IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイの特許一覧

特表2022-518907空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム
<>
  • 特表-空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム 図1
  • 特表-空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム 図2
  • 特表-空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム 図3
  • 特表-空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの内面に対する密封剤の貼付方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
B29D30/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542545
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2020050484
(87)【国際公開番号】W WO2020152593
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019000001147
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ポントーニ
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP01
4F215AP13
4F215AQ01
4F215AQ05
4F215VA02
4F215VA16
4F215VC03
4F215VD22
4F215VK34
4F215VL32
4F215VQ02
(57)【要約】
空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)を貼り付けるための貼付システム(1)及び方法が開示される。これは、空気入りタイヤ(4)を回転軸線(6)周りで回転させるための支持装置(5)と、空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)の層を貼り付けるように空気入りタイヤ(4)の内側に配置可能とした分配ヘッド(10)と、分配ヘッド(10)に接続され、分配ヘッド(10)に第1の処理量の密封剤(2)を供給するための主押出装置(12)と、分配ヘッド(10)に接続され、主押出装置(12)から分離・独立して配置され、分配ヘッド(10)に第1の処理量の密封剤(2)と合流させる第2の処理量の密封剤(2)を供給するための追加押出装置(13)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)を貼り付けるための貼付システム(1)であって、
・前記空気入りタイヤ(4)を回転軸線(6)周りで回転させるための支持装置(5)と、
・前記空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)の層を貼り付けるために、空気入りタイヤ(4)の内側に配置可能とした分配ヘッド(10)と、
・該分配ヘッド(10)に接続され、第1の処理量の密封剤(2)を前記分配ヘッド(10)に供給するための主押出装置(12)と、
を備える貼付システム(1)において、
前記分配ヘッド(10)に接続され、前記主押出装置(12)から分離・独立しており、前記第1の処理量の密封剤(2)と合流させる第2の処理量の密封剤(2)を前記分配ヘッド(10)に供給するための追加押出装置(13)を備えることを特徴とする、貼付システム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の貼付システム(1)であって、前記追加押出装置(13)における密封剤(2)の公称流量及び分配慣性力が、前記主押出装置(12)における密封剤(2)の公称流量及び分配慣性力よりも低い、貼付システム(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の貼付システム(1)であって、前記分配ヘッド(10)が単一の共通吐出ノズル(18)を備え、前記第1の処理量の密封剤(2)と前記第2の処理量の密封剤(2)の合流によって生成される密封剤(2)の単一の処理量が前記共通吐出ノズル(18)から押し出される、貼付システム(1)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の貼付システム(1)であって、前記分配ヘッド(10)が、
・第1のパイプ(15)により前記主押出機装置(12)から加圧下の密封剤(2)を受け取る主管体(14)と、
・第2のパイプ(17)により前記押出装置(13)から加圧下の密封剤(2)を受け取る追加管体(16)と、を備え、
・これら二つの管体(14、16)の端部が、各処理量の密封剤(2)を合流させるように相互接続されている、貼付システム(1)。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の貼付システム(1)であって、前記追加押出装置(13)が、密封剤(2)を前記分配ヘッド(10)に向けて圧送するためのギヤポンプを備える、貼付システム(1)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の貼付システム(1)であって、
