(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(54)【発明の名称】アルファヘルペスウイルスプロモーター配列を含む組換え核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20220309BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220309BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220309BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220309BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220309BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220309BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220309BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220309BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/11 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545307
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020016787
(87)【国際公開番号】W WO2020163475
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,エステバン
(72)【発明者】
【氏名】マトゥラーナ,カローラ
(72)【発明者】
【氏名】エンキスト,リン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換え核酸(例えばベクター)および関連のある方法が提供される。組換え核酸は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8および配列番号:9から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;
標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに
宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子
を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクター。
【請求項2】
ベクターがウイルスベクターである、請求項1記載の組換えベクター。
【請求項3】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項2記載の組換えベクター。
【請求項4】
ベクターが非ウイルスベクターである、請求項1記載の組換えベクター。
【請求項5】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項1~4いずれか記載の組換えベクター。
【請求項6】
宿主細胞が、インビトロニューロン細胞、エキソビボニューロン細胞または両方を含む、請求項1~5いずれか記載の組換えベクター。
【請求項7】
宿主細胞が、被験体のニューロン細胞を含む、請求項1~5いずれか記載の組換えベクター。
【請求項8】
ニューロン細胞が、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳および嗅覚野またはそれらの組合せに存在する、請求項7記載の組換えベクター。
【請求項9】
中脳領域が、運動関連野、感覚関連野または両方を含む、請求項8記載の組換えベクター。
【請求項10】
ニューロン細胞が、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する、請求項7記載の組換えベクター。
【請求項11】
ニューロン細胞が、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む、請求項6~10いずれか記載の組換えベクター。
【請求項12】
ニューロン細胞がニューロンを含む、請求項11記載の組換えベクター。
【請求項13】
ニューロン細胞が被験体の脊髄に存在する、請求項7記載の組換えベクター。
【請求項14】
ニューロン細胞が脊髄の後角に存在する、請求項13記載の組換えベクター。
【請求項15】
ニューロン細胞が、腰部脊髄、胸部脊髄、頸部脊髄またはそれらの組合せに存在する、請求項13または14記載の組換えベクター。
【請求項16】
宿主細胞が、嚢細胞、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~5いずれか記載の組換えベクター。
【請求項17】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~16いずれか記載の組換えベクター。
【請求項18】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項17記載の組換えベクター。
【請求項19】
少なくとも1つの非プロモーター制御因子がエンハンサー因子を含む、請求項1~18いずれか記載の組換えベクター。
【請求項20】
少なくとも1つの非プロモーター制御因子がインデューサ因子を含む、請求項1~19いずれか記載の組換えベクター。
【請求項21】
選択可能マーカー因子をさらに含む、請求項1~20いずれか記載の組換えベクター。
【請求項22】
請求項1~21いずれか記載の組換えベクターを含む、宿主細胞。
【請求項23】
標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子であって、該核酸が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される、組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項24】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項23記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項25】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項24記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項26】
標的遺伝子をコードする核酸が4キロベースよりも大きいものを含む、請求項23~25いずれか記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項27】
標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子であって、該クローニング部位が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含むプロモーターに操作可能に連結される、組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項28】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項27記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項29】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列を含む、請求項28記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項30】
組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法であって、組換えポリヌクレオチド分子が標的遺伝子をコードする核酸を含み、核酸が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、
標的遺伝子の発現が宿主細胞で起こる、方法。
【請求項31】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
プロモーターが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、組換えポリヌクレオチド分子が形質導入により宿主細胞に導入される、請求項30~32いずれか記載の方法。
【請求項34】
宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、組換えポリヌクレオチド分子がトランスフェクションにより宿主細胞に導入される、請求項30~32いずれか記載の方法。
【請求項35】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項30~34いずれか記載の方法。
【請求項36】
宿主細胞がインビトロニューロン細胞、エキソビボニューロン細胞または両方を含む、請求項30~35いずれか記載の方法。
【請求項37】
宿主細胞が被験体のニューロン細胞を含む、請求項30~35いずれか記載の方法。
【請求項38】
ニューロン細胞が、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳、嗅覚野またはそれらの組合せに存在する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
中脳領域が運動関連野、感覚関連野または両方を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
ニューロン細胞が、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する、請求項37記載の方法。
【請求項41】
ニューロン細胞が、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む、請求項36~40いずれか記載の方法。
【請求項42】
ニューロン細胞がニューロンを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
ニューロン細胞が被験体の脊髄に存在する、請求項37記載の方法。
【請求項44】
ニューロン細胞が脊髄の後角に存在する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
ニューロン細胞が、腰部脊髄、胸部脊髄、頸部脊髄またはそれらの組合せに存在する、請求項43または44記載の方法。
【請求項46】
宿主細胞が、嚢細胞、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項30~35いずれか記載の方法。
【請求項47】
配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;
標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに
宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子
を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクター。
【請求項48】
ベクターがウイルスベクターである、請求項47記載の組換えベクター。
【請求項49】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項48記載の組換えベクター。
【請求項50】
ベクターが非ウイルスベクターである、請求項47記載の組換えベクター。
【請求項51】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項47~50いずれか記載の組換えベクター。
【請求項52】
宿主細胞がインビトロニューロン細胞、エキソビボニューロン細胞または両方を含む、請求項47~51いずれか記載の組換えベクター。
【請求項53】
宿主細胞が被験体のニューロン細胞を含む、請求項47~51いずれか記載の組換えベクター。
【請求項54】
ニューロン細胞が、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳、嗅覚野またはそれらの組合せに存在する、請求項53記載の組換えベクター。
【請求項55】
中脳領域が運動関連野、感覚関連野または両方を含む、請求項54記載の組換えベクター。
【請求項56】
ニューロン細胞が、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する、請求項53記載の組換えベクター。
【請求項57】
ニューロン細胞が、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む、請求項52~56いずれか記載の組換えベクター。
【請求項58】
ニューロン細胞がニューロンを含む、請求項57記載の組換えベクター。
【請求項59】
ニューロン細胞が被験体の脊髄に存在する、請求項53記載の組換えベクター。
【請求項60】
ニューロン細胞が脊髄の後角に存在する、請求項59記載の組換えベクター。
【請求項61】
ニューロン細胞が、腰部脊髄、胸部脊髄、頸部脊髄またはそれらの組合せに存在する、請求項59または60記載の組換えベクター。
【請求項62】
宿主細胞が、嚢細胞、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項47~51いずれか記載の組換えベクター。
【請求項63】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項47~62いずれか記載の組換えベクター。
【請求項64】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項63記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項65】
少なくとも1つの非プロモーター制御因子がエンハンサー因子を含む、請求項47~64いずれか記載の組換えベクター。
【請求項66】
少なくとも1つの非プロモーター制御因子がインデューサ因子を含む、請求項47~65いずれか記載の組換えベクター。
【請求項67】
選択可能マーカー因子をさらに含む、請求項47~66いずれか記載の組換えベクター。
【請求項68】
請求項47~67いずれか記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項69】
標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子であって、該核酸が、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される、組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項70】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項69記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項71】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項70記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項72】
標的遺伝子をコードする核酸が4キロベースよりも大きいものを含む、請求項69~71いずれか記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項73】
標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子であって、該クローニング部位が、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含むプロモーターに操作可能に連結される、組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項74】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項73記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項75】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項74記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項76】
