【0005】
塩は、従来の蒸発結晶化によって回収することができる。ただし、このような系で排液を直接処理すると、安全性および操作上の問題が発生する。第一に、危険なほどに濃縮された有機過酸化物残留相が、晶析装置内に形成される可能性がある。さらに、得られた塩は、過酸化物残留物および/または高有機不純物レベルを含み、再利用を妨げるか、または塩の再利用時に健康および安全上の問題を引き起こす可能性がある。その上、反応物として塩化ベンゾイルを使用する方法からの排液に存在する安息香酸残留物の沈降は、スケーリングおよびパージングの問題を引き起こす可能性がある。最後に、反応物としてより高級な酸塩化物を使用する方法からの排液中に存在するより高級なカルボン酸(≧8炭素原子)またはそれらの塩は、最終的に水層になり、起泡を引き起こし、それによって晶析装置の能力を低下させる可能性がある。
【0006】
塩が再利用に好適となるためには、乾燥塩の重量に対して、塩は1000ppmを超え、好ましくは500ppmを超え、さらにより好ましくは300ppmを超え、最も好ましくは200ppmを超える有機不純物を含むべきではない。この有機不純物の含有量は、不揮発性有機化合物(NPOC)の含有量として定義され、これは、以下の例で説明するように求められる。
【発明の概要】
【0007】
これらの問題を軽減し、再利用に好適な塩を得るために、排液を最初に1~5の範囲のpHに酸性化し、続いて有機液体層を分離し、次に排液のpHを6~14の範囲の値に再び上昇させることが現在わかっている。
【0008】
酸性化により、有機過酸化物を製造するときにプロセス流に一般的に存在する安息香酸および高級カルボン酸が有機層に入ることができ、結晶化の前に水層からそれらを分離することができる。それに続く高いpHは、ステンレス鋼の結晶化設備の腐食を防ぎ、および/または有機酸の沈殿を防ぐ働きをする。
【0009】
したがって、本発明は、1つまたは複数の有機過酸化物製造方法からの水性排液からNaClおよび/またはKClを含む塩を製造する方法であって、
a)水性排液のpHが1~5の範囲にあることを確実にするステップと、
b)排液を液体有機層および水層に分離するステップと、
c)液体有機層を除去するステップと、
d)水層のpHを6~14の範囲の値に上昇させるステップと、
e)6~14の範囲のpHを有する水層から塩を結晶化させるステップと
を含む方法に関する。
【0010】
中国特許第108423908号明細書は、有機過酸化物方法からの排液を処理する方法であって、排液を酸性化するステップと、沈殿によって固体形態の4-メチル安息香酸を単離するステップと、残りの流体のpHを5から7の間の値に上昇させるステップと、次に沈殿ステップでNaClを単離するステップとを含む方法を開示していることに注意すべきである。中国特許第108423908号明細書に開示されている方法の目的は、大部分が未反応の4-メチル安息香酸の単離と回収であり、主に高純度の塩の回収ではない。驚くべきことに、ステップb)において、分離が液液分離であり、有機および水性液相が分離される場合、単離された塩の純度が明らかに改善され、中国特許第108423908号明細書に開示されている方法よりも、塩は著しく少量の(不揮発性)有機物しか含まないことがわかっている。代替として、中国特許第108423908号明細書の方法で、有機物の量の少なさが向上した塩を得ることを望む場合、さらなる精製ステップが必要になり、いかなる精製ステップもある程度の収量の損失を伴うため、方法を魅力的ではないものにし、そのような塩の単離が少なくなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水性排液
水性排液は、アルカリ条件下で酸塩化物またはクロロホルメートを有機ヒドロペルオキシドまたはHと反応させることにより、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート、またはペルオキシジカーボネートを製造することから生じる。
【0012】
ペルオキシエステルの例は、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、ペルオキシ安息香酸tert-アミル、ペルオキシ安息香酸クミル、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ安息香酸tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-アミルペルオキシイソブチレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシイソブチレート、クミルペルオキシイソブチレート、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、クミルペルオキシピバレート1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、クミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシアセテート、クミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、およびクミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートである。
