(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-17
(54)【発明の名称】付加製造方法およびビームダンプを用いた装置
(51)【国際特許分類】
B22F 10/30 20210101AFI20220310BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220310BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20220310BHJP
B22F 12/44 20210101ALI20220310BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220310BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220310BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220310BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220310BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220310BHJP
【FI】
B22F10/30
B22F10/28
B22F12/41
B22F12/44
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/393
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534669
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020052173
(87)【国際公開番号】W WO2020157137
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520420584
【氏名又は名称】フリーメルト エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユングブラード、ウルリック
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AP15
4F213AQ03
4F213AR16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL44
4F213WL52
4F213WL76
4F213WL85
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
本発明は、連続した粉末の層を融合することにより3次元物体を製造する電子ビームシステムのための装置および方法であって、上記システムが、上記電子ビームを再成形するための少なくとも1つのレンズと、電子源と、粉末床とを有し、上記方法が、電子ビームパワーを制御するために、上記電子ビームのうちの選択された断面をブロックする段階を備える、装置および方法に関する。電子ビームとビームブロッキング部との干渉により、電子ビームの一部分が、粉末床に達することが阻止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した粉末の層を融合することにより3次元物体を製造する電子ビームシステムのための方法であって、前記電子ビームシステムが、電子ビームを再成形するための少なくとも1つのレンズと、電子源と、粉末床とを有し、前記方法が、電子ビームパワーを制御するために、前記電子ビームのうちの選択された断面をブロックする段階を備える方法。
【請求項2】
前記電子源が、ダイオード電子源である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子源が、レーザ加熱電子源である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子ビームが、ビームブロッキング部への干渉により可変的にブロックされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ビームブロッキング部には、前記電子ビームを少なくとも部分的に通過させるための穴が設けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記穴が、円錐形に形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ビームブロッキング部が、前記電子ビームへの干渉によるエネルギーを少なくとも部分的に受け取るために提供される、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ビームブロッキング部が、前記電子源と前記粉末床との間に配置される、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビームブロッキング部が、前記電子ビームを再成形するための前記レンズと、前記粉末床との間に配置される、請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電子ビームが、前記電子ビームを再成形するための前記レンズにより、前記ビームブロッキング部における交差部分を伴って形成される、請求項4から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電子ビームを前記再成形することが、焦点をずらすことである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電子ビームを前記再成形することが、平行移動である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電子ビームを前記再成形することが、収差である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