・前記主押出装置(12)によって分配される第1の処理量の密封剤(2)の流量(MFMAIN)を測定するための第1の流量センサ(19)と、
・前記追加押出装置(13)によって分配される第2の処理量の密封剤(2)の流量(MFADD)を測定するための第2の流量センサ(20)と、
を更に備える貼付システム(1)。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに一項に記載の貼付システム(1)であって、制御ユニット(21)を備え、該制御ユニット(21)によって前記二つの押出装置(12、13)を、前記第1の処理量の密封剤(2)の流量(MFMAIN)と、前記第2の処理量の密封剤(2)の流量(MFADD)の和が密封剤(2)の所望流量(MFDES)と常に等しくなるように連携させて駆動する、貼付システム(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の貼付システム(1)であって、前記制御ユニット(21)により前記追加押出装置(13)を、密封剤(2)の所望流量(MFDES)からの不足量の密封剤(2)を供給するように駆動する、貼付システム(1)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の貼付システム(1)であって、前記分配ヘッド(10)から密封剤(2)の分配を開始させたときに、前記制御ユニット(21)により、
・先ず、両押出装置(12、13)からの密封剤(2)の流量(MFMAIN、MFADD)を可能な最大値まで増加させ、
・次に、密封剤(2)の実際流量(MFREAL)が密封剤(2)の所望流量(MFDES)に達したときに前記追加押出装置(13)からの密封剤(2)の流量(MFADD)を最小の非ゼロ値まで徐々に減少させる、貼付システム(1)。
【請求項10】
請求項7、8又は9に記載の貼付システム(1)であって、前記分配ヘッド(10)からの密封剤(2)の分配が終了したときに、前記制御ユニット(21)により、先ず、前記主押出装置(12)を停止させ、次に、前記追加押出装置(13)を駆動することにより不足している密封剤(2)を追加し、又は余剰の密封剤(2)を除去する、貼付システム(1)。
【請求項11】
請求項7~10の何れか一項に記載の貼付システム(1)であって、前記制御ユニット(21)により、開ループモードにおける前記主押出装置(12)からの第1の処理量の密封剤(2)の流量(MFMAIN)を密封剤(2)の所望流量(MFDES)の関数として制御し、これと同時に、前記制御ユニット(21)により、閉ループモードにおける前記追加押出装置(13)からの第2の処理量の密封剤(2)の流量(MFADD)を密封剤(2)の所望流量(MFDES)と密封剤(2)の実際流量(MFREAL)との差を含む流量誤差を打ち消すように制御する、貼付システム(1)。
【請求項12】
請求項7~11の何れか一項に記載の貼付システム(1)であって、前記制御ユニット(21)により前記主押出装置(12)を、前記第1の処理量の密封剤(2)の流量(MFMAIN)が密封剤(2)の所望流量(MFDES)よりも常に低くなり、前記第2の処理量の密封剤(2)の流量(MFADD)が連続的に打ち消されず、前記追加押出装置(13)が完全に停止することのないように制御する、貼付システム(1)。
【請求項13】
請求項12に記載の貼付システム(1)であって、前記制御ユニット(21)により前記主押出装置(12)を、前記第1の処理量の密封剤(2)の流量(MFMAIN)が密封剤(2)の前記所望流量(MFDES)よりも常に90%だけ低くなるように駆動する、貼付システム(1)。
【請求項14】
空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)を貼り付けるための貼付方法であって、
・空気入りタイヤ(4)を支持装置(5)により回転軸線(6)周りで回転させるステップと、
・空気入りタイヤ(4)の内側に配置された分配ヘッド(10)により、空気入りタイヤ(4)の内面(3)に密封剤(2)の層を貼り付けるステップと、
・主押出装置(12)により、第1の処理量の密封剤(2)を前記分配ヘッド(10)に供給するステップと、
を備える貼付方法において、
前記主押出装置(12)とは別個で独立した追加押出装置(13)により、前記第1の処理量の密封剤(2)と合流させる第2の処理量の密封剤(2)を前記分配ヘッド(10)に供給する追加ステップを更に備える、貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの内面に密封剤を貼り付けるための貼付方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤの開発は、パンク孔を封止するための密封剤が内張りに貼り付けられた空気入りタイヤに向けられている。通常、密封剤は高い粘度を有することにより、空気入りタイヤの状態に関係なく、パンク孔に対する封止作用と、タイヤの内部キャブティ内における安定性の両方を確保している。
【0003】