組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法であって、組換えポリヌクレオチド分子が標的遺伝子をコードする核酸を含み、核酸が、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、
標的遺伝子の発現が宿主細胞で起こる、方法。
【請求項77】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
宿主細胞がインビトロニューロン細胞、エキソビボニューロン細胞または両方を含む、請求項76または77記載の方法。
【請求項79】
宿主細胞が被験体のニューロン細胞を含む、請求項76または77記載の方法。
【請求項80】
ニューロン細胞が、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳、嗅覚野またはそれらの組合せに存在する、請求項79記載の方法。
【請求項81】
中脳領域が運動関連野、感覚関連野または両方を含む、請求項80記載の方法。
【請求項82】
ニューロン細胞が、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する、請求項79記載の方法。
【請求項83】
ニューロン細胞が、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む、請求項78~82いずれか記載の方法。
【請求項84】
ニューロン細胞がニューロンを含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
ニューロン細胞が被験体の脊髄に存在する、請求項79記載の方法。
【請求項86】
ニューロン細胞が脊髄の後角に存在する、請求項85記載の方法。
【請求項87】
ニューロン細胞が、腰部脊髄、胸部脊髄、頸部脊髄またはそれらの組合せに存在する、請求項85または86記載の方法。
【請求項88】
宿主細胞が、嚢細胞、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項76または77記載の方法。
【請求項89】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項76~88いずれか記載の方法。
【請求項90】
プロモーターが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列を含む、請求項89記載の方法。
【請求項91】
宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、組換えポリヌクレオチド分子が形質導入により宿主細胞に導入される、請求項76~90いずれか記載の方法。
【請求項92】
宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、組換えポリヌクレオチド分子がトランスフェクションにより宿主細胞に導入される、請求項76~90いずれか記載の方法。
【請求項93】
配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;
標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;および
宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子
を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクター。
【請求項94】
ベクターがウイルスベクターである、請求項93記載の組換えベクター。
【請求項95】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項94記載の組換えベクター。
【請求項96】
ベクターが非ウイルスベクターである、請求項93記載の組換えベクター。
【請求項97】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項93~96いずれか記載の組換えベクター。
【請求項98】
宿主細胞がインビトロニューロン細胞、エキソビボニューロン細胞または両方を含む、請求項93~97いずれか記載の組換えベクター。
【請求項99】
宿主細胞が被験体のニューロン細胞を含む、請求項93~97いずれか記載の組換えベクター。
【請求項100】
ニューロン細胞が、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳、嗅覚野またはそれらの組合せに存在する、請求項99記載の組換えベクター。
【請求項101】
中脳領域が運動関連野、感覚関連野または両方を含む、請求項100記載の組換えベクター。
【請求項102】
ニューロン細胞が、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する、請求項99記載の組換えベクター。
【請求項103】
ニューロン細胞が、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む、請求項98~102いずれか記載の組換えベクター。
【請求項104】
ニューロン細胞がニューロンを含む、請求項103記載の組換えベクター。
【請求項105】
ニューロン細胞が被験体の脊髄に存在する、請求項99記載の組換えベクター。
【請求項106】
ニューロン細胞が脊髄の後角に存在する、請求項105記載の組換えベクター。
【請求項107】
ニューロン細胞が、腰部脊髄、胸部脊髄、頸部脊髄またはそれらの組合せに存在する、請求項105または106記載の組換えベクター。
【請求項108】
宿主細胞が、嚢細胞、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項93~97いずれか記載の組換えベクター。
【請求項109】
プロモーターが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項93~103いずれか記載の組換えベクター。
【請求項110】
プロモーターが配列番号:9を含む、請求項109記載の組換えベクター。
【請求項111】
プロモーターが、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列をさらに含む、請求項93~110いずれか記載の組換えベクター。
【請求項112】
プロモーターが、配列番号:13~58からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項93~108いずれか記載の組換えベクター。
【請求項113】
プロモーターが、配列番号:13~58からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項112記載の組換えベクター。
【請求項114】
少なくとも1つの非プロモーター制御因子がエンハンサー因子を含む、請求項93~113いずれか記載の組換えベクター。
【請求項115】
少なくとも1つの非プロモーター制御因子がインデューサ因子を含む、請求項93~114いずれか記載の組換えベクター。
【請求項116】
選択可能マーカー因子をさらに含む、請求項93~115いずれか記載の組換えベクター。
【請求項117】
請求項93~116いずれか記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項118】
標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子であって、該核酸が、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される、組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項119】
プロモーターが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項118記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項120】
プロモーターが配列番号:9を含む、請求項119記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項121】
プロモーターが、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列をさらに含む、請求項118~120いずれか記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項122】
プロモーターが、配列番号:13~58からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項118記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項123】
標的遺伝子をコードする核酸が4キロベースよりも大きいものを含む、請求項118~122いずれか記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項124】
標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子であって、クローニング部位が、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される、組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項125】
プロモーターが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項124記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項126】
プロモーターが配列番号:9を含む、請求項125記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項127】
プロモーターが、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列をさらに含む、請求項124~126いずれか記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項128】
プロモーターが、配列番号:13~58からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項124記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項129】
プロモーターが、配列番号:13~58からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項128記載の組換えポリヌクレオチド分子。
【請求項130】
組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法であって、組換えポリヌクレオチド分子が標的遺伝子をコードする核酸を含み、核酸が、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、
標的遺伝子の発現が宿主細胞で起こる、方法。
【請求項131】
プロモーターが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項130記載の方法。
【請求項132】
プロモーターが配列番号:9を含む、請求項131記載の方法。
【請求項133】
プロモーターが、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列をさらに含む、請求項130~132いずれか記載の方法。
【請求項134】
プロモーターが、配列番号:13~58から選択される核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項130記載の方法。
【請求項135】
プロモーターが、配列番号:13~58から選択される核酸配列を含む、請求項134記載の方法。
【請求項136】
宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、組換えポリヌクレオチド分子が形質導入により宿主細胞に導入される、請求項130~135いずれか記載の方法。
【請求項137】
宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、組換えポリヌクレオチド分子がトランスフェクションにより宿主細胞に導入される、請求項130~135いずれか記載の方法。
【請求項138】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項130~137いずれか記載の方法。
【請求項139】
宿主細胞がインビトロニューロン細胞、エキソビボニューロン細胞または両方を含む、請求項130~138いずれか記載の方法。
【請求項140】
宿主細胞が被験体のニューロン細胞を含む、請求項130~138いずれか記載の方法。
【請求項141】
ニューロン細胞が、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳、嗅覚野またはそれらの組合せに存在する、請求項140記載の方法。
【請求項142】
中脳領域が運動関連野、感覚関連野または両方を含む、請求項141記載の方法。
【請求項143】
ニューロン細胞が、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する、請求項140記載の方法。
【請求項144】
ニューロン細胞が、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む、請求項140~143いずれか記載の方法。
【請求項145】
ニューロン細胞がニューロンを含む、請求項144記載の方法。
【請求項146】
ニューロン細胞が被験体の脊髄に存在する、請求項140記載の方法。
【請求項147】
ニューロン細胞が脊髄の後角に存在する、請求項146記載の方法。
【請求項148】
ニューロン細胞が、腰部脊髄、胸部脊髄、頸部脊髄またはそれらの組合せに存在する、請求項146または147記載の方法。
【請求項149】
宿主細胞が、嚢細胞、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項130~138いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年2月5日に出願された米国仮出願第62/801,524号および2019年12月19日に出願された米国仮出願第62/950,848号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
ウイルスは、それらの宿主に感染し、それらの遺伝子材料を、ウイルスの複製サイクルの一部として宿主の細胞に導入する。この遺伝子材料は、身体の正常な産生機構を乗っ取りウイルスの要求に奉仕させることにより、これらのウイルスのより多くのコピーを産生するための基本的な「指示」を含む。宿主細胞は、これらの指示を実行して、ウイルスのさらなるコピーを産生し、ますます多くの宿主の細胞が感染されるようになる。このように、ウイルスは、細胞内に治療的利益を提供し得る遺伝子を運ぶためのビヒクルとして使用され得る。
【発明の概要】
【0003】
概要
一局面において、本発明は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクターを提供する。
【0004】
別の局面において、本発明は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクターを提供する。
【0005】
別の局面において、本発明は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;および宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクターを提供する。
【0006】
いくつかの態様において、少なくとも1つの非プロモーター制御因子は、エンハンサー因子を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの非プロモーター制御因子はインデューサ因子を含む。