連続した粉末の層を融合することにより3次元物体を製造するための装置であって、電子ビームを再成形するための少なくとも1つのレンズと、電子源と、粉末床と、電子ビームパワーが前記粉末床に達することを可変的に制御するために、前記電子源からのエネルギーを受け取るためのビームブロッキング部とを備える装置。
【請求項15】
前記電子源が、ダイオード電子源である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記電子源が、レーザ加熱電子源である、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記電子ビームが、前記ビームブロッキング部への干渉により可変的にブロックされる、請求項14から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記ビームブロッキング部には、前記電子ビームを少なくとも部分的に通過させるための穴が設けられる、請求項14から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記穴が、円錐形に形成される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ビームブロッキング部が、前記電子ビームへの干渉によるエネルギーを少なくとも部分的に受け取るために提供される、請求項14から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記ビームブロッキング部が、前記電子源と前記粉末床との間に配置される、請求項14から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記ビームブロッキング部が、前記電子ビームを再成形するための前記レンズと、前記粉末床との間に配置される、請求項14から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記電子ビームが、前記電子ビームを再成形するための前記レンズにより、前記ビームブロッキング部における交差部分を伴って形成される、請求項14から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記電子ビームを前記再成形することが、焦点をずらすことである、請求項14から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記電子ビームを前記再成形することが平行移動である、請求項14から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記電子ビームを前記再成形することが収差である、請求項14から25のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末床内で粉末材料を層ごとに融合させることで、粉末材料から3次元物体を作製するための付加製造装置(additive manufacturing apparatus)に関する。
[従来技術の課題]
【0002】
電子ビームを使用する付加製造装置では、電子ビーム源が、ビームの向きを変えるためのグリッドを有する3極管としてしばしば設計される。ただし、3極管設計は短所を有し、電子源のダイオード設計が、いくつかの側面から有利である。しかし、ダイオード設計は、電子ビームを急速にオンおよびオフにするためのグリッドを欠いている。粉末を加熱および融合するために電子ビームを使用する場合、電子ビーム内のパワーを急速に制御することが望まれる。
【背景技術】
【0003】
ビーム源から対象粉末面への途中にある小さな穴にビームを通すことにより、電子ビームを成形することが知られている。こうした電子ビームの成形は、穴の縁にビームを干渉させ、ビームの外周が穴を通過することを阻止することにより、ビームの周囲での不要な収差を取り除くように設計することが可能である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、連続した粉末の層を融合することにより3次元物体を製造する電子ビームシステムための方法であって、上記電子ビームシステムが、電子ビームを再成形するための少なくとも1つのレンズと、電子源と、粉末床とを有し、上記方法が、電子ビームパワーを制御するために、上記電子ビームのうちの選択された断面をブロックする段階を備える、方法に関する。
【0005】
実施形態では、電子源が、ダイオード電子源であり得る。
【0006】
実施形態では、電子源が、レーザ加熱電子源であることが好ましい。
【0007】
実施形態では、電子ビームが、ビームブロッキング部への干渉により可変的にブロックされる。
【0008】
実施形態では、上記ビームブロッキング部には、電子ビームを少なくとも部分的に通過させるための穴が設けられ得る。
【0009】
実施形態では、上記穴が、円錐形に形成され得る。
【0010】
実施形態では、上記ビームブロッキング部が、電子ビームへの干渉によるエネルギーを少なくとも部分的に受け取るために提供される。
【0011】
実施形態では、上記ビームブロッキング部が、上記電子源と上記粉末床との間に配置される。
【0012】