密封剤は、空気入りタイヤの接地領域(パンクが生じる恐れのある空気入りタイヤの領域)において、加硫済みの空気入りタイヤに貼り付けられる。特に、密封剤は、トレッドと、サイドウォールの一部に貼り付けられる。
【0004】
既知の密封剤貼付システム、例えば欧州特許出願第0080968号公報(特許文献1)、特開2014‐217953号公報(特許文献2)及び米国特許第4398492号明細書(特許文献3)に記載されている貼付システムでは、密封剤貼付装置が加硫済みの空気入りタイヤに挿入される。密封剤貼付装置は、軸線方向に移動可能であり、かつ、密封剤をストリップ状に分配するための分配ヘッドを一端で支持するアームを備える。空気入りタイヤを(典型的には、空気入りタイヤを載置した電動ローラによって)その回転軸線周りで回転させ、アームによって支持される分配ヘッドを空気入りタイヤの一側から空気入りタイヤの他側まで軸線方向に移動させることにより、空気入りタイヤの内面を覆う密封剤を、内面上で螺旋状に堆積させる(密封剤を螺旋状に貼り付ける)。
【0005】
密封剤の分配、空気入りタイヤの回転及び分配ヘッドの連続的な軸線方向変位を制御することにより、例えば、協調された態様で螺旋状に巻回される密封剤ストリップを、一定の環状に重ね合わせるプロセスは複雑であることが確認された。換言すれば、螺旋形状を有する密封剤の単一の連続ストリップ(すなわち、シームレス)を張り付ける際に、密封剤ストリップの重なり領域で円周方向の不規則性が形成される場合がある。
【0006】
空気入りタイヤの内面に堆積させる密封剤ストリップの均一性を高めるため、螺旋形状を有する密封剤の単一の連続ストリップ(シームレス)を貼り付ける代わりに、互いに独立して並行に配置される複数の密封剤の円形ストリップを貼り付けることが提案されている。換言すれば、分配ヘッドは、密封剤分配中に連続的に軸線方向移動させる代わりに、密封剤の分配中には静止状態に維持し、密封剤ストリップの貼付終了時点と、次の隣接ストリップの貼付開始時点の間にのみ、軸線方向に移動させるものである。
【0007】
しかしながら、既知の密封剤貼付装置は無視できない分配慣性を有しており、したがって、分配開始時に流量をゼロ値から公称値まで増加させるために比較的長時間(約0.8~1.2秒)が必要であり、同様に、分配終了時に流量を公称値からゼロ値まで減少させるためにも比較的長時間(約0.4~0.6秒)が必要であることが確認された。換言すれば、密封剤の特性と、使用される押出機装置の特性により、押し出しが開始及び停止されるたびに、押出プロセスの慣性によって密封剤の流量に大きな変動が生じ、その結果として、厚さ、均一性及びカバーされる領域に関して密封剤の貼り付けが良好に制御されなくなる。高い分配慣性は、密封剤ストリップの「閉鎖」領域内で(すなわち、密封剤ストリップの終端が密封剤ストリップの始短部と重なって密封剤の同一の円形ストリップを完成させる領域内で)、必然的に厚さの不規則性を生じさせる(不均一性の発生)。
【0008】
したがって、互いに独立して並行に配置される密封剤の複数の円形ストリップを適用する際に、密封剤ストリップの「閉鎖」領域には、軸線方向の不規則性が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0080968号公報
【特許文献2】特開2014-217953号公報
【特許文献3】米国特許第4398492号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明の課題は、空気入りタイヤの内面に密封剤を貼り付けるための貼付システム及び方法、特に、上述した欠点がなく、製造が容易かつ経済的である貼付システム及び方法を提供することである。
【0011】
本発明によれば、空気入りタイヤの内面に密封剤を貼り付けるために、添付の特許請求の範囲に記載されている貼付システム及び方法が提供される。
【0012】
各請求項は、本明細書の一体部分として、本発明の好適な実施形態を記載するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
次に、添付図面に示す例示的な実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
図1】本発明に係る貼付システムを、明確性の見地から一部を取り除いた状態で示す概略側面図である。
図2図1の貼付システムを、明確性の見地から一部を取り除いた状態で示す概略正面図である。
図3図1の貼付システムの使用中に分配される密封剤のいくつかの流量の推移を示すグラフである。
図4図1の貼付システムにおける制御ユニットに実装される制御ロジックを説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、参照数字1は、空気入りタイヤ4の内面3の少なくとも一部に密封剤2を貼り付けるための貼付システム1全体を示している。換言すれば、空気入りタイヤ4は、外面と、外面とは反対側の内面3によって境界が定められるトロイダル形状を有し、密封剤2は、内面3の少なくとも一部に貼り付けられる。一般的に、密封剤2は、トレッドに配置された内面3と、側面部に配置された内面3の一部(通常はパンクが発生する可能性のある領域)に貼り付けられる。
【0015】
貼付システム1は、垂直位置に配置される空気入りタイヤ4を支持すると共に、空気入りタイヤ4を対称的な中心軸線と一致する回転軸線6の周りで回転させるための支持装置5を備える。通常、支持装置5は、空気入りタイヤ4を垂直位置で安定に保持するためのサイドレール(図示せず)と、空気入りタイヤ4を載置して駆動するための電動ローラ(線図的に示す)を備える。