【0007】
いくつかの態様において、組換えベクターはさらに、選択可能マーカー因子を含む。
【0008】
いくつかの態様において、ベクターはウイルスベクターである。特定の態様において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0009】
いくつかの態様において、ベクターは非ウイルスベクターである。
【0010】
いくつかの態様において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は神経細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は非神経細胞(例えば肝臓細胞、腎臓細胞、網膜細胞)である。
【0011】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載される組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0012】
一局面において、本発明は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターを含む組換えポリヌクレオチド分子を提供する。別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで該核酸は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。
【0013】
別の局面において、本発明は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターを含む組換えポリヌクレオチド分子を提供する。別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで該核酸は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。
【0014】
別の局面において、本発明は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターを含む組換えポリヌクレオチド分子を提供する。別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで該核酸は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。
【0015】
別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで該クローニング部位は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含むプロモーターに操作可能に連結される。
【0016】
別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで該クローニング部位は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含むプロモーターに操作可能に連結される。
【0017】
別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで該クローニング部位は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。
【0018】
別の局面において、本発明は、組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように、宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法を提供し、ここで該組換えポリヌクレオチド分子は標的遺伝子をコードする核酸を含み、該核酸は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、標的遺伝子の発現は宿主細胞において起こる。
【0019】
別の局面において、本発明は、組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように、宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法を提供し、ここで該組換えポリヌクレオチド分子は標的遺伝子をコードする核酸を含み、該核酸は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、標的遺伝子の発現は宿主細胞において起こる。
【0020】
別の局面において、本発明は、組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように、宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法を提供し、ここで該組換えポリヌクレオチド分子は標的遺伝子をコードする核酸を含み、該核酸は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、標的遺伝子の発現は宿主細胞において起こる。
【0021】
いくつかの態様において、組換えポリヌクレオチド分子は、宿主細胞と組換えポリヌクレオチドの接触の際に形質導入により宿主細胞に導入される。別の態様において、組換えポリヌクレオチド分子は、宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際にトランスフェクションにより宿主細胞に導入される。
【0022】
本明細書に開示されるLAP配列の特性は:i)同様のプロモーター、例えば特にEF1α、CAG、TH、CaMKIIaと比較した場合に同様のサイズ(これは、制限された遺伝子ペイロード(payload)を有するAAVベクターに関する利点である)、ii)転写の抑制の受けやすさが低い長期間の発現を含む。本明細書に開示されるLAP配列は、トランスジーンの長期間の慢性的な転写を達成する。これは特に、治療トランスジーンが、患者/宿主の寿命の間に発現される必要があり得る遺伝子療法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面の簡単な説明
特許または出願のファイルは、カラーで作成される少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面(1つまたは複数)を有する本特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な費用の支払いに応じて官庁により提供される。
【0024】
前述のものは、添付の図面において図示されるように、例示態様の以下のより具体的な記載から明らかであり、該図面において、同様の参照記号は、異なる図面を通じて同じ部分を言及する。図面は必ずしも一定の割合で作られておらず、代わりに、態様を図示する際に強調がなされる。
【
図1】
図1A~1Dは、PRV潜伏関連転写物(latency-associated transcript)プロモーター(LAP)の特徴を示す。
図1Aは、902塩基対(bp)のPRV LAPの完全ヌクレオチド配列、ならびに498bpのサブ領域(sub-region)LAP1(太字および下線)、404bpのLAP2(下線)および880bpのLAP1_2を示す。LAP1_2は、LAP1およびLAP2配列のほとんどを含むが、LAP1の最初の22ヌクレオチドを欠く。黒いボックスは、GCボックス:特異性タンパク質1および3(Sp1およびSp3);CCAATボックス:核因子Y(NF-Y);ならびにTATAボックス:TATA結合タンパク質(TBP)を含む転写因子(TF)のためのコンセンサス配列を示す。カラーのボックスは、TFの結合モチーフ部位:1、緑色:SRY-ボックス10(SOX10);2、赤色:cAMP応答因子結合タンパク質(CREB);3、青色:CCCTC結合因子(CTCF);4、茶色:希突起膠細胞転写因子2(Olig2);5、桃色:転写のシグナルトランスデューサおよびアクチベーター(STAT1)についての座標を示す。
図1Bは、LAP1、LAP2、LAP1_2およびEF1αプロモーターからmCherry蛍光レポーターを転写するように設計された4つのAAVのプラスミドマップを示す。609bpのWPREは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後エンハンサー因子である。全てのAAVは、479bpのヒト成長ホルモン(hGHポリA)ポリアデニル化配列、およびそれぞれ141bpの隣接するAAV2逆方向末端反復(ITR)を含む。ベクターは、AAV-PhP.eB血清型カプシドにパッケージングされた。エンハンサー-プロモーター因子およびプロモーター配列の総サイズは、AAV-LAP1:1.87Kb;AAV-LAP2:1.77Kb;AAV-LAP1_2:2.25Kb;およびAAV-EF1α:2.63Kbである。
図1Cは、ラットSCGニューロンの一次培養物を形質導入して、90日のタイムラプス(time-lapse)にわたりmCherry発現を定量するために使用される4つのAAVを示す。mCherry発現の相対蛍光強度は、3x10
11 AAVゲノムを用いて、感染後3、5、7、9、11、14、17、21、24、28、31、34、38、41、45、49、52、59、67、73、82および90日(dpi)に測定した。スケールバー=100μm。データは、平均±SEM;1群当たりn=3SCGの培養皿として表す。
図1Dは、SCG細胞体におけるLAP1-mCherry、LAP2-mCherry、LAP1_2-mCherryまたはEF1α-mCherryでのAAVの形質導入後28日目のAAV駆動mCherry発現を示す。
【
図2】
図2A~2Pは、安定で長期間のLAP媒介トランスジーン発現を示す。
図2Aは、AAV投与の全身経路およびCNS組織処理の概略図である。AAVベクターの静脈内投与は、マウス後方眼窩洞(retro-orbital sinuses)への片側の注射により行った(4x10
11vg/マウス)。脳および脊髄は、30dpiおよび190dpiに回収した。脳の右半球は、iDISCO+組織透明化(tissue clearing)およびライトシート顕微鏡検査分析のために処理した。脳の左半球は、免疫蛍光および共焦点顕微鏡検査分析のために50μmで矢状方向に切片化した。脊髄は、免疫蛍光および共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで横方向に薄片化した。
図2B~2Pは、30dpiおよび190dpiで、iDISCO+透明化組織試料において異なる脳領域にわたる1mm
3当たりのmCherry陽性細胞の密度を定量化する。データは、平均±SEM;1群当たりn=2動物、1動物当たり5~10の500umの切片として表される。ビヒクル注射対照動物のものに対してデータを標準化した。(2つのみの群を比較する場合は)スチューデントt検定、または(2つより多くの群を比較する場合は)一元配置分散分析(ANOVA)次いでBonferroni post hoc検定により有意さを決定した。<0.05のp値は統計的に有意であった(*p<0.033;**p<0.002;***p<0.001)。
【
図3】
図3A~3J4は、全ての3つのAAV-LAP配列が、後方眼窩注射後の脳で広範囲で長期間のトランスジーン発現スループットを駆動することを示す。矢状方向の切片の代表的な免疫蛍光画像は、190dpiでのAAV-LAP1(
図3A)、AAV-LAP2(
図3B)、AAV-LAP1_2(
図3C)およびAAV-EF1α(
図3D)についての抗mCherry染色(緑色)の全脳分布を示す。Cx、皮質;Hip、海馬;MRN、中脳網様核;Cb、小脳;Thal、視床;Pn、橋;Hypo、視床下部;Str、線条;OB、嗅球。スケールバー=1mm。代表的な共焦点画像は、30dpiおよび190dpiでの皮質(
図3E)、歯状回(
図3F)、線条(
図3G)および小脳(
図3H)における抗mCherryシグナル(緑色)を示す。全ての画像は重ねた(stack)共焦点切片である。スケールバー=100μm。
図3I1~3I4は、皮質、歯状回、線条および小脳における30dpiおよび190dpiでのAAV-LAP配列およびAAV-EF1αにより駆動された抗mCherryシグナルの間接的蛍光強度を定量化する。
図3J1~3J4は、皮質、歯状回、線条および小脳における190dpiでの免疫組織化学(IHC)による1ピクセル
2当たりのmCherryシグナルを発現する細胞の数を定量化する。データは、平均±SEMとして表され;n=2動物および1動物当たり6組織切片である。データをビヒクル注射対照動物のものに対して標準化した。(2つのみの群を比較する場合は)スチューデントt検定または(2つより多くの群を比較する場合は)一元配置分散分析(ANOVA)次いでBonferroni post hoc検定により有意さを決定した。<0.05のp値は統計的に有意であった(*p<0.033;**p<0.002;***p<0.001)。
【
図4】
図4A~4E4は、LAP2が、脳において安定で長期間のトランスジーン発現を駆動することを示す。代表的な共焦点画像は、30dpiおよび190dpiでの皮質(
図4A)、歯状回(
図4B)、線条(
図4C)および小脳(
図4D)におけるAAV-LAP1、AAV-LAP2、AAV-LAP1_2およびAAV-EF1αについてのネイティブmCherry蛍光(赤色)を示す。全ての画像は重ねた共焦点切片である。スケールバー=100μm。
図4E1~4E4は、皮質、歯状回、線条および小脳において示される30dpiおよび190dpiでのAAV-LAP配列およびAAV-EF1αにより駆動されるネイティブmCherryシグナルの直接的な蛍光強度を定量化する。データは、平均±SEM;n=2動物および1動物当たり6の組織切片として表される。データをビヒクル注射対照動物のものに対して標準化した。(2つのみの群を比較する場合は)スチューデントt検定または(2つより多くの群を比較する場合は)一元配置分散分析(ANOVA)次いでBonferroni post hoc検定により有意さを決定した。<0.05のp値は統計的に有意であった(*p<0.033;**p<0.002;***p<0.001)。
【
図5】
図5A~5Eは、AAV-LAP2が、CNSにおいて長期間のトランスジーン転写を駆動することを示す。mCherry mRNAの存在は、mCherryに特異的なリボプローブ(緑色)を使用して190dpiで、脳組織においてFISHにより検証した。DAPI(青色)で核を対比染色した。
図5A~5Eは、皮質、歯状回、線条、小脳および嗅球のそれぞれにおけるAAV-LAP2またはAAV-EF1αについての20μmの矢状脳薄片を示す。パネル2および4は、パネル1および3のそれぞれにおける示される領域(正方形)のより高倍率の画像を示す。画像は重ねた共焦点切片である。スケールバー=100μm。
【
図6】
図6A~6Fは、AAV-LAPトランスジーン発現は希突起膠細胞ではなくニューロンにおいて優先的であることを示す。30dpiでの皮質または歯状回における、ニューロン(
図6Aおよび6B;汎(pan)ニューロンマーカーNeuNについて緑色標識)または希突起膠細胞(
図6Cおよび6D;希突起膠細胞マーカーOlig2について緑色標識)におけるAAV媒介mCherry発現(赤色)の代表的な共焦点画像。細胞をDAPI(青色)で対比染色した。NeuNシグナルは神経細胞核および細胞質と共に局在化し得、一方でOlig2シグナルについての染色はほとんど核である。矢印は、細胞マーカーとmCherryの間の共標識を示す。スケールバー=100μm。
図6Eおよび6Fは、それぞれのプロモーターについての皮質(Cx)または歯状回(DG)におけるニューロン(NeuN陽性)または希突起膠細胞(Olig2陽性)に対応するmCherry標識された細胞のパーセンテージを定量化する。画像は重ねた共焦点切片である。データは、平均±SEMとして表され;n=2動物および1動物当たり6組織切片である。
【
図7】
図7A~7Dは、ミクログリアおよび星状細胞においてAAV-LAPトランスジーン発現が検出されないことを示す。30dpiでの皮質および歯状回における抗mCherryシグナル(赤色)、ミクログリア(
図7Aおよび7B:緑色、Iba1陽性として標識される)、星状細胞(
図7Cおよび7D:緑色、S100陽性として標識される)の代表的な共焦点免疫蛍光画像。星状細胞とミクログリアにおけるmCherryの間の共標識の非存在は星(*)で示す。細胞をDAPI(青色)で対比染色した。画像は重ねた共焦点切片である。スケールバー=100μm。
【