実施形態では、上記ビームブロッキング部が、電子ビームを再成形するための上記レンズと、上記粉末床との間に配置される。
【0013】
実施形態では、上記電子ビームが、電子ビームを再成形するための上記レンズにより、上記ビームブロッキング部における交差部分を伴って形成され得る。
【0014】
実施形態では、上記電子ビームを上記再成形することが、焦点をずらすことであり得る。
【0015】
実施形態では、上記電子ビームを上記再成形することが、平行移動であり得る。
【0016】
実施形態では、上記電子ビームを上記再成形することが、収差であり得る。
【0017】
本発明は、連続した粉末の層を融合することにより3次元物体を製造するための装置に更に関し、上記装置が、電子ビームを再成形するための少なくとも1つのレンズと、電子源と、粉末床と、電子ビームパワーが粉末床に達することを可変的に制御するために、電子源からのエネルギーを受け取るためのビームブロッキング部とを備える。
【0018】
実施形態では、電子源が、ダイオード電子源であり得る。
【0019】
実施形態では、電子源が、レーザ加熱電子源であることが好ましい。
【0020】
実施形態では、電子ビームが、ビームブロッキング部への干渉により可変的にブロックされる。
【0021】
実施形態では、上記ビームブロッキング部には、電子ビームを少なくとも部分的に通過させるための穴が設けられ得る。
【0022】
実施形態では、上記穴が、円錐形に形成され得る。
【0023】
実施形態では、上記ビームブロッキング部が、電子ビームへの干渉によるエネルギーを少なくとも部分的に受け取るために提供される。
【0024】
実施形態では、上記ビームブロッキング部が、上記電子源と上記粉末床との間に配置される。
【0025】
実施形態では、上記ビームブロッキング部が、電子ビームを再成形するための上記レンズと、上記粉末床との間に配置される。
【0026】
実施形態では、上記電子ビームが、電子ビームを再成形するための上記レンズにより、上記ビームブロッキング部における交差部分を伴って形成され得る。
【0027】
実施形態では、上記電子ビームを上記再成形することが、焦点をずらすことであり得る。
【0028】
実施形態では、上記電子ビームを上記再成形することが、平行移動であり得る。
【0029】
実施形態では、上記電子ビームを上記再成形することが、収差であり得る。
【0030】
本発明の範囲は、特許請求の範囲により規定され、特許請求の範囲を参照により本文書に組み入れる。以下での1つまたは複数の実施形態の詳細な説明を考慮することにより、本発明の実施形態のより完全な理解、ならびに、それら実施形態の更なる利点の実現が当業者に付与されることになる。添付の図面を参照ことになるが、最初に、それらについて簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の説明では、以下の図面を参照する。
【
図1】粉末床とビームブロッキング部を伴う電子銃とを有する電子ビーム付加製造装置を示す図である。
【
図2】円錐形の穴を有するビームブロッキング部を伴う電子銃を示す図である。
【
図3】穴を有さないビームブロッキング部を伴う電子銃を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
開示する付加製造装置は、製造チャンバと、電子源と、粉末床と、電子ビームパワーを制御するために、電子源からのエネルギーを受け取るためのビームブロッキング部と、粉末床表面にて、電子ビームの焦点および位置を制御するためのレンズとを備える。本出願人の出願SE1951071-8(同時係属)およびWO2019185642A1(公開済)でも、本技術および付加製造についてより多く説明されている。これら出願を参照により本明細書に組み入れる。
【0033】
本明細書中に開示する発明は、供給源から対象への電子ビーム経路内のエネルギーをダンプ(dump)することにより、電子ビーム電流を急速に制御することが可能であるという理解に基づく。これは、電子ビーム源と、電子ビームのサイズまたは形状を制御するためのビームブロッキングレンズとを提供することにより行われる。ビーム経路内では、上記レンズの後に、ビームブロッキング部101が配置されるのが好ましい。上記ビームブロッキング部には、ビーム経路内の中心に配置される小さなアパーチャ穴102が設けられ得る。さらに、ビーム経路内には、ビームブロッキング部の後に、ビーム焦点を粉末床110に向けて制御するための集束レンズ104と、粉末床上の異なる位置で、ビームの位置を制御するためのレンズ103とが配置され得る。粉末床は、電子ビーム108の対象であり、そこで、上記ビームが、3次元物体109を作製するためのパターンを描く。上記電子ビームのうちの選択された断面をブロックすることが、電子ビームとビームブロッキング部との干渉により行われ得、例えば、選択された断面は、ビームブロッキング部での電子干渉領域、または、この領域の一部分になり得る。
【0034】