【0016】
貼付システム1は、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置を決定するための位置センサ7を備える。位置センサ7は、例えば、支持装置5における電動ローラの1つに結合された角度エンコーダ等で構成することができ、位置センサ7は、空気入りタイヤ4の変位を直接的に読み取ることができる。
【0017】
貼付システム1は、空気入りタイヤ4のサイドウォールにおける外面に対向して配置され、そのサイドウォールに施されているグラフィカル識別コード(通常はバーコード等)を読み取るためのカメラ8を備える。空気入りタイヤ4において、グラフィカル識別コードは常に同一の位置(更には同一の角度位置)に施されるため、カメラ8がグラフィカル識別コードの存在を検出すると、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4における対応する角度位置を状況に応じて決定して、回転軸線6周りでの空気入りタイヤ4の角度位置の絶対角度基準位置を取得することができる。
【0018】
貼付システム1は、空気入りタイヤ4の内面3上に密封剤2のストリップを堆積させるための、密封剤2の貼付ユニット9を備える。貼付ユニット9は、空気入りタイヤ4の内面3上に堆積される密封剤2のストリップを分配するための分配ヘッド10と、分配ヘッド10を支持し、かつ移動させるための移動装置11(例えばロボットアーム)を備える。貼り付けの開始時及び終了時に、移動装置11は分配ヘッド10をそれぞれ空気入りタイヤ4の内側及び空気圧タイヤ4の外側で移動させる。他方、貼り付けの間、移動装置11は分配ヘッド10を空気入りタイヤ4の一側から他側まで軸線方向に(すなわち、回転軸線6と平行に)移動させて、内面3上に内面3自体を覆うための密封剤2の均一な層を堆積させる。
【0019】
好適な実施形態において、移動装置11は、密封剤2の貼り付け中に分配ヘッド10を静止状態に保持し、密封剤のストリップの貼付終了時と密封剤の次の隣接するストリップの貼付開始時との間にのみ、分配ヘッド10を軸線方向に移動させる。換言すれば、密封剤2の複数の円形ストリップが互いに独立して並行に配置されるのである。代替的な実施形態において、移動装置11は、螺旋形状を有する密封剤2の単一の連続ストリップ(シームレス)を堆積させるために、分配ヘッド10を連続的に軸線方向移動させる。
【0020】
図2に示すように、貼付ユニット9は、主押出装置12と、追加押出装置13を備える。追加押出装置13は、主押出装置12よりも低い密封剤2の公称流量と、主押出装置12よりも低い分配慣性を有する。特に、追加押出装置13は、後述するように、その寸法が小さく、密封剤2を異なるモードで圧送するものであるため、主押出装置12よりも分配慣性がより低い構成とされている。
【0021】
分配ヘッド10は、可撓パイプ15によって主押出装置12からの加圧密封剤2を受け取る主管体14と、(可撓パイプ15から完全に分離・独立している)可撓パイプ17によって追加押出装置13からの加圧密封剤2を受け取る追加管体16と、を備える。分配ヘッド10内において、二つの管体14及び16の管の端部は、密封剤2のそれぞれの処理量を合流させるように相互接続されている。その結果、分配ヘッド10は、単一処理量の密封剤2(二つの押出装置12及び13によって供給される密封剤2の二つの処理量の合流によって生成される)を受け取り、かつ分配するための単一の共通吐出ノズル18を備える。
【0022】
好適ではあるが非限定的な実施形態において、主押出装置12は、その長手方向軸線の周りを回転する際に、密封剤2を分配ヘッド10に向けて圧送するためのウォームスクリューを備える。好適ではあるが非限定的な実施形態において、追加押出装置13は、密封剤2を分配ヘッド10に向けて圧送するギヤポンプ(逆転可能)を備える。
【0023】
主押出装置12(のみ)によって分配され、可撓性パイプ15を通って、更には主管体14を通って流れる密封剤2の(質量)流量MFMAINを測定するための(質量)流量センサ19が設けられている。添付図面に示す実施形態において、流量センサ19は、主管体14に対して、追加管体16との接合部の上流側で結合されている。このようにして、流量センサ19は、主押出装置12のみによって分配される密封剤2の流量MFMAINを、吐出ノズル18に可能な限り近い点で(すなわち、空気入りタイヤ4)の内面3への密封剤2の塗布に関する可能な限り最小の遅延をもって)測定することができる。
【0024】
同様に、追加押出装置13(のみ)によって分配され、可撓パイプ15を通って、更には追加管体16を通って流れる密封剤2の(質量)流量MFADDを測定するための(質量)流量センサ20が設けられている。添付図面に示す実施形態において、流量センサ20は、追加管体16に対して、主管体14との接合部の上流側で結合されている。このようにして、流量センサ20は、追加押出装置13のみによって分配される密封剤2の流量MFADDを、吐出ノズル18に可能な限り近い点で(すなわち、空気入りタイヤ4)の内面3への密封剤2の塗布に関する可能な限り最小の遅延をもって)測定することができる。
【0025】