図8】
図8A~8Fは、LAP配列が、脊髄において広範囲で長期間のトランスジーン発現を駆動することを示す。脊髄(腰椎領域)は、20μmで横方向の様式で切片化した。AAV-LAP1、AAV-LAP2、AAV-LAP1_2およびAAV-EF1αについてのネイティブAAV媒介mCherry発現(赤色、パネル1および4)、汎ニューロンマーカーNeuroTrace(緑色、パネル2および5)および合わせたシグナル(黄色、パネル3および6)の190dpiでの代表的な共焦点画像。画像は重ねた共焦点切片である。DH:後角(dorsal horn);VH 前角(ventral horn)。パネル4~6に、より高倍率の画像を示す。スケールバー=100μm。
【
図9】
図9A~9Cは、LAP配列が、ブタ腎臓細胞において効率的なトランスジーン発現を駆動することを示す。LAP1(
図9A)、LAP2(
図9B)またはLAP1_2(
図9C)により駆動されるmCherryを含むレポータープラスミドのトランスフェクションの48時間後のPK15細胞の代表的な画像。パネル1:明視野;パネル2:蛍光;パネル3:合わせた(merge)。スケールバー=50μm。
【
図10】
図10Aおよび10Bは、LAP2が、ヒト腎臓細胞において効率的なトランスジーン発現を駆動することを示す。LAP2(
図10A)またはEF1α-プロモーター(
図10B)により駆動されるmCherryを含むレポータープラスミドのトランスフェクションの48時間後のHEK-293細胞の代表的な画像。パネル1:明視野;パネル2:蛍光;パネル3:合わせた。スケールバー=50μm。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、LAP2が、ヒト肝臓細胞において効率的なトランスジーン発現を駆動することを示す。LAP2(
図11A)またはEF1α-プロモーター(
図11B)により駆動されるmCherryを含むレポータープラスミドのトランスフェクションの48時間後のHepG2細胞の代表的な画像。パネル1:明視野;パネル2:蛍光;パネル3:合わせた。スケールバー=50μm。
【
図12】
図12A1~12B4は、LAP2が、肝臓を通じて長期間のトランスジーン発現を駆動することを示す。AAV-LAP2(
図12A1~12A4)またはAAV-EF1α-ベクター(
図12B1~12B4)の静脈内投与は、マウス後方眼窩洞への片側注射により行った(4x10
11vg/マウス)。肝臓は190dpiに回収し、IHCおよび共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで長手方向に切片化した。ネイティブmCherry蛍光(
図12A1および12B1:赤色)、抗mCherry免疫染色(
図12A2および12B2:緑色)、DAPI核対比染色(
図12A3および12B3:青色)および合わせた免疫蛍光とDAPI画像(
図12A4および12B4)の代表的な共焦点画像。CV:中心静脈。スケールバー=75μm。
【
図13】
図13A1~13B4は、LAP2が、マウス腎臓で長期間のトランスジーン発現を駆動することを示す。AAV-LAP2(
図13A1~13A4)またはAAV-EF1α-ベクター(
図13B1~13B4)の静脈内投与は、マウス後方眼窩洞への片側注射により行った(4x10
11vg/マウス)。腎臓は190dpiに回収し、IHCおよび共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで長手方向に切片化した。代表的な共焦点画像は、ネイティブmCherry蛍光(
図13A1および13B1:赤色)、抗mCherry免疫染色(
図13A2および13B2:緑色)、DAPI核対比染色(
図13A3および13B3:青色)および合わせた免疫蛍光とDAPI画像(
図13A4および13B4)を示す。AV:弓状脈管。スケールバー=75μm。
【
図14】
図14A1~14B4は、LAP2が、マウス網膜において長期間のトランスジーン発現を駆動することを示す。AAV-LAP2(
図14A1~14A4)またはAAV-EF1α-ベクター(
図14B1~14B4)の静脈内投与は、マウス後方眼窩洞への片側注射により行った(4x10
11vg/マウス)。網膜は190dpiに回収し、IHCおよび共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで横方向に凍結切片化した。代表的な共焦点画像は、ネイティブmCherry蛍光(
図14A1および14B1:赤色)、抗mCherry免疫染色(
図14A2および14B2:緑色)、DAPI核対比染色(
図14A3および14B3:青色)および合わせた免疫蛍光とDAPI画像(
図14A4および14B4)を示す。GCL:神経節細胞層;INL:内顆粒層(inner nuclear layer);ONL:外顆粒層(outer nuclear layer)。スケールバー=75μm。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
例示態様の説明を以下にする。
【0026】
本発明のいくつかの局面を、例示目的のみのための実施例を参照して以下に記載する。多くの特定の詳細、関係および方法は、本発明の十分な理解を提供するために記載されることが理解されるはずである。しかしながら当業者は、本発明が、特定の詳細の1つ以上を用いずに実施され得るか、または他の方法、プロトコル、試薬、細胞株および動物を用いて実施され得ることを容易に理解する。いくつかの行為は異なる順序でおよび/または他の行為もしくは事象と同時に起こり得るので、本発明は、行為または事象の図示される順序に限定されない。さらに、全ての図示される行為、工程または事象が、本発明による方法を実施するために必要とされるわけではない。本明細書に記載されるかまたは参照される技術および手順の多くは、当業者による従来の方法を使用して、十分に理解され、一般的に使用される。
【0027】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される当該技術分野の全ての用語、表記および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合において、一般的に理解される意味を有する用語は、明確性のためおよび/または容易な参照のために本明細書において定義され、本明細書におけるかかる定義を含むことは必ずしも、当該技術分野において一般的に理解されるものとは実質的に異なることを表すと解釈されるべきではない。一般的に使用される辞書において定義されるものなどの用語は、関連のある技術分野に関するそれらの意味と一致する意味を有すると、および/または本明細書においてそうではないと定義されると解釈されるべきであることがさらに理解される。
【0028】
本明細書において使用される用語は、具体的な態様を説明する目的のみのためであり、限定を意図しない。本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」、「an」および「the」は、文脈でそうではないと明確に示されない限り、複数の参照を含むと理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用する場合、「クローニング部位」は、ヌクレオチド「標的遺伝子」または「目的の遺伝子」のベクターへの挿入を可能にする1つ以上の特有の制限部位を含むベクター中のヌクレオチドの短いセグメントをいう。
【0030】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合して(例えば遺伝子の)転写を開始するDNAの領域をいう。
【0031】
本明細書で使用する場合、「非プロモーター制御因子」は、組換えベクター内の特定の遺伝子の発現を増加または減少し得る核酸分子の非プロモーター配列(1つまたは複数)をいう。かかる非プロモーター制御因子としては、限定されないが、例えばエンハンサー因子、インデューサ因子、サイレンサー因子、5'非翻訳領域(UTR)、3'UTR、ターミネーター因子、CAATボックス、CCAATボックス、プリブナウボックス、SECIS因子、ポリアデニル化シグナル、Aボックス、Zボックス、Cボックス、Eボックス、GボックスおよびCis制御因子(CRE)が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用する場合、句「操作可能に連結される(operably linked)」は、核酸が、それが連結する因子(例えばプロモーター)の制御下で核酸の発現を可能にするように、組換えポリヌクレオチド、例えばベクター内に配置されることを意味する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「選択可能マーカー因子」は、人工的な選択に適した特性を付与する因子である。本発明において有用な選択可能マーカー因子の例としては、限定されないが、βラクタマーゼ、ネオマイシン耐性遺伝子、トリクロサン耐性を付与する変異体Fabl遺伝子、URA3因子、蛍光遺伝子産物、アフィニティタグ、例えばGST、His、CBP、MBP、およびエピトープタグ、例えばMyc HA、FLAGが挙げられる。選択可能マーカー因子は、ネガティブまたはポジティブ選択マーカーであり得る。
【0034】
種々の態様において、本発明は、サイズは小さいが、目的の遺伝子の長期の転写を提供し得るプロモーター配列を含むウイルスベクター(例えばアデノ随伴ウイルスベクター(AAV))などのベクターを提供する。プロモーター配列は、多くの一般的に使用されるプロモーターのサイズよりも小さく、(例えば哺乳動物中の)ほとんどの組織および細胞型においてトランスジーンの転写を駆動し得るサイズを有する。本明細書に開示されるプロモーター配列は、抑制または不活性化を受けにくく、これは、該プロモーター配列を、治療トランスジーンの慢性的発現を必要とする遺伝子療法に特に有用にする。
【0035】
一局面において、本発明は、目的の遺伝子を発現する遺伝子送達ベクターを提供する。いくつかの態様において、遺伝子送達ベクターは、アルファヘルペスウイルスゲノムのゲノム領域、例えば仮性狂犬病ウイルスに由来するプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、アルファヘルペスウイルスゲノムからの潜伏関連プロモーター(latency-associated promoter)(LAP)領域を含む。
【0036】
特定の態様において、本発明のベクターにおいて使用されるLAP領域は、配列番号:1(本明細書においてLAP1とも称される)、配列番号:2(本明細書においてLAP2とも称される)、配列番号:3(本明細書においてLAP1_2とも称される)および配列番号:4から選択される(表1)。LAP1_2(880bp)は、LAP1(498bp)の476bp配列および完全なLAP2配列(404bp)、すなわち一列に並んでLAP1およびLAP2を含むが、LAP1配列の最初の22bpを欠く。配列番号:4(902bp)は、配列番号:1および配列番号:2の完全な配列を含み、配列番号:3よりも22bp長い。
【0037】
いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列を含む。
【0038】
理論に拘束されることを望まないが、アルファヘルペスウイルスゲノム由来のLAP領域の特定の活性部分または断片は、種々の細胞および組織型においてトランスジーンの発現を駆動し得ることが考えられる。いくつかの態様において、本発明において使用されるプロモーターは、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列(表1)を含む。配列番号:9は、LAP2の232bp「コア」配列からなり、TATAボックス配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:9に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは配列番号:9を含む。
【0039】
理論に拘束されることを望まないが、配列番号:10、配列番号:11および/または配列番号:12をさらに含むLAP配列(表1)は、向上された転写性能を有し得た。したがって、いくつかの態様において、プロモーターはさらに、例えば配列番号:9の5'または3'に、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せを含む。配列番号:10(「CTCF」モチーフ)は、ヘルペスウイルス遺伝子発現の後成的な制御、クロマチンリモデリングならびに転写因子およびタンパク質の補充(recruitment)に関連することが示されている(Lang et al., 2017, Lee et al., 2018)。配列番号:11(「上流安定化因子を有するオルタナティブCTCF」モチーフ)は、オルタナティブCTCFモチーフを安定化し、さらに4つのジンクフィンガードメインの結合を容易にすることが示されている(Zimmerman et al., 2018)。配列番号:12(「核転写因子Y(NF-Y)」モチーフ)は、いくつかの真核生物のプロモーター領域に配置されるCAATボックスに結合する転写因子により認識される(Chikhirzhina et al., 2008; Fleming et al., 2013)。
【0040】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0041】
いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58(表1)から選択される核酸配列に少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列を含む。
【0042】
本明細書に開示されるLAP配列を含むベクターは、(例えばヒトなどの哺乳動物における)遺伝子送達ならびに基礎研究および翻訳研究に使用され得る。宿主細胞は、培養細胞(すなわちインビトロ)であり得るかまたは被験体に(例えば動物モデル(すなわちインビボ)に)存在し得る。
【0043】
いくつかの態様において、ベクターは、レンチウイルス遺伝子送達ベクター、レトロウイルス遺伝子送達ベクターまたはアデノウイルス遺伝子送達ベクターである。本明細書に記載されるLAP配列の1つの利点は、該配列は、ウイルスベクターにおける他の一般的に使用されるプロモーターよりもかなり小さいサイズを有するが、異なる細胞型において延長された転写を持続し得るということである。
【0044】
DNAペイロード容量がベクターにおいて高度に制限されることを考慮すると、比較的小さいLAP領域は有利であり得る。例えば、AAVベクターのパッケージング容量またはペイロードは、約5,000bpの最大サイズまで制限される。いくつかの態様において、本発明のベクターにおいて使用されるLAP領域は、約200bp~約410bpの長さ、例えば約220~410bp、約220~400bp、約240~400bp、約240~380bp、約260~380bp、約260~360bp、約280~360bp、約280~340bp、約300~340bpまたは約320~340bpの長さである。
【0045】
特定の態様において、本発明のプロモーター配列は、培養中、動物中またはヒト中の細胞において強力な長時間のトランスジーンの発現が必要される場合に使用され得る。プロモーターは、ゲノム空間の制約があるが、長期のプロモーター転写活性が必要とされる状況で有用である。AAVはヒト遺伝子療法に特に有用であり、従って本発明のLAP配列は、AAVと共に使用される場合に遺伝子療法用途を提供する。
【0046】
いくつかの態様において、目的の遺伝子は、本明細書において提供されるLAP配列の制御下、インビトロで少なくとも約30日、約60日、約90日、約120日、約150、約180日または約190日の間発現される。いくつかの態様において、目的の遺伝子は、本明細書において提供されるLAP配列の制御下、インビボで(例えば脳などの組織において)少なくとも約30日、約60日、約90日、約120日、約150、約180日または約190日の間発現される。いくつかの態様において、目的の遺伝子は、本明細書において提供されるLAP配列の制御下、エキソビボで(例えばニューロンなどの培養細胞において)少なくとも約30日、約60日、約90日、約120日、約150、約180日または約190日の間発現される。
【0047】
一局面において、本発明は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクターを提供する。
【0048】
いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列を含む。