電子源107後のビーム経路内には、ビームブロッキング部内の電子をダンプすることにより、電子ビーム108の高速制御を行うために、ビームブロッキングレンズ106およびビームブロッキング部101が配置され得る。ビームブロッキング部は、電子ビームの一部分がビームブロッキング部に干渉することを可能にすることにより、電子ビームを可変的にブロックして、電子ビームパワーを制御するために提供される。この制御は、ビームブロッキングレンズにより、ビームの焦点をずらすこと、または、ビームを再成形することで、電子ビームがビームブロッキング部に干渉する量を調節することにより実行され得る。電子ビーム108のブロックは、ビームブロッキング部101に干渉する電子ビーム108のパーセンテージ、および、ビームブロッキング部101を通過するパーセンテージを変えることにより実現される。このブロックは、電子ビーム108の特性を急速に変えることにより、電子ビーム108のうちのより多くの部分、または、より少ない部分をビームブロッキング部101に干渉させることにより実現することが可能である。電子ビームのうちビームブロッキング部に干渉しない部分は、ビームブロッキング部101のアパーチャ穴102を通してビームブロッキング部を通過し、粉末床110に向かって進む。ビームブロッキングレンズに対して制御信号をパルス発振することにより、ビームブロッキング部における電子ビームの直径を変動させて、ビームパワーが粉末床に達することを制御することができる。他の方法は、ビームブロッキングレンズに対して制御信号をパルス発振することにより、電子ビームの形状を変動させることであり得る。ビームのビーム成形と、ビーム直径パルス発振とを組み合わせることも可能である。ビームブロッキングレンズに対する上記パルス発振された制御信号により、ビームの通過と、ビームブロッキング部へのビーム干渉とのパルス駆動よる切替えを行うように電子ビームを制御することができ、よって、電子ビームパワーが対象粉末床に達することの高速制御が実現される。
【0035】
ビームブロッキングレンズは、電磁コイルであることが好ましい。電磁コイルを使用することの1つの利点は、それが、高速なビーム制御方法であることである。
【0036】
平均ビームパワーを、ビームの高周波数パルス発振により制御することが可能であり、この制御は、パルス幅変調、または、幅を固定した周波数変調により実現され得る。粉末の融合中に、良好な材料品質を実現するように、ビームパワーを制御することが重要である。高速ビーム制御により、例えば、ビーム向き転換点における、改善された融合プロセス制御、および、粉末床における異なるビーム位置間での高速ビームジャンプを実現することが可能である。ビームパワーは、固定周波数または固定パルス幅によっては決定されない任意のパルスシーケンスを使用して制御することも可能である。
【0037】
ビームブロッキング部101により、ビーム源107における電子ビームパワーをシフトしながら、すなわち、電子源内の陰極の温度をシフトしながら、粉末床110におけるビームパワーをオフにすることが可能である。通常、陰極における温度のシフトは、例えば、レーザからの陰極の背面加熱により実行される低速プロセスである。電子ビームがビームブロッキング部を通過するかどうか、または、電子ビームがビームブロッキング部により完全にもしくは部分的にブロックされるかどうかに関係なく、電子ビーム電流は、電気流速計を使用することにより、常にモニタすることが可能である。なぜなら、ビームブロッキング部および粉末床の双方は、電子ビームとともに、閉電気回路の一部分とすることが可能であるからである。しかし、ビームブロッキング部を電気的に分離し、粉末床に入る電子ビーム電流の測定とは分けて、ビームブロッキング部に入る電子ビーム電流をモニタすることも可能である。
【0038】
ある位置から他の位置への、粉末床における電子スポットの高速ジャンプ中に、ビームパワーをオフにするためにビーム制御を使用することが更に有利である。こうすることで、非焼結粉末の帯電効果を避けることが可能である。さらには、こうしたやり方で、本発明によりビームパワーを制御することが可能になることにより、ビームをオンにする前に、粉末床におけるビームスポットの位置に合わせる時間を考慮することが可能になる。
【0039】
ビームパワーが、電子ビームのうちの選択された断面と、ビームブロッキング部との干渉によりオフにされても、電子ビームの一部分が、ビームブロッキング部の穴102を通してビームブロッキング部101を通過し得るので、ビームパワーを、完全にオフにしないこともできる。電子ビームの一部分がビームブロッキング部に干渉すると、対象110に達するビームパワーは減少する。一方、ビームがオンになり、電子ビームのほとんどがビームブロッキング部を通過すると、対象に達するビームパワーは増加する。
【0040】
本発明は、更に、高速ビームパワー調整を提供する。この高速ビームパワー調整は、粉末床におけるビームスポットの動き方向が、向きを変え、進行方向を変える向き転換点で有効になり得る。さらに、ビームブロッキング制御により、ビームパワーの急速変化を実現することも可能である。こうしたビームパワーの急速変化は、陰極の温度を変化させることで、すなわち、陰極を加熱するのに使用されるレーザパワーを減少させることで、ビームパワーのより低速な変化を実行する間の動的補償のために有効であり得る。
【0041】
本発明は、導電性粉末、好ましくは金属粉末の連続層を融合することにより、3次元物体109を製造する電子ビームシステムのための装置および方法を開示する。本システムは、電子ビーム108の高速集束または再成形のための少なくとも1つの電磁レンズ106と、電子源107と、粉末床110とを有する。本装置は、電子ビーム源から粉末床対象110へのビーム経路内で、電子ビームを部分的にブロックすることにより、電子ビーム粉末を制御するように、電子ビームを可変的にブロックするために提供される。
【0042】
図1に示す本発明の実施形態では、電子源107がダイオード電子源であり得る。3極管電子源とは違い、ダイオード電子源はグリッドを欠いており、3極管内のグリッドは、電位によりビームをオンおよびオフにするのに使用される。ダイオード電子源は放出陰極を有し、陰極と陽極との間に高電位が印加されるので、陰極からの放出電子が、陽極に向かって加速され、陽極の穴を通過することで、粉末床対象110へのビーム経路を進む電子ビームが形成される。レーザビーム、いわゆるレーザ加熱電子源で陰極の裏側を加熱することにより、電子が陰極から放出される。