【0013】
好ましいペルオキシエステルは、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、およびtert-ブチルペルオキシネオデカノエートである。
【0014】
ペルオキシカーボネートの例は、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、クミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、および1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシイソプロピルカーボネートである。
【0015】
好ましいペルオキシカーボネートは、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネートである。
【0016】
ジアシルペルオキシドの例は、ジイソブチリルペルオキシド、ジ-n-ブチリルペルオキシド、ジイソペンタノイルペルオキシド、ジ-n-ペンタノイルペルオキシド、ジ-2-メチルブタノイルペルオキシド、ジ-ヘキサノイルペルオキシド、ジ-オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、アセチルイソブチリルペルオキシド、シクロヘキシルカルボニルアセチルペルオキシド、アセチルベンゾイルペルオキシド、ラウロイルアセチルペルオキシド、ヘキサノイルアセチルペルオキシド、プロピオニルイソブチリルクロリド、プロピオニルベンゾイルペルオキシド、ジ(p-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(o-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、およびジデカノイルペルオキシドである。
【0017】
好ましいジアシルペルオキシドは、ジイソブチリルペルオキシド、アセチルイソブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(p-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(o-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、およびジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドである。
【0018】
ペルオキシジカーボネートの例は、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、およびジ(2-プロピルヘプチル)ペルオキシジカーボネートである。
【0019】
好ましいペルオキシジカーボネートは、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0020】
1つの個別の過酸化物製造方法からの水性排液を本発明の方法で使用することができるが、2つ以上の過酸化物製造方法からの水性排液の混合物を使用することも可能である。
【0021】
そのような混合物を使用する利点は、ステップb)で形成され、除去される(組み合わされた)液体有機相が、前記混合物の水層からの水溶性有機不純物の抽出溶媒として働くことができることである。
【0022】
本発明の方法で使用される水性排液は、概して、3重量%を超え、より好ましくは7重量%を超え、さらにより好ましくは12重量%を超えるNaClおよび/またはKClを含む塩を含む。
【0023】
排液中の有機種の濃度は、概して、0.1~10重量%、より好ましくは0.3~7重量%、最も好ましくは0.5~4重量%になる。これらの有機物の一部は、有機(ヒドロ)ペルオキシド残留物で構成されている。これらの残留物は、概して、0.01~4重量%、好ましくは0.05~3重量%、最も好ましくは0.1~2.5重量%の濃度で排液中に存在する。
【0024】
このような排液に存在する可能性のある他の有機種は、過酸化物分解生成物(アセトン、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、tert-ブタノール、またはtert-アミルアルコールなど)および溶媒(例えば、フタル酸ジメチル、イソドデカン、無臭ミネラルスピリット、酢酸エチル、またはトルエン)である。
【0025】
本方法で使用される排液のpHは、好ましくは少なくとも8、さらにより好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも11である。
【0026】
ステップa)