【0049】
本明細書に記載されるLAP配列は、トランスジーン(1つまたは複数)を発現するためのプラスミド、細菌性人工染色体(BAC)、コスミドまたは他の非ウイルスもしくはウイルス系などの種々の遺伝子発現ベクターにおいて使用され得る。
【0050】
いくつかの態様において、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。本発明により使用され得るウイルスベクターの非限定的な例としては、限定されないが、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、狂犬病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、VSVベクター、ワクシニアウイルスベクター、レオウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(semliki forest virus)、黄熱ウイルスおよびシンドビスウイルスベクターを含むDNAまたはRNAウイルスベクターが挙げられる。
【0051】
いくつかの態様において、ベクターは非ウイルスベクターである。非ウイルスベクターは、プラスミドDNA、リポソーム-DNA複合体(リポプレックス(lipoplex))およびポリマー-DNA複合体(ポリプレックス(polyplex))であり得る。非ウイルスベクターは、プラスミドRNA、リポソーム-RNA複合体(リポプレックス)およびポリマー-RNA複合体(ポリプレックス)であり得る。オリゴヌクレオチドおよびそのアナログも、単独または複合体のいずれにせよ、あり得る非ウイルスベクター媒介遺伝子輸送構築物である。
【0052】
本明細書において提供されるベクター(例えばウイルスベクター)は、動物モデルおよびヒトの臓器または組織において、例えば(例えば神経系の)後天的または遺伝的な疾患を治療するための遺伝子療法において治療トランスジーンを発現するために使用され得る。
【0053】
本明細書に開示されるLAP配列は、仮性狂犬病ウイルス(PRV)のゲノム由来であった。PRVは、種々の動物に感染し得るアルファヘルペスウイルスである。ネイティブ宿主は成体のブタであるが、PRVは、畜牛、ヒツジ、イヌ、トリ、ネコ、ヤギ、アライグマ、ニワトリ、スカンク、フクロネズミ、モルモット、ウマ、ウサギ、ラット、マウスおよび非ヒト霊長類などの広範囲の脊椎動物に感染し得る(Pomeranz et al., 2005)。培養されたヒト細胞も、PRV感染に感受性であり(susceptible)、ヒトにおける人獣共通伝染病性PRV感染が報告された(Wong et al., 2019)。
【0054】
PRVはいくつかの異なる動物種に感染し得ることに加えて、これは向汎性ウイルスでもある。これは、感染された宿主のほとんどの組織および臓器が、PRV感染に感受性および許容性であり得ることを意味する(Blanchard et al., 2006; Boldogkoi et al., 2000; Fan et al., 2019; Gasparini et al., 2019; Pomeranz et al., 2005)。そのため、LAP配列は、多様な細胞および組織型における遺伝子療法に潜在的に使用され得る。
【0055】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載される組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの態様において、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えば神経細胞)である。他の態様において、宿主細胞は、鳥類細胞、魚類細胞、両生類細胞および爬虫類細胞から選択される。いくつかの態様において、宿主細胞は、インビトロ神経細胞、エキソビボ神経細胞または両方を含む。いくつかの態様において、宿主細胞は被験体の神経細胞である。いくつかの態様において、神経細胞は、被験体の一次運動野、二次運動野、一次体性感覚野、補足体性感覚野、視覚野、海馬体(hippocampal formation)、線条、淡蒼球、視床、視床下部、中脳領域、菱脳、嗅覚野またはそれらの組合せに存在する。いくつかの態様において、中脳領域は、運動関連野、感覚関連野または両方を含む。いくつかの態様において、神経細胞は、被験体の皮質、歯状回、線条、小脳、嗅球またはそれらの組合せに存在する。いくつかの態様において、神経細胞は、ニューロン、ミクログリア細胞、星状細胞またはそれらの組合せを含む。いくつかの態様において、神経細胞はニューロンを含む。
【0056】
いくつかの態様において、宿主細胞は、嚢細胞(bladder cell)、血液細胞、骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、心臓細胞、小腸細胞、胃細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、網膜細胞、性細胞、皮膚細胞、脾臓細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群より選択される。いくつかの態様において、宿主細胞は癌細胞である。
【0057】
別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで核酸は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列を含む。いくつかの態様において、標的遺伝子をコードする核酸は、約4kbより大きいものを含む。
【0058】
さらなる局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここでクローニング部位は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含むプロモーターに操作可能に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列を含む。
【0059】
別の局面において、本発明は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;ならびに宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクターを提供する。配列番号:5はウマヘルペスウイルスのLAP配列を含み;配列番号:6はウシヘルペスウイルスのLAP配列を含み;配列番号:7は水痘-帯状疱疹ウイルスのLAP配列を含み;配列番号:8はサル(Macacine)ヘルペスウイルス1のLAP配列を含む(表1)。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列を含む。
【0060】
別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで核酸は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列を含む。いくつかの態様において、標的遺伝子をコードする核酸は、約4kbより大きなものを含む。
【0061】
さらなる局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここでクローニング部位は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含むプロモーターに操作可能に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列を含む。
【0062】
別の局面において、本発明は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーター;標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位;および宿主細胞における標的遺伝子の発現に必要な少なくとも1つの非プロモーター制御因子を含む、宿主細胞における標的遺伝子の発現のための組換えベクターを提供する。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:9に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは配列番号:9を含む。いくつかの態様において、プロモーターはさらに、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列を含む。
【0063】
いくつかの態様において、少なくとも1つの非プロモーター制御因子はエンハンサー因子を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの非プロモーター制御因子はインデューサ因子を含む。いくつかの態様において、組換えベクターはさらに選択可能マーカー因子を含む。
【0064】
別の局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここで核酸は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:9に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは配列番号:9を含む。いくつかの態様において、プロモーターはさらに、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列を含む。いくつかの態様において、標的遺伝子をコードする核酸は、約4kbよりも大きいものを含む。
【0065】
さらなる局面において、本発明は、標的遺伝子をコードする核酸の挿入のためのクローニング部位を含む組換えポリヌクレオチド分子を提供し、ここでクローニング部位は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:9に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは配列番号:9を含む。いくつかの態様において、プロモーターはさらに、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列を含む。
【0066】
別の局面において、本発明は、組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように、宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法を提供し、ここで組換えポリヌクレオチド分子は、標的遺伝子をコードする核酸を含み、核酸は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、標的遺伝子の発現は宿主細胞中で起こる。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4から選択される核酸配列を含む。
【0067】
別の局面において、本発明は、組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法を提供し、ここで組換えポリヌクレオチド分子は、標的遺伝子をコードする核酸を含み、核酸は、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、標的遺伝子の発現は宿主細胞中で起こる。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7および配列番号:8から選択される核酸配列を含む。
【0068】
別の局面において、本発明は、組換えポリヌクレオチド分子が宿主細胞に導入されるように宿主細胞と、組換えポリヌクレオチド分子を接触させる工程を含む、宿主細胞において標的遺伝子を発現させる方法を提供し、ここで組換えポリヌクレオチド分子は、標的遺伝子をコードする核酸を含み、核酸は、配列番号:9に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含むプロモーターに操作可能に連結され、標的遺伝子の発現は宿主細胞中で起こる。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:9に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは配列番号:9を含む。いくつかの態様において、プロモーターはさらに、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12またはそれらの組合せの核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号:13~58から選択される核酸配列を含む。
【0069】
いくつかの態様において、神経細胞は被験体の脊髄に存在する。いくつかの態様において、神経細胞は、脊髄の後角に存在する。いくつかの態様において、神経細胞は、腰部の脊髄、胸部の脊髄、頸部の脊髄またはそれらの組合せに存在する。
【0070】
いくつかの態様において、組換えポリヌクレオチド分子は、宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、形質導入(例えばウイルスベクターによる感染)により宿主細胞に導入される。別の態様において、組換えポリヌクレオチド分子は、宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、トランスフェクションにより宿主細胞に導入される。別の態様において、組換えポリヌクレオチド分子は、宿主細胞と組換えポリヌクレオチドを接触させる際に、エレクトロポレーションにより宿主細胞に導入される。
【0071】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は、中枢神経系(CNS)の結合性および機能を画定するための本質的な神経科学ツールである。さらに、AAVは、遺伝的および後天的CNS疾患を治療するための遺伝子療法ベクターとして使用される。それらの安全性および広範囲のトロピズムに関わらず、制限されたペイロード容量およびCNSにおいて長期間の汎ニューロントランスジーン発現を提供する小さい遺伝子プロモーターの欠損などの重要な問題が訂正される必要がある。一般的に使用される遺伝子プロモーターは、比較的大きく、ウイルス性CNS形質導入の数ヶ月後に抑制され得、単一用量遺伝子療法適用の長期間の性能を危うくする。
【0072】
カプシド工学およびトランスジーン発現を最適化するための新規の遺伝子プロモーターなどの組換えAAVに対する最近の向上は、遺伝子療法適用を実質的に向上させた(Mak, Rajapaksha et al. 2017; Hudry and Vandenberghe 2019; Ogden, Kelsic et al. 2019)。AAVベクターは、それらの安全性、血清型依存的な広範囲のトロピズムおよび形質導入効率を考慮して、神経科学および臨床適用に広く使用される(Aschauer, Kreuz et al. 2013; Samulski and Muzyczka 2014; Mak, Rajapaksha et al. 2017)。マウス血液脳関門(BBB)を透過し、末梢血管投与後に脳と脊髄の両方においてニューロンを広範囲に形質導入する能力が高められたAAV-9バリアントPHP.eB (Chan, Jang et al. 2017)は、最近のカプシド向上の一例である(Dayton, Grames et al. 2018)。組換えAAVの主な制限は、約4.9kbのみの制限されたペイロード容量を有するそれらの小さなカプシドである(Russell and Hirata 1998)。したがって、強力で長持ちする転写を持続する短いプロモーター配列の発見は、トランスジーンペイロードを拡大し、一ウイルス用量により慢性的な治療効果を達成するために主要である。
【0073】