【0043】
図1に示す実施形態では、電子ビーム108を、ビームブロッキング部101への干渉によりブロックすることができる。電子ビームの焦点を変えることにより、電子ビームをブロックすることができるので、ビームの直径を変えることで、ビームの周囲が、ビームブロッキング部101の穴102の縁に干渉するようになる。あるいは、ビーム直径サイズまたはビーム位置を経時的に変動させることにより、電子ビーム108を可変的にブロックすることも可能である。電子ビーム108とビームブロッキング部101との干渉が実現するように、ビームサイズ、ビーム位置、およびビーム焦点の変動を組み合わせることも可能である。
【0044】
さらに、ビームブロッキング部101には、電子ビーム108を少なくとも部分的に通過させるために、ビーム経路の中心に配置された穴102が設けられ得る。ビーム経路で中心に集められたビームが焦点をずらされると、ビームの小部分が穴102を通過し、ビームの大部分がビームブロッキング部101に干渉する。
【0045】
一方、ビームを、ビーム経路の中心から離れるように偏向させると、ビームのうち、ビームブロッキング部101の穴102を通過する部分を最小にすること可能である。
【0046】
一実施形態では、ビームブロッキング部101が、プレート形状を有し、電子源107と上記粉末床110との間に配置され、さらには、ビームブロッキング部101が、電子ビーム108の再成形のためのビームブロッキングレンズ106と、上記粉末床110との間に配置されることが好ましい。ビームブロッキングレンズにより、電子ビーム交差部分を、ビームブロッキング部の穴にて形成することができる。これは、ビームがブロックされない時に、ビームが狭い穴を通過するようにするためのものである。ビーム交差部分は、ビーム経路に沿った焦点と定義できる。電子ビームの再成形は、焦点、非点収差、形状、直径、エネルギー分布等を変えることにより行うことが可能である。再成形は、収差とも呼ばれる、より高次のビーム変形により行うことも可能である。
【0047】
図3に示す他の実施形態では、ビームブロッキング部101の穴またはアパーチャが、電子ビーム108により作られている。穴がない状態のビームブロッキング部101から始め、強力な電子ビーム108を使用して、ビームブロッキング部を溶かして穴を作る。このことの利点は、電子ビーム108に関して、穴が正確な位置および正確なサイズで作られることである。システム内での最後の位置ずれおよび収差は、電子ビーム108による穴の作製中に起こるので、その後に、穴のサイズおよび位置と、電子ビームとの関係を調整する必要はない。これは、穴が、電子ビーム108自体によって作られるからである。
【0048】
図2に示す代替実施形態では、ビームブロッキング部101の穴またはアパーチャ202を、円錐形に形成することができ、これは、粉末床110に達するパワーを減少させるために、電子ビーム108の焦点をずらす場合、または、電子ビーム108を再成形する場合に、ビームブロッキング部101のうち、電子ビーム108に干渉する領域が増大されるので有利である。これにより、ビームブロッキング部が、円錐形状を有する穴を伴って形成されない場合と比較して、ビームブロッキング部での電子ビーム108による局所加熱の量が減少する。また、こうすることで、円錐形の穴202に向かう電子ビーム108の入射角に起因して、電子ビーム108のビームブロッキング部101への干渉に由来する後方散乱電子のより多くが、陰極に戻るように進むのではなく、穴202の反対側に干渉するので有利である。
【0049】
一代替実施形態では、電子ビームを偏向レンズで偏向させることにより、ビームブロッキング部に部分的に干渉するように、電子ビームを制御することができる。電子ビームとビームブロッキング部との干渉が実現するように、焦点レンズと偏向レンズとの組合せを使用することも可能である。偏向レンズは、電磁コイルであることが好ましい。電磁コイルを使用することの1つの利点は、高速なビーム制御方法であることである。
【0050】
一代替実施形態では、電磁コイルにより電子ビームを再成形することにより、ビームブロッキング部が部分的に干渉されるように電子ビームを制御して、電子ビームとビームブロッキング部との干渉を実現することができる。電子源からの電子ビームエネルギー分布の再成形は、電子ビームのエネルギー分布を、断面内で2重ピークを伴うように成形することによって実行することも可能である。ただし、焦点をややずらすことで、ビーム形状はガウスエネルギー分布を呈する。このことは、断面内で2重ピークを有する場合に、中心でのエネルギーが最小になる電子ビームの特性に起因して、ビームブロッキング部にて中心に配置されたアパーチャを通過するエネルギーを最小にするのに有利である。
【0051】
ビームブロッキング部のアパーチャ穴により、望まれない周辺収差をこすり落として除去するために、または、望まれない周辺収差を選択的に除去するためにビームブロッキング部を使用して、対象粉末床での改善されたスポットを実現することも有利である。
【0052】
本発明の目的は、電子ビームのうち、ビームブロッキング部内にある部分をパルス駆動でダンプして、電子ビームパワーを高速で変化させることにより、付加製造システム内で粉末床に向かう電子ビームのパワーを調整するための、効率的な制御方法を提供することである。この目的は、独立請求項で規定される方法により実現される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態、変形形態、および更なる発展形態を含む。
【国際調査報告】