ステップa)は、水性排液のpHが1~5の範囲、好ましくは2~4の範囲にあることを確実にすることを必要とする。これは、pHがすでにその範囲内にある場合、操作は不要であることを意味する。
【0027】
ただし、排液はアルカリ条件下で行われる方法から生じるため、一般に、酸を加えることによってpHを下げる必要がある。
【0028】
多くの酸を使用できるが、塩化物アニオンを含む排液にはHClを使用することが好ましい。排液が、硫酸アニオンも含む場合、HSOまたはNaHSOを好適に使用することができる。
【0029】
ステップb)
ステップa)の酸性化は、一般に、液体有機相の形成をもたらす。酸性化ステップa)の前またはその間に、有機溶媒を場合により加えてもよい。液体有機相が形成されないか、ほとんど形成されない場合は、排液から有機物を抽出し、それによって汚損を減少させ、相の分離および有機層の安全特性を改善するために、酸性化ステップa)の前またはその間に有機溶媒を加えることが望ましい。液体有機相の形成が非常に小さいために良好な液液分離を行うことができない実施形態では、有機溶媒が添加される。
【0030】
この有機溶媒は、好ましくは、水への溶解度が極めて限られている極性溶媒である。好適な溶媒の例は、低級フタル酸、C6~18カルボン酸、C6~18アルコール、5個を超える炭素原子を有するエステル、5個を超える炭素原子を有するエーテル、5個を超える炭素原子を有するアルカン、6個を超える炭素を有する芳香族化合物、およびそのような溶媒の混合物である。具体的な例は、2-エチルヘキサノール、フタル酸ジメチル、オレイン酸、ディーゼル油、異性体C12混合物(例えば、イソドデカン)、アジピン酸ジメチルまたはアジピン酸ジエチルを含むエステルの混合物、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、安息香酸エチル、トルエン、キシレン、およびそれらの混合物である。
【0031】
液体有機層には、有機過酸化物残留物、安息香酸、アルコール、および高級カルボン酸を含む、排液中に存在していたほとんどの有機成分が含まれるであろう。
【0032】
ステップc)
ステップb)で形成された液体有機層は、水層から除去される。これはさまざまな方法で行うことができる。例えば、重力沈降とそれに続く上層のデカンテーションによって実行できる。また、オイルスキマー、すなわち、有機層に浸り、有機層を除去する回転ベルトまたは緩慢に動くスクレーパーを含む装置で行うことができる。液体有機層はまた、液液分離器によって、遠心力の適用によって、プレート分離器によって、浮揚によって、または抽出によって除去することができる。
【0033】
除去された液体有機層は、そのまままたは(アルカリ性)水に分散させて、生物学的廃水処理ユニットに移すことができる。有機層はまた、有機液体廃棄物として処分するか、または洗浄および/もしくは中和した後、燃料として使用することができる。ステップbの間に有機溶媒が添加される場合、好ましい実施形態の有機層は、場合により、例えばアルカリ水溶液で洗浄することによって精製され、ステップb)で抽出溶媒として再利用される。
【0034】
所望であれば、アセトン、メタノール、酢酸、ギ酸、イソ酪酸、n-酪酸、ピバル酸、tert-アミルヒドロペルオキシド、およびtert-ブチルヒドロペルオキシドなどの揮発性有機化合物を水蒸気蒸留によって除去することができる。これは、酸性化ステップa)の後、および液体有機層の除去の前または後に行うことができる。
【0035】
水蒸気蒸留は、一般に、90~120℃の温度範囲内および、0.1~0.2Mpaの圧力で実施される。
【0036】
得られた蒸気流は凝縮され、生物学的廃水処理ユニットに送られ得る。
【0037】
ステップd)
液体有機層を分離した後、ステップe)で使用される結晶化設備の腐食を防止するため、および/または有機酸の沈殿を防止するために、水層のpHを、6~14、好ましくは7~13、より好ましくは8~13、さらにより好ましくは9~13、および最も好ましくは11~13の範囲の値まで上昇させる。
【0038】
pHは、好ましくはKOHまたはNaOHの添加によって上昇させる。
【0039】
ステップe)
塩はさまざまな方法で結晶化することができる。これらの方法の1つは、蒸発結晶化である。結晶化の温度および圧力は、塩溶液の沸騰温度および晶析装置の構成によって決まる。温度は、一般に50から150℃の間であり、圧力は50ミリバールから4バールの間である。
【0040】
晶析装置は、機械的蒸気再圧縮(MVR)を動力源とする強制循環晶析装置、または場合により熱蒸気再圧縮(TVR)と組み合わせた蒸気動力の単効用または多重効用晶析装置などの従来型のうち任意のものであっても、単に噴霧乾燥機であってもよい。
【0041】
KCl結晶化の場合、冷却結晶化も可能である。
【0042】
NaCl結晶化には、二重効用または三重効用の蒸気動力晶析装置またはMVRが好ましい。
【0043】