ニューロン特異的エノラーゼ(NSE、1800bp) (Peel, Zolotukhin et al. 1997; Delzor, Dufour et al. 2012)、カルシウム/カルモジュリン依存的プロテインキナーゼIIα(CaMKIIa、1300bp) (Sohal, Zhang et al. 2009)およびヒト伸長因子1α(EF1α、1264bp) (Sohal, Zhang et al. 2009; Qin, Zhang et al. 2010)などのいくつかの強力なプロモーターが、全身性のAAV送達に使用されている(Bedbrook, Deverman et al. 2018)。しかしながら、かなりのサイズのこれらのプロモーター配列(Bedbrook, Deverman et al. 2018)は、大きな治療トランスジーンまたは複数の小さなトランスジーンの使用を制限する。さらに、ヒトサイトメガロウイルス極初期エンハンサーおよびプロモーター(CMV、600bp) (Gray, Foti et al. 2011)またはヒトシナプシンプロモーターの切断されたバージョン(hSyn、468bp) (Jackson, Dayton et al. 2016)などの短いプロモーターは、遺伝子転写および発現を駆動するにはかなり弱く、いくつかの場合においては、送達のわずか数週間後に完全に抑制または不活性化される(Brooks, Harkins et al. 2004; Nathanson, Jappelli et al. 2009; Qin, Zhang et al. 2010; Back, Dossat et al. 2019)。同様に、βグルクロニダーゼ(GUSB、378bp) (Husain, Passini et al. 2009)またはユビキチンC(UBC、403bp) (Qin, Zhang et al. 2010; Powell, Rivera-Soto et al. 2015)などの小さな遍在性プロモーターは、弱い転写レベルを示した。
【0074】
ヘルペスウイルス仮性狂犬病ウイルス(PRV)のゲノムから得られたLAP1(498bp)、LAP2(404bp)およびLAP1_2(880bp)と称される3つのアルファヘルペスウイルス潜伏関連プロモーター(LAP)が本明細書に記載され、検証される。ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス亜科サブファミリーとしては、ウシヘルペスウイルス-1(BHV-1)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびPRVが挙げられる。これらのウイルスは、ゲノム構成を共有し、異なる哺乳動物宿主の知覚神経節において潜伏感染を確立する(Koyuncu, Hogue et al. 2013)。
【0075】
PRVのLAP領域は、2つの独立したプロモーター、LAP1およびLAP2を含む(Cheung 1989; Cheung and Smith 1999; Jin and Scherba 1999; Jin, Schnitzlein et al. 2000)(
図1A)。PRV LAP1は、第1のTATAボックスの上流に2つのGCボックスおよび3つのCAATボックスを含む。PRV LAP2は、第2のTATAボックスの前に2つのGCボックスを含む(Cheung 1989; Jin and Scherba 1999; Taharaguchi, Kobayashi et al. 2002)。異なる転写因子(TF)のLAPに存在するコンセンサスプロモーター因子への結合は、潜伏感染の間に、潜伏感染の間に、ヌクレオソームサイレンシングからの回避を容易にし得ることが提唱されている(Deshmane and Fraser 1989; Leib, Bogard et al. 1989; Devi-Rao, Goodart et al. 1991; Jin, Schnitzlein et al. 2000; Ono, Tomioka et al. 2007)。トランスジェニックマウス株において、PRV LAP促進転写は、PRV感染の非存在下でニューロン特異的である(Taharaguchi, Yoshino et al. 2003)。しかしながら、一過的発現アッセイにおいて、PRV LAP1およびLAP2は、培養されたニューロンおよび非神経細胞の両方で転写を促進する(Cheung and Smith 1999; Taharaguchi, Kobayashi et al. 2002)。さらに、一列に並んだLAP1およびLAP2配列の活性は、LAP1またはLAP2単独と比較して有意に増加される(Cheung and Smith 1999)。
【0076】
ここで、AAV-PHP.eBの後方眼窩(retroorbital)全身性送達、iDisco+組織透明化およびライトシート顕微鏡検査に基づいた全CNSスクリーニングアプローチを使用して、3つの小さな潜伏関連プロモーター(LAP)をヘルペスウイルス仮性狂犬病ウイルス(PRV)から同定した。これらのプロモーターはLAP1(404bp)、LAP2(498bp)およびLAP1_2(880bp)である。それらは、PRV感染サイクルの増殖および潜伏期の間に、ウイルスコード潜伏関連転写物(LAT)の慢性的な転写を駆動する。AAV形質導入後の6か月間に脳および脊髄においてAAV-LAPから、安定な汎ニューロントランスジーン転写および翻訳が観察された。データは、LAPが、1回限りのウイルスベクター投与後に慢性的なトランスジーン発現を必要とするウイルスベクター系CNS遺伝子療法についての適切な候補であり、PRV LAP1、LAP2および一列に並んだLAP1_2プロモーターが、単一投与後に安定で慢性的なトランスジーン発現を必要とし得る全身性のより非侵襲性である汎ニューロン遺伝子送達適用に適切である可能性があることを示唆する。
【実施例】
【0077】
実施例1. 材料および方法
PRV LAP配列の構築
PRV潜伏関連転写物プロモーター(LAP)は、PRV Becker株ゲノム(GenBank: JF797219.1)の同等物95106~96007からPCR増幅した。LAP1領域(498bp)は、プライマーペアLAP1F (5'- GCA CGC GTA TCT CCG GAA AGA GGA AAT TGA -3') (配列番号:59)およびLAP1R (5'- GCG GAT CCT ATA TAC ACG ATG TGC ATC CAT AAT -3') (配列番号:60)を使用して増幅した。LAP2領域(404bp)は、プライマーペアLAP2F (5'- GCA CGC GTA TCC CCG GTC CGC GCT CCG CCC ACC CA -3') (配列番号:61)およびLAP2R (5'- GCG GAT CCG AGC TCC CTC TTC CTC GCC GCG GAC TGG -3') (配列番号:62)を使用して増幅した。全LAP領域にわたるLAP1_2 (902bp)は、LAP1FおよびLAP2Rを使用して増幅した(Cheung and Smith 1999)。これらのPCR配列の5'および3'領域は、MluIおよびBamHIそれぞれの制限部位を含み、ベクターpAAV-Ef1α-mCherryへの方向性クローニング(directional cloning)に使用した。pAAV-Ef1α-mCherryは、Karl Deisseroth (Addgeneプラスミド#114470)からの贈り物であった。3つのAAV-LAPプラスミドは、ベクターpAAV-Ef1α-mCherryの、MluIおよびBamHIでの二重消化、次いでmCherryレポーター遺伝子の上流にあり、AAV2逆方向末端反復(ITR)に隣り合い、SV40ポリAシグナルで終結する適切なLAP断片のサブクローニングにより構築した。
【0078】
AAVベクターの構築
全ての発現カセットは、Princeton Neuroscience Institute Viral Core FacilityでAAV-PhP.eBカプシド(Daniela Gradinaruからの贈り物、Addgene プラスミド#103005)にパッケージングし、以前に記載されるように(Zolotukhin, Byrne et al. 1999; Chan, Jang et al. 2017)イオジキサノール(iodixanol)段階勾配およびカラム限外濾過により精製した。カプシド保護ウイルスゲノムはTaqMan qPCRにより測定し、1ミリリットル当たりのゲノムコピー(GC/ml)として報告した。
【0079】
動物
動物試験は、Institutional Animal Care and Use Committee of Princeton Universityにより承認されたガイドラインおよびプロトコル(プロトコル#1943-16および1047)に従って行った。時間を設定して妊娠した(timed-pregnant)Sprague-DawleyラットをHilltop Labs Inc. (Scottsdale, PA)から得た。E17ラット胚を、交感神経SCGニューロンの単離のために採取した。成体(4~6週齢)野生型C57BL/6J雄マウスをJackson Laboratory (The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)から得た。マウスは、実験手順を行う前にPrinceton Neuroscience Institute動物飼養場の保持施設に対して少なくとも48時間の順化を有した。
【0080】
一次上頸神経節細胞培養
ラット胚(E17)由来のSCGニューロンを、以前に記載されるように(Curanovic, Ch'ng et al. 2009)トリチャンバー(trichamber)中で培養した。簡潔に、SCGを、トリプシン(2.5mg/ml、Sigma-Aldrich, The Woodlands, TX)で分離して、ポリO-オルニチンおよびラミニンコーティングして、2% B-27、100ng/ml神経成長因子(NGF)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)を補充した神経基底(neurobasal)培地を含む培地を有する皿に平板培養した。単一神経節の約3分の2をトリチャンバーのS (soma)区画に配置した。播種の3日後、培養培地を、0.1mMシトシン-D-アラビノフラノシド、Ara C (Sigma-Aldrich, The Woodlands, TX)で少なくとも2日間処理して、分裂した非神経細胞を排除した。培養培地は5日毎に交換し、ニューロンを、37℃、5% CO2でインキュベートした。
【0081】
後方眼窩洞注射
AAVベクターの静脈内投与は、マウスにおいて、後方眼窩静脈洞への片側注射により行った(Yardeni, Eckhaus et al. 2011)。手順の前に、ケタミン(80mg/kg)/キシラジン(10mg/kg)カクテルを使用して動物を麻酔した。一旦非応答性であると、動物を、内眼角への注射のために側方の横臥(lateral recumbence)に置いた。注射体積は100μlであり、合計で4x1011ウイルスゲノムを含み、29G1/2インスリンシリンジで投与した。動物を、調節された加熱パッドに置いて、移動までモニタリングした。
【0082】
組織処理および組織学的手順
マウスを、ケタミン(400mg/kg)/キシラジン(i.p.)の過剰投与により麻酔して、感染後30日および190日(dpi)に4%パラホルムアルデヒド(PFA)によりかん流した。脳および脊髄を、4% PFA中4℃で一晩、後固定した。リン酸緩衝化食塩水(PBS)ですすいだ後、脳を、0.1%アジ化ナトリウムを有するPBS中4℃で保存した。脳を2つの部分に分割して、左半球は、Leica VT1200ビブラトームを使用して50μmで、およびLeica CM3050 Sクライオスタットを使用して20μmで、矢状方向に切片化した。右半球は、iDISCO+組織透明化プロトコル(下)のために使用した。固定した脳および脊髄は、連続的に、凍結防止のために10%スクロース、20%スクロースおよび30%スクロース中4℃でインキュベートした。組織をOCT (tissue-Tek, Torrance, CA)に包埋し、ドライアイスで凍結させ、切片化まで-80℃で保存した。凍結切片化のために、脊髄を包埋鋳型(Sigma-Aldrich, The Woodlands, TX)に置き、37℃で超純粋低融点アガロース(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)を充填した。半固形アガロースキューブを取り出して、クライオスタットを使用した20μmでの横方向切片化のために水平方向に接着した(Loctite, Rocky Hill, CT)。
【0083】
免疫染色
免疫組織化学のために、自由に浮かんだ脳切片をPBSで洗浄し、3%ウシ血清アルブミン(BSA)、2%ロバ血清および0.5% Triton X-100 (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で1時間ブロックした。試料を、一次抗体と共に4℃で一晩、ならびに1% BSA、1%ロバ血清および0.5% Triton X-100を含むPBS中に希釈した二次抗体と共にRT(室温)で1時間インキュベートした。細胞核を、0.5μg/ml DAPIで5分間(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)対比染色した。以下の一次抗体を使用した:ウサギ抗RFP Rockland (1:1000; Limerick, PA)、ニワトリ抗mCherry Abcam (1:500; Cambridge, MA)、マウス抗NeuN (1:500; Millipore Bioscience Research Reagents, Temecula, CA)、ウサギ抗Olig2 (1:500, EMD Millipore, Temecula, CA)、ウサギ抗Iba1 (1:1000, Wako Chemical, Richmond, VA)およびウサギ抗S100 (1:5000, Dako, Glostrup, Denmark)。以下の二次抗体を使用した:Alexa Fluor 488ロバ抗ウサギIgG、Alexa Fluor 488ロバ抗マウスIgG、Alexa Fluor 647ロバ抗ウサギIgG、Alexa Fluor 647ロバ抗ニワトリIgG (1:1000, Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)。自由に浮かんだ脊髄切片を、1:300希釈のNeuroTrace 500/525緑色蛍光Nissl染色(Molecular Probes, Eugene, OR)で1時間染色した。切片を、PBS中0.1% Triton X-100で10分浸透化して、最初にPBS、次いで0.1% Triton X-100を有するPBSで10分間洗浄した。試料を0.5μg/ml DAPIと5分間インキュベートして、次いでPBSで、室温で2時間洗浄した。Fluoromount-Gマウント培地(Southern Biotech, Birmingham, AL)を脳および脊髄切片に適用した後にマウントした。
【0084】
顕微鏡検査
ニューロンSCG培養物を、Cool Snap ES2カメラ(Photometrics, Tucson, AZ)および4X対物レンズを含むNikon Ti-E倒立落射蛍光顕微鏡(Nikon Instruments Inc, Tokyo, Japan)により画像化した。全S区画のタイル張り(tiled)画像をNikon NIS Elementsソフトウェアで集合させた。種々の脳領域におけるAAV形質導入効率を定量化するために、脳薄片をNanoZoomer S60蛍光顕微鏡スキャナー(Hamamatsu, Hamamatsu, Japan)で画像化した。脳薄片を、20Xおよび63X対物レンズ、敏感な検出のためのハイブリッド(HyD)検出器を使用して、1024x1024ピクセル領域にわたり、Leica STP8000共焦点レーザー走査顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)により画像化した。以前に報告されたように(Maturana, Aguirre et al. 2017)、ImageJソフトウェアを使用して補正された総細胞蛍光を計算した。細胞を選択し、目的の領域(ROI)を描き、非蛍光細胞由来のバックグラウンド強度に対して標準化した。補正された総細胞蛍光の計算は、それぞれの細胞の積分された面積、密度および平均グレー値を考慮して、相対蛍光強度(RFI)として測定した。
【0085】
iDISCO+組織透明化
浸透化
右脳半球は、iDISCO+組織透明化のために使用した。脳試料を4% PFA中一晩固定して、その後以前に記載されるように(Renier, Wu et al. 2014)組織透明化を行った。固定した試料を、20、40、60、80、100%メタノール/水溶液中それぞれ1時間洗浄/脱水して、次いで5%過酸化水素/メタノールで一晩の洗浄(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)および逆勾配のメタノール/水100、80、60、40、20%でそれぞれ1時間、再水和した。最終的に、脳を、0.2% Triton X-100 /PBS、次いで20% DMSO (Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)/0.3Mグリシン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)/0.2% Triton X-100/PBSを用いて37℃で2日間洗浄した。