貼付システム1は、制御ユニット21を備える。この制御ユニット21は、貼付システム1の動作を監視し、特に流量センサ19及び20を読み取って、押出装置12及び13の作動・不作動を制御するためのものである。
【0026】
貼付ユニット9の動作につき、図3に示すグラフを参照して説明すれば、以下のとおりである。
【0027】
図3において、実線は、吐出ノズル18から分配すべき密封剤2の所望流量MFDESの推移を示し、太い点線は、主押出装置12のみによって分配され、流量センサ20によって測定される密封剤2の流量MFMAINの推移を示し、細い点線は、追加押出装置13のみによって分配され、流量センサ20によって測定される密封剤2の流量MFADDの推移を示し、破線は、吐出ノズル18から分配される密封剤2の現実(実際)の流量MFREA(主押出装置12によって分配される密封剤2の処理量MFMAINと、追加押出装置13によって分配される密封剤2の処理量MFADDの和)の推移を示す。
【0028】
密封剤2の分配が吐出ノズル18から開始されると、制御ユニット21は、密封剤2の所望流量MFDESに可能な限り忠実に追従するように(又は密封剤2の所望流量MFDESと密封剤2の実際流量MFREALとの差に等しい流量誤差を打ち消すように)押し出し装置12及び13の両方を作動させる。先ず、押出装置12及び13の両方からの密封剤2の流量MFMAIN及びMFADDを、可能な最大速度で増加させる(言うまでもなく、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDは、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINよりも速やかに増加する)。次に、密封剤2の実際流量MFREALが密封剤2の所望流量MFDESに到達すると、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDを、ゼロ値以外の最小値に達するまで徐々に減少させる(追加押出装置13は極度に減速されるが、完全に停止することはない)。
【0029】
換言すれば、空気入りタイヤ4の内面3に対する密封剤2の貼り付け開始時において、理想的な塗布プロファイル(すなわち、密封剤2の所望流量MFDES)は、貼り付けプロセスの開始時点で必要とされる密封剤2の処理量を直ちに利用可能とするものではあるが、これは主押出機装置12の慣性によって阻まれる(すなわち、主押出機装置12からの密封剤2の流量MFMAINは徐々に増加し、相当の遅延をもって密封剤2の所望流量MFDESに達することになる)。このステップの間、追加押出装置13は、主押出装置12の慣性のために不足している密封剤2を補償するように駆動される。追加押出装置13によって実行されるこの補償に基づき、密封剤2は、その所望流量MFDES(すなわち、理想的な塗布プロファイル)に対応する急勾配をもって吐出ノズル18から分配される。
【0030】
吐出ノズル18からの密封剤2の分配が終了すると、制御ユニット21は、主押出装置12を停止させて主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINをゼロ値になるまで連続的かつ急速に減少させる。これと同時に、制御ユニット21は、追加押出装置13を作動させて密封剤2の所望流量MFDESに追従させる。このステップの間、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDは、(初期段階におけるように)増加させることができ、あるいは負になるまで減少させる(すなわち、密封剤2の進行方向を逆転させる)こともできる。追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが正の場合、密封剤2が吐出ノズル18から分配される(すなわち、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINofに追加される)。他方、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが負の場合には、密封剤2は吐出ノズル18に戻される(すなわち、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINから差し引かれる)。
【0031】
換言すれば、空気入りタイヤ4の内面3に対する密封剤2の貼り付け終了時に、理想的な塗布プロファイルによれば、密封剤2の処理量をストリップの形成終了段階で直ちに停止させる必要があるが、これは主押出装置12の慣性によって阻まれる。このステップの間、追加押出装置13は、不足している密封剤2を分配するか、又は主押出装置12の慣性のために過剰となった密封剤2を除去するように駆動される。追加押出装置13によって実行されるこの補償によって、吐出ノズル18からの密封剤2の分配は、密封剤2の所望流量MFDES(すなわち、理想的な貼り付けプロファイル)に対応する急勾配で中断される。
【0032】
一実施形態において、空気入りタイヤ4の内面3に対する密封剤2の貼り付け終了段階において、主押出装置12を事前に停止させると共に、追加押出装置13を使用することにより、不足している密封剤2を追加する(追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが正である)ことができ、過剰の密封剤2を除去する(追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが負である)こともできる。