結晶化すると、塩スラリーがもたらされる。品質上の理由で所望であれば、このスラリーは、例えば、(押出)遠心分離機、エルトリエーションレッグ(elutriation leg)、洗浄カラム、または洗浄容器を使用して洗浄することができる。洗浄は、清浄な水または例えば前の洗浄サイクルからのブラインで行うことができる。塩は、重力沈降、遠心分離、濾過、または他のいずれかの好適な固液分離技術によって、「湿潤塩」としてスラリーから収集される。濾液は、処分するか、または(部分的に)ステップa)もしくはステップe)にリサイクルしてもよい。
【0044】
一実施形態では、湿潤塩は、付着した液体から分離された後、フィルターまたは別の好適な器具で洗浄してもよい。
【0045】
所望であれば、得られた(洗浄した、または未洗浄の)「湿潤」塩を乾燥させることができる。乾燥は、例えば流動床乾燥機またはベルト乾燥機などの、任意の従来の乾燥機で行うことができる。
【0046】
得られた塩は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5%未満、乾燥後は、好ましくは0.5重量%未満の水分量を有する。
【0047】
塩は、再利用に好適となるように、好ましくは、乾燥塩の重量に対して、1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、さらにより好ましくは300ppm以下、および最も好ましくは200ppm以下の不揮発性有機化合物(NPOC)を含む。
【0048】
所望であれば、固化防止剤を塩に加えることができる。固化防止剤の例は、ヘキサシアノ鉄酸ナトリウム(黄血ソーダ、YPS)、またはシリカである。
【0049】
固化防止剤は、一般に5~100ppmの量で添加される。
【0050】
得られた塩は、廃棄物として処分することができるが、再利用することが好ましい。塩は、繊維製造、皮革のなめし、施肥、またはクロルアルカリプロセスなど、さまざまな用途で再利用できる。
【実施例
【0051】
すべての実施例において、NPOCは島津製作所のTOC(全有機炭素)計を使用して測定した。まず、塩を水に溶解し、HClを加えることによって酸性にし、その後Nでパージした。その後、試料をPt触媒の存在下で、管内で、680℃で燃焼した。形成されたCOは、非分散型赤外線(NDIR)検出器で求め、炭素の量は、外部標準(フタル酸水素カリウム)に対して計算した。
【0052】
[実施例1]
有機過酸化物製造方法からのいくらかの水性廃棄流の混合物30lをパイロットスケールの反応器に加えた。混合物は10.5のpH、および以下のおおよその組成を有した。
【0053】
【表1】
【0054】
混合物は、30重量%のHCl溶液を加え、続いて0.5重量%のフタル酸ジメチルを加えることにより(混合物の総重量に対する)、pH2.5に酸性化した。水性相から容易に分離できる透明な有機層が得られた。
【0055】
得られた水性相に、pHが10.5になるまで、30重量%のNaOH溶液を加えた。次に、混合物をパイロットスケールの回分晶析装置に移し、1バールの圧力で約110℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、NaCl結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。遠心分離中、塩を200ml/kgの塩の総洗浄水流で洗浄した。得られたNaClは、4重量%の含水量、および233ppmの不揮発性有機炭素(NPOC)の含有量を有した。
【0056】
[実施例2]
有機過酸化物製造方法からのいくらかの水性廃棄流の混合物30lを、パイロットスケールの反応器に加えた。混合物は、約11のpH、および以下のおおよその組成を有した。
【0057】
【表2】
【0058】
混合物を、30重量%のHCl溶液を加えることにより、pH2.5に酸性化した。水性相の上部に透明な液体有機層が形成された。この有機層を、小規模のオイルスキマー(ex-Abanaki)を使用して水性相から分離した。
【0059】
得られた水性相に、pHが10.5になるまで、30重量%のKOH溶液を加えた。次に、混合物をパイロットスケールの回分晶析装置に移し、60ミリバールの圧力で約50℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、KCl結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。遠心分離中、塩を300ml/kgの塩の総洗浄水流で洗浄した。得られたKClは、4重量%の含水量および215ppmのNPOC含有量を有した。KClを、パイロットスケールの流動床乾燥機に移した。得られた乾燥塩は、0.2重量%の含水量を有した。
【0060】
[実施例3]
有機過酸化物製造方法からのいくらかの水性廃棄流の混合物30lを、パイロットスケールの反応器に加えた。混合物は、以下のおおよその組成を有した。
【0061】
【表3】
【0062】
混合物を30重量%HCl溶液の添加によりpH2.5に酸性化し、実施例2で得られた有機層を加えた。水性相から容易に分離できる透明な有機層が得られた。
【0063】