【0086】
免疫標識
試料を、10% DMSO/6%ロバ血清(EMD Millipore, Temecula, CA)/0.2% Triton X-100/PBSのブロッキング溶液中37℃で2~3日間インキュベートし、次いで10μg/mlヘパリンを有するPBS/0.2% Tween-20 (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)(溶液は以降PTwHと称する、Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)中で2回、1時間/洗浄した。脳を、5% DMSO/3%ロバ血清/PTwH中一次ウサギ抗RFP抗体(1:1000; Rockland, Limerick, PA)により、37℃で7日間インキュベートした。次いで、脳をPTwHで5回(洗浄間隔:10分、15分、30分、1時間、2時間)洗浄し、3%ロバ血清/PTwH中二次Alexa Fluor 647ロバ抗ウサギIgG(1:450、Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)で37℃、7日間インキュベートし、次いでPTwHで5回洗浄した。
【0087】
組織透明化
脳を、20、40、60、80、100%メタノール/水中それぞれの工程について1時間連続して脱水し、次いで2:1ジクロロメタン(DCM; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)/メタノールおよび100% DCM洗浄した。最終的に、試料をDBE (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で透明化して、画像化まで室温、暗所で保存した。
【0088】
ライトシート顕微鏡検査および透明化された組織の分析
免疫標識および透明化の後、ライトシートUltramicroscope II (LaVision Biotec, Bielefeld, Germany)を使用して脳の体積を取得した。脳の半分を、カスタム設計され、3Dプリントされたホルダー(Renier, Wu et al. 2014; Renier, Adams et al. 2016)上、水平方向に接着し、DBEに沈めた。脳を、登録目的で488nmレーザーダイオード励起および525nm最大発光フィルター(FF01-525/39-25, Semrock, Rochester, NY)を用いて自動蛍光チャンネル中で画像化し、AAV感染細胞の細胞画像化(抗RFP)のために680nm最大発光フィルター(FF01-680/42-25, Semrock)を用いて640nm励起で画像化した。別の左側および右側照明自己蛍光画像を、0.017励起シートNAおよび1.3xの拡大を使用して10マイクロメートル(zステップサイズ)毎に取得した。左側および右側の画像は、中線でS字状に混ざった。自己蛍光体積を、Renierおよび同僚により記載されるように(Renier, Wu et al. 2014; Renier, Adams et al. 2016)、アフィンおよびb-スプライン変換を使用して、体積測定Allen脳図解表(brain atlas)(2015)に登録した。取得の間の移動およびチャンネル間の異なる画像化パラメーターを説明するために、細胞シグナル体積を、アフィン変換により自己蛍光体積に登録した。高性能コンピューター計算クラスターと適合性の本発明者らの改変ClearMapソフトウェア:「ClearMap_cluster」(github.com/PrincetonUniversity/clearmap_cluster)により脳の体積を分析した。全ての分析された試料について、脳の端および脳室上の検出された対象物は、偽陽性を最小化するために構造の端から75μmまで除去された(erode)。
【0089】
RNAスコープ(scope)インサイチュハイブリダイゼーション
脳の凍結切片を、スーパーフロストプラス接着スライド(Thermo Fisher, Waltham, MA)にマウントして、-80℃で保存した。RNAスコープマルチプレックス蛍光試薬キット(Advanced Cell Diagnostics (ACD), Newark, CA)を使用して、製造業者のプロトコルに従い、RNA染色を行った。mCherryプローブACD♯431201-C2を使用した。薄片を、プロテアーゼIVで40℃、30分間前処理し、次いで40℃で2時間プローブインキュベーションを行った。次いで、異なる増幅体分解(amplifier solutions)を、40℃で30分、30分および15分間行った。TSA+フルオレセイン系(Perkin Elmer, Waltham, MA)によりシグナルを検出した。ACD HybEZハイブリダイゼーション系においてインキュベーション工程を行った。スライドをDAPIで室温、30秒間対比染色し、次いでPBSで2回洗浄した。最終的に、スライドは、VECTASHIELD Vibrance退色防止マウント媒体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いてマウントした。
【0090】
統計学
GraphPad Prism 7ソフトウェア(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA)を使用して統計学的データ解析を行った。両側スチューデント検定を使用して、2群の間を比較し、ノンパラメトリック一元配置ANOVA検定、次いでBonferroni多重比較事後検定により、複数の群の間を比較した。<0.05のp値は統計的に有意であった。データはSEMを有する平均として表す。
【0091】
実施例2. 小さなPRV LAP配列は、ヘルペスウイルス感染とは独立してニューロンにおいてトランスジーン発現を駆動し得る。
PRV LAP領域は、本明細書でLAP1およびLAP2と定義される少なくとも2つのプロモーター領域を含む(
図1A)。PRVゲノムにおいて、LAP1およびLAP2は、PRV LAP1_2として一列に並んで存在する。これらの配列は単独でまたは組み合わせて、PRV感染なしでAAVベクター中で使用する場合、一次交感神経ニューロンにおいてレポータートランスジーンを効率的に発現し得る(
図1Cおよび1D)。LAP配列を分析して、Jasper (Sandelin, Alkema et al. 2004; Wasserman and Sandelin 2004)、RSAT (Nguyen, Contreras-Moreira et al. 2018)およびCTCFBSDB 2.0 (Ziebarth, Bhattacharya et al. 2013)ソフトウェアを使用して、推定制御因子を同定した。3つのサイクリックAMP応答因子結合タンパク質(CREB)結合モチーフは、LAP1 TATAボックスの上流に検出され、1つはLAP2 TATAボックスの上流に検出された。さらに、2つのCCCTC結合因子(CTCF)結合モチーフは、LAP1 TATAボックスの上流に検出され、1つはLAP2 TATAボックスの下流に検出された。下流プロモーター因子(DPE)は、LAP2中で同定され、3つのCGボックスおよび4つのシグナル伝達兼転写活性化因子1(STAT1)結合モチーフを含んだ。さらに、LAP1 TATAボックスおよびLAP2 TATAボックスのそれぞれの上流に、SRY-Box 10 (SOX10)および希突起膠細胞転写因子2(Olig2)などの系統決定(lineage-determining)TF (Wang, Pol et al. 2014)があった(
図1A)。
【0092】
4つのAAV組換え体を、標準的な方法により血清型PHP.eBカプシドにパッケージングした。3つのプロモーター構築物、LAP1(498bp、配列番号:1に対応)、LAP2(404bp、配列番号:2に対応)およびLAP1_2(880bp、配列番号:3に対応)を調製した。遍在性EF-1αプロモーター(1264bp)は、トランスジーン発現の陽性対照として使用した。全ての4つのAAV組換え体は、蛍光レポーターmCherryを発現した(
図1B)。それぞれのプロモーターのインビトロ性能を検証するために、ラット一次上頸神経節(SCG)ニューロン培養物にそれぞれのAAVの3x10
11ゲノムを形質導入し、相対的mCherry蛍光強度(RFI)を90日間にわたり定量した。
【0093】
AAV-LAP1を形質導入されたニューロンについて、mCherry発現は、AAV-LAP2、AAV-LAP1_2およびAAV-EF1αと比較した場合には低いレベルではあるが、11dpiに突然増加した(64220 RFI)。AAV-EF1α発現は、17dpiにさらに約120倍増加した(8.70x10
6;2.39x10
6;8.01x10
6 RFIそれぞれ)(
図1C)。全ての4つの組換え体による最高レベルの発現は28dpiでのものであった:LAP1(291,242RFI);LAP2(1.36x10
7RFI);LAP1_2(4.36x10
6RFI)およびEF1α(1.40x10
7RFI)(
図1Cおよび1D)。LAP2およびEF1αは、最高のmCherry RFIを有した(LAP2=EF1α>LAP1_2>LAP1)。38dpiと90dpiの間に、全ての4つのAAV組換え体は微細であるが持続的なRFI低下を示し(
図1C)、100日より長い培養後の一次SCGニューロンの老化のためである可能性が最も高かった。重要なことに、全ての3つのAAV-LAP組換え体は、AAV形質導入の情況で、PRV感染の非存在下で90日間、一次ニューロンにおいてmCherry転写を示した。
【0094】
実施例3. 全CNSスクリーニングにより、6か月後の汎ニューロンAAV-LAPトランスジーン発現が明らかにされる。
全身性の静脈内送達後にBBBを横切り、C57/BL6マウスCNSを形質導入する能力の増加を考慮して、AAV血清型PHP.eBをプロモータースクリーニングアッセイに使用した(Chan, Jang et al. 2017)。AAV-LAP1-mCherry、AAV-LAP2-mCherry、AAV-LAP1_2-mCherryおよびAAV-EF1α-mCherryは、4x10
11のウイルスゲノム/マウス(vg/マウス)の片側後方眼窩静脈洞注射により送達した。
図2Aに図示されるように、脳および脊髄は、AAV形質導入の30日および190日後に採取し、mCherry転写および翻訳を定量化した。組織を透明化して、iDISCO+により免疫染色し(溶媒除去臓器の免疫標識により可能になる三次元画像化)、ライトシート顕微鏡検査および体積測定登録により分析した後に、インタクトな全脳におけるLAP-mCherry発現を決定した(Renier, Wu et al. 2014; Renier, Adams et al. 2016)。
【0095】
図2B~2Pに示されるように、全ての4つのプロモーターは、30dpiおよび190dpiの両方で安定なmCherry発現を示した。LAP2の密度(脳組織の1mm
3当たりのmCherry陽性細胞の数)は、脳の異なる領域:皮質:一時運動、二次運動、一次体性感覚および補足体性感覚、
図2B-2E);海馬体(
図2G)、淡蒼球(
図2I)、視床下部(
図2K)および嗅覚野(
図2P)において、LAP1およびLAP1_2のものよりも高く、EF1αのものとは有意には異ならなかった。小脳において、LAP2は、LAP1、LAP1_2およびEF1αよりも高いmCherry密度を示した(
図2O)。さらに、線条(
図2H);視床(
図2J);中脳、運動感覚野(
図2Lおよび2M)、および菱脳(
図2N)において、LAP2およびLAP1_2は、EF1αよりも有意に高い密度を示した(p<0.05)。LAP2ヌクレオチド配列はEF1αのものよりも68%短いが、いくつかの脳領域においてEF1αの能力を凌ぐことに注意。
【0096】
CNSにおけるLAPトランスジーン発現をさらに検証するために、30dpiおよび190dpiで、矢状方向脳切片において免疫組織化学(IHC)によりmCherryタンパク質発現を評価した(
図3A~3H)。共焦点顕微鏡検査分析により、30dpiに、皮質体性感覚野(
図3E)、海馬体の歯状回(
図3F)、線条の尾状核被殻(caudoputamen)(
図3G)および小脳皮質(
図3H)中で豊富なmCherry染色を示した。重要なことに、mCherry発現は、190dpiで全ての3つのLAP配列について安定であり、より大きなAAV-EF1α-mCherryプロモーターのものと同様であった(
図3E~3H、パネル5~8)。次いで、30dpiおよび190dpiにmCherry発現を定量化した。mCherry RFIは、有意差なく全てのAAVプロモーターについて同様であった(
図3I1~3I4)。190日後の1ピクセル
2当たりのmCherry陽性細胞の数をその後定量した。皮質において、LAP2 mCherry発現細胞の数は、LAP1-mCherryおよびLAP1_2-mCherryについて観察されたものよりも高かった[LAP2:297±19.82 対 LAP1:149±5.61 対 LAP1_2:168±9.22(n=6、p<0.001)(
図3J1)。歯状回、線条および小脳において、mCherry陽性細胞の数は、全てのLAPバリアントおよびEF1αについて同様であった(
図3J2~3J4)。したがって、全てのAAV-LAPバリアントは、脳においてmCherry発現を促進し、さらにAAV-LAP組換え体の単一投与は、マウスCNSにおいて長期間の汎ニューロントランスジーン発現を駆動するのに十分であり得ることを示す。
【0097】
実施例4. 小さいLAP2プロモーターバリアントは、全身性AAV投与後に強力で安定な汎ニューロントランスジーン発現を駆動する。
異なるPRV LAP配列の制御下のmCherry発現の効力を比較した。30dpiおよび190dpiでの皮質(
図4Aおよび4E1)、歯状回(
図4Bおよび4E2)、線条(
図4Cおよび4E3)および小脳(
図4Dおよび4E4)において豊富なシグナルが観察された。さらに、AAV-LAP2 RFIは安定で、30dpiおよび190dpiの両方でAAV-EF1αと同様であった(p<0.05)(
図4E1~4E4;表2)。AAV-LAP1およびAAV-LAP1_2 mCherry RFIレベルは安定であり、皮質、歯状回、線条および小脳において30dpiおよび190dpiにそれらの間で有意に異ならなかった(
図4E1~4E4;表2)が、両方のプロモーターは、LAP2およびEF1αと比較して有意に低いトランスジーン発現を示した。
【表2】
【0098】
mRNA半減期は通常翻訳されたタンパク質のものよりも短い(Chan, Mugler et al. 2018)ので、AAV-LAP形質導入されたマウス脳薄片におけるmCherry転写産物を測定した。30dpi(データは示さず)および190dpiでのAAV-LAP2-mCherry mRNAは、mCherry特異的リボプローブを使用して測定した。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)により、皮質、歯状回、線条、小脳および嗅球において豊富なAAV-LAP2 mCherry RNAが示され(
図5A~5E)、PRV LAP2が、CNSにおいて慢性的で確固としたトランスジーン転写を駆動し得ることをさらに確認した。
【0099】
実施例5. 脳におけるAAV-LAPトランスジーン発現はグリア細胞ではなくニューロンにおいて優勢である。
AAV形質導入のトロピズムおよび特異性ならびにその後のトランスジーン発現は、AAV血清型(Aschauer, Kreuz et al. 2013, Bedbrook; Deverman et al. 2018)およびプロモーター(von Jonquieres, Frohlich et al. 2016; Hammond, Leek et al. 2017; Dayton, Grames et al. 2018)に依存する。全身性AAV-PHP.eB送達後にどの細胞型がAAV-LAP-mCherry発現を示したかを特徴づけるために、ニューロン(NeuN)、希突起膠細胞(oligodencrocytes)(Olig2)、ミクログリア(Iba1)および星状細胞(S100)についてのマーカーを用いたmCherryタンパク質の共免疫染色を皮質および歯状回において行った。NeuNおよびmCherryを用いた共染色により、画像化されたニューロンの90%より多くが、皮質および歯状回の両方において異なるAAV-LAPバリアントにより駆動されるmCherryを発現したことが明らかにされた(