【0033】
図4に示す好適な実施形態において、制御ユニット21は、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINを、密封剤の所望流量MFDESの関数として、開ループモード(すなわち、フィードバックなし)で調整する。これと同時に、制御ユニット21は、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDを、流量誤差、すなわち、密封剤2の所望の流量MFDESと密封剤2の実際流量MFREALとの差を打ち消すように、閉ループモード(すなわち、フィードバックあり)で調整する。その結果、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINの推移は、適度に規則的であり、密封剤2の所望流量MFDESの推移に対して(主押出装置12の高い慣性による一定の遅延を伴って)忠実に追従する。
他方、追加押出装置13からの流量MFADDの推移は、主押出装置12の高い慣性を補償するために、(特に開始時点及び停止時点において)はるかに不規則的である。
【0034】
図4に示す実施形態において、制御ユニット21は、密封剤2の所望流量MFDESを提供するための処理ブロック22と、密封剤の所望流量MFDESと、密封剤2の実際流量MFREALとの差を微分する際に流量誤差eを計算するための減算ブロック23と、流量誤差eの関数として、追加押出装置13を駆動するために使用される制御値C2を決定するための制御ブロック24(通常はPIDコントローラ)と、を備える。
【0035】
更に、制御ユニット21は、主押出装置12を駆動するために使用される制御値Clを、密封剤2の所望流量MFDESの関数として(開ループモードで)決定するための制御ブロック25を備える。一般的に、制御値Clは、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAINが、密封剤2の所望流量MFDESより常にわずかに福井値(例えば、密封剤2の所望流量MFDESの90%に等しい値)に維持され、更には、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDが連続的に除外されることのないように、したがって追加押出装置13が完全に停止することのないように決定される。実際に、追加押出装置13を(緩速ではあるが)常に作動状態に維持しておけば、追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADDを急速に変化させる必要がある場合に、追加押出装置13を即応させることが可能である。
【0036】
最後に、制御ユニット21は、主押出装置12からの密封剤2の流量MFMAIN(流量センサ19で測定)を追加押出装置13からの密封剤2の流量MFADD(流量センサ20で測定)に追加する場合に、密封剤2の実際流量MFREALを計算するための加算ブロック26を備える。
【0037】
好適な実施形態において、押出装置12及び13を制御する際には、これら押出装置12及び13内における密封剤2の圧力を決定する各別の圧力センサによって決定される測定値も使用される。
【0038】
本明細書に記載した実施形態は、本発明の治術的範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせることができる。
【0039】
上述した貼付システム1は、多くの利点を有している。
【0040】
先ず、上述した貼付システム1によれば、追加押出装置13を介入させて主押出装置12の高い慣性を補償することにより、吐出ノズル18からの密封剤2の分配を非常に迅速に開始させ、かつ終了させることができる。
【0041】
換言すれば、起動及びシャットダウン中における主押出装置12の慣性を克服するために、(比較的)容量が低、慣性が低い追加押出装置13を必要に応じて介入させるものである。すなわち、上述した貼付システム1は、主押出装置12に(比較的)低容量、高速及び低慣性の追加押出装置13を組み合わせることにより、その主押出装置12の高い分配慣性によって課せられる制限を克服することができる。
【0042】
押し出しプロセス(吐出ノズル18からの密封剤2の分配)を迅速に開始及び停止させる能力に基づいて貼付システム1の柔軟性を向上させ、密封剤2の層の均一性(ひいては空気入りタイヤ4の高速時の性能)を大幅に向上させる貼付モデルを製造することができる。
【0043】
さらに、上述した貼付システム1は、市場において容易に入手可能な少数の部品の追加のみを必要とする点で、製造が簡単で安価である。
【符号の説明】
【0044】
1 貼付システム
2 密封剤
3 内面
4 空気入りタイヤ
5 支持装置
6 回転軸線
7 位置センサ
8 カメラ
9 貼付ユニット
10 分配ヘッド
11 移動装置
12 主押出装置
13 追加押出装置
14 主管体
15 可撓パイプ
16 追加管体
17 可撓パイプ
18 吐出ノズル
19 流量センサ
20 流量センサ
21 制御ユニット
22 処理ブロック
23 減算ブロック
24 制御ブロック
25 制御ブロック
26 加算ブロック
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】