得られた水性相に、pHが10.5になるまで、30重量%のNaOH溶液を加えた。次に、混合物をパイロットスケールの回分晶析装置に移し、1バールの圧力で約110℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、NaCl結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。遠心分離中、塩を400ml/kgの塩の総洗浄水流で洗浄した。得られたNaClは、4重量%の含水量、および177ppmのNPOC含有量を有した。
【0064】
[実施例4]
有機過酸化物製造方法からのいくらかの水性廃棄流の混合物30lを、パイロットスケールの反応器に加えた。混合物は、以下のおおよその組成を有した。
【0065】
【表4】
【0066】
混合物を、30重量%のHCl溶液を加えることにより、pH2.5に酸性化した。水性相の上部に透明な液体有機層が形成された。有機層を水相から分離した。
【0067】
得られた水性相に、pHが10.5になるまで、30重量%のNaOH溶液を加えた。次に、混合物をパイロットスケールの回分晶析装置に移し、1バールの圧力で約110℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、塩の結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。得られた塩混合物は、6重量%の含水量、および760ppmのNPOC含有量を有した。
【0068】
[比較例5]
実施例1で使用した廃棄流の混合物30lをパイロットスケールの回分晶析装置に移し、1バールの圧力で約110℃に加熱した。しばらくしてから、NaCl結晶が形成され始めた。ほぼ同時に、安息香酸ナトリウムの沈殿物が形成され始めた。適度なスラリー密度が形成されるまで結晶化を継続することを試みたが、安息香酸ナトリウムおよび他の沈殿物が設備を詰まらせていた。塩/有機物混合物が十分に脱水されなかったため、スラリーを含水量<10%まで遠心分離することができなかった。
【0069】
この実験は、実施例1で実行した酸性化ステップが、塩の適切な単離に不可欠であることを示している。
【0070】
[比較例6]
実施例2で使用した廃棄流の混合物30lを、パイロットスケールの回分晶析装置に移し、60ミリバールの圧力で約50℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、KCl結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。遠心分離機では、起泡が観察され、その結果、遠心分離が遅く不完全になった。300ml/kgの塩の総洗浄水流で塩を洗浄することを試みた。塩を、パイロットスケールの流動床乾燥機に移した。得られた乾燥塩は、2600ppmのNPOC含有量を有した。
【0071】
この実験は、実施例2で実行した酸性化ステップが、十分に低い有機物含有量を有する塩を得るために不可欠であることを示している。
【0072】
[実施例7]
ジベンゾイルペルオキシドを、塩化ベンゾイル、30%のH2O2、25%のNaOH、および界面活性剤で作製した。反応混合物を濾過して、生成物と水層とを分離した。水層は、以下の組成は有した。
【0073】
【表5】
【0074】
Knick社のpHメーターおよびMettler Toledo InlabのpH電極で測定したpH>6の水層100.4gに、8.04gのフタル酸ジメチル(DMP)を加えた。組み合わせた混合物を、0.84gの18重量%HCl溶液を加えることにより、20~25℃で撹拌しながらpH2.3に酸性化した。さらに5分間撹拌を続けた後、層を分離させた。下方のDMP層を水層から分離した。得られた0.07%の安息香酸含有量を有する水相を、30重量%のNaOH溶液でpH>7に中和した。次に、混合物を回分晶析装置に移し、1バールの圧力で約110℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、塩の結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。得られた塩は、6重量%の含水量、および620ppmのNPOC含有量を有した。DMP層をpH>7になるまで3%のNaOH溶液で洗浄し、安息香酸の抽出に再利用した。
【0075】
[比較例8]
水性相中に白色の沈殿物が形成された。さらに5分間撹拌を続けた後、固体を濾過した。得られた0.17%の安息香酸含有量を有する透明な水相を、30重量%のNaOH溶液でpH>7に中和した。次に、混合物を回分晶析装置に移し、1バールの圧力で約110℃に加熱した。結晶化の間に、水蒸気を上部から除去した。しばらくしてから、塩の結晶が形成され始めた。得られた塩スラリーを遠心分離機に移した。得られた塩は、6重量%の含水量、および1490ppmのNPOC含有量を有した。
【0076】
この実験は、実施例7で実行された酸性化ステップにおける溶媒の添加、およびそれに続く液液分離が、十分に低い有機物含有量を有する塩を得るために不可欠であることを示している。
【国際調査報告】