図6A、6Bおよび6E)。逆に、4%より少ないmCherry陽性希突起膠細胞が全てのLAPバリアントについて検出された(
図6C、6Dおよび6F)。さらに、LAP組換え体のいずれについても、ミクログリアおよび星状細胞マーカーを用いたmCherryの共標識は観察されなかった(
図7A~7D)。全体的に、これらの結果は、AAV-PHP.eBによる全身性の脳形質導入の情況において、LAP-mCherry発現はグリア細胞でなくニューロンにおいて豊富であることを示す。
【0100】
実施例6. AAV-LAP構築物は、脊髄中至る所で、広範囲で、安定かつ長期間のトランスジーン発現を示す。
脳に加えて、血清型PHP.eBが灰白質の広範囲な形質導入を示した(Chan, Jang et al. 2017; Dayton, Grames et al. 2018) 脊髄におけるAAV-LAP性能を評価した。
【0101】
190dpiに頸部、胸部(データは示さず)および腰部レベルでの脊髄の後角および前角の両方において豊富なネイティブmCherry発現を観察した(
図8A~8D)。全てのプロモーターについてのネイティブmCherry蛍光(RFI)の定量化は、統計的に有意差なしで同様であった(
図8E)。しかしながら、LAP2およびLAP1_2組換え体は、1ピクセル
2当たりmCherry陽性細胞の最も高い密度を示し、EF1αおよびLAP1が続いた;LAP2=LAP1_2>EF1α>LAP1(
図8F)。そのため、脊髄において、全ての3つのPRV LAP配列は、汎ニューロンの長期間のトランスジーン発現を有効に媒介する。
【0102】
遺伝子療法を使用して、神経学的および神経変性障害における特定の標的細胞の遺伝子機能を修復した(Deverman, Ravina et al. 2018)。末梢脈管形質導入を介した全身性のベクター送達による遺伝子移送は、CNSにおけるニューロン特異的または汎ニューロン様式での効率的な発現には困難であり得る(Ingusci, Verlengia et al. 2019)。組換えAAVベクターは、CNSにおいて遺伝子発現を達成するための最も効率的なビヒクル中にある(Hudry and Vandenberghe 2019, Wang, Tai et al. 2019)。さらに、遺伝子工学的に作り変えられたAAVカプシドは、天然に存在する血清型よりも高い効率で、向上されたCNS形質導入および高められたBBBを通過する能力を示した(Chan, Jang et al. 2017; Bedbrook, Deverman et al. 2018; Hordeaux, Yuan et al. 2019; Qin Huang and Alejandro B. Balazs 2019)。これらの進歩に関わらず、AAV遺伝子療法は、AAVカプシドについての4.9Kbの小さいペイロードサイズ制限により妨げられる(Chamberlain, Riyad et al. 2016)。例えば、ポーンプ病(Colella, Sellier et al. 2019)およびパーキンソン病(Wang, Muramatsu et al. 2002)についてのCNS療法は、GAA(2.9Kb)およびGDNF(2.5Kb)などの比較的大きい遺伝子の送達に基づく。これらおよび他の同様の場合について、より大きいプロモーターまたはさらに小さいCMVおよびhSynプロモーターの使用は、送達後に迅速に抑制されることが示されている(Gray, Foti et al. 2011, Jackson, Dayton et al. 2016)。
【0103】
本明細書に記載されるように、アルファヘルペスウイルスPRVのゲノムから単離された3つの小さな汎ニューロンプロモーターを同定し、全身性AAV PHP.eB送達後のマウスCNSにおける有効で長期間のトランスジーン発現を示した。本明細書に示される結果は、これらの小さなPRV LAP配列が、脳および脊髄においてレポータートランスジーンの長期間(>6ヶ月)の発現を駆動し得ることを示す。PRV LAPは、皮質、線条、歯状回および小脳においてニューロンを均一に形質導入した。mCherry陽性細胞の分布は、歯状回、線条および小脳においてLAP配列の間で有意に異ならなかった。しかしながら、LAP2トランスジーン発現は、LAP1およびLAP1_2と比較して、皮質において有意に高かった。全脳スクリーニングアッセイにより、402bpのみのLAP2バリアントが、より大きいLAP1およびLAP1_2配列よりも強力なmCherry発現を駆動し得ることが示された。さらに、LAP2から転写された豊富なmCherry mRNAは、190dpiに、全てのスクリーニングされた脳領域で検出された。これらの結果は、PRV感染の非存在下で全身性のAAV-LAP2送達後にCNSにおいて小さいPRV LAP2から駆動される効率的な転写および翻訳の両方を示す。
【0104】
LAP1-mCherry細胞密度はLAP2についてのものよりも有意に低かったが、mCherry発現は安定で長期持続的なままであった。そのため、LAP1は、少量の治療タンパク質が必要な場合(例えば酵素欠損)または形質導入されない細胞へのクロスコレクション(cross-correction)について有用であり得た。例えば、リソソーム酵素欠損(Husain, Passini et al. 2009)およびムコ多糖症VII型疾患(Cearley and Wolfe 2007)について、AAV療法により修復された酵素は、形質導入された細胞から分泌され得、隣接する疾患状態細胞を改善し得る。
【0105】
AAVトロピズムは主に、カプシドと、感受性で許容性の細胞中の特定の受容体との間の相互作用により決定される(Aschauer, Kreuz et al. 2013; Bedbrook, Deverman et al. 2018)。異なるAAV血清型は異なる組織トロピズムを有する。しかしながら、プロモーター配列および逆方向末端反復配列(ITR)などのベクターに含まれる他の配列は、トロピズムに対して実質的な影響を有し得る(Haberman and McCown 2002)。また、トランスジーンを転写するプロモーター領域は、AAVベクター性能を最適化するために決定的に重要である。広範囲または細胞型特異的のいずれかの様式における効率的なトランスジーン発現は、細胞由来TFの、プロモーター領域への結合および作用を必要とする(Dayton, Grames et al. 2018; Andersson and Sandelin 2019)。加齢または分化などのニューロン環境における変化も、細胞特異的制御タンパク質の補充、およびそのためにCNSにおける遺伝子発現を変化させ得る(Herdegen and Leah 1998)。本明細書に示されるPRV LAP配列の分析により、トランスジーン発現開始、持続および細胞型特異性を制御し得るLAP2におけるDPEが同定された。さらに、HSV-1 LAPにおいて潜伏からのウイルス再活性化を制御するように思われる(Kriesel, Jones et al. 2004)4つのSTAT1モチーフが同定された。顕著に、PRV LAP2中のこれらのSTAT1モチーフの1つは、TATAボックスならびにニューロンおよび希突起膠細胞の運命を促進する公知の多面的なTFであるOlig2モチーフと共局在することが見出された(Emery and Lu 2015)。これらのモチーフおよび転写開始部位に関連する近接の効果は、LAP2、LAP1およびLAP1_2の間の異なるレベルのCNSトランスジーン発現を説明し得た。さらに、1つのCTCFモチーフが、LAP2 TATAボックスの下流に見いだされ、これは、HSV-1について示されるように潜伏の間の後成的なサイレンシングに対する抵抗性における役割を有し得た(Lang, Li et al. 2017; Lee, Raja et al. 2018)。実際に、Zimmermanおよび同僚(Zimmerman, Patel et al. 2018)は、EF1αプロモーターの下流のCTCFモチーフの挿入は、ネイティブEF1αおよびCMVプロモーターと比較して、トランスジーン発現を有意に増加することを見出した。興味深いことに、CMV TATAボックスの下流の第2のCTCFモチーフの挿入は、ネイティブCTCFモチーフの重複した存在のためであると推定されるように、ルシフェラーゼレポーター発現に対して効果を有さなかった(Zimmerman, Patel et al. 2018)。したがって、遺伝子発現は、遺伝子コンテクストおよび配列特異的DNA結合タンパク質に依存する変化に影響を受けやすい。異なる宿主細胞由来の特定のTFの補充は、潜伏の間の不活性化に対する抵抗性を制御する同じ機構によりトランスジーン転写を調節し得る。CTCF結合因子などのインスレーター因子は独立して制御され(Washington, Musarrat et al. 2018)、ヘテロクロマチンによる抑制からプロモーター領域を保護し得、長期の転写を維持する(Lang, Li et al. 2017)。
【0106】
LAP-mCherry、グリアおよびニューロンマーカーの共局在による細胞特異的形質導入の組織学的評価により、LAP配列は、皮質および歯状回において、ニューロン中でグリアよりも効率的に発現することが明らかにされた。LAP-mCherry陽性細胞は、ミクログリアまたは星状細胞ではなく、ニューロン特異的マーカーと優先的に、および希突起膠細胞とより低い程度で共局在した。これらの所見は、PRV LAP配列が、PHP.eB全身性送達後にCNSにおいて汎ニューロンプロモータープロフィールを有することを示唆する。この活性は、TATAボックスの上流のCREモチーフの存在のために、HSV LAP配列についても見出されている(Leib, Nadeau et al. 1991; Kenny, Krebs et al. 1994; Bloom, Stevens et al. 1997)。PRV LAP1およびLAP2は、他のウイルスタンパク質の非存在下でニューロン特異的プロモーターであり、トランスジーン発現レベルは、異なるニューロン型を通じて異なる(Taharaguchi, Yoshino et al. 2003)。重要なことに、AAV-PHP.eBはニューロンを優先的に形質導入し(Chan, Jang et al. 2017)、このカプシドバリアントとPRV LAP配列の組合せは、CNSにおいて強力で長期の汎ニューロン発現プロフィールを示す。したがって、PRV LAP配列は、組換えウイルスベクター(AAV、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス)の情況だけでなく、非ウイルス遺伝子送達プラットフォームによっても使用され得る。PRVのネイティブ宿主は成体のブタであるが、該ウイルスは極端に広いトロピズムを有し、いくつかの鳥類、魚類およびいくつかの霊長類を含む多くの種類の哺乳動物に感染し得る(Baskerville and Lloyd 1977)。さらに、培養中のヒト細胞は、PRV感染に感受性であり、人獣共通伝染病性の感染のいくつかの報告がある(Wong, Lu et al. 2019)。そのため、PRV LAP配列は、ヒトを含むいくつかの異なる哺乳動物において効率的で長期間のトランスジーン発現を必要とする遺伝子療法適用のために最適化され得る。
【0107】
要約すると、本明細書に示されるデータは、PRV LAPプロモーター活性はPRV感染とは非依存的であることおよび小さいAAV-PHP.eB-LAP配列は、脳および脊髄(CNS)において安定で汎ニューロン性の様式でトランスジーンを発現することを示した。長期間のトランスジーン転写および翻訳は、有効で長時間の単回用量遺伝子療法適用に最高のものである。したがって、PRV LAP配列は、遺伝的CNS疾患の治療に有用であり得る。
【0108】
実施例7. LAP配列は、非神経細胞および組織においてトランスジーン発現を効率的に駆動する。
以下の例において、LAP配列は、腎臓、肝臓および網膜などのいくつかの細胞および組織型において蛍光レポータータンパク質(mCherry)のトランスジーン発現を有効に駆動することが示された。さらに、LAPは、ウイルスベクター(例えばAAV)および非ウイルスベクター(例えばプラスミドDNAの直接トランスフェクション)と適合性であることが見出された。
【0109】
図9A~9Cに示されるように、LAP配列は、ブタ腎臓細胞において効率的なトランスジーン発現を駆動する。PK15細胞(ブタ腎臓上皮細胞、ATCC CCL-33)の代表的な画像を、LAP1(
図9A)、LAP2(
図9B)またはLAP1_2(
図9C)により駆動されるmCherryを含むレポータープラスミドのトランスフェクションの48時間後に得た。
【0110】
図10Aおよび10Bに示されるように、LAP2は、ヒト腎臓細胞において効率的なトランスジーン発現を駆動する。HEK-293細胞(ヒト胚性腎臓上皮細胞、ATCC CRL-1573)の代表的な画像を、LAP2(
図10A)またはEF1αプロモーター(
図10B)により駆動されるmCherryを含むレポータープラスミドのトランスフェクションの48時間後に得た。
【0111】
図11Aおよび11Bに示されるように、LAP2は、ヒト肝臓細胞における効率的なトランスジーン発現を駆動する。HepG2細胞(ヒト肝臓上皮細胞、ATCC HB-8065)の代表的な画像を、LAP2(
図11A)またはEF1αプロモーター(
図11B)により駆動されるmCherryを含むレポータープラスミドのトランスフェクションの48時間後に得た。
【0112】
図12A1~12B4に示されるように、LAP2は、肝臓を通じて長期間のトランスジーン発現を駆動する。AAV-LAP2(
図12A1~12A4)またはAAV-EF1α-ベクター(
図12B1~12B4)の静脈内投与は、マウス後方眼窩洞への片側注射により行った(4x10
11vg/マウス)。肝臓は190dpiに回収して、その後のIHCおよび共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで長手方向に切片化した。代表的な共焦点画像は、ネイティブmCherry蛍光(
図12A1および12B1:赤色)、抗mCherry免疫染色(
図12A2および12B2:緑色)、DAPI核対比染色(
図12A3および12B3:青色)および合わせた免疫蛍光とDAPI画像(
図12A4および12B4)を示す。
【0113】
図13A1~13B4に示されるように、LAP2は、マウス腎臓において長期間のトランスジーン発現を駆動する。AAV-LAP2(
図13A1~13A4)またはAAV-EF1α-ベクター(
図13B1~13B4)の静脈内投与は、マウス後方眼窩洞への片側注射により行った(4x10
11vg/マウス)。腎臓は190dpiに回収し、その後のIHCおよび共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで長手方向に切片化した。代表的な共焦点画像は、ネイティブmCherry蛍光(
図13A1および13B1:赤色)、抗mCherry免疫染色(
図13A2および13B2:緑色)、DAPI核対比染色(
図13A3および13B3:青色)および合わせた免疫蛍光とDAPI画像(
図13A4および13B4)を示す。
【0114】
図14A1~14B4に示されるように、LAP2は、マウス網膜において長期間のトランスジーン発現を駆動する。AAV-LAP2(
図14A1~14A4)またはAAV-EF1α-ベクター(
図14B1~14B4)の静脈内投与は、マウス後方眼窩洞への片側注射により行った(4x10
11vg/マウス)。網膜は190dpiに回収し、その後のIHCおよび共焦点顕微鏡検査分析のために20μmで横方向に凍結切片化した。代表的な共焦点画像は、ネイティブmCherry蛍光(
図14A1および14B1:赤色)、抗mCherry免疫染色(
図14A2および14B2:緑色)、DAPI核対比染色(
図14A3および14B3:青色)および合わせた免疫蛍光とDAPIの画像(
図14A4および14B4)を示す。
【0115】
参照
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【0116】
本明細書において引用される全ての特許、公開出願および参照文献の教示は、それらの全体において参照により援用される。
【0117】
例示態様が具体的に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される態様の範囲を逸脱することなく、本発明において形態および詳細における種々の変更がなされ得ることが当業者に理解される。
【配列表】
【国際調査報告】